説明

放電ランプ用給電装置

【課題】紫外線照射装置に使う放電ランプ用給電装置において、照射処理を行なわず、かつ、放電ランプを点灯維持させる場合に、省電力化の観点から、限りなく点灯電力を低減させることを可能にした、放電ランプ用給電装置を提供する。
【解決手段】定格電力値に維持されるように定電力制御によって放電ランプ8を点灯させるフル点灯モードと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるように定電力制御によって放電ランプ8を点灯させるエコ点灯モードを切替え可能に駆動できる放電ランプ用給電装置において、エコ点灯モードは、放電ランプ8が点灯を維持できる最低電流値を基準としたエコ点灯用基準電力値が設定されるとともに、放電ランプ8の物理的変化に伴って、前記エコ点灯用基準電力値を上昇させることを特徴とする放電ランプ用給電装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプを定電力制御する放電ランプ用給電装置に関わり、特に、放電ランプを定格電力値で点灯させる定常点灯モードと、当該定格電力値の50%より小さい電力値で点灯させるエコ点灯モードを有する放電ランプ用給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、放電ランプから放射される紫外光を、処理物である接着剤、インキ、レジストなどに照射してこれらを硬化あるいは乾燥させる用途が存在する(特許文献1)。このような紫外線照射処理では、実際に、照射処理を行なうときは放電ランプを所定の定格電力値で点灯させるが、照射処理を行なわない、いわゆる休止状態においては電力値を低減させて点灯させている。
【0003】
これは、放電ランプを一旦消灯させると、再点灯させて放射を安定させるのに時間を要するからである。この場合、例えば、放射光を遮るシャッターを設けて、放電ランプの放射光が処理物に照射しないよう工夫される。このような点灯モードは、一般に「待機点灯モード」と称される。つまり、給電装置は、放電ランプを定常点灯させる点灯モードと待機点灯させる点灯モードを切り替える機能が必要になる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−75065号公報
【特許文献2】特開昭62−54440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、待機点灯モードは、定格電力値の70%、低くても50%以上で点灯させるのが通常であった。あまりに低い電力値に設定すると、放電ランプの点灯を維持させることが困難だからである。ところが、昨今は、省電力化の要請がますます強くなり、処理を行なわない場合に、無駄な電力を費やすことに対する問題が高まりつつある。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、紫外線照射装置に使う放電ランプ用給電装置において、照射処理を行なわず、かつ、放電ランプを点灯維持させる場合に、省電力化の観点から、限りなく点灯電力を低減させることを可能にした、放電ランプ用給電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、定格電力値に維持されるように定電力制御によって放電ランプを点灯させるフル点灯モードと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるように定電力制御によって放電ランプを点灯させるエコ点灯モードを切替え可能に駆動できる放電ランプ用給電装置において、前記エコ点灯モードは、放電ランプが点灯を維持できる最低電流値を基準としたエコ点灯用基準電力値が設定されるとともに、前記放電ランプの物理的変化に伴って、前記エコ点灯用基準電力値を上昇させることを特徴とする放電ランプ用給電装置である。
