説明

放射線撮影装置

【課題】部分によって重ね合わせられる透視画像の枚数が異なる断層画像Dに表れる偽像を除去して、診断に好適な断層画像Dを取得することができるX線撮影装置1を提供する
【解決手段】実施例1の構成によれば、一連の透視画像Pを重ね合わせて重合画像Cを生成し、輝度補正部13が重合画像Cから重ね合わせられた透視画像Pの枚数である輝度補正係数Kを除算することで断層画像Dが取得される。そして、重合画像Cのうち、X線管3とFPD4とが移動する方向における被検体Mの端部が写りこんだ領域を周辺領域とし、その他の領域を中央領域としたとき、周辺領域における輝度補正係数Kは、中央領域における輝度補正係数Kよりも小さくなっている。これにより、断層画像Dの輝度は、部分に応じて最適な補正が行われ、断層画像Dの全域に亘って同様な輝度で被検体Mの断層像を写しこむのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の構成は放射線源と、FPDとを備えた放射線撮影装置に関し、特に、放射線源とFPDとが互いに反対方向に同期移動しながら一連の透視画像を撮影し、これを基に被検体の断層画像を取得する放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、被検体Mの断層画像を取得する放射線撮影装置51が配備されている。この様な放射線撮影装置51には、放射線を照射する放射線源53と、放射線を検出するFPD54とが同期的に移動しながら一連の透視画像を連写し、一連の透視画像を重ね合わせることで断層画像を取得する構成となっているものがある(図12参照)。この様な放射線撮影装置51においては、一連の透視画像の撮影中、放射線源53とFPD54とが被検体Mの体軸方向Aに沿って互いに近づくように移動し、放射線源53とFPD54との体軸方向Aにおける位置が一致した状態となったあと、放射線源53とFPD54とが体軸方向Aに沿って互いに遠ざかるように移動する。この様な放射線撮影装置は、例えば引用文献1に記載されている。
【0003】
放射線撮影装置51が上述のような断層画像を撮影する際の動作について説明する。まず、放射線源53は、移動しながら間歇的に放射線を照射する。つまり一度の照射が終了する毎に放射線源53は被検体Mの体軸方向に沿って移動し、再び放射線の照射を行う。こうして74枚の透視画像が取得され、これらが重ね合わせられる。完成した画像は、被検体をある裁断面で裁断したときの断層像が写りこんだ断層画像となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−263092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来構成には、次の様な問題がある。
すなわち、従来構成によれば、得られる断層画像の端部が暗くなってしまう。この問題について図12を参照しながら説明する。断層画像は、図12(a)において、X線管53,およびFPD54が実線の位置にあるときの初期状態から、X線管53,およびFPD54が破線の位置にあるときの終了状態まで移動しながら、74枚の透視画像を取得する。このX線管53,およびFPD54の移動方向は、被検体Mの体軸方向Aに沿っている。このとき、74枚の透視画像に常に写りこんでいるのは、5角形の領域Rに存していた被検体の部分に限られる。
【0006】
放射線撮影装置は、様々な高さで被検体を裁断したときの断層像を取得することができるようになっている。領域Rが体軸方向Aに最も幅広となっている基準裁断面S1における断層画像を取得する場合は、断層画像の全域が領域Rに収まっているので、74枚の透視画像を重ね合わせれば、診断に好適な断層画像が取得できる。
【0007】
しかし、領域Rの幅が体軸方向Aにより幅狭となっている裁断面S2における断層画像を取得する場合には、断層画像の一部が領域Rからはみ出してしまっている。裁断面S2は、領域Rに収まる中央領域CCと、領域Rからはみ出している周辺領域CSとに分けられる。
【0008】
中央領域CCは、74枚の透視画像が重ね合わせられて生成されるので、透視画像が重ねられる様子は基準裁断面S1における断層画像と同様である。しかし、周辺領域CSを生成する際には、重ね合わせられる透視画像は74枚よりも少なくなってしまう。周辺領域CSに存する被検体Mの部分は、常に74枚の透視画像に写りこんでいるとは限らないからである。とはいえ、周辺領域CSにおいて重ね合わせられる透視画像の枚数は、断層画像を生成するには十分な枚数となっている。簡単のため、周辺領域CSは、37枚の透視画像が重ね合わせられて生成されたものとする。
【0009】
断層画像を生成する際に、部分的に重ね合わせられる透視画像の枚数が異なると、次の様な不具合がある。すなわち、裁断面S2で得られる断層画像は、図13のように、周辺領域CSが暗くなってしまう。これは、従来の断層画像の生成方法に起因する輝度のムラである。従来の構成によれば、断層画像は放射線画像を重ね合わせて、取得された透視画像の枚数で除算する工程を経て生成される。この場合、重ねられた透視画像を74で除算することにより断層画像を生成している。この様に断層画像を生成すると、図13のような輝度のムラを発生させてしまう。
【0010】
輝度のムラの発生の原因について説明する。周辺領域CSは、37枚の透視画像が重ね合わせられて生成されたものであるので、本来は37で除算するべきである。しかし、実際は、74で除算されている。すると、周辺領域CSの輝度は、中央領域CCの輝度の半分の値となる。これが、周辺領域CSが中央領域CCと比べて暗くなる原因である。
【0011】
実際は、周辺領域CSで重ねられる透視画像の枚数は、37枚と固定ではなく、周辺領域CSの部分によって異なる。具体的には、周辺領域CSの部分のうち、中央領域CCから遠ざかるにしたがって、重ね合わせられる透視画像の枚数は、次第に少なくなっていく。したがって、断層画像に表れる周辺領域CSは、図13に示すように、中央領域CCから離れるにしたがって次第に暗くなっていく。
【0012】
