説明

放電プラズマ発生方法

【課題】放電プラズマの電子密度を向上させ、電子温度を低減させるような放電プラズマ発生方法を提供すること。
【解決手段】ガス供給孔2から原料ガスをチャンバー1に導入する。電極4,5間に静電誘導サイリスタ素子を用いた電源3からパルス電圧を印加することによって放電プラズマを発生させる。パルス電圧のデューティー比(%)=(パルスのオン時間の和/パルス周期)X100を0.001%以上、8.0%以下に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電プラズマ発生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、パルス幅が1000nsec以下のナノパルス電源を使用し、ダイヤモンドライクカーボン膜を大気圧下で成膜することを開示している。
【特許文献1】特開2004-270022
【0003】
特許文献2においては、パルス放電のオフ時間を0.5 ms ~30ms以下にてパルス放電を維持することが記載されている。パルス電圧のデューティー比が10%以上と大きく、かついわゆるマイクロ波(2.45GHzの高周波)をパルス化している。
【特許文献2】特開平9-312280
【0004】
特許文献3においては、変調周期を10〜500μsとし、かつデューティー比が10~80%であることを述べている。本方法においても、プラズマ発生源は0.4~-13.56MHzの高周波をパルス化したものをエッチングプロセスに用いている。
【特許文献3】特許第3705977
【0005】
特許文献4においては、高周波の繰り返し周期を10~100kHzとし、かつデユーティー比を40~60%としたプラズマ発生方法を成膜に利用している。
【特許文献4】特開2005-159049
【0006】
特許文献5においては、電子温度が0.25~1eVの範囲であるプラズマ源が記載されているが、このプラズマ源にはマイクロ波(0.3~1GHz)が利用されている。
【特許文献5】特開2000-124190
【0007】
特許文献6において、極性の反転するパルスを重畳した電力を供給し、電子温度3eV以下、かつ2×10cm−3以下を得ているが、パルスのオフ時間を制御しておらず、電子密度が非常に低い。
【特許文献6】特許第3639795
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
薄膜堆積やエッチング、不純物注入プロセスにおいては、高電子密度プラズマが必要不可欠である。また、膜質制御用やプラズマ雰囲気内での基板へのダメージ低減のためには、低電子温度のプラズマが注目を浴びている。しかし、高電子密度で低電子温度の放電プラズマを生成させ、維持することは困難である。
【0009】
本発明の課題は、放電プラズマの電子密度を向上させ、電子温度を低減させるような放電プラズマ発生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、処理ガスにパルス電圧を印加することによって放電プラズマを発生させるプラズマ発生方法であって、
パルス電圧のデューティー比を0.001%以上、8.0%以下に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
従来技術においては、一般的に高周波電源をパルス化した電源を用いてプラズマ発生を行っている。このため、パルスのオフ時間制御を実施している例はなく、いずれもパルスのデューティー比が高い。これは、高周波電源をパルス化したタイプの電源では、パルスのデューティー比が高いためと考えられる。
【0012】
本発明者は、放電プラズマを生成し、維持させるためのパルス電圧のデューティー比を著しく低下させ、パルスの休止時間を長くすることを試みた。この結果、プラズマの電子密度を高く維持できる条件下で電子温度を著しく低下させ得ることを見いだし、本発明に到達した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、パルス電圧のデューティー比は、0.001%以上、8.0%以下に制御する。これを8.0%以下とすることによって、放電プラズマの電子密度を高く維持しつつ、電子温度を低くすることができる。本発明の観点からは、このデューティー比を5%以下とすることが好ましく、3%以下とすることが更に好ましく、1%以下とすることが一層好ましい。このデューティー比は実際上は0.001%未満とすることは難しい。
【0014】
バルス電圧のデューティー比とは次の式で表される。
デューティー比(%)=(パルスのオン時間の和/パルス周期)×100
「パルスのオン時間」とは、パルスの立ち上がり開始からパルスの立ち下り終了までの時間を指す。
「パルスのオン時間の和」とは、1周期に含まれるすべてのパルスのオン時間の合計値である。
例えば、周期1000μsecのオン時間1μsecの正パルスが印加されている場合は、デューティー比は、(1μsec/1000μsec)×100=0.1%である。