第2の手段は、第1の手段において、前記放電ランプの物理的変化に伴う前記エコ点灯用基準電力値の上昇は、前記エコ点灯モードにおけるランプ電圧の変動に基づいて行うことを特徴とする放電ランプ用給電装置である。
第3の手段は、第1の手段において、前記放電ランプの物理的変化に伴う前記エコ点灯用基準電力値の上昇は、前記エコ点灯モードにおけるランプ電流の変動に基づいて行うことを特徴とする放電ランプ用給電装置である。
第4の手段は、第1の手段において、前記放電ランプの物理的変化に伴う前記エコ点灯用基準電力値の上昇は、前記放電ランプの累積点灯時間に基づいて行うことを特徴とする放電ランプ用給電装置である。
第5の手段は、第1の手段において、前記放電ランプの物理的変化に伴う前記エコ点灯用基準電力値の上昇は、ランプ電圧またはランプ電流のアークの不安定に伴う変動を所定時間測定したことに基づいて行うことを特徴とする放電ランプ用給電装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エコ点灯モードにおいて、放電ランプが点灯維持できるだけの最低電流値を基準としたエコ点灯用基準電力値が設定される。更に、放電ランプの物理的変化に伴って、エコ点灯用基準電力値を上昇させていくので、究極のエコ点灯が可能となるとともに、放電ランプの電極が磨耗したとしても最低の電流値を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る放電ランプ用給電装置の構成を示す図である。
【図2】定格電力値が250Wの放電ランプのエコ点灯モードにおける基準電力値を経時的に次第に上昇させたときの様子を示す図である。
【図3】エコ点灯モードにおいて、ランプ電圧を検出し、ランプ電圧が上昇している場合、基準電力値を上昇させる場合のフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る放電ランプ用給電装置の構成を示す図である。
【図5】エコ点灯モードにおいて、ランプ電流を検出し、ランプ電流が減少している場合、基準電力値を上昇させる場合のフローチャートである。
【図6】第3の実施形態に係る放電ランプ用給電装置の構成を示す図である。
【図7】エコ点灯モードにおいて、ランプ累積点灯時間を検出し、ランプ累積点灯時間が累積されるにしたがって、基準電力値を上昇させる場合のフローチャートである。
【図8】第4の実施形態に係る放電ランプ用給電装置の構成を示す図である。
【図9】エコ点灯モードにおいて、ランプ電圧を検知し、所定時間、ランプ電圧のアークの不安定に伴う変動を検知し、基準電力値を上昇させる場合のフローチャートである。
【図10】図1、図4、図6、図8に示した放電ランプ8の構成の一例を示す図である。
【図11】第1〜第4実施形態の放電ランプ用給電装置を適用した紫外線照射装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の実施形態を図1〜図3を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る放電ランプ用給電装置の構成を示す図である。
同図に示すように、この放電ランプ用給電装置は、商用電源1から供給された電流は、全波整流回路2とコンデンサC1から構成される整流平滑回路3により整流・平滑される。整流平滑回路3から得られる直流電圧は、スイッチング素子Tr1〜Tr4から構成されるフルブリッジ型スイッチング回路4に供給される。スイッチング回路4の各スイッチング素子Tr1〜Tr4のベースはPWM制御部5の出力に接続されており、PWM制御部5の出力によりスイッチング素子Tr1〜Tr4がオン/オフし、スイッチング回路4から高周波出力を発生する。スイッチング回路4の出力はトランスTにより昇圧されて、ダイオードD1、D2、インダクタンスL1、コンデンサC2から構成される整流平滑回路6により直流電圧に変換される。さらに、抵抗R1、R2、R3、起動器7を介して、放電ランプ8に供給される。
