説明

放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、放射線画像撮影プログラム、及び放射線画像撮影方法

【課題】放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置から正規ではない誤った放射線画像が出力されるのを防止することができる、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、放射線画像撮影プログラム、及び放射線画像撮影方法を提供する。
【解決手段】オフセット画像データを取得する際に、放射線発生装置16から照射された放射線により曝射された放射線量を検知して、検知した放射線量が閾値未満である場合、及び検知した放射線量が閾値以上であっても、閾値に到達するまでの到達時間が所定時間を超える場合は、撮影された放射線画像が正規の画像ではないと判断して当該放射線画像を制御装置12に出力しないよう無線通信部40を制御する。検知した放射線量が閾値以上であり、かつ、到達時間が所定時間以下である場合は、撮影された放射線画像が正規の画像であると判断して当該放射線画像を制御装置12に出力するよう無線通信部40に指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、放射線画像撮影プログラム、及び放射線画像撮影方法に係り、特に放射線発生装置の放射線照射動作と同期をとることなく放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、放射線画像撮影プログラム、及び放射線画像撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療診断を目的とした放射線撮影を行う放射線画像撮影システムが知られている。当該放射線画像撮影システムとしては、放射線を発生する放射線発生装置と、被検体を透過した放射線を検出して放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置として、いわゆるカセッテ等の放射線検出器と、当該放射線発生装置及び当該放射線検出器を制御する制御装置と、を備えた放射線画像撮影システムがある。
【0003】
このような放射線検出器において、撮影された放射線画像の画像解析を行って、被写体像が適正に検出されているかを判定して判定結果を外部装置に出力することにより、撮影の良否をユーザに知らせる技術がある(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−122115号公報
【特許文献2】特開2006−42967号公報
【特許文献3】特開2006−81735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、制御装置からの指示を受けずに、放射線発生装置が放射線を照射する照射動作と同期をとることなく、放射線画像を撮影する放射線検出器を備えた放射線画像撮影システムがある。このような放射線画像撮影システムでは、放射線画像の撮影を行わなくてよいにも係わらず、放射線を検出し、放射線画像を撮影して制御装置等に出力してしまう場合がある。
【0006】
例えば、立位の撮影用の放射線検出器や、臥位の撮影用の放射線検出器等、複数の放射線検出器を備えた放射線画像撮影システムでは、制御装置や放射線発生装置と接続することなく、放射線検出器側で放射線の照射を検出して、撮影動作を行うため、放射線画像を撮影すべき放射線検出器だけではなく、放射線が照射されたことにより放射線画像を撮影しなくてもよい放射線検出器も撮影動作を行い、誤った放射線画像を撮影してしまう(放射線を誤検出してしまう)場合がある。このような場合において、複数の放射線検出器の各々が撮影した放射線画像を順次、制御装置に出力すると、上述のような誤った放射線画像も制御装置に出力されてしまうという問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みて、放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置から正規ではない誤った放射線画像が出力されるのを防止することができる、放射線画像撮影装置、放射線画像撮影システム、放射線画像撮影プログラム、及び放射線画像撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の放射線画像撮影装置は、照射された放射線に応じた放射線画像の撮影を行う場合に、照射された放射線量を検知する検知手段と、前記検知手段で検知された前記放射線量に基づいて、前記放射線画像が正規の画像である否かを判断する判断手段と、を備える。
【0009】