1周期内に正パルスと負パルスとが一つごと含まれている場合には、正パルスのオン時間と負パルスのオン時間との合計値を1周期で除する。例えば、周期1000μsecにオン時間1μsecの正パルスと2μsecの負パルスが印加されている場合は、デューティー比は、(1μsec+2μsec)/1000μsec)=0.3%である。
【0015】
本発明においては、放電電極の単位面積あたりの投入電力が1.0W/cm以上において、放電プラズマの電子密度は、1×1010cm−3以上とすることができ、更に好ましくは5×1010cm−3以上とすることができる。また、放電プラズマの電子温度は、1.5eV以下とすることができ、更に好ましくは1.0eV以下とすることができる。
【0016】
好適な実施形態においては、放電プラズマがグロー放電プラズマであるが、ホローカソード放電やストリーマー放電、アーク放電であってもよい。
【0017】
パルス電圧の周波数は特に限定されないが、0.1kHz以上、100kHz以下であることが好ましい。
【0018】
処理ガスの圧力は限定されないが、本発明は低圧力条件下において放電プラズマを生成させるプロセスに対して最も効果的である。この観点からは、処理ガスの圧力が100Pa以下であることが好ましく、50Pa以下であることが更に好ましい。この圧力の下限は特にない。
【0019】
本発明においては、正パルスおよび負パルスの少なくとも一方を印加することが特に好ましく、これによって例えば薄膜を高効率で形成できる。この場合には、正パルスと負パルスとの各印加パターンは特に限定されない。正パルスを複数回連続的に印加したり、負パルスを複数回連続的に印加することもできる。
【0020】
本発明においては、パルスの半値幅(バイポーラパルスの場合には、正パルスおよび負パルスの各パルス半値幅)は3000nsec以下とすることが好ましく、1000nsec以下とすることが更に好ましい。これによって放電プラズマの電子密度を高くすることができる。例えば図1に例示するようなパルス電圧波形10の場合には、正パルス11と負パルス12とが交互に一定周期で印加される。こごで、d1は、正パルス11の半値幅であり、d2は、負パルス12の半値幅である。
【0021】
正パルス11の大きさは、特に限定されないが、例えば対向電極間の電界強度を0.01〜100kV/cmとすることが好ましく、0.1〜50kV/cmとすることが更に好ましい。
【0022】
負パルス12の大きさは、特に限定されないが、例えば対向電極間の電界強度を−0.01〜−100kV/cmとすることが好ましく、−0.1〜−50kVとすることが更に好ましい。
【0023】
本発明においては、対向電極の間の空間にプラズマを発生させる。この際、対向電極のうち少なくとも一方の電極の上に誘電体を設置することが可能であるが、金属の電極が露出していても構わない。対向電極は、平行平板型、円筒対向平板型、球対向平板型、双曲面対向平板型、同軸円筒型構造を例示できる。
【0024】
対向電極の一方または双方を被覆する固体誘電体としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複合酸化物を例示できる。
【0025】
誘電体の厚さは0.05〜4mmであることが好ましい。対向電極間距離は特に限定されないが、1〜500mmであることが好ましい。基材の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイト、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂等のプラスチック、ガラス、セラミック、金属を例示できる。誘電体の形状は特に限定されず、板状、フィルム状、様々な立体形状であってよい。
【0026】
本発明においては、パルス電圧を対向電極間に印加し、プラズマを生成させる。この際、正パルス、負パルスの各パルス波形は特に限定されず、インパルス型、方形波型(矩形波型)、変調型のいずれであってもよい。直流バイアス電圧を同時に印加することができる。
【0027】
図2は、本発明に利用できる装置を模式的に示す図である。チャンバー1内で放電プラズマの発生を実施する。下部電極5上に基材6が設置されており、基材6と上部電極4とが対向しており、その間の空間に放電プラズマを生じさせる。チャンバー1のガス供給孔2から矢印Aのように原料ガスを供給し、電極間に静電誘導サイリスタ素子を用いた電源3から、正パルスと負パルスとを含むパルス電圧を印加してプラズマを生じさせる。使用済のガスは排出孔8から矢印Bのように排出される。下部電極5内には冷媒の流通路9を形成し、流通路9内に矢印C、Dのように冷媒を流通させる。これによって、基材6の温度を所定温度、例えば20〜300℃に制御する。
【0028】
原料ガスは、すべて混合した後にチャンバー1内に供給できる。また、原料ガスが複数種類のガスおよび希釈ガスを含む場合には、それぞれ別個の供給孔からチャンバー1内に供給することもできる。
【0029】
