説明

支圧ボルト接合構造

【課題】摩擦面処理を施すことなく、摩擦接合部のせん断耐力を向上させることで、合理的で有効適切な構造とした。
【解決手段】支圧ボルト接合構造1は、母材10と、この母材10を両面側から挟み込む一対の添板11、12と、母材10と両添板11、12との間に介在されたテーパーリング13、14と、両添板11、12を貫通する普通ボルト15と、普通ボルト15に螺合するナット16とを備えている。母材10には母材側ボルト孔18の内周部に母材側テーパー面18a、18bが形成され、添板11、12にはそれぞれ厚さ方向に貫通する添板側ボルト孔19の内周面に添板側テーパー面19a、19bが形成されている。テーパーリング13、14は、母材10側の支圧テーパー面13b、14aを母材側テーパー面18a、18bに面接触させ、支圧テーパー面13a、14bを添板側テーパー面19a、19bに面接触させて配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鋼板や鉄骨等の被接合部材どうしを互いに支圧伝達可能に接合する支圧ボルト接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板や鉄骨などの被接合部材どうしを接合するための手法として、一端部同士を突き合わせるように配置した一対の被接合部材を挟み込むように添板(スプライスプレート)を設置し、一対の被接合部材と添板を高力ボルトで締め付け、被接合部材と添板の接合面に生じる摩擦力によって応力伝達可能に被接合部材同士を接合する高力ボルト接合(高力ボルト摩擦接合)が知られている。
この高力ボルト接合においては、高力ボルト1本あたりのすべり耐力がボルト軸力にすべり係数を乗じた値で表され、ボルト軸力とすべり係数とのいずれか一方あるいは両方の値を大きくすることですべり耐力を大きくすることができる。
【0003】
すべり係数を大きく方法としては、一般に、被接合部材や添板の接合面に赤錆処理やブラスト処理を施して所要の摩擦力が発生するようにしている。またこの他の方法として、摩擦面に機械的に凹凸を形成してすべり係数を大きくする方法や、鋼棒、ピアノ線、鋼線メッシュ、軟鋼などの接合補助部材を母材と添板(スプライスプレート)の間あるいは母材同士の間に介装し、各部材の摩擦面に接合補助部材を食い込ませ、支圧抵抗を付加することによってすべり係数を大きくする方法があり、例えば特許文献1〜3に提案されている。
【特許文献1】特開平6−146427号公報
【特許文献2】特開2004−291091号公報
【特許文献3】特開平6−220923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の支圧ボルト接合構造に関しては以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1〜3では、摩擦面処理を行う必要があることから、施工に手間がかかるという欠点があった。そして、高力ボルト接合においては、施工性を考慮して、高力ボルトの軸部が貫通する母材や添板のボルト孔の孔径が高力ボルトの軸径よりも例えば2〜3mm程度大きく形成されているのが一般的となっている。ところが、一般的な高力ボルト接合は摩擦接合によるものであり、ボルトの導入軸力により発生する摩擦力によって応力を伝達していることから、接合部に作用する力が摩擦耐力を越えるとボルト孔の内径とボルト軸部とのクリアランス分のすべりが発生し、それ以降は高力ボルトと部材(母材、或いは添板)の支圧により応力が伝達されることから、高力ボルトが受けるせん断力が上昇し、ボルトの破損が生じるという問題があった。
