説明

放射線撮像装置

【課題】取り出しに伴う物理量の変化を把握することができる放射線撮像装置を提供する。
【解決手段】共通電極を介してバイアス電圧を印加またはX線管1から放射線を放射し、タイマTにて時間計測を開始した後、取り出し部による取り出しに伴う物理量として欠損画素の数量を制御部20が周期的にチェックして数量の変化を判別し、この変化が無くなったときに予め設定した時間が経過した時点で数量の変化が安定化したことを判定する。よって、従来のように、安定化するまでの時間を一律に設定したとき、この設定時間よりも早く安定状態となった場合、その時間差だけ装置の使用開始が遅れることによる時間ロスの問題や、設定時間よりも遅く安定化する場合に生じる数量の不適正な処理に伴う画像表示の不具合を解消できる。その結果、数量の変化を把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線の照射に基づいて放射線撮像を行う放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線撮像装置の一例として、放射線検出用のFPD(フラットパネル型検出器)を備えたX線透視撮影装置が普及している。このFPDの一例として、イメージインテンシファイアと比べて軽量かつ薄型に構成されたタイプが知られている。このFPDは、X線に有感な半導体膜と、バイアス電圧印加用の共通電極と、多数の収集電極と、各収集電極で収集される電荷の蓄積・読み出し用電気回路と、この電気回路が配設されたアクティブマトリックス基板等を備えている。また、被検体からの透過X線が投影されるX線検出面側に、多数のX線検出素子が縦と横の配列ラインに沿って2次元状マトリックス配置されている。このようなFPDを備えたX線透視撮影装置は、X線撮影中にFPDから出力されるX線検出信号にしたがって、X線検出面に投影される透過X線像に対応するX線透視画像を作成してモニタに表示するようになっている。
【0003】
ところで、この種のFPD2においては、多数のX線検出素子の中で、製造中あるいは製造後に生じた半導体膜の微視的損傷等に起因する欠損をもつ素子が不可避的に存在している。このような欠損素子があると、X線透視画像には、欠損画素があちこちに生じるので、透過X線像に対応しない画像表示となる不具合がある。
そこで、欠損画素を予め検出して登録しておき、X線撮影中は登録されている欠損画素の画素信号を適当な信号に置き換えて修復し、X線透視画像中の欠損画素を取り除くようにしている。この欠損画素の検出は、装置据えつけ時にFPDのX線検出面に一様のX線を放射し、撮影されたX線透視画像の画素信号の信号強度が適性範囲を外れているか否かをチェックすることで行われる。
【0004】
この欠損画素の検出および判定については、本出願人が先に出願した放射線撮像装置において明確な基準を示している(例えば、特許文献1参照)。すなわち、この放射線撮像装置は、X線透視撮影装置に適用されたものであり、被検体MにX線を照射するX線管およびX線検出用のFPDに加え、欠損検出部として欠損有無仮判定部、仮判定結果登録部、欠損有無本判定部を備えている。欠損有無仮判定部は、欠損検出対象画素の画素信号強度と欠損検出周辺画素の画素信号強度との比較処理結果に基づいて、欠損検出対象画素の欠損の有無を仮判定する。
【0005】
仮判定結果登録部は、欠損有無仮判定部で得た欠損有無仮判定結果を画素毎に区別して登録するもので、欠損検出対象画素についての欠損有無仮判定結果を欠損検出対象画素のメモリセルの番地と対応付けて登録する。欠損有無本判定部は、現時点の欠損有無仮判定結果と過去の欠損有無仮判定結果の過半数以上が欠損有りの時は欠損有りの本判定をくだし、それ以外の時は欠損無しの本判定をくだす。したがって、欠損有無本判定手段による欠損有無の本判定を的確にくだすことができる。
【0006】
このように、複数個の欠損画素が存在する場合、X線透視画像では、FPDのX線検出面側に設けたX線検出素子の配列ラインに沿って塊のように表示される。この欠損画素の塊は、FPDのX線検出面にX線を放射した当初、欠損画素の生成個数が多いので、大きいサイズを呈している。
しかし、この欠損画素は、若干の増減変化はあるものの時間の経過とともに漸減した後、ある時間からは殆ど変化のない安定状態となる特性がある。この変化が止まって安定化すると、画素信号補正部により欠損画素の画素信号を適当な信号に置き換えて修復し、X線透視画像中の欠損画素を取り除いてX線透視撮影装置の使用を開始することができる。
【0007】
したがって、操作者はX線透視撮影装置の使用に際し、欠損画素の安定状態をX線透視画像上で判断する必要があるが、欠損画素の安定化はFPDの機器個別により、また環境条件によっても異なるので、X線透視撮影装置の使用の度にX線透視画像を視認し続けなければならず、時間の浪費になる問題がある。そこで、最近は幾つかのサンプルによって測定された経験値から、欠損画素が安定状態に至る時間を予測し、この時間を安定化判定の標準にしている。この安定化時間は、例えば一律に30分〜40分としておき、この時間経過後に画素信号修復部により欠損画素の修復を行って、X線透視撮影装置の使用を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−110981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のX線透視撮影装置は、欠損画素の塊のサイズ変化が安定化するまでの時間を一律に設定しているので、サイズ変化が設定時間より早く安定状態に入った場合、その分だけ使用開始が遅れることから、やはり時間を浪費する問題が残る。逆に、欠損画素の塊のサイズが安定しない状態で設定時間が到来した場合、画素信号修復部により欠損画素の画素信号を修復するとき、本来であれば安定状態に入ったときには正常な画素までが修復すべき欠損画素の対象となってしまうので、これら正常な画素までが修復されてしまい、適正な修復が行われずにX線透視画像が正しく表示されないという不具合も生じる。このように、画素の基となる電気信号を取り出す際に、その取り出しに伴う物理量の変化を把握することができない。
