説明

放送受信装置およびその制御方法

【課題】 個人認証ができない限定受信方式において、有料番組の放送を可能にする。
【解決手段】 システムコントローラ19は、通信部24を介して、番組購入情報を放送事業者100に送信し、番組購入情報の送信に応じて放送事業者100から返信された値をメモリ23に格納する。そして、番組購入情報に対応する番組を受信すると、メモリ23に格納した受信値をシードとして乱数発生器22により乱数を発生する。そして、乱数を用いて、番組の限定受信情報に含まれるスクランブル鍵を抽出し、スクランブル鍵を用いて、デスクランブラ13により番組のスクランブルを解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタルテレビ放送における有料番組の受信に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるコンテンツ保護方法は、コンテンツを暗号化する複数のスクランブル鍵をスクランブルキーリストとして放送局、ディジタルテレビ放送受信機(Integrated Receiver Decoder: IRD)それぞれが保持する。そして、スクランブルキーリストに含まれるどのスクランブル鍵でコンテンツを暗号化したかを示すインデックス値を放送信号に多重して送信する。この技術は、IRDの数が増大しても、個別にスクランブル鍵を送信せずに済み、処理負荷、トラフィックの増加を抑制する効果がある。
【0003】
一方、電波産業会標準規格「デジタルテレビ放送におけるアクセス制御方式」(ARIB STD-B25 5.1版)の第3部「受信時の制御方式(コンテンツ保護法式)」において、新たなコンテンツ保護方式(以下、新RMP方式)が追加規格化された。新RMP方式におけるIRDの識別方法は、製造メーカと機種に対して識別子を与え、個々のIRDは識別しない。
【0004】
有料番組放送は、放送事業者と個人の間の契約によって番組の購入が成立する。従って、個々のIRDを識別しない、言い換えれば、個人を特定することができない新RMP方式は、有料番組を購入することができないし、特許文献1が開示するコンテンツ保護方法を適用することもできない。
【0005】
【特許文献1】特開2001-29243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、個人認証ができない限定受信方式において、有料番組の放送を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記の目的を達成する一手段として、以下の構成を備える。
【0008】
本発明にかかる放送受信装置は、番組購入情報を放送事業者の装置に送信する送信手段と、前記番組購入情報の送信に応じて前記放送事業者の装置から返信された値を格納するメモリと、前記番組購入情報に対応する番組を受信すると、前記メモリに格納した受信値をシードとして乱数を発生する発生手段と、前記乱数を用いて、前記番組の限定受信情報に含まれるスクランブル鍵を抽出する抽出手段と、前記スクランブル鍵を用いて、前記番組のスクランブルを解除する解除手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明にかかる放送受信装置の制御方法は、番組購入情報を放送事業者の装置に送信し、前記番組購入情報の送信に応じて前記放送事業者の装置から返信された値をメモリに格納し、前記番組購入情報に対応する番組を受信すると、前記メモリに格納した受信値をシードとして乱数を発生し、前記乱数を用いて、前記番組の限定受信情報に含まれるスクランブル鍵を抽出し、前記スクランブル鍵を用いて、前記番組のスクランブルを解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、個人認証ができない限定受信方式において、有料番組の放送が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明にかかる実施例のテレビ受信装置を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
[IRDの構成]
図1は実施例のテレビ受信装置の基本構成例を示すブロック図である。
【0013】
復調器11は、図示しないチューナによって選局されたチャネルの放送信号を入力する。復調器11は、放送信号をA/D変換した後、送信側で例えばQAM (quadrature amplitude modulation)やQPSK (quadrature phase shift keying)などの変調方式で変調された信号を復調し、FEC復号器12へ出力する。
