説明

改良された光学的特性を備える新規のフラクタル粒子ベースゲルを含有する化粧料組成物

【課題】肌および唇等の生体基質表面の外観を改善するための光学的ぼかし(optical blurring)効果と空間充填効果の両方を備えた化粧料組成物を提供すること。
【解決手段】肌を平滑にしながら、しわおよび肌の欠点の外観を即時的に軽減する方法であって、フラクタル粒子ベースのゲルとフラクタル粒子の少なくとも1つと屈折率の整合するポリマーを含有する水中油型乳剤の形状での化粧料組成物を塗布する工程から成る方法を提供する。本発明の組成物は肌の光学的ぼかし効果および平滑化効果の両方を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料組成物、特に肌および唇等の生体基質表面の外観を改善するための光学的ぼかし(optical blurring)効果と空間充填効果の両方を備えた化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
しわを減らし、こじわを最小限に抑えるためにいくつかの方法が開発されている。例えば、抗酸化物質などの有効成分、ボツリヌス毒(Botox(登録商標))(Allergan,Irvine,Calif.)等の神経細胞内で神経伝達を阻害し、それによって収縮した筋肉を弛緩させる薬剤、レチノイン酸のようなヒドロキシ酸およびフルーツ酸等の細胞の再生過程を促進する物質、シアーバター等の皮膚軟化剤、ヒアルロン酸等の皮膚膨潤剤、コラーゲン等の充填剤、しわが消失したように錯覚させる光拡散色素およびマイクロスフェアがある。毛穴、肌表面の凹凸および欠点等の外観を軽減するための他の方法も開発されている。これには肌を明るく見せる物質ならびに肌の空隙を埋めてカモフラージュする方法などが含まれる。
【0003】
多くのファンデーションおよびメークアップ製品は、しわの溝に色素が入り込むため、かえってしわやこじわを目立たせるという問題がある。他の製品は肌の欠点をカバーするが、不自然で厚塗りの外観を作り出す。マイカ等の物質は光を拡散して散乱するよりも、むしろ反射するため、光沢のある外観が生まれる。さらに、こうした方法のなかには即時的でなく、効果が現れるのに数日から数週間の使用を要するものもある。侵襲性が高いものや、注射の必要なもの、不快感を伴うもののほか、発赤および腫脹等の副作用を引き起こすものもある。
【0004】
水中油型乳剤タイプのファンデーションはよく知られているが、これらの組成物は単に肌を覆うのみであって、肌に白味を与えることが多い。光学的ぼかしまたは空間充填のいずれかを実現するファンデーションの開発が試みられてきたが、両方の効果を備えたものはない。
【0005】
このため、しわ、小じわ、毛穴および肌の欠点を目立たなくして、肌に自然で滑らかな外観を与えながら、従来の方法および組成物の問題を克服し、化粧品技術の著しい進歩を象徴する代替法が必要とされている。
【0006】
本発明はこうしたニーズに応えるものである。本発明者らは、(本明細書に記載の)屈折率マッチングポリマーを含有するフラクタル粒子ゲルを化粧品の配合に組み入れ、これを肌または唇等の生体基質に塗布すると、皮膜が形成され、この皮膜はその表面から光の透過を拡散するための光学的ぼかし効果と、肌表面を平滑し、それによって小じわやしわを隠すための空間充填効果を有することを見い出した。本発明の利点および利益を提供する既存の技術はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ionization of metal oxide surface in non aqueous media:Labib,M.E.;Williams,R.J.;J.Colloid Interface Sci.1984,97,356
【非特許文献2】;Labib,M.E.;Williams,R.J.;J.Colloid Interface Sci.1987,115,330
【非特許文献3】Fowkes et al.,“Mechanism of Electric Charging of Particles In Nonaqueous Dispersions”,Journal of the American Chemical Society,vol.15,1982
【非特許文献4】Fowkes et al.,“Steric And Electrostatic Contributions To The Colloidal Properties of Nonaqueous Dispersions”,Journal of the American Chemical Society,vol.21,1984
【非特許文献5】Huang,Y.C.,Sanders,N.D.,Fowkes,F.M.,Lloyd,T.B.“The Impact of Surface Chemistry on Particle Electrostatic Charging and Viscoelasticity of Precipitated Calcium Carbonate Slurrie”,National Institute od Standards and Technology Special Publication 856,USA Department of Commerce,180−200(1993)。
【非特許文献6】In−vitro Method of Quantification of Soft Focus Effect of Particulates,”Pascal Delrieu,NYSCC Scientific Meeting,New York City,December8−9,2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、逆の極性に帯電したナノ粒子のフラクタルゲルネットワークを備えた「光学的ゲル」と、1種のフラクタル粒子の屈折率と等しい屈折率を有するポリマーを含有する化粧料組成物を提供し、塗布表面を平滑にするための空間充填と、前記組成物またはトップコートとして前記組成物に重ねて塗布した第二の化粧料組成物の粉っぽい外観を軽減し、潜在的、実質的に排除するための光学的ぼかしを実現することである。
【0009】
本発明の目的は、光拡散、すなわち光学的ぼかしを至適化し、これによってしわ、小じわ、毛穴および肌の欠点を見えにくくしながら、肌の外観を自然でなめらかで欠点のない状態に仕上げる方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、固有の光学的ぼかし特性と、肌に白味を与えずに小じわやしわをなめらかにする能力を備えた化粧料組成物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、所定のpHで逆の表面電荷(ゼータ電位)を有する2種以上のサブミクロンサイズのフラクタル粒子から成るゲルネットワークと、(後述する)屈折率整合ポリマーを含有する化粧料組成物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、フラクタルゲルおよび屈折率整合ポリマーを含有し、水性、非水性、油中水型および水中油型乳剤等の化粧品に好適な媒体を含有する化粧料組成物を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、屈折率の整合する粒子が「見えなく」なるが、物理的にはナノ尺度で分散されるフラクタルゲルおよび屈折率整合ポリマーを提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、肌表面のすじやしわを局所的に平滑にしながら、光学的に望ましい光拡散特性を提供するための固有の空間充填特性を備えた化粧料組成物を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、トップコート化粧料組成物との併用のために平滑な表面およびぼかし効果を提供し、下地剤組成物の上に重ねる前記トップコート組成物の塗布および外観の質が前記下地剤組成物層の光拡散効果によって改善するフラクタルゲル下地剤組成物を含有する化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のこうした目的および利点に従い、しわ、小じわ、毛穴、肌表面の凹凸および欠点をぼかしながら、ゲルネットワークによる空間充填によって表面平滑化効果を実現する方法を提供する。この方法には、肌が光を放出して明るく見えるように、トップコート着色層と組み合わせて、肌表面に光学的ぼかし/平滑化層を重ねる方法が含まれる。
【0017】
本発明の別の態様において、本発明は化粧品としての使用が許容される賦形剤を媒体として、ヒトの肌に塗布することができる。
【0018】
別の態様において、多孔性の網状構造の観点から、本組成物はヘアトリートメント製品、特にやせ細った毛髪を処置するためのマスカラとして好適であり、毛幹にボリュームを与える。
