説明

改善された粒子内及び粒子間の架橋を有する浸漬成形合成ポリイソプレンラテックス物品

合成ポリイソプレンラテックスエマルジョンは、前加硫組成物及び後加硫組成物を有する。前加硫組成物は、ジチオカルバミン酸亜鉛により触媒的に破壊される高S8環構造を有する可溶性硫黄を含む。このラテックスエマルジョンは、後加硫硬化サイクルの間に粒子間領域を架橋する促進剤を有する後加硫組成物を有する。このフィルムは、高い引張強度、引張弾性率、引裂強度、破裂圧及び破裂容量を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ラテックスエマルジョンから薄肉ラテックス物品に浸漬成形される合成ラテックスの、制御された前加硫粒子を用いて改善された粒子間及び粒子内結合を有する合成ポリイソプレン物品を製造すること及びそのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンドーム及び手袋は通常、加硫天然ゴムからできている。天然ゴムは、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)の木によりラテックス形態で産出され、独特の特性を有する。これらの特性は、天然ゴムを特にバリア防護製品の調製にとって有用にする。天然ゴムの独特の特性の中に、その高いレベルの立体規則性があり、構成されるそのポリマーが、シス−1,4イソプレン単位からほとんど排他的になる分子鎖であることを意味する。天然ゴムラテックスは、高分子量及び広い分子量分布を有する高度に分岐したポリマーでもある。ベースラテックスのこれらの特性は、強度及び弾性の独特の組合せを有する加硫ゴムフィルム製品をもたらす。しかし、天然ポリイソプレンは、一部の感受性個人に皮膚アレルギー反応を生じることが示されたタンパク質も含む。
【0003】
合成ポリイソプレンは、天然ゴムの利点を有する材料を提供し、タンパク質アレルギーの可能性をなくすために開発されてきた。しかし、天然ゴムの真の代替品の開発は、困難であることがわかってきて、アニオン付加重合によるKraton Inc.により製造されたものなどの合成変形物は通常、より低いレベルの立体規則性(すなわち、90%未満のシス1,4イソプレン)及び低下した分子量の特性を有する。この分子特性は、その結果として、加硫天然ゴムフィルムのものと比較して劣った特性バランスを有する合成ポリイソプレンフィルムをもたらした。したがって、架橋剤の添加は、後加硫の間に、より多くの粒子間架橋及びより少ない粒子内架橋を生じる傾向があり、粒子間領域における裂け目の形成による空隙及び亀裂などの、不十分な強度及び伸び特性を有するラテックスフィルム物品の原因となる不均一硬化特性をもたらす。さらに、合成ポリイソプレンラテックスはより容易にフロック化し、浸漬フィルムに欠陥を生じ、ラテックス浸漬槽は、浸漬させる物品に利用可能な寿命が非常に限られる。したがって、合成ポリイソプレンフィルムがより良く架橋して、天然ゴムの分岐ポリマー構造を模倣して、改善された特性を得ることが不可欠である。
【0004】
浸漬成型工程において、合成又は天然ポリイソプレンに関する研究の多くは、凝固浸漬工程を用いる、ポリイソプレン手袋の開発に集中してきた。この種の工程において、手袋形の型は、最初に、ラテックス処方を不安定化させることが知られている凝固剤溶液中に浸漬される。次いで、得られた凝固剤層を乾燥させ、その後、その型は、配合ラテックス処方の浴中に浸漬され、凝固湿潤ラテックスゲルを形成する。この凝固湿潤ラテックスゲルは通常、水中で浸出させて、残存界面活性剤を除去し、その後、比較的高温で乾燥させ、ゴムフィルムの架橋を完結させる。凝固剤層の使用は、薄いラテックス層を生じる能力を妨げるので、コンドームの製造で望ましくなく、したがって、コンドームは凝固剤を含まないフォーマー上に浸漬させる。
【0005】
ゴム物品の製造における加硫剤又は硫黄架橋剤の使用は、よく知られている。硫黄架橋剤の有効性は、ジチオカルバミン酸塩、チアゾール、グアニジン、チオ尿素、アミン、ジスルフィド、チウラム、キサンテート及びスルホンアミドを含む従来の促進剤によって改善される。ポリイソプレンゴムの製造における加硫剤の使用は、D’Sidockyら、米国特許第5,744,552号及びRauchfussら、米国特許第6,114,469号に開示されている。
【0006】
Hiraiらに付与された米国特許第3,971,746号には、水と一緒に4〜20重量%のベンゼン、トルエン又はキシレンを含む有機溶媒中ポリイソプレンゴムの溶液を乳化させることによって生成された合成ポリイソプレンゴムラテックスが開示されている。浸漬後に、溶媒は、得られた水中油型エマルジョンから蒸発させることにより除去される。
【0007】
Stevensonに付与された米国特許第4,695,609号には、ゴム100重量部当たり、キサントゲンポリスルフィド及びキサンテート化合物のニトロソ化可能物質0.4重量部未満を含む加硫可能ゴム組成物が開示されている。このゴム組成物は、ジヒドロカルビルキサントゲンポリスルフィド、並びに金属ヒドロカルビルキサンテート及びジヒドロカルビルキサンテートから選択されるキサンテートを含む。市販の水性ラテックス組成物が実施例9A〜実施例Eで検討されているが、この水性ラテックス組成物は合成ポリイソプレンを含まない。さらに、この水性ラテックスエマルジョン9Eは、硫黄、酸化亜鉛及びジエチルジチオカルバミン酸亜鉛を含み、4日間しか安定でなく、わずか22.4MPaの破壊時引張強度、及び830%の伸びを有する製品を製造しかねない。
【0008】
Stevensonに付与された米国特許第5,254,635号には、ジベンジルチウラムスルフィドを含むゴム組成物が開示されている。テトラベンジルチウラムジスルフィドなどのジベンジルチウラムスルフィドは、ジヒドロカルビルキサントゲンポリスルフィド及び/又はキサンテートと混合されて、有害なニトロソ化可能物をもたらすことなしに120〜180℃で天然ゴムを架橋する組成物をもたらす。しかし、この天然ラテックス組成物は、硫黄を含まず、低レベルの立体規則性を有する合成シス−1,4−ポリイソプレンの粒子内領域を架橋しない。したがって、合成ポリイソプレンラテックスのためのこの架橋剤パッケージの使用は、より劣った特性を有する非均一物品をもたらす。
【0009】
Munnらに付与された米国特許第6,221,447号には、熱をかけると第2の形及び寸法からそれらの元の形及び寸法に収縮する低アレルギー性ゴム製品の調製が開示されている。この実施例はポリイソプレンコンドームを含むが、これは、使用中に個々の使用者に適合するように収縮する。このコンドームを製造するために用いられる硬化パッケージは、過酸化物及び/又は硫黄などの剤からなる。
【0010】
Crepeauらに付与された米国特許第6,391,326号には、安定なエマルジョン、調製方法、及び例えばエラストマーフィルムの成形におけるなどの利用が開示される。エラストマーフィルムを調製するための安定なエマルジョンは、(1)有機非極性又は弱極性溶媒中に溶解させたエラストマーを含む相A、(2)(相Aに分散される)相Aと不混和性である、溶液中ポリマー又は極性溶媒中に分散させたポリマーを含む相B、並びに(3)ブロックポリマー及びグラフトポリマーからなる群から選択される分散剤を含む。直径10μを有する相Bの液滴が、相A中で生じる。Crepeauらは、合成ポリイソプレンラテックスエマルジョンを「フロック」形成に対して安定化させる方法を教示又は示唆していない。
【0011】
