説明

放射線硬化性複合シート又はフィルム

【課題】容易に加工されかつ成形品の被覆のために極めて簡単な方法で使用することができる放射線硬化性複合層シート又はフィルムを提供する
【解決手段】少なくとも1つの支持層及び被覆層からなる放射線硬化性複合シート又はフィルムに関し、該放射線硬化性複合シート又はフィルムは、被覆層が、40℃を上回るガラス転移温度を有する結合剤を含有する放射線硬化性材料からなる放射線硬化性複合シート又はフィルムによって解決される

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの支持層及び被覆層からなる放射線硬化性複合シート又はフィルムに関し、該放射線硬化性複合シート又はフィルムは、被覆層が、40℃を上回るガラス転移温度を有する結合剤を含有する放射線硬化性材料からなることを特徴とする。
【0002】
さらに、本発明は、放射線硬化性複合シート又はフィルムの製造方法並びに前記のシート又はフィルムで被覆された成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
DE−A−19628966及びDE−A−16954918から乾燥塗膜が公知であり、この場合には塗料は40℃未満のガラス転移温度を有する。硬化は2工程で行われねばならない。支持体に塗膜を接着する前に、部分硬化を行い、その後最終硬化を行う。
【0004】
EP−A−361351から、同様に乾燥塗膜が公知である。この場合には、被覆すべき成形品にフィルムを施す前に塗膜の放射線硬化が行われる。
【0005】
DE−A−19651350(O.Z.47587)には、熱可塑性材料からなりかつ放射線硬化性被覆を有しない複合層シート及びフィルムが記載されている。
【0006】
従来公知の放射線硬化性塗膜における欠点は、例えばDE−A−19628966に記載されているように、放射線硬化をしばしば複数の段階で行わねばならないことである。被覆工程前のフィルムの完全な放射線硬化は、塗膜をしばしば脆弱及び変形困難にし、このことはフィルムのさらなる硬化のために欠点である。
【0007】
従来公知の放射線硬化性フィルムでは、被覆された成形品がしばしば機械的作用の際に不十分な耐引掻性及び不十分な弾性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE−A−19628966
【特許文献2】DE−A−16954918
【特許文献3】EP−A−361351
【特許文献4】DE−A−19651350(O.Z.47587)
【特許文献5】DE−A−19628966
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、容易に加工されかつ成形品の被覆のために極めて簡単な方法で使用することができる放射線硬化性複合層シート又はフィルムを提供することである。被覆された成形品は、良好な機械的特性、外的に影響に対する良好な安定性、例えば良好な耐候性を有しかつ特に機械的作用に対して安定であるべきである、例えば十分な耐引掻性を有しかつ高い弾性を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、冒頭に定義した放射線硬化性複合層シート又はフィルム(以下に短くフィルムと記載する)が見出された。また、該フィルムで成形品の被覆方法及び被覆した成形品を見出した。
【0011】
該フィルムは、支持層と、支持層に直接的に又は、別の中間層が存在する場合には、間接的に施された被覆層とを有しなければならない。
【0012】
被覆層
該被覆層は、放射線硬化性である。従って、被覆層としては、遊離基又はイオン機構によって硬化可能な基(硬化性基と短縮する)を含有する放射線硬化性材料を使用する。好ましくは、遊離基硬化性基である。
【0013】
放射線硬化性材料は透明であるのが有利である。また硬化が行われた後に、被覆層は有利には透明である、即ちクリアコート層である。
【0014】
放射線硬化性材料の重要な成分は、塗膜形成によって被覆層を形成する結合剤である。
【0015】
好ましくは、放射線硬化性材料は、
i)エチレン系不飽和基を有するポリマー、
ii)i)とエチレン系不飽和の低分子量化合物との混合物、
iii)飽和熱可塑性ポリマーとエチレン系不飽和化合物の混合物
から選択される結合剤を含有する。
【0016】
i)に関して
ポリマーの例として適当であるのは、例えばエチレン系不飽和化合物のポリマー、さらにまたポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリエポキシド又はポリウレタンである。
【0017】
主としてポリオール、特にジオール、及びポリカルボン酸、特にジカルボン酸からなる不飽和ポリエステル樹脂が該当し、その際エステル化成分の1つは共重合可能なエチレン系不飽和基を含有する。該当する成分の例は、マレイン酸、フマル酸又は無水マレイン酸である。
【0018】
特に遊離基付加重合により得られるようなエチレン系不飽和化合物が有利である。
【0019】
