説明

放射線画像検出装置、放射線画像検出方法およびプログラム

【課題】ノイズによるレベル変動を検知して読取動作を制御する放射線画像検出装置を提供する。
【解決手段】信号監視部85によって、可変ゲインプリアンプ82からの実際の出力波形を監視して、その出力波形のレベル変動が所定の閾値を超えている場合、A/D変換器88の動作を停止する。その後、レベル変動が所定の閾値内にあれば、レベル変動が収まったと判断して、A/D変換器88の動作を再開するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像検出装置、放射線画像検出方法およびプログラムに関し、特に放射線画像検出パネル等の放射線画像検出装置、放射線画像検出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、照射されたX線等の放射線を検出し、検出された放射線により表わされる放射線画像を示す電気信号を出力するFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されている。この放射線検出器は、従来のイメージングプレートに比べて、即時に画像を確認でき、動画も確認できるといった利点がある。また、このような放射線検出器を内蔵し、放射線検出器から出力される放射線画像データを記憶する可搬型放射線撮影装置(電子カセッテともいう)も実用化されている。電子カセッテは、可搬性に優れているのでストレッチャーやベッドに載せたまま患者を撮影できるとともに、電子カセッテの位置を変更することで撮影部位の調整も容易であるため、動けない患者を撮影する場合にも柔軟に対処することができる。
【0003】
一方、放射線画像信号という微弱な信号を扱う電子カセッテでは、外来ノイズ等が放射線検出器に影響を及ぼす可能性がある。放射線画像信号にノイズが混入すると、品質の高い放射線画像の取得が困難になる。例えば、特許文献1には、制御装置と常時通信を行っている撮影装置では、常に動作している通信モジュールによる電源電圧・グランド電位変動の影響や、通信動作に伴う放射ノイズの影響により、取得画像に意図しないアーチファクトが発生することから、撮影装置の取得画像電荷読み出し時に、撮影部内の通信モジュールを停止して、良好な画像を取得可能にする技術が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、放射線の照射領域と放射線画像生成装置(FPD)を移動させて複数の撮影領域での撮影を行う長尺撮影において、画像データ読取時や通信時に、放射線画像データに意図しない画像ノイズが発生することがあるため、長尺撮影において、放射線画像データの読み取り動作を撮影領域の移動中に行わないように制御することで、良好な放射線画像データを得る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−247102号公報
【特許文献2】特開2011−4857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載の技術のように、撮影装置の取得画像電荷読み出し時に通信モジュールを停止したり、あるいは放射線画像データの読み取り動作を撮影領域の移動中に行わないことは、撮影装置の読み取り動作の停止や撮影装置の読み取り能力を制限することになる。その結果、次の撮影準備ができない、あるいは撮影直後に画像を確認したくても、直ちに撮影画像が表示されない等、放射線画像を撮影する技師や被検者(患者)にとってユーザ操作性が悪くなる、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、ノイズ源が駆動しても撮像作業や撮像処理において無駄な動作停止時間が発生しない放射線画像検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の放射線画像検出装置は、二次元状に配列された放射線を検出する複数の放射線検出部を備え、撮影対象を透過して入射する放射線により表される放射線画像を撮影する撮像手段と、前記複数の放射線検出部の各々に対応して設けられ、該対応する放射線検出部で検出された放射線量に応じたアナログ信号を各々生成する複数のアナログ信号生成部を備えた放射線画像生成部と、前記複数のアナログ信号生成部の各々で生成されたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部と、前記複数のアナログ信号生成部の各々で生成されたアナログ信号のレベル変動が予め定められた閾値以内であるかどうかを判定する判定手段と、前記判定手段により前記レベル変動が予め定められた閾値以内であると判定されたアナログ信号がデジタル信号に変換されるように前記変換部を制御するとともに、前記レベル変動が予め定められた閾値を超えたと判定されたアナログ信号がデジタル信号に変換されないように前記変換部を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の放射線画像検出装置によれば、複数のアナログ信号生成部の各々は、前記放射線検出部で検出された放射線量に応じた信号を増幅することによりアナログ信号を生成する増幅器を含むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の放射線画像検出装置によれば、前記制御手段は、前記変換部で変換されたデジタル信号により表されるデジタル画像データに、前記アナログ信号のレベル変動が前記閾値を超えたタイミングを示す識別情報を付加して記憶手段に記憶するように制御することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の放射線画像検出装置によれば、前記判定手段は、前記放射線画像の撮像時および放射線照射後の待機時の少なくとも一方において、前記アナログ信号のレベル変動が予め定められた閾値以内であるかどうかを判定することを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項5に記載の放射線画像検出装置によれば、前記レベル変動が前記閾値を超えたことを報知する報知手段をさらに備えることを特徴とする。また、請求項6に記載の放射線画像検出装置は、前記報知手段による報知の際に前記放射線の線源を停止する停止手段をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の放射線画像検出装置は、前記放射線画像に予め関心領域を指定する領域指定手段をさらに備え、関心領域内の放射線画像を示すアナログ信号のレベル変動と、関心領域外の放射線画像を示すアナログ信号のレベル変動とで前記閾値を変えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に記載の放射線画像検出装置は、前記アナログ信号のレベル変動が前記閾値を超えた場合、前記関心領域内の放射線画像を示すアナログ信号の前記変換部による変換を、前記レベル変動が前記閾値を超えたときから所定時間経過後に行うことを特徴とする。
【0015】
さらに、請求項9に記載の放射線画像検出装置は、前記アナログ信号のレベル変動が前記閾値を超えた場合、前記関心領域内の放射線画像を示すアナログ信号の前記変換部による変換が、前記関心領域外の放射線画像を示すアナログ信号に対する前記変換部による変換よりも遅れて実行されることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の放射線画像検出装置によれば、前記放射線画像が動画像である場合、該放射線画像が静止画像である場合よりも前記閾値を小さくすることを特徴とする。
【0017】
上記の課題を解決するために、請求項11に記載の放射線画像撮影システムは、上記の放射線画像検出装置と、放射線発生装置と、前記放射線画像検出装置および前記放射線発生装置と情報の送受信を行うコンソールと、を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、上記の課題を解決するために、請求項12に記載の放射線画像検出方法は、二次元状に配列された放射線を検出する複数の放射線検出部を備えた撮像手段により、撮影対象を透過して入射する放射線により表される放射線画像を撮影し、前記複数の放射線検出部の各々に対応して設けられた複数のアナログ信号生成部により、該対応する放射線検出部で検出された放射線量に応じたアナログ信号を各々生成し、前記複数のアナログ信号生成部の各々で生成されたアナログ信号のレベル変動が予め定められた閾値以内であるかどうかを判定し、前記レベル変動が予め定められた閾値以内であると判定されたアナログ信号のデジタル信号への変換を実行するとともに、前記レベル変動が予め定められた閾値を超えたと判定されたアナログ信号のデジタル信号への変換を停止するすることを特徴とする。
【0019】
