説明

放射源と発光体を有する照射システム

本発明は、放射源と、少なくとも1の蛍光物質を有する発光体とを有する照明システムであって、前記少なくとも1の蛍光物質は、前記放射源によって発光される光の一部を吸収して、吸収した光とは異なる波長の光を放射することができ、前記少なくとも1の蛍光物質は、一般式が、EA2-zSi5-aBaN8-aOa:Lnz;ただし0<z≦1および0<a<5、で表されるオキシド−ニトリド−シリケートであり、少なくとも1の元素EAは、Mg、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群から選択され、少なくとも1の元素Bは、Al、GaおよびInからなる群から選択され、前記オキシド−ニトリド−シリケートは、セリウム、ユーロピウム、テルビウム、プラセオジミウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるランタノイドで活性化されることを特徴とする照明システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般に、放射源と蛍光物質を有する蛍光体とを有する照明システムに関する。本発明はさらに、そのような照明システムに用いる蛍光物質に関する。
【0002】
特に本発明は、照明システムと、蛍光物質を有する蛍光体に関し、この蛍光物質は、発光下方変換およびその後の放射源から放射される紫外線または青色放射線をベースとした色混合によって、白色光を含む特定の色を発する。放射源としては、特に発光ダイオードが想定される。
【背景技術】
【0003】
近年、放射源として発光ダイオードを用い、白色光を放射する照明システムを得るための各種試行がなされている。赤、緑および青の発光ダイオードの配置を用いて白色光を形成する場合、発光ダイオードの色調、輝度、およびその他の因子の影響によって、所望の色調の白色光が得られないという問題がある。
【0004】
これらの問題を解決するため、発光ダイオードによって放射される光の色を変換する照明システムに関する多くの開発が行われており、蛍光物質を含む発光体によって、可視白色光の照射が可能となる。
【0005】
米国特許第5 998 925号には、白色発光LED装置が示されている。この装置には、セリウムドープされたイットリウムアルミニウムガーネット、Y3Al5O12:Ceが用いられ、InGaNダイオードの青色放射線を黄色に変換して、適当な色温度の白色光が形成される。国際公開WO00/33390号に示されている別の方法では、青色発光LEDが、緑および赤の蛍光物質と組み合わせて使用される。蛍光物質は、他のチオガレート(Sr、Ca、Ba)(Al、Ga)2S4:Euの中から選択された少なくとも一つの第1の蛍光物質と、他の金属硫化物SrS:Eu、(Ca、Sr)S:EuまたはチオガレートCaLa2S4:Ceの中から選択された少なくとも一つの第2の蛍光物質とを有し、明確な色温度の白色光を形成する。チオガレート(Sr、Ca、Ba)(Al、Ga)2S4:Euを青色LEDのような発光素子と合わせて用いることで、特定の色を発することができる。
【0006】
上述の蛍光物質を用いることで、一次LED放射の発光下方変換によって、各種色温度で適当な演色評価数の白色光を形成することができるが、これらの蛍光物質には、総変換効率、吸収強度、放射波長選択性、熱サイクル特性および寿命に関するいくつかの欠点がある。これらの特性は、これらの蛍光物質をLEDに用いる際には、重要となる。
【0007】
特に、蛍光物質の変換効率を向上させるため、高エネルギーバンドギャップの発光ダイオードを用いる場合、半導体によって放射される光のエネルギーは増大する。蛍光物質によって吸収され得る閾値以上のエネルギーを持つフォトンの数が増大すると、結果的に、より多くの光が吸収され、効率は向上する。しかし、同時に発光体に吸収されるエネルギーが、増大することは避けられず、結果的に、より顕著な発光体の劣化が生じる。長寿命用の高発光強度の発光ダイオードを使用すると、発光体の劣化は、より顕著になる。
【0008】
また、発光素子の近傍に設置された発光体は、発光素子の温度上昇および外部環境からの熱輸送によって、高温にさらされることが予想される。
【0009】
さらに、ある発光体は、外部から侵入する水分、または製作工程中に取り込まれる水分と、光および発光ダイオードからの熱の複合作用によって、劣化が加速される。
【0010】
米国特許出願公開第2002/0043926A1号には、発光ユニットが示されており、この発光ユニットは:
360nmから550nmの範囲の波長の光を放射する発光装置と、Eu2+で活性化されたCa-Al-SiO-N酸窒化ガラスからなる発光体とを有し、発光装置からの発光の一部は、発光体によって波長変換された後、外方に放射されることを特徴とする。
