説明

改良された流動性を有するポリアミド成形用組成物

本発明は、熱可塑性ポリアミド、および、少なくとも1種のオレフィンと脂肪族アルコールの少なくとも1種のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとを含むコポリマー(ただし、コポリマーのMFIは、100g/10分以上である)をベースとする改良された流動性を有する熱可塑性成形用組成物と、これらの成形用組成物の調製方法と、さらには、電気産業、電子産業、通信産業、自動車産業、もしくはコンピューター産業向けの、スポーツにおける、医療における、家庭内における、または娯楽産業における、成形品を製造するための、これらの成形用組成物の使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の半結晶性熱可塑性ポリアミド、および、少なくとも1種のオレフィン(好ましくは1種のα−オレフィン)と脂肪族アルコールの少なくとも1種のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとを含む少なくとも1種のコポリマー(ただし、コポリマーのMFI(メルトフローインデックス)は100g/10分以上である)をベースとする成形用組成物と、これらの成形用組成物の調製方法と、さらには射出成形または押出を介して成形品または半製品を製造するためのこれらの成形用組成物の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
高流動性熱可塑性組成物は、多種多様な射出成形用途で関心が寄せられている。たとえば、電気工業、電子工業、および自動車工業で用いられる薄肉部品では、適切な射出成形機において射出圧力およびそれに対応する圧締力を最小限に抑えて材料を成形型に仕込むことできるように熱可塑性組成物が低粘度であることが要求される。このことは、いわゆる複数個取り成形型システムにおいて共有ランナーシステムを介して2つ以上の射出成形部に材料を同時仕込みする場合にもあてはまる。さらに、低粘度の熱可塑性組成物を用いれば、多くの場合、より短いサイクル時間を達成することが可能である。良好な流動性はまた、たとえば40重量%を超えるガラス繊維および/または鉱物含量で高充填された熱可塑性組成物の場合、とりわけ重要である。
【0003】
しかしながら、熱可塑性組成物が高流動性を有していたとしても、それから作製される実際の部品は厳しい機械的要件に付されるので、粘度が低下すると機械的性質を損なう可能性がある。
【0004】
高流動性かつ低粘度の熱可塑性成形用組成物を取得する方法はいくつか存在する。
【0005】
一方法では、極低分子量を有する低粘度ポリマー樹脂を熱可塑性成形用組成物のベースポリマーとして使用する。しかしながら、低分子量ポリマー樹脂の使用は、多くの場合、機械的性質(特定的には靭性)の犠牲を伴う。さらに、既存の重合プラントにおける低粘度ポリマー樹脂の調製は、設備投資を伴う複雑な介入を必要とすることが多い。
【0006】
他の方法では、ポリマー樹脂に添加剤として添加しうるいわゆる流動化助剤(流動化剤または流動化補助剤または内部滑剤とも呼ばれる)を使用する。
【0007】
これらの流動化助剤は、(非特許文献1)などのような文献から公知であり、たとえば、ポリオールの脂肪酸エステル、または脂肪酸とアミンとから誘導されるアミドでありうる。しかしながら、これらの脂肪酸エステル(たとえば、ペンタエリトリトールテトラステアレートまたはエチレングリコールジモンタノエート)は、ポリアミド、ポリアルキレンテレフタレート、またはポリカーボネートなどの極性熱可塑性物質に対して限られた混和性を有するにすぎない。それらの濃度は、成形品の表面で増加し、それゆえ、それらは、離型助剤としても使用される。しかしながら、ポリアミドの場合、加熱熟成時などに、とくに濃度が比較的高いと、湿分の吸収により、流動化助剤は、これらの成形品から表面に移行して、そこに濃縮されるようになる可能性がある。たとえば、被覆成形品では、これは、ペイントや金属への接着に関連した問題を引き起こす可能性がある。
【0008】
界面活性流動化助剤の代わりに、ポリマー樹脂と相溶しうる内部流動化助剤を使用することが可能である。この目的に好適な助剤の例は、ポリマー樹脂の極性に類似した極性を有する低分子量化合物または分枝状、高分枝状、もしくは樹枝状のポリマーである。これらの高分枝状もしくは樹枝状の系は文献から公知であり、それらの基剤は、たとえば、(非特許文献2)または(非特許文献3)に記載されるような分枝状のポリエステル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、またはポリアミンでありうる。
【0009】
(特許文献1)には、ナイロン−6、ナイロン−6,6、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)において、より低粘度になるように窒素含有第一世代四カスケードデンドリマー:1,4−ジアミノブタン[4]プロピルアミン(N,N’−テトラビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン)DAB(PA)を使用することが記載されている。ポリアミドでは、より低粘度になるようにDAB(PA)を使用しても、実際上、得られる成形用組成物の耐衝撃性に影響を及ぼすことはないが(差<5%)、PBTの場合、耐衝撃性は15%超低下する。
【0010】
(特許文献2)には、材料の剛性および極限引張強度を増大させると同時にブレンドの粘度および破断点引張り歪みを低下させるために、リジッドな芳香族単位を有する三次元分枝状ポリマーをポリアミドとブレンドして使用することが記載されている。
【0011】
(特許文献3)には、芳香族化合物をベースとしカプロラクタム重縮合中に添加される(したがって共重合される)高分枝状ポリマーの使用が記載されている。この場合、高分枝状ポリマーを共重合してなるポリアミドを含む組成物は、高分枝状成分を含まない比較組成物よりも良好な機械的性質および良好な流動性を呈する。重合反応中における高分枝状ポリマーの添加については記載されているが、ポリマー溶融体への添加については記載されていない。
【0012】
原理的には、ポリアミドの流動性の改良は、フェノール、ビスフェノール、および類似の低分子量添加剤の添加により達成することも可能である。(特許文献4)には、ポリアミドとゴムとビスフェノールとを含む成形用組成物が記載されている。これらは、添加剤によりもたらされる改良された流動性を呈する。
【0013】
(特許文献5)には、吸水を減少させるためにポリアミドにフェノール系化合物を添加することが記載されている。フェノール−ホルムアルデヒド樹脂については言及されていない。
【0014】
多くの場合、流動性の改良と併行して、材料の靭性を改良することが望ましい。このために、エテンとアクリル酸またはメタクリル酸のエステルとをベースとし靭性の改良をもたらす他のコポリマーを、使用される熱可塑性物質に添加することも可能である。
【0015】
(特許文献6)および(特許文献7)には、アクリレートグラフトポリオレフィンを用いてポリアミドの靭性を改変することが記載されている。アクリレート変性ポリオレフィンの使用により溶融粘度の増加を引き起こすことに力点が置かれている。
【0016】
(特許文献8)には、エテンと非反応性アルキルアクリレートとを含むコポリマーと、さらにはエテンと追加の反応基を有するアクリレートとを含むコポリマーとを含む混合物を利用して、熱可塑性物質(とくにポリアミドおよびポリブチレンテレフタレート)の靭性を改変することが記載されている。成形用組成物の流動性については論述されていない。
