説明

放射線画像撮影装置および放射線画像検出器

【課題】第1の格子と第2の格子の2つの格子を平行に配列し、この格子を用いて位相コントラスト画像を取得する放射線画像撮影装置において、2次元位相情報を有する高画質な位相コントラスト画像を取得する。
【解決手段】第1の格子および第2の格子のいずれか一方の格子を、位相コントラスト画像を構成する1つの画素に対応する所定の範囲内に複数の単位格子UG1,UG2が配列されたものとするとともに、その各単位格子UG1,UG2を構成する単位格子部材22が互いに異なる方向に延びるものとし、その所定の範囲内の複数の単位格子UG1,UG2に対応する画素部によって検出された複数の検出信号に基づいて、位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、格子を利用した放射線画像撮影装置およびその放射線画像撮影装置において用いられる放射線画像検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線は、物質を構成する元素の原子番号と、物質の密度及び厚さとに依存して減衰するといった特性を有することから、被写体の内部を調べるためのプローブとして用いられている。X線を用いた撮影は、医療診断や非破壊検査等の分野において広く普及している。
【0003】
一般的なX線撮影システムでは、X線を放射するX線源とX線画像を検出するX線画像検出器との間に被写体を配置して、被写体の透過像を撮影する。この場合、X線源からX線画像検出器に向けて放射された各X線は、X線画像検出器までの経路上に存在する被写体を構成する物質の特性(原子番号、密度、厚さ)の差異に応じた量の減衰(吸収)を受けた後、X線画像検出器に入射する。この結果、被写体のX線透過像がX線画像検出器により検出され画像化される。X線画像検出器としては、X線増感紙とフイルムとの組み合わせや輝尽性蛍光体のほか、半導体回路を用いたフラットパネル検出器(FPD:Flat Panel Detector)が広く用いられている。
【0004】
しかし、X線吸収能は、原子番号が小さい元素からなる物質ほど低くなり、生体軟部組織やソフトマテリアルなどでは、X線吸収能の差が小さく、従ってX線透過像としての十分な画像の濃淡(コントラスト)が得られないといった問題がある。例えば、人体の関節を構成する軟骨部とその周辺の関節液は、いずれも殆どの成分が水であり、両者のX線の吸収量の差が小さいため、画像のコントラストが得られにくい。
【0005】
近年、被検体の吸収係数の違いによるX線の強度変化に代えて、被検体の屈折率の違いによるX線の位相変化に基づいた位相コントラスト画像を得るX線位相イメージングの研究が行われている。この位相差を利用したX線位相イメージングでは、X線吸収能が低い弱吸収物体であっても高コントラストの画像を取得することができる。
【0006】
このようなX線位相イメージングとして、たとえば、特許文献1および特許文献2においては、第1の格子と第2の格子の2つの格子を所定の間隔で平行に配列し、タルボ干渉効果によって第2の格子の位置に第1の格子の自己像を形成し、この自己像を第2の格子によって強度変調することによって放射線位相コントラスト画像を取得する放射線位相画像撮影装置が提案されている。
【0007】
そして、特許文献1や特許文献2に記載の放射線位相画像撮影装置においては、第1の格子に対して、第1の格子の面にほぼ平行に第2の格子を配置し、第1の格子または第2の格子を、格子方向にほぼ垂直な方向に、格子ピッチよりも細かい所定量ずつ、相対的に並進移動させながら、その並進移動毎に撮影を行って複数の画像を撮影し、これらの複数の画像に基づいて、被検体との相互作用によって発生したX線の位相変化量(位相シフト微分量)を取得する縞走査法が行われる。そして、この位相シフト微分量に基づいて被検体の位相コントラスト画像を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2008/102654号公報
【特許文献2】特開2010−190777号公報
【特許文献3】国際公開第2010/050483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の放射線位相画像撮影装置においては、格子方向に垂直な方向についての位相情報しか取得することができないため、十分な画質の位相コントラスト画像を取得することができない問題がある。
【0010】
また、特許文献3に記載の放射線位相画像撮影装置においては、2次元位相情報を取得するために十字またはドットを多数配列した格子を用いることが提案されているが、これらの格子として非常に狭いピッチのものが要求されるため、その製作が非常に困難である。たとえば、十字を多数配列した格子の場合、十字によって形成される矩形の部分の角がなまるため空間周波数情報が落ちることになり画質の劣化となる。
【0011】
一方、特許文献1および特許文献2に記載の放射線位相画像撮影装置においては、第1または第2の格子を、その格子ピッチよりも細かいピッチで精度よく移動させる必要がある。格子ピッチは典型的には数μmであり、格子の送り精度はさらに高い精度が要求されるため、非常に高精度な移動機構が必要となる結果、機構の複雑化とコストの増大をもたらす。また、格子の移動毎に撮影を行う場合、位相コントラスト画像を取得するための一連の撮影間で、被検体の動きや装置振動などの要因で被検体と撮影系の位置関係がズレることにより、被検体との相互作用で発生したX線の位相変化を正しく導くことができず、結果として、良好な位相コントラスト画像を得ることができないといった問題がある。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑み、2次元位相情報を有する高画質な位相コントラスト画像を取得することができる放射線画像撮影装置およびその放射線画像撮影装置において用いられる放射線画像検出器を提供することを目的とする。
【0013】
また、上述した2次元位相情報を有する位相コントラスト画像を1回の撮影によって取得することができる放射線画像撮影装置および放射線画像検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の放射線画像撮影装置は、格子構造が周期的に配置され、放射線源から射出された放射線を通過させて第1の周期パターン像を形成する第1の格子と、格子構造が周期的に配置され、第1の周期パターン像が入射されて第2の周期パターン像を形成する第2の格子と、第2の格子により形成された第2の周期パターン像を検出する画素部が2次元状に配列された放射線画像検出器と、放射線画像検出器において検出された第2の周期パターン像を表す画像信号に基づいて位相コントラスト画像を生成する画像生成部とを備えた放射線画像撮影装置であって、第1の格子および第2の格子のいずれか一方の格子が、位相コントラスト画像を構成する1つの画素に対応する所定の範囲内に複数の単位格子が配列されたものであるとともに、その各単位格子を構成する単位格子部材が互いに異なる方向に延びるものであり、画像生成部が、所定の範囲内の複数の単位格子に対応する画素部によって検出された複数の検出信号に基づいて、位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号を生成するものであることを特徴とする。
【0015】
また、上記本発明の放射線画像撮影装置においては、他方の格子を、単位格子よりも小さくかつ画素部に対応する単位で構成された副単位格子を複数配列したものとするとともに、1つの単位格子に対応する範囲内において複数の副単位格子を、単位格子の延伸方向に直交する方向についてその単位格子に対して互いに異なる距離だけ平行にシフトして配置されたものとし、画像生成部を、1つの単位格子に対応する範囲内に配置された各副単位格子に対応する画素部によって検出された検出信号に基づいて、1つの単位格子の検出信号を生成するものとできる。
【0016】
また、第1の格子を単位格子を複数配列したものとするとともに、第2の格子を副単位格子を複数配列したものとし、第1の格子の1つの単位格子に対応する範囲内の複数の副単位格子を、第1の格子の像に対してP/Mずつ平行にシフトして配列されたものとできる。
【0017】
ただし、Pは第2の格子のピッチ、Mは位相コントラスト画像を構成する1つの画素を生成するために用いられる予め設定された位相情報の数
また、第2の格子を単位格子を複数配列したものとするとともに、第1の格子を副単位格子を複数配列したものとし、第2の格子の1つの単位格子に対応する範囲内の複数の副単位格子の像を、第2の格子に対してP/Mずつ平行にシフトして配列されたものとできる。
【0018】
ただし、Pは第2の格子のピッチ、Mは位相コントラスト画像を構成する1つの画素を生成するために用いられる予め設定された位相情報の数
また、各単位格子を構成する単位格子部材を、互いに直交する方向に延びるものとすることができる。
【0019】
また、所定の範囲内の複数の単位格子を、千鳥格子状に配置することができる。
【0020】
また、所定の範囲内における互いに異なる種類の単位格子同志の面積比が同じとなるように複数の単位格子を配置することができる。
【0021】
また、所定の範囲内において、同じ方向に延びる単位格子部材から構成された単位格子を複数配置するとともに、その複数の単位格子同志の単位格子部材の配列ピッチを異なるものとできる。
【0022】
また、各単位格子に対応する範囲内において配列ピッチが互いに異なる複数種類の副単位格子を配置することができる。
【0023】
また、第2の格子を、第1の格子からタルボ干渉距離の位置に配置し、第1の格子のタルボ干渉効果によって形成される第1の周期パターン像に強度変調を与えるものとできる。
【0024】
また、第1の格子を、放射線を投影像として通過させて第1の周期パターン像を形成する吸収型格子とし、第2の格子を、第1の格子を通過した投影像としての第1の周期パターン像に強度変調を与えるものとできる。
【0025】
また、第2の格子を、第1の格子から最小のタルボ干渉距離より短い距離に配置することができる。
【0026】
本発明の放射線画像撮影装置は、格子構造が周期的に配置され、放射線源から射出された放射線を通過させて周期パターン像を形成する格子と、格子によって形成された周期パターン像を透過する第1の電極層と、第1の電極層を透過した周期パターン像の照射を受けて電荷を発生する光導電層と、光導電層において発生した電荷を蓄積する電荷蓄積層と、読取光を透過する線状電極が多数配列された第2の電極層とがこの順に積層され、読取光によって走査されることによって各線状電極に対応する画素部毎の検出信号が読み出される放射線画像検出器と、放射線画像検出器において検出された周期パターン像を表す画像信号に基づいて位相コントラスト画像を生成する画像生成部とを備えた放射線画像撮影装置であって、電荷蓄積層が、線状電極の配列ピッチよりも細かいピッチで格子状に形成されたものであり、格子が、位相コントラスト画像を構成する1つの画素に対応する所定の範囲内に複数の単位格子が配列されたものであるとともに、その各単位格子を構成する単位格子部材が互いに異なる方向に延びるものであり、画像生成部が、所定の範囲内の複数の単位格子に対応する画素部によって検出された複数の検出信号に基づいて、位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号を生成するものであることを特徴とする。
【0027】
また、上記本発明の放射線画像撮影装置においては、電荷蓄積層を、単位格子よりも小さくかつ画素部に対応する単位で構成された副単位格子パターンを複数配列したものとするとともに、1つの単位格子に対応する範囲内において複数の副単位格子パターンを、単位格子の延伸方向に直交する方向についてその単位格子に対して互いに異なる距離だけ平行にシフトして配置されたものとし、画像生成部を、1つの単位格子に対応する範囲内に配置された各副単位格子パターンに対応する画素部によって検出された検出信号に基づいて、1つの単位格子の検出信号を生成するものとできる。
【0028】
また、格子の1つの単位格子に対応する範囲内の複数の副単位格子パターンを、格子の像に対してP/Mずつ平行にシフトして配列されたものとできる。
【0029】
ただし、Pは副単位格子パターンのピッチ、Mは位相コントラスト画像を構成する1つの画素を生成するために用いられる予め設定された位相情報の数
また、各単位格子を構成する単位格子部材を、互いに直交する方向に延びるものとできる。
【0030】
また、所定の範囲内の複数の単位格子を、千鳥格子状に配置することができる。
【0031】
また、所定の範囲内における互いに異なる種類の単位格子同志の面積比が同じとなるように複数の単位格子を配置することができる。
【0032】
また、所定の範囲内において、同じ方向に延びる単位格子部材から構成された単位格子を複数配置するとともに、その複数の単位格子同志の単位格子部材の配列ピッチを異なるものとできる。
【0033】
また、各単位格子に対応する範囲内において配列ピッチが互いに異なる複数種類の副単位格子パターンを配置することができる。
【0034】
また、放射線画像検出器を、格子からタルボ干渉距離の位置に配置し、格子のタルボ干渉効果によって形成される周期パターン像に強度変調を与えるものとできる。
【0035】
また、格子を、放射線を投影像として通過させて周期パターン像を形成する吸収型格子とし、放射線画像検出器を、格子を通過した投影像としての周期パターン像に強度変調を与えるものとできる。
【0036】
また、放射線画像検出器を、格子から最小のタルボ干渉距離より短い距離に配置することができる。
【0037】
本発明の放射線画像撮影装置は、格子構造が周期的に配置され、放射線源から射出された放射線を通過させて周期パターン像を形成する格子と、格子によって形成された周期パターン像を透過する第1の電極層と、第1の電極層を透過した周期パターン像の照射を受けて電荷を発生する光導電層と、光導電層において発生した電荷を蓄積する電荷蓄積層と、読取光を透過する線状電極が多数配列された第2の電極層とがこの順に積層され、読取光によって走査されることによって各線状電極に対応する画素部毎の検出信号が読み出される放射線画像検出器と、放射線画像検出器において検出された周期パターン像を表す画像信号に基づいて位相コントラスト画像を生成する画像生成部とを備えた放射線画像撮影装置であって、電荷蓄積層が、位相コントラスト画像を構成する1つの画素に対応する所定の範囲内に複数の単位格子パターンが配列されたものであるとともに、その各単位格子パターンを構成する単位格子部が互いに異なる方向に延びるものであり、画像生成部が、所定の範囲内の複数の単位格子パターンに対応する画素部によって検出された複数の検出信号に基づいて、位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号を生成するものであることを特徴とする。
【0038】
また、上記本発明の放射線画像撮影装置においては、格子を、単位格子パターンよりも小さくかつ画素部に対応する単位で構成された副単位格子を複数配列したものとするとともに、1つの単位格子パターンに対応する範囲内において複数の副単位格子を、単位格子パターンの延伸方向に直交する方向についてその単位格子パターンに対して互いに異なる距離だけ平行にシフトして配置されたものとし、画像生成部を、1つの単位格子パターンに対応する範囲内に配置された各副単位格子に対応する画素部によって検出された検出信号に基づいて、1つの単位格子パターンの検出信号を生成するものとできる。
【0039】
また、電荷蓄積層の1つの単位格子パターンに対応する範囲内の複数の副単位格子の像を、単位格子パターンに対してP/Mずつ平行にシフトして配列することができる。
【0040】
ただし、Pは単位格子パターンのピッチ、Mは位相コントラスト画像を構成する1つの画素を生成するために用いられる予め設定された位相情報の数
また、各単位格子パターンを構成する単位格子部を、互いに直交する方向に延びるものとできる。
【0041】
また、所定の範囲内の複数の単位格子パターンを、千鳥格子状に配置することができる。
【0042】
また、所定の範囲内における互いに異なる種類の単位格子パターン同志の面積比が同じとなるように複数の単位格子パターンを配置することができる。
【0043】
また、所定の範囲内において、同じ方向に延びる単位格子部から構成された単位格子パターンを複数配置するとともに、その複数の単位格子パターン同志の単位格子部の配列ピッチを異なるものとできる。
【0044】
また、各単位格子パターンに対応する範囲内において配列ピッチが互いに異なる複数種類の副単位格子を配置することができる。
【0045】
また、放射線画像検出器を、格子からタルボ干渉距離の位置に配置し、格子のタルボ干渉効果によって形成される周期パターン像に強度変調を与えるものとできる。
【0046】
また、格子を、放射線を投影像として通過させて周期パターン像を形成する吸収型格子とし、放射線画像検出器を、格子を通過した投影像としての周期パターン像に強度変調を与えるものとできる。
【0047】
また、放射線画像検出器を、格子から最小のタルボ干渉距離より短い距離に配置することができる。
【0048】
本発明の放射線画像検出器は、放射線を透過する第1の電極層と、第1の電極層を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生する光導電層と、光導電層において発生した電荷を蓄積する電荷蓄積層と、読取光を透過する線状電極が多数配列された第2の電極層とがこの順に積層され、読取光によって走査されることによって各線状電極に対応する画素部毎の検出信号が読み出される放射線画像検出器であって、電荷蓄積層が、所定の範囲内に複数の単位格子パターンが配列されたものであるとともに、その各単位格子パターンを構成する単位格子部が互いに異なる方向に延びるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0049】
本発明の放射線画像撮影装置によれば、第1の格子および第2の格子のいずれか一方の格子を、位相コントラスト画像を構成する1つの画素に対応する所定の範囲内に複数の単位格子が配列されたものとするとともに、その各単位格子を構成する単位格子部材が互いに異なる方向に延びるものとし、その所定の範囲内の複数の単位格子に対応する画素部によって検出された複数の検出信号に基づいて、位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号を生成するようにしたので、上述したような従来の十字やドットの格子を用いることなく、2次元情報を有する高画質な位相コントラスト画像を取得することができる。
【0050】
また、上記本発明の放射線画像撮影装置において、他方の格子を、単位格子よりも小さくかつ画素部に対応する単位で構成された副単位格子を複数配列したものとするとともに、1つの単位格子に対応する範囲内において複数の副単位格子を、単位格子の延伸方向に直交する方向についてその単位格子に対して互いに異なる距離だけ平行にシフトして配置し、その各副単位格子に対応する画素部によって検出された検出信号に基づいて、1つの単位格子の検出信号を生成するようにした場合には、従来のように第2の格子を移動させる高精度な移動機構を必要とすることなく、1回の撮影によって複数種類の位相情報の検出信号を取得することができるので、1回の撮影によって位相コントラスト画像を取得することができる。
【0051】
また、所定の範囲内の複数の単位格子を千鳥格子状に配置するようにした場合には、所定の範囲の互いに異なる方向の位相情報をバランス良く取得することができる。
【0052】
また、所定の範囲内における互いに異なる種類の単位格子同志の面積比が同じとなるように複数の単位格子を配置した場合も、所定の範囲の互いに異なる方向の位相情報をバランス良く取得することができる。
【0053】
また、所定の範囲内において、同じ方向に延びる単位格子部材から構成された単位格子を複数配置するとともに、その複数の単位格子同志の単位格子部材の配列ピッチを異なるものとした場合には、互いに異なる周波数情報の検出信号を取得することができるので、たとえば、これらの差分を算出することによってエネルギサブトラクションの位相コントラスト画像を取得することができる。
【0054】
また、各単位格子に対応する範囲内において配列ピッチが互いに異なる複数種類の副単位格子を配置するようにした場合にも、互いに異なる周波数情報の検出信号を取得することができる。
【0055】
また、放射線画像検出器の電荷蓄積層を格子状に形成することによって放射線画像検出器に第2の格子の機能を持たせるようにしてもよく、そのようにした場合、高アスペクト比で形成する必要があり製造が困難な格子を設けなくてもよく、より製造し易いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の放射線位相画像撮影装置の第1の実施形態の概略構成図
【図2】図1に示す放射線位相画像撮影装置の上面図
【図3】放射線照射部の2次元格子の一例を示す図
【図4】第1の格子の一部拡大図
【図5】第2の格子の一部拡大図
【図6】各単位格子の自己像と第2の格子を構成する副単位格子との位置関係を示す図
【図7】TFT読取方式の放射線画像検出器の概略構成を示す図
【図8】被検体のX方向に関する位相シフト分布Φ(x)に応じて屈折される1つの放射線の経路を例示する図
【図9】位相コントラスト画像を生成する方法を説明するための図
【図10】1つの単位格子の範囲に対応する副単位格子のその他の配置方法を示す図
【図11】光読取方式の放射線画像検出器の概略構成を示す図
【図12】図11に示す放射線画像検出器の記録の作用を説明するための図
【図13】図11に示す放射線画像検出器の読取りの作用を説明するための図
【図14】吸収画像および小角散乱画像を生成する方法を説明するための図
【図15】第2の格子の機能を有する放射線画像検出器の一実施形態の概略構成を示す図
【図16】図15に示す放射線画像検出器における電荷蓄積層の副単位格子パターンの一例を示す図
【図17】図15に示す放射線画像検出器の記録の作用を説明するための図
【図18】図15に示す放射線画像検出器の読取りの作用を説明するための図
【図19】第2の格子の機能を有する放射線画像検出器のその他の実施形態の概略構成を示す図
【図20】図19に示す放射線画像検出器の記録の作用を説明するための図
【図21】図19に示す放射線画像検出器の読取りの作用を説明するための図
【図22】第2の格子の機能を有する放射線画像検出器のその他の実施形態の概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像撮影装置の第1の実施形態を用いた放射線位相画像撮影装置について説明する。図1に第1の実施形態の放射線位相画像撮影装置の概略構成を示す。図2に図1に示す放射線位相画像撮影装置の上面図(X−Z断面図)を示す。図2の紙面厚さ方向が図1のY方向である。
【0058】
放射線位相画像撮影装置は、図1に示すように、放射線を被検体10に向かって照射する放射線照射部1と、放射線照射部1から射出された放射線を通過させて第1の周期パターン像を形成する第1の格子2と、第1の格子2により形成された第1の周期パターン像を強度変調して第2の周期パターン像を形成する第2の格子3と、第2の格子3により形成された第2の周期パターン像を検出する放射線画像検出器4と、放射線画像検出器4により検出された第2の周期パターン像に基づいて画像信号を取得し、その取得した画像信号に基づいて位相コントラスト画像を生成する画像生成部5とを備えている。
【0059】
放射線照射部1は、被検体10に向けて放射線を射出する放射線源1aと、その放射線源1aから射出された放射線を透過する部分と遮蔽する部分とからなる2次元格子1bとを備え、第1の格子2に放射線を照射したときタルボ干渉効果を発生させうるだけの空間的干渉性を有するものである。
【0060】
2次元格子1bは、図3に示すように、X方向に延びる放射線遮蔽部がY方向に周期的に配置されるとともに、Y方向に延びる放射線遮蔽部がX方向に周期的に配置された2次元状の放射線吸収型格子である。この2次元格子1bは、放射線源1の焦点から射出された放射線を部分的に遮蔽することにより、X方向およびY方向に関する実効的な焦点サイズを縮小することができるとともに、X方向およびY方向に多数の微小焦点光源を形成することができるものである。なお、放射線源1aがコヒーレント性のある平行光を発する性能を有するもの(たとえば放射光、マイクロフォーカスX線源)である場合には、この2次元格子1bは不要である。
【0061】
この2次元格子1bの格子ピッチPは、次式(1)を満たすように設定する必要がある。
【数1】

