放熱材料及びその製造方法
【課題】セラミックス基板、ダイヤモンド基板等の無機系材料の放熱材料は硬度が高く難加工性であり、グラファイトフィルム、カーボンナノチューブ等の炭素系材料は放熱性が低かった。
【解決手段】グラファイト基板の表面にマスク粒子201aを堆積させると共に、これと並行してグラファイト基板の表面にナノメートルオーダの凹凸構造を加工する(ステップ101)。
【解決手段】グラファイト基板の表面にマスク粒子201aを堆積させると共に、これと並行してグラファイト基板の表面にナノメートルオーダの凹凸構造を加工する(ステップ101)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放熱材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱部品、たとえばコンピュータ等の電子電気機器に搭載される半導体素子、太陽電池、電気自動車等に用いられるパワーコンバータ及びインバータの冷却の問題が注目を集めている。
【0003】
上述の発熱部品の1つの冷却方法はその発熱部品が搭載された機器筐体にファンを取付け、機器筐体を冷却する。また、他の冷却方法はその発熱部品に熱伝導媒体たとえばヒートパイプ、ヒートシンク、フィン、ファン等を取付け、発熱部品からの熱を熱伝導媒体によって外部へ伝達する。このとき、発熱部品に銅、アルミニウム等の良熱伝導材料を接触させ、熱伝導材料を介して熱伝導媒体によって外部へ伝達する。
【0004】
しかしながら、近年、半導体素子等のハイパワー化及びその搭載スペースの狭小化に伴って発熱部品の発熱量が大きくなる傾向がある。特に、機器筐体が小型化すると、上述の熱伝導媒体を取付けるスペースが小さくなり、この結果、十分な熱対流をとれず、発熱部品が高温となり、素子の性能を下げるものとなる。
【0005】
上述の発熱部品の冷却を効率的に行うために種々の放熱材料が提案されている。
【0006】
従来の放熱材料としてはSiC、AlN等よりなるセラミックス基板(参照:特許文献1)、1000-2000W/m・Kの高熱伝導率のダイヤモンド基板(参照:特許文献2)、柔軟性を有するグラファイトフィルム(参照:特許文献3)、及び良放熱性、耐熱性、耐薬品性、低価格性等のカーボンナノチューブ(参照:特許文献4)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−7445号公報
【特許文献2】特開2008−222468号公報
【特許文献3】特開2009−107904号公報
【特許文献4】特開2004−10978号公報
【特許文献5】特願2009−195354号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、第1の従来の放熱材料であるセラミックス基板は、基本的に、粒径が10-100μmのセラミックスパウダを適当なバインダを用いて焼結したものであるので、発熱部品とセラミックス基板との間に空隙が生じ、密着性が悪く、この結果、放熱性が悪いという課題がある。また、セラミックス基板の熱膨張係数が非常に小さく、従って、発熱部品とセラミックス基板との熱膨張係数の差から剥離が頻繁に生じるという課題もある。さらに、セラミックス基板のSiCあるいはAlNは硬度が高く、難加工材料であるので、切出し、研磨に時間を要し、この結果、製造コストが高いという課題もある。
【0009】
また、第2の従来の放熱材料であるダイヤモンド基板は、セラミックス基板と同様に、ダイヤモンド基板の熱膨張係数が非常に小さく、従って、発熱部品とダイヤモンド基板との熱膨張係数の差から剥離が頻繁に生じるという課題がある。また、ダイヤモンド基板は硬度が高く、難加工材料であるので、切出し、研磨に時間を要し、この結果、製造コストが高いという課題もある。さらに、ダイヤモンド基板は、セラミックス基板と異なり、非常に高価な材料なので、製造コストが著しく高くなる。
【0010】
さらに、第3の従来の放熱材料であるグラファイトフィルムは炭素系材料であるので、無機系材料であるセラミックス基板及びダイヤモンド基板に比較して放熱性が劣るという課題がある。
【0011】
さらにまた、第4の従来の放熱材料であるCNTも炭素系材料であるので、無機系材料であるセラミックス基板及びダイヤモンド基板に比較して放熱性が劣るという課題がある。また、CNTの脆弱性及び疎水性から発熱部品とCNTとの間の密着性が低いという課題もある。この場合、銅等の金属基板上にCNTを分散液等に混ぜてコーティングするのが一般的であるが、金属基板とCNTとの密着性が悪く、CNTが直ぐに剥がれてしまい、あるいは、剥がれなくとも、金属基板とCNTとは原子レベルで結合しているのではないので、必然的に熱抵抗が生じ、熱伝導の損失が生じるという課題が生ずる。尚、金属基板とCNTとの間にペーストを挿入すればCNTの剥がれを防止できるが、ペースト自身が熱抵抗を生じ、熱伝導の損失を生じる。さらに、CNTが空気中において400℃以上に加熱されると、爆発的な燃焼が起こるという課題もある。
【0012】
尚、本願出願人は、既に、プラズマエッチング法等によって表面にナノメートルオーダの微細凹凸構造を形成した炭素系基板よりなる放熱材料を提案している(参照:特許文献5)。しかしながら、プラズマエッチング法等のみでは高アスペクト比の微細凹凸構造を形成することができず、従って、可視領域及び遠赤外領域の反射率を十分に低減できず、この結果、放熱効率を高くできない。
【0013】