また、上記の課題を解決するために、請求項13に記載のプログラムは、二次元状に配列された放射線を検出する複数の放射線検出部を備え、撮影対象を透過して入射する放射線により表される放射線画像を撮影する撮像手段と、前記複数の放射線検出部の各々に対応して設けられ、該対応する放射線検出部で検出された放射線量に応じたアナログ信号を各々生成する複数のアナログ信号生成部を備えた放射線画像生成部と、前記複数のアナログ信号生成部の各々で生成されたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部と、を備えた放射線画像検出装置によって実行されるプログラムであって、コンピュータを、前記複数のアナログ信号生成部の各々で生成されたアナログ信号のレベル変動が予め定められた閾値以内であるかどうかを判定する判定手段と、前記判定手段により前記レベル変動が予め定められた閾値以内であると判定されたアナログ信号がデジタル信号に変換されるように前記変換部を制御するとともに、前記レベル変動が予め定められた閾値を超えたと判定されたアナログ信号がデジタル信号に変換されないように前記変換部を制御する制御手段として機能させるためのプログラム機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明によれば、アナログ信号出力にレベル変動が検知された場合、ノイズを含んだ画像を出力しないので、読影に影響を及ぼさないという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る放射線画像撮影装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る放射線検出器の3画素部分の概略構成を示す断面模式図である。
【図3】実施の形態に係る放射線検出器の1画素部分の信号出力部の構成を概略的に示した断面側面図である。
【図4】実施の形態に係る放射線検出器の構成を示す平面図である。
【図5】実施の形態に係る電子カセッテの構成を示す斜視図である。
【図6】実施の形態に係る放射線画像撮影装置の構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態に係る画像生成部の構成を示す回路図である。
【図8】実施の形態に係る放射線画像撮影装置の電子カセッテにおける処理手順を示すフローチャートである。
【図9】可変ゲインプリアンプからの出力波形のレベル変動を説明するための図である。
【図10】アンプ出力波形のレベル変動判定の閾値を変えた処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る放射線画像撮影装置の概略構成を示している。図1に示す放射線画像撮影装置104は、不図示の端末装置からの撮影依頼を受け付け、放射線画像の撮影スケジュールを管理するサーバからの指示に応じて、医師や放射線技師の操作により放射線画像の撮影を行う。放射線画像撮影装置104は、放射線源から曝射条件に従った線量とされた放射線Xを被検者に照射する放射線発生装置120と、被検者の撮影対象部位を透過した放射線Xを吸収して電荷を発生し、発生した電荷量に基づいて放射線画像を示す画像情報を生成する放射線検出器20を内蔵する電子カセッテ40と、電子カセッテ40に内蔵されているバッテリを充電するクレードル130と、電子カセッテ40および放射線発生装置120を制御するコンソール110と、を備えている。
【0023】
電子カセッテ40は、未使用時にはクレードル130の収容部に収納された状態で内蔵されているバッテリに充電が行われ、放射線画像の撮影時には放射線技師等によってクレードル130から取り出される。電子カセッテ40は、撮影姿勢が立位であれば立位台の保持部に保持され、撮影姿勢が臥位であれば臥位台の保持部に保持される。放射線画像撮影装置104では、放射線発生装置120とコンソール110との間、および電子カセッテ40とコンソール110との間で、無線通信によって各種情報の送受信を行う。
【0024】
なお、電子カセッテ40は、立位台の保持部や臥位台の保持部で保持された状態のみで使用されるものではなく、その可搬性から、腕部、脚部等を撮影する際には、保持部に保持されていない状態で使用することもできる。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に係る放射線画像撮影装置の電子カセッテに内蔵される放射線検出器の画素部分の構成を概略的に示す断面模式図である。図2に示すように、本実施の形態に係る放射線検出器20は、絶縁性の基板1上に、信号出力部14、センサ部13、およびシンチレータ8が順次積層しており、信号出力部14、センサ部13により画素が構成されている。画素は、基板1上に複数配列されており、各画素における信号出力部14とセンサ部13とが重なりを有するように構成されている。
【0026】
シンチレータ8は、センサ部13上に透明絶縁膜7を介して形成されており、上方(基板1の反対側)または下方から入射してくる放射線を光に変換して発光する蛍光体を成膜したものである。このようなシンチレータ8を設けることで、被検者の被写体部を透過した放射線を吸収して発光することになる。シンチレータ8が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、放射線検出器20によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。
【0027】
シンチレータ8に用いる蛍光体としては、具体的には、放射線としてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが420nm〜700nmにあるCsI(Tl)(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0028】
センサ部13は、上部電極6、下部電極2、および、これら上下の電極間に配置された光電変換膜4を有し、光電変換膜4は、シンチレータ8が発する光を吸収して電荷が発生する有機光電変換材料により構成されている。上部電極6は、シンチレータ8により生じた光を光電変換膜4に入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ8の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましい。より具体的には、上部電極6には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、上部電極6としてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、透過率を90%以上得ようとすると抵抗値が増大し易いため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO、TiO、ZnO等を好ましく用いることができ、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からはITOが最も好ましい。なお、上部電極6は、全画素で共通の一枚構成としてもよく、画素毎に分割してもよい。
【0029】
光電変換膜4は、有機光電変換材料を含み、シンチレータ8から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。このように有機光電変換材料を含む光電変換膜4であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ8による発光以外の電磁波が光電変換膜4に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線が光電変換膜4で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0030】
光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、シンチレータ8で発光した光を最も効率よく吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ8の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ8の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ8から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ8の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0031】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物およびフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ8の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜4で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0032】
