説明

改質土壌の製造方法及び改質土壌製造装置

【課題】透水性、保水性、クッション性、防塵性の良好な地面を形成することのできる改質土壌を、安定した品質で製造することができ、ダイオキシンの発生を防止することができ、改質土壌の含水率を調整する必要がなく、簡便に製造できる改質土壌の製造方法を提供すること、及び、前記改質土壌の製造方法に好適に使用され、移動可能な改質土壌製造装置を提供すること。
【解決手段】粒径が0.001〜10mmである土壌粒子を含有する土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とを過熱蒸気を導入しつつ、混練することを特徴とする改質土壌の製造方法、及び、粒径が0.001〜10mmである土壌粒子を含有する土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とを混練する混練機と、前記混練機内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給装置と、を有することを特徴とする改質土壌製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、改質土壌の製造方法及び改質土壌製造装置に関し、更に詳しくは、保水性、防塵性等の良好な地面を形成することのできる改質土壌を、安定した品質で、簡便に製造できる改質土壌の製造方法、及び前記改質土壌の製造方法に好適に使用される改質土壌製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、学校の校庭、競技場のグラウンド、児童、生徒等の遊び場、体育祭等における競技場グラウンド等には、一定の地面特性が必要とされてきた。この地面特性としては、例えば、水はけが良いこと、完全に乾燥せずに一定の湿り気があること、空気を内包することによりクッション性が良好であること、土壌面から土壌微粒子が飛散しないこと、転倒者等に傷を付けることが少ないこと等を挙げることができる。
【0003】
これらの地面特性を実現する具体例としては、例えば、学校の校庭に特定産地で採取された砂を敷き詰めて、転圧して形成された校庭を挙げることができる。この校庭においては、校庭の土埃が舞い上がること、校庭の砂の粒粒によって、人が転倒すると怪我をするという問題点があった。
【0004】
そこで、本発明者らにより、上記問題を解決することのできる人工土壌の製造方法として、「粒径が0.001〜0.1mmである土壌粒子を含有する土壌とフッ素樹脂とを剪断作用下及び圧縮作用下に混練することにより混練物の温度を70〜200℃にし、次いでフッ素樹脂と前記混練物とを混練することを特徴とする人工土壌の製造方法。」(特許文献1参照)、が提案されている。この人工土壌を製造する工程においては、必要に応じて、バーナーなどにより混練機を加熱しつつ、土壌とフッ素樹脂とを混合することが行われていた。しかし、従来の方法によると、土壌とフッ素樹脂との混合物の温度が、混練機内における場所によりバラツキを生じるおそれがあった。部分的には600℃以上に加熱される場所もあり、そのことによりダイオキシンが発生するおそれがあった。さらに、土壌とフッ素樹脂とを加熱しつつ混合することにより、製造された人工土壌が乾燥してしまうので、造成地に敷き詰める前に、人工土壌の含水率を調整する必要があり、煩雑であった。
【0005】
【特許文献1】特開2006−89930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、透水性、保水性、クッション性、防塵性の良好な地面を形成することのできる改質土壌を、安定した品質で製造することができ、ダイオキシンの発生を防止することができ、改質土壌の含水率を調整する必要がなく、簡便に製造できる改質土壌の製造方法を提供すること、及び前記改質土壌の製造方法に好適に使用され、移動可能な改質土壌製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、粒径が0.001〜10mmである土壌粒子を含有する土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とを過熱蒸気を導入しつつ、混練することを特徴とする改質土壌の製造方法であり、
請求項2は、前記土壌は、前記土壌粒子を、土壌に対して80〜100質量%の割合で含有して成る請求項1に記載の改質土壌の製造方法であり、
請求項3は、前記フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレンである請求項1又は2に記載の改質土壌の製造方法であり、
