説明

放射線遮蔽ガラスを屈曲および熱的にプレストレスするための方法

【課題】少なくとも50重量%の重金属酸化物含有量を有する放射線遮蔽ガラスを屈曲するための方法を提供する。
【解決手段】本方法では、まず鋳型が供給され、次いで放射線遮蔽ガラスを含むガラスプレートが供給され、鋳型が300〜400℃の温度に予熱され、ガラスプレートが鋳型の上に配置され、ガラスプレートおよび鋳型が炉の中で370〜430℃の温度に加熱され、次いでともに400℃〜500℃の温度、好ましくは440〜500℃に加熱され、全加熱時間は少なくとも30分、好ましくは少なくとも60分であり、次いでガラスプレートが成型され、最後に成型されたガラスが少なくとも60分の期間にわたる冷却プログラムにより冷却される。熱的なプレストレスに関し、ガラス体は、少なくともその外周縁で多数の支持点において支持され、400〜500℃に加熱された後、冷気が吹き付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線遮蔽ガラスを屈曲するための方法、および、放射線遮蔽ガラスまたはそれにより形成されたガラス体を熱的にプレストレスするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願の範囲内において、「放射線遮蔽ガラス」は、ドイツおよび欧州規格DIN EN 61331-1(2006年8月版)ならびにDIN EN 61331-2(2002年4月版)に従う鉛ガラス板についての要求を満たすガラスを指すものと理解される。すなわち、mm Pbでの減衰等価量が、ミリメートルでの最小許容鉛ガラス平面の0.22倍未満であってはならない。上記規格は、国際規格IEC 61331-1:1994およびIEC 61331-2:1994に基づいており、これらと整合している。
【0003】
このような放射線遮蔽ガラスは、医療および工業部門でX線およびガンマ線に対する遮蔽ガラスとして使用されている。これらは、特に放射線遮蔽ドアおよび窓に取り付けられている。減衰等価量は、鉛ガラスプレートと放射線遮蔽ガラスを含むプレートとの間の放射線遮蔽効果の比較により、規格に従って決定される。減衰等価量が0.22であるということは、許容最低厚みの放射線遮蔽ガラスであっても、同じ厚みの鉛ガラスプレートの22%の遮蔽効果があることを意味する。
【0004】
狭義では、放射線遮蔽ガラスは、1.2mm Cu完全フィルタリングを有する最大200kVのチューブ電圧で公称厚みが6.5〜25mmの場合に関し、上記規格に従って、少なくとも25%、好ましくは少なくとも28%の減衰等価量を有するガラスを意味すると理解される。
上記ガラスは、例えば、少なくとも50重量%の重金属酸化物含有量を有するガラスであってもよい。これは、例えば、少なくとも60重量%の酸化鉛含有量を有するのが好ましい重フリントガラスであってもよい。
【0005】
この高い重金属酸化物含有量の結果、このようなガラスは、(4000kg/m3を超える、または4900kg/m3をさえ超える)高い密度、および比較的低い変態温度(<500℃)を有している。
このようなガラスはさらに、従来のソーダ石灰ガラスに比べて、表面の機械的および化学的な安定性または強度が低下している。
【0006】
このようなガラスの2または3次元変形、および、また、このようなガラスの熱的なプレストレスは、周知の屈曲方法によっては不可能である(例えば、下記特許文献1を参照)。
この文献は、ガラスプレートの屈曲のための器機および方法を開示する。このガラスプレートは、上側屈曲鋳型内の屈曲セル内に保持されており、上側屈曲鋳型は、屈曲セル内のガラスプレートの中間部を支持するための要素を有する対をなす環状の鋳型(カウンターモールド)に垂直にされている。対をなす環状の鋳型は、上側屈曲鋳型にガラスプレートを押し付けるために上昇される。ここでの屈曲温度は約650℃である。
【0007】
放射線遮蔽ガラスは、このようにして屈曲させることができない。むしろ、特に大きな重量および低い変態温度を考慮に入れて、特別な措置を取らねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,372,624号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ゆえに、本発明の目的は、放射線遮蔽ガラスを屈曲するための方法であって、それによって、ガラスに損傷を与える危険なしに、高品質にガラスを所望の2次元または3次元形状へと確実に屈曲することが保証される方法を提供することである。
さらに、このような放射線遮蔽ガラスを熱的にプレストレスするための方法を提供することを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明に従って、放射線遮蔽ガラスを屈曲するための方法であって、