Saksらに付与された米国特許第6,618,861号には、時計が見える機能を有する医療用手袋が開示されている。この特許には、0.2百分率(「phr」)のテトラメチルチウラムジスルフィド(「TMTD」)、0.2phrの亜鉛2−メルカプトベンゾチアゾール(「ZMBT」)、0.2phrの亜鉛ジブチルジチオカルバミン酸(「ZDBC」)、0.2phrの1,3−ジフェニル−2−チオ尿素及び0.2phrのジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(「ZDEC」)からなる促進剤系を含むポリイソプレンラテックス化合物が開示される。しかし、硬化後に、この促進剤系は、約1,900psiの引張強度しか有さない製品をもたらす。
【0012】
Dzikowiczに付与された米国特許第6,653,380号及び米国特許第7,048,977号には、改善された引裂抵抗を有するラテックスフィルムコンパウンドが開示される。この方法は、ラテックスコンパウンドに酸化防止剤とともに酸化防止剤共力剤を添加することによって、ラテックス製品の引裂抵抗、引張強度、及び老化特性を向上させる。このラテックスコンパウンドは、ポリマー、安定化系、フィルム表面調整剤、並びに活性化剤、架橋剤及び促進剤を含む硬化系を含む。酸化防止剤共力剤には、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、2−メルカプトトルイミダゾール(MTI)、亜鉛2−メルカプトベンズイミダゾール(ZMBI)及び亜鉛2−メルカプトトルイミダゾール(ZMTI)が含まれる。成形されたラテックス製品は、手袋であり得るが、糸、バルーン及び他のラテックス関連製品も含み得る。用いられたラテックスは合成ポリイソプレンではなく、酸化防止剤の添加は、合成ポリイソプレンラテックスを前加硫しない。
【0013】
Wangらに付与された米国特許第6,828,387号には、ポリイソプレン物品及びその製造方法が開示されている。この方法では、天然ゴムラテックスを用いる溶剤系プロセスと同様の引張強度を示す合成ポリイソプレン物品が製造される。この方法では、合成ラテックスと、硫黄、酸化亜鉛、並びにジチオカルバミン酸塩、チアゾール、及びグアニジン化合物を含む促進剤組成物とが混合され、これらの3種全てが、前硬化段階で存在することが必要である。好ましい実施形態では、この促進剤組成物は、カゼイン酸ナトリウムなどの主に乳タンパク質塩である安定剤と併せて、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、亜鉛2−メルカプトベンゾチアゾール(ZMBT)、及びジフェニルグアニジン(DPG)を含む。ポリイソプレンラテックス(通常60%固形物)及び安定剤(例えば、カゼイン酸ナトリウム)を周囲温度(約20〜25℃)で混合させる。一定時間混合後に、この混合物を水中40%固形物に希釈する。次いで、Wingstay Lが添加され、この混合物は約15分間撹拌される。この時点で、pHは、約8.5〜9.0の範囲に調整され得る。酸化亜鉛、その後、硫黄及び促進剤化合物が添加される。この方法により製造されたエラストマー性ポリイソプレン製品は、凝固剤被覆フォーマー上に浸漬された外科医用手袋である。この水性ラテックスエマルジョンは、最大8日間の安定性を有して安定である。得られた手術用手袋製品の引張強度は、約3,000psi(20.6MPa)である(ASTM D412に準拠)。この促進剤は、ラテックスエマルジョンに添加されるが、8日間まで低温度で維持される。ジチオカルバミン酸塩、チアゾール及びグアニジンの促進剤は、ラテックス中に一緒に存在させなければならない。ラテックス安定剤は、カゼイン酸ナトリウムである。この水性ラテックス組成物の安定性は、Stevenson(米国特許第4,695,609号)のものより良好である。手袋フォーマーは、合成ポリイソプレンラテックスコンドームの、凝固剤を含まない浸漬に適さない硝酸カルシウムを含む凝固剤溶液に浸漬される。
【0014】
Dzikowiczに付与された米国特許第7,041,746号には、合成ポリイソプレンラテックスのための促進剤系が開示されている。この促進剤系は、ジチオカルバミン酸塩及びチオ尿素を含み、低い硬化温度で約3,000psi〜約5,000psiの引張強度を有する合成ポリイソプレンフィルムを生成し得る。この促進剤系は、テトラメチルチウラムジスルフィド又はジフェニルグアニジン又はジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDBC)、又はジイソプロピルキサントゲンポリスルフィド(DXP)を含まないが、チオ尿素を含む。この促進剤は、合成ポリイソプレン粒子を前加硫するように示されておらず、製造されたラテックス物品は、300%伸びで1.5MPaの非常に低い弾性率及び20.6〜34.4MPaの引張強度を有する。
【0015】
Attrillらの英国特許出願第GB2,436,566号には、ポリイソプレンラテックスの前加硫を最小化することが開示されている。このポリイソプレンラテックスを製造する方法は、合成ポリイソプレンラテックスを配合剤と混ぜ合わせ、前加硫を最小化するために低温でラテックスを熟成させることを含む。コンドームの浸漬も、通常15℃〜20℃未満の低温で行われる。製造されたリングの強度が、前加硫の不在を示す、0.1MPa未満の値を有する前加硫物の緩和弾性率を有することを確実にすることによって、前加硫の不在が確認されている。このラテックスエマルジョンはジチオカルバミン酸塩などの促進剤を含み得る。‘566号特許出願は、ラテックス物品の浸漬前の前加硫から離れて教示する。
【0016】
したがって、凝集又はフロック化せず、使用可能なエマルジョン寿命を実現する安定な合成ポリイソプレンラテックスエマルジョン組成物に対するニーズがある。この組成物は、最終製品において実質的な粒子内及び粒子間の架橋を達成しなくてはならない。このような組成物は、凝集剤の不存在下で物品の浸漬成形を可能にし、その結果、強化された強度及び改善された伸張性とともに、より薄い、連続的な、欠陥のない層を有する物品を得ることができる。このような物品は、劣化せず、長期にわたって物理的完全性を維持する。本発明の目的は、このような組成物に加えて、物品を浸漬成形するためのこのような組成物を調製及び使用する方法、並びにそのように製造された物品を提供することである。これら並びに他の目的及び利点、並びにさらなる発明の特徴は、本明細書で示される詳細な説明から明らかになろう。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、凝固剤を全く使用することなく、コンドーム成形フォーマーを前加硫合成ラテックスエマルジョンに浸漬し、このように製造されたコンドームを硬化させることによって成形されるラテックス物品を提供する。合成ポリイソプレンラテックスは、Kratonから入手でき、これは、高シス−1,4含有量を有してアニオン重合によって製造される。ラテックスエマルジョン中の合成ラテックス粒子は、ラテックス粒子のすきま内の硫黄の取り込みによって前加硫される。この合成ラテックス粒子内の硫黄の取り込みは、1)高含有量のS環構造の可溶性硫黄を有する硫黄エマルジョンを用いること、2)前記環構造がジチオカルバミン酸亜鉛の触媒活性で分断又は破壊されて、ラテックスエマルジョン中の合成ポリイソプレンの粒子中への容易な移動に適合した、ラテックスエマルジョン中の線状硫黄鎖をもたらすこと、3)カプリル酸カリウム界面活性剤及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)界面活性剤を用いて、ラテックスエマルジョン中の合成ポリイソプレンの粒子を湿潤させ、それにより、硫黄捕捉ジチオカルバミン酸亜鉛と一緒の硫黄鎖が前記粒子中への浸透に利用可能になること、4)20℃〜30℃の範囲の選択されたプロセス温度で十分な時間、前記合成ポリイソプレン粒子中に硫黄を漸進的に浸透させること、5)合成ポリイソプレン粒子がもはやあまり粘着性ではないが、イソプロパノール指数3のより小さい粘着度を示すイソプロパノール指数試験によって硫黄浸透及び前加硫を確認することによって得られる。