さらに、被接合部材同士の設置時に互いのボルト孔の軸線がずれ、偏心が生じた場合においても、ボルトの軸部が被接合部材に接触し、被接合部材に作用する応力がボルトに伝わり、ボルトが受けるせん断力の負担が増えるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、摩擦面処理を施すことなく、摩擦接合部のせん断耐力を向上させることで、合理的で有効適切な支圧ボルト接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る支圧ボルト接合構造では、母材を一対の添板で挟持するとともに、母材と添板とをボルトで締め付けることにより、母材と一対の添板どうしの間を支圧伝達可能に接合するための構造であって、母材は、その厚さ方向にボルトの軸部を挿通させるための第1ボルト孔が設けられ、その第1ボルト孔の内周面には厚さ方向内側から両外側に向かうに従って漸次拡径する第1テーパー部が形成され、一対の添板は、それぞれ第1ボルト孔と同軸に配置可能であって、厚さ方向にボルトの軸部を挿通させるための第2ボルト孔が設けられ、その第2ボルト孔の内周面には厚さ方向で母材に面する一面から他面に向かうに従って漸次縮径する第2テーパー部が形成され、第1テーパー部と第2テーパー部との間には、ボルトを緩やかに挿通する第3ボルト孔を有するテーパーリングが介在され、テーパーリングの外周面には、第1テーパー部に対応して面接触可能な第3テーパー部が形成されるとともに、第2テーパー部に対応して面接触可能な第4テーパー部が形成され、母材と添板との間に互いのテーパー部を面接触させた状態でテーパーリングを配設し、第1乃至第3ボルト孔を同軸上に位置させ、それら第1乃至第3ボルト孔にボルトを挿通して締め付けることで、面接触するテーパー部どうしが押圧されることを特徴としている。
【0007】
本発明では、ボルトの軸力による荷重が一対の添板によって母材を締め付ける方向に作用し、添板の第2テーパー部とテーパーリングの第4テーパー部とが面接触によって支圧伝達されるとともに、テーパーリングの第3テーパー部と母材の第1テーパー部とが面接触によって支圧伝達されることから、それらテーパー部同士の支圧部のせん断耐力が増大し、母材と一対の添板とが互いに強固な状態で接合されることになる。さらに、各テーパー部の支圧部において摩擦係数の増大によりすべりが抑えられ、添板が母材に対して離れる方向への力、すなわち、ボルトの軸方向に作用する引張力を低減することができる。また、ボルトの軸部がテーパーリングのリング孔に対して緩い状態で挿入されており、ボルトには締め込みによる軸力以外の荷重の負担がかからないため、軸力管理が容易になる効果を奏する。
このように、母材と一対の添板とがテーパーリングを介して支圧接合となる構造であるので、従来の摩擦接合による高力ボルト接合のように接合面に対する摩擦面処理が不要となり、そのため施工の簡易化を図ることが可能である。
【0008】
また、本発明に係る支圧ボルト接合構造では、テーパーリングの第3テーパー部及び第4テーパー部は、外側に突出する凸曲面が形成されてなり、第1テーパー部及び第2テーパー部は、それぞれ凸曲面に対応して面接触する凹曲面が形成されていることが好ましい。
【0009】
本発明では、テーパー部を凹曲面と凸曲面とによる接触面とすることで、直線状のテーパー面による接触面の場合に比べて互いの接触面積が増大することになり、より効果的な支圧伝達が可能な構造を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の支圧ボルト接合構造によれば、摩擦面処理が不要であるとともに、テーパーリングのテーパー部と母材及び添板のテーパー部とを面接触によって支圧伝達させることで、それらテーパー部同士の支圧部のせん断耐力を向上させることができる。そのため、各支圧部において摩擦係数の増大によりすべりが抑えられることから、添板が母材に対して離れる方向への力、すなわち、ボルトに作用する軸方向の引張力が低減され、高力ボルトでなく普通ボルトを用いることが可能となり、合理的で有効適切な構造を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第1の実施の形態による支圧ボルト接合構造について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態による支圧ボルト接合構造の接合前の状態を示す分解図、図2は支圧ボルト接合構造の接合後の状態を示す図、図3は図2に示す接合部の部分拡大図、図4は支圧ボルト接合構造の作用を説明するための図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、本第1の実施の形態による支圧ボルト接合構造1は、母材と、この母材をテーパーリングを介して挟み込むとともに、上下に積層した状態で配置した一対の添板とを普通ボルト(一般に中ボルトともいう)で締め付けることにより、一対の添板と母材とを支圧伝達可能な状態で接合するものである。