次に、本実施の形態に係る放射線検出器20に適用可能な光電変換膜4について具体的に説明する。本実施の形態に係る放射線検出器20における電磁波吸収/光電変換部位は、1対の電極2,6と、これらの電極2,6間に挟まれた有機光電変換膜4を含む有機層により構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、および層間接触改良部位等の積み重ね、もしくは混合により形成することができる。上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。
【0033】
有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であれば、いずれの有機化合物も使用可能である。
【0034】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは、2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であれば、いずれの有機化合物も使用可能である。
【0035】
有機p型半導体および有機n型半導体として適用可能な材料、および光電変換膜4の構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、ここでは説明を省略する。なお、光電変換膜4は、さらにフラーレン若しくはカーボンナノチューブを含有させて形成してもよい。
【0036】
光電変換膜4の厚みは、シンチレータ8からの光を吸収する点では膜厚は大きいほど好ましいが、ある程度以上厚くなると光電変換膜4の両端から印加されるバイアス電圧により光電変換膜4に発生する電界の強度が低下して電荷が収集できなくなるため、30nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。なお、図2に示す放射線検出器20では、光電変換膜4は、全画素で共通の一枚構成であるが、画素毎に分割してもよい。
【0037】
下部電極2は、画素毎に分割された薄膜とする。下部電極2は、透明または不透明の導電性材料で構成することができ、アルミニウム、銀等を好適に用いることができる。下部電極2の厚みは、例えば、30nm以上300nm以下とすることができる。
【0038】
センサ部13では、上部電極6と下部電極2の間に所定のバイアス電圧を印加することで、光電変換膜4で発生した電荷(正孔、電子)のうちの一方を上部電極6に移動させ、他方を下部電極2に移動させることができる。放射線検出器20では、上部電極6に配線が接続され、この配線を介してバイアス電圧が上部電極6に印加されるものとする。また、バイアス電圧は、光電変換膜4で発生した電子が上部電極6に移動し、正孔が下部電極2に移動するように極性が決められているものとするが、この極性は逆であってもよい。
【0039】
各画素を構成するセンサ部13は、少なくとも下部電極2、光電変換膜4、および上部電極6を含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜3および正孔ブロッキング膜5の少なくともいずれかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。電子ブロッキング膜3は、下部電極2と光電変換膜4との間に設けることができ、下部電極2と上部電極6間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極2から光電変換膜4に電子が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。電子ブロッキング膜3には、電子供与性有機材料を用いることができる。
【0040】
実際に電子ブロッキング膜3に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換膜4の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜4の材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIpもしくはそれより小さいIpを持つものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0041】
電子ブロッキング膜3の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部13の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0042】
正孔ブロッキング膜5は、光電変換膜4と上部電極6との間に設けることができ、下部電極2と上部電極6間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極6から光電変換膜4に正孔が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。正孔ブロッキング膜5には、電子受容性有機材料を用いることができる。正孔ブロッキング膜5の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部13の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0043】
実際に正孔ブロッキング膜5に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換膜4の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜4の材料の電子親和力(Ea)と同等のEaもしくはそれより大きいEaを持つものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0044】
なお、光電変換膜4で発生した電荷のうち、正孔が上部電極6に移動し、電子が下部電極2に移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜3と正孔ブロッキング膜5の位置を逆にすればよい。また、電子ブロッキング膜3と正孔ブロッキング膜5は両方設けなくてもよく、いずれかを設けておけば、ある程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0045】
図3は、各画素の下部電極2下方の基板1の表面に形成されている信号出力部の構成を概略的に示している。図3に示すように、信号出力部14は、下部電極2に対応して、下部電極2に移動した電荷を蓄積するコンデンサ9と、コンデンサ9に蓄積された電荷を電気信号に変換して出力する電界効果型薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、単に薄膜トランジスタともいう。)10が形成されている。コンデンサ9および薄膜トランジスタ10の形成された領域は、平面視において下部電極2と重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素における信号出力部14とセンサ部13とが厚さ方向で重なりを有することとなる。なお、放射線検出器20(画素)の平面積を最小にするために、コンデンサ9および薄膜トランジスタ10の形成された領域が下部電極2によって完全に覆われていることが望ましい。
【0046】
コンデンサ9は、基板1と下部電極2との間に設けられた絶縁膜11を貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する下部電極2と電気的に接続されている。これにより、下部電極2で捕集された電荷をコンデンサ9に移動させることができる。
【0047】
薄膜トランジスタ10は、ゲート電極15、ゲート絶縁膜16、および活性層(チャネル層)17が積層され、さらに、活性層17上にソース電極18とドレイン電極19が所定の間隔を開けて形成されている。活性層17は、例えば、アモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブなどにより形成することができる。なお、活性層17を構成する材料は、これらに限定されるものではない。
【0048】
活性層17を構成する非晶質酸化物としては、In、GaおよびZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、GaおよびZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、GaおよびZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。