判断手段は、検知手段で検知された放射線量に基づいて、放射線画像が正規の画像である否かを判断するため、正規ではない誤った放射線画像が出力されるのを防止することができる。
【0010】
放射線画像撮影装置では、正規の画像ではない放射線画像を撮影してしまう場合がある。例えば、別の放射線画像撮影装置に対して照射された放射線を検知して放射画像を撮影してしまう場合等が挙げられる。本発明では、放射線画像撮影装置において正規の画像であるか否かを判断するため、放射線画像撮影装置から正規ではない誤った放射線画像が出力されるのを防止することができる。正規ではない誤った放射線画像を出力した場合、誤った放射線画像を受信する側の処理速度が低下することがあるが、このように本発明では、誤った放射線画像が出力されるのを防止するため、処理速度の低下を抑制することができる。
【0011】
また、本発明は、請求項2に記載の放射線画像撮影装置のように、撮影された前記放射線画像を外部に出力する出力手段と、前記判断手段により前記放射線画像が正規の画像ではないと判断された場合は、前記放射線画像を外部に出力しないよう前記出力手段を制御する制御手段と、を備えるようしてもよい。
【0012】
判断手段により放射線画像が正規の画像ではないと判断された場合は、制御手段が当該放射線画像を外部に出力しないよう出力手段を制御することにより、誤った放射線画像が出力されるのを防止するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明は、請求項3に記載の放射線画像撮影装置のように、前記判断手段は、前記検知手段が検知した前記放射線量が予め定められた閾値を越えない場合に、前記放射線画像が正規の画像ではないと判断するようにすることができる。
【0014】
検知手段が検知した放射線量が予め定められた閾値を越えない場合、すなわち、検知した放射線量が少ない場合は、正規の画像ではないと判断するようにすることができる。
【0015】
また、本発明は、請求項4に記載の放射線画像撮影装置のように、前記判断手段は、前記検知手段が検知した前記放射線量が予め定められた閾値に達するまでの時間が予め定められた時間を超える場合は、前記放射線画像が正規の画像ではないと判断するようにすることができる。
【0016】
検知手段が検知した放射線量が予め定められた閾値を越えた場合であっても、当該閾値に達するまので時間が予め定められた時間を越える場合、すなわち、検知した単位時間当たりの放射線量が少ない場合は、正規の画像ではないと判断するようにすることができる。
【0017】
また、本発明は、請求項5に記載の放射線画像撮影装置のように、前記判断手段は、前記放射線画像を補正するための補正画像を取得する際に前記検知手段が検知した前記放射線量に基づいて、前記放射線画像が正規の画像であるか否かを判断するようにすることができる。
【0018】
また、請求項6に記載の放射線画像撮影システム10は、放射線画像の撮影に関する設定を指示する制御装置と、前記制御装置からの指示に基づいて、放射線を照射する放射線照射装置と、前記放射線照射装置による前記放射線の照射動作と同期をとることなく、前記放射線照射装置から照射された放射線に応じた放射線画像を撮影し、撮影した放射線画像を前記制御装置に出力する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置と、を備える。
【0019】
また、本発明は、請求項7に記載の放射線画像撮影システムのように、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置を複数備えるようにしてもよい。
【0020】
また、請求項8に記載の放射線画像撮影プログラムは、照射された放射線に応じた放射線画像の撮影を行う場合に照射された放射線量を検知する検知手段により検知された前記放射線量に基づいて、前記放射線画像の適否を判断する判断ステップを備えた処理をコンピュータに実行させるためのものである。
【0021】
また、請求項9に記載の放射線画像撮影方法は、照射された放射線に応じた放射線画像の撮影を行う場合に、照射された放射線量を検知する検知工程と、前記検知工程で検知された前記放射線量に基づいて、前記放射線画像の適否を判断する判断工程と、を備える。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置から正規ではない誤った放射線画像が出力されるのを防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態に係る放射線画像撮影システムの構成の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示した本実施の形態に係る放射線画像撮影システムの概略構成の一例を示す概略構成図である。