【0019】
本発明のこうした新たな特性は、以下の詳細な説明によって当業者には明らかであり、図面で示されるのは、単に本発明の実施のために検討される種々の様式にすぎない。理解されるように、本発明は本発明から何ら逸脱することなく、別の明らかな態様の追加が可能である。従って、図面および明細書は本質的に例示的であり、本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】pHに対する種々の金属酸化物のゼータ電位のプロット図である。
【図2A】アルミナおよびケイ素の水性分散液によるゲルネットワークの形成を示す。
【図2B】逆荷電フラクタル粒子の1つと屈折率が実質的に等しいポリマーの存在下での前記粒子の水性分散液によるゲルネットワークの形成を示す。
【図3】光を捕捉し、トポロジー特性を悪化させるこじわやしわによって作り出される粗い肌表面を示す。
【図4】粗い肌表面を覆う光学的ゲル層を示す。
【図5】着色化粧品の下地として使用した場合の光学層を示す。
【図6】化粧料組成物の薄膜、フラクタルゲルネットワークを含有する化粧料組成物の薄膜および球状ナイロン粒子を含有する化粧料組成物の薄膜を透過する光の角度依存性(L値で報告)を示す。
【図7】固形分の等しい従来のぼかし粒子と比較したフラクタル粒子ゲル含有化粧料組成物の光学的特徴の改善を、化粧料組成物の光学的特徴に関して正規化したデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の化粧料組成物は、(i)逆の正味表面電荷(ゼータ電位)を有する第一のフラクタル粒子および第二のフラクタル粒子から成るフラクタル粒子ベースのゲル(「フラクタルゲル」または「光学的ゲル」)と、(ii)第一または第二のフラクタル粒子の少なくとも1つと屈折率が整合する少なくとも1つのポリマーとから構成される。
【0022】
フラクタル粒子ゲルネットワークは開放した網状構造であり、肌のしわおよび他の表面の欠点を有効に充填し、それによって肌に表面平滑化効果を付与するように、フラクタル粒子のサイズ範囲および屈折率が調整されている。従ってこの化粧料組成物を肌に塗布すると、しわおよび肌の欠点が見えにくくなり、自然で滑らかで若々しい外観が得られる。フラクタルゲルマトリックスの開放構造は、充填密度の著明に低い皮膜でしわを充填するため、従来化粧品の好ましくない粉っぽい外観を最小限に抑え、除くこともできる。さらに、ゲルマトリックスの開放構造により、皮脂吸収のための広い表面積が得られるため、化粧料組成物の持ちが良くなり、皮膜形成剤を大量に使用する必要がなくなる。
【0023】
本発明の別の有益な態様は、独特のレオロジー特性を示すフラクタル粒子ゲルネットワークの能力であり、これは特に化粧品の用途に有用である。このゲルネットワークは揺変性が高い。つまり、このゲルの粘度は剪断応力の増大とともに速やかに減少するが、剪断応力が除去されれば、ゲルネットワークが直ちに再形成する。これによって効果的に作用が発揮され、本組成物をブラシなどのアプリケータで塗布すると、本組成物は粘性の非流動組成物から自由に流動する液に変わる。ネットワークがゲルに再形成する速度は、粒子の濃度および反対荷電粒子間の誘引的相互作用の程度(「粒子分散液の表面電荷」の項を参照)の関数となる。高揺変性組成物は、塗布時には低粘性が望まれるが、塗布後は組成物の移りを防止するために粘度の速やかな増大が必要となるファンデーション、マスカラ、ヘアケア製品、口紅および身だしなみ製品に特に有用である。
【0024】
一次粒子の1つと屈折率の等しいポリマーを含めるように配合した場合、本発明の化粧料組成物は光学的ぼかし効果も発揮する。つまり、肌に塗布された本発明の化粧料組成物の皮膜に入射する光は拡散透過および拡散反射を示し、この両特性によって肌表面から分散および/または反射する光の経路が変わり、結果、柔らかい光の効果が得られる。この柔らかい光の効果はしわなどの欠点と組み合わさり、しわおよび小じわの劇的な見えにくさを特徴とする若々しく生き生きとした肌表面の外観を作り出す。
【0025】
本明細書で使用する用語「光学的ぼかし」は、しわ、小じわ、肌表面の凹凸および欠点の視覚的減少を意味する。
【0026】
本明細書で使用する用語「フラクタル粒子」は、変動フラクタル次元または網状構造の組み込まれた幾何学的粒子を意味する。つまり、ハウスドルフ次元が位相次元よりも大きい幾何学的粒子である。
【0027】
「化粧品としての使用が許容される賦形剤」という表現は、ヒトの肌などの角質物質に適合する媒体を意味する。
【0028】
本明細書で使用する用語「粒子」は、フラクタル粒子、色素粒子、結合剤、充填剤など、本発明の組成物中に存在する、組成物に不溶なすべての粒子を含む。
【0029】
実際の測定値の具体例を示す場合を除き、本明細書に示す数値は「約」という言葉によって制限されるものとみなす必要がある。
【0030】
本明細書および添付の請求項で使用する用語”a”および”an”は、別段の記載がない限り、「1つまたは2つ以上」を意味する。
【0031】
本明細書に引用するパーセンテージおよび割合は、別段の記載がない限り、すべて組成物の重量(存在する全成分の和)で表す。
【0032】
フラクタル粒子
第一の必須成分は、所定のpHで逆の表面電荷を有する第一および第二のサブミクロンサイズのフラクタル粒子から成るゲルネットワークである。図1に示すように、pH7〜8以下で金属酸化物のシリカおよびアルミナは逆の表面電荷、すなわちゼータ電位を有する。フラクタルゲルを形成する第一または第二のフラクタル粒子は、一般に様々な屈折率を有する。
【0033】
フラクタルゲルを形成する第一または第二のフラクタル粒子は、それぞれ同じ電荷を有する2種以上のフラクタル粒子から構成される。同じ電荷を有する2種以上の第一(または第二)のフラクタル粒子は、大きさ、正味表面電荷(ただし、符号は同じ)または屈折率が異なっていてもよい。しかし、ポリマーと屈折率の一致するフラクタル粒子は、すべて実質的に等しい屈折率を有することが好ましい。最も好ましくは、ポリマーと屈折率の等しいフラクタル粒子は、すべてシリカ、またはすべてアルミナなど、1種類のフラクタル粒子である。
【0034】
フラクタル粒子を幾何学的に以下に簡潔に説明する。
【0035】
フラクタルな物体は再帰的な自己相似性を特徴とする。一般にフラクタルな性質は、以下の形をとる、べき乗の関係によって数学的に説明できる。
Y=c (1)
式中、cは定数である。従って、データがべき乗モデルに準拠する場合、対数(Y)と対数(X)のプロットは勾配dの直線を示す。
【0036】
同様に、ハウスドルフ次元の1クラスである自己相似フラクタルは、異なる長さスケールの自己相似性の物体に依存する。べき乗則は以下のようにこのケースと整合する。
A=(1/s) (2)
式中、Aは同一部分の数、sは減少係数、Dはフラクタルの自己相似次元測度である。式2は以下のように整理することができる。
D=log(A)/Log(1/s) (3)
【0037】
例えば、単位正方形の辺を2等分すると、4つの部分に分かれるため、A=4、s=1/2であり、Dは2となる。同様に、元の三角形の辺を2等分するスルピンスキーガスケットでは、3つの三角形ができ、A=3、s=1/2でD=1.5850となる。これと比較して、単位線分を考えてみる。線を半分に切断すると、2つの等しい部分が生じるため、A=2、s=1/2でD=1となる。D値は線の位相次元と一致するが、線はフラクタルでないことに注意する必要がある。従って、フラクタルはハウスドルフ次元がその位相次元を超える物体である。
【0038】
さらに、フラクタルはその自己相似性によって分類することができる。フラクタルに発現する自己相似性には以下の3つの基本型がある。完全自己相似性(自己相似性の最強型):フラクタルは異なる長さスケールで同一に見える。この種のフラクタルは完全自己相似性を示すことによって説明される。
【0039】
準自己相似性(自己相似性の非完全型):フラクタルは異なる長さスケールでほぼ同一に見える。準自己相似フラクタルは歪んで劣化したコピーから成る。
【0040】
統計的自己相似性(自己相似性の最弱型):フラクタルは統計的手法によって説明され、長さスケールの全範囲で維持される。ランダムフラクタルがフラクタルの例であり、統計的には自己相似性であるが、完全自己相似性でも準自己相似性でもない。フラクタルの相似性も数学的関数で表すことができる。
【0041】
対象となるほとんどのフラクタル物体は容易に自己相似性を表さない。このため、物体のフラクタル次元を求める簡便な方法がボックスカウント法である。この方法は広く用いられており、画像解析によってフラクタル次元物体を測定する直接的な方法である。既知の寸法の格子に物体の像を投影し、像が接するブロックの数を数える。このデータから、ブロックの数(N)およびブロックの大きさ(減少係数s)が得られる。格子の大きさを変えて、再度測定を行う。式3に基づきx軸が対数(s)、y軸が対数(N(s))のデータのプロットは、勾配Dとなる。