【0011】
抵抗R1、R2により検出されたランプ電圧はランプ電圧検出信号として電圧検知部9に入力し、また、抵抗R3により検出されたランプ電流はランプ電流検出信号として電流検知部10に入力する。電圧検知部9の出力信号と電流検知部10の出力信号は、電力測定部11に入力されてランプ電力が算出される。
【0012】
電力測定部11で算出されたランプ電力信号は、比較器12の一方の端子に入力する。また、フル点灯モード基準電力発生部13からの基準電力信号と、エコ点灯モード基準電力発生部14からの基準電力信号のうち、切換部15で選択された信号が比較器12の他方の端子に入力する。比較器12の出力はPWM制御部5に入力される。
【0013】
放電ランプ用給電装置を内蔵する照射装置の照射装置制御部16からは、放電ランプ8をフル点灯するか、またはエコ点灯するかの信号が切換部15に入力する。切換部15はこの信号を受けてフル点灯モードまたはエコ点灯モードのいずれかを選択する。同時に、照射装置制御部16からは遮光手段17にも信号が送信される。遮光手段18は、図11に示すように、シャッター駆動機構27とシャッター26から構成され、エコ点灯モードにおいてはシャッター26が光路中に挿入されている。
【0014】
本実施形態においては、エコ点灯モードは定格電力値の50%より小さい電力値で放電ランプ8を点灯する。数値例をあげると、定格ランプ電力(フル点灯モード時のランプ電力)が250Wの場合、エコ点灯モードでは100Wのランプ電力が設定される。従って、従来の放電ランプは再点灯の観点から「待機点灯」という表現を用いていたのに対し、本発明においては、省電力化の観点から、従来技術よりも低い電力にて放電ランプを点灯させるので、究極の省電力モードという点で「エコ点灯」と称する。
【0015】
以下に、図1に示した放電ランプ用給電装置の動作について説明する。
まず、照射装置制御部16からの指令により切換部15がフル点灯モード基準電力発生部13側に切り換えられて、フル点灯モードが選択された場合、電力測定部11で算出されたランプ電力信号に基づき、ランプ電力が一定値になるように、いわゆる定電力制御が行なわれる。具体的には、電力測定部11の出力信号とフル点灯モード基準電力発生部13の出力信号が、比較器12にて比較され、その差異に応じて、PWM制御部5は各スイッチング素子Tr1〜Tr4のオン時間とオフ時間の比率(デューティ比)を制御する。例えば、ランプ電力信号がフル点灯モード基準電力発生部13の出力信号より大きい場合は、PWM制御部5は、ランプ電力が設定値よりも高いと判断して、ランプ電力が小さくなるように、すなわち、各スイッチング素子Tr1〜Tr4のオフ時間がオン時間に比べて長くなるよう調整する。このようにして、放電ランプ8のランプ電力は、常に、基準電力値に一致するよう制御される。
【0016】
また、照射装置制御部16からの指令により切換部15がエコ点灯モード基準電力発生部14側に切り換えられて、エコ点灯モードが選択された場合も、上記定電力制御の動作は同様である。すなわち、エコ点灯モード基準電力発生部14の基準電力値がエコ点灯モード用の基準電力値として上記と同様の制御が行なわれる。
【0017】
ここで、電圧検知部9において検知された信号は、電力測定部11以外に基準電力値変換部18に入力されており、エコ点灯モードが選択された状態において、基準電力変換部18は、電圧検知部9で検知されたランプ電圧信号を演算することによって、ランプ電圧の変動を検知する。そして、ランプ電圧変動が、ランプ電極の磨耗などに起因するものであれば、基準電力変換部15はエコ点灯基準電力発生部14に基準電力を変更する旨の信号を発信する。また、ランプ電圧が一時的に上昇あるいは下降したものである場合は、エコ点灯基準電力発生部14からの基準電力を変更するような信号は発信しない。