パルス電圧は、急峻パルス発生電源によって印加できる。このような電源としては、磁気圧縮機構を必要としない静電誘導サイリスタ素子を用いた電源、磁気圧縮機構を備えたサイラトロン、ギャップスイッチ、IGBT素子、MOF−FET素子、静電誘導サイリスタ素子を用いた電源を例示できる。
【0030】
本発明によって生成させたプラズマは、薄膜形成プロセス、エッチングプロセス、スパッタリングプロセスなど各種方法に適用できる。また、本発明によって生成させたプラズマは、リモートプラズマ処理用のラジカル含有処理ガスを生成させるのに適している。
【0031】
本発明によって発生させたプラズマによる処理対象は特に限定されない。以下、基体の表面処理方法について詳述する。
【0032】
被処理物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂等のプラスチック、ガラス、セラミック、金属等が挙げられる。基材の形状としては、板状、フィルム状等のものが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明の表面処理方法によれば、様々な形状を有する基材の処理に容易に対応することが出来る。
【0033】
処理用ガスとしてフッ素含有化合物ガスを用いることによって、基材表面にフッ素含有基を形成させて表面エネルギーを低くし、撥水性表面を得ることが出来る。
【0034】
フッ素元素含有化合物としては、4フッ化炭素(CF4 )、6フッ化炭素(C2 F6 )、6フッ化プロピレン(CF3 CFCF2 )、8フッ化シクロブタン(C4 F8 )等のフッ素−炭素化合物、1塩化3フッ化炭素(CClF3 )等のハロゲン−炭素化合物、6フッ化硫黄(SF6 )等のフッ素−硫黄化合物等が挙げられる。
【0035】
処理用ガスとして以下のような酸素元素含有化合物、窒素元素含有化合物、硫黄元素含有化合物を用いて、基材表面にカルボニル基、水酸基、アミノ基等の親水性官能基を形成させて表面エネルギーを高くし、親水性表面を得ることが出来る。
【0036】
酸素元素含有化合物としては、酸素、オゾン、水、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素の他、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタナール、エタナール等のアルデヒド類等の酸素元素を含有する有機化合物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。さらに、上記酸素元素含有化合物と、メタン、エタン等の炭化水素化合物のガスを混合して用いてもよい。また、上記酸素元素含有化合物の50体積%以下でフッ素元素含有化合物を添加することにより親水化が促進される。フッ素元素含有化合物としては上記例示と同様のものを用いればよい。
【0037】
窒素元素含有化合物としては、窒素、アンモニア等が挙げられる。上記窒素元素含有化合物と水素を混合して用いてもよい。
【0038】
硫黄元素含有化合物としては、二酸化硫黄、三酸化硫黄等が挙げられる。また、硫酸を気化させて用いることも出来る。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
また、塩素含有化合物(Cl、HCl、PCl、BClなど)を使用できる。
【0039】
分子内に親水性基と重合性不飽和結合を有するモノマーの雰囲気下で処理を行うことにより、親水性の重合膜を堆積させることも出来る。上記親水性基としては、水酸基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、1級若しくは2級又は3級アミノ基、アミド基、4級アンモニウム塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基等の親水性基等が挙げられる。また、ポリエチレングリコール鎖を有するモノマーを用いても同様に親水性重合膜を堆積が可能である。
【0040】
前記モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルアルコール、アリルアミン、ポリエチレングリコールジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリル酸エステル等が挙げられる。これらのモノマーは、単独または混合して用いられる。
【0041】
前記親水性モノマーは一般に固体であるので、溶媒に溶解させたものを減圧等の手段により気化させて用いる。上記溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン等の有機溶媒、水、及び、これらの混合物等が挙げられる。
【0042】
さらに、Si、Ti、Sn等の金属の金属−水素化合物、金属−ハロゲン化合物、金属アルコラート等の処理用ガスを用いて、SiO2 、TiO2 、SnO2等の金属酸化物薄膜を形成させ、基材表面に電気的、光学的機能を与えることが出来る。
【0043】