【0049】
活性層17を構成可能な有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報において詳細に説明されているため、ここでは説明を省略する。
【0050】
薄膜トランジスタ10の活性層17を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブで形成したものとすれば、X線等の放射線を吸収せず、あるいは吸収したとしても極めて微量に留まるため、信号出力部14におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0051】
また、活性層17をカーボンナノチューブで形成した場合、薄膜トランジスタ10のスイッチング速度を高速化することができ、また、可視光域での光の吸収度合の低い薄膜トランジスタ10を形成できる。なお、カーボンナノチューブで活性層17を形成する場合、活性層17に極微量の金属性不純物を混入するだけで、薄膜トランジスタ10の性能は著しく低下するため、遠心分離などにより極めて高純度のカーボンナノチューブを分離・抽出して形成する必要がある。
【0052】
ここで、薄膜トランジスタ10の活性層17を構成する非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブや、光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、基板1としては、半導体基板、石英基板、およびガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板や、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。
【0053】
また、基板1には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0054】
一方、アラミドは、200度以上の高温プロセスを適用できるために透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドは、ITO(Indium Tin Oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて薄く基板を形成できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して基板を形成してもよい。
【0055】
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ高強度、高弾性、低熱膨張である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3〜7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて薄く基板1を形成できる。
【0056】
本実施の形態では、基板1上に、信号出力部14、センサ部13、透明絶縁膜7を順に形成することによりTFT基板30を形成し、当該TFT基板30上に光吸収性の低い接着樹脂等を用いてシンチレータ8を貼り付けることにより放射線検出器20を形成している。
【0057】
図4は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の放射線検出器の構成を示す平面図である。図4に示すように、TFT基板30には、上述したセンサ部13、コンデンサ9、および薄膜トランジスタ10を含んで構成される画素32が一定方向(図4の行方向)、および当該一定方向に対する交差方向(図4の列方向)に2次元状に複数設けられている。
【0058】
また、放射線検出器20には、上記一定方向(行方向)に延設され、各薄膜トランジスタ10をオン・オフさせるための複数本のゲート配線34と、上記交差方向(列方向)に延設され、オン状態の薄膜トランジスタ10を介して電荷を読み出すための複数本のデータ配線36と、が設けられている。放射線検出器20は、平板状で、かつ平面視において外縁に4辺を有する四辺形状、より具体的には、矩形状に形成されている。
【0059】
次に、本実施の形態に係る電子カセッテの構成について説明する。図5は、本実施の形態に係る電子カセッテ40の構成を示す斜視図である。図5に示すように、電子カセッテ40は、放射線を透過させる材料からなる筐体41を備えており、防水性、密閉性を有する構造とされている。電子カセッテ40は、手術室等で使用されるとき、血液やその他の雑菌が付着するおそれがある。そこで、電子カセッテ40を防水性、密閉性を有する構造として、必要に応じて殺菌洗浄することにより、1つの電子カセッテ40を繰り返し続けて使用することができる。
【0060】
筐体41の内部には、種々の部品を収容する空間Aが形成されており、当該空間A内には、放射線Xが照射される筐体41の照射面側から、被写体を透過した放射線Xを検出する放射線検出器20、および放射線Xのバック散乱線を吸収する鉛板43が順に配設されている。
【0061】
ここで、電子カセッテ40では、筐体41の平板状の一方の面の放射線検出器20の配設位置に対応する領域が放射線を検出可能な四辺形状の撮影領域41Aとされている。この筐体41の撮影領域41Aを有する面が電子カセッテ40における天板41Bとされており、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、放射線検出器20が、TFT基板30が天板41B側となるように配置され、当該天板41Bの筐体41における内側の面(天板41Bの放射線が入射される面の反対側の面)に貼り付けられている。
【0062】
一方、筐体41の内部の一端側には、放射線検出器20と重ならない位置(撮影領域41Aの範囲外)に、後述するカセッテ制御部58や電源部70(図6参照。)を収容するケース42が配置されている。筐体41は、電子カセッテ40全体の軽量化を図るために、例えば、カーボンファイバ(炭素繊維)、アルミニウム、マグネシウム、バイオナノファイバ(セルロースミクロフィブリル)、または複合材料等で構成されている。
【0063】
複合材料としては、例えば、強化繊維樹脂を含む材料が用いられ、強化繊維樹脂には、カーボンやセルロース等が含まれる。具体的には、複合材料としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)や、発泡材をCFRPでサンドイッチした構造のもの、または発泡材の表面にCFRPをコーティングしたもの等が用いられる。なお、本実施の形態では、発泡材をCFRPでサンドイッチした構造のものが用いられている。これにより、筐体41をカーボン単体で構成した場合と比較して、筐体41の強度(剛性)を高めることができる。
【0064】
次に、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置の電気系の要部構成について説明する。図6は、電子カセッテ40の電気系の要部構成を含む、放射線画像撮影装置の構成を示すブロック図である。図6において、電子カセッテ40に内蔵された放射線検出器20は、隣り合う2辺の一辺側にゲート線ドライバ52が配置され、他辺側に画像生成部54が配置されている。TFT基板30の個々のゲート配線34(図6では、ゲート配線34a,34b,・・・と個別に表記し、必要に応じてこの符号を用いる。)はゲート線ドライバ52に接続され、TFT基板30の個々のデータ配線36は画像生成部54に接続されている。また、筐体41の内部には、画像メモリ56と、カセッテ制御部58と、無線通信部60と、を備えている。
【0065】
TFT基板30の各薄膜トランジスタ10は、ゲート線ドライバ52からゲート配線34を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、オン状態とされた薄膜トランジスタ10によって読み出された電荷は、電気信号としてデータ配線36を伝送されて画像生成部54に入力される。これにより、電荷は行単位で順に読み出され、二次元状の放射線画像が取得可能となる。
【0066】
次に、本実施の形態に係る画像生成部54の構成について説明する。図7は、本実施の形態に係る画像生成部54の構成を示す回路図である。図7に示すように、画像生成部54は、データ配線36の各々に対応して、可変ゲインプリアンプ(チャージアンプ)82と、サンプルホールド回路84と、が備えられている。可変ゲインプリアンプ82は、正入力(非反転端子)側が接地されたオペアンプ82Aと、オペアンプ82Aの負入力(反転端子)側と出力側との間に、それぞれ並列に接続されるコンデンサ82Bと、リセットスイッチ82Cとを含んで構成されており、リセットスイッチ82Cは、カセッテ制御部58により切り換えられる。
【0067】