本発明の構成は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、部分によって重ね合わせられる透視画像の枚数が異なることに起因して断層画像に表れる輝度のムラを除去して、診断に好適な断層画像を取得することができる放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の構成は上述の目的を達成するために次の様な構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、被検体に放射線を照射する放射線源と、被検体を載置する天板と、被検体に放射線を検出する放射線検出手段と、放射線源と放射線検出手段を移動方向に沿って同期的かつ互いに反対方向に移動させる移動手段と、放射線検出手段が出力する検出信号を基に透視画像を生成する画像生成手段と、放射線源と、放射線検出手段とが移動されながら連写された一連の透視画像を重ね合わせて重合画像を生成する重ね合わせ手段と、輝度補正係数を用いて重合画像に重畳する輝度のムラを正規化して被検体を任意の高さの水平面で裁断したときの断層像が写りこんだ断層画像を取得する輝度補正手段輝度補正手段とを備え、輝度補正手段は、重合画像の部分に応じて異なる輝度補正係数を用い、重合画像のうち、移動方向における被検体の端部が写りこんだ領域を周辺領域とし、重合画像のうち、移動方向における被検体の中央領域が写りこんだ領域を中央領域としたとき、周辺領域における輝度補正係数と、中央領域における輝度補正係数とが異なっていることを特徴とするものである。
【0014】
[作用・効果]本発明の構成によれば、一連の透視画像を重ね合わせて重合画像を生成し、これに輝度補正係数を作用させて断層画像を生成する構成となっている。重合画像は、透視画像が単純に重ね合わされたものであり、視認性が優れていない。そこで、重合画像の輝度補正を行うことにより、断層画像を生成するようになっているのである。具体的には、輝度補正手段が重合画像に輝度補正係数を作用させることにより、重合画像に重畳する輝度のムラを正規化することで断層画像が取得される。これにより断層画像の輝度は、透視画像の輝度の水準にまで揃えられるのである。
【0015】
しかしながら、重合画像の部分によって重ね合わされる透視画像の枚数が異なっている。したがって、重合画像の全域において同一の輝度補正係数を用いると、重合画像の部分によって正規化の作用が強すぎてしまう場合がある。この様な重合画像の周辺領域は、重ね合わされる透視画像の枚数が少ないのであり、正規化に用いる輝度補正係数としてより小さな値を選択すべきである。
【0016】
そこで、本発明の構成によれば、重合画像のうち、放射線源と放射線検出手段とが移動する方向である移動方向における被検体の端部が写りこんだ領域を周辺領域とし、重合画像のうち、移動方向における被検体の中央領域が写りこんだ領域を中央領域としたとき、周辺領域における輝度補正係数と、中央領域における輝度補正係数とが異なっている。重合画像の移動方向における周辺領域で重ね合わされる透視画像の枚数は、中央領域におけるそれよりも少なくなっている。本発明の構成によれば、この特性に合わせて、周辺領域に作用する輝度補正係数と、中央領域に作用するそれとを異なるようにすることができる。これにより、断層画像の輝度は、部分に応じて最適な補正が行われ、断層画像の全域に亘って同様な輝度で被検体の断層像を写しこむのである。
【0017】
また、上述の輝度補正手段は、前記周辺領域における輝度補正係数を前記中央領域から遠ざかるにつれて徐々に小さくしながら前記重合画像に対して前記輝度補正係数を除算すればより望ましい。
【0018】
[作用・効果]上述の構成によれば、輝度補正手段は更に精密な輝度の補正を行うことができる。重合画像に重ねられる透視画像の枚数(輝度補正係数)は、中央領域から移動方向における端部に向かうにしたがって次第に少なくなっている。上述の構成によれば、輝度補正手段は、周辺領域において、輝度補正係数を中央領域から遠ざかるにつれて徐々に小さくしながら重合画像に対する除算を行うのであるから、重合画像に重ねられる透視画像の枚数に合わせて除算が行われることになり、輝度補正手段は更に精密な輝度の補正を行うことができる。
【0019】
また、上述の輝度補正手段は、周辺領域における輝度補正係数を中央領域から遠ざかるにつれて徐々に大きくしながら重合画像に対して輝度補正係数を乗算すればより望ましい。
【0020】
[作用・効果]上述の構成によれば、輝度補正手段は更に精密な輝度の補正を行うことができる。重合画像に重ねられる透視画像の枚数(輝度補正係数)は、中央領域から移動方向における端部に向かうにしたがって次第に大きくなっている。上述の構成によれば、輝度補正手段は、周辺領域において、輝度補正係数を中央領域から遠ざかるにつれて徐々に大きくしながら重合画像に対する乗算を行うのであるから、重合画像に重ねられる透視画像の枚数に合わせて乗算が行われることになり、輝度補正手段は更に精密な輝度の補正を行うことができる。
【0021】
また、上述の重合画像のある部分に作用する輝度補正係数は、その部分に重ねられた透視画像の枚数となっていればより望ましい。
【0022】
[作用・効果]上述の構成によれば、より確実に輝度の補正を行うことができる。重合画像の全域に一律の輝度補正係数を作用させると、重合画像の一部において、除算の作用が強すぎてしまう。重合画像の全域が一連の透視画像の枚数だけ重ねられているものとして、重合画像の全域に輝度補正係数を一括に作用させたのであるから、透視画像が重ねられた枚数が少ないほど、除算の作用が予想外に強く現れる。上述の構成によれば、重合画像のある部分に作用する輝度補正係数は、その部分における透視画像が重ねられた枚数となっているので、重合画像の全域において、除算の作用の強さを一定とすることができる。
【0023】
また、上述の放射線源と、放射線検出手段との移動方向に沿った移動に同期して放射線源を傾斜させる放射線源傾斜手段と、輝度補正係数を取得する係数取得手段を更に備え、放射線源傾斜手段は、放射線源と、放射線検出手段との移動方向に沿った移動移動に同期して、放射線源が照射する放射線ビームの中心軸が、放射線検出手段の中心点を通過するように放射線源を傾斜させ、被検体の断層像が一連の透視画像の同一位置に写りこむ裁断位置を基準裁断位置としたとき、係数取得手段は、重合画像の周辺領域を重合画像の移動方向の中心である重合画像の中心までの距離に応じて分割し、分割された各区画に何枚の透視画像が重ね合わせられているのかを(A)放射線源から放射線検出手段までの鉛直方向の距離、(B)放射線源から裁断位置までの鉛直方向の距離、(C)被検体を裁断する裁断面から基準裁断面までの鉛直方向の距離、(D)各区画から重合画像の中心までの距離、(E)各々の透視画像を取得するときの放射線源の傾斜角度、および(F)放射線検出手段の有する放射線を検出する検出面の移動方向における幅から求めればより望ましい。