【0017】
(特許文献9)には、エテンと2−エチルヘキシルアクリレートとを含み100未満のMFI(メルトフローインデックス)を有するコポリマーを、ホットメルト接着剤混合物の成分として使用することが記載されている。半結晶性熱可塑性物質におけるエラストマーの変性および/または流動性の改良への応用については記載されていない。
【特許文献1】EP−A0682057
【特許文献2】WO−A95/06081 (対応米国特許第5,493,000号明細書)
【特許文献3】EP−A0994157 (対応AU6233499A)
【特許文献4】EP−A0240887 (対応米国特許第5,212,224号明細書)
【特許文献5】DE−A3248329 (対応米国特許第4,628,069号明細書)
【特許文献6】DE−A2758568 (対応米国特許第4,362,846号明細書)
【特許文献7】DE−A2801585 (対応米国特許第4,362,846号明細書)
【特許文献8】EP−A1191067 (対応米国特許第6,759,480号明細書)
【特許文献9】FR−A2819821
【非特許文献1】プラスチック(Kunststoffe)、2000年、第9巻、116〜118頁
【非特許文献2】プラスチック(Kunststoffe)、2001年、第91巻、179〜190頁
【非特許文献3】高分子科学の進歩(Advances in Polymer Science)、1999年、第143巻(分枝状ポリマーII(Branched Polymers II))、1〜34頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の目的は、ポリマー溶融体を添加剤で処理することにより、低粘度線状ポリマー樹脂を使用した時に、または文献に開示される添加剤を使用した時に発生する耐衝撃性や耐加水分解性などの性質の損失を容認する必要性をなんら生じることなく、ポリアミド重縮合体組成物の粘度を低下させることであった。剛性および極限引張強度に関して、ポリアミド組成物は、可能であれば、ポリアミドをベースとするプラスチック構造体用の材料の代替を問題なく行えるようにするために、添加剤で処理されていないポリアミド重縮合体組成物と著しく異ならないことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的ひいては内容の達成は、
A)99.9〜10重量部、好ましくは99.5〜30重量部の少なくとも1種の半結晶性熱可塑性ポリアミドと、
B)少なくとも1種のオレフィン、好ましくは1種のα−オレフィンと、脂肪族アルコール、好ましくは5〜30個の炭素原子を有する脂肪族アルコールの少なくとも1種のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとを含む0.1〜20重量部、好ましくは0.25〜15重量部、とくに好ましくは1.0〜10重量部の少なくとも1種のコポリマー(コポリマーB)のMFIは、100g/10分以上、好ましくは150g/10分以上である)、
とを含むポリアミド成形用組成物により提供される。
【0020】
本発明の目的では、MFI(メルトフローインデックス)は、常に、190℃かつ2.16kgの試験荷重で測定または決定されたものである。
【0021】
驚くべきことに、少なくとも1種の半結晶性熱可塑性ポリアミド、および、オレフィンと脂肪族アルコールのメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとのコポリマー(ただし、それらのMFIは100g/10分以上である)とを含む混合物は、それから調製される本発明に係る成形用組成物の溶融粘度の所望の低下をもたらすことが判明した。同等な流動性を有する純粋な熱可塑性重縮合体と比較して、本発明に係るポリアミド成形用組成物から作製される成形品は、より高い耐衝撃性を有することを特徴とする。成形用組成物は、薄壁技術において優れた使用適性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明によれば、組成物は、少なくとも1種の半結晶性熱可塑性ポリアミドを成分A)として含む。
【0023】
本発明に従って使用されるポリアミドは、種々の方法により調製可能であり、かつかなり異なる単位から合成可能であり、しかも各特定用途において、単独で使用可能であるか、または複数の性質を特定的に調整して兼備する材料を与えるべく、加工助剤、安定剤、ポリマーアロイパートナー(たとえば、エラストマー)、さもなければ強化材(たとえば、鉱物充填剤もしくはガラス繊維)で処理することが可能である。他のポリマー、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー)の含有物とのブレンドもまた、好適であり、適切であれば、1種または複数種の相溶化剤を使用することが可能である。たとえば強化ポリアミドの耐衝撃性などに関して、エラストマーを添加することによりポリアミドの性質を改良することが可能である。多種多様に兼備しうるので、かなり異なる性質を有する非常に多くの製品への利用が可能となる。
【0024】
所望の最終製品に応じて、さまざまなモノマー単位、所望の分子量を設定するためのさまざまな連鎖調整剤、さもなければ意図される後続の後処理用の反応基を有するモノマーを用いて、ポリアミドを調製すべく、多種多様な手順が開示されている。
【0025】
ポリアミドを調製するための工業的に適合する方法は、主に、溶融体で重縮合することにより進められる。ラクタムの加水分解重合もまた、この目的に合った重縮合である。
【0026】
本発明によれば、成分A)として好ましく使用されるポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸とからおよび/または5環員未満のラクタムからまたは対応するアミノ酸から出発して調製しうる半結晶性ポリアミドである。
【0027】
使用しうる出発原料は、脂肪族および/または芳香族ジカルボン酸、たとえば、アジピン酸、2,2,4−および2,4,4−トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、脂肪族および/または芳香族ジアミン、たとえば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、異性体ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、アミノカルボン酸、たとえば、アミノカプロン酸、ならびにそれぞれ対応するラクタムである。2種以上の記載のモノマーを含むコポリアミドが包含される。
【0028】
本発明によれば、カプロラクタムを使用することがとくに好ましく、ε−カプロラクタムを使用することがなかでもとくに好ましく、さもなければ配合される材料のほとんどは、PA6、PA66、ならびに他の脂肪族および/または芳香族ポリアミド、さらにはそれらに対応するコポリアミドをベースとする(ただし、これらの材料では、ポリマー鎖中の各ポリアミド基に対して3〜11個のメチレン基が存在する)。
【0029】
成分A)として本発明に従って使用される半結晶性ポリアミドはまた、他のポリアミドおよび/または他のポリマーとの混合物の状態で使用することも可能である。
【0030】
従来の添加剤、たとえば、離型剤、安定剤、および/または流動化助剤を、溶融体の状態でポリアミドと混合することが可能であるか、またはそれらの表面に適用することが可能である。