また、画像生成部54は、可変ゲインプリアンプ82の出力波形の各々を監視する信号監視部85、可変ゲインプリアンプ(チャージアンプ)82の出力をサンプルホールドするサンプルホールド回路84、マルチプレクサ86、およびA/D(アナログ/デジタル)変換器88を備えている。なお、サンプルホールド回路84のサンプルタイミング、およびマルチプレクサ86に設けられたスイッチ86Aによる選択出力も、カセッテ制御部58により切り換えられる。
【0068】
放射線画像を検出する際に、カセッテ制御部58は、まず、可変ゲインプリアンプ82の各々のリセットスイッチ82Cを所定期間オン状態とすることにより、コンデンサ82Bの各々に蓄積されていた電荷を放電する。一方、放射線Xが照射されることによって放射線画像を取得する画素32の各々のコンデンサ9に蓄積された電荷は、接続されている薄膜トランジスタ10がオン状態とされることにより電気信号として、接続されているデータ配線36を伝送される。データ配線36を伝送された電気信号は、対応する可変ゲインプリアンプ82により、予め定められた増幅率で増幅される。
【0069】
カセッテ制御部58は、上述した放電を行った後、サンプルホールド回路84を所定期間駆動させることより、可変ゲインプリアンプ82によって増幅された電気信号の信号レベルをサンプルホールド回路84に保持させる。そして、各サンプルホールド回路84に保持された信号レベルは、カセッテ制御部58による制御に応じてマルチプレクサ86により順次選択され、A/D変換器88によってA/D変換されることにより、撮影された放射線画像を示す画像データが生成される。
【0070】
なお、本実施の形態に係る電子カセッテ40には、画像生成部54に駆動用の電力を供給する画像生成部電源54Aが備えられている。本実施の形態に係る画像生成部電源54Aは、電力入力端が後述する電源部70に接続されたDC−DCコンバータによって構成されており、当該DC−DCコンバータの出力端は、画像生成部54の可変ゲインプリアンプ82、サンプルホールド回路84、マルチプレクサ86、およびA/D変換器88に接続されている。
【0071】
図6に示すように、画像生成部電源54Aの制御入力端にはカセッテ制御部58が接続されており、画像生成部電源54Aからの電力供給開始および電力供給停止はカセッテ制御部58によって制御される。一方、画像生成部54には画像メモリ56が接続されており、画像生成部54のA/D変換器88から出力された画像データは画像メモリ56に順に記憶される。画像メモリ56は所定枚分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ56に順次記憶される。
【0072】
画像メモリ56はカセッテ制御部58と接続されている。カセッテ制御部58はマイクロコンピュータを含んで構成され、CPU(中央処理装置)58A、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含むメモリ58B、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部58Cを備えており、電子カセッテ40全体の動作を制御する。
【0073】
なお、カセッテ制御部58には無線通信部60が接続されている。無線通信部60は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部58は、無線通信部60を介して、放射線画像の撮影に関する制御を行うコンソールなどの外部装置と無線通信が可能とされており、コンソール等との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0074】
また、電子カセッテ40には電源部70が設けられており、上述した各種回路や各素子(ゲート線ドライバ52、画像生成部54、画像メモリ56、無線通信部60、およびカセッテ制御部58として機能するマイクロコンピュータ等)は、電源部70から供給された電力によって作動する。電源部70は、電子カセッテ40の可搬性を損なわないように、バッテリ(充電可能な二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種回路・素子へ電力を供給する。なお、図6では、電源部70と各種回路や各素子を接続する配線を省略している。
【0075】
一方、図6に示すように、コンソール110は、サーバ・コンピュータとして構成されており、操作メニューや撮影された放射線画像等を表示するディスプレイ111と、複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される操作パネル112と、を備えている。
【0076】
また、本実施の形態に係るコンソール110は、装置全体の動作を司るCPU113と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM114と、各種データを一時的に記憶するRAM115と、各種データを記憶して保持するHDD(ハードディスク・ドライブ)116と、ディスプレイ111への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ117と、操作パネル112に対する操作状態を検出する操作入力検出部118と、を備えている。また、コンソール110は、無線通信により、放射線発生装置120との間で後述する曝射条件等の各種情報の送受信を行うと共に、電子カセッテ40との間で画像データ等の各種情報の送受信を行う無線通信部119を備えている。
【0077】
CPU113、ROM114、RAM115、HDD116、ディスプレイドライバ117、操作入力検出部118、および無線通信部119は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU113は、ROM114、RAM115、HDD116へのアクセスを行うことができると共に、ディスプレイドライバ117を介したディスプレイ111への各種情報の表示の制御、および無線通信部119を介した放射線発生装置120および電子カセッテ40との各種情報の送受信の制御を各々行うことができる。また、CPU113は、操作入力検出部118を介して操作パネル112に対するユーザの操作状態を把握することができる。
【0078】
一方、放射線発生装置120は、放射線源121と、コンソール110との間で曝射条件等の各種情報を送受信する無線通信部123と、受信した曝射条件に基づいて放射線源121を制御する線源制御部122と、を備えている。
【0079】
線源制御部122もマイクロコンピュータを含んで構成されており、受信した曝射条件等を記憶する。このコンソール110から受信する曝射条件には管電圧、および管電流等の情報が含まれている。線源制御部122は、受信した曝射条件に基づいて放射線源121から放射線Xを照射させる。
【0080】
次に、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置の電子カセッテの動作について説明する。図8は、放射線画像撮影装置の電子カセッテにおける処理手順を示すフローチャートである。なお、図8は、電子カセッテ40のカセッテ制御部58におけるCPU58Aにより実行されるカセッテ撮影処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ58Bの所定領域に予め記憶されている。
【0081】
図8のステップ400では、画像生成部電源54Aから画像生成部54への電力供給を開始するように画像生成部電源54Aを制御する。次のステップ403において、ゲート線ドライバ52を制御してゲート線ドライバ52から各ゲート配線34a,34b,34c,・・・に1ラインずつ順にオン信号を出力させ、放射線検出器20の各画素32におけるコンデンサ9に蓄積された電荷を放電させることにより、放射線画像を取得する画素32をリセットする。なお、ステップ403の処理によって行われる各画素32のリセット動作は1回のみでもよく、複数回繰り返してもよい。
【0082】
次のステップ406で、電子カセッテ40のカセッテ制御部58は、例えば、コンソール110からの放射線Xの曝射開始を指示する指示信号の有無を判断する。この指示信号を受け取ると、カセッテ制御部58は、ステップ408で、放射線検出器20の各画素32におけるコンデンサ9への電荷の蓄積を開始することにより、放射線画像の撮影動作を開始する。そして、カセッテ制御部58は、例えば、所定の放射線量情報に基づく放射線量累積値(閾値)をもとに、放射線画像の撮影動作を終了する。
【0083】
次のステップ410では、画素信号(電荷信号)を読み出す。すなわち、ゲート線ドライバ52を制御してゲート線ドライバ52から各ゲート配線34a,34b,34c,・・・に1ラインずつ順にオン信号を出力させ、各ゲート配線34に接続された各薄膜トランジスタ10を1ラインずつ順にオンさせる。放射線検出器20の各ゲート配線34a,34b,34c,・・・に接続された各薄膜トランジスタ10が1ラインずつ順にオンされると、1ラインずつ順に各コンデンサ9に蓄積された電荷が電気信号として各データ配線36に流れ出す。各データ配線36に流れ出した電気信号は、各々に対応して配置された可変ゲインプリアンプ(チャージアンプ)82に入力される。