【0042】
画像解析は特に粒子のフラクタル次元の評価に有用である。なかでも透過電子顕微鏡法(TEM)は、複雑な粒子構造のフラクタル次元の評価に十分応用できる。重なりのない一次粒子から成り、大きな集合体を形成するフラクタル粒子は特に興味深い。一般にこの性質の粒子は薫蒸法または複雑な沈殿法によって製造される。
【0043】
小さい一次粒子の集合体から形成される粒子のマスフラクタル次元の評価では、集合体当たりの一次粒子数を測定する。そのために通常、デジタル画像処理法を用いてTEM写真を評価する。集合体当たりの一次粒子の数(N)は、集合体の投影面積(Aa)を単量体単位の投影面積(Am)で除すことによって求める。
N=(Aa/Am)α (4)
式中、αは経験的適合パラメータであり、一般に1.0〜1.1である。従って、ハウスドルフ次元は、一次粒子の大きさ(dp)と旋回の面積半径(Rg)と一次粒子の数(N)との関係が、集合体のフラクタル次元(Df)を説明することを意味する。
N=kf(Rg/dp)Df (5)
式中、kfは定フラクタル前因子である。対数(N)と対数(Rg)とのプロットにより、勾配Dfの線形プロットが得られる。薫蒸法によって製造される本発明のフラクタル粒子の標準値Dfは1.5〜1.9であり、沈殿法によって得られる本発明のフラクタル粒子のDf値は2〜2.8である。フラクタル粒子の次元を説明するのに、レオロジー的測定および光散乱測定に基づく別の試験法を利用することもできる。
【0044】
第一のフラクタル粒子および第二のフラクタル粒子(以下、正のフラクタル粒子および負のフラクタル粒子とする)を好適な賦形剤に混和すると、逆荷電粒子の電荷中和によりゲル化が起こる。さらに粒子のフラクタル性により、多孔性マトリックス構造が得られる。別の実施例において、フラクタルゲルの多孔性マトリックス構造は、以下に記載する1種または2種以上の活性物質を受け取ることができる。
【0045】
効果的にしわを充填し、肌の欠点を隠すために、フラクタル粒子のサイズ範囲および屈折率を選択する。フラクタル粒子ネットワークは開放構造を形成し、表面平滑化作用を発揮する。このため、本組成物はしわや肌の欠点を見えにくくしながら、自然で滑らかで若々しい外観を提供できる。
【0046】
各粒子型の水性分散液を組み合わせると、電荷中和により、高度に構造化されたゲルネットワークが形成される。フラクタルゲルは、フラクタルゲル重量に対する固形フラクタル粒子の割合は一般に5〜75%程度であるが、好ましくは10〜40%、最も好ましくは20〜40%である。粒子は製造者によって分散液として提供される場合もある。好適な市販の金属酸化物分散液には、Cab−o−Sperse(登録商標)PG01、PG063、PG003およびPG0042(Cabot Corporation)ならびにAeroDisp(登録商標)W1836およびW630(Degussa)がある。非水性ゲル相の形成に利用できる非水性分散液が提供される可能性もある。こうした分散媒はフラクタル粒子の表面電荷を維持する必要があり、電荷の中和が起こるように、一般にテトラブチルアンモニウムベンゾエート等の微量の電荷調整剤を必要とする。利用可能な好適な分散媒はイソドデカンなどの炭化水素、単純エステルおよびシクロメチコンなどのシリコーン液である(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。
【0047】
所望の効果を達成するあらゆる好適な金属酸化物フラクタル粒子またはその誘導体を利用することができる。無機ナノ粒子は直径約50〜300nm、好ましくは直径約100〜250nm、より好ましくは直径約125〜200nmのフラクタル金属酸化物粒子である。本明細書に用いる直径は、フラクタル粒子を包囲する球の直径を指す。直径は、光散乱およびTEM等、当該技術分野で既知の方法によって求められる。さらに、各種のナノ粒子は約50〜400m/g、より詳細には約100〜250m/gの粒子表面積を備える。ナノ粒子のフラクタル次元は約2.7以下、好ましくは約1.2〜2.5、より好ましくは1.5〜2.2の範囲である。一般にフラクタル次元の減少に伴い、ゲル中の固体の濃度は低下し、表面積の増加とともにフラクタル次元は減少する。
【0048】
一般的ではないが、フラクタル有機粒子も知られており、表面電荷特性の要件を満たせば、本発明に従って利用することができる。例えば、有機ポリアクリレートおよびその誘導体はフラクタル次元性を備え、表面荷電していてもよい。好ましい有機ポリアクリレート粒子はラウリルメタクリレート/ジメチルアクリレートクロスポリマーである(Amcol HealthおよびBeauty Solutions製)。
【0049】
フラクタル粒子はシリカ、アルミナ、チタン、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、セリアおよびこれらの混合物から成る群から選択することができる。金属酸化物粒子がフラクタル性である薫蒸工程または沈殿工程の一環として粒子が形成されるが、薫蒸工程によって形成される粒子が好ましい。アルミナは拡散透過率、反射率および散乱反射率が高いうえに、可視スペクトルでの全体反射率は低く、第一のフラクタル粒子として好ましい。シリカは、一般的な化粧品媒体、特にシリコンオイルと実質的に屈折率が等しいことから好ましい。図1に示すように、シリカはほとんどの化粧品配合物のpH値、つまり約7〜8未満のpHでアルミナと反対の正味表面電荷を有している。従って、シリカは特にpH約7〜8未満でアルミナとともに使用する場合、好ましい第二のフラクタル粒子である。
【0050】
好適なフラクタル粒子の例には、DegussaからAerosilの商品名で販売されている親水性および疎水性ヒュームド・シリカを含むヒュームド・シリカ(Aerosil R−900シリーズ)、A380TMヒュームド・シリカ(Degussa)、OX50TM(Degussaが製造)、CabosilTMシリーズ(Cabot)等のコロイドシリカ、SpectrAlTM(Cabot)等のヒュームド・アルミナならびにヒュームド・チタンが含まれるが、これらに限定されない。ヒュームド・シリカ、ヒュームド・アルミナ、ヒュームド・チタン(Degussa W740X)、ヒュームド・ジルコニア(Degussa W2650X,W2550X)、ヒュームド・セリア(Degussa Adnano)、ヒュームド・酸化亜鉛(Degussa Adnano)、ヒュームド・酸化インジウムスズ(Degussa Adnano)またはこれらの混合物が好ましい。
【0051】
本発明の化粧料組成物は、化粧料組成物の重量に対してフラクタルゲル約1〜100%から成る。この広い範囲は化粧品製品の種類およびゲル、乳液および分散液といった様々な製品形態の種類を反映している。典型的にフラクタルゲルの含有率は約5%以上であり、より典型的には10%を超えるが、一般に約70%を超えるものはなく、好ましくは50%である。本発明の化粧料組成物に含まれるゲル量は、後述する。有用なフラクタルゲル組成物はアルミナとシリカ、チタンとシリカ、ジルコニアとシリカおよび本明細書に記載の粒子の他の組み合わせを含有する。
【0052】
典型的な実施形態において、アルミナとシリカの重量比は1:1〜9:1であり、水の分散液として存在し、この状態でのアルミナの表面積は50〜200m/g、シリカの表面積は約300〜400m/gである。好適なゲルはSpectral51またはSpectral80(Cabot Corporation)ヒュームド・アルミナおよびCab−o−Sil M5,Cab−o−Sil EH−5を用いて形成することができる。さらに、金属酸化物の分散液は、ゼータ電位測定によって求められる表面電荷特性に基づいて選択することができる。
【0053】
荷電粒子は電気泳動の影響を受け、電界の存在下で帯電粒子は分散される液状媒体に対して移動する。粒子と液状媒体の間の領域は剪断面として知られ、剪断面の電位はゼータ電位と呼ばれる。この電位の大きさおよび符号は市販の器具を用い、実験的に求めることができる。典型的に、コロイド安定性を実現する(つまり軟凝集を防止する)には、荷電粒子は約25mVの最小ゼータ電位でなければならない。
【0054】
フラクタル粒子対は、所定のpHでのゼータ電位の大きさと符号(正または負)に基づいて選択することができる。両タイプの粒子を組み合わせた場合、沈降のない半硬質ゲル構造が形成されるように、各粒子タイプのゼータ電位の大きさと符号を選択することが望ましい。第一の粒子の種類の分散液は好ましくはゼータ電位が約+10mV〜+50mV、より好ましくは+10mV〜+30mV、最も好ましくは+15mV〜+25mVである。第二の粒子の分散液は好ましくはゼータ電位が約−10mV〜−50mV、より好ましくは−10mV〜−30mV、最も好ましくは−15mV〜−25mVである。さらに、表1に示すように、目的とする金属酸化物の予備選択には、金属酸化物の0電位の点(等電点)の評価が有用である。