【特許文献1】米国特許第5 998 925号明細書
【特許文献2】国際公開第WO00/33390号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0043926A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし現在も、特に白色光を形成する際の、照明装置の効率および色質を向上させるため、新しい蛍光物質を見出すことが必要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、放射源と、少なくとも1の蛍光物質を有する発光体とを有する照明システムであって、前記少なくとも1の蛍光物質は、前記放射源によって発光される光の一部を吸収して、吸収した光とは異なる波長の光を放射することができ、
前記少なくとも1の蛍光物質は、一般式が、
EA2-zSi5-aBaN8-aOa:Lnz;ただし0<z≦1および0<a<5、
で表されるオキシド−ニトリド−シリケートであり、少なくとも1の元素EAは、Mg、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群から選択され、少なくとも1の元素Bは、Al、GaおよびInからなる群から選択され、前記オキシド−ニトリド−シリケートは、セリウム、ユーロピウム、テルビウム、プラセオジミウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるランタノイドで活性化されることを特徴とする照明システムが提供される。
【0013】
この種類の蛍光物質は、可視スペクトルの赤スペクトル領域での放射が可能なため、特定の色または白色光を放射するLEDに赤成分を提供することができる。総変換効率は、90%に達する。蛍光物質の他の重要な特性は、1)通常の装置の作動温度(例えば80℃)での発光の熱影響に対する耐性;2)装置製作時に用いられる封入樹脂との非反応性;3)可視スペクトル領域でのデッド吸収が最小化された適切な吸収特性;4)装置の作動寿命までの期間の安定な発光出力;5)蛍光物質の励起および発光特性の組成制御による調整、である。
【0014】
本発明の別の態様では、照明システムが提供され、この照明システムの発光体は、一般式が、EA2-zSi5-aBaN8-aOa:Lnz;ただし0<z≦1および0<a<5、で表される蛍光物質であって、少なくとも1の元素EAは、Mg、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群から選択され、少なくとも1の元素Bは、Al、GaおよびInからなる群から選択され、前記オキシド−ニトリド−シリケートは、セリウム、ユーロピウム、テルビウム、プラセオジミウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるランタノイドで活性化される蛍光物質と、緑または黄色の蛍光物質とを有する。
【0015】
黄色または緑の蛍光物質は、
MS:Eu、Ce、Cuで表され、群M=Mg、Ca、SrおよびZnから選択される少なくとも1の元素を有する、MS:Eu、Ce、Cu;
MN2S4:Eu、Ceで表され、群M=Mg、Ca、SrおよびZnから選択される少なくとも1の元素と、群N=Al、Ga、In、Y、LaおよびGdから選択される少なくとも1の元素とを有する、MN2S4:Eu、Ce;
(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ce、ただし0≦r<1および0≦s≦1、で表され、ReはY、Lu、Sc、LaおよびGdから選択される、(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ce;および
(Ba1-x-y-zSrxCay)2SiO4:Euz、ただし0≦x≦1、0≦y≦1および0<z<1;
の群から選択されることが好ましい。
【0016】
そのような発光体の放射スペクトルは、適切な波長を有し、LEDの青色光と組み合わせることで、所定の色温度において良好な演色の高品質白色光が得られる。
【0017】
照明システムの発光体は、以下の一般式で表される蛍光物質を有することが好ましい;
(Sr1-xEAx)2-zSi5-a(Al1-bBb)aN8-aOa:Lnz、ここで0<a<5、0<b≦1、0<x≦1および0<z≦1である。
【0018】
Eu(II)活性化オキシド−ニトリド−シリケートが特に好ましく、元素EAは、アルカリ土類金属のSr単独で、またはこれとCaおよびBaとの組み合わせから選択され、金属Bとしては、一般式(Sr1-x-yBaxCay)2-zSi5-aAlaN8-aOa:Euz、ただし0<a<5、0<x≦1、0≦y≦1および0<z≦1、で表されるAlが選択される。
