説明

放熱性樹脂組成物、放熱性ソルダーレジスト用組成物、放熱性成形体、及び放熱性プリント配線板

【課題】優れた放熱性を有し、特にソルダーレジスト用組成物として好適に使用される放熱性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】放熱性樹脂組成物は、マトリックス樹脂とフィラーとを含有する。前記フィラーがナノファイバ型窒化アルミニウムを含む。このため、ナノファイバ型窒化アルミニウムによって、放熱性樹脂組成物に高い熱伝導性が付与され、優れた放熱性を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性に優れた放熱性樹脂組成物、前記樹脂組成物から形成される放熱性成形体、前記放熱性樹脂組成物からなる放熱性ソルダーレジスト用組成物、並びに前記放熱性ソルダーレジスト用組成物から形成されたソルダーレジスト被膜を備える放熱性プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の軽薄短小化の要請により、プリント配線板への電子部品の高密度実装が進展し、それに伴ってプリント配線板上の電子部品からの放熱量の増大が問題となっている。
【0003】
そこで従来、プリント配線板に形成されるソルダーレジスト被膜等の熱伝導性を向上することで、電子部品で発生した熱をソルダーレジスト被膜等を介して効率よく放熱することが提案されている。
【0004】
例えば特許文献1−3には、ソルダーレジスト用組成物等に酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム等といった、熱伝導性や赤外線放射性が高いフィラーを含有させることで、プリント配線板上のソルダーレジスト被膜に放熱性を付与することが開示されている。
【0005】
しかし、今後もプリント配線板の高密度が更に進展することを鑑みれば、従来のプリント配線板の放熱性は充分ではなく、プリント配線板の更なる放熱性の向上が望まれている。
【特許文献1】特開平6−167806号公報
【特許文献2】特公平7−67007号公報
【特許文献3】特開2007−191519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みて成されたものであり、優れた放熱性を有する放熱性樹脂組成物、前記樹脂組成物から形成される放熱性成形体、前記放熱性樹脂組成物からなる放熱性ソルダーレジスト用組成物、並びに前記放熱性ソルダーレジスト用組成物から形成されたソルダーレジスト被膜を備える放熱性プリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る放熱性樹脂組成物は、マトリックス樹脂とフィラーとを含有し、前記フィラーがナノファイバ型窒化アルミニウムを含むことを特徴とする。
【0008】
このため、ナノファイバ型窒化アルミニウムによって、放熱性樹脂組成物に高い熱伝導性が付与され、優れた放熱性を発揮する。即ち、フィラーがナノファイバ型窒化アルミニウムを含むことで、球形状のフィラーのみの場合に比べて、フィラー含有量が少なくても放熱性樹脂組成物に高い熱伝導性が付与され、またフィラー含有量が同量であれば放熱性樹脂組成物により高い放熱性が付与される。また、放熱性樹脂組成物中のフィラー含有量を低減しつつ高い熱伝導性を維持することができるため、放熱性樹脂組成物の流動性を向上し、特に放熱性樹脂組成物がソルダーレジスト用組成物として使用される場合には放熱性樹脂組成物に高い印刷塗布性が付与される。これらの作用は、ナノファイバ型窒化アルミニウムの長さが揃っている方が、より顕著に現れる。
【0009】
前記ナノファイバ型窒化アルミニウムは、金属アルミニウム粉末と窒化アルミニウムとがNH4Cl及びY23の存在下、窒素雰囲気中で加熱されることで前記金属アルミニウム粉末が窒素化されて生成したナノファイバ型窒化アルミニウムを含むことが好ましい。
【0010】
この場合、前記手法で生成された長さの揃ったナノファイバ型窒化アルミニウムが使用されることで、放熱性樹脂組成物に高い熱伝導性が付与される。
【0011】
前記マトリックス樹脂は熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0012】
この場合、放熱性樹脂組成物を成形し、熱硬化することによって、優れた放熱性を有する放熱性成形体が得られる。
【0013】
本発明に係る放熱性ソルダーレジスト用組成物は、上記放熱性樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0014】
このため、ナノファイバ型窒化アルミニウムによって、放熱性ソルダーレジスト用組成物に高い熱伝導性が付与され、優れた放熱性を発揮するものであり、この放熱性ソルダーレジスト用組成物でプリント配線板にソルダーレジスト被膜を形成することで、プリント配線板に高い放熱性が付与される。
【0015】
本発明に係る放熱性成形体は、上記放熱性樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする。
【0016】
このため、ナノファイバ型窒化アルミニウムによって、放熱性成形体に高い熱伝導性が付与され、優れた放熱性を発揮する。
【0017】