また、ナノメートルオーダの高アスペクト比の微細凹凸構造を炭素系基板の表面に形成する方法として、フォトリソグラフィ/エッチング法が考えられる。つまり、炭素系基板上へフォトレジスト層の塗布工程、光、電子ビーム等によるマスクを介したフォトレジスト層のパターン露光工程、洗浄によるフォトレジスト層の不要部分の除去工程、炭素系基板の表面にドライエッチングもしくはウェットエッチング法によって高アスペクト比の微細凹凸構造の形成工程、及び残存するフォトレジスト層の除去工程を行う。しかしながら、工程数が多く複雑であり、また、各工程において精密な制御を必要として製造コストが高く、さらに、パターン露光工程におけるマスクを必要として製造コストが高く、さらに、また、微細凹凸構造の表面積を十分に大きくできず、従って、可視領域及び遠赤外領域の反射率を十分に低減できず、この結果、放熱効率を高くできない。
【0014】
従って、本発明の目的は、フォトリソグラフィ/エッチング法を用いることなく、表面に高アスペクト比のナノメートルオーダの微細凹凸構造をランダムかつ広範囲に形成した炭素系基板よりなる放熱材料及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の課題を解決するために、本発明に係る放熱材料は、マスク粒子が堆積した表面にナノメートルオーダの凹凸構造を形成した炭素系基板を具備する。これにより、凹凸構造が高アスペクト比となり、表面積が増加する。この結果、可視光を含む領域の波長の光線の反射率が低くなると共に、遠赤外領域の波長の光線の反射率も低くなる。
【0016】
また、本発明に係る放熱材料の製造方法は、炭素系基板の表面にマスク粒子を堆積させるマスク粒子堆積工程と、マスク粒子が堆積した炭素系基板の表面をナノメートルオーダの凹凸構造に加工する凹凸構造加工工程を具備する。凹凸構造加工工程はマスク粒子堆積工程と並行もしくは後に行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高アスペクト比の凹凸構造により表面積が大きくなるので、可視光を含む領域及び遠赤外領域の反射率が低くなり、輻射による放熱性を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る放熱材料のグラファイト基板のナノメートルオーダの凹凸構造の製造方法の第1の実施の形態を説明するためのフローチャートである。
【図2】図1のフローチャートに用いられるスパッタリング/プラズマエッチング装置を示す図である。
【図3】図1のフローチャートを補足説明する断面図である。
【図4】図1のスパッタリング/プラズマエッチング後のグラファイト基板の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】図1のスパッタリング/プラズマエッチング後のグラファイト基板の表面の反射率を示すグラフである。
【図6】比較例として図1のスパッタリングを行わない場合(マスク粒子なし)のプラズマエッチング後のグラファイト基板の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図7】図1のフローチャートの変更例を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る放熱材料のグラファイト基板のナノメートルオーダの凹凸構造の製造方法の第2の実施の形態を説明するためのフローチャートである。
【図9】図8のフローチャートに用いられるスパッタリング装置を示す図である。
【図10】図8のフローチャートに用いられるプラズマエッチング装置を示す図である。
【図11】図8のフローチャートを補足説明する断面図である。
【図12】図8のフローチャートの変更例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一般に、放熱材料においては、反射率Rが低下すると、放射率Iが上昇し、逆に、反射率Rが上昇すると、放射率Iが低下するという関係が成立する。この場合、光放熱つまり光放射能力を示す指数として放射率を用いるが、光の透過率がほぼ0の場合放射率I≒1-R(反射率)で表わされる。従って、理想的には、放熱材料としてたとえば可視光を含む領域及び遠赤外領域の反射率Rができるだけ0に近いものを用いると、放熱効率が大きくなることが分かる。
【0020】
図1は本発明に係る放熱材料のグラファイト基板の凹凸構造の製造方法の第1の実施の形態を説明するためのフローチャートである。ステップ101において、グラファイト基板を図2のスパッタリング/プラズマエッチング装置に投入し、グラファイト基板をAr/O2ガスを用いたスパッタリング/プラズマエッチング法によってスパッタリング/プラズマエッチングを行う。
【0021】
図2のスパッタリング/プラズマエッチング装置を説明すると、真空チャンバ200内において、グラファイト基板201はグラファイト基板201より大きいマスク材料のターゲットとしてのシリコン基板202に密着され、シリコン基板202は基板ホールダ203に密着されている。基板ホールダ203は高周波電源204に接続され、カソード電極として作用する。また、真空チャンバ200にはAr/O2ガスを導入するガス導入口205が設けられ、必要な流量の反応ガスを真空チャンバ200に導入することで反応ガス密度を適当な値に設定することができる。さらに、真空チャンバ200には真空ポンプ(図示せず)に接続されたガス排出口206が設けられており、真空チャンバ200内を適当な真空度に維持することができる。真空チャンバ200の壁及びガス導入口205は接地され、アノード電極として作用する。
【0022】
図2においては、ガス導入口205からのAr/O2ガスは矢印で示すごとくグラファイト基板201を含めたシリコン基板202全体に流れるようにされている。
【0023】
図2のスパッタリング/プラズマエッチング装置の条件は、たとえば、次のごとくである。
RFパワー:500W
圧力:6.65Pa(50mTorr)
Ar流量:50sccm
O2流量:100sccm
エッチング時間:30分
である。
【0024】