請求項4は、前記フッ素樹脂及び前記フルオロシリコーン樹脂は、前記土壌と前記フッ素樹脂又は前記フルオロシリコーン樹脂との合計に対して0.03〜0.60質量%の割合で、土壌に添加される請求項1〜3のいずれか一項に記載の改質土壌の製造方法であり、
請求項5は、粒径が0.001〜10mmである土壌粒子を含有する土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とを混練する混練機と、前記混練機内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給装置と、を有することを特徴とする改質土壌製造装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る改質土壌の製造方法は、粒径が0.001〜10mmである土壌粒子を含有する土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とを過熱蒸気を導入しつつ、混練するので、前記土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とが温度のバラツキを生ずることなく混練され、透水性、保水性、クッション性、防塵性の良好な地面を形成することのできる改質土壌を、安定した品質で製造することができる。また、製造された改質土壌は、適度な水を含有しているので、改質土壌を造成地に敷き詰める前に、改質土壌の含水率を調整する必要がない。さらに、前記改質土壌の製造方法によれば、ダイオキシンの発生を防ぐことができる。
【0009】
本発明に係る改質土壌製造装置は、粒径が0.001〜10mmである土壌粒子を含有する土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とを混練する混練機と、前記混練機内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給装置と、を有するので、前記土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とが温度のバラツキを生ずることなく混練され、透水性、保水性、クッション性、防塵性の良好な地面を形成することのできる改質土壌を、安定した品質で製造することができる。また、製造された改質土壌は、適度な水を含有しているので、改質土壌を造成地に敷き詰める前に、改質土壌の含水率を調整する必要がない。さらに、前記改質土壌製造装置によれば、ダイオキシンの発生を防ぐことができる。また、前記改質土壌製造装置は、トラックなどに載せて移動させることができるので、現場で改質土壌を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の一例である改質土壌の製造方法は、粒径が0.001〜10mmである土壌粒子を含有する土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とを過熱蒸気を導入しつつ、混練することを特徴とする。
【0011】
前記土壌は、粒径が0.001〜10mmであり、好ましくは0.001〜0.1mmである土壌粒子を含有する。前記土壌粒子としては、例えば、赤土、黒土、その他の土類の各単体、およびこれらの混合物等を挙げることができる。また、前記土壌粒子としては、他に、造成する予定の地面から剥離した土壌、下水汚泥焼却灰、湿式砕石製造時に生ずる濁水の脱水ケーキ、乾式砕石製造時に生ずる微粉末、浄水場で生ずる脱水ケーキ、火山灰等を挙げることができる。
【0012】
土壌の粒径の測定方法としては、JIS A1204に規定された土の粒度試験方法などを挙げることができる。
【0013】
また、前記土壌は、前記土壌粒子を、土壌に対して80〜100質量%の範囲内で前記フッ素樹脂又は前記フルオロシリコーン樹脂及びその他の成分と合わせて100質量%になるような割合で含有してなることが好ましい。この範囲内であると、より一層、透水性、保水性、クッション性の良好な地面を形成することのできる改質土壌とすることができる。
【0014】
造成する予定の地面から剥離した土壌は、そのままの土壌であっても良いが、好ましくは土壌を形成する土壌粒子の粒径を、0.001〜10mm、好ましくは0.001〜0.1mmに調整しておくのが良い。また、造成する予定の地面から剥離した土壌の場合には、土壌の中に岩石、樹木の根等の異物が含まれているときには、これらを除去しておくことが望ましい。
【0015】
