説明

改良された細胞株及びカプセル化細胞生体送達におけるその使用

【課題】
【解決手段】本発明は、分泌治療分子の裸細胞及びカプセル化細胞生体送達において使用するための、組換えタンパク質を発現する細胞株の生成に関する。一実施形態において、細胞株は、ヒトのものである。本発明の別の態様では、トランスポゾン系を使用して、生物活性ポリペプチドの分泌のための細胞株を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分泌治療分子(secreted therapeutic molecules)の裸細胞及びカプセル化細胞生体送達(naked and encapsulated cell biodelivery)において使用するための組換えタンパク質を発現する細胞株の生成に関する。1実施形態において、細胞株は、ヒトのものである。
【背景技術】
【0002】
DNAを細胞に導入する一般的方法には、DNA凝縮試薬(DNA condensing reagents)、脂質含有試薬(lipid-containing reagents)、及びウイルス媒介戦略(virus-mediated strategies)が含まれる。しかしながら、これらの方法は、それぞれ制約を有する。例えば、DNA凝縮試薬及びウイルス媒介戦略には、サイズ制限が伴う。更に、ウイルス戦略では、細胞にトランスフェクト可能な核酸の量が制限される。また、ウイルス媒介戦略は、細胞型又は組織型特異的となる場合があり、ウイルス媒介戦略の使用は、in vivoで用いた時に免疫性の問題を発生させる恐れがある。
【0003】
こうした問題を克服する適切な方法の1つは、トランスポゾンである。トランスポゾン又は転移因子は、単一の細胞のゲノム内を動き回り、様々な位置に組み込まれる遺伝子転位と呼ばれるプロセスが可能なDNAの配列である。トランスポゾンは、その上流及び下流に逆方向反復配列を有する短い核酸配列を含む。活性トランスポゾンは、核酸の切り出しと標的DNA配列への挿入とを促進するトランスポザーゼと呼ばれる酵素をコードする。トランスポゾンの染色体への組み込みは、遺伝子組換え細胞及び生物における、長期的、或いは場合によっては恒久的な、導入遺伝子の発現の基盤を提供する。
【0004】
トランスポゾン系は、広範な遺伝的応用範囲を有する。トランスポゾン系は、これまで、昆虫の幼虫におけるin vivoのタンパク質生成について研究されてきており、この場合、トランスポゾンプラスミドが昆虫の胚盤葉前の胚へ直接注入される(WO2001/29204)。対象となるタンパク質は、その後、発育中の幼虫又は成虫から精製することができる。
【0005】
トランスポゾン系は、幹細胞の遺伝子改変にも利用されてきた。WO2009/050657は、トランスポゾン-トランスポザーゼ系を使用して遺伝子改変幹細胞を作成する方法に関する。幹細胞で発現される導入遺伝子は、幹細胞及び分化細胞の両方において恒常的なプロモーターの制御下に置かれたGFPなどのマーカー遺伝子である。WO2009/071334では、トランスポゾン系により改変した精原幹細胞を使用してノックアウト又はトランスジェニック動物モデルを作成する方法を説明している。
【0006】
したがって、トランスポゾンを使用して、トランスジェニック細胞株を生成し、ノックアウト又はトランスジェニック細胞株が形成可能であり、したがって細胞の性質を変更可能であることは技術水準において周知である。トランスポゾンが長期的、或いは場合によっては恒久的に、染色体に組み込まれるという事実により、トランスジェニック細胞及び生物において、導入遺伝子の発現が達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
安定ヒトトランスジェニック細胞株が作成され、その後、カプセル化細胞又は裸細胞として被験者に埋込される細胞療法においては、埋込後、例えば選択マーカが使用できない条件下での、導入遺伝子の安定した高発現が必要となる。一般に、移植細胞及び埋込カプセル化細胞は、遺伝子サイレンシング等による下方制御無しに、1年以上に渡り導入遺伝子を発現できる必要がある。コドン最適化、発現促進配列(expression enhancing sequences)の使用、又は強力なプロモーターの使用といった従来の発現増加手段は、それぞれ制約を有し、結果が変動しやすくなる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明ではトランスポゾン系の特性を利用し、生物活性化合物或いは、生物活性ペプチドの生成に寄与するポリペプチド又はsiRNAを分泌するようにトランスポゾン系を使用して変化させた細胞株を含む埋込用カプセルを作成する。カプセルの外膜は、生体適合性を有し、カプセルは、細胞に対する支持マトリクスを含む。
【0009】
したがって、第1の態様において、本発明は、分泌生物活性化合物を被験者へ送達するカプセルに関し、カプセルは、
a. 生体適合性を有する外膜及び内部コアを備え、
b. 前記内部コアは、細胞を含み
c. 前記細胞は、構造遺伝子を有する異種発現コンストラクト(heterologous expression construct)を含み、前記構造遺伝子は、
i. 分泌生物活性ポリペプチドをコードするか、或いは、
ii. 生物活性を有する分泌化合物の細胞における生成に寄与するポリペプチド又はsiRNAをコードし、
d. 前記遺伝子は、トランスポザーゼ又は他のインテグラーゼの基質である2つの逆方向反復間に位置する。
【0010】
このカプセルは、埋込後の導入遺伝子の安定した高い発現を可能にし、トランスポゾン系の利用は、従来の細胞のトランスフェクション(形質移入)と比較して、導入遺伝子の発現を数倍に増加させる。
【0011】
別の態様において、本発明は、治療のための本発明のカプセルの使用に関する。本発明のカプセルは、生物活性化合物を安定的に、高いレベルで、淘汰圧が無い状態で生成するため、治療における使用に特に適している。発現レベルが高いため、カプセルの数及び/又はサイズを低減することができる。
【0012】
別の態様において、本発明は、構造遺伝子をコードする異種発現コンストラクトを備える細胞株に関し、構造遺伝子は、
i. 分泌生物活性ポリペプチドをコードするか、或いは、
ii. 生物活性を有する分泌化合物の細胞における生成に寄与するポリペプチド又はsiRNAをコードし、
前記遺伝子は、トランスポザーゼの基質である2つの逆方向反復間に位置する。
【0013】
トランスポゾン系を使用して細胞株を生成することにより、低いコピー数においても分泌ポリペプチドの増加が観察される。したがって、淘汰圧が存在しない状態においても、高効率で予想外に安定した導入遺伝子の発現が達成される。細胞株を使用することにより、構成する全細胞が同一の状態が確保される。
【0014】
別の態様において、本発明は、組換えタンパク質を製造する方法であって、本発明による細胞を培養するステップと前記組換えタンパク質を回収するステップとを備える方法に関する。
【0015】
一般に、組換え発現において、淘汰圧は、少なくとも細胞の増殖中には維持され、細胞が導入遺伝子を失わない状態が確保される。本発明の細胞株は、導入遺伝子を安定的に、高いレベルで、淘汰圧無しで発現することができるため、組換え体の製造中の淘汰圧の使用、例えば、抗生物質の使用を回避することができる。これにより、後続の下流プロセスが促進される。
【0016】
他の態様において、本発明は、生物活性化合物を分泌することが可能な細胞株を生成する方法であって、
a. 第1及び第2の発現コンストラクトにより細胞をトランスフェクトするステップと、
b. 前記第1の発現コンストラクトは、トランスポザーゼをコードする読み取り枠を含むことと、
c. 前記第2の発現コンストラクトは、分泌生物活性ポリペプチドをコードするか、或いは、生物活性を有する分泌化合物の細胞における生成に寄与するポリペプチド又はsiRNAをコードすることと、
d. 前記第2の発現コンストラクトは、前記トランスポザーゼの基質である2つの逆方向反復間に位置することと、
e. 前記トランスポザーゼの一時的発現を発生させ、これにより、ヒト細胞のゲノムへの前記第2の発現コンストラクトの組み込みを発生させるステップと、を備える方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
ポリペプチド分泌用の細胞株を生成するためにトランスポゾン系を使用することにより、高い分泌ポリペプチド収量が達成される。トランスポゾン系を使用することにより、トランスジェニック細胞は発現を失わない傾向となるため、連続的な淘汰圧の必要性が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】2D、8週間調査、ガラニンクローン。pCA発現ベクターに基づく、In vitroの安定ガラニン分泌ARPE-19クローン。クローン(Clone)は、標準的なトランスフェクション手法及びG418選択を使用して生成した。クローンは、継代せずに8週間培養した。ガラニンの分泌は、ELISAにより測定した。
【図1B】2D、8週間調査、SB IgSP-ガラニンクローン。SB基質ベクターpT2に基づく、In vitroの安定ガラニン分泌ARPE-19クローン。クローンは、SB技術を使用して生成した。クローンは、継代せずに8週間まで培養した。ガラニン(galanin)の分泌は、ELISAにより測定した。
【図1C】臨床的NGFクローンに対する2D試験。pCA発現ベクターに基づく、In vitroの安定NGF分泌ARPE-19クローン。クローン(Clone)は、標準的なトランスフェクション手法及びG418選択を使用して生成した。クローンは、継代せずに8週間培養した。NGFの分泌は、ELISAにより測定した。
【図1D】臨床的SB-NGFクローンに対する2D試験。SB基質ベクターpT2に基づく、In vitroの安定NGF分泌ARPE-19クローン。クローンは、SB技術を使用して生成した。クローンは、継代せずに8週間培養した。NGFの分泌は、ELISAにより測定した。
【図2】ミニブタにおけるガラニン(Galanin)の4週間in vivo調査。SB技術を使用して作成したカプセル化SB-ガラニンクローンSB-IgSP-24と、標準的なトランスフェクション手法を使用して作成したクローンppG-152とのガラニン発現レベル。埋込前の値(青棒)を、外殖片の値(赤棒)及び並行してin vitroで維持したデバイス(黄色の棒)と比較している。デバイスは、ミニブタの海馬に埋め込んだ。
【図3】ラットにおけるNGFの8週間in vivo調査。SB技術を使用して作成したカプセル化SB-ガラニンクローンSB-NGF-78と、標準的なトランスフェクション手法を使用して作成したクローンNGC-0295とのNGF発現レベル。埋込前の値(青棒)を、外殖片の値(赤棒)及び並行してin vitroで維持したデバイス(黄色の棒)と比較している。デバイスは、ラットの線条体に埋め込んだ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
【0020】
生物活性(biological activity)とは、特定の細胞に対する、分子の生物学的に有用な影響を示す。本明細書での使用において、「生物活性化合物(biologically active compound)」は、別個の標的細胞に対して作成され、これに影響を及ぼす細胞から放出又は分泌されるものである。
【0021】
本明細書での使用において、「生体適合性カプセル(biocompatible capsule)」とは、宿主哺乳動物への埋込時に、例えば分解により、カプセルの拒絶をもたらす、或いはカプセルを動作不能とする上で十分となる有害な宿主反応をカプセルが引き起こさないことを意味する。
【0022】
本明細書での使用において、「生物学的作用物質(biological agent)」は、ウイルス、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、炭水化物、核酸、ヌクレオチド、薬物、プロドラッグ、或いは、影響が有害か、有益か、又は他の影響であるかを問わず、細胞に対する影響を有し得る細胞により作成された他の物質等の任意の作用物質を示す。
【0023】
本明細書での使用において、「コード配列(coding sequence)」とは、転写され、ポリペプチドに翻訳されるポリヌクレオチド配列である。
【0024】
本明細書での使用において、「調節配列(control sequence)」は、結合したコード及び非コード配列の発現に影響を及ぼすために必要なポリヌクレオチド配列を示す。調節配列は、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終結配列(transcription termination sequence)を含む。加えて、「調節配列」は、コード配列内にコードされたペプチドのプロセシングを制御する配列を示し、こうした配列には、分泌、プロテアーゼ切断、及びペプチドのグリコシル化を制御する配列等が含まれる場合がある。「調節配列」という用語は、最低限、その存在が発現に影響を与えることが可能な構成要素を含むことを意図しており、例えば、リーダ配列及び融合パートナ配列(fusion partner sequences)等、その存在が利点を有する付加的構成要素を含むことが可能である。
【0025】
プロモーターの「下方制御(down regulation)」とは、in vivo埋込後に、有意な生物活性の欠如につながる恐れのあるレベルまで導入遺伝子の産物の発現が低減することを意味する。本明細書での使用において、「下方制御を受けないプロモーター(promoter not subject to down regulation)」とは、哺乳類宿主でのin vivo埋込後、生物学的に活性を有するレベルでの導入遺伝子の発現を駆動する、或いは駆動し続けるプロモーターを意味する。
【0026】
本明細書での使用において、「発現ベクター(expression vector)」という用語は、適切に作用可能に連結した遺伝子の発現を導くことが可能なベクターを示す。一般に、組換えDNA手法において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態である場合が多い。
【0027】
本明細書での使用において、「遺伝的修飾(genetic modification)」及び「遺伝子操作(genetic engineering)」という用語は、外来性DNAの意図的な導入による細胞の遺伝子型の安定した又は一時的な改変を示す。DNAは、合成又は天然由来であってよく、遺伝子、遺伝子の一部、又は他の有用なDNA配列を含有し得る。「遺伝的修飾」という用語は、自然のウイルス活性、自然の遺伝子組換え等により、自然に発生する改変を含むものではない。
【0028】
本明細書での使用において、「免疫隔離性カプセル(immunoisolatory capsule)」とは、哺乳類宿主への埋込時に、カプセルが、コア内の細胞に対する宿主の免疫系の有害な影響を最小限に抑えることを意味する。
【0029】
本明細書での使用において、「生体活性化合物の長期的安定発現(long-term, stable expression of a biologically active compound)」とは、有用な生物活性を維持する上で十分なレベルでの生物活性化合物の、1ヶ月超、好ましくは、3ヶ月超、最も好ましくは6ヶ月超の期間に渡る継続的生産を意味する。
【0030】
「哺乳類プロモーター(mammalian promoter)」とは、哺乳類細胞において機能することが可能なプロモーターを意味する。
【0031】
本明細書での使用において、「神経学的作用物質(neurological agents)」という用語は、神経細胞にとって有益な生物学的作用物質を示し、中枢神経系(CNS)又は眼細胞の生存、増殖、分化、又は機能、或いは神経的又は眼科的疾患又は障害の処置にとって潜在的に有用となり得る任意の生物学的又は薬学的活性物質を含む用語である。
【0032】
「神経ペプチド(neuropeptide)」とは、脳内で作成されるタンパク質様分子群の1つである。神経ペプチドは、アミノ酸の短鎖から成り、その一部は神経伝達物質として機能し、一部はホルモンとして機能する。短鎖とは、5kD未満の分子量を有するペプチドを意味する。
【0033】
本明細書での使用において、「適切に作用可能に連結した(operatively-linked)」という用語は、(例えば、in vitro転写/翻訳系、或いはベクターを宿主細胞に導入した際の宿主細胞において)ヌクレオチド配列の発現を可能にする形で、組換え発現ベクター内において、対象のヌクレオチド配列が制御配列(群)に連結したことを意味するものである。
【0034】
本明細書での使用において、「制御配列(regulatory sequence)」という用語は、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現調節領域(例えば、ポリアデニル化信号)を含むものである。
【0035】
「配列同一性(sequence identity)」:高レベルの配列同一性は、第1の配列が第2の配列に由来する可能性を示す。アミノ酸の配列同一性には、アラインメントさせた2配列間での同一なアミノ酸配列が必要となる。したがって、基準配列との70%アミノ酸同一性を共有する候補配列では、アラインメント後、候補配列内の70%のアミノ酸が、基準配列内の対応するアミノ酸と同一であることが必要となる。同一性は、コンピュータ解析、例えば、限定ではなく、ClustalWコンピュータアラインメントプログラム(Higgins D., Thompson J., Gibson T., Thompson J.D., Higgins D.G., Gibson T.J., 1994. CLUSTAL W: improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, position-specific gap penalties and weight matrix choice. Nucleic Acids Res. 22:4673-4680)及びその推奨される初期パラメータ等の支援により決定し得る。ClustalWソフトウェアは、欧州バイオインフォマティクス研究所のClustalW WWW Serviceから入手可能である(http://www.ebi.ac.uk/clustalw)。このプログラムを初期設定で使用することにより、クエリの成熟(生物活性)部分と基準ポリペプチドとのアライメントが行われる。完全な保存残基の数を計数し、基準ポリペプチドの長さにより割る。
【0036】
ClustalWアルゴリズムは、ヌクレオチド配列のアラインメントにも同様に使用し得る。配列同一性は、アミノ酸配列について示したものと同様の方法で計算し得る。
【0037】
本明細書での使用において、「形質転換(transformation)」という用語は、外来性ポリヌクレオチド(即ち「導入遺伝子(transgene)」)の宿主細胞への挿入を示す。外来性ポリヌクレオチドは、宿主のゲノムに組み込まれる。
【0038】
「処置(treatment)」は、治癒、改善、及び予防を含む幾つかの異なる方法で実行可能である。治癒的処置(curative treatment)は、一般に、処置を受ける個体に既に存在する、疾患又は感染等の臨床症状を治癒することを目的とする。改善的処置(ameliorating treatment)は、一般に、既存の臨床症状を個体において改善するための処置を意味する。予防的処置(prophylactic treatment)は、一般に、臨床症状を予防することを目的とする。
【0039】
本明細書での使用において、「siRNA」という用語は、「低分子干渉RNA(small interfering RNA)」として知られる化合物群を示し、小分子干渉RNA(short interfering RNA)又はサイレンシングRNAと呼ばれる場合もある。20乃至25個のヌクレオチドの長さのRNAは、生物学において様々な役割を果たす。最も顕著なものとして、siRNAは、特定の遺伝子の発現に干渉するRNA干渉(RNAi)経路に関与する。siRNAは、発現抑制の対象となる遺伝子の転写物の一部と相補的になるように生成される。siRNAは、本明細書において説明した方法を使用して、標的細胞において発現される。発現した短いsiRNAは、標的転写物内の相補的なRNA配列とハイブリダイズし、結果的に生じた二本鎖RNAは、細胞自体の機構により分解される。最終的には、標的遺伝子の発現の下方制御が生じる。
【0040】
