説明

攪拌搬送部材及びそれを備えた現像装置並びに画像形成装置

【課題】現像剤等の粉体の搬送力及び攪拌性能の両方を維持しながら粉体に過大なストレスを与えず、成形性にも優れた攪拌搬送部材、及びそれを備えた現像装置並びに画像形成装置を提供する。
【解決手段】第1スパイラル43を構成する第1螺旋羽根43aには、回転軸43bを1周する間(1ピッチ間)において、台形の底面部分が他の部分よりも膨らんだ第1膨張部45a〜45dが90°間隔で4箇所に形成されている。同様に、第2螺旋羽根43cにも、回転軸43bを1周する間(1ピッチ間)において、台形の底面部分が他の部分よりも膨らんだ第2膨張部47a〜47dが90°間隔で4箇所に形成されている。そして、第1螺旋羽根43aは、回転軸43bを1周する間に第1膨張部45a〜47dの少なくとも1箇所において第2螺旋羽根43cと交差するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤等の粉体を攪拌しながら搬送する攪拌搬送部材及びそれを備えた現像装置、並びに現像装置が搭載された画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、感光体等からなる像担持体上に形成した潜像を、現像装置により現像しトナー像として可視化することを行っている。このような現像装置の一つとして、二成分現像剤を用いる二成分現像方式が採用されている。この種の現像装置は、現像容器内にキャリアとトナーとからなる現像剤を収容し、像担持体に現像剤を供給する現像ローラーを配設するとともに、現像容器内部の現像剤を攪拌しながら搬送して現像ローラーへと供給する攪拌搬送部材を配設している。
【0003】
二成分現像方式では、トナーの帯電量が十分でない場合にトナー飛散やカブリ現象等の画像不良が発生することがある。そのため、トナーとキャリアとを十分に攪拌混合してトナーを所定の帯電量まで帯電させる必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、軸部材と、軸部材の回転に伴って粉体を軸線方向一方側の第1方向に搬送する主搬送羽根と、軸部材の回転に伴って粉体の一部に対して軸線方向他方側の第2方向への搬送作用を生じさせる副搬送手段とを備えた粉体攪拌搬送部材が開示されており、副搬送手段として、主搬送羽根よりも小径で逆巻き(逆位相)の副搬送羽根が例示されている。
【0005】
特許文献1の構成によれば、副搬送手段によって主搬送羽根による粉体の搬送方向とは逆方向の搬送作用を生じさせることにより、搬送される粉体の一部に対流が生じ、主搬送羽根の搬送作用を阻害することなく粉体の攪拌作用が促進される。
【0006】
一方、特許文献2には、螺旋状羽根の長さ方向を横断する断面形状が台形状であり、螺旋状羽根が軸部を1周する間において台形の底面部分が他の部分よりも膨らんだ部分が複数個所に形成された樹脂製のトナー攪拌・搬送スクリューが開示されている。
【0007】
特許文献2の構成によれば、台形の底面部分が他の部分よりも膨らんだ部分によって螺旋状羽根の補強効果を高めてトナーを攪拌・搬送する機能を向上させることができる。また、螺旋状羽根全体の底面部分を広くする構成に比べて螺旋状羽根の体積を小さくすることができ、螺旋状羽根の1ピッチ間の空隙(トナーを保持できる空間)を大きくすることができる。さらに、分割される成形金型の合わせ目に対応する部分を膨らませることにより、金型からのトナー攪拌・搬送スクリューの抜き作業が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−33109号公報
【特許文献2】特開2002−6597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、主搬送羽根と副搬送羽根とが形成された特許文献1の攪拌搬送部材において、特許文献2のように螺旋状羽根が軸部を1周する間に台形の底面部分が他の部分よりも膨らんだ部分を形成した場合、主搬送羽根だけでなく副搬送羽根にも台形の底面部分が膨らんだ部分を形成する必要がある。
【0010】
その結果、各搬送羽根に台形の底面部分が膨らんだ部分が存在することになる。この膨らんだ部分は他の部分に比べて搬送力が低下する上、現像剤の流れが変化し易く現像剤の波立ちが発生する。従って、膨らんだ部分が多数存在するのは好ましくない。また、台形の底面部分が膨らんだ部分に加えて、主搬送羽根と副搬送羽根とが交差する部分においても現像剤の流れが変化し易く現像剤の波立ちが発生する。
【0011】
このように、主搬送羽根と副搬送羽根の膨らんだ部分、主搬送羽根と副搬送羽根とが交差する部分では現像剤の流れが不安定となる。その結果、攪拌搬送によって攪拌搬送部材と現像装置のハウジングとの隙間で現像剤に加わるストレスが増大し、キャリアの劣化が促進されるという問題点があった。このキャリアの劣化は環境変動に伴う現像剤の流動性の変化の影響を受けやすく、現像剤の流動性が低下した場合に顕著となる。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み、現像剤等の粉体の搬送力及び攪拌性能の両方を維持しながら粉体に過大なストレスを与えず、成形性にも優れた攪拌搬送部材、及びそれを備えた現像装置並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、粉体容器内に回転可能に支持される回転軸と、該回転軸の外周面に形成され、前記回転軸の回転により粉体を軸方向に搬送する第1螺旋羽根と、該第1螺旋羽根の形成領域と重なるように前記回転軸の外周面に形成され、前記第1螺旋羽根と逆位相であり、且つ前記第1螺旋羽根よりも径方向高さが低い第2螺旋羽根と、を有する攪拌搬送部材において、前記第1螺旋羽根及び第2螺旋羽根は、螺旋羽根の長さ方向を横断する断面形状が台形状であり、前記第1螺旋羽根には前記回転軸を1周する間において台形の底面部分が他の部分よりも膨らんだ複数の第1膨張部が形成され、前記第2螺旋羽根には前記回転軸を1周する間において台形の底面部分が他の部分よりも膨らんだ複数の第2膨張部が形成されており、前記第1螺旋羽根は、前記回転軸を1周する間において前記第1膨張部の少なくとも1箇所で前記第2螺旋羽根と交差することを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記構成の攪拌搬送部材において、前記第2螺旋羽根は、前記第2膨張部において前記第1膨張部と交差することを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記構成の攪拌搬送部材において、前記第1螺旋羽根及び第2螺旋羽根は、それぞれ前記回転軸を1周する間において前記第1膨張部若しくは第2膨張部が90°間隔で4箇所に形成されており、前記回転軸を1周する間において180°隔てた2箇所の前記第1膨張部と第2膨張部とで交差することを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記構成の攪拌搬送部材において、前記第1螺旋羽根の径方向高さをh1、前記第2螺旋羽根の径方向高さをh2とするとき、1/4・h1≦h2≦1/2・h1を満たすことを特徴としている。