【0031】
本発明に係る組成物は、少なくとも1種のオレフィン、好ましくはα−オレフィンと、脂肪族アルコールの少なくとも1種のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとを含むコポリマー、好ましくはランダムコポリマーを、成分B)として含む。ただし、コポリマーB)のMFIは、100g/10分以上、好ましくは150g/10分以上、とくに好ましくは300g/10分以上である。好ましい一実施形態では、コポリマーB)の4重量%未満、とくに好ましくは1.5重量%未満、なかでもとくに好ましくは0重量%は、さらなる反応性官能基(エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミン、オキサゾリンからなる群から選択される)を含有するモノマー単位を含む。
【0032】
コポリマーB)の成分として好適なオレフィン、好ましくはα−オレフィンは、好ましくは2〜10個の炭素原子を有し、無置換でありうるかまたは1個もしくは複数個の脂肪族、脂環式、もしくは芳香族の基による置換を有しうる。
【0033】
好ましいオレフィンは、エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ペンテンからなる群から選択されたものである。とくに好ましいオレフィンは、エテンおよびプロペンであり、エテンは、なかでもとくに好ましい。
【0034】
記載のオレフィンの混合物もまた、好適である。
【0035】
他の好ましい実施形態では、コポリマーB)のさらなる反応性官能基(エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミン、オキサゾリンからなる群から選択される)は、排他的にオレフィンを介してコポリマーB)に導入される。
【0036】
コポリマーB)中のオレフィンの含量は、50〜90重量%、好ましくは55〜75重量%である。
【0037】
コポリマーB)は、オレフィンと併置される第2の成分によりさらに規定される。好適な第2の成分は、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルまたはアリールアルキルエステルであり、それらのアルキル基またはアリールアルキル基は、5〜30個の炭素原子により形成される。このアルキル基またはアリールアルキル基は、線状もしくは分枝状の状態をとることが可能であり、脂環式もしくは芳香族の基を含有することも可能であり、これと併置して1種または複数種のエーテル官能基またはチオエーテル官能基による置換を有していてもよい。これに関連する他の好適メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルは、ただ1個のヒドロキシ基と30個以下の炭素原子とを有するオリゴエチレングリコールまたはオリゴプロピレングリコールをベースとするアルコール成分から合成されるものである。
【0038】
たとえば、メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルのアルキル基またはアリールアルキル基は、1−ペンチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、1−ヘプチル、3−ヘプチル、1−オクチル、1−(2−エチル)ヘキシル、1−ノニル、1−デシル、1−ドデシル、1−ラウリル、または1−オクタデシルからなる群から選択されたものでありうる。6〜20個の炭素原子を有するアルキル基またはアリールアルキル基が好ましい。同様にとくに好ましいのは、同一個数の炭素原子を有する線状アルキル基と比較してより低いガラス転移温度Tを生じる分枝状アルキル基である。
【0039】
本発明によれば、とくに好ましいのは、2−エチルヘキシルアクリレートと共重合されたオレフィンを有するコポリマーB)である。記載のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの混合物もまた、好適である。
【0040】
この場合、コポリマーB)中のアクリルエステルおよびメタクリルエステルの全量を基準にして、60重量%超、とくに好ましくは90重量%超、なかでもとくに好ましくは100重量%の2−エチルヘキシルアクリレートを使用することが好ましい。
【0041】
他の好ましい実施形態では、コポリマーB)のさらなる反応性官能基(エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミン、オキサゾリンからなる群から選択される)は、排他的にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを介してコポリマーB)に導入される。
【0042】
コポリマーB)中のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの含量は、10〜50重量%、好ましくは25〜45重量%である。
【0043】
好適なコポリマーB)の特徴をなすのは、それらの組成だけでなく、それらの低い分子量である。したがって、本発明に係る成形用組成物に好適なコポリマーB)は、少なくとも100g/10分、好ましくは少なくとも150g/10分、とくに好ましくは少なくとも300g/10分のMFI値(190℃かつ2.16kgの荷重で測定される)を有するものだけである。
【0044】
成分B)として好適なコポリマーの例は、ロトリル(Lotryl)(登録商標)EHという商標でアトフィナ(Atofina)により供給される材料(通常はホットメルト接着剤として使用される)からなる群から選択することが可能である。
【0045】
好ましい一実施形態では、本発明に係るポリアミド成形用組成物は、成分A)およびB)に加えて、一連のC)、D)、E)、F)、およびG)の成分の1つまたは複数を含みうる。
【0046】
したがって、このタイプの好ましい一実施形態では、熱可塑性ポリアミド成形用組成物はまた、適切であれば、成分A)およびB)に加えて、
C)0.001〜70重量部、好ましくは5〜50重量部、とくに好ましくは9〜47重量部の少なくとも1種の充填剤または強化材
を含みうる。
【0047】
しかしながら、使用される充填剤または強化材はまた、2種以上の異なる充填剤および/または強化材(たとえば、タルク、雲母、シリケート、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、アモルファスシリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウム、ガラスビーズをベースとするもの)ならびに/あるいは繊維状の充填材および/または強化材(炭素繊維および/またはガラス繊維をベースとするもの)を含む混合物を含むことも可能である。タルク、雲母、シリケート、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、アモルファスシリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウム、および/またはガラス繊維をベースとする鉱物微粒子充填剤を使用することが好ましい。タルク、ウォラストナイト、カオリン、および/またはガラス繊維をベースとする鉱物微粒子充填剤を使用することがとくに好ましい。
【0048】
とくに、寸法安定性の等方性が要求されかつ高い耐熱寸法安定性が要求される用途では、たとえば、外側車体部品に関する自動車用途では、鉱物充填剤、特定的には、タルク、ウォラストナイト、またはカオリンを使用することが好ましい。
