説明

改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布及びその製造方法

【課題】改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布及びその製造方法に関するものであり、スパンボンド不織布を最表層とし、内層は少なくとも1層のメルトブロー不織布層を有し、必要に応じて、少なくとも1層以上のスパンボンド不織布層及びメルトブロー不織布層がさらに積層されてなるスパンボンド多層不織布の製造方法において、前記最表層をなすスパンボンド不織布層は低融点重合体が高融点重合体を繊維の長手方向に取り囲む芯鞘型長繊維から構成し、前記芯鞘型長繊維から構成されたスパンボンド不織布層の間にメルトブロー不織布層を形成し、連続するベルト上に積層してウェブを形成し、熱圧着可能なカレンダーにより熱溶着(ボンディング)してシート状に製造した後に吸引ドラムにより熱処理して製造することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布及びその製造方法に係り、さらに詳しくは、スパンボンド不織布を最表層とし、内層は少なくとも1層のメルトブロー不織布層を有し、必要に応じて、少なくとも1層以上のスパンボンド不織布層及びメルトブロー不織布層がさらに積層されてなるスパンボンド多層不織布において、前記不織布の最表層をなすスパンボンド不織布を低融点重合体が高融点重合体を繊維の長手方向に取り囲む芯鞘型長繊維に構成することから、接着強度の低下を防ぎながらも、肌触りが心地よく、しかも優れた柔軟性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、スパンボンド長繊維不織布とは、化学繊維を紡糸工程により製造した不織布のことを言うものであり、ノズルから出る繊維を走行するコンベヤ上に吹き飛ばしてコンベヤ上に長繊維の層を形成して製造した不織布の一種であり、製造工程の能率が卓越し、経済性にも富んでいるというメリットがある。また、メルトブロー不織布とは、メルトブロー工程により製造された不織布のことを言うものであり、ここで使用されたウェブは極細繊維であるため柔らかく、保温性に優れており、しかも、高度のろ過性能を有するなど一般不織布からは得られないメリットを有するものの、ウェブ強度が極めて弱いことが欠点として指摘されている。この種の不織布の製造方法であるスパンボンド及びメルトブローといった不織布の製造工程において最も多用される原料としては、一般的に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリオレフィン系樹脂及びポリアミド系樹脂であり、これらの樹脂を溶融紡糸して繊維化してウェブを形成し、熱接着方式により不織布を製造する。
【0003】
ところが、上述したように、従来公知のポリプロピレン長繊維から製造されたスパンボンド不織布は結晶領域が多くて柔軟性に劣り、優れた肌触りを有さないという欠点があった。このため、上述した欠点を補完するために、ポリプロピレン短繊維を空気噴射もしくは梳綿してウェブを製造し、加熱されたローラーにより接着する工法、もしくは、エアースルー工法により製造された短繊維不織布が提案されているが、このような不織布は肌触りは良好であるとはいえ、耐毛羽立ち性と強度に問題があり、衛生材のスリム化による生産性の低下及び物理的特性の限界が見られるため好ましくなかった。なお、ポリエチレン長繊維から製造されたスパンボンド不織布は比較的に柔軟であり、しかも、良好な肌触りは有するとはいえ、紡糸に難点があり、強度に劣り、しかも、伸度が高くておむつや生理用ナプキンなどの衛生材や産業用への適用には制限的であった。
【0004】
このため、上述した諸問題点を解消するために、例えば、下記の特許文献1は、スパンボンド不織布としてプロピレン系とエチレン系との複合繊維からなるスパンボンド不織布を用い、メルトブロー不織布として特定のポリオレフィン系エラストーマとプロピレン系重合体のポリオレフィン組成物からなるメルトブロー不織布を用いて、均一性が良好であり、柔軟性、通気性及び耐水性に優れており、しかも、各層間の接着強度に優れた柔軟性不織布積層体を開示しており、例えば、下記の特許文献2は、複合長繊維不織布及びこの製造方法として、スパンボンド多層不織布に柔らかな肌触りと優れた柔軟性を付与するために最表層をなすスパンボンド不織布を製造するに当たって、低融点重合体であるポリエチレン繊維が高融点重合体であるポリプロピレン繊維の長手方向に芯鞘型長繊維からなるスパンボンド層の間にメルトブロー層を形成し、これを熱圧着する方法を開示している。