【0017】
また本発明は、キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を収容する現像容器と、該現像容器内に配置され、前記現像装置内の現像剤を担持する現像剤担持体と、前記現像容器内の現像剤を攪拌搬送する上記構成の攪拌搬送部材と、を備えた現像装置である。
【0018】
また本発明は、上記構成の現像装置において、前記現像容器は、互いに並列配置される第1搬送室、第2搬送室を含む複数の搬送室と、前記第1搬送室及び前記第2搬送室の長手方向の両端部側で前記各搬送室を連通させる連通部と、前記第1搬送室にトナーを補給するトナー補給口と、を有し、前記現像剤担持体は、前記第2搬送室内の現像剤を表面に担持するように配置されており、前記第1搬送室内の現像剤を回転軸方向に攪拌、搬送する第1攪拌搬送部材と、前記第2搬送室内の現像剤を前記第1攪拌搬送部材と逆方向に攪拌、搬送する第2攪拌搬送部材と、を備え、前記第1攪拌搬送部材として上記構成の攪拌搬送部材を用いることを特徴としている。
【0019】
また本発明は、上記構成の現像装置が搭載された画像形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の構成によれば、粉体の流れに影響を及ぼす第1螺旋羽根の第1膨張部と第1螺旋羽根及び第2螺旋羽根の交差部分とを一つにまとめることができる。従って、攪拌搬送部材を二成分現像剤の攪拌搬送用として用いた場合に現像剤の波立ちが抑えられ、現像剤に加わるストレスも抑制されるため、キャリアの劣化によるトナーの帯電不足も効果的に解消することができる。また、第1螺旋羽根及び第2螺旋羽根の両方に膨張部が形成されるため、螺旋羽根の強度を高めつつ現像剤の保持空間を確保することができ、金型からの攪拌搬送部材の抜き作業も容易となる。
【0021】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の攪拌搬送部材において、第2螺旋羽根を、第2膨張部において第1膨張部と交差させることにより、粉体の流れに影響を及ぼす第1膨張部、第2膨張部、及び交差部分を一つにまとめることができる。従って、攪拌搬送部材を二成分現像剤の攪拌搬送用として用いた場合に現像剤の波立ちがより効果的に抑制される。
【0022】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第2の構成の攪拌搬送部材において、第1螺旋羽根及び第2螺旋羽根は、それぞれ回転軸を1周する間において第1膨張部若しくは第2膨張部が90°間隔で4箇所に形成されており、回転軸を1周する間において180°隔てた2箇所の第1膨張部と第2膨張部とで交差することにより、第2螺旋羽根と交差していない第1膨張部、第1螺旋羽根と交差していない第2膨張部は、回転軸方向において略同一直線上に存在することになる。これにより、第1膨張部と第2膨張部が回転軸方向において異なる位置に存在する場合に比べて攪拌搬送部材が回転する際の現像剤の動きが安定し、現像剤の攪拌も安定する。
【0023】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の攪拌搬送部材において、第2螺旋羽根の径方向高さh2を、第1螺旋羽根の径方向高さh1の1/4以上1/2以下とすることにより、第1螺旋羽根のピッチ間において現像剤の対流を生じさせつつ、搬送速度の低下を有効に防止することができる。また、第1螺旋羽根と交差しない第2膨張部の影響を小さくして、現像剤の動きを安定化することができる。
【0024】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1乃至第4のいずれかの構成の攪拌搬送部材を二成分現像方式の現像装置の攪拌搬送部材として用いることにより、キャリアとトナーとを十分に混合させるとともに、攪拌搬送により現像剤に加わるストレスを低減してキャリアの劣化を抑制することができる。
【0025】
また、本発明の第6の構成によれば、上記第5の構成の現像装置において、上記第1乃至第4のいずれかの構成の攪拌搬送部材を、トナーが補給される第1搬送室内の現像剤を回転軸方向に攪拌、搬送する第1攪拌搬送部材として用いることにより、新たに補給されたトナーと第1搬送室内の現像剤とが十分に攪拌された状態で第2搬送室へ搬送される。従って、現像剤担持体へ供給する第2搬送室内の現像剤のトナー濃度を安定化することができる。
【0026】
また、本発明の第7の構成によれば、上記第5又は第6の構成の現像装置を搭載することにより、現像装置内における現像剤の攪拌搬送によりキャリアに加わるストレスを簡単な構成で低減できるため、トナー飛散やカブリ現象の発生を効果的に抑制できる画像形成装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の現像装置が搭載された画像形成装置の全体構成を示す概略図
【図2】本発明の攪拌搬送部材が搭載された現像装置の側面断面図
【図3】本発明の現像装置の攪拌部を示す平面断面図
【図4】本発明の現像装置の現像剤排出部周辺の拡大図
【図5】本発明の攪拌搬送部材である第1スパイラル43の側面拡大図