【0014】
FEC復号器12は、誤り訂正(forward error correction: FEC)機能を有し、送信側でビタビ符号などの畳込符号化やRS (Reed-Solomon)符号化された信号を復号し、デスクランブラ13へ出力する。
【0015】
デスクランブラ13は、スクランブル鍵を用いてトランスポートストリーム(TS)に含まれるコンテンツのスクランブルを解除し、スクランブルを解除したコンテンツを含むTSをTS分離器14へ出力する。
【0016】
TS分離器14は、TSの形式で多重された複数のサービス(放送番組)から、リモコンなどの放送番組選択器18によって指定されるサービスを選択する。そして、当該サービスを構成する映像信号や音声信号を分離してデパケット処理を行い、映像信号や音声信号の圧縮信号をビデオデコーダ15やオーディオデコーダ17へ出力する。また、映像信号や音声信号とともに多重されている番組特定情報(program specific information: PSI)やサービス情報(service information: SI)などの番組関連情報を分離して、番組関連情報再生器20へ出力する。さらに、限定受信に関する情報をシステムコントローラ19へ出力する。
【0017】
ビデオデコーダ15は、MPEG-2の映像高能率符号化方式で符号化された映像信号を復号し、DRAMのようなメモリに復号した映像フレームを蓄える。そして、復号した映像信号をYCbCrのディジタル信号として出力する。
【0018】
ビデオデコーダ15が出力する映像信号は、必要に応じて、後述するOSD(on-screen display)処理器21のグラフィック出力と加算器16で重畳処理される。また、IRDがアナログ映像信号を出力する場合、加算器16が出力する映像信号は、例えばNTSCエンコーダによってNTSCアナログコンポジット信号に変換される。
【0019】
オーディオデコーダ17は、MPEG-2 AAC (advanced audio coding)形式に符号化された音声信号を復号し、ディジタル音声信号をD/A変換してアナログ音声信号を出力する。
【0020】
システムコントローラ19は、上記の信号処理を適切に行うための制御を行う。例えば、放送番組選択器18などから入力されるサービス指定に従い、番組関連情報再生器20が再生するPSIを解析する。そして、解析によって得られた情報から指定されたサービス(番組)を構成する映像、音声などの各伝送識別子をTS分離器14に設定する。
【0021】
また、システムコントローラ19は、デスクランブル処理に必要な限定受信に関連する情報を解析し、スクランブル鍵をデスクランブラ13に設定する。さらに、ビデオデコーダ15、オーディオデコーダ17、番組関連情報再生器20、OSD処理器21などの周辺回路の再生動作を制御する。とくに、必要に応じて、OSD処理器21に対し、番組関連情報再生器20が保持管理するデータを加工編集して、電子番組ガイド(electric program guide: EPG)を表示するように指示する。
【0022】
乱数発生器22は、有料番組の購入者のみが知り得る情報を取得するために使用される。乱数の発生アルゴリズムは、cライブラリのrand関数などでよく、特別なアルゴリズムは必要としないが、有料放送事業者と全く同じアルゴリズムで乱数を発生する所定のアルゴリズムである必要がり、同じシードに対して、同じ乱数列を発生するものとする。
【0023】
メモリ23は、IRDが動作するために必要な設定値などを記憶する不揮発性メモリである。とくに、限定受信を行う上で重要な鍵情報や有料番組の情報に関して、外部から容易に読み出し、書き込み、変更ができない耐タンパ(tamper)構造を有するメモリである。
【0024】
通信部24は、放送事業者100などから番組を購入する際の通信を行う。
【0025】
[送信装置の構成]
次に、ディジタル放送の送信装置について、従来の送信方法と異なる部分を中心に説明する。ただし、番組コンテンツを符号化した後の、放送設備の放送アンテナ、中継所、衛星放送におけるアップリンク、放送衛星など、放送経路に関する、本発明に直接関係しない説明は省略する。なお、ディジタル放送の送信装置は、放送事業者が所有または占有し、有料番組を含む番組を放送するための送信装置である。また、以下では、放送事業者とディジタル放送の送信装置は同義として説明する。
【0026】
図2は実施例のディジタル放送の送信装置の基本構成例を示すブロック図である。
【0027】
