説明

放射線撮影装置及びその制御方法

【課題】X線センサ部に加わる圧力情報の変動が生じる環境下であっても、オフセット補正誤差の少ないX線画像が得られるようにする。
【解決手段】被写体HにX線111を照射するX線発生部110と、X線発生部110から被写体HにX線111が照射された状態で被写体Hを透過したX線をX線画像として検出するとともに、X線発生部110から被写体HにX線111が照射されない状態でオフセット画像を検出するX線センサ部120と、制御部140を備え、制御部140では、X線センサ部120に印加される圧力情報の変動を検出し、検出した圧力情報の変動に基づく圧力変動係数が閾値よりも小さい場合に、X線センサ部120からX線画像とオフセット画像を取得し、取得したオフセット画像を用いて、取得したX線画像のオフセット補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置及びその制御方法に関し、特に、画像検出手段である放射線センサ部に印加される圧力情報の変動を検出して撮影可能か否かの判定に供する放射線撮影装置及びその制御方法に関するものである。なお、本明細書では、放射線としてX線を例に挙げて説明を行うが、本発明においては、X線に限らず、γ線などの電磁波やα線、β線も放射線に含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
半導体をガラス基板上に形成したX線センサが、静止画及び動画の撮影に使用されている。静止画撮影、動画撮影ともに、X線曝射前後のオフセット画像でオフセット補正が行われている。しかしながら、このオフセット補正は、画像撮影期間中にオフセット画像が安定していることが前提になっている。
【0003】
本発明者らは、X線センサを患者の下に挿入した場合に、患者の体動でオフセット画像が微妙に変化(変動)することを見出した。このオフセット画像の変動は、X線センサに印加される圧力変動に起因すると推測される。そして、半導体が形成されるガラス基板の薄型化にも起因する。
【0004】
下記の特許文献1には、X線センサを圧力センサと連携して使用する技術が開示されている。具体的に、電子カセッテに患者の撮影部位を設定したときの圧力センサの圧力から接触状態を検知し、指定部位の範囲内の圧力センサが接触状態であるか否かを判断し、その判断結果を表示部及びスピーカを用いて技師に報知する。
【0005】
下記の特許文献2には、X線センサと被写体との設定接触範囲の面積と実際の接触範囲の面積との差分の絶対値が許容する閾値面積よりも大きいとき、患者の撮影部位が所望の状態で電子カセッテに設定されていないと判断し、技師に報知する技術が開示されている。
【0006】
他方、下記の特許文献3には、X線センサのオフセット画像の収集方法に関する技術が開示されている。具体的に、まず、放射線画像の撮影に先立ち、積分器がリセットされてから曝射開始信号が供給されるまでの間の所定時間における積分器の出力信号の変化率を算出する。そして、この変化率を用いて任意の時間におけるオフセット電圧信号を算出して電圧補正回路に供給し、曝射開始後の積分器の出力信号をオフセット電圧信号で補正してX線管制御部に供給することにより、放射X線の曝射制御を行う。
【0007】
また、下記の特許文献4には、放射線照射部から所定の周期で被写体に放射線を照射し、当該照射された放射線に基づく被写体像を光電変換回路により検出するとともに、周期的にオフセット画像を取得する。そして、取得した周期的なオフセット画像の変化に応じて、放射線照射部の放射線照射周期及び光電変換回路からの被写体像の読み取り周期を制御するようにする。そして、オフセットのゆらぎが生じる撮影開始直後は、オフセット撮影と被写体撮影を交互に行って正確に被写体画像のオフセット補正を行い、オフセットが安定したら高フレームレートで被写体撮影を連続して行うことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−178196号公報
【特許文献2】特開2009−172250号公報
【特許文献3】特開2003−190126号公報
【特許文献4】特開2006−158728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