本明細書での使用において、「ベクター」という用語は、連結した別の核酸分子を輸送することが可能な核酸分子を示す。ベクターの一種は、「プラスミド」であり、これは追加のDNA断片が内部に結合可能な円形の二本鎖DNAループを示す。プラスミドは最も一般的に使用されるベクターの形態であるため、本明細書では、「プラスミド」及び「ベクター」は、相互に交換可能に使用する場合がある。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス(replication defective retroviruses)、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)等、他の形態の発現ベクターを含むものである。
【0041】
本明細書での使用において、「逆方向反復(inverted repeat)」(又はIR)は、更に下流にある別の配列の逆転した相補配列となるヌクレオチドの配列である。逆方向反復は、トランスポゾンにおいて境界を定める。逆方向反復は、一部のトランスポゾンの反対端部において反転した形態で位置するため、「末端逆位配列(inverted terminal repeats)」又は「末端逆方向反復(terminal inverted repeats)」とも呼ばれる場合がある。
【0042】
トランスポゾン
【0043】
現在、2種類のクラスのトランスポゾン、即ち、クラスI及びクラスIIトランスポゾンが公知である。クラスI可動遺伝要素、又はレトロトランスポゾンは、最初にRNAに転写され、逆転写酵素により再びDNAへ逆転写され、ゲノムの別の位置に挿入されることにより、自分自身を複写する。クラスII可動遺伝要素は、DNA型トランスポゾン(DNA-only transposons)と呼ばれ、カットアンドペースト機構により、ある位置から別の位置へ、トランスポザーゼ酵素を使用して直接的に移動する。種類の異なるトランスポザーゼは、異なる形で作用し得る。一部は、DNA分子の任意の部分に結合可能であり、標的部位は任意の位置であり得るが、特定の配列に結合するものもある。トランスポザーゼは、その後、標的部位を切断し、粘着末端を作成し、トランスポゾンを放出して、標的部位に結合させる。DNAトランスポゾンの挿入部位は、標的DNAにおける互い違いの切れ込みがDNAポリメラーゼにより充填されることにより生成される短い直列反復配列(direct repeats, DR)により特定され、その後には、トランスポザーゼによるトランスポゾンの切り出しにとって重要な逆方向反復(IR)が続く。
【0044】
無脊椎動物及び脊椎動物のトランスポゾンは、両方とも、モデル生物における遺伝子組換え及び挿入突然変異を可能にする力を有する。
【0045】
脊椎動物では、現在、3種類の活性トランスポゾンが公知であり使用されている: Tol2エレメント(Kawakami, K., (2007), Genome Biology, 8 (Suppl 1): S7)及び 再構築したトランスポゾンであるSleeping Beauty (SB) (Ivics, Z. et al. (2004), Curr. Issues Mol. Biol., 6: 43-56)及び Frog Prince (FP) (Miskey, C. et al. (2003), Nucleic Acid Research, 31(24): 6873-6881)。脊椎動物における別の興味深いトランスポゾン系は、PiggyBacトランスポゾン系である(Wilson, M.H. et al. (2007), Molecular Therapy, 15(1): 139-145)。
【0046】
メダカ(Oryzias latipes)から分離されたTol2トランスポゾンは、完全に機能するトランスポザーゼをコードする自律性トランスポゾンである。相当に大きなサイズ(11キロベース)のDNA挿入を、転移活性を低減することなく、Tol2トランスポゾンにクローン化することができる。Tol2トランスポゾン系は、ゼブラフィッシュ、ゼノパス、ニワトリ、マウス、及びヒトを含め、これまで試験した全ての脊椎動物細胞において活性を示している。Tol2トランスポゾンのDNA配列は、ショウジョウバエ属からのhobo、トウモロコシからのAc、及びキンギョソウからのTam3を含め、hATファミリーのトランスポゾンに類似する(Kawakami, K. (2007), Genome Biology, 8 (suppl 1): S7)。
【0047】
Sleeping Beauty (SB)は、魚のゲノムから復活させたTc1/mariner様トランスポゾン及びトランスポザーゼ・ファミリーに含まれるものであり、様々な脊椎動物の培養細胞株、胚幹細胞、及びマウスの体細胞系列及び生殖系列細胞の両方においてin vivoで高い転移活性を示す。Sleeping Beautyは、幾つかの脊椎動物モデル生物におけるゲノム機能解析にとって貴重な手段であることが既に証明されており、ヒト遺伝子治療用途にとっても有望である(Ivics, Z. and Izsvak, Z. (2006), Curr. Gene Ther., 6: 593-607)。
【0048】
SBトランスポザーゼ及びトランスポゾンは、US7,148,203及びUS6,489,458において説明されている。SBトランスポザーゼの高活性の変異体は、WO2009/003671において説明されており、既に有益なSB系を、細胞にDNAを導入する方法として改良している。
【0049】
Frog Princeも、Tc1/mariner様ファミリーに含まれるものであり、ヒョウガエル(Northern Leopard Frog)(Rana Pipiens)のゲノムトランスポゾンコピーから最近、再活性化された。Frog Princeは、約50%の配列のみがSleeping Beautyに類似しており、魚類、両生類、及び哺乳類細胞株において効率的なカットアンドペースト遺伝子転位を触媒する(Miskey, C. et al., (2003), Nucleic Acids Research, 31(24): 6873-6881)。
【0050】
PiggyBacトランスポゾン系は、イラクサギンウワバ(cabbage looper moth)(Trichoplusia ni)に由来し、効率を著しく低下させることなく、大きな転移因子(14キロベース)の送達が可能である。PiggyBacトランスポゾン系は、昆虫の遺伝子組換え及びマウスの生殖細胞の突然変異生成に使用されている(Wilson, M.H. et al., (2007), Molecular Therapy, 15(1): 139-145)。
【0051】
組み合わせて使用可能な他のトランスポゾンには、Φc31(例えば、Calos, Curr Gene Ther. 2006 Dec;6(6):633-45を参照)、Minos(例えばZagoraiou et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Sep 25;98(20):11474-8. Epub 2001 Sep 18を参照)、Minosなどのmarinerトランスポザーゼ(例えば、Pavlopoulos et al, Genome Biol. 2007;8 Suppl 1:S2を参照)、及び Hermes(例えばEvertts et al, Genetics. 2007 Dec;177(4):2519-23. Epub 2007 Oct 18)がある。
【0052】
上述したトランスポゾンは、相互作用しないため、他のものが存在する状態で遺伝的手段として使用し得ることから、こうした因子の有用性は大幅に拡がる。異なる挿入部位に対する何らかの好み(preferences, 嗜好性)は、相補的な形で利用することができる。DNAトランスポゾンは、無脊椎動物及び脊椎動物の両方のモデル生物において、遺伝子導入ベクターとして開発されている。DNAトランスポゾンは、ヒト遺伝子治療において、レトロウイルス系の強力なライバルである。遺伝子解析及び治療目的にとって、クラスII転移因子は、実験室での取り扱い及び制御が容易である性質から、最も有用である。
【0053】
トランスポゾン系は、広範な遺伝的応用範囲を有する。トランスポゾン系は、これまで、昆虫の幼虫におけるin vivoのタンパク質生成について研究されてきており、この場合、トランスポゾンプラスミドが昆虫の胚盤葉前の胚へ直接注入される(WO2001/29204)。対象となるタンパク質は、その後、発育中の幼虫又は成虫から精製することができる。
【0054】
トランスポゾン系は、幹細胞への遺伝子転位の導入による幹細胞の遺伝子改変にも利用されてきた。WO2009/050657は、トランスポゾン-トランスポザーゼ系を使用して遺伝子改変幹細胞を作成する方法に関する。幹細胞で発現される導入遺伝子は、幹細胞及び分化細胞の両方において恒常的なプロモーターの制御下に置かれたGFPなどのマーカー遺伝子である。WO2009/071334では、トランスポゾン系により改変した精原幹細胞を使用してノックアウト又はトランスジェニック動物モデルを発生させる方法を説明している。
【0055】
本発明の好適な実施形態では、Sleeping Beauty(SB)トランスポザーゼを用いて、生物活性を有する分泌化合物の細胞における生成に寄与するポリペプチドをコードする核酸を染色体に挿入した。更に好ましくは、SBトランスポザーゼは、WO2009/003671に記載されるような高活性トランスポザーゼである。高活性トランスポザーゼとしては、Sleeping Beautyの変異体であるSB10Xの変異体が挙げられ、それは、以下の群から選択される突然変異又は突然変異群のうち少なくとも1つを含む1乃至20個のアミノ酸により配列番号7とは異なるアミノ酸配列を有する:
- K14R;
- K13D;
- K13A;
- K30R;
- K33A;
- T83A;
- I100L;
- R115H;
- R143L;
- R147E;
- A205K/H207V/K208R/D210E;
- H207V/K208R/D210E;
- R214D/K215A/E216V/N217Q;
- M243H;
- M243Q;
- E267D;
- T314N; 及び
- G317E。
【0056】
具体的には、好適なSB変異体は、少なくとも以下の変異の組み合わせを含む。
- 変異体 1: K14R//R214D/K215A/E216V/N217Q;
- 変異体 2: K33A/R1 15H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 3:
K14R/K30R//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 4: K13D/K33A/T83A//H207V/K208R/D210E//M243Q;
- 変異体 5: K13A/K33A//R214D/K215A/E216V/N217Q;
- 変異体 6: K33A/T83A//R214D/K215A/E216V/N217Q//G317E;
- 変異体 7: K14R/T83A/M243Q;
- 変異体 8: K14R/T83A/I100L/M243Q;
- 変異体 9: K14R/T83A/R143L/M243Q;
- 変異体 10: K14R/T83A/R147E/M243Q;
- 変異体 11 : K14R/T83A/M243Q/E267D;
- 変異体 12: K14R/T83A/M243Q/T314N;
- 変異体 13:
K14R/K30R/I100I7/A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 14:
K14R/K30R/R143L//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 15:
K14R/K30R/R147E//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 16:
K14R/K30R//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267D;
- 変異体 17:
K14R/K30R/A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314N;
- 変異体 18:
K14R/K30R//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317E;
- 変異体 19: K14R/K33A/R115H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 20:
K14R/K30R/R147E//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314N;
- 変異体 21 :
K14R/K30R/R143L//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267D;
- 変異体 22:
K14R/K30R/R143I7/A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314N;
- 変異体 23:
K14R/K30R/R143I7/A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317E;
- 変異体 24: K14R/K33A/R115H/R143L//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 25: K14R/K33A/R115H/R147E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 26: K14R/K33A/R115H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267D;
- 変異体 27: K14R/K33A/R1 15H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314N;
- 変異体 28: K14R/K33A/R115H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317E;
- 変異体 29: K14R/T83A/M243Q/G317E;
- 変異体 30: K13A/K33A/T83A//R214D/K215A/E216V/N217Q
【0057】
好ましくは、以下より選択される。
- 変異体 1: K14R/R214D//K215A/E216V/N217Q;
- 変異体 2: K33A/R115H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 3:
K14R/K30R//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 4: K13D/K33A/T83A//H207V/K208R/D210E//M243Q;
- 変異体 5: K13A/K33A//R214D/K215A/E216V/N217Q;
- 変異体 6: K33A/T83A//R214D/K215A/E216V/N217Q//G317E;
- 変異体 7: K14R/T83A/M243Q;
- 変異体 8: K14R/T83A/l100L7M243Q;
- 変異体 9: K14R/T83A/R143L/M243Q;
- 変異体 10: Kl 4R/T83 A/R147E/M243Q;
- 変異体 11 : K14R/T83A/M243Q/E267D;
- 変異体 12: K14R/T83A/M243Q/T314N;
- 変異体 14:
K14R/K30R/R143I7/A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216/N217Q//M243H;
- 変異体 15:
K14R/K30R/R147E//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 16:
K14R/K30R//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267D;
- 変異体 17:
K14R/K30R//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314N;
- 変異体 18:
K14R/K30R//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317E;
- 変異体 19: K14R/K33A/R115H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 20:
K14R/K30R/R147E//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314N;
- 変異体 21:
K14R/K30R/R143L//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267D;
- 変異体 23:
K14R/K30R/R14317/A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243 H/G317E;
- 変異体 24: K14R/K33A/R1 15H/R143L//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 25: K14R/K33A/R115H/R147E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 26: K14R/K33A/R115H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267D;
- 変異体 27: K14R/K33A/R115H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314N;
- 変異体 28: K14R/K33A/R115H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317E;
【0058】
より好ましくは、以下より選択される。
- 変異体 2: K33A/R115H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 3:
K14R/K30R//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 14:
K14R/K30R/R143IJ/A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 15:
K14R/K30R/R147E//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 16:
K14R/K30R//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267D;
- 変異体 19: K14R/K33A/R115H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 20:
K14R/K30R/R147E//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243HAT314N;
- 変異体 21:
K14R/K30R/R143L7/A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267D;
- 変異体 23:
K14R/K30R/R143L//A205K/H207V/K208R/D210E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317E;
- 変異体 24: K14R/K33A/R115H/R143L//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 25: K14R/K33A/R1 15H/R147E//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
- 変異体 26: K14R/K33A/R1 15H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/ E267D;
- 変異体 27: K14R/K33A/R115H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314N;
- 変異体 28: K14R/K33A/R115H//R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317E.