【0049】
同様に、このほかにとくに好ましいのは、針状鉱物充填剤の使用である。本発明によれば、針状鉱物充填剤とは、きわめて顕著な針状特性を有する鉱物充填剤のことである。例として挙げられうるのは、針状ウォラストナイトである。材料の長さ:直径比は、好ましくは2:1〜35:1、とくに好ましくは3:1〜19:1、最も好ましくは4:1〜12:1である。本発明に係る針状鉱物の平均粒子サイズは、シーラス・グラニュロメーター(CILAS GRANULOMETER)を用いて決定したときに、好ましくは20μm未満、とくに好ましくは15μm未満であり、10μm未満であることがとくに好ましい。
【0050】
先にすでに記載したように、充填剤および/または強化材は、適切であれば、たとえば、シランなどをベースとするカップリング剤またはカップリング剤系を用いて、表面改質されたものであってもよい。しかしながら、前処理は、絶対的に不可欠というわけではない。とくに、ガラス繊維を使用する場合、シランに加えて、ポリマーディスパージョン、皮膜形成剤、分枝化剤、および/またはガラス繊維加工助剤を使用することも可能である。
【0051】
本発明に従ってとくに好ましく使用されるガラス繊維(その繊維直径は、一般的には7〜18μm、好ましくは9〜15μmである)は、連続フィラメント繊維の形態でまたは細断もしくは粉砕されたガラス繊維の形態で添加される。繊維は、好適なサイズ剤系およびカップリング剤またはカップリング剤系(たとえば、シランをベースとするもの)を備えたものであってよい。
【0052】
シランをベースとするよく知られた前処理用のカップリング剤は、たとえば、一般式(I):
(I)(X−(CH−Si−(O−C2r+14−k
〔式中、置換基は、以下のとおりである:
X:NH−、HO−、または
【0053】
【化1】

【0054】
q:2〜10、好ましくは3〜4の整数、
r:1〜5、好ましくは1〜2の整数、かつ
k:1〜3の整数、好ましくは1〕
を有するシラン化合物である。
【0055】
好ましいカップリング剤は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、さらには置換基Xとしてグリシジル基を含有する対応するシランからなる群から選択されるシラン化合物である。
【0056】
充填剤を配設するためのシラン化合物の一般的な使用量は、表面コーティングに用いられる鉱物充填剤を基準として、0.05〜2重量%、好ましくは0.25〜1.5重量%、特定的には0.5〜1重量%である。
【0057】
成形用組成物または成形品を与えるための処理の結果として、成形用組成物中または成形品中の微粒子充填剤のd97値またはd50値は、最初に使用した充填剤の値よりも小さくなることもある。成形用組成物または成形品を与えるための処理の結果として、成形用組成物中または成形品中のガラス繊維の長さ分布は、最初に使用した材料の分布よりも短くなることもある。
【0058】
他の選択肢の好ましい一実施形態では、ポリアミド成形用組成物はまた、適切であれば、成分A)およびB)ならびに/またはC)に加えて、
D)0.001〜65重量部の少なくとも1種の難燃添加剤
を含みうる。
【0059】
成分D)で使用しうる難燃剤は、相乗剤を有する市販の有機ハロゲン化合物であるか、または市販の有機窒素化合物であるか、または単独もしくは混合物の状態の有機/無機リン化合物である。水酸化マグネシウムまたはCaMg炭酸塩水和物(たとえば、DE−A4236122(対応CA2109024A1))などの鉱物難燃添加剤を使用することも可能である。脂肪族もしくは芳香族のスルホン酸の塩を使用することも可能である。ハロゲン含有化合物(特定的には、臭素化化合物および塩素化化合物)として挙げられうる例は、エチレン−1,2−ビステトラブロモフタルイミド、エポキシ化テトラブロモビスフェノールA樹脂、テトラブロモビスフェノールAオリゴカーボネート、テトラクロロビスフェノールAオリゴカーボネート、ペンタブロモポリアクリレート、臭素化ポリスチレン、およびデカブロモジフェニルエーテルである。好適な有機リン化合物の例は、WO−A98/17720(対応米国特許第6,538,024号明細書)に記載のリン化合物、たとえば、トリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、およびそれらから誘導されるオリゴマー、さらにはビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)およびそれから誘導されるオリゴマー、ならびに有機および無機のホスホン酸誘導体およびそれらの塩、有機および無機のホスフィン酸誘導体およびそれらの塩、特定的には、金属ジアルキルホスフィネート、たとえば、アルミニウムトリス[ジアルキルホスフィネート]または亜鉛ビス[ジアルキルホスフィネート]、さらには、赤リン、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ホスフィンオキシド、ホスファゼン、メラミンピロホスフェート、およびこれらの混合物である。使用しうる窒素化合物は、アラントイン誘導体、シアヌル酸誘導体、ジシアンジアミド誘導体、グリコールウリル誘導体、グアニジン誘導体、アンモニウム誘導体、およびメラミン誘導体、好ましくは、アラントイン、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、メラミン、メラミンの縮合物(たとえば、メレム、メラム、またはメロム)、およびそれらに対応するより高縮合レベルのこのタイプの化合物、ならびにメラミンと酸との付加物、たとえば、シアヌル酸との付加物(メラミンシアヌレート)、リン酸との付加物(メラミンホスフェート)、または縮合リン酸との付加物(たとえば、メラミンポリホスフェート)からなる群から選択されるものである。好適な相乗剤の例は、アンチモン化合物、特定的には、三酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、および五酸化アンチモン、亜鉛化合物、たとえば、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、および硫化亜鉛、スズ化合物、たとえば、スズ酸スズおよびホウ酸スズ、さらにはマグネシウム化合物、たとえば、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、およびホウ酸マグネシウムである。炭化剤として知られる材料を難燃剤に添加することも可能であり、その例は、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニルエーテル、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、およびポリエーテルケトンであり、さらにはテトラフルオロエチレンポリマーなどの滴下防止剤を添加することも可能である。
【0060】
さらなる他の選択肢の好ましい実施形態では、ポリアミド成形用組成物はまた、適切であれば、成分A)およびB)ならびに/またはC)および/もしくはD)に加えて、
E)0.001〜80重量部、とくに好ましくは2〜25重量部の少なくとも1種のエラストマー変性剤
を含みうる。
【0061】
成分E)として使用されるエラストマー変性剤は、
E.1 5〜95重量%、好ましくは30〜90重量%の少なくとも1種のビニルモノマーと、