本発明に係る放熱性プリント配線板は、上記放熱性ソルダーレジスト用組成物から形成されたソルダーレジスト被膜を備えることを特徴とする。
【0018】
このため、ナノファイバ型窒化アルミニウムによってソルダーレジスト被膜に優れた放熱性が付与され、放熱性プリント配線板が優れた放熱性を発揮し、プリント配線板への電子部品の高密度実装が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた放熱性を有する放熱性樹脂組成物、放熱性成形体、放熱性ソルダーレジスト用組成物、並びに放熱性プリント配線板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0021】
放熱性樹脂組成物は、フィラーとしてナノファイバ型窒化アルミニウムを含有する。ナノファイバ型窒化アルミニウムの好ましい寸法は直径10〜1000nm、長さ100nm〜20μmであり、更に好ましい寸法は直径50〜1000nm、長さ100nm〜10μmである。
【0022】
ナノファイバ型窒化アルミニウムは、アルミニウムを1000〜1350℃で窒素化することで生成される。具体的な手法として、例えばAl/AlX3、AlX3、Al/NH4X(Xは塩素、フッ素又はヨウ素を示す)等のハロゲン化物の気相−固相反応による直接窒素化により生成する方法、AlとNH3/N2とをAlに対して0.5〜1.0mmol/1gの微少量の金属触媒(Ni、Co、Au等)の存在下で反応させる方法、カーボンナノチューブを還元のための炭素源及びテンプレートとして用い、Al23/Al混合物を還元・窒素化する方法等が提案されている。
【0023】
また、金属アルミニウム粉末を、希釈剤である窒化アルミニウム、並びにNH4Cl及びY23と混合して得られる混合物を窒素雰囲気中で加熱する燃焼合成法も提案されている(J. Am. Ceram. Soc., 90[8] 2347-2351 (2007)を参照)。混合物は一旦反応温度まで加熱されると、その後は自己発熱により反応が進行する。この反応時の雰囲気圧力は、好ましくは0.1MPa以上とする。
【0024】
当該方法では、金属アルミニウム粒子の表層にAl−Y−N−O系複合酸化物からなる硬い外殻が生成する。この外殻の内側に雰囲気中の窒素、並びにNH4Clが分解して生成するNH3及びHClが進入し、まず溶融金属アルミニウムとHClとが反応して塩化アルミニウムが生成する。次いで塩化アルミニウムと窒素が反応して窒化アルミニウムが生成する(マイクロリアクター)。この窒化アルミニウムは外殻内で繊維状にエピタキシー成長し、前記外殻内を満たす。この反応生成物が適宜の溶剤と混合した状態でかるく粉砕されると粒子の外殻が破砕され、この外殻の破砕物が篩別されることで、希釈剤である窒化アルミニウムと、金属アルミニウムが窒化されて生成したナノファイバ型窒化アルミニウムとの混合物が得られる。
【0025】
当該方法において、混合物中の窒化アルミニウムは反応時の反応温度を低減すると共に溶融した金属アルミニウムを凝固させるために使用される。混合物中の金属アルミニウム粉末と窒化アルミニウムとの含有率や、反応時の雰囲気圧力等は適宜設定される。当該方法によるナノファイバ型窒化アルミニウムの生成には、長さの揃ったナノファイバ型窒化アルミニウムが効率よく生成するという利点がある。生成するナノファイバ型窒化アルミニウムの長さは原料である金属アルミニウム粒子の粒径に依存し、この金属アルミニウム粒子の粒径が予め調整されることでナノファイバ型窒化アルミニウムの長さが容易に調整される。
【0026】
放熱性樹脂組成物中のナノファイバ型窒化アルミニウムの含有量は、放熱性樹脂組成物の熱伝導性を充分に向上すると共にこの放熱性組成物に必要とされる成形性等の性能を確保することができる範囲で適宜調整される。特に放熱性樹脂組成物中にナノファイバ型窒化アルミニウムが5〜95重量%の範囲で含有することが好ましく、20〜85重量%の範囲であればより好ましい。
【0027】
また、放熱性樹脂組成物に含有されるマトリックス樹脂としては、特に制限されず、適宜の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂等が使用される。
【0028】
マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂が使用される場合には、例えばエポキシ樹脂が使用される。
【0029】
マトリックス樹脂として使用可能なエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、2,2’,6,6’−テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビス−β−トリフルオロメチルジグリシジルビスフェノールA等のビスフェノール型エポキシ樹脂;1,6−ジグリシジルオキシナフタレン型エポキシ樹脂、1−(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)−1−(2−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)メタン、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)−1−フェニル−メタン等のナフタレン系エポキシ樹脂;ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールヘキサフルオロアセトンジグリシジルエーテル、レゾルシノージグリシジルエーテル等のその他の2官能型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;前記ビスフェノール型エポキシ樹脂と、ノボラック型エポキシ樹脂とを、ビスフェノールを介して共重合させたエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノールとの重付加体のエポキシ化物に代表される環式脂肪族エポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルp−オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステル、トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジルp−アミノフェノール、テトラグリシジルm−キシリレンジアミン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;その他、フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−[4−[1−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]−2−プロパノール、テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、テトラグリシドキシビフェニル等のエポキシ樹脂などが挙げられる。またこれらのエポキシ樹脂を変性したエポキシ樹脂も使用可能である。これらのエポキシ樹脂は一種単独で使用され、或いは二種以上が併用される。
【0030】
エポキシ樹脂が使用される場合、必要に応じてエポキシ樹脂の硬化剤が併用される。硬化剤としてはエポキシ樹脂を硬化させる機能を有する適宜のものが使用される。硬化剤の具体例としては、ノボラック樹脂;ジシアンジアミド、イミダゾール、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体等の潜在性アミン系硬化剤;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミン類;シクロホスファゼンオリゴマー等の窒素原子を含有する硬化剤;ポリアミド樹脂、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物系硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は一種単独で使用され、或いは二種以上が併用される。
【0031】
放熱性樹脂組成物中の硬化剤の含有量は適宜調整されるが、好ましくは組成物中にエポキシ樹脂1当量に対して0.6〜1.4当量の硬化剤が含有されていることが好ましい。
【0032】
また、放熱性樹脂組成物が公知慣用の硬化促進剤を含有しても良い。硬化促進剤の具体例としては、例えばベンジルジメチルアミン等の第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤は一種単独で使用され、或いは二種以上が併用される。放熱性樹脂組成物中における硬化促進剤の含有量は適宜調整されるが、放熱性樹脂組成物中のエポキシ樹脂全量に対する硬化促進剤の含有量が0.001〜10質量%の範囲であることが好ましい。
【0033】
また放熱性樹脂組成物中には必要に応じて溶剤が含有されても良い。溶剤としては適宜のものが使用されるが、例えばアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N、N−ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、メトキシプロパノール、エチルカルビトール、トルエン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。これらの溶剤は一種単独で使用され、或いは二種以上が併用される。
【0034】
溶剤の含有量は特に制限されず、放熱性樹脂組成物がペースト状、液状等の所望の性状となるように適宜調整されるが、例えば放熱性樹脂組成物全量に対して0〜90重量%の範囲であることが好ましい。
【0035】
また、放熱性樹脂組成物中にはナノファイバ型窒化アルミニウム以外のフィラーが含有されても良い。フィラーとしては適宜のものが使用されるが、例えば粒状の窒化アルミニウム、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、窒化珪素、窒化硼素等が使用される。放熱性樹脂組成物のフィラーの含有量は適宜調整されるが、好ましくはナノファイバ型窒化アルミニウムを含む全フィラーの含有量が放熱性樹脂組成物全量に対して5〜95重量%の範囲となるようにする。
【0036】
また、放熱性樹脂組成物は上記成分のほか、必要に応じて種々の添加剤、難燃剤等を含有しても良い。
【0037】
放熱性樹脂組成物は、上記のような各成分が適宜の手法により混合されることで調製される。例えば、各配合成分が三本ロール、ボールミル、サンドミル、自転・公転式ミキサー等による公知の混練方法によって混練されることで放熱性樹脂組成物が調製される。この放熱性樹脂組成物が成形されることで、放熱性成形体が形成される。
