説明

放送受信装置及び放送受信方法

【課題】複数のB−CASカードを効率よく利用して、受信した複数の番組を効率的に復号化する
【解決手段】TS信号処理部202は、選局処理部201から入力された入力選択情報に応じて、地上放送処理部20a,20b又は衛星放送処理部21a,21bの何れかから入力される複数のTS信号を選択的に切り替える。復号情報制御部203は、カードIF部71a,71bを介してICカード97a,97bを含む複数のICカードと通信して、何れのICカードを利用するかを決定する。復号情報制御部203は、決定されたICカードからスクランブルキー(Ks)を受信する。復号部204は、このスクランブルキー(Ks)により番組をデスクランブルし、映像音声処理部205は、デスクランブルされた番組の映像情報及び音声情報に関する処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、暗号化(スクランブル)された番組情報を受信する放送受信装置及び放送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、同時に放送される番組情報を並行して複数受信することが可能な放送受信機器が普及している。この放送受信機器は、地上波や衛星によって放送される番組情報を受信する。地上波や衛星によるデジタル放送では、番組情報は暗号化(スクランブル)されて放送されている。放送受信機器は、番組の映像音声出力又は録画のために、受信した番組情報を所定の情報を利用して復号化(デスクランブル)する必要がある。
【0003】
例えば、日本でのデジタル放送のシステムにおいては、復号化の処理にB−CASカード(ICカード)が利用されている。B−CASカードは、前述した放送受信機器に備えられたカードスロットに装着されて利用される。1枚のB−CASカードで2つの番組を並行して復号化することが保証されている。
【0004】
複数の番組を同時に受信するために、番組受信の処理を行う複数の受信機能部(チューナ等)が利用されることがある。これらの受信機能部は、複数の番組の同時受信のために複数のB−CASカードを利用する。そこで、複数のB−CASカードを効率よく利用して、受信した番組を効率的に復号化するための手法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−42398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし従来では、B−CASカードが特定の受信機能部と対応付けられていた。換言すると、受信機能部は、静的に対応付けられた特定のB−CASカードを利用して受信情報の復号化の処理を実行していた。すなわち従来は、複数のB−CASカードを効率よく利用して、受信した複数の番組を効率的に復号化することができなかった。
【0007】
そこで本発明は上述した課題を解決するために、複数のB−CASカードを効率よく利用して、受信した複数の番組を効率的に復号化する放送受信装置及び放送受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態は上述した課題を解決するため、暗号化されて放送される番組の受信に係る処理を行う放送処理手段と、前記放送処理手段によって処理された前記番組の情報を復号化するための情報を生成するICカードと通信して、復号化に必要な情報を受信する複数のICカード処理手段と、前記複数のICカード処理手段のうち現在利用できるものを動的に選択して、選択したICカード処理手段によって前記復号化に必要な情報を受信するように制御する制御手段と、を具備する放送受信装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る放送受信装置であるテレビジョン受像機の構成を示すブロック図。
【図2】信号処理制御部に備えられ、受信された複数の番組のデスクランブルを効率的に実行する複数のブロックからなるシステム構成図。
【図3】複数のカードIF部及び複数のICカードの利用状態を示すカード管理情報の具体例を示す図。
【図4】地上放送の番組に対するデスクランブルにおけるICカードへのアクセス処理の動作を説明するためのフローチャート。
【図5】衛星放送の番組に対するデスクランブルにおけるICカードへのアクセス処理の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る放送受信装置であるテレビジョン受像機10の構成を示すブロック図である。