図2のスパッタリング/プラズマエッチング装置では、Ar/O2ガスのArイオンによってシリコン基板202がスパッタリングされてシリコンのマスク粒子が矢印のごとくグラファイト基板201上に堆積する。これと並行して、グラファイト基板201はAr/O2ガスによってプラズマエッチングされる。詳細には、図3の(A)に示すごとく、このマスク粒子202aはグラファイト基板201上にランダムにかつ広範囲に堆積する。これと並行して、グラファイト基板201はAr/O2ガスによってプラズマエッチングされる。最終的には、図3の(B)に示すごとく、グラファイト基板201の表面はマスク粒子202aのエッチングストッパとしての作用により高アスペクト比のナノメートルオーダの凹凸構造201aとなる。図3の(B)の高アスペクト比の微細凹凸構造のSEM写真を図4に示す。図4においては、たとえば、アスペクト比は約5μm/0.25μm=20と大きいことが認められる。
【0025】
尚、上述のグラファイト基板201は金属含浸稠密グラファイト基板とすることができる。これにより、稠密グラファイト基板の靭性がさらに大きくなるので、放熱材料としての加工性、発熱部品との密着性が向上し、発熱部品と放熱材料との間の空隙がなくなる。
【0026】
また、グラファイト基板を用いたが、グラファイト基板以外の炭素系基板、たとえばダイヤモンド基板あるいはガラス状炭素基板を用いてもよい。
【0027】
さらに、マスク材料のターゲットとしてのシリコン基板202は、SiO2、Al、Al2O3、CrあるいはNiよりなる基板でもよい。さらにまた、マスク材料のターゲットは基板ホールダ(カソード電極)203の腐食防止のためのカバー材料としても作用しており、マスク材料としての基板が基板ホールダ203を兼用してもよい。
【0028】
尚、図1のステップ101でのプラズマエッチング法は、電子サイクロトロン共鳴(ECR)エッチング法、反応性イオンエッチング(RIE)法、大気圧プラズマエッチング法等のいずれでもよく、また、処理ガスは、Ar/O2ガス以外のCO2ガス、CF4ガス、SF4ガス等のいずれでもよい。
【0029】
図5の実線に示すように、可視光を含む領域の波長0.4-2.4μmの全域に亘る平均反射率は0.5%以下と低くなる。従って、可視光を含む領域の吸収は最高となる。しかも、遠赤外領域の平均反射率も同程度と低くなる。この場合、放射温度計(KEYENCE FT-H20、商標名)を用いて測量した。表面温度が150℃のときに、グラファイト基板の放射率は0.99と高かった。この結果、プラズマエッチングされたグラファイト基板をそのまま放熱材料として用いることができる。
【0030】
尚、図1のステップ101において、マスク粒子なしでプラズマエッチングを行うと(比較例)、図6に示すように、グラファイト基板表面の凹凸構造のアスペクト比は小さくなって表面積は小さくなり、反射率が高い部分として残存する。この結果、図5の点線に示すように、反射率は1.0〜2.0%と高くなる。図6においては、たとえば、アスペクト比は約1μm/0.25μm=4と小さいことが認められる。
【0031】
図7は図1のフローの変更例を示し、図1のスパッタリング/プラズマエッチングステップ101の前に、サンドブラスト等の機械的表面研磨及び/またはCO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のハイパワーレーザ照射による表面研磨による前処理を行う。これにより、不規則的周期のたとえばミクロメートルオーダ、サブミクロメートルオーダの凹凸構造を形成する。従って、グラファイト基板の表面積が増大して放熱効率が高くなる。
【0032】
尚、図7の不規則的周期のミクロン(サブミクロン)凹凸加工ステップ701において、グラファイト基板の表面に不規則的周期のミクロメートルオーダもしくはサブミクロメートルオーダの凹みを多数形成して表面積を増大させてもよい。たとえば、レジスト層を塗布し、次いで、不規則的周期パターンを有するフォトマスクを用いたフォトリソグラフィによりレジスト層のパターンを形成し、このレジスト層のパターンを用いてグラファイト基板をH2ガス及びO2ガスを用いたプラズマエッチングたとえばRIEを行い、その後、レジスト層のパターンを除去する。また、機械的ルーリングエンジン等を用いた切削方法によって不規則的周期のミクロメートルのオーダあるいはサブミクロメートルのオーダの剣山型凹凸構造を形成して表面積を増大させることもできる。この剣山型凹凸構造はエッチングで逆剣山型の金型を形成し、これに液体状のグラファイト材料、例えばカーボンブラック等を流し込んでも形成できる。
【0033】
ここで、規則的周期のミクロメートルオーダあるいはサブミクロメートルオーダの凹凸構造は2次元フォトニック結晶的効果を起こし、遠赤外領域の反射率を高めるので、放熱効率が低くなる逆効果となり、好ましくない。
【0034】
図8は本発明に係る放熱材料のグラファイト基板の凹凸構造の製造方法の第2の実施の形態を説明するためのフローチャートである。
【0035】
始めに、ステップ801において、グラファイト基板を図9のスパッタリング装置に投入し、グラファイト基板に対してArガスを用いたスパッタリングを行う。
【0036】
図9のスパッタリング装置を説明すると、真空チャンバ900内において、グラファイト基板901は基板回転ホールダ902に密着されている。また、基板回転ホールダ902に対向してシリコンのターゲット903が設けられ、このターゲット903は高周波電源904に接続され、アノード電極として作用する。また、真空チャンバ900の上方側にはArガスを導入するガス導入口905が設けられ、真空チャンバ900の下方側には真空ポンプ(図示せず)に接続されたガス排出口906が設けられている。真空チャンバ900の壁及びガス導入口905は接地され、カソード電極として作用する。
【0037】
図9のスパッタリング装置では、Arガスによってシリコンのターゲット903がスパッタリングされてシリコンのマスク粒子902aが矢印のごとくグラファイト基板901上に堆積する。詳細には、図11の(A)に示すごとく、このマスク粒子902aはグラファイト基板901上にランダムにかつ広範囲に堆積する。