【0062】
なお、Pは第2の格子3のピッチ、Zは、2次元格子1bから第1の格子2までの距離、Zは第1の格子2から第2の格子3までの距離である。
【0063】
第1の格子2は、図1に示すように、放射線を主として透過する基板21と、基板21上に設けられた多数の単位格子UGとを備えている。
【0064】
図4に、図1に示す第1の格子2の一部拡大図を示す。第1の格子2は、図4に示すように、Y方向に延伸した矩形の単位格子部材22をX方向に多数配列した第1の単位格子UG1と、Y方向に直交するX方向に延伸した矩形の単位格子部材22をY方向に多数配列した第2の単位格子UG2とを備えている。そして、本実施形態においては、第1の単位格子UG1と第2の単位格子UG2とは、X方向およびY方向に交互に配置されることによって千鳥配置されている。
【0065】
単位格子部材22の素材としては、たとえば、金、白金などの金属を用いることができる。また、第1の格子2としては、照射される放射線に対して約90°または約180°の位相変調を与える、いわゆる位相変調型格子であることが望ましく、たとえば、単位格子部材22を金とした場合、通常の医療診断用のX線エネルギー領域において必要なZ方向についての厚さは1μm〜10μm程度になる。また、振幅変調型格子を用いることもできる。この場合、単位格子部材22は放射線を十分に吸収する厚さが必要である。たとえば、単位格子部材22を金とした場合、通常の医療診断用のX線エネルギー領域において必要な厚さは10μm〜数100μm程度になる。
【0066】
そして、本実施形態においては、図4に示す4つの単位格子の範囲が、位相コントラスト画像の1つの画素に対応する範囲となる。すなわち、隣接する第1の単位格子UG1と第2の単位格子UG2とからなる単位格子の組を2組用いて、位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号を生成する。なお、図4には、位相コントラスト画像の1つの画素に対応する4つの単位格子しか示していないが、実際には図4に示す4つの単位格子がX方向およびY方向に繰り返して配置される。
【0067】
第2の格子3は、図1に示すように、第1の格子2と同様に、放射線を主として透過する基板31と、基板31上に設けられた多数の副単位格子SUGとを備えている。
【0068】
図5は、図1に示す第2の格子3の一部拡大図である。図5において太線で囲まれる上側の9つの副単位格子SUG1A〜SUG5Aは、図4に示す左上の第2の単位格子UG2の範囲に対応するものであり、下側の9つの副単位格子SUG1B〜SUG5Bは、図4に示す左下の第1の単位格子UG1の範囲に対応するものである。すなわち、図4に示す左上の第2の単位格子UG2を放射線が透過することによって形成される第2の単位格子UG2の自己像G2が、図5に示す上側の9つの副単位格子SUG1A〜SUG5Aに照射され、図4に示す左下の第1の単位格子UG1を放射線が透過することによって形成される第1の単位格子UG1の自己像G1が、図5に示す下側の9つの副単位格子SUG1B〜SUG5Bに照射されるように構成されている。
【0069】
なお、図5においては、図4に示す左側の2つの単位格子に対応する副単位格子しか示していないが、図4に示す右側の2つの単位格子に対応する副単位格子は、図5に示す上側の9つの副単位格子と下側の9つの副単位格子とが上下逆となるように配置される。そして、図5に示す2つの副単位格子の組と、その2つの副単位格子の組とは上下関係が逆の2つの副単位格子の組との4つの副単位格子の組が、X方向およびY方向に繰り返して配置される。そして、この4つの副単位格子の組を用いて、位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号を生成する。
【0070】
図5に示す上側の副単位格子SUG1A〜SUG5Aは、それぞれX方向に延伸した矩形の副単位格子部材32をY方向に多数配列したものである。図5の上側に示す9つの副単位格子の中には、副単位格子SUG1A〜SUG4Aがそれぞれ2つずつ含まれるとともに1つの副単位格子SUG5Aが含まれている。そして、この各副単位格子SUG1A〜SUG5Aを構成する副単位格子部材32は、各副単位格子間において互いに異なる距離だけY方向について所定のピッチずらされて配列されている。なお、この各副単位格子SUG1A〜SUG5Aの構成については後で詳述する。
【0071】
図5に示す下側の副単位格子SUG1B〜SUG5Bは、それぞれY方向に延伸した矩形の副単位格子部材32をX方向に多数配列したものである。図5の下側に示す9つの副単位格子の中には、副単位格子SUG1B〜SUG4Bがそれぞれ2つずつ含まれるとともに1つの副単位格子SUG5Bが含まれている。そして、この各副単位格子SUG1B〜SUG5Bを構成する副単位格子部材32は、各副単位格子間において互いに異なる距離だけX方向について所定のピッチずらされて配列されている。なお、この各副単位格子SUG1B〜SUG5Bの構成については後で詳述する。
【0072】
副単位格子部材32の素材としては、たとえば、金、白金などの金属を用いることができる。第2の格子3は、振幅変調型格子であることが望ましい。このとき、副単位格子部材32は放射線を十分に吸収する厚さが必要である。たとえば、副単位格子部材32を金とした場合、通常の医療診断用のX線エネルギー領域において必要な厚さは10μm〜数100μm程度になる。
【0073】
ここで、本実施形態においては、放射線画像検出器4によって検出された第2の周期パターン像に基づいて互いに異なる複数の位相情報を取得し、その複数の位相情報に基づいて位相コントラスト画像を生成するが、ここでは第2の周期パターン像に基づいて5つの位相情報を生成し、その5つの位相情報に基づいて位相コントラスト画像を生成するものとする。
【0074】
そして、このように5つの位相情報を生成するための第1および第2の格子2,3の詳細な構成について、以下に説明する。
【0075】
図6は、図4の左側の第1および第2の単位格子UG1,UG2を放射線が透過することによって第2の格子3の位置に形成された自己像G1,G2と、図5に示す副単位格子SUG1A〜SUG5A,SUG1B〜SUG5Bの各副単位格子部材32との位置関係を示す図である。なお、図6においては、自己像G1,G2を分かりやすくするために、これらの長さを実際より長く表しているが、実際には、自己像G1,G2は、図6の太線の範囲の長さとなる。
【0076】
図6に示すように、5種類の副単位格子SUG1A〜SUG5Aは、それぞれ第2の単位格子UG2の自己像G2からY方向について互いに異なる距離で配置されている。具体的には、副単位格子SUG1Aの副単位格子部材32は、自己像G2からの距離をゼロとして配列ピッチPで配置され、副単位格子SUG2Aの副単位格子部材32は、自己像G2からの距離をP/5として配列ピッチPで配置され、副単位格子SUG3Aの副単位格子部材32は、自己像G2からの距離を(2×P)/5として配列ピッチPで配置され、副単位格子SUG4Aの副単位格子部材32は、自己像G2からの距離を(3×P)/5として配列ピッチPで配置され、副単位格子SUG5Aの副単位格子部材32は、自己像G2からの距離を(4×P)/5として配列ピッチPで配置されている。なお、副単位格子部材32の間隔はdである。
【0077】
そして、図6に示すように構成された5種類の副単位格子SUG1A〜SUG5Aを透過した第2の単位格子UG2の自己像G2を、それぞれ放射線画像検出器4の後述する各画素回路40により検出することによって、Y方向について互い異なる5つの位相情報の検出信号をそれぞれ取得することができる。
【0078】
また、図6に示すように、5種類の副単位格子SUG1B〜SUG5Bは、それぞれ第1の単位格子UG1の自己像G1からX方向について互いに異なる距離で配置されている。具体的には、副単位格子SUG1Bの副単位格子部材32は、自己像G1からの距離をゼロとして配列ピッチPで配置され、副単位格子SUG2Bの副単位格子部材32は、自己像G1からの距離をP/5として配列ピッチPで配置され、副単位格子SUG3Bの副単位格子部材32は、自己像G1からの距離を(2×P)/5として配列ピッチPで配置され、副単位格子SUG4Bの副単位格子部材32は、自己像G1からの距離を(3×P)/5として配列ピッチPで配置され、副単位格子SUG5Bの副単位格子部材32は、自己像G1からの距離を(4×P)/5として配列ピッチPで配置されている。なお、副単位格子部材32の間隔はdである。
【0079】
そして、図6に示すように構成された5種類の副単位格子SUG1B〜SUG5Bを透過した第1の単位格子UG1の自己像G1を、それぞれ放射線画像検出器4の後述する各画素回路40により検出することによって、X方向について互い異なる5つの位相情報の検出信号をそれぞれ取得することができる。
【0080】
なお、上述したようにして取得されたX方向について互い異なる5つの位相情報の検出信号とY方向について互い異なる5つの位相情報の検出信号とに基づいて位相コントラスト画像の画素信号を生成する方法については、後で詳述する。
【0081】
ここで、放射線照射部1から照射される放射線が、平行ビームではなく、コーンビームである場合には、第1の格子2を通過して形成される第1の格子2の自己像G1,G2は、放射線照射部1からの距離に比例して拡大される。したがって、図2に示すように、放射線源1aの焦点から第1の格子2までの距離をZ、第1の格子2から第2の格子3までの距離をZとした場合、図4に示す第1および第2の単位格子UG1,UG2のピッチPと、図5および図6に示す副単位格子SUG1A〜SUG5A,SUG1B〜SUG5BのピッチPとは、次式(2)の関係を満たすように決定される。なお、P’は、第2の格子3の位置における第1および第2の単位格子UG1,UG2の自己像G1,G2のピッチである。
【数2】