このテレビジョン受像機10は、地上放送処理部20a,20b、衛星放送処理部21a,21b、操作部31、受光部32、信号処理制御部40、表示器51、スピーカ52、HDD60、カードIF部71a,71bなどで構成されている。
【0011】
アンテナ98aは地上放送処理部20a,20bと、アンテナ98bは衛星放送処理部21a,21bと接続される。リモートコントローラ(以下、リモコンと称する)99は受光部32に対する信号を送信する。リモコン99は、赤外線や無線を利用する遠隔操作機器である。ICカード97aはカードIF部71aに、ICカード97bはカードIF部71bに装着される。本実施形態では、ICカード97a,97bとしてB−CASカードが適用される。
【0012】
テレビジョン受像機10は、地上放送処理部20a,20b、衛星放送処理部21a,21bを介して受信した番組について、番組の映像音声の出力又は番組の録画を行う。地上デジタル放送波(以下、地上放送と称する)及び衛星デジタル放送波(以下、衛星放送と称する)で放送される番組の映像音声情報は、スクランブルキー(Ks)によって暗号化されている。スクランブルキー(Ks)は、番組の映像音声情報を暗号化するための暗号化情報である。テレビジョン受像機10は、暗号化情報であると共に、暗号を解除(復号化)するための暗号解除情報であるスクランブルキー(Ks)を利用して番組の映像音声情報を復号化することで、受信した番組に対する出力又は録画を行うことができる。このような番組の映像音声情報を復号化する処理又は復号化そのものは、デスクランブルと呼ばれる。
【0013】
スクランブルキー(Ks)は、番組の映像音声情報に付随して放送されるSI情報の一部である、ECM(Entitled Control Message)及びEMM(Entitled Management Message)と、ICカード97a又は同97bに格納されているマスターキー(Km)とによって生成される。従って、ECM、EMM及びマスターキー(Km)は、暗号解除情報であるスクランブルキー(Ks)の基となる基情報である。
【0014】
すなわち、本実施形態に係るテレビジョン受像機10は、地上放送処理部20a,20b又は衛星放送処理部21a,21bを介して受信した番組を、カードIF部71aに装着されるICカード97a又はカードIF部71bに装着されるICカード97bを利用してデスクランブルし、この番組に対する出力又は録画を行う。特に本実施形態に係るデスクランブルは、番組の視聴契約を不要とする無料放送の番組に対して適用されることが好ましい。
【0015】
地上放送処理部20a,20bは、地上放送に対応するチューナ及び復調器を有する。地上放送処理部20a,20bは、アンテナ98aで受信された受信信号を受け、この受信信号に係る特定チャンネルに対する選局処理や復調処理などを実行する。また地上放送処理部20a,20bは、これらの処理を実行して得られた、番組の映像音声情報や番組名等の番組関連情報が含まれるトランスポートストリーム信号(以下、TS信号と称する)を信号処理制御部40へ出力する。この地上放送処理部20a,20bは、ECM及びEMMといったSI情報が含まれる受信信号を受け、これらの情報が含まれるTS信号を出力する。本実施形態では、地上放送処理部20a,20bの2つだけでなく、さらに多く(例えば11)の地上放送処理部が設けられる。複数の地上放送処理部は、選局処理や復調処理などを互いに独立して実行する。
【0016】
衛星放送処理部21a,21bは、衛星放送に対応するチューナ及び復調器を有する。衛星放送処理部21a,21bは、アンテナ98bで受信された受信信号を受け、この受信信号に係る特定チャンネルに対する選局処理や復調処理などを実行する。また衛星放送処理部21a,21bは、これらの処理を実行して得られた、番組の映像音声情報や番組名等の番組関連情報が含まれるTS信号を信号処理制御部40へ出力する。この衛星放送処理部21a,21bは、ECM及びEMMといったSI情報が含まれる受信信号を受け、これらの情報が含まれるTS信号を出力する。本実施形態では、衛星放送処理部21a,21bの2つだけでなく、さらに多く(例えば3)の衛星放送処理部が設けられる。複数の衛星放送処理部は、選局処理や復調処理などを互いに独立して実行する。
【0017】
操作部31は、複数の操作キーを有し、複数の操作キーそれぞれに応じた操作情報を信号処理制御部40へ出力する。同様に受光部32は、リモコン99から送信された信号を受光して、受光した信号に応じた操作情報を信号処理制御部40へ出力する。この操作部31及び/又はリモコン99は、受信するチャンネルを切り替えるためのチャンネルキー、番組を録画するための録画開始キーを含む複数のキーを備えている。