【0059】
最も好適な実施形態において、高活性SBは、変異体27であり、本明細書に配列番号8として記載したアミノ酸配列を有する。
【0060】
カプセル化細胞治療
【0061】
カプセル化細胞生体送達治療は、宿主への埋込前に細胞を半透性の生体適合性材料により囲むことにより、受容宿主の免疫系から細胞を隔離するという概念に基づいている。本発明は、免疫隔離性カプセルにおいて細胞がカプセル化されたデバイスを含む。細胞は、細孔性膜により形成された埋込可能な高分子カプセルに細胞を封入することにより、宿主から免疫隔離される。このアプローチは、宿主及び埋込組織間の細胞同士の接触を防止し、直接提示による抗原認識を排除する。
【0062】
細胞カプセル(以降、カプセル)は、分子量に基づいて、成長因子ホルモン、神経伝達物質、ペプチド、抗体、及び補体といった分子の拡散を制御するように調整された膜を有する((Lysaght et al., 56 J. Cell Biochem. 196 (1996), Colton, 14 Trends Biotechnol. 158 (1996))。カプセル化手法を使用することにより、免疫抑制薬の使用の有無を問わず、免疫拒絶が無い状態で細胞を宿主に移植することができる。有用な生体適合性高分子カプセルは、通常、液状媒質中に懸濁するか、或いは固定化マトリクス内に固定化された細胞を含有するコアと、隔離細胞を含まず、生体適合性を有し、有害な免疫学的攻撃からコア内の細胞を保護する上で十分な選択透過性マトリクス(permselective matrix)又は膜(membrane)(「ジャケット(jacket)」)による周囲又は周辺領域とを含む。カプセル化は、免疫系の因子がカプセル内に入るのを妨げ、これにより、カプセル化細胞を免疫破壊から保護する。更に、カプセル膜の半透性により、対象の生物活性分子は、カプセルから周囲の宿主組織へ容易に拡散可能となり、栄養素は、容易にカプセル内へ拡散し、カプセル化細胞を支持することが可能となる。カプセルは、生体適合性材料から作成することができる。「生体適合性材料(biocompatible material)」とは、宿主への埋込後に、例えば分解により、カプセルの拒絶をもたらす、或いはカプセルを動作不能とする上で十分となる有害な宿主反応を引き起こさない材料である。生体適合性材料は、宿主の免疫系の構成要素等の大きな分子に対しては相対的に不透過性となるが、インスリン、成長因子、及び栄養素等、小分子には透過性となる一方、代謝廃棄物の除去を可能にする。本発明の組成による成長因子の送達には、様々な生体適合性材料が適切となる。多数の生体適合性材料が公知であり、様々な外面形態と、他の機械的及び構造的特徴とを有している。好ましくは、本発明のカプセルは、出典を明記することにより本願明細書の一部とした、WO92/19195又はWO95/05452、或いは、米国特許第5,639,275号、第5,653,975号、第4,892,538号、第5,156,844号、第5,283,187号、或いは、出典を明記することにより本願明細書の一部とした、米国特許第5,550,050号に記載されるものに類似する。こうしたカプセルは、代謝産物、栄養素、及び治療物質の通過を可能にする一方、宿主の免疫系の悪影響を最小限に抑える。生体適合性材料の構成要素は、周囲の半透性膜と、内部の細胞支持足場とを含み得る。好ましくは、組換え細胞を、選択透過性膜によりカプセル化された足場に播種する。フィラメント状細胞支持足場は、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセトニトリル、ポリエチレンテラフタラート、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリブテステル、絹、綿、キチン、炭素、又は生体適合性金属からなる群より選択された任意の生体適合性材料から作成し得る。更に、不織構造(bonded fibre structures)を細胞の埋込に用いることができる(出典を明記することにより本願明細書の一部とした米国特許第5,512,600号)。生分解性ポリマーには、ポリ(乳酸)PLA、ポリ(乳酸-グリコール酸)PLGA、及びポリ(グリコール酸)PGAにより構成されるもの、及びそれらの等価物が含まれる。発泡体からなる足場が、移植細胞を付着させ得る表面を提供するために使用されている(出典を明記することにより本願明細書の一部としたWO98/05304)。網組メッシュ管は、血管グラフトとして使用されている(出典を明記することにより本願明細書の一部としたWO 99/52573)。加えて、コアは、細胞の位置を安定させる、ヒドロゲルから形成された固定化マトリクスにより構成することができる。ヒドロゲルとは、実質的に水で構成された、ゲルの形態の架橋親水性ポリマーの三次元ネットワークである。
【0063】
ジャケットは、膜(ジャケット)が溶質の90%を拒絶する分子量として定められた分子量カットオフが1000kD未満、更に好ましくは50乃至700kD、更に好ましくは70乃至300kD、更に好ましくは70乃至150kD、例として70乃至130kDである。分子量カットオフは、患者の免疫系からカプセル化細胞を保護しつつ、生物活性分子がカプセルから退出可能な状態を確保するように選択するべきである。
【0064】
ジャケットの厚さは、一般的に2乃至200ミクロンの範囲であり、更に好ましくは50乃至150ミクロンである。ジャケットは、カプセル化された細胞を保持する上で十分な強度をカプセルに与える厚さを有するべきであると共に、この点を考慮して、できるだけ場所をとらないように、可能な限り薄く保つべきである。
【0065】
様々なポリマー及びポリマーブレンドを使用して周囲半透性膜を製造することが可能であり、これには、ポリアクリレート(アクリル系コポリマーを含む)、ポリビニリデン、ポリ塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリロニトリル/塩化ビニル共重合体)と、その誘導体、コポリマー、及び混合物とが含まれる。周囲半透性膜は、生体適合性半透性中空繊維膜であることが好ましい。こうした膜と、膜を作成する方法とは、出典を明記することにより本願明細書の一部とした米国特許第5,284,761号及び第5,158,881号に開示されている。周囲半透性膜は、出典を明記することにより本願明細書の一部とした米国特許第4,976,859号又は米国特許第4,968,733号に開示されているような、ポリエーテルスルホン中空繊維から形成し得る。別の周囲半透性膜材料には、ポリ(アクリロニトリル/塩化ビニル共重合体)(Pan-PVC)がある。
【0066】
カプセルは、生物活性を維持し、生産物又は機能の送達(providing access for delivery)に適した任意の構成にすることが可能であり、例えば円筒形、矩形、円盤形、パッチ形、卵形、星形、又は球形が含まれる。更に、カプセルは、コイル状にすること、或いは巻き付けてメッシュ状又はネスト化構造にすることができる。カプセルが埋込後に回収される場合、受容宿主(recipient host)の血管内を移動する十分小さい球形カプセル等、埋込部位からのカプセルの移動につながる傾向のある構成は好ましくない。矩形、パッチ、円盤、円筒、及び平板等の特定の形状は、より大きな構造的完全性を提供するため、回収が望ましい場合に好ましい。特に好適な形状は、円筒形であり、こうした形状は工業的に製造可能な中空繊維から容易に作成される。
【0067】
本発明に関連するマクロカプセルは、1乃至10μL等、少なくとも1μLの容積を有するカプセルである。
【0068】
マクロカプセルを使用する場合、各デバイスにおいて、好ましくは少なくとも103細胞、例として、103乃至108細胞がカプセル化され、最も好ましくは105乃至107細胞がカプセル化される。当然、各カプセル内の細胞数は、カプセルのサイズに依存する。経験則として、発泡体を有するカプセル(後述する)において、本発明者は、カプセル1μL(発泡体を含む内部容積として計算した量)当たり10,000乃至100,000細胞を充填することにより、カプセルの良好な充填状態が生じ、より好ましくは1μL当たり25,000乃至50,000細胞、更に好ましくは1μLあたり30,000乃至40,000細胞であることを発見した。充填するべき細胞の数は、細胞のサイズに依存する。
【0069】
投薬量は、カプセルの寸法(長さ、直径)を変化させること、及び/又は埋込するカプセル数を、好ましくは、患者あたり1乃至10カプセルの間で増減させることにより制御し得る。
【0070】
足場は、細胞外マトリクス(ECM)分子により被覆し得る。細胞外マトリクス分子の適切な例には、例えば、コラーゲン、ラミニン、及びフィブロネクチンが含まれる。足場の表面は、プラズマ照射により処理して電荷を与え、細胞の付着性を高めるように修飾してもよい。
【0071】
カプセルを封着(シール)する任意の適切な方法を使用してよく、これにはポリマー接着剤又は圧着、節止め、及びヒートシーリングの使用が含まれる。加えて、出典を明記することにより本願明細書の一部とした米国特許第5,653,687号に記載されるような、任意の適切な「乾式」シール方法を使用することもできる。
【0072】
カプセル化細胞デバイスは、公知の手法により埋込される。本発明のデバイス及び方法には、多数の埋込部位が考えられる。これらの埋込部位には、脳、脊髄を含む中枢神経系(出典を明記することにより本願明細書の一部とした米国特許第5,106,627号、第5,156,844号、及び第5,554,148号参照)、及び眼の房水及び硝子体液(aqueous and vitreous humors)(出典を明記することにより本願明細書の一部としたWO97/34586参照)が含まれる。
【0073】
開示したカプセルは、カプセルから延びる一体式テザー(係留具)を含んでよく、係留具は、少なくとも処置部位から挿入部位の近くに到達するのに十分な長さを有し、これにより挿入部位、例えば、頭蓋骨の外面でのカプセルの固定を容易にする。挿入部位は、その後、皮膚に覆われる。例えば処置が終了した時、又はカプセルを交換する必要がある場合に、組織からのカプセルの除去を容易にするために、カプセルと係留具との間の移行部を滑らかにして、如何なる種類の突出も存在しないようにすること、或いは、カプセルから係留具に向けて寸法を増加させることが可能である。これにより、当然ながら、2つの部分間には縁部が形成されるが、比較的小さなカプセルが治療システムの遠位端、即ち身体側の端部を形成するので、カプセル除去中の付帯的な損傷を防止し得る。カプセル及び係留具が円形の断面形状を有する管状である時、カプセルの半径サイズは、したがって係留具の半径サイズより小さくすることが好ましい場合があり、カプセル及び係留具は、互いに同軸に接合することが好ましい場合がある。好ましくは、本発明のカプセルは、WO2006/122551に記載のものに類似した設計となる。
【0074】
カプセルは、注射器を使用して充填してよく、或いは代わりに、WO2007/048413(出典を明記することにより本願明細書の一部とする)に記載される自動又は半自動充填を使用してもよい。
【0075】
発泡体足場
【0076】
発泡体からなる足場(発泡体足場)は、開放気泡(open cell)を有する生体適合性発泡体、又は細孔のネットワークを有するマクロ多孔性構造を形成する任意の最適な材料から形成し得る。開放気泡発泡体は、相互接続した細孔の網状構造である。発泡体足場は、付着細胞の取り付けを可能にする非生分解性の安定した足場材料を提供する。本発明のデバイス用の発泡体足場の形成に有用なポリマーには、熱可塑性プラスチック及び熱可塑性エラストマーがある。
【0077】
適切な発泡体足場の形成に有用な材料の幾つかの例を表1(原文Table 3)に列挙する。
【0078】
【表1】

【0079】
ポリスルホン及びポリエーテルスルホンから作成された熱可塑性プラスチック発泡体足場と、ポリウレタン及びポリビニルアルコールから作成された熱可塑性エラストマー発泡体足場とが好適である。
【0080】
発泡体では、一部(必ずしも全てではない)の細孔が、細胞を細孔内の壁又は表面に取り付けることが可能なサイズを有する必要がある。発泡体足場の細孔サイズ、細孔密度、及び空隙容積は変化させ得る。細孔形状は、円形、楕円形、又は不規則な形状としてよい。細孔の形状は大幅に変化させることが可能であるため、その寸法は、測定される軸線により変化する場合がある。本発明の目的のために、発泡体内の少なくとも一部の細孔は、20乃至500μm、好ましくは50乃至150μmの細孔径を有するべきである。上述した寸法は、発泡体の平均細孔サイズを表すことが好ましい。非円形の場合、細孔は、付着細胞を細孔内の壁又は表面に取り付けることを可能にする上で十分なサイズであれば、様々な寸法を有し得る。1実施形態において、発泡体は、短軸線に沿った直径が20乃至500μmであり、長軸線に沿った直径が最大1500μmである幾つかの楕円形細孔を有することが考えられる。
【0081】
上述した細胞許容細孔サイズに加えて、好ましくは、発泡体内の少なくとも一部の細孔を10μm未満として、細胞非透過性だが、発泡体を介した栄養素及び生物活性分子の輸送用チャネルを依然として提供するようにするべきである。
【0082】
発泡体の細孔密度(即ち、上述したように、細胞を収容可能な細孔の容積当たりの数)は、20乃至90%、好ましくは50乃至70%の間で変化させることができる。
【0083】
同様に、発泡体の空隙容積は、20乃至90%、好ましくは30乃至70%の間で変化させ得る。
【0084】
細孔の壁又は表面は、細胞外マトリクス分子又は分子群、或いは他の適切な分子により被覆し得る。この被覆を使用して、細孔の壁への細胞の付着を促進すると共に、特定の表現型で細胞を保持し、及び/又は細胞分化を誘起することができる。
【0085】
発泡体細孔内の表面に付着可能な細胞外マトリクス分子(ECM)の好適な例には、コラーゲン、ラミニン、ビトロネクチン、ポリオルニチン、及びフィブロネクチンが含まれる。他の適切なECM分子には、コンドロイチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、及びエラスチン等のグリコサミノグリカン及びプロテオグリカンが含まれる。
【0086】
ECMは、間葉性又は星状細胞由来の細胞などの、ECMを堆積させることが知られている細胞を培養することにより入手し得る。シュワン細胞を誘導して、アスコルビン酸塩及びcAMPにより処理した時にECMを合成することができる。例えば、Baron-Van Evercooren et al., "Schwann Cell Differentiation in vitro: Extracellular Matrix Deposition and Interaction," Dev. Neurosci., 8, pp. 182-96 (1986)を参照されたい。
【0087】
加えて、接着性ペプチド断片、例えば、RGD含有配列(ArgGlyAsp)、YIGSR含有配列(TyrIleGlySerArg)、及びIKVAV含有配列(IleLysValAlaVal)は、細胞付着の促進に有用であることが分かっている。一部のRGD含有分子は、例えば、PepTite-2000.TM(Telios)等、市販されている。
【0088】
本発明の発泡体足場は、デバイス内の細胞分布を強化する(enhance cellular distribution)他の材料により処理してもよい。例えば、発泡体の細孔には、細胞増殖又は移動を阻害する非許容(non-permissive)ヒドロゲル(non-permissive hydrogel)を充填し得る。こうした修飾は、発泡体足場への付着細胞の取り付けを向上させることができる。好適なヒドロゲルには、電荷により細胞を拒絶し得るアニオン性ヒドロゲル(例えば、アルギン酸塩又はカラゲナン)が含まれる。或いは、「固体」ヒドロゲル(例えば、アガロース又はポリエチレンオキシド)を使用して、細胞により分泌される細胞外マトリクス分子の結合を妨げることにより細胞増殖を阻害し得る。
【0089】
非許容材料の領域により発泡体足場を処理することで、ある集団を他の集団より過成長させることなく、デバイス内の2つ以上の異なる細胞集団をカプセル化することができる。したがって、非許容材料を発泡体足場内で使用して、カプセル化細胞の別個の集団を分離し得る。別個の細胞集団は、同一又は異なる細胞型であってもよく、同一又は異なる生物活性分子を生成し得る。一実施形態において、1つの細胞集団は、他の細胞集団の成長及び/又は生存を増大させる物質を生成する。別の実施形態において、複数の生物活性分子を生成する複数の細胞型がカプセル化される。これにより、治療物質の混合物又は「カクテル」が受容者に提供される。
【0090】
本発明のデバイスは、任意の適切な方法により形成し得る。一実施形態では、発泡体足場を事前に形成し、既製の(pre-fabricated)ジャケット、例えば、中空繊維膜に、個別構成要素として挿入される。
【0091】
任意の適切な熱可塑性プラスチック又は熱可塑性エラストマー発泡体足場材料は、既製ジャケットへの挿入のために事前に形成し得る。一実施形態では、発泡体足場としての使用にはポリビニルアルコール(PVA)スポンジが望ましい。幾つかのPVAスポンジが市販されている。例えば、細孔サイズ60μmのPVA発泡スポンジ#D-3が適している(Rippey Corp、カネボウ)。同様に、PVAスポンジは、Ivalon Inc.(カリフォルニア州サンディエゴ)及びHydrofera(オハイオ州クリーブランド)から市販されている。PVAスポンジは、通気したポリ(ビニルアルコール)溶液と、架橋剤としてのホルムアルデヒド蒸気との反応により形成された不水溶性の発泡体である。PVA上の水酸基は、アルデヒド基と共有結合的に架橋して高分子ネットワークを形成する。発泡体は、湿潤時は柔軟性及び弾性を有し、乾燥時は半剛体となる。
【0092】
代わりに、米国特許第6,627,422号に記載されるような支持メッシュ又は糸を使用しても良い。
【0093】
糸又はメッシュの内部足場形成に使用したフィラメントは、任意の適切な生体適合性の実質的に非分解性である材料から形成される。糸又は網組メッシュの形成に有用な材料には、例えば、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリブテステル等、繊維を形成可能な任意の生体適合性ポリマー、或いは綿、絹、キチン、又は炭素等の天然繊維が含まれる。繊維形成特性を有する任意の適切な熱可塑性ポリマー、熱可塑性エラストマー、或いは他の合成又は天然材料は、既製の中空繊維膜、或いは平膜シートから形成された中空円筒に挿入し得る。例えば、縫合材料又は血管グラフトの製造に使用される絹、PET、又はナイロンフィラメントは、この種の用途に大きく寄与する。他の実施形態では、金属リボン又はワイヤを使用して織物とし得る。こうしたフィラメント材料のそれぞれは、十分に制御された表面及び幾何学的特性を有し、大量生産し得るものであり、移植用途での長い歴史を有する。特定の実施形態において、フィラメントは、細胞の突起を取り付け得る粗面と「手掛かり(hand-holds)」とを提供するように「肌目を付け(texturize)」得る。フィラメントは、細胞外マトリクス分子による被覆、或いは表面処理(例えば、プラズマ照射、或いはNaOH又はKOHエッチング)を行い、フィラメントへの細胞接着を強化し得る。
【0094】