遊離基付加重合したポリマーとしては、特に、40質量%以上、特に有利には60質量%以上がアクリルモノマー、特にC〜C−、有利にはC〜C−アルキル(メタ)アクリレートから構成されているポリマーが該当する。エチレン系不飽和基としては、ポリマーは特に(メタ)アクリル基を含有する。これらは、例えば(メタ)アクリル酸とポリマー内のエポキシ基との反応により(例えばグリシジル(メタ)アクリレートをコモノマーとして併用することにより)ポリマーに結合されていてもよい。
【0020】
同様に、ポリウレタンも有利である。これらは有利には不飽和基として同様に、例えばヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとイソシアネート基との反応によりポリウレタンに結合された(メタ)アクリル基を含有する。
【0021】
ポリマーi)はそれ自体熱可塑性的に加工可能である。
【0022】
ii)
不飽和ポリマーi)は、エチレン系不飽和の低分子量化合物との混合物で使用することもできる。
【0023】
低分子量化合物としては、この関係においては2000g/モル以下の数平均分子量を有する化合物であると解されるべきである(標準としてポリスチレンを用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより測定)。
【0024】
例えば、1個だけのエチレン系不飽和共重合可能な基を有する遊離基付加重合可能な化合物が該当する。
【0025】
例えばC〜C20−アルキル(メタ)アクリレート、20個までの炭素原子を有するビニル芳香族化合物、20個までの炭素原子を有するビニルエステル、エチレン系不飽和ニトリル、1〜10個の炭素原子を有するアルコールのビニルエステル、及び2〜20、有利には2〜8個の炭素原子及び1又は2個の二重結合を有する脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして好ましいのは、C〜C10−アルキルを有するもの、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートである。
【0027】
特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合物が適当である。
【0028】
1〜20個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステルは、例えばビニルラウレート、ビニルステアレート、ビニルプロピオネート及びビニルアセテートである。
【0029】
ビニル芳香族化合物としては、例えばビニルトルエン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン及び好ましくはスチレンが該当する。
【0030】
ニトリルの例は、アクリルニトリル及びメタクリルニトリルである。
【0031】
適当なビニルエーテルは、例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルヘキシルエーテル及びビニルオクチルエーテルである。
【0032】
2〜20、有利には2〜8個の炭素原子及び1又は2個のオレフィン系二重結合を有する非芳香族炭化水素としては、ブタジエン、イソプレン、並びにエチレン、プロピレン及びイソブチレンが挙げられる。
【0033】
有利には多数のエチレン系不飽和基を有する遊離基付加重合可能な化合物が該当する。
【0034】
この場合、特に(メタ)アクリレート化合物が該当し、有利にはそれぞれアクリレート化合物、即ちアクリル酸の誘導体である。
【0035】
有利な(メタ)アクリレート化合物は、2〜20、有利には2〜10及び全く特に有利には2〜6個の共重合可能なエチレン系不飽和二重結合を有する。
【0036】
(メタ)アクリレート化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル、特に多官能価アルコールのアクリル酸エステル、特に、ヒドロキシル基の他に別の官能基を含有しないか、又は別の官能基を有するとすれば、エーテル基を含有するものが挙げられる。このようなアルコールの例は、例えば2官能価アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、及びそれらの高級縮合代表物質、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルコキシル化フェノール系化合物、例えばエトキシル化もしくはプロポキシル化ビスフェノール、シクロヘキサンジメタノール、3個以上の官能基を有するアルコール、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリトリット、ジメチロールプロパン、ジペンタエリトリット、ソルビット、マンニット及び相応するアルコキシル化、特にエトキシル化及びプロポキシル化アルコールである。
【0037】
アルコキシル化生成物は、公知方法で前記のアルコールをアルキレンオキシド、特にエチレンオキシド又はプロピレンオキシドと反応させることにより得られる。好ましくは、アルコキシル化度はヒドロキシル基当たり0〜10である。即ち、ヒドロキシル基1モルが好ましくはアルキレンオキシド10モルまででアルコキシル化されていてもよい。