前記フッ素樹脂は、前記土壌粒子を結合する。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、六フッ化エチレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン等並びにフルオロシリコーン樹脂を挙げることができる。この中でも、前記フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
【0016】
前記フルオロシリコーン樹脂は、前記土壌粒子を結合する。フルオロシリコーン樹脂としては、例えば、シリコーンオイルにフルオロアルキル基が導入されてなり、その粘度としては、例えば温度25℃での粘度が100〜100000cSt、好ましくは100〜20000cStが好適である。
【0017】
フルオロシリコーン樹脂の一例として、例えば、式(1);T[F(CF2)aC24CH3SiO]x(RCH3SiO)y(QCH3SiO)zTで表すことができ、Tはトリアルキルシロキシ基または水酸基である。トリアルキルシロキシ基としては、トリメチルシロキシ基、ジメチルビニルシロキシ基、5−ヘキセニルジメチルシロキシ基、F(CF2)aC24(CH32SiO基などが例示される。Rは1価炭化水素基であり、メチル基、及びエチル基などのアルキル基、フェニル基、及びトリフルオロプロピル基などが例示され、好ましくは、メチル基である。Qは炭素原子数の数が4〜8のアルケニル基であり、具体的にはヘキセニル基,ヘプテニル基,ブテニル基,ペンテニル基が例示される。これらの中でもヘキセニル基が好ましく、aは4以上の整数であるが、通常、12以下であり、4、6、8が例示される。xは1以上の整数であり、yは0または1以上の整数であり、zは1以上の整数である。また、xとyとzの合計数である(x+y+z)は50以上の整数であり、x/(x+y+z)は0.25であり、z/(x+y+z)は0.1以下である。
【0018】
前記フッ素樹脂及び前記フルオロシリコーン樹脂は、前記土壌と前記フッ素樹脂又は前記フルオロシリコーン樹脂との合計に対して0.03〜0.60質量%の割合で含有されてなることが好ましい。この範囲内であると、より一層、透水性、保水性、クッション性、防塵性の良好な地面を形成することのできる人工土壌とすることができる。
【0019】
前記土壌とフッ素樹脂とを混合・混練して改質土壌にするには、この発明の一例である改質土壌製造装置を使用するのが好適である。
【0020】
図1及び図2に示されるように、前記改質土壌製造装置1は、土壌計量器2と、前記土壌計量器2により計量された土壌を搬送する搬送手段の一例であるコンベアー3と、フッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂及びこれを溶解又は懸濁する溶媒を計量する樹脂計量器4と、前記土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂などを混合・混練する混練機5と、過熱蒸気供給装置6と、を備える。
【0021】
前記土壌計量器2は、前記土壌の重量を計量することができるように設計され、例えば風袋であり、且つ土壌を収容するとともに、計量された土壌をコンベアー3に放出する底面開口部を備えた容器であるタンク7と土壌を収容するタンク全体の重量を測定することのできるロードセル等とを組み合わせて設計することができる。
【0022】
この土壌計量器2は、この改質土壌製造装置1においては、地面に設置される。
【0023】
前記樹脂計量器4は、例えばフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とこれを溶解又は懸濁する溶媒とから成る樹脂含有液を計量することができるように、例えば内壁に容積を示す目盛りが形成されている。樹脂計量器内に収容された樹脂含有液を混練機5に注入する方法は特に限定されないが、例えば、樹脂計量器4に樹脂配管8が接続され、前記樹脂配管8に接続された樹脂ノズル9が混練機5に設置されて、ポンプなどの移送手段により樹脂計量器4内の樹脂含有液が混練機5に注入される。
【0024】
土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とを混練する際には、溶媒を使用せずにフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂自体と土壌とを混練してもよく、一方、フッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂を溶媒に溶解乃至懸濁して溶液乃至懸濁液とし、この樹脂含有液と土壌とを混練するようにしても良い。フッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂を溶媒に溶解乃至懸濁して樹脂含有液とする場合には、例えば、溶媒として、水を例に取ると、樹脂含有液は樹脂水溶液である。樹脂水溶液の濃度は、5〜300g/Lであることが好ましい。
