説明

放熱構造

【課題】電子部品に対する良好な放熱特性を有し、基板に対する電子部品の接触圧を均一にでき、電子部品のメンテナンス性に優れた放熱構造を提供する。
【解決手段】放熱構造10は、発熱部材1の放熱面1bに接触して配置された放熱シート12と、この放熱シートの裏面12aに隙間を介して配置されたヒートシンク14と、流動性を有する状態で放熱シートとヒートシンクの間の隙間に供給された伝熱材16と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば、BGA(Ball Grid Array)を裏面に有するFPGA(Field Programmable Gate Array)などの比較的高温になり易い電子部品の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子部品の放熱構造として、電子部品との間に放熱シートを挟んでヒートシンクを重ねた構造が知られている。放熱シートは、電子部品の放熱面に接触するとともにヒートシンクに接触し、電子部品の熱をヒートシンクに伝えて放熱させる。放熱性を高めるため、放熱シートは、熱伝導率が高い材料を用いて、できるだけ薄く形成することが望ましい。
【0003】
また、放熱性を考慮して、放熱シートを電子部品の放熱面とヒートシンクの両方に密着させるため、通常は、電子部品の放熱面に放熱シートを押し付けるようにヒートシンクが取り付けられる。このため、例えば、電子部品が、その裏面に半球状のバンプをマトリックス状に有するタイプの電子部品(FPGAなど)である場合、ヒートシンクによって放熱シートを電子部品に押し付けると、バンプが潰れて基板との間で接触不良を生じてしまう可能性がある。
【0004】
さらに、半球状のバンプを有する電子部品を基板に実装する場合、実装高さに固体差を生じ易いため、ヒートシンクと電子部品の実装面との間の隙間が変動し易い。この変動する隙間を埋めるため、弾力性のある放熱シートを間に挟む方法が考えられるが、やわらかい放熱シートは、一般に、熱によって溶け易く、基板を汚してしまう可能性がある。その上、バンプの基板電極に対する押し付け力にバラつきを生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−142292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、BGAを裏面に有するFPGAにおいて、その放熱面に放熱シートを介してヒートシンクを押し付けると、BGAが基板に押し付けられて電気的な接触不良を生じる可能性がある。このため、放熱面とヒートシンクとの間にある程度の隙間を設けて弾力性のある放熱シートを挟む方法が考えられるが、BGAと基板電極との間の接触圧が不均一になるとともに、熱により放熱シートが溶けて基板が汚れる可能性がある。
【0007】
よって、電子部品に対する良好な放熱特性を有し、基板に対する電子部品の接触圧を均一にでき、電子部品のメンテナンス性に優れた放熱構造の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る放熱構造は、発熱部材の放熱面に接触して配置された放熱シートと、この放熱シートの裏面に隙間を介して配置されたヒートシンクと、流動性を有する状態で放熱シートとヒートシンクの間の隙間に供給された伝熱材と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る放熱構造を示す概略図である。
【図2】図2は、第2の実施形態に係る放熱構造を示す概略図である。
【図3】図3は、第3の実施形態に係る放熱構造を示す概略図である。
【図4】図4は、他の実施形態に係る放熱構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。
図1には、第1の実施形態に係る放熱構造10の概略図を示してある。
本実施形態において、発熱部材としての電子部品1は、例えば、基板2の実装面2aに対向する裏面1aにBGA(Ball Grid Array)3を有するFPGA(Field Programmable Gate Array)1である。FPGA1は、現場で回路を書き換え可能なLSIであり、BGA3は、半田の表面張力によって半球状に形成された電極(バンプ)である。