【0024】
[作用・効果]上述の構成は、輝度補正係数の具体的な取得方法を示すものである。係数取得手段は、重合画像を区画分けし、放射線源から放射線検出手段までの鉛直方向の距離、放射線源から基準裁断位置までの鉛直方向の距離、被検体を裁断する裁断面の高さ、各区画から重合画像の中心までの距離、放射線源の傾斜角度、および放射線検出手段の幅の6つのパラメータを用いて、各区画に用いる輝度補正係数を求める。いずれのパラメータも、撮影条件さえ決まれば容易に求めることができるものである。したがって、上述の構成によれば、簡単に輝度補正係数を求めることができる放射線撮影装置が提供できる。
【0025】
また、上述の放射線検出手段は、放射線を検出する放射線検出素子が所定のピッチで縦横に配列されているとともに、配列の縦方向は、移動方向に一致しており、係数取得手段は、放射線検出素子の縦方向のピッチを基に重合画像の周辺領域を複数の区画に分割して、区画毎に輝度補正係数を作用させればより望ましい。
【0026】
また、上述の係数取得手段は、重合画像の周辺領域に写り込む放射線検出素子1個分の幅毎に周辺領域を複数の区画に分割すればより望ましい。
【0027】
[作用・効果]上述の構成は、係数取得手段の重合画像の区画分けの具体的な構成を示すものである。放射線検出手段は、放射線を検出する放射線検出素子が所定のピッチで縦横に配列されている。重合画像の区画分けは、放射線検出素子1個分よりも細かくしても無意味である。そこで、上述の構成によれば、係数取得手段は、放射線検出素子の縦方向のピッチを基に重合画像の周辺領域を複数の区画に分割する構成となっており、より望ましくは、係数取得手段は、重合画像に写りこんだ放射線検出素子1個分の幅毎に周辺領域を複数の区画に分割するのである。この様にすれば、重合画像に写りこむ放射線検出素子(正確には、放射線検出素子が横方向に並んだ検出素子アレイ)毎に個別に輝度補正係数が生成されるので、補正に適した輝度補正係数を効率よく取得することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の構成によれば、一連の透視画像を重ね合わせて重合画像を生成し、輝度補正手段が重合画像から重ね合わせられた透視画像の枚数である輝度補正係数を除算することで断層画像が取得される。これにより断層画像の輝度は、透視画像の輝度の水準にまで揃えられるのである。しかしながら、重合画像の部分によって重ね合わされる透視画像の枚数が異なっている。本発明の構成によれば、重合画像のうち、放射線源と放射線検出手段とが移動する方向である移動方向における被検体の端部が写りこんだ領域を周辺領域とし、重合画像のうち、移動方向における被検体の中央領域が写りこんだ領域を中央領域としたとき、周辺領域における輝度補正係数は、中央領域における輝度補正係数よりも小さくなっている。これにより、断層画像の輝度は、部分に応じて最適な補正が行われ、断層画像の全域に亘って同様な輝度で被検体の断層像を写しこむのである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】本発明に係るFPDの構成を説明する模式図である。
【図3】本発明に係る輝度補正係数テーブルの構成を説明する模式図である。
【図4】本発明に係る断層画像の取得方法を説明する模式図である。
【図5】本発明に係るX線撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】本発明に係る輝度補正係数の取得方法を説明する模式図である。
【図7】本発明に係る輝度補正係数の取得方法を説明する模式図である。
【図8】本発明に係る輝度補正係数の取得方法を説明する模式図である。
【図9】本発明に係る輝度補正係数の取得方法を説明する模式図である。
【図10】本発明に係る輝度補正係数の取得方法を説明する模式図である。
【図11】本発明の1変形例を説明する模式図である。
【図12】従来のX線撮影装置の構成を説明する模式図である。
【図13】従来のX線撮影装置で取得される断層画像の模式図である。
【実施例1】
【0030】
次に、実施例1に係る放射線撮影装置の各実施例を図面を参照しながら説明する。なお、各実施例におけるX線は、実施例1の構成の放射線に相当する。
【0031】
図1は、実施例1に係る放射線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。図1に示すように、実施例1に係るX線撮影装置1は、X線断層撮影の対象である被検体Mを載置する天板2と、天板2の上部に設けられた被検体Mに対してコーン状のX線ビームを照射するX線管3と、天板2の下部に設けられ、被検体Mの透過X線像を検出するシート状のフラットパネル型X線検出器(以下、FPDと略記)4と、コーン状のX線ビームの中心軸とFPD4の中心点とが常に一致する状態でX線管3とFPD4との各々を被検体Mの関心部位を挟んで互いに反対方向に同期移動させる同期移動機構7と、これを制御する同期移動制御部8と、FPD4のX線を検出するX線検出面を覆うように設けられた散乱X線を吸収するX線グリッド5とを備えている。この様に、X線管3と天板2とFPD4とは、この順に鉛直方向に配列されている。X線撮影装置1は、本発明の放射線撮影装置に相当し、X線管3は、本発明の放射線源に相当する。また、FPD4は、本発明の放射線検出手段に相当する。
【0032】
X線管3は、X線管制御部6の制御にしたがってコーン状でパルス状のX線ビームを被検体Mに対して繰り返し照射する構成となっている。このX線管3には、X線ビームを角錐となっているコーン状にコリメートするコリメータが付属している。そして、このX線管3と、FPD4はX線透視画像を撮像する撮像系3,4を生成している。
【0033】
そして、さらに実施例1に係るX線撮影装置1は、各制御部6,8を統括的に制御する主制御部25と、X線断層画像を表示する表示部22とを備えている。この主制御部25は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部6,8,および後述の画像生成部11,重ね合わせ部12,輝度補正部13,係数取得部14を実現している。輝度補正部13は、本発明の輝度補正手段に相当し、重ね合わせ部12は、本発明の重ね合わせ手段に相当する。また、係数取得部14は、本発明の係数取得手段に相当し、画像生成部11は、本発明の画像生成手段に相当する。