【0082】
また、第1の格子2を180°の位相変調を与える位相変調型格子とした場合には、次式(3)の関係を満たすように決定される。
【数3】

【0083】
なお、放射線照射部1から照射される放射線が平行ビームである場合には、第1の格子2を90°の位相変調を与える位相変調型格子または振幅変調型格子とした場合、P=Pを満たすように決定され、第1の格子2を180°の位相変調を与える位相変調型格子とした場合には、P=P/2を満たすように決定される。
【0084】
そして、上述したような放射線照射部1、第1の格子2、第2の格子3および放射線画像検出器4によって位相コントラスト画像を取得可能な放射線位相画像撮影装置が構成されるが、本構成をタルボ干渉計として機能させるためには、さらにいくつかの条件をほぼ満たさねばならない。その条件について以下に説明する。
【0085】
まず、第1の格子2と第2の格子3とのグリッド面が、図1に示すX−Y平面に平行であることが必要である。
【0086】
そして、さらに、第1の格子2と第2の格子3との距離Zは、第1の格子2が90°の位相変調を与える位相変調型格子である場合、次の条件をほぼ満たさなければならない。
【数4】

ただし、λは放射線の波長(通常は実効波長)、mは0か正の整数、Pは上述した第1の格子2の単位格子部材22の配列ピッチ、Pは上述した第2の格子3の副単位格子部材32の配列ピッチである。
【0087】
また、第1の格子2が180°の位相変調を与える位相変調型格子である場合には、次の条件をほぼ満たさなければならない。
【数5】

ただし、λは放射線の波長(通常は実効波長)、mは0か正の整数、Pは上述した第1の格子2の単位格子部材22の配列ピッチ、Pは上述した第2の格子3の副単位格子部材32の配列ピッチである。
【0088】
さらに、第1の格子2が振幅変調型格子である場合には、次の条件をほぼ満たさなければならない。
【数6】

ただし、λは放射線の波長(通常は実効波長)、m’は正の整数、Pは上述した第1の格子2の単位格子部材22の配列ピッチ、Pは上述した第2の格子3の副単位格子部材32の配列ピッチである。
【0089】
なお、上式(4),(5),(6)は、放射線照射部1により照射される放射線がコーンビームである場合であり、放射線が平行ビームである場合には、上式(4)に代えて下式(7)、上式(5)に代えて下式(8)、上式(6)に代えて下式(9)となる。
【数7】

