放射線撮影装置
【課題】FPDを移動させて複数の撮影位置での長尺撮影を行う場合に、FPDの移動時間の短縮を図って撮影時間の短縮を可能にした放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】従来のようにFPD12を予め定めた第一の固定位置からFPD12の長尺撮影方向における大きさに基づいて機械的に予め定めた第二の固定位置に移動させるのではなく、対象となる被検体Mの関心領域に基づいて移動量算出手段9により最終撮影位置におけるFPD12の移動側端部の位置を算出し、この算出位置までFPD12の移動側端部を移動手段11によって移動するようにし、FPD12を素早く最終撮影位置まで移動して撮影時間を従来に比べて短縮する。特に、最終撮影位置へ移動させる際、その最終移動算出距離L3がFPD12における長尺撮影方向の有効検出領域距離L4より短い場合、FPD12の移動方向端部を移動算出距離L3だけ素早く移動して撮影時間を短縮することができる。
【解決手段】従来のようにFPD12を予め定めた第一の固定位置からFPD12の長尺撮影方向における大きさに基づいて機械的に予め定めた第二の固定位置に移動させるのではなく、対象となる被検体Mの関心領域に基づいて移動量算出手段9により最終撮影位置におけるFPD12の移動側端部の位置を算出し、この算出位置までFPD12の移動側端部を移動手段11によって移動するようにし、FPD12を素早く最終撮影位置まで移動して撮影時間を従来に比べて短縮する。特に、最終撮影位置へ移動させる際、その最終移動算出距離L3がFPD12における長尺撮影方向の有効検出領域距離L4より短い場合、FPD12の移動方向端部を移動算出距離L3だけ素早く移動して撮影時間を短縮することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全下肢撮影や全脊椎撮影のように被検体に対して長尺撮影が可能な放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線撮影装置において、主に骨の計測を目的にした全下肢撮影や全脊椎撮影にあたっては被写体全体を把握するために長尺撮影が行われる。この長尺撮影において、従来は長尺フィルムを増感紙と共に長尺カセッテに収集して撮影を行うようにしていた。また長尺フィルムを用いず、輝尽性蛍光体ディテクタを利用したディジタル放射線画像入力方式(CR)も提案されている。この長尺撮影では輝尽性蛍光体ディテクタを格納した複数のカセッテをお互いに部分的に重なり合うように配列し、専用のカセッテホルダーに格納するようにしている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
これに対して、フラットパネル型放射線検出器(以下、FPDと称す)を2次元X線検出器として使用するようになり、このFPDでは、X線により発生した検出器面上のさまざまな位置の電荷が読み取られて処理され、被検体のディジタル画像を生成する。このディジタル画像は写真フィルム上のアナログ画像と異なり電子形式で作成されるため、画像を後で他の箇所に電子的に転送したり、撮影された画像の特徴を決定するためにその画像に対し診断用アルゴリズムを作用させたりすることができるなどの利点がある。このようなFPDは、輝尽性蛍光体ディテクタを格納したカセッテに比べて大きな体積を占め、重ね合わせに配置して使用することができないため、一つのFPDを複数位置に移動させて必要とする大きな視野を満足するようにし、それぞれの移動位置で撮影を行い、撮影終了後に、各位置での画像を接続して長尺画像を生成する方式が採用されている。その際に、長尺撮影範囲を複数に分割し、この分割した隣り合う撮影範囲同士に重複する画像接続用重複撮影領域を設け、それぞれの撮影範囲の撮影終了後に画像接続用重複撮影領域を利用して合成して長尺画像を得るようにした放射線撮影装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−244269号公報
【特許文献2】特開2001−269333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の放射線撮影装置では、大きな撮影視野を確保するために、複数の撮影位置で撮影した各画像を一つの長尺画像として合成生成するために使用する画像接続用重複撮影領域を除いて殆ど重複することがないようにFPDを第一の撮影位置から第二の撮影位置に大きく移動させている。しかも、このときのFPDの移動距離は、FPDの長尺方向の大きさから割り出した固定値を採用していた。このため、長尺方向に関心領域が比較的小さな場合でも、FPDを予め定めた第二の撮影位置まで完全に移動することになり、FPDの移動距離は常に大きくその移動のために時間がかかり、撮影終了までに要する時間が長くなっていた。従って、長い撮影時間の間に被検体の動きが生じることによって画質低下が発生する可能性があり、撮影時間の短縮が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、長尺撮影の隙にFPDを必要最小限に移動させて撮影時間の短縮を可能にした放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被検体に放射線を照射する放射線源と、この放射線源に対向配置され前記被検体の透過放射線から画像データを検出するフラットパネル型放射線検出器と、このフラットパネル型放射線検出器を前記被検体の体軸方向に移動し、それらの各撮影位置で得られた各画像データを合成して長尺画像を得る長尺画像合成手段とを有する放射線撮影装置において、前記長尺画像合成手段は、前記被検体における撮影関心領域の長尺方向距離と、前記フラットパネル型放射線検出器における有効視野の長尺方向距離とから前記フラットパネル型放射線検出器の移動量を算出する移動量算出手段を設け、前記算出された移動量に基づいて前記フラットパネル型放射線検出器を各撮影位置に移動し、それらの各撮影位置で得られた各画像データを合成して長尺画像を得ることを特徴とする放射線撮影装置を開示する。
【0008】
更に本発明は、前記放射線源からの放射線照射領域を前記被検体の長尺方向に変更可能な首振り機構を前記放射線源に設け、前記移動量算出手段により算出した移動量に基づいて各撮影位置に移動した後の前記フラットパネル型放射線検出器に対応するように前記首振り機構を作動させる撮影領域設定手段を設けた放射線撮影装置を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長尺撮影に際してFPDを必要最小限に移動させて撮影時間の短縮を可能にできた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明による放射線撮影装置の最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による放射線撮影装置の全体構成を示すブロック構成図である。
放射線診断装置は、被検体MにX線を照射するX線管などの放射線源1と、この放射線源1の照射側に配置されて放射線照射領域を制限すると共に、点灯して被検体Mの撮影関心領域に光を照射可能な照射ランプを有する絞り装置2と、被検体Mを挟んで放射線源1に対向配置した2次元アレイ方式のFPD3とを備えている。放射線源1および絞り装置2は、詳細な図示を省力しているが被検体Mとの相対的な位置関係を調整可能に支持機構によって支持され、操作卓の入力手段5による指示によって照射条件設定手段8に照射条件(X線管の管電圧や管電流、撮影タイミング、絞り装置の位置等の条件など)を設定したとき、この照射条件設定手段8に基づいて撮影制御部4から高電圧発生部3およびを絞り装置2を制御することができるように構成されている。また絞り装置2は、一対の独立して動作して放射線照射領域を制限する上側絞りと下側絞りを有している。さらに、被検体Mの反放射線源側に配置したFPD12は、詳細な図示を省略しているが支持機構に沿って移動可能に構成され、長尺撮影時に操作卓からの指示によって移動手段11により複数の撮影位置へと移動できるように構成されている。
【0011】
操作卓では、入力手段6によって一般撮影や長尺撮影などをモード指定することができ、長尺撮影モードが指定されると、撮影領域設定手段7は詳細を後述するように絞り装置2の照射ランプによる光照射によって撮影関心領域が設定されたときの上側絞りと下側絞りの状態データや、放射線源1の放射線焦点とFPD12間の距離SlDなどを取得し、移動量算出手段9によって上側絞りと下側絞りの状態データから撮影関心領域の長尺方向の距離と、この長尺方向の距離やFPD12の有効視野における長尺方向の距離や画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離などから各撮影位置までのFPD12の移動量を算出する。この算出値に基づいて移動量制御手段10は、移動手段11を駆動してFPD12を長尺方向の各撮影位置へと移動するように構成されている。この長尺撮影時には、照射条件設定手段8による絞り装置2の制御に優先して撮影領域設定手段7によって絞り装置2を制御できるようにしている。
【0012】
またFPD12には、被検体Mを透過した透過放射線信号を取り込む画像データ収集処理手段13が接続されており、この画像データ収集処理手段13は収集処理した各画像データを画像メモリ17にそれぞれ格納するようにしている。長尺撮影の場合、長尺画像合成手段14は、画像メモリ17内に格納した各画像データを取り出して画像接続用重複撮影領域を利用しながら長尺画像を合成処理し、その合成画像データを画像メモリ17に格納すると共に、表示制御手段15によって操作卓の表示装置16に合成画像をリアルタイムに表示する。この画像メモリ17には通常撮影の画像データも格納され、表示制御手段15によって操作卓5の表示装置16にその画像をリアルタイムに表示することができる。
【0013】
FPD12は、放射線源1による放射線照射によって生じる被検体Mの透視放射線信号を検出し、検出信号として電気信号に変更して出力する構成であって、多数の放射線検出素子が縦横に配列された二次元アレイ方式のセンサである。この二次元アレイ方式のセンサの詳細については、例えば特許第3277866号で紹介されている。このようなFPD12から取り出されてディジタル化された放射線検出信号は、画像データ収集処理手段13によって取り込まれ、二次元検出素子のXYマトリクスに対応するフレームメモリに画像として記憶されることになる。
【0014】
次に、上述した放射線撮影装置による脊椎や胸部の長尺撮影を行う際の手順を図2に示したフローチャートを用いて説明する。
この説明では、FPD12の有効視野における長尺方向の検出領域距離をL0、被検体Mの撮影関心領域全体を長尺撮影するために最初の撮影位置から最終撮影位置までFPDの下端部を長尺方向に移動する全移動距離をL1、二回目以降の全ストロークの移動距離およびその回数をL2およびN、最終移動算出距離をL3、FPD12が複数の撮影位置を採るときに隣接する撮影位置において重複撮影するように予め設定した画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離をL5としている。ここで二回目以降の全ストロークの移動距離L2とは、画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5を考慮に入れながらFPD12を全ストロークさせるときの移動距離と回数で、L1>L0+(L0−L5)n(ただしn=1,2……)が成立する範囲での(L0−L5)であり、二回目以降の全ストロークの移動回数N=nとなる。また最終移動算出距離L3とは、L1>L0+(L0−L5)nが成立しなくなる移動回数N=n+1の撮影に際して、その前の撮影位置におけるFPD12の移動側端部を後どれだけ移動したとき長尺方向の全移動距離L1に達するかという最終撮影位置までの移動距離L3≦(L0−L5)のことであり、二回目の全ストロークの移動距離(L0−L5)によって丁度全移動距離L1になる場合は、L1>L0+(L0−L5)nが成立しないので(L0−L5)が最終移動算出距離L3となる。
【0015】
