説明

改善された曲げ縁を持つ転がり軸受

本発明は、少なくとも1つのレース(2)及び多数の転動体(5)を持つ転がり軸受に関し、レース(2)が、転動体(5)用の転動路(4a)と、転動体(5)を軸線方向に案内する少なくとも1つの側方曲げ縁(6)とを持ち、転動体(5)が曲げ縁(6)の方へ向く端面(11)を持ち、曲げ縁(6)が転動体(5)の方へ向く曲げ縁転動面(6a)を持ち、少なくとも端面(11)又は曲げ縁転動面(6a)が、曲げ縁転動面(6a)又は端面(11)の方へ少なくとも部分的に円環面状に凸に湾曲されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に関する。本発明は円錐ころ軸受に関連して説明されるが、本発明は円筒ころ軸受、又は球面ころ軸受のような別の軸受形式においても使用されることが指摘される。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、軸線方向負荷成分を吸収するため、転動路に対して側方の曲げ縁を持つころ軸受が公知である。その際従来技術から、平らなころ端面及び平らな曲げ縁転動面を持つ円筒ころ軸受が公知である。これらの軸受は、曲げ縁に対して転動体の傾斜転動を生じる。このような傾斜転動の結果、転がり軸受の寿命が減少する。
【0003】
更に従来技術から円筒ころ軸受が公知であり、転動体の端面が球帽状の形状を持っている。これらの転動体では、端面の中心範囲が球状でなく、平らに又は凹みを持つように形成されている。それによりこれらの転動体の接触面は、少なくとも曲げ縁肩部である程度切り落とされ、それにより曲げ縁接触部に限られた軸線方向負荷可能性が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の基礎となっている課題は、従来技術に対して大きい軸線方向荷重を吸収できる転がり軸受を利用可能にすることである。このような円錐ころ軸受又は円筒ころ軸受の特別な使用分野は例えば風力伝動装置である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば請求項1に記載の転がり軸受によって解決される。有利な実施形態及び展開が従属請求項の対象である。
【0006】
本発明による転がり軸受は、少なくとも1つのレース及び多数の転動体を持ち、レースが、転動体用の転動路と、転動体を軸線方向に案内する少なくとも1つの側方曲げ縁とを持っている。本発明によれば、転動体が曲げ縁の方へ向く端面を持ち、曲げ縁が転動体の方へ向く曲げ縁転動面を持ち、少なくとも端面又は曲げ縁転動面が、曲げ縁転動面又は端面の方へ少なくとも部分的に円環面状に凸に湾曲されている。
【0007】
レースは、外レース又は内レースであってもよい。転動体の端面とは、周面とは対照的にその終端面を意味し、転動体はその周面を介してレースの転動路の周面に沿って転がる。
【0008】
転動体が第2のレースを持ち、転動体が第1のレースと第2のレースとの間に設けられているのがよい。第2のレースにも同様に側方曲げ縁が設けられるのがよく、第1の曲げ縁に対向する転動体の側に設けられるのが特によい。
【0009】
従来技術から公知の球帽状湾曲では、転動体の全端面が部分的に球の形状を持ち、この球の半径が転動体の回転軸線上にあるが、本発明による端面の円環面状湾曲は、転動体の回転軸線上にある中心を持つ球によっては描かれず、例えば回転軸線からずれている中心を持つ円又は楕円によって描かれる。もっと詳しく言えば、好ましい実施形態では、円環面状湾曲の中心は転動体の回転軸線の周りに円状に設けられている。
【0010】
これらの中心が円の中心でなくてもよく、楕円又は似たように形成される立体の中心であってもよい。本発明による円環面状湾曲により、転動体の外側範囲に円形湾曲を存在させることができる。それにより転動体の軸線断面は、所定の曲率半径を持つ外側範囲に平らな中心範囲が続き、この平らな中心範囲に、所定の曲率半径を持つ第2の湾曲した範囲が続いている。
【0011】
この事情が、図面を参照して更に詳細に説明される。
【0012】