【図6】第1スパイラル43を図5の状態から90°回転させた状態を示す側面拡大図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の現像装置が搭載される画像形成装置の構成を概略的に示す断面図である。画像形成装置1はタンデム型のカラープリンターであり、回転自在である感光体ドラム11a〜11dは、例えば有機感光層が形成された有機感光体(OPC感光体)やアモルファスシリコン感光層が形成されたアモルファスシリコン感光体が用いられ、マゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの各色に対応させて配設される。各感光体ドラム11a〜11dの周囲に、現像装置2a〜2d、露光ユニット12、帯電器13a〜13d及びクリーニング装置14a〜14dが配設される。
【0029】
現像装置2a〜2dは、感光体ドラム11a〜11dの右方に夫々対向して配置され、感光体ドラム11a〜11dにトナーを供給する。帯電器13a〜13dは、感光体回転方向に対し現像装置2a〜2dの上流側であって感光体ドラム11a〜11dの表面に対向して配置され、感光体ドラム11a〜11d表面を一様に帯電させる。
【0030】
露光ユニット12は、パーソナルコンピューター等から画像入力部(図略)に入力された文字や絵柄などの画像データに基づいて、各感光体ドラム11a〜11dを走査露光するためのものであり、現像装置2a〜2dの下方に設けられる。露光ユニット12には、レーザー光源、ポリゴンミラーが設けられ、各感光体ドラム11a〜11dに対応して反射ミラー及びレンズが設けられる。レーザー光源から出射されたレーザー光が、ポリゴンミラー、反射ミラー及びレンズを介して、帯電器13a〜13dの感光体回転方向下流側から、各感光体ドラム11a〜11dの表面に照射される。照射されたレーザー光により、各感光体ドラム11a〜11d表面には画像データに応じた静電潜像が形成され、この静電潜像が各現像装置2a〜2dによりトナー像に現像される。
【0031】
無端状の中間転写ベルト17は、テンションローラー6、駆動ローラー25及び従動ローラー27に張架されている。駆動ローラー25は図示しないモーターによって回転駆動され、中間転写ベルト17は駆動ローラー25の回転によって循環駆動させられる。
【0032】
この中間転写ベルト17に接触するように各感光体ドラム11a〜11dが中間転写ベルト17の下方で搬送方向(図1の矢印方向)に沿って隣り合うように配列されている。各1次転写ローラー26a〜26dは、中間転写ベルト17を挟んで各感光体ドラム11a〜11dと対向し、中間転写ベルト17に圧接して1次転写部を形成する。この1次転写部において、中間転写ベルト17の回転とともに所定のタイミングで各感光体ドラム11a〜11dのトナー像が中間転写ベルト17に順次転写される。これにより、中間転写ベルト17表面にはマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたフルカラートナー像が形成される。
【0033】
2次転写ローラー34は、中間転写ベルト17を挟んで駆動ローラー25と対向し、中間転写ベルト17に圧接して2次転写部を形成する。この2次転写部において、中間転写ベルト17表面のトナー像が用紙Pに転写される。転写後に、ベルトクリーニング装置31が中間転写ベルト17に残存するトナーを清掃する。
【0034】
画像形成装置1内の下方には、用紙Pを収納する給紙カセット32が配設され、給紙カセット32の右方には、手差しの用紙を供給するスタックトレイ35が配設される。給紙カセット32の左方には、給紙カセット32から繰り出された用紙Pを中間転写ベルト17の2次転写部に搬送する第1用紙搬送路33が配設される。また、スタックトレイ35の左方には、スタックトレイ35から繰り出された用紙を2次転写部に搬送する第2用紙搬送路36が配設される。更に、画像形成装置1の左上方には、画像が形成された用紙Pに対して定着処理を行う定着部18と、定着処理の行われた用紙を用紙排出部37に搬送する第3用紙搬送路39とが配設される。
【0035】
給紙カセット32は、画像形成装置1の外部(図1の表面側)に引き出すことにより用紙の補充を可能にしたもので、収納されている用紙Pがピックアップローラー33b及び捌きローラー33aにより1枚ずつ第1用紙搬送路33側に繰り出される。
【0036】
第1用紙搬送路33と第2用紙搬送路36とはレジストローラー33cの手前で合流しており、レジストローラー33cにより、中間転写ベルト17における画像形成動作と給紙動作とのタイミングを取って、用紙Pが2次転写部に搬送される。2次転写部に搬送された用紙Pは、バイアス電位が印加された2次転写ローラー34によって、中間転写ベルト17上のフルカラーのトナー像を2次転写され、定着部18に搬送される。
【0037】
定着部18は、ヒーターにより加熱される定着ベルトと、定着ベルトに内接する定着ローラーと、定着ベルトを挟んで定着ローラーに圧接して配設された加圧ローラー等とを備え、トナー像が転写された用紙Pを加熱及び加圧することにより定着処理を行う。用紙Pは、トナー像が定着部18で定着された後、必要に応じて第4用紙搬送路40で反転されて用紙の裏面にも2次転写ローラー34でトナー像が2次転写され、定着部18で定着される。トナー像が定着された用紙は第3用紙搬送路39を通って、排出ローラー19aにより用紙排出部37に排出される。
【0038】
図2は、本発明の現像装置の構成を示す側面断面図である。なお、以下の説明では、図1に示す感光体ドラム11aに対応する現像装置2aの構成及び動作について説明するが、現像装置2b〜2dの構成及び動作については現像装置2aと同様であり、説明を省略し、また各色の現像装置及び感光体を示すa〜dの符号を省略する。
【0039】
図2に示すように、現像装置2は、現像ローラー20と、磁気ローラー21と、規制ブレード24と、攪拌搬送部材42、及び現像容器22等により構成されている。
【0040】
現像容器22は、現像装置2の外郭を構成し、その下部で仕切り部22bによって第1搬送室22cと第2搬送室22dに仕切っている。第1搬送室22c及び第2搬送室22dには、キャリアとトナーからなる現像剤が収容される。また、現像容器22は、攪拌搬送部材42と磁気ローラー21及び現像ローラー20を回転可能に保持している。更に、現像容器22には、現像ローラー20を感光体ドラムに向けて露出させる開口22aが形成されている。
【0041】
現像ローラー20は、感光体ドラム11に対向し、一定の間隔を設けて感光体ドラム11の右方に配設される。また、現像ローラー20は、感光体ドラム11に接近した対向位置において、感光体ドラム11にトナーを供給する現像領域Dを形成している。磁気ローラー21は、一定の間隔を設けて現像ローラー20に対向し、現像ローラー20の右斜め下方に配設される。また、磁気ローラー21は、現像ローラー20に接近した対向位置において、現像ローラー20にトナーを供給する。攪拌搬送部材42は磁気ローラー21の略下方に配設される。また、規制ブレード24は磁気ローラー21の左斜め下方にて現像容器22に固定保持されている。
