説明

放射線監視装置

【課題】排ガス再結合器等の性能劣化を高感度に検出することができる簡便な構成の放射線監視装置を提供する。
【解決手段】原子力発電所における排ガス中の放射能濃度を測定する放射線監視装置であって、排ガスを低放射能領域に導くサンプリング配管22,23及び計測ライン51,52に設けられ、ガンマ線のエネルギを低減させた状態で通過させるフローセル31A,31Bと、計測ライン52に排ガスを導入して閉じ込める三方弁53A,53B、フローセル31A,31Bに面して配置されたGe検出器32、開口部33aを有しGe検出器32を囲う可動式遮蔽体33、波高分析装置35、信号処理装置36、制御部37、操作表示部38を備え、気体廃棄物処理系から排ガスをサンプリングし、サンプルガスからの511keVのガンマ線に係る陽電子放出核種の濃度を測定することにより排ガス再結合器等の性能劣化を高感度に検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所における排ガス中の放射能濃度を計測する放射線監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所においては、例えば燃料破損の監視等を目的として、排ガス中の放射能濃度の計測、例えば、希ガス核種の放射能分析が行われている(特許文献1,2参照)。
ところで、この排ガスは、復水器から空気抽出器を用いて抽気された非凝縮性ガスの中に含まれる放射線分解により発生した水素と酸素とを排ガス再結合器で水に再結合させて、その再結合で生じた水を除湿冷却器で除去して復水器に戻し、残った非凝縮性ガスを活性炭式希ガスホールドアップ装置に導き、短半減期の放射性希ガスの放射能を減衰させてから主排気塔から大気中に拡散放出している。
【0003】
そして、排ガス再結合器における水素と酸素の再結合の処理が正常になされていることの確認は、排ガス再結合器の後流側に配した水素センサにより水素濃度を計測することで排ガス再結合器の健全性がオンラインでチェックされている。
【特許文献1】特開平10−221483号公報
【特許文献2】特開2001−141871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水素センサによる水素濃度の計測は感度が低く、その検出感度はppmオーダーであり、排ガス再結合器の性能劣化の早期検出の観点からは検出感度低く、より高感度のものが望まれている。
ところで、発明者等は、空気抽出器により抽気された非凝縮性ガスと、除湿冷却器を通過した後の非凝縮性ガスについて、含まれる放射性核種を分析したところ、前者には窒素−13(N−13)とフッ素−18(F−18)とが含まれているのに対し、後者にはF−18がほとんど含まれていないという事実を発見した。これは、F−18は水素と結合し易くフッ化水素の形態で存在し、フッ化水素が水に極めて溶けやすいことから、排ガス再結合器が正常に動作して水素と酸素とを効率的に再結合させていれば、生成された水にフッ化水素が吸収され、非凝縮性ガス中にはF−18がほとんど留まらないためと考えられる。
従って、直接水素の濃度を計測せずとも、F−18の濃度を計測することで排ガス再結合器の性能劣化を監視することができることが分かった。
【0005】
そして、N−13とF−18はともに陽電子放出核種であり、(1)放出された陽電子が電子対消滅するときに511keVのエネルギのγ線対を放出するので、放射線検出器で検出されたγ線のエネルギからは、N−13とF−18を区別できないこと、(2)その半減期はN−13が約10分と短いのに対し、F−18の半減期が約110分と比較的長いことから、発明者らは、排ガス中の放射能を計測するに当たり、半減期(崩壊定数)の差を用いて放射性核種の濃度を算出する方法を用いることを考えたが、従来の試料を連続的に流して放射線監視をする放射線監視装置では、オンラインで半減期の差を利用するものは無かった。
また、特許文献2の段落[0039]に記載されたような試料を一定時間試料容器等に閉じ込めて放射能計測するものでも、その目的は、試料中に含まれる短半減期の放射性核種の放射能を減衰させて、γ線エネルギを計測するときのバックグラウンドを低減させるためのものであった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり排ガス再結合器等の性能劣化を高感度に検出することができる簡便な構成の放射線監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、γ線検出器と、該γ線検出器からのγ線検出信号の波高値により波高分析する波高分析手段と、前記波高分析された計数結果を処理する信号処理手段と、を備え、連続的に流れる試料に含まれるγ線を放出する核種の濃度を測定して放射能の漏洩監視を行う放射線監視装置において、前記γ線検出器に面して配置した第1のフローセル及び第2のフローセルと、前記第1のフローセルの前後に接続されて所定の流速で前記試料を流す第1の計測配管と、前記第2のフローセルの前後に接続され、前記第1の計測配管に並列された第2の計測配管と、前記第2のフローセルに前記試料を導入して閉じ込める閉じ込め手段と、前記γ線検出器の周囲に配置し、可動式の開口部を有する遮蔽体と、該遮蔽体の前記開口部を前記第1のフローセル側又は前記第2のフローセル側に切り替えて設定可能とするアクチュエータと、前記閉じ込め手段、前記アクチュエータ、及び前記信号処理手段のそれぞれの動作を制御する制御手段と、を備え、前記信号処理手段は、前記計数結果を時系列的に記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、通常計測状態では、前記アクチュエータに前記第1のフローセル側に前記遮蔽体の開口部を設定させ、前記信号処理手段に、前記第1のフローセルを流れる前記試料からのγ線にもとづく前記計数結果を処理させるとともに、閉じ込め計測状態では、前記閉じ込め手段を制御して、前記第2のフローセルに前記試料を導入した後閉じ込めさせるとともに、前記アクチュエータを制御して前記遮蔽体の前記開口部を前記第2のフローセル側に設定させて、前記信号処理手段に前記第2のフローセルに閉じ込められた前記試料に対して得られた前記γ線検出信号の内の特定の波高値の前記計数結果を前記記憶手段に時系列的に記憶させ、前記信号処理手段は、前記制御手段に制御されて、前記時系列的に記憶された計数結果にもとづいて、前記特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種の濃度を定量分析することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、γ線検出器と、該γ線検出器からのγ線検出信号の波高値により波高分析する波高分析手段と、前記波高分析された計数結果を処理する信号処理手段と、を備え、連続的に流れる試料に含まれるγ線を放出する核種の濃度を測定して放射能の漏洩監視を行う放射線監視装置において、前記γ線検出器として第1のγ線検出器と第2のγ線検出器とを備え、更に、前記第1のγ線検出器に面して配置された第1のフローセル及び前記第2のγ線検出器に面して配置された第2のフローセルと、前記第1のフローセルの前後に接続されて所定の流速で前記試料を流す第1の計測配管と、前記第2のフローセルの前後に接続され、前記第1の計測配管に並列された第2の計測配管と、前記第2のフローセルに前記試料を導入して閉じ込める閉じ込め手段と、前記閉じ込め手段及び前記信号処理手段を制御する制御手段と、を備え、前記信号処理手段は、前記計数結果を時系列的に記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、通常計測状態では、前記信号処理手段に、前記第1のフローセルを流れる前記試料からのγ線にもとづく前記計数結果を処理させるとともに、閉じ込め計測状態では、前記閉じ込め手段を制御して、前記第2のフローセルに前記試料を導入した後閉じ込めさせるとともに、前記信号処理手段に少なくとも前記第2のフローセルに閉じ込められた前記試料に対して得られた前記γ線検出信号の内の特定の波高値の前記計数結果を前記記憶手段に時系列的に記憶させ、
前記信号処理手段は、前記制御手段に制御されて前記記憶された計数結果にもとづいて、前記特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種の濃度を定量分析することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、γ線検出器と、該γ線検出器からのγ線検出信号の波高値により波高分析する波高分析手段と、前記波高分析された計数結果を処理する信号処理手段と、を備え、連続的に流れる試料に含まれるγ線を放出する核種の濃度を測定して放射能の漏洩監視を行う放射線監視装置において、前記γ線検出器に面して配置した第1のフローセル及び第2のフローセルと、前記第1のフローセルの前後に接続されて所定の流速で前記試料を流す第1の計測配管と、前記第2のフローセルの前後に接続され、前記第1の計測配管に並列された第2の計測配管と、前記第2のフローセルに前記試料を導入して閉じ込める閉じ込め手段と、前記閉じ込め手段の開閉と、前記信号処理手段の動作を制御する制御手段と、を備え、前記信号処理手段は前記計数結果を時系列的に記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、通常計測状態では、前記閉じ込め手段を開状態とし、前記信号処理手段に、前記第1のフローセルを流れる前記試料からのγ線にもとづく前記計数結果を処理させるとともに、閉じ込め計測状態では、前記閉じ込め手段を、所定時間閉じさせるとともに、前記信号処理手段に前記第2のフローセルに閉じ込められた前記試料に対して得られた前記γ線検出信号の内の特定の波高値の前記計数結果を前記記憶手段に時系列的に記憶させ、前記信号処理手段は、前記制御手段に制御されて前記記憶された計数結果にもとづいて、前記特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種の濃度を定量分析することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、γ線検出器と、該γ線検出器からのγ線検出信号の波高値により波高分析する波高分析手段と、前記波高分析された計数結果を処理する信号処理手段と、を備え、連続的に流れる試料に含まれるγ線を放出する核種の濃度を測定して放射能の漏洩監視を行う放射線監視装置において、前記γ線検出器に面して配置したフローセルと、該フローセルの前後に接続されて所定の流速で前記試料を流す計測配管と、前記計測配管に設けられ、前記フローセルの上流側及び下流側にそれぞれ設けられて前記フローセルに前記試料を導入して閉じ込める閉じ込め手段と、前記閉じ込め手段の開閉と、前記信号処理手段の動作を制御する制御手段と、を備え、前記信号処理手段は前記計数結果を時系列的に記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、通常計測状態では、前記閉じ込め手段を開状態とし、前記信号処理手段に、前記フローセルを流れる前記試料からのγ線にもとづく前記計数結果を処理させるとともに、閉じ込め計測状態では、前記閉じ込め手段を、所定時間閉じさせるとともに、前記信号処理手段に前記フローセルに閉じ込められた前記試料に対して得られた前記γ線検出信号の内の特定の波高値の前記計数結果を前記記憶手段に時系列的に記憶させ、