【0018】
信号処理制御部40は、信号処理制御部40自身に備えられた各ブロックや信号処理制御部40に接続された各ブロックを利用して様々な処理を実行する。例えば信号処理制御部40は、操作部31又は、受光部32を介したリモコン99からの操作情報に応じて、複数の放送波処理部のうちの何れかからのTS信号の入力を選択する。また信号処理制御部40は、選択した入力ソースから入力された番組のTS信号に基づいてデスクランブルして、表示器51へ映像情報を出力すると共にスピーカ52へ音声情報を出力する。信号処理制御部40は、デスクランブルした番組の録画処理を実行する。信号処理制御部40は、映像情報及び音声情報の出力と録画処理とを独立して実行することができる。信号処理制御部40は、カードIF部71aに装着されるICカード97a又はカードIF部71bに装着されるICカード97bを利用してデスクランブルする。
【0019】
本実施形態では信号処理制御部40は、ICカード97a又はICカード97bの何れかを効率的に利用してデスクランブルする。また信号処理制御部40は、何れかのICカードを利用してデスクランブルした番組に対する出力又は録画を行う。この信号処理制御部40は、受信した複数の番組のTS信号に対して並行して様々な処理を実行することができる。
【0020】
表示器51は、信号処理制御部40から入力された映像信号を表示する表示パネルを含む表示モジュールである。表示器51には、例えばLCD(Liquid Crystal Display)に代表される薄型平面ディスプレイを適用することができる。本実施形態では表示器51は、ICカード97a又はICカード97bの何れかを利用してデスクランブルされた番組の映像信号を表示する。
【0021】
スピーカ52は、信号処理制御部40から入力された音声信号を出力する。スピーカ52として、左右チャンネル用に2つ、更には、入力された音声信号の低音域を出力するためのサブウーハが設けられてもよい。
【0022】
HDD60は、信号処理制御部40で実行される録画処理のための記録装置として利用される。HDD60は、磁気ディスクを利用するドライブ装置でなく、記憶媒体である半導体素子に対して情報をリード又はライトするSSD(Solid State Drive)であってもよい。またこのHDD60は、テレビジョン受像機10の外部に備えられても良い。
【0023】
カードIF部71a,71bは、ICカード97a,97bを装着するため機構部、及びICカード97a,97bと通信するための通信処理部を有する。カードIF部71a,71bは、ICカード97a,97bと通信して、信号処理制御部40で実行されるデスクランブルのために必要な情報を送受信する。本実施形態では、カードIF部71a,71bの2つだけでなく、さらに多く(例えば6)のカードIF部が設けられる。複数のカードIF部は、複数の番組のデスクランブルのために互いに独立して利用される。このICカード97a,97bは、暗号解除情報を生成する情報生成部品として構成されている。
【0024】
テレビジョン受像機10は、前述した複数のブロックだけでなく、以下に説明するブロックを備えてもよい。
例えば、テレビジョン受像機10の外部から受けた所定フォーマットの規格に準拠した態様の信号から必要な情報を抽出する情報抽出部を有し、外部とのインターフェース機能を実行するブロックが備えられてもよい。所定フォーマットは、HDMI(登録商標)規格、USB規格又はIEEE1394規格などである。このブロックは、これらの規格に準じた接続端子を介して接続された外部機器や、HDD、メモリカードなどの記録媒体から受けた情報から抽出したTS信号を信号処理制御部40へ出力する。信号処理制御部40は、入力ソースの一つとして、このブロックから入力されるTS信号を選択することも可能である。
【0025】
またテレビジョン受像機10は、LAN又はWANなどのネットワークを介して通信を行う通信処理部を有するネットワークIF機能を実現するブロックを備えてもよい。このブロックは、接続したネットワーク先の特定サーバや記録媒体などの情報提供源から、コンテンツの映像音声情報やコンテンツ関連情報が含まれる信号を取得して、この信号に基づくTS信号を信号処理制御部40へ出力する。信号処理制御部40は、入力ソースの一つとして、このブロックから入力されるTS信号を選択することも可能である。