しかしながら、上述した不織布は低融点重合体であるポリエチレン長繊維により優れた肌触り性を提供するメリットはあるが、メルトブロー層により柔軟性に劣り、且つ、スパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層との接着強度が十分ではないため剥離現象が発生していた。さらに、相対的に伸度が増加して従来の伸度に対する問題点を全く解消することができないことに起因して、おむつや生理用ナプキンなどを生産する高速設備の幅が収縮されて接着材が設備上に付着したり、使用する製品の幅が収縮幅を考慮して大きくなるなどの工程上のロスが発生し、設備障害による設備停止発生の問題点が依然として解決していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国公開特許第2001−12474号公報
【特許文献2】大韓民国公開特許第2004−0013756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、不織布の接着強度の低下を防ぎ、且つ、相対的な伸度の増加を抑制して、伸度の増加による問題点を完全に解消するだけではなく、液体遮断性に優れた、改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布を提供するところにある。
【0007】
本発明の他の目的は、前記優れた特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布を一層容易に製造可能な製造方法を提供するところにある。
【0008】
本発明者らは、上述した本発明の目的が、低融点重合体が高融点重合体を繊維の長手方向に取り囲む芯鞘型長繊維からなるスパンボンド層を最表層とし、最表層をなすスパンボンド不織布の間に内層を形成するメルトブロー層の量を最適化して熱圧着し、この後、特定の方法により熱風による熱処理を施す工程を提供することにより達成されることを知見し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布の製造方法は、スパンボンド不織布を最表層とし、内層は少なくとも1層のメルトブロー不織布層を有し、必要に応じて、少なくとも1層以上のスパンボンド不織布層及びメルトブロー不織布層がさらに積層されてなるスパンボンド多層不織布の製造方法において、前記最表層をなすスパンボンド不織布層は低融点重合体が高融点重合体を繊維の長手方向に取り囲む芯鞘型長繊維から構成し、前記芯鞘型長繊維から構成されたスパンボンド不織布層の間にメルトブロー不織布層を形成し、連続するベルト上に積層してウェブを形成し、熱圧着可能なカレンダーにより熱溶着(ボンディング)してシート状に製造した後に吸引ドラムにより熱処理して製造することを特徴とする。
【0010】
本発明の他の構成によれば、前記吸引式ドラムにより熱処理する工程における熱処理温度は80〜110℃であることを特徴とする。もし、吸引式ドラムにより80℃以下において熱処理を施すと、メルトブロー層とスパンボンド不織布フィラメントとの低融点重合体の熱的セッティング効果がなくて伸度の増加が抑制される効果があまり得られず、逆に、熱処理温度が110℃以上であれば、ソフトな肌触りを毀損する恐れがあるため好ましくない。
【0011】
本発明のさらに他の構成によれば、前記最表層のスパンボンド長繊維不織布層を構成する高融点重合体としては230℃におけるメルトインデックス(MI)が30〜60g/10分であるポリプロピレン樹脂を溶融したものを用い、低融点重合体としては190℃におけるメルトインデックス(MI)が25〜35g/10分であり、且つ、密度が0.9515〜0.9565である高密度ポリエチレン(HDPE)を用いることを特徴とする。
【0012】
本発明のさらに他の構成によれば、前記芯鞘型スパンボンド長繊維不織布層は、鞘部が高密度ポリエチレン(HDPE)であり、芯部がポリプロピレン樹脂であり、これらの芯部と鞘部との重量比が50〜50ないし70〜30になるように複合溶融紡糸して製造される複合フィラメントからなるものであることを特徴とする。
【0013】
本発明のさらに他の構成によれば、前記スパンボンド不織布層の間にメルトブロー不織布層を形成する不織布の目付けは0.5〜2.0g/m2であることを特徴とする。もし、メルトブロー不織布の目付けが0.5g/m2未満であれば組織が緻密ではないため液体を遮断することができず、メルトブロー不織布の目付けが2.0g/m2を超えると組織が緻密化して合成樹脂透過の遮断に効果的であるとはいえ、ソフトな肌触りが得られないという問題点を発生するため好ましくない。
【0014】
前記本発明の他の目的を達成するために、本発明の改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布は、スパンボンド不織布を最表層とし、内層は少なくとも1層のメルトブロー不織布層を有し、必要に応じて、少なくとも1層以上のスパンボンド不織布層及びメルトブロー不織布層がさらに積層されてなるスパンボンド多層不織布において、前記最表層をなすスパンボンド不織布層は低融点重合体が高融点重合体を繊維の長手方向に取り囲む芯鞘型長繊維から構成され、前記芯鞘型長繊維から構成されたスパンボンド不織布層の間にメルトブロー不織布層が形成され、連続するベルト上に積層されてウェブが形成され、熱圧着可能なカレンダーによりボンディングされてシート状に製造された後に吸引式ドラムにより熱処理されて製造されたものであることを特徴とする。