【図3】本実施の形態に係る放射線検出器の概略構成の一例を示す機能ブロック図である。
【図4】本実施の形態に係る放射線検出器のTFT部の構成の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】本実施の形態に係る放射線検出器のTFT部の構成のその他の一例を模式的に示す断面図である。
【図6】本実施の形態に係る放射線検出器において実行される誤画像出力抑制処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、各図面を参照して本発明の実施の形態の一例について説明する。図1及び図2に本実施の形態の放射線画像撮影システムの概略構成を示す。放射線画像撮影システム10は、放射線(例えばエックス線(X線)等)を被検体19に照射する放射線発生装置と、放射線発生装置16から照射され、被検体19を透過した放射線を検出する放射線検出器14と、放射線画像の撮影を指示すると共に、放射線検出器14から画像情報を取得して各種の処理を行う制御装置(コンソール)12と、を備えて構成されている。放射線発生装置16から照射され撮影位置に位置している被検体19を透過することで画像情報を担持した放射線は放射線検出器14に照射される。
【0025】
なお、本実施の形態の放射線画像撮影システム10は、図2に示すように複数(図2ではn個)の放射線検出器14(14〜14)を備えている。なお、以下の説明において個々を区別する場合は、数字の後に個々を区別するための符号(1〜n)を付して説明し、個々を区別せずに総称する場合は、符号(1〜n)の記載を省略する。
【0026】
制御装置12は、放射線検出器14と無線により接続されており、通信I/F26を介して無線によるコマンド・データ伝送により放射線検出器14に対して各種制御を実行する機能を有している。また、制御装置12は、放射線発生装置16と無線により接続されており、放射線(例えばエックス線(X線)等)を発生するタイミングを制御する機能を有している。制御装置12は、CPU(Central Processing Unit)20、メモリ22、処理部24、表示部25及び通信I/F26を備えて構成されており、CPU20、メモリ22、処理部24、表示部25及び通信I/F26は、CPUバス等のバス28により、互いに信号の授受が可能に接続されている。CPU20は、メモリ22に予め記憶されている各種プログラムを実行することにより、制御装置12全体の動作を制御する機能を有するものである。処理部24は、放射線検出器14から画像データを取得して各種の処理を行う機能を有するものである。また、表示部25は、放射線検出器14から通信I/F26を介して受信した放射線画像等を表示する機能を有するものである。
【0027】
放射線発生装置16は、放射線源17及び通信I/F18を備えて構成されている。放射線発生装置16は、通信I/F18を介して制御装置12と無線により接続されており、制御装置12の制御に基づいたタイミングで、放射線源17から放射線を被験体19に照射する。
【0028】
本実施の形態の放射線画像撮影システム10では、上述のように複数の放射線検出器14を備えて構成されている。このように複数の放射線検出器14を備えた放射線画像撮影システム10としては、例えば、立位の撮影用や臥位の撮影用、被験体19の正面用、側面用と撮影用途に応じて複数備えられている場合や、いわゆる長尺撮影用に被験体19の身長方向に沿って複数備えられている場合等が挙げられるがこれに限らず、複数の放射線検出器14の各々種類等は特に限定されるものではない。
【0029】
図3に、本実施の形態の放射線検出器14の略構成の一例の機能ブロック図を示す。本実施の形態の放射線検出器14は、放射検出パネルユニットであり、FPD(Flat Panel Detector)等、いわゆるカセッテ等が挙げられる。
【0030】
放射線検出器14は、TFT(Thin Film Transistor、薄膜トランジスタ)部30、チャージアンプ・MUX(マルチプレクサ)32、A/Dコンバータ34、制御部36、ゲート駆動部38、無線通信部40、タイマー42、記憶部44、及び電源部48を備えて構成されている。
【0031】
TFT部30は、照射された放射線を検出する機能を有するものである。図4に、TFT部30の構成の一例を模式的に示した断面図を示す。図4に示すように、放射線検出器14は、絶縁性基板50にTFT等のスイッチ素子52が形成されたTFT基板54を含んで構成されている。
【0032】