半導体をガラス基板上に形成したX線センサは、例えば、ポータブルX線撮影装置に使用されており、X線センサを患者の下に挿入して撮影することが行われている。本発明者らは、上述したように、X線センサを患者の下に挿入した場合に、患者の体動でオフセット画像が微妙に変化(変動)することを見出した。オフセット画像が変動すると、オフセット補正処理で補正誤差が発生し、診断画像の画質が悪化する。オフセット画像の変動は、X線センサに印加される圧力変動に起因すると推測されるが、原因は解明されていない。患者の体動には、単発的な体動と周期的な体動がある。周期的な体動には、心臓鼓動、呼吸体動がある。これらの周期は、0.5秒から3秒である。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、画像検出手段である放射線センサ部に加わる圧力情報の変動が生じる環境下であっても、オフセット補正誤差の少ない放射線画像が得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の放射線撮影装置は、放射線を発生させ、被写体に放射線を照射する放射線発生手段と、前記放射線発生手段から前記被写体に放射線が照射された状態で前記被写体を透過した放射線を放射線画像として検出するとともに、前記放射線発生手段から前記被写体に放射線が照射されない状態でオフセット画像を検出する画像検出手段と、前記画像検出手段に印加される圧力情報の変動を検出する圧力情報変動検出手段と、前記圧力情報変動検出手段で検出した圧力情報の変動に基づく圧力変動係数が閾値よりも小さい場合に、前記画像検出手段から前記放射線画像と前記オフセット画像を取得する取得手段と、前記取得手段で取得したオフセット画像を用いて、前記取得手段で取得した放射線画像のオフセット補正を行うオフセット補正手段とを有する。
また、本発明は、上述した放射線撮影装置による制御方法を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画像検出手段である放射線センサ部に加わる圧力情報の変動が生じる環境下であっても、オフセット補正誤差の少ない放射線画像を得ることができる。特に、動画においては、オフセット補正誤差の少ない動画像を得ることができる。
【0013】
また、本発明の他の特徴によれば、検出した圧力情報の変動に基づく圧力変動係数と比較を行う閾値を放射線発生条件に基づいて決定するようにした。これにより、放射線量を増加させれば、放射線の信号分が増加するので、オフセット誤差(雑音)は増加しても、同一のSN比を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るポータブルX線撮影装置(ポータブル放射線撮影装置)の概略構成の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示すX線センサ部(放射線センサ部)の詳細な構成例を示す模式図である。
【図3】図2(b)に示すセンサ基板全体における重要な部分領域の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示し、圧力変動カーブの一例を示す特性図である。
【図5】本発明の第1の実施形態を示し、圧力変動の周波数解析と圧力変動係数との関係の一例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るポータブルX線撮影装置(ポータブル放射線撮影装置)の概略構成の一例を示す模式図である。
図1に示すポータブルX線撮影装置100は、X線発生部(放射線発生部)110、X線センサ部(放射線センサ部)120、電源部130、制御部140、表示部150、アーム160を有して構成されている。
【0017】
アーム160の先端に取り付けられたX線発生部110は、X線111を発生させ、患者である被写体HにX線111を照射する。
【0018】
X線センサ部120は、X線発生部110から被写体HにX線111が照射された状態で、被写体Hを透過したX線を受信(受光)して、当該受信したX線に基づく電気信号(画像信号)に変換し、X線画像(放射線画像)として検出する。また、X線センサ部120は、X線発生部110から被写体HにX線111が照射されない状態で、オフセット画像を検出する。ここで、X線画像(放射線画像)及びオフセット画像を検出するX線センサ部120は、「画像検出手段」を構成する。
【0019】
電源部130は、X線発生部110、X線センサ部120、制御部140、及び、表示部150に電力(電圧等)を供給する。
【0020】
制御部140は、ポータブルX線撮影装置100における動作を統括的に制御する。
具体的に、本実施形態では、制御部140は、まず、X線センサ部120に印加される圧力情報の変動を検出する。この圧力情報の変動を検出する制御部140は、「圧力情報変動検出手段」を構成する。
また、制御部140は、検出した圧力情報の変動に基づく圧力変動係数が閾値よりも小さい場合に、X線センサ部120から前記X線画像(放射線画像)と前記オフセット画像を取得する。このX線画像(放射線画像)とオフセット画像を取得する制御部140は、「取得手段」を構成する。
さらに、制御部140は、取得したオフセット画像を用いて、取得したX線画像(放射線画像)のオフセット補正を行う。このオフセット補正を行う制御部140は、「オフセット補正手段」を構成する。
【0021】