前記信号処理手段は、前記制御手段に制御されて前記記憶された計数結果にもとづいて、前記特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種の濃度を定量分析することを特徴とする。
【0011】
請求項1から請求項4に係る発明によれば、γ線エネルギが同一で、かつ、半減期の長さの異なる放射性核種の濃度を簡単に算出することができ、例えば、排ガス中にN−13以外にF−18が含まれている場合に、容易にF−18の濃度を算出することができ、排ガス再結合器の性能劣化を早期に検知することができる。
【0012】
請求項5に係る発明は、γ線検出器と、該γ線検出器からのγ線検出信号の波高値により波高分析する波高分析手段と、前記波高分析された計数結果を処理する信号処理手段と、を備え、連続的に流れる試料に含まれるγ線を放出する核種の濃度を測定して放射能の漏洩監視を行う放射線監視装置において、前記γ線検出器に面して配置した第1のフローセル及び第2のフローセルと、前記第1のフローセルの前後に接続されて所定の流速で前記試料を流す第1の計測配管と、前記第1の計測配管の下流側に接続された所定の長さの遅延配管と、前記第2のフローセルの前後に接続され、前記遅延配管の下流側に接続された第2の計測配管と、前記γ線検出器の周囲に配置し、可動式の開口部を有する遮蔽体と、該遮蔽体の前記開口部を前記第1のフローセル側又は前記第2のフローセル側に切り替えて設定可能とするアクチュエータと、前記アクチュエータの動作及び前記信号処理手段の動作を制御する制御手段と、を備え、前記信号処理手段は、前記計数結果を記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、通常計測状態では前記アクチュエータに前記遮蔽体の開口部を前記第1のフローセル側に設定させて、前記信号処理手段に、前記第1のフローセルを流れる前記試料からのγ線にもとづく前記計数結果を第1の計数結果として前記記憶手段に時系列的に記憶させ、所定の頻度で前記アクチュエータを制御して前記遮蔽体の開口部を前記第2のフローセル側に設定変更させて、その状態で前記信号処理手段において前記第2のフローセルを流れる前記試料からのγ線にもとづく前記計数結果を第2の計数結果として前記記憶手段に記憶させ、前記信号処理手段は、前記制御手段に制御されて、前記記憶された第2の計数結果と所定時間前の前記第1の計数結果とにもとづいて、特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種の濃度を定量分析することを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、γ線検出器と、該γ線検出器からのγ線検出信号の波高値により波高分析する波高分析手段と、前記波高分析された計数結果を処理する信号処理手段と、を備え、連続的に流れる試料に含まれるγ線を放出する核種の濃度を測定して放射能の漏洩監視を行う放射線監視装置において、前記γ線検出器として第1のγ線検出器と第2のγ線検出器とを備え、更に、前記第1のγ線検出器に面して配置された第1のフローセル及び前記第1のγ線検出器に面して配置された第2のフローセルと、前記第1のフローセルの前後に接続されて所定の流速で前記試料を流す第1の計測配管と、前記第1の計測配管の下流側に接続された所定の長さの遅延配管と、前記第2のフローセルの前後に接続され、前記遅延配管の下流側に接続された第2の計測配管と、前記信号処理手段の動作を制御する制御手段と、を備え、前記信号処理手段は、前記計数結果を記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、通常計測状態では、前記信号処理手段において前記第1のγ線検出器にもとづく前記計数結果を第1の計数結果として前記記憶手段に時系列的に記憶させ、所定の頻度で前記信号処理手段において前記第2のγ線検出器にもとづく前記計数結果を第2の計数結果として前記記憶手段に記憶させ、前記信号処理手段は、前記制御手段に制御されて、前記記憶された第2の計数結果と所定時間前の前記第1の計数結果にもとづいて、特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種の濃度を定量分析することを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、γ線検出器と、該γ線検出器からのγ線検出信号の波高値により波高分析する波高分析手段と、前記波高分析された計数結果を処理する信号処理手段と、を備え、連続的に流れる試料に含まれるγ線を放出する核種の濃度を測定して放射能の漏洩監視を行う放射線監視装置において、前記γ線検出器に面して配置された第1のフローセル及び第2のフローセルと、前記第1のフローセルの前後に接続されて所定の流速で前記試料を流す第1の計測配管と、前記第1の計測配管の下流側に接続された所定の長さの遅延配管と、前記第1の計測配管の下流側に前記遅延配管と並列に接続されたバイパス管と、前記第2のフローセルの前後に接続された第2の計測配管と、前記遅延配管経由の前記試料の分流と、前記バイパス管経由の前記試料の分流と、を切り替えて前記第2の計測配管に供給する流れ切替手段と、前記信号処理手段及び流れ切替手段の動作を制御する制御手段と、を備え、前記信号処理手段は、前記計数結果を記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、通常計測状態では、前記流れ切替手段を前記第2の計測配管に前記遅延配管経由の前記試料が流れている状態とさせ、前記信号処理手段において、前記第1及び第2のフローセルを流れる前記試料にもとづく前記計数結果を、第1の計数結果として前記記憶手段に時系列的に記憶させ、所定の頻度で前記流れ切替手段を前記第2の計測配管に前記バイパス管経由の前記試料が流れている状態とさせ、前記信号処理手段において前記第1及び第2のフローセルを流れる前記試料にもとづく前記計数結果を第2の計数結果として前記記憶手段に記憶させ、前記信号処理手段は、前記制御手段に制御されて、前記記憶された第2の計数結果と所定時間前の前記第1の計数結果にもとづいて、特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種の濃度を定量分析することを特徴とする。
【0015】
請求項5から請求項7に係る発明によれば、γ線エネルギが同一で、かつ、半減期の長さ、つまり崩壊定数の異なる放射性核種の濃度を簡単に算出することができ、例えば、排ガス中にN−13以外にF−18が含まれている場合に、容易にF−18の濃度を算出することができ、排ガス再結合器の性能劣化を早期に検知することができる。
更に、試料を閉じ込めることなく、遅延配管を通過する間の時間による半減期の短い放射性核種の濃度低下を利用するので、連続的に試料を流しながら放射線監視を行うのに都合が良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、排ガス再結合器の性能劣化を高感度に検出することができる簡便な構成の放射線監視装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、適宜図を参照しながら詳細に説明する。
《気体廃棄物処理系》
図1は本発明の実施形態に係る放射線監視装置を適用した沸騰水型原子力発電所における一次系プラントの概要図、気体廃棄物処理系の機器配置図、及び気体廃棄物処理系に設置される放射線監視装置の構成図である。
【0018】
図1において、原子炉1に装荷された炉心2内の核燃料が核分裂反応により発熱し、原子炉水を沸騰させる。原子炉1で発生した蒸気は、主蒸気管3を通してタービン4に流入し、タービン4を回転させ、図示しない発電機を駆動して発電する。タービン4を回転させた蒸気は復水器5にダンプされて凝縮されて水に戻り、復水配管27を経て復水ポンプ21で、図示省略の給水加熱器に送られ、更に図示しない給水ポンプで給水配管26を経て原子炉1に給水される。
【0019】
主蒸気管3内を流れる気体の大半は原子炉水が沸騰して発生する水蒸気であるが、この中には、核燃料の核分裂に伴い発生する放射線エネルギにより原子炉水が放射線分解して生成する水素ガス、酸素ガス及び核燃料から僅かながら発生する放射性希ガスや、その他に復水器5に接続する配管や機器から入り込んでくる空気(インリーク空気)等の非凝縮性ガスが含まれている。
【0020】
これら非凝縮性ガスは復水器5に流入した後、主蒸気管3から分岐した主蒸気抽気配管6を通して原子炉蒸気の一部を利用した空気抽出器7により気体廃棄物処理系側に抽気される。空気抽出器7からは抽気に用いた駆動蒸気と非凝縮性ガスが一緒に流出し、排ガス予熱器9に流入する。排ガス予熱器9では、流入した蒸気と非凝縮性ガスを加熱し、排ガス再結合器10に送る。
【0021】
排ガス再結合器10では、原子炉水の放射線分解で生じた水素ガスと酸素ガスが排ガス再結合器10に充填された触媒の作用により水(水蒸気)となる。次にこれら駆動蒸気や再結合水及びインリーク空気等は排ガス復水器11に導入され、この中で冷却されることにより、駆動蒸気および再結合水は排ガス復水器ドレン管19を経て復水器5に回収される。排ガス復水器11を通過した非凝縮性ガスは湿分を有しており、更に、除湿冷却器12で湿分を除去される。ここで除去された湿分も排ガス復水器ドレン管19を経て復水器5に回収される。
一方、インリーク空気および核燃料から生じる放射性希ガスを主体とする非凝縮性ガスは、排ガス系配管25を通り、活性炭式希ガスホールドアップ装置13を構成する個々のホールドアップタンク13a〜13cを経、更に、排ガスフィルタ14を経て、排ガス抽出器15により主排気筒16に導かれ、大気中に放出される。
【0022】
活性炭式希ガスホールドアップ装置13では、放射性希ガスを吸着脱着する間に減衰し、主排気筒16から放出するときは、放射性希ガスの放射能濃度レベルが一定の値以下となるよう設計されている。