今、放射線源1とFPD12が対向して配置された通常の撮影系の段階で、先ず、ステップS1で絞り装置2の照射ランプを点灯し、被検体Mの撮影関心領域全体に対応して光が照射されるように絞り装置2を調整する。通常撮影系では、このときの絞り装置2の上側絞りと下側絞りとはそれぞれ同量ずつ調整されるので、照射ランプによる光照射の長尺方向の中心部は撮影関心領域全体の長尺方向のほぼ中心に位置することになる。この状態で、入力手段6からの指示、または撮影関心領域全体の長尺方向の距離がFPD12における長尺方向の検出領域距離L0より大きい場合に、撮影領域設定手段7が動作する。この撮影領域設定手段7は、ステップS2で予め入力されているFPD12における長尺方向の検出領域距離L0と、同様にFPD12が複数の移動位置を採るときに隣接する領域において重複するように予め設定した画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5と、ステップS1で設定された絞り装置2における各絞りの状態データと、放射線源1の放射線焦点とFPD12間の距離SlDとを撮影制御手段4から入手する。同時に撮影領域設定手段7は、入手した各情報を移動量算出手段9に送り、移動量算出手段9は入手した各絞りの状態データとSlDとから全移動距離L1を算出し、また検出領域距離L0と画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5と全移動距離L1とから二回目以降の全ストロークの移動距離L2およびその回数Nと、最終移動算出距離L3を算出する。
【0016】
例えば、ここでは高さ43cm、幅43cmのFPD12を使用し、長尺方向の検出領域距離L0=43cm、画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5=5cmとして予め入力しているとすると、絞り装置2における各絞りの状態データとSlDとを入力して演算したとき、FPD12の長尺方向の全移動距離L1=81cmの最大視野モードとして算出されたなら、第二回目の撮影位置への移動においてL1>L0+(L0−L5)nが成立しなくなるため、二回目以降の全ストロークの移動回数N=0であり、第二回目の撮影位置が最終撮影位置となり、移動量算出手段9は、最終移動算出距離L3=38cmを算出する。
【0017】
ここで、撮影領域の設定は種々の方法で行うことができ、各種の条件が既知であれば入力手段6からのデータ入力に基づいて撮影領域設定手段7が撮影領域の設定を判定し、これに基づいて移動量算出手段9でFPD12の長尺方向の全移動距離L1と、二回目以降の全ストロークの移動距離L2およびその回数Nと、最終移動算出距離L3を算出しても良いし、絞り装置2の照射ランプからの照射光を光学的に取り込んでFPD12の長尺方向の全移動距離L1を得るなどしても良い。
【0018】
続くステップS3では、図3に示すように撮影関心領域の上方端にFPD12の上端部が一致するようにFPD12を最初の撮影位置に配置させる。ステップS4で撮影領域設定手段7は、撮影制御部4を通して絞り装置2の下側の絞りを移動させて放射線源1からの放射線がFPD12に対応する領域だけに照射されるように制限する。その後、ステップS5で照射条件設定手段8は、入力手段6からの入力した条件と撮影領域設定手段7からの条件に基づいて撮影制御部4を通して高電圧発生部3を制御しながら放射線源1から放射線を照射して最初の撮影を行なう。このとき画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を取り込み、第一の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0019】
続くステップS6で画像領域設定手段7は、長尺撮影が終了したか否かを判定する。FPD12が既に全移動距離L1を移動しているなら、撮影は終了となりステップS10に進むが、FPD12がまだ全移動距離L1を移動していないなら、次のステップS7へ進む。長尺撮影の場合、FPD12の長尺方向の全移動距離L1がFPD12の長尺方向の検出領域距離L0よりも大きく、移動量算出手段9において二回目以降の全ストロークの移動距離L2およびその回数N、または最終移動算出距離L3を通常は算出しているので次のステップS7へ進むことになる。
【0020】
ここで移動量算出手段9は、上述した条件では二回目以降の全ストロークの移動回数N=0であり、最終移動算出距離L3=38cmを算出しているため、ステップS7で図4に示すように算出した最終移動算出距離L3に基づいて移動量制御手段10を通して移動手段11を作動し、FPD12の下端部を38cmだけさらに下方側に移動して第二回目の最終撮影位置とする。ここでは最大視野モードの場合で最終移動算出距離L3=38cmであるため、従来の構成のように第二回目の撮影位置へのFPD12の移動距離が常に固定値の場合に比べて差は生じないが、最終移動算出距離L3が小さくなるに従ってFPD12の移動方向端部を第二回目の最終撮影位置まで素早く移動することができるようになる。つまり、FPD12の長尺方向の検出領域距離L0=43cm、また画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5=5cmで、最終移動算出距離L3がL3<(L0−L5)の場合、従来の構成では第二回目の撮影位置へのFPD12の移動距離が固定値の場合に比べて短く、FPD12の移動方向端部を第二回目の最終撮影位置まで素早く移動することができる。
【0021】
ステップS8で撮影領域設定手段7は、ステップS4の場合と同様に移動量算出手段9で算出した最終移動算出距離L3の情報を取得し、撮影制御部4を通して絞り装置2の絞り位置を制御する。つまり、第二回目の最終撮影位置まで移動したFPD12の移動側端部までが放射線の照射範囲となるように絞り装置2の下側絞りを調整すると共に、絞り装置2の上側絞りは第一回目の撮影位置での撮影領域の下側に位置した共通画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5を放射線照射範囲に含むが、それよりも上側は制限するように調整する。ステップS9で入力手段6は、予め照射条件設定手段8に入力した条件と撮影領域設定手段7からの条件に基づいて撮影制御部4を通して高電圧発生部3を制御しながら、図4に示すように放射線源1から放射線を照射して二回目の最終撮影を行なう。このとき画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を取り込み、第二の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0022】
その後、撮影領域設定手段7は、ステップS6でFPD12の移動距離が既に全移動距離L1に達しているため、長尺撮影が終了したと判定してステップS10に進む。このステップS10で長尺画像合成手段14は、画像メモリ17に記憶した各画像データを取り出し、隣接する画像データつまり、第一の画像データと第二の画像データから同一の共通画像接続用重複撮影領域を検出し、同部を利用して繋ぎ合わせて1つの合成画像データを生成し、ステップS11でこの合成画像データを画像メモリ17に記憶する。その後、必要に応じてステップS12で表示制御手段15は、画像メモリ17から取り出した合成画像データに基づいて表示装置13に合成画像を表示したりプリントしたりして出力する。
【0023】
次に、上述したステップS2で移動量算出手段9が、例えば、FPD12の長尺方向の検出領域距離L0=43cm、画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5=5cmとして予め入力されており、絞り装置2における各絞りの状態データとSlDとを入力して演算したとき、FPD12の長尺方向の全移動距離L1=50cmとして算出された場合について説明する。この場合、移動量算出手段9は第二回目の撮影位置への移動においてL1>L0+(L0−L5)nが成立しなくなるため、二回目以降の全ストロークの移動回数N=0、また第二回目の撮影位置が最終撮影位置となり、移動量算出手段9は最終移動算出距離L3=7cmを算出することになる。
【0024】
続くステップS3では、上述した場合と同様に関心領域の上方端にFPD12の上端部が一致するようにFPD12を最初の撮影位置に配置する。ステップS4で撮影領域設定手段7は、撮影制御部4を通して絞り装置2の下側の絞りを移動させて放射線源1からの放射線がFPD12に対応する領域だけに照射されるように制限する。その後、ステップS5で照射条件設定手段8は、入力手段6からの入力した条件と撮影領域設定手段7からの条件に基づいて撮影制御部4を通して高電圧発生部3を制御しながら図2に示すように放射線源1から放射線を照射して最初の撮影を行なう。このとき画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を取り込み、第一の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0025】
続くステップS6で画像領域設定手段7は、長尺撮影が終了したか否かを判定する。ここでは移動量算出手段9が最終移動算出距離L3を算出しており、FPD12がまだ全移動距離L1を移動していないので、次のステップS7へ進む。ステップS7では、図5に示すように算出した最終移動算出距離L3に基づいて移動量制御手段10を通して移動手段11を作動し、FPD12の下端部を7cmだけさらに下方側に移動して第二回目の最終撮影位置とする。この最終撮影位置への移動は、僅か7cmだけであり短時間に行うことができる。このような移動は、FPD12の長尺方向の検出領域距離L0=43cm、また画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5=5cmで、最終移動算出距離L3が極めて小さいため、従来の構成のように第二回目の撮影位置へのFPD12の移動距離が常に固定値に設定されている場合に比べて、FPD12の移動方向端部を第二回目の最終撮影位置まで素早く移動することができる。
【0026】
ステップS8で撮影領域設定手段7は、ステップS4の場合と同様に移動量算出手段9で算出した最終移動算出距離L3の情報を取得し、撮影制御部4を通して絞り装置2の絞り位置を制御する。つまり、第二回目の最終撮影位置まで移動したFPD12の移動側端部までが放射線の照射範囲となるように絞り装置2の下側絞りを調整すると共に、絞り装置2の上側絞りは第一回目の撮影位置での撮影領域の下側に位置した共通画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5を放射線照射範囲に含むが、それよりも上側は制限するように調整する。ステップS9で入力手段6は、予め照射条件設定手段8に入力した条件と撮影領域設定手段7からの条件に基づいて撮影制御部4を通して高電圧発生部3を制御しながら、図5に示すように放射線源1から放射線を照射して二回目の最終撮影を行なう。このとき画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を取り込み、第二の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0027】
その後、撮影領域設定手段7は、ステップS6でFPD12の移動距離が既に全移動距離L1に達しているため、長尺撮影が終了したと判定してステップS10に進む。このステップS10で長尺画像合成手段14は、画像メモリ17に記憶した各画像データを取り出し、隣接する画像データつまり、第一の画像データと第二の画像データから同一の共通画像接続用重複撮影領域を検出し、同部を利用して繋ぎ合わせて1つの合成画像データを生成し、ステップS11でこの合成画像データを画像メモリ17に記憶する。その後、必要に応じてステップS12で表示制御手段15は、画像メモリ17から取り出した合成画像データに基づいて表示装置13に合成画像を表示したりプリントしたりして出力する。
【0028】
ところで、上述したステップS2で移動量算出手段9が二回目以降の全ストロークの移動距離L2とその回数Nを検出している場合は、ステップS7でFPD12の移動方向端部を38cm移動させて第二回目の撮影位置とし、第二回目の撮影を行う。これをN回行った後、最終位置での最終撮影となるが、この最終撮影では上述した説明における二回目の最終撮影位置と同様にFPD12の移動方向端部を最終移動算出距離L3だけ素早く移動させて最終撮影位置にすることができる。
【0029】