ビデオエンコーダ108は、コンテンツの映像信号を符号化する。スクランブラ109は、スクランブル鍵発生器107が発生するスクランブル鍵を使用して、符号化された映像信号をスクランブルし、多重化器105へ出力する。
【0028】
オーディオエンコーダ110は、コンテンツの音声信号を符号化する。スクランブラ111は、スクランブル鍵発生器112が発生するスクランブル鍵を使用して、符号化された音声信号をスクランブルし、多重化器105へ出力する。
【0029】
ワーク鍵発生器114は、スクランブル鍵の暗号化に使用するワーク鍵を発生する。EMM生成器115は、ワーク鍵を暗号化し、暗号化ワーク鍵を含むEMM (entitlement management message)を生成し、多重化器105へ出力する。ECM生成器106、113は、ワーク鍵を使用してスクランブル鍵を暗号化し、乱数発生器104が発生する乱数を用いてECM (entitlement control message)-F1を生成し、多重化器105へ出力する。番組関連情報生成器116は、番組関連情報のSI/PSIを生成する。
【0030】
多重化器105は、スクランブルされた映像信号と音声信号、SI/PSI、ECM、EMMを多重化し、FEC符号化器117へ出力する。FEC符号化器117は、多重化された信号を誤り訂正符号化し、変調器118へ出力する。変調器118は、誤り訂正符号化された信号を変調する。
【0031】
詳細は後述するが、システムコントローラ119は、通信部120を介して、有料番組の購入者(実際には購入者のIRD10)との間で番組購入情報を通信する。なお、通信回線には、公衆回線やIP網などを利用する。また、個人認証器101は、番組の購入者の識別を行う。メモリ102は、番組の購入に関する情報などを記憶する。乱数初期値設定器103は、ECM-F1にスクランブル鍵を配置するための乱数のシードを決定する。乱数発生器104は、上述した所定のアルゴリズムにより乱数を発生する。
【0032】
[番組購入処理]
IRD10のユーザ(視聴者)は、放送番組選択器18を操作して、EPGの表示を指示する。この指示を受け付けたシステムコントローラ19は、番組関連情報再生器20を制御してSIからEPGを編集し、OSD処理器21を制御してEPGをモニタに表示させる。ユーザは、EPGを参照して視聴(購入)したい有料番組を選択し、放送番組選択器18を操作して当該番組の購入を指示する。
【0033】
図3は番組購入処理を説明するのフローチャートで、IRD10のシステムコントローラ19と送信装置のシステムコントローラ119が協働して行う処理である。
【0034】
システムコントローラ19は、ユーザの購入指示を受け付けると(S201)、通信部24を制御して、番組購入情報を放送事業者へ送信する(S202)。番組購入情報には、視聴者を特定する識別子、IRD10のメーカIDと機種ID、イベントIDが含まれる。なお、イベントIDは、番組を識別するユニークな番号で、SIのイベント情報テーブル(event information table: EIT)に含まれる。また、視聴者を特定する識別子は、例えば、番組を購入時の決裁方法を通信や郵便などによって事前に登録した際に発行される識別番号である。以下、視聴者IDと呼ぶ。
【0035】
通信部120を介して、番組購入情報を受信したシステムコントローラ119(放送事業者)は、個人認証器101により視聴者IDが登録されたものか否かを判定し、視聴者を認証する(S211)。個人認証器101は、上記登録に際して申請された決裁方法などのデータと、登録視聴者に割り当てた視聴者IDを対応付けるテーブルを記憶する。
【0036】
視聴者の認証に成功すると、システムコントローラ119は、番組購入情報に含まれるイベントID、メーカIDおよび機種IDに一致するレコードが番組予約テーブルに存在するか否かを判定する(S212)。そして、当該レコードが存在する場合は番組購入情報に含まれる視聴者IDを既存レコードの視聴者IDフィールドに登録する(S213)。
【0037】
また、上記のレコードが存在しない場合は、システムコントローラ119は、番組購入情報に含まれるイベントID、メーカID、機種ID、視聴者IDを記録した新規レコードを番組予約テーブルに記録する(S214)。さらに、乱数初期値設定器103を制御して、乱数発生器104がランダムな値を発生するように、乱数のシードを決定し、当該シードを新規レコードの初期値フィールドに記録する(S215)。
【0038】
図4はメモリ102に割り当てられた番組予約テーブルを示す図である。番組予約テーブルは、有料番組を示すイベントID、メーカID、機種IDおよび初期値の組み合わせと、当該番組を購入した一または複数の視聴者の視聴者IDを対応付けるテーブルである。
