説明

放熱機構

【課題】クリーンルームでのシート製作に際し、工場エアやファン、冷却水を用いることなく、光源や検出器の冷却が可能な放熱機構を提供する。
【解決手段】両端が開口した通風路と、該通風路の内部もしくは該通風路に隣接して設けられた少なくとも一つの第1発熱体と、前記通風路の一端に配置され前記通風路に熱対流を生じさせる程度の発熱量を有する第2発熱体、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシート製造工程における測定部のセンサの放熱機構に関し、詳しくはクリーンルームもしくはこれに準じたエリア内でのシート製造に際して粉塵の発生を抑制した放熱機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食薬包装材、農業用フィルム、電子材料用シートや電池電極シートに至るまで多様なシートが世の中に存在する。こうしたフィルム・シート材は、フィルム・シートの製造工程において、シートそのものの厚さや、シートに塗布された塗工物の厚さをモニタすることが重要である。そのための測定センサが、製造工程の中に備え付けられ、リアルタイムで測定を行っている。
【0003】
センサの種類としては、エックス線やベータ線を用いた透過率測定法、赤外吸収法、可視光の干渉を用いる方法等があり、測定対象物の性質に合わせて選定される。
オンラインで測定する場合におけるシートの測定方法には、センサヘッドをトラバースするものとセンサヘッドを固定して測定するものがある。
【0004】
センサヘッドをトラバースするものでは、センサヘッドをフレームと呼ばれる筐体に備え付け、シートの流れ方向に対して垂直に往復運動をすることで、シートの幅方向の測定値を得ている。
また、センサヘッドを固定して測定するものでは、複数のセンサをシート幅方向に並べ、同時的に全幅方向の測定値を得ている。
【0005】
図3(a)はシート(フィルム)の物理量(厚さ、水分等)を測定するための物理量測定装置1の従来例を示す概略斜視図でセンサヘッドをトラバースする方式の装置である。ロ字状に形成されたフレーム2内にシート3が配置され矢印P方向に搬送される。上下のセンサヘッド4,5はシート3を挟んで対向して配置され、図示しない駆動手段によりフレーム2に沿って矢印A方向に同期して走査される。
【0006】
図3(b)は他の従来例を示す要部概略断面図である。上下のセンサヘッド4,5はコの字状のフレーム2aに沿って矢印A方向に同期して走査される。この例ではセンサヘッド4,5内に配置された赤外線、放射線の線源や受光素子などの発熱体からの熱を放熱するための放熱機構を備えたものである。
【0007】
即ち、上下のセンサヘッド4,5にはチューブ7a,7bが接続されており、チューブ7の一端から注入された工場エアが上下のセンサヘッド4,5の内部に導かれてエア吹出口8a,8bから噴出することによりヘッド内で発生した熱を放熱するように構成されている。
【0008】
図3(c)は更に他の従来例を示す要部概略断面図である。上下のセンサヘッド4,5はコ字状のフレーム2aに沿って矢印A方向に同期して走査される。この例では、上下のセンサヘッド4,5内にファン9a,9bを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−002509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、二次電池の電池電極シートやWEBシートをクリーンルームで製造する場合には、センサに使用する光源やセンサの冷却機構が問題となる。センサをシート幅に渡って往復させる方法では、光源の出力・検出器の検出面積が小さいため、冷却機構は小規模で足りる場合や、必要ないことがある。
【0011】
冷却が必要な場合には、図3(b,c)に示したようにファンや工場エアを冷却用に用いて積極的に冷却したい部分に吹き付けて対応している例もあるが、クリーンルームでの使用では、こうしたエアの吸入や吹き出しに対して神経質になる場合が多い。その理由は、粉塵の巻上げを助長し製品の歩留まりや品質を下げるためである。特に二次電池の電極シートでは、不純物の混入が大事故に繋がる恐れがあるため粉塵については神経を使う必要がある。
【0012】
また、上記の問題に加えて、シートの全幅に渡る測定では、センサを全幅に渡って並べることから光源の出力が大きくなり、検出器の素子数も大きくなる。通常のセンサと同じSN比を持たせるためには、その分、冷却・放熱機構も大掛かりなものになる。
【0013】
こうした要因もあり、特にクリーンルームで製造を行う様な電池電極シートでは、先に述べたたようなファンや工場エアを用いた冷却・放熱機構で対応することは望ましくない。そのため、クリーン度を下げる方向に働くファンや工場エアによる吹き出し、取扱の面倒な冷却水の使用はなるべく避けたいのが現状である。
【0014】
従って本発明は、クリーンルームでのシート製作に際し、工場エアやファン、冷却水を用いることなく、光源や検出器の冷却が可能な放熱機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の放熱機構の発明においては、
両端が開口した通風路と、該通風路の内部もしくは該通風路に接して設けられた少なくとも一つの第1発熱体と、前記通風路の一端に配置され前記通風路に熱対流を生じさせる程度の発熱量を有する第2発熱体、を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項2においては、請求項1に記載の放熱機構の発明において、
前記第2発熱体は温度制御が可能であることを特徴とする。
【0017】
請求項3においては、請求項1に記載の放熱機構の発明において、
前記通風路に開口部の大きさや、開口時間を制御する弁機構を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項4においては、請求項1に記載の放熱機構の発明において、