このような放射線撮影装置によれば、従来のようにFPD12を予め定めた第一の固定位置からFPD12の長尺撮影方向における大きさに基づいて機械的に予め定めた第二の固定位置に移動させるのではなく、対象となる被検体Mの撮影関心領域に基づいて移動量算出手段9によりFPD12の移動量を算出し、この算出位置までFPD12を移動するようにしたため、FPD12を素早く最終撮影位置まで移動して撮影関心領域を確保することができ、撮影時間を従来に比べて短縮することができる。特に、最終撮影位置へ移動させる際、その最終移動算出距離L3がFPD12における長尺撮影方向の有効検出領域距離L4より短い場合、FPD12の移動方向端部を移動算出距離L3だけ移動するればよいので、従来のようにFPD12を予め定めた第一の固定位置から予め定めた第二の固定位置まで常に移動させる場合に比べて、FPD12を素早く最終撮影位置まで移動することができ、撮影時間を常に短縮することができる。また従来に比べて撮影の間に被検体の動きが生じることによって画質低下が発生する可能性は極めて低くなる。
【0030】
しかも、FPD12に対応した領域の全体に放射線を常に照射するのではなく、共通画像接続用重複撮影領域は除くもののそれ以外の先に撮影した領域と、またFPD12の移動側端部が移動していない側の領域への放射線の照射を制限するように絞り装置2で調整するようにしているため、従来よりも不必要な放射線照射を少なくすることができる。また、この実施の形態では共通画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5を5cmとして説明したが、長尺方向に隣接する撮影データの接続部分を判別することができるなら、共通画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5をさらに小さくして、不必要な放射線照射を少なくすることもできる。いずれにせよ、共通画像接続用重複撮影領域を形成することによって、長尺撮影のために撮影を複数回に分割したとしても、各共通画像接続用重複撮影領域における撮影データの同一性から合成する位置を容易に判別して、容易に合成画像を得ることができる。さらに、この実施の形態では、第一回目の撮影位置を設定した後、放射線源1と被検体Mとの相対的な位置関係を変えることなく絞り装置2による調整だけで複数回にわたる関心領域全体の撮影を行うことができるので、撮影時間を一層短縮することができる。
【0031】
次に、本発明の他の実施の形態による放射線撮影装置による長尺撮影手順を図9に示したフローチャートを用いて説明する。
この説明でも、FPD12における長尺方向の検出領域距離をL0、被検体Mの撮影関心領域全体を撮影するために最初の撮影位置から最終撮影位置までのFPDの長尺方向における全移動距離をL1、最終移動算出距離をL3、隣接する撮影位置においてFPD12の一部が重複撮影するように予め設定した画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離をL5としている。ここでは説明を簡略化するために、FPD12を最初の撮影位置と最終撮影位置の二箇所で長尺撮影が完了するものとしており、最終移動算出距離L3とは、最終撮影位置へのFPD12の移動に際して、最初の撮影位置におけるFPD12の移動側端部を後どれだけ移動したとき全移動距離L1になるかという移動距離のことである。
【0032】
今、放射線源1とFPD12が対向して配置された通常の撮影系の段階で、先ず、ステップS1で図6に示すように絞り装置2の照射ランプを点灯し、被検体Mの撮影関心領域全体に対応して光が照射されるように絞り装置2を調整する。通常撮影系では、このときの絞り装置2の上側絞りと下側絞りとはそれぞれ同量ずつ調整されるので、照射ランプによる光照射の長尺方向の中心部は撮影関心領域全体の長尺方向のほぼ中心に位置することになる。この状態で、入力手段6からの指示、または撮影関心領域全体の長尺方向の距離がFPD12における長尺方向の検出領域距離L0より大きい場合に、撮影領域設定手段7が動作する。この撮影領域設定手段7は、ステップS2で予め入力されているFPD12における長尺方向の検出領域距離L0と、同様にFPD12が複数の移動位置を採るときに隣接する領域において重複するように予め設定した画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5と、ステップS1で設定された絞り装置2における各絞りの状態データと、放射線源1の放射線焦点とFPD12間の距離SlDとを撮影制御手段4から入手する。同時に撮影領域設定手段7は、入手した各情報を移動量算出手段9に送る。
【0033】
移動量算出手段9は、予め入力されているFPD12における長尺方向の検出領域距離L0と、同様にFPD12が最終撮影位置を採るときに最初の撮影領域と重複するように予め設定した画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5とをもとにして、ステップS1で設定した絞り装置2における各絞りの状態データと、放射線源1の放射線焦点とFPD12間の距離SlDとから、FPD12の長尺方向の全移動距離L1と、最終移動算出距離L3を算出する。例えば、FPD12の長尺方向の検出領域距離L0=43cm、画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5=5cmとして予め入力しており、移動量算出手段9はステップS1での絞り装置2における各絞りの状態データとSlDとを入力して演算したとき、FPD12の長尺方向の全移動距離L1=50cm、最終撮影位置までの最終移動算出距離L3=7cmをそれぞれ算出したとする。
【0034】
次に、ステップS2aで撮影領域設定手段7は、絞り装置2の上側絞りをFPD3の検出領域に合わせて有効視野が43cmとなるように調整し、また、絞り装置2の下側絞りを被検体Mに対してほぼ垂線となるように調整する。その後、ステップS4で撮影領域設定手段7は、上下方向の駆動手段5によって図7に示すように放射線源1および絞り装置2を下方に移動しながら、絞り装置2の上側絞りによる照射光の上端部が撮影関心領域の上端部およびFPD12の上部に一致するようにする。すると、上述した絞り装置2の上側絞りおよび下側絞りの設定によって、照射光の下端部はFPD3の検出領域の下端部にほぼ合致し、しかも被検体Mに対してほぼ垂線となる。こうして最初の撮影位置が得られる。
【0035】
続くステップS5で撮影領域設定手段7は、ステップS2aで設定した絞り装置2の状態を保持しながら、照射条件設定部8で予め設定した撮影条件に基づいて撮影制御部4を通して高電圧発生部3を制御して放射線源1から放射線を所定時間照射し、最初の撮影を行う。このとき画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を収集して第一の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0036】
続くステップS7で移動量算出手段9は、既に算出した最終移動算出距離L3を用いて移動量制御手段10を通して移動手段11を駆動し、図8に示すようにFPD12の移動側端部を長尺方向に移動して最終撮影位置とする。上述のように最終移動算出距離L3=7cmとして算出されているので、FPD12の移動方向端部を7cmだけ移動させて最終撮影位置とする。この最終撮影位置への移動は、FPD12を僅か7cmだけ移動させるだけであるから従来に比べて極めて短時間に行うことができる。特に、従来のようにFPD12の最終撮影位置を常に最大限の撮影関心領域となるように機械的な固定値に定めていた場合、FPD12を最終撮影位置へ移動するためにはFPD12の移動側端部を長尺方向に大きく移動しなければならないが、今回の移動は、これに比べて極めて短い移動距離であり、FPD12の移動方向端部を素早く最終撮影位置まで移動して撮影時間を一層短縮することができる。
【0037】
続いてステップS8で撮影領域設定手段7は、この移動量算出手段9によるFPDの移動に合わせて撮影制御部4により絞り装置2の下側絞りおよび上側絞りを調整する。つまり、絞り装置2の下側絞りは、図8に示すように撮影領域の下方端部が最終撮影位置に移動したPD12の移動側端部までとなるように調整し、また、上側絞りは、同図に示すように撮影領域の上方端部が共通画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5だけ上方となるように調整する。従って、上側絞りによって制限される放射線は被検体Mに対してほぼ垂線となる。その後、ステップS9で同条件が設定されたことを確認した後、入力手段6から指令を与え、撮影領域設定手段7による絞り装置2の設定状態を保持したまま撮影制御部4を通して高電圧発生部3により放射線源1から絞り装置2を通して放射線を照射して二回目の撮影を行う。このとき、画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を収集して第二の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0038】
その後、ステップS10で長尺画像合成手段14は、画像メモリ14に記憶した第一画像データおよび第二画像データを取り出し、隣接する画像データつまり、第一の画像データと第二の画像データから同一の共通画像接続用重複撮影領域を検出し、同部を利用して繋ぎ合わせて1つの合成画像データを生成し、ステップS11でこの合成画像データを画像メモリ17に記憶する。その後、必要に応じてステップS12で表示制御手段15は、画像メモリ17から取り出した合成画像データに基づいて表示装置16に合成画像を表示したりプリントしたりして出力する。
【0039】
このような放射線撮影装置によれば、従来のようにFPD12を予め定めた第一の固定位置からFPD12の長尺撮影方向における大きさに基づいて機械的に予め定めた第二の固定位置に移動させるのではなく、対象となる被検体Mの撮影関心領域に基づいて移動量算出手段9により最終撮影位置におけるFPD12の移動側端部の位置を算出し、この算出位置までFPD12の移動側端部を移動するようにしたため、先の実施の形態の場合と同様に、最終移動算出距離L3がFPD12における長尺撮影方向の検出領域距離L4より短い場合、FPD12の移動方向端部を最終移動算出距離L3だけ移動するればよいので、従来のようにFPD12を予め定めた第一の固定位置から予め定めた第二の固定位置まで常に移動させる場合に比べて、FPD12を素早く最終撮影位置まで移動して撮影時間を短縮することができる。
【0040】
また、各撮影における共通画像接続用重複撮影領域は、放射線源1からの放射線がほぼ垂線となるように被検体Mに照射されるように絞り装置2を調整し、隣接する撮影位置つまり第一回目の撮影位置と第二回目の撮影位置における被検体Mに対してほぼ垂線となった放射線位置がほぼ同じになるように放射線源1を駆動する撮影領域設定手段7および駆動手段5を設けたため、それぞれの撮影における共通画像接続用重複撮影領域の放射線分布密度が高く、またほぼ同条件となり、これらを用いた共通画像接続用重複撮影領域による接続精度が向上することになり、画像接続時のアーチファクトを低減することができる。
【0041】
図1から図5を用いて説明した実施の形態では、一回目の撮影位置での撮影に際して、FPD12の長尺方向の検出領域全体に放射線を照射するように絞り装置2を調整したが、図3に示した第一回目の撮影位置で絞り装置2の下側絞りを放射線が被検体Mに対してほぼ垂線となるように制限し、また図4に示した第二回目の撮影位置では、共通画像接続用重複撮影領域を考慮しながらも絞り装置2の上側絞りを放射線が被検体Mに対してほぼ垂線となるように制限するなら、図6から図9に示した実施の形態の場合と同様に二回の撮影における共通画像接続用重複撮影領域となる領域は、放射線源1からの放射線がほぼ垂線となるように被検体Mに照射することになるため、それぞれの撮影における同部の放射線分布密度が高く、これらを用いた共通画像接続用重複撮影領域による接続精度が向上することになり、画像接続時のアーチファクトを低減させることができる。
【0042】
図10は、本発明のさらに他の実施の形態による放射線撮影装置の要部を示す側面図である。