【数8】

【数9】

【0090】
放射線画像検出器4は、第1の格子2に入射した放射線が形成する第1の格子2の第1および第2の単位格子UG1,UG2の自己像G1,G2が、第2の格子3の各副単位格子SUG1A〜SUG5A,SUG1B〜SUG5Bによって強度変調された像を検出するものである。このような放射線画像検出器4として、本実施形態においては、図7に示すような、TFT(thin film transistor)スイッチ41を備えた画素回路40が2次元上に多数配列された、いわゆるTFT読取方式の放射線画像検出器を用いる。
【0091】
放射線画像検出器4は、各画素回路40のTFTスイッチ41をオンオフするための走査信号が出力される多数のゲート走査線43と、各画素回路40からTFTスイッチ41を介して読み出された画素信号が出力される多数のデータ線44とが直交して設けられている。そして、ゲート走査線43は画素回路行毎に設けられており、データ線44は画素回路列毎に設けられている。
【0092】
多数のゲート走査線43には各画素回路40のTFTスイッチ41をオンオフするための走査信号を出力する走査駆動回路45が接続されており、多数のデータ線44には信号検出部46が接続されている。信号検出部46は各画素回路40からデータ線44に出力された信号を検出して画像生成部5に出力するものである。
【0093】
そして、上述したように、本実施形態においては、位相コントラスト画像を構成する1つの画素に対して、第1の格子2の4つの単位格子が割り当てれ、その各単位格子に対して9つの副単位格子が割り当てられ、この各副単位格子に対して1つの画素回路40が割り当てられるので、位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号を生成するために、9×4=36個の画素回路40が使用されることになる。なお、図7において点線四角で示す18個の画素回路40は、図6に示す9個の副単位格子SUG1A〜SUG5A,SUG1B〜SUG5Bに対応するものである。
【0094】
なお、図8においては、位相コントラスト画像の1つの画素に対応する36個の画素回路40の組を1つだけ示しているが、この組がX方向およびY方向に繰り返されるものとする。
【0095】
画素回路40は、それぞれ光電変換素子と、光電変換素子によって変換された電荷を蓄積する蓄電部と、蓄電部に蓄積された電荷信号を読み出すために用いられるTFTスイッチ41とを備えている。なお、図7においては図示省略したが、図7に示す画素回路40上には、放射線の照射を可視光に変換する波長変換層が設けられており、上述した光電変換素子は、この波長変換層から発せられた光を光電変換して電荷を発生するものである。
【0096】
画像生成部5は、上述した36個の画素回路40によってそれぞれ検出されたX方向およびY方向についての5つの位相情報の検出信号に基づいて、位相コントラスト画像を構成する1つの画素の画素信号を生成するものである。位相コントラスト画像の生成方法については、後で詳述する。
【0097】
次に、本実施形態の放射線位相画像撮影装置の作用について説明する。
【0098】
まず、図1に示すように、放射線照射部1と第1の格子2との間に、被検体10が配置された後、放射線照射部1から放射線が射出される。そして、その放射線は被検体10を透過した後、第1の格子2に照射される。第1の格子2に照射された放射線は、第1の格子2で回折されることにより、第1の格子2から放射線の光軸方向において所定の距離において、タルボ干渉像を形成する。
【0099】
これをタルボ効果と呼び、光波が第1の格子2を通過したとき、第1の格子2から所定の距離において、第1の格子2の自己像G1,G2を形成する。たとえば、第1の格子2が、90°の位相変調を与える位相変調型格子の場合、上式(4)または上式(7)(180°の位相変調型格子の場合は上式(5)または上式(8)、強度変調型格子の場合は上式(6)または上式(9))で与えられる距離において第1の格子2の自己像G1,G2を形成する一方、被検体10によって、第1の格子2に入射する放射線の波面は歪むため、第1の格子2の自己像G1,G2はそれに従って変形している。すなわち、上述した第1の格子2の第1および第2の単位格子UG1,UG2の自己像G1,G2が被検体10によって変形する。
【0100】
続いて、第1および第2の単位格子UG1,UG2の自己像G1,G2が第2の格子3の各副単位格子SUG1A〜SUG5A,SUG1B〜SUG5Bを通過する。その結果、上記の変形した第1および第2の単位格子UG1,UG2の自己像G1,G2は第2の格子3の各副単位格子との重ね合わせにより、強度変調を受け、上記波面の歪みを反映した画像信号として放射線画像検出器4の各画素回路40により検出される。
【0101】
ここで、放射線画像検出器4における画像検出と読出しの作用について説明する。
【0102】
上記のようにして第2の格子3の各副単位格子による強度変調によって変形した第1および第2の単位格子UG1,UG2の自己像G1,G2は、その各副単位格子に対応する放射線画像検出器4の各画素回路40によってそれぞれ検出され、各画素回路40の光電変換素子によって光電変換された後、その電荷が蓄電部に蓄積される。
【0103】
次に、走査駆動回路45からY方向に配列されたゲート走査線43に走査信号が順次出力され、画素回路行がY方向に順次走査されて各画素回路40から検出信号が読み出され、信号検出部46によって検出された後、画像生成部5に出力される。
【0104】
そして、画像生成部5は、第1の単位格子UG1の自己像G1に対応する画素回路40によって検出された検出信号に基づいてX方向成分の検出信号を取得し、第2の単位格子UG2の自己像G2に対応する画素回路40によって検出された検出信号に基づいてY方向成分の検出信号を取得し、X方向成分の検出信号とY方向成分の検出信号とに基づいて被検体10の位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号を生成する。
【0105】
ここで、画像生成部5において位相コントラスト画像を生成する方法について説明するが、まず、本実施形態における位相コントラスト画像の生成方法の原理について説明する。なお、ここではX方向成分の位相コントラスト画像の生成方法の原理について説明するが、Y方向成分の位相コントラスト画像の生成方法の原理についても、方向が異なるだけで同様である。
【0106】
図8は、被検体10のX方向に関する位相シフト分布Φ(x)に応じて屈折される1つの放射線の経路を例示している。符号X1は、被検体10が存在しない場合に直進する放射線の経路を示しており、この経路X1を進む放射線は、第1および第2の格子2,3を通過して放射線画像検出器4に入射する。符号X2は、被検体10が存在する場合に、被検体10により屈折されて偏向した放射線の経路を示している。この経路X2を進む放射線は、第1の格子2を通過した後、第2の格子3により遮蔽される。
【0107】
被検体10の位相シフト分布Φ(x)は、被検体10の屈折率分布をn(x,z)、放射線の進む方向をzとして、次式(10)で表される。ここで、説明の簡略化のため、y座標は省略している。
【数10】

【0108】
第1の格子2から第2の格子3の位置に形成された自己像G1,G2は、被検体10での放射線の屈折により、その屈折角ψに応じた量だけx方向に変位する。この変位量Δxは、放射線の屈折角ψが微小であることに基づいて、近似的に次式(11)で表される。
【数11】

【0109】
ここで、屈折角ψは、放射線の波長λと被検体10の位相シフト分布Φ(x)を用いて、次式(12)で表される。
【数12】

【0110】
このように、被検体10での放射線の屈折による自己像G1,G2の変位量Δxは、被検体10の位相シフト分布Φ(x)に関連している。そして、この変位量Δxは、放射線画像検出器4で検出される各画素の強度変調信号の位相ズレ量Ψ(被検体10がある場合とない場合とでの各画素の強度変調信号の位相ズレ量)に、次式(13)のように関連している。
【数13】

【0111】
したがって、各画素の強度変調信号の位相ズレ量Ψを求めることにより、上式(13)から屈折角ψが求まり、上式(12)を用いて位相シフト分布Φ(x)の微分量が求まる。この微分量をxについて積分することにより、被検体10の位相シフト分布Φ(x)、すなわち被検体10の位相コントラスト画像を生成することができる。
【0112】
本実施形態においては、位相コントラスト画像の各画素について、5種類の位相情報の検出信号が取得されている。以下に、この5種類の位相情報の検出信号から位相コントラスト画像の各画素の強度変調信号の位相ズレ量Ψを算出する方法を説明する。なお、ここでは5種類の検出信号に限定せず、M種類の検出信号に基づいて位相ズレ量Ψを算出する方法を説明する。
【0113】
まず、M種類の検出信号を取得するには、第1の単位格子UG1の自己像G1,G2に対するX方向についての距離が互いに異なるM種類の副単位格子を配置する必要があるが、第1の単位格子UG1の自己像G1,G2に対するこのM種類の各副単位格子の位置をk=0〜M−1とすると、第k位置における放射線画像検出器4の各画素回路40の検出信号Ik(x)は、次式(14)で表される。
【数14】

【0114】
ここで、xは、画素回路のx方向に関する座標であり、Aは入射放射線の強度であり、Aは強度変調信号のコントラストに対応する値である(ここで、nは正の整数である)。また、ψ(x)は、上記屈折角ψを放射線画像検出器4の画素回路の座標xの関数として表したものである。
【0115】
次いで、次式(15)の関係式を用いると、上記屈折角ψ(x)は、式(16)のように表される。
【数15】

【数16】

【0116】
ここで、arg[]は、偏角の抽出を意味しており、放射線画像検出器4の各画素の位相ズレ量Ψに対応する。したがって、放射線画像検出器4によって取得されたM種類の検出信号から、式(16)に基づいて位相コントラスト画像の各画素の強度変調信号の位相ズレ量Ψを算出することにより、屈折角ψ(x)が求められる。
【0117】
位相コントラスト画像の各画素について取得されたM種類の検出信号は、図9に示すように、自己像G1,G2に対するM種類の各副単位格子の位置kに対して、周期的に変化する。したがって、このM個の検出信号列を、たとえば正弦波でフィッティングし、被検体があるときと被検体なしのときのフィッティングカーブの位相ズレ量Ψを取得し、上式(12)、(13)により位相シフト分布Φ(x)の微分量を算出し、この微分量をxについて積分することにより被検体10の位相シフト分布Φ(x)、すなわち被検体10のX方向成分の位相コントラスト画像を生成する。
【0118】
より具体的には、上述した屈折角ψ(x)を表す式(16)は、下式(17)で表すことができる。
【数17】

【0119】
ここで、δkは、下式(18)で表すことができるので、本実施形態のようにM=5とし、図6に示すk=0の2つの副単位格子SUG1Bに対応する検出信号をI、k=1の2つの副単位格子SUG2Bに対応する検出信号をI、k=2の2つの副単位格子SUG3Bに対応する検出信号をI、k=3の2つの副単位格子SUG4Bに対応する検出信号をI、k=4の副単位格子SUG5Bに対応する検出信号をIとすると、上式(17)の括弧内は、下式(19)のように算出することができ、これにより屈折角ψ(x)を算出することができる。なお、検出信号I〜Iは、それぞれ2つずつ取得されるので、それぞれ下式(19)の分母分子に割り当てられる。また、検出信号Iは1つしか取得されないが、同じ値が下式(19)の分母分子に割り当てられる。
【数18】