【0026】
さらにテレビジョン受像機10は、光ディスクに対してリード又はライトするODDを備えてもよい。
前述したとおり、本実施形態に係る構成が放送受信装置としてのテレビジョン受像機10に適用された例を説明している。しかし本実施形態に係る構成が、パーソナルコンピュータ、携帯型移動端末装置、HDD/光ディスクレコーダ、セットトップボックスなどの放送受信装置に適用された実施形態であっても構わない。すなわち本発明に係る実施形態は、暗号化(スクランブル)された番組情報を受信する放送受信装置であれば適用可能である。
【0027】
このような構成により、本発明の実施形態に係るテレビジョン受像機10は、テレビジョン受像機10自身に備えられる複数のブロックを利用して、受信された番組の情報を効率的にデスクランブルして、当該番組に対する出力又は録画を行う。すなわちテレビジョン受像機10は、複数のカードIF部に装着される複数のICカードを効率的に利用して複数の番組の情報をデスクランブルする。従って、本実施形態に係るテレビジョン受像機10によれば、B−CASカードを効率よく利用して、受信した複数の番組を効率的に復号化することができる。これは主に、信号処理制御部40が複数の処理を実行することで実現される。
【0028】
次に、図2を用いて、図1で説明した信号処理制御部40に備えられ、受信された複数の番組のデスクランブルを効率的に実行する複数のブロックを説明する。
図2は、信号処理制御部40に備えられ、受信された複数の番組のデスクランブルを効率的に実行する複数のブロックからなるシステム構成図である。
前述したとおり、信号処理制御部40は、ICカード97a,97bを含む複数のICカードの何れかを効率的に利用してデスクランブルする。また信号処理制御部40は、何れかのICカードを利用してデスクランブルした番組に対する出力又は録画を行う。
【0029】
信号処理制御部40は、選局処理部201、TS信号処理部202、復号情報制御部203、復号部204、映像音声処理部205などを備えている。
選局処理部201は、操作部31や受光部32を介したリモコン99からの操作入力情報に応じて、地上放送処理部20a,20b又は衛星放送処理部21a,21bに、特定のチャンネルの番組を選局するよう制御する。また選局処理部201は、制御した地上放送処理部20a,20b又は衛星放送処理部21a,21bの何れかからのTS信号の入力を選択するための入力選択情報をTS信号処理部202へ出力する。さらに選局処理部201は、選局するチャンネルに関する情報であるチャンネル情報を復号情報制御部203へ通知する。
【0030】
TS信号処理部202は、選局処理部201から入力された入力選択情報に応じて、地上放送処理部20a,20b又は衛星放送処理部21a,21bの何れかから入力されるTS信号を選択的に切り替える入力選択処理を実行する。またTS信号処理部202は、切り替えた入力ソースから入力されたTS信号に対して分離処理を施し、分離した映像情報と音声情報とを復号部204へ出力する。さらにTS信号処理部202は、入力されたTS信号から分離したSI情報に含まれるECM及びEMMを抽出し、抽出したECM及びEMMを復号情報制御部203へ出力する。
【0031】
復号情報制御部203は、カードIF部71a,71bを介してICカード97a,97bを含む複数のICカードと通信して、何れのICカードを利用するかを決定する。復号情報制御部203は、TS信号処理部202から入力されたECM及びEMMを、カードIF部71a,71bを介してICカード97a,97bの何れかへ送信する。また復号情報制御部203は、ECM及びEMMを送信したICカードから暗号解除情報であるスクランブルキー(Ks)をカードIF部71a,71bを介して受信する。この復号情報制御部203は、受信したスクランブルキー(Ks)を復号部204へ出力する。また復号情報制御部203は、選局処理部201から入力されたチャンネル情報に応じてICカード97a,97bの何れを利用するかを判断した結果に基づいて、適切なICカードからスクランブルキー(Ks)を受信する。さらに復号情報制御部203は、複数のカードIF部及び複数のICカードの利用状態をメモリ(不図示)を利用して管理する。
【0032】
復号部204は、TS信号処理部202から入力された映像情報と音声情報とを、復号情報制御部203から入力されたスクランブルキー(Ks)を利用して復号し、復号された映像情報と音声情報とを映像音声処理部205へ出力する。
【0033】