この放射線撮影装置は、特開2004−242928号公報に記載されたように昭放射線源1に首振り機構18を追加しており、入力手段6または撮影領域設定手段7からの指示によって撮影制御部4はこの首振り機構18を利用して放射線源1の焦点1aを中心にして被検体Mの長尺方向に放射線照射領域を変化可能にしている。放射線源1の被検体M側に設けた絞り装置2は、その上側絞りおよび下側絞りを標準撮影角度αに設定したとき、FPD12の長尺方向における検出領域距離L0に対応するものとし、また上側絞りおよび下側絞りは撮影角度を変化させることができる構成としている。その他の構成は、図1と同様であるから同等物に同一符号を付けて詳細な説明は省略する。
【0043】
図11は、図10に示した放射線撮影装置による長尺撮影手順を示すフローチャートである。
放射線源1とFPD12が対向して配置された通常の撮影系の段階で、先ず、ステップS1で絞り装置2の照射ランプを点灯し、被検体Mの撮影関心領域全体に対応して光が照射されるように絞り装置2を調整する。この状態で、入力手段6からの指示、または撮影関心領域全体の長尺方向の距離がFPD12における長尺方向の検出領域距離L0より大きい場合に、撮影領域設定手段7が動作する。この撮影領域設定手段7は、ステップS2で予め入力されているFPD12における長尺方向の検出領域距離L0と、同様にFPD12が複数の移動位置を採るときに隣接する領域において重複するように予め設定した画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5と、ステップS1で設定された絞り装置2における各絞りの状態データと、放射線源1の放射線焦点とFPD12間の距離SlDとを撮影制御手段4から入手する。同時に撮影領域設定手段7は、入手した各情報を移動量算出手段9に送り、移動量算出手段9は撮影領域設定手段7から入手した各絞りの状態データとSlDとから全移動距離L1を算出し、また検出領域距離L0と画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5と全移動距離L1とから二回目以降の全ストロークの移動距離L2およびその回数Nと、最終移動算出距離L3を算出する。
【0044】
例えば、FPD12の長尺方向の検出領域距離L0=43cm、画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5=5cmとして予め入力されているとすると、絞り装置2における各絞りの状態データとSlDとを入力して演算したとき、FPD12の長尺方向の全移動距離L1=81cmの最大視野モードとして算出されたなら、先の実施の形態の場合と同じ算出の仕方により、移動量算出手段9は二回目以降の全ストロークの移動回数N=0で、第二回目の撮影位置が最終撮影位置となり最終移動算出距離L3=38cmを算出する。
【0045】
続くステップS3では、FPD12の上端部が関心領域の上方端に一致するように移動手段11によって移動し、FPD12を最初の撮影位置に配置させる。ステップS4aで撮影領域設定手段7は、撮影制御部4を通して絞り装置2を標準撮影角度αとなるように調整すると共に首振り機構18を調整して、図10に示すように放射線源1からの放射線がFPD12に対応する領域だけに照射されるようにする。その後、ステップS5で照射条件設定手段8は、入力手段6からの入力した条件と撮影領域設定手段7からの条件に基づいて撮影制御部4を通して高電圧発生部3を制御しながら放射線源1から放射線を照射して最初の撮影を行なう。このとき画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を取り込み、第一の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0046】
続くステップS6で画像領域設定手段7は、長尺撮影が終了したか否かを判定する。FPD12がまだ全移動距離L1を移動していないから、次のステップS7へ進む。ここで移動量算出手段9は、上述した条件では二回目以降の全ストロークの移動回数N=0であり、最終移動算出距離L3=38cmを算出しているため、ステップS7で図12に示すように算出した最終移動算出距離L3に基づいて移動量制御手段10を通して移動手段11を作動し、FPD12の下端部を38cmだけさらに下方側に移動して第二回目の最終撮影位置とする。ここでは最大視野モードの場合で最終移動算出距離L3=38cmであるため、従来の構成のように第二回目の撮影位置へのFPD12の移動距離が常に固定値に設定されていた場合と比べて差は生じないが、最終移動算出距離L3が小さくなるに従ってFPD12の移動方向端部を第二回目の最終撮影位置まで素早く移動することができるようになる。つまり、FPD12の長尺方向の検出領域距離L0=43cm、また画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5=5cmで、最終移動算出距離L3が38cmより小さい場合、従来の構成では第二回目の撮影位置へのFPD12の移動距離が常に固定値に設定されていた場合に比べて短く、FPD12の移動方向端部を第二回目の最終撮影位置まで素早く移動して、撮影時間の短縮に貢献することができる。
【0047】
ステップS8で撮影領域設定手段7は、移動量算出手段9で算出した最終移動算出距離L3の情報を取得し、撮影制御部4を通して首振り機構18の角度と絞り装置2の撮影角度を制御する。これらの調整によって、第二回目の最終撮影位置まで移動したFPD12の移動側端部までが放射線の照射範囲となるようにすると共に、第一回目の撮影位置での撮影領域の下側に位置した共通画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5を放射線照射範囲に含むが、それよりも上側の既に撮影した領域への放射線照射を制限する。このとき、従来の構成では第二回目の撮影位置へのFPD12の移動距離が常に固定値に設定されている場合、これに対応する位置まで首振り機構18は角度を大きく調整しなければならかったが、上述の構成では、移動量算出手段9によって算出したFPD12の第二回目の最終撮影位置に対応するまで移動するだけであるから、最終移動算出距離L3が38cmより小さい場合、その位置までFPD12を素早く移動して、さらに撮影時間を短縮することができる。
【0048】
ステップS9で入力手段6は、予め照射条件設定手段8に入力した条件と撮影領域設定手段7からの条件に基づいて撮影制御部4を通して高電圧発生部3を制御しながら、図4に示すように放射線源1から放射線を照射して二回目の最終撮影を行なう。このとき画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を取り込み、第二の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0049】
その後、撮影領域設定手段7は、先の実施の形態の場合と同様にステップS6でFPD12の移動距離が既に全移動距離L1に達しているため、長尺撮影が終了したと判定してステップS10に進む。このステップS10で長尺画像合成手段14は、画像メモリ17に記憶した各画像データを取り出し、隣接する画像データつまり、第一の画像データと第二の画像データから同一の共通画像接続用重複撮影領域を検出し、同部を利用して繋ぎ合わせて1つの合成画像データを生成し、ステップS11でこの合成画像データを画像メモリ17に記憶する。その後、必要に応じてステップS12で表示制御手段15は、画像メモリ17から取り出した合成画像データに基づいて表示装置13に合成画像を表示したりプリントしたりして出力する。
【0050】
この実施の形態でも、一回目の撮影位置での撮影に際しては、FPD12の長尺方向の検出領域全体に放射線を照射するようにしたが、上側絞りと下側絞りをそれぞれ独立して調整できるように構成し、図10に示した第一回目の撮影位置で絞り装置2の下側絞りによる放射線照射角度と、図12に示した第二回目の撮影位置で、共通画像接続用重複撮影領域を考慮しながらも絞り装置2の上側絞りによる放射線照射角度とがほぼ一致するようにするなら、図6から図9に示した実施の形態の場合と同様に第一回目と第二回の撮影における共通画像接続用重複撮影領域における接続精度が向上することになり、画像接続時のアーチファクトを低減させることができる。
【0051】
このような放射線撮影装置でも、従来のようにFPD12を予め定めた第一の固定位置からFPD12の長尺撮影方向における大きさに基づいて機械的に予め定めた第二の固定位置に移動させるのではなく、対象となる被検体Mの撮影関心領域に基づいて移動量算出手段9により最終撮影位置におけるFPD12の位置を算出し、この算出位置までFPD12を移動するようにしたため、FPD12を素早く最終撮影位置まで移動することができ、撮影時間を従来に比べて短縮することができる。また、最終撮影位置のFPD12に対応させるための首振り機構18の移動角度も小さくなり、首振り機構18の調整に要する時間を短縮して撮影時間を一層短縮することができる。特に、最終撮影位置へ移動させる際、その最終移動算出距離L3がFPD12における長尺撮影方向の有効検出領域距離L4より短い場合、FPD12の移動方向端部を移動算出距離L3だけ移動するればよいので、従来のようにFPD12を予め定めた第一の固定位置から予め定めた第二の固定位置まで常に移動させる場合に比べて、FPD12を素早く最終撮影位置まで移動することができ、撮影時間を常に短縮することができる。
【0052】
また先の実施の形態の場合と同様に、FPD12に対応した領域の全体に放射線を常に照射するのではなく、共通画像接続用重複撮影領域は除くもののそれ以外の先に撮影した領域と、またFPD12の移動側端部が移動していない側の領域への放射線の照射を制限するように絞り装置2で調整するようにしているため、従来よりも不必要な放射線照射を少なくすることができる。さらに、共通画像接続用重複撮影領域を形成することによって、長尺撮影のために撮影を複数回に分割したとしても、各共通画像接続用重複撮影領域における撮影データの同一性から合成する位置を容易に判別して、容易に合成画像を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明による放射線撮影装置は、図示の構成に限らず、その他の構成の放射線撮影装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態による放射線撮影装置の概略ブロック構成図である。
【図2】図1に示した放射線撮影装置による長尺撮影の手順を示すフローチャートである。
【図3】図1に示した放射線撮影装置による第一回目撮影状態を示す要部拡大図である。
【図4】図1に示した放射線撮影装置による第二回目撮影状態を示す要部拡大図である。
【図5】図1に示した放射線撮影装置による他の長尺撮影時の第二回目撮影状態を示す要部拡大図である。
【図6】図1に示した放射線撮影装置によるさらに他の長尺撮影時の初期状態を示す要部拡大図である。
【図7】図1に示した放射線撮影装置によるさらに他の長尺撮影時の第一回目撮影状態を示す要部拡大図である。
【図8】図1に示した放射線撮影装置によるさらに他の長尺撮影時の第二回目撮影状態を示す要部拡大図である。
【図9】図1に示した放射線撮影装置によるさらに他の長尺撮影の手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の他の実施の形態による放射線撮影装置の概略ブロック構成図である。
【図11】図10に示した放射線撮影装置による長尺撮影時の手順を示すフローチャートである。
【図12】図10に示した放射線撮影装置の第二回目の撮影状態を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0055】
1 放射線源
2 絞り装置
7 撮影領域設定手段
9 移動量算出手段
11 移動手段
12 FPD
13 画像データ収集処理手段
14 長尺画像合成手段
18 首振り機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、全下肢撮影や全脊椎撮影のように被検体に対して長尺撮影が可能な放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線撮影装置において、主に骨の計測を目的にした全下肢撮影や全脊椎撮影にあたっては被写体全体を把握するために長尺撮影が行われる。この長尺撮影において、従来は長尺フィルムを増感紙と共に長尺カセッテに収集して撮影を行うようにしていた。また長尺フィルムを用いず、輝尽性蛍光体ディテクタを利用したディジタル放射線画像入力方式(CR)も提案されている。この長尺撮影では輝尽性蛍光体ディテクタを格納した複数のカセッテをお互いに部分的に重なり合うように配列し、専用のカセッテホルダーに格納するようにしている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