【0042】
攪拌搬送部材42は、第1スパイラル43と第2スパイラル44の2本で構成される。第2スパイラル44が磁気ローラー21の下方で、第2搬送室22d内に設けられ、第1スパイラル43が第2スパイラル44の右方に隣接して、第1搬送室22c内に設けられる。
【0043】
第1及び第2スパイラル43、44は現像剤を攪拌して現像剤中のトナーを所定のレベルに帯電させる。これによりトナーはキャリアに保持される。また、第1搬送室22cと第2搬送室22dを仕切る仕切り部22bの長手方向(図2の紙面表裏方向)の両端部分には、連通部(図略)が設けられており、第1スパイラル43が回転すると、帯電した現像剤が仕切り部22bに設けた一方の連通部から第2スパイラル44に搬送され、現像剤が第1搬送室22c内と第2搬送室22d内とを循環する。そして、第2スパイラル44から磁気ローラー21に現像剤が供給される。
【0044】
磁気ローラー21は、ローラー軸21aと磁極部材M及び非磁性材からなる非磁性スリーブ21bを備え、攪拌搬送部材42により供給された現像剤を担持し、担持した現像剤からトナーのみを現像ローラー20に供給するものである。磁極部材Mは、断面扇形に形成された外周部の極性の異なる複数の磁石が交互に配設され、ローラー軸21aに接着等により固着される。ローラー軸21aは、非磁性スリーブ21b内で、磁極部材Mと非磁性スリーブ21bの間に所定の間隔を設けて、現像容器22に回転不能に支持される。非磁性スリーブ21bは、図示しないモーターと歯車からなる駆動機構により、現像ローラー20と同方向(図2の時計回り方向)に回転し、また直流電圧56aに交流電圧56bを重畳したバイアス56を印加される。非磁性スリーブ21b表面において、帯電した現像剤は磁極部材Mの磁力によって磁気ブラシを形成して担持され、磁気ブラシは規制ブレード24によって所定の高さに調節される。
【0045】
非磁性スリーブ21bが回転すると、磁気ブラシは、磁極部材Mによって非磁性スリーブ21b表面に担持されて搬送され、現像ローラー20に接触すると、磁気ブラシのトナーのみが、非磁性スリーブ21bに印加されたバイアス56に応じて、現像ローラー20に供給される。
【0046】
現像ローラー20は、固定軸20aと、磁極部材20bと、非磁性の金属材料で円筒状に形成される現像スリーブ20c等を備えて構成されている。
【0047】
固定軸20aは現像容器22に回転不能に支持される。この固定軸20aには、現像スリーブ20cが回転自在に保持され、更に、磁石よりなる磁極部材20bが磁気ローラー21と対向する位置に現像スリーブ20cと所定の間隔を設けて、接着等により固着される。現像スリーブ20cは、図示しないモーターと歯車からなる駆動機構により、図2の矢印方向(時計回り方向)に回転させられる。また、現像スリーブ20cには、直流電圧55aに交流電圧55bを重畳した現像バイアス55が印加される。
【0048】
現像バイアス55を印加された現像スリーブ20cが図2の時計回り方向に回転すると、現像領域Dにおいて、現像バイアス電位と感光体ドラム11の露光部位の電位との電位差により、現像スリーブ20c表面に担持されたトナーが感光体ドラム11に飛翔する。飛翔したトナーは矢印A方向(反時計回り方向)に回転する感光体ドラム11上の露光部位に順次付着し、感光体ドラム11上の静電潜像が現像される。
【0049】
次に、図3を用いて、現像装置の攪拌部について詳しく説明する。図3は攪拌部を示す平面断面図(図2のXX′矢視断面図)である。
【0050】
現像容器22には、前述のように、第1搬送室22cと、第2搬送室22dと、仕切り部22bと、上流側連通部22e、及び下流側連通部22fが形成され、その他に、現像剤補給口22gと、現像剤排出口22hと、上流側壁部22i、及び下流側壁部22jが形成されている。なお、第1搬送室22cにおいて、図3の左側を上流側、図3の右側を下流側とし、また、第2搬送室22dにおいて、図3の右側を上流側、図3の左側を下流側とする。従って、連通部及び壁部は、第2搬送室22dを基準として、上流側及び下流側と呼称している。
【0051】
仕切り部22bは、現像容器22の長手方向に延びて第1搬送室22cと第2搬送室22dを並列させるように仕切っている。仕切り部22bの長手方向の右側端部は、上流側壁部22iの内壁部とともに上流側連通部22eを形成し、一方、仕切り部22bの長手方向の左側端部は、下流側壁部22jの内壁部とともに下流側連通部22fを形成している。そして現像剤は、第1搬送室22cと、上流側連通部22eと、第2搬送室22d、及び下流側連通部22f内を循環することが可能である。
【0052】
現像剤補給口22gは、現像容器22の上部に設けられた現像剤補給容器(図略)から新たなトナー及びキャリアを現像容器22内に補給するための開口であり、第1搬送室22cの上流側(図3の左側)に配置される。
【0053】
現像剤排出口22hは、現像剤の補給によって、第1及び第2搬送室22c、22d内で余剰となった現像剤を排出するための開口であり、第2搬送室22dの下流側で第2搬送室22dの長手方向に連続して設けられる。
【0054】
第1搬送室22c内には第1スパイラル43が配設され、第2搬送室22d内には第2スパイラル44が配設されている。
【0055】
第1スパイラル43は、回転軸43bと、回転軸43bに一体に設けられ、回転軸43bの軸方向に一定のピッチで螺旋状に形成される第1螺旋羽根43aと、回転軸43bの軸方向に第1螺旋羽根43aと同じピッチで第1螺旋羽根43aとは逆巻き(逆位相)の第2螺旋羽根43cとを有する。また、第1螺旋羽根43a及び第2螺旋羽根43cは、第1搬送室22cの長手方向の両端部側まで延び、上流側及び下流側連通部22e、22fにも対向して設けられている。回転軸43bは現像容器22の上流側壁部22iと下流側壁部22jに回転可能に軸支されている。第1螺旋羽根43a及び第2螺旋羽根43cの詳細な構成については後述する。
【0056】