【0038】
次に、ステップ802において、マスク粒子902aが堆積したグラファイト基板901を図10のプラズマエッチング装置に投入し、グラファイト基板901をAr/O2ガスを用いたプラズマエッチングを行う。
【0039】
図10のプラズマエッチング装置を説明すると、真空チャンバ1000内において、マスク粒子902aが堆積したグラファイト基板901は基板ホールダ1003に密着されている。基板ホールダ1003は高周波電源1004に接続され、カソード電極として作用する。また、真空チャンバ1000の上方側にはAr/O2ガスを導入するガス導入口1005が設けられ、真空チャンバ1000の下方側には真空ポンプ(図示せず)に接続されたガス排出口1006が設けられている。真空チャンバ1000の壁及びガス導入口1005は接地され、アノード電極として作用する。
【0040】
図10のプラズマエッチング装置の条件は、たとえば、次のごとくである。
RFパワー:500W
圧力:6.65Pa(50mTorr)
Ar流量:50sccm
O2流量:100sccm
エッチング時間:30分
である。
【0041】
図10のプラズマエッチング装置では、Ar/O2エッチングガスによってシリコン基板902がプラズマエッチングされる。詳細には、図11の(B)に示すごとく、グラファイト基板901の表面はマスク粒子902aのエッチングストッパとしての作用により高アスペクト比のナノメートルオーダの凹凸構造901aとなる。
【0042】
尚、第1の実施の形態と同様に、上述のグラファイト基板901は金属含浸稠密グラファイト基板とすることができる。これにより、稠密グラファイト基板の靭性がさらに大きくなるので、放熱材料としての加工性、発熱部品との密着性が向上し、発熱部品と放熱材料との間の空隙がなくなる。また、グラファイト基板を用いたが、グラファイト基板以外の炭素系基板、たとえばダイヤモンド基板あるいはガラス状炭素基板を用いてもよい。さらに、マスク材料としてのシリコンのターゲット903は、SiO2、Al、Al2O3、CrあるいはNiよりなる基板でもよい。
【0043】
尚、図8のステップ802でのプラズマエッチング法は、電子サイクロトロン共鳴(ECR)エッチング法、反応性イオンエッチング(RIE)法、大気圧プラズマエッチング法等のいずれでもよく、また、処理ガスは、Ar/O2ガス以外のCO2ガス、CF4ガス、SF4ガス等のいずれでもよい。
【0044】
図12は図8のフローの変更例を示し、第1の実施の形態と同様に、図8のスパッタリングステップ801の前に、サンドブラスト等の機械的表面研磨及び/またはCO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のハイパワーレーザ照射による表面研磨による前処理を行う。これにより、不規則的周期のたとえばミクロメートルオーダ、サブミクロメートルオーダの凹凸構造を形成する。従って、グラファイト基板の表面積が増大して放熱効率が高くなる。
【0045】
尚、上述の実施の形態におけるナノメートルオーダとは約10〜500nmの範囲を示し、サブミクロメートルオーダとは約0.2〜10μmの範囲を示し、ミクロメートルオーダとは約10〜500μmの範囲を示す。
【符号の説明】
【0046】
101:スパッタリング/プラズマエッチングステップ
200、900:真空チャンバ
201、901:グラファイト基板
202:シリコン基板
202a、902a:マスク粒子
203:基板ホールダ
204、904:高周波電源
205、905:ガス導入口
206、906:ガス排出口
701:不規則的周期のミクロン(サブミクロン)凹凸加工ステップ
801:スパッタリングステップ
802:プラズマエッチングステップ
903:シリコンターゲット
1000:真空チャンバ
1003:基板ホールダ
1004:高周波電源
1005:ガス導入口
1006:ガス排出口
【技術分野】
【0001】
本発明は放熱材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱部品、たとえばコンピュータ等の電子電気機器に搭載される半導体素子、太陽電池、電気自動車等に用いられるパワーコンバータ及びインバータの冷却の問題が注目を集めている。
【0003】
上述の発熱部品の1つの冷却方法はその発熱部品が搭載された機器筐体にファンを取付け、機器筐体を冷却する。また、他の冷却方法はその発熱部品に熱伝導媒体たとえばヒートパイプ、ヒートシンク、フィン、ファン等を取付け、発熱部品からの熱を熱伝導媒体によって外部へ伝達する。このとき、発熱部品に銅、アルミニウム等の良熱伝導材料を接触させ、熱伝導材料を介して熱伝導媒体によって外部へ伝達する。
【0004】
しかしながら、近年、半導体素子等のハイパワー化及びその搭載スペースの狭小化に伴って発熱部品の発熱量が大きくなる傾向がある。特に、機器筐体が小型化すると、上述の熱伝導媒体を取付けるスペースが小さくなり、この結果、十分な熱対流をとれず、発熱部品が高温となり、素子の性能を下げるものとなる。
【0005】
上述の発熱部品の冷却を効率的に行うために種々の放熱材料が提案されている。
【0006】
従来の放熱材料としてはSiC、AlN等よりなるセラミックス基板(参照:特許文献1)、1000-2000W/m・Kの高熱伝導率のダイヤモンド基板(参照:特許文献2)、柔軟性を有するグラファイトフィルム(参照:特許文献3)、及び良放熱性、耐熱性、耐薬品性、低価格性等のカーボンナノチューブ(参照:特許文献4)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−7445号公報
【特許文献2】特開2008−222468号公報
【特許文献3】特開2009−107904号公報