スイッチ素子52は、各スイッチ素子52をオン、オフ、させるためのゲート線68に接続されている。当該TFT基板54上には、入射される放射線を光に変換するシンチレータ層56が形成されている。シンチレータ層56としては、例えば、CSI:Tl、Gos(GdS:Tb)蛍光体等を用いることができる。なお、シンチレータ層56は、これらの材料に限られるものではない。
【0033】
絶縁性基板50としては、例えば、ガラス基板、各種セラミック基板、樹脂基板等を用いることができるが、これらの材料に限られるものではない。
【0034】
シンチレータ層56とTFT基板54との間には、シンチレータ層56によって変換された光が入射されることにより電荷を発生する光導電層58が配置されている。当該光導電層58のシンチレータ層56側の表面には、光導電層58にバイアス電圧を印加するためのバイアス電極60が設けられている。
【0035】
また、TFT基板54には、光導電層58で発生した電荷を収集するための電荷収集電極62が設けられている。TFT基板54では、各電荷収集電極62で収集された電荷がスイッチ素子52によって読み出される。
【0036】
電荷収集電極62は、TFT基板54上に、マトリックス状(二次元状)に配置されており、これに対応してスイッチ素子TFTが絶縁性基板50上にマトリックス状に配置されている。また、TFT基板54には、TFT基板54上を平坦化するための平坦化層64が形成されている。また、TFT基板54とシンチレータ層56との間であって、平坦化層64上には、シンチレータ層56をTFT基板54に接着するための接着層66が形成されている。
【0037】
放射線検出器14は、シンチレータ層56が接着された表側から放射線が照射(表側が撮影面)されてもよいし、TFT基板54側(裏側)から放射線が照射(裏側が撮影面)されてもよい。放射線検出器14は、表側から放射線が照射された場合、シンチレータ層56の上面側(TFT基板54の反対側)でより強く発光し、裏側から放射線が照射された場合、TFT基板54を透過した放射線がシンチレータ層56に入射してシンチレータ層56のTFT基板54側がより強く発光する。各光導電層58には、シンチレータ層56で発生した光により電荷が発生する。このため、放射線検出器14は、表側から放射線が照射された場合の方が裏側から放射線が照射された場合よりも、放射線がTFT基板54を透過しないため、放射線に対する感度を高く設計することが可能であり、また、裏側から放射線が照射された場合の方が表側から放射線が照射された場合よりも、各光導電層58に対するシンチレータ層56の発光位置が近いため、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高い。
【0038】
なお、TFT部30の構造等は、これに限らず、放射線検出器14に照射された放射線に応じた電荷を蓄積し、出力する機能を有するものであれば限定されず、その他の構造であってもよい。TFT部30のその他の構造の一例を図5に示す。図5は、TFT部30の構成のその他の一例を模式的に示した断面図である。図5に示したTFT部30では、放射線を直接アモルファスセレン等を用いたセンサ部で電荷に変換して蓄積する直接変換方式の構造を示している。
【0039】
図5に示したTFT部30では、入射される放射線を変換する放射線変換層の一例として、入射される放射線を電荷に変換する光導電層59が、TFT基板54上に形成されている。光導電層59としては、アモルファスセレン(a−Se)、Bi12MO20(M:Ti、Si、Ge)、Bi12(M:Ti、Si、Ge)、Bi、BiMO(M:Nb、Ta、V)、BiWO、Bi2439、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、MNbO(M:Li、Na、K)、PbO、HgI、PbI、CdS、CdSe、CdTe、BiI、GaAs等のうち少なくとも1つを主成分とする化合物等が用いられるが、暗抵抗が高く、放射線照射に対して良好な光導電性を示し、真空蒸着法により低温で大面積成膜が可能な非晶質(アモルファス)材料が好ましい。
【0040】
光導電層59上には、光導電層59の表面側に形成され、光導電層59へバイアス電圧を印加するためのバイアス電極61が形成されている。
【0041】
直接変換方式のTFT部30では、間接変換方式のTFT部30(上述の図4参照)と同様に、光導電層59で発生した電荷を収集する電荷収集電極62がTFT基板54上に形成されている。
【0042】
また、直接変換方式のTFT部30におけるTFT基板54は、各電荷収集電極62で収集された電荷を蓄積する電荷蓄積容量63を備えている。この各電荷蓄積容量63に蓄積された電荷が、スイッチ素子52によって読み出される。
【0043】