一実施形態において、フィラメントは、好ましくは、非ランダムの一方向の配向性で構成され、撚り合わせて束にして、様々な厚さ及び空隙容積を有する糸を形成する。空隙容積は、フィラメント間に存在する空間として定義される。糸内の空隙容積は、20乃至95%の間にするべきだが、好ましくは、50乃至95%である。フィラメント間の好適な空きスペースは、20乃至200μmであり、糸の長さに沿って足場に細胞を播種し、細胞をフィラメントに付着させる上で十分なものとする。糸からなるフィラメントの好適な直径は、5乃至100μmである。これらのフィラメントは、撚り合わせて束にして糸を構成することが可能となるように、十分な機械的強度を有するべきである。多様なフィラメント断面形状が可能であり、円形、矩形、楕円形、三角形、及び星型の断面が好ましい。
【0095】
別の実施形態では、フィラメント又は糸を編み込んでメッシュとする。メッシュは、製織中に糸又はフィラメントをメッシュに供給する役割を果たす、モノフィラメント又はマルチフィラメントを収容したボビンに類似したキャリアを使用して、編組機(braider)において製造することができる。キャリアの数は調整可能であり、同じフィラメント、又は異なる組成及び構造を有するフィラメントの組み合わせを巻き付け得る。編組の角度は、ピックカウントにより定められ、キャリアの回転速度及び生産速度により制御される。一実施形態では、マンドレルを使用して、メッシュの中空管を作成する。特定の実施形態では、編組は単一の層として構成され、他の実施形態では多層構造である。編組の引張強度は、個々のフィラメントの引張強度の線形和である。
【0096】
本発明に使用する適切なモノフィラメントの例は、米国特許第6,627,422号に記載される。一例は、編組にしたPET糸である。このPETの編組は、1インチあたり20ピック(ppi)のピックカウントで、16キャリアの編組機により、外径760μmのマンドレル上で編まれた、34ストランド、44デニール(denier)のマルチフィラメント糸から構成されている。PET糸は、不織ストランドで使用することも可能である。別の例は、編組にしたナイロンモノフィラメントである。このナイロンの編組は、18ppiのピックカウントで、16キャリアの編組機により、外径760μmのマンドレル上で編まれた、13ストランド、40デニールのマルチフィラメント糸で構成されている。他の例は、編組にしたステンレス鋼マルチフィラメントである。このステンレス鋼の編組は、90ppiのピックカウントで、16キャリアの編組機により、外径900μmのマンドレル上で編まれたリボンから構成されている。これらのPET、ナイロン、及びステンレス鋼の編組の引張強度は、それぞれ切断時2.7、2.4、及び3.6kgfだった。
【0097】
一実施形態では、管状の編組が構成される。追加的な実施形態において、編組は、中空繊維膜に挿入される。他の実施形態において、細胞は、中空繊維膜上に播種される。追加的な実施形態では、細胞をメッシュ管の壁に浸透させて、細胞付着に利用可能な表面積を最大化することができる。本実施形態において、編組は、細胞足場マトリクス及びデバイスの内側支持部の両方としての役割を果たす。編組に支持されたデバイスの引張強度の増加は、代替的アプローチにおけるものよりも著しく高くなる。
【0098】
細胞株
【0099】
多数の異なる細胞型を、本発明によるデバイスにおいてカプセル化し得る。これらには、周知の公的に入手可能な不死化細胞株、自然不死化細胞株、及び分裂初代細胞培養(dividing primary cell cultures)を含む。一部の実施形態の細胞株は、トランスフェクト又は形質導入の対象となり、クローンを選択、拡大、及び細胞バンク化する必要があるため、細胞又は細胞株は、多数の分裂が可能であることが好ましい。
【0100】
長期的な増殖能を有する細胞株は、前駆細胞(progenitor and/or precursor cells)を含む多種多様な細胞から形成し得る。また、多能性幹細胞(pluripotent and multipotent stem cells)、胚性幹細胞、神経幹細胞、造血幹細胞を含む幹細胞も適している。
【0101】
細胞株の例には、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、CHO-K1、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウス線維芽細胞3T3細胞、アフリカミドリザル細胞株(COS-1、COS-7、BSC-1、BSC-40、BMT-10、及びVeroを含む)、ラット副腎褐色細胞腫(PC12及びPC12A)、AT3、ラットグリア系腫瘍(C6)、ラット神経細胞株RN33b、ラット海馬細胞株HiB5、成長因子拡大幹細胞、EGF反応性神経球、哺乳動物のCNSに由来するbFGF反応性神経先祖幹細胞[Richards et al., PNAS 89: 8591-8595 (1992); Ray et al., PNAS 90: 3602-3606 (1993)]、胎児細胞、初代線維芽細胞、シュワン細胞、星状細胞、β-TC細胞、Hep-G2線条体細胞、オリゴデンドロサイト及びその前駆体、マウス筋芽細胞-C2C12、ヒトグリア由来細胞-Hs683、ヒトグリア由来細胞-A172、HEI193T、ブタグリア芽細胞、神経細胞、ニューロン、星状細胞、介在ニューロン、ヒト長骨から単離した軟骨芽細胞、ヒト胚腎細胞HEK293、HeLa、ウサギ角膜由来細胞(SIRC)、ARPE-19及びCAC細胞が含まれる。
【0102】
哺乳類の組換え生成に好適な細胞株には、CHO、CHO-1、HEI193T、HEK293、COS、PC12、HiB5、RN33b、及びBHK細胞が含まれる。
【0103】
本発明では、同じデバイスにおいて2つ以上の別々にトランスフェクトした細胞又は細胞株をカプセル化することも考えられ、ここで各細胞株は、所望の分子のうち少なくとも1つを分泌する。更に、本発明では、2つ以上の発現コンストラクト、例えば、本発明の2つ以上の発現コンストラクトによりトランスフェクトした1つの細胞株をカプセル化することが考えられる。代わりに、各分子を別々に生成する別個のデバイスを埋込してもよい。
【0104】
多数の異なる細胞型を、本発明によるデバイスにおいてカプセル化し得る。これらには、周知の公的に入手可能な不死化細胞株、自然不死化細胞株、及び分裂初代細胞培養(dividing primary cell cultures)を含む。一部の実施形態の細胞株は、トランスフェクト又は形質導入の対象となり、クローンを選択、拡大、及び細胞バンク化する必要があるため、細胞又は細胞株は、多数の分裂が可能であることが好ましい。
【0105】
細胞の選択は、対象とする用途に依存する。細胞は、所望の生物活性分子を天然に生成し得るか、又はそのように遺伝子操作し得る。
【0106】
好適な一実施形態では、ヒト受容者内の免疫反応のリスクを低減するために、細胞はヒト由来のものとする。細胞が半透性膜の裏側でカプセル化されていても、非ヒト細胞株は、低レベルで分泌されるもののヒト宿主において免疫反応を引き起こす場合がある非ヒトタンパク質及び代謝物質を本質的に生成する。非ヒト哺乳動物への埋込の場合、細胞は、カプセルを埋込するべき哺乳動物と同じ種のものにすることが好ましい
【0107】
最も広範な態様において、これは、多クローン性か単クローン性かを問わず、任意のヒト細胞培養又は細胞株を含む。より詳細に性質を説明することが可能であるため、単クローン細胞株がより好ましい。
【0108】
ヒト細胞株は、異種不死化遺伝子(heterologous immortalisation gene)挿入により不死化されている場合、自然に不死化する場合、或いは成長因子拡大初代細胞又は幹細胞である場合がある。
【0109】
生体外遺伝子治療用には、好適な細胞群には、神経細胞、神経前駆細胞(neuronal precursor cells, neuronal progenitor cells)、線維芽細胞、造血細胞、造血幹細胞、幹細胞、胎児細胞、及び胚性幹細胞が含まれる。一実施形態において、細胞は、胚性幹細胞ではない。
【0110】
本発明の好適な実施形態において、ヒト細胞株は、異種不死化遺伝子の挿入により不死化されていない。本発明は、裸細胞であっても、或いは、好ましくはカプセル化細胞であっても、細胞移植に特に適した細胞に関連するため、こうした不死化細胞は、発癌遺伝子を有する場合に人体内部で無制御に増殖を開始し、潜在的に腫瘍を形成する固有のリスクが存在することから、あまり好適ではない。
【0111】
好ましくは、細胞株は、貪食することが可能である。貪食により、細胞は、デバイス内部での細胞の崩壊又は死亡により生じた残骸を取り除くことが可能となる。
【0112】
細胞株は、接触抑制性細胞株(contact inhibited cell line)、或いはカプセル内部で分化可能な細胞株、例えば、幹細胞であることが好ましい。接触抑制性細胞株は、2次元培養で成長させる場合に集密状態まで成長した後、実質的に分裂を停止する細胞株を意図したものである。この場合、限られた数の細胞が2次元層から逃れる可能性は排除されない。接触抑制性細胞は、3次元、例えば、カプセル内部で成長させてもよい。また、カプセル内部で、細胞は集密状態まで成長した後、増殖速度を著しく低減させるか、或いは分裂を完全に停止する。
【0113】
特に好適なタイプの細胞には、その性質から接触により抑制され、培養下で安定した単層を形成する上皮細胞が含まれる。網膜色素上皮細胞(RPE細胞)は、更に好適である。RPE細胞は、哺乳類の網膜からの初代細胞単離により発生させる。RPE細胞を採取するためのプロトコルは、明確に定められており(Li and Turner, 1988, Exp. Eye Res. 47:911-917; Lopez et al., 1989, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 30:586-588)、日常的な方法と考えられる。RPE細胞の共移植の殆どの報告において、細胞は、ラットに由来する(Li and Turner, 1988; Lopez et al., 1989)。本発明によれば、RPE細胞は、ヒトに由来する。単離した初代RPE細胞に加えて、培養したヒトRPE細胞株を本発明の実施に使用し得る。
【0114】
全ての正常な2倍体脊椎動物細胞は、増殖する能力が限られており、これはヘイフリック限界又は複製老化として知られている現象である。ヒト線維芽細胞において、この限界は、50乃至80回の集団倍加後に生じ、その後、細胞は、生存可能であるが、非分裂の老化状態に何ヶ月間も留まる。これは、増殖能を制限する制御を免れて事実上不死となる殆どの癌細胞の挙動とは対照的である。
【0115】
細胞は、一定数の細胞分裂を行うことが可能であり、遺伝子を組換えると共に、拡大してカプセル化細胞治療又は移植治療に十分な細胞を生成可能であることが好ましい。したがって、好適な細胞株は、少なくとも50回の倍加、より好ましくは少なくとも60回の倍加、より好ましくは少なくとも70回の倍加、より好ましくは少なくとも80回の倍加、より好ましくは少なくとも90回の倍加、例えば約100回の倍加を起こすことができる。
【0116】
カプセル化に関して、細胞は、人体、例えばCNS内の低酸素圧レベルにおいて生存し、かつ、治療分子の分泌を維持できることが好ましい。好ましくは、本発明の細胞株は、酸素圧5%未満、より好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満で生存可能である。1%の酸素圧は、脳内の酸素レベルに相当する。
【0117】
カプセル化細胞の生体送達用の細胞株は、次の特徴を可能な限り多く有するべきである。(1)細胞は、厳しい条件に耐えるべきである(カプセル化細胞は、中枢神経系実質内、脳室又は髄腔の液体空間内、或いは眼内、特に眼内環境のような、血管及び無血管組織の空洞において機能するべきである)。(2)細胞は、治療分子を発現するように遺伝子の組換えが可能となるべきである。(3)細胞は、比較的多数の分裂が可能であり、比較的長い寿命を有するべきである(細胞は、貯蔵、特徴付け、操作、安全性試験、及び臨床的ロットの製造に十分な子孫を生産するべきである)。(4)細胞は、ヒト由来のものである必要がある(カプセル化細胞と宿主との適合性を高める)。(5)細胞は、デバイス内において、in vivoで1ヶ月を超える期間に渡り80%を上回る生存率を示すべきである(長期的な送達を確保する)。(6)カプセル化細胞は、有効な量の治療分子を送達するべきである(処理の有効性を確保する)。(7)カプセル化の際に、細胞は、顕著な宿主免疫反応を引き起こすべきではない(移植片の寿命を確保する)。(8)細胞は、非腫瘍原性であるべきである(デバイスの漏出時に、宿主への付加的な安全性を提供する)。
【0118】
幾つかの細胞株のスクリーニング及び特徴付けにおいて、ARPE-19細胞株(Dunn et al., 62 Exp. Eye Res. 155-69 (1996), Dunn et al., 39 Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2744-9 (1998), Finnemann et al., 94 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 12932-7 (1997), Handa et al., 66 Exp. Eye. 411-9 (1998), Holtkamp et al., 112 Clin. Exp. Immunol. 34-43 (1998), Maidji et al., 70 J. Virol. 8402-10 (1996))は、カプセル化細胞に基づく送達系(米国特許第6,361,771号、Taoら)用として成功したプラットホーム細胞の全ての特徴を有することが分かった。ARPE-19細胞株は、試験した他の細胞株よりも優れていた。
【0119】
ARPE-19細胞株は、アメリカンタイプカルチャーコレクションから入手できる(ATCC番号CRL-2302)。ARPE-19細胞株は、通常の網膜色素上皮(RPE)細胞の培養に由来し、網膜色素上皮細胞特異的マーカCRALBP及びRPE-65を発現する。ARPE-19細胞は、安定した単層を形成し、形態的及び機能的極性を示す。ARPE-19細胞は、細胞寄託者により推奨される血清含有培地である完全成長培地(Complete Growth Medium)において培養し得る。完全成長培地は、ダルベッコ改変イーグル培地及びハムF12培地の1:1混合物で、3mM L-グルタミン90%及びウシ胎仔血清10%を含むもの、或いはダルベッコ改変イーグル培地及びHam's F12培地の1:1混合物で、10%ウシ胎仔血清、56mM最終濃度の炭酸水素ナトリウム、及び2mMのL-グルタミンを含有するHEPES緩衝液を含むもののいずれかである。細胞は、好ましくは、37℃、5%CO2中でインキュベートする。細胞は、一般に、ファルコン組織培養処理した6又は12ウェルプレート、或いはT25又はT75フラスコに配置して成長させる。継代培養のために、培地を取り除き、好ましくはARPE-19細胞を0.05%トリプシン、0.02%EDTA溶液でリンスし、トリプシンを除去する。1乃至2mlの追加トリプシン溶液を加える。培養物は、室温(又は37℃)で、ARPE-19細胞が剥離するまでインキュベートする。継代培養比は、1:3乃至1:5が推奨される。
【0120】
カプセル化細胞用の細胞株の耐久力は、次の3段階のスクリーニングを使用して試験することができる。(a)細胞生存性スクリーニング(細胞を人工房水(aAH)培地又は人工脳脊髄液(aCSF)培地を使用したストレス条件下で評価し得る)。(b) in vitro ECMスクリーニング(細胞をin vitro細胞外マトリクス(ECM)スクリーニングにおいて評価し得る)。(c) in vivoデバイス生存性スクリーニング(カプセル化細胞をin vivo膜スクリーニングにおいて評価し得る)。幾つかのヒト及び非ヒト細胞株のスクリーニング及び結果の詳細な説明は、米国特許第6,361,771号(出典を明記することにより本願明細書の一部とする)に記載されている。
【0121】
上述した3種類のスクリーニングにおいて、ARPE-19細胞は、試験した他の多数の細胞株より優れていることが証明された(米国特許第6,361,771号参照)。特に、NGFを分泌させるために従来技術で使用されてきたBHK細胞が、細胞生存性スクリーニングを通過しなかったことに留意されたい。
【0122】
別の実施形態において、細胞株は、好ましくは、SV40T、vmyc、又はテロメラーゼの触媒サブユニット(TERT)により不死化された、ヒト不死化線維芽細胞株、ヒト不死化間葉幹細胞株、ヒト不死化星状細胞株、ヒト不死化中脳細胞株、及びヒト不死化内皮細胞株からなる群から選択される。
【0123】
本発明による別のタイプの好適なヒト細胞は、不死化ヒト星状細胞株である。不死化ヒト星状細胞株を生成するための方法は、上述したとおりである(Price TN, Burke JF, Mayne LV. A novel human astrocyte cell line (A735) with astrocyte-specific neurotransmitter function. In Vitro Cell Dev Biol Anim. 1999 May;35(5):279-88.)。このプロトコルを使用して、星状細胞株を生成し得る。
【0124】
付加的なヒト星状細胞株を生成するために、次の3つの修正をプロトコルに施すことが好ましい。
【0125】
5乃至12週齢の胎児から解離したヒト胎児脳組織を、12乃至16週齢の組織の代わりに使用し得る。
【0126】
不死化遺伝子v-mycを、SV40 T抗原の代わりに使用し得る。
【0127】
レトロウイルス遺伝子導入を、従来のプラスミドトランスフェクション手法(リン酸カルシウム沈殿を含む)でのプラスミドによるトランスフェクションの代わりに使用し得る。
【0128】
成長因子拡大細胞株は、継続的な増殖に関して、添加した分裂促進因子に依存するという利点を有する。したがって、デバイスに細胞を充填する前、又はそれに関連して分裂促進因子を停止した際に、細胞は増殖を停止し、人体への埋込後、再び増殖しない。一部の成長因子拡大細胞株は、分裂促進因子の除去時に更に分化し得る。成長因子拡大細胞株は、神経幹細胞及び胚性幹細胞等の幹細胞を含む。
【0129】
カプセル化デバイス内の細胞分布を制御する方法についても検討されてきた。出典を明記することにより本願明細書の一部とした米国特許第5,795,790号を参照されたい。細胞には、細胞増殖を阻害する処理、細胞分化を促進する処理、或いはバイオ人工臓器内での成長表面に対する細胞付着に影響を与える処理を施す。こうした処理は、(1)遺伝子的に細胞を操作するステップと、(2)増殖阻害化合物又は分化誘導化合物に細胞を曝露するか、或いは増殖刺激化合物又は分化阻害化合物への曝露から細胞を取り出し、細胞に照射を行うステップと、(3)細胞外マトリクス分子、細胞増殖又は接着性に影響する分子、或いは不活性の足場、又はそれらの組み合わせによりカプセル化デバイスの成長表面を修飾するステップとを含む。これらの処理は、組み合わせて使用し得る。好適な処理において、細胞は、増殖刺激及び分化阻害化合物に曝露後に取り出され、その後、半透性の生体適合性膜内に細胞をカプセル化する。宿主内でのカプセル化デバイスのin vivo埋込時には、細胞増殖は阻害され、細胞分化が促進される。
【0130】
長期的安定性
【0131】
