説明

放熱システム

【課題】 コストアップを抑えながらより一層の放熱効率向上を図ることができる放熱システムを提供する。
【解決手段】 電子素子1等の発熱体と連結された蒸発室13と、蒸発室13の内部に収容され電子素子1から吸熱して蒸発する冷媒4と、蒸発室13と内部連結された先細ノズル15と、先細ノズル15が内部に開口したタービン容器16とを有する。先細ノズル15から噴出する冷媒3の蒸気流によって回転するタービンプロペラ6と、タービンプロペラ6と同心状のインナー磁石8と、タービン容器16の外部に回転自在に軸支され回転により風を起こすファンプロペラ12とを備える。ファンプロペラ12側に一体的に支持されると共に、インナー磁石8と対向して配置されて、インナー磁石8に対し磁気的にカップリングされたアウター磁石11を備える。タービンプロペラ12の最大外径が、アウター磁石11の最大外径の1.4倍以上ある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器の主要構成要素である電子素子等の発熱体を強制的に冷却する放熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の放熱システムとしては、特許文献1等により本願発明者が提案した、例えば図3に示すようなシステムがある。この放熱システムは、半導体素子等の電子素子1が搭載された回路基板2上に、コンテナ状のヒートパイプ容器3が固定され、このヒートパイプ容器3の底部の回路基板2側に、液体の冷媒4が収容されているものである。
【0003】
この従来例では、電子素子1での発熱は回路基板1を介して冷媒4に吸収される。そして冷煤4は、吸熱によって蒸発する。一方、ヒートパイプ容器3の上側では、蒸発した冷媒が冷却され、凝縮して液滴7となり、ヒートパイプ容器3の内壁を伝って再び底部に落下する。
【0004】
ここで、ヒートパイプ容器3内には、軸受9により回転軸5aが回転自在に支持されたタービンプロペラ6が設けられ、冷媒4の蒸気流によってタービンプロペラ6が回転する。タービンプロペラ6の回転軸5aには、ヒートパイプ容器3内で一体的に回転するインナー磁石8が固定されている。さらに、ヒートパイプ容器3の外部には、回転軸5a及び軸受9と同軸に、軸受10を経てヒートパイプ容器3の外部に突出した別体の回転軸5bが設けられている。回転軸5bには、インナー磁石8と同軸的に磁気カップリングされているアウター磁石11が固定されている。そして、アウター磁石11の外側の回転軸5bの端部には、ファンプロペラ12が固定されている。
【0005】
この構成により、冷媒4の蒸気流によってタービンプロペラ6が回転し、回転軸5a、インナー磁石8、アウター磁石11、回転軸5bを介して、ヒートパイプ容器3の外部に回転自在に軸支されたファンプロペラ12が回転する。したがって、駆動モータ等の外部駆動源を必要とすることなく、ファンプロペラ12を回転させることができて、効率の良い放熱を行なわせることができると共に、電子素子1等の発熱状態に応じて冷媒4の蒸気流の発生が制御され、制御装置等を必要とすることなくファンプロペラ12の自動的な回転制御を行なわせることができ、コストアップを抑えながら放熱効率の向上を図ることができる。
【0006】
しかしながら、このシステムでは、ヒートパイプ容器3の上部と下部で温度差が運転中に小さくなり、冷媒4がすべて蒸発してしまい、もはや液となってもどる冷媒がなくなるという欠点があった。そこで、図4に示すような改良がなされた放熱システムも提案されている。図4では、図3のヒートパイプ容器3を、冷媒4の蒸発室13、蒸気通路管14、先細ノズル15、タービン容器16、冷媒液戻り管17、及び放熱フィン18により構成したものである。
【0007】
これによると、ヒートパイプ容器は、蒸発室13、蒸気通路管14、タービン容器16、及び冷媒液戻り管17に区画されており、放熱フィン18によって、冷媒蒸気7が冷却されて液滴下し、蒸発室13に戻る機構である。図4のシステムでは、図3の放熱システムと比べると、蒸発室13とタービン容器16との圧力差が生じ、先細ノズル15から蒸気流5が勢いよく噴出し、タービンプロペラ6を回転させる。さらに、蒸発室13と冷媒液戻り管17との温度差も確保され、冷媒4がすべて蒸発してしまうという欠点は解消された。
【特許文献1】特公平3−63838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図4のシステムにおいて、タービンプロペラ6が高速で回転しようとしても、インナー磁石8と磁気カップリングされているアウター磁石11の抵抗が大きく、ファンプロペラ12の回転数が十分に得られないという欠点があった。