映像音声処理部205は、復号部204から入力された、復号された映像情報と音声情報とに対してMPEG復号化演算処理などを施した映像信号及び音声信号を生成し、生成した映像信号を表示器51へ、音声信号をスピーカ52へ出力する。また映像音声処理部205は、復号部204から入力された、復号された映像情報と音声情報とに基づく記録情報をHDD60に記録する。これはすなわち番組の録画処理である。映像音声処理部205は、映像信号及び音声信号の出力と録画処理とを独立して実行することができる。
【0034】
すなわち、これら複数のブロックによるシステム構成により、信号処理制御部40は、ICカード97a,97bを含む複数のICカードの何れのICカードを利用するかを決定する。そして信号処理制御部40は、決定したICカードから受信したスクランブルキー(Ks)を利用して受信された番組をデスクランブルする。従って、本実施形態に係るテレビジョン受像機10によれば、ICカードであるB−CASカードを効率よく利用して、受信した複数の番組を効率的に復号化することができる。
【0035】
次に、図3を用いて、復号情報制御部203によって管理される、複数のカードIF部及び複数のICカードの利用状態を示すカード管理情報を説明する。
図3は、複数のカードIF部及び複数のICカードの利用状態を示すカード管理情報の具体例を示す図である。このカード管理情報の具体例は、ICカードとしてB−CASカードが適用された例を示している。
【0036】
カード管理情報は、青カード、赤カード、及びスロットの3つのカテゴリで管理されている。青カードは地上放送の番組のデスクランブル専用のICカードである。赤カードは、地上放送及び衛星放送(BS放送とCS放送)の何れの番組のデスクランブルにも利用できるICカードである。スロットはカードIF部71a,71b,の一部として構成される。
【0037】
図3に示したカード管理情報の例では、青カード及び赤カードのカテゴリによる管理において、青カードはスロット番号[1],[2],[4]に装着されている。また赤カードはスロット番号[3],[5]に装着されている。つまり、青カードの合計数である青カード総数は3、赤カードの合計数である赤カード総数は2である。青カード総数及び赤カード総数は都度更新される。
【0038】
また、スロット番号[1]の青カード、及びスロット番号[3]の赤カードは、スクランブルキー(Ks)の生成処理中であることを示す“アクセス中”の状態である。スロット番号[2]の青カード、スロット番号[4]の青カード、及びスロット番号[5]の赤カードは、スクランブルキー(Ks)の生成処理中ではないことを示す“未アクセス”の状態である。アクセス状態は都度更新される。
【0039】
また、図3に示したカード管理情報の例では、スロットのカテゴリによる管理において、スロット番号[1]〜[5]はカードが装着されていることを示す“カード有り”の状態である。スロット番号[6]はカードが装着されていないことを示す“カード無し”の状態である。
【0040】
すなわち、スロット番号[1]〜[6]の何れかのスロットに青カード又は赤カードが装着されると、青カード又は赤カードのカテゴリによる管理に対して、該当するカードに関する情報が追加される。逆に、スロット番号[1]〜[6]の何れスロットから青カード又は赤カードが装着されると、青カード又は赤カードのカテゴリによる管理に対して、該当するカードに関する情報が削除される。
【0041】
また、青カード[1]〜[3]及び赤カード[1]〜[2]といったカード番号は、カードの挿抜順やスロット番号順で決定されることが好ましいが、ランダムに決定されても構わない。
【0042】
このようにしてカード管理情報は、青カード又は赤カードのスロットへの挿抜状態や、装着された青カード又は赤カードの処理状態を都度更新する。情報の更新は、所定周期のクロックに基づいたタイミングや、テレビジョン受像機10の起動時などに行われる。復号情報制御部203は、このカード管理情報を用いて、カードIF部71a,71bを介してICカード97a,97bを含む複数のICカードと通信して、何れのICカードを利用するかを決定することが可能となる。
【0043】
次に、図4を用いて、地上放送の番組に対するデスクランブルにおけるICカードへのアクセス処理の動作を説明する。
図4は、地上放送の番組に対するデスクランブルにおけるICカードへのアクセス処理の動作を説明するためのフローチャートである。