【0010】
この発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、取り出しに伴う物理量の変化を把握することができる放射線撮像装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、放射線を照射する放射線照射手段と、前記放射線に有感で、検出対象の放射線入射に伴って電荷に変換して生成する変換層と、この変換層の放射線入射面に形成されたバイアス電圧印加用の共通電極と、前記変換層によって変換された電荷を電気信号として取り出す取り出し手段とを備え、その取り出された電気信号に基づいて放射線撮像を行う放射線撮像装置であって、時間を計測する時間計測手段と、前記変換層に対し前記共通電極を介してバイアス電圧を印加または前記放射線照射手段から放射線を放射し、前記時間計測手段にて時間計測を開始した後、前記取り出し手段による取り出しに伴う物理量を周期的にチェックして前記物理量の変化を判別し、この変化が無くなったときに予め設定した時間が経過した時点で前記物理量の変化が安定化したことを判定する安定化判定手段とを備えることを特徴としている。
【0012】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、前記変換層に対し前記共通電極を介してバイアス電圧を印加または前記放射線照射手段から放射線を放射し、前記時間計測手段にて時間計測を開始した後、前記取り出し手段による取り出しに伴う物理量を安定化判定手段が周期的にチェックして前記物理量の変化を判別し、この変化が無くなったときに予め設定した時間が経過した時点で前記物理量の変化が安定化したことを判定する。
よって、従来のように、前記物理量の変化が安定化するまでの時間を一律に設定したときに、この設定時間よりも早く安定状態となった場合、その時間差だけ装置の使用開始が遅れることによって生じていた時間ロスの問題がなくなる。逆に、前記物理量の変化が安定しない状態で設定時間が到来した場合、本来であれば安定状態に入ったときには正常な物理量までが処理の対象となってしまい、これら正常な物理量が処理されることで適正な処理が行なわれず、放射線画像が正しく表示されない、といった不具合も回避することができる。その結果、取り出しに伴う物理量の変化を把握することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の放射線撮像装置において、前記電気信号に基づく画素信号のレベルを所定範囲と比較してその所定範囲外の画素信号を画像上の欠損画素としてその数量を判定する数量判定手段を備え、前記物理量は、前記欠損画素の数量であって、前記安定化判定手段は、前記欠損画素の数量を周期的にチェックして数量の変化を判別し、この変化が無くなったときに予め設定した時間が経過した時点で前記数量の変化が安定化したことを判定することを特徴としている。
【0014】
[作用・効果]請求項2の発明によれば、前記安定化判定手段が前記欠損画素の数量を周期的にチェックして数量の変化を判別し、この変化が無くなったときに予め設定した時間が経過した時点で前記数量の変化が安定化したことを判定する。よって、従来のように、欠損画素の数量変化が安定しない状態で設定時間が到来した場合に生じる問題、すなわち、欠損画素を補正するときに本来であれば安定状態に入ったときには正常な画素までが補正すべき対象となってしまい、これら正常な画素が補正されることで適正な補正が行なわれず、放射線画像が正しく表示されない、といった不具合を回避することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の放射線撮像装置において、前記数量判定手段が判定した欠損画素を画素ごとに並べて欠損画素マップとして記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された前記欠損画素マップに基づいて欠損画素の補正処理を行う欠損画素補正手段とを備えることを特徴としている。
【0016】
[作用・効果]請求項3の発明によれば、前記数量判定手段が判定した欠損画素を画素ごとに並べて欠損画素マップとして記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された前記欠損画素マップに基づいて欠損画素の補正処理を行う欠損画素補正手段とを備えているので、前記数量判定手段によって判定された欠損画素の数量を反映した欠損画素マップが作成されることにより、欠損画素の補正処理を的確に行うことができる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の放射線撮像装置において、前記取り出し手段は、前記電気信号をオフセットデータに応じて信号処理し、このオフセットデータは、前記放射線の非放射状態で取り出す電気信号であって、前記安定化判定手段は、前記オフセットデータを周期的にチェックしてその変化を判別し、この変化が無くなったときに予め設定した時間が経過した時点で前記オフセットデータが安定化したことを判定することを特徴としている。