(a)鋳型を設けるステップと、
(b)放射線遮蔽ガラスを含むガラスプレートを設けるステップと、
(c)鋳型を300〜400℃の温度に予熱するステップと、
(d)鋳型上にガラスプレートを配置するステップと、
(e)ガラスプレートおよび鋳型を、ともに370〜430℃の温度に加熱するステップと、
(f)400℃〜500℃の温度に、好ましくは440℃〜500℃の温度に加熱するステップであって、ステップ(e)および(f)が、ともに少なくとも30分、好ましくは少なくとも60分、持続するステップと、
(g)ガラスプレートを成型するステップと、
(h)少なくとも60分の期間にわたる、好ましくは少なくとも120分にわたる冷却プログラムにより、成型されたガラスを冷却するステップとを含む、方法により達成される。
【0011】
このようにして、本発明は完全に実現される。
このような温度プログラムにより、放射線遮蔽ガラスを含むガラスプレートを高精度で成型できることが分かっている。
最も単純な場合、ガラスプレートは、本明細書において、重力の影響下で成型される。
ガラスプレートの重量が大きいことで、重力の影響下での屈曲により、従来のガラスプレートの成型におけるよりも、実質的により良い結果が得られる。
【0012】
好ましくは、この方法の変形例において、加熱、成型および冷却は炉内で行われる。
本方法のさらなる変形例によれば、成型処理は真空の適用により支持される。
このようにして、成型処理自体を促進することができ、屈曲または成型された放射線遮蔽ガラスの形状公差を満たす、より高い精度を実現できる。
本発明のさらなる構成によれば、ガラスプレートは、好ましくはアルミニウム合金またはマグネシウム合金からなる雄型により、鋳型内に押圧される。
【0013】
その結果、成型処理を促進することができ、さらに、形状パラメータを満たす特に高い精度を保証することができる。
ここで、雄型は、その表面に、好ましくはガラス繊維(フィラメント)織物からなる離型層を有していることが好ましい。
これにより、雄型への付着が防止される。
【0014】
ここで、雄型は、鋳型の予熱温度より少なくとも100K低い温度、好ましくは120〜180℃、より好ましくは140〜160℃の温度に予熱されるのが好ましい。
本発明のさらなる構成によれば、接点圧力は、15バール以下、好ましくは10バール以下、より好ましくは8バール以下であり、徐々に上昇されていく
例えば、最高圧力に徐々に上昇していく空気式シリンダを、この目的のために使用することができる。
【0015】
押圧時間は、好ましくは2〜30秒、より好ましくは3〜10秒、特に好ましくは4〜6秒である。
このような押圧条件を使用することで、高品質および形状公差への良好な適合が得られる。
好ましくは、ガラスプレートが頂部に配置された鋳型は、まず約400〜450℃の温度へと炉の中で予熱され、次いで押圧のために炉から取り出され、次いで冷却プログラムを実施するために炉内に戻される。
【0016】
次いで、炉の中で、少なくとも60分の期間にわたる、好ましくは少なくとも120分にわたる冷却プログラムにより、制御された冷却が行われる。
ここで、より低い冷却温度未満の温度から開始して、好ましくはより低い冷却温度より30〜100K低い温度で始まって、好ましくは380〜420℃で始まって、冷却が行われるのが好ましい。
【0017】
このような冷却プログラムを使用すれば、成型されたガラス体中での応力を、確実に回避することができる。
本発明のさらなる構成によれば、好ましくは0.2〜0.6重量%のC含有量を有する、より好ましくは0.3〜0.5重量%のC含有量を有する焼きもどされたマルテンサイト系鋼からなる、より好ましくは14〜19重量%のクロム含有量、0.5〜2重量%のモリブデン含有量、および0〜2重量%のニッケル含有量を有する鋼からなる、特に好ましくはNo.1.4122鋼からなる鋳型が使用される。
【0018】
このような焼きもどされた鋼を使用すれば、安定性が高く、磨耗がより少なくてスケールフリーな作業につながる。
より好ましい実施形態では、鋳型の表面は、離型剤で被覆されている。これは、例えばグラファイト粉末または窒化ホウ素粉末であってもよい。
この措置により、鋳型へのガラス体の付着が回避される。
【0019】
本発明によれば、好ましくは上述したやり方で屈曲したのちに、放射線遮蔽ガラスを含むガラス体を熱的にプレストレスするための方法であって、
ガラス体を、少なくともその外周縁で複数の支持点において支持するステップと、
ガラス体を、500〜600℃の温度へと、好ましくは530〜570℃へと予熱されている炉の中へ導入するステップと、
ガラス体を、400℃〜500℃へと、好ましくは430〜470℃へと加熱するステップと、
ガラス体を炉から取り除き、ガラス体が150℃以下の表面温度へと、好ましくは120℃以下へと、特に好ましくは100℃以下へと冷却されるまで、両側において複数のノズルから冷えた流体をガラス体へと吹き付けるステップとを含む方法がさらに開示される。