【0019】
特に本発明は、特定の蛍光物質組成Sr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04に関し、この組成は、80乃至90%の高量子効率を示し、370nmから470nmの範囲で60乃至80%の高吸収を示し、熱サイクルによる室温から100℃までの発光ルーメン出力は、10%以下の低損失である。
【0020】
また本発明は、放射源によって発光される光の一部を吸収して、吸収した光とは異なる波長の光を放射することのできる蛍光物質であって、当該蛍光物質は、一般式が、
EA2-zSi5-aBaN8-aOa:Lnz;ただし0<z≦1および0<a<5、
で表されるオキシド−ニトリド−シリケートであり、少なくとも1の元素EAは、Mg、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群から選択され、少なくとも1の元素Bは、Al、GaおよびInからなる群から選択され、前記オキシド−ニトリド−シリケートは、セリウム、ユーロピウム、テルビウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるランタノイドで活性化されることを特徴とする、蛍光物質に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、これに限定されるものではないが、放電ランプ、蛍光灯、LEDおよびLDのような放射源を有する照射システムのいずれかの配置に、蛍光物質としてランタノイド活性化オキシド−ニトリド−シリケートを設置するものである。本蛍光物質は、照明全般に幅広く利用できるが、本願では、特にLEDへの利用について示す。なお本願では「光」という言葉は、UV、IRおよび電磁スペクトルの可視領域の放射線を含む。
【0022】
本発明の発光体は、蛍光物質として、ランタノイド活性化オキシド−ニトリド−シリケートを含み、この物質は、アルカリ土類金属Mg、Ca、SrおよびBaならびにZnから選択された成分EAと、Al、GaおよびInの群から選択された少なくとも1の添加金属Bとを有する。
【0023】
蛍光物質は、一般式EA2-zSi5-aBaN8-aOa:Lnz、ただし0<z≦1および0<a<5、で表される。
【0024】
「蛍光物質」という言葉は、通常の意味で本願全体および特許請求の範囲に使用され、励起エネルギー(通常は放射エネルギー)を吸収して、このエネルギーを一定期間蓄積する発光体を意味する。その後、蓄積エネルギーは、最初の励起エネルギーとは異なるエネルギーの放射線として放射される。例えば「下方変換」とは、放射線の量子エネルギーが最初の励起放射線よりも低い状態を意味する。この場合エネルギー波長効率は上昇し、この上昇は、「ストークスシフト」と呼ばれる。「上方変換」は、放射線の量子エネルギーが最初の励起放射線よりも高い状態を意味する(「アンチストークスシフト」)。
【0025】
本願では「活性体」という言葉は、活性体または発光中心として蛍光物質に取り入れられた物質、あるいは、主物質の結晶格子に置換または侵入配置された物質、あるいは主物質の結晶格子表面に吸着した物質を意味する。また「活性体」という言葉は、例えばエネルギー変換を容易にするために用いられる共活性体を含む。
【0026】
活性体は、放射中心の4f-5d光学遷移の吸収、放射および変換挙動に対する組成依存型の結晶場依存性に重要な役割を果たす。
【0027】
本発明のランタノイド活性体は、セリウム、ユーロピウム、テルビウム、プラセオジミウムおよびそれらの混合物で構成される群から選択される。好ましいランタノイドまたはその混合物は、発光装置に要求される放射波長に応じて選定される。
【0028】
蛍光物質のランタノイド活性体によって、蛍光物質の放射波長が定められる。例えば、励起放射線がUV範囲にあって、ランタノイドLnがユーロピウム(II)である場合、通常、放射スペクトルのピークは、長波長側(580乃至660nm)となり、赤に見える。励起放射線がUV範囲にあって、ランタノイドLnがテルビウム(III)である場合、通常、放射スペクトルのピークは、短波長側となり、緑に見える。励起放射線がUV範囲にあって、ランタノイドLnがセリウム(III)である場合、通常、放射スペクトルのピークは、さらに短波長側となり、青に見える。従って本発明の蛍光物質に加えるランタノイド成分を適正に選択することにより、LEDからのUV線を別の可視光の色に変換することができる。
【0029】
蛍光物質の物理的性質、例えば吸収スペクトルの位置および形等は、EA金属の選定およびその相対量、ならびにB金属の量およびその相対量によって制御することができる。
【0030】