【0018】
先にも述べたように、本発明は究極のエコ点灯を目指すものであるが、ここで、エコ点灯モードにおいて放電ランプが点灯維持できる最低電流値、つまり、エコ点灯基準電力値の設定について説明する。
例えば、フル点灯モードで点灯する場合、放電ランプのランプ電圧が20V、定格電力値(フル点灯モードの電力値)が250Wの場合を例に説明すると、ランプ電流は12.5Aを基準として、250Wが維持されるようにランプ電圧の変動に応じてランプ電流も追随する。一方、この放電ランプをエコ点灯モードする場合、ランプが点灯を維持できる最低電流値が4Aとすれば、基準電力値は80W(4A×20V)が設定される。従って、本事例の場合、フル点灯モードが選択された場合は250Wを維持する定電力制御が行なわれ、エコ点灯モードが選択された場合は80Wを維持する定電力制御が行なわれる。なお、実際には、エコ点灯モードのランプ電圧はフル点灯モードのランプ電圧より低くなるが、ここでは説明の便宜上同じとしている。
【0019】
ここで、放電ランプを点灯維持できうる最低電流値は、厳密には、封入ガス種、封入ガス圧力、電極間距離、ランプ温度、フル点灯モードとエコ点灯モードの累積時間など各種要因により異なる。実際には、使用環境を想定した実験を事前に行い、アークが安定して点灯を維持できうる最小電流値を求めることになる。最低電流値は各種の要因を考慮して定められ、単に計算上で求めた最低電流値そのものを採用してエコ点灯させることは現実的ではない。つまり、実際には、最低電流値に最小限の余裕値が付加された値が採用される。上記の事例においては、最小限の余裕値を1Aとして、100W(5A×20V)という基準電力値が設定される。この最低限の余裕値とは最低電流値の15%以内が適用される。
【0020】
次に、エコ点灯基準電力値の変更について説明する。
放電ランプは、点灯時間の経過に伴い、電極が磨耗して電極間距離は長くなる。そのため、ランプ電圧も上昇する。本発明は、このような点灯時間の経過に伴う放電ランプそのものの変化を検知して、エコ点灯基準電力値を変更する。
上述の例で説明すると、点灯初期の設定値は、ランプ電圧が20V、フル点灯モードの定格電力値は250W、エコ点灯モードの定格電力値は100Wである。いまここで、長時間の点灯により、ランプ電圧が23V(+3V)に上昇した場合を想定する。この場合、フル点灯モードでは基準電力値を250Wとする定電力制御を維持させても基本的に問題はない。ランプ電圧の上昇に応じてランプ電流が実用上問題ない範囲で減少するだけだからである。
【0021】
一方、エコ点灯モードでは、ランプ電圧の上昇によるランプ電流の減少は点灯維持という点で問題となる。点灯初期5A(250W/20V)のランプ電流が4.34A(100W/23V)まで低下してしまうからである。本発明では、このような状況に対処しようとするものであり、点灯経過時間に基づく放電ランプの点灯状態の変化に対して、エコ点灯モードの基準電力値のみを変化させるものである。例えば、ランプ電圧が+3V上昇した場合、エコ点灯モード時の基準電力値を105W(+5W)に変更する。つまり、ランプ電流が4.57A(105W/23V)までの低下にとどめる。
【0022】
エコ点灯モードの基準電力値は、ランプ電圧が所定量変化するごとに段階的に変化させてもよいし、または、ランプ電圧の変化にアナログ的に追随するように変化させてもかまわない。ただし、前記したように、ランプ内における封入ガスの対流やランプの物理的な振動による瞬間的なランプ電圧の変化に応答してはいけない。このため、例えば、所定時間、ランプ電圧の変化を観察して電極の磨耗などランプ自体の変化を検知する必要はある。このため、所定時間におけるアークの安定性を観察している。この点は後述する。
【0023】