【0015】
本発明のさらに他の構成によれば、?前記本発明による改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布は、使い捨ておむつ、生理用ナプキンの立体ギャザー、バックシート及び親水加工トップシートなどの用途に用いられるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上述したように構成される本発明の改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布及びその製造方法は、多層不織布の背景を基に従来の問題点を解消するために、低融点重合体が高融点重合体を繊維の長手方向に取り囲む芯鞘型長繊維からなるスパンボンド不織布層を最表層とし、最表層をなすスパンボンド不織布層の間に内層を形成するメルトブロー不織布層の量を最適化させる一方、吸引式ドラムを用いて特定の温度下において熱風により熱処理を施すことにより製造することから、相対的な伸度上昇を抑制する結果、伸度上昇による従来の問題点を解消することができるだけではなく、接着強度の低下を防いで肌触りが心地よく、液体遮断性に優れており、耐毛羽立ち性と機械的強度が卓越し、しかも、不織布の均斉度が良好であり、タッチ性と柔軟性に優れている。
【0017】
さらに、上記の如き構成を有する本発明の不織布は、従来不織布が用いられている各種の用途に使用可能であるだけではなく、特に、使い捨ておむつ、生理用ナプキンの立体ギャザー、バックシート及び親水加工済みトップシートなどの用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好ましい実施形態による改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布の製造過程を示す概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に基づき、本発明を好ましい一実施形態によりさらに詳しく説明する。
【0020】
図1は、本発明の好ましい実施形態による改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布の製造過程を示す概略工程図である。上述したように、本発明の機械的特性に優れた複合スパンボンド長繊維多層不織布の製造方法は、ポリエチレン長繊維の柔軟性とポリプロピレン長繊維の低伸度、高強力特性を組み合わせることにより、柔らかくて液体遮断性に優れていながらも、従来の問題点を解消する機械的特性に優れた複合スパンボンド長繊維多層不織布を提供するために、連続的に駆動されるコンベヤベルト上にスパンボンド不織布層を積層し、前記スパンボンド不織布層の上に少なくとも1層のメルトブロー不織布層をさらに積層した後、さらにスパンボンド不織布層を積層する。特に、本発明のスパンボンド長繊維多層不織布は、特定の層の構成に限定されるものではなく、例えば、単一層(メルトブロー層M、またはスパンボンド層S)、2層(SSまたはSM)の複合物または3以上の層(SMS、SMMS、SSMMS、SSMMSSウェブ)の複合化層を含むことができる。なお、前記それぞれの単一層は目付けが大幅に異なることがある。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記長繊維スパンボンド不織布の製造ポリマーとしては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、これら(オレフィン、エステル、アミドまたはその他のモノマー)の共重合体及びこれらのブレンドからなる群より選ばれた熱可塑性または紡糸可能な高分子を含む。この明細書において用いられる「複合」という用語は、2以上の高分子の均質混合物または二成分繊維のように2以上の物理的に別個の高分子の非均質混合物を含む。好ましくは、前記二成分繊維は、ポリエチレン、ポリプロピレン、例えば、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体及びポリエチレン/ポリプロピレンを含むこれらの共重合体及びこれらのブレンドからなる群であり、本発明の「芯鞘型」とは、2成分から構成された複合スパンボンド長繊維不織布を言うものである。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記スパンボンドを構成するものであって、高融点重合体としては230℃におけるメルトインデックス(MI)が30〜60g/10分であるポリプロピレン樹脂を溶融したものを用い、低融点重合体としては190℃におけるメルトインデックス(MI)が25〜35g/10分であり、密度が0.9515〜0.9565である高密度ポリエチレン(HDPE)を用いて繊維の形状を芯鞘型に形成した。