金属EAは、これに限定されるものではないが、Mg、Ca、Sr、BaおよびZnを含む群から選択される。
【0031】
本蛍光物質の物理的性質は、主格子内のシリコンを金属Bに置換する量で変化させることもできる。金属Bは、これに限定されるものではないが、Al、GaおよびInを含む群から選択される。
【0032】
さらにシリコンはゲルマニウムに置換しても良い。
【0033】
EA2Si5N8:Euのような従来の蛍光物質のニトリドシリケート格子への酸素侵入は、活性体カチオンに対する共有結合および分裂する配位子場の割合を低下させる。この結果、励起および放射帯は、ニトリドシリケート格子に比べて短波長側にシフトする。
【0034】
この種類の蛍光物質の好適例は、(Sr1-xEAx)2-zSi5-a(Al1-bBb)aN8-aOa:Lnzである。ここで0<a<5、0<b≦1、0<x≦1および0<z≦1である。
【0035】
特に好ましいのは、Eu(II)活性化オキシド−ニトリド−シリケートであって、これはアルカリ土類金属Sr単独、またはSrとCaおよびBaとの組み合わせから選択される成分EAと、金属BとしてのAlとを有し、一般式(Sr1-x-yBaxCay)2-zSi5-aAlaN8-aOa:Euz、0<a<5、0<b≦1、0<x≦1、0<y≦1および0<z≦1、で表される。
【0036】
特に本発明は、特定の蛍光物質組成Sr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04に関し、この組成は、80乃至90%の高量子効率を示し、370nmから470nmの範囲で60乃至80%の高吸収を示し、熱処理による室温から100℃の発光ルーメン出力は10%以下の低損失を示す。
【0037】
Sr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04は、可視スペクトルの赤スペクトル領域で放射するため、特定の色または白色光を放射するLEDに赤成分が提供される。
【0038】
一般式EA2-zSi5-aBaN8-aOa:Lnz、0<z≦1および0<a<5、で表される別の適当な蛍光物質の多くの例が想定されることは、当業者には明らかであろう。
【0039】
上記の物質は、例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0040】
これらの赤から黄-赤領域の放射蛍光物質は、以下の方法で調製した。混合酸化物を得るため、アルカリ土類金属または亜鉛およびランタノイドの高純度硝酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩および酢酸塩を、25乃至30mlの脱イオン水中で撹拌溶解した。溶液は、水分が蒸発するまでホットプレートで撹拌加熱し、組成によって変化する白または黄色のペーストを得た。
【0041】
固形物は、120℃で一晩(12時間)乾燥させた。得られた固形物は、ミル処理によって微細化し、高純度アルミナ坩堝に入れた。この坩堝をチャコール含有容器に設置し、これを管状炉に入れて、炉内を数時間窒素/水素ガスでパージした。炉は10℃/分で1300℃まで昇温し、4時間1300℃で保持した後、ヒータを止め室温まで炉冷した。
【0042】
得られた金属酸化物を、窒化珪素Si3N4およびAlNのようなB金属の窒化物と、所定の比率で混合した。
【0043】
混合粉末を高純度アルミナ坩堝に入れた。この坩堝をチャコール含有容器に入れ、これを管状炉に入れて、炉内を数時間窒素/水素ガスでパージした。炉は10℃/分で1600℃まで昇温し、4時間1600℃で保持した後、ヒータを止め室温まで炉冷した。
【0044】
試料は再度、ミル処理で微細化し、1600℃で第2の熱処理ステップを実施した。
【0045】
アルゴン中において低めの温度で第3の熱処理を行うことにより、発光出力はさらに改善され得る。
【0046】
そのような方法によって、一般式EA2Si3Al2N6O2:Euで表される蛍光物質が調製できる。この蛍光物質は、主成分Si、NおよびAlの主格子を有する。この蛍光物質はさらにF、Cl、H、CおよびOのトレースを有しても良い。主格子は、3次元ネットワーク状の(N-Si-N-Al-N)-ユニットからなる構造を有し、珪素とアルミニウムは、窒素および酸素による四面体構造で囲まれる。
【0047】
3次元ネットワークには、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウムのようなアルカリ土類金属イオン、亜鉛イオンおよびユーロピウム(II)が侵入配置される。Sr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04のX線回折結果は、図2に示すように、Sr2Si5N8のX線回折とほぼ一致する(T.