なお、放電ランプの物理的変化は、ランプ電圧の検出に限られるものではなく、第2及び第3の実施形態において詳述するように、ランプ電流を検出してもよいし、ランプの総累積点灯時間を検出してもよい。特許文献2にはフル点灯モードにおけるランプ電力を時間経過とともに上昇させることが記載されており、照射物に対して常に一定照度を維持するため、ランプ電力を時間経過とともに上昇させるという考えが開示されている。しかし、本願発明のように、照射処理を行なわないエコ点灯モードにおけるランプ電力を上昇させるという技術思想は存在しない。また、上記の事例においては、ランプ電圧が明らかに上昇(20V→23V)した場合を想定したが、第4の実施形態において詳述するように、点灯経過時間に伴うランプの物理的変化をアークの安定性から検知するようにしてもよい。つまり、電極が磨耗するなどの放電ランプが物理的変化をする場合、アークが不安定になるからである。例えば、エコ点灯モードにおけるランプ電圧(20V)に対する所定割合(±15%)の電圧変動が、所定時間(例えば、5秒間)継続した場合に、アークが不安定であると判断し、この場合、エコ点灯モードの基準電力値を上昇させる。
【0024】
図2は、定格電力値が250Wの放電ランプのエコ点灯モードにおける基準電力値を経時的に次第に上昇させたときの様子を示す図であり、縦軸は放電ランプの点灯電力値(W)を示し、横軸は累積点灯時間(時間)を示す。
同図に示すように、フル点灯状態の基準電力値250Wを、エコ点灯状態の基準電力値100Wから経時的に変化させて125Wまで上昇させた場合を示している。なお、エコ点灯状態の基準電力値が125Wに達した場合は、放電ランプは寿命がきたとして新たな放電ランプと交換する。
【0025】
図3は、エコ点灯モードにおいて、ランプ電圧を検出し、ランプ電圧が上昇している場合、基準電力値を上昇させる場合のフローチャートである。
同図において、ステップS1において、エコ点灯モードかを判定し、エコ点灯モードでない場合は、フル点灯モードの処理を行う。エコ点灯モードの場合は、ステップS2において、ランプ電圧Vが、所定時間、所定の電圧範囲V≦V<V、例えば、20V以上23V未満かを判定する。所定の電圧範囲にある場合は、ステップS3において、エコ点灯基準電力値Wを、所定のエコ点灯基準電力値W、例えば、100Wに設定する。所定の範囲にない場合は、ステップS4において、所定時間、所定の電圧範囲V≦V<Vにあるかを判定する。所定の電圧範囲V≦V<Vにある場合は、ステップS5において、エコ点灯基準電力値Wを所定のエコ点灯基準電力値Wに設定する。所定の電圧範囲V≦V<Vにない場合は、ステップS6において、ランプ電圧Vが、所定時間、所定の電圧範囲V≦V<Vにあるかを判定する。所定の電圧範囲V≦V<Vにある場合は、ステップS7において、エコ点灯基準電力値Wを所定のエコ点灯基準電力値Wに設定する。所定の電圧範囲V≦V<Vにない場合は、先と同様の処理を行い、ステップS8において、ランプ電圧Vが、所定時間、所定の電圧範囲Vn−1≦V<Vにあるかを判定する。所定の電圧範囲Vn−1≦V<Vにある場合は、ステップS9において、エコ点灯基準電力値Wを許容される最大のエコ点灯基準電力値Wmax、例えば、125Wに設定する。所定の電圧範囲Vn−1≦V<Vにない場合は、ステップS10において、ランプ電圧VがVより大きいと判定されるので、放電ランプは正常な使用に耐えないものとして、ランプ交換信号を出力する。なお、ステップS3、5、7、9の処理後は、ステップS1からの処理を繰り返す。
【0026】
次に、本発明の第2の実施形態を図4及び図5を用いて説明する。
図4は、本実施形態に係る放電ランプ用給電装置の構成を示す図である。
同図に示すように、本実施形態の放電ランプ用給電装置は、図1に記載の放電ランプ用給電装置と比べて、電圧検知部9からの出力を基準電力変換部18に入力されているのに代えて、電流検知部10からの出力が基準電力変換部18に入力されている点で相違しており、エコ点灯モードにおいて、ランプ電流を検出し、ランプ電流が減少している場合、基準電力値を上昇させるものである。なお、その他の構成は、図1に示した同符号の構成に対応するので説明を省略する。