E.2 <10℃、好ましくは<0℃、とくに好ましくは<−20℃のガラス転移温度を有する95〜5重量%、好ましくは70〜10重量%の1種または複数種のグラフトベースと、
からなる1種または複数種のグラフトポリマーを包含する。
【0062】
グラフトベースE.2のメジアン粒子サイズ(d50値)は、一般的には0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、とくに好ましくは0.2〜1μmである。
【0063】
モノマーE.1は、好ましくは、
E.1.1 50〜99重量%のビニル芳香族化合物および/もしくは環置換ビニル芳香族化合物(たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)ならびに/または(C〜C)−アルキルメタクリレート(たとえば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート)と、
E.1.2 1〜50重量%のビニルシアニド(アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル)および/または(C〜C)−アルキル(メタ)アクリレート(たとえば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート)および/または不飽和カルボン酸(たとえば、無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド)の誘導体(たとえば、無水物およびイミド)と、
を含む混合物である。
【0064】
好ましいモノマーE.1.1は、モノマーのスチレン、α−メチルスチレン、およびメチルメタクリレートの少なくとも1種から選択されたものであり、好ましいモノマーE.1.2は、モノマーのアクリロニトリル、無水マレイン酸、およびメチルメタクリレートの少なくとも1種から選択されたものである。
【0065】
とくに好ましいモノマーは、E.1.1のスチレンおよびE.1.2のアクリロニトリルである。
【0066】
エラストマー変性剤E)で使用されるグラフトポリマーに好適なグラフトベースE.2の例は、ジエンゴム、EP(D)Mゴム(すなわち、エチレン/プロピレンおよび適切であればジエンをベースとするゴム)、アクリレートゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、およびエチレン−ビニルアセテートゴムである。
【0067】
好ましいグラフトベースE.2は、ジエンゴム(たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをベースとするゴム)もしくはジエンゴムの混合物であるか、またはジエンゴムもしくはそれらの混合物とさらなる共重合性モノマー(たとえば、E.1.1およびE.1.2に記載のモノマー)とのコポリマーである。ただし、成分E.2のガラス転移温度は、<10℃、好ましくは<0℃、とくに好ましくは<−10℃である。
【0068】
とくに好ましいグラフトベースE.2の例は、たとえば、DE−A2035390(対応米国特許第3,644,574号明細書)もしくはDE−A2248242(対応GB−A1409275)またはウルマン工業化学百科事典(Ullmann,Enzyklopaedie der Technischen Chemie[Encyclopaedia of Industrial Chemistry])、第19巻(1980年)、280頁以降に記載されるようなABSポリマー(乳化ABS、バルクABS、および懸濁ABS)である。グラフトベースE.2のゲル含量は、好ましくは少なくとも30重量%、とくに好ましくは少なくとも40重量%である(トルエン中で測定)。
【0069】
エラストマー変性剤またはグラフトポリマーE)は、遊離基重合により、たとえば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、またはバルク重合により、好ましくは、乳化重合またはバルク重合により、調製される。
【0070】
他のとくに好適なグラフトゴムは、米国特許第4,937,285号明細書に従って、有機ヒドロペルオキシドとアスコルビン酸とを含む開始剤系を用いてレドックス開始により調製されたABSポリマーである。
【0071】
グラフトモノマーはグラフト反応時にグラフトベースに必ずしも完全にグラフト化されるとは限らないことがわかっているので、グラフトベースの存在下でグラフトモノマーの(共)重合により取得され付随して後処理時に生成される生成物もまた、本発明に係るグラフトポリマーBである。
【0072】
好適なアクリレートゴムは、グラフトベースE.2をベースとし、グラフトベースE.2は、好ましくは、アルキルアクリレートと、適切であれば、E.2を基準にして40重量%までの他の重合性エチレン性不飽和モノマーとを含むポリマーである。好ましい重合性アクリル酸エステルに包含されるのは、C〜C−アルキルエステル、たとえば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、n−オクチルエステル、および2−エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロ−C〜C−アルキルエステル、たとえばクロロエチルアクリレート、さらにはこれらのモノマーの混合物である。
【0073】
架橋のために、2個以上の重合性二重結合を有するモノマーを共重合させることが可能である。架橋性モノマーの好ましい例は、3〜8個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸と、3〜12個の炭素原子を有する不飽和一価アルコールまたは2〜4個のOH基および2〜20個の炭素原子を有する飽和ポリオールとのエステル、たとえば、エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;ポリ不飽和ヘテロ環式化合物、たとえば、トリビニルシアヌレートおよびトリアリルシアヌレート;多官能性ビニル化合物、たとえば、ジビニルベンゼンおよびトリビニルベンゼン;さらには、トリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。
【0074】
好ましい架橋性モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、および少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有するヘテロ環式化合物である。
【0075】
とくに好ましい架橋性モノマーは、環状モノマーのトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋性モノマーの量は、グラフトベースE.2を基準にして、好ましくは0.02〜5重量%、特定的には0.05〜2重量%である。
【0076】
少なくとも3個のエチレン性不飽和基を有する環状架橋性モノマーの場合、その量をグラフトベースE.2の1重量%未満に制限することが有利である。
【0077】
適切であればアクリル酸エステルと共にグラフトベースE.2の調製に役立てうる好ましい「他の」重合性エチレン性不飽和モノマーの例は、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC〜C−アルキルエーテル、メチルメタクリレート、ブタジエンである。グラフトベースE.2として好ましいアクリレートゴムは、少なくとも60重量%のゲル含量を有する乳化ポリマーである。