【0023】
上述したように、本発明の二成分の重合体は高融点重合体及び低融点重合体に大別できるが、高融点重合体とは、長繊維の他の成分の重合体よりも融点が5℃以上、好ましくは、10℃以上高い融点を有するものをいい、本発明において高融点重合体としてはポリプロピレン樹脂が用いられるが、その理由は、柔軟でありながらも優れた強度を有するためである。この樹脂は、プロピレンから誘導される構成単位90モル%以上、好ましくは、95モル%以上を含有する重合体である。本発明において、プロピレン重合体として、前記プロピレン単独重合体、ランダム共重合体、またはブロック共重合体を単独または2以上組み合わせて使用することができる。本発明において、低融点重合体としては、前記ポリプロピレンの他に、ポリエチレン、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中間密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)などを挙げることができる。低融点重合体成分に適したポリオレフィン重合体は選択されたオレフィン重合体が、好ましくは、前記溶融温度差の範囲によって高融点成分重合体よりも低い低融点を有するものであれば選択可能であり、好ましくは、商業的に入手しやすいことからポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらのブレンド共重合体を挙げることができる。
【0024】
本発明において、複合スパンボンド長繊維の構造形態は、高融点重合体を中心として低融点重合体が繊維の長手方向に取り込まれてなる芯鞘型、側対側型、または海島状に区分することができる。
【0025】
また、本発明において、複合長繊維の高融点重合体と低融点重合体との構成比は繊維の総重量を基準として90/10〜10/90であり、優れた肌触りを示すためにシース型である低融点重合体が30〜50であり、優れた強度のためにコア型である高融点重合体が50〜70である。一般的に、複合長繊維スパンボンド不織布は成分重合体を溶融して製造する。図1に示すように、成分重合体は、個別の押出機1、2においてそれぞれ溶融されたポリマーを混練して製造される。溶融された成分重合体は個別の押出機1、2からダイに搬送され、分配板4において繊維の形態が芯鞘型である場合に高融点重合体は7の位置に、低融点重合体は6の位置に導かれて、ここで下部に集まってノズル孔5を介して紡糸される。このように、本発明においては、繊維の形態に応じて分配板が異なってくるため、容易に繊維の形態を芯鞘型、側対側に形成することが可能になる。
【0026】
このようにして紡糸されたフィラメントは蜂の巣状のチャンバーを介して噴射される冷却空気により固化され、上部から吹き付ける空気とコンベヤベルトの下部において吸入する空気の圧力により延伸され、コンベヤベルト上に所定の重量にて積層されてウェブが形成される。
【0027】
メルトブロー不織布の製造方法は、本発明が属する技術分野において通常的に用いられる公知の方法により、メルトインデックス(MI)が800〜1300g/10分であるポリプロピレン樹脂を溶融し、多数のオリフィスから紡糸するときに口金の両側から強い熱風を吹き付けて極細糸を製造した。このとき、スパンボンド層とメルトブロー層との接着強度を低下させないためには、メルトブロー不織布の目付けは0.3〜2g/m2であることが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜1.5g/m2である。メルトブロー不織布の目付けが0.3g/m2未満であれば、組織が緻密ではないため液体を遮断することができず、2g/m2を超えると組織が緻密化して合成樹脂透過の遮断に効果的であるが、ソフトな肌触りを示さないという問題点を発生させる。
【0028】
本発明において、複合スパンボンド長繊維不織布のデニールは5.0d以下、好ましくは、3.0d以下、さらに好ましくは、2.0d以下である。その理由は、このような繊度であれば、不織布が柔軟性を有することが可能になるためである。なお、メルトブロー不織布を構成する繊維は1〜5μmの繊維径を有する。その理由は、繊維径が大きいと強度及び肌触りが低下するという欠点があるためである。
【0029】
基本的な多層構造不織布は連続的に駆動されるコンベヤベルト上にスパンボンド不織布層が積層され、スパンボンド不織布層の上にメルトブロー不織布層が積層され、最終的にスパンボンド不織布層が積層される。このようにして積層された不織布は力学的特性及び形態安定性を付与するために熱的に結合される。換言すると、熱カレンダーロールを介して熱と圧力を付与されて熱粘着され、且つ、シート化される。このとき、カレンダーロールの構成は接着面積を限定するものではないが、一方の面は通常的に10〜20%の接着面積を有するエンボスロール面、他方の面は表面が滑らかなロールから構成され、このときの熱的温度は120℃〜160℃であることが好ましく、さらに好ましくは、130℃〜150℃である。