TFT部30において読み出された電荷は電気信号として、チャージアンプ・MUX32に出力される。チャージアンプ32は、電気信号を増幅し、電気的情報としてのアナログ電圧に変換する機能を有するものであり、具体的例としては、オペアンプ及びコンデンサを用いた増幅回路及びサンプルホールド回路で構成されている。サンプルホールド回路に保持された電気信号はMUX32でパラレル−シリアル変換を行い、A/Dコンバータ34に出力するように構成されている。
【0044】
A/Dコンバータ34は、シリアル入力されたアナログ電圧を、より取り扱いが容易なデジタル信号に変換する機能を有するものである。A/Dコンバータ34によりデジタル信号に変換された放射線画像の2次元の画像データは、制御部36に出力される。本実施の形態では、A/Dコンバータ34には、画像メモリ(図示省略)が接続されており、伝送された画像データが画像メモリに順に記憶される。本実施の形態では、画像メモリは所定枚数分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリに順次記憶されるように構成されている。
【0045】
制御部36はマイクロコンピュータによって構成され、CPU36A、ROMおよびRAMを含むメモリ36B、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部36Cを含んで構成されており、メモリ36Bに記憶されている各種プログラムをCPU36Aで実行することにより放射線検出器16全体の動作を制御する機能を有するものである。また、本実施の形態では、制御部36は、曝射した放射線量に応じて撮影された放射線画像が正規の画像であるか否か判断し、正規の画像ではない(誤った画像である)場合は、制御装置12に当該放射線画像を出力しないよう無線通信部40を制御する機能を有するものである(詳細後述)。
【0046】
画像データは、無線通信部40にさらに伝送される。無線通信部40は、ライン毎の画像データを無線にてパケット伝送する機能を有するものである。このように本実施の形態の無線通信部40は、外部装置(ここでは制御装置12)と無線通信を行う機能を有するものであり、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。
【0047】
また、無線通信部40を介することにより、制御部36は、制御装置12等の放射線画像撮影全体を制御する外部装置と無線通信が可能とされており、制御装置12との間で各種情報の送受信が可能とされている。被験体19の放射線画像を撮影する際は、制御部36は、制御装置12から無線通信部40を介して受信される撮影条件(撮影メニュー)や被験体19の情報等の各種情報を記憶し、当該撮影メニューに基づいて電荷の読み出しを行う。
【0048】
タイマー42は、TFT部30の電荷蓄積時間や、放射線の曝射量が閾値を越えるまでの時間(詳細後述)等をカウントする機能を有するものである。
【0049】
このようにして本実施の形態の放射線検出器14では、照射された放射線に応じた放射線画像の撮影が行われる。なお、本実施の形態の放射線検出器14による放射線画像の撮影動作は、制御装置12から放射線画像の撮影指示を受けずに放射線発生装置16による放射線の照射と同期をとることなく実行される(詳細後述)。
【0050】
また、本実施の形態の放射線検出器14には、電源部48が備えられており、上述した各部等は、電源部48から供給された電力によって動作する。電源部48は、放射線検出器14の可搬性を損なわないように、バッテリー(充電可能な二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリーから各部等へ電力を供給する。なお、図3では、図が煩雑になるのを防ぐために、電源部48と各部等を接続する配線を省略して記載している。
【0051】
次に、本実施の形態の放射線検出器14における、曝射した放射線量に応じて撮影された放射線画像が正規の画像であるか否か判断し、正規の画像ではない(誤った画像である)場合は、当該放射線画像を出力しないよう無線通信部40を制御する処理(以下、誤画像出力抑制処理という)動作について図面を参照して詳細に説明する。図6は、放射線検出器14において実行される誤画像出力抑制処理の流れの一例を示すフローチャートである。誤画像出力抑制処理を行う際には、制御部36において、メモリ36Bの所定の領域に予め記憶されているプログラムがCPU36Aにより実行される。
【0052】
ステップ100では、放射線検出モード(放射線画像の撮影モード)に移行する。本実施の形態の放射線検出器14では、予め定められた検出開始条件を満たすと制御部36により、曝射された放射線を検出する放射線検出モードに移行される。このような予め定められた検出開始条件としては、撮影メニューが登録された場合や、電源部48により電源が投入された場合等が挙げられるが特に限定されるものではない。