表示部150は、X線センサ部120で生成された電気信号(画像信号)に基づく画像や、各種の情報等を表示する。
【0022】
図2は、図1に示すX線センサ部(放射線センサ部)120の詳細な構成例を示す模式図である。
本実施形態では、図2に示すように、X線センサ部120は、散乱線グリッド、圧力センサ、センサ基板上に形成されたX線センサを含み構成されている。X線センサは、センサ基板であるガラス基板、半導体層、及び、蛍光体層を含み形成されている。圧力センサは、センサ基板の受光面に配置される場合、センサ基板の背面(裏面)に配置される場合、センサ基板の周辺に配置される場合がある。圧力センサは、抵抗膜方式、表面弾性波方式(超音波方式)、抵抗線ひずみ計、マイクロスイッチが考えられる。抵抗膜方式、表面弾性波方式は、センサ基板に対して面状に配置される。抵抗線ひずみ計、マイクロスイッチは、センサ基板に対して離散的に配置される。
【0023】
図2(a)には、X線発生部110から患者である被写体HにX線111が照射され、被写体Hを透過したX線を受信(受光)するX線センサ部120−1が示されている。図2(a)に示すX線センサ部120−1は、グリッド121、圧力センサ122、及び、X線センサ123を有して構成されている。この際、圧力センサ122は、X線センサ123を構成するセンサ基板の受光面に配置されている。この場合には、被写体Hを透過してX線センサ123に入射するX線が圧力センサ122で減衰し、X線センサ123の感度の低下になる。図2(a)に示す圧力センサ122をセンサ基板の受光面に配置する場合には、圧力センサ122の透過像がセンサ基板に投射される。この圧力センサ122の透過像は、ゲイン画像補正でキャンセルしなければならない。この際、ゲイン画像補正は、被写体Hがない場合のX線画像を、被写体Hがある場合のX線画像で、割り算することで実現される。
【0024】
図2(b)には、X線発生部110から患者である被写体HにX線111が照射され、被写体Hを透過したX線を受信(受光)するX線センサ部120−2が示されている。図2(b)に示すX線センサ部120−2は、グリッド121、センサ基板124aを含むX線センサ124、及び、圧力センサ125を有して構成されている。また、X線センサ124及び圧力センサ125は、筐体上部126及び筐体下部127からなる筐体内に設けられている。この際、圧力センサ125は、X線センサ123を構成するセンサ基板の背面に配置されている。即ち、圧力センサ125は、X線センサ123のX線の入射面における裏面に配置されている。この場合には、図2(a)で説明した、被写体Hを透過してX線センサ123に入射するX線の減衰や、圧力センサ125の透過像の投射の課題はない。よって、図2(b)に示すように、圧力センサ125をセンサ基板の背面に配置する方が好ましい。
【0025】
図2(b)に示すように、圧力センサ125をセンサ基板124aの背面に配置する場合に、圧力センサをセンサ基板の全面に配置する場合と、センサ基板の一部分に対応するように配置する場合とがある。ここで、センサ基板の一部分に対応するように配置する場合には、センサ基板の中央部分に対応するように圧力センサを配置する(図3)。センサ基板の中央部分は、一般に、被写体画像の重要な部分が投影されていると考えるからである。圧力センサは、センサ基板に加わる圧力を少ない減衰で検出する必要がある。よって、圧力センサとセンサ基板との結合は、リジッドでなければならない。
【0026】
図3は、図2(b)に示すセンサ基板全体における重要な部分領域の一例を示す模式図である。
図2には不図示であるが、圧力センサをセンサ基板の周囲(受光部の外側)に配置することも可能である。この場合には、図3に示すセンサ基板の中央部分(重要な部分領域)の圧力を直接計測することはできないが、圧力センサからのX線散乱が画像にノイズとして加算されることを排除することができる。
【0027】
他方、外部圧力に対して、センサ基板を有するX線センサを含む匡体が一体で変形する場合には、圧力センサは、筐体の裏面、受光面の周辺に固定してもよい。
【0028】
圧力センサからは、複数の場所の圧力値が出力される。制御部140によって、各場所毎に圧力センサからの圧力値は集計される。図3に示すような4×4の部分領域毎に圧力値が集計される場合がある。図3の16個の部分領域の各圧力値を同一の比重で加算平均し、圧力情報を計算する場合がある。他方、図3の16個の部分領域に対して重みを付けて加算平均し、圧力情報を計算する場合がある。各部分領域に重み付ける場合には、撮影情報をもとに部分領域の重み係数を決定する。
【0029】