【0025】
この樹脂計量器4は、この改質土壌製造装置1においては、地面に設置される。
【0026】
前記過熱蒸気供給装置6は、ボイラー10と高周波電磁誘導加熱装置11とを備える。外部からボイラー10に接続された水導入配管12より導入された水、例えば水道水から、100℃未満の飽和水蒸気をボイラー10で生成する。この飽和水蒸気をボイラー10と高周波電磁誘導加熱装置11とに接続された飽和水蒸気配管13を介して高周波電磁誘導加熱装置11に導入する。高周波電磁誘導加熱装置11により導入された飽和水蒸気から過熱蒸気が生成される。この高周波電磁誘導加熱装置11は、ステンレス鋼などの金属により形成されて成る筒体を備えており、この筒体の外周にコイルが固定され、このコイルから発生する磁力線により筒体内にある、ステンレス鋼などの金属により形成されて成る球体及び板状体からジュール熱を発生させることができる。この高周波電磁誘導加熱装置11の筒体内をボイラー10から導入される飽和水蒸気を通過させることにより、常圧下において飽和水蒸気から、例えば200℃以上の過熱水蒸気を生成させることができる。高周波電磁誘導加熱装置11の過熱蒸気排出口14から排出される過熱蒸気は、200〜400℃の範囲内であるのが好ましい。この温度範囲内であれば、混練機5内のフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂と土壌との混合物の温度は、60〜200℃の範囲内に維持することができる。前記温度範囲内において、フッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂と土壌とを混練することにより、土壌を構成する土壌粒子同士がフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂により相互に結合されるものと推測される。前記過熱蒸気排出口14に過熱蒸気配管15が接続され、前記過熱蒸気配管15に接続された過熱蒸気ノズル16が混練機5に設置されて、過熱蒸気供給装置6において生成された過熱蒸気が、混練機5に注入される。
【0027】
なお、前記過熱蒸気供給装置6においては、ボイラー10と高周波電磁誘導加熱装置11とが飽和水蒸気配管13により接続されているが、過熱蒸気を生成することができる限り、その構造は特に制限されず、ボイラー10と高周波電磁誘導加熱装置11とが一体に形成されていても良い。
【0028】
また、図2に示される改質土壌製造装置1の例においては、過熱蒸気ノズル16は、過熱蒸気ノズル16に複数の孔が設けられ、これらの孔より過熱蒸気を混練機5に供給しているが、過熱蒸気を混練機5に供給するための過熱蒸気ノズルの形状、位置等は、適宜設計変更することができる。
【0029】
前記過熱蒸気供給装置6により生成され、混練機5に注入される過熱蒸気は、30〜200kg/時間が好ましく、50〜100kg/時間が特に好ましい。前記範囲内であれば、従来のようなバーナーなどの直火により混練機を加熱する方法と異なり、混練機5内を均一な温度にすることができるので、安定した品質の改質土壌を製造することができる。また、ダイオキシンの発生を防止することができる。
【0030】
前記過熱蒸気が混練機5に注入される時間は、0.5〜7分であるのが好ましい。前記範囲内であれば、土壌を構成する土壌粒子同士がフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂により相互に結合されて成る改質土壌を製造することができると共に、前記改質土壌に適度な水分を含有させることができる。
【0031】
前記混練機5は、例えばフレーム台17の上に設置され、計量済みの土壌と樹脂含有液とを混練することができるように、たとえば撹拌器とその撹拌器を収容するタンクとタンクの底部に形成された開閉可能な排出口18とを備えた構造に設計される。
【0032】
この混練機5の上部は開口されていて、その開口19に前記コンベアー3で搬送されてきた計量済みの土壌が、投入される。前記樹脂計量器4で計量された樹脂含有液は、混練機5に設置されて成る樹脂ノズル9より注入される。前記過熱蒸気供給装置6で生成された過熱蒸気は、過熱蒸気ノズル16より注入される。前記土壌、前記樹脂含有液、及び前記過熱蒸気を混練機5に導入する方法は、前記方法に限定されず、任意の方法を採用することができる。前記樹脂計量器4で計量された樹脂含有液と投入された計量済みの土壌とは、過熱蒸気ノズル16より過熱蒸気を注入しつつ、この混練機5内で混合・混練される。