【0055】
粒子分散液の表面電荷
分散されたコロイド粒子の電荷は、イオノゲン表面基の解離および優先吸収の2通りの基本機序によって発生する。それぞれの機序が同時に発生することもあれば、独立して発生することもある。粒子表面での酸性基の解離は負の荷電表面を招き、反対に塩基性表面基の解離は正の荷電表面を招く。いずれの場合も、表面電荷の大きさは酸性基または塩基性基の強さならびに溶液のpHに依存する。表面イオン化を抑制することによって、表面電荷を0(等電点)に抑えることができる。そのためには負荷電粒子の場合はpHを下げ、正荷電粒子の場合はpHを上げる。
【0056】
また、負荷電粒子の分散液にアルカリを添加すると、粒子の電荷はさらに負に傾く。この分散液に酸を添加すると、粒子の電荷の中和点に達する。続いて酸を加えると、粒子の電荷は正になる。
【0057】
表面電荷の調整
イオンおよびイオン性界面活性剤は特に荷電粒子表面に吸着される。カチオン界面活性剤の場合、吸着によって正荷電表面になり、アニオン界面活性剤の吸着によって負荷電表面になる。一価または多価無機イオン(Na、Al+3など)の吸着は、所定のpHでの電荷の大きさの低減または等電点(ゼロ電荷の点)のpHの変化という2通りの方式のいずれかで、荷電表面と相互作用しうる。低濃度であっても粒子表面へのイオンの特異的吸着は表面電荷に劇的な作用を与えうる。特異的イオン吸着が表面の電荷反転を引き起こすこともある。粒子分散液への界面活性剤または特異的イオンの添加は、表面電荷特性を変える一般的な方法である。
【0058】
【表1】

【0059】
屈折率整合ポリマー
本発明の化粧料組成物の光学的ぼかし効果(optical blurring effects)を実現するため、屈折率がフラクタル粒子のいずれかの屈折率と実質的に等しいポリマーを組み入れる必要がある(このポリマーは屈折率整合ポリマーとも呼ばれる)。
【0060】
図2Aは、水性分散系SiO粒子とAl粒子とによるゲルネットワークの形成を示す。この図面において、SiO粒子およびAl粒子は、皮膜または被膜の形で基質に塗布されれば、いずれも目に見える。図2Aでは、ゲルネットワークのすべての粒子に同様の陰影付けを施すことによって、これを視覚的に示した。
【0061】
屈折率整合ポリマーを組み入れることによって、肌などの生体基質に化粧料組成物が皮膜として塗布されると、屈折率の等しいフラクタル粒子(アルミナ/チタン、シリコーン/ジルコニアなど)は、「見えなく」、「光学的に透明」になる。これを図2Bに示す。この図面では、屈折率整合ポリマーによって、屈折率の等しいフラクタル粒子が観察者に光学的に見えにくくなる。図2Bでは、ゲルネットワークに含まれる屈折率の等しいフラクタル粒子に明るい陰影付けを施すことによって、これを視覚的に示した。
【0062】
図3は、しわや小じわによって作られる粗面が光をいかに「捕捉し」、それによってトポロジー特性を悪化させるかを示している。図4は、本発明の化粧料組成物が小じわやしわを充填し、反射光および透過光を拡散しながら、高い透明性を維持することを示している。これは表面から出るベクトル線の短い光線によって示されている。
【0063】
一実施形態において、屈折率整合ポリマーをフラクタルゲルに組み入れる。本実施形態において、化粧料組成物は100%フラクタルゲルから成り、フラクタルゲルには第一および第二のフラクタル粒子、フラクタル粒子の分散に用いる溶媒、屈折率整合ポリマーが含まれるほか、後述の1種または2種以上の有効成分および場合により後述の1種または2種以上の添加剤または賦形剤が含まれる。本実施形態において、フラクタルゲルは多相性化粧料組成物のゲル相として存在してよく、この場合、ゲル相の含有率は化粧料組成物の100%未満である。本化粧料組成物の光学的ぼかし特性は、組成物の皮膜が肌または他の生体基質に塗布された場合に顕在化する。
【0064】
別の実施形態において、化粧料組成物は屈折率整合ポリマーがフラクタルゲル相以外の相に存在する多相性組成物である。屈折率整合ポリマーはゲル相に存在しないが、組成物に存在する相の混合および生体基質への皮膜の塗布時に発生する剪断応力を考慮すると、本発明の光学的ぼかし効果は生体基質に付着した化粧料組成物の皮膜に発揮される。本実施形態において、化粧料組成物は、第一および第二のフラクタル粒子ならびにフラクタル粒子の分散に用いる溶媒を含有し、場合により後述の1種または2種以上の有効成分ならびに後述の1種または2種以上の添加剤または賦形剤を含有するフラクタルゲル相と、屈折率整合ポリマーおよび溶剤を含有し、場合により後述の1種または2種以上の有効成分ならびに後述の1種または2種以上の添加剤または賦形剤を含有する少なくとも1種の追加の相とから成る。
【0065】
さらに、ゲルネットワークは屈折率整合ポリマーを含有する水中油型(o/w)乳剤に組み入れることもできるが、好ましくはポリマーはフラクタルゲルに含まれる。
【0066】
好適な屈折率整合ポリマーには、シリコーン由来ポリマー、炭化水素由来ポリマーを含む有機性ポリマー、極性または非極性ポリマー、親水性または疎水性ポリマーあるいはこれらの組み合わせがある。本化粧料組成物は種類および/または分子量の異なる2種以上の屈折率整合ポリマーを含有することもできる。さらに、2種以上の屈折率整合ポリマーが相互に混和性または非混和性で、共通の屈折率を共有する場合もあれば、混和性ポリマーの複合的屈折率が、選択した粒子の屈折率に整合する場合もある。1種または2種以上の屈折率整合ポリマーが乳剤系のフラクタルゲル相と別の相との間に分布することもある。
【0067】
【表2】

【0068】
特に屈折率(RI)整合ポリマーとしての使用が好ましいのは、Bis(trimethylsilyl)silicylate(Clariant180M30)、フェニルトリメチコン(Dow Corning556)、PEG12Dimethicone(Dow Corning UP1005)およびこれらの混合物である。これは、シリカの屈折率(1.460)が油/水乳剤の油相賦形剤として使用されるシリコーンの屈折率(1.400〜1.470)と実質的に等しいためである。また、シリカのRIと実質的に等しい屈折率(1.470)を有するポリグリコールも、RI整合ポリマーとして特に適している。好適なポリグリコールはポリプロピレングリコールジカプリレート、グリセリン、ジ(エチレン)グリコール、グリセロール(Solvey)およびこれらの混合物である。選択したフラクタル粒子の屈折率は、屈折率整合ポリマーの屈折率の0.05以内でなければならず、好ましくは約0.01以内、最も好ましくは約0.005以内である。
【0069】
ポリマーは、屈折率の整合するフラクタル粒子に光が入射する際に、媒体を通過する光が撹乱されず、それによって粒子を透明、すなわち観察者に「見えない」状態にするような媒体を提供するのに適した量で、本発明の化粧料組成物中に存在する。指針として、屈折率の等しいフラクタル粒子の空隙容積の大部分がポリマーによって占められる、ポリマー量とする。
【0070】
前記化粧料組成物に含まれる選択したフラクタル粒子とともに望ましい作用を実現するのに必要な屈折率整合ポリマーの量は、フラクタル粒子の吸油値を求めることによって推定することができる(ATSM D281,ASTM D1483)。前記化粧料組成物に含まれる屈折率整合ポリマーの量は、好ましくは吸油値の約70%以上で、より好ましくは選択したフラクタル粒子の吸油値の85〜100%である。
【0071】
変角分光光度計はソフトフォーカスまたはぼかし物質の有効性を測定し、粒子およびゲルの光拡散特性を明らかにするのに有用なin vitroツールである。ソフトフォーカス効果を定量するためのパラメータとして、広角(+/−55度)での光強度(L値)を利用できる。以下の例に使用する方法は、ソフトフォーカス効率を評価するためのパラメータとして、フィルム上の光線の広がり(後方拡散)の定量による前方散乱に基づくパスカルの方法に類似する。開示内容全体が参考として本明細書で援用される(非特許文献6)を参照のこと。
【0072】
化粧料組成物
本発明の化粧料組成物は単相水性または非水性組成物として調製されうる。好ましくは本発明の化粧料組成物は乳剤として調製される。こうした乳剤は水中油型(水中シリコーン型を含む)乳剤、油中水型(シリコーン中水型を含む)乳剤あるいは油中水中油(o/w/o)型または水中油中水(w/o/w)型などの多重乳剤があるが、好ましくは水中シリコーン型乳剤である。油相はシリコーン油、シリコーン以外の有機油またはこれらの混合物から成ってよい。好ましくはないが、前記組成物は、使用時に振盪によって混和させる2つの非混和相から構成することもできる。
【0073】