【0011】
放熱構造10は、FPGA1の基板2から離間した放熱面1bに接触して配置される放熱シート12を有する。放熱シート12は、FPGA1の放熱面1bより一回り大きいサイズを有する。また、本実施形態の放熱シート12は、熱により溶けることの無い比較的硬いシートである。
【0012】
また、放熱構造10は、放熱シート12のFPGA1から離間した裏面12a側に隙間Sを介して配置されるヒートシンク14を有する。ヒートシンク14は、比較的軽量で熱伝導率の高いアルミニウムや銅などの金属によって形成されている。本実施形態では、比較的接着剤が剥がれ易いアルミニウム製のヒートシンク14を用いている。
【0013】
さらに、放熱構造10は、放熱シート12の裏面12aとヒートシンク14との間の隙間Sを埋める伝熱材16を有する。本実施形態の伝熱材16は、固まる前の状態、すなわち伝熱材16を隙間Sに供給するとき、流動性を有するとともに、固まった後の状態で弾性を有する接着剤16である。言い換えると、この接着剤16は、潰すと広がる程度の流動性を有するものである。この接着剤16として、例えば、AIテクノロジー社のエポキシペースト接着剤(型番:ME7155)が用いられる。
【0014】
この放熱構造10を組み立てる場合、基板2の実装面2aに実装したFPGA1の放熱面1b上に放熱シート12を載せて、ジェル状の接着剤16を介してヒートシンク14を重ねる。そして、ヒートシンク14をネジ18によって基板2に締結固定する。締結箇所は、FPGA1の外側である。
【0015】
この放熱構造において、仮に、接着剤16を用いない場合を想定すると、FPGA1の放熱経路を確保するため、放熱シート12をFPGA1の放熱面1bに押し付けるようにヒートシンク14を基板2に締結固定する必要がある。この場合、FPGA1のBGA3に比較的大きな圧力が作用し、FPGA1と基板電極(図示省略)との間の電気的な接続状態が悪化する可能性がある。
【0016】
これに対し、本実施形態のように、放熱シート12とヒートシンク14との間の隙間Sに接着剤16を設けることで、FPGA1のBGA3に過大な圧力が作用することを防止できる。つまり、本実施形態の接着剤16は、固まった後、弾性を有するものであるため、FPGA1の放熱経路を確保した上で、BGA3に作用する不所望な応力を吸収するダンパーとして機能する。
【0017】
このため、特に、この放熱構造10を航空機などの移動体に搭載するFPGA1に取り付けた場合、機体から伝わる振動を接着剤16で吸収することができ、FPGA1の動作の信頼性を確保することができる。
【0018】
また、本実施形態によると、接着剤16を隙間Sに配置したことで、FPGA1の実装高さの変動による寸法誤差などを吸収することができ、放熱構造10の寸法精度を高めることができ、その上、BGA3に作用する圧力のバラつきも無くすことができる。つまり、この場合、接着剤16は、隙間Sの大きさやBGA3に作用する圧力をコントロール可能なインターフェースマテリアルとして機能することになる。
【0019】
さらに、本実施形態によると、接着剤16を隙間Sに配置したことで、放熱シート12とヒートシンク14を熱的に結合することができ、FPGA1の放熱性を高めることができる。特に、FPGA1の放熱面1bに段差を有する場合など、放熱面1bの段差に沿って変形する放熱シート12とヒートシンク14との間の不均一な隙間Sを接着剤16で満たすことができ、放熱面1bの形状に係わらず放熱性を高めることができる。
【0020】
その上、例えば、FPGA1の交換や修理が必要な場合など、メンテナンス性を向上させることができる。つまり、見方を変えると、FPGA1の放熱面1bには接着剤16が直接接触することがなく放熱シート12が介在されているため、接着剤16がFPGA1に付着する心配が無く、基板2の実装面2aが接着剤16で汚れる心配も無い。この場合、放熱シート12は、汚れ防止カバーとして機能することになる。
【0021】
さらに見方を変えると、弾性を有する接着剤16を隙間Sに配置することで、放熱シート12にダンピング機能を持たせる必要がなくなり、熱によって溶け易い柔らかい放熱シート12を用いる必要も無くなる。このため、溶けた放熱シート12によって基板2が汚れる心配も無くなる。
【0022】