【0039】
次に、システムコントローラ119は、番組購入情報に対応する番組予約テーブルのレコードに記録された初期値フィールドの値を、通信部120を介して、番組購入情報を送信したIRD10に返信し(S216)、放送事業者における番組購入処理を終了する。
【0040】
システムコントローラ19は、通信部24を介して、放送事業者100から返信された値(初期値フィールドの値)を受信すると、返信された値(受信値)をイベントIDに対応付けてメモリ23に格納する(S203)。そして、OSD処理器21のグラフィック機能を用いて、有料番組の購入手続が完了した旨のメッセージをモニタに表示し(S204)、IRD10における番組購入処理を終了する。
【0041】
[有料番組の放送]
図5は一つの有料番組を放送する手順を説明するフローチャートで、システムコントローラ119の制御によって実行される手順である。
【0042】
システムコントローラ119は、放送を開始する有料番組の映像信号をビデオエンコーダ108によって符号化する(S301)。そして、スクランブル鍵発生器107によりスクランブル鍵を発生し、発生したスクランブル鍵をスクランブラ109とECM生成器106へ供給する(S302)。そして、発生したスクランブル鍵を用いてスクランブラ109により、符号化した映像信号をスクランブルし、多重化器105へ出力する(S303)。
【0043】
また、システムコントローラ119は、放送を開始する有料番組の音声信号をオーディオエンコーダ110によって符号化する(S304)。そして、スクランブル鍵発生器112によりスクランブル鍵を発生し、発生したスクランブル鍵をスクランブラ111とECM生成器113へ供給する(S305)。そして、発生したスクランブル鍵を用いてスクランブラ111により、符号化した音声信号をスクランブルし、多重化器105へ出力する(S306)。
【0044】
次に、システムコントローラ119は、放送を開始する有料番組のイベントIDと、番組予約テーブルに登録されたレコードのイベントIDを比較する(S307)。そして、放送を開始する有料番組のイベントIDが記録されたレコードからメーカID、機種ID、初期値フィールドの値を抽出する(S308)。そして、抽出した初期値フィールドの値をシードとして乱数発生器104により乱数を発生し、発生した乱数をECM生成器106、113へ供給する(S309)。
【0045】
次に、システムコントローラ119は、ワーク鍵発生器114によりワーク鍵を発生し、発生したワーク鍵をECM生成器106、113、EMM生成器115へ供給する(S310)。さらに、メモリ102の鍵テーブルから、抽出したメーカID、機種IDに対応するデバイス鍵を取り出し、EMM生成器115へ供給する(S311)。
【0046】
図6はメモリ102に割り当てられた鍵テーブルを示す図である。
【0047】
次に、システムコントローラ119は、EMM生成器115によりワーク鍵をデバイス鍵で暗号化し、暗号化ワーク鍵を含むEMMを生成し、生成したEMMを多重化器105へ出力する(S312)。また、ECM生成器106、113それぞれにより、スクランブル鍵をワーク鍵で暗号化し、乱数に基づき暗号化スクランブル鍵を含むECM-F1を生成し、生成したECM-F1を多重化器105へ出力する(S313)。
【0048】
次に、システムコントローラ119は、番組予約テーブルに記録されたすべてのレコードについて、イベントIDの一致が未チェックのレコードがあるか否かを判定し(S314)、未チェックのレコードがあれば、処理をステップS307に戻す。全レコードについてイベントIDの一致のチェックが終了すると、放送を開始する有料番組のすべての購入者向けのECM-F1の生成が完了する。
【0049】
次に、システムコントローラ119は、スクランブルされた映像信号と音声信号、ECM-F1やEMMなどの限定受信情報、並びに、番組関連情報生成部116が生成したEITなどのSI/PSIにバージョンを付加する。そして、それらを多重化器105によってTSに多重化する(S315)。なお、EITについては、本実施例に直接関係しないので、詳細な説明を省略する。
【0050】
これにより、TSは、FEC符号化器117によって符号化され、変調器118によってディジタル変調され、放送信号として送出される。放送信号の経路は、本実施例に直接関係しないので説明を省略する。また、詳細は省略するが、システムコントローラ119は、必要に応じて、上記の処理を繰り返す。
【0051】