【0053】
そして次のステップ102では、曝射された放射線量の検知を開始する。本実施の形態の放射線検出器14では、QL値(放射線画像情報の読取値)により曝射された放射線量を検知しているがこれに限らず、例えばTFT部30の電荷蓄積量により検知するように構成してもよい。
【0054】
次のステップ104では、オフセット画像取得処理を実行する。本実施の形態の放射線検出器14では、被験体19を撮影した放射線画像の画像データ(以下、被験体画像データという)には、暗電流等のノイズ(オフセット成分)が重畳しているため、これらを被験体画像データから除去するために、被験体19を撮影する前に、被験体画像データを補正するための画像データ(以下、オフセット画像データという)を取得するオフセット画像取得処理を実行する。オフセット画像取得処理は、この時点でTFT部30において蓄積されている電荷を排出するリセット動作を行った後、所定の期間(例えば、制御装置12から指示された電荷蓄積期間)で撮影を行ってオフセット画像データを取得する。オフセット画像取得処理により取得されたオフセット画像データは、制御装置12に出力すると共に、記憶部44に記憶される。
【0055】
次のステップ106では、オフセット画像取得処理の際に検知した放射線量が予め定められた閾値以上であるか否かを判断する。なお、放射線量は、予め定められた単位画素が検知した放射線量でもよいし、複数の画素が検知した放射線量、または当該放射線量の平均値であってもよい。
【0056】
本実施の形態の放射線画像撮影システム10では、正規の放射線画像を撮影する際に放射線検出器14が検知した放射線量、特に本実施の形態では、オフセット画像取得処理の際に検知する(曝射される)放射線量の範囲が予め得られている。従って、検知した放射線量が当該放射線量の範囲内にない場合は、正規の放射線画像が撮影されない場合を示している。本実施の形態では、当該放射線量の範囲の下限値を閾値として予め定めておき、検知した放射線量が当該閾値未満である場合、正規の放射線画像を撮影していない(誤検出)と判断するようにしている。なお、閾値の設定はこれに限らず、例えば、上述の放射線量の範囲の上限値及び下限値の両方を閾値として設定してもよい。検知した放射線量が閾値未満である場合は、否定されてステップ110へ進む。一方、閾値以上である場合は、肯定されてステップ108へ進む。
【0057】
ステップ108では、放射線量の検知を開始してから検知した放射線量が閾値に到達するまでの到達時間をタイマー42から取得し、当該到達時間が、所定の時間以下であるか否かを判断する。放射線画像撮影システム10は、正規の放射線画像を撮影する際に放射線検出器14が検知した放射線量が上述の閾値に到達するまでの到達時間が予め得られている。従って、検知した放射線量が閾値を越えた場合であっても、到達時間を越えている場合は、正規の放射線画像が撮影されない場合を示している。そのため、本実施の形態の放射線検出器14では、タイマー42により、放射線量の検知を開始してから検知した放射線量が閾値に到達するまでの到達時間をカウントしている。
【0058】
到達時間が所定時間を越える場合は、否定されてステップ110へ進む。ステップ110では、後述の撮影処理により得られる放射線画像は非正規の画像であり、放射線検出器14が誤検出をしていると決定し、その旨を制御部36の36Cに記憶した後、ステップ114へ進む。
【0059】
一方、ステップ108で所定時間以下である場合は、肯定されてステップ112へ進む。ステップ112では、後述の撮影処理により得られる放射線画像は正規の画像であると決定し、その旨を制御部36の36Cに記憶した後、ステップ114へ進む。
【0060】
本実施の形態の放射線画像撮影システム10は、放射線検出器14が放射線発生装置16の放射線照射動作と同期をとることなく、放射線画像の撮影を行う。このように撮影を行う方法としては、TFT部30で電荷蓄積を開始する条件を予め定めておき、当該条件が成立したことをトリガとして撮影タイミングを判断して撮影(電荷蓄積)を行う方法や、予め定められた画素または専用の画素に蓄積された電荷を読み出し、読み出した電荷の値が予め定められた閾値を越えた場合に撮影タイミングと判断して撮影を行う方法等が挙げられるが、特に限定されない。なおいずれの方法においても、放射線画像の撮影のための電荷蓄積を開始する直前でそれまでに蓄積された電荷をリセットするリセット動作を行うことが好ましい。そこで、ステップ114では、リセット動作を行う。
【0061】
次のステップ116では、上述したように照射された放射線に応じた放射線画像の撮影を行う放射線画像撮影処理により放射線画像を撮影し、被験体画像データを取得する。
【0062】