この際、撮影情報は、不図示の放射線情報システムRISからネットワークを介して、例えば制御部140に転送される。撮影情報には、頭部、胸部、腹部、四肢等の撮影部位情報、及び、患者の体重、患者の身長等の患者情報が含まれる。撮影部位が胸部や腹部の場合には、例えば、重み付けを部分領域に均等にし、撮影部位が頭部や四肢の場合には、例えば、中央部分の領域の重み係数を大きくする。また、患者の体重が重い場合には、例えば、全体的に重み係数を小さくする。撮影可能になるタイミングに遅れるためである。患者の身長が低い場合には、例えば、中央部分の領域の重み係数を大きくする。また、センサ基板の中央部分の重み係数を、周辺領域の重み係数よりも常に大きくすることも可能である。一般的に、撮影したい領域をX線センサ部120の中央部分に合わせて撮影するからである。
【0030】
圧力センサの圧力値は、制御部140によって周期的にサンプリングされる。
図4は、本発明の第1の実施形態を示し、圧力変動カーブの一例を示す特性図である。図4において、横軸は時間、縦軸は圧力値である。圧力値サンプリングの収集間隔sは、経験的に決められる場合もあるが、X線センサ部120の駆動条件で決められる場合もある。ここで、X線センサ部120の駆動条件とは、X線画像とオフセット画像との収集間隔pである。
【0031】
圧力値サンプリングの収集間隔sと、X線画像とオフセット画像との収集間隔pは、s≦pの関係が成り立つ。これは、X線画像とオフセット画像との収集間隔pよりも小さい収集間隔sで、圧力変動を観察しなければオフセット補正誤差を予測できないこと意味する。X線画像とオフセット画像との収集間隔pは、毎秒15枚の動画撮影をする場合には、約30msecである。ここでは、X線画像とオフセット画像との収集が交互に繰り返されることを予定している。また、X線画像とオフセット画像との収集間隔pは、静止画撮影をする場合には、約1secである。ポータブルX線撮影装置の場合には、毎秒3枚の連続撮影を中心にするので、静止画撮影の場合も圧力値サンプリングの収集間隔sを一定にして、約150msecでサンプリングする。
【0032】
図4の実線及び破線は、圧力値サンプリングの収集タイミングを示す。図4の実線は、X線センサ部120での画像の収集タイミングを示す。実線のOSxは、X線画像の収集タイミング、OSはオフセット画像の収集タイミングを示す。X線画像の収集タイミングOSxとその後(或いはその前)のオフセット画像の収集タイミングOSとの差が大きい場合には、オフセット補正誤差が大きくなることを示している。図4では、時間軸の右側の方では、X線画像の収集タイミングOSxとオフセット画像の収集タイミングOSとの差分が小さいので、定性的には時間軸の右側でX線画像を撮影すれば、オフセット補正誤差の小さい画像が取得できる。
【0033】
X線を曝射した場合には、その時点のX線画像に対応するX線画像の収集タイミングOSxを予測するということになる。このため、曝射時直前のオフセット画像の収集タイミングOSを採用するか、曝射直後のオフセット画像の収集タイミングOSを採用するか、或いは、曝射前後のオフセット画像の収集タイミングOSを平均化することを採用するか、のいろいろな選択肢がある。X線画像の表示遅延を小さくするのは、曝射時直前のオフセット画像の収集タイミングOSを採用するのがよい。
【0034】
図5は、本発明の第1の実施形態を示し、圧力変動の周波数解析と圧力変動係数との関係の一例を示す特性図である。X線センサ部120に加えられる圧力には、患者である被写体の呼吸等による体動や心臓の鼓動がある。圧力変動を周波数解析すると、周波数の高い圧力変動と周波数の低い圧力変動を弁別することができる。周波数の高い変動は、パワーが弱いという特性がある。定性的な議論としては、高周波で且つパワーの小さな圧力変動は、オフセット補正誤差を生じさせない。
【0035】
ここで、高周波の基準としては、X線画像とオフセット画像との収集間隔pを使用する。図5では、高周波の基準として、1/2pを採用している(基準を1/pにしてもよい)。ここでは、周波数1/2pのパワーを「圧力変動係数」と呼ぶ。即ち、圧力変動係数は、X線画像とオフセット画像との収集間隔pに基づき算出される。この圧力変動係数が、予め決められた閾値より小さければ、オフセット補正誤差が予め決められた基準より小さいことが期待できる。圧力変動の周波数解析は、リアルタイムで制御部140において逐次計算され更新される。
【0036】
本実施形態において、制御部140は、X線センサ部120に印加される圧力情報の変動を検出し、検出した圧力情報の変動に基づく圧力変動係数が閾値よりも小さい場合に、X線センサ部120からX線画像(放射線画像)とオフセット画像を取得する。そして、制御部140は、取得したオフセット画像を用いて、取得したX線画像(放射線画像)のオフセット補正を行う。即ち、圧力変動係数が、予め決められた値(閾値)よりも小さくなった時点でX線画像の撮影が可能になる。
【0037】
なお、圧力変動係数を、以下のように算出してもよい。