【0084】
ステップ412では、各可変ゲインプリアンプ82の出力線82Dに接続された信号監視部85により、各可変ゲインプリアンプ82からの出力波形を監視する。図9は、可変ゲインプリアンプ82で増幅された、一画素についての電荷信号波形の一例である。図9では、電荷信号がノイズ等の影響を受けた結果、ゲインプリアンプ82からの信号出力波形の一部にレベル変動が生じた様子を示している。
【0085】
ここでの出力波形のレベル変動は、微小信号を扱う電子カセッテ40の放射線検出器20に到来する電磁波ノイズ等による影響が考えられる。より具体的には、いわゆるモダリティシステム全体の駆動系、例えば、電子カセッテ内部で発生するノイズ、モータ駆動ノイズ、マンモグラフィであれば圧迫板の駆動に伴うノイズ、通信系に依存するノイズ等の内部ノイズがある。また、外部ノイズとして、例えば、術中における電気メス等に由来するノイズがある。その他、電子カセッテに機械的な振動が与えられた場合、電子カセッテ内部で基板間の接続等に使用しているフレキシブル基板の振動による擬似的なノイズの発生もある。
【0086】
上記ステップ412で、信号監視部85によって各可変ゲインプリアンプ82からの出力波形を監視した結果、当該画素信号のアンプ出力波形にレベル変動があれば、カセッテ制御部58は、ステップ414において、そのレベル変動が予め定めた微小時間Δt内に生起し、かつ、所定の閾値Vth内にあるか否かを判定する。ステップ412で、可変ゲインプリアンプ82の出力波形にレベル変動がないと判断された場合、処理をステップ432に進めて、当該画素信号に対してA/D変換を実行する。
【0087】
一方、ステップ414において、可変ゲインプリアンプ82からの出力波形の微小時間Δt内におけるレベル変動が、所定の閾値Vthを超えていると判断された場合には、ステップ422で、A/D変換器88によるA/D変換が停止中であるかどうかを判断する。A/D変換が停止中でなければ、ステップ424において、出力レベル変動が閾値を超えた旨を、例えば、コンソール110の表示部に可視表示し、あるいはスピーカ等から可聴音を発することで技師等に報知する。そして、カセッテ制御部58は、ステップ426で、レベル変動が閾値を超えた画素の電荷信号のアンプ出力波形に対してA/D変換が行われないようにするため、A/D変換器88に動作停止信号を送信する。続くステップ428で、撮影画像データに対して、閾値を超えたことの識別情報としてフラグを立てる(フラグを付加する)。これにより、放射線画像の撮影時間帯において上記の閾値を超えた時点(タイミング)を明示する。その後、処理をステップS434に進める。
【0088】
なお、ステップ422で、A/D変換が停止中であると判断された場合は、ステップ430において、A/D変換器88によるA/D変換の停止を継続し、その後、処理をステップS434に進める。また、レベル変動が検知されたときの報知は、検知される度に行ってもよいし、1回だけでもよい。
【0089】
ステップ412でレベル変動が検出されても、ステップ414において、そのレベル変動が閾値Vth内にあると判断されれば、処理をステップ416に進めて、A/D変換器88によるA/D変換が停止中であるかどうかを判断する。A/D変換が停止中でなければ、処理をステップ432に進めて、当該画素信号に対してA/D変換を実行する。一方、ステップ416において、A/D変換が停止中であると判断されれば、ステップ418で、当該画素についての電荷信号出力のレベル変動が収束したと判断する。そして、上記ステップ426で停止したA/D変換器88の動作を再開し、続くステップ420で、上記ステップ428で立てたフラグを降ろす。
【0090】
ステップ432では、サンプルホールド回路84を経たアナログ出力信号に対して、マルチプレクサ86に設けられたスイッチ86Aによって信号の選択が行われ、選択されたアナログ出力信号が順次、A/D変換器88によりデジタルの画像データに変換される。そして、ステップ434において、A/D変換後のデータが画像メモリ56に記憶される。
【0091】
ステップS436では、ステップS410で読み出された全ての画素の画素信号(電荷信号)について、可変ゲインプリアンプ82からのアンプ出力波形のレベル変動の有無を判定したかどうかを判断する。全ての画素についてのレベル変動を判断していない場合には、処理をステップ412に戻し、信号監視部85によって、次の画素について上記と同様、アンプ出力波形の微小時間Δt内におけるレベル変動が検出される。しかし、ステップS436で、全画素について画素信号のレベル変動の有無が検知されたと判断されれば、処理をステップ438に進める。
【0092】
ステップ438では、上記ステップ434で画像メモリ56に記憶された画像データを読み出し、次のステップ440において、放射線検出器20の各画素32におけるコンデンサ9の電荷の読み出しが終了した後の残留電荷や暗電流が蓄積された電荷を放電させることにより、放射線画像取得用の各画素32をリセットする。そして、画像生成部電源54Aから画像生成部54への電力供給を停止するように画像生成部電源54Aを制御する。続くステップ442において、読み出した画像データをコンソール110に無線通信部60を介して送信した後、本カセッテ撮影処理プログラムを終了する。
【0093】
なお、ここでは、アンプ出力波形のレベル変動を検出する場合、放射線検出器20に配置された画素32の電荷信号をレベル変動の監視対象としてもよいし、放射線検出器20の画素の一部を同期フリー用の画素とし、それら同期フリー用画素の電荷信号をレベル変動の監視対象としてもよい。あるいは、画素とは異なるセンサを別途、設けて、アンプ出力波形のレベル変動を検出するようにしてもよい。また、アンプ出力波形のレベル変動の監視に代えて、放射線Xの曝射後の待機時に、暗ノイズ(ホワイトノイズ)のレベル変動(振れ幅)を監視するようにしてもよい。さらには、アンプ出力波形のレベル変動の監視において、放射線画像の撮影時に撮影信号のレベル変動を監視し、放射線Xの曝射後の待機時には、暗ノイズ(ホワイトノイズ)のレベル変動を監視するようにしてもよい。これにより、待機時においても、ノイズ源の駆動の有無を検知し、それに基づく適正な判断・対処が可能となる。
【0094】
本実施形態において、アンプ出力波形のレベル変動が所定の閾値Vthを超えたと判断された場合のA/D変換器88におけるA/D変換動作の停止は、例えば、カセッテ制御部58がA/D変換器88のAD制御レジスタに所定の値(リセットデータ)を書き込んで動作停止させてもよいし、不図示のスイッチ等でA/D変換器88への電源供給を遮断するようにしてもよい。また、A/D変換器88のAD制御レジスタに所定データを入力して動作開始させ、A/D変換動作を再開させてもよいし、上記スイッチの投入による電源供給によりA/D変換動作を再開させるようにしてもよい。
【0095】
なお、放射線検出器20は、図2に示すシンチレータ8が形成された側から放射線が照射されて、当該放射線の入射面の裏面側に設けられたTFT基板30により放射線画像を読み取る、いわゆる裏面読取方式とされた場合、シンチレータ8の上面側(TFT基板30の反対側)でより強く発光し、TFT基板30側から放射線が照射されて、当該放射線の入射面の表面側に設けられたTFT基板30により放射線画像を読み取る、いわゆる表面読取方式とされた場合、TFT基板30を透過した放射線がシンチレータ8に入射してシンチレータ8のTFT基板30側がより強く発光する。TFT基板30に設けられた各センサ部13には、シンチレータ8で発生した光により電荷が発生する。このため、放射線検出器20は、表面読取方式とされた場合の方が裏面読取方式とされた場合よりもTFT基板30に対するシンチレータ8の発光位置が近いため、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高い。
【0096】
また、放射線検出器20は、光電変換膜4を有機光電変換材料により構成しており、光電変換膜4で放射線がほとんど吸収されない。このため、本実施の形態に係る放射線検出器20は、表面読取方式により放射線がTFT基板30を透過する場合でも光電変換膜4による放射線の吸収量が少ないため、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。表面読取方式では、放射線がTFT基板30を透過してシンチレータ8に到達するが、このように、TFT基板30の光電変換膜4を有機光電変換材料により構成した場合、光電変換膜4での放射線の吸収が殆どなく放射線の減衰を少なく抑えることができるため、表面読取方式に適している。
【0097】