本発明のフラクタル粒子および屈折率整合ポリマーを含有するゲル相に加えて、本発明の組成物には、肌に皮膜として塗布されると肌に審美的メリットを付与するために応用された1種または2種以上の有効成分および/または化粧品製品に特別な望ましい物理的特性を与え、製品性能の要件を満たし、もしくは(特殊型の)乳剤、溶液などの組成物としての種類を確立するために、1種または2種以上の添加剤または賦形剤(本明細書では添加剤と賦形剤を総称して添加剤とする)が含まれることもある。有効成分および/または添加剤は、要望によりまたは化学系による制限に基づき、ゲル相、別の相またはそのいずれかに存在する。
【0074】
好適な活性成分には肌または他の生体表面を着色する色素、乳白剤および光拡散剤、日焼け止め剤、紫外線吸収剤、皮膚軟化剤、保湿剤、閉塞物質、抗酸化剤、表皮剥離剤、抗酸化剤、抗炎症剤、皮膚ホワイトニング物質、研磨剤、抗ざ瘡剤、ヘアトリートメント剤、保湿剤、軟化剤、湿潤剤、抗しわ成分、コンシーラ、マット仕上げ剤、蛋白質、抗酸化剤、ブロンジング剤、溶剤、紫外線(UV)吸収剤、皮脂吸収剤、中和剤がある。化粧品への使用が許容されるあらゆる成分、すなわちInternational Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,10th Ed.(以下INCIとする)に記載の成分および互換性のあるそれらの組み合わせを利用できることは、当業者に理解される。
【0075】
好適な添加剤には皮膜形成剤、溶剤、増粘剤などの粘度と流度の調節剤、乳化剤を含む表面活性剤、ヒドロトロープ、乳化安定剤、可塑剤、充填剤および増量剤、緩衝剤、酸および塩基を含むpH調節剤、キレート剤、結合剤、発泡剤、香料、保存剤および抗微生物剤ならびに互換性のあるこれらの組み合わせがある。
【0076】
本発明の化粧料組成物に使用する好適な活性成分および添加剤はInternational Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(一般にINCI)(10th Edition,2006)(Cosmetic and Toiletries Association)に記載されている。一般に、具体的な材料の記載はINCI採用の命名法を利用している。当業者に理解されるように、活性成分および添加剤は目的とする機能を発揮する量で、本発明の化粧料組成物に組み入れられる。一般にこの量は組成物の重量の約0.001〜25%であり、より一般的には0.01〜15%、特に0.1〜10%である。
【0077】
前記化粧料組成物はナイロン(例えばSP−500およびOrgasol2002(登録商標)として販売されているNylon12(Cabot))、ポリ(メチルアクリル酸)(PMMAまたはメチルメタクリレートクロスポリマーとも呼ばれるCAS No.25777−71−3)、ポリエチレン、ポリスチレン、エチレン/アクリル酸コポリマー(例えばEA−209(Kobo))およびTeflon等のフッ素化炭化水素など、化粧品分野で既知のポリマー光拡散物質を含有してもよい。ポリマー光拡散物質は好ましくはナイロンであって、組成物重量の約0.01〜10%、好ましくは約0.1〜5%の濃度で存在する。窒化ホウ素、硫酸バリウム、ホウケイ酸アルミナカルシウムといったケイ酸塩などの無機光拡散物質も利用でき、典型的には重量で約0.01〜10%、好ましくは約0.1〜5%で含まれる。
【0078】
本発明の化粧料組成物の粒子含有率は固形分約1〜80%であり、好ましくは約3〜40%、より好ましくは5〜30%である。肌に塗布された最終乾燥皮膜には固形分約1〜80%、好ましくは約5〜60%、より好ましくは10〜40%が含まれる。
【0079】
本発明の化粧料組成物は、例えば肌の感触を高めるクリーム、ペーストおよびローションを形成するため、組成物の粘度を調節する増粘剤などの粘度調節剤を乳化剤とともに含有してもよい。好適な粘度調節剤にはデンプンのほか、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、陽イオンセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ビーガムまたは粘土などのケイ酸塩、キサンタンまたはグアールガムなどの多糖類、カルボキシビニルポリマーのカルボマーなどの親水性ポリマーがある。粘度/流度調節剤は組成物重量の約0.1〜10%、組成物に含有される。
【0080】
化粧品乳化剤は水中油型または油中水型乳化剤が好ましい。好ましくは油相はシリコーン油、乳化剤はシリコーン乳化剤である。乳化剤は、屈折率を一致させるフラクタル粒子の屈折率に等しくなるように選択することもできるが、屈折率整合ポリマーの代替物ではない。
【0081】
乳化剤は約0〜10%、好ましくは約0.1〜6%、より好ましくは約3〜5%の濃度で含有される。好適な乳化剤の非限定例にはグリセロールモノステアレート、PEG12Dimethicone(Dow Corning)、RM2−2051(登録商標)(Dow Corning)、シリコーンに乳化させた水性ポリアクリレートの乳剤(ジメチコンおよびシクロペンタシロキサン)、アルキルメチルシロキサンコポリオール(Dow Corning5200)、PEG11メチルエーテルジメチコン(Shin Etsu)、シクロペンタシロキサン/PEG/PPG18/18ジメチコン(Dow Corning5225C)がある。
【0082】
本発明の化粧料組成物は、これらに限定されないが、化粧液、すなわち種々の希釈度で様々な組み合わせのエラストマーを含有するシリコーン化合物等の非閉塞性の皮膜形成剤を含有してもよい。好適な化粧液の例には、シクロペンタシロキサンおよびアミノプロピルジメチコン(Cosmetic fluid1486−NH)(Chemisil製)、シクロメチコンおよびジメチコン(Cosmetic fluid1684−DM)(Chemisil製)ならびに低粘度と高粘度のポリジメチルシロキサンの混合物(Dow Corning1413Fluid(登録商標))等(Dow Corning)がある。好ましくは低粘度ポリジメチルシロキサンと高粘度ポリジメチルシロキサンの配合物(Dow Corning1413Fluid(登録商標))(Dow Corning)である。
【0083】
一実施形態において、本発明の化粧料組成物は無着色である。
好ましい実施形態において、本化粧料組成物は1種または2種以上の色素を含有し、色素は典型的にフラクタルゲル相とは異なる相に存在する。本組成物に使用される色素は無機物および/または有機物でありうる。本発明の化粧料組成物は着色効果を発揮するため、化粧料組成物の重量の0.1%以上の色素を含有する。色素の含有率は好ましくは重量ベースで約0.25〜15%、最も好ましくは0.1〜10%である。色素は適正なサイズ範囲を有さない、適正な次元性を有さない、または荷電粒子でないため、本発明のフラクタル粒子ではない。本明細書で使用する用語「色素」にはレーキおよび単一色素または色素の組み合わせが含まれる。D&C色素等の着色料およびカルボニル誘導体等のセルフタンニング剤あるいはジヒドロキシアセトン(DHA)またはエリスルロース等の食用着色料も使用してよい。色素と着色料は本明細書において同義に使用する。
【0084】
好ましくは色素はルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の酸化チタニウム、酸化第二鉄、酸化第一鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、アシルグルタミン酸酸化鉄などの酸化鉄、酸化クロミウム、水酸化クロミウム、オキシ塩化ビスマス、マンガンバイオレット、酸化セリウム、ウルトラマリンブルー、カルミンならびにこれらの誘導体および混合物から成る群から選択される。より好ましくは色素は酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄およびこれらの混合物である。フラクタル粒子ネットワークと相乗的に作用するよう、色素を表面修飾し、疎水性または親水性にすることもできる。
【0085】
本発明の化粧料組成物は光学的なきらめきとつやを付与するため、または絹のような手触りを提供するために、これらに限定されないが、マイカ、セリサイト(白雲母の微粒子型)等の乳白剤(真珠光沢剤)も含んでよい。これらの添加剤は約0.1〜10%、好ましくは約0.5〜5%の量で存在してよい。
【0086】
本発明の化粧料組成物は、拡延および潤滑特性のための基剤として、あるいは本化粧料組成物の1種または2種以上の他の成分の媒体を提供するための賦形剤として、油相溶剤も含有してよい。こうした溶剤には、水、有機液、特にアルコールおよび炭化水素液、シリコーン液、親水性および疎水性ポリマーなどがあり、約0.5〜90%、好ましくは約5〜50%、最も好ましくは10〜35%の濃度で存在してよい。好ましい油相溶剤はシクロテトラシロキサン(Cyclo−2244Cosmetic Grade Silicone(D4))(Clearco製)、シクロペンタシロキサン(Cyclo−2245Cosmetic Grade Silicone(D4))(Clearco製)、シクロペンタシロキサン/シクロヘキサシロキサン混合物(D5/D6Blend)Cyclo−2345Cosmetic Grade Silicone(Clearco製)およびシクロメチコン/ジメチコノール混合物(D5/D4Blend)Cyclo−1400Cosmetic Grade Silicone(Clearco製)等のシクロメチコンである。より好ましくはD5である。