例えば、圧力変動係数は、図3に示すような、X線センサ部120を複数の部分領域に分解して算出してもよい。この場合、制御部140でX線センサ部120からX線画像(放射線画像)とオフセット画像を取得する際には、圧力変動係数は、X線センサ部120の中央部分の領域(重要な部分領域)で閾値よりも小さくなるようにする。
【0038】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、圧力情報は、X線センサに付随する圧力センサの出力で計測されていた。しかしながら、圧力情報を取得する手法としては、圧力センサの出力に限らず、例えば、X線センサ部120によるオフセット画像、或いは、X線センサ部120に配置される加速度センサの出力を使用することができる。そして、それぞれの手法で取得された圧力情報に基づいて、圧力変動係数を算出することができる。よって、これらを包括する用語として、圧力情報変動係数を定義する。以下、X線センサ部120によるオフセット画像を使用して圧力情報変動係数を計算す実施形態を説明する。
【0039】
オフセット画像の変動要因は、経験的には温度変動、圧力変動がある。温度変動の周期は、X線画像とオフセット画像との収集間隔pに対して非常に長いので、オフセット補正誤差に関しては考慮する必要がないと考える。よって、オフセット画像を短期間に観察することで、圧力変動を計測することが可能である。ここで、短期間とは、操作者がX線画像を撮影するために、X線センサ部120を患者である被写体Hの下に挿入して、不図示のX線曝射ボタンを押し下げるまでの期間である。短期間の開始時期を特定すれば、制御部140に対して患者撮影のオーダが到着した時点、或いは、操作者が患者名を入力した時点、或いは、撮影部位ボタンが選択されて撮影要求が確定した時点である。ここで、短期間と特定したのは、オフセット画像を取り込むためにX線センサ部120の不図示の増幅回路(AMP)で電力が多く消費され、X線センサ部120の温度上昇を招くからである。
【0040】
オフセット画像の収集タイミングは、図4に示した実線及び破線のタイミングである。具体的に、オフセット画像の収集タイミングは、操作者が撮影しようとしているフレームレートから計算されるX線画像とオフセット画像との収集間隔pの2倍のp/2である。また、X線センサ部120の温度上昇を抑制する目的で、オフセット画像の収集タイミングを周期pで行ってもよい。
【0041】
オフセット画像の変動を計算する方法は複数ある。最も簡便な方法は、全体を縮小した縮小画像において、各画素の差分の2乗和を計算する方法である。図3に示すように、X線センサ部120の中央部分(重要な部分領域)に注目して、各画素の差分の2乗和を計算する方法でもよい。また、第1の実施形態で説明したように、患者情報、撮影部位情報を使用して、X線センサ部120のどの場所に注目するかを決めてもよい。また、オフセット画像の変動を計算する方法として、各画素の差分の2乗和ではなく絶対値和であってもよい。各画素の差分の2乗和または絶対値和、或いは平均を周波数解析して圧力変動係数を算出する。この圧力変動係数が、予め決められた閾値より小さくなった時点で、制御部140は、X線センサ部120からX線画像(放射線画像)とオフセット画像を取得する。そして、制御部140は、取得したオフセット画像を用いて、取得したX線画像(放射線画像)のオフセット補正を行う。即ち、圧力変動係数が、予め決められた値(閾値)よりも小さくなった時点で、制御部140は、X線画像の撮影を可能とする。X線画像の撮影が可能になると、表示部150にX線撮影可能であることの表示をするとともに、操作者のX線曝射開始ボタンの押し下げ動作を有効にする。
【0042】
(第3の実施形態)
上記の実施形態では、圧力情報変動係数(圧力変動係数)が、予め決められた値(閾値)より小さくなった時点で、X線画像の撮影を可能とした。ここで、X線発生部110によるX線発生条件(放射線発生条件)によって、この閾値を変動させる必要がある。X線画像の粒状性(SN)は、信号成分とノイズ成分との比率で決定される。ノイズ成分には、オフセット誤差が含まれる。信号成分は、X線発生条件(管電圧、管電流)で変動する。X線強度が強い場合には、信号成分が大きいので、ノイズ成分が大きくても所望の粒状性を持ったX線画像を得ることができる。患者の体動が大きくて、圧力情報変動係数(圧力変動係数)が閾値より小さくならない場合において、X線撮影を早急に開始したい時に、X線発生条件を調整することで、X線画像の撮影が可能になる。
【0043】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。
即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
このプログラム及び当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明に含まれる。
【0044】