【0030】
本発明の好ましい実施形態により、上述したように熱的ボンディングが終わった不織布シートは熱風吸引式ドラム方式により熱処理が施される過程を経るが、このような熱処理によりスパンボンド層内に分散されたメルトブロー層とスパンボンド不織布フィラメントのシース型をなしている低融点重合体が熱的にセッティングされて低融点重合体の固有の物性である柔らかな肌触りは維持しながら、機械的物性に優れた複合スパンボンド長繊維多層不織布を得ることができる。このときの熱風の温度は70℃〜120℃であることが好ましく、さらに好ましくは、80℃〜110℃である。熱風の温度が80℃以下においてはメルトブロー層とスパンボンド不織布フィラメントの低融点重合体の熱的セッティング効果がなくて伸度の増加が抑制される効果があまり得られず、熱風の温度が110℃以上であればソフトな肌触りを毀損する恐れがあるため好ましくない。
【0031】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制限されるものではない。
【0032】
実施例 1
高融点重合体としては230℃におけるメルトインデックス(MI)が30〜60g/10分であるポリプロピレン樹脂を溶融したものを用い、低融点重合体としては190℃におけるメルトインデックス(MI)が25〜35g/10分であり、且つ、密度が0.9515〜0.9565である高密度ポリエチレン(HDPE)を用いて芯鞘型複合溶融紡糸を行って、鞘部が高密度ポリエチレン(HDPE)であり、芯部がポリプロピレン樹脂であり、芯部と鞘部との重量比が60/40であるスパンボンド不織布を最表層とし、メルトブロー不織布の目付けを0.8gsm/m2とするスパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド層をコンベヤベルト上に積層した後に、熱圧着後温度が100℃である60%の熱風吸引式ドラム方式により熱処理して目付けが15g/m2である不織布を得た。
【0033】
実施例 2
高融点重合体としては230℃におけるメルトインデックス(MI)が30〜60g/10分であるポリプロピレン樹脂を溶融したものを用い、低融点重合体としては190℃におけるメルトインデックス(MI)が25〜35g/10分であり、且つ、密度が0.9515〜0.9565である高密度ポリエチレン(HDPE)を用いて芯鞘型複合溶融紡糸を行って、鞘部が高密度ポリエチレン(HDPE)であり、芯部がポリプロピレン樹脂であり、芯部と鞘部との重量比が60/40であるスパンボンド不織布を最表層とし、メルトブロー不織布の目付けを1.2g/m2とするスパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド層をコンベヤベルト上に積層した後に、熱圧着後温度が100℃である60%の熱風吸引式ドラム方式により熱処理して目付けが15g/m2である不織布を得た。
【0034】
実施例 3
高融点重合体としては230℃におけるメルトインデックス(MI)が30〜60g/10分であるポリプロピレン樹脂を溶融したものを用い、低融点重合体としては190℃におけるメルトインデックス(MI)が25〜35g/10分であり、且つ、密度が0.9515〜0.9565である高密度ポリエチレン(HDPE)を用いて芯鞘型複合溶融紡糸を行って、鞘部が高密度ポリエチレン(HDPE)であり、芯部がポリプロピレン樹脂であり、芯部と鞘部との重量比が60/40であるスパンボンド不織布を最表層とし、メルトブロー不織布の目付けを1.5g/m2とするスパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド層をコンベヤベルト上に積層した後に、熱圧着後温度が100℃である60%の熱風吸引式ドラム方式により熱処理して目付けが15g/m2である不織布を得た。
【0035】
実施例 4
高融点重合体としては230℃におけるメルトインデックス(MI)が30〜60g/10分であるポリプロピレン樹脂を溶融したものを用い、低融点重合体としては190℃におけるメルトインデックス(MI)が25〜35g/10分であり、且つ、密度が0.9515〜0.9565である高密度ポリエチレン(HDPE)を用いて芯鞘型複合溶融紡糸を行って、鞘部が高密度ポリエチレン(HDPE)であり、芯部がポリプロピレン樹脂であり、芯部と鞘部との重量比が60/40であるスパンボンド不織布を最表層とし、メルトブロー不織布の目付けを1.8g/m2とするスパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド層をコンベヤベルト上に積層した後に、熱圧着後温度が100℃である60%の熱風吸引式ドラム方式により熱処理して目付けが15g/m2である不織布を得た。
【0036】
比較例 1