転動路と曲げ縁転動面とのなす開き角が90°より大きいのがよい。同じように湾曲する面の場合、曲げ縁開き角を求める際、湾曲の始点と終点を通って転動体の半径方向に延びる直線が考慮される。この実施形態によって、転動体の端面と曲げ縁転動面との接触面の代わりに、外方へ漸増的に開く間隙との接触点が生じる。こうして摩擦に関して有利な接触が行われて、有利な潤滑剤引込み従って少ない摩擦を可能にする。
【0013】
更に曲げ縁転動面及び転動体の端面の本発明による構成によって接触部の周囲に実際上丸い形状が存在し、従ってころの傾斜又は左右振れに対する大きい公差が生じる。
【0014】
別の好ましい実施形態では、端面及び曲げ縁転動面が少なくとも部分的に湾曲している。曲げ縁転動面及び転動体の端面が所定の円環面半径を持つ球状に形成されるのが特によい。両方の湾曲のこの円環面半径は同じであってもよいが、両方の半径は互いに異なっていてもよい。
【0015】
端面及び曲げ縁転動面が、それぞれ他方の面の方へ凸に湾曲しているのがよい。こうして特に有利な潤滑剤引込が行われる。しかし両方の面の1つが凹に湾曲し、この場合それに応じた凸な曲率半径が凹な曲率半径より小さいのが特によい。
【0016】
転動体の端面が、少なくとも部分的に円上にあるのがよい。これは、上述したように、軸線断面における転動体の湾曲が円によって形成され、これらの円の中心が所定の距離だけ転動体の回転軸線に対してなるべく湾曲の方へずれていることを意味する。
【0017】
本発明による転がり軸受の少なくとも1つの構成要素が硬旋削方法により製造されるのがよい。硬旋削方法の適用により前記円環面半径の安価な形成が可能である。
【0018】
転がり軸受が、円筒ころ軸受、円錐ころ軸受、球面ころ軸受、ラジアル軸受、スラスト軸受等を含む転がり軸受の群から選ばれているのがよい。
【0019】
別の好ましい実施形態では、少なくとも曲げ縁転動面又は端面の曲率半径が、転動体の直径の少なくとも3倍である。曲率半径のこの選択により、端面と曲げ縁転動面との特に効果的な接触を行うことができる。しかし両方の面のうち1つの面の曲率半径が無限大であってもよく、即ちこの場合湾曲が直線によって示される。
【0020】
もっと正確に言うと、両方の面のうち1つの面において円環面半径が無限大になる場合、球状形状の代わりに直線が生じる。この直線は、直線が転動体の対称軸の周りに回転されるか、転がり軸受全体の対称軸の周りに回転されるかに応じて、曲げ縁転動面又は転動体の端面の円錐の母線である。
【0021】
しかし曲げ縁転動面が軸受軸線に対して直角である場合、円錐面の代わりに平面を設けることも可能である。
【0022】
好ましい実施形態では、曲げ縁転動面と端面との間に1つの接触点のみが現れるように、曲げ縁転動面及び端面が形成されている。この接触点が、転動体の対称軸から転動体の半径方向に、円の中心と少なくともちょうど同じだけ離れているのが特に好ましい。
【0023】
一般にこれは、本発明による種々の転動体のための円の中心が、転動体の対称軸に関して平行に延びる円環面中心線上に設けられていることを意味する。この円環面中心線に関して、接触点は転動体の半径方向にその外側にある。このことは円環面中心線に対して接触線が所定の角度だけ傾斜していることを意味する。この傾斜角は0°〜30°なるべく0°〜10°である。
【0024】
それ以外の利点及び実施形態は添付図面からわかる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明による転がり軸受の概略的な部分図を示す。符号5は円錐ころ軸受用転動体を示すが、この転動体の端面11の一部のみが示されている。
【0026】
転動体5のこの端面11は、中心区域11a及び縁範囲11bを持っている。この実施例では、中心区域11aはほぼ直線的に延び、縁範囲11bは湾曲している。符号6は、転動体5の端面11の方を向いている曲げ縁転動面6aを持つレース2の側方曲げ縁を示す。
【0027】
端面11の中心区域11aは、図1に示す実施例では、曲げ縁6の曲げ縁転動面6aに当接していない。従って端面11の中心区域11aは、直線的な延び具合の代わりに、他の任意な伸び具合をとり、例えば中心に凹みを持つことができる。