これに対して、フラットパネル型放射線検出器(以下、FPDと称す)を2次元X線検出器として使用するようになり、このFPDでは、X線により発生した検出器面上のさまざまな位置の電荷が読み取られて処理され、被検体のディジタル画像を生成する。このディジタル画像は写真フィルム上のアナログ画像と異なり電子形式で作成されるため、画像を後で他の箇所に電子的に転送したり、撮影された画像の特徴を決定するためにその画像に対し診断用アルゴリズムを作用させたりすることができるなどの利点がある。このようなFPDは、輝尽性蛍光体ディテクタを格納したカセッテに比べて大きな体積を占め、重ね合わせに配置して使用することができないため、一つのFPDを複数位置に移動させて必要とする大きな視野を満足するようにし、それぞれの移動位置で撮影を行い、撮影終了後に、各位置での画像を接続して長尺画像を生成する方式が採用されている。その際に、長尺撮影範囲を複数に分割し、この分割した隣り合う撮影範囲同士に重複する画像接続用重複撮影領域を設け、それぞれの撮影範囲の撮影終了後に画像接続用重複撮影領域を利用して合成して長尺画像を得るようにした放射線撮影装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−244269号公報
【特許文献2】特開2001−269333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の放射線撮影装置では、大きな撮影視野を確保するために、複数の撮影位置で撮影した各画像を一つの長尺画像として合成生成するために使用する画像接続用重複撮影領域を除いて殆ど重複することがないようにFPDを第一の撮影位置から第二の撮影位置に大きく移動させている。しかも、このときのFPDの移動距離は、FPDの長尺方向の大きさから割り出した固定値を採用していた。このため、長尺方向に関心領域が比較的小さな場合でも、FPDを予め定めた第二の撮影位置まで完全に移動することになり、FPDの移動距離は常に大きくその移動のために時間がかかり、撮影終了までに要する時間が長くなっていた。従って、長い撮影時間の間に被検体の動きが生じることによって画質低下が発生する可能性があり、撮影時間の短縮が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、長尺撮影の隙にFPDを必要最小限に移動させて撮影時間の短縮を可能にした放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被検体に放射線を照射する放射線源と、この放射線源に対向配置され前記被検体の透過放射線から画像データを検出するフラットパネル型放射線検出器と、このフラットパネル型放射線検出器を前記被検体の体軸方向に移動し、それらの各撮影位置で得られた各画像データを合成して長尺画像を得る長尺画像合成手段とを有する放射線撮影装置において、前記長尺画像合成手段は、前記被検体における撮影関心領域の長尺方向距離と、前記フラットパネル型放射線検出器における有効視野の長尺方向距離とから前記フラットパネル型放射線検出器の移動量を算出する移動量算出手段を設け、前記算出された移動量に基づいて前記フラットパネル型放射線検出器を各撮影位置に移動し、それらの各撮影位置で得られた各画像データを合成して長尺画像を得ることを特徴とする放射線撮影装置を開示する。
【0008】
更に本発明は、前記放射線源からの放射線照射領域を前記被検体の長尺方向に変更可能な首振り機構を前記放射線源に設け、前記移動量算出手段により算出した移動量に基づいて各撮影位置に移動した後の前記フラットパネル型放射線検出器に対応するように前記首振り機構を作動させる撮影領域設定手段を設けた放射線撮影装置を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長尺撮影に際してFPDを必要最小限に移動させて撮影時間の短縮を可能にできた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明による放射線撮影装置の最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態による放射線撮影装置の全体構成を示すブロック構成図である。
放射線診断装置は、被検体MにX線を照射するX線管などの放射線源1と、この放射線源1の照射側に配置されて放射線照射領域を制限すると共に、点灯して被検体Mの撮影関心領域に光を照射可能な照射ランプを有する絞り装置2と、被検体Mを挟んで放射線源1に対向配置した2次元アレイ方式のFPD3とを備えている。放射線源1および絞り装置2は、詳細な図示を省力しているが被検体Mとの相対的な位置関係を調整可能に支持機構によって支持され、操作卓の入力手段5による指示によって照射条件設定手段8に照射条件(X線管の管電圧や管電流、撮影タイミング、絞り装置の位置等の条件など)を設定したとき、この照射条件設定手段8に基づいて撮影制御部4から高電圧発生部3およびを絞り装置2を制御することができるように構成されている。また絞り装置2は、一対の独立して動作して放射線照射領域を制限する上側絞りと下側絞りを有している。さらに、被検体Mの反放射線源側に配置したFPD12は、詳細な図示を省略しているが支持機構に沿って移動可能に構成され、長尺撮影時に操作卓からの指示によって移動手段11により複数の撮影位置へと移動できるように構成されている。
【0011】
操作卓では、入力手段6によって一般撮影や長尺撮影などをモード指定することができ、長尺撮影モードが指定されると、撮影領域設定手段7は詳細を後述するように絞り装置2の照射ランプによる光照射によって撮影関心領域が設定されたときの上側絞りと下側絞りの状態データや、放射線源1の放射線焦点とFPD12間の距離SlDなどを取得し、移動量算出手段9によって上側絞りと下側絞りの状態データから撮影関心領域の長尺方向の距離と、この長尺方向の距離やFPD12の有効視野における長尺方向の距離や画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離などから各撮影位置までのFPD12の移動量を算出する。この算出値に基づいて移動量制御手段10は、移動手段11を駆動してFPD12を長尺方向の各撮影位置へと移動するように構成されている。この長尺撮影時には、照射条件設定手段8による絞り装置2の制御に優先して撮影領域設定手段7によって絞り装置2を制御できるようにしている。
【0012】
またFPD12には、被検体Mを透過した透過放射線信号を取り込む画像データ収集処理手段13が接続されており、この画像データ収集処理手段13は収集処理した各画像データを画像メモリ17にそれぞれ格納するようにしている。長尺撮影の場合、長尺画像合成手段14は、画像メモリ17内に格納した各画像データを取り出して画像接続用重複撮影領域を利用しながら長尺画像を合成処理し、その合成画像データを画像メモリ17に格納すると共に、表示制御手段15によって操作卓の表示装置16に合成画像をリアルタイムに表示する。この画像メモリ17には通常撮影の画像データも格納され、表示制御手段15によって操作卓5の表示装置16にその画像をリアルタイムに表示することができる。
【0013】
FPD12は、放射線源1による放射線照射によって生じる被検体Mの透視放射線信号を検出し、検出信号として電気信号に変更して出力する構成であって、多数の放射線検出素子が縦横に配列された二次元アレイ方式のセンサである。この二次元アレイ方式のセンサの詳細については、例えば特許第3277866号で紹介されている。このようなFPD12から取り出されてディジタル化された放射線検出信号は、画像データ収集処理手段13によって取り込まれ、二次元検出素子のXYマトリクスに対応するフレームメモリに画像として記憶されることになる。
【0014】
次に、上述した放射線撮影装置による脊椎や胸部の長尺撮影を行う際の手順を図2に示したフローチャートを用いて説明する。
この説明では、FPD12の有効視野における長尺方向の検出領域距離をL0、被検体Mの撮影関心領域全体を長尺撮影するために最初の撮影位置から最終撮影位置までFPDの下端部を長尺方向に移動する全移動距離をL1、二回目以降の全ストロークの移動距離およびその回数をL2およびN、最終移動算出距離をL3、FPD12が複数の撮影位置を採るときに隣接する撮影位置において重複撮影するように予め設定した画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離をL5としている。ここで二回目以降の全ストロークの移動距離L2とは、画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5を考慮に入れながらFPD12を全ストロークさせるときの移動距離と回数で、L1>L0+(L0−L5)n(ただしn=1,2……)が成立する範囲での(L0−L5)であり、二回目以降の全ストロークの移動回数N=nとなる。また最終移動算出距離L3とは、L1>L0+(L0−L5)nが成立しなくなる移動回数N=n+1の撮影に際して、その前の撮影位置におけるFPD12の移動側端部を後どれだけ移動したとき長尺方向の全移動距離L1に達するかという最終撮影位置までの移動距離L3≦(L0−L5)のことであり、二回目の全ストロークの移動距離(L0−L5)によって丁度全移動距離L1になる場合は、L1>L0+(L0−L5)nが成立しないので(L0−L5)が最終移動算出距離L3となる。
【0015】
今、放射線源1とFPD12が対向して配置された通常の撮影系の段階で、先ず、ステップS1で絞り装置2の照射ランプを点灯し、被検体Mの撮影関心領域全体に対応して光が照射されるように絞り装置2を調整する。通常撮影系では、このときの絞り装置2の上側絞りと下側絞りとはそれぞれ同量ずつ調整されるので、照射ランプによる光照射の長尺方向の中心部は撮影関心領域全体の長尺方向のほぼ中心に位置することになる。この状態で、入力手段6からの指示、または撮影関心領域全体の長尺方向の距離がFPD12における長尺方向の検出領域距離L0より大きい場合に、撮影領域設定手段7が動作する。この撮影領域設定手段7は、ステップS2で予め入力されているFPD12における長尺方向の検出領域距離L0と、同様にFPD12が複数の移動位置を採るときに隣接する領域において重複するように予め設定した画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5と、ステップS1で設定された絞り装置2における各絞りの状態データと、放射線源1の放射線焦点とFPD12間の距離SlDとを撮影制御手段4から入手する。同時に撮影領域設定手段7は、入手した各情報を移動量算出手段9に送り、移動量算出手段9は入手した各絞りの状態データとSlDとから全移動距離L1を算出し、また検出領域距離L0と画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5と全移動距離L1とから二回目以降の全ストロークの移動距離L2およびその回数Nと、最終移動算出距離L3を算出する。
【0016】
例えば、ここでは高さ43cm、幅43cmのFPD12を使用し、長尺方向の検出領域距離L0=43cm、画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5=5cmとして予め入力しているとすると、絞り装置2における各絞りの状態データとSlDとを入力して演算したとき、FPD12の長尺方向の全移動距離L1=81cmの最大視野モードとして算出されたなら、第二回目の撮影位置への移動においてL1>L0+(L0−L5)nが成立しなくなるため、二回目以降の全ストロークの移動回数N=0であり、第二回目の撮影位置が最終撮影位置となり、移動量算出手段9は、最終移動算出距離L3=38cmを算出する。
【0017】
ここで、撮影領域の設定は種々の方法で行うことができ、各種の条件が既知であれば入力手段6からのデータ入力に基づいて撮影領域設定手段7が撮影領域の設定を判定し、これに基づいて移動量算出手段9でFPD12の長尺方向の全移動距離L1と、二回目以降の全ストロークの移動距離L2およびその回数Nと、最終移動算出距離L3を算出しても良いし、絞り装置2の照射ランプからの照射光を光学的に取り込んでFPD12の長尺方向の全移動距離L1を得るなどしても良い。