【0013】
すなわち、支圧ボルト接合構造1は、母材10と、この母材10を両面側から挟み込む一対の添板11、12と、母材10と両添板11、12との間に介在されたテーパーリング13、14と、母材10を挟み込んだ状態の両添板11、12を貫通する普通ボルト15と、普通ボルト15に螺合するナット16と、普通ボルト15及びナット16に設けられる一対の座金17、17とを備えて概略構成されている。
ここで、図1、図2では、普通ボルト15と、ナット16と、一対の座金17、17との組み合わせが、母材10と一対の添板11、12に対して2組設けられている。なお、普通ボルト15の先端部15aには、ナット16を螺合させるネジ部が形成されている。
【0014】
母材10は、一面10aから他面10bに向けて厚さ方向に貫通する母材側ボルト孔18が設けられており、そのボルト孔18の内周部にはテーパー状をなす母材側テーパー面18a18b(第1テーパー部)が形成されている。つまり、母材側テーパー面18a、18bは、それぞれ母材10の厚さ方向中心から一方の面側に向かうに従って漸次孔径が大きくなる所定のテーパー角度θをもつ直線状の斜面をなしている。この母材側ボルト孔18は、厚さ方向中心部の最も孔径寸法が小さくなる部分で、普通ボルト15のボルト径よりも大きく形成されている。なお、図1、図2では、所定の間隔をあけて2つの母材側ボルト孔18、18が形成されている。
【0015】
添板11、12は、上述したように母材10の両面を挟み込むようにして配設されるものであり、それぞれ厚さ方向に貫通する添板側ボルト孔19が設けられ、その添板側ボルト孔19の内周面にはテーパー状をなす添板側テーパー面19a、19b(第2テーパー部)が形成されている。つまり、添板側テーパー面19a、19bは、それぞれ添板の厚さ方向で一面11a、12aから母材10に面する側の他面11b、12bに向かうに従って漸次孔径が大きくなる母材側テーパー面18a、18bと同じテーパー角度θをもつ直線状の斜面をなしている。そして、各添板11、12は、それぞれの添板側テーパー面19a、19bが形成される側の面11b、12aを母材10側に向けるとともに、母材側ボルト孔18に同軸となるようにして配置されている。
【0016】
テーパーリング13、14は、外周面が両テーパー状に形成された支圧テーパー面13a、13b、14a、14bを有するリング形状をなし、そのリング孔13c、14c内に普通ボルト15が挿入される。つまり、支圧テーパー面13a、13b、14a、14bは、それぞれ高さ方向(リング孔13c、14cの中心軸線方向に平行な方向)で中心から一方の端部に向かうに従って漸次外径が小さくなる母材側テーパー面18a、18b或いは添板側テーパー面19a、19bと同じテーパー角度θをもつ直線状の斜面をなしている。また、テーパーリング13、14は、母材10側の支圧テーパー面13b、14aを母材側テーパー面18a、18bに面接触させ、添板側テーパー面13a、14bを添板側テーパー面19a、19bに面接触させて配設されている。ここで、符号13b、14aの支圧テーパー面が本発明の第3テーパー部に相当し、符号13a、14bの支圧テーパー面が本発明の第4テーパー部に相当している。
【0017】
このように構成される支圧ボルト接合構造1は、図2に示すように、各テーパーリング13、14の一方の支圧テーパー面13b、14aとそれぞれに対応する母材側テーパー面18a、18bとを面接触させるとともに、他方の支圧テーパー面13a、14bとそれぞれに対応する添板側テーパー面19a、19bとを面接触させて嵌合するようにして配置し、母材側ボルト孔18、添板側ボルト孔19、19、リング孔13a、14aに普通ボルト15を挿通し、その普通ボルト15の先端側にナット16を螺合して締結することでメタルタッチした支圧接合が構成されることになる。つまり、この状態において、母材10と両添板11、12との間にはテーパーリング13、14が介装されている。
【0018】