【0033】
前記土壌と前記樹脂含有液とを混練する混練時間は、土壌及び樹脂含有液の種類及び量などに応じて、適宜選択することができ、通常、1分〜10時間の範囲内であるのが好ましい。
【0034】
前記混練機5で混合される土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂との混合割合は、フッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂が樹脂水溶液として混合されるときに、土壌1kgに対して、樹脂水溶液が30〜200gであることが好ましい。
【0035】
前記混練機5は、土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とを均一に混合することができ、過熱蒸気を導入しつつ混練することにより、繊維状に形成されて成るフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂により土壌粒子相互間を結合することができる限り特に限定されず、剪断作用及び圧縮作用を土壌に及ぼすことのできる混練機であるのが好ましい。このような混練機5としては、回転容器型混練機、固定容器型混練機、ロール型混練機、水平軸型混練機、水平二軸パドル式混練機等を挙げることができ、これらの中でも水平二軸パドル式混練機が好ましい。
【0036】
回転容器型混練機としては、ボールミル、コンクリートミキサー等を挙げることができる。
【0037】
固定容器型混練機としては、水平軸型混練機、垂直軸型混練機等を挙げることができる。水平軸型混練機としては、単軸型、複軸型、単複軸型等を挙げることができる。
【0038】
水平軸型混練機における単軸型としては、リボンミキサー、コニーダー、ボテーター等を挙げることができる。また、水平軸型混練機における複軸型としては、バンバリーミキサー、双腕型ニーダー、セルフクリーニング型ニーダー、パグミル、ギヤコンパウンダー、オーガー等を挙げることができる。さらに、水平軸型混練機における単複軸型としては、スクリュー押出し機、スクリュー型ニーダー、ピンミキサー、ロッドミキサー等を挙げることができる。
【0039】
垂直軸型混練機としては、単軸型、単複軸型等を挙げることができる。垂直軸型混練機における単軸型としては、クラッシャー、高速流動型ミキサー、ヘンシェルミキサー、シュギーミキサー等を挙げることができる。また、垂直軸型混練機における単複軸型としては、マラー、ワールミックス、アイリッヒミル等を挙げることができる。一方、ロール型混練機としては、ロールミル、テーパーロールミル等を挙げることができる。
【0040】
これら混練機の中でも、水平軸型混練機が好ましく、水平軸型混練機における複軸型混練機及び水平二軸パドル式混練機がより好ましく、セルフクリーニング型ニーダーが最も好ましい。
【0041】
混練機で土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とが過熱蒸気導入下に混練されることにより形成された改質土壌は、混練機の排出口から排出される。
【0042】
排出された改質土壌は、土壌粒子がフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂で相互に結合し、しかも土壌粒子間に空隙が生じている。したがって、得られる好適な改質土壌は、その見かけ比重が通常の場合、1.00〜1.40である。得られる改質土壌の見かけ比重がこの範囲内であると、透水性、保水性、クッション性の良好な造成地を形成することのできる改質土壌とすることができる。
【0043】
また、良好な改質土壌は、透水係数が0.002〜0.01cm/sであり、飽和含水率が20〜30質量%であることが好ましい。この範囲内であると、より一層、透水性、保水性、クッション性の良好な地面を形成することのできる改質土壌とすることができる。
【0044】
ここで、透水係数の測定方法としては、JIS A1218に規定された変水位透水試験法等を挙げることができる。また、飽和含水率の測定方法としては、以下に説明する方法等を挙げることができる。
【0045】
まず、測定対象の土を充填する容器の底に孔を形成する。孔が形成された底部に布織布を敷き詰める。布織布を敷き詰めた上方から一定量の土を容器に充填する。土が充填された容器に十分な水を上方から加え、土に含まれることのない水、すなわち飽和水以外の水を容器の底部より排出する。この際、土に水を加える前と、土に水を加えた後とのそれぞれの土の重さを測定する。そして、以下の式(1)に基づいて、飽和含水率が測定される。
【0046】