以下に挙げるような希釈ガスによって希釈された雰囲気中で処理を行うことが好ましい。希釈ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、窒素、水素、酸素気体等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。また、希釈ガスを用いる場合、処理用ガスの割合は1〜10体積%であることが好ましい。
【0044】
本発明の方法によれば、アルゴン、窒素、水素、酸素気体中における安定した処理が可能である。特に本発明では、水素を70%以上含有する雰囲気を処理ガスとして用いた各種のリモートプラズマ処理が可能である点で画期的である。
【0045】
更に以下のようなガスを使用できる。
(炭素源を含む原料ガス)
メタノ−ル、エタノ−ル等のアルコ−ル
メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン
エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン
ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン
アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン、
ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素
シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン
シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン
【0046】
炭素含有膜形成用途においては、炭素源の原料ガス雰囲気中に占める濃度は、2〜80vol%が好ましい。
酸素ガス又は水素ガスのガス雰囲気中に占める濃度は、70vol%以下であることが好ましい。
希釈ガスとしては、周期律第8族の元素のガス及び窒素ガスが挙げられ、これらの少なくとも1種が使用でき、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノンが挙げられる。希釈ガスの原料ガス雰囲気中に占める濃度は、20〜90vol%が好ましい。
【0047】
更に、放電時のガス雰囲気にジボラン(BH3BH3)、トリメチルボロン(B(CH)、ホスフィン(PH3)、メチルホスフィン(CH3PH2)等のボロン元素、燐元素を含有するガス及び窒素ガスを加えることもできる。
【0048】
本発明によって得られる薄膜の材質は、ダイヤモンド状炭素以外には以下を例示できる。例えば、アモルファスシリコン膜(a―Si:H)や、BCN、BN、CN、cBN、ダイヤモンドなどのアモルファス膜や結晶膜があげられる。
【実施例】
【0049】
(実験1)
図3に示すようなプラズマ生成装置を使用し、グロー放電を生じさせ、プラズマを発生させた。ステンレス製のチャンバー1は略円盤形状であり、チャンバーの高さは300mmであり、直径φは300mmである。チャンバー1にはビューウインド16、ラングミュアプローブ17およびステンレス製の電極5が固定されている。電極5とチャンバー1との間は絶縁体14によって絶縁されている。プローブの高さDは60mmとし、電極5の直径Eは100mmとする。電源としては、静電誘導サイリスタ素子を用いた電源を用いた。
【0050】
油回転ポンプおよびターボ分子ポンプを用いてチャンバー1内を真空排気し、アルゴンガスを圧力2.6Paとなるように流入させた。ここで、正パルスが周期的に印加されるようにした。正パルスの波高値は+10.0kVであり、周波数は1〜10kHzである。正パルスの半値幅は1000nsecである。ここで、パルス電圧のデューティー比を、表1に示すように種々変更した。
また負パルスのみが周期的に印加される条件においても実施し、負パルスの波高値は−10kVであり、周波数は1〜10kHzである。負パルスの半値幅は1000nsecであり、パルス電圧のデューティー比を、表1に示すように種々変更した。
【0051】
また、参考例として、図3に示すようにチャンバーを使用し、上記したようなパルス電圧ではなく、周波数13.56MHzの高周波電圧を連続的に印加した。高周波電圧値はVpp=1000Vとした。Vppとは最高電圧値と最低電圧値の差である。連続印加なので、デューティー比100%である。各例について、プラズマの電子密度と電子温度とをラングミュアプローブ法によって測定した。
【0052】
【表1】

【0053】
この結果からわかるように、本発明によれば、放電電極の単位面積あたりの投入電力1.0W/cm以上において、電子密度が高く、電子温度の低い放電プラズマを発生させることができる。
【0054】
(実験2)
図2を参照しつつ説明した装置を使用し、前述のようにしてダイヤモンド状炭素の薄膜を製造した。ステンレス製のチャンバー1は略円盤形状であり、チャンバーの高さは300mmであり、直径φは300mmである。電源としては、静電誘導サイリスタ素子を用いた電源を用いた。
【0055】