ジチオカルバミン酸亜鉛は、ジチオカルバミン酸塩の亜鉛錯体であり、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛を含む。さらに、合成ポリイソプレンラテックスエマルジョンは、加硫又は硬化サイクルの間に粒子間領域を硬化させるための他の架橋剤、例えば、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDBC)、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲン、テトラエチルチウラムジスルフィド、キサントゲンスルフィドなどを有する。ラテックスエマルジョンに添加された硫黄中に存在する無定形硫黄又は多硫黄などの不溶性硫黄は、後加硫硬化温度で可溶性になり、ジチオカルバミン酸亜鉛促進剤と反応して、粒子間領域を硬化させる。後加硫硬化の間に、浸透した硫黄と一緒の前加硫合成ポリイソプレン粒子も、粒子内領域で完全に硬化する。したがって、前加硫促進剤パッケージ及び後加硫促進剤パッケージを用いるこの方法論を用いて、実質的に均一な硬化合成ラテックスコンドームフィルムが製造される。
【0018】
このように製造された製品は、この前加硫及び後加硫の方法論の印を有するいくつかの際立った特徴を有する。ラテックスの合成ポリイソプレン薄肉フィルムは改善された架橋密度で硬化されるので、架橋間の分子量はより低い値を示す。ジチオカルバミン酸塩の亜鉛錯体は、硫黄のS環を触媒的に破壊するので、触媒として、その後の使用に利用でき、その大きな分子サイズのために合成ポリイソプレンに容易に浸透しない。ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛の分子サイズは、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛のものより大きく、これは、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛より大きい分子サイズを有する。ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛及びジフェニルジチオカルバミン酸亜鉛は、さらにより大きい分子であり、合成ポリイソプレンラテックス粒子中への浸透に抵抗する。したがって、ラテックスエマルジョン中の合成ラテックス粒子の前加硫の好ましいジチオカルバミン酸塩の亜鉛錯体は、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)又はジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)である。亜鉛含有化合物が蓄積し、これは、それぞれの元の合成ポリイソプレン粒子を囲み、この微細構造の特徴は、電子顕微鏡を用いるマイクロプローブ元素分析によって容易に観察できる。製造された合成ポリイソプレンフィルムは通常、破壊時に高い引張強度、高い引張弾性率及び伸びを有し、この破壊前面部は、粒子間及び粒子内領域の両方を通っており、粒子内領域及び粒子間領域が、製造された合成ラテックスフィルム内で実質的に同じ強度であることを示す。
【0019】
合成ポリイソプレン製品を製造する方法は、安定剤、pH調節剤、酸化防止剤、保存剤などを含む従来のラテックスエマルジョン添加物と一緒に前加硫組成物及び後加硫組成物を含む合成ラテックスエマルジョンの使用を含む。好ましくは、合成ポリイソプレン粒子は、シス−1,4−ポリイソプレンであり、約0.2〜2マイクロメートルの範囲の直径を有し、ラテックスエマルジョンの水性媒体中で維持される。クラトン(Kraton)(登録商標)「IR−KP401A」ラテックスは、Kraton Polymers Group,15710John F.Kennedy Blvd.,Suite 300,Houston,TX77032によって供給されており、これらの特性を有する。前加硫組成物は、通常S環構造からなる、高い可溶性硫黄含有量の硫黄、S硫黄環構造を破壊又は分断し得るジチオカルバミン酸亜鉛促進剤、オクタン酸のカリウム塩としても知られているカプリル酸カリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)などの界面活性剤の組合せを有する。「高可溶性硫黄含有量」という言及は、コンドーム及び/又は手袋などの商業的に受け入れることができる物品を得るために、水性ラテックスエマルジョン中のラテックス粒子中に浸透し、硬化の間に架橋するように、十分に生じるべく存在する十分な可溶性硫黄を有することを意味する。ラテックスエマルジョン中の合成ラテックス粒子の前加硫は、一般に20℃〜30℃の範囲であるラテックスエマルジョンの温度に依存して、9時間〜2日間の期間にわたって起きる。合成ラテックス粒子の前加硫の度合いは、イソプロパノール指数試験によりモニターされ、ラテックス粒子は、前加硫性硫黄が粒子内に取り込まれるにつれて、非常に粘着性の感触(指数約1.0)からより小さい度合いの粘着性の感触(指数3)に進行する。後加硫組成物は、無定形又は多硫黄を含み、これはラテックスエマルジョン温度で不溶性であるが、加硫又は硬化温度で可溶性である。合成水性ラテックスエマルジョン中の他の促進剤には、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDBC)、チウラム化合物及びジイソプロピルキサントゲンポリスルフィド(DXP)が含まれるが、これらに限定されない。酸化亜鉛も活性化剤として添加され得る。
【0020】
典型的な合成ポリイソプレンラテックスエマルジョン組成物は、乾燥ゴムの100重量部(phr)で与えられる。前加硫組成物は、0.6〜1.8重量%の範囲で硫黄を含み、促進剤パッケージは、反応性酸化亜鉛活性化剤と一緒に、ZDEC及び/又はZDBC促進剤、SDBC促進剤、DXP促進剤を含み、0.6重量%〜2.5重量%の総促進剤含有量で用いられる。界面活性剤パッケージは、カプリル酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びポリオキシエチレンセチル/ステアリルエーテルを含み、界面活性剤は0.3〜1.5重量%の範囲であり、Winsgtay L、すなわちp−クレゾール及びジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物の酸化防止剤保存剤は、0.3〜1重量%の範囲であり、水酸化アンモニウムは、0〜0.36重量%の範囲である。先に示されたように、合成ポリイソプレンラテックス組成物の前加硫組成物は、可溶性硫黄、ZDEC及び/又はZDBC促進剤、カプリル酸カリウム界面活性剤及びSDBS界面活性剤並びにポリオキシエチレンセチル/ステアリルエーテル界面活性剤を含む。後加硫組成物は、特に不溶性である硫黄、SDBC促進剤、DXP促進剤、ZDEC及び/又はZDBCを含む。前加硫組成物は、水性合成ポリイソプレンエマルジョン中の合成ポリイソプレンラテックス粒子へ硫黄の利用性をもたらし、粒子内領域を前加硫し、合成ポリイソプレンの粒子全体は、加硫硬化サイクルの間に架橋される。後加硫組成物は、合成ポリイソプレンの粒子間の領域すなわち粒子間領域を架橋する能力をもたらし、それにより、高い品質の実質的に均一に硬化した合成ポリイソプレン製品を保証する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によって調製された前加硫及び後加硫合成ポリイソプレンラテックスフィルムの中間部分の透過型電子顕微鏡写真であり、10は、ポリイソプレン粒子の均一に分布し、架橋した網状組織を示し、11は、均一に分布された架橋も証明する粒子間領域を示し、13は、顕微鏡写真の調製においてフィルムを膨潤させるために用いられるポリスチレンの残片を示す。