(土に水を加えた後の土の重さ−土に水を加える前の土の重さ)/土に水を加えた後の土の重さ×100 ・・・(1)
【0047】
良好な改質土壌の含水率は、15〜25重量%であるのが好ましい。本発明に係る改質土壌の製造方法においては、この含水率は、過熱蒸気の流量及び注入時間により調節することができる。この含水率の測定方法としては、JIS A1203に規定された土の含水比試験方法等を挙げることができる。本発明に係る改質土壌の製造方法においては、含水率が前記範囲内の改質土壌を製造することができるので、改質土壌を造成地に敷き詰める前に含水率を調整する必要がない点で有利である。
【0048】
この発明により製造された改質土壌は土壌粒子が相互にフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂で結合されているので、空気を含んだ土壌であり、土壌粒子が風等により飛散することがない。また、この改質土壌が敷き詰めれた造成地は、透水性、保水性、クッション性、防塵性の良好な地面となる。
【0049】
本発明に係る改質土壌の製造方法により製造された改質土壌の用途としては、所定の目的を達成することができるように造成されるべき土地を挙げることができる。ここで、所定の目的として、例えば公園乃至園庭としての用途の実現、スポーツの実演、実行に適した用途の実現、家庭的乃至個人的用途の実現、公共目的としての用途の実現等を挙げることができる。これらの目的を達成することの出来るように造成されるべき土地として、例えば学校の校庭、競技場のグラウンド、野球場、公園、家庭用庭、園庭、競技場ダート、モータスポーツ用ダート、駐車場、歩道、暗渠、建設現場等における仮設道路等を挙げることができる。
【0050】
学校の校庭にどのようにして前記改質土壌を使用するかを以下に説明する。図3(A)に示されるように、校庭の地面から土を掘り返す。次に、図3(B)に示されるように、掘り返された校庭の地面に、改質土壌を散開させる。図3(C)に示されるように、改質土壌の上面側から転圧し、平らにする。または、校庭の地面に、前記改質土壌を単に敷均して、転圧する。このように、本発明に係る改質土壌の製造方法により製造された改質土壌が転圧された校庭は、透水性、保水性、クッション性、防塵性の良好な地面とすることができる。
【0051】
また、暗渠に、どのようにして前記改質土壌を使用するかを以下に説明する。図4に示されるように、暗渠を設ける箇所を掘り返した後、暗渠管を配置する。暗渠管が配置された上方から、本発明に係る改質土壌の製造方法により製造された改質土壌をかぶせ、暗渠管を埋設する。このように、前記改質土壌により埋設された暗渠管は、前記改質土壌が透水性、保水性、クッション性に関して良好であるので、水分を良好に通すことができる。
【0052】
前記改質土壌製造装置は、トラックなどに載せて移動可能であるので、改質土壌製造装置を、造成する予定の現場に運び、造成地で、つまりその造成地の敷地内で又はその造成地近傍で、改質土壌を製造することもできる。このとき、使用する土壌は、造成地に運び込んだ土壌粒子を含む土壌であっても良いし、造成する予定の地面から剥離した土壌であっても良い。造成する予定の地面から剥離した土壌を使用する場合は、現場で改質土壌を製造することができるので、造成する予定の地面から剥離した土壌を遠隔地に搬出し、また改良された土壌を遠隔地から搬入することがなく、効率的な造成作業を実現することができる。また、その造成土地の土壌を改良し再利用することができるので、別の土地の土壌を採取することによる環境破壊が防止される。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
本実施例に係る改質土壌を、図1に示す改質土壌製造装置を使用して製造した。土壌計量器により質量比で、赤土:黒土=1:1の土壌を計量したところ100kgであった。この計量された土壌をコンベアーにて混練機に移送した。この土壌の粒径は0.01〜3mmであった。次いで、樹脂計量器3にて計量された2000gのフッ素樹脂乳化液が混練機5に注入された。なお、このフッ素樹脂乳化液の濃度は10g/Lである。混練機にフッ素樹脂乳化液を注入するのと同時に、過熱蒸気供給装置により約400℃の過熱蒸気を混練機に注入し、3分間前記土壌と前記フッ素樹脂乳化液とを混合した。なお、この混練機は、水平二軸パドル式混練機である。前記土壌と前記フルオロシリコーン樹脂乳化液とを混練することによって、改質土壌が得られた。この改質土壌の嵩比重は1.16であった。
【0054】
<透水性>
また、前記改質土壌の透水試験をJIS A1218に従って行い透水係数を求めた結果を表1に示す。また前記した方法により求めた飽和含水率は、41質量%であった。