●ECM-F1
図7は一つのワーク鍵に対応するECM-F1の構成を説明する図である。
【0052】
「プロトコル番号」には、ECMの識別子と暗号・復号のパラメータが設定されるが、本実施例においては、ECMの識別のみ使用する。「RMP事業体識別」は、通常、放送事業者の識別子が設定され、本実施例においては有料番組放送局の識別子になる。「日時」は未使用である。
【0053】
スクランブル鍵には、奇数(Odd)と偶数(Even)がある。スクランブル鍵は約一秒間隔で更新されるので、ECM-F1は、一度に二秒分のスクランブル鍵を送ることができるようになっている。それらをOddとEvenと呼ぶ。
【0054】
「スクランブル鍵ペア数」は、ECM-F1に設定されるスクランブル鍵の組数(OddとEvenで一組)を設定し、続いて「スクランブル鍵ペア数」が示す数のスクランブル鍵が並ぶ。本実施例では、乱数発生器104が発生した乱数値の位置に、ワーク鍵で暗号化したスクランブル鍵を設定し、その他の位置のスクランブル鍵の設定領域にはダミーとして任意の値を設定する。なお、任意の値は、暗号化スクランブル鍵と明らかに区別される値(例えば全バイトが00やFF)以外のランダム値にする。
【0055】
[有料番組の受信]
図8は一つの有料番組を受信する手順を説明するフローチャートで、システムコントローラ19の制御によって実行される手順である。
【0056】
放送信号の受信、復調、EFC復号の説明は省略する。デスクランブラ13は、TSパケットのヘッダデータを判別してスクランブルされた信号はスクランブル鍵を用いてスクランブルを解除し、スクランブルされていない信号はそのまま出力する。なお、スクランブルされた映像信号と音声信号は、暗号化スクランブル鍵を含むECM-F1および暗号化ワーク鍵を含むEMMよりも後から受信されるので、映像信号と音声信号のスクランブルを解除するまでにスクランブル鍵の準備が可能である。TS分離器14は、TSから限定受信情報および番組関連情報を分離する。
【0057】
システムコントローラ19は、分離された番組関連情報のEITが含むイベントIDに対応する値がメモリ23に格納されているか否かを判定する(S401)。EITが含むイベントIDに対応する値がメモリ23に格納されている場合、当該イベントIDが示す有料番組を購入したことになる。従って、システムコントローラ19は、メモリ23が格納するイベントIDに対応する値をシードとして乱数発生器22により乱数を発生する(S402)。
【0058】
次に、システムコントローラ19は、分離された限定受信情報からEMMを抽出し、デバイス鍵を使用してEMMが含む暗号化ワーク鍵を復号し、ワーク鍵を取得する(S403)。そして、限定受信情報からECM-F1を抽出し、ECM-F1の、発生した乱数に対応する位置から暗号化スクランブル鍵を取り出す(S404)。そして、ワーク鍵を使用して暗号化スクランブル鍵を復号し、復号したスクランブル鍵をデスクランブラ13に設定する(S405)。これにより、デスクランブラ13は有料番組のコンテンツのスクランブルを解除することができる。
【0059】
次に、システムコントローラ19は、番組が終了したか否かを判定する(S406)。つまり、EITが含むイベントIDが変化した場合、受信中だった番組が終了し、他の番組へ移行したことが示される。システムコントローラ19は、番組が終了した場合は処理をステップS401に戻して次の番組に対応し、番組が継続している場合は処理をステップS403に戻して有料番組の途中でワーク鍵、スクランブル鍵が変更された場合に対処する。
【0060】
このように、有料番組の購入時、放送事業者から購入者の放送受信装置へ購入番組のイベントIDに対応する値が供給される。放送受信装置は、供給された値をシードとして乱数を発生し、乱数に基づきECM-F1から暗号化スクランブル鍵を抽出する。従って、イベントIDに対応する値(シード値)は有料番組の購入情報になり、個別認証ができない限定受信方式であっても、シード値を有料番組放送に必須の個別認証の代替手段にして、有料番組の放送が可能になる。
【0061】
[他の実施例]
なお、本発明は、複数の機器(例えばコンピュータ、インタフェイス機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置、制御装置など)に適用してもよい。
【0062】