【0034】
同期移動機構7は、X線管3とFPD4とを同期させて移動させる構成となっている。この同期移動機構7は、同期移動制御部8の制御にしたがって被検体Mの体軸方向Aに平行な直線軌道に沿ってX線管3を直進移動させる。しかも、検査中、X線管3の照射するコーン状のX線ビームは、常に被検体Mの関心部位に向かって照射されるようになっており、このX線照射角度は、X線管3の角度を変更することによって、たとえば初期角度−20°から最終角度20°まで変更される。この様なX線照射角度の変更は、X線管傾斜機構9が行う。同期移動制御部8は、同期移動機構7とX線管傾斜機構9とを同期的に制御する。体軸方向Aは、本発明の移動方向に相当し、X線管傾斜機構9は、本発明の放射線源傾斜手段に相当する。
【0035】
また、同期移動機構7は、上述のX線管3の直進移動に同期して、天板2の下部に設けられたFPD4を被検体Mの体軸方向Aに沿って直進移動させる。そして、その移動方向は、X線管3の移動方向と反対方向となっている。つまり、X線管3が移動することによって照射源位置と照射方向が変化するコーン状のX線ビームは、常にFPD4のX線検出面の全面で受光される構成となっている。このように、一度の検査において、FPD4は、X線管3と互いに反対方向に同期して移動しながら、たとえば74枚の透視画像Pを取得するようになっている。具体的には、撮像系3,4は、実線の位置を初期位置として、破線で示した位置を介して、図1に示した一点鎖線で示す位置まで対向移動する。すなわち、X線管3とFPD4の位置を変化させながら複数のX線透視画像が撮影されることになる。ところで、コーン状のX線ビーム19は常にFPD4のX線検出面の全面で受光されるので、撮影中コーン状のX線ビーム19の中心軸は、常にFPD4の中心点と一致している。また、撮影中、FPD4の中心は、直進移動するが、この移動はX線管3の移動の反対方向となっている。つまり、体軸方向Aに沿って、X線管3とFPD4とを同期的、かつ互いに反対方向に移動させる構成となっている。
【0036】
FPD4の構成について説明する。FDP4のX線を検出する検出面には、図2に示すように、X線を検出するX線検出素子4aが縦横に配列している。X線検出素子4aは、被検体の体軸方向Aに例えば1,024個、被検体の体側方向Sに例えば1,024個配列している。その配列ピッチは、体軸方向A,体側方向S共に、300μmとなっている。
【0037】
また、FPD4の後段には、そこから出力される検出信号を基にX線透視画像を生成する画像生成部11が備えられており(図1参照)、この画像生成部11の更に後段には、複数の画像を重ね合わせて重合画像Cを生成する重ね合わせ部12と、後述の輝度補正部13とを備えている。
【0038】
係数取得部14は、輝度補正部13が参照する輝度補正係数テーブルT1を生成する。輝度補正係数テーブルT1は、重合画像Cの部分に対応した輝度補正係数Kがマッピングされたものであり、輝度補正部13は、輝度補正係数テーブルT1に基づいて、重合画像Cの部分に応じて異なる輝度補正係数Kを重合画像Cに作用させる。
【0039】
輝度補正係数テーブルT1の構成について説明する。輝度補正係数テーブルT1は、図3に示すように、整数がシリアル番号の1番からn番まで順番に配列された表データとなっている。輝度補正係数テーブルT1の1番に対応する輝度補正係数Kは例えば37であり、それからシリアル番号が大きくなるにしたがって、輝度補正係数Kも大きくなる。そして、輝度補正係数Kは取得される透視画像Pの総数である74まで達する。その後、輝度補正係数テーブルT1のシリアル番号が大きくなってもしばらくは輝度補正係数Kの値に変化は無いが、最大のn番目に近づくにつれ、輝度補正係数Kは次第に小さくなり、n番目における輝度補正係数Kは、37となっている。輝度補正係数テーブルT1のうち、輝度補正係数Kが取得される透視画像Pの総数である74となっている領域を中央領域TCと呼び、それ以外の領域を周辺領域TSと呼ぶことにする。輝度補正係数テーブルT1の周辺領域TSは、重合画像Cの周辺領域CSに対応し、輝度補正係数テーブルT1の中央領域TCは、重合画像Cの中央領域CCに対応している。この輝度補正係数テーブルT1は、記憶部23に記憶されている。
【0040】
なお、輝度補正係数Kに透視画像Pの枚数を使用しなくてもよい。例えば、図3の補正係数Kを透視画像Pの枚数(74枚)で予め除算しておいてもよい。この場合、例えば、輝度補正係数テーブルT1の1番目の輝度補正係数Kは37/74となっている。この場合、重ね合わせ部12では、重合画像Cを生成する際に、重合画像Cの全域に対して予め74で除算する構成となっている。
【0041】
また、画像生成部11,重ね合わせ部12,輝度補正部13が生成する各画像は、記憶部23に記憶される。なお、記憶部23は、各部が動作するのに参照される設定値の一切(例えば、輝度補正係数テーブルT1,後述の配列ピッチp,qおよびSID,SOD)を記憶する。
【0042】
続いて、実施例1に係るX線撮影装置1の断層画像の取得原理について説明する。図4は、実施例1に係るX線撮影装置の断層画像の取得方法を説明する図である。例えば、天板2に平行な(鉛直方向に対して水平な)基準裁断面MAについて説明すると、図4に示すように、基準裁断面MAに位置する点P,Qが、常にFPD4のX線検出面の不動点p,qのそれぞれに投影されるように、X線管3によるコーン状のX線ビーム19の照射方向に合わせてFPD4をX線管3の反対方向に同期移動させながら一連の被検体画像が画像生成部11にて生成される。一連の被検体画像Pmには、被検体の投影像が位置を変えながら写り込んでいる。そして、この一連の被検体画像Pmを重ね合わせ部12にて重ね合わせれば、基準裁断面MAに位置する像(たとえば、不動点p,q)が集積され、X線断層画像としてイメージングされることになる。一方、基準裁断面MAに位置しない点Iは、FPD4における投影位置を変化させながら一連の被検体画像に点iとして写り込んでいる。この様な点iは、不動点p,qとは異なり、重ね合わせ部12でX線透視画像を重ね合わせる段階で像を結ばずにボケる。このように、一連の被検体画像Pmの重ね合わせを行うことにより、被検体Mの基準裁断面MAに位置する像のみが写り込んだX線断層画像が得られる。このように、X線透視画像を単純に重ね合わせると、基準裁断面MAにおけるX線断層画像が得られる。基準裁断面MAの鉛直方向の位置が本発明の基準裁断位置である。