好ましくは、本発明の細胞株は、in vivoでカプセル化細胞として移植された時、長期間(数ヶ月及び1年以上まで)に渡り生存することができる。更に、細胞株は、1ヶ月超、好ましくは3ヶ月超、より好ましくは6ヶ月超の期間に渡り、治療効果を確保するのに十分なレベルで生物活性化合物の分泌を維持可能であることが好ましい。また、細胞は、カプセル化後、少なくとも1ヶ月、より好ましくは少なくとも3ヶ月、より好ましくは少なくとも6ヶ月に渡り、生物活性化合物の適切な分泌を維持可能であることが好ましい。
【0132】
分泌のレベルは、好ましくは、24時間毎に、細胞106個当たり、NGF等の生物活性成長因子少なくとも200ng、より好ましくは少なくとも225ng、より好ましくは少なくとも250ng、より好ましくは少なくとも275ng、より好ましくは少なくとも300ng、より好ましくは少なくとも325ng、より好ましくは少なくとも350ng、より好ましくは少なくとも375ng、より好ましくは少なくとも400ng、より好ましくは少なくとも425ng、より好ましくは少なくとも450ng、より好ましくは少なくとも500ng、より好ましくは525ng、より好ましくは550ng、より好ましくは575ng、より好ましくは600ng、より好ましくは625ng、より好ましくは650ng、より好ましくは675ng、より好ましくは700ng、より好ましくは725ng、より好ましくは750ng、より好ましくは775ng、より好ましくは800ngである。
【0133】
分泌のレベルは、好ましくは、24時間毎に、細胞106個当たり、ガラニン等の生物活性神経ペプチド少なくとも50ng、より好ましくは少なくとも100ng、より好ましくは少なくとも150ng、より好ましくは少なくとも175ng、より好ましくは少なくとも200ng、より好ましくは少なくとも225ng、より好ましくは少なくとも250ng、より好ましくは少なくとも275ng、より好ましくは少なくとも300ng、より好ましくは少なくとも325ng、より好ましくは少なくとも350ng、より好ましくは少なくとも400ng、より好ましくは425ng、より好ましくは450ng、より好ましくは475ng、より好ましくは500ng、より好ましくは525ng、より好ましくは550ng、より好ましくは575ng、より好ましくは600ng、より好ましくは625ng、より好ましくは650ng、より好ましくは675ng、より好ましくは700ng、より好ましくは725ng、より好ましくは750ng、より好ましくは775ng、より好ましくは800ng、より好ましくは825ng、より好ましくは850ng、より好ましくは875ng、より好ましくは900ng、より好ましくは925ng、より好ましくは950ngである。
【0134】
カプセルレベルでの測定時、(カプセル化細胞を含む)カプセルは、好ましくは、24時間毎に20ng超の生物活性化合物を分泌することができる。より好ましくは、デバイス当たりの24時間毎の生物活性化合物の量は、少なくとも25ng、より好ましくは少なくとも30ng、より好ましくは少なくとも40ng、より好ましくは少なくとも50ng、より好ましくは少なくとも60ng、より好ましくは少なくとも70ng、より好ましくは少なくとも80ng、より好ましくは少なくとも90ng、より好ましくは少なくとも100ng、より好ましくは少なくとも125ng、より好ましくは少なくとも150ng、より好ましくは少なくとも175ng、より好ましくは少なくとも200ngである。これらの数は、内径500〜700μm、細胞50000個を充填した長さ5〜7mmの円筒形デバイスに関するものである。
【0135】
カプセル化のための細胞の遺伝子操作
【0136】
細胞は、治療分子を過剰発現するように遺伝子操作することができる。「遺伝的修飾」及び「遺伝子操作」という用語は、外来性DNAの意図的な導入による細胞の遺伝子型の安定した又は一時的な改変を示す。DNAは、合成又は天然由来であってよく、遺伝子、遺伝子の一部、又は他の有用なDNA配列を含有し得る。「遺伝的修飾」という用語は、自然のウイルス活性、自然の遺伝子組換え等により、自然に発生する改変を含むものではない。
【0137】
細胞の任意の有用な遺伝的修飾は、本発明の範囲に含まれる。例えば、神経伝達物質又は成長因子等の生物活性物質を生成するため、或いは生成を増加するために細胞を修飾し得る。遺伝的修飾は、ウイルスベクター(レトロウイルス、修飾ヘルペスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等)の感染、或いはこの技術で公知の方法(リポフェクション、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション等)を使用したトランスフェクションにより実行することができる(Maniatis et al., in Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y., 1982)参照)。例えば、キメラ遺伝子のコンストラクトは、ウイルスの、例えば、レトロウイルスの末端反復配列(long terminal repeat, LTR)の、サルウイルス40(SV40)の、若しくはサイトメガロウイルス(CMV)のプロモーター、又は哺乳類細胞特異的プロモーターを含むことができる。加えて、ベクターは、試験遺伝子に同時感染した時にタンパク質合成阻害剤ジェネティシン(G418)に対する耐性を与える大腸菌アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(aminoglycoside phosphotransferase gene)等の薬剤選択マーカを含むことができる。
【0138】
細胞は、発現ベクターによるトランスフェクションを使用して遺伝的に修飾することができる。本明細書での使用において、「発現ベクター」は、連結している別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を示す。ベクターの一種は、「プラスミド」であり、これは追加のDNA断片を内部に結合可能な円形の二本鎖DNAループを示す。別の種類のベクターは、ウイルスベクターであり、追加DNA断片をウイルスゲノムに結合することが可能である。ある種のベクターは、導入された宿主細胞において自己複製が可能である(例えば、細菌性の複製起源を有する細菌性ベクター及びエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、これにより、宿主ゲノムと共に複製される。更に、特定のベクターは、適切に作用可能に連結した遺伝子の発現を導くことができる。こうしたベクターを、本明細書では「発現ベクター」と呼ぶ。一般に、組換えDNA手法において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは最も一般的に使用されるベクターの形態であるため、本明細書では、「プラスミド」及び「ベクター」は、相互に交換可能に使用する場合がある。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)等、他の形態の発現ベクターを含むものである。
【0139】
あるプロトコルにおいて、遺伝子を含むベクターDNAは、0.1×TE(1mMトリス、pH8.0、0.1mMのEDTA)で40μg/mlの濃度まで希釈される。22μlのDNAを、使い捨ての5ml無菌プラスチック管において、250μlの2×HBS(280mMのNaCl、10mMのKCl、1.5mMのNa2HPO4、12mMのデキストロース、50mMのHEPES)に加える。31μlの2M CaCl2をゆっくりと加え、その混合物を30分間(min)室温でインキュベートする。この30分間のインキュベーション中に、細胞を、800gで5分間に渡り4℃で遠心分離する。細胞は、20倍体積の氷冷PBSに再懸濁し、細胞1×107個のアリコートに分割し、再び遠心分離する。細胞の各アリコートは、1mlのDNA-CaCl2懸濁液に再懸濁し、20分間室温でインキュベートする。その後、細胞を成長培地で希釈して、5%乃至7%のCO2中において6乃至24時間37℃でインキュベートする。細胞を再び遠心分離し、PBS中で洗浄し、10mlの成長培地へ48時間に渡り戻す。
【0140】
DNA、プラスミドポリヌクレオチド、又は組換えベクターの直接投与に適した溶媒には、生理食塩水、或いはスクロース、プロタミン、ポリブレン、ポリリジン、ポリカチオン、タンパク質、リン酸カルシウム、又はスペルミジンが含まれる。例えば、WO 94/01139を参照されたい。
【0141】
細胞は、リン酸カルシウム法を使用して遺伝的に修飾することもできる。標準的なリン酸カルシウム法では、細胞を機械的に解離して単一細胞の懸濁液とし、集密度50%(50,000乃至75,000細胞/cm2)で組織培養処理皿上にプレートし、一晩付着させる。一つのプロトコルでは、改変リン酸カルシウム法の手順を次のように実行する。無菌TE緩衝液(10mMトリス、0.25mM EDTA、pH7.5)内のDNA(15乃至25μg)をTEにより440μlに希釈し、60μlの2M CaCl2(1M HEPES緩衝液によりpHを5.8にしたもの)をDNA/TE緩衝液に加える。合計500μlの2×HeBS(HEPES緩衝生理食塩水、275mMのNaCl、10mMのKCl、1.4mMのNa2HPO4、mMのデキストロース、40mMのHEPES緩衝剤粉末、pH6.92)を、この混合物に滴下して加える。混合物は、20分間室温で静置する。細胞は、1×HeBSで短時間洗浄し、1mlのリン酸カルシウム沈殿DNA溶液を各プレートに加え、細胞を37℃で20分間インキュベートする。インキュベーション後、10mlの「完全培地」を細胞に加え、プレートをインキュベータ(37℃、9.5%CO2)内に更に3乃至6時間配置する。DNA及び培地は、インキュベーション期間終了時に吸引して取り出す。細胞を洗浄し、新しい培地を加え、細胞をインキュベータに戻す。
【0142】
WO93/06222に記載されているように、リン酸カルシウム共沈法を使用することができる。
【0143】
更に、細胞を遺伝子操作して、所望の分泌因子を生成することができる。所望の分泌因子は、合成又は組換え発現ベクターによりコードすることができる。本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞での核酸の発現に適した形態で本発明の核酸を含み、これは、組換え発現ベクターが、発現に使用するべき宿主細胞に基づいて選択された、発現させるべき核酸配列に適切に作用可能に連結した1つ以上の制御配列を含むことを意味する。「組換え体(recombinant)」という用語は、ポリヌクレオチドを組み合わせて有用な生物学的製剤を生成する分子生物学的技術、及び本技術により生成されたポリヌクレオチド及びペプチドを示す。ポリヌクレオチドは、プロモーター、終結シグナル等の調節要素をコードするポリヌクレオチドに適切に作用可能に連結した、所望の分泌因子をコードするポリヌクレチオドを含む、組換え型のコンストラクト(ベクター又はプラスミド等)にすることができる。組換え発現ベクター内において、「適切に作用可能に連結した(operatively-linked)」とは、(例えば、in vitro転写/翻訳系、或いはベクターを宿主細胞に導入した際の宿主細胞において)ヌクレオチド配列の発現を可能にする形で、対象のヌクレオチド配列が制御配列(群)に連結したことを意味するものである。「制御配列(regulatory sequence)」という用語は、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現調節領域(例えば、ポリアデニル化信号)を含むものである。こうした調節配列は、例えば、Goeddel, GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)において説明される。制御配列は、多くの種類の宿主細胞において、ヌクレオチド配列の恒常的発現を指揮するものと、特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指揮するもの(例えば、組織特異的制御配列)とを含む。発現ベクターの設計は、形質転換するべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベル等の要因に依存する場合があることは、当業者には理解されよう。コード配列に適切に作用可能に連結した調節配列は、調節配列に適合する条件下でコード配列の発現が達成されるように結合する。「調節配列(control sequence)」は結合したコード及び非コード配列の発現に影響を及ぼすために必要なポリヌクレオチド配列を示す。調節配列は、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終結配列を含む。加えて、「調節配列」は、コード配列内にコードされたペプチドのプロセシングを制御する配列を示し、こうした配列には、分泌、プロテアーゼ切断、及びペプチドのグリコシル化を制御する配列等が含まれる場合がある。「調節配列」という用語は、最低限、その存在が発現に影響を与えることが可能な構成要素を含むことを意図しており、例えば、リーダ配列及び融合パートナ配列等、その存在が利点を有する付加的構成要素を含むことが可能である。
【0144】
「コード配列」とは、転写され、ポリペプチドに翻訳されるポリヌクレオチド配列である。2つのコードポリヌクレオチドは、連結により、トリプレットリーディングフレームの変更又は中断の無い、連続的に翻訳可能な配列が生じる場合に、「適切に作用可能に連結した」と言える。ポリヌクレチオドは、連結により、所望の分泌因子の発現をもたらす遺伝子発現要素の適切な機能が生じる場合に、遺伝子発現要素に適切に作用可能に連結したと言える。「形質転換」は、外来性ポリヌクレオチド(即ち「導入遺伝子」)の宿主細胞への挿入を示す。外来性ポリヌクレオチドは、宿主のゲノムに組み込まれる。ポリヌクレオチドは、転写及び翻訳制御情報を含むヌクレオチド配列を含有し、こうした配列が所望の分泌因子をコードするポリヌクレチオドに「適切に作用可能に連結」している場合、所望の分泌因子を「発現可能」である。ペプチドコード領域をコードするポリヌクレチオドは、例えば、標準的な著作であるSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press 1989)に記載される従来の方法により、例えば、細菌ベクターでの調製により増幅させることができる。発現媒体は、プラスミド又は他のベクターを含む。
【0145】
遺伝子の発現は、転写、翻訳、又は翻訳後のレベルで制御される。転写開始は、遺伝子発現において初期の決定的な事象である。これは、プロモーター及びエンハンサー配列に依存し、こうした配列と相互作用する特異的細胞因子により影響される。多くの遺伝子の転写ユニットは、プロモーターと、場合によってエンハンサー又は調節エレメントとからなる(Banerji et al., Cell 27: 299 (1981); Corden et al., Science 209: 1406 (1980); and Breathnach and Chambon, Ann. Rev. Biochem. 50: 349 (1981))。レトロウイルスにおいて、レトロウイルスゲノムの複製に関与する調節領域は、長い末端反復配列(LTR)中に存在する(Weiss et al., eds., The molecular biology of tumor viruses: RNA tumor viruses, Cold Spring Harbor Laboratory, (NY 1982))。モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)及びラウス肉腫ウイルス(RSV)のLTRは、プロモーター及びエンハンサー配列を含む(Jolly et al., Nucleic Acids Res. 11: 1855 (1983); Capecchi et al., In : Enhancer and eukaryotic gene expression, Gulzman and Shenk, eds., pp. 101-102, Cold Spring Harbor Laboratories (NY 1991))。他の強力なプロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)由来のもの、及び他の野生型ウイルスプロモーター、及びヒトユビキチンC由来のUbiCプロモーター(WO98/32869)が含まれる。
【0146】
多数の非ウイルスプロモーターのプロモーター及びエンハンサー領域も記述されている(Schmidt et al., Nature 314: 285 (1985); Rossi and deCrombrugghe, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 5590-5594 (1987))。静止細胞中の導入遺伝子の発現を維持及び増加するための方法は、I型コラーゲン(1及び2)(Prockop and Kivirikko, N. Eng. J. Med. 311: 376 (1984) ; Smith and Niles, Biochem. 19: 1820 (1980) ; de Wet et al., J. Biol. Chem., 258: 14385 (1983))、SV40、及びLTRプロモーターを含めたプロモーターの使用を含む。
【0147】
本発明の一実施形態によれば、プロモーターは、ニワトリβアクチン(CAG)、ユビキチンプロモーター、CMVプロモーター、JeTプロモーター(米国特許第6,555,674号)、SV40プロモーター、Mt1プロモーター、ヒトUbiC、及び伸長因子1αプロモーター(EF-1α)からなる群から選択された恒常的プロモーターである。特に好適なプロモーターは、in vivoで下方制御を受けないものである。
【0148】
誘導/抑制可能なプロモーターの例には、Tet-On、Tet-Off、ラパマイシン誘導性プロモーター、Mx1、Mo-MLV-LTR、プロゲステロン、RU486を含む。
【0149】
導入遺伝子発現を駆動するためにウイルス及び非ウイルスプロモーターを使用することに加え、導入遺伝子発現のレベルを高めるためにエンハンサー配列を使用し得る。エンハンサーは、その起源となる領域の遺伝子だけでなく一部の外来遺伝子の転写活性を高めることができる(Armelor, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 70: 2702 (1973))。例えば、本発明では、コラーゲンエンハンサー配列を、コラーゲンプロモーター2(I)と共に使用して、導入遺伝子発現を増加させ得る。加えて、SV40ウイルスに見られるエンハンサーエレメントを使用して、導入遺伝子発現を増加させ得る。このエンハンサー配列は、全て出典を明記することにより本願明細書の一部とした、Gruss et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 943 (1981); Benoist and Chambon, Nature 290: 304 (1981), and Fromm and Berg, J. Mol. Appl. Genetics, 1 : 457 (1982)に記載されるように、72塩基対の反復からなる。この反復配列は、様々なプロモーターと連続して存在する時、多くの異なるウイルス及び細胞遺伝子の転写を増大し得る(Moreau et al., Nucleic Acids Res. 9: 6047 (1981))。