【特許文献4】特開2004−10978号公報
【特許文献5】特願2009−195354号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、第1の従来の放熱材料であるセラミックス基板は、基本的に、粒径が10-100μmのセラミックスパウダを適当なバインダを用いて焼結したものであるので、発熱部品とセラミックス基板との間に空隙が生じ、密着性が悪く、この結果、放熱性が悪いという課題がある。また、セラミックス基板の熱膨張係数が非常に小さく、従って、発熱部品とセラミックス基板との熱膨張係数の差から剥離が頻繁に生じるという課題もある。さらに、セラミックス基板のSiCあるいはAlNは硬度が高く、難加工材料であるので、切出し、研磨に時間を要し、この結果、製造コストが高いという課題もある。
【0009】
また、第2の従来の放熱材料であるダイヤモンド基板は、セラミックス基板と同様に、ダイヤモンド基板の熱膨張係数が非常に小さく、従って、発熱部品とダイヤモンド基板との熱膨張係数の差から剥離が頻繁に生じるという課題がある。また、ダイヤモンド基板は硬度が高く、難加工材料であるので、切出し、研磨に時間を要し、この結果、製造コストが高いという課題もある。さらに、ダイヤモンド基板は、セラミックス基板と異なり、非常に高価な材料なので、製造コストが著しく高くなる。
【0010】
さらに、第3の従来の放熱材料であるグラファイトフィルムは炭素系材料であるので、無機系材料であるセラミックス基板及びダイヤモンド基板に比較して放熱性が劣るという課題がある。
【0011】
さらにまた、第4の従来の放熱材料であるCNTも炭素系材料であるので、無機系材料であるセラミックス基板及びダイヤモンド基板に比較して放熱性が劣るという課題がある。また、CNTの脆弱性及び疎水性から発熱部品とCNTとの間の密着性が低いという課題もある。この場合、銅等の金属基板上にCNTを分散液等に混ぜてコーティングするのが一般的であるが、金属基板とCNTとの密着性が悪く、CNTが直ぐに剥がれてしまい、あるいは、剥がれなくとも、金属基板とCNTとは原子レベルで結合しているのではないので、必然的に熱抵抗が生じ、熱伝導の損失が生じるという課題が生ずる。尚、金属基板とCNTとの間にペーストを挿入すればCNTの剥がれを防止できるが、ペースト自身が熱抵抗を生じ、熱伝導の損失を生じる。さらに、CNTが空気中において400℃以上に加熱されると、爆発的な燃焼が起こるという課題もある。
【0012】
尚、本願出願人は、既に、プラズマエッチング法等によって表面にナノメートルオーダの微細凹凸構造を形成した炭素系基板よりなる放熱材料を提案している(参照:特許文献5)。しかしながら、プラズマエッチング法等のみでは高アスペクト比の微細凹凸構造を形成することができず、従って、可視領域及び遠赤外領域の反射率を十分に低減できず、この結果、放熱効率を高くできない。
【0013】
また、ナノメートルオーダの高アスペクト比の微細凹凸構造を炭素系基板の表面に形成する方法として、フォトリソグラフィ/エッチング法が考えられる。つまり、炭素系基板上へフォトレジスト層の塗布工程、光、電子ビーム等によるマスクを介したフォトレジスト層のパターン露光工程、洗浄によるフォトレジスト層の不要部分の除去工程、炭素系基板の表面にドライエッチングもしくはウェットエッチング法によって高アスペクト比の微細凹凸構造の形成工程、及び残存するフォトレジスト層の除去工程を行う。しかしながら、工程数が多く複雑であり、また、各工程において精密な制御を必要として製造コストが高く、さらに、パターン露光工程におけるマスクを必要として製造コストが高く、さらに、また、微細凹凸構造の表面積を十分に大きくできず、従って、可視領域及び遠赤外領域の反射率を十分に低減できず、この結果、放熱効率を高くできない。
【0014】
従って、本発明の目的は、フォトリソグラフィ/エッチング法を用いることなく、表面に高アスペクト比のナノメートルオーダの微細凹凸構造をランダムかつ広範囲に形成した炭素系基板よりなる放熱材料及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の課題を解決するために、本発明に係る放熱材料は、マスク粒子が堆積した表面にナノメートルオーダの凹凸構造を形成した炭素系基板を具備する。これにより、凹凸構造が高アスペクト比となり、表面積が増加する。この結果、可視光を含む領域の波長の光線の反射率が低くなると共に、遠赤外領域の波長の光線の反射率も低くなる。
【0016】
また、本発明に係る放熱材料の製造方法は、炭素系基板の表面にマスク粒子を堆積させるマスク粒子堆積工程と、マスク粒子が堆積した炭素系基板の表面をナノメートルオーダの凹凸構造に加工する凹凸構造加工工程を具備する。凹凸構造加工工程はマスク粒子堆積工程と並行もしくは後に行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高アスペクト比の凹凸構造により表面積が大きくなるので、可視光を含む領域及び遠赤外領域の反射率が低くなり、輻射による放熱性を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る放熱材料のグラファイト基板のナノメートルオーダの凹凸構造の製造方法の第1の実施の形態を説明するためのフローチャートである。
【図2】図1のフローチャートに用いられるスパッタリング/プラズマエッチング装置を示す図である。
【図3】図1のフローチャートを補足説明する断面図である。
【図4】図1のスパッタリング/プラズマエッチング後のグラファイト基板の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】図1のスパッタリング/プラズマエッチング後のグラファイト基板の表面の反射率を示すグラフである。