図1中、除湿冷却器12より下流側の排ガス系配管25において、排ガス系配管25から分岐して後記する放射線監視装置30(図1では、後記する第1の実施形態の放射線監視装置30Aの構成が具体的に示されている)に試料ガスを供給するサンプリング配管(採取)22と、放射線監視装置30から戻される試料を排ガス系配管25に戻すサンプリング配管(戻り)23が接続している。
【0023】
原子炉1の炉心2内に装荷されている核燃料集合体は燃料表面に付着する汚染ウラン等により通常運転時でも僅かながら放射性希ガスを発生しているが、核燃料集合体を構成する核燃料ペレットを充填された燃料棒の被覆管に破損が生じた場合には、発生する放射性希ガス量が増大する。
【0024】
原子炉1内の核燃料集合体の損傷を監視するため、排ガス系配管25の活性炭式希ガスホールドアップ装置13の入口に設けられたサンプリング配管(採取)22により、除湿冷却器12の出口ガスを(試料)採取し、γ線検出器であるゲルマニウム放射線検出器32(以下、Ge検出器と称する)を含む放射線監視装置30の現場配置装置部分に導入し、Ge検出器32からのγ線検出信号を波高分析して、その計数結果の変化、つまり、放射能濃度の変化を、原子力発電所の図示しない中央操作室に配置された放射線監視装置30の操作表示部38に表示させたり、その内蔵した記憶装置に記録させたりして監視している。
【0025】
サンプリング配管(戻り)23には、例えば、ポンプ59を使用して放射線監視装置30からの排ガスの戻りガスを排ガス系配管25へ流すようにし、サンプリング配管(採取)22側に排ガス流速を一定制御するために流量調整弁57と流量計58を設ける。そして、後記する制御部37に流量計58の流量信号を入力し、その流量信号に応じて流量調整弁57の開度を制御部37により制御して、サンプリング配管(採取)22内の排ガス流量を一定に保つことが、燃料破損による排ガス中の放射能濃度の変動を検知する上で好ましい。
【0026】
なお、操作表示部38は図1では、パーソナルコンピュータとして表示してあるが、それに限定されるものではない。また、計数結果の記録は、記録計を用いて記録用紙に出力するものでも良い。
【0027】
本実施形態では、排ガス放射能濃度は、放射線監視装置30によりγ線核種分析を行い連続的に計測しているが、排ガス中の核種別の放射能濃度を、定期的または不定期に、図示しないバイアル試料びんを用いて排ガス試料をサンプリングし、バイアル試料びんを取り外し、γ線核種分析をしても良い。
【0028】
《第1の実施形態》
次に、本願発明に係る放射線監視装置の第1の実施形態である放射線監視装置30Aについて説明する。
放射線監視装置30Aは、バックグラウンドレベルの低い場所に設置された、計測ライン(通常用)51、計測ライン(閉じ込め用)52、Ge検出器32、可動式遮蔽体33、波高分析装置(波高分析手段)35、信号処理装置(信号処理手段)36、制御部(制御手段)37等を含む現場配置装置部分と、中央操作室に設置された操作表示部38を含んで構成されている。
サンプリング配管(採取)22は、排ガスをバックグラウンドレベルの低い場所まで導き、そこに設置された計測ライン(通常用)51と計測ライン(閉じ込め用)に三方弁53Aで分岐し、分岐した後三方弁53Bで合流して、サンプリング配管(戻り)23に接続している。
計測ライン(通常用)51はフローセル31Aを備えており、フローセル31Aは、試料である排ガスを一定量収容し得る容積を有する通路として構成されている。
計測ライン(閉じ込め用)52も同様にフローセル31Bを備えており、フローセル31Bも、試料である排ガスを一定量収容し得る容積を有する通路として構成されている。
ここで、計測ライン(通常用)51は請求項に記載の「第1の計測配管」に、計測ライン(閉じ込め用)52は請求項に記載の「第2の計測配管」に、フローセル31Aは請求項に記載の「第1のフローセル」に、フローセル31Bは請求項に記載の「第2のフローセル」に、三方弁53A,53Bは請求項に記載の「閉じ込め手段」に対応する。
【0029】
三方弁53A,53Bは制御部37に通電制御される電磁弁の切替弁である。三方弁53Aは、無通電のときサンプリング配管(採取)22からの排ガスを計測ライン(通常用)51に流し、通電時にはサンプリング配管(採取)22からの排ガスを矢印で示すように計測ライン(閉じ込め)52に流す。三方弁53Bは、無通電のとき計測ライン(通常用)51からの排ガスをサンプリング配管(戻り)23に流し、通電時には矢印で示すように計測ライン(閉じ込め)52から排ガスをサンプリング配管(戻り)23に流す。
【0030】
フローセル31A,31Bの間には開口部33aを有する可動式遮蔽体(遮蔽体)33に囲まれてGe検出器32が配置されている。そして、Ge検出器32は、開口部33aを通してフローセル31A又はフローセル31Bからの放射線(γ線)を検出するようになっている。
可動式遮蔽体33は、制御部37によって動作が制御されるアクチュエータ34により、回動可能になっており、その開口部33aをフローセル31A側に向けたりフローセル31B側に向けたりすることができる。
なお、ここでは可動式遮蔽体33全体が回動可能な構成としたが、それに限定されること無く、可動式遮蔽体33のフローセル31A及びフローセル31Bそれぞれの側に面して設けられた開口部33aが、アクチュエータ34により開閉自在な構造でも良い。
【0031】
ちなみに、Ge検出器32は、例えば、可動式遮蔽体33内に配置された図示しない電子式冷却装置で冷却されているか、可動式遮蔽体33外に放射線監視装置30Aの現場配置装置部分の一部として設けられた図示しない電子式冷却装置で冷却された循環する冷媒によって冷却されている。
【0032】
フローセル31A,31Bの周壁は低エネルギガンマ線の吸収を押さえるために、例えば、アルミニウム(Al)のような質量数の低い材料によって構成されることが好ましく、Ge検出器32側の窓厚が極めて薄肉とされている。これにより、フローセル31A,31Bに導かれた排ガスからの放射線が、Ge検出器32によりそのエネルギに比例した大きさの電気信号に変換される。
そして、Ge検出器32に波高分析装置35及び信号処理装置36が順次接続され、さらに操作表示部38が接続されている。信号処理装置36は、制御部37とも接続し、制御部37に制御されて動作する。ちなみに、信号処理装置36は、記憶装置(記憶手段)36aを有している。また、制御部37は操作表示部38と接続し、必要に応じて操作表示部38の入力装置から入力された指令を受けることができるようになっている。
【0033】
なお、フローセル31A,31BはGe検出器32とともに図示しない遮蔽体で覆われることにより、さらにバックグラウンドレベルが低減されている。
【0034】
このような構成においては、通常計測状態では、制御部37は、可動式遮蔽体33の開口部33aをフローセル31A側に向くように設定し、三方弁53A,53Bを無通電として、サンプリング配管(採取)22を介して排ガスがフローセル31Aに導かれ、Ge検出器32によって放射線計測が行われ、このGe検出器32からのγ線検出信号は、波高分析装置35によりエネルギ弁別され、エネルギ窓毎の計数値として、信号処理装置36にタイミング制御されて所定時間間隔(所定時間窓)の間積算される。信号処理装置36は所定時間毎に波高分析装置35からエネルギ窓毎の計数値を読み取り、予め設定されたエネルギ窓に対応する目的とする放射性核種毎の所定時間窓に対する計数率を算出する。目的とする放射性核種毎の計数率は計数率のまま、もしくは検出効率により放射能濃度に換算され、記憶装置36aに記憶されるとともに、その時系列情報が操作表示部38の表示装置に表示される。
ちなみに、この予め設定されたエネルギ窓の中にはN−13とF−18による511keVのγ線エネルギに対応するエネルギ窓も含まれている。
ここで、計数率又は計数率から放射能濃度に換算されたものが、請求項に記載の「計数結果」に対応する。
【0035】
そこで、操作表示部38において時系列情報の傾向監視を行うことにより、燃料の破損を監視することができる。
【0036】
(N−13及びF−18の濃度の算出)
次に、図2を参照しながら適宜図1、図3を参照して、排ガス中のN−13及びF−18濃度を計測する方法について説明する。
図2は、試料を閉じ込めて所定のエネルギ窓に対応する同じエネルギのγ線を放出する放射線核種、例えば、N−13及びF−18の濃度を算出する制御の流れのフローチャートである。
図3は、半減期の長さが異なる2つの放射性核種が存在する場合の、両方の放射能の減衰曲線を示す図である。
制御部37は、予め設定された所定時間の頻度、例えば、1時間に1回の頻度で、排ガスを計測ライン(閉じ込め用)52及びフローセル31Bに閉じ込めて、フローセル31Bからのγ線を計測する「閉じ込め計測」を行うようにプログラム制御されており、閉じ込め計測開始のタイミングか否かをチェックしている(ステップS11)。閉じ込め計測開始のタイミングの場合(Yes)は、ステップS12に進み、そうでない場合(No)は、ステップS11を繰り返す。
【0037】
ステップS12では、制御部37は、閉じ込め計測の指示をアクチュエータ34、信号処理装置36、三方弁53A,53Bに出力する。具体的には、アクチュエータ34には、開口部33aをそれまでフローセル31Aに向けて設定していたものを、開口部33aをフローセル31Bに向けるように可動式遮蔽体33を回動させる制御信号を出力し、信号処理装置36には、それまでの通常計測状態から閉じ込め計測状態に切り替えるように指令し、三方弁53A,53Bを通電状態にする。すると三方弁53A,53Bは一時的に通電状態となり、サンプリング配管(採取)22を介して排ガスがフローセル31Bに導かれ、以前から計測ライン(閉じ込め用)52及びフローセル31B内に留まっていた排ガスは掃気される。
【0038】
そして、ステップS13では、制御部37は、所定時間経過後に、計測ライン(閉じ込め用)52及びフローセル31B内の排ガスが現在サンプリング配管(採取)22を流れているものに完全に置き換わったころを見計らって、三方弁53A,53Bを再び無通電状態とし、排ガスを計測ライン(閉じ込め用)52及びフローセル31B内に閉じ込める(「計測ライン(閉じ込め用)に排ガスを導入して閉止」)。
このとき、計測ライン(通常用)51には、再び排ガスが所定の流速で流れ始める。
ステップS14では、アクチュエータ34が制御部37からの制御信号を受けて、可動式遮蔽体33の開口部33aをそれまでフローセル31Aに向けて設定していたものを、フローセル31Bに向けるように可動式遮蔽体33を回動させる(「可動式遮蔽体の開口部を、計測ライン(閉じ込め用)側のフローセルに設定する」)。
【0039】