【図2】液体窒素中で凍結され、そして切断された合成ポリイソプレンコンドームの断面の走査型電子顕微鏡写真である。試料をイリジウムの薄膜で被覆し、電子ビームによる絶縁性ラテックスゴムコンドームの帯電を防止した。液体窒素の低温のために、合成ポリイソプレンコンドーム材料は、脆性固体として挙動し、X1−X1及びX2−X2に沿った貝殻状又は貝様破面を示した。この破面には目に見える粒子は全く存在せず、粒子内領域及び粒子間領域での破壊強度は、まさに同程度であり、したがって、破面は、どこでもほぼ等方性であった。寸法マーカーは、長さ20ミクロンであるように調整されている線を示す。
【図3】図2に示された試料中に存在する化学元素のx線地図である。これは、炭素に加えて、Zn、S及びIrの1本以上のx線ピークを示す。
【図4】(A)は、3つの写真画像の組である。第1の画像は、X1の上側のマーキングに近い選択位置における図2で示された断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。同じ領域における亜鉛のx線地図の画像及び硫黄x線地図の画像も示す。一般に、作成後に、亜鉛及び硫黄のx線地図は通常、黒色背景写真であり、試料から放出された亜鉛又は硫黄のx線ビームは、一連の白色ドットをもたらすことが認められる。しかし、(A)の亜鉛地図及び硫黄地図の画像は、明確にするために対照的に反転させた。P1と印された選択領域は、3つの画像全てで示される。亜鉛x線地図で見られるように、領域P1は、領域を規定する一連の亜鉛黒色ドットを包含し、亜鉛の黒色ドットはこの領域内に全くない。対応する硫黄x線地図は、複数の硫黄黒色ドットを示す。この画像から、これは、ポリイソプレンラテックスエマルジョン中のポリイソプレン粒子の単粒であったことが結論される。硫黄x線地図で見られるように、前加硫段階の間に、硫黄分子がZDBCで触媒され、硫黄をポリイソプレン粒子に入らせることを可能にさせることも結論される。一方、亜鉛は、亜鉛x線地図で見られるように、ポリイソプレン粒子の外側を修飾するZDBCの大きな分子サイズのために後に残った。(B)は、明確にするために拡大された領域P1における亜鉛及び硫黄のx線地図を示し、ここで、亜鉛の黒色ドット及び硫黄の黒色ドットは、明らかに目に見える。領域P1におけるポリイソプレン粒子は、4ミクロンの近似的寸法を有する。
【図5】高圧窒素を吹き込み、最終的に破裂するバルーンを形成させることによって破裂されたコンドームの破面の走査型電子顕微鏡写真である。この試験は室温で行った。試料をイリジウムの薄膜で被覆し、電子ビームによる絶縁性ラテックスゴムコンドームの帯電を防止した。この図で示されるとおりの破面は、まさに平面である破面を示し、粒子内又は粒子間の領域を示す特徴は全くなかった。このポリイソプレン粒子内及びポリイソプレン粒子間の特徴の不在は、破面が粒子内領域又は粒子間領域に対して優先なしに伝播したことを意味し、粒子間及び粒子内の領域の両方が、ほぼ等しい強度であり、ほぼ等しく架橋されたことを示した。弾性固体として室温で破壊されたラテックスコンドームは、平面の破面を示し、貝殻状又は貝様の破面は示さなかった。この破面において目に見える粒子は全く存在せず、粒子内領域及び粒子間領域での破壊強度がまさにほぼ同じであり、したがって、破面はどこでもほぼ等方性であることを示した。寸法マーカーは、長さ20ミクロンであるように調整されている線を示す。
【図6】図5に示された試料中に存在する化学元素のx線地図である。これは、炭素に加えて、Zn、S及びIrの1本又は複数のx線ピークを示す。
【図7】(A)は3つの写真画像の組である。第1の画像は、図5の中心の位置に近い円形の特徴に近い選択位置での破壊の走査型電子顕微鏡写真を示す。同じ領域の亜鉛のx線地図の画像及び硫黄のx線地図の画像も示す。一般に、作成後に、亜鉛及び硫黄のx線地図は通常、黒色の背景写真であり、試料から放出される亜鉛又は硫黄のx線ビームは一連の白色ドットをもたらすことが認められる。しかし、(A)の亜鉛地図及び硫黄地図は、明確にするために対照的に反転させた。P2と印された選択領域は3つの画像全てに示される。亜鉛x線地図で見られるように、領域P2は、領域を規定する一連の亜鉛黒色ドットを包含し、領域内に亜鉛黒色ドットは含まない。対応する硫黄x線地図は、複数の硫黄黒色ドットを示す。この画像から、これは、ポリイソプレンラテックスエマルジョン中のポリイソプレン粒子の単粒であったと結論される。硫黄x線地図で見られるように、前加硫段階の間に、硫黄分子はZDBCで触媒されて、硫黄がポリイソプレン粒子に入ることを可能にさせることも結論される。一方、亜鉛は、亜鉛x線地図で見られるように、ポリイソプレン粒子の外側を修飾するZDBCの大きな分子サイズのために後に残った。(B)は明確にするために拡大された領域P2における亜鉛及び硫黄のx線地図を示し、ここで、亜鉛黒色ドット及び硫黄黒色ドットは、明らかに目に見える。領域P2におけるポリイソプレン粒子は、4ミクロンの近似的寸法を有する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、硫黄のS環などの可溶性硫黄が、カプリル酸カリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)界面活性剤と併せてジチオカルバミン酸塩の亜鉛錯体によって触媒されて、ラテックス組成物中に前加硫された合成ポリイソプレン粒子を生成するという発見に基づく。このラテックス組成物は、凝固剤被覆又は凝固剤なしのフォーマーを該組成物中に浸漬させることによってラテックスフィルム物品の製造を可能にする。界面活性剤パッケージは、合成ポリイソプレン粒子の凝集及びフロック化を阻止する。ラテックス浸漬フィルムは、架橋される合成ポリイソプレン粒子を有し、粒子間の領域が加硫硬化の間に架橋され、内−架橋及び間−架橋結合の両方を形成する。得られる物品は、高品質で、均一なラテックスフィルムを含む。
【0023】
ラテックス安定化組成物は、水性媒体中で互いに分離された合成ポリイソプレンの粒子を保持するものである。ポリイソプレン粒子は、互いに触れないので、凝集及びフロック化することができない。このことは、粒子が凝集し始めると、ファンデルワールス力のために粒子は決して分離され得ないので重要である。好ましくは、ラテックス安定化組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を含む界面活性剤パッケージを含む。アニオン性界面活性剤、特に、十分1カ月にわたる、及び最大2カ月以上の期間、安定に維持され得るものが好ましい。このような界面活性剤の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)である。他の例には、他のアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩(例えば、C14オレフィンスルホン酸塩、これは、Calsoft AOS−40(Pilot Chem.Co.,Red Bank,NJ)という商品名で販売されている)、及びアルコール硫酸塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)が含まれるが、これらに限定されない。