よって、FPGA1の交換や修理が必要な場合などには、容易にヒートシンク14を取り外してFPGA1を基板2から取り外すことができ、その際に、基板2の実装面2aやFPGA1自体の汚れをきれいにする必要もなくなり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0023】
図2には、第2の実施形態に係る放熱構造20の概略図を示してある。この放熱構造20は、上述した第1の実施形態の放熱構造10と略同じ構造を有するため、ここでは上述した第1の実施形態と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0024】
本実施形態の放熱構造20は、ヒートシンク14を貫通した孔14aを有する。この孔14aは、ヒートシンク14の略中央で、接着剤16に対向する位置に設けられている。そして、この孔14aは、接着剤16を隙間Sから逃がすために設けられている。本実施形態では、1つの孔14aを設けたが、ヒートシンク14を貫通する複数の孔を設けても良い。また、孔14aの形状や大きさは、電子部品1の種類やヒートシンク14の厚さなどに応じて適当な値に設定される。
【0025】
この放熱構造20を組み立てる場合、基板2の実装面2aに実装したFPGA1の放熱面1b上に放熱シート12を載せて、ジェル状の接着剤16を介してヒートシンク14を重ねる。そして、ヒートシンク14をネジ18によって基板2に締結固定する。締結箇所は、FPGA1の外側である。
【0026】
ヒートシンク14を基板2に締結すると、ヒートシンク14が基板2に近づいて接着剤16が潰される。このとき、接着剤16は、流動性を有するため、隙間Sに沿って広がるとともに、ヒートシンク14の孔14aを介して逃げようとする。つまり、このとき、孔14aは、隙間Sに供給された余分な接着剤16を流出させるよう機能し、接着剤16に作用する圧力を逃がすことで、FPGA1の基板2に対する押し付け圧力を一定にする。
【0027】
この結果、接着剤16がFPGA1の放熱面1bに均一に濡れ広がるとともに、隙間Sが接着剤16で満たされ、放熱シート12とヒートシンク14との間の熱的な結合状態を良好にすることができ、放熱性を向上させることができる。また、孔14aの作用により、FPGA1のBGA3に過大な圧力が作用することを防止することができ、電気的な接続安定性を維持できる。
【0028】
また、このヒートシンク14の孔14aは、隙間Sに供給した接着剤16の量を目視確認するための覘き孔としての機能も有する。特に、FPGA1の放熱面1bの4角に対向する位置にそれぞれ孔14aを設けることで、放熱面1bの全体に接着剤16が濡れ広がっているか否かを確認することができ、接着剤16を放熱面1b全体に確実に塗布することができる。
【0029】
さらに、本実施形態によると、隙間Sに供給する接着剤16の適切な量を調べるため、ヒートシンク14の孔14aを介してノギスなどを挿入して隙間Sの大きさを予め調べることもできる。
【0030】
図3には、第3の実施形態に係る放熱構造30の概略図を示してある。この放熱構造30は、上述した第2の実施形態の放熱構造20と略同じ構造を有するため、ここでは上述した第2の実施形態と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0031】
本実施形態の放熱構造30は、放熱シート12のFPGA1から離間した裏面12aに、押し潰された接着剤16がはみ出すのを防止する流出防止枠12bを備えている。この流出防止枠12bは、放熱シート12と異なる材料、或いは同じ材料で形成されており、放熱シート12の周縁に沿って貼り付けられている。
【0032】
この放熱構造30を組み立てる場合、基板2の実装面2aに実装したFPGA1の放熱面1b上に、流出防止枠12bを備えた放熱シート12を載せて、ジェル状の接着剤16を流出防止枠12bの内側に供給する。そして、この接着剤16を介して、ヒートシンク14を放熱シート12の上に重ねる。そして、ヒートシンク14をネジ18によって基板2に締結固定する。
【0033】
この場合、ヒートシンク14によって押し潰された接着剤16は、放熱シート12の裏面12aに沿って濡れ広がり、流出防止枠12bで堰き止められる。これにより、接着剤16が基板2の実装面2aに付着してしまう不具合を防止することができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0034】