【0018】
[作用・効果]請求項4の発明によれば、前記放射線の非放射状態でバイアス電圧を印加したとき、前記取り出し手段から取り出されるオフセットデータを前記安定化判定手段が周期的にチェックしてその変化を判別し、この変化が無くなったときに予め設定した時間が経過した時点で前記オフセットデータが安定化したことを判定する。よって、前記変換層に対し前記放射線を放射することなく、バイアス電圧の印加のみで、変換層にて変換される電荷をオフセットデータとして取り出せるので、このオフセットデータから前記物理量の変化を把握し、その安定化を適正に判定することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る放射線撮像装置によれば、変換層に対し共通電極を介してバイアス電圧を印加または放射線照射手段から放射線を放射し、時間計測手段にて時間計測を開始した後、取り出し手段による取り出しに伴う物理量を安定化判定手段が周期的にチェックして物理量の変化を判別し、この変化が無くなったときに予め設定した時間が経過した時点で物理量の変化が安定化したことを判定する。よって、従来のように、安定化するまでの時間を一律に設定したときに、この設定時間よりも早く安定状態となった場合、その時間差だけ装置の使用開始が遅れることによって生じる時間ロスの問題がなくなるうえ、逆に、前記物理量の変化が安定しない状態で設定時間が到来した場合、本来であれば安定状態に入ったときには正常な物理量までが処理の対象となってしまい、これら正常な物理量が処理されることで適正な処理が行なわれず、放射線画像が正しく表示されない、といった不具合も回避することができる。その結果、取り出しに伴う物理量の変化を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1のX線透視撮影装置の構成を示すブロック図である。
【図2】FPDのX線検出面におけるX線検出素子の配置状況を示す模式的平面図である。
【図3】FPDを構成するX線の検出部を中心に示す模式的な断面図である。
【図4】FPDを構成するX線検出信号の読み出し部を中心に示すブロック図である。
【図5】X線透視画像中の欠損画素が変化する過程を示す模式な説明図である。
【図6】実施例1の装置による欠損画素の安定化判定プロセスを示すフローチャートである。
【図7】実施例2のX線透視撮影装置の構成を示すブロック図である。
【図8】実施例2の装置によるオフセットデータの安定化判定プロセスを示すフローチャートである。
【実施例1】
【0021】
以下、この発明に係る放射線撮像装置の実施例1について、図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の放射線撮像装置として実施例に係るX線透視撮影装置の構成を示すブロック図であり、図2はFPDのX線検出面におけるX線検出素子の配置状況を示す模式的平面図であり、図3はFPDを構成するX線の検出部を中心に示す模式的な断面図であり、図4はFPDを構成するX線検出信号の読み出し部を中心に示すブロック図である。なお、各実施例では、放射線撮像装置として、X線透視撮影装置を例に採って説明するとともに、放射線画像としてX線透視画像を例に採って説明する。
【0022】
本実施例のX線透視撮影装置は、図1に示すように、主要部として被検体MにX線を照射するX線管1およびX線検出用のFPD2を備えている。このX線管1やFPD2は、後述の制御部20により照射制御部14を介して制御される。FPD2は、図2に示す如く、被検体Mを透過したX線が投影されるX線検出面2Aに、多数のX線検出素子2aが縦と横の配列ラインに沿って2次元状マトリックス配置されている。そして、FPD2から出力されるX線検出信号にしたがって、X線検出面2Aに投影される被検体Mの透過X線像に対応するX線透視画像が作成されるようになっている。X線管1は、この発明における放射線照射手段に相当する。
【0023】
X線管1とFPD2は、撮影対象の被検体Mを挟んで対向配置されていて、X線撮影中は、X線管1が照射制御部14の制御を受けながら被検体MにX線を照射するとともに、X線管1からのX線照射に伴って生じる被検体Mの透過X線像がFPD2のX線検出面2Aに投影される配置関係となっている。このFPD2は、直接変換タイプのX線検出器であり、例えば縦30cm×横30cm程の広さのX線検出面2AにX線検出素子2aが、例えば縦1024×横1024のマトリックスで縦横にX方向とY方向に沿って番地付けされて配列されている。
【0024】
本実施例のFPD2の場合、図3に示すように、例えばa−Se系半導体膜等のX線に有感な半導体膜3と、この半導体膜3の表面へ面状に積層形成されているバイアス電圧印加用の共通電極4と、図4に示す多数の収集電極5とがX線検出素子2aの2次元状マトリックス配置でもって表面に形成されている。また、各収集電極5で収集される電荷の蓄積・読み出し用電気回路6と、この収集電荷を電圧に変換する電荷電圧変換回路9とからなり、半導体膜3によって変換される電荷を電気信号として取り出す取り出し部8が設けられている。さらに、蓄積・読み出し用電気回路6が配設されたアクティブマトリックス基板7を備えており、半導体膜3がアクティブマトリックス基板7の収集電極5を形成した側に積層されている。半導体膜3は、この発明における変換層、取り出し部8は、取り出し手段に相当する。
【0025】