【0038】
さらに、(メタ)アクリレート化合物としては、ポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられ、この場合これはポリエステロールの(メタ)アクリル酸エステルである。
【0039】
ポリエステロールとしては、例えばポリカルボン酸、例えばジカルボン酸をポリオール、好ましくはジオールでエステル化することにより製造することができるものが該当する。このようなヒドロキシル基含有ポリエステルの出発物質は、当業者に周知である。有利には、ジカルボン酸としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、o−フタル酸、それらの異性体及び水素添加生成物並びにエステル化可能な誘導体、例えば前記酸の無水物又はジアルキルエステルを使用することができる。ポリオールとしては、前記のアルコール、好ましくはエチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール並びにエチレングリコール及びプロピレングリコールのタイプのポリグリコールが該当する。
【0040】
ポリエステル(メタ)アクリレートは、多数の工程で又は1工程でも(例えばEP279303に記載されているように)アクリル酸、ポリカルボン酸、ポリオールから製造することができる。
【0041】
iii)
飽和熱可塑性ポリマーとしては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、耐衝撃性ポリメチルメタクリレート、耐衝撃性ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタンが適当である。
【0042】
放射線硬化性は、エチレン系不飽和の放射線硬化性化合物の添加により保証される。この場合、これはi)及び/又はii)で記載した化合物の1つであってよい。
【0043】
結合剤i)〜iii)の重要な特徴は、該結合剤のガラス転移温度(Tg)が40℃より上、好ましくは50℃より上、特に有利には60℃より上であることである。一般に、Tgは130℃の値を上回らない(該データは、放射線硬化前の結合剤に関する)。
【0044】
結合剤のガラス転移温度は、DSC法(differential scanning calorimetry)を用いてASTM3418/82に基づき測定することができる。
【0045】
有利には、硬化性、即ちエチレン系不飽和基の量は結合剤(固体;即ち水又はその他の溶剤なしで)100g当たり0.001〜0.2モル、特に有利には0.005〜0.15モル、全く特に有利には0.01〜0.1モルである。
【0046】
有利には、結合剤は140℃で0.02〜100Pasの粘度(回転粘度計で測定)を有する。
【0047】
該放射線硬化性材料は、他の成分を含有することができる。特に、光開始剤、均展剤及び安定剤が挙げられる。屋外使用の際、即ち日光に直接曝される被覆のため使用の際には、該材料は特にUV吸収剤及び遊離基スカベンジャを含有する。
【0048】
UV吸収剤は、UV放射を熱エネルギーに変換する。公知のUV吸収剤は、ヒドロキシベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ケイ皮酸エステル及びオキサルアニリドである。
【0049】
遊離基スカベンジャは、内部に形成された遊離基を結合する。重要な遊離基スカベンジャは、HALS(hindered amine light stabilizers)として公知の立体障害アミンである。
【0050】
屋外使用のためには、UV吸収剤及び遊離基スカベンジャの含量は、放射線硬化性化合物100質量部に対して、合計して有利には0.5〜4質量部、特に有利には0.5〜4質量部である。
【0051】
さらに、放射線硬化性材料は放射線硬化性化合物の他にまた、別の化学反応により硬化に寄与する化合物を含有することができる。例えば、ヒドロキシル基又はアミノ基で架橋するポリイソシアネートが該当する。
【0052】
放射線硬化性材料は、水及び溶剤不含で、溶液として又は分散液として存在することができる。
【0053】
水及び溶剤不含の放射線硬化性材料又は水溶液もしくは水性分散液が有利である。
【0054】
特に有利であるのは、水及び溶剤不含の放射線硬化性材料である。
【0055】
該放射線硬化性材料は、熱可塑性的に成形可能及び特に押出成形可能である。
【0056】
前記の放射線硬化性材料は、被覆層を形成する。該層厚さ(乾燥及び硬化後)は、有利には10〜100μmである。
【0057】
支持層
支持層は支持体として役立ちかつ全複合体の持続的に高い靭性を保証する目的を有する。
【0058】