Slieper、W. Milius、W. Schnick、Z. Anorg、Allg. Chem. 621巻、1380、1995年)。微小な位置および強度のずれは、2価の金属イオンの置換、およびストロンチウムのユーロピウムへの置換、珪素のアルミニウムへの置換、窒素と酸素への置換によるものである。
【0048】
一例として、赤の蛍光物質Sr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04の物理的性質が、図2および3に示されている。図2は、赤の蛍光物質の励起スペクトルに関するものであり、励起周波数に対する赤の相対放射強度の測定結果である。一定の波長で赤の放射が観測されている。図3は、赤の蛍光物質の放射スペクトルに関するものであり、各波長で放射される光の相対強度の測定結果である。励起は一定に維持されている。
【0049】
図3から、615nmでの蛍光物質の放射強度を測定した場合、約300乃至450nmの領域の放射線によって励起されたときに、強度が最大となることがわかる。この領域は、電磁放射線スペクトルにおけるUV近傍から青の領域に相当する。図2から、蛍光物質の励起が450nmで一定の場合(試料は、450nmの放射線のみによって励起される)、蛍光物質の放射波長は、約605-630nmの領域で最大となる。この範囲は可視の赤の領域である。
【0050】
本発明はまた、放射源と発光体とを有する照明システムに関し、この発光体は、他の既知の蛍光物質に加えて、一般式EA2-zSi5-aBaN8-aOa:Lnzで表される、少なくとも1の蛍光物質を有し、これらの蛍光物質の組み合わせによって、上述のように一次UVまたは青色光を放射するLEDで照射された際、特定の色または白色光を形成する。
【0051】
なお、所望の色を得るため蛍光物質は、混合しても融合しても良い。一般に蛍光物質粉末は、それらで構成されたランプにおいて相互影響しないことが知られており、それらの粒子によって、スペクトル同士が自然に累積されるという有意な特性が得られる。すなわち、蛍光物質の混合物を有する照明システムのスペクトルは、放射源と個々の蛍光物質のスペクトルの線形組み合わせとなる。例えば、本発明の赤の蛍光物質Sr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04が、他の青色蛍光物質と混合された場合、生じる光は可視光の紫に見える。
【0052】
本発明の実施例は、UVまたは青色LEDと、少なくとも2の蛍光物質を含む発光体とを有し、これらの蛍光物質が組み合わされて、十分な特性の白色光が形成される。青色発光LEDによって励起され得るように、緑および赤の蛍光物質を選定することが好ましい。赤の蛍光物質としては、Sr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04が選定される。
【0053】
通常、緑から黄色領域の放射蛍光物質は、510乃至560nmに放射ピークを持ち、半値全幅は60を超えない。
【0054】
前記少なくとも1の緑から黄色領域の放射蛍光物質は、光ルミネッセント金属硫化物MSを有しても良く、この硫化物は、M=Ba、Mg、Znの単独、またはこれらと少なくとも1のSr、Caとを組み合わせた群から選択された少なくとも1の元素を有する。硫化物はユーロピウム、セリウムまたは銅によって活性化される。
【0055】
前記少なくとも1の蛍光物質は、少なくとも1の緑色蛍光物質を有しても良く、この蛍光物質は、光ルミネッセント性の金属錯体チオメタレートMN2S4からなり、この少なくとも1の元素Mは、M=Mg、Znの単独、またはこれらと少なくとも1のBa、Sr、Caとを組み合わせた群から選定され、この少なくとも1の元素Nは、N=Al、Gaの単独、またはこれらとIn、Y、La、Gdとを組み合わせた群から選定され、チオガレートは、ユーロピウム(Eu)とセリウム(Ce)の少なくとも一方で活性化される。
【0056】
前記少なくとも1の蛍光物質は、さらに少なくとも1の緑色蛍光物質を有しても良く、この蛍光物質は、一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ce、0≦r<1および0≦s≦1、で表されるガーネット発光体からなり、Reは、Y、Lu、Sc、LaおよびGdから選択される少なくとも1つであり、この蛍光物質はセリウムで活性化される。
【0057】
前記少なくとも1の蛍光物質は、さらに少なくとも1の緑色蛍光物質を有しても良く、この蛍光物質は、一般式(Ba1-x-y-zSrxCay)2SiO4:Euz、0≦x≦1、0≦y≦1および0<z<1、で表されるシリケート発光体からなり、この蛍光物質はユーロピウムで活性化される。
【0058】
本発明の利用に適した放射源は、これに限定されるものではないが、GaN系(InAlGaN)の半導体装置である。発光素子の形成に適したGaN半導体材料は、通常、一般式IniGajAlkNで表され、i、j、kは、ゼロ以上の数字であり、i