ステップS15では、制御部37は、タイマtをスタートさせ、信号処理装置36に所定時間間隔で放射線計測をさせる。具体的には、ステップS11〜S15までの間、Ge検出器32はγ線検出信号を継続して波高分析装置35に出力しており、波高分析装置35はγ線検出信号をエネルギ弁別してエネルギ窓毎の計数値として、所定時間間隔の間積算するが、信号処理装置36は、ステップS12において閉じ込め計測の指示を出力を受信すると同時に、ステップS11〜S15までの間は、波高分析装置35からエネルギ窓毎の計数値の読み取りを停止し、ステップS16の時点で再び波高分析装置35からエネルギ窓毎の計数値の読み取りを開始し、予め設定されたN−13及びF−18の陽電子放出崩壊時の511keVのγ線のエネルギ窓に対応する計数率を算出する。511keVのγ線の計数率は計数率のまま、もしくは検出効率により放射能濃度に換算され、記憶装置36aに記憶される。
【0040】
この結果、記憶装置36aには、閉じ込め計測状態での時間t,t,・・・,t,・・・,tに対する計数率C(t),C(t),・・・,C(t),・・・,C(t)が図3に示すような×印で示すプロット点のように時間を経て計数率が低下する形で記憶される。
図3において横軸は閉じ込め計測を開始t後の時間を示し、縦軸は経過時間毎の計数率C(放射能に対応す)を対数表示したものを示す。曲線Cは半減期の短い放射性核種、つまり、N−13の寄与を示し、曲線Cは半減期の長い放射性核種、つまり、F−18の寄与を示す。
図3中におけるT,Tは半減期を示す。
【0041】
ステップS17では、制御部37は、タイマtが閉じ込め計測の終了時間Tに達したか否かをチェックする。終了時間Tに達した場合(Yes)はステップS18に進み、達していない場合(No)は、ステップS16を続ける。ステップS18では、制御部37は、タイマtをリセットし、ステップS19へ進み、通常計測の指示をアクチュエータ34に出力する。
【0042】
ステップS20では、アクチュエータ34が制御部37からの制御信号を受けて、可動式遮蔽体33の開口部33aをそれまでフローセル31Bに向けて設定していたものをフローセル31Aに向けるように可動式遮蔽体33を回動させる(「可動式遮蔽体の開口部を、計測ライン(通常用)側のフローセルに設定する」)。
【0043】
ステップS21では、信号処理装置36は、ステップS16で、記憶装置36aに時系列的に記憶された計数率を読み出して、図3に示すように異なる長さの半減期を有する2つの放射性核種の放射能減衰曲線として、それぞれの濃度を示す定数A,Bを最小二乗法により算出する(「N−13,F−18の濃度を分析」)。
【0044】
ここで定数A,Bを最小二乗法で算出する方法は、良く知られた方法であり、計数率の減衰曲線の評価関数C(t)を次式(1)のように仮定し、
【数1】

式(2)で示した差分の二乗の総和が最小となる定数A,Bを求めるものである。
そして、得られた定数A,BがN−13,F−18それぞれの濃度に対応する。
【0045】
ステップS22では、信号処理装置36は、F−18濃度が閾値以上か否かを、つまり、図3における曲線Cの定数Bが、閾値以上か否かをチェックする。閾値以上の場合(Yes)は、ステップS23に進み、操作表示部38に警報出力をする。例えば、「排ガス再結合器、排ガス復水器、除湿冷却器 異常!」の表示を操作表示部38にさせる。ここで、F−18濃度のとしては、ステップS21で算出された定数Bそのものを用いるよりも定数A,Bにもとづく相対比(B/A)を用いたほうが適切である。
ステップS22において閾値未満の場合(No)は、信号処理装置36は、一連の閉じ込め計測の処理を終了して、通常計測の処理を開始する。
なお、閉じ込め計測の処理を終了するに当たって、信号処理装置36は、算出したF−18の濃度を操作表示部38に送信し、操作表示部38においてF−18濃度の時系列情報の傾向監視を行うことにより、排ガス再結合器10、排ガス復水器11や除湿冷却器12が正常状態か否かを継続的に監視するようにしても良い。
【0046】
一連の閉じ込め計測の処理を終了すると、信号処理装置36は、計測ライン(通常用)51のフローセル31Aからのγ線にもとづくγ線検出信号に対して波高分析装置35が出力するエネルギ窓毎の計数値を読み取り、予め設定されたエネルギ窓に対応する目的とする放射性核種毎の計数率を算出する。目的とする放射性核種毎の計数率は計数率のまま、もしくは検出効率により放射能濃度に換算され、記憶装置36aに記憶させ、その時系列情報が操作表示部38に送られる。
【0047】
本実施形態の放射線監視装置30Aによれば、所定の時間間隔毎にF−18の濃度が算出でき、排ガス再結合器10、排ガス復水器11、除湿冷却器12が健全ならば、F−18がフッ化水素の化学形態で排ガス復水器ドレン管19に戻っており、ステップS23の警報出力はなされない。排ガス再結合器10、排ガス復水器11、除湿冷却器12に性能劣化や異常等が生じると、採取された非凝縮性ガスにフッ化水素が混じったり、除去されなかった湿分に含まれたフッ化水素がGe検出器32で検出されたりして、排ガス再結合器10、排ガス復水器11、除湿冷却器12の性能劣化又は異常が生じていることが判定できる。
特に、水素濃度で検知するよりも511keVのγ線に対応する波高値に対する計数率からF−18の濃度を検出できるので高感度でそれらの性能劣化又は異常検出可能である。
【0048】
また、本実施形態では、計測ライン(閉じ込め用)52で閉じ込め計測を行っている際にも、計測ライン(通常用)51には、排ガスが所定量流れるようになっているので、サンプリング配管(採取)22やサンプリング配管(戻り)23が長くても、その長さによる時間遅れがあるだけで、排ガス系配管25に現在流れている排ガスを連続して採取している状態は続いているので、図2のフローチャートにおいて閉じ込め計測が終了して、通常計測を始めるときに、そのまま信頼できる排ガスの放射能計測の結果とすることができる。
【0049】
なお、このようなN−13,F−18の濃度分析を所定の時間間隔で自動的に行っている以外に、操作表示部38の入力手段からの操作により、随時、制御部37にステップS12の閉じ込め計測の指示を出力させても良い。
【0050】
《第2の実施形態》
次に、図4を参照しながら本願発明に係る放射線監視装置の第2の実施形態である放射線監視装置30Bについて説明する。
図4は、第2の実施形態の放射線監視装置の構成図である。
本実施形態の放射線監視装置30Bが第1の実施形態の放射線監視装置30Aと異なる点は、第1の実施形態ではフローセル31A,31Bに対してγ線検出器として1つのGe検出器32を用い、可動式遮蔽体33の開口部33aの設定をアクチュエータ34で切り替えていたものを、本実施形態では2つのGe検出器(第1のγ線検出器)32A,(第2のγ線検出器)32Bをそれぞれのフローセル31A,31Bに面して配置し、Ge検出器32Aとフローセル31Aの組み合わせと、Ge検出器32Bとフローセル31Bの組み合わせとを、固定遮蔽体50で隔離して互いの放射線計測時にバックグラウンドが高くならないようにしている点である。
【0051】
このような構成とすることに対応し、本実施形態では可動式遮蔽体33とアクチュエータ34を必要としない。また、本実施形態では、Ge検出器32AとGe検出器32Bからのγ線検出信号を先ず入力切替装置40に入力する。そして、入力切替装置40は制御部37に制御されて、通常計測状態のときはGe検出器32Aからのγ線検出信号を波高分析装置35に入力し、閉じ込め計測状態のときはGe検出器32Bからのγ線検出信号を波高分析装置35に入力する。
他の構成は第1の実施形態と同じであり、第1の実施形態と同じ構成については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
なお、本実施形態においては、図2のフローチャートのステップS14,S20は不要となる。
【0052】
本実施形態における計測ライン(通常用)51は請求項に記載の「第1の計測配管」に、計測ライン(閉じ込め用)52は請求項に記載の「第2の計測配管」に、フローセル31Aは請求項に記載の「第1のフローセル」に、フローセル31Bは請求項に記載の「第2のフローセル」に、三方弁53A,53Bは請求項に記載の「閉じ込め手段」に対応する。
【0053】
本実施形態でも第1の実施形態と同様に通常検出されない程度のF−18の濃度が、排ガス再結合器10、排ガス復水器11、除湿冷却器12に性能劣化や異常等が生じると、非凝縮性ガスにフッ化水素が混じったり、除去されなかった湿分に含まれたフッ化水素が検出されたりして、排ガス再結合器10、排ガス復水器11、除湿冷却器12の性能劣化又は異常が生じていることが判定できる。
【0054】
本実施形態によれば、可動式遮蔽体33やアクチュエータ34を用いないので、機械的駆動する構成品が少なくなり、信頼性が向上する。
なお、本実施形態では、波高分析装置35を1台として入力切替装置40で2つのGe検出器32A,32Bからのγ線検出信号を切り替えて入力するものとしたがそれに限定されるものではなく、入力切替装置40を無くし、2台の波高分析装置35にGe検出器32A,32Bからのγ線検出信号を入力するようにしても良い。
【0055】
《第3の実施形態》
次に、図5、図6を参照しながら本願発明に係る放射線監視装置の第3の実施形態である放射線監視装置30Cについて説明する。
図5は、第3の実施形態の放射線監視装置の構成図であり、図6は、半減期の長さが異なる2つの放射性核種が存在する場合の、両方の放射能の減衰曲線が定常状態の通常計測時の放射能と重畳されている関係を示す図である。
本実施形態の放射線監視装置30Cが第1の実施形態の放射線監視装置30Aと異なる点は、(1)可動式遮蔽体33とアクチュエータ34を削除した点と、(2)三方弁53A,53Bの代わりに、図5に示すように並行する計測ライン(通常用)51と計測ライン(閉じ込め用)52に分岐した配管構成において、計測ライン(閉じ込め用)52のフローセル31Bの上流側及び下流側に玉形弁の電磁弁である弁55A,55Bを設ける点である。
【0056】
弁55A,55Bは、例えば、無通電時「開」、通電磁「閉」であり、制御部37により制御され通常計測状態のときは開状態となり、閉じ込め計測のときは閉状態となる。
他の構成は第1の実施形態と同じであり、第1の実施形態と同じ構成については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
なお、本実施形態においては、図2のフローチャートのステップS14,S20は不要となる。
【0057】
そして、通常計測状態の場合には、サンプリング配管(採取)22で採取された排ガスは弁55A,55Bが開状態なので、計測ライン(通常用)51及び計測ライン(閉じ込め用)52の両方に等量に分配されて流れる。Ge検出器32はフローセル31A,31Bの両方からの放射線を検出して、γ線検出信号を波高分析装置35に出力する。