また、第2の実施形態の孔14aと組み合わせて使用することで、流出防止枠12bによって堰き止められた接着剤16を孔14aから逃がすことができ、接着剤16の圧力を一定に維持できる。
【0035】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の放熱構造によれば、放熱シート12とヒートシンク14との間の隙間Sに流動性を有する伝熱材16を供給することにより、電子部品1の放熱性を高めることができ、電子部品1の基板2に対する接触圧をコントロールすることができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0036】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、BGA3を有するFPGA1に取り付けた放熱構造について説明したが、これに限らず、他の電子部品に取り付ける放熱構造に本発明を適用しても良い。
【0038】
また、上述した実施形態では、1つの電子部品1に1つのヒートシンク14を取り付けた場合について説明したが、これに限らず、複数の電子部品1に共通の1つのヒートシンクを取り付ける場合にも、本発明の放熱構造を適用することができる。
【0039】
この場合、例えば、図4に示すように、個々の電子部品1ごとに分割した放熱板42を割り当てて、複数の放熱板42を1つの金属フレーム44に脱着自在に取り付けて、全ての放熱板42の裏面42aに接触するようにヒートシンク14を取り付ける。この場合、接着剤16を逃がすための孔43は、各放熱板42に設ける。
【0040】
これにより、電子部品1の点検や交換作業時において、他のメンテナンスを必要としない電子部品の放熱板42を取り外すことなく作業できる。
【符号の説明】
【0041】
1…FPGA(電子部品)、1a…裏面、1b…放熱面、2…基板、2a…実装面、3…BGA(バンプ)、10、20、30、40…放熱構造、12…放熱シート、12a…裏面、12b…流出防止枠、14…ヒートシンク、14a…孔、16…接着剤(伝熱材)、18…ネジ、42…放熱板、42a…裏面、43…孔、44…金属フレーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部材の放熱面に接触して配置される放熱シートと、
上記放熱面から離間した上記放熱シートの裏面側に隙間を介して配置されるヒートシンクと、
流動性を有する状態で上記隙間を埋めるように供給され、上記放熱シートの熱を上記ヒートシンクに伝える伝熱材と、
を有する放熱構造。
【請求項2】
上記伝熱材は、上記隙間を埋めた状態で弾性を有する請求項1の放熱構造。
【請求項3】
上記ヒートシンクは、上記隙間から上記流動性を有する状態の伝熱材を逃がすための孔を有する請求項1の放熱構造。
【請求項4】
上記隙間から上記流動性を有する状態の伝熱材がはみ出すのを防止する流出防止枠をさらに有する請求項1の放熱構造。
【請求項5】
上記ヒートシンクは、上記隙間から上記流動性を有する状態の伝熱材を逃がすための孔を有する請求項4の放熱構造。
【請求項6】
上記伝熱材は、上記隙間を埋めた状態で経時的に固まる接着剤である請求項1の放熱構造。
【請求項7】
上記接着剤は、経時的に固まった後、弾性を有する請求項6の放熱構造。
【請求項8】
上記発熱部材は、基板の配線に電気的に接続する半球状のバンプを有する請求項1の放熱構造。
【請求項9】
発熱部材の放熱面に隙間を介して配置されるヒートシンクと、
流動性を有する状態で上記隙間に供給され、上記発熱部材の熱を上記ヒートシンクに伝える伝熱材と、を有し、
上記ヒートシンクは、上記隙間から上記流動性を有する状態の伝熱材を逃がすための孔を有する放熱構造。
【請求項10】
上記隙間から上記流動性を有する状態の伝熱材がはみ出すのを防止する流出防止枠をさらに有する請求項9の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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