+ j +k =1である。従って窒化物半導体材料は、InGaNおよびGaNのような材料を含むが、例えば発光の強度向上および色調整のため各種不純物でドープされても良い。
【0059】
本発明は、UV/青色発光素子に特化して説明されたが、電磁スペクトル領域において異なる領域の光を発光する発光素子を用いても良いことは明らかである。例えば、アルミニウムインジウムガリウムリン化物(AlInGaP)LEDのような、赤色発光LEDまたはLDが利用できる。
【0060】
エレクトロルミネッセント放射源は、半導体光放射エミッタと他の装置とを有し、この装置は、電気的な励起に反応して発光する。半導体光放射エミッタは、発光ダイオードLEDチップ、発光高分子(LEP)有機発光装置(OLED)、高分子発光装置(PLED)等を有する。
【0061】
さらに水銀低圧および高圧放電ランプ、硫黄放電ランプ、ならびに分子ラジエータ系放電ランプのような、放電ランプおよび蛍光灯に見られる発光素子は、本発明の蛍光物質組成を有する放射源として利用することができる。
【0062】
本発明の照明システムでは、放射源としての発光ダイオードと蛍光物質は、いかなる配置で利用することもできる。例えば、蛍光物質は、LEDに隣接して設置される。別の実施例では、蛍光物質は、複数の封止層の間に設置され、LEDとは直接接しない。さらに別の実施例では、蛍光物質は、封止層全体に分散される。当業者には、本発明の範囲内で、これらの配置以外のLED配置を見出すことが可能である。
【0063】
そのような発光装置の詳細配置を図1に示す。
【0064】
図1には、本発明の概略装置図が示されている。本装置はLED1を有する。LED1は、反射キャップ2内に設置される。LED1は、型内に光を放射する。蛍光物質4、5は、型内に設置される。蛍光物質は、樹脂3に封入される。この例では(例えばパラボラ反射器の場合)、光が、最初に型で予め覆われていない空間に反射されることのないよう、反射キャップ2は、光のパターンを修正する。従来技術によって、反射キャップ2は、いかなる形にもすることができ、蛍光物質4、5に戻る反射光が最適化され、あるいはLED1の位置が最適化され、効果的な光パターンの修正が可能となる。例えば、反射キャップ2の壁は、パラボラ状である。
【0065】
ある実施例では、装置はさらに、蛍光物質または蛍光物質混合物を封入する高分子を有する。この実施例では、蛍光物質または蛍光物質混合物は、封入状態で高い安定性を示す。高分子は透明であって、光散乱を抑制することが好ましい。ある実施例では、高分子はエポキシとシリコン樹脂からなる群から選定される。各種高分子は、5mmのLEDランプを製作するLED産業分野では既知のものである。高分子前駆体の液体に蛍光物質混合物を添加することで、封入を行っても良い。例えば、蛍光物質混合物は、粉末にすることができる。蛍光物質粒子を高分子前駆体液体に添加することで、スラリー(すなわち粒子の懸濁液)が得られる。重合時に、蛍光物質混合物が封入され、位置が固定化される。ある実施例では、蛍光物質とLEDの両方が高分子封入される。
【0066】
蛍光物質が薄膜として、あるいは小容積で用いられる場合、
放射源によって発光される光の一部を吸収して、吸収した光とは異なる波長の光を放射することのできる蛍光物質であって、当該蛍光物質は、一般式が、
EA2-zSi5-aBaN8-aOa:Lnz;ただし0<z≦1および0<a<5、
で表されるオキシド−ニトリド−シリケートであり、少なくとも1の元素EAは、Mg、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群から選択され、少なくとも1の元素Bは、Al、GaおよびInからなる群から選択され、前記オキシド−ニトリド−シリケートは、セリウム、ユーロピウム、テルビウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるランタノイドで活性化されることを特徴とする蛍光物質を用いることは特に有意である。蛍光物質は、ストークスシフトで生じる熱および高吸収による高温感度が低く、結果的に小さな光侵入深さとなるからである。
【0067】
発光体を有する蛍光物質は、適当な混合器内で蛍光物質を乾燥混合させて、製作しても良い。次にこの混合体は、液体サスペンション媒体に添加される。あるいは個々の蛍光物質または複数の蛍光物質が、ニトロセルロース/ブチルアセテートバインダと市販のラッカーに用いられる溶媒液のような、液体サスペンションに添加される。適当な分散材と、ポリエチレン酸化物のような増粘剤またはバインダとを含む水等の、多くの他の液体を用いることができる。合成物を含む蛍光物質は、はけ塗り、または塗布または他の方法でLEDに設置し、乾燥される。
【0068】
蛍光物質または複数の蛍光物質は、ポリプロピレン、ポリカーボネートまたはポリテトラフルオロエチレンのような、適当な高分子系と組み合わせても良い。蛍光物質は、LEDに塗布または設置されてから、乾燥、凝固、硬化または養生される。さらに、液体高分子系は、LEDに与える熱損傷を最小限に抑制するため、UV硬化または室温硬化させても良い。