【0020】
このような手順により、放射線遮蔽ガラスからなるガラス体の熱的なプレストレスが、信頼できる仕方で可能となり、熱的にプレストレスされていないガラス体と比べて、強度が実質的に向上することが分かっている。
本発明のさらなる構成によれば、ガラス体は、好ましくはほぼ室温の、または冷却された空気の送風を受ける。
【0021】
流体または空気の送風は、ガラス体の方向へ、10〜20ミリバールの圧力で現れるのが好ましい。
これらの境界条件のもとで、放射線遮蔽ガラスからなるガラス体の信頼性がある熱的なプレストレスが可能となる。
放射線遮蔽ガラスの上記屈曲処理および上記熱的なプレストレスは、特に、重金属酸化物の割合が非常に高く、かつ、少なくとも4000kg/m3、好ましくは少なくとも4900kg/m3の密度を有する放射線遮蔽ガラスに適している。
【0022】
これは、少なくとも60重量%の酸化鉛含有量を有する重フリントガラスであるのが好ましい。
さらに、放射線遮蔽ガラスは好ましくは、酸化鉛に加えて、25〜30重量%のシリカ、および2〜6重量%の酸化バリウムを、主要な成分として含有していてもよい。
さらに、放射線遮蔽ガラスは、アルミナ、酸化ジルコニウムおよびアルカリ金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種のさらなる成分を、0.1重量%〜3重量%、好ましくは0.5〜2重量%追加で含有し、最大2重量%の慣例的な量の清澄剤を任意で含有していてもよい。
【0023】
さらに、放射線遮蔽ガラスは、3.0〜25.0mmの厚みを有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】重力成型を使用した、本発明に係るガラス屈曲処理の模式図である。
【図2】真空成型を使用した、本発明に係るガラス屈曲処理の模式図である。
【図3】プレス成型を使用した、本発明に係るガラス屈曲処理の模式図である。
【図4】放射線遮蔽ガラスの熱的なプレストレスの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面を参照した、好ましい実例についての以下の説明から明らかである。
図1〜図3は、ガラスの成形または3次元屈曲のさまざまな可能性を模式的に示している。
図1は重力成型を示している。ここで、ガラスプレート12が、予熱された鋳型10上に置かれており、適切なやり方でさらに加熱される。ガラスプレート12は、その重力の影響で、矢印14の方向に向かって、鋳型10の表面に徐々に載るようになる。
【0026】
図2は、真空支持(真空成型または深絞り法とも呼ばれる)による同じ処理を示している。ここで、鋳型10aには、矢印18の方向に真空が加えられる1つ以上の吸引チャネル16が設けられている。それにより、ガラスプレート12は、真空による追加の支持によって、鋳型10aの内面上に載るようになる。
表1は、Schott AG(マインツ)が製造および販売する放射線遮蔽ガラスRD 50(登録商標)の最重要データの要約である。
【0027】
【表1】

【0028】
図3は、ガラスプレート12のプレス成型を模式的に示している。ガラスプレート12は、ここでも、予熱された鋳型10b上に置かれており、炉でさらに加熱されるのが好ましい。実際の成形処理に関し、雄型20が矢印22の方向へと下方に移動し、その結果、ガラスプレート12は、雄型20の助けにより鋳型10b内へと押圧される。ここで、雄型20は、ガラスプレート12および型12bよりも実質的に低い温度を有している。このようにして、付着作用が打ち消される。くわえて、雄型の表面は、ふさわしい離型剤(例えば、ガラス繊維織物)で覆われている。その結果、付着しようとする傾向がさらに打ち消される。
【0029】
放射線遮蔽ガラスを屈曲するための、本発明に係る方法は、3つの屈曲方法すべてにより、ガラスRD 50(登録商標)に対して試された。
鋳型10、10a、10bはすべて、マルテンサイト系鋼1.4122で形成されている。製造業者のデータ(ThyssenKrupp Materials、スイス)によれば、これは、0.33〜0.45重量%のC、15.5〜17.5重量%のCr、0.8〜1.3重量%のMo、および0〜1.0重量%のNiという化学組成を有している。
【0030】
鋳型は、あらかじめ研削または旋削により処理されており、表面は、最後に非常に微細に旋削または研磨した。
焼きなまし、焼き入れ、および焼きもどしによる熱処理は、製造業者のデータに従って行った。