第2スパイラル44は、回転軸44bと、回転軸44bに一体に設けられ、回転軸44bの軸方向に第1スパイラル43の第1螺旋羽根43aと同じピッチで第1螺旋羽根43aとは逆巻き(逆位相)の螺旋羽根44aとを有する。また、螺旋羽根44aは、磁気ローラー21の軸方向長さ以上の長さを有し、更に、上流側連通部22eに対向する位置まで延びて設けられている。回転軸44bは、回転軸43bと平行に配置され、現像容器22の上流側壁部22iと下流側壁部22jに回転可能に軸支されている。また、回転軸44bには、螺旋羽根44aとともに、規制部52及び排出羽根53が一体に配設されている。
【0057】
規制部52は、第2搬送室22d内で下流側に搬送された現像剤を塞き止め、且つ、所定量以上になった現像剤を現像剤排出口22hに搬送することを可能にするものである。規制部52は、回転軸44bに設けられる螺旋羽根44aと逆巻き(逆位相)の螺旋羽根からなり、且つ、螺旋羽根44aの外径と略同じで螺旋羽根44aのピッチより小さく設定されている。また、規制部52は、下流側壁部22j等の現像容器22の内壁部と規制部52の外周部において所定量の隙間を形成している。この隙間から余剰の現像剤が排出されることになる。
【0058】
回転軸44bは現像剤排出口22h内まで延びている。現像剤排出口22h内の回転軸44bには排出羽根53が設けられている。排出羽根53は、螺旋羽根44aと同じ方向を向く螺旋状の羽根からなるが、螺旋羽根44aよりピッチが小さく、また羽根の外周が小さくなっている。従って、回転軸44bが回転すると、排出羽根53も回転し、規制部52を乗り越えて現像剤排出口22h内に搬送された余剰現像剤は、図3の左側に送られて、現像容器22外に排出されるようになっている。なお、排出羽根53、規制部52、及び螺旋羽根44aは合成樹脂によって回転軸44bと一体に成型される。
【0059】
現像容器22の外壁には、歯車61〜64が配設されている。歯車61、62は回転軸43aに固着され、歯車64は回転軸44bに固着され、歯車63は、現像容器22に回転可能に保持されて、歯車62、64に噛合している。
【0060】
新たに現像剤を補給していない現像時には、モーター等の駆動源によって、歯車61が回転すると、回転軸43bとともに第1螺旋羽根43aが回転し、第1螺旋羽根43aによって、現像剤は、第1搬送室22c内の現像剤を矢印P方向に搬送され、その後、上流側連通部22eを通って第2搬送室22d内に搬送される。更に、回転軸44bと連動する回転軸44bとともに螺旋羽根44aが回転すると、螺旋羽根44aによって、現像剤は、第2搬送室22d内の現像剤を矢印Q方向に搬送される。従って、現像剤はその嵩高を大きく変動させながら第1搬送室22cから上流側連通部22eを通って第2搬送室22d内に搬送され、規制部52を乗り越えることなく、下流側連通部22fを通って第1搬送室22cに搬送される。
【0061】
このように現像剤は、第1搬送室22cから、上流側連通部22e、第2搬送室22d、及び下流側連通部22fと循環しながら攪拌されて、攪拌された現像剤が磁気ローラー21に供給される。
【0062】
次に、現像剤補給口22gから現像剤が補給される場合について説明する。現像によってトナーが消費されると、現像剤補給口22gから第1搬送室22c内にトナーとキャリアとを含む現像剤が補給される。
【0063】
補給された現像剤は、現像時と同様に、第1螺旋羽根43aによって、第1搬送室22c内を矢印P方向に搬送され、その後、上流側連通部22eを通って第2搬送室22d内に搬送される。更に、螺旋羽根44aによって、現像剤は第2搬送室22d内を矢印Q方向に搬送される。回転軸44bの回転にともなって規制部52が回転すると、規制部52によって、螺旋羽根44aによる現像剤搬送方向とは逆方向の搬送力が現像剤に付与される。この規制部52によって現像剤が塞き止められて嵩高となり、余剰の現像剤が規制部52を乗り越えて、現像剤排出口22hを介して現像容器22外に排出される。
【0064】
上記構成の第1スパイラル43によれば、回転軸43bの外表面に第1螺旋羽根43aが設けられており、第1螺旋羽根43aは、回転軸43bの回転によって第1の方向(図3の矢印P方向)に現像剤を攪拌しながら搬送する。また、回転軸43bの外表面には、第1螺旋羽根43aのピッチ間(羽根と羽根との間)に第1螺旋羽根43aと逆位相であり、且つ第1螺旋羽根43aよりも小径の第2螺旋羽根43cが設けられている。第2螺旋羽根43cは、回転軸43bの回転によって第1の方向とは逆方向の第2の方向(矢印Q方向)への搬送作用を現像剤に生じさせる。
【0065】
第2螺旋羽根43cは、径方向において第1螺旋羽根43aの外端部よりも内方に位置していることにより、第2螺旋羽根43cの回転によって生じる第2方向への搬送作用は回転軸43b近傍に存在する現像剤の一部に対して生じる。そのため、第1螺旋羽根43aによる第1の方向への搬送作用を阻害しない。
【0066】
このように、第2螺旋羽根43cを用いて、第1螺旋羽根43aによる現像剤の搬送方向(第1の方向)とは逆方向(第2の方向)の搬送作用を生じさせることにより、第1螺旋羽根43aのピッチ間において現像剤の対流が生じ、第1螺旋羽根43aの粉体(現像剤)搬送作用を阻害することなく第1螺旋羽根43a間における現像剤の攪拌が促進される。従って、現像剤補給口22gから補給される新たなトナーとキャリアを、第1搬送室22c内の二成分現像剤と迅速に且つ十分に攪拌するとともに、第1搬送室22c内の現像剤搬送速度の低下を有効に防止することができる。
【0067】
なお、回転軸43bから第2螺旋羽根43cの先端までの高さ(径方向高さh2、図5参照)が、回転軸43bから第1螺旋羽根43aの先端までの高さ(径方向高さh1、図5参照)の1/4よりも小さい場合、第1螺旋羽根43aのピッチ間において現像剤の対流を十分に生じさせることができず、攪拌効果が低下する。一方、h2がh1の1/2よりも大きい場合、第2螺旋羽根43cによる第2の方向への搬送力が大きくなり過ぎて、第1螺旋羽根43aによる第1の方向への搬送作用を阻害してしまう。
【0068】
従って、第2螺旋羽根43cの径方向高さh2は、第1螺旋羽根43aの径方向高さh1の1/4以上1/2以下であることが好ましい。これにより、第1螺旋羽根43aのピッチ間において現像剤の対流を生じさせつつ、搬送速度の低下を有効に防止することができる。
【0069】
図4は、図3に示す現像装置における現像剤排出部周辺の拡大図である。第2スパイラル44には現像剤搬送方向(図4の白矢印方向)に対し規制部52の上流側直近において下流側連通部22fに対向するように減速搬送部51が設けられている。