SDBS又は他のアルキルアリールスルホン酸塩は好ましくは、ポリイソプレンの乾燥重量に基づいて約0.1〜0.35重量%の量で存在する。SDBS又は別のアルキルアリールスルホン酸塩は、1種又は複数の他の界面活性剤、例えば、カプリル酸カリウム、ポリオキシエチレンセチル/ステアリルエーテルなどと組み合わせることができる。例えば、SDBS又は別のアルキルアリールスルホン酸塩は、カプリル酸カリウム単独と、又はポリオキシエチレンセチル/ステアリルエーテルとさらに組み合わせて、組み合わせることができる。SDBS又は別のアルキルアリールスルホン酸塩が1種又は複数の他の界面活性剤と組み合わせて用いられる場合、好ましくはそれぞれの界面活性剤は、ポリイソプレンの乾燥重量に基づいて約0.05〜1.2重量%の量で存在し、界面活性剤パッケージの総量は、ポリイソプレンの乾燥重量に基づいて約0.4〜1.2重量%である。SDBS又は別のアルキルアリールスルホン酸塩がカプリル酸カリウム及びポリオキシエチレンセチル−ステアリルエーテルと組み合わせて用いられる場合、好ましくはポリオキシエチレンセチル−ステアリルエーテルは、ポリイソプレンの乾燥重量に基づいて約0.1〜0.5重量%の量で存在する。
【0024】
上記を考慮して、本発明は、イソプロパノール指数評価3.0を有する界面活性剤−安定化された、前加硫合成ポリイソプレンラテックス組成物を提供する。イソプロパノール指数試験は、等容量のラテックス及びイソプロパノールを室温で混合し、この混合物を3分間放置させることによって水性ラテックスエマルジョン中の合成ラテックス粒子の前加硫の度合いを測定する。イソプロパノールはラテックスを凝集させ、得られた稠度は数字で評価される。凝固ゴムの稠度は、ラテックスの前加硫の度合いを示す。ラテックスがより多く前加硫されるほど、凝固ゴムはその粘着性をより多く失い、より砕け易くなる。2.5の評価は、小さい塊ができることを示すが、3.0の評価は、塊が非粘着性であることを示し、3.5の評価は、塊が非粘着性であるだけでなく、塊が容易に崩壊することを示し、4.0の評価は、乾燥小片ができ、合成ラテックス粒子の高度の前加硫を証明する。前加硫はモニターして、合成ラテックスエマルジョンがポリイソプレンコンドームの浸漬に対して直ちに使用できることを保証する。
【0025】
前加硫組成物は、ジチオカルバミン酸亜鉛及び可溶性硫黄と一緒に、カプリル酸カリウム、及びSDBS又は別のアルキルアリールスルホン酸塩界面活性剤を含む。界面活性剤と一緒のラテックスエマルジョンは、合成ポリイソプレン粒子を湿潤させ、ジチオカルバミン酸亜鉛の触媒作用は、可溶性S分子の環を破壊し、可溶性硫黄の直鎖を形成し、合成ポリイソプレンの粒子を前加硫する。後加硫組成物は、硫黄、及び加硫硬化の間に粒子間架橋を引き起こす他の促進剤を有する。このような架橋は、より大きな強度及び伸び特性並びに架橋密度を有するより均一なラテックスフィルムをもたらす。
【0026】
好ましくは、前加硫組成物は、(i)ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛又はジブチルジチオカルバミン酸亜鉛促進剤及び可溶性硫黄を含む架橋パッケージ、(ii)湿潤剤を含む。前加硫の間に、ジチオカルバミン酸亜鉛促進剤の触媒作用で破壊されたその環構造を有する硫黄は、ポリイソプレン粒子に浸透し、その中にあるイソプレン二重結合と最初に相互作用する。ジチオカルバミン酸亜鉛の触媒反応性は、J.Am.Chem.Soc.、121(1)、163〜168頁、1999年に発表されたNieuwenhuizenらによる「The Mechanism of Zinc(II)−Dithiocarbamate−Accelerated Vulcanization Uncovered;Theoretical and Experimental Evidence」と表題された刊行物、及びApplied Catalysis A:General 207(2001年)55〜68頁に発表されたNieuwenhuizenによる「Zinc accelerator complexes.Versatile homogeneous catalysts in sulfur vulcanization」と表題された第2の刊行物に詳述されている。これらの2つの刊行物では、硫黄とのジチオカルバミン酸亜鉛、特にジメチルジチオカルバミン酸亜鉛の触媒作用の機構が検討されている。Akron大学の教授Gary R.Hamedにより刊行された本(この第2章は、web address files.hanser.de/hanser/docs/20040401_244515439−6683_3−446−21403−8.pdfで入手できる)では、第2.3.1.1章において、可溶性である硫黄に関して、それはS環を有さなければならないことが明確に示されている。同じ章では、ZDBCに関して、ZDBCは超速促進剤であるので、少量の硫黄しか必要としないことが示される。Zhongらによる「Effect of adding pyridine ligand on the structure and properties of complex Zn(SCNBz」と表題されたhttp://www.chemistrymag.org/cji/2007/097032pe.htmでのウェブ論文では、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛及びジピリジンジチオカルバミン酸亜鉛も、硫黄触媒活性の同様の機能性を有することが示される。
【0027】
可溶性硫黄のS環と違って、不定形又は高分子硫黄は可溶性でないことが認められる。しかし、無定形又は高分子硫黄は、ラテックス硬化温度であるか又はそれに近い120℃で可溶性になり、したがって、不溶性又は高分子硫黄は、ラテックスエマルジョン中の合成ポリイソプレン粒子の外側に残っており、粒子間領域の架橋を容易にする。本発明の実施形態によれば、硫黄の合成ポリイソプレン粒子への拡散は、硫黄が可溶性であることを必要とする。本発明によって用いられる湿潤剤は、ポリイソプレン粒子の湿潤を容易にし、ジチオカルバミン酸亜鉛の触媒作用により破壊された環構造を有する可溶性硫黄をポリイソプレン粒子の表面と接触させ、硫黄の浸透が所与の処理時間の間に起こる。水性ラテックスエマルジョンの前加硫構造は、数日間、例えば、最大5日間安定である。
【0028】
硫黄は好ましくは、合成ポリイソプレンラテックスエマルジョン中に、ポリイソプレンの乾燥重量に基づいて約0.8〜1.8重量%の量で存在する。酸化亜鉛が用いられる場合、好ましくは、ポリイソプレンの乾燥重量に基づいて約0〜0.5重量%の量で存在する。
【0029】
好適な湿潤剤の例には、アニオン性である脂肪酸の塩(例えば、ナトリウム塩又はカリウム塩)、例えば、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、及びカプリル酸カリウムが含まれるが、これらに限定されない。カプリル酸カリウムは有利には、短鎖脂肪酸の塩、SDBS及びポリオキシエチレンセチル/ステアリルエーテルと一緒に用いられる。
【0030】