これに対し、閉じ込め計測の場合には、サンプリング配管(採取)22で採取された排ガスは弁55A,55Bが閉状態なので、計測ライン(通常用)51に全量流れる。Ge検出器32はフローセル31A,31Bの両方からの放射線を検出して、γ線検出信号を波高分析装置35に出力する。
従って、Ge検出器32は、フローセル31Aを流れる排ガスとフローセル31Bに閉じ込められた排ガスとからの放射線を検出することになる。
【0058】
本実施形態における計測ライン(通常用)51は請求項に記載の「第1の計測配管」に、計測ライン(閉じ込め用)52は請求項に記載の「第2の計測配管」に、フローセル31Aは請求項に記載の「第1のフローセル」に、フローセル31Bは請求項に記載の「第2のフローセル」に、弁55A,55Bは請求項に記載の「閉じ込め手段」に対応する。
【0059】
なお、第1の実施形態で前記したようにサンプル配管(戻り)23にはポンプ59を配置し、流量計及び流量調整弁が設けられ、流量計及び流量調整弁は制御部37に接続され、サンプル配管(採取)22には流量調整弁57と流量計58が設けられ、流量調整弁57の開度が制御部37に制御されて、閉じ込め計測状態におけるサンプル配管(採取)22、サンプル配管(戻り)23の排ガス流速が通常計測状態のときのそれと同じになるように、流量制御をしているものとする。
また、フローセル31Aを含めた計測ライン51及びフローセル31Bを含めた計測ライン52の流路抵抗は小さく、フローセル31A内の排ガスの時間平均の原子数密度は通常計測状態と閉じ込め計測状態で同じとする。
【0060】
図6において横軸は時間を示し、縦軸は経過時間毎の計数率C(放射能に対応す)を対数表示したものを示す。曲線Cは半減期の短い放射性核種、つまり、N−13の寄与を示し、曲線Cは半減期の長い放射性核種、つまり、F−18の寄与を示す。
図6中におけるT,TはそれぞれN−13,F−18の半減期を示す。
このような構成とすることで、排ガスに含まれるN−13、F−18の濃度A,Bが定常状態の場合、時間tにおいて通常計測状態から閉じ込め計測状態に切り替わると、N−13、F−18の陽電子放出に伴う511keVのγ線エネルギに対応する波高分析された計数率C(t)は、図6に示すように通常計測状態時には両方のフローセル31A,31Bからの寄与による{2×(A+B)}レベルであったものが、閉じ込め計測が始まると、フローセル31Aの方は(A+B)レベルの寄与を続けるが、フローセル31Bの方の寄与は(A+B)のレベルから曲線Cと曲線Cが合算されたものに切り替わる。
【0061】
そこで、前記の評価関数C(t)を次式(3)のように置き換えることができ、
【数2】

式(2)で示した差分の二乗の総和を最小となる定数A,Bを求める。そして、得られた定数A,BがN−13,F−18それぞれの濃度に対応する。
【0062】
本実施形態でも第1の実施形態と同様に通常検出されない程度のF−18の濃度が、排ガス再結合器10、排ガス復水器11、除湿冷却器12に性能劣化や異常等が生じると非凝縮性ガスにフッ化水素が混じったり、除去されなかった湿分に含まれたフッ化水素が検出されたりして、排ガス再結合器10、排ガス復水器11、除湿冷却器12の性能劣化又は異常が生じていることが判定できる。
【0063】
本実施形態によれば、可動式遮蔽体33やアクチュエータ34を用いないので、機械的駆動する構成品が少なくなり、信頼性が向上する。
【0064】
《第4の実施の形態》
以上第1の実施形態から第3の実施形態においては、計測ライン(通常用)51と計測ライン(閉じ込め用)52を設けて、原則的にサンプリング配管(採取)22、サンプリング配管(戻り)23には、一定量の排ガスが流れ続けているものとしたが、それに限定されるものではない。
図5に示した第3の実施形態の構成の放射線監視装置30Cにおいて、計測ライン(通常用)51を削除し、計測ライン(閉じ込め用)52だけとしても良い。
このような構成の放射線監視装置においては、通常計測状態時は弁55A,55Bを開状態にしてGe検出器32で放射線検出をし、閉じ込め計測時は弁55A,55Bを閉状態にしてGe検出器32で放射線検出をする。
【0065】
本実施形態における弁55A,55Bは請求項に記載の「閉じ込め手段」に対応する。
この場合の評価関数C(t)は式(1)で示されたものとなり、容易にN−13,F−18の濃度が算出される。
【0066】
なお、本実施形態の放射線検出装置においては、前記したサンプリング配管(戻し)23に設けられたポンプ59、サンプリング配管(採取)23に設けられた流量調整弁57、流量計58は制御部37に接続し、閉じ込め計測状態のときには制御部37に制御されてポンプを停止し、流量調整弁57の制御動作は停止しされている。
そして、閉じ込め計測状態から通常計測状態に切り替わったときには、制御部37に制御されポンプ59は起動し、流量調整弁57の制御動作が始まる。また、通常計測が再開されても、制御部37は、タイマ制御で閉じ込め計測状態時にサンプリング配管(採取)22内に滞留していた排ガスがフローセル31Bを通過するまでは、その計数率は排ガスの監視データとしては用いないように、信号処理装置36から操作表示部38に送信しないものとする。
【0067】
《第5の実施形態》
次に、図7から図9を参照しながら本願発明に係る放射線監視装置の第5の実施形態である放射線監視装置30Dについて説明する。
図7は、第5の実施形態の放射線監視装置の構成図であり、図8は、制御部が可動式遮蔽体の開口部の設定を制御するのに応じて、信号処理装置で取得される計数結果が2つのフローセルのいずれのものかを示すタイムチャートであり、図9は、「通常計測」と「N−13及びF−18の濃度の算出」の制御の流れを示すフローチャートである。
本実施形態の放射線監視装置30Dが第1の実施形態の放射線監視装置30Aと異なる点は、第1の実施形態では計測ライン(通常用)51と計測ライン(閉じ込め用)52とに三方弁53A,53Bに試料である排ガスの流れを切り替え可能とし、計測ライン(閉じ込め用)52に排ガスを導入して閉じ込め、閉じ込め計測をする構成としていたものを、本実施形態では、サンプリング配管(採取)22はフローセル31Aを有する計測ライン51Aに接続し、次いで遅延配管54、フローセル31Bを有する計測ライン52Aの順に接続し、最後に計測ライン52Aの下流側にサンプリング配管(戻り)23が接続している。そして、図7に示すように第1の実施形態と同様にフローセル31Aとフローセル31Bの間に可動式遮蔽体(遮蔽体)33で囲われたGe検出器32が配置されている。
【0068】
他の構成は第1の実施形態と同じであり、第1の実施形態と同じ構成については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0069】
本実施形態における計測ライン51Aは請求項に記載の「第1の計測配管」に、計測ライン52Aは請求項に記載の「第2の計測配管」に、フローセル31Aは請求項に記載の「第1のフローセル」に、フローセル31Bは請求項に記載の「第2のフローセル」に対応する。
【0070】
遅延配管の長さは、通常計測状態時の排ガスの流速に応じて設定されるが、例えば、フローセル31Aを通過した排ガスが約10分後にフローセル31Bを通過するように設定すると、N−13の半減期が約10分であることから、フローセル31Aから放出される511keVのエネルギのγ線と、フローセル31Bから放出される511keVのエネルギのγ線と、に対するGe検出器32の計数率に十分な差異が生じて都合が良い。
少なくとも、フローセル31Bを通過時にはN−13からの511keVのエネルギのγ線の放出はフローセル31Aを通過時の約1/2に減少している。
【0071】
また、本実施形態における制御部37は、信号処理装置36が図8に示すタイムチャートのように、フローセル31Aから放出される放射線にもとづき波高分析装置35からの符号(1)〜(9)で示す9組の、所定時間窓Δtの計数結果、例えば、1分間の予め設定されたエネルギ窓に対応する目的とする放射性核種毎の所定時間窓Δtに対する計数率(第1の計数結果)を波高分析装置35から周期的に取得し、時系列的に記憶装置36aに記憶させた後、フローセル31Bから放出される放射線にもとづき波高分析装置35からの符号(10)で示す1組の前記所定時間窓の計数結果を取得するように、可動式遮蔽体33の開口部33aの設定を制御する。
ちなみにこの予め設定されたエネルギ窓の中にはN−13とF−18による511keVのγ線エネルギに対応するエネルギ窓も含まれている。
従って、可動式遮蔽体33の開口部33aは時間ΔTの間はフローセル31A側を向いて開いており、時間ΔTに続く時間Δtの間は、可動式遮蔽体33の開口部33aはフローセル31B側を向いて開いている。その後は、開口部33aは再びフローセル31A側を向いて開いて符号(11)から9組の所定時間窓Δtの計数結果を取得し、その後フローセル31B側を向いて開いて1組の所定時間窓Δtの計数結果を取得することを繰り返す。
なお、図8では、アクチュエータ34で可動式遮蔽体33を回動して開口部33aを設定するのに要する時間を無視して、模式的に示してある。
【0072】
ここで符号(1)に対応する511keVのγ線の計数結果を計数率C(t)とすると計数率C(t)は次式(4)のように表わされ、符号(10)に対応する511keVのγ線の計数結果を計数率C(t+ΔT)とすると計数率C(t+ΔT)は次式(5)のように表わされる。
【数3】

,TはそれぞれN−13,F−18の半減期を示す。
式(4),(5)を定数A,Bを未知数とした1次2元連立方程式として、信号処理装置36において行列式計算で解いて、定数A,Bを算出すれば、定数A,BがN−13,F−18それぞれの濃度に対応する。
【0073】
(「通常計測」と「N−13及びF−18の濃度の算出」の制御)
次に、図9を参照しながら波高分析装置35、信号処理装置36及び制御部37における「通常計測」と、「N−13及びF−18の濃度の算出」の制御の流れを説明する。
制御部37は、予め設定された所定時間の頻度、例えば、通常計測状態を含む10分間に1回の頻度でN−13,F−18の濃度算出するようにプログラム制御されており、通常計測のタイミングか否かをチェックしている(ステップS31)。通常計測のタイミングの場合(Yes)は、ステップS32に進み、そうでない場合(No)は、ステップS37に進む。
【0074】