【0087】
水は一般に組成物重量の約10〜90%、好ましくは約40〜80%、最も好ましくは約40〜70%の量で含有される。好適な水相溶剤はエタノール、プロパノール、ヘキサノールのような炭素分子が8個未満の低分子量アルコールであり、ほかに多価アルコール、特にグリコールがある。好適なグリコールはプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコールおよび1,2−オクタネジオールである。好適な多価アルコールにはソルビトールおよびグリセリンがある。これらは重量で約1〜50%、好ましくは5〜35%の量で存在してよい。
【0088】
場合により、塩化ナトリウムなどの電解質が約0〜5%、好ましくは約0.5〜2%の濃度で添加されてよい。
【0089】
さらに、本発明の化粧料組成物は一般に、フラクタル粒子が必要な反対正味表面電荷を有するよう組成物を所望のpHに調整するため、pH調整剤を含有する。好適なpH調整剤は当該技術分野で周知の有機酸およびミネラル酸である。乳酸ナトリウム等、確立されたpHを維持するための緩衝剤が取り入れられることもある。
【0090】
さらに本発明の化粧料組成物に導入される他の化粧品活性成分および添加剤は、本発明によって追究される有益な効果を損なわない種類および量でなければならないことは理解される。
【0091】
本発明の化粧料組成物は、単に光を反射して輝きのある外観を作り出す組成物、単に肌を被覆し、肌に白味を与える組成物、あるいは光学的ぼかしまたは空間充填の両方でなく、いずれか一方の作用しかない組成物に比べて、化粧料組成物の皮膜の光学的特性を改善する。肌に塗布されると、組成物は、肌をより若々しく滑らかに見せ、色調を均一にする。
【0092】
高い微粒子負荷およびネットワーク形成などのゲル構造の物理的特性によって、あらゆるファンデーションの上塗りに適した滑らかな表面が得られる。図5に示すように、着色化粧品の下地剤として使用した場合、光学層によって肌からの独特の「光放出」効果が得られる。光学層は肌の自然な透明感を模し、これを増強する。光が光学層を通過すると、着色層による拡散反射によって「背面照明」効果が生まれ、ファンデーションを明るく見せ、さらに自然で若々しい外観を与える。
【0093】
本化粧料組成物はパウダー、ケーキ、ペンシル、スティック、軟膏、クリーム、ミルク、ローション、液相、ゲル、乳剤、乳化ゲル、ムース、フォーム、スプレー、拭き取り布など、様々な形態をとりうる。好ましくは本化粧料組成物はリキッドファンデーションまたはパウダーファンデーションに用いられる。本フラクタルゲルはこれらに限定されないが、液体(懸濁液または溶液等)、ゲル、乳剤、乳化ゲル、ムース、クリーム、軟膏、ペースト、セラム、ミルク、フォーム、バーム、エアロゾル、リポソーム、固体(例えば圧縮パウダー)、無水油およびワックス組成物等、化粧品としての使用が許容される賦形剤に組み入れることができる。好ましくは本化粧料組成物はリキッドファンデーションまたはパウダーファンデーションに用いる。より具体的には、化粧品にはスキンローション、スキンミルク、スキンクリーム、ゲルなどの顔のスキンケア用品ならびにファンデーション、ファンデーションの下地化粧品、ほお紅、口紅、アイシャドー、アイライナー、ネイルエナメル、コンシーラ、マスカラなどのメークアップ用品のほか、体のメークアップ用品または日焼け止め製品が含まれる。
【0094】
使用方法
本明細書において開示し特許請求する化粧料組成物の使用方法は、肌の審美的外観の改善に関するものであり、特に顔、首あるいは唇またはその周囲のしわ、小じわ、毛穴、肌の欠点の1つまたは2つ以上をぼかすか、隠す方法、しみ、そばかす、赤み、クモ状静脈および目の周囲のくまなどの肌の欠点を修正する方法、肌の色を強調するか改善する方法、メークアップの仕上げを改善する方法ならびに髪、まつげ、眉毛に塗布する方法を含むが、これらに限定されない。
【0095】
本発明の化粧料組成物は、前記のようにフラクタルゲルによる固有のレオロジー特性を考慮すると、毛髪用化粧品、特にマスカラとしての使用に好適である。本発明の組成物は剪断力下では自由に流動するため、ブラシや適切なアプリケータで塗布することができる。剪断力が除去されると、本組成物はより粘度の高いゲル状態に速やかに戻る。本組成物はフラクタル、つまり幾何学的形状を維持できる多孔性の網状構造であるため、毛髪を被覆し、ボリュームを出すことができる。そのため、特に(前述のように)皮膜形成剤を配合した場合、マスカラとして理想的であり、細くなった毛髪を処置するためのボリュームを出す製品として最適である。
【0096】
本発明のフラクタルゲルを用いて改善できる顔のしわおよび肌の欠点の例には、眉間のしわと呼ばれる眉毛間を走る不機嫌な印象のしわ、口に対して垂直に走る口周囲のしわまたは喫煙者のしわ、口の継ぎ目と呼ばれる口角のしわ(マリオネットライン)、心配しているように見える額に走るしわ、目元の小じわとして知られる目尻のカラスの足跡、ほうれい線と呼ばれる小鼻から口角に走る深い笑いじわ、頬のへこみ、ざ瘡痕、何らかの顔の瘢痕、創傷または熱傷の瘢痕、ケロイド、目の周囲のくまを軽減すること、毛穴またはしみ、加齢斑、ほくろ、母斑を見えにくくすること、唇の境界を明確にすること、人工またはセルフタンニング、ならびに肌の色むらや暗さを軽減することなどがあるが、これらに限定されない。
【0097】
一実施形態において、本発明のフラクタルゲルはファンデーション、仕上げ用パウダー、ほお紅、コンシーラ、スキンケア製品、マスカラ、口紅などに有用な拡延性と流動性を備えた油脂分の少ない化粧料組成物である。有効なぼかしに必要な量でスキンケア製品またはメークアップ製品の配合に加えることができる。別の実施形態において、固形組成物は固体様自己支持体を備えるために、実質的にゲル化される。
【0098】
当業者は、本組成物に使用される成分の性質および本組成物の目的とする用途を考慮し、総合的な知見に基づき、適切な提供形態およびその調整方法も選択することができる。
【0099】
顔のすじおよびしわは顔のいたるところに存在するが、唇および目の周囲に最も多く発生する。しかし、本組成物は、しわ、小じわ、毛穴および肌の欠点を軽減するなど、ぼかし効果が望まれる身体のあらゆる部位に適用できることは、当業者には理解される。非限定例として、セルライトまたは白斑を見えなくする、クモ状血管、ほくろ、加齢斑、しみ、ざ瘡痕および瘢痕、そばかす、母斑および静脈瘤を隠す、美容外科手術、熱傷、肌の伸展などの外傷による肌の損傷を隠す、肌の産毛を見えにくくするなど肌の欠点を隠すことのほか、肌を紫外線から保護することがある。
【0100】
本明細書に記載の化粧料組成物は、安全かつ有効な量の組成物を肌の領域に局所塗布することによって使用できる。有効量は、各使用者が容易に判断することができる。
【0101】
本明細書に使用する用語「安全かつ有効な量」は、肌の外観の「光学的ぼかし」と空間充填の両方を顕著に誘導するのに十分高く、かつ当業者の健全な判断の範囲で過度の副作用(重大な肌の刺激または感作)を回避するのに十分低い化合物、組成物または他の物質の量を意味する。化合物、組成物または他の物質の安全かつ有効な量は、処置する個々の肌、年齢および処置する生物学的対象の物理的状態、肌の状態の重症度、処置期間、併用療法の性質、使用する具体的な化合物、組成物または他の物質、特別に利用する化粧品としての使用が許容される局所担体ならびに当業者の知見と専門技術内の因子によって異なる。
【0102】
本組成物は、数日間、数週間、数カ月間または数年間にわたってあらゆる間隔で1回、2回またはそれ以上の回数使用することができる。本組成物は、例えば1週間、2週間または3週間以上の連日使用など、特定の計画に従って使用することも、継続的な連日使用を目的とすることもできる。本発明のメークアップ組成物は使用期間の終了後に除去し、必要時に再塗布してもよい。本組成物は一般に肌に軽くすり込むように塗布するが、塗布の方法は当該技術分野で既知のすべての方法が可能であり、前記の方法に制限されない。組成物は必要に応じて石けんと水または他の化粧品用クレンジング剤を用いて除去することができる。
【0103】
本発明は肌の治療にも関する。本発明のフラクタルゲルは、これらに限定されないが、ざ瘡治療薬、セルフタンニング成分、抗炎症薬、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗酵母薬、眼科用薬、鎮痛薬、フケ防止剤および抗脂漏薬、過角質溶解剤、乾癬治療薬、皮膚ライトニング薬、創傷治癒薬、熱傷治療薬、日焼け治療薬、ヘアトリートメント剤、育毛製品、疣贅除去剤、鎮痒薬およびホルモンなどの医薬品組成物(ただし、これに限らない)と組み合わせて、またはこれらに付属して使用することができる。