支持層は、好ましくは熱可塑性ポリマー、特にポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート(PC)、アクリルニトリルブタジエンスチレンコポリマー(ABS)、アクリルスチレンアクリルニトリルコポリマー(ASA)、アクリルニトリルエチレンプロピレンジエンスチレンコポリマー(A−EPDM)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル又はそれらの混合物からなる。
【0059】
ASA、特にDE19651350に基づくもの及びASA/PCブレンドが有利である。同様に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)又は耐衝撃性に変性されたPMMAも有利である。
【0060】
層厚さは、好ましくは50μmから5mmまでである。特に有利には、就中支持層を背面射出成形(injection-backmold)する場合には、100〜1000μm、特に100〜500μmである。
【0061】
支持層のポリマーは、添加物を含有することができる。特に、充填剤又は繊維が該当する。支持層は、着色されていてもよくかつそうして同時に発色層として働くこともできる。
【0062】
別の層
フィルムは、被覆層及び支持層の他に別の層を含むことができる。
【0063】
例えば、発色する中間層、又はフィルムを強化する又は分離層として働く熱可塑性材料からなる別の層(熱可塑性中間層)が該当する。
【0064】
熱可塑性中間層は、上記に支持層で記載したポリマーからなることができる。
【0065】
有利であるのは、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)、好ましくは耐衝撃性に変性されたPMMAである。また、ポリウレタンも挙げられる。発色層は、同様に前記のポリマーからなっていてもよい。これらはポリマー内に分散された染料又は顔料を含有する。
【0066】
有利なフィルムは、例えば以下の層構造を有し、その際アルファベットの順序は立体的配置に相当する:
A)被覆層(カバー層)
B)熱可塑性中間層(任意)
C)発色中間層(任意)
D)支持層
E)接着剤層(任意)。
【0067】
支持層の後ろ側(略して、背面)(即ち被覆すべき物体に面する側)に、フィルムを支持体に接着すべき場合には、接着剤層を塗布することができる。
【0068】
透明な被覆層には、保護層、例えば意図されない硬化を阻止する剥離フィルムを被着することができる。該厚さは、例えば50〜100μmであってよい。保護層は、例えばポリエチレン又はポリテレフタレートからなっていてよい。照射前に、保護層を取り除くことができる。
【0069】
しかしまた、照射は保護層を通して行うこともでき、このためには保護層は照射線の波長範囲内で透明であらねばならない。
【0070】
フィルムの全厚さは、好ましくは50〜1000μmである。
【0071】
複合シート又はフィルムの製造
層B)〜D)からなる複合体の製造は、例えば層の全部又は幾つかの同時押出により行うことができる。
【0072】
同時押出のためには、個々の成分を押出機内で流動性にしかつ特殊な装置を解して、前記の層順序を有するフィルムが生じるように相互に接触させる。例えば、スロットダイを通して同時押出する。この方法は、EP−A2−0225500に説明されている。そこに記載された方法を補充するために、いわゆるアダプター同時押出を使用することもできる。
【0073】
複合体は、通常の方法に基づき、例えば先に記載したような同時押出により、又は例えば加熱可能なニップ内での層のラミネーションにより製造することができる。まず、そうして被覆層を除いた層からなる複合体を製造し、その後被覆層を通常の方法に基づき被着する。
【0074】
放射線硬化性材料は、簡単に例えばキャスティング、ローリング、ドクターコーティング、スプレーイング等により被着しかつ場合により乾燥することができる。
【0075】
好ましくは、放射線硬化性材料、即ち押出す。場合により、放射線硬化性材料は、別の又は複数の別の層と一緒に押出すこともできる。
【0076】
放射線硬化性材料の押出(同時押出を含む)の際に、成分の混合のよる放射線硬化性材料の製造及び被覆層の製造を1工程で行うことができる。
【0077】
そのためには、熱可塑性成分、例えば不飽和ポリマーi)又は飽和ポリマーiii)(前記参照)を押出機内でまず溶融させる。必要な溶融温度は、その都度のポリマーに依存する。好ましくは、溶融工程後に、別の成分、特に放射線硬化性の低分子量化合物ii)(上記参照)を配量することができる。該化合物は軟化剤として作用するので、材料が溶融物として存在する温度は低下する。放射線硬化性化合物を加える際の温度は、特に、放射線硬化性化合物の熱硬化が行われるいわゆる臨界温度未満であらねばならない。
【0078】
臨界温度は、容易に熱量計的測定により、即ちガラス転移温度の前記の測定に相応して、温度上昇に伴って吸収される熱の測定により確認することができる。
【0079】
次いで、放射線硬化性材料を直接被覆層として既存の複合体上に、又は同時押出の場合には複合体の層と一緒に押出す。押出により、複合層シート又はフィルムが直接得られる。
【0080】