ステップS32では、制御部37は「通常計測」の制御信号を信号処理装置36に出力し、信号処理装置36においてタイマtをスタートさせるとともに、信号処理装置36から波高分析装置35に計数開始のタイミング信号を出力させる(「タイマtスタート」)。波高分析装置35においてGe検出器32からのγ線検出信号をエネルギ弁別させ、エネルギ窓毎の計数値として、積算させる(ステップS33;「所定時間窓Δtで放射線計測」)。次いで、信号処理装置36はタイマtがΔt以上になったか否かをチェック(ステップS34)し、Δt以上の場合(Yes)はステップS35へ進み、Δt未満の場合(No)はステップS33を繰り返す。
【0075】
ステップS35では、信号処理装置36は、波高分析装置35からエネルギ窓毎の計数値を読み取り、予め設定されたエネルギ窓に対応する目的とする放射性核種毎の所定時間窓Δtに対する計数率(計数結果)を算出し、所定時間窓Δtの計測開始時刻データとともに記憶装置36aに記憶させる(ステップS35;「計数結果を計測開始時刻データとともに記憶」)。そして、信号処理装置36はタイマをリセットし(ステップS36)、ステップS31へ戻る。
【0076】
ステップS31においてNoでステップS37に進むと、制御部37は、アクチュエータ34を制御して、可動式遮蔽体33の開口部33aをそれまでフローセル31Aに向けて設定していたものを、フローセル31Bに向けて開口するように設定する(「可動式遮蔽体の開口部を遅延配管より下流側のフローセルに設定する))。
そして、ステップS38では、フローセル31B側の計測の制御信号を信号処理装置36に出力し、信号処理装置36においてタイマtをスタートさせるとともに、信号処理装置36から波高分析装置35に計数開始のタイミング信号を出力させる(「タイマtスタート」)。波高分析装置35においてGe検出器32からのγ線検出信号をエネルギ弁別させ、エネルギ窓毎の計数値として、積算させる(ステップS39;「所定時間窓Δtで放射線計測」)。次いで、信号処理装置36はタイマtがΔt以上になったか否かをチェック(ステップS40)し、Δt以上の場合(Yes)はステップS41へ進み、Δt未満の場合(No)はステップS39を繰り返す。

【0077】
ステップS41では、信号処理装置36は、波高分析装置35からエネルギ窓毎の計数値を読み取り、511keVのγ線エネルギのエネルギ窓に対応する所定時間窓Δtに対する第2の計数率(第2の計数結果)を算出し、所定時間窓Δtの計測開始時刻データとともに記憶装置36aに記憶させる(ステップS41;「第2の計数結果を計測開始時刻データとともに記憶」)。そして、信号処理装置36はタイマをリセットする(ステップS42)。
【0078】
ステップS43では、制御部37は、アクチュエータ34に制御信号を出力して、可動式遮蔽体33の開口部33aをそれまでフローセル31Bに向けて設定していたものを、フローセル31Aに向けるように可動式遮蔽体33を回動させる(「可動式遮蔽体の開口部を、遅延配管より上流側のフローセルに設定する」)。
ステップS44では、信号処理装置36は、ステップS41で、記憶装置36aに計測開始時刻データとともに記憶された第2の計数率を記憶装置36aから読み出し、次いで、ステップS34で記憶装置36aに計測開始時刻データとともに記憶された計数率のうち、前記第2の計数率の計数開始時刻データよりもΔTだけ遡った計数開始時刻データの511keVのエネルギ窓に対応する第1の計数率(第1の計数結果)を記憶装置36aから読み出し、前記した式(4)、式(5)の連立方程式を解いて定数A,Bを算出する(「N−13,F−18の濃度を分析」)。
【0079】
ステップS45では、信号処理装置36は、F−18濃度が閾値以上か否かをチェックする。閾値以上の場合(Yes)は、ステップS46に進み、操作表示部38に警報出力をする。例えば、「排ガス再結合器、排ガス復水器、除湿冷却器 異常!」の表示を操作表示部38にさせる。ここで、F−18濃度のとしては、ステップS44で算出された定数Bそのものを用いるよりも定数A,Bにもとづく相対比(B/A)を用いたほうが適切である。
ステップS45において閾値未満の場合(No)は、信号処理装置36は、一連の閉じ込め計測の処理を終了して、通常計測の処理を開始する。
なお、閉じ込め計測の処理を終了するに当たって、信号処理装置36は、算出したF−18の濃度を操作表示部38に送信し、操作表示部38においてF−18濃度の時系列情報の傾向監視を行うことにより、排ガス再結合器10、排ガス復水器11や除湿冷却器12が正常状態か否かを継続的に監視するようにしても良い。
【0080】
ステップS37〜S46のN−13及びF−18濃度の分析のための放射線計測やその後の演算処理が終了すると、信号処理装置36は、計測ライン51Aのフローセル31Aからのγ線検出信号に対して波高分析装置35が出力するエネルギ窓毎の計数値を読み取り、予め設定されたエネルギ窓に対応する目的とする放射性核種毎の計数率を算出する。目的とする放射性核種毎の計数率は計数率のまま、もしくは検出効率により放射能濃度に換算され、記憶装置36aに記憶させ、その時系列情報が操作表示部38に送られる。
【0081】
本実施形態の放射線監視装置30Dによれば、所定の時間間隔毎にF−18の濃度が算出でき、排ガス再結合器10、排ガス復水器11、除湿冷却器12が健全ならば、F−18がフッ化水素の化学形態で排ガス復水器ドレン管19に戻っており、通常検出されない程度のF−18の濃度が、それらに性能劣化や異常等が生じると採取された非凝縮性ガスにフッ化水素が混じったり、除去されなかった湿分に含まれたフッ化水素が検出されたりして、排ガス再結合器10、排ガス復水器11、除湿冷却器12の性能劣化又は異常が生じていることが判定できる。
特に、水素濃度で検知するよりも511keVのγ線に対応する波高値に対する計数率から放射線核種の濃度を検出できるので高感度で検出可能である。
【0082】
また、本実施形態では、通常計測を行っている場合でも、N−13及びF−18濃度の分析のための放射線計測やその後の演算処理を行っている際にも、計測ライン51A、52Aには、排ガスが所定量流れるようになっているので、サンプリング配管(採取)22やサンプリング配管(戻り)23が長くても、その長さによる時間遅れがあるだけで、排ガス系配管25に現在流れている排ガスを連続して採取している状態は続いているので、図9のフローチャートにおいてN−13及びF−18濃度の分析のための放射線計測やその後の演算処理が終了して、通常計測を始めるときに、そのまま信頼できる排ガスの放射能計測の結果とすることができる。
【0083】
また、第1の実施形態及び第2の実施形態において用いられた三方弁53A,53Bが不要になるので、放射線監視装置30Dの機械的信頼性が向上する。
【0084】
《第6の実施形態》
次に、図10を参照しながら本願発明に係る放射線監視装置の第6の実施形態である放射線監視装置30Eについて説明する。
図10は、第6の実施形態の放射線監視装置の構成図である。
本実施形態の放射線監視装置30Eが第5の実施形態の放射線監視装置30Dと異なる点は、第1の実施形態ではフローセル31A,31Bに対してγ線検出器として1つのGe検出器32を用い、可動式遮蔽体33の開口部33aの設定をアクチュエータ34で切り替えていたものを、本実施形態では2つのGe検出器(第1のγ線検出器)32A,(第2のγ線検出器)32Bをそれぞれのフローセル31A,31Bに配置し、Ge検出器32Aとフローセル31Aの組み合わせと、Ge検出器32Bとフローセル31Bの組み合わせとを、固定遮蔽体50で隔離して互いの放射線計測がバックグラウンドを高めることの無いようにしている点である。
【0085】
このような構成とすることに対応し、本実施形態では可動式遮蔽体33とアクチュエータ34を必要としない。また、本実施形態では、Ge検出器32AとGe検出器32Bからのγ線検出信号を先ず入力切替装置40に入力する。そして、入力切替装置40は制御部37に制御されて、通常計測のときはGe検出器32Aからのγ線検出信号を波高分析装置35に入力し、フローセル31B側の計測のときはGe検出器32Bからのγ線検出信号を波高分析装置35に入力する。
他の構成は第5の実施形態と同じであり、第5の実施形態と同じ構成については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
なお、本実施形態においては、図9のフローチャートのステップS37,S43は不要となる。
【0086】
本実施形態における計測ライン51Aは請求項に記載の「第1の計測配管」に、計測ライン52Aは請求項に記載の「第2の計測配管」に、フローセル31Aは請求項に記載の「第1のフローセル」に、フローセル31Bは請求項に記載の「第2のフローセル」に対応する。
【0087】
本実施形態でも第5の実施形態と同様に通常検出されない程度のF−18の濃度が、排ガス再結合器10、排ガス復水器11、除湿冷却器12に性能劣化や異常等が生じると非凝縮性ガスにフッ化水素が混じったり、除去されなかった湿分に含まれたフッ化水素が検出されたりして、排ガス再結合器10、排ガス復水器11、除湿冷却器12の性能劣化又は異常が生じていることが判定できる。
【0088】
本実施形態によれば、可動式遮蔽体33やアクチュエータ34を用いないので、機械的駆動する構成品が少なくなり、信頼性が向上する。
なお、本実施形態では、波高分析装置35を1台として入力切替装置40で2つのGe検出器32A,32Bからのγ線検出信号を切り替えて入力するものとしたがそれに限定されるものではなく、入力切替装置40を無くし、2台の波高分析装置35にGe検出器32A,32Bからのγ線検出信号を入力するようにしても良い。
【0089】
《第7の実施形態》
次に、図11を参照しながら本願発明に係る放射線監視装置の第7の実施形態である放射線監視装置30Fについて説明する。
図11は、第7の実施形態の放射線監視装置の構成図である。
本実施形態の放射線監視装置30Fが第5の実施形態の放射線監視装置30Dと異なる点は、(1)可動式遮蔽体33とアクチュエータ34を削除した点と、(2)図11に示すように計測ライン51Aの下流にバイパス管63と遅延配管54に分岐する分岐点を設け、そこに三方弁61を配置し、バイパス管63と遅延配管54のそれぞれ下流側は合流して計測ライン52Aに接続している点である。
【0090】
(計測配管の流れ切替の構成)
前記三方弁61による流れを切り替える構成を以下に説明する。
三方弁61は制御部37に通電制御される電磁弁の切替弁である。三方弁61は、無通電のとき計測ライン51Aからの排ガスを、遅延配管54を経て計測ライン52Aに流し、通電時には計測ライン51Aからの排ガスを、バイパス管63を経て計測ライン52Aに流す。
【0091】
そして、通常計測の場合には、サンプリング配管(採取)22で採取された排ガスは三方弁61が図11に示したような方向(白表示方向)に開状態なので、計測ライン51A通過後の排ガスは、遅延配管54に流れ、その後計測ライン52Aを流れる。
【0092】