【0150】
他の発現促進配列には、コザックコンセンサス配列と、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメントと、WPREと、SP163エンハンサーと、CMVエンハンサーと、tau、TH、又はAPP遺伝子からの非翻訳5'又は3'領域と、ニワトリβグロビンインスレータ又は他のインスレーターとが含まれる。好ましい増強要素には、コザックコンセンサス配列、WPRE、及びβグロビンインスレータが含まれる。
【0151】
所望の分泌因子をコードするポリヌクレチオドは、化学合成法により、或いは組換え手法により調製することができる。ポリペプチドは、従来、Merrifield, 85 J. Amer. Chem. Soc. 2149-2154 (1963) に記載されるような化学合成法により調製することができる(Stemmer et al, 164 Gene 49 (1995)参照)。合成遺伝子と、所望の分泌因子タンパク質の生成をもたらすin vitro又はin vivoの転写及び翻訳とは、この技術分野において公知である手法により構築することができる(Brown et al., 68 Methods in Enzymology 109-151 (1979)参照)。コードポリヌクレオチドは、Applide Biosystems Model 380A又は380B DNA合成機(米国カリフォルニア州フォスタシティ、リンカーンセンタードライブ850所在のApplide Biosystems,inc. から入手可能)のような従来のDNA合成装置を使用して生成することができる。
【0152】
簡単に言えば、組換え発現ベクターの構築には、標準的な連結手法を利用する。構築されたベクター内の正確な配列を確認する分析では、例えば、Messingらの方法(Nucleic Acids Res., 9: 309-, 1981)、Maxamらの方法(Methods in Enzymology, 65: 499, 1980)、又は当業者に公知となる他の適切な方法を使用して、遺伝子の配列を決定する。
【0153】
切断した断片のサイズ分離は、例えば、Maniatisらが記述したような従来のゲル電気泳動を使用して実行する(Molecular Cloning, pp. 133-134,1982)。
【0154】
「生物学的作用物質」という用語は、ウイルス、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、炭水化物、核酸、ヌクレオチド、薬物、プロドラッグ、或いは、影響が有害か、有益か、又は他の影響であるかを問わず、神経細胞に対する影響を有し得る他の物質等の任意の作用物質を示す。神経細胞にとって有益な生物学的作用物質は、「神経学的作用物質」であり、この用語は、CNS又は眼細胞の増殖、分化、又は機能、或いは神経的又は眼科的疾患又は障害の処置にとって潜在的に有用となり得る任意の生物学的又は薬学的活性物質を含む。例えば、この用語は、特定の神経伝達物質、神経伝達物質受容体、成長因子、成長因子受容体等と、これらの作用物質の合成に使用される酵素とを包含し得る。
【0155】
遺伝的修飾が生物学的作用物質の生成に関するものである場合、物質は、中枢神経系疾患等の所与の疾患の処置に有用なものにすることができる。細胞は、成長因子、成長因子受容体、神経伝達物質、神経伝達物質合成遺伝子、神経ペプチド、及びクロム親和性顆粒アミン輸送体等、生物活性作用物質を発現するように遺伝的に修飾することができる。例えば、増殖誘導成長因子又は分化誘導成長因子を分泌するように、細胞を遺伝的に修飾することが望ましい場合がある。
【0156】
生物学的作用物質は、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性線維芽細胞成長因子(acid fibroblast growth factor)、上皮細胞増殖因子、形質転換成長因子α、形質転換成長因子β、神経成長因子、インスリン様成長因子、血小板由来成長因子、グリア細胞株由来神経組織栄養因子、ニュールツリン、パーセフィン、ニューブラスチン(Neublastin)(アルテミン(Artemin))、脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(phorbol 12-myristate 13-acetate)、チルホスチン、アクチビン、サイロトロピン放出ホルモン(thyrotropin releasing hormone)、インターロイキン、骨形成タンパク質、マクロファージ炎症性タンパク質、ヘパリン硫酸塩、アンフィレギュリン、レチノイン酸、腫瘍壊死因子α、線維芽細胞成長因子受容体、上皮細胞増殖因子受容体、又は潜在的標的組織に対して治療的に有用な効果を有すると予想される他の薬剤にすることができる。生物学的作用物質の例には、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アルテミン(artemin)、及びパーセフィン等の栄養因子と、スタウロスポリンと、CGP-41251等の成長因子活性に関連する細胞内経路の調整因子と、ホルモンと、インターロイキン等の様々なタンパク質及びポリペプチドと、ヘパリン様の分子と、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、Fv、scFv、Fab、Fab'、又はF(ab)2といった抗体の抗原結合性断片等と、2量体IgA分子又は5価IgM等の多量体型と、アフィボディ及びダイアボディと、神経細胞等の標的細胞に対する効果を有する他の様々な分子と、が含まれる。
【0157】
別の実施形態において、分泌生物活性化合物は、細胞により合成される小分子である。こうした実施形態において、構造遺伝子は、小分子の生合成に関与するポリペプチドをコードする。一例は、AADC(芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ)、TH(チロシン水酸化酵素)、及びGCH1(GTPシクロヒドロラーゼ1)を含むドーパミン合成のための酵素の発現に関与する。別の例は、GAD(グルタミン酸脱炭酸酵素)を含むGABA合成のための酵素の発現に関与する。
【0158】
他の実施形態において、遺伝子の発現は、siRNA手法を用いて下方制御される。これは、特定の状況下では、生物活性化合物の分泌増加につながり得る。例えば、構造遺伝子は、アデノシン合成及び分泌を促進するために、アデノシンキナーゼ等の内因性タンパク質を下方制御するsiRNAをコードし得る。
【0159】
哺乳類細胞を操作して、セロトニン、L-ドーパ、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、タキキニン、サブスタンスP、エンドルフィン、エンケファリン、ヒスタミン、N-メチル-D-アスパラギン酸、グリシン、グルタミン酸塩、GABA、アセチルコリン(ACh)等、様々な神経伝達物質又はその受容体を生成することができる。有用な神経伝達物質合成遺伝子には、TH、DDC、DBH、PNMT、GAD、トリプトファン水酸化酵素、ChAT、及びヒスチジン脱炭酸酵素含まれる。中枢神経系障害の処置に有用となり得る様々な神経ペプチドをコードする遺伝子には、サブスタンスP、神経ペプチドY、ガラニン、エンケファリン、バソプレシン、VIP、グルカゴン、ボンベシン、CCK、ソマトスタチン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド等が含まれる。
【0160】
受容宿主におけるCNS又は眼の細胞に対する生物学的作用物質の影響は、中枢神経系細胞(ラット褐色細胞腫PC12細胞、初代培養中枢神経ニューロン等)又は眼細胞(IO/LD7/4細胞株、ARPE-19細胞、培養網膜色素上皮細胞等)のモデル細胞培養における、発現した表現型(ニューロン、グリア細胞、神経伝達物質、又は他のマーカ)の比、細胞生存率、及び遺伝子発現の変化等の基準に関する対照培養との有意な差に基づいて、in vitroで特定することができる。細胞の物理的特性は、細胞及び神経突起の形態及び成長を顕微鏡検査で観察することにより分析することができる。酵素、受容体、及び他の細胞表面分子等のタンパク質、或いは神経伝達物質、アミノ酸、神経ペプチド、及び生体アミンの新規又はレベルの増加した発現の誘導は、こうした分子のレベルの変化を特定可能な、当該技術分野における任意の公知の手法により分析することができる。これらの手法は、こうした分子に対する抗体を使用した免疫組織化学法、又は生化学分析を含む。こうした生化学分析には、タンパク質測定、酵素測定、受容体結合測定、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、電気泳動分析、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析、ウエスタンブロット法、及び放射免疫分析(RIA)が含まれる。ノーザンブロット法及びPCRのような核酸分析を使用して、これらの分子又はこれらの分子を合成する酵素をコードするmRNAのレベルを調べることができる。また、in vivoの所望の分泌因子の転写物の細胞性検出は、免疫化学、又は他の免疫学的方法により実証することができる。
【0161】
生物活性化合物産生細胞の支持マトリクス
【0162】
本発明の方法は、更に、哺乳類の脳内への埋込前に支持マトリクス上においてin vitroで生物活性化合物産生細胞を培養することを含む。脳への埋込前のマイクロキャリアに対する細胞の事前接着は、移植細胞の長期的な生存性を増大させ、長期的な機能上の恩恵をもたらすように設計される。支持マトリクス上で細胞を培養する方法と、その細胞を脳へ移植する方法とは、米国特許第5,750,103号(出典を明記することにより本願明細書の一部とする)に記載されている。
【0163】
移植細胞、即ち生物活性化合物分泌細胞の長期的な生存性を増加させるために、移植対象の細胞は、移植前に支持マトリクスにin vitroで付着させることができる。支持マトリクスを構成することが可能な材料には、in vitroのインキュベーション後に細胞が付着し、その材料上で細胞が成長可能であると共に、移植細胞を破壊する或いは他の形でその生物活性又は治療活性に干渉する毒性反応又は炎症反応を生じることなく哺乳類の体内へ埋込可能な材料が含まれる。こうした材料は、合成又は天然化学物質、或いは生物学的起源を有する物質であってよい。
【0164】
マトリクス材料には、ガラス及び他の酸化ケイ素、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ポリアルギン酸塩、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、アクリロニトリル重合体、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリペンテン、ナイロン、アミラーゼ、天然及び修飾ゼラチン、天然及び修飾コラーゲン、デキストラン及びセルロース(例えば、ニトロセルロース)を含む天然及び修飾多糖、寒天、及び磁鉄鉱が含まれる。使用される材料は、再吸収可能であっても再吸収可能でなくてもよい。この技術において周知である細胞外マトリクス材料も対象となる。細胞外マトリクス材料は、市販のものを入手してよく、或いはこうしたマトリクスを分泌する細胞を増殖させ、分泌細胞を除去し、移植対象の細胞をマトリクスに相互作用させて接着させることにより調製し得る。埋込対象の細胞が増殖する或いは細胞と混合されるマトリクス材料は、RPE細胞の内在性の生産物であってもよい。したがって、例えば、マトリクス材料は、埋込対象のRPE細胞により生成及び分泌される細胞外マトリクス又は基底膜材料にしてよい。
【0165】
細胞の接着、生存、及び機能を改良するために、固体マトリクスは、細胞の接着、増殖、又は生存を促進することが本技術分野において公知である因子により、その外面を随意的に被覆し得る。こうした要素には、細胞接着分子、例えばフィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、エラスチン、グリコサミノグリカン、又はプロテオグリカン等の細胞外マトリクス、或いは成長因子が含まれる。
【0166】
或いは、埋込細胞が接着する固体マトリクスが多孔性材料から構築される場合、成長又は生存促進因子又は因子群は、マトリクス材料に組み込み、in vivo埋込後にそこからゆっくりと除放させ得る。
【0167】
本発明による支持部に付着させる時、移植に使用される細胞は、一般に、支持部の「外面」上に位置する。支持部は固体又は多孔性にし得る。しかしながら、多孔性支持部においても、細胞は、介在する膜又は他の障壁無しに外部環境と直接的に接触する。したがって、本発明によれば、細胞は、接着する表面が粒子又はビーズ自体の外部に位置していない多孔性支持材料の内側の折り目又は重畳部の形態となり得る場合でも、支持部の「外面」上にあると見做される。
【0168】
支持部の構成は、好ましくは、ビーズのように球形であるが、円筒形、楕円形、平板又は細片、針又はピン形状等にし得る。支持マトリクスの好適な形態は、ガラスビーズである。別の好適なビーズは、ポリスチレンビーズである。
【0169】
ビーズサイズは、直径約10μm乃至1mm、好ましくは約90乃至約150μmの範囲にしてよい。様々なマイクロキャリアビーズの説明については、例えば、Fisher Biotech Source 87-88, Fisher Scientific Co., 1987, pp. 72-75; Sigma Cell Culture Catalog, Sigma Chemical Co., St, Louis, 1991, pp. 162-163; Ventrex Product Catalog, Ventrex Laboratories, 1989を参照されたい。これらの参考文献は出典を明記することにより本願明細書の一部とする。ビーズサイズの上限は、移植細胞の機能を妨害するか、或いは周囲の組織に傷害を与える可能性のある望ましくない宿主反応をビーズがどの程度刺激するかにより決定される。ビーズサイズの上限は、更に投与方法により決定される。このような制限は、当業者によって容易に決定可能である。
【0170】
生物活性化合物のポリマーカプセル化細胞送達の治療的有用性
【0171】
中枢神経系は、慢性変性を受ける部位である。成長因子は、神経変性疾患を処置する上で非常に大きな治療能力を有することが知られている。例えば、成長因子を分泌するように遺伝子操作されたポリマーカプセル化異種細胞は、ラット(Winn et al., 91 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2324-8 (1994))、霊長類(Emerich et al., 349 J. Comp. Neurol. 148-64 (1994))、及び高齢霊長類(Kordower et al., 91 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 10898-902 (1994))における、中枢神経系の傷害誘導性細胞損失からの保護が可能である。治療効果は、副作用の兆候を示すこと無く、様々な成長因子を中枢神経系の様々な標的部位に直接供給するポリマーカプセル化細胞デバイスによりもたらされる (Emerich et al., 130 Exp. Neurol. 141-50 (1994), Emerich et al, 736 Brain Res. 99-110 (1996), Emerich et al., 349 J. Comp. Neurol. 148-64 (1994), Hoffman et al., 122 Exp. Neurol. 100-6 (1993), Kordower et al., 72 Neuroscience 63-77 (1996), Kordower et al., 91 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 10898-902 (1994), Winn et al., 91 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2324-8 (1994))。成長因子のポリマーカプセル化細胞送達の安全性は、最長1年間に渡って脳に送達された成長因子を受容した動物において副作用が見られなかった研究により裏付けられる(Lindner et al., 5 Cell Transplant. 205-23 (1996), Winn et al., 140 Exp. Neurol. 126-38 (1996))。これらの研究では、神経毒性に極めて敏感である学習行動の試験においても副作用は見られなかった。
【0172】
マイクロカプセル
【0173】
上述したマクロカプセルに加えて、本発明の神経ペプチド分泌細胞は、マイクロカプセル又はマイクロスフィア内でカプセル化し得る。
【0174】
本発明のマイクロカプセルは、1μL未満の容積を有するカプセルである。
【0175】
本明細書において定めるマイクロカプセル又はマイクロスフィアは、1カプセル当たり104未満の細胞を保持するカプセルである。マイクロカプセルは、実質的に104未満の細胞、例として1カプセル当たり1000未満の細胞、例えば1カプセル当たり100未満の細胞、例として1カプセル当たり50未満の細胞、例えば1カプセル当たり10未満の細胞、例として1カプセル当たり5未満の細胞を収容し得る。こうしたマイクロカプセルは、マトリクス内部でほぼ均一に分散する細胞を収容するという点において、構造的に比較的単純にし得る。マイクロカプセルは、2層以上の構造を提供し、マイクロカプセルの表面から細胞が突出しない状態を確保するために被覆してもよい。
【0176】
マイクロカプセルは、通常、500μm未満、例として450μm未満、例えば400μm未満、例として350μm未満、例えば300μm未満、例として250μm未満、例えば200μm未満、例として150μm未満、例えば100μm未満、例として50μm未満、例えば25μm未満、例として20μm未満、例えば10μm未満、例として5μm未満の小さな直径であるため、液体懸濁液のように取り扱い、処置部位に注入することができる。
【0177】
自殺システム
【0178】
生物活性化合物分泌細胞をカプセル化する本発明のデバイスは、必要な時に患者から回収し得る。更なる安全措置として、細胞は、問題の患者への適切な薬物の投与により選択的に細胞を死滅させ得る状態を確保する自殺システムを備えてもよい。
【0179】
移植後に裸細胞を除去する可能性は非常に限られているため、自殺システムは、本発明による裸細胞移植に特に好適となる。
【0180】
こうした自殺システムの1つは、チミジンキナーゼに基づく。チミジンキナーゼを恒常的又は誘導的に発現する内蔵の自殺システムを有することにより、AZT等の治療的有効量のヌクレオシド類似体を個体に投与することにより細胞を死滅させることができる。ヌクレオシド類似体は、カプセル化細胞が制御されない形で増殖し始めた場合に投与することができる。単に生物活性化合物分泌細胞が必要なくなったため、或いは、即座に終了する必要が有り、カプセル化細胞の外科的除去を待っていられないため、或いは、更なる治療が他の何らかの手段によるものであるため、処置を終了させたい場合もあり得る。
【0181】