【0104】
本発明のフラクタルゲルはこれらに限定されないが、皮膚軟化剤、日焼け止め剤、加齢斑治療薬、色素除去剤、表皮剥離薬、抗糖化エンドポイントブロッカーなどの抗加齢薬などの美容薬とともに使用することができる。特に日焼け止め剤および紫外線フィルターは、一般に有害な太陽光線による加齢プロセスの悪化を防ぐことから、スキンケア製品の重要な美容活性成分である。これらの活性成分は一般に約2〜50、好ましくは約6〜30のSPF値を提供する量で含有される。
【0105】
当業者は、本組成物に使用される成分の性質および本組成物の目的とする用途を考慮し、総合的な知見に基いて、適切な提供形態およびその調製方法も選択することができる。
【0106】
前記組成物を含むキットも考えられる。本発明の組成物は個別に容器に包装することもでき、容器、説明書または説明用パンフレットとともにキットの形で包装することもできる。
【0107】
調製
本発明の方法に有用な組成物は、一般に当該技術分野で局所組成物を調製する方法として知られるような従来技術によって調製される。こうした方法では典型的に、加熱、冷却、真空の適用などを行うか、または行わずに、1つまたは2つ以上の工程で成分を比較的均一な状態に混和する。典型的にフラクタルゲルの調製では、好適な溶剤(分散剤)でそれぞれのフラクタル粒子の分散液を調製し、pH調整剤で分散液のpHを調整した後、ゲルが形成されるように剪断力下で分散液を混和する。場合により、成分の特性により分散液の一方または両方を予熱する必要がある。pH調整剤はそれぞれの分散液に個別に加えるのではなく、混和後の分散液に添加してもよい。次に希望の活性成分および添加剤とともに、屈折率整合ポリマーをゲルに組み入れてよい。当該技術分野で周知のように、添加剤のなかには、溶剤との予混合の状態で添加しなければならないものもある。得られたゲルはそのまま利用することができ、しわおよび肌の欠点をぼかすためのスキンケアまたはメークアップ組成物をそのままで構成することができる。
【0108】
代わりに、前述のように多相性の化粧料組成物にフラクタルゲルを組み入れることもできる。例えば、フラクタルゲルと組み合わせるために成分の1つまたは2つ以上を予混合するなど、既知の方法に従い、別の相を作製する。前述のように、ポリマーの全体または一部をこの別の相に組み入れることもできる。高温で予混合した場合は、乳剤を確立するため、組成物の適切な冷却が必要である。
【0109】
以下の実施例は、本発明を図示し、当業者に本方法を理解させるために、本発明の具体的な態様を説明するものである。本実施例は本発明とその種々の態様の理解および実践に有用な方法を単に具体的に示すものであることから、本発明を制限するものとして解釈するべきではない。
【0110】
本発明の開示のために、本発明の特定の好ましい実施形態および代替形態を定めているが、当業者に開示された実施形態の変更が生じることもある。
【実施例】
【0111】
実施例1−フラクタルゲル
以下の実施例は、フラクタルゲルネットワークを形成するための高表面積粒子と低表面積粒子の併用を示しており、これに限定することを意図したものではない。
【0112】
【表3】

【0113】
冷却ジャケットを装備した高剪断攪拌器を用いて粒子分散液を調製する。攪拌器に水(全量の75%)およびグリコール酸を加えた。高剪断力下でシリカを緩徐に添加した。シリカを添加した後、高剪断力下で分散液を5分間攪拌した。最後に残る25%の水を加え、高剪断力下でさらに5分間攪拌した。水酸化ナトリウムまたは水酸化アンモニウムなどの塩基性塩溶液を用いて、分散液の酸性度をpH4に調整した。同様の方法で各粒子の分散液を調製した。さらに、ゲルに含まれるシリカおよびアルミナが所望量に達するまで、高速攪拌器を用いて既定量の分散液を混和した。混和後、得られたゲルを好適な化粧品担体と混和した。
【0114】
実施例2−フラクタルゲルの光学的ぼかし能の評価
モデルGSP−1B(変角分光光度計)(Murakami Color Research Laboratory)を用いて、透過モードで実験を行った。光源の角度は−65〜+65°の範囲であった。10°増加ごとにデータを収集した。透過モードでの光強度(L値で表す)は角度に伴って変化した。光源が標準から離れると、光強度は低い角度から高い角度へ低下し、これらの半透明試料についてベル型曲線が得られた。
【0115】
肌(半透明)の光拡散プロファイルは、表面下光の拡散の増大を示す透過光の低入射角でのL値の減少と、光学的ぼかし効果を示す透過光の高入射角でのL値の増大によって自然な外観が定義されるベル曲線の形状に類似すると考えられる。好ましい組成物は、透過光の低入射角で得られるL値と、透過光の高入射角で得られるL値との差が最小の組成物である。さらに、低い入射角ではL値が低いことが望ましい。
【0116】
本試験で評価した試料は、1)粒子を含まない表4の化粧料組成物(対照)、2)フラクタル粒子ゲルネットワーク(シリカ:アルミナの比が2:1)を10重量%加えた表4の対照組成物(発明)、および3)平均直径12.5ミクロン、表面積4m/gの球状ナイロン(Lipo Chemicals)を10重量%加えた表4の対照組成物(標準)であった。
【0117】
【表4】

【0118】
試料を清潔な無色のガラス板に載せ、一晩乾燥させた(2mmの湿潤皮膜約75μm)。異なる配合試料の固形分が不明であったため、これらの乾燥皮膜の最終厚は求められなかった。反復試料の検査は行わなかった。
【0119】
図6には、1)粒子を加えないゲルベース、2)フラクタル粒子ゲルネットワーク10重量%を含有する化粧料組成物、および3)ナイロン10重量%を含有する化粧料組成物の正常な表面に対して、−65〜+65°で測定した透過光のL値の角度依存性を示す。肌または他の生体表面に塗布した場合に改善を至適化するには、ピークL値と高(すなわち低角度)L値との差を最小化することによって肌の自然な透明感を模す必要がある。フラクタル粒子を含有する皮膜は、化粧品の基本組成物およびこれにナイロン粒子を加えたものと比較して、化粧料組成物に必要な光学的特性を示すベル型曲線が広くなる。図6に示すように、対照にナイロン粒子を添加しても、対照の透過プロファイルに対する影響はなく、ナイロン含有組成物の皮膜は対照に比較して低角度での透過率が高い。
【0120】
図7には、粒子非含有化粧料組成物のL値で正規化したフラクタル粒子ゲルネットワーク10重量%含有化粧料組成物(試料A)およびナイロン10重量%含有化粧料組成物(試料B)の平均L値を示す。正常な表面に対するL値の範囲は15〜65°である。大きいL値は、組成物の光学的ぼかし特性の改善を意味する。さらにプロット図も、従来の粒子材料よりも有益な光学的ぼかし効果を発揮するフラクタル粒子ゲルネットワークの高い有効性を示す(透過光の低入射角ではL値は低く、高入射角ではL値は高くなる)。
【0121】
この結果から、本発明のゲルは優れた光学的特性を備え、化粧品中で非常に効率的なソフトフォーカス効果を発揮することが示される。特にフラクタル粒子は、ナイロンに比べてぼやけ効果を高める固有の構造を備えている。
【0122】
実施例3
水中油型乳剤にフラクタル粒子ゲルを組み入れた化粧料組成物の実施例を表5に示す。
【0123】
【表5】

【0124】
表5の実施例IからVIIの配合物を以下の要領で調製する。下記の手順に従い、成分を混和する。
【0125】
以下の方法で水中油型乳剤を形成する。1リットルビーカーに水性成分を入れ、ホットプレートを用いて120°Fに加熱する。高速ホモジナイゼーションヘッド(乳化スクリーン使用の3/4チューブ型インペラ)を装着したホモジナイザを用い、3600rpmで水性組成物を混和する。別の1リットルビーカーに油相成分を加え、十分に混和した後、水性成分に添加する。油相は高剪断混和(500rpm超)下で徐々に加え、一度120°Fで30分間混和する。3000rpmの低剪断下で乳剤を室温まで冷却する。冷却後、200〜400rpmの低剪断下で乳剤組成物を既定量のフラクタル粒子ゲルと混和する。得られたメークアップ組成物は包装できる状態にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体基質に適用する化粧料組成物であって、
a)所定のpHで反対の表面電荷を有する第一のフラクタル粒子と第二のフラクタル粒子から構成され、それぞれのフラクタル粒子が1通りの屈折率を有するフラクタルゲルと
b)一方のフラクタル粒子の屈折率と実質的に等しい屈折率を有するポリマーとから構成される化粧料組成物。
【請求項2】
前記化粧料組成物が乳剤である請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記乳剤が水中油型乳剤である請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記乳剤が水中シリコーン型乳剤である請求項3に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