【0038】
この放熱性樹脂組成物及び放熱性成形体は、ナノファイバ型窒化アルミニウムを含有することで高い熱伝導性が付与され、優れた放熱性能を発揮する。これは窒化アルミニウム自体が優れた熱伝導性を有すると共に、この窒化アルミニウムがナノファイバ化していることで、組成物及び成形体中でナノファイバ型窒化アルミニウムのネットワークが形成されるためであると考えられる。
【0039】
放熱性樹脂組成物はプリント配線板用の放熱性ソルダーレジスト用組成物として好適に使用される。プリント配線板に放熱性ソルダーレジスト用組成物によるソルダーレジスト被膜が形成されることで、放熱性プリント配線板が作製される。
【0040】
放熱性プリント配線板の作製にあたっては、プリント配線板に放熱性樹脂組成物からなる放熱性ソルダーレジスト用組成物がその性状に応じた適宜の手法により塗布成膜されることで、ソルダーレジスト被膜が形成される。例えば放熱性ソルダーレジスト用組成物がマトリックス樹脂としてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含有する放熱性樹脂組成物からなる場合には、例えばまず放熱性ソルダーレジスト用組成物がスクリーン印刷等により適宜のパターン状に塗布される。この放熱性ソルダーレジスト用組成物の塗膜が加熱硬化されることでソルダーレジスト被膜が形成され、放熱性プリント配線板が作製される。
【0041】
また、例えば放熱性ソルダーレジスト用組成物がマトリックス樹脂として光硬化性樹脂を含有する放熱性樹脂組成物からなる場合には、放熱性ソルダーレジスト用組成物がプリント配線板に塗布され、必要に応じて加熱乾燥された後、パターンマスクを介して露光され、更に放熱性ソルダーレジスト用組成物の塗膜の非露光部分が現像除去されることでソルダーレジスト被膜が形成される。
【0042】
このように形成される放熱性プリント配線板は、優れた放熱性を有するソルダーレジスト被膜を備えることで、電子部品で発生した熱がソルダーレジスト被膜を介して速やかに外部に放熱され、電子部品の高密度実装が可能となる。
【0043】
また、放熱性樹脂組成物は放熱性プリント配線板の製造に使用される場合、ソルダーレジスト以外にも例えばプリプレグの製造、熱伝導性接着剤等に適用可能である。また放熱性樹脂組成物は放熱性プリント配線板の製造用途以外にも種々の用途に使用可能である。例えば放熱性樹脂組成物を、電気製品の筺体のコーティングに使用されるコーティング剤として使用したり、放熱シートや放熱ゲル等を作製するために使用しても良い。
【実施例】
【0044】
以下に本発明の実施例について説明する。
【0045】
[ナノファイバ型窒化アルミニウムの調製]
平均粒径20μmのAl粉末(東洋アルミニウム株式会社製)と、平均粒径0.5μmのAlN粉末(株式会社トクヤマ製「Type H」)とを、40:60のモル比で混合し、更にNH4Cl(ナカライテクス株式会社製)とY23(信越化学工業株式会社製)とを共に5質量%の割合で加え、乳鉢で混合した後、目開き212μmの篩いにかけて、混合物を調製した。
【0046】
この混合物50gを多孔質グラファイト容器(直径42mm、高さ90mm)内に理論密度の約60%の密度となるように固め入れ、この容器ごと混合物をチャンバー内に入れた。固められた混合物は2gのAl/AlN粉末(1:1)のペレット上に配置し、前記ペレットの下にはカーボンリボンを敷いた。
【0047】
チャンバー内の雰囲気を0.25MPaのN2雰囲気とし、この状態でAl/AlN粉末のペレットにカーボンリボンを介して60A、20Vの電流を10秒間流すことでペレットを加熱し、これにより容器内の混合物を反応させた。
【0048】
反応開始から5分間経過したらチャンバーから多孔質グラファイト容器を取り出し、室温まで冷却した後、容器内から反応生成物を取り出した。この反応生成物をかるく粉砕した後、反応生成物中の粗粒を篩別した。
【0049】
この反応生成物は、粉末X線回折測定によって窒化アルミニウムから構成されていることが確認され、また走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した結果、数10乃至数100nmの直径と数μmの長さを有するナノファイバ型窒化アルミニウムとAlN粉末との混合物であることが確認された。
【0050】
[実施例1]
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製「152」)を2.5質量部、硬化剤(日本化薬株式会社製「カヤハードAA」)を2.5質量部、分散剤(ビックケミー株式会社製「DISPERBYK−111」)を0.5部、上記ナノファイバ型窒化アルミニウムとAlN粉末との混合物を10質量部、タルク(富士タルク工業株式会社製「LMS−100」)を2質量部及び希釈溶剤としてジエチルジグリコール(日本乳化剤)を2.5質量部配合し、三本ロールで混練することでペースト状のソルダーレジスト用組成物を得た。この組成物の硬化物中の窒化アルミニウムの理論含有率は62質量%及び41容積%であった。
【0051】
[比較例1]
実施例1において、ナノファイバ型窒化アルミニウムとAlN粉末との混合物に代えて、粒状の窒化アルミニウム粉末(平均粒径1μm)を使用した。それ以外は実施例1と同様にしてソルダーレジスト用組成物を調製した。