移植又はカプセル化細胞を移植前に条件的に不死化した場合、移植後に癌遺伝子が転写を開始し、移植細胞が結果的に発癌性となる理論上のリスクが存在する。誘導性プロモーター(例えば、Tet on-offシステム、Mx1プロモーター等)の制御下で癌遺伝子の形質導入により細胞を不死化した場合は常に、チミジンキナーゼ(TK)酵素コード配列を、同じプロモーターの制御下で(例えば、IRESコンストラクトを使用して)ベクターコンストラクトへ挿入するか、或いは、TKコード配列を、同一のプロモーターにより別のベクターに挿入する。これにより、癌遺伝子が転写される場合は常に、TKも転写され、形質導入された発癌性細胞は、プロドラッグを投与することにより選択的に死滅させることができる。
【0182】
先行技術に記載されるチミジンキナーゼ(TK)遺伝子の幾つかの例が存在する。好適なTKの1つは、HSV-チミジンキナーゼである。他の好適なキナーゼには、Munch-Petersen et al 2000, J. Biol. Chem. 275:6673-6679に記載のキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)チミジンキナーゼが含まれる。このキナーゼの突然変異体は、幾つかのヌクレオシド類似体に関してLD50が減少しているため、更に好適となる(WO01/88106)。好適なチミジンキナーゼの別の群には、WO03/100045に記載の植物キナーゼが含まれる。
【0183】
免疫刺激細胞表面タンパク質
【0184】
一実施形態では、生物活性化合物に加えて、免疫刺激細胞表面ポリペプチドを発現することが可能なカプセル化ヒト細胞が提供される。こうした免疫刺激細胞表面発現細胞は、破裂したカプセルから逃れた細胞が患者の免疫系により破壊されるため、人間の患者での埋込用にカプセル化される時に特に有用である。宿主免疫反応は、無傷のデバイス内において免疫刺激細胞表面ポリペプチドを発現する組換え細胞により引き起こされない。しかしながら、デバイスが破損した場合、放出された細胞は、補体活性化又は免疫記憶の形成無しに、食細胞により事実上除去される。
【0185】
特定の実施形態において、トランスフェリン受容体膜ドメインを含有するキメラポリペプチドは、ヒトIgG1 Fcを細胞膜の表面に「逆向き」に固定し、オプソニン化中のIgGの配置を模倣する。ヒトIgG1キメラポリペプチドは、Fc受容体と結合し、マクロファージ等の食細胞を活性化するが、更に補体カスケード(「補体結合(complement fixation)」)を活性化する望ましくない特性は持たない。慢性的に活性化された補体系は、宿主細胞を死滅させることが可能であり、このメカニズムが炎症及び神経変性疾患を含む多くの変性疾患を引き起こす恐れが有ることを示す証拠が増えている。本発明の本実施形態の詳細は、米国特許第6,197,294号(Neurotech)に記載されている。
【0186】
本実施形態によれば、細胞株は、更に、アミノ末端において第2の細胞表面ポリペプチドに連結した免疫刺激細胞表面タンパク質を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に適切に作用可能に連結したプロモーターを含むコンストラクトを備え、第2の細胞表面ポリペプチドは、膜貫通領域を含み、発現時に、融合タンパク質は、細胞表面において発現される。
【0187】
好ましくは、免疫刺激細胞表面ポリペプチドは、食細胞を活性化するが、補体を固定しない。一実施形態において、免疫刺激細胞表面ポリペプチドは、IgGの一部の領域であり、好ましくはFcである。第2の細胞表面ポリペプチドは、トランスフェリン受容体のヒンジ領域であってもよい。
【実施例】
【0188】
実施例1:
【0189】
ガラニン及びNGF発現プラスミドの構築、並びに、哺乳類細胞で野生型(wt)ガラニン及びwtNGFを生成するための、Sleeping Beautyトランスポザーゼ基質ベクターへの発現カセットのサブクローニング
【0190】
1)ガラニンコンストラクトは次のように作成した: IgSP-deltaprepro-galanin を重複PCRにより生成した。第1の増幅ステップにおいて、成熟ガラニンをコードするガラニン配列と、10bp IgSP FLAP(IgSP=マウスIg重鎖遺伝子V領域信号ペプチド配列)を備えたC末端ペプチドとを、pCMV-SPORT6-hgalanin プラスミド(ドイツ、ベルリン所在のRZPDから入手、クローンID:IRATp970F0849D6)から、プライマー対FLAP-IgSP-mature gala (配列番号 10) 5' (5'-GGTGAATTCGGGCTGGACCCTGAACAGCGCG-3')及びDeltaprepro-galanin-XhoI (配列番号 11) 3' (5'-TATACTCGAGCAGGAATGGCTGACTCTGCATAAATTGGCC-3')を使用してPCR増幅した。第2のPCR反応では、成熟ガラニン5'末端からの10 bp galanin FLAPを有する全長IgSP配列を含む断片を、pNUT-IgSP-hCNTF (米国特許第6,361,771号)から、プライマー対IgSPkozak1s+BamHI (配列番号 12)(5'-TATAGGATCCGCCACCATGAAATGCAGCTGGGTTATC-3')及びIgSP-galanin FLAP (配列番号 13)(5'-GGGTCCAGCCCGAATTCACCCCTGTAGAAAG-3')を使用して増幅した。第3のステップでは、ステップ1及び2の二つのPCR反応の生成物を等モル量で組合せて、プライマー対 IgSPkozak1s+BamHI 及びDeltaprepro-galanin-XhoI 3' とを使用して最終PCR反応を行い、 IgSP-deltaprepro-galanin 断片を生成した。
【0191】
プラスミドに基づく発現ベクターを生成するために、結果的に生じたPCR断片を、BamHI/XhoIにより消化されたpCAnにクローニングした。pCAnベクターは、pcDNA3.1(Invitrogen)に由来する。CMVプロモーターを、pcDNA3.1から除去し、ヒトCMVエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター及び第1イントロンに置き換えた。更に、ベクターは、哺乳類細胞内で発現した時にG418耐性を付与するNeo遺伝子を含む。次に、IgSP-deltaprepro-galanin 断片発現カセット(即ち、CAGプロモーター及びネオマイシン耐性発現カセットを含む)を、pCAnベクターからプラスミドpT2BHへ、サブクローニングした。pT2BHは、トランスポザーゼSleeping Beauty (Ivics et al., Cell, 91: 501-10 (1997))用の基質ベクターである。サブクローニングは、最初にpT2BHをBglII及びEcoRVにより消化することで実行した。次に、pCAn-IgSP-deltaprepro-galanin ベクターを、BsmBIにより消化し、その後、クレノウラージ断片ポリメラーゼによる充填反応を行った。平滑末端化し開いたベクターを、BglIIにより消化し、半平滑末端化したIgSP-deltaprepro-galanin +ネオマイシン耐性発現カセット断片を作成し、これをBglII-EcoRV消化pT2BHベクターにクローニングした。
【0192】
2)ヒトNGFコンストラクトは、次のように作成した。ヒトプリプロNGFを、HEK293細胞から単離したゲノムDNAから、次のプライマーを使用してPCR増幅した: hNGFs+BamHI (配列番号 14): 5'-TATAGGATCCCTCTGAGGGACCCAGAAACT-3'及びhNGFas+XhoI (配列番号 15): 5'-TATACTCGAGCAGGTCAGGCTCTTCTCAC-3'。結果的に生じたPCR断片をBamHI及びXhoIにより切断し、発現ベクター pCAn(上述)のBamHI及びXhoI部位へ挿入して、コンストラクトpCAn.hNGFを生成した。pCAn.hNGF (ネオマイシン耐性カセットも含む)からの発現カセットを、半平滑末端化断片として、BglII及びSsPIを使用して切除した。Sleeping Beautyトランスポザーゼ基質ベクターpT2BHを、BglII及びEcoRVにより消化した。CAn.hNGF断片を、BglII及びEcoRV消化ベクターバックボーン内へ結合して、コンストラクトpT2.CAn.hNGFを形成した。
【0193】
コンストラクトからの配列を実施例2に示す。
【0194】
実施例2: 実施例1において説明したコンストラクトの配列
【0195】
【化1】

【0196】
【化2】

【0197】
実施例3. ガラニン-及びNGF-分泌哺乳類安定細胞の生成及び分泌された神経ペプチドのレベルの比較
【0198】
実施例1において説明したコンストラクトを使用したARPE-19細胞における安定発現株の生成
【0199】
ARPE-19は、10%ウシ胎児血清(Sigma-Aldrich、デンマーク)を添加したDMEM/Nutrient Mix F-12及びGlutamax (Invitrogen、デンマーク)において37℃5%CO2で成長させたヒト網膜色素上皮細胞株(Dunn et al. 1996)である。細胞は、トリプシン処理及び再播種(分割比1:5)により、週に約2回継代した。細胞は、トランスフェクション研究用に2.4×106細胞/フラスコの密度でT150フラスコ(Corning Costar, Biotech Line、デンマーク)に播種した。翌日、各フラスコの細胞を、ガラニン又はNGF発現カセットを含むpT2 SB基質ベクターと、SB-100x高活性トランスポザーゼ発現ベクターとにより、3:1の比(7.5μgのpT2ベクター及び2.5μgのSB-100x)又は10:1の比(9μgのpT2ベクター及び0.9μgのSB-100x)を用いて、製造業者の仕様に従ってFugene6 (Roche、ドイツ)を使用して、共トランスフェクション(同時導入)した。安定したトランスフェクタント(形質移入体)を選択するために、トランスフェクション後48時間に、800μg/mlのG418を培地に追加した。クローンが明瞭になり互いに分離したように見えた時点で、各コンストラクトから約200個のクローンを取り出し、48ウェルプレートへ移送した。これらのプレートでコンフルエントとなった時に、市販のガラニンELISAキット(カタログ番号S-1210、Bachem)を使用して、ガラニンの存在についてガラニンクローンを試験すると共に、市販のNGF ELISAキット(NGF Duoset, R&D Systems)を使用して、NGFの存在についてNGFクローンを試験した。最も生産性の高いクローンは、T150フラスコにおいて更に拡大し、アリコートを液体N2中において冷凍した。
【0200】
結果
【0201】
in vitroでのpCAn及びpT2に基づくクローンからのガラニン及びNGF分泌
【0202】
最良のガラニン及びNGFクローンに対して、最長8週間までの培養下で発現安定性調査を行った(2D調査)。図1から、SBトランスポザーゼ系を使用して生成したクローンが、標準的なトランスフェクションにより生成したクローンと比較して、驚くほど大量の因子を分泌することが明らかである。
【0203】
in vivoでのpCAn及びpT2に基づくクローンからのガラニン分泌
【0204】
2D調査において最も安定した高ガラニン生成クローン(SB-IgSP-24)及び低ガラニン生成クローン(ppG-152)について、Goettingenミニブタモデルにおけるin vivoでの発現安定性を試験した。クローンは、NsGene独自のカプセル化細胞(EC)生体送達技術を使用してカプセル化した。要するに、分画分子量(molecular weight cut-off, MWCO) 280kDの14mmポリエーテルスルホン(polyether-sulphone, PES)膜に、250,000細胞/デバイスで充填を行った。細胞は、デバイス上で2週間に渡り定着及び繁殖させた後、ブタの海馬内に埋込した。デバイスは4週間後に外植した。図2は、移植前のデバイスからの分泌ガラニンのレベルを、外植したデバイス及び並行してin vitroで維持したデバイスと比較して示している。SB技術を用いて生成したクローンSB-IgSP-24からのガラニンの分泌レベルは、標準的なトランスフェクション手法を用いて生成したクローンppG-152と比較して予想外に大きいことが明らかである(外殖片レベル: 約150ng/デバイス/24時間。5ng/デバイス/24時間に対して)。
【0205】
in vivoでのpCAn及びpT2に基づくクローンからのNGF分泌
【0206】
2D調査で最も安定したNGF高生成クローン(SB-NGF-78)及び以前に生成された最良の低生成クローン(NGC-0295)を、ラットにおけるin vivoでの発現安定性について試験した。クローンは、NsGene独自のカプセル化細胞(EC)生体送達技術を使用して、MWCOが280kDの7mm PES膜に100,000細胞/デバイスで充填した。デバイスは、ラットの線条体内に埋込し、8週間そのままにした後、外植した。図3は、移植前のデバイスからの分泌NGFのレベルを、外植したデバイス及び並行してin vitroで維持したデバイスと比較して示している。SB技術を用いて生成したクローンSB-NGF-78からのNGF分泌レベルは、標準的なトランスフェクション手法を用いて生成したクローンNGC-0295と比較して予想外に大きい(外殖片レベル: 約80ng/デバイス/24時間。8ng/デバイス/24時間に対して)。
【0207】
比較例4: 試験された他の導入遺伝子発現増強(強化)戦略
【0208】
【表2】

【0209】
実施例5. トランスポザーゼ系を使用して生成された細胞株における導入遺伝子コピー数の判定
【0210】
この判定に使用した手法は、トランスポゾンディスプレイ(Wicks et al., Dev. Biol. 221: 295-307 (2000))と呼ばれ、ベクトレット法(Hui et al., Cell. Mol. Life Sci. 54: 1403-11 (1998))から派生したものである。
【0211】
方法は概略次の通りである。1)ゲノムDNAを細胞株から調製する。2)ゲノムDNAを制限酵素により消化して染色体を断片化する。3)約500bpのいわゆるベクトレットリンカ/カセットであり、制限酵素により形成されたゲノムDNAのオーバハングに一致するオーバハングを有するものを、消化されたゲノムDNAに結合する。ベクトレットリンカは、中央に約50bpのミスマッチ領域を含む。4)ベクトレットの1本の鎖にアニーリングしたプライマーと、トランスポゾンの配列にアニーリングした別のプライマーとを使用して、2段階のベクトレットPCRを実行する。ベクトレットリンカのミスマッチ領域のため、(トランスポザーゼ基質配列に囲まれた)導入遺伝子のコピーを含む消化ゲノムDNA断片に結合したベクトレットリンカを含む断片のみが増幅される(Hui et al., Cell. Mol. Life Sci. 54: 1403-11 (1998)の図1参照)。
【0212】
この方法をSleeping Beautyトランスポゾン系により作成したガラニン及びNGF分泌細胞株に対して使用すると、コピー数と導入遺伝子がコードする因子の分泌レベルとの間に良好な相関が見られた(表3(原文Table 2)参照)。生成量の大きい(高生成)SBクローンは、一般に、1乃至6コピーのNGF導入遺伝子又は1乃至18コピーのガラニン導入遺伝子を有する。したがって、導入遺伝子コピー数と、観察されたSBクローンの因子分泌レベルの向上との間に、ある程度の相関が存在する。しかしながら、因子分泌レベルを、1コピーの導入遺伝子を有するSBクローンと、同じく1コピーの導入遺伝子を含む標準的なトランスフェクション手法を用いて生成したクローンとで比較すると、導入遺伝子のコピー数が、分泌レベルを決定する唯一のものではなく、SBクローンが、通常予想されるものよりも高く安定した因子分泌レベルを実際に有していることは明らかである。
【0213】
結論
【0214】
標準的なトランスフェクション手法を使用して生成されたクローンとSB由来クローンとを比較した上記の試験から、SB系は、宿主細胞における導入遺伝子コピー数の3乃至5の増加から予想されるものより大きく導入遺伝子の分泌を増大可能なことは明らかである。これに関連して、他の幾つかの有力な発現増強戦略を試験したことに言及しておきたい(表2(原文Table 1)参照)。
【0215】
【表3】

【0216】
配列
【0217】
【表4】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0218】
【特許文献1】WO2001/29204
【特許文献2】WO2009/050657
【特許文献3】WO2009/071334

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分泌生物活性化合物を被験者へ送達するためのカプセルであって、
a. 生体適合性を有する外膜及び内部コアを備え、
b. 当該内部コアは、細胞を含み
c. 当該細胞は、構造遺伝子を有する異種発現コンストラクトを含み、当該構造遺伝子は、
i. 分泌生物活性ポリペプチドをコードするか、或いは、
ii. 生物活性を有する分泌化合物の細胞内での生成に寄与するポリペプチド又はsiRNAをコードし、
d. 当該遺伝子は、トランスポザーゼ又は他のインテグラーゼの基質である2つの逆方向反復間に位置する、カプセル。
【請求項2】
前記生体適合性を有する外膜が、前記化合物を通過させる半透性膜である、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記内部コアがマトリクスを含む、請求項1又は2に記載のカプセル。
【請求項4】
前記細胞が真核細胞、好ましくは、哺乳類細胞、より好ましくは、霊長類細胞、より好ましくは、ヒト細胞である、請求項1乃至3の何れかに記載のカプセル。
【請求項5】
前記カプセルが1μL未満のカプセル容積を有するマイクロカプセルである、請求項1乃至4の何れかに記載のカプセル。
【請求項6】
前記カプセルが少なくとも1μL、例として1乃至10μLのカプセル容積を有するマクロカプセルである、請求項1又は2記載のカプセル。
【請求項7】
カプセル容積1μL当たり10,000乃至250,000細胞、より好ましくは、1μL当たり50,000乃至200,000細胞、より好ましくは、1μL当たり100,000乃至200,000細胞、より好ましくは、1μL当たり15,000乃至50,000細胞、より好ましくは、1μL当たり20,000乃至30,000細胞を含む、請求項1乃至6の何れかに記載のカプセル。
【請求項8】
前記カプセルの容積が、少なくとも0.5μL、好ましくは、少なくとも1μL、より好ましくは、少なくとも0.5乃至10μLの範囲である、請求項1乃至7の何れかに記載のカプセル。
【請求項9】
104未満の細胞、例として1カプセル当たり1000未満の細胞、例えば1カプセル当たり100未満の細胞、例として1カプセル当たり50未満の細胞、例えば1カプセル当たり10未満の細胞、例として1カプセル当たり5未満の細胞を収容する、請求項1乃至8の何れかに記載のカプセル。
【請求項10】
厚さが最大1000μmである、請求項1乃至9の何れかに記載のカプセル。
【請求項11】
500μm未満、例として450μm未満、例えば400μm未満、例として350μm未満、例えば300μm未満、例として250μm未満、例えば200μm未満、例として150μm未満、例えば100μm未満、例として50μm未満、例えば25μm未満、例として20μm未満、例えば10μm未満、例として5μm未満の直径を有する、請求項1乃至10の何れかに記載のカプセル。