該被覆層は耐ブロッキング性であり、即ち付着せず、かつ放射線架橋性である。該複合シート又はフィルムは、熱弾性的に変形可能である。所望の場合には、該複合シート又はフィルムの製造直後に保護層(保護フィルム)を被覆層に被着することができる。
【0081】
該複合層シート又はフィルムは、高い光沢及び良好な機械的特性を有する。亀裂形成は、殆ど観察されない。
【0082】
複合層シート又はフィルムの延伸性は、延伸されていない状態に対して好ましくは少なくとも100%(140℃、30μmの厚さで)である。
【0083】
使用方法
該フィルムは、部分硬化(DE−A−19628966に記載されているように)せずに後での使用時まで貯蔵することができる。
【0084】
後での使用時まで粘着又は適用技術的特性の劣化は観察されないか又は殆ど観察されない。該フィルムは、有利に被覆材料として使用される。
【0085】
この際、まず支持体の被覆及びその後照射による被覆層の硬化を行うのが好ましい。
【0086】
被覆は、フィルムを支持体に接着することにより行う。そのために、該フィルムは支持層の背面に好ましくは接着層Eを備えている。支持体としては、木材、プラスチック、金属からなるものが適当である。
【0087】
被覆は、フィルムの背面射出成形により行うこともできる。このためにはフィルムを好ましくは深絞り成形機内で深絞り成形しかつ支持層の背面にプラスチック材料を背面射出成形する。該プラスチック材料は、例えば、上記に支持層の説明において記載したポリマー、又は例えばポリウレタン、特にポリウレタンフォームである。該ポリマーは添加物、特に例えばガラス繊維又は充填剤を含有することができる。
【0088】
この場合、被覆層の放射線硬化は好ましくは深絞り成形工程、特に、有利にはフィルムの背面射出成形により行う。
【0089】
放射線硬化は、高エネルギー光、例えばUV光又は電子ビームで行う。放射線硬化は、高温で行うことができる。この場合有利には、有利には温度は放射線硬化性結合剤のTgよりも高い温度である。
【0090】
また、付加的な熱架橋を惹起する架橋剤、例えばイソシアネートを含有する限り、例えば同時に或いはまた放射線硬化後に150℃以下、好ましくは130℃以下に温度を高めることにより熱架橋を実施することができる。
【0091】
使用例及び利点
本発明によるフィルムは、成形体の被覆のために使用することができる。この場合、任意の成形体に適合する。該フィルムを成形体の被覆のために使用するのが特に有利であり、この場合極めて良好な表面特性、高い耐候性並びに良好なUV安定性を生じる。さらに、得られる表面は、著しく耐引掻性かつ耐ブロッキング性である、従って引掻による表面の破壊又は表面の剥離は許容可能に阻止される。それに伴い、屋外で使用するための成形品は、建築の他に有利な使用分野である。特に、該フィルムは自動車部品の被覆のために使用される。例えばウイング、ドアートリム部品、フェンダー、スポイラー、スカート、及び外部ミラーが該当する。
【実施例】
【0092】
I 放射線硬化性塗料の合成:
イソプロピリデンジシクロヘキサノール426.2gを、ヒドロキシエチルアクリレート566.3g中に60℃で攪拌しながら粗く分散させた。この懸濁液に、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート1695.2g、ヒドロキノンモノメチルエーテル1.34g、1,6−ジ−t−ブチル−パラ−クレゾール2.69及びフェノチアジン0.134gを加えた。ジブチルスズジラウレート0.538gの添加後に、該バッチを20分以内で93℃に加熱した。75℃に冷却した後に、アセトン300gを配量した。NCO値が0.66%に低下した後に、再度アセトン370gを加え、次いでメタノール14.87gを滴加した。その後、60℃で、NCO値が0に低下するまでの間攪拌した。該樹脂に適当な光開始剤を加え、Luran S 797 背面射出成形フィルム(injection backmolding film)に塗布しかつ100℃で露光した。該フィルムの鉛筆硬度を、ASTM D 3363に基づき測定した。塗装したフィルムの鉛筆硬度は2Hであった。
【0093】
比較:未処理の背面射出成形フィルム(Luran S 797)の鉛筆硬度:B
比較:未処理の背面射出成形保護フィルム(Luran G 87)の鉛筆硬度:6Bよりも柔らかい
2つの異なるTg値を有する未硬化アクリレート化ポリアクリレート並びに未硬化ウレタンアクリレートをLuran S支持フィルムに塗布しかつ高めた温度で深絞り成形した。深絞り成形後に、該フィルムを100℃で露光した。
【0094】
フィルムの硬度:
ウレタンアクリレート 2H
結合剤樹脂(Tg(露光前)=46℃) 3H
結合剤樹脂(Tg(露光前)=−6℃) H
【0095】
II 放射線硬化性被覆層の製造
IIa
まず、以下の成分の混合により光活性混合物を製造した:
【表1】

【0096】
押出機内で、ポリメチルメタクリレート(PMMA)Lucryl(R)G55を190〜220℃で溶融させかつ光活性混合物(Lucryl3質量部に対して混合物1質量部)を溶融物に170℃未満で配量した。得られた溶融物を放射線硬化性フィルムとして押出した。
【0097】