前加硫組成物の成分のポリイソプレン粒子中への浸透は、ポリイソプレンの粒径及び粒径分布の強い関数である。通常、粒子が小さいほどより大きい表面積を有し、前加硫組成物の成分は、これらの小さい粒子により迅速に浸透する。しかし、これらのより大きい表面積は、より多くの粒子間領域をもたらし、これらは、後加硫の間に架橋剤によって架橋される。対照的に、より大きな粒子はより小さな表面積を有し、前加硫組成物の成分は、これらの大きい粒子によりゆっくりと浸透する。より小さい表面積は、より少ない粒子間領域をもたらす。より小さい粒子の凝集体は、大きい粒子のようにみえ、大きな粒子と異なって挙動する。したがって、前加硫粒子内架橋と後加硫粒子間架橋とを均衡させる最適強度特性をもたらすようにポリイソプレンの粒径及び粒径範囲分布を選択することに微妙な均衡が存在する。上に示されるように、約0.2〜2マイクロメートルの範囲の粒子は、最適な結果をもたらす。前加硫組成物の成分のポリイソプレン粒子中への浸透は、それ自体、拡散過程の関数でもあり、これは時間の線形関数、及び熱的活性化過程を反映して、温度の指数関数である。したがって、前加硫ステップの間に数度だけ温度を増加させると、前加硫速度は著しく増加する。例えば、室温での前加硫は、約3〜5日間、又は約9日間と同程度を必要とするが、高温、例えば、約50〜70℃での前加硫は、約3〜7時間しか必要としない。
【0031】
好ましくは、後加硫組成物は、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDBC)、硫黄、チウラム化合物、及び/又はキサントゲン化合物を単独で、又は界面活性剤とさらに組み合わせて含む。好適なキサントゲンの例には、ジイソプロピルキサントゲンポリスルフィド(DXP)、ジイソプロピルキサントゲン、テトラエチルチウラムジスルフィド、及びキサントゲンスルフィドが含まれるが、これらに限定されない。DXPは好ましいキサントゲンである。チウラム化合物の例は、テトラベンジルチウラムジスルフィドである。後加硫組成物は、高温(例えば、120〜150℃)で活性化後に粒子間架橋を引き起こすものである。さらに、この後加硫硬化も、浸透した硫黄で合成ポリイソプレン粒子を架橋する。このような架橋は、より大きな強度及び伸び特性を有するより均一なラテックスフィルムをもたらす。
【0032】
本方法は、ラテックス安定化組成物、例えば、アルキルアリールスルホン酸塩(例えば、SDBS)、アルキルスルホン酸塩(例えば、オレフィンスルホン酸塩)及びアルコール硫酸塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤などの少なくとも1種の界面活性剤を含む界面活性剤パッケージを含む。SDBSは、カプリル酸カリウムと、単独で又はポリオキシエチレンセチル/ステアリルエーテルと一緒に、組み合わせることができる。好ましい界面活性剤パッケージは、SDBS、カプリル酸カリウム、及びポリオキシエチレンセチル/ステアリルエーテルを含む。ラテックス安定化組成物の添加後に、エマルジョンを撹拌し、ポリイソプレン粒子が互いに触れないように保つ。
【0033】
次いで、本方法は、合成ポリイソプレンラテックスエマルジョンを配合するために、(a)ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛及びジブチルジチオカルバミン酸亜鉛並びにそれらの組合せから選択されるジチオカルバミン酸亜鉛、(b)好ましくは、高S含有量の硫黄、並びに(b)湿潤剤と一緒に、前加硫組成物を添加するステップを含む。湿潤剤は好ましくは、脂肪酸の塩、例えば、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、又はカプリル酸カリウムである。水性ラテックスエマルジョンは、撹拌し、イソプロパノール指数試験を用いることにより、前加硫剤の合成ポリイソプレン粒子中への浸透を定期的に調べる。この順序が採用される理由は、ポリイソプレンラテックスが、ZDBC又はZDECにより触媒される硫黄との周辺反応のためにフロック化する又は「表面を硬く」する固有の傾向を有するからである。これは、強固に結合した粒子が生じないように防止されなければならない。界面活性剤の存在、及び硫黄の広げられたS鎖の生成は、硫黄の粒子中への拡散を可能にする。
【0034】
本方法は、合成ポリイソプレンラテックスエマルジョンに、SDBC、反応性酸化亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、テトラベンジルチウラムジスルフィドなどのチウラム、及びキサントゲンからなる群から選択される促進剤と一緒に後加硫組成物を添加するステップをさらに含む。反応性酸化亜鉛が存在する場合、好ましくは、それはポリイソプレンの乾燥重量に基づいて約0〜0.5重量%の量で存在する。チウラムは、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィドであり得る。キサントゲンは、DXP、ジイソプロピルキサントゲン、又はキサントゲンスルフィドであり得る。このように製造された組成物は、20℃〜25℃で最大約5日間安定であり、製造ラインに用いることができる。
【0035】
以下の表1は、前加硫挙動を示す組成物の例を示す。
【0036】
【表1】



【0037】
水性合成ラテックスエマルジョンの典型的な混合順序を表2に示す。この表は、ステップ及び関連する期間を記載する。
【0038】
【表2】



【0039】
したがって、本発明はさらに、合成ポリイソプレンラテックス物品を成形する方法を提供する。本方法は、凝固剤なしの又は凝固剤被覆フォーマーを上記前加硫合成ポリイソプレン水性ラテックスエマルジョン組成物に少なくとも1回浸漬させ、フォーマーの表面上の前加硫合成ポリイソプレンの個々の粒子でラテックスフィルムの薄層を形成するステップを含む。フォーマーは、当技術分野で知られている任意の適切なフォーマーであり得る。本発明の組成物は、コンドーム及び手袋のためのフォーマー上に層化させるために特に有用である。
【0040】
次いで、本方法は、フォーマーの表面上に形成されたラテックスフィルムの薄層を各浸漬後に乾燥させるステップを含む。粒子間の間隔は、層が乾燥するにつれて減少する。フォーマーの合成ポリイソプレンラテックスエマルジョン中への複数回の浸漬の場合にラテックスフィルムの最後の層が乾燥した後、本方法は、フォーマー上の薄肉ラテックスフィルムを後加硫するステップをさらに含む。フィルムは、フィルムを、例えば、約120〜150℃に約8〜15分間加熱することによって後加硫され得る。この期間の間に、粒子間領域は架橋される。粒子内領域もさらなる架橋が行われ、より均一なラテックス製品をもたらす。次いで、本方法は、フォーマーからラテックスフィルムを引き剥がすステップを含む。
【0041】
合成ポリイソプレン粒子の前加硫の不在下では、架橋は、合成ポリイソプレン粒子の周囲で優勢に起こり、弱い粒子をもたらす。後加硫の間のみに粒子内の粒子間領域を架橋する試みは、粒子内領域の過剰な架橋をもたらし、これは、その結果として、弱い伸張特性を有するラテックス製品をもたらす。
【0042】
表3は、コンドームの典型的な浸漬順序を記載する。同様の順序を合成ポリイソプレン外科用手袋に作製することができる。
【0043】
【表3】



【0044】
界面活性剤−安定化された、前加硫合成ポリイソプレンラテックス組成物を用いるコンドームの浸漬順序は通常、合成ポリイソプレンラテックスエマルジョン槽の平均寿命である、5日間の期間内である。コンドームフォーマーは、第1の浸漬において本組成物に浸漬され、ラテックスフィルムの厚さは、浸漬槽中の組成物の総固形物含有量及びフォーマーの移動速度によって調節される。ラテックスフィルムは、約60〜80℃で約1〜3分間乾燥させる。フォーマー上のラテックスフィルムは、組成物中に再度浸漬され、第2の浸漬コーティングを適用する。第2の浸漬後のラテックスフィルムは、約60〜80℃で約1〜3分間乾燥させる。コンドームの自由端を巻いて、ビーズリングを作製し、約70〜100℃で約1〜3分間乾燥させる。ラテックスフィルムを約110〜130℃で約11〜15分間後加硫する。ラテックスフィルムを水中約70〜80℃で約1〜2分間浸出させ、ラテックスフィルムから残存界面活性剤及び架橋剤を除去する。次いで、ラテックスフィルムをフォーマーから引き剥がす。製造されたラテックス物品は、低立体規則性合成ポリイソプレンが用いられる場合でさえも、より高い強度及び改善された伸張を示す。合成ポリイソプレン物品は、刺激原因となるタンパク質を含まず、ラテックス感受性の長い未解決の問題を解決する。