次に、このように構成される支圧ボルト接合構造1の作用について、図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、一方の母材10と図示しない他方の母材同士を接合する際には、先ず、それら一方の母材10と他方の母材とを互いの端部同士を突き合わせるようにして配置する。なお、以下の説明では、一方の母材10の接合に関して説明する。
次いで、母材10に対して添板11、12をテーパーリング13、14を介装させた状態で所定位置に設置する。このとき、各テーパーリング13、14の一方の支圧テーパー面13b、14aをそれぞれ母材10の母材側テーパー面18a、18bに、他方の支圧テーパー面13a、14bをそれぞれ添板側テーパー面19a、19bに嵌合させて、一対の添板11、12を設置する。このとき、母材側ボルト孔18と、19と、テーパーリング13、14とが同軸上に配置され、一方の添板11から他方の添板12までを連通する普通ボルト15の挿通孔1aが形成された状態となる。
【0019】
次いで、その挿通孔1aに、一方の添板11側(図1で上側)から座金17を介して普通ボルト15を挿通するとともに、他方の添板12(図1で下側)から突出した普通ボルト15の先端部15aに座金17を介してナット16を螺合して締結する。
この際、母材側ボルト孔18、添板側ボルト孔19、およびリング孔13c、14cが高精度で同芯上に合致している場合には、ボルト15の軸部15cと挿入孔1aとの間のクリアランスは周方向に均等となる。一方、ボルト15の軸部15cと挿入孔1aとが偏心している場合であっても、各テーパー面13a、13b、14a、14bの押圧によって添板11、12、或いは母材10が局部的に屈曲して塑性化することにより、その偏心を吸収することができる。
【0020】
このように、普通ボルト15とナット16の締結により普通ボルト15に所定の軸力が導入されると、普通ボルト15の頭部15bとナット16に設けられている座金17、17に押圧されて一対の添板11、12は母材10を締め付ける方向へ荷重が作用する。このときの荷重は、テーパーリング13、14を介して母材10に伝達されることになる。つまり、添板側テーパー面19a、19bとテーパーリング13、14の支圧テーパー面13a、14bとが面接触によって密着しつつ、支圧テーパー面13b、14aと母材側テーパー面18a、18bとが面接触によって密着することで、互いに作用する応力が伝達されることになる。
【0021】
また、形成される普通ボルト15の挿通孔1aの内径寸法の最小部は、普通ボルト15より大径となっているので、普通ボルト15は挿通孔1aに対して所定の隙間を有する状態となっている。したがって、前記荷重がテーパーリング13、14を介して伝達されることはなく、せん断力を負担することがない。
【0022】
ここで、荷重の作用について、図4などを用いてさらに詳しく説明する。
図4は、本支圧ボルト接合構造1の接合部に荷重が作用する際のテーパー面での力の釣り合い状態を示した図であって、そのうちのテーパーリング13の支圧テーパー面13aと添板11の添板側テーパー面19aを示している。
【0023】
図3及び図4に示す普通ボルト15の締め付けによる作用荷重(一対の添板11、12が母材10を締め付ける方向の荷重)が作用すると、面接触する添板側テーパー面19aとテーパーリング13の支圧テーパー面13aとの間ですべりが生じ、普通ボルト15に引張力が発生する。そして、作用荷重の増加に伴い、両テーパー面13a、19aにおける材間圧縮力Nも増加するため、両テーパー面13a、19a同士の間の見かけの摩擦係数μ´が増大することになる。
ここで、両テーパー面13a、19aの摩擦係数をμとし、テーパー角度をθとすると、tanθ=μのときのμ´は無限大となり、それらテーパー面でのすべりは発生しない。
【0024】
また、ボルト軸力による鉛直力を符号Pとし、母材引張力による水平力をQとすると、材間圧縮力Nは数1となり、テーパー面13a、19aによる摩擦接合部におけるせん断力Fは数2となる。そして、テーパー面13a、19aのせん断力Fは数3となることから、上述した水平力Qは数4で表すことができ、見かけの摩擦係数μ´は数5となる。
【0025】
【数1】

【0026】
【数2】

【0027】
【数3】

【0028】
【数4】

【0029】
【数5】

【0030】