寸法が500×800mmで厚さが6mmの試料を、ガラスRD 50(登録商標)で製造した。このガラスは、ガス利用の融解炉で製造される。融解炉内で、ガラス製造に必要なすべての成分が、陶器内に導入されて、かなりの熱で融解される。次いで、溶融ガラスは、2つの鋼製のローラの間でガラスプレートへと圧延されて、冷却炉で焼きもどされる。この処理により表面が損傷を受けるため、これらは透けては見えない。次いで、ダイヤモンドで被覆した用具で研削すること、ならびに、研磨用のフェルトおよび酸化セリウムで研磨することにより両側に対する表面処理が行われ、透明な板が製造される。
【0031】
500×800mmの寸法で6mmの厚みを有する試料が、このようなガラスプレートから切り出された。
実施例1
鋳型10は、まず離型剤(例えば、グラファイト粉末)で処理され、次いで炉の中で、初めに350〜400℃で予熱される。その後、冷えたガラスプレートが頂部に置かれた。さらにそれから、炉の中で60分間にわたって400℃まで加熱され、最後に、30分間にわたって約480℃まで加熱された。図1に示すように、この手順の間に重力成型が行われた。これに続いて、以下の温度プログラムで、鋳型10内で冷却が行われた。60分にわたって400℃まで冷却し、さらに70分にわたって300℃まで冷却し、さらに60分にわたって200℃まで冷却し、さらに20分にわたって150℃まで冷却し、最後に30分にわたって70℃まで冷却した。
【0032】
次いで、成型されたガラス体を取り出した。
実施例2
実施例1と同じデータを使用した。しかし、図2に模式的に示すように、真空を追加で使用した。鋳型10aを、約70kPaの低減した圧力にさらした。
実施例3
実施例1および2と同様に、放射線遮蔽ガラスRD 50(登録商標)を含む500×800mmの寸法で厚みが6mmのガラスプレートを使用した。鋳型10bを上記と同様の仕方で製造し、離型剤(グラファイト粉末)を塗布して予熱した。次いで、図3に係る両押成形(ダブルプレス)処理を使用した。
【0033】
この目的のために、鋳型が、まず炉の中で約350〜400℃で予熱され、冷えたガラスプレートが頂部に置かれ、次いで、炉の中で約400〜450℃へと短い加熱が再び行われた。その後、頂部にガラスプレート12が置かれた鋳型10bは、炉の外へ移動され、アルミニウム合金からなりガラス繊維織物で被覆された雄型20が、ガラスプレート12を鋳型10bの内面に押圧するために、空気シリンダにより次第に降下された。この際、最高圧力は、約6バールまでとされた。押圧処理は約4〜5秒続いた。次いで、雄型は再び上方向に直ちに移動され、頂部に成型体を有する鋳型10bが炉内に戻され、再び実施例1および2と同じプログラム(すなわち、最初に60分にわたって400℃に維持し、70分にわたって300℃まで冷却し、等々)で、400℃から70℃まで冷却された。
【0034】
3つの場合のすべてにおいて、ガラスプレートは、下方向の途中位置まで約200mmの量だけ変形された。これにより、3次元の変形が行われた。
3つの場合のすべてにおいて、製造された成型品の公差および表面品質は良好であった。
球形または対応して形成されるチャネルを変形することは可能である。
【0035】
重力成型により形成された、実施例1に係るガラス形状は、次いで熱的なプレストレスによりさらに処理された。
図4に係る熱的なプレストレスでは、ガラス体30が、ふさわしいやり方で台上に置かれる。台上で、ガラス体30は、その縁領域で、および、任意で追加的にその中間領域で、支持点36、38、40において支持される。次いで、ガラス体30は、約550℃に予熱された炉に移動され、約15分という比較的長い期間にわたり、約450℃まで加熱される。その後、ガラス体30は、炉の外へ移動され、複数のノズル42または52を介して、その底部32およびその頂部の両方へ向かって送風される。空気は、フィルタ50を介して吸い込みするファン48を介して供給され、チャネル46を介して分配空間44へと供給される。分配空間44は、ガラス体30に対向するその頂部に、互いに等距離で配置され表面全体を覆っている多数のノズル42を有している。
【0036】
対応するやり方で、分配空間54をガラス体30の上方に設ける。分配空間54の外面は、ガラス体30の形にほぼ対応しており、分配空間54には、多数のノズル52が存在している。ここでも、外部からの空気がファン58およびフィルタ60を介して吸引され、チャネル56を介して分配空間54へと供給される。流出圧力は約15ミリバールである。
実施例4
放射線遮蔽ガラスRD 50(登録商標)を含む、500×800mmの寸法で6mmの厚みを有するガラスプレートを、実施例1に従ってまず屈曲し、次いで台の上に載せ、その縁領域において全部で12〜16個の支持点で、かつ、追加で中間領域において4〜8個の支持点で支持した。炉の中で約15分にわたり550℃で予熱したのち、ガラス体30を炉の外へ移動し、その表面の温度が約100℃に低下するまで両側から空気を送風した。その後、冷却処理を終了し、室温まで自然に冷却させた。
【0037】