前記通風路はシートの物理的特性を測定するための物理量測定装置のフレーム内に設けられ、前記第1発熱体は発光素子及び受光素子の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1乃至4によれば、第2発熱体により通風路に熱対流が生じるので、通風路の内部もしくは通風路に接して設けられた第1発熱体の放熱を促進することができる。従って、冷却水や工場エア、ファンを用いることなく放熱することが可能であり、粉塵の巻上げを抑止する効果がある。また、設備ユーティリティーのコストを抑える効果もある。
【0020】
一つの機構で装置の全体を放熱することができる。これにより、装置コストとメンテナンス費用を抑制できる。冷却水・エア・ファンを用いなくてよいため、装置が単純になる。その結果、装置製作の品質・歩留まり向上とリードタイムの短縮および装置コストの抑制に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の放熱機構の実施形態の一例を示す斜視図(a)、(a)図のA−A断面図(b)である。
【図2】他の実施例を示す断面図である。
【図3】従来例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明の放熱機構の構成を示す斜視図(a)、(a)図のA−A断面図(b)である。
これらの図において、2aはコ字状のフレームであり、このフレームの下辺には例えばX線源からなる第1発熱体10aがフレーム2aに接して固定され、このフレームの上辺にはフレーム2aに接して例えばアレイ状に配置された複数の検出素子からなる第1発熱体10bが固定されている。
【0023】
12はフレーム2a内に形成された通風路であり、図に示すように、下方の側面(向かって右)に空気取り入れ口11が設けられている。そして、上方と下方のフレーム2aの通風路12は一端がフレームの右側壁12aに固定され、他端はフレームの左側壁12bとは非接触とされた仕切板12cによって2段に仕切られており、矢印で示すような空気の通路となっている。13は空気流出口14付近に固定された温度制御可能な第2発熱体(ヒータ)、KはX線源から出射した光束である。
【0024】
上述の構成において、被測定体(シート)3の物理的特性を測定するに際してはX線源10aからシート3に向けてX線が照射され、シートを透過した線量が検出素子10bによって検出され、その透過量に関連する特性が測定される。
【0025】
その場合、第1発熱体10を構成するX線源及び検出素子からは熱が発生し装置全体が加熱されることになる。
ここで、第2発熱体13を加熱すると付近の空気が加熱されて上昇し対流が発生する。その結果、空気取り入れ口から取り入れられた空気が矢印Qに沿って流れることとなり、その空気の流れによって第1発熱体(X線源及び検出素子)が放熱される。
【0026】
図2は他の実施例を示す概略断面図である図1(a,b)に示す概略断面図とは通風路12の形状と空気取り入れ口11の方向と空気流出口14の方向のみが異なっている。即ち、第2発熱体13を加熱することにより空気の対流が生じ空気取り入れ口11から取り入れた空気が第1発熱体(X線源及び検出素子)を冷却しながら矢印Q方向に流れ空気流出口14から流出する。
【0027】
なお、図では省略するが必要に応じて第2発熱体には温度制御手段を設けたり、通風路に開口部の大きさや、開口時間を制御する弁機構を備えてもよく、また通風路の形状や第1発熱体の取り付け場所も必要に応じて変更可能である。
【0028】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。例えば本発明では測定対象をクリーンルームにおけるシートとしたが、同様に塵埃や粉塵の巻上げを嫌う装置であれば適用可能である。また第1発熱体はX線源や検出素子に限るものではなく、第1発熱体は通風路に少なくとも一つあればよい。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0029】
1 物理量測定装置
2 フレーム
3 被測定物(シート)
4 上ヘッド
5 下ヘッド
7 チューブ
8 エア吹き出し口
9 ファン
10 第1発熱体
11 空気取り入れ口
12 通風路
13 第2発熱体(ヒータ)
14 空気流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口した通風路と、該通風路の内部もしくは該通風路に隣接して設けられた少なくとも一つの第1発熱体と、前記通風路の一端に配置され前記通風路に熱対流を生じさせる程度の発熱量を有する第2発熱体、を備えたことを特徴とする放熱機構。
【請求項2】
前記第2発熱体は温度制御が可能であることを特徴とする請求項1に記載の放熱機構。
【請求項3】
前記通風路に開口部の大きさや、開口時間を制御する弁機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載の放熱機構。
【請求項4】
前記通風路はシートの物理的特性を測定するための物理量測定装置のフレーム内に設けられ、前記第1発熱体は発光素子及び受光素子の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の放熱機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−243682(P2011−243682A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113105(P2010−113105)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】