蓄積・読み出し用電気回路6は、コンデンサ6aやスイッチング素子としてのTFT(薄膜電界効果トランジスタ)6bと、ゲート線6cおよびデータ線6d等からなり、各収集電極5毎に1個のコンデンサ6aと1個のTFT6bが割り当てられている。また、この蓄積・読み出し用電気回路6の周りには、ゲートドライバ6Aと複数個の電荷電圧変換型増幅器9aからなる電荷電圧変換回路9およびマルチプレクサ10に加えて、A/D変換器11が別デバイスのかたちで配備接続されている。
【0026】
前記FPD2によりX線を検出する場合、数キロボルト〜数十キロボルト程度のバイアス電圧が、図3に示す共通電極4に印加される。バイアス電圧が印加された状態で、検出対象のX線の入射に伴って半導体膜3で電荷が生成されるとともに、半導体膜3で生じた電荷が収集電極5毎に収集される。つまり、図4に示す各収集電極5へ移動することで収集電極5に電荷が誘起生成する。一方、各収集電極5で収集される電荷は、アクティブマトリックス基板7の蓄積・読み出し用電気回路6等により収集電極5毎のX線検出信号として取り出される。
【0027】
具体的には、図4に示すゲートドライバ6Aからゲート線6c経由で読み出し信号が各TFT6bのゲートに順番に与えられる。これと同時に、読み出し信号が与えられている各TFT6bのソースに接続されているデータ線6dが、電荷電圧変換回路9の各電荷電圧変換型増幅器9aを介してマルチプレクサ10に順に切り換え接続される。これに伴い、コンデンサ6aに蓄積された電荷が、TFT6bからデータ線6dを経て電荷電圧変換型増幅器9aでそれぞれ増幅されたうえ、マルチプレクサ10により各収集電極5毎のX線検出信号としてA/D変換器11に送出されてディジタル化される。
【0028】
つまり、FPD2では、1つの収集電極5と収集電極5の広さ相当の半導体膜3および共通電極4に加え、1個のコンデンサ6aと1個のTFT6bとで1つのX線検出素子2aが構成されており、2次元状マトリックス配置の各収集電極5がそれぞれX線透視画像の各画素に対応する電極(画素電極)となっている。
【0029】
実施例装置では、図1に示したFPD2の後段に、このFPD2から出力されるX線検出信号をX線透視画像の画像信号に変換する信号処理部12と、この信号処理部12からの画像信号を記憶する画像メモリFMと、この画像信号に基づいてX線透視画像を表示する画像モニタ13とが配設されている。これにより、X線管1による被検体MへのX線照射に伴いFPD2から出力されるX線検出信号にしたがって信号処理部12でX線透視画像の画像信号に変換される。そして、この画像信号が画像メモリFMに記憶されるとともに、画像モニタ13の画面にX線透視画像が映し出される。
【0030】
画像メモリFMは、フレームメモリであり、X線検出素子2aのマトリックス配置に対応したマトリックスでX方向とY方向に沿って番地付けされてメモリセル(図示省略)が、例えば縦1024×横1024の2次元マトリックス配置されている。メモリセルの番地は、X線透視画像の画素の番地であり、各メモリセルにはX線透視画像の画素信号の信号強度(ピクセル値)が記憶される。
【0031】
ところで、このFPD2においては、多数のX線検出素子2aの中には製造中あるいは製造後に生じる、例えば半導体膜3の微視的損傷等に起因する欠損をもつ素子が不可避的に存在しており、X線透視画像Pでは、図5(a)に示すように、X線検出素子の欠陥に起因する欠損画素PAが発生する。これら欠損画素PAは、通常、FPD2のX線検出面2A側に設けたX線検出素子2aの配列ラインに沿って複数個が発生し、X線透視画像では塊PBのように表示される。
【0032】
この実施例装置においては、X線透視画像PAにおけるX線検出素子2aの欠陥に起因する欠損画素PAを検出して増減変化をチェックし、この変化が安定化した後に欠損検出対象画素の補正が可能な構成となっている。
すなわち、実施例装置は、図1に示す如く欠損有無判定部15、判定結果登録部16、欠損画素登録部17および画素信号補正部18を備えている。欠損有無判定部15は、欠損の有無を判定しようとする画素(欠損検出対象画素)の画素信号強度と欠損検出対象画素の周辺の画素(欠損検出周辺画素)の画素信号強度とを用いて欠損検出対象画素の信号強度の適否をチェックする信号強度比較処理の処理結果に基づいて、欠損検出対象画素の欠損の有無を判定する。欠損有無判定部15は、この発明における数量判定手段に相当する。
【0033】
この欠損有無判定部15は、X線透視画像P上に関心領域(ROI:Region Of Interest)を設定し、その関心領域内の平均値を求めて欠損画素PAの有無を判定するようにしている。図示省略しているが、欠損検出対象画素を含んでX方向に隣接して4個の画素が続くかたちで3個の欠損検出周辺画素をピックアップし、欠損検出対象画素および3個の欠損検出周辺画素の画素信号の信号強度の平均値(所定値)を算出するのに続いて、算出した平均値と欠損検出対象画素のX線検出信号の信号強度とを比較する。そして、欠損検出対象画素のX線検出信号の信号強度が、算出された平均値の0.8倍以上〜1.2倍以下の範囲にあれば、欠損無しの仮判定結果をくだし、それ以外であれば、欠損有りの判定結果をくだす。
【0034】
判定結果登録部16は、欠損有無判定部15で得た欠損有無判定結果を画素毎に区別して登録する。つまり、この判定結果登録部15は、欠損検出対象画素についての欠損有無判定結果を欠損検出対象画素のメモリセルの番地と対応付けて登録する。