【0069】
あるいは、LED全体を、ポリカーボネートまたは他の硬化透明プラスチックのような、適当なプラスチックからなる透明高分子レンズで封入しても良い。さらにレンズを反射防止層で被覆して、光を装置から逸散し易くしても良い。
【0070】
蛍光物質の粒径(蛍光物質粒子の平均径)の影響は明確には把握されていないが、重量比は、粒径に応じて変化させても良い。蛍光物質が設置される装置の目詰まりを避けるため、粒径は15μm以下であることが好ましく、12μm以下であることがより好ましい。ある実施例では、各蛍光物質毎に粒径は変えても良い。ある特定の実施例では、粒径は、約10μm以下である。ただし、別の装置では、より大きな粒径を用いることができる。
【0071】
LEDから放射され吸収されなかった光は、演色に寄与するが、装置の総効率の低下を回避するため、吸収されなかった光を蛍光物質からの発光と混合することができる。すなわちある実施例では、LEDおよび蛍光物質は、反射キャップ内に設置される。反射キャップは、反射材料の凹部または窪みとして形成することができる。LEDおよび蛍光物質粒子を反射キャップ内に設置することで、非吸収/非混合LED発光が、蛍光物質粒子に向かって反射され、結果的にこの光を蛍光物質粒子に吸収させ、あるいは蛍光物質からの発光と混合させることができる。
【0072】
本発明の実施例のこれらのおよび他の特徴と利点は、以下の実施例でさらに理解されよう。以下の実施例は、本発明の利点を説明するためのものであり、本発明の範囲を示すものではない。
【実施例】
【0073】
Sr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04の調製のため、出発物質として、59.41g(566.3mmol)のSr0.98Eu0.02O、27.18g(663.1mmol)のAlNおよび79.43g(566.1mmol)のSi3N4を、メノウ乳鉢で十分に乾燥ミル処理する。その後、窒素/水素雰囲気で均一粉末を1500℃で4時間熱処理し、粉末を含む坩堝を第2のチャコール含有坩堝に設置した。
【0074】
断続的なミル処理後に、再度、窒素/水素雰囲気で、粉末を1600℃で4時間熱処理した。
【0075】
得られた粉末を、数時間ローラー台でミル処理した。ミル処理後の粉末は、平均粒径が3乃至5μmである。量子効率は90%であり、ルーメン等量は1901m/Wである。色座標は、x=0.64、y=0.36である。
【0076】
460nmで発光するInGaNのLEDをベースとする白色照明システムを製作するため、SrGa2S4とSr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04からなる蛍光物質混合物をシリコン前駆体に懸濁させた。このサスペンションの液滴を、LEDチップ上に塗布し、重合させた。LEDはプラスチックレンズでシールした。
【0077】
460nmで発光するInGaNのLEDをベースとする白色照明システムを製作するため、(Ba、Sr)2SiO4:EuとSr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04からなる蛍光物質混合物をシリコン前駆体に懸濁させた。このサスペンションの液滴を、LEDチップ上に塗布し、重合させた。LEDはプラスチックレンズでシールした。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】LED構造によって発光される光の光路に設置された2の蛍光物質混合物、Sr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04とSrGa2S4:Euを有する、トリカラー白色LEDランプの概略図である。
【図2】Sr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04のX線回折図である。
【図3】460nmの青色LEDによって励起されたSr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04の放射スペクトル図である。
【図4】460nmの青色LEDによって励起されたSr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04の励起スペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射源と、少なくとも1の蛍光物質を有する発光体とを有する照明システムであって、前記少なくとも1の蛍光物質は、前記放射源によって発光される光の一部を吸収して、吸収した光とは異なる波長の光を放射することができ、
前記少なくとも1の蛍光物質は、一般式が、
EA2-zSi5-aBaN8-aOa:Lnz;ただし0<z≦1および0<a<5、