熱風吸引式ドラム方式により熱処理を施さない以外は、実施例1の方法と同様にして目付けが15g/m2である不織布を得た。
【0037】
比較例 2
熱風吸引式ドラム方式により熱処理を施さない以外は、実施例2の方法と同様にして目付けが15g/m2である不織布を得た。
【0038】
比較例 3
熱風吸引式ドラム方式により熱処理を施さない以外は、実施例3の方法と同様にして目付けが15g/m2である不織布を得た。
【0039】
比較例 4
熱風吸引式ドラム方式により熱処理を施さない以外は、実施例4の方法と同様にして目付けが15g/m2である不織布を得た。
【0040】
実験例
上述した各実施例及び比較例に基づいて製造されたスパンボンド長繊維不織布に対する各種の特性値の測定及び評価は下記の方法により実施し、その結果を下記表1に示す。
【0041】
(1)引張り強伸度
インストロン社製の引張り強伸度測定設備を用い、ヨーロッパ不織布産業協会(EDANA)20.2−89法により、試験片のサイズを5cm(幅)×20cm(長)として引張り速度が500m/minの条件下で測定した。
【0042】
(2)耐水圧
FX−3000試験機を用い、DIN53,886方法により農業用不織布を対象として耐水圧を測定した。
【0043】
(3)剛軟度
曲げ長さ測定機を用い、WSP90.5不織布曲げ長さの測定方法により剛軟度を測定した。
【0044】

【表1】

【符号の説明】
【0045】
1、2…押出機
4…分配管
5…ノズル孔
6、7…重合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンボンド不織布を最表層とし、内層は少なくとも1層のメルトブロー不織布層を有し、必要に応じて、少なくとも1層以上のスパンボンド不織布層及びメルトブロー不織布層がさらに積層されてなるスパンボンド多層不織布の製造方法において、
前記最表層をなすスパンボンド不織布層は低融点重合体が高融点重合体を繊維の長手方向に取り囲む芯鞘型長繊維から構成し、
前記芯鞘型長繊維から構成されたスパンボンド不織布層の間にメルトブロー不織布層を形成し、連続するベルト上に積層してウェブを形成し、熱圧着可能なカレンダーにより熱溶着(ボンディング)してシート状に製造した後に吸引ドラムにより熱処理して製造することを特徴とする、改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布の製造方法。
【請求項2】
前記吸引式ドラムにより熱処理する工程における熱処理温度は80〜110℃であることを特徴とする請求項1に記載の複合スパンボンド長繊維多層不織布の製造方法。
【請求項3】
前記最表層のスパンボンド長繊維不織布層を構成する高融点重合体としては230℃におけるメルトインデックス(MI)が30〜60g/10分であるポリプロピレン樹脂を溶融したものを用い、低融点重合体としては190℃におけるメルトインデックス(MI)が25〜35g/10分であり、且つ、密度が0.9515〜0.9565である高密度ポリエチレン(HDPE)を用いることを特徴とする請求項1に記載の複合スパンボンド長繊維多層不織布の製造方法。
【請求項4】
前記芯鞘型スパンボンド長繊維不織布層は、鞘部が高密度ポリエチレン(HDPE)であり、芯部がポリプロピレン樹脂であり、これらの芯部と鞘部との重量比が50〜50ないし70〜30になるように複合溶融紡糸して製造される複合フィラメントからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の複合スパンボンド長繊維多層不織布の製造方法。
【請求項5】
前記スパンボンド不織布層の間にメルトブロー不織布層を形成する不織布の目付けは0.5〜2.0g/m2であることを特徴とする請求項1に記載の複合スパンボンド長繊維多層不織布の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至 5のいずれか一項に記載の方法により製造されたものであることを特徴とする、改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布。
【請求項7】
使い捨ておむつ、生理用ナプキンの立体ギャザー、バックシート及び親水加工されたトップシートなどの用途に用いられるものであることを特徴とする、請求項2に記載の改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布。

【図1】
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【公開番号】特開2011−47098(P2011−47098A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67576(P2010−67576)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(504244069)トーレ セハン インク (7)
【Fターム(参考)】