また、薄膜トランジスタ10の活性層17を構成する非晶質酸化物や光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。このため、基板1を放射線の吸収が少ないプラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバで形成することができる。このように形成された基板1は放射線の吸収量が少ないため、表面読取方式により放射線がTFT基板30を透過する場合でも、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0098】
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、可変ゲインプリアンプからの実際の出力波形を監視して、その出力波形のレベル変動が所定の閾値を超えている場合、A/D変換器による出力信号のA/D変換動作を停止し、その後、レベル変動が所定の閾値内にあれば、レベル変動が収まったと判断して、A/D変換器の動作を再開するように制御している。これにより、アンプ出力信号をA/D変換する前の段階で、ノイズ混入等による画像信号のレベル変動を検知して、撮影画像の品質に劣化が生じることを予め知ることができる。
【0099】
その結果、撮像作業や撮像処理において無駄な動作停止時間が発生しないことに加え、ノイズ混入等による画質劣化を事前に知ることができるため、医師等による撮影画像を使用した診断に影響を及ぼすことがないという顕著な効果がある。特に、衝撃や電磁波等の外乱に起因したノイズによる影響を受けやすい電子カセッテにおいて、アナログ画像信号のレベル変動による画質劣化に対処した構成とすることができる。
【0100】
また、本実施の形態では、撮影後の放射線画像を解析して画像信号のレベル変動の有無を判定するのではなく、可変ゲインプリアンプからの出力波形を直接、監視してレベル変動の有無、およびレベル変動の程度を判定しているので、レベル変動の監視・判断に伴う画像劣化が生じない。
【0101】
さらには、出力波形のレベル変動が検出されたタイミングで画像データにフラグを付加し、レベル変動の収束とともにフラグを降ろす制御をすることにより、フラグが立ってからフラグが降ろされるまでの期間と、放射線画像の撮影時間帯において信号レベルの変動が発生してから信号レベル変動が収束するまでの期間との対応を容易にとることができる。その結果、ノイズ等によるレベル変動の影響を受けた画像部分を容易に判別し、追跡できるので、医師等による撮影画像を用いた診断時において誤診を有効に防止できる。
【0102】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0103】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0104】
例えば、上記実施の形態では、可変ゲインプリアンプの出力波形のレベル変動が閾値を超えた場合にA/D変換器の動作を停止し、その後、レベル変動が閾値内に収まった場合にA/D変換器の動作を再開しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、放射線画像撮影装置の駆動系における動作時間が予め予測できるので、可変ゲインプリアンプの出力波形のレベル変動が閾値を超えたタイミングでタイマーを起動し、一定時間経過した後、A/D変換器の動作を再開するように、自動復帰させる構成としてもよい。
【0105】
さらには、予め放射線画像に、医師が注目する部分としての関心領域(ROI)を指定しておき、関心領域内と関心領域外とで可変ゲインプリアンプの出力波形のレベル変動判定のための閾値を変えるようにしてもよい。図10は、関心領域内と関心領域外とでレベル変動判定の閾値を変える処理を示すフローチャートであり、図8に示す処理と同一の処理には同一符号を付し、ここでは、それらの説明を省略する。
【0106】
例えば、図10のステップ401で、放射線検出器20の放射線の照射面上での被検者の撮影部位に応じた関心領域の位置を設定する。具体的には、被検者の撮影部位の標準的な関心領域の位置を示す位置情報を入力する。また、関心領域内におけるレベル変動判定の閾値をVth1に設定し、関心領域外におけるレベル変動判定の閾値をVth2に設定する。そして、ステップ412で、各可変ゲインプリアンプ82からの出力波形を監視した結果、画素信号のアンプ出力波形にレベル変動があった場合、ステップ452に進む。このステップ452では、読み出された電荷信号の画素が、設定した関心領域の領域内の画素か、あるいは領域外の画素かを判断する。そして、その判断結果をもとに、関心領域内と関心領域外とで異なるレベル変動判定の閾値を使用する。
【0107】
より具体的には、当該画素が関心領域の領域内の画素であれば、ステップ454で、関心領域内におけるレベル変動判定閾値としてVth1を使用して、可変ゲインプリアンプ82の出力波形のレベル変動がVth1の範囲内にあるか否かを判断する。一方、当該画素が関心領域の領域外の画素であれば、ステップ456で、関心領域外におけるレベル変動判定閾値としてVth2を使用して、アンプ出力波形のレベル変動がVth2の範囲内にあるか否かを判断する。
【0108】
なお、ここでは、関心領域外における閾値Vth2よりも、関心領域内における閾値Vth1を小さく(厳しく)設定することで、比較的小さなレベル変動があった場合でも、関心領域として設定される画像領域について、撮影画像からアンプ出力波形のレベル変動による画質劣化を有効に除去し、診断上、重要な領域についての誤診を減らすことができる。また、アンプ出力波形のレベル変動が検出された場合、関心領域内についての画素信号の読み出しを中止し、その後、所定時間が経過してから、関心領域内についての画素信号の読み出しを行って、得られた電荷信号を可変ゲインプリアンプで増幅したアナログ信号をA/D変換するようにしてもよい。関心領域内については関心領域外とは別に、ノイズの影響がなくなった時点で画素信号の読み出し、およびA/D変換をすることで、重要な診断領域の画像を、より高画質で得ることができる。
【0109】
上記実施の形態では、静止画像についてのレベル変動を扱ったが、これに限定されない。例えば、動画像のレベル変動を判断する場合、静止画像に比べてレベル変動判定の閾値を緩く(小さく)してもよい。動画像については、連続して撮影画像が提示されるため、ノイズ混入による多少の画質劣化があっても画像診断に影響を及ぼすことはないと考えられるからである。なお、動画像のレベル変動検知においても、閾値を超えるレベル変動があった場合、その旨を報知するようにする。こうすることで、放射線を扱う技師に対して、動画像の撮影を続行するか否かの判断を委ねることがことができる。
【0110】
また、放射線の線源を接続している放射線画像撮影装置にあっては、静止画像、動画像のいずれにおいても、閾値を超えるレベル変動があったときに、その旨の報知とともに、線源からの放射線の曝射を停止するようにしてもよい。この場合、図示は省略するが、例えば、図8のステップ424の処理の後に放射線の曝射を停止する処理が付加されることになる。
【0111】
上記実施の形態では、放射線発生装置120により、コンソール110から曝射条件が設定され、曝射開始が指示された際に放射線源121による放射線の曝射を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、放射線発生装置120に対し、放射線の曝射を開始させる際と当該曝射を終了させる際に撮影者等によって操作されるスイッチを設けておき、当該スイッチに対する操作に応じて放射線の曝射の開始および終了を行うように、放射線発生装置120の線源制御部により制御する形態としてもよい。
【0112】
また、上記実施の形態では、本発明の放射線検出素子をTFT基板30に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、電子カセッテ40の内部におけるTFT基板30とは異なる基板に設けてもよく、さらに、電子カセッテ40とは別体で放射線入射側、若しくは当該入射側とは反対側に重ねるように設ける形態等としてもよい。この場合にも上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0113】
また、上記実施の形態では、センサ部13が、シンチレータ8で発生した光を受光することにより電荷が発生する有機光電変換材料を含んで構成されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、センサ部13として有機光電変換材料を含まずに構成されたものを適用する形態としてもよい。さらに、電子カセッテに内蔵される放射線検出器については、照射された放射線を可視光に変換するシンチレータを備えた構成を説明したが、これに限定されない。放射線を吸収して電荷に変換する光電変換層にアモルファスセレン等の放射線−電荷変換材料を使用した直接変換方式の放射線検出器としてもよい。