従って、Ge検出器32はフローセル31Bを通過する排ガスに対しては、約10分前にフローセル31Aを通過した放射能濃度の減衰した排ガスからの放射線と、現在フローセル31Aを通過している排ガスからの放射線とともに検出して、γ線検出信号を波高分析装置35に出力していることになる。
【0093】
これに対し、N−13及びF−18濃度の分析のための放射線計の場合には、サンプリング配管(採取)22で採取された排ガスは三方弁61が図11に示したような矢印で示した方向に開状態なので、計測ライン51A通過後の排ガスは、三方弁61でバイパス管63側に流れた後、計測ライン52Aを流れる。
【0094】
従って、Ge検出器32はフローセル31A,31Bの両方からのフローセル31Aを通過する排ガスと略同じ放射能濃度の排ガスからの放射線を検出して、γ線検出信号を波高分析装置35に出力する。
【0095】
本実施形態における計測ライン51Aは請求項に記載の「第1の計測配管」に、計測ライン52Aは請求項に記載の「第2の計測配管」に、フローセル31Aは請求項に記載の「第1のフローセル」に、フローセル31Bは請求項に記載の「第2のフローセル」に、三方弁61は請求項に記載の「流れ切替手段」に対応する。
【0096】
(放射線計測の方法)
次に、前記説明した計測ライン52Aの流れ切替の構成を用いて、制御部37が、「通常計測」と「N−13及びF−18の濃度分析用の計測」を行う制御について説明する。
通常計測時には、制御部37が三方弁61を無通電状態とし、計測ライン52Aに、遅延配管54を経た排ガスを流し、予め設定されたエネルギ窓に対応する目的とする放射性核種毎の所定時間窓Δtに対する計数率(第1の計数結果)を信号処理装置36に波高分析装置35から周期的に取得させて、時系列的に記憶装置36aに記憶させていくとともに、操作表示部38に送信させる。
ちなみにこの予め設定されたエネルギ窓の中にはN−13とF−18による511keVのγ線エネルギに対応するエネルギ窓も含まれている。
【0097】
そして、制御部37は、一定の時間間隔で、例えば、約20分に一回の頻度で、所定時間窓Δt以上の時間だけ三方弁61を通電状態とし、計測ライン52Aに、バイパス管63を経た排ガスを流し、信号処理装置36に波高分析装置35から所定時間窓ΔtのN−13とF−18による511keVのγ線エネルギに対応するエネルギ窓に対応する計数率(第2の計数結果)取得させ、記憶装置36aに記憶させる。
【0098】
ここで、フローセル31Aを通過後、遅延配管54を経てフローセル31Bに到るまでの所要時間をΔTとしフローセル31Aを通過後、バイパス管63を経てフローセル31Bに到るまでの所要時間をΔTとする。
ちなみに、ΔTは秒オーダーの値である。また、排ガス中のN−13,F−18の濃度は着目している時間的長さ、例えば10分程度の時間幅では変動が小さく、定常状態であると仮定する。すると、F−18濃度分析用の計測を行う直前の通常計測時の511keVのエネルギ窓に対応する計数率C(t)は次式(6)で表わされ、N−13,F−18濃度分析用の計測時の511keVのエネルギ窓に対応する計数率C(t)は次式(7)で表わされる。
【0099】
【数4】

【0100】
式(6),(7)で表示された定数A,Bを未知数とする連立方程式は信号処理装置36において行列式の演算を行うことで容易に解ける。
算出された、放射能濃度に対応する定数A,Bにもとづいて、前記した第5の実施形態のように制御部37は相対比(B/A)が閾値以上か否かを判定して、閾値以降の場合は操作表示部38に警報出力する。また、算出された相対比(B/A)を得るたびに、制御部37は操作表示部38に送信し、操作表示部38においてF−18濃度の時系列情報の傾向監視を行うことにより、排ガス再結合器10、排ガス復水器11や除湿冷却器12が正常状態か否かを継続的に監視するようにしても良い。
【0101】
なお、「N−13及びF−18の濃度分析用の計測」が終了した後、「通常計測」に戻ると、三方弁61は、計測ライン51Aからの排ガスを遅延配管54側に流れるように切り換えるが、正確には遅延配管54には「N−13及びF−18の濃度分析用の計測」の間滞留していた排ガスが存在するので、その排ガスが全てフローセル31Bを通過してしまうまでの約10分間の「通常計測」の結果は、誤差を有することになる。従って、「N−13及びF−18の濃度分析用の計測」が終了した後の「通常計測」の最初の10分間の計測結果は参考値とし、その後の10分間の「通常計測」の計測値を正の計測値とするのが好適である。
【0102】
本実施形態でも第1の実施形態と同様に通常検出されない程度のF−18の濃度が、排ガス再結合器10、排ガス復水器11、除湿冷却器12に性能劣化や異常等が生じると非凝縮性ガスにフッ化水素が混じったり、除去されなかった湿分に含まれたフッ化水素が検出されたりして、排ガス再結合器10、排ガス復水器11、除湿冷却器12の性能劣化又は異常が生じていることが判定できる。
【0103】
本実施形態によれば、可動式遮蔽体33やアクチュエータ34を用いないので、機械的駆動する構成品が少なくなり、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施形態に係る放射線監視装置を適用した沸騰水型原子力発電所における一次系プラントの概要図、気体廃棄物処理系の機器配置図、及び気体廃棄物処理系に設置される放射線監視装置の構成図である。
【図2】試料を閉じ込めて所定のエネルギ窓に対応する同じエネルギのγ線を放出する放射線核種、例えば、N−13及びF−18の濃度を算出する制御の流れのフローチャートである。
【図3】減期の長さが異なる2つの放射性核種が存在する場合の、両方の放射能の減衰曲線を示す図である。
【図4】第2の実施形態の放射線監視装置の構成図である。
【図5】第3の実施形態の放射線監視装置の構成図である。
【図6】半減期の長さが異なる2つの放射性核種が存在する場合の、両方の放射能の減衰曲線が定常状態の通常計測時の放射能と重畳されている関係を示す図である。
【図7】第5の実施形態の放射線監視装置の構成図である。
【図8】制御部が可動式遮蔽体の開口部の設定を制御するのに応じて、信号処理装置で取得される計数結果が2つのフローセルのいずれのものかを示すタイムチャート。
【図9】「通常計測」と「N−13及びF−18の濃度の算出」の制御の流れを示すフローチャートである。
【図10】第6の実施形態の放射線監視装置の構成図である。
【図11】第7の実施形態の放射線監視装置の構成図である。
【符号の説明】
【0105】
1 原子炉
2 炉心
3 主蒸気管
4 タービン
5 復水器
6 主蒸気抽気配管
7 空気抽出器
8 抽気管
9 排ガス予熱器
10 排ガス再結合器
11 排ガス復水器
12 除湿冷却器
13 活性炭式希ガスホールドアップ装置
13a ホールドアップタンク
14 排ガスフィルタ
15 排ガス抽出器
16 主排気筒
19 排ガス復水器ドレン管
22 サンプリング配管(採取)
23 サンプリング配管(戻り)
25 排ガス系配管
30,30A,30B,30C,30D,30E,30F 放射線監視装置
31A フローセル(第1のフローセル)
31B フローセル(第2のフローセル)
32 Ge検出器(γ線検出器)
32A Ge検出器(第1のγ線検出器)
32B Ge検出器(第2のγ線検出器)
33 可動式遮蔽体(遮蔽体)
33a 開口部
34 アクチュエータ
35 波高分析装置(波高分析手段)
36 信号処理装置(信号処理手段)
36a 記憶装置(記憶手段)
37 制御部(制御手段)
38 操作表示部
40 入力切替装置
50 固定遮蔽体
51,51A 計測ライン(通常用)(第1の計測配管)
52,52A 計測ライン(閉じ込め用)(第2の計測配管)
53A,53B 三方弁(閉じ込め手段)
54 遅延配管
55A,55B 弁(閉じ込め手段)
57 流量調整弁
58 流量計
59 ポンプ
61 三方弁(流れ切替手段)
63 バイパス管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ線検出器と、該γ線検出器からのγ線検出信号の波高値により波高分析する波高分析手段と、前記波高分析された計数結果を処理する信号処理手段と、を備え、連続的に流れる試料に含まれるγ線を放出する核種の濃度を測定して放射能の漏洩監視を行う放射線監視装置において、
前記γ線検出器に面して配置した第1のフローセル及び第2のフローセルと、
前記第1のフローセルの前後に接続されて所定の流速で前記試料を流す第1の計測配管と、
前記第2のフローセルの前後に接続され、前記第1の計測配管に並列された第2の計測配管と、
前記第2のフローセルに前記試料を導入して閉じ込める閉じ込め手段と、
前記γ線検出器の周囲に配置し、可動式の開口部を有する遮蔽体と、
該遮蔽体の前記開口部を前記第1のフローセル側又は前記第2のフローセル側に切り替えて設定可能とするアクチュエータと、
前記閉じ込め手段、前記アクチュエータ、及び前記信号処理手段のそれぞれの動作を制御する制御手段と、を備え、
前記信号処理手段は、前記計数結果を時系列的に記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、
通常計測状態では、前記アクチュエータに前記第1のフローセル側に前記遮蔽体の開口部を設定させ、前記信号処理手段に、前記第1のフローセルを流れる前記試料からのγ線にもとづく前記計数結果を処理させるとともに、
閉じ込め計測状態では、前記閉じ込め手段を制御して、前記第2のフローセルに前記試料を導入した後閉じ込めさせるとともに、前記アクチュエータを制御して前記遮蔽体の前記開口部を前記第2のフローセル側に設定させて、前記信号処理手段に前記第2のフローセルに閉じ込められた前記試料に対して得られた前記γ線検出信号の内の特定の波高値の前記計数結果を前記記憶手段に時系列的に記憶させ、
前記信号処理手段は、前記制御手段に制御されて、前記時系列的に記憶された計数結果にもとづいて、前記特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種の濃度を定量分析することを特徴とする放射線監視装置。
【請求項2】
γ線検出器と、該γ線検出器からのγ線検出信号の波高値により波高分析する波高分析手段と、前記波高分析された計数結果を処理する信号処理手段と、を備え、連続的に流れる試料に含まれるγ線を放出する核種の濃度を測定して放射能の漏洩監視を行う放射線監視装置において、
前記γ線検出器として第1のγ線検出器と第2のγ線検出器とを備え、
更に、
前記第1のγ線検出器に面して配置された第1のフローセル及び前記第2のγ線検出器に面して配置された第2のフローセルと、
前記第1のフローセルの前後に接続されて所定の流速で前記試料を流す第1の計測配管と、