【0043】
さらに、重ね合わせ部12の設定を変更することにより、基準裁断面MAに水平な任意の裁断位置においても、同様な断層画像を得ることができる。撮影中、FPD4において上記点iの投影位置は移動するが、投影前の点Iと基準裁断面MAとの離間距離が大きくなるにしたがって、この移動速度は増加する。これを利用して、取得された一連の被検体画像を所定のピッチで体軸方向Aにずらしながら、重ね合わせれば、基準裁断面MAに平行な裁断位置におけるX線断層画像が得られる。このような一連の被検体画像の重ね合わせは、重ね合わせ部12が行う。この様にして断層画像を取得する方法をフィルターバックプロジェクションと呼ぶ。
【0044】
<X線撮影装置の動作>
次に、実施例1に係るX線撮影装置の動作について説明する。実施例1に係るX線撮影装置を用いた被検体Mの断層画像の取得動作は、図5に示すように、輝度補正係数テーブルT1を取得するテーブル取得ステップS1と、被検体Mを写しこんだ74枚の透視画像Pを取得する透視画像取得ステップS2と、透視画像Pを重ね合わせる重ね合わせステップS3と、および重ね合わせられた画像の部分に応じて所定の除算を行う除算ステップS4の各ステップに従って実行される。これらの各ステップの詳細を図面を参照しながら順を追って説明する。
【0045】
<テーブル取得ステップS1>
まず、係数取得部14によって輝度補正係数テーブルT1が取得される。この係数取得部14は、図6のSID,SOD,FPD4の幅(実際には、FPD4の体軸方向Aにおける一端からFPD4の中心点までの距離Δ:図10参照)を記憶部23より読み出す。このSIDは、X線管3が発する放射線ビームの放射元となる焦点からFPD4の中心点までのZ方向(鉛直方向)の距離である。SODは、X線管3の焦点から基準裁断面MAとのZ方向の距離である。距離Δは、被検体体軸方向AにおけるFPD4の検出面の幅の半分である。
【0046】
また、図6の模式図における原点Oについて説明する。原点Oは、X線管3の焦点からFPD4の中心点を結ぶ線分と基準裁断面MAが交わる点である。
【0047】
基準裁断面MAにおける断層画像を取得する場合、輝度補正係数テーブルT1の輝度補正係数Kは、シリアル番号1〜nに亘って全て74となっている。74とは、取得される透視画像Pの総数である。したがって、この場合、輝度補正係数テーブルT1を計算により求める必要はない。そこで、本実施例については、基準裁断面MAよりも上に位置する裁断面MB(図6参照)における断層画像Dを生成する場合の動作について説明する。この場合、輝度補正係数テーブルT1は、取得される透視画像Pの総数である74以外の値を含むものとなっているので、新たに生成する必要がある。この裁断面MBにおける断層画像が生成される撮影視野の範囲は、基準裁断面MAと同一の大きさとなっている。図6においては、裁断面MBを太線で示した部分となっており、以降、単に撮影範囲と呼ぶことにする。
【0048】
次に、係数取得部14が求める分割ピッチqについて説明する。図7に示すように、裁断面MBが複数の点で構成される仮想的な2次元グリッドに覆われているとする。この仮想的な2次元グリッドがコーン状のX線ビーム19によってFPD4に投影されたとき、各点の各々がちょうどFPD4が有するX線検出素子4aの各々に重なるものとする。このときの裁断面MBの各点の配列ピッチが分割ピッチqである。
【0049】
係数取得部14は、FPD4のX線検出素子4aの体軸方向Aの配列ピッチpを記憶部23から読み出して、仮想的な2次元グリッドのA方向における分割ピッチqを求める。分割ピッチqは、図8に示すSOD,SID,配列ピッチp,および基準裁断面MAの位置から裁断面MBの位置までのZ方向における距離zとから幾何学的に求めることができる。
【0050】
係数取得部14は、撮影範囲を体軸方向Aに沿って分割ピッチq毎に分割し、分割された区画毎に、輝度補正係数Kを算出する。輝度補正係数Kは、これから取得される74枚の透視画像Pのうち、何枚の透視画像Pに区画が写り込むかを示したものであり、その値は、区画毎に異なる。その算出方法について説明する。まず図9に示すように、重合画像Cの中央領域CCを構成する区画の輝度補正係数Kは、計算するまでもなく74である。中央領域CCの内部の領域は、全ての透視画像Pに写りこんでいるからである。
【0051】
撮影範囲の周辺領域CSに存する区画は、取得された透視画像Pの一部にしか写りこんではいないので、輝度補正係数Kは、取得される透視画像Pの総数である74を下回る。周辺領域CSにおける輝度補正係数Kの算出方法について説明する。そこで、図10に示すように、周辺領域CSに属するある区画dに何枚の透視画像Pが重ねられるかを求めるものとする。区画dは、A方向に原点Oからyの距離だけ離れているもとする。すなわち、区画dの位置は、座標としては(y,z)で表せる。
【0052】
図10に示すように、X線管3の傾斜角度をθとする。より厳密には、θは、鉛直方向のZ軸と、X線ビーム19の中心軸とがなす角である。
【0053】
係数取得部14は、X線管3の傾斜角度θがどの範囲にあるときに区画dが透視画像Pに写りこむかを算出する。FPD4の中心点からFPD4の一端までの距離をΔとし、FPD4の検出面を延長した仮想平面に区画dが投影されたときの写像κと、FPD4の中心点までの距離をδとする(図10参照)。
【0054】
ここで、距離δ,傾斜角度θ,距離SID,距離SOD,距離y,および距離zとθとの関係を等式で示す。図10に示すκの位置は、X線管3の焦点pと区画dと、原点Oの各位置を用いた次の様なベクトル方程式で表すことができる。
【0055】
【数1】

【0056】
ところで、区画dの座標は(y,z)であり、焦点pの座標は、(SODtanθ,SOD)であるので、写像κの座標を(a,b)とすると、式(1)より次の様な関係が導き出せる。
(a,b)=t(y,z)+(1−t)(SODtanθ,SOD)……(2)
【0057】
式(2)をa,bの成分に分解すると次の様になる。
a=ty+(1−t)SODtanθ ……(3)
b=tz+(1−t)SOD ……(4)
【0058】