ICカードへのアクセス処理は、地上放送の番組のデスクランブルに利用されるECMを取得したことで起動する。まず復号情報制御部203は、更新されたECMをTS信号処理部202から取得する(S401)。変数“retry”に値“0”が設定され(S402)、変数“n”に値“1”が設定される(S403)。そして前述したカード管理情報により、青カード[n]が“アクセス中”の状態であるか否か(通信中か否か)が判定される(S404)。
【0044】
“アクセス中”の状態ではない場合(S404のNo)、復号情報制御部203はカード管理情報に対して、青カード[n]を“アクセス中”の状態に設定する(S405)。復号情報制御部203は青カード[n]に対して、取得したECMと共にスクランブルキー(Ks)の生成を示すコマンドを発行する(S406)。そして、青カード[n]からのレスポンスとしてスクランブルキー(Ks)が取得される(S407)。復号情報制御部203はカード管理情報に対して、青カード[n]を“未アクセス”の状態に設定して(S408)、ICカードへのアクセス処理は終了する。つまり要約すると、復号情報制御部203は、通信中でない青カードを選択してデスクランブルキー(Ks)を取得した後に、この青カードとの通信を絶つ。
【0045】
一方、青カード[n]が“アクセス中”の状態である場合(S404のYes)、変数“n”に値“n+1”が設定され(S409)、変数“n”が青カード総数よりも大きいか否かが判定される(S410)。変数“n”が青カード総数よりも大きくない場合(S410のNo)、再び、青カード[n]が“アクセス中”の状態であるか否かが判定され(S404)、これ以降での青カードに関する処理が実行される。
【0046】
変数“n”が青カード総数よりも大きい場合(S410のYes)、変数“m”に値“1”が設定され(S411)、前述したカード管理情報により、赤カード[m]が“アクセス中”の状態であるか否か(通信中か否か)が判定される(S412)。“アクセス中”の状態ではない場合(S412のNo)、復号情報制御部203はカード管理情報に対して、赤カード[m]を“アクセス中”の状態に設定する(S413)。復号情報制御部203は赤カード[m]に対して、取得したECMと共にスクランブルキー(Ks)の生成を示すコマンドを発行する(S414)。そして、赤カード[m]からのレスポンスとしてスクランブルキー(Ks)が取得される(S415)。復号情報制御部203はカード管理情報に対して、赤カード[m]を“未アクセス”の状態に設定して(S416)、ICカードへのアクセス処理は終了する。つまり要約すると、復号情報制御部203は、通信中でない赤カードを選択してデスクランブルキー(Ks)を取得した後に、この赤カードとの通信を絶つ。
【0047】
一方で、赤カード[m]が“アクセス中”の状態である場合(S412のYes)、変数“m”に値“m+1”が設定され(S417)、変数“m”が赤カード総数よりも大きいか否かが判定される(S418)。変数“m”が赤カード総数よりも大きくない場合(S418のNo)、再び、赤カード[m]が“アクセス中”の状態であるか否かが判定され(S412)、これ以降での赤カードに関する処理が実行される。
【0048】
変数“m”が赤カード総数よりも大きい場合(S418のYes)、変数“retry”に値“retry+1”が設定され(S419)、変数“retry”が値“5”よりも大きいか否かが判定される(S420)。変数“retry”が値“5”よりも大きくない場合(S420のNo)、再び、変数“n”に値“1”が設定され(S403)、これ以降での青カードに関する処理が実行される。一方で、変数“retry”が値“5”よりも大きい場合(S420のYes)、青カード及び赤カードに対するコマンド発行は不可であると判定されて(S421)、ICカードへのアクセス処理は終了する。
【0049】
以上説明した、地上放送の番組に対するデスクランブルにおけるICカードへのアクセス処理の概略は以下のようになる。
(1)更新されたECMが取得される。
(2;case1)青カード[1]が“未アクセス”である場合、復号情報制御部203は以下の処理を行う。
(a)青カード[1]を“アクセス中“に設定する。
(b)青カード[1]にECMに係るコマンドを発行する。
(c)青カード[1]からのレスポンスを取得する。(このレスポンスにスクランブルキー(Ks)が含まれる)
(d)青カード[1]を“未アクセス”に設定する。
(2;case2)青カード[1]が“アクセス中”である場合、復号情報制御部203は以下の処理を行う。