【0078】
E.2に適合するさらなる好適なグラフトベースは、DE−A3704657(対応米国特許第4,859,740号明細書)、DE−A3704655(対応米国特許第4,861,831号明細書)、DE−A3631540(対応米国特許第4,806,593号明細書)、およびDE−A3631539(対応米国特許第4,812,515号明細書)に記載されるように、グラフト化の目的に有効な部位を有するシリコーンゴムである。
【0079】
グラフトポリマーをベースとするエラストマー変性剤と共に、グラフトポリマーをベースとしないエラストマー変性剤(ただし、<10℃、好ましくは<0℃、とくに好ましくは<−20℃のガラス転移温度を有する)を成分E)として使用することも可能である。これらに包含されるのは、たとえば、ブロックコポリマー構造を有するエラストマーでありうる。同様に、これらに包含されるのは、たとえば、熱可塑的融解を起こしうるエラストマーでありうる。この場合に例として挙げられる好ましい材料は、EPMゴム、EPDMゴム、および/またはSEBSゴムである。
【0080】
さらなる他の選択肢の好ましい実施形態では、ポリアミド成形用組成物はまた、適切であれば、成分A)およびB)ならびに/またはC)および/もしくはD)および/もしくはE)に加えて、
F)0.001〜10重量部、好ましくは0.05〜3重量部の他の従来の添加剤
を含みうる。
【0081】
本発明の目的では、従来の添加剤の例は、安定剤(たとえば、UV安定剤、熱安定剤、ガンマ線安定剤)、帯電防止剤、流動化助剤、離型剤、さらには防火添加剤、乳化剤、核剤、可塑剤、滑剤、染料、顔料、および導電性を増大させるための添加剤である。列挙した添加剤およびさらなる好適な添加剤は、たとえば、ゲヒター(Gaechter)、ミュラー(Mueller)著、プラスチック添加剤(Kunststoff−Additive[Plastics Additives])、第3版、ハンザー・フェアラーク(Hanser−Verlag)刊、ミュンヘン(Munich)、ウィーン(Vienna)、1989年およびプラスチック添加剤便覧(Plastics Additives Handbook)、第5版,ハンザー・フェアラーク(Hanser−Verlag)刊、ミュンヘン(Munich)、2001年に記載されている。添加剤は、単独もしくは混合物の状態でまたはマスターバッチの形態で使用可能である。
【0082】
使用しうる安定剤の例は、立体障害フェノール、ヒドロキノン、芳香族第二級アミン(たとえばジフェニルアミン)、置換レゾルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾール、およびベンゾフェノン、さらにはこれらの群に属する代表的化合物のさまざまな置換体、ならびにそれらの混合物である。
【0083】
使用しうる顔料および染料の例は、二酸化チタン、硫化亜鉛、ウルトラマリンブルー、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ニグロシン、およびアントラキノンである。
【0084】
使用しうる核剤の例は、ナトリウムフェニルホスフィネートもしくはカルシウムフェニルホスフィネート、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、さらには好ましくはタルクである。
【0085】
使用しうる滑剤および離型剤の例は、エステルワックス、ペンタエリトリトールテトラステアレート(PETS)、長鎖脂肪酸(たとえば、ステアリン酸もしくはベヘン酸)およびそのエステル、塩(たとえば、CaステアレートまたはZnステアレート)さらにはアミド誘導体(たとえば、エチレンビスステアリルアミド)、またはモンタンワックス(28〜32炭素原子鎖長を有する直鎖状飽和カルボン酸を含む混合物)、さらには低分子量のポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスである。
【0086】
使用しうる可塑剤の例は、ジオクチルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレート、炭化水素油、N−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミドである。
【0087】
導電性を増大させるために添加しうる添加剤は、カーボンブラック、導電性ブラック、炭素フィブリル、ナノスケールグラファイト繊維およびナノスケール炭素繊維、グラファイト、導電性ポリマー、さらには金属繊維、導電性を増大するための他の従来の添加剤である。好ましく使用しうるナノスケール繊維は、「単層壁カーボンナノチューブ」または「多層壁カーボンナノチューブ」として知られるもの(たとえば、ハイペリオン・キャタリシス(Hyperion Catalysis)製のもの)である。
【0088】
さらなる他の選択肢の好ましい実施形態では、ポリアミド成形用組成物はまた、適切であれば、成分A)およびB)ならびに/またはC)および/もしくはD)および/もしくはE)および/もしくはF)に加えて、
G)0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、とくに好ましくは2〜10重量部、最も好ましくは3〜7重量部の相溶化剤
を含みうる。
【0089】
好ましく使用される相溶化剤は、極性基を有する熱可塑性ポリマーを含む。
【0090】
したがって、本発明によれば、使用されるポリマーは、
G.1 ビニル芳香族モノマーと、
G.2 C〜C12−アルキルメタクリレート、C〜C12−アルキルアクリレート、メタクリロニトリル、およびアクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーと、
G.3 α,β−不飽和成分を含有するジカルボン酸無水物と、
を含有するものである。
【0091】
好ましく使用される成分Gは、記載のモノマーのターポリマーを含む。したがって、スチレンとアクリロニトリルと無水マレイン酸とのターポリマーを使用することが好ましい。特定的には、これらのターポリマーは、引張り強度および破断点引張り歪みなどの機械的性質の改良に寄与する。ターポリマー中の無水マレイン酸の量は、さまざまな値をとりうる。この量は、好ましくは0.2〜5モル%である。0.5〜1.5モル%の量が、とくに好ましい。この範囲では、引張り強度および破断点引張り歪みに関して、とくに良好な機械的性質が達成される。
【0092】
ターポリマーは、公知の方法で調製可能である。好適な一方法では、ターポリマーのモノマー成分、たとえば、スチレン、無水マレイン酸、またはアクリロニトリルを、好適な溶媒、たとえば、メチルエチルケトン(MEK)に溶解させる。1種もしくは適切であればそれ以上の化学開始剤をこの溶液に添加する。好適な開始剤の例は、ペルオキシドである。次に、混合物を何時間かにわたり高温で重合させる。次に、それ自体公知の方法で溶媒および未反応モノマーを除去する。
【0093】
ターポリマー中の成分G.1(ビニル芳香族モノマー)と成分G.2(たとえばアクリロニトリルモノマー)との比は、好ましくは80:20〜50:50である。
【0094】
スチレンは、ビニル芳香族モノマーG.1としてとくに好ましい。
【0095】
アクリロニトリルは、成分G.2にとくに好適である。
【0096】
無水マレイン酸は、成分G.3としてとくに好適である。
【0097】