【0070】
減速搬送部51は、螺旋羽根44aと同方向を向く複数(ここでは3枚)の羽根で螺旋状に形成されている。減速搬送部51を構成する螺旋羽根は、螺旋羽根44aの外径と同じサイズで螺旋羽根44aのピッチより小さく設定されている。減速搬送部51の羽根ピッチは螺旋羽根44aのピッチの1/6〜1/3となっており、これらの螺旋羽根が下流側連通部22fの長手方向の開口幅に対向している。なお、減速搬送部51の螺旋羽根は下流側連通部22fの開口の全幅に対向しなくともよいが、この場合には、規制部52側の羽根が下流側連通部22fの開口に対向しているのがよい。
【0071】
この構成によって、回転軸44bが回転すると、螺旋羽根44aによって、第2搬送室22d内で現像剤が比較的に速く搬送されるが、減速搬送部51の羽根ピッチが螺旋羽根44aのピッチより小さいので、減速搬送部51が設けられている第2搬送室22d内では、螺旋羽根44aよりも現像剤の搬送速度が低下することになる。従って、搬送される現像剤は、螺旋羽根44aの羽根の外周に倣い波打つように搬送路内を移動するが、螺旋羽根のピッチが比較的に大きいと、現像剤の嵩高が大きく変動しながら現像剤が速く移動する。一方、減速搬送部51のように螺旋羽根のピッチが比較的に小さいと、現像剤の嵩高の変動は小さく現像剤がゆっくりと移動することになる。
【0072】
従って、新たに現像剤を補給していない現像時には、減速搬送部51近傍では第2搬送室22d内の他の部分に比べて現像剤の嵩高の変動が小さく、現像剤は比較的にゆっくりと搬送されることによって、現像剤が規制部52に衝突しても、現像剤の跳ね上がりが抑えられて、規制部52の外周部を乗り越えることがない。その結果、現像剤は、規制部52を乗り越えることなく下流側連通部22fを通って第1搬送室22cに搬送される。
【0073】
現像によってトナーが消費されると、現像剤補給口22gから第1搬送室22c内にトナーとキャリアとを含む新たな現像剤が補給される。補給された現像剤は、現像時と同様に、第1スパイラル43の第1螺旋羽根43a及び第2螺旋羽根43cによって攪拌されながら第1搬送室22c内を矢印P方向に搬送される。その後、第2スパイラル44の螺旋羽根44aによって第2搬送室22d内を矢印Q方向に搬送され、減速搬送部51に搬送される。一方、回転軸44bの回転にともなって規制部52が回転すると、規制部52によって、螺旋羽根44aによる現像剤搬送方向(矢印Q方向)とは逆方向の搬送力が現像剤に付与される。
【0074】
減速搬送部51において搬送速度が減速された現像剤は、規制部52の上流側に位置する減速搬送部51近傍で滞留して嵩高となり、余剰の現像剤(現像剤補給口22gから補給された現像剤と略同量)が規制部52を乗り越えて現像剤排出口22hを介して現像容器22外に排出される。
【0075】
また、第2搬送室22d内には現像剤搬送方向(図4の白矢印方向)に対し減速搬送部51の上流側に隣接してトナー濃度検知センサー71が配置されている。なお、図4では第2スパイラル44がトナー濃度検知センサー71の手前側に位置するため、トナー濃度検知センサー71を破線で表示している。
【0076】
トナー濃度検知センサー71としては、現像容器22内における現像剤の透磁率を検出する透磁率センサーが用いられる。トナー濃度検知センサー71により現像剤の透磁率が検出されると、その検出結果に相当する電圧値を制御部(図示せず)に出力するよう構成されており、制御部によってトナー濃度検知センサー71の出力値からトナー濃度が決定されるようになっている。
【0077】
センサー出力値はトナー濃度に応じて変化し、トナー濃度が高くなるほど磁性キャリアに対するトナーの比率が高くなり、磁気を通さないトナーの割合が増加するため出力値が低くなる。一方、トナー濃度が低くなるほどキャリアに対するトナーの比率が低くなり、磁気を通すキャリアの割合が増加するため出力値が高くなる。
【0078】
また、第2スパイラル44には、トナー濃度検知センサー71センサーに対向する部分にスクレーパー73が設けられている。スクレーパー73は、例えば基材となる可撓性のフィルムに不織布を積層したものが用いられ、搬送スパイラル44の回転軸44bに形成されたスクレーパー支持部(図示せず)に回転軸44bに対し平行に貼り付けられている。回転軸44bの回転に伴いスクレーパー73が回転することで、トナー濃度検知センサー71の検知面が摺擦されて清掃されるとともに、センサー配置部における現像剤の滞留が促進される。
【0079】
図5は、本発明の攪拌搬送部材である第1スパイラル43を回転軸に垂直な方向から見た部分拡大図であり、図6は、図5の状態から第1スパイラル43を90°回転させた状態を示す部分拡大図である。
【0080】
図5及び図6に示すように、第1スパイラル43を構成する第1螺旋羽根43a、第2螺旋羽根43cは、各螺旋羽根の長さ方向を横断する断面形状が台形状であり、第1螺旋羽根43aには、回転軸43bを1周する間(1ピッチ間)において、台形の底面部分が他の部分よりも膨らんだ部分(以下、第1膨張部という)45a〜45dが90°間隔で4箇所に形成されている。同様に、第2螺旋羽根43cにも、回転軸43bを1周する間(1ピッチ間)において、台形の底面部分が他の部分よりも膨らんだ部分(以下、第2膨張部という)47a〜47dが90°間隔で4箇所に形成されている。本実施形態の第1スパイラル43は、回転軸43に垂直な方向に4分割された金型で成形されるため、4箇所の第1膨張部45a〜45d、第2膨張部47a〜47dがそれぞれ金型の合わせ目に対応して形成されている。
【0081】
そして、第1螺旋羽根43aの第1膨張部45aと第2螺旋羽根43cの第2膨張部47a、第1螺旋羽根43aの第1膨張部45cと第2螺旋羽根43cの第2膨張部47cが交差するように形成されている。即ち、第1螺旋羽根43aと第2螺旋羽根43cとは、回転軸43bを1周する間において180°隔てた2箇所の第1膨張部45a、45cと第2膨張部47a、47cとで交差している。
【0082】
これにより、第1螺旋羽根43aと第2螺旋羽根43cの交差部分が第1螺旋羽根43aの第1膨張部45a、45cと同一位置となるため、現像剤の流れに影響を及ぼす第1膨張部45a、45cと第1螺旋羽根43aと第2螺旋羽根43cの交差部分とを一つにまとめて現像剤への影響を低減することができる。その結果、現像剤の波立ちが抑えられ、現像剤に加わるストレスも抑制されるため、キャリアの劣化によるトナーの帯電不足も効果的に解消することができる。