【0009】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑がみて成されたもので、コストアップを抑えながらより一層の放熱効率向上を図ることができる放熱システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、電子素子等の発熱体と接続した蒸発室と、前記蒸発室内部に収容され前記発熱体から吸熱して蒸発する冷媒と、前記蒸発室と連通した先細ノズルと、前記先細ノズルが内部に開口したタービン容器と、前記タービン容器内に回転自在に軸支され前記先細ノズルから噴出する前記冷媒の蒸気流によって回転するタービンプロペラと、このタービンプロペラと一体的に支持され前記タービンプロペラと同心状のインナー磁石と、前記タービン容器の外部に回転自在に軸支されたファンプロペラと、このファンプロペラ側に一体的に支持されると共に前記インナー磁石と対向して配置されて前記インナー磁石に対し磁気的にカップリングされたアウター磁石と、前記タービン容器内と連通し前記冷媒の蒸気流が凝縮して再液化する凝縮部と、前記凝縮部と連通され前記再液化した冷媒が溜まる凝縮冷媒容器とを備え、前記凝縮冷媒容器と前記蒸発室が連通している放熱システムである。そして、前記タービンプロペラの最大外径が、前記アウター磁石の最大外径の1.4倍以上あるものである。
【0011】
さらに、前記タービンプロペラの最大外径が、前記アウター磁石の最大外径の1.5〜2.5倍であるものであるとなお良い。
【発明の効果】
【0012】
この発明の放熱システムは、従来例と比較して放熱の際の熱抵抗が少なく効率よく放熱させることができるとともに、局部的な発熱に対しても支障なく放熱することができる。しかも、外部駆動源を必要とすることなく強制冷却ができ、且つ制御装置等を必要とすることなく、発熱の程度に応じて冷却用のファンプロペラが効率良く自動的に回転制御され、コストアップを押えながら放熱効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は、この発明の一実施形態の放熱システムを示すもので、上記従来の技術と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。
【0014】
この実施形態の放熱システムは、図示しない回路基板に搭載された発熱体である半導体素子等の電子素子1の冷却に用いるもので、例えばフロリナート(商標)等のフッ素系不活性液体を冷媒4とし、冷媒4を収容する蒸発室13と、蒸発室13に接続された蒸気通路管14、及び先細ノズル15を備えている。先細ノズル15は、タービンプロペラ6が回転可能に設けられたタービン容器16内に開口している。さらに、タービン容器16には、冷媒液戻り管17が接続され、冷媒液戻り管17の途中には、冷媒液戻り管17による凝縮部を冷却するための放熱フィン18が設けられている。冷媒液戻り管17の先端部は、凝縮冷媒容器19に開口し、凝縮冷媒容器19と蒸発室13は、冷媒4が流通する連結管20により接続されている。
【0015】
タービン容器16内には、図示しない軸受により回転軸5aが回転自在に支持されたタービンプロペラ6が設けられ、冷媒4の蒸気流によってタービンプロペラ6が回転可能に位置している。タービンプロペラ6の回転軸5aには、タービン容器16内で一体的に回転するインナー磁石8が固定されている。さらに、タービン容器16の外部には、回転軸5aと同軸に、図示しない軸受を介して外部に突出した回転軸5bが設けられている。回転軸5bには、インナー磁石8と同軸的に磁気カップリングされているアウター磁石11が固定されている。アウター磁石11の外側の回転軸5bの先端部にはファンプロペラ12が固定されている。
【0016】
この実施形態のタービンプロペラ6は、その直径Dとアウター磁石11の直径dとの比(D/d)が1.4以上で3.0以下、回転効率とスペース効率の観点から、好ましくは1.5以上2.5以下に設定される。
【0017】
この実施形態の放熱システムの動作は、発熱体としての電子素子1からの熱を冷媒4が吸収し、蒸発室13内で蒸発してその内部に封入された冷媒4が、吸収した熱により蒸発して蒸気流となる。冷媒4の蒸気流は蒸気通路管14を通り、蒸気通路管14の先端部に連結された先細ノズル15から、タービン容器16内に噴出する。噴出した蒸気はタービン容器16の中のタービンプロペラ6を回転させ、さらに蒸気は冷媒液戻り管17を通り放熱フィン18により放熱されて、温度を下げ液体になりながら、冷媒液戻り管17と連結した凝縮冷媒容器19に溜まる。そして、凝縮冷媒容器19は蒸発室13と連結管20で連結されているので、冷媒液4は、蒸発室13とタービン容器16、及び凝縮冷媒容器19間で循環する。
【0018】