【請求項12】
前記カプセルが前記半透性膜内に配置された内部コアを含み、当該内部コアがヒト細胞組成物と当該ヒト細胞組成物用のマトリクスとを備える、請求項1乃至11の何れかに記載のカプセル。
【請求項13】
前記内部コアが相互接続した細孔を有する網状の発泡体からなる足場を備え、当該発泡体の細孔の密度が20%乃至90%であり、かつ、前記細胞が当該細孔内に分散する、請求項1乃至12の何れかに記載のカプセル。
【請求項14】
前記発泡体からなる足場がヒドロゲル、熱可塑性プラスチック、又は熱可塑性エラストマーである、請求項1乃至13の何れかに記載のカプセル。
【請求項15】
前記半透性膜は、前記コア内の細胞と前記カプセルの外部の細胞との間における細胞同士の接触を防止することが可能である、請求項2乃至14の何れかに記載のカプセル。
【請求項16】
前記半透性膜が免疫隔離性である、請求項2乃至15の何れかに記載のカプセル。
【請求項17】
前記半透性膜が細孔性である、請求項2乃至16の何れかに記載のカプセル。
【請求項18】
前記膜が1000kDa以下、例えば300kDa以下、好ましくは280kDa以下の分画分子量を有する、請求項1乃至17の何れかに記載のカプセル。
【請求項19】
前記カプセルがジャケットを備え、当該ジャケットの厚さが2乃至200ミクロンである、請求項1乃至18の何れかに記載のカプセル。
【請求項20】
係留具を更に備える、請求項1乃至19の何れかに記載のカプセル。
【請求項21】
縫合穴を更に備える、請求項1乃至20の何れかに記載のカプセル。
【請求項22】
前記係留具は、前記カプセルの取り付け及び除去に使用することができる、請求項20又は21記載のカプセル。
【請求項23】
前記細胞が接触抑制性細胞である、請求項1乃至22の何れかに記載のカプセル。
【請求項24】
前記細胞は、貪食が可能である、請求項1乃至23の何れかに記載のカプセル。
【請求項25】
前記細胞が非腫瘍原性である、請求項1乃至24の何れかに記載のカプセル。
【請求項26】
前記細胞が哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、非腫瘍原性である、請求項1乃至25の何れかに記載のカプセル。
【請求項27】
前記細胞が異種不死化遺伝子、好ましくはSV40T、vmyc、又はテロメラーゼの触媒サブユニットであるTERTの挿入により不死化されている、請求項1乃至26の何れかに記載のカプセル。
【請求項28】
前記細胞が異種不死化遺伝子の挿入により不死化されていない、請求項1乃至26の何れかに記載のカプセル。
【請求項29】
前記細胞は、低酸素圧、例として酸素圧5%未満、より好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満において生存が可能である、請求項1乃至28の何れかに記載のカプセル。
【請求項30】
前記細胞が初代培養を起源とする、請求項1乃至29の何れかに記載のカプセル。
【請求項31】
前記細胞は、少なくとも50回の倍加、より好ましくは少なくとも60回の倍加、より好ましくは少なくとも70回の倍加、より好ましくは少なくとも80回の倍加、より好ましくは少なくとも90回の倍加、例えば約100回の倍加を起こすことが可能である、請求項1乃至30の何れかに記載のカプセル。
【請求項32】
前記細胞が低レベルのヒト宿主免疫反応を引き起こし、好ましくは、ヒト抗体及び/又は補体依存性細胞毒性が非ヒト動物に比べ、ヒトにおいて低くなる、請求項1乃至31の何れかに記載のカプセル。
【請求項33】
内部の全ての細胞が単一の細胞株に由来する、請求項1乃至32の何れかに記載のカプセル。
【請求項34】
前記細胞株がヒト幹細胞株である、請求項33記載のカプセル。
【請求項35】
前記細胞株がヒト星状細胞株である、請求項33記載のカプセル。
【請求項36】
前記細胞株がヒト中脳細胞株である、請求項33記載のカプセル。
【請求項37】
前記細胞株がヒト上皮細胞株である、請求項33記載のカプセル。
【請求項38】
前記上皮細胞株が初代RPE細胞等を含む網膜色素上皮(RPE)細胞株である、請求項37記載のカプセル。
【請求項39】
前記細胞株がARPE-19由来細胞株である、請求項38記載のカプセル。
【請求項40】
前記細胞株がヒト単クローン細胞株である、請求項33乃至39の何れかに記載のカプセル。
【請求項41】
前記発現コンストラクトがプロモーターを含む、請求項1乃至40の何れかに記載のカプセル。
【請求項42】
前記プロモーターが恒常的プロモーターである、請求項41記載のカプセル。
【請求項43】
前記恒常的活性プロモーターがCAG、CMV、ヒトUbiC、JeT、RSV、EF-1α、SV40、Mt1からなる群から選択される、請求項42記載のカプセル。
【請求項44】
前記プロモーターが誘導性プロモーターである、請求項41記載のカプセル。
【請求項45】
前記誘導性プロモーターがTet-On、Tet-Off、Mo-MLV-LTR、Mx1、プロゲステロン、RU486、ラパマイシン誘導性プロモーターからなる群から選択される、請求項44記載のカプセル。
【請求項46】
前記発現コンストラクトが何らかの随意的な発現促進配列を含む、請求項1乃至45の何れかに記載のカプセル。
【請求項47】
前記構造遺伝子が治療的に関連性のある遺伝子をコードする、請求項1乃至46の何れかに記載のカプセル。
【請求項48】
前記構造遺伝子がガラニン、神経ペプチドY、オレキシンA、オレキシンB、エンケファリン、ソマトスタチン14、ソマトスタチン28、血管活性腸管ペプチド、腸管ペプチドPHV-42、腸管ペプチドPHV-27、サブスタンスP、ニューロテンシン、コレシストキニン58、コレシストキニン39、コレシストキニン33、コレシストキニン25、コレシストキニン18、コレシストキニン12、コレシストキニン8、コレシストキニン7、コレシストキニン5、サブスタンスP、神経ペプチドK、神経ペプチドγ、ニューロキニンA、TRH、NGFからなる群から選択される、請求項1乃至47の何れかに記載のカプセル。
【請求項49】
前記構造遺伝子がガラニン、コレシストキニン、ニューロテンシン、サブスタンスP、神経ペプチドK、神経ペプチドγ、ニューロキニンA、血管活性腸管ペプチド、オレキシンBからなる群から選択される、請求項1乃至48の何れかに記載のカプセル。
【請求項50】
前記構造遺伝子がガラニン、神経ペプチドY、オレキシンA、オレキシンBからなる群から選択される、請求項48記載のカプセル。
【請求項51】
前記構造遺伝子がガラニンである、請求項48乃至50の何れかに記載のカプセル。
【請求項52】
前記構造遺伝子が成長因子又は栄養因子をコードする、請求項1乃至51の何れかに記載のカプセル。
【請求項53】
前記因子が神経栄養因子である、請求項1乃至52の何れかに記載のカプセル。
【請求項54】
前記構造遺伝子が抗体又は抗体の結合性断片をコードする、請求項1乃至53の何れかに記載のカプセル。
【請求項55】
前記構造遺伝子がNGFである、請求項1乃至54の何れかに記載のカプセル。
【請求項56】
前記NGFのコード配列が異種シグナルペプチドを有する成熟NGFをコードする、請求項1乃至55の何れかに記載のカプセル。
【請求項57】
前記NGFのコード配列が異種プロペプチドを有する成熟NGFをコードする、請求項1乃至56の何れかに記載のカプセル。
【請求項58】
前記構造遺伝子は、AADC(芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ)、TH(チロシン水酸化酵素)、及びGCH1(GTPシクロヒドロラーゼ1)を含むドーパミン合成のための酵素、及びGAD(グルタミン酸脱炭酸酵素)を含むGABA合成のための酵素等、小分子の生合成に関与するポリペプチドをコードする、請求項1乃至57の何れかに記載のカプセル。
【請求項59】
前記構造遺伝子が、アデノシン合成及び分泌を促進するために、アデノシンキナーゼ等の内因性タンパク質を下方制御するsiRNAをコードする、請求項1乃至58の何れかに記載のカプセル。
【請求項60】
前記発現コンストラクトが、コザックコンセンサス配列と、WPREと、β-グロビンインスレーターと、SP163エンハンサーと、tau、TH、又はAPP遺伝子からの非翻訳5'又は3'領域とからなる群から選択される配列を更に備える、請求項1乃至59の何れかに記載のカプセル。
【請求項61】
前記カプセルが、 少なくとも20ng/カプセル/24時間、 例として30ng/カプセル/24時間、 例えば少なくとも40ng/カプセル/24時間、 例として50ng/カプセル/24時間、 例えば少なくとも60ng/カプセル/24時間、 例として70ng/カプセル/24時間、 例えば少なくとも80ng/カプセル/24時間、 例として100ng/カプセル/24時間、 例えば少なくとも120ng/カプセル/24時間、 例として140ng/カプセル/24時間、 例えば少なくとも160ng/カプセル/24時間、 例として180ng/カプセル/24時間、 例えば少なくとも190ng/カプセル/24時間、 例として200ng/カプセル/24時間で成長因子を分泌することができる、請求項1乃至60の何れかに記載のカプセル。
【請求項62】
前記カプセルが、 少なくとも20ng/カプセル/24時間、 例として30ng/カプセル/24時間、 例えば少なくとも40ng/カプセル/24時間、 例として50ng/カプセル/24時間、 例えば少なくとも75ng/カプセル/24時間、 例として100ng/カプセル/24時間、 例えば少なくとも125ng/カプセル/24時間、 例として150ng/カプセル/24時間、 例えば少なくとも175ng/カプセル/24時間、 例として200ng/カプセル/24時間で神経ペプチドを分泌することができる、請求項1乃至61の何れかに記載のカプセル。
【請求項63】
前記構造遺伝子のコピー数が1であるか、1より大きく、例えば2乃至25、例として2乃至5、例として5乃至10、例として10乃至15、例として15乃至20、例として20乃至25である、請求項1乃至62の何れかに記載のカプセル。
【請求項64】
前記2つの逆方向反復がIR/DRであり、当該IR/DRはトランスポザーゼの認識部位である、請求項1乃至63の何れかに記載のカプセル。
【請求項65】
前記IR/DRが、配列番号:5及び配列番号:6により特定されるヌクレオチド配列、或いは配列番号:5及び配列番号:6に対して70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項64記載のカプセル。
【請求項66】
前記トランスポザーゼが非ウイルス性である、請求項1乃至65の何れかに記載のカプセル。
【請求項67】
前記トランスポザーゼが、Sleeping Beauty、Frog Prince、Tol2、ΦC31、piggyback、Minos、mariner、Hermes、又はこれらの任意の変異体である、請求項1乃至66の何れかに記載のカプセル。
【請求項68】
治療に使用するための、請求項1乃至67の何れかに記載のカプセル。
【請求項69】
前記カプセルが非ヒトにおける埋込に使用される、請求項1乃至68の何れかに記載のカプセル。
【請求項70】
前記カプセルがヒトにおける埋込に使用される、請求項68記載のカプセル。
【請求項71】
前記埋込が脳に対するものである、請求項68乃至70の何れかに記載のカプセル。
【請求項72】
構造遺伝子をコードする異種発現コンストラクトを備える細胞株であって、当該構造遺伝子は、
i. 分泌生物活性ポリペプチドをコードするか、或いは、
ii. 生物活性を有する分泌化合物の細胞における生成に寄与するポリペプチド又はsiRNAをコードし、
前記遺伝子は、トランスポザーゼの基質である2つの逆方向反復間に位置する、細胞株。
【請求項73】
前記細胞株が、幹細胞、星状細胞、中脳細胞、間葉細胞、造血細胞、線維芽細胞、単クローン細胞、又は上皮細胞からなる群から選択される、請求項72記載の細胞株。
【請求項74】
前記細胞が、真核細胞、好ましくは、哺乳類細胞、より好ましくは、霊長類細胞、より好ましくは、ヒト細胞である、請求項72記載の細胞株。
【請求項75】
コンフルエント時に、前記生物活性ポリペプチド又は生物活性を有する分泌化合物の細胞における生成に寄与するポリペプチドを、 少なくとも200ng/106細胞/24時間、 例として250ng/106細胞/24時間、 例えば少なくとも500ng/106細胞/24時間、 例として600ng/106細胞/24時間、 例えば少なくとも700ng/106細胞/24時間、 例として750ng/106細胞/24時間、 例えば少なくとも775ng/106細胞/24時間、 例として800ng/106細胞/24時間で分泌する、請求項72又は73記載の細胞株。
【請求項76】
マトリクスに付着している、請求項72乃至75の何れかに記載の細胞株。
【請求項77】
前記マトリクスは、ガラス及び他の酸化ケイ素、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ポリアルギン酸塩、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、アクリロニトリル重合体、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリペンテン、ナイロン、アミラーゼ、天然及び修飾ゼラチン、天然及び修飾コラーゲン、デキストラン及びセルロース(例えば、ニトロセルロース)を含む天然及び修飾多糖、寒天、及び磁鉄鉱からなる群から選択される、請求項76記載の細胞株。
【請求項78】
前記マトリクスが固体であり、細胞接着分子;例えばフィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、エラスチン、グリコサミノグリカン、又はプロテオグリカン等の細胞外マトリクス分子;或いは成長因子等を含む細胞の接着、増殖、又は生存を促進する因子によりその外面を被覆される、請求項76記載の細胞株。
【請求項79】
成長促進因子及び/又は生存促進因子が、前記マトリクスの材料に組み込まれる、請求項76記載の細胞株。
【請求項80】
前記マトリクスの構成が、好ましくは球形、円筒形、楕円形、平板又は細片、針又はピン形状等である、請求項76記載の細胞株。
【請求項81】
前記マトリクスがビーズから成り、ビーズサイズは、直径約10μm乃至1mm、好ましくは約90乃至約150μmの範囲である、請求項76記載の細胞株。
【請求項82】
請求項72乃至81記載の細胞を培養するステップと、組換えタンパク質を回収するステップとを備える、組換えタンパク質の製造方法。
【請求項83】
前記細胞株が、チャイニーズハムスター卵巣細胞、CHO-K1、ベビーハムスター腎臓細胞、マウス線維芽細胞3T3細胞、アフリカミドリザル細胞株、ラット副腎褐色細胞腫、AT3、ラットグリア系腫瘍、ラット神経細胞株、及びラット海馬細胞株からなる群から選択される、請求項82記載の方法。
【請求項84】
生物活性化合物を分泌することが可能な細胞株を生成する方法であって、
a. 第1及び第2の発現コンストラクトにより細胞をトランスフェクトするステップと、
b. 当該第1の発現コンストラクトは、トランスポザーゼをコードする読み取り枠を含むことと、
c. 当該第2の発現コンストラクトは、分泌生物活性ポリペプチドをコードするか、或いは、生物活性を有する分泌化合物の細胞における生成に寄与するポリペプチド又はsiRNAをコードすることと、
d. 当該第2の発現コンストラクトは、当該トランスポザーゼの基質である2つの逆方向反復間に位置することと、
e. 当該トランスポザーゼの一時的発現を発生させ、これにより、ヒト細胞のゲノムへの当該第2の発現コンストラクトの組み込みを発生させるステップと、を備える方法。
【請求項85】
前記細胞が、真核細胞、好ましくは、哺乳類細胞、より好ましくは、霊長類細胞、より好ましくは、ヒト細胞である、請求項84記載の方法。
【請求項86】
前記第1及び第2の発現コンストラクトが異なるプラスミドに位置している、請求項84記載の方法。
【請求項87】
前記第1及び第2の発現コンストラクトが同じプラスミドに位置している、請求項84記載の方法。
【請求項88】
前記第2の発現コンストラクトが選択可能マーカ遺伝子を更にコードする、請求項84乃至87の何れかに記載の方法。
【請求項89】
前記選択可能マーカ遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、DS-redMST蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ(LUC)、クロラムフェニコールアセチル基転移酵素(CAT)、及びβ-ガラクトシダーゼ(lacZ)からなる群から選択される、請求項88記載の方法。
【請求項90】
前記トランスポザーゼが、Sleeping Beauty、Frog Prince、Tol2、ΦC31、piggyback、Minos、mariner、Hermes、及びこれらの任意の変異体からなる群から選択される、請求項84乃至89の何れかに記載の方法。
【請求項91】
前記Sleeping Beautyの変異体が、
-K14R、
-K13D、
-K13A、
-K30R、
-K33A、
-T83A、
-I100L、
-R115H、
-R143L、
-R147E、
-A205K/H207V/K208R/D210E、
-H207V/K208R/D210E、
-R214D/K215A/E216V/N217Q、
-M243H、
-M243Q、
-E267D、
-T314N、及び
-G317Eからなる群から選択される突然変異又は突然変異群のうち少なくとも1つを含み、かつ、1乃至20個のアミノ酸が配列番号7と異なるアミノ酸配列を備えるSB10Xの変異体から選択される、請求項90記載の方法。
【請求項92】
前記Sleeping Beautyの変異体が配列番号8に開示されるアミノ酸配列を備える変異体27である、請求項90記載の方法。
【請求項93】
前記Sleeping Beauty変異体が配列番号9に開示されるアミノ酸配列を備える変異体28である、請求項90記載の方法。
【請求項94】
前記トランスフェクションにより、1細胞当たり3乃至5のコピー数が生じる、請求項84乃至93の何れかに記載の方法。
【請求項95】
前記トランスフェクションにより、1細胞当たり6乃至10のコピー数が生じる、請求項84乃至93の何れかに記載の方法。
【請求項96】
前記発現コンストラクトが恒常的プロモーターの制御下にある、請求項84乃至95の何れかに記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−515729(P2012−515729A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546593(P2011−546593)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際出願番号】PCT/DK2010/050013
【国際公開番号】WO2010/083841
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(506135604)エヌエスジーン・アクティーゼルスカブ (6)
【氏名又は名称原語表記】NsGene A/S
【Fターム(参考)】