欠損画素登録部17は、X線透視画像中の欠損画素PAの画像信号が記憶されていた画像メモリFMのメモリセルの番地で登録する。したがって、欠損画素PAが複数有るとき、画像モニタ13の画面におけるX線透視画像上では塊のように表示されるが、この画像の座標X,Yとメモリセルの番地とが対応しているので、この塊の位置とサイズとは番地で登録される。これにより、欠損画素の塊PBの位置およびサイズは、図5(a)に示す座標X,Y上の各値に基づいて求めることができる。
【0035】
すなわち、塊PBのサイズは、座標上に占める面積として、X方向の長さ(X2−X1)とY方向の長さ(Y2−Y1)とを演算し、このXとYとを乗算することで得ることができる。例えば、X=4,Y=2であれば塊PBのサイズは“8”となる。この塊PBのサイズは、制御部20が欠損画素登録部17のデータを定期的にチェックして、直前のデータと最新のデータとを比較することにより、塊PBのサイズの変化を判別することができる。
【0036】
画素信号補正部18は、画像メモリFMに記憶されているX線透視画像の画素信号のうち、欠損画素登録部17に登録されている欠損画素の番地のメモリセルに記憶されている画素信号を信号処理で補正する。画素信号補正部18は、この発明における欠損画素補正手段に相当する。つまり、この画素信号補正部18は、例えば3個の欠損検出周辺画素を欠損検出至近画素としてピックアップするのに続いて、補正対象の欠損画素の画素信号を、欠損検出対象画素および3個の欠損検出周辺画素の画素信号の信号強度の平均値を算出し、算出した平均値を信号強度とする代替信号に置き換えることにより補正を行う。
【0037】
欠損検出至近画素である欠損検出周辺画素の画素信号および欠損検出対象画素の画素信号は画素欠損のない場合、互いに近い信号強度を有しており、複数個の欠損検出至近画素の画素信号の信号強度が平均化されたかたちで含まれる代替信号の信号強度は、欠損検出対象画素の画素信号の適正な信号強度と殆ど変わりない値となり、代替信号は補正用の信号として適切である。具体的には、欠損有無判定部15が判定した欠損画素の画素信号を画素ごとに並べて欠損画素マップ(図示省略)を作成し、メモリに一時記憶することにより、この画素信号を代替信号と置き換える。
【0038】
実施例1のX線透視撮影装置では、制御部20は中央演算処理装置であるCPUにより構成され、上述した画像メモリFMを含めメモリ部はROMやRAMに代表される記憶媒体等により構成されている。また、その他に、時間計測用の内蔵タイマTを備えている。制御部20は、この発明における安定化判定手段、RAMは記憶手段、タイマTは時間計測手段にそれぞれ相当する。
この制御部20は、前記X線管1、FPD2、画像メモリFM、信号処理部12、照射制御部14、欠損有無判定部15、判定結果登録部16、欠損画素登録部17および操作部19等とその機能に応じて一方向あるいは双方向性に接続されている。このように構成された制御部20は、操作部19から入力する指令やデータあるいはX線撮影の進行にしたがって、回路各部の動作制御および演算処理を実行する。
【0039】
次に、上記実施例1の装置において、X線撮影前にX線透視画像の欠損画素の安定化を判定する場合の装置動作について図面を参照しながら説明する。図6は実施例1の装置によるX線透視画像の欠損画素の安定化を判定するプロセスを示すフローチャートである。なお、実施例装置の使用開始にあたっては、FPD2に被検体Mを載せない状態で欠損画素の安定化判定および欠損画素の補正を行う。
【0040】
〔ステップS1〕操作者が、操作部19により欠損画素の安定化判定に必要な入力操作を行うと、制御部20が安定化判定モードに移行する。
〔ステップS2〕この安定化判定モードでは、制御部20がX線管1からX線を照射させる。また、図示省略した電源回路にバイアス電圧を出力させる。これに伴い、FPD2のX線検出面2Aに向けてX線が照射される。〔ステップS3〕そして、共通電極4にバイアス電圧が印加される。
【0041】
〔ステップS4〕次に、制御部20は内蔵タイマTに時間カウントを開始させる。
〔ステップS5〕また、制御部20は欠損有無判定部15に対し欠損の有無を判定させるとともに、その判定結果を定期的にチェックする。このFPD2において、半導体膜3の微視的損傷等に起因する欠損をもつX線検出素子2aが存在すると、図5(a)に示すように、X線透視画像Pでは欠損画素PAとして現れる。この際、欠損有無判定部15は、欠損画素PAが1個でもあれば、欠損有りとする一方、1個未満であれば欠損無しと判定する。
【0042】
〔ステップS6〕ここで、制御部20は、欠損有無判定部15の判定結果から、欠損画素PAが有ると判定されたときに、その数量(サイズ)をメモリに記憶させる。この欠損画素PAは、複数個が塊(以下、欠損塊と称する)PBとなって存在する場合、前述の如くX線透視画像P上における座標位置とこの位置に占める面積を求めて、欠損塊PBのサイズを判別する。欠損画素PAの数量が、例えば7個であると、この欠損塊PBの位置およびサイズを示すX,Y座標上の数値データがメモリに記憶される。
【0043】
〔ステップS7〕続いて、制御部20はタイマTの時間カウントに基づき、予め設定した時間、例えば20分が経過した時点で欠損有無判定部15から入力する最新データとメモリに記憶されたデータとを一定の時間間隔で比較する。この比較においては、X,Y座標上の同一位置における欠損塊PBのサイズのデータが最新のデータとされる。
なお、比較開始を20分に設定するのは、バイアス電圧の印加後、暫くの間は欠損画素PAの数量変化が著しく、この安定化の判定に適さないという経験則に基づくものである。 すなわち、このFPD2においては、バイアス電圧印加直後にリーク電流の発生等に起因して欠損画素PAの数量が増え、欠損塊PBのサイズが一時的に大きく表示されることがある。