【図6】比較例として図1のスパッタリングを行わない場合(マスク粒子なし)のプラズマエッチング後のグラファイト基板の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図7】図1のフローチャートの変更例を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る放熱材料のグラファイト基板のナノメートルオーダの凹凸構造の製造方法の第2の実施の形態を説明するためのフローチャートである。
【図9】図8のフローチャートに用いられるスパッタリング装置を示す図である。
【図10】図8のフローチャートに用いられるプラズマエッチング装置を示す図である。
【図11】図8のフローチャートを補足説明する断面図である。
【図12】図8のフローチャートの変更例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一般に、放熱材料においては、反射率Rが低下すると、放射率Iが上昇し、逆に、反射率Rが上昇すると、放射率Iが低下するという関係が成立する。この場合、光放熱つまり光放射能力を示す指数として放射率を用いるが、光の透過率がほぼ0の場合放射率I≒1-R(反射率)で表わされる。従って、理想的には、放熱材料としてたとえば可視光を含む領域及び遠赤外領域の反射率Rができるだけ0に近いものを用いると、放熱効率が大きくなることが分かる。
【0020】
図1は本発明に係る放熱材料のグラファイト基板の凹凸構造の製造方法の第1の実施の形態を説明するためのフローチャートである。ステップ101において、グラファイト基板を図2のスパッタリング/プラズマエッチング装置に投入し、グラファイト基板をAr/O2ガスを用いたスパッタリング/プラズマエッチング法によってスパッタリング/プラズマエッチングを行う。
【0021】
図2のスパッタリング/プラズマエッチング装置を説明すると、真空チャンバ200内において、グラファイト基板201はグラファイト基板201より大きいマスク材料のターゲットとしてのシリコン基板202に密着され、シリコン基板202は基板ホールダ203に密着されている。基板ホールダ203は高周波電源204に接続され、カソード電極として作用する。また、真空チャンバ200にはAr/O2ガスを導入するガス導入口205が設けられ、必要な流量の反応ガスを真空チャンバ200に導入することで反応ガス密度を適当な値に設定することができる。さらに、真空チャンバ200には真空ポンプ(図示せず)に接続されたガス排出口206が設けられており、真空チャンバ200内を適当な真空度に維持することができる。真空チャンバ200の壁及びガス導入口205は接地され、アノード電極として作用する。
【0022】
図2においては、ガス導入口205からのAr/O2ガスは矢印で示すごとくグラファイト基板201を含めたシリコン基板202全体に流れるようにされている。
【0023】
図2のスパッタリング/プラズマエッチング装置の条件は、たとえば、次のごとくである。
RFパワー:500W
圧力:6.65Pa(50mTorr)
Ar流量:50sccm
O2流量:100sccm
エッチング時間:30分
である。
【0024】
図2のスパッタリング/プラズマエッチング装置では、Ar/O2ガスのArイオンによってシリコン基板202がスパッタリングされてシリコンのマスク粒子が矢印のごとくグラファイト基板201上に堆積する。これと並行して、グラファイト基板201はAr/O2ガスによってプラズマエッチングされる。詳細には、図3の(A)に示すごとく、このマスク粒子202aはグラファイト基板201上にランダムにかつ広範囲に堆積する。これと並行して、グラファイト基板201はAr/O2ガスによってプラズマエッチングされる。最終的には、図3の(B)に示すごとく、グラファイト基板201の表面はマスク粒子202aのエッチングストッパとしての作用により高アスペクト比のナノメートルオーダの凹凸構造201aとなる。図3の(B)の高アスペクト比の微細凹凸構造のSEM写真を図4に示す。図4においては、たとえば、アスペクト比は約5μm/0.25μm=20と大きいことが認められる。
【0025】
尚、上述のグラファイト基板201は金属含浸稠密グラファイト基板とすることができる。これにより、稠密グラファイト基板の靭性がさらに大きくなるので、放熱材料としての加工性、発熱部品との密着性が向上し、発熱部品と放熱材料との間の空隙がなくなる。
【0026】
また、グラファイト基板を用いたが、グラファイト基板以外の炭素系基板、たとえばダイヤモンド基板あるいはガラス状炭素基板を用いてもよい。
【0027】
さらに、マスク材料のターゲットとしてのシリコン基板202は、SiO2、Al、Al2O3、CrあるいはNiよりなる基板でもよい。さらにまた、マスク材料のターゲットは基板ホールダ(カソード電極)203の腐食防止のためのカバー材料としても作用しており、マスク材料としての基板が基板ホールダ203を兼用してもよい。
【0028】
尚、図1のステップ101でのプラズマエッチング法は、電子サイクロトロン共鳴(ECR)エッチング法、反応性イオンエッチング(RIE)法、大気圧プラズマエッチング法等のいずれでもよく、また、処理ガスは、Ar/O2ガス以外のCO2ガス、CF4ガス、SF4ガス等のいずれでもよい。
【0029】
図5の実線に示すように、可視光を含む領域の波長0.4-2.4μmの全域に亘る平均反射率は0.5%以下と低くなる。従って、可視光を含む領域の吸収は最高となる。しかも、遠赤外領域の平均反射率も同程度と低くなる。この場合、放射温度計(KEYENCE FT-H20、商標名)を用いて測量した。表面温度が150℃のときに、グラファイト基板の放射率は0.99と高かった。この結果、プラズマエッチングされたグラファイト基板をそのまま放熱材料として用いることができる。
【0030】