【0027】
図5は、エコ点灯モードにおいて、ランプ電流を検出し、ランプ電流が減少している場合、基準電力値を上昇させる場合のフローチャートである。
同図において、ステップS1において、エコ点灯モードかを判定し、エコ点灯モードでない場合は、フル点灯モードの処理を行う。エコ点灯モードの場合は、ステップS2において、ランプ電流Iが、所定時間、所定の電流範囲I<I≦I、例えば、5A以下4.34(100W/23V)より大きいかを判定する。所定の電圧範囲にある場合は、ステップS3において、エコ点灯基準電力値Wを、所定のエコ点灯基準電力値W、例えば、100Wに設定する。所定の範囲にない場合は、ステップS4において、所定時間、所定の電圧範囲I<I≦Iにあるかを判定する。所定の電流範囲I<I≦Iにある場合は、ステップS5において、エコ点灯基準電力値Wを所定のエコ点灯基準電力値Wに設定する。所定の電流範囲I<I≦Iにない場合は、ステップS6において、ランプ電流Iが、所定時間、所定の電流範囲I<I≦Iにあるかを判定する。所定の電流範囲I<I≦Iにある場合は、ステップS7において、エコ点灯基準電力値Wを所定のエコ点灯基準電力値Wに設定する。所定の電流範囲I<I≦Iにない場合は、先と同様の処理を行い、ステップS8において、ランプ電流Iが、所定時間、所定の電流範囲I<I≦In−1にあるかを判定する。所定の電流範囲I<I≦In−1にある場合は、ステップS9において、エコ点灯基準電力値Wを許容される最大のエコ点灯基準電力値Wmax、例えば、125Wに設定する。所定の電流範囲I<I≦In−1にない場合は、ステップS10において、ランプ電流IがIより小さいと判定されるので、放電ランプは正常な使用に耐えないものとして、ランプ交換信号を出力する。なお、ステップS3、5、7、9の処理後は、ステップS1からの処理を繰り返す。
【0028】
次に、本発明の第3の実施形態を図6及び図7を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係る放電ランプ用給電装置の構成を示す図である。
同図に示すように、本実施形態の放電ランプ用給電装置は、図1に記載の放電ランプ用給電装置と比べて、電圧検知部9からの出力を基準電力変換部18に入力されているのに代えて、ランプ累積点灯時間測定部19からの出力を基準電力変換部18に入力している点で相違しており、エコ点灯モードにおいて、フル点灯時間とエコ点灯時間を加えたランプ累積点灯時間を検出し、ランプ累積点灯時間の経過に伴って、基準電力値を上昇させるものである。なお、その他の構成は、図1に示した同符号の構成に対応するので説明を省略する。
【0029】
図7は、エコ点灯モードにおいて、フル点灯時間とエコ点灯時間を加えたランプ累積点灯時間を検出し、ランプ累積点灯時間が累積されるにしたがって、基準電力値を上昇させる場合のフローチャートである。
同図において、ステップS1において、エコ点灯モードかを判定し、エコ点灯モードでない場合は、フル点灯モードの処理を行う。エコ点灯モードの場合は、ステップS2において、ランプ累積点灯時間Tが、所定のランプ累積点灯時間範囲0≦T<Tかを判定する。所定のランプ累積点灯時間の範囲にある場合は、ステップS3において、エコ点灯基準電力値Wを、所定のエコ点灯基準電力値W、例えば、100Wに設定する。所定の範囲にない場合は、ステップS4において、所定のランプ累積点灯時間範囲T≦T<Tにあるかを判定する。所定のランプ累積点灯時間範囲T≦T<Tにある場合は、ステップS5において、エコ点灯基準電力値Wを所定のエコ点灯基準電力値Wに設定する。所定のランプ累積点灯時間範囲T≦T<Tにない場合は、ステップS6において、ランプ累積点灯時間が、所定のランプ累積点灯時間範囲T≦T<Tにあるかを判定する。