図10より、b=−(SID―SOD)であることが分かる。したがって、式(4)よりt=−SID/(z−SOD)である。このtを式(3)に代入すると、aは下の式で表せる。
【0059】
【数2】

【0060】
図10におけるFPD4の中心点Qの座標は、(―(SID―SOD)tanθ,−(SID−SOD))であるから、式(5)を用いて、κから中心点Qまでの距離δは、以下のように表せる。
【0061】
【数3】

【0062】
式(6)を解くと次の様になる。
δ=|(ztanθ−y)SID/(z−SOD)|……(7)
【0063】
Δ≧δとなれば、区画dの写像κはFPD4の検出面内に投影されることになり、区画dは、透視画像Pに写り込むことになる。δがΔ以上となっている場合において、θがとりうる範囲は、式(7)を基に次の様に表せる。
(y−|Δ・H|)/z≦tanθ≦(y+|Δ・H|)/z……(8)
ただし、H=(z−SOD)/SIDである。
【0064】
つまり、区画dは、X線管3の傾斜角度θがtan−1{(y−|Δ・H|)/z}以上、tan−1{(y+|Δ・H|)/z}以下のとき透視画像Pに写りこむ。この範囲は、区画dが透視画像Pに写り込むのに許容されるX線管3の傾斜角度の最大値・最小値を表している。なお、zは、一枚の断層画像を生成する際には、一定であるので、区画dが透視画像Pに写りこむのに許容されるX線管3の傾斜角度の取り得る範囲(許容範囲)は、区画dのy方向の位置だけで決定されることになる。したがって、区画d毎にこの許容範囲は異なっている。
【0065】
ある区画dについて許容範囲が断層画像の撮影におけるX線管3が傾斜される角度の変化する範囲(変化範囲)に等しいか、変化範囲よりも大きければ、その区画dは、取得される74枚の透視画像Pの全てに写りこむ。
【0066】
一方、先程の区画dとy方向に離れた別の区画dにおいて、許容範囲が変化範囲の全てを覆いきれないとすると、この区画dが写り込んでいない透視画像Pが撮影される場合でてくる。この区画dが透視画像Pに写り込むのに許容されるX線管3の傾斜角度を超えてX線管3が傾斜されて撮影が行われることがあるからである。
【0067】
係数取得部14は(8)式に基づいて、yを変化させながら、各区画d毎の許容範囲を割り出し、この許容範囲とX線管の傾斜角度の変化範囲とを比較する。X線管3の変化範囲と、ある区画dの許容範囲とが重複している範囲の傾斜角度でX線管3が傾斜されて撮影された透視画像Pには、その区画dが写り込んでおり、重複していない範囲の傾斜角度で撮影された透視画像Pには、その区画dが写り込んでいない。
【0068】
輝度補正係数Kの取得について説明する。係数取得部14は、記憶部23から変化範囲を読み出して、この変化範囲と区画範囲とが重複する重複範囲を求める。変化範囲における重複範囲の占める割合に透視画像Pの総数(74枚)を乗したものが輝度補正係数テーブルT1を構成する輝度補正係数Kである。係数取得部14は、重合画像Cの各区画d毎に輝度補正係数Kの取得を繰り返し、各区画d撮影範囲における各区画のA方向の位置を表すシリアル番号と輝度補正係数Kとを連関させることにより輝度補正係数テーブルT1を生成する。輝度補正係数テーブルT1は、記憶部23に記憶される。
【0069】
<透視画像取得ステップS2>
次に、天板2に被検体Mが載置される。そして術者が操作卓21を通じて、透視画像Pの取得の指示を行うと、同期移動制御部8は、X線管3,およびFPD4を所定の初期位置までに移動させる。このときの撮像系3,4は、図1の実線に示すような配置となっている。すなわち、初期位置におけるX線管3は、体軸方向A(天板2の長手方向)の前段に位置し、FPD4は、体軸方向Aの後段に位置している。このときX線管3は、初期角度−20度まで傾斜されている。
【0070】
X線管制御部6は、X線管3を制御し、X線管3は所定のパルス幅、管電圧、管電流でX線ビーム19をFPD4に向けて照射する。X線ビーム19は、天板2を透過した後、FPD4に入射する。画像生成部11は、FPD4が出力した検出信号をエアー画像(被検体を移しこんでいない画像)に組み立てる。
【0071】
以降、同期移動制御部8は、X線管3,およびFPD4を同期的かつ互いに反対方向に移動させる。X線管制御部6は、移動の最中にX線ビーム19を間歇的に照射し、画像生成部11は、その度ごとに透視画像Pを生成する。こうして、一連の透視画像Pが生成される。このとき、同期移動制御部8は、X線管3を体軸方向Aの後段側に移動させ、FPD4を体軸方向Aの前段側に移動させる。
【0072】
そして、同期移動制御部8は、X線管3,およびFPD4を所定の最終位置までに移動させる。このときの撮像系3,4は、図1の一点鎖線に示すような配置となっている。すなわち、最終位置におけるX線管3は、体軸方向A(天板2の長手方向)の後段に位置し、FPD4は、体軸方向Aの前段に位置している。このときX線管3は、最終角度20度まで傾斜されている。この状態で最後の透視画像Pが取得され、一連の透視画像Pの取得は終了となる。透視画像Pは、実施例1においては74枚取得される。
【0073】
<重ね合わせステップS3>
一連の透視画像Pは、重ね合わせ部12に送出される。重ね合わせ部12は、一連の透視画像Pを被検体Mの体軸方向にずらしながら重ね合わせ、裁断面MBにおける被検体Mの断層像が写りこんだ重合画像Cを生成する。重合画像Cは、単に重ね合わせられているだけであるので、これに輝度補正を施して、視認性を改善する必要がある。
【0074】
<除算ステップS4>
重合画像Cは輝度補正部13に送出される。輝度補正部13は、記憶部23に記憶されている輝度補正係数テーブルT1を読み出して、重合画像Cを被検体Mの体軸方向に沿ってn個の領域に分割し、被検体Mの体軸方向の端部が写りこんでいる1番目の領域の輝度データを輝度補正係数テーブルT1における1番目の輝度補正係数(具体的には、37)で除算する。以降、輝度補正部13は、輝度補正係数テーブルT1を参照しながら、重合画像Cの各領域の輝度データをこの領域に対応する輝度補正係数Kで除算して、断層画像Dを生成する。この様に、輝度補正部13は、重合画像Cに写りこむX線検出素子4aの1個分のピッチで重合画像Cを体軸方向Aに(正確には、重合画像Cに写りこんでいる被検体像の体軸方向に)沿って重合画像Cを分割し、分割された区画の各々に対して個別の輝度補正係数を作用させる構成となっている。輝度補正部13の動作は少なくとも重合画像Cの周辺領域CSについて行えば十分である。
【0075】