【数19】

【0120】
なお、上記のようにして位相コントラスト画像を生成する際、各画素回路40によって検出される検出信号が副単位格子に対応するものであるか、すなわち、その検出信号に対応する副単位格子の自己像G1,G2に対する位置kの情報が必要となるが、この対応関係については各画素回路40について予め設定しておくようにすればよい。
【0121】
もしくは、このような対応関係を予め設定しておくのではなく、9つの副単位格子に対応する9つの画素回路40の範囲を予め設定しておき、その範囲内の画素回路40によって検出された検出信号のうちの最大値と最小値を求め、この最大値と最小値とを上述したフィッティングカーブの最大値と最小値とに設定するとともに、それ以外の画素信号を上記フィッティングカーブの最大値と最小値との間の値に設定することによって位相コントラスト画像を生成するようにしてもよい。
【0122】
上述したようにして、図4に示す2つの第1の単位格子UG1のうちの一方の第1の単位格子UG1に対応する範囲(9個の副単位格子SUG1B〜SUG5Bに対応する範囲)の9個の画素回路40の検出信号に基づいて、第1のX方向成分検出信号が取得される。
【0123】
また、上記と同様の演算によって、図4に示す2つの第1の単位格子UG1のうちの他方の第1の単位格子UG1に対応する範囲(9個の副単位格子SUG1B〜SUG5Bに対応する範囲)の9個の画素回路40の検出信号に基づいて、第2のX方向成分検出信号が取得される。
【0124】
そして、画像生成部5は、この第1のX方向成分検出信号と第2のX方向成分検出信号とに基づいて、位相コントラスト画像の1つの画素のX方向成分画素信号を算出する。X方向成分画素信号の演算方法としては、たとえば、第1および第2のX方向成分検出信号の加算平均などすればよい。
【0125】
また、上記説明では、位相コントラスト画像の1つの画素のX方向成分画素信号の演算方法について説明したが、Y方向成分画素信号についても、方向のみを変更して同様の演算方法によって算出することができる。
【0126】
具体的には、図6に示すk=0の2つの副単位格子SUG1Aに対応する検出信号をI、k=1の2つの副単位格子SUG2Aに対応する検出信号をI、k=2の2つの副単位格子SUG3Aに対応する検出信号をI、k=3の2つの副単位格子SUG4Aに対応する検出信号をI、k=4の副単位格子SUG5Aに対応する検出信号をIとし、上式(19)を算出することによって、屈折角ψ(y)を算出することができる。
【0127】
そして、画像生成部5は、X方向のときと同様にして、図4に示す2つの第2の単位格子UG2に対応する範囲の画素回路40の検出信号に基づいて、第1のY方向成分検出信号と第2のY方向成分検出信号とを取得する。
【0128】
そして、第1のY方向成分検出信号と第2のY方向成分検出信号とに基づいて、位相コントラスト画像の1つの画素のY方向成分画素信号を算出する。Y方向成分画素信号の演算方法としては、たとえば、第1および第2のY方向成分検出信号を加算平均などすればよい。
【0129】
さらに、画像生成部5は、上記ようにして取得したX方向成分画素信号とY方向成分画素信号とに基づいて、位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号を生成する。具体的には、たとえば、X方向成分画素信号とY方向成分画素信号との加算平均などをすればよい。
【0130】
また、上記実施形態においては、第1の単位格子UG1と第2の単位格子UG2のそれぞれの単位格子部材が直交するようにしたが、必ずしも直交する必要はなく、90度以外の角度をなすようにしてもよい。なお、その場合においても、各単位格子の単位格子部材の像と第2の格子3の各副単位格子の副単位格子部材との位置関係は維持されるものとする。
【0131】
また、上記実施形態においては、第1の格子2を2種類の単位格子から構成するようにしたが、これに限らず、たとえば、単位格子部材が、X方向またはY方向に対して0度の角度をなす単位格子と、60度の角度をなす単位格子と、120度の角度をなす単位格子というように、単位格子部材が互いに60度ずつ角度が異なる3種類の単位格子から第1の格子2を構成するようにしてもよい。その場合、それぞれ角度の単位格子について角度に直交する方向成分の検出信号が算出され、3つの方向成分の検出信号に基づいて1つの画素信号が生成される。また、単位格子部材が互いに45度ずつ角度が異なる4種類の単位格子から第1の格子2を構成し、4つの方向成分の検出信号に基づいて1つの画素信号を生成するようにしてもよい。
【0132】
また、図4に示すように、位相コントラスト画像の1つの画素に対応する範囲内における2つの第1の単位格子UG1が占める面積と2つの第2の単位格子UG2が占める面積との比は同じになるようにすることが望ましいが、必ずしも同じでなくてもよく、この比が異なっていてもよい。もしくは、位相コントラスト画像の1つの画素に対応する範囲内において、第1の単位格子UG1と第2の単位格子UG2との面積比が互いに異なる第1および第2の単位格子の組を複数設けるようにしてもよい。たとえば、位相コントラスト画像の1つの画素に対応する範囲内において、面積比が1:2となる第1および第2の単位格子の組と、面積比が2:1となる第1および第2の単位格子の組とを設けるようにしてもよい。
【0133】
また、たとえば、図4に示す2つの第1の単位格子UG1のうちの一方の第1の単位格子UG1の単位格子部材22の配列ピッチと、他方の第1の単位格子部材UG1の単位格子部材22の配列ピッチとを互いに異なるものとしてもよい。これにより同じX方向成分の検出信号であって、互いに異なる周波数情報のX方向成分検出信号を取得することができ、これらの差分を算出して1つの画素信号のX方向成分画素信号を生成することによってエネルギサブトラクションの位相コントラスト画像を生成することができる。なお、上記説明では、2つの第1の単位格子UG1間の配列ピッチを異なるようにしたが、2つの第2の単位格子UG2間の配列ピッチも同様に互いに異なるようにしてもよい。
【0134】
また、上記実施形態においては、第1の格子2の1つの単位格子に対応する範囲に、配列ピッチPで副単位格子部材32が配列された、互いに位相情報が異なる5つの副単位格子を設け、この5つの副単位格子に対応する画素回路40によって検出された検出信号に基づいて、1つの方向成分の画素信号を生成するようにしたが、1つの単位格子に対応する範囲に、配列ピッチPで副単位格子部材32が配列された、互いに位相情報が異なる5つの副単位格子の組の他に、配列ピッチPとは異なる配列ピッチP’で副単位格子部材が配列された、互いに位相情報が異なる5つの副単位格子の組を設け、この配列ピッチP’の副単位格子に対応する画素回路40によって検出された信号に基づいて、同じ方向成分の画素信号であって異なる周波数情報の画素信号を算出するようにしてもよい。なお、配列ピッチP’で副単位格子部材が配列された、互いに位相情報が異なる5つの副単位格子とは、各副単位格子の第1の格子2の単位格子の像に対する距離がP’/5ずつ異なるものである。
【0135】
すなわち、配列ピッチPの互いに位相情報が異なる5つの副単位格子に対応する画素回路40によって検出された検出信号に基づいて、第1周波数情報の方向成分画素信号を算出するとともに、配列ピッチP’の互いに位相情報が異なる5つの副単位格子に対応する画素回路40によって検出された検出信号に基づいて、第2周波数情報の方向成分画素信号を算出し、これらの差分を算出することよって1つの方向成分の画素信号を生成するようにしてもよい。
【0136】
また、上記実施形態においては、第1の格子2の1つの単位格子に対応する範囲に、1つの方向成分検出信号を生成するための5種類の位相情報を有する9個の副単位格子を配置するようにしたが、1つの単位格子と9個の副単位格子の大きさとは必ずしも同じでなくてもよく、図10に示すように、1つの単位格子の範囲の中に9個の副単位格子の組を複数配置するようにしてもよい。
【0137】
すなわち、第1の格子2の1つの単位格子の自己像G1,G2の大きさは、1つの方向成分検出信号を生成するための5種類の位相情報を有する副単位格子の組の大きさと同じか、それよりも大きくすることができる。なお、上述したように1つの副単位格子と1つの画素回路40とが対応するので、5種類の位相情報を有する副単位格子の組の大きさは1つの画素回路の大きさよりも大きくなることになる。
【0138】
また、第2の格子3において、部分的にブリッジが入るようにしても良い。ブリッジとは、第2の格子3を構成する格子部材と格子部材との間に設けられる格子部材間をつなげる部材であって格子部材と同じ材料で構成されるものであり、副単位格子単位の間隔で配置するようにしてもよい。
【0139】
また、上記実施形態における第1の格子2の構成と第2の格子3の構成とを逆の構成としてもよい。すなわち、第1の格子2を多数の副単位格子から構成するようにし、第2の格子3を多数の単位格子から構成するようにしてもよい。
【0140】
次に、本発明の放射線画像撮影装置の第2の実施形態を用いた放射線位相画像撮影装置について説明する。上記第1の実施形態の放射線位相画像撮影装置は、第1の格子2から第2の格子3までの距離Zがタルボ干渉距離となるように、上式(4)〜上式(9)のいずれかを満たすようにしたが、第2の実施形態の放射線位相画像撮影装置は、第1の格子2が入射放射線を回折せずに投影させる構成としたものである。これにより第1の格子2を通過して射影される投影像が、第1の格子2の後方の位置で相似的に得られるため、第1の格子2から第2の格子3までの距離Zを、タルボ干渉距離を無関係に設定することができる。
【0141】
具体的には、第2の実施形態の放射線位相画像撮影装置においては、第1の格子2と第2の格子3とが、ともに吸収型(振幅変調型)格子として構成されるとともに、タルボ干渉効果に関わらず、スリット部を通過した放射線を幾何学的に投影するように構成されている。より詳細には、第1の格子2の単位格子部材22の間隔dと第2の格子3副単位格子部材32の間隔dとを、放射線照射部1から照射される放射線の実効波長より十分大きな値とすることで、照射放射線に含まれる大部分をスリット部で回折せずに、直進性を保ったまま通過するように構成する。たとえば、放射線源のターゲットとしてタングステンを用いた場合には、放射線の実効波長は、管電圧を50kVにおいて約0.4Åである。この場合には、第1の格子2の単位格子部材22の間隔dと第2の格子3の副単位格子部材32の間隔dを、1μm〜10μm程度とすれば大部分の放射線がスリットによって回折されずに幾何学的に投影される。
【0142】
なお、第1の格子2の単位格子部材22の配列ピッチPと第2の格子3の副単位格子部材32の配列ピッチPとの関係は、上記第1の実施形態と同様である。また、第1の格子2の各単位格子に対する第2の格子3の副単位格子の構成についても、上記第1の実施形態と同様である。
【0143】
そして、第2の実施形態においては、第1の格子2と第2の格子3との距離Zを、上式(6)においてm’=1とした場合の最小のタルボ干渉距離より短い値に設定することができる。すなわち、上記距離Zが、次式(20)を満たす範囲の値に設定することができる。
【数20】