前記第2のフローセルの前後に接続され、前記第1の計測配管に並列された第2の計測配管と、
前記第2のフローセルに前記試料を導入して閉じ込める閉じ込め手段と、
前記閉じ込め手段及び前記信号処理手段を制御する制御手段と、を備え、
前記信号処理手段は、前記計数結果を時系列的に記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、
通常計測状態では、前記信号処理手段に、前記第1のフローセルを流れる前記試料からのγ線にもとづく前記計数結果を処理させるとともに、
閉じ込め計測状態では、前記閉じ込め手段を制御して、前記第2のフローセルに前記試料を導入した後閉じ込めさせるとともに、前記信号処理手段に少なくとも前記第2のフローセルに閉じ込められた前記試料に対して得られた前記γ線検出信号の内の特定の波高値の前記計数結果を前記記憶手段に時系列的に記憶させ、
前記信号処理手段は、前記制御手段に制御されて前記記憶された計数結果にもとづいて、前記特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種の濃度を定量分析することを特徴とする放射線監視装置。
【請求項3】
γ線検出器と、該γ線検出器からのγ線検出信号の波高値により波高分析する波高分析手段と、前記波高分析された計数結果を処理する信号処理手段と、を備え、連続的に流れる試料に含まれるγ線を放出する核種の濃度を測定して放射能の漏洩監視を行う放射線監視装置において、
前記γ線検出器に面して配置した第1のフローセル及び第2のフローセルと、
前記第1のフローセルの前後に接続されて所定の流速で前記試料を流す第1の計測配管と、
前記第2のフローセルの前後に接続され、前記第1の計測配管に並列された第2の計測配管と、
前記第2のフローセルに前記試料を導入して閉じ込める閉じ込め手段と、
前記閉じ込め手段の開閉と、前記信号処理手段の動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記信号処理手段は前記計数結果を時系列的に記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、
通常計測状態では、前記閉じ込め手段を開状態とし、前記信号処理手段に、前記第1のフローセルを流れる前記試料からのγ線にもとづく前記計数結果を処理させるとともに、
閉じ込め計測状態では、前記閉じ込め手段を、所定時間閉じさせるとともに、前記信号処理手段に前記第2のフローセルに閉じ込められた前記試料に対して得られた前記γ線検出信号の内の特定の波高値の前記計数結果を前記記憶手段に時系列的に記憶させ、
前記信号処理手段は、前記制御手段に制御されて前記記憶された計数結果にもとづいて、前記特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種の濃度を定量分析することを特徴とする放射線監視装置。
【請求項4】
γ線検出器と、該γ線検出器からのγ線検出信号の波高値により波高分析する波高分析手段と、前記波高分析された計数結果を処理する信号処理手段と、を備え、連続的に流れる試料に含まれるγ線を放出する核種の濃度を測定して放射能の漏洩監視を行う放射線監視装置において、
前記γ線検出器に面して配置したフローセルと、
該フローセルの前後に接続されて所定の流速で前記試料を流す計測配管と、
前記計測配管に設けられ、前記フローセルの上流側及び下流側にそれぞれ設けられて前記フローセルに前記試料を導入して閉じ込める閉じ込め手段と、
前記閉じ込め手段の開閉と、前記信号処理手段の動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記信号処理手段は前記計数結果を時系列的に記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、
通常計測状態では、前記閉じ込め手段を開状態とし、前記信号処理手段に、前記フローセルを流れる前記試料からのγ線にもとづく前記計数結果を処理させるとともに、
閉じ込め計測状態では、前記閉じ込め手段を、所定時間閉じさせるとともに、前記信号処理手段に前記フローセルに閉じ込められた前記試料に対して得られた前記γ線検出信号の内の特定の波高値の前記計数結果を前記記憶手段に時系列的に記憶させ、
前記信号処理手段は、前記制御手段に制御されて前記記憶された計数結果にもとづいて、前記特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種の濃度を定量分析することを特徴とする放射線監視装置。
【請求項5】
γ線検出器と、該γ線検出器からのγ線検出信号の波高値により波高分析する波高分析手段と、前記波高分析された計数結果を処理する信号処理手段と、を備え、連続的に流れる試料に含まれるγ線を放出する核種の濃度を測定して放射能の漏洩監視を行う放射線監視装置において、
前記γ線検出器に面して配置した第1のフローセル及び第2のフローセルと、
前記第1のフローセルの前後に接続されて所定の流速で前記試料を流す第1の計測配管と、
前記第1の計測配管の下流側に接続された所定の長さの遅延配管と、
前記第2のフローセルの前後に接続され、前記遅延配管の下流側に接続された第2の計測配管と、
前記γ線検出器の周囲に配置し、可動式の開口部を有する遮蔽体と、
該遮蔽体の前記開口部を前記第1のフローセル側又は前記第2のフローセル側に切り替えて設定可能とするアクチュエータと、
前記アクチュエータの動作及び前記信号処理手段の動作を制御する制御手段と、を備え、
前記信号処理手段は、前記計数結果を記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、
通常計測状態では前記アクチュエータに前記遮蔽体の開口部を前記第1のフローセル側に設定させて、前記信号処理手段に、前記第1のフローセルを流れる前記試料からのγ線にもとづく前記計数結果を第1の計数結果として前記記憶手段に時系列的に記憶させ、
所定の頻度で前記アクチュエータを制御して前記遮蔽体の開口部を前記第2のフローセル側に設定変更させて、その状態で前記信号処理手段において前記第2のフローセルを流れる前記試料からのγ線にもとづく前記計数結果を第2の計数結果として前記記憶手段に記憶させ、
前記信号処理手段は、前記制御手段に制御されて、前記記憶された第2の計数結果と所定時間前の前記第1の計数結果とにもとづいて、特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種の濃度を定量分析することを特徴とする放射線監視装置。
【請求項6】
γ線検出器と、該γ線検出器からのγ線検出信号の波高値により波高分析する波高分析手段と、前記波高分析された計数結果を処理する信号処理手段と、を備え、連続的に流れる試料に含まれるγ線を放出する核種の濃度を測定して放射能の漏洩監視を行う放射線監視装置において、
前記γ線検出器として第1のγ線検出器と第2のγ線検出器とを備え、
更に、
前記第1のγ線検出器に面して配置された第1のフローセル及び前記第1のγ線検出器に面して配置された第2のフローセルと、
前記第1のフローセルの前後に接続されて所定の流速で前記試料を流す第1の計測配管と、
前記第1の計測配管の下流側に接続された所定の長さの遅延配管と、
前記第2のフローセルの前後に接続され、前記遅延配管の下流側に接続された第2の計測配管と、
前記信号処理手段の動作を制御する制御手段と、を備え、
前記信号処理手段は、前記計数結果を記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、
通常計測状態では、前記信号処理手段において前記第1のγ線検出器にもとづく前記計数結果を第1の計数結果として前記記憶手段に時系列的に記憶させ、
所定の頻度で前記信号処理手段において前記第2のγ線検出器にもとづく前記計数結果を第2の計数結果として前記記憶手段に記憶させ、
前記信号処理手段は、前記制御手段に制御されて、前記記憶された第2の計数結果と所定時間前の前記第1の計数結果にもとづいて、特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種の濃度を定量分析することを特徴とする放射線監視装置。
【請求項7】
γ線検出器と、該γ線検出器からのγ線検出信号の波高値により波高分析する波高分析手段と、前記波高分析された計数結果を処理する信号処理手段と、を備え、連続的に流れる試料に含まれるγ線を放出する核種の濃度を測定して放射能の漏洩監視を行う放射線監視装置において、
前記γ線検出器に面して配置された第1のフローセル及び第2のフローセルと、
前記第1のフローセルの前後に接続されて所定の流速で前記試料を流す第1の計測配管と、
前記第1の計測配管の下流側に接続された所定の長さの遅延配管と、
前記第1の計測配管の下流側に前記遅延配管と並列に接続されたバイパス管と、
前記第2のフローセルの前後に接続された第2の計測配管と、
前記遅延配管経由の前記試料の分流と、前記バイパス管経由の前記試料の分流とを切り替えて前記第2の計測配管に供給する流れ切替手段と、
前記信号処理手段及び流れ切替手段の動作を制御する制御手段と、を備え、
前記信号処理手段は、前記計数結果を記憶する記憶手段を有し、
前記制御手段は、
通常計測状態では、前記流れ切替手段を前記第2の計測配管に前記遅延配管経由の前記試料が流れている状態とさせ、前記信号処理手段において、前記第1及び第2のフローセルを流れる前記試料にもとづく前記計数結果を、第1の計数結果として前記記憶手段に時系列的に記憶させ、
所定の頻度で前記流れ切替手段を前記第2の計測配管に前記バイパス管経由の前記試料が流れている状態とさせ、前記信号処理手段において前記第1及び第2のフローセルを流れる前記試料にもとづく前記計数結果を第2の計数結果として前記記憶手段に記憶させ、
前記信号処理手段は、前記制御手段に制御されて、前記記憶された第2の計数結果と所定時間前の前記第1の計数結果にもとづいて、特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種の濃度を定量分析することを特徴とする放射線監視装置。
【請求項8】
前記特定の波高値に対応するエネルギのγ線を放出する崩壊定数の異なる複数の放射性核種とは、511keVのγ線を放出する陽電子放出核種であることを特徴とする請求項1から請求項7に記載の放射線監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−2278(P2010−2278A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160871(P2008−160871)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】