【0052】
[参考例1]
放熱性フィラーを含まない市販の熱硬化型ソルダーレジスト(山栄化学株式会社製「SSR−671G」)を使用した。
【0053】
[評価試験]
(放熱性)
平面視100mm×100mm片面銅張基板(住友ベークライト株式会社製「ELC4762−UV−35 10R」、FR−4タイプ)に評価用導体パターン1を形成し、評価用配線板を作製した。評価用導体パターン1としては、図1に示すようにライン幅150μm、スペース幅150μmの渦巻き状の導体配線3からなる35mm×35mmの二つのパターン(基準パターン1a及び測定用パターン1b)を形成した。この二つのパターン1a,1bは直列に接続し、各パターン1a,1bの中心には導体配線3が形成されない領域を設けた。
【0054】
この評価用配線板について、上記導体配線3が形成されない各領域にK熱電対(クロメル−アルメル、図示省略)を共晶はんだ2で固定し、導体配線3の両端の電源供給端子4を介して評価用導体パターン1に通電した場合に各K熱電対で測定される温度が150℃で安定化するための通電条件(安定通電条件)を、予め実測に基づいて導出した。
【0055】
この評価用配線板における測定用パターン1b上にのみ、各実施例、比較例、参考例につき、それぞれソルダーレジスト用組成物を250メッシュのスクリーン版を用いたスクリーン印刷法により約20μmの厚みに塗布した後、150℃で30分加熱して熱硬化させ、硬化被膜(ソルダーレジスト被膜)を形成した。
【0056】
この評価用配線板の上記導体配線3が形成されない各領域に、上記と同様にK熱電対を共晶はんだ2で固定してから、この評価用配線板を無風箱内に配置し、評価用導体パターン1に上記安定化条件で電流を通電した。通電開始後、各K熱電対による測定温度が安定化した後に、基準パターン1a側、測定用パターン1b側のそれぞれにおける温度を記録した。その結果を表1に示す。
【0057】
(密着性)
JIS K5600−5−6に準拠し、評価用配線板における基板とソルダーレジスト被膜との間の密着性をクロスカット法により評価した。その結果を下記表1に示す。分母はクロスカット法により形成されたマス目の数を、分子は剥離が生じないマス目の数を、それぞれ示す。
【0058】
(はんだ耐熱性)
JIS C6481 5.5に準拠し、評価用配線板におけるソルダーレジスト被膜のはんだ耐熱性試験を行った。はんだ浴温度は260℃、浸漬時間は10秒、浸漬回数は3回とした。試験後のソルダーレジスト被膜を観察し、ソルダーレジスト被膜の剥離が認められない場合を「○」、剥離が認められる場合を「×」と評価した。その結果を下記表1に示す。
【0059】
(被膜硬度)
JIS K5600−5−4に準拠し、評価用配線板におけるソルダーレジスト被膜の硬度を評価した。その結果を下記表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
上記結果の通り、実施例1ではソルダーレジスト被膜が比較例1や参考例1の場合と同等のレジストとしての性能を発揮し、しかも高い放熱性により基板温度が比較例1及び参考例1よりも低下していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】(a)は実施例で用いられた評価用配線板における評価用導体パターンを示す平面図、(b)は(a)の部分拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス樹脂とフィラーとを含有し、前記フィラーがナノファイバ型窒化アルミニウムを含むことを特徴とする放熱性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ナノファイバ型窒化アルミニウムが、金属アルミニウム粉末と窒化アルミニウムとがNH4Cl及びY23の存在下、窒素雰囲気中で加熱されることで前記金属アルミニウム粉末が窒素化されて生成したナノファイバ型窒化アルミニウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項3】
前記マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の放熱性樹脂組成物から成ることを特徴とする放熱性ソルダーレジスト用組成物。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の放熱性樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする放熱性成形体。
【請求項6】
請求項4に記載の放熱性ソルダーレジスト用組成物から形成されたソルダーレジスト被膜を備えることを特徴とする放熱性プリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2009−302150(P2009−302150A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152185(P2008−152185)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000166683)互応化学工業株式会社 (57)
【出願人】(594000778)株式会社京写 (3)
【Fターム(参考)】