(a)青カード[2]〜[n]の状態を確認し、“未アクセス”である青カードにECMに係るコマンドを発行する。
(b)他の青カードがすべて“アクセス中”である場合、赤カード[1]〜[m]の状態を確認する。
赤カード[1]〜[m]のうち、“未アクセス”である赤カードにECMに係るコマンドを発行する。
(3)“未アクセス”の青又は赤カードが見つかるまで、上記(2)の処理を数回繰り返す。(図4に示した具体例の場合は5回)
何れの青又は赤カードにもアクセスできなければ、地上放送に対する出力及び録画ができなくなる。
このようにして、地上放送の番組に対するデスクランブルにおけるICカードへのアクセス処理は、スロットに装着されている青及び赤カードの中から“未アクセス”の青又は赤カードが動的に選択され、選択された青又は赤カードによって、スクランブルキー(Ks)が生成される。すなわち、利用していた青又は赤カードが抜かれた場合でも、他の青又は赤カードが利用されるので、スクランブルキー(Ks)の生成が継続されることが可能となる。この処理は、復号情報制御部203がカード管理情報を利用しながら実行される。
【0050】
次に、図5を用いて、衛星放送の番組に対するデスクランブルにおけるICカードへのアクセス処理の動作を説明する。
図5は、衛星放送の番組に対するデスクランブルにおけるICカードへのアクセス処理の動作を説明するためのフローチャートである。
ICカードへのアクセス処理は、衛星放送の番組のデスクランブルに利用されるECMを取得したことで起動する。まず復号情報制御部203は、更新されたECMをTS信号処理部202から取得する(S501)。変数“retry”に値“0”が設定され(S502)、変数“m”に値“1”が設定される(S503)。そして前述したカード管理情報により、赤カード[m]が“アクセス中”の状態であるか否か(通信中か否か)が判定される(S504)。
【0051】
“アクセス中”の状態ではない場合(S504のNo)、復号情報制御部203はカード管理情報に対して、赤カード[m]を“アクセス中”の状態に設定する(S505)。復号情報制御部203は赤カード[m]に対して、取得したECMと共にスクランブルキー(Ks)の生成を示すコマンドを発行する(S506)。そして、赤カード[m]からのレスポンスとしてスクランブルキー(Ks)が取得される(S507)。復号情報制御部203はカード管理情報に対して、赤カード[m]を“未アクセス”の状態に設定して(S508)、ICカードへのアクセス処理は終了する。つまり要約すると、復号情報制御部203は、通信中でない赤カードを選択してデスクランブルキー(Ks)を取得した後に、この赤カードとの通信を絶つ。
【0052】
一方で、赤カード[m]が“アクセス中”の状態である場合(S504のYes)、変数“m”に値“m+1”が設定され(S509)、変数“m”が赤カード総数よりも大きいか否かが判定される(S510)。変数“m”が赤カード総数よりも大きくない場合(S510のNo)、再び、赤カード[m]が“アクセス中”の状態であるか否かが判定され(S504)、これ以降での赤カードに関する処理が実行される。
【0053】
変数“m”が赤カード総数よりも大きい場合(S510のYes)、変数“retry”に値“retry+1”が設定され(S511)、変数“retry”が値“5”よりも大きいか否かが判定される(S512)。変数“retry”が値“5”よりも大きくない場合(S512のNo)、再び、変数“m”に値“1”が設定され(S503)、これ以降での赤カードに関する処理が実行される。一方で、変数“retry”が値“5”よりも大きい場合(S512のYes)、赤カードに対するコマンド発行は不可であると判定されて(S513)、ICカードへのアクセス処理は終了する。
【0054】
以上説明した、地上放送の番組に対するデスクランブルにおけるICカードへのアクセス処理の概略は以下のようになる。
(1)更新されたECMが取得される。
(2;case1)赤カード[1]が“未アクセス”である場合、復号情報制御部203は以下の処理を行う。
(a)赤カード[1]を“アクセス中“に設定する。
(b)赤カード[1]にECMに係るコマンドを発行する。
(c)赤カード[1]からのレスポンスを取得する。(このレスポンスにスクランブルキー(Ks)が含まれる)
(d)赤カード[1]を“未アクセス”に設定する。
(2;case2)赤カード[1]が“アクセス中”である場合、復号情報制御部203は以下の処理を行う。
(a)赤カード[2]〜[m]の状態を確認し、“未アクセス”である赤カードにECMに係るコマンドを発行する。