タービン容器16内では、タービンプロペラ6に蒸気流が当たり、同心状のインナー磁石8を回転させる。インナー磁石8の回転に伴ってアウター磁石11が磁気的結合により回転し、タービン容器16外部のファンプロペラ12を回転させる。ファンプロペラ12の回転により、蒸発室13や放熱フィン18方向に外部の空気流が生じ、蒸発室13外壁面や放熱フィン18が冷却される。蒸発室13の外壁面が強制冷却されると、蒸発室13からの放熱が促進され、電子素子1の冷却を効果的に行なわせることができる。そして、タービン容器16の上側で上記のように放熱された蒸気流は凝縮液化されて、冷媒液タンク19の底部側へ滴下される。
【0019】
また、電子素子1の発熱が高くなるときには、これに応じて冷媒4の蒸発が促進される。従って、ファンプロペラ12の回転が速くなり、発熱の大きさに応じてファンプロペラ12による冷却風が強くなる。また、電子素子1の発熱がそれほど高くないときは冷媒4の蒸発も少なくなり、これに応じてファンプロペラ12による冷却風が弱くなる。したがって電子素子1の発熱状体に応じて自動的に冷却風の調節が行なわれる。
【0020】
この実施形態の放熱システムによれば、従来例と比較して放熱の際の熱抵抗が少なく効率よく放熱させることができるとともに、局部的な発熱に対しても支障なく放熱することができる。しかも外部駆動源を必要とすることなく強制冷却ができ、且つ制御装置等を必要とすることなく発熱の程度に応じてファンプロペラが自動的に回転制御され、コストアップを押えながら放熱効率の向上を図ることができる。
【0021】
さらに、タービンプロペラ6の直径Dとアウター磁石11の直径dとの比(D/d)を1.4以上とすることにより、図2に示すように、タービンプロペラ6の回転が効率良く行われ回転数が上昇して駆動力が大きくなり、ファンプロペラ12の回転数も上がる。これにより、ファンプロペラ12による十分な冷却性能が達成される。
【0022】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、アウター磁石11をインナー磁石8の円周外側の、タービン容器16外周囲に配置することも出来る。その場合インナー磁石11とアウター磁石8が引き合う力が軸トルクの抵抗になることが少なくなり、より効率の良い回転が得られる。また、放熱フィン18は適宜設ければ良く、必要ない場合は設けなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施形態の放熱システムの概略断面図である。
【図2】この発明の一実施形態の放熱システムによる、タービンプロペラ羽根車径とアウター磁石径との比と、ファンの回転数の関係を示すグラフである。
【図3】従来の放熱システムの概略図である。
【図4】従来の他の放熱システムの概略図である。
【符号の説明】
【0024】
1 電子素子
4 冷媒
6 タービンプロペラ
8 インナー磁石
11 アウター磁石
12 ファンプロペラ
13 蒸発室
15 先細ノズル
16 タービン容器
17 冷媒液戻り管
19 凝縮冷媒容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と接続した蒸発室と、前記蒸発室内部に収容され前記発熱体から吸熱して蒸発する冷媒と、前記蒸発室と連通した先細ノズルと、前記先細ノズルが内部に開口したタービン容器と、前記タービン容器内に回転自在に軸支され前記先細ノズルから噴出する前記冷媒の蒸気流によって回転するタービンプロペラと、このタービンプロペラと一体的に支持され前記タービンプロペラと同心状のインナー磁石と、前記タービン容器の外部に回転自在に軸支されたファンプロペラと、このファンプロペラ側に一体的に支持されると共に前記インナー磁石と対向して配置されて前記インナー磁石に対し磁気的にカップリングされたアウター磁石と、前記タービン容器内と連通し前記冷媒の蒸気流が凝縮して再液化する凝縮部と、前記凝縮部と連通され前記再液化した冷媒が溜まる凝縮冷媒容器とを備え、前記凝縮冷媒容器と前記蒸発室が連通している放熱システムにおいて、
前記タービンプロペラの最大外径が、前記アウター磁石の最大外径の1.4倍以上あることを特徴とする放熱システム。
【請求項2】
前記タービンプロペラの最大外径が、前記アウター磁石の最大外径の1.5〜2.5倍であることを特徴とする請求項1記載の放熱システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−64532(P2007−64532A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249223(P2005−249223)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】