【0044】
〔ステップS8〕次に、制御部20はメモリの記憶データと最新のデータとの比較結果から、欠損塊PBが変化したか否かを判別する。ここで、メモリに記憶された欠損画素PAの数量が7個であるのに対し、新たに入力するデータが例えば、9個を示すときは、2個増えているので変化有りとする。このように欠損画素PAが増加した場合は、ステップS7に戻って比較を続ける。
ここで、次の入力データが、図5(b)に示す如く4個となった場合、ステップS7でメモリの記憶データと比較したとき、7個に対して3個減少しているので、その差の4個をメモリに更新記憶する。そして、ステップS8では、前回のデータ7個から4個への変化を判別し、欠損塊PBのサイズに変化有りとして、ステップS7に戻り比較を続ける。
この後、最新の入力データが4個の場合、ステップS7で記憶データの4個と比較したとき、差異が無いので、ステップS8では変化無しと判断してステップS9に進む。
【0045】
〔ステップS9〕ここでは、メモリに記憶されている4個のデータと、新たに入力するデータとを一定の時間間隔で比較する。
〔ステップS10〕次に、制御部20はこの比較結果に基づいて欠損塊PBの変化を判別する。前回の記憶データ4個に対して、入力データに増減がある場合は再びステップS7へ戻る。この判別時、最新の入力データが4個であるときは、記憶データとの間に差異が無いので、欠損塊PBのサイズに変化が無いと判断し、その時点の時間データをメモリに記憶してステップS11へ進む。
【0046】
〔ステップS11〕このように、欠損塊PBに変化が無いとき、制御部20は内蔵タイマTの時間カウントおよびメモリに記憶した時間に基づき、予め設定した時間に達したか否かを判別する。この設定時間を、例えば5分にしてある場合、この5分間はステップS9に戻り、欠損塊PBのサイズに変化が生じたか否かを判別し続ける。
【0047】
この間に変化が有り、前回の記憶データ4個に対して、入力データが図5(c)に示す如く2個減少した場合、この減少変化は、設定時間の5分内に生じているので、制御部20はメモリの時間データをクリアし、ステップS7に戻って比較動作を続行する。そして、ステップS8により欠損塊PBのサイズ変化を判別し、何ら変化が無いときにステップS9へ進む。
このステップS9における比較時、最新の入力データが2個の場合、前回の記憶データの2個とは差異が生じないので、次のステップS10では変化が無いと判断し、その時点の時間データをメモリに記憶する。
【0048】
このように、欠損塊PBのサイズに変化が無くなったときは、ステップS10からステップS11へ進み、設定時間か否かを判別する。この時点で、5分が経過していると、制御部20は設定時間の到来により、欠損塊PBのサイズに変化が無いことを認識する。
【0049】
〔ステップS12〕これにより、制御部20は欠損画素PAが安定化したと判定し、一連の動作を終了する。以上のように、電荷の数量が増減してから減少し続け、複数個の欠損画素PAからなる欠損塊PBにサイズの変化がなくなって、安定状態にあることが認識される。
【0050】
この結果、本実施例装置は、欠損塊PBのサイズの安定化を判定する際、予め設定した当初の20分間と、安定化判定の5分間と、ステップS7、ステップS8における比較・判定時間を加えるだけで済むので、従来のように安定状態の判定を一律に約30分〜40分と定めていたのに対し、大幅に短縮することができる。
【0051】
続いて、実施例装置は、画素信号補正部18の信号処理により欠損画素PAの補正を実行する。
実施例装置の場合、欠損有無判定部15で欠損有りとの判定がくだされた欠損画素PAを欠損画素登録部17が登録するとともに、欠損画素登録部17に登録されている欠損画素PAに対応する画素信号を画素信号補正部18が信号処理により補正する。この補正においては、制御部20がメモリ上に補正マップを作成し、この補正マップに基づいて欠損画素PAの箇所に応じた修正を行う。
【0052】
したがって、装置据えつけ時に欠損画素PAが見落とされたり、X線撮影中に新たに欠損画素PAが生じたりした場合でも、遅滞なく欠損画素PAを取り除くことができる。特に、欠損画素PAの数量に変化がなくなって安定状態に入ったときに欠損画素PAを補正するので、従来のように、欠損画素PAの周りの不要な画素まで比較対象とすることはなくなる。
【0053】
以上のように、X線透視撮影装置によれば、X線管1からX線を照射し、タイマTから時間計測を開始した後、取り出し部8による取り出しに伴う物理量として欠損画素PAの数量を制御部20が周期的にチェックして数量の変化を判別し、この変化が無くなったときに予め設定した時間が経過した時点で数量の変化が安定化したことを判定する。
よって、従来のように、数量の変化が安定化するまでの時間を一律に設定したときに、この設定時間よりも早く安定状態となった場合、その時間差だけ装置の使用開始が遅れることによって生じていた時間ロスの問題がなくなる。逆に、数量の変化が安定しない状態で設定時間が到来した場合に生じる問題、すなわち、欠損画素PAを補正するときに本来であれば安定状態に入ったときには正常な画素までが補正すべき対象となってしまい、これら正常な画素までが補正されることで適正な補正が行なわれず、X線透視画像が正しく表示されなくなる問題が回避される。その結果、数量の変化を把握することができる。
【実施例2】
【0054】
図7は実施例2に係るX線透視撮影装置の構成を示すブロック図である。