【0055】
<保水性>
まず、測定対象の改質土壌を充填する容器の底に孔を形成する。孔が形成された底部に布織布を敷き詰める。布織布を敷き詰めた上方から100gの改質土壌を容器に充填した。改質土壌が充填された容器に十分な水を上方から加え、改質土壌に含まれることのない水、すなわち飽和水以外の水を容器の底部から排出した。このように形成された飽和含水土壌を別の容器に入れ、この容器を屋外に5時間放置することにより飽和含水土壌を乾燥させて得られた乾燥土壌の重さを測定した。改質土壌の保水量を以下の式(2)に基づいて算出した。結果を表1に示す。
(乾燥土壌の重さ−改質土壌の重さ100g) ・・・(2)
【0056】
<粉塵性>
前記改質土壌を厚さ5cmになるように専用ケースに敷き詰め、次いで、前記改質土壌の表面から30cmの高さより500gの鉄のおもりを落下させた。
前記改質土壌の表面から30cmの高さに粉塵センサー(神栄テクノロジー株式会社製PPD−20V)を設置して、粒径5μmまでの大きさの粉塵量を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
<クッション性>
クッション性を評価することを目的としてプロクターニードル試験を行った。前記改質土壌に、直径6mmの金属棒を、1/2インチの深さまで挿入し、その時の抵抗値を測定した結果を表1に示す。
【0058】
(比較例1)
過熱蒸気を混練機に注入せずに、混練機として二軸のスクリュー羽根を有するセルフクリーニング型ニーダーを使用して、この混練機をバーナーにより加熱しつつ、前記土壌と前記フルオロシリコーン樹脂乳化液とを混合したこと以外は実施例1と同様にして、改質土壌を製造した。
【0059】
(比較例2)
前記実施例で用いたのと同じ土壌(赤土:黒土=1:1)につき実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、この発明に係る改質土壌製造装置の一例を示す側面説明図である。
【図2】図2は、この発明に係る改質土壌製造装置の一例を示す平面説明図である。
【図3】図3は、この発明に係る改質土壌を学校の校庭に使用する際の説明図である。
【図4】図4は、この発明に係る改質土壌を暗渠に使用する際の説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1 改質土壌製造装置
2 土壌計量器
3 コンベアー
4 計量器
5 混練機
6 過熱蒸気供給装置
7 タンク
8 樹脂配管
9 樹脂ノズル
10 ボイラー
11 高周波電磁誘導加熱装置
12 水導入配管
13 飽和水蒸気配管
14 過熱蒸気排出口
15 配過熱蒸気配管
16 過熱蒸気ノズル
17 フレーム台
18 排出口
19 開口
31 校庭の地面
32、45 改質土壌
43 暗渠を設ける箇所
44 暗渠管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が0.001〜10mmである土壌粒子を含有する土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とを過熱蒸気を導入しつつ、混練することを特徴とする改質土壌の製造方法。
【請求項2】
前記土壌は、前記土壌粒子を、土壌に対して80〜100質量%の割合で含有して成る請求項1に記載の改質土壌の製造方法。
【請求項3】
前記フッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレンである請求項1又は2に記載の改質土壌の製造方法。
【請求項4】
前記フッ素樹脂及び前記フルオロシリコーン樹脂は、前記土壌と前記フッ素樹脂又は前記フルオロシリコーン樹脂との合計に対して0.03〜0.60質量%の割合で、土壌に添加される請求項1〜3のいずれか一項に記載の改質土壌の製造方法。
【請求項5】
粒径が0.001〜10mmである土壌粒子を含有する土壌とフッ素樹脂又はフルオロシリコーン樹脂とを混練する混練機と、前記混練機内に過熱蒸気を供給する過熱蒸気供給装置と、を有することを特徴とする改質土壌製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−73954(P2009−73954A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244822(P2007−244822)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(506097139)株式会社レジェントコーポレーション (2)
【Fターム(参考)】