すなわち、図3、図4に示す母材10及び添板11、12が降伏しなければ、テーパーリング13、14のせん断耐力で接合部耐力が決定する。そのため、テーパーリング13、14に高強度鋼材を使用することで、従来の摩擦接合の2倍以上の接合耐力を得ることが可能である。なお、tanθ=μと厳密に加工することは難しいが、例えばテーパー角度を60°とし、摩擦係数μを0.45とすれば、見かけの摩擦係数μ´が10程度となり、テーパー面のすべりを十分に抑えることができる。
また、普通ボルト15の締め込み軸力以外に荷重を負担しないため、普通ボルト15であっても接合部耐力が低下することはない。
【0031】
このように支圧ボルト接合構造1では、普通ボルト15の軸力による荷重が一対の添板11、12によって母材10を締め付ける方向に作用し、添板11、12の添板側テーパー面19a、19bとテーパーリング13、14の支圧テーパー面13a、14bとが面接触によって支圧伝達されるとともに、テーパーリング13、14の支圧テーパー面13b、14aと母材10の母材側テーパー面18a、18bとが面接触によって支圧伝達されることから、それらテーパー面同士の支圧部のせん断耐力が増大し、母材10と一対の添板11、12とが互いに強固な状態で接合されることになる。さらに、支圧部において摩擦係数の増大によりすべりが抑えられ、添板11、12が母材10に対して離れる方向への力、すなわち、普通ボルト15の軸方向に作用する引張力を低減することができる。また、普通ボルト15の軸部がテーパーリング13、14のリング孔13c、14cに対して緩い状態で挿入されており、普通ボルト15には締め込みによる軸力以外の荷重の負担がかからないため、軸力管理が容易になる効果を奏する。
このように、母材10と一対の添板11、12とがテーパーリング13、14を介して支圧接合となる構造であるので、従来の摩擦接合による高力ボルト接合のように接合面に対する摩擦面処理が不要となり、そのため施工の簡易化を図ることが可能である。
【0032】
上述のように本実施の形態による支圧ボルト接合構造では、摩擦面処理が不要であるとともに、テーパーリング13、14の支圧テーパー面13a、13b、14a、14bと母材10及び添板11、12のテーパー面18a、18b、19a、19bとを面接触によって支圧伝達させることで、それらテーパー面同士による支圧部のせん断耐力を向上させることができる。そのため、各支圧部において摩擦係数の増大によりすべりが抑えられることから、添板11、12が母材10に対して離れる方向への力、すなわち、普通ボルト15に作用する軸方向の引張力が低減され、本実施の形態のように高力ボルトでなく普通ボルト15を用いることが可能となり、合理的で有効適切な構造を実現することができる。
【0033】
次に、他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
図5は本発明の第2の実施の形態による支圧ボルト接合構造の概略構成を示す図である。
上述した第1の実施の形態では支圧部を単なる直線状のテーパー面としているが、図5に示す第2の実施の形態による支圧ボルト接合構造2では、そのテーパー面に代えて円弧面としたものである。
すなわち、テーパーリング23、24には、それぞれ外側に突出する凸曲面23a、23b、24a、24bが形成されてなり、母材20及び添板21、22には、それぞれ前記凸曲面23a、23b、24a、24bに対応して面接触する凹曲面27a、27b、28a、28bが形成されている。なお、一対の添板21、22を母材20を介して締め付ける普通ボルトを符号25で示し、その普通ボルト25に螺合するナットを符号26で示している。
本第2の実施の形態では、支圧部を凸曲面23a、23b、24a、24bと凹曲面27a、27b、28a、28bとによる接触面とすることで、上述した第1の実施の形態のように直線状のテーパー面(図3参照)による接触面の場合に比べて互いの接触面積が増大することになり、より効果的な支圧伝達が可能な構造を実現することができる効果を奏する。
【0034】
以上、本発明による支圧ボルト接合構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では支圧部のテーパー面のテーパー角度θ、ボルト孔の内径寸法などは適宜設定することができる。また、ボルト、母材、添板、テーパーリングの部材も適宜変更可能である。例えば、本実施の形態では普通ボルトを使用しているが、高力ボルトを用いてもかまわない。