次のステップ118では、撮影した放射線画像が正規の画像であるか否かを記憶部36Cを参照して判断する。正規の画像である場合は、ステップ120へ進み、無線通信部40により取得した被験体画像データを制御装置12に出力させた後、本処理を終了する。一方、正規の画像ではない場合は、被験体画像データを制御装置12へ出力せずに本処理を終了する。なお、被験体画像データを制御装置12へ出力しないように制御する方法としては、例えば、正規の画像と判断した場合のみ無線通信部40に被験体画像データを伝送するようにしてもよいし、正規か否かに係わらず被験体画像データを無線通信部40に伝送しておき、非正規である場合は、無線通信部40に伝送された被験体画像データを出力しないように指示するようにしてもよい。
【0063】
なお、非正規の画像と判断された被験体画像データは、廃棄するようにしてもよいし、記憶部44に非正規である旨と共に記憶するようにしてもよい。また、被験体画像データを廃棄した場合に、非正規の画像を撮影した旨を記憶部44に記憶するようにしてもよい。
【0064】
また、本実施の形態では、非正規の画像と判断した場合、無線通信部40は制御装置12に対して何も出力していないが、非正規の画像を撮影した旨を制御装置12に出力するようにしてもよい。
【0065】
以上、説明したように、本実施の形態に係る放射線画像撮影システム10の放射線検出器14は、放射線発生装置16の放射線照射動作と同期をとることなく、オフセット画像データを取得する際に、放射線発生装置16から照射された放射線により曝射された放射線量を検知して、検知した放射線量が閾値未満である場合、及び検知した放射線量が閾値以上であっても、閾値に到達するまでの到達時間が所定時間を超える場合は、制御部36は、撮影された放射線画像が正規の画像ではないと判断して当該放射線画像(被験体画像データ)を制御装置12に出力しないよう無線通信部40を制御する。
【0066】
また、検知した放射線量が閾値以上であり、かつ、閾値に到達するまでの到達時間が所定時間以下である場合は、制御部36は、撮影された放射線画像が正規の画像であると判断して当該放射線画像(被験体画像データ)を制御装置12に出力するよう無線通信部40に指示する。
【0067】
このように、本実施の形態の放射線検出器14では、正規ではない誤った放射線画像が出力されるのを防止することができる。
【0068】
本実施の形態の放射線画像撮影システム10では、複数備えられた放射線検出器14(141〜14n)の少なくとも1つが被験体19の放射線画像の撮影を行う場合、放射線を検知した全ての放射線検出器14において上述の誤画像出力抑制処理が実行されるため、誤検出した放射線検出器14があった場合でも、当該放射線検出器14から放射線画像が制御装置12に出力されない。このように、放射線検出器14側で、正規の放射線画像か判断することができ、誤った放射線画像は出力されないため、制御装置12は、正規の放射線画像のみを受信する。
【0069】
従って、放射線画像撮影システム10において、放射線画像の撮影開始から、正規の画像の出力完了(制御装置12での受信完了)までの、ワークフローの処理時間が短縮されるため、利便性が向上する。また、制御装置12は、正規の画像のみを受信するため、制御装置12における画像表示速度が遅くなるのを防止できる。
【0070】
また、このように複数の放射線検出器14を備えた放射線画像撮影システム10であっても、事前に放射線画像を撮影する放射線検出器14を選択・指定する必要がなく、正規の放射線画像を取得することができるため、放射線検出器14の選択・指定の誤りの心配がない。従って、誤りによる再撮影を防止することができ、被験体19が無駄に被曝することを防止できる。
【0071】
また、本実施の形態の放射線検出器14では、検知した放射線量に基づいて放射線画像が正規であるか否かを判断しているため、従来の技術のように、画像解析を行って判断を行うよりも早く処理を行うことができる。
【0072】
なお、本実施の形態では、オフセット画像データを取得するオフセット画像取得処理の際に検知した放射線量に基づいて、撮影された放射線画像が正規の画像であるか否かを判断しているがこれに限らず、被験体画像データを取得する放射線画像撮影処理の際に検知した放射線量に基づいて、正規の画像であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0073】
また、本実施の形態では、オフセット画像データを取得するオフセット画像取得処理の際に検知した放射線量に基づいて、放射線画像が正規の画像であるか否かを判断した後に、放射線画像の撮影処理を行っているが、これに限らず、正規の画像ではないと判断した場合は、撮影処理を行わないようにしてもよい。
【0074】