【0018】
続くステップS3では、図3に示すように撮影関心領域の上方端にFPD12の上端部が一致するようにFPD12を最初の撮影位置に配置させる。ステップS4で撮影領域設定手段7は、撮影制御部4を通して絞り装置2の下側の絞りを移動させて放射線源1からの放射線がFPD12に対応する領域だけに照射されるように制限する。その後、ステップS5で照射条件設定手段8は、入力手段6からの入力した条件と撮影領域設定手段7からの条件に基づいて撮影制御部4を通して高電圧発生部3を制御しながら放射線源1から放射線を照射して最初の撮影を行なう。このとき画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を取り込み、第一の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0019】
続くステップS6で画像領域設定手段7は、長尺撮影が終了したか否かを判定する。FPD12が既に全移動距離L1を移動しているなら、撮影は終了となりステップS10に進むが、FPD12がまだ全移動距離L1を移動していないなら、次のステップS7へ進む。長尺撮影の場合、FPD12の長尺方向の全移動距離L1がFPD12の長尺方向の検出領域距離L0よりも大きく、移動量算出手段9において二回目以降の全ストロークの移動距離L2およびその回数N、または最終移動算出距離L3を通常は算出しているので次のステップS7へ進むことになる。
【0020】
ここで移動量算出手段9は、上述した条件では二回目以降の全ストロークの移動回数N=0であり、最終移動算出距離L3=38cmを算出しているため、ステップS7で図4に示すように算出した最終移動算出距離L3に基づいて移動量制御手段10を通して移動手段11を作動し、FPD12の下端部を38cmだけさらに下方側に移動して第二回目の最終撮影位置とする。ここでは最大視野モードの場合で最終移動算出距離L3=38cmであるため、従来の構成のように第二回目の撮影位置へのFPD12の移動距離が常に固定値の場合に比べて差は生じないが、最終移動算出距離L3が小さくなるに従ってFPD12の移動方向端部を第二回目の最終撮影位置まで素早く移動することができるようになる。つまり、FPD12の長尺方向の検出領域距離L0=43cm、また画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5=5cmで、最終移動算出距離L3がL3<(L0−L5)の場合、従来の構成では第二回目の撮影位置へのFPD12の移動距離が固定値の場合に比べて短く、FPD12の移動方向端部を第二回目の最終撮影位置まで素早く移動することができる。
【0021】
ステップS8で撮影領域設定手段7は、ステップS4の場合と同様に移動量算出手段9で算出した最終移動算出距離L3の情報を取得し、撮影制御部4を通して絞り装置2の絞り位置を制御する。つまり、第二回目の最終撮影位置まで移動したFPD12の移動側端部までが放射線の照射範囲となるように絞り装置2の下側絞りを調整すると共に、絞り装置2の上側絞りは第一回目の撮影位置での撮影領域の下側に位置した共通画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5を放射線照射範囲に含むが、それよりも上側は制限するように調整する。ステップS9で入力手段6は、予め照射条件設定手段8に入力した条件と撮影領域設定手段7からの条件に基づいて撮影制御部4を通して高電圧発生部3を制御しながら、図4に示すように放射線源1から放射線を照射して二回目の最終撮影を行なう。このとき画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を取り込み、第二の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0022】
その後、撮影領域設定手段7は、ステップS6でFPD12の移動距離が既に全移動距離L1に達しているため、長尺撮影が終了したと判定してステップS10に進む。このステップS10で長尺画像合成手段14は、画像メモリ17に記憶した各画像データを取り出し、隣接する画像データつまり、第一の画像データと第二の画像データから同一の共通画像接続用重複撮影領域を検出し、同部を利用して繋ぎ合わせて1つの合成画像データを生成し、ステップS11でこの合成画像データを画像メモリ17に記憶する。その後、必要に応じてステップS12で表示制御手段15は、画像メモリ17から取り出した合成画像データに基づいて表示装置13に合成画像を表示したりプリントしたりして出力する。
【0023】
次に、上述したステップS2で移動量算出手段9が、例えば、FPD12の長尺方向の検出領域距離L0=43cm、画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5=5cmとして予め入力されており、絞り装置2における各絞りの状態データとSlDとを入力して演算したとき、FPD12の長尺方向の全移動距離L1=50cmとして算出された場合について説明する。この場合、移動量算出手段9は第二回目の撮影位置への移動においてL1>L0+(L0−L5)nが成立しなくなるため、二回目以降の全ストロークの移動回数N=0、また第二回目の撮影位置が最終撮影位置となり、移動量算出手段9は最終移動算出距離L3=7cmを算出することになる。
【0024】
続くステップS3では、上述した場合と同様に関心領域の上方端にFPD12の上端部が一致するようにFPD12を最初の撮影位置に配置する。ステップS4で撮影領域設定手段7は、撮影制御部4を通して絞り装置2の下側の絞りを移動させて放射線源1からの放射線がFPD12に対応する領域だけに照射されるように制限する。その後、ステップS5で照射条件設定手段8は、入力手段6からの入力した条件と撮影領域設定手段7からの条件に基づいて撮影制御部4を通して高電圧発生部3を制御しながら図2に示すように放射線源1から放射線を照射して最初の撮影を行なう。このとき画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を取り込み、第一の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0025】
続くステップS6で画像領域設定手段7は、長尺撮影が終了したか否かを判定する。ここでは移動量算出手段9が最終移動算出距離L3を算出しており、FPD12がまだ全移動距離L1を移動していないので、次のステップS7へ進む。ステップS7では、図5に示すように算出した最終移動算出距離L3に基づいて移動量制御手段10を通して移動手段11を作動し、FPD12の下端部を7cmだけさらに下方側に移動して第二回目の最終撮影位置とする。この最終撮影位置への移動は、僅か7cmだけであり短時間に行うことができる。このような移動は、FPD12の長尺方向の検出領域距離L0=43cm、また画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5=5cmで、最終移動算出距離L3が極めて小さいため、従来の構成のように第二回目の撮影位置へのFPD12の移動距離が常に固定値に設定されている場合に比べて、FPD12の移動方向端部を第二回目の最終撮影位置まで素早く移動することができる。
【0026】
ステップS8で撮影領域設定手段7は、ステップS4の場合と同様に移動量算出手段9で算出した最終移動算出距離L3の情報を取得し、撮影制御部4を通して絞り装置2の絞り位置を制御する。つまり、第二回目の最終撮影位置まで移動したFPD12の移動側端部までが放射線の照射範囲となるように絞り装置2の下側絞りを調整すると共に、絞り装置2の上側絞りは第一回目の撮影位置での撮影領域の下側に位置した共通画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5を放射線照射範囲に含むが、それよりも上側は制限するように調整する。ステップS9で入力手段6は、予め照射条件設定手段8に入力した条件と撮影領域設定手段7からの条件に基づいて撮影制御部4を通して高電圧発生部3を制御しながら、図5に示すように放射線源1から放射線を照射して二回目の最終撮影を行なう。このとき画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を取り込み、第二の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0027】
その後、撮影領域設定手段7は、ステップS6でFPD12の移動距離が既に全移動距離L1に達しているため、長尺撮影が終了したと判定してステップS10に進む。このステップS10で長尺画像合成手段14は、画像メモリ17に記憶した各画像データを取り出し、隣接する画像データつまり、第一の画像データと第二の画像データから同一の共通画像接続用重複撮影領域を検出し、同部を利用して繋ぎ合わせて1つの合成画像データを生成し、ステップS11でこの合成画像データを画像メモリ17に記憶する。その後、必要に応じてステップS12で表示制御手段15は、画像メモリ17から取り出した合成画像データに基づいて表示装置13に合成画像を表示したりプリントしたりして出力する。
【0028】
ところで、上述したステップS2で移動量算出手段9が二回目以降の全ストロークの移動距離L2とその回数Nを検出している場合は、ステップS7でFPD12の移動方向端部を38cm移動させて第二回目の撮影位置とし、第二回目の撮影を行う。これをN回行った後、最終位置での最終撮影となるが、この最終撮影では上述した説明における二回目の最終撮影位置と同様にFPD12の移動方向端部を最終移動算出距離L3だけ素早く移動させて最終撮影位置にすることができる。
【0029】
このような放射線撮影装置によれば、従来のようにFPD12を予め定めた第一の固定位置からFPD12の長尺撮影方向における大きさに基づいて機械的に予め定めた第二の固定位置に移動させるのではなく、対象となる被検体Mの撮影関心領域に基づいて移動量算出手段9によりFPD12の移動量を算出し、この算出位置までFPD12を移動するようにしたため、FPD12を素早く最終撮影位置まで移動して撮影関心領域を確保することができ、撮影時間を従来に比べて短縮することができる。特に、最終撮影位置へ移動させる際、その最終移動算出距離L3がFPD12における長尺撮影方向の有効検出領域距離L4より短い場合、FPD12の移動方向端部を移動算出距離L3だけ移動するればよいので、従来のようにFPD12を予め定めた第一の固定位置から予め定めた第二の固定位置まで常に移動させる場合に比べて、FPD12を素早く最終撮影位置まで移動することができ、撮影時間を常に短縮することができる。また従来に比べて撮影の間に被検体の動きが生じることによって画質低下が発生する可能性は極めて低くなる。
【0030】
しかも、FPD12に対応した領域の全体に放射線を常に照射するのではなく、共通画像接続用重複撮影領域は除くもののそれ以外の先に撮影した領域と、またFPD12の移動側端部が移動していない側の領域への放射線の照射を制限するように絞り装置2で調整するようにしているため、従来よりも不必要な放射線照射を少なくすることができる。また、この実施の形態では共通画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5を5cmとして説明したが、長尺方向に隣接する撮影データの接続部分を判別することができるなら、共通画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5をさらに小さくして、不必要な放射線照射を少なくすることもできる。いずれにせよ、共通画像接続用重複撮影領域を形成することによって、長尺撮影のために撮影を複数回に分割したとしても、各共通画像接続用重複撮影領域における撮影データの同一性から合成する位置を容易に判別して、容易に合成画像を得ることができる。さらに、この実施の形態では、第一回目の撮影位置を設定した後、放射線源1と被検体Mとの相対的な位置関係を変えることなく絞り装置2による調整だけで複数回にわたる関心領域全体の撮影を行うことができるので、撮影時間を一層短縮することができる。