前記フラクタル粒子の直径が約50〜300nmである請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
前記フラクタル粒子の直径が約100〜250nmである請求項5に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記フラクタル粒子がヒュームド・シリカ、ヒュームド・アルミナ、ヒュームド・チタン、ヒュームド・ジルコニア、ヒュームド・セリア、ヒュームド・酸化亜鉛、ヒュームド・酸化インジウムスズおよびそれらの混合物からなる群から選択される金属酸化物粒子である請求項1の化粧料組成物。
【請求項8】
前記フラクタル粒子が組成物重量の約5%から約80%を占める請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
前記屈折率整合ポリマーが、シリコーン由来、有機由来、極性、非極性、親水性、疎水性のポリマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1の化粧料組成物。
【請求項10】
前記屈折率整合ポリマーがポリグリコールである請求項9に記載の化粧料組成物。
【請求項11】
前記屈折率整合ポリマーが、Bis(trimethylsilyl)silicylate、フェニルトリメチコン、PEG12Dimethiconeプロピレングリコールジカプリレート、グリセリン、ジ(エチレン)グリコール、グリセロールおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項9に記載の化粧料組成物。
【請求項12】
前記屈折率整合ポリマーが屈折率の整合するフラクタル粒子の吸油値の少なくとも約70%の量で存在する請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項13】
前記屈折率整合ポリマーの屈折率がフラクタル粒子の屈折率の約0.05以内の範囲にある請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項14】
前記屈折率整合ポリマーがフラクタル粒子の屈折率の約0.005以内の範囲にある請求項13に記載の化粧料組成物。
【請求項15】
さらに溶剤を含有する請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項16】
前記溶剤が水、有機液、シリコーン液、親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーからなる群から選択される請求項15に記載の化粧料組成物。
【請求項17】
ナイロン、ポリ(メチルアクリル酸)、窒化ホウ素、硫酸バリウム、ポリエチレン、ポリスチレン、エチレン/アクリル酸コポリマー、フッ素化炭化水素、ケイ酸塩およびシリコーンならびにそれらの混合物および誘導体からなる群から選択されるポリマー光拡散物質を含有する請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項18】
粒子の含有率が前記組成物重量の約1%から約80%(固形分)である請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項19】
粒子の含有率が前記組成物重量の約10%から約40%(固形分)である請求項18に記載の化粧料組成物。
【請求項20】
さらに皮膜形成剤を含有する請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項21】
前記皮膜形成剤がシクロペンタシロキサンおよびアミノプロピルジメチコン、シクロメチコンおよびジメチコンならびに低粘度ポリジメチルシロキサンと高粘度ポリジメチルシロキサンの配合物からなる群から選択される請求項20に記載の化粧料組成物。
【請求項22】
さらに色素を含有する請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項23】
さらに乳化剤を含有する請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項24】
前記乳化剤が水中油型乳化剤を含有する請求項23に記載の化粧料組成物。
【請求項25】
前記水中油型乳化剤がシリコーン乳化剤を含有する請求項24に記載の化粧料組成物。
【請求項26】
さらに電解質、水、保湿剤、軟化剤、湿潤剤、抗しわ成分、コンシーラ、マット仕上げ剤、色素、蛋白質、抗酸化剤、キレート剤、溶剤、乳化剤、日焼け止め剤、紫外線吸収剤、皮脂吸収剤、香料、保存料、およびpH調整剤からなる群から選択される1種または2種以上の成分を、その意図する機能に必要な濃度で含有する請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項27】
所定のpHで逆の表面電荷を有する2種以上のフラクタル粒子のゲルネットワークについて、
b)肉眼的エラストマー粒子、
c)色素、および
d)皮膜形成剤
を含有し、前記ゲルネットワークが、さらにフラクタル粒子の少なくとも一方と屈折率の整合するポリマーを含有する乳剤に組み入れられることを特徴とするファンデーション組成物。
【請求項28】
所定のpHで逆の表面電荷を有する2種以上のフラクタル粒子のゲルネットワークについて、
b)肉眼的エラストマー粒子、
c)色素、および
d)皮膜形成剤、
を含有し、前記ゲルネットワークが、さらにフラクタル粒子の少なくとも一方と屈折率の整合するポリマーを含有する乳剤に組み入れられることを特徴とする下地化粧料組成物。
【請求項29】
前記組成物がパウダー、ケーキ、ペンシル、スティック、軟膏、クリーム、ミルク、ローション、液相、ゲル、乳剤、乳化ゲル、ムース、フォーム、スプレー、拭き取り布、液体(例えば懸濁液または溶液)、ペースト、セラム、ミルク、バーム、エアゾール、リポソーム、固体(圧縮パウダーなど)、無水油およびワックス組成物のグループから選択される形状であることを特徴とする請求項27に記載の化粧料組成物。
【請求項30】
前記組成物がパウダー、ケーキ、ペンシル、スティック、軟膏、クリーム、ミルク、ローション、液相、ゲル、乳剤、乳化ゲル、ムース、フォーム、スプレー、拭き取り布、液体(例えば懸濁液または溶液)、ペースト、セラム、ミルク、バーム、エアゾール、リポソーム、固体(圧縮パウダーなど)、無水油およびワックス組成物のグループから選択される形状であることを特徴とする請求項28に記載の化粧料組成物。
【請求項31】
スキンローション、スキンミルク、スキンクリーム、ゲル、ファンデーション、ファンデーションの下地剤、ほお紅、口紅、アイシャドー、アイライナー、ネイルエナメル、コンシーラ、マスカラ、体のメークアップ製品および日焼け止め製品からなる群から選択されるスキンケア化粧品である請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項32】
前記組成物が肌および唇のメークアップ組成物および/またはケア組成物であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項33】
しわ、小じわ、毛穴、肌の欠点および肌のトポロジーを軽減および/または隠すことによって肌の審美的外観を改善する方法であって、処置を行う肌領域に有効な量の請求項1記載の組成物を塗布する工程から成る方法。
【請求項34】
しわ、小じわ、毛穴、肌の欠点および肌のトポロジーを軽減および/または隠すことによって肌の審美的外観を改善する方法であって、
(a)処置を行う肌領域に有効な量の請求項22に記載の組成物を塗布する工程、および
(b)(a)の上にあらゆるファンデーションを塗布する工程から成る方法。
【請求項35】
a)請求項1に記載の化粧料組成物、b)前記化粧料組成物の使用方法に関する説明書、およびc)a)およびb)を収納する容器から成る化粧品キット。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

image rotate


【公表番号】特表2010−513544(P2010−513544A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543004(P2009−543004)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/085179
【国際公開番号】WO2008/079560
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(399130393)エイボン プロダクツ インコーポレーテッド (75)
【Fターム(参考)】