実施例1に従って成型されたガラス体(熱的にプレストレスされていない)および、実施例4に従って追加で熱的にプレストレスされたガラス体に対し、急冷試験(DIN IEC 60747に係るTWB試験)を行った。ガラス体を70℃〜160℃に加熱し、次いで約15℃の冷水を噴霧する。
プレストレスされていないガラス体の場合、70℃に加熱し冷水を噴霧しただけで、ひびが生じた。
【0038】
他方、プレストレスされたガラス体は、160℃に加熱し冷水を噴霧しても、ひび(破砕)は生じなかった。これで、試験を終了した。
プレストレスされたガラス体およびプレストレスされていないガラス体のボール落下試験(IEC 60601、以前のDIN 4646)の結果を、表2に要約して示す。
【0039】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線遮蔽ガラスを屈曲するための方法であって、
(a)鋳型(10、10a、10b)を設けるステップと、
(b)放射線遮蔽ガラスを含むガラスプレート(12)を設けるステップと、
(c)前記鋳型を300〜400℃の温度に予熱するステップと、
(d)前記鋳型(10、10a、10b)上に前記ガラスプレート(12)を配置するステップと、
(e)前記ガラスプレート(12)および前記鋳型(10、10a、10b)を、ともに370〜430℃の温度に加熱するステップと、
(f)400℃〜500℃の温度に、好ましくは440℃〜500℃の温度に加熱するステップであって、ステップ(e)および(f)が、ともに少なくとも30分、好ましくは少なくとも60分、持続するステップと、
(g)前記ガラスプレート(12)を成型するステップと、
(h)少なくとも60分の期間にわたる、好ましくは少なくとも120分にわたる冷却プログラムにより、前記成型されたガラスを冷却するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記ガラスプレート(12)が、重力の影響下で成型される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱、成型および冷却が炉内で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記成型が真空の適用により支持される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ガラスプレート(12)が、雄型(20)、好ましくはアルミニウム合金またはマグネシウム合金からなる雄型(20)により、前記鋳型(10b)内に押圧される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記雄型(20)が、その表面に、離型層、好ましくはガラス繊維織物からなる離型層を有している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記雄型(20)が、前記鋳型の前記予熱温度より少なくとも100K低い温度、好ましくは120〜180℃、より好ましくは140〜160℃の温度に予熱される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
接点圧力が、15バール、好ましくは10バール、より好ましくは8バールの最大圧力に達するまで徐々に上昇されていく、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記押圧時間が、2〜30秒、好ましくは3〜10秒、特に好ましくは4〜6秒である、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ガラスプレート(12)が頂部に配置された前記鋳型(10b)が、押圧のために前記炉から取り出され、次いで前記冷却プログラムを実施するために前記炉内に戻される、請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記成型されたガラスが、前記押圧処理のあとに、少なくとも60分にわたる、好ましくは少なくとも120分にわたる冷却プログラムにより冷却される、請求項5〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記成型されたガラスの冷却が、より低い冷却温度未満の温度から開始され、好ましくは前記より低い冷却温度より30〜100K低い温度で始められ、好ましくは380〜420℃で始められる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