得られたフィルムは耐ブロッキング性(即ち粘着しない)であり、得られた複合フィルムは変形可能かつ深絞り成形可能であった。放射線硬化性被覆層の硬化は、UV光(120W/cm、ベルト速度2〜3m/分)で行った。
【0098】
IIb
光活性混合物は、以下のものからなっていた:
【表2】

【0099】
押出機内で、ポリウレタンKU−1−8602(Bayer)を180〜220℃で溶融させかつ光活性混合物(Lucryl3質量部に対して混合物1質量部)を溶融物に160℃で配量した。得られた溶融物を、放射線硬化性フィルムとして押出した。
【0100】
得られた被覆層は耐ブロッキング性であり、得られたフィルムは変形可能でありかつ深絞り成形可能であった。
【0101】
放射線硬化性被覆層の硬化はUV光(120W/cm、ベルト速度2〜3m/分)で行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの支持層及び被覆層からなる放射線硬化性複合シート又はフィルムにおいて、被覆層が、40℃を上回るガラス転移温度を有する結合剤を含有する放射線硬化性材料からなることを特徴とする、放射線硬化性複合層シート又はフィルム。
【請求項2】
被覆層が透明であることを特徴とする請求項1記載の放射線硬化性複合シート又はフィルム。
【請求項3】
支持層と被覆層の間になお1つの発色中間層が存在することを特徴とする請求項1又は2記載の放射線硬化性複合シート又はフィルム。
【請求項4】
発色中間層と被覆層の間になおもう1つのポリメチルメタクリレートからなる層が存在することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の放射線硬化性複合シート又はフィルム。
【請求項5】
放射線硬化性材料が未架橋であることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の放射線硬化性複合シート又はフィルム。
【請求項6】
放射線硬化性材料が、エチレン系不飽和基を有するポリマーを、場合により低分子量の放射線硬化性化合物と混合して、又は飽和熱可塑性ポリマーとエチレン系不飽和化合物との混合物を含有することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の放射線硬化性複合シート又はフィルム。
【請求項7】
支持層が熱可塑性ポリマー、特にポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリルニトリルブタジエンスチレンポリマー(ABS)、アクリルスチレンアクリルニトリルコポリマー(ASA)、アクリルニトリルエチレンプロピレンジエンスチレンコポリマー(A−EPDM)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル又はそれらの混合物からなる層であることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項記載の放射線硬化性複合シート又はフィルム。
【請求項8】
放射線硬化性材料を溶融物、溶液又は分散液の形で塗布しかつ被覆が溶液又は分散液の場合乾燥することを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項記載の放射線硬化性複合シート又はフィルム。
【請求項9】
放射線硬化性材料を押出すことを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項記載の放射線硬化性複合シート又はフィルム。
【請求項10】
放射線硬化性材料及び少なくとも1つの別の層を同時押出しすることを特徴とする請求項9記載の放射線硬化性複合シート又はフィルム。
【請求項11】
請求項1から7までのいずれか1項記載の放射線硬化性複合シート又はフィルムを成形品に接着しかつその後被覆層を放射により硬化させることを特徴とする、被覆成形品、特に自動車部品の製造方法。
【請求項12】
請求項1から7までのいずれか1項記載の放射線硬化性複合シート又はフィルムを深絞り成形機内で深絞りしかつ支持層の背面にプラスチック材料を背面射出し、その際被覆層の放射線硬化を深絞り成形工程の後又は背面射出成形の後で行うことを特徴とする、被覆成形品、特に自動車部品の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12記載の方法に基づき得られた被覆成形部品。

【公開番号】特開2011−105013(P2011−105013A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33726(P2011−33726)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【分割の表示】特願2000−612131(P2000−612131)の分割
【原出願日】平成12年4月11日(2000.4.11)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】