輝度補正部13の具体的な動作について説明する。重合画像Cの中央領域に相当する部分では、74枚の透視画像Pが重ねられており、この部分における輝度データは、74枚の透視画像Pの輝度データが足し合わされたものとなっている。一方、重合画像Cの被検体Mの体軸方向の端部に相当する周辺部では、37枚の透視画像Pが重ねられており、37枚の透視画像Pの輝度データしか足し合わされていない。したがって、重合画像Cの周辺部の輝度データは、中央領域の輝度データよりも小さな値となる。もし仮に、重合画像Cの輝度補正を行おうとして、重合画像Cの全域を74で除算してしまうと、周辺部では、重ねられた透視画像Pの枚数以上の数で除算が行われることになり、中央領域と比べて輝度が暗くなる。しかし、実施例1の構成によれば、輝度補正部13は、重合画像Cの部分に応じて輝度補正係数Kを変更しながら、重ね合わせられた透視画像Pの枚数が部分的に異なる重合画像Cの輝度補正を行う。具体的には、重合画像Cのある部分における輝度補正係数Kは、その部分のに重ね合わせられている透視画像Pの枚数と等しくなっている。これにより、断層画像Dには図13で説明した輝度のムラが写りこむことが無い。なお、輝度補正係数テーブルT1は、裁断位置を再設定する度に、求めなおす必要がある。各裁断位置に対応したテーブルを記憶部23に記憶させ、輝度補正部13に補正に好適なテーブルを選択させるように構成しても良い。
【0076】
この断層画像Dが表示部22に表示されてX線撮影装置1の動作は終了となる。
【0077】
以上のように、実施例1の構成によれば、一連の透視画像Pを重ね合わせて重合画像Cを生成し、これに輝度補正係数Kを作用させて断層画像Dを生成する構成となっている。重合画像Cは、透視画像Pが単純に重ね合わされたものであり、視認性が優れていない。そこで、重合画像Cの輝度補正を行うことにより、断層画像Dを生成するようになっているのである。具体的には、輝度補正部13が重合画像Cから重ね合わせられた透視画像Pの枚数である輝度補正係数Kを除算することで断層画像Dが取得される。これにより断層画像Dの輝度は、透視画像Pの輝度の水準にまで揃えられるのである。
【0078】
しかしながら、重合画像Cの部分によって重ね合わされる透視画像Pの枚数が異なっている。したがって、重合画像Cの全域において同一の輝度補正係数Kを用いると、重合画像Cの部分によって除算の作用が強すぎてしまう場合がある。この様な重合画像Cの部分は、重ね合わされる透視画像Pの枚数が少ないのであり、除算に用いる輝度補正係数Kとしてより小さな値を選択すべきである。
【0079】
そこで、実施例1の構成によれば、重合画像Cの周辺領域CSにおける輝度補正係数Kは、重合画像Cの中央領域CCにおける輝度補正係数Kよりも小さくなっている。実施例1の構成は、重合画像Cの体軸方向Aにおける周辺領域CSで重ね合わされる透視画像Pの枚数は、中央領域CCにおけるそれよりも少なくなっていることに注目して、輝度補正係数Kを設定する。具体的には、周辺領域CSにおける輝度補正係数Kは、中央領域CCにおけるそれよりも小さくなっている。つまり、重合画像Cの周辺領域CSに作用する輝度補正係数Kは、輝度補正係数テーブルT1の周辺領域CSに属するものであり、その値は37から73までの整数である。そして、重合画像Cの中央領域CCに作用する輝度補正係数Kは、輝度補正係数テーブルT1の中央領域CCに属するものであり、その値は74である。この様にしたことで、断層画像Dの輝度は、部分に応じて最適な補正が行われ、断層画像Dの全域に亘って同様な輝度で被検体Mの断層像を写しこむのである。
【0080】
実施例1の構成によれば、輝度補正部13は、精密な輝度の補正を行うことができる。重合画像Cに重ねられる透視画像Pの枚数は、中央領域CCから体軸方向Aにおける端部に向かうにしたがって次第に少なくなっている。そこで、実施例1の構成は、輝度補正部13は、周辺領域CSにおいて、輝度補正係数Kを中央領域CCから遠ざかるにつれて徐々に小さくしながら重合画像Cに対する除算を行うのである。これにより、輝度補正部13は更に精密な輝度の補正を行うことができる。
【0081】
また、実施例1の構成によれば、より確実に輝度の補正を行うことができる。もし仮に、重合画像Cの全域に一律の輝度補正係数Kを作用させると、重合画像Cの一部では、除算の作用が強くなりすぎてしまう。重合画像Cの全域が一連の透視画像Pの枚数だけ重ねられているものとして、重合画像Cの全域に一律の輝度補正係数Kを作用させてしまったのであるから、透視画像Pが重ねられた枚数が少ないほど、除算の作用が予想外に強く現れる。実施例1の構成によれば、重合画像Cのある部分に作用する輝度補正係数Kは、その部分における透視画像Pが重ねられた枚数となっているので、重合画像Cの全域において、除算の作用の強さを一定とすることができる。
【0082】
輝度補正係数Kの具体的な取得方法は以下のようなものである。すなわち、係数取得部14は、重合画像Cを区画分けし、距離y,傾斜角度θ,距離SID,距離SOD,距離z,および幅Δの6つのパラメータを用いて、各区画に用いる輝度補正係数Kを求める。いずれのパラメータも、撮影条件さえ決まれば容易に求めることができるものである。したがって、実施例1の構成によれば、簡単に輝度補正係数Kを求めることができるX線撮影装置1が提供できる。
【0083】
係数取得部14の重合画像Cの区画分けは、FPD4のX線検出素子4aを基準に行われる。重合画像Cの区画分けは、X線検出素子4aの1個分よりも細かくしても無意味だからである。実施例1の構成によれば、係数取得部14は、X線検出素子4aの縦方向のピッチを基に重合画像Cの周辺領域CSを複数の区画に分割する構成となっており、より望ましくは、係数取得部14は、重合画像Cに写りこんだX線検出素子4aの1個分の幅毎に周辺領域CSを複数の区画に分割するのである。この様にすれば、重合画像Cに写りこむX線検出素子4a(正確には、X線検出素子4aが体側方向Sに並んだ検出素子アレイ)毎に個別の輝度補正係数Kが生成されるので、補正に適した輝度補正係数Kを効率よく取得することができる。
【0084】
本発明は、上述の実施例の構成に限られず、次の様な変形実施が可能である。
【0085】
(1)上述した実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0086】