なお、前述した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の技術は、人間や動物の放射線画像診断の分野で好適に使用することができる。
従来の技術は、半導体等から形成される放射線センサ部自体に加わる圧力等を検出するのでなく、放射線センサ部の筐体に加わる圧力等を検出している。従来の技術は、被写体部位が放射線センサ部の筐体の予定した位置に固定されているか否を判定しているのに過ぎず、また、本発明は、従来の技術とは課題が異なる。本発明は、放射線センサ部に加わる圧力情報の変動を検出することにより、安定したオフセット画像が得られる撮影タイミングを決定する技術である。
【符号の説明】
【0046】
100 ポータブルX線撮影装置、110 X線発生部(放射線発生部)、120 X線センサ部(放射線センサ部)、130 電源部、140 制御部、150 表示部、160 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を発生させ、被写体に放射線を照射する放射線発生手段と、
前記放射線発生手段から前記被写体に放射線が照射された状態で前記被写体を透過した放射線を放射線画像として検出するとともに、前記放射線発生手段から前記被写体に放射線が照射されない状態でオフセット画像を検出する画像検出手段と、
前記画像検出手段に印加される圧力情報の変動を検出する圧力情報変動検出手段と、
前記圧力情報変動検出手段で検出した圧力情報の変動に基づく圧力変動係数が閾値よりも小さい場合に、前記画像検出手段から前記放射線画像と前記オフセット画像を取得する取得手段と、
前記取得手段で取得したオフセット画像を用いて、前記取得手段で取得した放射線画像のオフセット補正を行うオフセット補正手段と
を有することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記圧力変動係数は、前記放射線画像と前記オフセット画像との収集間隔pに基づき算出されることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記圧力変動係数は、前記画像検出手段を複数の部分領域に分解して算出され、前記取得手段で前記画像検出手段から前記放射線画像と前記オフセット画像を取得する際には、前記画像検出手段の中央部分の領域で前記閾値よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記圧力変動係数は、圧力センサの出力、前記画像検出手段による前記オフセット画像、或いは、前記画像検出手段に配置される加速度センサの出力に基づき算出されることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記圧力センサは、前記画像検出手段を構成する放射線センサの放射線の入射面における裏面に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記圧力センサがグリッドと前記画像検出手段を構成する放射線センサの放射線の入射面との間に配置される場合、前記圧力センサにおける放射線の透過像をキャンセルするためのゲイン画像補正がなされることを特徴とする請求項4に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記閾値は、前記放射線発生手段による放射線の発生条件に基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
放射線を発生させ、被写体に放射線を照射する放射線発生手段と、前記放射線発生手段から前記被写体に放射線が照射された状態で前記被写体を透過した放射線を放射線画像として検出するとともに、前記放射線発生手段から前記被写体に放射線が照射されない状態でオフセット画像を検出する画像検出手段とを備える放射線撮影装置の制御方法であって、
前記画像検出手段に印加される圧力情報の変動を検出する圧力情報変動検出工程と、
前記圧力情報変動検出工程で検出した圧力情報の変動に基づく圧力変動係数が閾値よりも小さい場合に、前記画像検出手段から前記放射線画像と前記オフセット画像を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得したオフセット画像を用いて、前記取得工程で取得した放射線画像のオフセット補正を行うオフセット補正工程と
を有することを特徴とする放射線撮影装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−22382(P2013−22382A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162430(P2011−162430)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】