【0083】
また、第2螺旋羽根43cの第2膨張部47a、47cが交差部分に存在することとなるが、第2螺旋羽根43cの径方向高さh2は第1螺旋羽根43の径方向高さh1よりも低いため、第2膨張部47a、47cは第1膨張部45a、45cに包含される。これにより、第2膨張部47a、47cを実質的に削減することができ、現像剤への影響をより低減することができる。
【0084】
さらに、図6に示すように、第2螺旋羽根43cと交差していない第1螺旋羽根43aの第1膨張部45d、第1螺旋羽根43aと交差していない第2螺旋羽根43aの第2膨張部47bは、回転軸43b方向において略同一直線L上に存在している。また、第1膨張部45dから位相が180°ずれた位置にある第1膨張部45b(図5参照)と、第2膨張部47bから位相が180°ずれた位置にある第2膨張部47d(図5参照)も、回転軸43b方向において略同一直線上に存在する。これにより、第1膨張部45dと第2膨張部47b、第1膨張部45bと第2膨張部47dが回転軸43b方向において異なる位置に存在する場合に比べて第1スパイラル43が回転する際の現像剤の動きが安定し、現像剤の攪拌状態も安定する。
【0085】
また、第2螺旋羽根43cの径方向高さh2が第1螺旋羽根43aの径方向高さh1の1/2を超える場合は、第1螺旋羽根43aと交差しない第2螺旋羽根43cの第2膨張部47b、47dの影響が大きくなり、現像剤の動きが不安定となる。このことからも、前述したように第2螺旋羽根43cの径方向高さh2を、第1螺旋羽根43aの径方向高さh1の1/2以下とすることが好ましい。
【0086】
なお、ここでは第1螺旋羽根43aの第1膨張部45aと第2螺旋羽根43cの第2膨張部47a、第1螺旋羽根43aの第1膨張部45cと第2螺旋羽根43cの第2膨張部47cとをそれぞれ交差させることにより、回転軸43bを1周する間において第1螺旋羽根43aと第2螺旋羽根43cとが2箇所で交差するようにしたが、これに限らず、回転軸43bを1周する間において第1膨張部45a〜45dの少なくとも1箇所が第2膨張部47a〜47dの少なくとも1箇所と交差するようにすれば良い。
【0087】
また、第1螺旋羽根43aの第1膨張部45a〜45dの少なくとも1箇所が、第2螺旋羽根43cの第2膨張部47a〜47d以外の部分と交差するようにしても良い。この場合、第1螺旋羽根43aの第1膨張部45a〜45dの少なくとも1箇所と交差部分とを一つにまとめる効果は有するが、第2螺旋羽根43cの第2膨張部47a〜47dの少なくとも1箇所を実質的に削減する効果は失われる。そのため、上記実施形態のように第1螺旋羽根43aの第1膨張部45a〜45dの少なくとも1箇所が、第2螺旋羽根43cの第2膨張部47a〜47dの少なくとも1箇所と交差する構成がより好ましい。
【0088】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明の攪拌搬送部材を現像装置2の第1搬送室22cに配置される第1スパイラル43に用いた例について説明したが、現像剤の仕様によっては、第2搬送室22dの攪拌効果を高めるために、第2搬送室22dに配置される第2スパイラル44にも第1スパイラル43と同様の構成の攪拌搬送部材を用いてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、第1螺旋羽根43aの膨張部45a〜45d、及び第2螺旋羽根43cの膨張部47a〜47cを、回転軸43bを1周する間において90°間隔で4箇所に形成したが、第1膨張部、第2膨張部の個数は第1スパイラル43の成形に用いる金型の分割数に応じて決定すれば良い。例えば、金型を3分割する場合は回転軸43bを1周する間において120°間隔で3箇所に形成すれば良いし、金型を2分割する場合は回転軸43bを1周する間において180°間隔で2箇所に形成すれば良い。
【0090】
また、本発明の攪拌搬送部材は、図3に示したような、現像剤補給口22gと現像剤排出口22hとを備え、磁気ローラー21と現像ローラー20を備えた現像装置2に限定されるものではなく、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いる種々の現像装置に適用可能である。以下、実施例により本発明の効果について更に具体的に説明する。
【実施例】
【0091】
図1に示したような画像形成装置1に、図2及び図3に示した現像装置2a〜2dを搭載し、第1搬送室22c内の第1スパイラル43の構成を変化させた場合のキャリアの帯電性能について調査した。なお、試験は感光体ドラム11b及び現像装置2bを含むシアンの画像形成部Pbにおいて行った。
【0092】
試験方法としては、第1スパイラル43の回転軸43bの直径を8mm、第1螺旋羽根43aの径方向高さh1を4.5mm、羽根ピッチを30mm、第2螺旋羽根43cの径方向高さh2を2.0mm、羽根ピッチを30mmとし、図5及び図6のように、第1螺旋羽根43aと第2螺旋羽根43cとを、回転軸43bを1周する間において第1膨張部45a、45cと第2膨張部47a、47cの2箇所で交差させた構成を本発明1とした。また、第2螺旋羽根43cの径方向高さh2を3.0mmとした以外は本発明1と同様の構成としたものを本発明2とし、第1螺旋羽根43aと第2螺旋羽根43cとを、回転軸43bを1周する間において第1膨張部45aと第2膨張部47aの1箇所で交差させた構成を本発明3とした。また、第1膨張部45a〜45dのいずれも第2螺旋羽根43cと交差していない構成を比較例とした。
【0093】
本発明1〜3、比較例の第1スパイラル43をそれぞれ現像装置2aに装着し、キャリア100重量部に対してトナー8重量部の割合で混合した二成分現像剤を現像装置2aに充填した。その後、印字率5%のテスト画像を1,000枚連続して出力した後の現像剤からトナーを除去し、得られたキャリア10gに対してトナー濃度が8%となるように新たなトナーを加えて1分間混合したときのトナー帯電量を測定した。また、対照(コントロール)として、現像動作を行っていない初期キャリア10gを用いて同様にトナー帯電量を測定し、トナー帯電量に±2μC/g以上の変化があった場合に有意差があると判断した。結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