(2)上述した実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適応できる。
【0087】
(3)上述した実施例の輝度補正部13は、除算処理を行っていたが、本発明はこれに限らない。除算処理に代えて、乗算処理としてもよい。この場合の輝度補正係数は、実施例1の輝度補正係数の逆数となる。この場合の輝度補正係数テーブルT1の構成について説明する。輝度補正係数テーブルT1は、図11に示すように、整数がシリアル番号の1番からn番まで順番に配列された表データとなっている。輝度補正係数テーブルT1の1番に対応する輝度補正係数Kは例えば1/37であり、それからシリアル番号が大きくなるにしたがって、輝度補正係数Kは小さくなる。そして、輝度補正係数Kは取得される透視画像Pの総数の逆数である1/74まで達する。その後、輝度補正係数テーブルT1のシリアル番号が大きくなってもしばらくは輝度補正係数Kの値に変化は無いが、最大のn番目に近づくにつれ、輝度補正係数Kは次第に大きくなりなり、n番目における輝度補正係数Kは、1/37となっている。この輝度補正係数テーブルT1は、記憶部23に記憶されている。
【0088】
また、輝度補正部13は、除算処理・乗算処理以外の重合画像Cの部分によって異なる輝度のムラを打ち消すような演算を採用することもできる。
【符号の説明】
【0089】
A 体軸方向(移動方向)
C 重合画像
D 断層画像
CS 周辺領域
CC 中央領域
K 輝度補正係数
1 X線撮影装置(放射線撮影装置)
2 天板
3 X線管(放射線源)
4 FPD(放射線検出手段)
4a X線検出素子(放射線検出素子)
9 X線管傾斜機構(放射線源傾斜手段)
11 画像生成部(画像生成手段)
12 重ね合わせ部(重ね合わせ手段)
13 輝度補正部(輝度補正手段)
14 係数取得部(係数取得手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に放射線を照射する放射線源と、
前記被検体を載置する天板と、
前記被検体に放射線を検出する放射線検出手段と、
前記放射線源と前記放射線検出手段を移動方向に沿って同期的かつ互いに反対方向に移動させる移動手段と、
前記放射線検出手段が出力する検出信号を基に透視画像を生成する画像生成手段と、
前記放射線源と、前記放射線検出手段とが移動されながら連写された一連の透視画像を重ね合わせて重合画像を生成する重ね合わせ手段と、
輝度補正係数を用いて前記重合画像に重畳する輝度のムラを正規化して前記被検体を任意の高さの水平面で裁断したときの断層像が写りこんだ断層画像を取得する輝度補正手段輝度補正手段とを備え、
前記輝度補正手段は、前記重合画像の部分に応じて異なる輝度補正係数を用い、
前記重合画像のうち、前記移動方向における前記被検体の端部が写りこんだ領域を周辺領域とし、前記重合画像のうち、前記移動方向における前記被検体の中央領域が写りこんだ領域を中央領域としたとき、
前記周辺領域における輝度補正係数と、前記中央領域における輝度補正係数とが異なっていることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記輝度補正手段は、前記周辺領域における輝度補正係数を前記中央領域から遠ざかるにつれて徐々に小さくしながら前記重合画像に対して前記輝度補正係数を除算することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記輝度補正手段は、前記周辺領域における輝度補正係数を前記中央領域から遠ざかるにつれて徐々に大きくしながら前記重合画像に対して前記輝度補正係数を乗算することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記重合画像のある部分に作用する前記輝度補正係数は、その部分に重ねられた前記透視画像の枚数となっていることを特徴とする放射線断層撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記放射線源と、前記放射線検出手段との前記移動方向に沿った移動に同期して前記放射線源を傾斜させる放射線源傾斜手段と、
前記輝度補正係数を取得する係数取得手段を更に備え、
前記放射線源傾斜手段は、前記放射線源と、前記放射線検出手段との前記移動方向に沿った移動移動に同期して、前記放射線源が照射する放射線ビームの中心軸が、前記放射線検出手段の中心点を通過するように前記放射線源を傾斜させ、
被検体の断層像が一連の透視画像の同一位置に写りこむ裁断位置を基準裁断位置としたとき、
前記係数取得手段は、前記重合画像の前記周辺領域を前記重合画像の移動方向の中心である重合画像の中心までの距離に応じて分割し、分割された各区画に何枚の透視画像が重ね合わせられているのかを
(A)放射線源から放射線検出手段までの鉛直方向の距離、
(B)放射線源から裁断位置までの鉛直方向の距離、
(C)被検体を裁断する裁断面から基準裁断面までの鉛直方向の距離、
(D)各区画から重合画像の中心までの距離、
(E)各々の透視画像を取得するときの放射線源の傾斜角度、および
(F)放射線検出手段の有する放射線を検出する検出面の移動方向における幅から求めることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項5に記載の放射線撮影装置において、
前記放射線検出手段は、放射線を検出する放射線検出素子が所定のピッチで縦横に配列されているとともに、配列の縦方向は、前記移動方向に一致しており、
前記係数取得手段は、前記放射線検出素子の縦方向のピッチを基に前記重合画像の前記周辺領域を複数の区画に分割して、区画毎に輝度補正係数を作用させることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項6に記載の放射線撮影装置において、
前記係数取得手段は、前記重合画像の前記周辺領域に写り込む前記放射線検出素子1個分の幅毎に前記周辺領域を複数の区画に分割することを特徴とする放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−36407(P2011−36407A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186437(P2009−186437)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】