【0045】
主題発明によって製造された合成ポリイソプレンラテックスフィルムの機械的特性を従来技術で開示されたものと比較した。例えば、米国特許第6,828,387号(Wang)に開示された合成ポリイソプレンは、ASTM D412に準じて測定して、3000psi(20.68MPa)を超える引張強度、約750%を超える破断時伸び、及び300%伸びで約300psi(2.07MPa)未満の引張弾性率を有した。
【0046】
ISO4074:2002試験方法によって測定した合成ポリイソプレン製造コンドームの引張特性を以下の表4に示す。
【0047】
【表4】



【0048】
引裂は、コンドーム材料の非常に重要な特性である。ASTM D624:2000法に準じて、合成ポリイソプレンコンドームの引裂強度を測定し、天然ゴムコンドームのものと比較し、以下の表5に示す。
【0049】
【表5】



【0050】
コンドームの破裂圧及び破裂容量は、その性能の重要な尺度である。表6A及び表6Bは、破裂容量及び破裂圧のデータを示す。
【0051】
【表6】



【0052】
【表7】



【0053】
分子量分布を測定し、架橋密度を計算する方法は、コンドーム試料から円板を切断し、その円板試料を平衡までトルエン中で膨潤させることを必要とする。円板は最初に秤量し、膨潤後に再度秤量する。膨潤ゴムの平衡容量比は、以下に示す式を用いて計算した。この式において、Pはゴムの密度(0.92g/cm)であり、Pは、トルエンの密度(0.862g/cm)であり、Wは膨潤前のゴムの重量であり、Wは、膨潤ゴムの重量である。
【0054】
【数1】



【0055】
容量比は、架橋密度を計算するために以下に示されるFlorey−Rehner式で用いた。この式において、nは架橋密度であり、Vは膨潤溶媒トルエンのモル容量であり、これは106.3cm/molであり、Vは、膨潤ゲル中のゴム相の容量比であり、χはトルエン−シスポリイソプレンの相互作用パラメータであり、これは、0.39である。
【0056】
【数2】



【0057】
架橋間の分子量は、以下の式で計算した。
【0058】
【数3】



【0059】
以下に示される表7では、主題発明の実施形態によって製造された、いくつかの合成ポリイソプレンコンドームについて、架橋間の測定分子量及び対応する架橋密度が報告される。英国GB2,436,566LRC特許出願によって恐らくは製造された、Durexにより市販される合成ポリイソプレンコンドームの値も示される。天然ゴムコンドームの値も示される。架橋間の分子量が高いほど、架橋密度は低くなる。
【0060】
提示されたデータは、本発明のプロセスが、架橋間で非常に一貫した分子量を有する合成ポリイソプレンコンドームをもたらすことを示す。Durexポリイソプレンコンドームは、架橋間のより高い値の分子量を有するので、架橋密度は、本プロセスにより製造されたものより低い。本発明によるコンドームの架橋間の分子量は、天然ゴムのものに匹敵し、適切な機械的特性を有する。
【0061】
【表8】



【0062】
図1は、コンドーム厚さの中間部分から取った前加硫及び後加硫の合成ポリイソプレンコンドームラテックスの透過型電子顕微鏡写真を示す。試料は、以下の手順を用いて調製した。コンドーム試料の試料領域を取って、冷アセトン中で一晩抽出し、その後にスチレン重合工程を妨害し得るいずれの低分子量物質も除去した。次いで、試料を40℃未満で約48時間乾燥させて、いずれの溶媒痕跡も除去した。次いで、抽出フィルムを、1重量%の過酸化ベンゾイル開始剤及びセクショニングを助けるための2重量%のフタル酸ジブチル可塑剤を含むスチレン溶液中で一晩膨潤させた。次いで、膨潤フィルムを過剰のスチレン溶液と一緒にカプセル中に入れ、スチレンが完全に重合するまで70℃で加熱した。スチレンで膨潤させ、重合させた試料を室温で超薄切片法により切断した。各コンドームの表面に付着した一部のポリスチレンを残すことによって、各コンドームの全幅を含む超薄切片を調製することができた。切片は、低レベルのキシレン蒸気への曝露によって慎重に緩和させ、透過型電子顕微鏡(TEM)グリッドに移した。次いで、切片を四酸化オスミウム蒸気中で1時間染色し、TEMで調べた。四酸化オスミウムは、炭素−炭素二重結合と反応し、したがって、不飽和基を含むポリマーに暗染色を与えるが、ポリスチレンは未染色のまま残す。図は、10で架橋網状組織の均一な分布を示す元の合成ポリイソプレン粒子を示す。これらの粒子の交点は11で示され、これは、暗染色の均一性によって示される架橋網状組織の同様な分布を示し、合成ポリイソプレンラテックスフィルムが合成ポリイソプレン粒子レベル及び交点で架橋されることを示す。ポリスチレン残存物は13で見られる。全体の粒径は約0.8ミクロンである。この均一に硬化した合成ポリイソプレンは、改善された破断時引張強度、優れた伸び、及び引裂特性をもたらす。
【0063】
上記を考慮して、本発明は、上記の表面活性剤安定化の、前加硫合成ポリイソプレンラテックスエマルジョン組成物から製造された物品を提供する。この物品は欠点をもたず、少なくとも約600%の破損まで伸張を有する。表5は、破損時に1000%を超える伸びを示す。この物品は、粒子内及び粒子間架橋を有し、透過型電子顕微鏡検査(TEM)下で、TEM顕微鏡写真内で場所によって約5%未満の偏差で暗染色の均一分布を有する。この合成ポリイソプレン物品は、好ましくはコンドーム又は手袋である。
【0064】
本明細書で引用された、刊行物、特許出願、及び特許を含む参考文献は全て、あたかも各参考文献が参照により組み込まれるべく個々に及び具体的に指示され、その全体で説明されるのと同じ程度に、参照により本明細書で組み込まれる。
【0065】
本発明を説明する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」という用語及び同様の指示語の使用は、本明細書で別段の断りがないか又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方に及ぶと解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記載は単に、本明細書で別段の断りがない限り、その範囲内に入るそれぞれ別個の値に個々に言及する簡便な方法として役立つように意図され、それぞれ別個の値は、あたかも本明細書で個々に記載されたかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書で記載された方法の全ては、本明細書で別段の断りがないか又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行われ得る。いずれかの及び全ての実施例、又は本明細書で記載された例示的な言い回し(例えば、「例えば、〜など(such as)」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにするように意図され、別に請求の範囲で記載されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のどの言い回しも、特許請求の範囲に記載されない要素を本発明の実施に必須として示すと解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前加硫及び硬化されている、ポリイソプレン粒子内架橋及びポリイソプレン粒子間架橋によって互いに結合された合成ポリイソプレン粒子を含む合成ポリイソプレンエラストマー物品であって、