表1から明らかなように、回転軸43bを1周する間において第1螺旋羽根43aの膨張部45a〜45dの少なくとも1箇所が第2螺旋羽根43cと交差するようにした本発明1〜3では、1,000枚印字後のキャリアを用いた場合のトナー帯電量が21.2〜24.7μC/gと、いずれも21μC/g以上であり、初期キャリアを用いた場合と比較して帯電性能の低下は少なかった。特に、回転軸43bを1周する間において第1膨張部45a、45cと第2膨張部47a、47cの2箇所で交差させ、第2螺旋羽根43cの径方向高さh2を第1螺旋羽根43aの径方向高さh1の1/2とした本発明1では、初期キャリアを用いた場合のトナー帯電量(25.6μC/g)と比較して有意差が認められず、キャリアの劣化が最も抑制されていた。
【0096】
これに対し、第1膨張部45a〜45dのいずれも第2螺旋羽根43cと交差していない比較例では、1,000枚印字後のキャリアを用いた場合のトナー帯電量が19.6μC/gと低く、帯電性能の低下が顕著であった。
【0097】
以上の結果より、本発明1〜3の構成では、比較例の構成に比べてキャリアの劣化が抑制されることが確認された。これは、第1膨張部45a〜45dの少なくとも1箇所が第2螺旋羽根43cと交差している本発明1〜3では、第1膨張部45a〜45dと第1螺旋羽根43aと第2螺旋羽根43cとの交差部分とが別々に存在している比較例に比べて攪拌搬送により現像剤に加わるストレスが低減されるためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等の画像形成装置に用いる現像装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができ、特に、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を用いる現像装置の攪拌搬送部材として利用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 画像形成装置
2a〜2d、2 現像装置
11a〜11d、11 感光体ドラム
20 現像ローラー
21 磁気ローラー(現像剤担持体)
22 現像容器(粉体容器)
22b 仕切り部
22c 第1搬送室
22d 第2搬送室
22e 上流側連通部
22f 下流側連通部
22g 現像剤補給口(トナー補給口)
22h 現像剤排出口
22i 上流側壁部
22j 下流側壁部
42 攪拌搬送部材
43 第1スパイラル(第1攪拌搬送部材)
43a 第1螺旋羽根
43b、44b 回転軸
43c 第2螺旋羽根
44 第2スパイラル(第2攪拌搬送部材)
44a 螺旋羽根
45a〜45d 第1膨張部
47a〜47d 第2膨張部
51 減速搬送部
52 規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体容器内に回転可能に支持される回転軸と、
該回転軸の外周面に形成され、前記回転軸の回転により粉体を軸方向に搬送する第1螺旋羽根と、
該第1螺旋羽根の形成領域と重なるように前記回転軸の外周面に形成され、前記第1螺旋羽根と逆位相であり、且つ前記第1螺旋羽根よりも径方向高さが低い第2螺旋羽根と、
を有する攪拌搬送部材において、
前記第1螺旋羽根及び第2螺旋羽根は、螺旋羽根の長さ方向を横断する断面形状が台形状であり、前記第1螺旋羽根には前記回転軸を1周する間において台形の底面部分が他の部分よりも膨らんだ複数の第1膨張部が形成され、前記第2螺旋羽根には前記回転軸を1周する間において台形の底面部分が他の部分よりも膨らんだ複数の第2膨張部が形成されており、
前記第1螺旋羽根は、前記回転軸を1周する間において前記第1膨張部の少なくとも1箇所で前記第2螺旋羽根と交差することを特徴とする攪拌搬送部材。
【請求項2】
前記第2螺旋羽根は、前記第2膨張部において前記第1膨張部と交差することを特徴とする請求項1に記載の攪拌搬送部材。
【請求項3】
前記第1螺旋羽根及び第2螺旋羽根は、それぞれ前記回転軸を1周する間において前記第1膨張部若しくは第2膨張部が90°間隔で4箇所に形成されており、前記回転軸を1周する間において180°隔てた2箇所の前記第1膨張部と第2膨張部とで交差することを特徴とする請求項2に記載の攪拌搬送部材。
【請求項4】
前記第1螺旋羽根の径方向高さをh1、前記第2螺旋羽根の径方向高さをh2とするとき、1/4・h1≦h2≦1/2・h1を満たすことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の攪拌搬送部材。
【請求項5】
キャリアとトナーとを含む二成分現像剤を収容する現像容器と、
該現像容器内に配置され、前記現像容器内の現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像容器内の現像剤を攪拌搬送する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の攪拌搬送部材と、
を備えた現像装置。
【請求項6】
前記現像容器は、互いに並列配置される第1搬送室、第2搬送室を含む複数の搬送室と、前記第1搬送室及び前記第2搬送室の長手方向の両端部側で前記各搬送路を連通させる連通部と、前記第1搬送室にトナーを補給するトナー補給口と、を有し、前記現像剤担持体は、前記第2搬送室内の現像剤を表面に担持するように配置されており、
前記第1搬送室内の現像剤を回転軸方向に攪拌、搬送する第1攪拌搬送部材と、
前記第2搬送室内の現像剤を前記第1攪拌搬送部材と逆方向に攪拌、搬送する第2攪拌搬送部材と、を備え、前記第1攪拌搬送部材として請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の攪拌搬送部材を用いることを特徴とする請求項5に記載の現像装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の現像装置が搭載された画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−163731(P2012−163731A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23477(P2011−23477)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】