本実施例の放射線撮像装置は、図1に示したX線透視撮影装置と基本的構成が略同一であり、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0055】
即ち、本実施例2のX線透視撮影装置は、図1に示す欠損有無判定部15、判定結果登録部16および欠損画素登録部17に代えて、図7に示すように、オフセットデータ取得部25とオフセットデータ比較部26とを備えた構成となっている。
【0056】
オフセットデータ取得部25は、前記X線の非放射状態で共通電極4にバイアス電圧を印加したとき、半導体膜3によって変換される電荷を取り出し部8が電気信号として取り出すと、この電気信号をディジタルのオフセットデータとして出力する。このオフセットデータは、制御部20によりメモリに記憶される。
【0057】
オフセットデータ比較部26は、前記取り出し部8からオフセットデータが送出されてきたとき、前記メモリに記憶されたオフセットデータと比較して、その比較結果を制御部20に出力する。この制御部20は、オフセットデータ安定化判定モードが選択されると、オフセットデータを周期的にチェックしてその変化を判別し、この変化が無くなったときに予め設定した時間が経過した時点でオフセットデータが安定したことを判定する動作を実行する。
【0058】
次に、上記実施例2の装置において、X線撮影前にオフセットデータの安定化を判定する場合の装置動作について図面を参照しながら説明する。図8は実施例2の装置によるX線透視画像のオフセットデータの安定化を判定するプロセスを示すフローチャートである。なお、実施例装置も使用開始に際しては、FPD2に被検体Mを載せない状態でオフセットデータの安定化判定を行う。
【0059】
〔ステップS21〕操作者が、操作部19によりオフセットデータの安定化判定に必要な入力操作を行うと、制御部20がオフセットデータ安定化判定モードに移行する。
〔ステップS22〕この安定化判定モードでは、制御部20が電源回路にバイアス電圧を出力させる。これに伴い、FPD2の共通電極4にバイアス電圧が印加される。
〔ステップS23〕次に、制御部20は内蔵タイマTに時間カウントを開始させる。
【0060】
〔ステップS24〕また、制御部20は、オフセットデータ取得部25の出力をチェックし、オフセットデータの取得の有無を判別する。
このFPD2において、半導体膜3の微視的損傷等に起因する欠損をもつX線検出素子2aが1個でも存在すると、オフセットデータ有りとする一方、1個未満であればオフセットデータ無しと判定する。
〔ステップS25〕ここで、制御部20は、オフセットデータ取得部25からオフセットデータが出力されると、その数値データをメモリに記憶させる。
【0061】
〔ステップS26〕続いて、制御部20はタイマTの時間カウントに基づき、予め設定した時間、例えば20分が経過した時点でオフセットデータ取得部25から入力する最新データとメモリに記憶されたデータとを一定の時間間隔で比較する。
〔ステップS27〕次に、制御部20はメモリの記憶データと最新のデータとの比較結果から、オフセットデータが変化したか否かを判別する。ここで、オフセットデータが増減した場合は、ステップS26に戻って比較を続ける。
【0062】
このステップS26において、次の入力データとメモリの記憶データとを比較したとき、増減している場合は、その差のデータをメモリに更新記憶する。そして、ステップS27に進み、オフセットデータに変化有りとしてステップS26に戻り比較を続ける。このステップS26で両データを比較したとき、差異が無い場合は、ステップS27が変化無しと判断してステップS28に進む。
【0063】
〔ステップS28〕このステップにおいても、メモリに記憶されているデータと、新たに入力するデータとを一定の時間間隔で比較する。
〔ステップS29〕次に、制御部20はこの比較結果に基づいてオフセットデータの変化を判別する。前回の記憶データに対して、入力データに増減がある場合は再びステップS26へ戻る。一方、最新の入力データと記憶データとの間に差異が無いときは、その時点の時間データをメモリに記憶してステップS30へ進む。
【0064】
〔ステップS30〕このように、オフセットデータに変化が無いとき、制御部20は内蔵タイマTの時間カウントおよびメモリに記憶した時間に基づき、予め設定した時間に達したか否かを判別する。この設定時間を、例えば5分にしてある場合、この5分間はステップS28に戻り、オフセットデータに変化が生じたか否かを判別し続ける。
【0065】
この間に変化が有り、前回の記憶データに対して、入力データが減少した場合、この減少変化は、設定時間の5分内に生じているので、制御部20はメモリの時間データをクリアし、ステップS26に戻って比較動作を続行する。そして、ステップS27によりオフセットデータの変化を判別し、何ら変化が無いときにステップS28へ進む。
このステップS28における比較時、最新の入力データと前回の記憶データとの間に差異が無いときは、その時点の時間データをメモリに記憶する。
【0066】
このように、オフセットデータに変化が無くなったときは、ステップS29からステップS30へ進み、設定時間か否かを判別する。この時点で、5分が経過していると、制御部20は設定時間の到来により、オフセットデータに変化が無いことを認識する。
〔ステップS31〕これにより、制御部20はオフセットデータが安定化したと判定し、一連の動作を終了する。以上のように、電荷の数量が増減するに応じてオフセットデータが変化し続けた後、この変化がなくなったときに安定状態に入ったことが認識される。
【0067】