油回転ポンプ及び油拡散ポンプを用いて、チャンバー1内の圧力が1×10−2〜1×10−3Paになるまで排気を行った。次いで、アセチレンガスを供給孔から、チャンバー1内圧力が2.6Paになるまで供給した。次いで、上部電極4と下部電極5の間にパルス電圧を印加した。
【0056】
ここで、正パルス11と負パルス12とが交互に周期的に印加されるようにした。正パルス11の波高値は+10.0kVであり、負パルス12の波高値は−10.0kVであり、正パルスの周波数は1〜5kHzであり、正パルスと負パルスとの間隔tは20.0μsecである。正パルス11の半値幅d1は150 nsecであり、負パルス12の半値幅d2は200nsecである。ここで、パルス電圧のデューティー比を、表2に示すように種々変更した。パルス電圧を印加して60分間放電を行い、ダイヤモンド状炭素薄膜7を成膜した。各例における成膜速度を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
表2において、実験2−1〜8においては、ラマン分光装置(日本分光社製、「NRS−1000」)を使用して、ラマン分光分析を行ったところ、約1360cm−1近傍及び1580cm−1近傍にダイヤモンド状炭素に起因した散乱ピークが観察され、ダイヤモンド状炭素膜が形成されていることが分かる。そして、本発明に従うことにより、成膜速度が著しく向上することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】正パルスおよび負パルスの例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施に利用できる成膜装置を示す模式図である。
【図3】本発明によるプラズマ発生方法で使用できる装置を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 チャンバー 3 パルス電源 4 上部電極 5 下部電極 6 基材 7 薄膜 17 ラングミュアプローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ガスにパルス電圧を印加することによって放電プラズマを発生させるプラズマ発生方法であって、
前記パルス電圧のデューティー比を0.001%以上、8.0%以下に制御することを特徴とする、放電プラズマ発生方法。
【請求項2】
放電電極の単位面積あたりの投入電力1.0W/cm以上において、前記放電プラズマの電子密度が1×1010cm−3以上であり、前記放電プラズマの電子温度が1.5eV以下であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記パルス電圧のパルス幅が3000nsec以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記放電プラズマがグロー放電プラズマであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記パルス電圧の周期が0.1kHz以上、100kHz以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記処理ガスの圧力が100Pa以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記放電プラズマを発生させた前記処理ガスをプラズマ源として利用し、前記処理ガスを基体に接触させることによって薄膜を形成することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記放電プラズマを発生させた前記処理ガスをプラズマ源として利用し、ドライエッチングを行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記放電プラズマを発生させた前記処理ガスをプラズマ源として利用し、スパッタリングを行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記放電プラズマを発生させた前記処理ガスをプラズマ源として利用し、半導体プロセスにおける不純物注入を行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つの請求項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−194110(P2007−194110A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12264(P2006−12264)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年10月5日〜6日 社団法人表面技術協会主催の「第112回講演大会」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年8月22日 社団法人電気学会主催の「平成17年電気学会基礎・材料・共通部門大会」において文書をもって発表
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】