【0031】
次に、本発明の他の実施の形態による放射線撮影装置による長尺撮影手順を図9に示したフローチャートを用いて説明する。
この説明でも、FPD12における長尺方向の検出領域距離をL0、被検体Mの撮影関心領域全体を撮影するために最初の撮影位置から最終撮影位置までのFPDの長尺方向における全移動距離をL1、最終移動算出距離をL3、隣接する撮影位置においてFPD12の一部が重複撮影するように予め設定した画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離をL5としている。ここでは説明を簡略化するために、FPD12を最初の撮影位置と最終撮影位置の二箇所で長尺撮影が完了するものとしており、最終移動算出距離L3とは、最終撮影位置へのFPD12の移動に際して、最初の撮影位置におけるFPD12の移動側端部を後どれだけ移動したとき全移動距離L1になるかという移動距離のことである。
【0032】
今、放射線源1とFPD12が対向して配置された通常の撮影系の段階で、先ず、ステップS1で図6に示すように絞り装置2の照射ランプを点灯し、被検体Mの撮影関心領域全体に対応して光が照射されるように絞り装置2を調整する。通常撮影系では、このときの絞り装置2の上側絞りと下側絞りとはそれぞれ同量ずつ調整されるので、照射ランプによる光照射の長尺方向の中心部は撮影関心領域全体の長尺方向のほぼ中心に位置することになる。この状態で、入力手段6からの指示、または撮影関心領域全体の長尺方向の距離がFPD12における長尺方向の検出領域距離L0より大きい場合に、撮影領域設定手段7が動作する。この撮影領域設定手段7は、ステップS2で予め入力されているFPD12における長尺方向の検出領域距離L0と、同様にFPD12が複数の移動位置を採るときに隣接する領域において重複するように予め設定した画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5と、ステップS1で設定された絞り装置2における各絞りの状態データと、放射線源1の放射線焦点とFPD12間の距離SlDとを撮影制御手段4から入手する。同時に撮影領域設定手段7は、入手した各情報を移動量算出手段9に送る。
【0033】
移動量算出手段9は、予め入力されているFPD12における長尺方向の検出領域距離L0と、同様にFPD12が最終撮影位置を採るときに最初の撮影領域と重複するように予め設定した画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5とをもとにして、ステップS1で設定した絞り装置2における各絞りの状態データと、放射線源1の放射線焦点とFPD12間の距離SlDとから、FPD12の長尺方向の全移動距離L1と、最終移動算出距離L3を算出する。例えば、FPD12の長尺方向の検出領域距離L0=43cm、画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5=5cmとして予め入力しており、移動量算出手段9はステップS1での絞り装置2における各絞りの状態データとSlDとを入力して演算したとき、FPD12の長尺方向の全移動距離L1=50cm、最終撮影位置までの最終移動算出距離L3=7cmをそれぞれ算出したとする。
【0034】
次に、ステップS2aで撮影領域設定手段7は、絞り装置2の上側絞りをFPD3の検出領域に合わせて有効視野が43cmとなるように調整し、また、絞り装置2の下側絞りを被検体Mに対してほぼ垂線となるように調整する。その後、ステップS4で撮影領域設定手段7は、上下方向の駆動手段5によって図7に示すように放射線源1および絞り装置2を下方に移動しながら、絞り装置2の上側絞りによる照射光の上端部が撮影関心領域の上端部およびFPD12の上部に一致するようにする。すると、上述した絞り装置2の上側絞りおよび下側絞りの設定によって、照射光の下端部はFPD3の検出領域の下端部にほぼ合致し、しかも被検体Mに対してほぼ垂線となる。こうして最初の撮影位置が得られる。
【0035】
続くステップS5で撮影領域設定手段7は、ステップS2aで設定した絞り装置2の状態を保持しながら、照射条件設定部8で予め設定した撮影条件に基づいて撮影制御部4を通して高電圧発生部3を制御して放射線源1から放射線を所定時間照射し、最初の撮影を行う。このとき画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を収集して第一の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0036】
続くステップS7で移動量算出手段9は、既に算出した最終移動算出距離L3を用いて移動量制御手段10を通して移動手段11を駆動し、図8に示すようにFPD12の移動側端部を長尺方向に移動して最終撮影位置とする。上述のように最終移動算出距離L3=7cmとして算出されているので、FPD12の移動方向端部を7cmだけ移動させて最終撮影位置とする。この最終撮影位置への移動は、FPD12を僅か7cmだけ移動させるだけであるから従来に比べて極めて短時間に行うことができる。特に、従来のようにFPD12の最終撮影位置を常に最大限の撮影関心領域となるように機械的な固定値に定めていた場合、FPD12を最終撮影位置へ移動するためにはFPD12の移動側端部を長尺方向に大きく移動しなければならないが、今回の移動は、これに比べて極めて短い移動距離であり、FPD12の移動方向端部を素早く最終撮影位置まで移動して撮影時間を一層短縮することができる。
【0037】
続いてステップS8で撮影領域設定手段7は、この移動量算出手段9によるFPDの移動に合わせて撮影制御部4により絞り装置2の下側絞りおよび上側絞りを調整する。つまり、絞り装置2の下側絞りは、図8に示すように撮影領域の下方端部が最終撮影位置に移動したPD12の移動側端部までとなるように調整し、また、上側絞りは、同図に示すように撮影領域の上方端部が共通画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5だけ上方となるように調整する。従って、上側絞りによって制限される放射線は被検体Mに対してほぼ垂線となる。その後、ステップS9で同条件が設定されたことを確認した後、入力手段6から指令を与え、撮影領域設定手段7による絞り装置2の設定状態を保持したまま撮影制御部4を通して高電圧発生部3により放射線源1から絞り装置2を通して放射線を照射して二回目の撮影を行う。このとき、画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を収集して第二の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0038】
その後、ステップS10で長尺画像合成手段14は、画像メモリ14に記憶した第一画像データおよび第二画像データを取り出し、隣接する画像データつまり、第一の画像データと第二の画像データから同一の共通画像接続用重複撮影領域を検出し、同部を利用して繋ぎ合わせて1つの合成画像データを生成し、ステップS11でこの合成画像データを画像メモリ17に記憶する。その後、必要に応じてステップS12で表示制御手段15は、画像メモリ17から取り出した合成画像データに基づいて表示装置16に合成画像を表示したりプリントしたりして出力する。
【0039】
このような放射線撮影装置によれば、従来のようにFPD12を予め定めた第一の固定位置からFPD12の長尺撮影方向における大きさに基づいて機械的に予め定めた第二の固定位置に移動させるのではなく、対象となる被検体Mの撮影関心領域に基づいて移動量算出手段9により最終撮影位置におけるFPD12の移動側端部の位置を算出し、この算出位置までFPD12の移動側端部を移動するようにしたため、先の実施の形態の場合と同様に、最終移動算出距離L3がFPD12における長尺撮影方向の検出領域距離L4より短い場合、FPD12の移動方向端部を最終移動算出距離L3だけ移動するればよいので、従来のようにFPD12を予め定めた第一の固定位置から予め定めた第二の固定位置まで常に移動させる場合に比べて、FPD12を素早く最終撮影位置まで移動して撮影時間を短縮することができる。
【0040】
また、各撮影における共通画像接続用重複撮影領域は、放射線源1からの放射線がほぼ垂線となるように被検体Mに照射されるように絞り装置2を調整し、隣接する撮影位置つまり第一回目の撮影位置と第二回目の撮影位置における被検体Mに対してほぼ垂線となった放射線位置がほぼ同じになるように放射線源1を駆動する撮影領域設定手段7および駆動手段5を設けたため、それぞれの撮影における共通画像接続用重複撮影領域の放射線分布密度が高く、またほぼ同条件となり、これらを用いた共通画像接続用重複撮影領域による接続精度が向上することになり、画像接続時のアーチファクトを低減することができる。
【0041】
図1から図5を用いて説明した実施の形態では、一回目の撮影位置での撮影に際して、FPD12の長尺方向の検出領域全体に放射線を照射するように絞り装置2を調整したが、図3に示した第一回目の撮影位置で絞り装置2の下側絞りを放射線が被検体Mに対してほぼ垂線となるように制限し、また図4に示した第二回目の撮影位置では、共通画像接続用重複撮影領域を考慮しながらも絞り装置2の上側絞りを放射線が被検体Mに対してほぼ垂線となるように制限するなら、図6から図9に示した実施の形態の場合と同様に二回の撮影における共通画像接続用重複撮影領域となる領域は、放射線源1からの放射線がほぼ垂線となるように被検体Mに照射することになるため、それぞれの撮影における同部の放射線分布密度が高く、これらを用いた共通画像接続用重複撮影領域による接続精度が向上することになり、画像接続時のアーチファクトを低減させることができる。
【0042】
図10は、本発明のさらに他の実施の形態による放射線撮影装置の要部を示す側面図である。
この放射線撮影装置は、特開2004−242928号公報に記載されたように昭放射線源1に首振り機構18を追加しており、入力手段6または撮影領域設定手段7からの指示によって撮影制御部4はこの首振り機構18を利用して放射線源1の焦点1aを中心にして被検体Mの長尺方向に放射線照射領域を変化可能にしている。放射線源1の被検体M側に設けた絞り装置2は、その上側絞りおよび下側絞りを標準撮影角度αに設定したとき、FPD12の長尺方向における検出領域距離L0に対応するものとし、また上側絞りおよび下側絞りは撮影角度を変化させることができる構成としている。その他の構成は、図1と同様であるから同等物に同一符号を付けて詳細な説明は省略する。
【0043】
図11は、図10に示した放射線撮影装置による長尺撮影手順を示すフローチャートである。
放射線源1とFPD12が対向して配置された通常の撮影系の段階で、先ず、ステップS1で絞り装置2の照射ランプを点灯し、被検体Mの撮影関心領域全体に対応して光が照射されるように絞り装置2を調整する。この状態で、入力手段6からの指示、または撮影関心領域全体の長尺方向の距離がFPD12における長尺方向の検出領域距離L0より大きい場合に、撮影領域設定手段7が動作する。この撮影領域設定手段7は、ステップS2で予め入力されているFPD12における長尺方向の検出領域距離L0と、同様にFPD12が複数の移動位置を採るときに隣接する領域において重複するように予め設定した画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5と、ステップS1で設定された絞り装置2における各絞りの状態データと、放射線源1の放射線焦点とFPD12間の距離SlDとを撮影制御手段4から入手する。同時に撮影領域設定手段7は、入手した各情報を移動量算出手段9に送り、移動量算出手段9は撮影領域設定手段7から入手した各絞りの状態データとSlDとから全移動距離L1を算出し、また検出領域距離L0と画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5と全移動距離L1とから二回目以降の全ストロークの移動距離L2およびその回数Nと、最終移動算出距離L3を算出する。
【0044】
例えば、FPD12の長尺方向の検出領域距離L0=43cm、画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5=5cmとして予め入力されているとすると、絞り装置2における各絞りの状態データとSlDとを入力して演算したとき、FPD12の長尺方向の全移動距離L1=81cmの最大視野モードとして算出されたなら、先の実施の形態の場合と同じ算出の仕方により、移動量算出手段9は二回目以降の全ストロークの移動回数N=0で、第二回目の撮影位置が最終撮影位置となり最終移動算出距離L3=38cmを算出する。