該ポリイソプレン粒子内架橋及び該ポリイソプレン粒子間架橋が、前記合成ポリイソプレンラテックス物品中で実質的に均一である合成ポリイソプレンエラストマー物品。
【請求項2】
前記ラテックス物品がコンドーム又は手袋である、請求項1に記載の合成ポリイソプレンエラストマー物品。
【請求項3】
前記ラテックス物品が、液体窒素温度で破壊された場合に、実質的に貝殻状破壊を示す、請求項1に記載の合成ポリイソプレンエラストマー物品。
【請求項4】
室温での物品の破断で得られた破面の走査型電子顕微鏡観察が、ポリイソプレン粒子内及びポリイソプレン粒子間の特徴の不在を示す、請求項1に記載の合成ポリイソプレンエラストマー物品。
【請求項5】
液体窒素温度での物品の破壊、室温での破断、又は両方によって得られた破面の走査型電子顕微鏡の亜鉛及び硫黄のx線地図観察が、亜鉛で修飾されているポリイソプレン粒子内の硫黄の存在を示す、請求項1に記載の合成ポリイソプレンエラストマー物品。
【請求項6】
分子量が、架橋間で約6800g/mol未満である、請求項1に記載の合成ポリイソプレンエラストマー物品。
【請求項7】
電子顕微鏡検査によるマイクロプローブ元素分析が、前記合成ポリイソプレン粒子を囲む亜鉛の蓄積を示す、請求項1に記載の合成ポリイソプレンエラストマー物品。
【請求項8】
四酸化オスミウム処理物品のTEMが、イソプレン二重結合の均一性を示す、請求項1に記載の合成ポリイソプレンエラストマー物品。
【請求項9】
ポリイソプレン粒子内架橋及びポリイソプレン粒子間架橋の前記実質的な均一性が、粒子内領域及び粒子間領域の両方を非選択的に通る破面の走査型電子顕微鏡検査によって確認される、請求項1に記載の合成ポリイソプレンエラストマー物品。
【請求項10】
可溶性硫黄、ジチオカルバメートの亜鉛錯体、カプリル酸カリウム、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)の存在下で前加硫され、硬化されている、ポリイソプレン粒子内架橋及びポリイソプレン粒子間架橋によって互いに結合された合成ポリイソプレン粒子を含み、該ポリイソプレン粒子内架橋及びポリイソプレン粒子間架橋は実質的に均一である、合成ポリイソプレンコンドーム。
【請求項11】
少なくとも30MPaの引張強度を有する、請求項10に記載のコンドーム。
【請求項12】
少なくとも945%の破断時伸びを有する、請求項10に記載のコンドーム。
【請求項13】
合成ポリイソプレン粒子の水性ラテックスに、可溶性硫黄、ジチオカルバミン酸亜鉛及び界面活性剤を含む前加硫組成物を添加するステップと、
前記ラテックス中の該合成ポリイソプレン粒子を前加硫するステップと、
前記ラテックスに後加硫組成物を添加するステップと、
手袋又はコンドームの形の、凝固剤なしの又は凝固剤被覆されたフォーマーを前記ラテックス中に1回以上浸漬させて、ラテックスフィルムを形成するステップと、
後加硫の間に前記ラテックスフィルムを硬化させて、合成ポリイソプレン粒子内に粒子間架橋を生成し、前記粒子間に粒子内架橋を生成するステップと
を含み、
該ポリイソプレン粒子内架橋及び該ポリイソプレン粒子間架橋が実質的に均一である、合成ポリイソプレンエラストマー物品を製造する方法。
【請求項14】
前記物品がコンドームであり、前記フォーマーが凝固剤なしである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記物品が手袋であり、前記フォーマーが凝固剤被覆されている、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記可溶性硫黄が、S硫黄環を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
ジチオカルバミン酸亜鉛が、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、又はそれらの組合せを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記界面活性剤が、カプリル酸カリウム、ポリオキシエチレンセチル/ステアリルエーテル、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルコール硫酸塩、又はそれらの組合せを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記界面活性剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、C14オレフィンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、又はそれらの組合せを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記後加硫組成物が、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDBC)、チウラム、キサントゲン、反応性酸化亜鉛及びそれらの組合せからなる群から選択される促進剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記促進剤が、テトラエチルチウラムジスルフィドであるチウラムを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記促進剤が、ジイソプロピルキサントゲンポリスルフィド(DXP)であるキサントゲンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記促進剤が、キサントゲンスルフィドであるキサントゲンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記促進剤が、ジイソプロピルキサントゲンであるキサントゲンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前加硫ステップが、20℃〜30℃の範囲の温度で9時間〜2日間行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
合成ラテックス粒子の前加硫の度合いが、イソプロパノール指数試験によって確認される、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
後加硫ステップの間の前記硬化が、120℃〜150℃の範囲の温度で8〜15分間行われる、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−519606(P2011−519606A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507552(P2011−507552)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/041756
【国際公開番号】WO2009/134702
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(598165943)アンセル・ヘルスケア・プロダクツ・エルエルシー (15)
【氏名又は名称原語表記】Ansell Healthcare Products LLC
【Fターム(参考)】