EP−A0785234(対応米国特許第5,756,576号明細書)およびEP−A0202214(対応米国特許第4,713,415号明細書)には、本発明に従って使用しうる相溶化剤G)の例が記載されている。本発明によれば、とくに好ましいのは、EP−A0785234に記載のポリマーである。
【0098】
相溶化剤は、単独でまたは任意の所望の相互混合物の状態で成分G)中に存在可能である。
【0099】
相溶化剤としてとくに好ましい他の物質は、1モル%の無水マレイン酸を含有する2.1:1の重量比のスチレンとアクリロニトリルとのターポリマーである。とくに、成形用組成物がE)に記載のグラフトポリマーを含むときに、成分G)が使用される。
【0100】
本発明によれば、成分の以下の組合せが好ましい:
A、B;A、B、C;A、B、D;A、B、E;A、B、F;A、B、G;A、B、C、D;A、B、C、E;A、B、C、F;A、B、C、G;A、B、D、E;A、B、D、F;A、B、D、G;A、B、E、F;A、B、E、G;A、B、F、G;A、B、C、D、E;A、B、C、D、F;A、B、C、D、G;A、B、C、E、F;A、B、C、E、G;A、B、C、F、G;A、B、E、F、G;A、B、D、E、F;A、B、D、E、G;A、B、D、F、G;A、B、C、D、E、F;A、B、C、D、E、G;A、B、C、D、F、G;A、B、D、E、F、G;A、B、C、E、F、G;A、B、C、D、E、F、G。
【0101】
本発明はさらに、本発明に係るポリアミド成形用組成物の調製を提供する。これは、適切な重量比率の成分の混合を介して公知の方法により行うことが可能である。好ましくは、成分の混合は、220〜330℃の温度で、成分の組合せ、混合、混練、押出し、または圧延を行って一体化させることにより行われる。各成分を予備混合することが有利なこともある。さらに、室温(好ましくは0〜40℃)で調製されて予備混合状態および/または個別状態の成分を含む物理的混合物(ドライブレンド)から成形品または半製品を直接製造することが有利なこともある。
【0102】
本発明はさらに、
A)99.9〜10重量部、好ましくは99.5〜30重量部の少なくとも1種の半結晶性熱可塑性ポリアミドと、
B)少なくとも1種のオレフィン、好ましくは1種のα−オレフィンと、脂肪族アルコール、好ましくは5〜30個の炭素原子を有する脂肪族アルコールの少なくとも1種のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとを含む0.1〜20重量部、好ましくは0.25〜15重量部、とくに好ましくは1.0〜10重量部の少なくとも1種のコポリマー(このMFIは、100g/10分以上、好ましくは150g/10分以上である)、
とを含み、本発明に係るポリアミド成形用組成物から作製される成形品または半製品を提供する。
【0103】
本発明に従って使用されるポリアミド成形用組成物から作製された成形品または半製品の特徴をなすのは、比較的低粘度のベース樹脂を成分A)として用いて調製された同等の溶融粘度の成形用組成物を含む成形品または半製品よりも高い耐衝撃性である。この場合、比較的低粘度のベース樹脂をベースとする成形用組成物を含む成形品または半製品と比較したとき、本発明に係る成形品または半製品の破断点引張り歪みもまた高いことが多く、一方、引張りモジュラスは、本発明に係る成形品においてごくわずかに低減されるにすぎないので、材料の代替が可能になる。
【0104】
比較的低粘度のベース樹脂をベースとする同一粘度の成形用組成物と比較した、本発明に係る成形用組成物が呈するさらなる利点は、次のとおりである:
・より低い密度;
・多くの場合、より等方的な収縮挙動(それにより、成形品の反り性が小さくなる);
・収縮レベルの減少(それにより、成形品の反り性が低減される);
・耐加水分解性の改良;
・成形品の表面品質の改良。
【0105】
比較的低粘度のベース樹脂をベースとする同一粘度の成形用組成物と比較して、本発明に係る成形用組成物は、とくに、熱可塑性材料の加工に適した剪断速度において、著しく改良された流動性を呈する。このことはまた、とくに、射出圧力が著しく低減される点からも、明らかである。
【0106】
本発明に係るポリアミド成形用組成物を、たとえば、射出成形または押出を介して、従来法で加工することにより、成形品または半製品を与えることが可能である。
【0107】
半製品の例は、フォイルおよびシートである。とくに好ましいのは、射出成形による加工である。
【0108】
本発明に従ってポリアミド成形用組成物から作製される成形品または半製品は、小型もしくは大型の部品でありうる。また、これらは、たとえば、自動車産業、電気産業、電子産業、通信産業、情報技術産業、もしくはコンピューター産業で、または家庭内で、スポーツで、医療で、もしくは娯楽産業で、使用可能である。特定的には、本発明に係るポリアミド成形用組成物は、高い溶融流動性を必要とする用途に使用可能である。これらの用途の一例は、いわゆる薄壁技術であり、この場合、成形用組成物から作製される成形品の壁厚は、2.5mm未満、好ましくは2.0mm未満、とくに好ましくは1.5mm未満、最も好ましくは1.0mm未満である。これらの用途の他の例は、加工温度の低下などによるサイクル時間の削減である。他の適用例は、いわゆる複数個取り成形型システムによる成形用組成物の加工であり、この場合、材料は、射出成形手順において、ランナーシステムを介して、少なくとも4個の成形型、好ましくは少なくとも8個の成形型、とくに好ましくは少なくとも12個の成形型、最も好ましくは少なくとも16個の成形型に仕込まれる。
【0109】
本発明に係る成形用組成物を含む成形品はまた、自動車の冷却循環系および/または油循環系の部品に使用することも可能である。
【実施例】
【0110】
成分A1:相対溶液粘度2.9(m−クレゾール中、25℃で測定)を有する線状ナイロン−6(独国レーバークーゼンのバイエルAG(Bayer AG,Leverkusen,Germany)からの市販品デュレタン(Durethan)(登録商標)B29)
【0111】
成分A2:相対溶液粘度2.6(m−クレゾール中、25℃で測定)を有する線状ナイロン−6(独国レーバークーゼンのバイエルAG(Bayer AG,Leverkusen,Germany)からの市販品デュレタン(Durethan)(登録商標)B26)
【0112】
成分A3:相対溶液粘度2.4(m−クレゾール中、25℃で測定)を有する線状ナイロン−6
【0113】
成分A4:相対溶液粘度3.0(m−クレゾール中、25℃で測定)を有する線状ナイロン−66(イタリア国のラディーチ(Radici,Italy)からの市販品ラディポール(Radipol)(登録商標)A45H)
【0114】
成分B1:エテンと2−エチルヘキシルアクリレートとを含み63重量%のエテン含量および550のMFIを有するコポリマー(デュッセルドルフのアトフィナ・ドイチュラント(Atofina Deutschland,Dusseldorf)製のロトリル(Lotryl)(登録商標)37EH550)
【0115】
成分B2:エテンと2−エチルヘキシルアクリレートとを含み63重量%のエテン含量および175のMFIを有するコポリマー(デュッセルドルフのアトフィナ・ドイチュラント(Atofina Deutschland,Dusseldorf)製のロトリル(Lotryl)(登録商標)37EH175)
【0116】
比較成分V1:エテンとメチルアクリレートとグリシジルアクリレートとを含み26重量%のメチルアクリレート含量および8%のグリシジルアクリレート含量ならびに6のMFIを有するコポリマー(デュッセルドルフのアトフィナ・ドイチュラント(Atofina Deutschland,Dusseldorf)製のロタダー(Lotader)(登録商標)AX8900)