また、本発明の目的は、上記実施例の機能を実現するコンピュータプログラムを記録した記録媒体または記憶媒体をシステムまたは装置に供給する。そして、そのシステムまたは装置のコンピュータ(CPUやMPU)が前記コンピュータプログラムを実行することでも達成される。この場合、記録媒体から読み出されたソフトウェア自体が上記実施例の機能を実現することになり、そのコンピュータプログラムと、そのコンピュータプログラムを記憶する、コンピュータが読み取り可能な記録媒体は本発明を構成する。
【0063】
また、前記コンピュータプログラムの実行により上記機能が実現されるだけではない。つまり、そのコンピュータプログラムの指示により、コンピュータ上で稼働するオペレーティングシステム(OS)および/または第一の、第二の、第三の、…プログラムなどが実際の処理の一部または全部を行い、それによって上記機能が実現される場合も含む。
【0064】
また、前記コンピュータプログラムがコンピュータに接続された機能拡張カードやユニットなどのデバイスのメモリに書き込まれていてもよい。つまり、そのコンピュータプログラムの指示により、第一の、第二の、第三の、…デバイスのCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、それによって上記機能が実現される場合も含む。
【0065】
本発明を前記記録媒体に適用する場合、その記録媒体には、先に説明したフローチャートに対応または関連するコンピュータプログラムが格納される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例のテレビ受信装置の基本構成例を示すブロック図、
【図2】実施例のディジタル放送の送信装置の基本構成例を示すブロック図、
【図3】番組購入処理を説明するのフローチャート、
【図4】メモリに割り当てられた番組予約テーブルを示す図、
【図5】一つの有料番組を放送する手順を説明するフローチャート、
【図6】メモリに割り当てられた鍵テーブルを示す図、
【図7】一つのワーク鍵に対応するECM-F1の構成を説明する図、
【図8】一つの有料番組を受信する手順を説明するフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
番組購入情報を放送事業者の装置に送信する送信手段と、
前記番組購入情報の送信に応じて前記放送事業者の装置から返信された値を格納するメモリと、
前記番組購入情報に対応する番組を受信すると、前記メモリに格納した受信値をシードとして乱数を発生する発生手段と、
前記乱数を用いて、前記番組の限定受信情報に含まれるスクランブル鍵を抽出する抽出手段と、
前記スクランブル鍵を用いて、前記番組のスクランブルを解除する解除手段とを有することを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
前記番組購入情報は、少なくとも前記放送受信装置のメーカIDと機種ID、および、前記番組を特定するイベントIDを含み、前記メモリは、前記イベントIDに対応付けて前記受信値を格納することを特徴とする請求項1に記載された放送受信装置。
【請求項3】
前記放送事業者の装置は、前記メーカIDと機種ID、および、前記イベントIDに対応する、番組予約テーブルのレコードに記録された乱数のシード値を前記値として返信することを特徴とする請求項2に記載された放送受信装置。
【請求項4】
前記抽出手段は、前記限定受信情報に含まれるECM-F1の前記乱数に対応する位置から前記スクランブル鍵を抽出することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載された放送受信装置。
【請求項5】
前記抽出手段は、前記限定受信情報に含まれるEMMからワーク鍵を復号し、前記復号したワーク鍵を用いて、前記ECM-F1から抽出したスクランブル鍵を復号することを特徴とする請求項4に記載された放送受信装置。
【請求項6】
番組購入情報を放送事業者の装置に送信し、
前記番組購入情報の送信に応じて前記放送事業者の装置から返信された値をメモリに格納し、
前記番組購入情報に対応する番組を受信すると、前記メモリに格納した受信値をシードとして乱数を発生し、
前記乱数を用いて、前記番組の限定受信情報に含まれるスクランブル鍵を抽出し、
前記スクランブル鍵を用いて、前記番組のスクランブルを解除することを特徴とする放送受信装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−41332(P2010−41332A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201187(P2008−201187)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】