【0045】
続くステップS3では、FPD12の上端部が関心領域の上方端に一致するように移動手段11によって移動し、FPD12を最初の撮影位置に配置させる。ステップS4aで撮影領域設定手段7は、撮影制御部4を通して絞り装置2を標準撮影角度αとなるように調整すると共に首振り機構18を調整して、図10に示すように放射線源1からの放射線がFPD12に対応する領域だけに照射されるようにする。その後、ステップS5で照射条件設定手段8は、入力手段6からの入力した条件と撮影領域設定手段7からの条件に基づいて撮影制御部4を通して高電圧発生部3を制御しながら放射線源1から放射線を照射して最初の撮影を行なう。このとき画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を取り込み、第一の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0046】
続くステップS6で画像領域設定手段7は、長尺撮影が終了したか否かを判定する。FPD12がまだ全移動距離L1を移動していないから、次のステップS7へ進む。ここで移動量算出手段9は、上述した条件では二回目以降の全ストロークの移動回数N=0であり、最終移動算出距離L3=38cmを算出しているため、ステップS7で図12に示すように算出した最終移動算出距離L3に基づいて移動量制御手段10を通して移動手段11を作動し、FPD12の下端部を38cmだけさらに下方側に移動して第二回目の最終撮影位置とする。ここでは最大視野モードの場合で最終移動算出距離L3=38cmであるため、従来の構成のように第二回目の撮影位置へのFPD12の移動距離が常に固定値に設定されていた場合と比べて差は生じないが、最終移動算出距離L3が小さくなるに従ってFPD12の移動方向端部を第二回目の最終撮影位置まで素早く移動することができるようになる。つまり、FPD12の長尺方向の検出領域距離L0=43cm、また画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5=5cmで、最終移動算出距離L3が38cmより小さい場合、従来の構成では第二回目の撮影位置へのFPD12の移動距離が常に固定値に設定されていた場合に比べて短く、FPD12の移動方向端部を第二回目の最終撮影位置まで素早く移動して、撮影時間の短縮に貢献することができる。
【0047】
ステップS8で撮影領域設定手段7は、移動量算出手段9で算出した最終移動算出距離L3の情報を取得し、撮影制御部4を通して首振り機構18の角度と絞り装置2の撮影角度を制御する。これらの調整によって、第二回目の最終撮影位置まで移動したFPD12の移動側端部までが放射線の照射範囲となるようにすると共に、第一回目の撮影位置での撮影領域の下側に位置した共通画像接続用重複撮影領域の長尺方向の距離L5を放射線照射範囲に含むが、それよりも上側の既に撮影した領域への放射線照射を制限する。このとき、従来の構成では第二回目の撮影位置へのFPD12の移動距離が常に固定値に設定されている場合、これに対応する位置まで首振り機構18は角度を大きく調整しなければならかったが、上述の構成では、移動量算出手段9によって算出したFPD12の第二回目の最終撮影位置に対応するまで移動するだけであるから、最終移動算出距離L3が38cmより小さい場合、その位置までFPD12を素早く移動して、さらに撮影時間を短縮することができる。
【0048】
ステップS9で入力手段6は、予め照射条件設定手段8に入力した条件と撮影領域設定手段7からの条件に基づいて撮影制御部4を通して高電圧発生部3を制御しながら、図4に示すように放射線源1から放射線を照射して二回目の最終撮影を行なう。このとき画像データ収集処理手段13は、FPD12の検出信号を取り込み、第二の画像データとして画像メモリ17に記憶する。
【0049】
その後、撮影領域設定手段7は、先の実施の形態の場合と同様にステップS6でFPD12の移動距離が既に全移動距離L1に達しているため、長尺撮影が終了したと判定してステップS10に進む。このステップS10で長尺画像合成手段14は、画像メモリ17に記憶した各画像データを取り出し、隣接する画像データつまり、第一の画像データと第二の画像データから同一の共通画像接続用重複撮影領域を検出し、同部を利用して繋ぎ合わせて1つの合成画像データを生成し、ステップS11でこの合成画像データを画像メモリ17に記憶する。その後、必要に応じてステップS12で表示制御手段15は、画像メモリ17から取り出した合成画像データに基づいて表示装置13に合成画像を表示したりプリントしたりして出力する。
【0050】
この実施の形態でも、一回目の撮影位置での撮影に際しては、FPD12の長尺方向の検出領域全体に放射線を照射するようにしたが、上側絞りと下側絞りをそれぞれ独立して調整できるように構成し、図10に示した第一回目の撮影位置で絞り装置2の下側絞りによる放射線照射角度と、図12に示した第二回目の撮影位置で、共通画像接続用重複撮影領域を考慮しながらも絞り装置2の上側絞りによる放射線照射角度とがほぼ一致するようにするなら、図6から図9に示した実施の形態の場合と同様に第一回目と第二回の撮影における共通画像接続用重複撮影領域における接続精度が向上することになり、画像接続時のアーチファクトを低減させることができる。
【0051】
このような放射線撮影装置でも、従来のようにFPD12を予め定めた第一の固定位置からFPD12の長尺撮影方向における大きさに基づいて機械的に予め定めた第二の固定位置に移動させるのではなく、対象となる被検体Mの撮影関心領域に基づいて移動量算出手段9により最終撮影位置におけるFPD12の位置を算出し、この算出位置までFPD12を移動するようにしたため、FPD12を素早く最終撮影位置まで移動することができ、撮影時間を従来に比べて短縮することができる。また、最終撮影位置のFPD12に対応させるための首振り機構18の移動角度も小さくなり、首振り機構18の調整に要する時間を短縮して撮影時間を一層短縮することができる。特に、最終撮影位置へ移動させる際、その最終移動算出距離L3がFPD12における長尺撮影方向の有効検出領域距離L4より短い場合、FPD12の移動方向端部を移動算出距離L3だけ移動するればよいので、従来のようにFPD12を予め定めた第一の固定位置から予め定めた第二の固定位置まで常に移動させる場合に比べて、FPD12を素早く最終撮影位置まで移動することができ、撮影時間を常に短縮することができる。
【0052】
また先の実施の形態の場合と同様に、FPD12に対応した領域の全体に放射線を常に照射するのではなく、共通画像接続用重複撮影領域は除くもののそれ以外の先に撮影した領域と、またFPD12の移動側端部が移動していない側の領域への放射線の照射を制限するように絞り装置2で調整するようにしているため、従来よりも不必要な放射線照射を少なくすることができる。さらに、共通画像接続用重複撮影領域を形成することによって、長尺撮影のために撮影を複数回に分割したとしても、各共通画像接続用重複撮影領域における撮影データの同一性から合成する位置を容易に判別して、容易に合成画像を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明による放射線撮影装置は、図示の構成に限らず、その他の構成の放射線撮影装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態による放射線撮影装置の概略ブロック構成図である。
【図2】図1に示した放射線撮影装置による長尺撮影の手順を示すフローチャートである。
【図3】図1に示した放射線撮影装置による第一回目撮影状態を示す要部拡大図である。
【図4】図1に示した放射線撮影装置による第二回目撮影状態を示す要部拡大図である。
【図5】図1に示した放射線撮影装置による他の長尺撮影時の第二回目撮影状態を示す要部拡大図である。
【図6】図1に示した放射線撮影装置によるさらに他の長尺撮影時の初期状態を示す要部拡大図である。
【図7】図1に示した放射線撮影装置によるさらに他の長尺撮影時の第一回目撮影状態を示す要部拡大図である。
【図8】図1に示した放射線撮影装置によるさらに他の長尺撮影時の第二回目撮影状態を示す要部拡大図である。
【図9】図1に示した放射線撮影装置によるさらに他の長尺撮影の手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の他の実施の形態による放射線撮影装置の概略ブロック構成図である。
【図11】図10に示した放射線撮影装置による長尺撮影時の手順を示すフローチャートである。
【図12】図10に示した放射線撮影装置の第二回目の撮影状態を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0055】
1 放射線源
2 絞り装置
7 撮影領域設定手段
9 移動量算出手段
11 移動手段
12 FPD
13 画像データ収集処理手段
14 長尺画像合成手段
18 首振り機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に放射線を照射する放射線源と、この放射線源に対向配置され前記被検体の透過放射線から画像データを検出するフラットパネル型放射線検出器と、このフラットパネル型放射線検出器を前記被検体の体軸方向に移動し、それらの各撮影位置で得られた各画像データを合成して長尺画像を得る長尺画像合成手段とを有する放射線撮影装置において、前記長尺画像合成手段は、前記被検体における撮影関心領域の長尺方向距離と、前記フラットパネル型放射線検出器における有効視野の長尺方向距離とから前記フラットパネル型放射線検出器の移動量を算出する移動量算出手段を設け、前記算出された移動量に基づいて前記フラットパネル型放射線検出器を各撮影位置に移動し、それらの各撮影位置で得られた各画像データを合成して長尺画像を得ることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記放射線源からの放射線照射領域を前記被検体の長尺方向に変更可能な首振り機構を前記放射線源に設け、前記移動量算出手段により算出した移動量に基づいて各撮影位置に移動した後の前記フラットパネル型放射線検出器に対応するように前記首振り機構を作動させる撮影領域設定手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項1】
被検体に放射線を照射する放射線源と、この放射線源に対向配置され前記被検体の透過放射線から画像データを検出するフラットパネル型放射線検出器と、このフラットパネル型放射線検出器を前記被検体の体軸方向に移動し、それらの各撮影位置で得られた各画像データを合成して長尺画像を得る長尺画像合成手段とを有する放射線撮影装置において、前記長尺画像合成手段は、前記被検体における撮影関心領域の長尺方向距離と、前記フラットパネル型放射線検出器における有効視野の長尺方向距離とから前記フラットパネル型放射線検出器の移動量を算出する移動量算出手段を設け、前記算出された移動量に基づいて前記フラットパネル型放射線検出器を各撮影位置に移動し、それらの各撮影位置で得られた各画像データを合成して長尺画像を得ることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記放射線源からの放射線照射領域を前記被検体の長尺方向に変更可能な首振り機構を前記放射線源に設け、前記移動量算出手段により算出した移動量に基づいて各撮影位置に移動した後の前記フラットパネル型放射線検出器に対応するように前記首振り機構を作動させる撮影領域設定手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−260027(P2007−260027A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87373(P2006−87373)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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