所定のランプ累積点灯時間範囲T≦T<Tにある場合は、ステップS7において、エコ点灯基準電力値Wを所定のエコ点灯基準電力値Wに設定する。所定のランプ累積点灯時間範囲T≦T<Tにない場合は、先と同様の処理を行い、ステップS8において、ランプ累積点灯時間が、所定のランプ累積点灯時間範囲Tn−1≦T<Tにあるかを判定する。所定のランプ累積点灯時間範囲Tn−1≦T<Tにある場合は、ステップS9において、エコ点灯基準電力値Wを許容される最大のエコ点灯基準電力値Wmax、例えば、125Wに設定する。所定のランプ累積点灯時間範囲Tn−1≦T<Tにない場合は、ステップS10において、ランプ累積点灯時間TがTを経過していると判定されるので、放電ランプは正常な使用に耐えないものとして、ランプ交換信号を出力する。なお、ステップS3、5、7、9の処理後は、ステップS1からの処理を繰り返す。
【0030】
次に、本発明の第4の実施形態を図8及び図9を用いて説明する。
図8は、本実施形態に係る放電ランプ用給電装置の構成を示す図である。
同図に示すように、本実施形態の放電ランプ用給電装置は、図1に記載の放電ランプ用給電装置と比べて、基準電力値変換部20が、図1に示した基準電力値変換部18と機能が相違しており、エコ点灯モードにおいて、ランプ電圧を検知し、点灯経過時間に伴うランプの物理的変化に起因するアークの不安定性を検知し、基準電力値を上昇させるものである。なお、その他の構成は、図1に示した同符号の構成に対応するので説明を省略する。
【0031】
図9は、エコ点灯モードにおいて、ランプ電圧を検知し、所定時間、ランプ電圧のアークの不安定に伴う変動を検知し、基準電力値を上昇させる場合のフローチャートである。
同図において、ステップS1において、エコ点灯モードかを判定し、エコ点灯モードでない場合は、フル点灯モードの処理を行う。エコ点灯モードの場合は、ステップS2において、エコ点灯基準電力値Wが、所定のエコ点灯基準電力値W、例えば、100W未満かを判定する。エコ点灯基準電力値W<Wの場合は、ステップS3において、エコ点灯基準電力値Wを、所定のエコ点灯基準電力値Wに設定する。エコ点灯基準電力値W<Wでない場合は、ステップS4において、所定のエコ点灯基準電力値範囲W≦W<Wにあるかを判定する。所定のエコ点灯基準電力値範囲W≦W<Wにある場合は、ステップS5において、ランプ電圧の不安定な振動電圧を検出するために、ランプ電圧の微分値を所定時間、例えば、5秒間継続して積分した値αが所定値βより小さいか否かを判定する。小さい場合は、ランプ電圧の不安定さがない、またはランプの不安定さが一時的なものとして格別の処理を行わない。小さくない場合は、放電ランプの電極消耗などの物理的変化が生じてランプ電圧の不安定さが発生したとして、ステップS6において、エコ点灯基準電力値Wを所定のエコ点灯基準電力値Wに設定する。ステップS4において、エコ点灯基準電力値範囲W≦W<Wにない場合は、ステップS7において、エコ点灯基準電力値Wが、所定のエコ点灯基準電力値範囲W≦W<Wにあるかを判定する。所定のエコ点灯基準電力値範囲W≦W<Wにある場合は、ステップS8において、ステップS5と同様に、ランプ電圧の微分値を所定時間積分した値αが所定値βより小さいかを判定する。小さい場合は、ランプ電圧の不安定さがない、またはランプの不安定さが一時的なものとして処理を行わない。小さくない場合は、放電ランプの電極消耗などの物理的変化が生じてランプ電圧の不安定さが発生したとして、ステップS9において、エコ点灯基準電力値Wを所定のエコ点灯基準電力値Wに設定する。所定のエコ点灯基準電力値範囲W≦W<Wにない場合は、先と同様の処理を行い、ステップS10において、エコ点灯基準電力値Wが、所定のエコ点灯基準電力値範囲Wn−1≦W<W(=Wmax)にあるかを判定する。所定のエコ点灯基準電力値範囲Wn−1≦W<W(=Wmax)にある場合は、ステップS11において、ステップS5と同様に、ランプ電圧の微分値を所定時間積分した値αが所定値βより小さいかを判定する。