(3)“未アクセス”の赤カードが見つかるまで、上記(2)の処理を数回繰り返す。(図5に示した具体例の場合は5回)
何れの赤カードにもアクセスできなければ、衛星放送に対する出力及び録画ができなくなる。
このようにして、地上放送の番組に対するデスクランブルにおけるICカードへのアクセス処理は、スロットに装着されている赤カードの中から“未アクセス”の赤カードが動的に選択され、選択された赤カードによって、デスクランブルキー(Ks)が生成される。すなわち、利用していた赤カードが抜かれた場合でも、他の赤カードが利用されるので、スクランブルキー(Ks)の生成が継続されることが可能となる。この処理は、復号情報制御部203がカード管理情報を利用しながら実行される。
【0055】
以上説明したように本実施形態によれば、受信した地上放送及び衛星放送の番組の出力又は録画のために、複数のICカードの中から何れのICカードを利用するかが決定される。そして決定されたICカードによって生成されたスクランブルキー(Ks)が利用されて、受信された番組がデスクランブルされる。このことで、デスクランブルのためのスクランブルキー(Ks)を取得する時間を短縮することができる。また利用していたICカードが抜かれた場合でも、他のICカードが利用されるので、スクランブルキー(Ks)の生成が継続されることが可能となる。従って、本実施形態に係るテレビジョン受像機10によれば、ICカードであるB−CASカードを効率よく利用して、受信した複数の番組を効率的に復号化することができる。
【0056】
なお本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。また、前述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよく、さらに、異なる実施形態に係る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0057】
10…テレビジョン受像機、20a,20b…地上放送処理部、21a,21b…衛星放送処理部、31…操作部、32…受光部、40…信号処理制御部、51…表示器、52…スピーカ、60…HDD、71a,71b…カードIF部、97a,97b…ICカード、98a,98b…アンテナ、99…リモコン、201…選局処理部、202…TS信号処理部、203…復号情報制御部、204…復号部、205…映像音声処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗号化されて放送される番組の受信に係る処理を行う放送処理手段と、
前記放送処理手段によって処理された前記番組の情報を復号化するための情報を生成するICカードと通信して、復号化に必要な情報を受信する複数のICカード処理手段と、
前記複数のICカード処理手段のうち現在利用できるものを動的に選択して、選択したICカード処理手段によって前記復号化に必要な情報を受信するように制御する制御手段と、
を具備する放送受信装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数のICカード処理手段のうち、前記通信がされていないものを選択する請求項1記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、動的に選択した前記複数のICカード処理手段から前記復号化に必要な情報を受信した後に、当該ICカード処理手段との通信を絶つ請求項1又は2記載の放送受信装置。
【請求項4】
前記放送処理手段は、地上放送又は衛星放送によって放送される番組の受信に係る処理を行う請求項1乃至3の何れか1項記載の放送受信装置。
【請求項5】
暗号化されて放送される番組の受信に係る処理を行い、
前記処理された前記番組の情報を復号化するための情報を生成する複数のICカードと通信して、復号化に必要な情報を受信し、
前記複数のICカードのうち現在利用できるものを動的に選択して、選択したICカードによって前記復号化に必要な情報を受信するように制御する、
放送受信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−34231(P2012−34231A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172744(P2010−172744)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】