【0117】
成分C1:シラン含有化合物でサイズ処理されかつ11μmの直径を有するガラス繊維(ベルギー国アントワープのバイエル・アントウェルペンN.V.(Bayer Antwerpen N.V.,Antwerp,Belgium)からの市販品CS7928)
【0118】
成分C2:シラン含有化合物でサイズ処理されかつ10μmの直径を有するガラス繊維(ベルギー国のヴェトロテックス・サンゴバン(Vetrotex−Saint Gobain,Belgium)からの市販品ヴェトロテックス(Vetrotex)(登録商標)P983)
【0119】
成分D1:水酸化マグネシウム[CAS番号1309−42−8]
【0120】
成分D2:メラミンシアヌレート[CAS番号37640−57−6]
【0121】
成分F:
熱可塑性ポリアミドで慣用される以下の成分をさらなる添加剤として使用した:
核剤:0.01〜1重量%の量のタルク[CAS番号14807−96−6]。
安定剤:0.01〜1重量%の量の市販の立体障害フェノール。
離型剤:0.02〜2重量%の量のN,N’−エチレンビスステアリルアミド[CAS番号110−30−5]、カルシウムステアレート[CAS番号1592−23−0]。
【0122】
使用したさらなる添加剤(成分F)のそれぞれの性質および量は、実施例および比較で同一であり、Fは、0.735%、2.285%、0.5%、および1.0%である。
【0123】
260〜300℃の溶融温度でZSK32(ワーナー・アンド・フライダー(Werner and Pfleiderer))二軸スクリュー押出機を用いて、表1〜3の実施例に対するPA6およびそれに対応するPA66をベースとする組成物を配合して成形用組成物を与え、溶融体を水浴中に送出し、次に、ペレット化した。
【0124】
約270℃(表1および3)または280℃(表2)の溶融温度でかつ約80℃の成形型温度でアーブルグ(Arburg)320−210−500射出成形機を用いて、表1〜3の実施例に対する組成物の試験試料を射出成形することにより、ダンベル試料(ISO527に準拠して厚さ3mm)、80×10×4mm試験試料(ISO178に準拠)、UL94V試験用の標準試験試料(厚さ0.75mm)、および、DIN EN60695−2−13に準拠したグローワイヤ試験用の試験試料(厚さ1.5および3.0mm)を与えた。
【0125】
溶融粘度測定を除いて、以下の表に列挙された試験はすべて、上記の試験試料を用いて行った:
DIN EN ISO527−2/1Aに準拠して引張りモジュラスおよび破断点引張応力を決定する引張試験
破断点引張り歪み:DIN EN ISO527−2/1Aに準拠して決定される伸長性
DIN EN ISO178に準拠して曲げモジュラス、曲げ強度、および外側繊維歪みを決定する曲げ試験
耐衝撃性:室温におけるISO180/1Uに準拠したアイゾット法
UL94V可燃性:UL94に準拠
GWIT:DIN EN60695−2−13に準拠したグローワイヤ着火温度の決定
溶融粘度:真空乾燥器中、80℃でペレットを48時間乾燥させた後、ゴットフェルト(Goettfert)製のヴィスコロボ(Viscorobo)94.00装置を用いて指定の剪断速度および温度でDIN54811/ISO11443に準拠して決定される。
【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
さらなる実施例は、以下のとおりである:
【0130】
【表4A】

【表4B】

【0131】
【表5A】

【表5B】

【0132】
【表6A】

【表6B】

【0133】
【表7】

【0134】
【表8】

【0135】
【表9】

【0136】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)99.9〜10重量部の少なくとも1種の半結晶性熱可塑性ポリアミドと、
B)少なくとも1種のオレフィンと、脂肪族アルコールの少なくとも1種のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルとを含む0.1〜20重量部の少なくとも1種のコポリマー(このコポリマーB)のMFIは、100g/10分以上である)、
とを含む、成形用組成物。
【請求項2】
前記コポリマーB)の4重量%未満が、さらなる反応性官能基(エポキシド、オキセタン、無水物、イミド、アジリジン、フラン、酸、アミン、オキサゾリンからなる群から選択される)を含有するモノマー単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載の成形用組成物。
【請求項3】
前記コポリマーB)において、前記オレフィンが2−エチルヘキシルアクリレートと共重合していることを特徴とする、請求項1または2に記載の成形用組成物。
【請求項4】
前記コポリマーB)において、前記オレフィンがエテンであることを特徴とする、請求項3に記載の成形用組成物。
【請求項5】
前記コポリマーB)のMFIが150g/10分以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形用組成物。
【請求項6】
適切であれば、A)およびB)に加えて、以下の系列:
C)0.001〜70重量部の少なくとも1種の充填剤または強化材、
D)0.001〜65重量部の少なくとも1種の難燃添加剤、
E)0.001〜80重量部の少なくとも1種のエラストマー変性剤、
F)0.001〜10重量部の他の従来の添加剤、
G)0.5〜30重量部の相溶化剤、
の1種または複数種の成分をも含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形用組成物。
【請求項7】
適切な重量比率の前記成分が混合されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリアミド成形用組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の成形用組成物の射出成形または押出しにより取得可能な成形品または半製品。
【請求項9】
ランナーシステムを介した射出成形手順において、少なくとも4個の成形型に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の成形用組成物を仕込むことにより取得可能な複数個取り成形型システム。
【請求項10】
薄壁技術における、請求項1〜6のいずれか一項に記載の成形用組成物の使用。
【請求項11】
電気産業、電子産業、通信産業、自動車産業、もしくはコンピューター産業における、スポーツにおける、医療における、家庭内における、または娯楽産業における、請求項8に記載の成形品もしくは半製品または請求項9に記載の複数個取り成形型システムの使用。
【請求項12】
自動車の冷却循環系および/または油循環系の部品のための、請求項8に記載の成形品または半製品の使用。

【公表番号】特表2008−501836(P2008−501836A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526283(P2007−526283)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006136
【国際公開番号】WO2005/121249
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】