尚、図1のステップ101において、マスク粒子なしでプラズマエッチングを行うと(比較例)、図6に示すように、グラファイト基板表面の凹凸構造のアスペクト比は小さくなって表面積は小さくなり、反射率が高い部分として残存する。この結果、図5の点線に示すように、反射率は1.0〜2.0%と高くなる。図6においては、たとえば、アスペクト比は約1μm/0.25μm=4と小さいことが認められる。
【0031】
図7は図1のフローの変更例を示し、図1のスパッタリング/プラズマエッチングステップ101の前に、サンドブラスト等の機械的表面研磨及び/またはCO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のハイパワーレーザ照射による表面研磨による前処理を行う。これにより、不規則的周期のたとえばミクロメートルオーダ、サブミクロメートルオーダの凹凸構造を形成する。従って、グラファイト基板の表面積が増大して放熱効率が高くなる。
【0032】
尚、図7の不規則的周期のミクロン(サブミクロン)凹凸加工ステップ701において、グラファイト基板の表面に不規則的周期のミクロメートルオーダもしくはサブミクロメートルオーダの凹みを多数形成して表面積を増大させてもよい。たとえば、レジスト層を塗布し、次いで、不規則的周期パターンを有するフォトマスクを用いたフォトリソグラフィによりレジスト層のパターンを形成し、このレジスト層のパターンを用いてグラファイト基板をH2ガス及びO2ガスを用いたプラズマエッチングたとえばRIEを行い、その後、レジスト層のパターンを除去する。また、機械的ルーリングエンジン等を用いた切削方法によって不規則的周期のミクロメートルのオーダあるいはサブミクロメートルのオーダの剣山型凹凸構造を形成して表面積を増大させることもできる。この剣山型凹凸構造はエッチングで逆剣山型の金型を形成し、これに液体状のグラファイト材料、例えばカーボンブラック等を流し込んでも形成できる。
【0033】
ここで、規則的周期のミクロメートルオーダあるいはサブミクロメートルオーダの凹凸構造は2次元フォトニック結晶的効果を起こし、遠赤外領域の反射率を高めるので、放熱効率が低くなる逆効果となり、好ましくない。
【0034】
図8は本発明に係る放熱材料のグラファイト基板の凹凸構造の製造方法の第2の実施の形態を説明するためのフローチャートである。
【0035】
始めに、ステップ801において、グラファイト基板を図9のスパッタリング装置に投入し、グラファイト基板に対してArガスを用いたスパッタリングを行う。
【0036】
図9のスパッタリング装置を説明すると、真空チャンバ900内において、グラファイト基板901は基板回転ホールダ902に密着されている。また、基板回転ホールダ902に対向してシリコンのターゲット903が設けられ、このターゲット903は高周波電源904に接続され、アノード電極として作用する。また、真空チャンバ900の上方側にはArガスを導入するガス導入口905が設けられ、真空チャンバ900の下方側には真空ポンプ(図示せず)に接続されたガス排出口906が設けられている。真空チャンバ900の壁及びガス導入口905は接地され、カソード電極として作用する。
【0037】
図9のスパッタリング装置では、Arガスによってシリコンのターゲット903がスパッタリングされてシリコンのマスク粒子902aが矢印のごとくグラファイト基板901上に堆積する。詳細には、図11の(A)に示すごとく、このマスク粒子902aはグラファイト基板901上にランダムにかつ広範囲に堆積する。
【0038】
次に、ステップ802において、マスク粒子902aが堆積したグラファイト基板901を図10のプラズマエッチング装置に投入し、グラファイト基板901をAr/O2ガスを用いたプラズマエッチングを行う。
【0039】
図10のプラズマエッチング装置を説明すると、真空チャンバ1000内において、マスク粒子902aが堆積したグラファイト基板901は基板ホールダ1003に密着されている。基板ホールダ1003は高周波電源1004に接続され、カソード電極として作用する。また、真空チャンバ1000の上方側にはAr/O2ガスを導入するガス導入口1005が設けられ、真空チャンバ1000の下方側には真空ポンプ(図示せず)に接続されたガス排出口1006が設けられている。真空チャンバ1000の壁及びガス導入口1005は接地され、アノード電極として作用する。
【0040】
図10のプラズマエッチング装置の条件は、たとえば、次のごとくである。
RFパワー:500W
圧力:6.65Pa(50mTorr)
Ar流量:50sccm
O2流量:100sccm
エッチング時間:30分
である。
【0041】
図10のプラズマエッチング装置では、Ar/O2エッチングガスによってシリコン基板902がプラズマエッチングされる。詳細には、図11の(B)に示すごとく、グラファイト基板901の表面はマスク粒子902aのエッチングストッパとしての作用により高アスペクト比のナノメートルオーダの凹凸構造901aとなる。
【0042】
尚、第1の実施の形態と同様に、上述のグラファイト基板901は金属含浸稠密グラファイト基板とすることができる。これにより、稠密グラファイト基板の靭性がさらに大きくなるので、放熱材料としての加工性、発熱部品との密着性が向上し、発熱部品と放熱材料との間の空隙がなくなる。また、グラファイト基板を用いたが、グラファイト基板以外の炭素系基板、たとえばダイヤモンド基板あるいはガラス状炭素基板を用いてもよい。さらに、マスク材料としてのシリコンのターゲット903は、SiO2、Al、Al2O3、CrあるいはNiよりなる基板でもよい。
【0043】
尚、図8のステップ802でのプラズマエッチング法は、電子サイクロトロン共鳴(ECR)エッチング法、反応性イオンエッチング(RIE)法、大気圧プラズマエッチング法等のいずれでもよく、また、処理ガスは、Ar/O2ガス以外のCO2ガス、CF4ガス、SF4ガス等のいずれでもよい。