【0028】
符号Lは転動体5の対称軸を示す。前述したように、転動体5の端面11の縁範囲11bは円環面状に湾曲している。図1に示す実施例では、端面11の縁範囲11bは、軸線断面においてほぼ円状に湾曲し、曲率半径ρを持っている。それにより図1に示す実施例では、縁範囲11bは曲げ縁転動面6aの方へ凸に湾曲している。
【0029】
曲げ縁6又は曲げ縁6の曲げ縁転動面6aも同様に円環状に湾曲し、この湾曲は曲率半径ρを持っている。符号19は、端面11の縁範囲11bがある円を示している。この円の中心は円環面中心線14上にある。端面11の範囲にある転動路4aと円環面中心線14との間隔は、曲げ縁の高さhに等しい。
【0030】
この円環面中心線14は、転動体5の対称軸Lに対して間隔aだけ離れている。図1に示す転動体は、それぞれ任意に軸線断面図で、図1に示す形状寸法を持っている。これは、端面11の全体を描くために、円19も同様に対称軸Lの周りに回されねばならないことを意味する。移行範囲又は移行点3において、円状に湾曲する縁範囲11hと直線状に延びる中心区域11aが互いに移行している。円状湾曲の中心は円環面中心線14にあるので、点3における円19の接線は、正確に中心区域11a上に延びていることになる。従って端面11に稜は生じない。
【0031】
円半径ρ及びρは、それぞれ転動体の直径Dwの少なくとも3倍であるのがよい。半径ρ及びρを示す矢印は、同時に接触点8を通る接触線10を規定する。この接触線10は、円環面中心線14従って対称軸Lの方向に対して、角μだけ傾斜している。この傾斜の選択により、端面における接触点の位置をほぼ自由に選択することができる。しかし接触点8は曲げ縁6のほぼ半分の高さにあるのがよい。
【0032】
符号4は、転動体用の(詳細には示してない)転動路4aを持つレースの中心範囲を示している。
【0033】
図2は本発明による軸受の実施例を示す。この場合曲げ縁転動面6aの曲率半径は無限大に選ばれ、即ち図2では、曲げ縁転動面がほぼ直線状である。この曲げ縁転動面6aが軸受の(図示しない)中心軸線の周りに回されると、円錐が生じる。なぜならば、図2に示す実施例において、曲げ縁転動面6aは、レースの中心範囲4に対して90°より大きく傾斜しているからである。この円錐の周面がこの円錐の底面に対して傾斜している角は、90°を差引いた曲げ縁開き角αから得られる。しかし曲げ縁開き角を90°にすることも可能であり、この場合円錐は幾何学的に平面へ移行する。符号bは、端面11の終点と接触点8との間の半径方向間隔を示す。
【0034】
最初に述べたように、逆に縁範囲11b又は端面11を直線状に構成し、その代わりに曲げ縁転動面6aを端面11の方へ凸に湾曲させることもできるであろう。縁範囲11a又は曲げ縁転動面6aを凹に即ち内方へ湾曲させることも可能であり、その場合この凹な湾曲は、適当な一層強い凹な湾曲即ちそれぞれ他方の面の一層小さい曲率半径により、補償せねばならないだろう。
【0035】
端面11及び曲げ縁転動面6aの形状寸法の適当な選択により、ほぼヘルツの接触面の大きい軸が転動体の周方向に位置するように、この接触面を選ぶことができる。こうして端面11と曲げ縁転動面6aとの間の材料部分の特に有利な収量が得られる。
【0036】
図1及び2には円錐ころ軸受の実施例が示されているが、本発明は円筒ころ軸受又は球面ころ軸受のような他の軸受形式にも適当に適用可能である。円筒ころ軸受の場合、レースの中心範囲4は、転動体の対称軸Lに対してほぼ平行に延びることになる。
【0037】
本願の書類に開示されたすべての特徴は、個々に又は組合わせて従来技術に対して新規である限り、本発明にとって重要なものとして権利として請求される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】 転がり軸受の基礎となる形状寸法を説明するための部分図を示す。
【図2】 本発明による転がり軸受の別の部分図を示す。
【符号の説明】
【0039】
1 転がり軸受
2 レース
3 移行範囲
4 レース2の中心範囲
4a 転動路
5 転動体
6 側方曲げ縁