また、本実施の形態では、ボルト孔間の偏心において、テーパー部の局部的な塑性化により吸収することを可能としているが、これに加えて、その偏心が大きい場合には、例えばフィーラプレートを挿入するようにしてもかまわない。
さらに、テーパーリングは、断面視球状をなしていてもよく、これにより、テーパー部を第2の実施の形態と同様に円弧面とすることで、双方の接触面を確実に密着させることが可能となる。しかも、テーパーリングの外形が同一の曲面の球状となることから、加工が容易となり、加工手間を低減することが可能になる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施の形態による支圧ボルト接合構造の接合前の状態を示す分解図である。
【図2】支圧ボルト接合構造の接合後の状態を示す図である。
【図3】図2に示す接合部の部分拡大図である。
【図4】支圧ボルト接合構造の作用を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態による支圧ボルト接合構造の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1、2 支圧ボルト接合構造
10、20 母材
11、12、21、22 添板
13、14、23、24 テーパーリング
13a、14b 支圧テーパー面(第4テーパー部)
13b、14a 支圧テーパー面(第3テーパー部)
13c、14c リング孔
15、25 普通ボルト
16、26 ナット
17 座金
18 母材側ボルト孔
18a、18b 母材側テーパー面(第1テーパー部)
19 添板側ボルト孔
19a、19b 添板側テーパー面(第2テーパー部)
23a、23b、24a、24b 凸曲面(第3、第4テーパー部)
27a、27b、28a、28b 凹曲面(第1、第2テーパー部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材を一対の添板で挟持するとともに、前記母材と前記添板とをボルトで締め付けることにより、前記母材と一対の前記添板どうしの間を支圧伝達可能に接合するための構造であって、
前記母材は、その厚さ方向に前記ボルトの軸部を挿通させるための第1ボルト孔が設けられ、その第1ボルト孔の内周面には前記厚さ方向内側から両外側に向かうに従って漸次拡径する第1テーパー部が形成され、
前記一対の添板は、それぞれ前記第1ボルト孔と同軸に配置可能であって、厚さ方向に前記ボルトの軸部を挿通させるための第2ボルト孔が設けられ、その第2ボルト孔の内周面には前記厚さ方向で前記母材に面する一面から他面に向かうに従って漸次縮径する第2テーパー部が形成され、
前記第1テーパー部と前記第2テーパー部との間には、前記ボルトを緩やかに挿通する第3ボルト孔を有するテーパーリングが介在され、
前記テーパーリングの外周面には、前記第1テーパー部に対応して面接触可能な第3テーパー部が形成されるとともに、前記第2テーパー部に対応して面接触可能な第4テーパー部が形成され、
前記母材と前記添板との間に互いのテーパー部を面接触させた状態で前記テーパーリングを配設し、前記第1乃至第3ボルト孔を同軸上に位置させ、それら第1乃至第3ボルト孔に前記ボルトを挿通して締め付けることで、面接触する前記テーパー部どうしが押圧されることを特徴とする支圧ボルト接合構造。
【請求項2】
前記テーパーリングの前記第3テーパー部及び第4テーパー部は、外側に突出する凸曲面が形成されてなり、
前記第1テーパー部及び前記第2テーパー部は、それぞれ前記凸曲面に対応して面接触する凹曲面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の支圧ボルト接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−144822(P2010−144822A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322351(P2008−322351)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】