【0144】
なお、第1の格子2の単位格子部材22と第2の格子3の副単位格子部材32とは、コントラストの高い周期パターン像を生成するためには、放射線を完全に遮蔽(吸収)することが好ましいが、上述した放射線吸収に優れる材料(金、白金等)を用いたとしても、吸収されずに透過する放射線が少なからず存在する。このため、放射線の遮蔽性を高めるためには、単位格子部材22および副単位格子部材32のそれぞれの厚みを、可能な限り厚くすることが好ましい。単位格子部材22および副単位格子部材32による遮蔽は、照射放射線の90%以上であることが好ましく、たとえば、放射線照射部1の管電圧が50kVの場合には、厚みは、金(Au)換算で100μm以上であることが好ましい。
【0145】
なお、第2の実施形態の放射線位相画像撮影装置における位相コントラスト画像の生成方法については、上記第1の実施形態と同様である。
【0146】
第2の実施形態の放射線位相画像撮影装置によれば、第1の格子2と第2の格子3との距離Z2をタルボ干渉距離よりも短くすることができるので、一定のタルボ干渉距離を確保しなければならない第1の実施形態の放射線位相画像撮影装置と比較すると、撮影装置をより薄型化することができる。
【0147】
また、第2の実施形態においても、第1の格子2の単位格子や第2の格子3の副単位格子の構成として、上記第1の実施形態と同様に種々のバリエーションを採用することができる。
【0148】
また、図4に示す第1の単位格子UG1と第2の単位格子UG2のうちのいずれか一方の単位格子を上述したような吸収型格子として構成し、タルボ干渉効果に関わらず、スリット部を通過した放射線を幾何学的に投影するような構成とし、他方の単位格子を第1の実施形態のようなタルボ干渉効果を得ることができるような構成としてもよい。もしくは、2つの第1の単位格子UG1のうちの一方の第1の単位格子UG1を上述したような吸収型格子として構成し、タルボ干渉効果に関わらず、スリット部を通過した放射線を幾何学的に投影するような構成とし、他方の第1の単位格子UG1を第1の実施形態のようなタルボ干渉効果を得ることができるような構成としたり、2つの第2の単位格子UG2のうちの一方の第2の単位格子UG2を上述したような吸収型格子として構成し、タルボ干渉効果に関わらず、スリット部を通過した放射線を幾何学的に投影するような構成とし、他方の第2の単位格子UG2を第1の実施形態のようなタルボ干渉効果を得ることができるような構成としたりしてもよい。
【0149】
このように構成することにより、タルボ干渉の場合にはある特定波長の情報を取り出せるのに対し、投影の場合は広い波長範囲の情報をまとめて取り出すことができる。これらを組み合わせることでX線エネルギーの効率化とともに、画像の情報量を増やすことができる。
【0150】
また、上記第1および第2の実施形態においては、TFT読取方式の放射線画像検出器を用いるようにしたが、CMOSセンサを用いた放射線画像検出器や光読取方式の放射線画像検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線を可視光に変換する波長変換層の変わりに、放射線を直接電荷に変換する直接変換層を用いてもよい。以下、光読取方式の放射線画像検出器について説明する。
【0151】
図11(A)は、光読取方式の放射線画像検出器50の斜視図、図11(B)は図11(A)に示す放射線画像検出器のXZ面断面図、図11(C)は図11(A)に示す放射線画像検出器のYZ面断面図である。
【0152】
光読取方式の放射線画像検出器50は、図11(A)〜(C)に示すように、放射線を透過する第1の電極層51、第1の電極層51を透過した放射線の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層52、記録用光導電層52において発生した電荷のうち一方の極性の電荷に対しては絶縁体として作用し、且つ他方の極性の電荷に対しては導電体として作用する電荷蓄積層53、読取光の照射を受けることにより電荷を発生する読取用光導電層54、および第2の電極層55をこの順に積層してなるものである。なお、上記各層は、ガラス基板56上に第2の電極層55から順に形成されている。
【0153】
第1の電極層51としては、放射線を透過するものであればよく、たとえば、ネサ皮膜(SnO2)、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、アモルファス状光透過性酸化膜であるIDIXO(Idemitsu Indium X-metal Oxide ;出光興産(株))などを50〜200nm厚にして用いることができ、また、100nm厚のAlやAuなども用いることもできる。
【0154】
記録用光導電層52は、放射線の照射を受けることにより電荷を発生するものであればよく、放射線に対して比較的量子効率が高く、また暗抵抗が高いなどの点で優れているa−Seを主成分とするものを使用する。厚さは10μm以上1500μm以下が適切である。また、特にマンモグラフィ用途である場合には、150μm以上250μm以下であることが好ましく、一般撮影用途である場合には、500μm以上1200μm以下であることが好ましい。
【0155】
電荷蓄積層53は、蓄積したい極性の電荷に対して絶縁性の膜であれば良く、アクリル系有機樹脂、ポリイミド、BCB、PVA、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド等のポリマーやAs、Sb、ZnS等の硫化物、その他に酸化物、フッ化物より構成される。更には、蓄積したい極性の電荷に対して絶縁性であり、それと逆の極性の電荷に対しては導電性を有する方がより好ましく、移動度×寿命の積が、電荷の極性により3桁以上差がある物質が好ましい。
【0156】
好ましい化合物としては、AsSe、AsSeにCl、Br、Iを500ppmから20000ppmまでドープしたもの、AsSeのSeをTeで50%程度まで置換したAs(SeTe1−x(0.5<x<1)、AsSeのSeをSで50%程度まで置換したもの、AsSeからAs濃度を±15%程度変化させたAsSe(x+y=100、34≦x≦46)、アモルファスSe−Te系でTeを5−30wt%のもの等が挙げられる。
【0157】
なお、電荷蓄積層53の材料としては、第1の電極層51と第2の電極層55との間に形成される電気力線が曲がらないようにするため、その誘電率が、記録用光導電層52と読取用光導電層54の誘電率の1/2倍以上2倍以下のものを用いることが望ましい。
【0158】
読取用光導電層54としては、読取光の照射を受けることにより導電性を呈するものであればよく、たとえば、a−Se、Se−Te、Se−As−Te、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン、MgPc(Magnesium phthalocyanine),VoPc(phaseII of Vanadyl phthalocyanine)、CuPc(Copper phtalocyanine)などのうち少なくとも1つを主成分とする光導電性物質が好適である。厚さは5〜20μm程度が適切である。
【0159】
第2の電極層55は、読取光を透過する複数の透明線状電極55aと読取光を遮光する複数の遮光線状電極55bとを有するものである。透明線状電極55aと遮光線状電極55bとは、放射線画像検出器50の画像形成領域の一方の端部から他方の端部まで連続して直線状に延びるものである。そして、透明線状電極55aと遮光線状電極55bとは、図11(A),(B)に示すように、所定の間隔を空けて交互に平行に配列されている。
【0160】
透明線状電極55aは読取光を透過するとともに、導電性を有する材料から形成されている。たとえば、第1の電極層51と同様に、ITO、IZOやIDIXOを用いることができる。そして、その厚さは100〜200nm程度である。
【0161】
遮光線状電極55bは読取光を遮光するとともに、導電性を有する材料から形成されている。たとえば、上記の透明導電材料とカラーフィルターを組み合せて用いることができる。透明導電材料の厚さは100〜200nm程度である。
【0162】
そして、上述した光読取方式の放射線画像検出器50においては、後で詳述するが、隣接する透明線状電極55aと遮光線状電極55bとの1組を用いて画像信号が読み出される。すなわち、図11(B)に示すように、1組の透明線状電極55aと遮光線状電極55bとによって1画素の画像信号が読み出されることになる。すなわち、1組の透明線状電極55aと遮光線状電極55bが、上記第1の実施形態の放射線画像検出器4における画素回路40の列に相当することになる。ここでは、1画素が略50μmとなるように透明線状電極55aと遮光線状電極55bとが配置されているものとする。
【0163】
そして、本実施形態の放射線位相画像撮影装置は、図11(A)に示すように、透明線状電極55aと遮光線状電極55bの延伸方向に直交する方向(X方向)に延設された線状読取光源60を備えている。本実施形態の線状読取光源60は、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)などの光源と所定の光学系とから構成され、透明線状電極55aおよび遮光線状電極55bの延伸方向(Y方向)について略10μmの幅の線状の読取光を放射線画像検出器50に照射するように構成されている。そして、この線状読取光源60は、所定の移動機構(図示省略)によってY方向について移動するものであり、この移動により線状読取光源60から発せられた線状の読取光によって放射線画像検出器50が走査されて画像信号が読み出される。
【0164】
したがって、この線状の読取光による読取ラインが、上記第1の実施形態の放射線画像検出器4の画素回路40の行に相当することになる。そして、上述したように1組の透明線状電極55aと遮光線状電極55bとが上記第1の実施形態の放射線画像検出器4の画素回路40の列に相当するので、上記光読取方式の放射線画像検出器50においては、読取ラインと1組の透明線状電極55aと遮光線状電極55bとによって画素部が形成され、第1の格子2の単位格子はこの画素部の単位で形成されるものとする。
【0165】
次に、上記光読取方式の放射線画像検出器50における画像検出と読出しの作用について説明する。
【0166】
まず、図12(A)に示すように高圧電源100によって放射線画像検出器50の第1の電極層51に負の電圧を印加した状態において、第1の格子2の自己像G1,G2と第2の格子3との重ね合わせによって強度変調された放射線が、放射線画像検出器50の第1の電極層51側から照射される。
【0167】
そして、放射線画像検出器50に照射された放射線は、第1の電極層51を透過し、記録用光導電層52に照射される。そして、その放射線の照射によって記録用光導電層52において電子−正孔対が発生し、そのうち正の電荷は第1の電極層51に帯電した負の電荷と結合して消滅し、負の電荷は潜像電荷として電荷蓄積層53に蓄積される(図12(B)参照)。
【0168】
次に、図13に示すように、第1の電極層51が接地された状態において、線状読取光源60から発せられた線状の読取光L1が第2の電極層55側から照射される。読取光L1は透明線状電極55aを透過して読取用光導電層54に照射され、その読取光L1の照射により読取用光導電層54において発生した正の電荷が電荷蓄積層53に蓄積された潜像電荷と結合するとともに、負の電荷が、透明線状電極55aに接続されたチャージアンプ200を介して遮光線状電極55bに帯電した正の電荷と結合する。
【0169】
そして、読取用光導電層54において発生した負の電荷と遮光線状電極55bに帯電した正の電荷との結合によって、チャージアンプ200に電流が流れ、この電流が積分されて画像信号として検出される。
【0170】
そして、線状読取光源60が、Y方向に移動することによって線状の読取光L1によって放射線画像検出器50が走査され、線状の読取光L1の照射された読取ライン毎に上述した作用によって読み出された検出信号が順次検出され、その検出された読取ライン毎の検出信号が画像生成部5に順次入力されて記憶される。
【0171】
そして、画像生成部5において、上記第1の実施形態の同様にして、5種類の副単位格子に応じた検出信号に基づいて、X方向成分画素信号とY方向成分画素信号とがそれぞれ算出され、このX方向成分画素信号とY方向成分画素信号とに基づいて、位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号が生成される。
【0172】
また、上記実施形態においては、位相コントラスト画像を取得することによりこれまで描出が難しかった画像を得ることができるが、従来のX線画像診断学は吸収画像に基づいているため、位相コントラスト画像と対応して吸収画像が参照できると読影の助けになる。たとえば、吸収画像と位相コントラスト画像を重み付けや階調、周波数処理などの適当な処理によって重ね合わせることにより吸収画像が表現できなかった部分を位相コントラスト画像の情報で補うことは有効である。
【0173】
しかし、位相コントラスト画像とは別に吸収画像を撮影することは、位相コントラスト画像の撮影と吸収画像の撮影との間の撮影肢体のズレによって良好な重ね合わせを困難にするのに加え、撮影回数が増えることにより被検体の負担となる。また、近年、位相コントラスト画像や吸収画像の他に、小角散乱画像が注目されている。小角散乱画像は、被検体組織内部の微細構造に起因する組織性状を表現可能であり、たとえば、ガンや循環器疾患といった分野での新しい画像診断のための表現方法として期待されている。
【0174】
そこで、画像生成部5において、位相コントラスト画像を生成するために取得した複数種類の副単位格子に対応する検出信号に基づいて吸収画像や小角散乱画像を生成するようにしてもよい。
【0175】
具体的には、画素回路40または画素部毎に得られる検出信号Ik(x,y)を、図14に示すようにkについて平均化して平均値を算出して画像化することにより吸収画像を生成することができる。なお、平均値の算出は、検出信号Ik(x,y)をkについて単純に平均化することにより行ってもよいが、Mが小さい場合には誤差が大きくなるため、画素信号Ik(x,y)を正弦波でフィッティングした後、フィッティングした正弦波の平均値を求めるようにしてもよい。また、正弦波に限らず、矩形波や三角波形状を用いるようにしてもよい。
【0176】
また、吸収画像の生成には、平均値に限られず、平均値に対応する量であれば、検出信号Ik(x,y)をkについて加算した加算値等を用いることが可能である。
【0177】
また、画素回路40または画素部毎に得られる検出信号Ik(x,y)の振幅値を算出して画像化することにより小角散乱画像を生成することができる。なお、振幅値の算出は、検出信号Ik(x,y)の最大値と最小値との差を求めることによって行ってもよいが、Mが小さい場合には誤差が大きくなるため、検出信号Ik(x,y)を正弦波でフィッティングした後、フィッティングした正弦波の振幅値を求めるようにしてもよい。また、小角散乱画像の生成には、振幅値に限られず、平均値を中心としたばらつきに対応する量として、分散値や標準偏差などを用いることができる。
【0178】
また、上記実施形態の放射線位相画像撮影装置においては、第1の格子2と第2の格子3との2つの格子を用いるようにしたが、第2の格子3の機能を放射線画像検出器にもたせることによって第2の格子3を用いないようにすることができる。以下、第2の格子3の機能を有する放射線画像検出器の構成について説明する。
【0179】
第2の格子3の機能を有する放射線画像検出器は、放射線が第1の格子2を通過することによって第1の格子2によって形成された第1の格子2の自己像G1,G2を検出するとともに、その自己像G1,G2に応じた電荷信号を後述する格子状に分割された電荷蓄積層に蓄積することによって自己像G1,G2に強度変調を施すものである。