また、本実施の形態の放射線画像撮影システム10は、複数の放射線検出器14を備えるように構成されているがこれに限らず、1つの放射線検出器14を備えるように構成されていてもよい。このような場合であっても、適正に被験体19の撮影が行えなかった場合等、撮影された放射線画像を制御装置12に出力するのを防止することができる。従って、例えばユーザの利便性が向上させられる。
【0075】
その他、本実施の形態で説明した放射線画像撮影システム10、制御装置12、放射線検出器14、及び放射線発生装置16等の構成等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0076】
また、本実施の形態で説明した誤画像出力抑制処理の流れの一例(図6)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0077】
また、本実施の形態では、本発明の放射線としてX線を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、γ線などを適用してもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 放射線画像撮影システム
12 制御装置
14 放射線検出器
16 放射線発生装置
30 TFT部
36 制御部
40 無線通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された放射線に応じた放射線画像の撮影を行う場合に、照射された放射線量を検知する検知手段と、
前記検知手段で検知された前記放射線量に基づいて、前記放射線画像が正規の画像である否かを判断する判断手段と、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項2】
撮影された前記放射線画像を外部に出力する出力手段と、
前記判断手段により前記放射線画像が正規の画像ではないと判断された場合は、前記放射線画像を外部に出力しないよう前記出力手段を制御する制御手段と、
を備えた請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記検知手段が検知した前記放射線量が予め定められた閾値を越えない場合に、前記放射線画像が正規の画像ではないと判断する、請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記判断手段は、前記検知手段が検知した前記放射線量が予め定められた閾値に達するまでの時間が予め定められた時間を超える場合は、前記放射線画像が正規の画像ではないと判断する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記判断手段は、前記放射線画像を補正するための補正画像を取得する際に前記検知手段が検知した前記放射線量に基づいて、前記放射線画像が正規の画像であるか否かを判断する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
放射線画像の撮影に関する設定を指示する制御装置と、
前記制御装置からの指示に基づいて、放射線を照射する放射線照射装置と、
前記放射線照射装置による前記放射線の照射動作と同期をとることなく、前記放射線照射装置から照射された放射線に応じた放射線画像を撮影し、撮影した放射線画像を前記制御装置に出力する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置と、
を備えた放射線画像撮影システム。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置を複数備えた、
請求項6に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
照射された放射線に応じた放射線画像の撮影を行う場合に照射された放射線量を検知する検知手段により検知された前記放射線量に基づいて、前記放射線画像の適否を判断する判断ステップを備えた処理をコンピュータに実行させるための放射線画像撮影プログラム。
【請求項9】
照射された放射線に応じた放射線画像の撮影を行う場合に、照射された放射線量を検知する検知工程と、
前記検知工程で検知された前記放射線量に基づいて、前記放射線画像の適否を判断する判断工程と、
を備えた放射線画像撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−85794(P2012−85794A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234578(P2010−234578)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】