6a 曲げ縁転動面
8 接触点
10 接触線
11 端面
11a 端面11の中心区域
11b 端面11の縁範囲
14 円環面中心線
19 円
L 転動体の対称軸
ρ,ρ 曲率半径
a 転動体5の対称軸と円環面中心線14との間隔
h 曲げ縁高さ
b 接触点Bと端面の端部との間の半径方向間隔
Dw 転動体の直径
μ 対称軸Lと接触線10とのなす角
α 曲げ縁開き角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのレース(2)及び多数の転動体(5)を持つ転がり軸受であって、レース(2)が、転動体(5)用の転動路(4a)と、転動体(5)を軸線方向に案内する少なくとも1つの側方曲げ縁(6)とを持っているものにおいて、転動体(5)が曲げ縁(6)の方へ向く端面(11)を持ち、曲げ縁(6)が転動体(5)の方へ向く曲げ縁転動面(6a)を持ち、少なくとも端面(11)又は曲げ縁転動面(6a)が、曲げ縁転動面(6a)又は端面(11)の方へ少なくとも部分的に円環面状に凸に湾曲されていることを特徴とする、転がり軸受。
【請求項2】
転動路(4a)と曲げ縁転動面(6a)とのなす開き角(α)が90°より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
端面(11)及び曲げ縁転動面(6a)が少なくとも部分的に湾曲していることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の転がり軸受。
【請求項4】
端面(11)及び曲げ縁転動面(6a)が、それぞれ他方の面の方へ凸に湾曲していることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の転がり軸受。
【請求項5】
転動体(5)の端面(11)が、少なくとも部分的に円(19)上にあることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の転がり軸受。
【請求項6】
円(19)が、転動体(5)の対称軸に関してなるべく湾曲部の方へずれている幾何学的中心を持っていることを特徴とする、請求項6に記載の転がり軸受。
【請求項7】
転がり軸受が、円筒ころ軸受、円錐ころ軸受、球面ころ軸受、ラジアル軸受、スラスト軸受等を含む転がり軸受の群から選ばれていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の転がり軸受。
【請求項8】
少なくとも曲げ縁転動面(6a)又は端面(11)の曲率半径が、転動体(5)の直径(Dw)の少なくとも3倍であることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の転がり軸受。
【請求項9】
曲げ縁転動面(6a)と端面(11)との間に1つの接触点(8)のみが現れるように、曲げ縁転動面(6a)及び端面(11)が形成されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の転がり軸受。
【請求項10】
接触点(8)が、転動体の対称軸(L)から転動体の半径方向に、円(19)の中心と少なくともちょうど同じだけ離れていることを特徴とする、請求項8に記載の転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−520934(P2009−520934A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549753(P2008−549753)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【国際出願番号】PCT/DE2006/002185
【国際公開番号】WO2007/071229
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(506420843)シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト (80)
【Fターム(参考)】