焼きもどされたマルテンサイト系鋼、好ましくは0.2〜0.6重量%のC含有量を有する、より好ましくは0.3〜0.5重量%のC含有量を有する焼きもどされたマルテンサイト系鋼からなる、より好ましくは14〜19重量%のクロム含有量、0.5〜2重量%のモリブデン含有量、および0〜2重量%のニッケル含有量を有する鋼からなる、特に好ましくは1.4122鋼からなる鋳型(10、10a、10b)を使用する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記鋳型(10、10a、10b)の表面が、離型剤で、好ましくはグラファイト粉末で、または窒化ホウ素粉末で被覆されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
放射線遮蔽ガラスを含むガラス体(30)を熱的にプレストレスするための方法、好ましくは請求項1〜14のいずれか1項に従って屈曲されたのちに、当該プレストレスを行うための方法であって、
前記ガラス体(30)を、少なくともその外周縁で複数の支持点(36、38、40)において支持するステップと、
前記ガラス体を、500〜600℃の温度へと、好ましくは530℃〜570℃へと予熱されている炉の中へ導入するステップと、
前記ガラス体を、400℃〜500℃へと、好ましくは430℃〜470℃へと加熱するステップと、
前記ガラス体(30)を前記炉から取り除き、前記ガラス体(30)が150℃以下の表面温度へと、好ましくは120℃以下へと、特に好ましくは100℃以下へと冷却されるまで、両側において複数のノズル(42、52)から冷えた流体を前記ガラス体へと吹き付けるステップとを含む、方法。
【請求項16】
前記ガラス体(30)が、好ましくはほぼ室温の、または冷却されている空気の送風を受ける、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記流体が、前記ガラス体(30)の方向へ、10〜20ミリバールの圧力で現れる、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記放射線遮蔽ガラスが、少なくとも4000kg/m3、好ましくは少なくとも4900kg/m3の密度を有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記放射線遮蔽ガラスが、重フリントガラス、好ましくは、少なくとも50重量%の重金属酸化物含有量、好ましくは少なくとも60重量%の酸化鉛含有量を有する重フリントガラスである、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記放射線遮蔽ガラスが、酸化鉛に加えて、25〜30重量%のシリカ、および2〜6重量%の酸化バリウムを主要な成分として含有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記放射線遮蔽ガラスが、アルミナ、酸化ジルコニウム、およびアルカリ金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種のさらなる成分を、0.1重量%〜3重量%、好ましくは0.5〜2重量%追加で含有し、最大2重量%の慣例的な量の清澄剤を任意で含有する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記放射線遮蔽ガラスが、3.0〜19.0mmの厚みを有している、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
放射線遮蔽ガラスを含む屈曲体。
【請求項24】
放射線遮蔽ガラス、特に屈曲形状にある放射線遮蔽ガラスを含む、熱的にプレストレスされた物体。
【請求項25】
前記放射線遮蔽ガラスが、少なくとも4000kg/m3、好ましくは少なくとも4900kg/m3の密度を有する、請求項23または24に記載の物体。
【請求項26】
前記放射線遮蔽ガラスが、重フリントガラス、好ましくは、少なくとも50重量%の重金属酸化物含有量、好ましくは少なくとも60重量%の酸化鉛含有量を有する重フリントガラスである、請求項23〜25のいずれか1項に記載の物体。
【請求項27】
前記放射線遮蔽ガラスが、1.2mm Cu完全フィルタリングを有する最大200kVのチューブ電圧で公称厚みが6.5〜25mmの場合に関し、少なくとも25%の、好ましくは少なくとも28%の減衰等価量を有する、請求項23〜26のいずれか1項に記載の物体。
【請求項28】
前記物体が、プレートから2次元的にまたは3次元的に屈曲されている、請求項23〜27のいずれか1項に記載の物体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−275187(P2010−275187A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−121634(P2010−121634)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】