【0180】
図15(A)は、第2の格子3の機能を有する放射線画像検出器400の斜視図、図15(B)は図18(A)に示す放射線画像検出器のXZ面断面図である。
【0181】
放射線画像検出器400は、図15(A)および(B)に示すように、放射線を透過する第1の電極層410、第1の電極層410を透過した放射線の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層420、記録用光導電層420において発生した電荷のうち一方の極性の電荷に対しては絶縁体として作用し、且つ他方の極性の電荷に対しては導電体として作用する電荷蓄積層430、読取光の照射を受けることにより電荷を発生する読取用光導電層440、および第2の電極層450をこの順に積層してなるものである。なお、上記各層は、ガラス基板460上に第2の電極層450から順に形成されている。
【0182】
そして、第2の格子3の機能を有する放射線画像検出器400は、第1の電極層410、記録用光導電層420、電荷蓄積層430、読取用光導電層440および第2の電極層450の材料については、上述した光読取方式の放射線画像検出器50の第1の電極層51、記録用光導電層52、電荷蓄積層53、読取用光導電層54および第2の電極層55と同様である。
【0183】
そして、第2の格子3の機能を有する放射線画像検出器400は、上記光読取方式の放射線画像検出器50と電荷蓄積層430の形状が異なる。放射線画像検出器400の電荷蓄積層430は、図16示すように、上述した第2の格子3の各副単位格子と同様の形状の副単位格子パターンによって構成されている。
【0184】
図16に示す単位格子パターンP1Aが図5に示す副単位格子SUG1Aに対応する形状であり、単位格子パターンP2Aが図5に示す副単位格子SUG2Aに対応する形状であり、単位格子パターンP3Aが図5に示す副単位格子SUG3Aに対応する形状であり、単位格子パターンP4Aが図5に示す副単位格子SUG4Aに対応する形状であり、単位格子パターンP5Aが図5に示す副単位格子SUG5Aに対応する形状である。
【0185】
また、図16に示す単位格子パターンP1Bが図5に示す副単位格子SUG1Bに対応する形状であり、単位格子パターンP2Bが図5に示す副単位格子SUG2Bに対応する形状であり、単位格子パターンP3Bが図5に示す副単位格子SUG3Bに対応する形状であり、単位格子パターンP4Bが図5に示す副単位格子SUG4Bに対応する形状であり、単位格子パターンP5Bが図5に示す副単位格子SUGB5Bに対応する形状である。
【0186】
また、電荷蓄積層430の副単位格子パターンを構成する副単位格子部は、透明線状電極450aもしくは遮光線状電極450bの配列ピッチよりも細かいピッチで分割されるが、その配列ピッチPと間隔dは、上記実施形態の第2の格子3の副単位格子の副単位格子部材32の条件と同様である。
【0187】
また、電荷蓄積層430は、積層方向(Z方向)について2μm以下の厚さで形成される。
【0188】
そして、電荷蓄積層430は、たとえば、上述したような材料と金属板に穴を空けたメタルマスクやファイバーなどによって形成されたマスクとを用いて抵抗加熱蒸着によって形成することができる。また、フォトリソグラフィを用いて形成するようにしてもよい。
【0189】
なお、タルボ干渉計として機能させるための第1の格子2と放射線画像検出器400との距離の条件については、放射線画像検出器400が第2の格子3として機能するものであるので、第1の格子2と第2の格子3との距離の条件と同様である。また、上記第2の実施形態のように第1の格子2が入射放射線を回折せずに投影させる構成とし、第1の格子2から放射線画像検出器400までの距離Zを、タルボ干渉距離を無関係に設定するようにしてもよく、上式(20)を満たすような距離としてもよい。
【0190】
次に、上記のように構成された放射線画像検出器400の作用について説明する。
【0191】
まず、図17(A)に示すように高圧電源100によって放射線画像検出器400の第1の電極層410に負の電圧を印加した状態において、タルボ効果によって形成された第1の格子2の自己像G1,G2を担持した放射線が、放射線画像検出器400の第1の電極層410側から照射される。
【0192】
そして、放射線画像検出器400に照射された放射線は、第1の電極層410を透過し、記録用光導電層420に照射される。そして、その放射線の照射によって記録用光導電層420において電子−正孔対が発生し、そのうち正の電荷は第1の電極層410に帯電した負の電荷と結合して消滅し、負の電荷は潜像電荷として電荷蓄積層430に蓄積される(図17(B)参照)。
【0193】
ここで、電荷蓄積層430は、上述したような配列ピッチで副単位格子パターンに分割されているので、記録用光導電層420において第1の格子2の自己像G1,G2に応じて発生した電荷のうちその直下に電荷蓄積層430が存在する電荷のみが電荷蓄積層430によってトラップされて蓄積され、それ以外の電荷については線状の電荷蓄積層430の間を通過し、読取用光導電層440を通過した後、透明線状電極450aと遮光線状電極450bとに流れ出してしまう。
【0194】
このように記録用光導電層420において発生した電荷のうち、その直下に線状の電荷蓄積層430が存在する電荷のみを蓄積する。この作用によって第1の格子2の各単位格子の自己像G1,G2は電荷蓄積層430の副単位格子パターンとの重ね合わせによって強度変調を受け、被検体による自己像G1,G2の波面の歪みを反映した縞画像の画像信号が電荷蓄積層430に蓄積されることになる。すなわち、電荷蓄積層430は、上記実施形態の第2の格子3と同等の機能を果たすことになる。
【0195】
そして、次に、図18に示すように、第1の電極層410が接地された状態において、線状読取光源60から発せられた線状の読取光L1が第2の電極層450側から照射される。読取光L1は透明線状電極450aを透過して読取用光導電層440に照射され、その読取光L1の照射により読取用光導電層440において発生した正の電荷が電荷蓄積層430における潜像電荷と結合するとともに、負の電荷が、透明線状電極450aに接続されたチャージアンプ200を介して遮光線状電極450bに帯電した正の電荷と結合する。
【0196】
そして、読取用光導電層440において発生した負の電荷と遮光線状電極450bに帯電した正の電荷との結合によって、チャージアンプ200に電流が流れ、この電流が積分されて画像信号として検出される。
【0197】
そして、線状読取光源60が、副走査方向(Y方向)に移動することによって線状の読取光L1によって放射線画像検出器400が走査され、線状の読取光L1の照射された読取ライン毎に上述した作用によって読み出された検出信号が順次検出され、その検出された読取ライン毎の検出信号が画像生成部5に順次入力されて記憶される。
【0198】
そして、放射線画像検出器400の全面が読取光L1に走査されて1フレーム全体の読出信号が画像生成部5に出力される。
【0199】
そして、画像生成部5において、上記第1の実施形態の同様にして、5種類の副単位格子パターンに応じた検出信号に基づいて、X方向成分画素信号とY方向成分画素信号とがそれぞれ算出され、このX方向成分画素信号とY方向成分画素信号とに基づいて、位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号が生成される。
【0200】
また、上述した第2の格子3の機能を有する放射線画像検出器400おいては、電極間に、記録用光導電層420、電荷蓄積層430および読取用光導電層440の3層を設ける構成としたが、必ずしもこの層構成である必要はなく、たとえば、図19に示すように、読取用光導電層440を設けることなく、第2の電極層の透明線状電極450aおよび遮光線状電極450b上に直接接触するように副単位格子パターンの電荷蓄積層430を設け、その電荷蓄積層430の上に記録用光導電層420を設けるようにしてもよい。なお、この記録用光導電層420は、読取用光導電層としても機能するものである。
【0201】
この放射線画像検出器401の構造は、読取用光導電層440なしに第2の電極層450に直接電荷蓄積層430を設ける構造であり、線状の電荷蓄積層43は、蒸着で形成することができるため、副単位格子パターンの電荷蓄積層430の形成を容易にすることができる。蒸着工程においては、選択的に副単位格子パターンを形成するためにメタルマスクなどを用いる。読取用光導電層440の上に副単位格子パターンの電荷蓄積層430を設ける構成では、読取用光導電層440の蒸着後に線状の電荷蓄積層43を蒸着で形成するためのメタルマスクをセットする工程が必要なため、読取用光導電層440の蒸着工程と記録用光導電層420の蒸着工程の間で大気中操作により、読取用光導電層440に劣化や、光導電層間に異物が混入して品質の劣化をもたらす虞がある。一方、上述した読取用光導電層440を設けない構造とすることで、光導電層の蒸着後の大気中操作を減らすことができるため、上述の品質劣化の懸念を低減することができる。
【0202】
記録用光導電層420および電荷蓄積層430の材料については、上述した放射線画像検出器400と同様である。また、電荷蓄積層430の副単位格子パターンの形状についても、上述した放射線画像検出器と同様である。
【0203】
以下に、この放射線画像検出器401の放射線画像の記録と読み出しの作用について説明する。
【0204】
まず、図20(A)に示すように高圧電源100によって放射線画像検出器401の第1の電極層410に負の電圧を印加した状態において、第1の格子2の自己像G1,G2を担持した放射線が、放射線画像検出器401の第1の電極層410側から照射される。
【0205】
そして、放射線画像検出器401に照射された放射線は、第1の電極層410を透過し、記録用光導電層420に照射される。そして、その放射線の照射によって記録用光導電層420において電子−正孔対が発生し、そのうち正の電荷は第1の電極層410に帯電した負の電荷と結合して消滅し、負の電荷は潜像電荷として電荷蓄積層430に蓄積される(図20(B)参照)。なお、第2の電極層450に接した副単位格子パターンの電荷蓄積層430は絶縁性の膜であるから、この電荷蓄積層430に到達した電荷はそこに捕えられ、第2の電極層450へ行くことができず、蓄積されて留まる。
【0206】
ここでも、上述した放射線画像検出器400と同様に、記録用光導電層420において発生した電荷のうち、その直下に副単位格子パターンの電荷蓄積層430が存在する電荷のみを蓄積する。この作用によって、第1の格子2の自己像G1,G2は電荷蓄積層430の副単位格子パターンとの重ね合わせにより強度変調を受け、被検体による自己像G1,G2の波面の歪みを反映した縞画像の画像信号が電荷蓄積層430に蓄積されることになる。
【0207】
そして、図21に示すように、第1の電極層410が接地された状態において、線状読取光源60から発せられた線状の読取光L1が第2の電極層450側から照射される。読取光L1は、透明線状電極450aを透過して電荷蓄積層430近傍の記録用光導電層420に照射され、その読取光L1の照射により発生した正の電荷が線状の電荷蓄積層430へ引き寄せられて再結合する。そして、もう一方の負の電荷は、透明線状電極450aへ引き寄せられ、透明線状電極450aに帯電した正の電荷および透明線状電極450aに接続されたチャージアンプ200を介して遮光線状電極450bに帯電した正の電荷と結合する。これによりチャージアンプ200に電流が流れ、この電流が積分されて画像信号として検出される。
【0208】
また、上述した放射線画像検出器400,401においては、電荷蓄積層430を、完全に線状に分離して副単位格子パターンを形成するようにしたが、これに限らず、たとえば、図22に示す放射線画像検出器402のように、平板形状の上に線状のパターンを形成することによって副単位格子パターンの電荷蓄積層430を形成するようにしてもよい。
【0209】
また、上述した放射線画像検出器400〜402においては、電荷蓄積層430を、上記実施形態における第2の格子3と同様に副単位格子パターンに形成するようにしたが、これに限らず、上記実施形態における第1の格子2の各単位格子の構成を電荷蓄積層430に採用し、第1の格子2の構成として、上記実施形態における第2の格子3の構成を採用するようにしてもよい。すなわち、電荷蓄積層430を多数の単位格子パターンから構成し、第1の格子2を多数の副単位格子から構成するようにしてもよい。
【0210】
また、上記実施形態においては、第2の格子3を複数種類の副単位格子から構成することによって、複数種類の位相情報の検出信号を取得するようにしたが、これに限らず、たとえば、第2の格子3を、Y方向に延びる線状の格子部材をX方向に配列ピッチPおよび間隔dで配列したものとし、この第2の格子3を所定の移動機構によってX方向についてP/Mずつ移動させながら第1の単位格子UG1に対応する範囲の画素回路40の検出信号を取得することによってM種類の検出信号を取得し、さらにこの第2の格子3を所定の移動機構によってY方向についてP/Mずつ移動させながら第2の単位格子UG2に対応する範囲の画素回路40の検出信号を取得することによってM種類の検出信号を取得するようにしてもよい。また、第2の格子3をX方向に対して45度の斜め方向に移動させながら各画素回路40の検出信号を取得することによっても、上記と同様に、X方向についてのM種類の検出信号と、Y方向についてのM種類の検出信号とを取得することができる。
【0211】
また、上述した第2の格子3の機能を有する放射線画像検出器を用いる場合には、上記と同様に、電荷蓄積層430を、Y方向に延びる線状の格子パターンをX方向に配列ピッチPおよび間隔dで配列したものとし、放射線画像検出器を上記のように移動させるようにしてもよい。
【0212】
また、上記実施形態の放射線画像撮影装置においては、1回の撮影で複数種類の位相情報の画像信号を取得することができるので、上述したような即座に繰り返し使用可能な半導体の検出器に限らず、蓄積性蛍光体シートや銀塩フイルムなども利用することができる。なお、この場合、蓄積性蛍光体シートや現像された銀塩フイルムなどを読み取る際の読取画素が請求項における画素部に相当するものとする。
【0213】
また、上記実施形態の放射線画像撮影装置については、乳房画像を撮影する乳房画像撮影表示システムや、被検者を立位状態で撮影する放射線画像撮影システムや、被検者を臥位状態で撮影する放射線画像撮影システムや、被検者を立位状態および臥位状態で撮影可能な放射線画像撮影システムや、長尺撮影を行う放射線画像システムなどに適用可能である。
【0214】
さらに、上記実施形態の放射線画像撮影装置については、3次元画像を取得する放射線位相CT装置や、立体視が可能なステレオ画像を取得するステレオ撮影装置や、断層画像を取得するトモシンセシス撮影装置などにも適用することも可能である。
【符号の説明】
【0215】
1 放射線照射部
1a 放射線源
1b 2次元格子
2 第1の格子
3 第2の格子
4 放射線画像検出器
5 画像生成部
10 被検体
21 基板
22 単位格子部材
31 基板
32 副単位格子部材
40 画素回路
41 TFTスイッチ
43 ゲート走査線
44 データ線
45 走査駆動回路
46 信号検出部
50 放射線画像検出器
51 第1の電極層
52 記録用光導電層
53 電荷蓄積層
54 読取用光導電層
55 第2の電極層
55a 透明線状電極
55b 遮光線状電極
60 線状読取光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子構造が周期的に配置され、放射線源から射出された放射線を通過させて第1の周期パターン像を形成する第1の格子と、