この結果、本実施例装置も、オフセットデータの安定化を判定する際、予め設定した当初の20分間と、安定化判定の5分間と、ステップS26、ステップS27における比較・判定時間を加えるだけで済むので、従来のように安定状態の判定を一律に約30分〜40分と定めていたのに対し、大幅に短縮することができる。
【0068】
なお、このオフセットデータ安定化判定モードにおいて、オフセットデータの安定化判定に加え、FPD2の故障判定および故障表示を実行することもできる。この場合は、予め制御部20にオフセットデータの基準値を設定しておき、ステップS31において、オフセットデータの安定化が判定された後、このオフセットデータを基準値と比較する。この比較結果、基準値と大きく異なっている場合、例えば、基準値よりも極端に少ないときは、FPD2自体に故障が発生していると判断して故障表示させる。これにより、オフセットデータの判定ミスを回避し得るとともに、X線透視撮影装置側にトラブルが生じていることを操作者に知らせることができる。
【0069】
以上のように、この実施例2のX線透視撮影装置によれば、制御部20がFPD2の共通電極4を介して半導体膜3にバイアス電圧を印加させ、取り出し部8から取り出された電気信号であるオフセットデータを周期的にチェックしてその変化を判別し、この変化が無くなったときに予め設定した時間が経過した時点でオフセットデータが安定したことを判定する。よって、前述の実施例1と同じく安定化までの時間を一律に設定したときに生じていた時間ロスの問題や、適正な補正が行なわれずにX線透視画像が正しく表示されなかった問題等を回避することができる。
【0070】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0071】
(1)実施例装置の場合、FPD2が直接変換タイプの検出器であったが、この発明はFPD2が間接変換タイプの検出器装置の場合にも適用できる。
【0072】
(2)実施例装置の場合、FPD2を備えた装置であったが、FPD以外の放射線検出手段、例えばイメージインテンシファイアを備えた装置の場合にも適用できる。
【0073】
(3)実施例装置はX線透視撮影装置であったが、この発明はX線透視撮影装置以外のγ線放射線撮像装置等にも広く適用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 … X線管(放射線照射手段)
3 … 半導体膜(変換層)
6 … 蓄積・読み出し用電気回路(取り出し手段)
9 … 電荷電圧変換回路(取り出し手段)
20… 制御部(安定化判定手段)
T … タイマ(時間計測手段)
PA… 物理量(欠損画素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する放射線照射手段と、前記放射線に有感で、検出対象の放射線入射に伴って電荷に変換して生成する変換層と、この変換層の放射線入射面に形成されたバイアス電圧印加用の共通電極と、前記変換層によって変換された電荷を電気信号として取り出す取り出し手段とを備え、その取り出された電気信号に基づいて放射線撮像を行う放射線撮像装置であって、時間を計測する時間計測手段と、前記変換層に対し前記共通電極を介してバイアス電圧を印加または前記放射線照射手段から放射線を放射し、前記時間計測手段にて時間計測を開始した後、前記取り出し手段による取り出しに伴う物理量を周期的にチェックして前記物理量の変化を判別し、この変化が無くなったときに予め設定した時間が経過した時点で前記物理量の変化が安定化したことを判定する安定化判定手段とを備えることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮像装置において、前記電気信号に基づく画素信号のレベルを所定範囲と比較してその所定範囲外の画素信号を画像上の欠損画素としてその数量を判定する数量判定手段を備え、前記物理量は、前記欠損画素の数量であって、前記安定化判定手段は、前記欠損画素の数量を周期的にチェックして数量の変化を判別し、この変化が無くなったときに予め設定した時間が経過した時点で前記数量の変化が安定化したことを判定することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線撮像装置において、前記数量判定手段が判定した欠損画素を画素ごとに並べて欠損画素マップとして記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された前記欠損画素マップに基づいて欠損画素の補正処理を行う欠損画素補正手段とを備えることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の放射線撮像装置において、前記取り出し手段は、前記電気信号をオフセットデータに応じて信号処理し、このオフセットデータは、前記放射線の非放射状態で取り出す電気信号であって、前記安定化判定手段は、前記オフセットデータを周期的にチェックしてその変化を判別し、この変化が無くなったときに予め設定した時間が経過した時点で前記オフセットデータが安定化したことを判定することを特徴とする放射線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−167117(P2010−167117A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12783(P2009−12783)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】