で表されるオキシド−ニトリド−シリケートであり、少なくとも1の元素EAは、Mg、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群から選択され、少なくとも1の元素Bは、Al、GaおよびInからなる群から選択され、前記オキシド−ニトリド−シリケートは、セリウム、ユーロピウム、テルビウム、プラセオジミウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるランタノイドで活性化されることを特徴とする照明システム。
【請求項2】
前記発光体は、一般式がEA2-zSi5-aBaN8-aOa:Lnz;ただし0<z≦1および0<a<5、で表される赤の蛍光物質と、緑または黄色の蛍光物質とを有することを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
緑または黄色の蛍光物質は、
MS:Eu、Ce、Cuで表され、群M=Mg、Ca、SrおよびZnから選択される少なくとも1の元素を有する、MS:Eu、Ce、Cu;
MN2S4:Eu、Ceで表され、群M=Mg、Ca、SrおよびZnから選択される少なくとも1の元素と、群N=Al、Ga、In、Y、LaおよびGdから選択される少なくとも1の元素とを有する、MN2S4:Eu、Ce;
(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ce、ただし0≦r<1および0≦s≦1、で表され、ReはY、Lu、Sc、LaおよびGdから選択される、(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ce;および
(Ba1-x-y-zSrxCay)2SiO4:Euz、ただし0≦x≦1、0≦y≦1および0<z<1;
の群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
【請求項4】
前記放射源は、UVまたは青色発光LEDであることを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
【請求項5】
前記放射源は、一般式IniGajAlkN、ただし0≦i≦1、0≦j≦1、0≦k≦1およびi+j+k=1、で表される窒素化合物半導体を有することを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
【請求項6】
当該システムはランプであることを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
【請求項7】
当該システムは道路標識であることを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
【請求項8】
放射源によって発光される光の一部を吸収して、吸収した光とは異なる波長の光を放射することのできる蛍光物質であって、当該蛍光物質は、一般式が、
EA2-zSi5-aBaN8-aOa:Lnz;ただし0<z≦1および0<a<5、
で表されるオキシド−ニトリド−シリケートであり、少なくとも1の元素EAは、Mg、Ca、Sr、BaおよびZnからなる群から選択され、少なくとも1の元素Bは、Al、GaおよびInからなる群から選択され、前記オキシド−ニトリド−シリケートは、セリウム、ユーロピウム、テルビウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるランタノイドで活性化されることを特徴とする蛍光物質。
【請求項9】
一般式が、(Sr1-xEAx)2-zSi5-a(Al1-bBb)aN8-aOa:(Eu、Ce)z、ただし0≦x≦1および0≦b≦1、であることを特徴とする請求項8に記載の蛍光物質。
【請求項10】
一般式が、(Sr1-x-yBaxCay)2-zSi5-aAlaN8-aOa:(Eu、Ce)z、ただし0≦y≦1、であることを特徴とする請求項8に記載の蛍光物質。
【請求項11】
一般式が、Sr1.96Si3Al2N6O2:Eu0.04であることを特徴とする求項8に記載の蛍光物質。
【請求項12】
珪素がゲルマニウムと置換された請求項8に記載の蛍光物質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−509871(P2006−509871A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560043(P2004−560043)
【出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005727
【国際公開番号】WO2004/055910
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【出願人】(505220228)ルミレッズ ライティング ユーエス エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】