【0114】
また、上記実施の形態では、電子カセッテ40の筐体41の内部にカセッテ制御部58や電源部70を収容するケース42と放射線検出器20とを重ならないように配置した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、放射線検出器20とカセッテ制御部58や電源部70を重なるように配置してもよい。
【0115】
上記実施の形態では、電子カセッテ40とコンソール110との間、放射線発生装置120とコンソール110との間で、無線にて通信を行う場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、これらの少なくとも一方を有線にて通信を行う形態としてもよい。また、上記実施の形態では、放射線としてX線を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、γ線等の他の放射線を適用する形態としてもよい。
【0116】
その他、上記実施の形態で説明した電子カセッテ40の構成、放射線画像撮影装置104の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したり、接続状態等を変更したりすることができることは言うまでもない。また、上記実施の形態で説明した情報の構成も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な情報を削除したり、新たな情報を追加したりすることができることは言うまでもない。
【0117】
また、上記実施の形態で説明した各種プログラムの処理の流れ(図8参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ換えたりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0118】
1 基板
8 シンチレータ
10 薄膜トランジスタ
13 センサ部
20 放射線検出器
30 TFT基板
32 画素
32 放射線画像取得用画素
36 データ配線(信号配線)
40 電子カセッテ
54 画像生成部
58 カセッテ制御部
58A CPU
82 可変ゲインプリアンプ
84 サンプルホールド回路
85 信号監視部
86 マルチプレクサ
88 A/D変換器
104 放射線画像撮影装置
110 コンソール
120 放射線発生装置
X 放射線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元状に配列された放射線を検出する複数の放射線検出部を備え、撮影対象を透過して入射する放射線により表される放射線画像を撮影する撮像手段と、
前記複数の放射線検出部の各々に対応して設けられ、該対応する放射線検出部で検出された放射線量に応じたアナログ信号を各々生成する複数のアナログ信号生成部を備えた放射線画像生成部と、
前記複数のアナログ信号生成部の各々で生成されたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部と、
前記複数のアナログ信号生成部の各々で生成されたアナログ信号のレベル変動が予め定められた閾値以内であるかどうかを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記レベル変動が予め定められた閾値以内であると判定されたアナログ信号がデジタル信号に変換されるように前記変換部を制御するとともに、前記レベル変動が予め定められた閾値を超えたと判定されたアナログ信号がデジタル信号に変換されないように前記変換部を制御する制御手段と、
を備えた放射線画像検出装置。
【請求項2】
前記複数のアナログ信号生成部の各々は、前記放射線検出部で検出された放射線量に応じた信号を増幅することによりアナログ信号を生成する増幅器を含む
請求項1に記載の放射線画像検出装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記変換部で変換されたデジタル信号により表されるデジタル画像データに、前記アナログ信号のレベル変動が前記閾値を超えたタイミングを示す識別情報を付加して記憶手段に記憶するように制御する
請求項1または2に記載の放射線画像検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記放射線画像の撮像時および放射線照射後の待機時の少なくとも一方において、前記アナログ信号のレベル変動が予め定められた閾値以内であるかどうかを判定する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置。
【請求項5】
前記レベル変動が前記閾値を超えたことを報知する報知手段をさらに備える
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置。
【請求項6】
前記報知手段による報知の際に前記放射線の線源を停止する停止手段をさらに備える
請求項5に記載の放射線画像検出装置。
【請求項7】
前記放射線画像に予め関心領域を指定する領域指定手段をさらに備え、
関心領域内の放射線画像を示すアナログ信号のレベル変動と、関心領域外の放射線画像を示すアナログ信号のレベル変動とで前記閾値を変えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置。
【請求項8】
前記アナログ信号のレベル変動が前記閾値を超えた場合、前記関心領域内の放射線画像を示すアナログ信号の前記変換部による変換を、前記レベル変動が前記閾値を超えたときから所定時間経過後に行うことを特徴とする請求項7に記載の放射線画像検出装置。
【請求項9】
前記アナログ信号のレベル変動が前記閾値を超えた場合、前記関心領域内の放射線画像を示すアナログ信号の前記変換部による変換が、前記関心領域外の放射線画像を示すアナログ信号に対する前記変換部による変換よりも遅れて実行されることを特徴とする請求項7に記載の放射線画像検出装置。
【請求項10】
前記放射線画像が動画像である場合、該放射線画像が静止画像である場合よりも前記閾値を小さくすることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置と、
放射線発生装置と、
前記放射線画像検出装置および前記放射線発生装置と情報の送受信を行うコンソールと、
を備えた放射線画像撮影システム。
【請求項12】
二次元状に配列された放射線を検出する複数の放射線検出部を備えた撮像手段により、撮影対象を透過して入射する放射線により表される放射線画像を撮影し、
前記複数の放射線検出部の各々に対応して設けられた複数のアナログ信号生成部により、該対応する放射線検出部で検出された放射線量に応じたアナログ信号を各々生成し、
前記複数のアナログ信号生成部の各々で生成されたアナログ信号のレベル変動が予め定められた閾値以内であるかどうかを判定し、
前記レベル変動が予め定められた閾値以内であると判定されたアナログ信号のデジタル信号への変換を実行するとともに、前記レベル変動が予め定められた閾値を超えたと判定されたアナログ信号のデジタル信号への変換を停止することを特徴とする放射線画像検出方法。
【請求項13】
二次元状に配列された放射線を検出する複数の放射線検出部を備え、撮影対象を透過して入射する放射線により表される放射線画像を撮影する撮像手段と、前記複数の放射線検出部の各々に対応して設けられ、該対応する放射線検出部で検出された放射線量に応じたアナログ信号を各々生成する複数のアナログ信号生成部を備えた放射線画像生成部と、前記複数のアナログ信号生成部の各々で生成されたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部と、を備えた放射線画像検出装置によって実行されるプログラムであって、
コンピュータを、
前記複数のアナログ信号生成部の各々で生成されたアナログ信号のレベル変動が予め定められた閾値以内であるかどうかを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記レベル変動が予め定められた閾値以内であると判定されたアナログ信号がデジタル信号に変換されるように前記変換部を制御するとともに、前記レベル変動が予め定められた閾値を超えたと判定されたアナログ信号がデジタル信号に変換されないように前記変換部を制御する制御手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−78068(P2013−78068A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218045(P2011−218045)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】