【0044】
図12は図8のフローの変更例を示し、第1の実施の形態と同様に、図8のスパッタリングステップ801の前に、サンドブラスト等の機械的表面研磨及び/またはCO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のハイパワーレーザ照射による表面研磨による前処理を行う。これにより、不規則的周期のたとえばミクロメートルオーダ、サブミクロメートルオーダの凹凸構造を形成する。従って、グラファイト基板の表面積が増大して放熱効率が高くなる。
【0045】
尚、上述の実施の形態におけるナノメートルオーダとは約10〜500nmの範囲を示し、サブミクロメートルオーダとは約0.2〜10μmの範囲を示し、ミクロメートルオーダとは約10〜500μmの範囲を示す。
【符号の説明】
【0046】
101:スパッタリング/プラズマエッチングステップ
200、900:真空チャンバ
201、901:グラファイト基板
202:シリコン基板
202a、902a:マスク粒子
203:基板ホールダ
204、904:高周波電源
205、905:ガス導入口
206、906:ガス排出口
701:不規則的周期のミクロン(サブミクロン)凹凸加工ステップ
801:スパッタリングステップ
802:プラズマエッチングステップ
903:シリコンターゲット
1000:真空チャンバ
1003:基板ホールダ
1004:高周波電源
1005:ガス導入口
1006:ガス排出口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク粒子が堆積した表面にナノメートルオーダの第1の凹凸構造を形成した炭素系基板を具備する放熱材料。
【請求項2】
さらに、前記第1の凹凸構造のサイズより大きい不規則的周期の第2の凹凸構造を前記炭素系基板に形成した請求項1に記載の放熱材料。
【請求項3】
前記第2の凹凸構造のサイズがサブミクロメートルオーダ以上である請求項2に記載の放熱材料。
【請求項4】
前記炭素系基板が金属含浸グラファイト基板である請求項1に記載の放熱材料。
【請求項5】
炭素系基板の表面にマスク粒子を堆積させるマスク粒子堆積工程と、
前記マスク粒子が堆積した炭素系基板の表面をナノメートルオーダの第1の凹凸構造に加工する第1の凹凸構造加工工程と
を具備する放熱材料の製造方法。
【請求項6】
前記マスク粒子堆積工程と前記第1の凹凸構造加工工程とが並行して行われる請求項5に記載の放熱材料の製造方法。
【請求項7】
前記マスク粒子堆積工程の後に前記第1の凹凸構造加工工程が行われる請求項5に記載の放熱材料の製造方法。
【請求項8】
前記マスク粒子堆積工程がスパッタリング工程である請求項5に記載の放熱材料の製造方法。
【請求項9】
前記第1の凹凸構造加工工程がプラズマエッチング工程である請求項5に記載の放熱材料の製造方法。
【請求項10】
さらに、前記マスク粒子堆積工程及び前記第1の凹凸構造加工工程の前に、前記第1の凹凸構造のサイズより大きい不規則的周期の第2の凹凸構造を前記炭素系基板の表面に加工する工程を具備する請求項6に記載の放熱材料の製造方法。
【請求項11】
前記第2の凹凸構造のサイズがサブミクロメートルオーダ以上である請求項10に記載の放熱材料の製造方法。
【請求項12】
前記炭素系基板が金属含浸グラファイト基板である請求項5に記載の放熱材料の製造方法。
【請求項1】
マスク粒子が堆積した表面にナノメートルオーダの第1の凹凸構造を形成した炭素系基板を具備する放熱材料。
【請求項2】
さらに、前記第1の凹凸構造のサイズより大きい不規則的周期の第2の凹凸構造を前記炭素系基板に形成した請求項1に記載の放熱材料。
【請求項3】
前記第2の凹凸構造のサイズがサブミクロメートルオーダ以上である請求項2に記載の放熱材料。
【請求項4】
前記炭素系基板が金属含浸グラファイト基板である請求項1に記載の放熱材料。
【請求項5】
炭素系基板の表面にマスク粒子を堆積させるマスク粒子堆積工程と、
前記マスク粒子が堆積した炭素系基板の表面をナノメートルオーダの第1の凹凸構造に加工する第1の凹凸構造加工工程と
を具備する放熱材料の製造方法。
【請求項6】
前記マスク粒子堆積工程と前記第1の凹凸構造加工工程とが並行して行われる請求項5に記載の放熱材料の製造方法。
【請求項7】
前記マスク粒子堆積工程の後に前記第1の凹凸構造加工工程が行われる請求項5に記載の放熱材料の製造方法。
【請求項8】
前記マスク粒子堆積工程がスパッタリング工程である請求項5に記載の放熱材料の製造方法。
【請求項9】
前記第1の凹凸構造加工工程がプラズマエッチング工程である請求項5に記載の放熱材料の製造方法。
【請求項10】
さらに、前記マスク粒子堆積工程及び前記第1の凹凸構造加工工程の前に、前記第1の凹凸構造のサイズより大きい不規則的周期の第2の凹凸構造を前記炭素系基板の表面に加工する工程を具備する請求項6に記載の放熱材料の製造方法。
【請求項11】
前記第2の凹凸構造のサイズがサブミクロメートルオーダ以上である請求項10に記載の放熱材料の製造方法。
【請求項12】
前記炭素系基板が金属含浸グラファイト基板である請求項5に記載の放熱材料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図6】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図4】
【図6】
【公開番号】特開2012−151392(P2012−151392A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10613(P2011−10613)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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