格子構造が周期的に配置され、前記第1の格子により形成された周期パターン像が入射されて第2の周期パターン像を形成する第2の格子と、
該第2の格子により形成された第2の周期パターン像を検出する画素部が2次元状に配列された放射線画像検出器と、
前記放射線画像検出器において検出された前記第2の周期パターン像を表す画像信号に基づいて位相コントラスト画像を生成する画像生成部とを備えた放射線画像撮影装置であって、
前記第1の格子および前記第2の格子のいずれか一方の前記格子が、前記位相コントラスト画像を構成する1つの画素に対応する所定の範囲内に複数の単位格子が配列されたものであるとともに、該各単位格子を構成する単位格子部材が互いに異なる方向に延びるものであり、
前記画像生成部が、前記所定の範囲内の複数の単位格子に対応する前記画素部によって検出された複数の検出信号に基づいて、前記位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号を生成するものであることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記他方の格子が、前記単位格子よりも小さくかつ前記画素部に対応する単位で構成された副単位格子を複数配列したものであるとともに、前記1つの単位格子に対応する範囲内において複数の前記副単位格子が、前記単位格子の延伸方向に直交する方向について該単位格子に対して互いに異なる距離だけ平行にシフトして配置されたものであり、
前記画像生成部が、前記1つの単位格子に対応する範囲内に配置された各副単位格子に対応する前記画素部によって検出された検出信号に基づいて、前記1つの単位格子の検出信号を生成するものであることを特徴とする請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記第1の格子が前記単位格子を複数配列したものであるとともに、前記第2の格子が前記副単位格子を複数配列したものであり、
前記第1の格子の1つの単位格子に対応する範囲内の複数の前記副単位格子が、前記第1の格子の像に対してP/Mずつ平行にシフトして配列されたものであることを特徴とする請求項2記載の放射線画像撮影装置。
ただし、Pは前記第2の格子のピッチ、Mは前記位相コントラスト画像を構成する1つの画素を生成するために用いられる予め設定された位相情報の数
【請求項4】
前記第2の格子が前記単位格子を複数配列したものであるとともに、前記第1の格子が前記副単位格子を複数配列したものであり、
前記第2の格子の1つの単位格子に対応する範囲内の複数の前記副単位格子の像が、前記第2の格子に対してP/Mずつ平行にシフトして配列されたものであることを特徴とする請求項2記載の放射線画像撮影装置。
ただし、Pは前記第2の格子のピッチ、Mは前記位相コントラスト画像を構成する1つの画素を生成するために用いられる予め設定された位相情報の数
【請求項5】
前記各単位格子を構成する単位格子部材が、互いに直交する方向に延びるものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記所定の範囲内の複数の単位格子が、千鳥格子状に配置されていることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記所定の範囲内における互いに異なる種類の単位格子同志の面積比が同じとなるように前記複数の単位格子が配置されていることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記所定の範囲内において、同じ方向に延びる前記単位格子部材から構成された単位格子が複数配置されているとともに、該複数の単位格子同志の前記単位格子部材の配列ピッチが異なるものであることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記各単位格子に対応する範囲内において配列ピッチが互いに異なる複数種類の副単位格子が配置されていることを特徴とする請求項2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記第2の格子が、前記第1の格子からタルボ干渉距離の位置に配置され、
前記第1の格子のタルボ干渉効果によって形成される前記第1の周期パターン像に強度変調を与えるものであることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項11】
前記第1の格子が、前記放射線を投影像として通過させて前記第1の周期パターン像を形成する吸収型格子であり、
前記第2の格子が、前記第1の格子を通過した前記投影像としての前記第1の周期パターン像に強度変調を与えるものであることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項12】
前記第2の格子が、前記第1の格子から最小のタルボ干渉距離より短い距離に配置されていることを特徴とする請求項11記載の放射線画像撮影装置。
【請求項13】
格子構造が周期的に配置され、放射線源から射出された放射線を通過させて周期パターン像を形成する格子と、
該格子によって形成された周期パターン像を透過する第1の電極層と、該第1の電極層を透過した前記周期パターン像の照射を受けて電荷を発生する光導電層と、該光導電層において発生した電荷を蓄積する電荷蓄積層と、読取光を透過する線状電極が多数配列された第2の電極層とがこの順に積層され、前記読取光によって走査されることによって前記各線状電極に対応する画素部毎の検出信号が読み出される放射線画像検出器と、
該放射線画像検出器において検出された前記周期パターン像を表す画像信号に基づいて位相コントラスト画像を生成する画像生成部とを備えた放射線画像撮影装置であって、
前記電荷蓄積層が、前記線状電極の配列ピッチよりも細かいピッチで格子状に形成されたものであり、
前記格子が、前記位相コントラスト画像を構成する1つの画素に対応する所定の範囲内に複数の単位格子が配列されたものであるとともに、該各単位格子を構成する単位格子部材が互いに異なる方向に延びるものであり、
前記画像生成部が、前記所定の範囲内の複数の単位格子に対応する前記画素部によって検出された複数の検出信号に基づいて、前記位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号を生成するものであることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項14】
前記電荷蓄積層が、前記単位格子よりも小さくかつ前記画素部に対応する単位で構成された副単位格子パターンを複数配列したものであるとともに、前記1つの単位格子に対応する範囲内において複数の前記副単位格子パターンが、前記単位格子の延伸方向に直交する方向について該単位格子に対して互いに異なる距離だけ平行にシフトして配置されたものであり、
前記画像生成部が、前記1つの単位格子に対応する範囲内に配置された各副単位格子パターンに対応する前記画素部によって検出された検出信号に基づいて、前記1つの単位格子の検出信号を生成するものであることを特徴とする請求項13記載の放射線画像撮影装置。
【請求項15】
前記格子の1つの単位格子に対応する範囲内の複数の副単位格子パターンが、前記格子の像に対してP/Mずつ平行にシフトして配列されたものであることを特徴とする請求項14記載の放射線画像撮影装置。
ただし、Pは前記副単位格子パターンのピッチ、Mは前記位相コントラスト画像を構成する1つの画素を生成するために用いられる予め設定された位相情報の数
【請求項16】
前記各単位格子を構成する単位格子部材が、互いに直交する方向に延びるものであることを特徴とする請求項13から15いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項17】
前記所定の範囲内の複数の単位格子が、千鳥格子状に配置されていることを特徴とする請求項13から16いずれか1項項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項18】
前記所定の範囲内における互いに異なる種類の単位格子同志の面積比が同じとなるように前記複数の単位格子が配置されていることを特徴とする請求項13から17いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項19】
前記所定の範囲内において、同じ方向に延びる前記単位格子部材から構成された単位格子が複数配置されているとともに、該複数の単位格子同志の前記単位格子部材の配列ピッチが異なるものであることを特徴とする請求項13から18いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項20】
前記各単位格子に対応する範囲内において配列ピッチが互いに異なる複数種類の副単位格子パターンが配置されていることを特徴とする請求項14記載の放射線画像撮影装置。
【請求項21】
前記放射線画像検出器が、前記格子からタルボ干渉距離の位置に配置され、
前記格子のタルボ干渉効果によって形成される前記周期パターン像に強度変調を与えるものであることを特徴とする請求項13から20いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項22】
前記格子が、前記放射線を投影像として通過させて前記周期パターン像を形成する吸収型格子であり、
前記放射線画像検出器が、前記格子を通過した前記投影像としての前記周期パターン像に強度変調を与えるものであることを特徴とする請求項13から20いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項23】
前記放射線画像検出器が、前記格子から最小のタルボ干渉距離より短い距離に配置されていることを特徴とする請求項22記載の放射線画像撮影装置。
【請求項24】
格子構造が周期的に配置され、放射線源から射出された放射線を通過させて周期パターン像を形成する格子と、
該格子によって形成された周期パターン像を透過する第1の電極層と、該第1の電極層を透過した前記周期パターン像の照射を受けて電荷を発生する光導電層と、該光導電層において発生した電荷を蓄積する電荷蓄積層と、読取光を透過する線状電極が多数配列された第2の電極層とがこの順に積層され、前記読取光によって走査されることによって前記各線状電極に対応する画素部毎の検出信号が読み出される放射線画像検出器と、
該放射線画像検出器において検出された前記周期パターン像を表す画像信号に基づいて位相コントラスト画像を生成する画像生成部とを備えた放射線画像撮影装置であって、
前記電荷蓄積層が、前記位相コントラスト画像を構成する1つの画素に対応する所定の範囲内に複数の単位格子パターンが配列されたものであるとともに、該各単位格子パターンを構成する単位格子部が互いに異なる方向に延びるものであり、
前記画像生成部が、前記所定の範囲内の複数の単位格子パターンに対応する前記画素部によって検出された複数の検出信号に基づいて、前記位相コントラスト画像の1つの画素の画素信号を生成するものであることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項25】
前記格子が、前記単位格子パターンよりも小さくかつ前記画素部に対応する単位で構成された副単位格子を複数配列したものであるとともに、前記1つの単位格子パターンに対応する範囲内において複数の前記副単位格子が、前記単位格子パターンの延伸方向に直交する方向について該単位格子パターンに対して互いに異なる距離だけ平行にシフトして配置されたものであり、
前記画像生成部が、前記1つの単位格子パターンに対応する範囲内に配置された各副単位格子に対応する前記画素部によって検出された検出信号に基づいて、前記1つの単位格子パターンの検出信号を生成するものであることを特徴とする請求項24記載の放射線画像撮影装置。
【請求項26】
前記電荷蓄積層の1つの単位格子パターンに対応する範囲内の複数の前記副単位格子の像が、前記単位格子パターンに対してP/Mずつ平行にシフトして配列されたものであることを特徴とする請求項25記載の放射線画像撮影装置。
ただし、Pは前記単位格子パターンのピッチ、Mは前記位相コントラスト画像を構成する1つの画素を生成するために用いられる予め設定された位相情報の数
【請求項27】
前記各単位格子パターンを構成する単位格子部が、互いに直交する方向に延びるものであることを特徴とする請求項24から26いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項28】
前記所定の範囲内の複数の単位格子パターンが、千鳥格子状に配置されていることを特徴とする請求項24から27いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項29】
前記所定の範囲内における互いに異なる種類の単位格子パターン同志の面積比が同じとなるように前記複数の単位格子パターンが配置されていることを特徴とする請求項24から28いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項30】
前記所定の範囲内において、同じ方向に延びる前記単位格子部から構成された単位格子パターンが複数配置されているとともに、該複数の単位格子パターン同志の前記単位格子部の配列ピッチが異なるものであることを特徴とする請求項24から29いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項31】
前記各単位格子パターンに対応する範囲内において配列ピッチが互いに異なる複数種類の副単位格子が配置されていることを特徴とする請求項25記載の放射線画像撮影装置。
【請求項32】
前記放射線画像検出器が、前記格子からタルボ干渉距離の位置に配置され、
前記格子のタルボ干渉効果によって形成される前記周期パターン像に強度変調を与えるものであることを特徴とする請求項24から31いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項33】
前記格子が、前記放射線を投影像として通過させて前記周期パターン像を形成する吸収型格子であり、
前記放射線画像検出器が、前記格子を通過した前記投影像としての前記第1の周期パターン像に強度変調を与えるものであることを特徴とする請求項24から31いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項34】
前記放射線画像検出器が、前記格子から最小のタルボ干渉距離より短い距離に配置されていることを特徴とする請求項33記載の放射線画像撮影装置。
【請求項35】
放射線を透過する第1の電極層と、該第1の電極層を透過した放射線の照射を受けて電荷を発生する光導電層と、該光導電層において発生した電荷を蓄積する電荷蓄積層と、読取光を透過する線状電極が多数配列された第2の電極層とがこの順に積層され、読取光によって走査されることによって前記各線状電極に対応する画素部毎の検出信号が読み出される放射線画像検出器であって、
前記電荷蓄積層が、所定の範囲内に複数の単位格子パターンが配列されたものであるとともに、該各単位格子パターンを構成する単位格子部が互いに異なる方向に延びるものであることを特徴とする放射線画像検出器。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−166010(P2012−166010A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−7776(P2012−7776)
【出願日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】