小さい場合は、ランプ電圧の不安定さがない、またはランプの不安定さが一時的なものとして処理を行わない。小さくない場合は、放電ランプの電極消耗などの物理的変化が生じてランプ電圧の不安定さが発生したとして、ステップS12において、エコ点灯基準電力値Wを最大のエコ点灯基準電力値Wmaxに設定する。ステップS13において、ステップS5と同様に、ランプ電圧の微分値を所定時間積分した値αが所定値βより小さいかを判定する。小さい場合は、ランプ電圧の不安定さがない、またはランプの不安定さが一時的なものとして処理を行わない。小さくない場合は、ステップS14において、放電ランプは寿命がきているとしてランプ交換信号を出力する。なお、ステップS3、5、6,8、9、10、11、13の処理後は、ステップS1からの処理を繰り返す。
【0032】
なお、第4の実施形態においては、エコ点灯モードにおいて、ランプ電圧を検知し、所定時間、ランプ電圧のアークの不安定に伴う変動を検知し、基準電力値を上昇させる場合について説明したが、エコ点灯モードにおいて、ランプ電流を検知し、所定時間、ランプ電流のアークの不安定に伴う変動を検知し、基準電力値を上昇させるようにしてもよい。
【0033】
図10は、図1、図4、図6、図8に示した放電ランプ8の構成の一例を示す図である。
同図に示すように、放電ランプ8は全体が石英ガラス製の発光部81と封止部82から構成される。発光部81には陰極83Aと陽極83Bが対向配置しており、それぞれ電極軸84A、84Bに保持される。電極軸84A、84Bの根元は封止部82内にそれぞれ埋設される。なお、電極の形態はこれに限定されるものではなく、例えば、同一径のまま1本棒のように延びるものであってもよい。陰極83Aはタングステン(W)からなり、その先端にバリウム(Ba)、トリウム(Th)、ランタン(La)などのエミッタ物質が含まれる。一方、陽極83Bもタングステンから構成される。陽極83Bの電極軸84Bにはゲータとしてタンタルワイヤ85が巻きつけられている。陰極83Aの陽極側先端は電子放射の容易性から円錐形状に形成されているが、陽極83Bの陰極側先端は平面形状に形成されている。
【0034】
発光部81には、発光物質としてキセノンと水銀が封入されている、封入量は、例えば、キセノンガスが静圧で0.1MPa〜2MPaの範囲から選択された量が封入されており、水銀は3〜30mg/cmの範囲から選択された量が封入されている。放電ランプ8に給電装置から電力が供給されると、波長200nm〜650nmの光を放射する。放電ランプ8について、数値例を示すと、発光部81の最大内径は15mm、発光部81の肉厚は2.5mm、発光部81の全長(陰極や陽極の伸びる方向)は30.6mm、陰極83Aの本体径は5mm、陽極83Bの本体径は5mm、電極間距離は2mmである。電極83A、83B、特に陰極83Aは点灯時間の経過とともに先端が磨耗する。構成物質であるタングステンが蒸発するからである。特に、本件の場合は、フル点灯モードとエコ点灯モードでランプ電力値を激しく変化させながら点灯することから電極磨耗は通常のランプよりも激しい。
【0035】
図11は、第1〜第4実施形態の放電ランプ用給電装置を適用した紫外線照射装置の構成の一例を示す図である。
同図に示すように、紫外線照射装置は、ケーシング21の内部に、光学系22と、光学系22を構成する放電ランプ8を制御する放電ランプ用給電装置23が設けられている。光学系22は、ショートアーク型の放電ランプ8と、放電ランプ8から放射される光を反射する楕円反射鏡24を備えている。放電ランプ8のアーク中心が楕円反射鏡24の第1焦点F1に一致するように、放電ランプ8と楕円反射鏡24がケーシング21に固定されている。放電ランプ8の放射光は、楕円反射鏡24によって、楕円反射鏡24の第2焦点F2に集光される。楕円反射鏡24の第2焦点F2には導光ファイバ25を配置し、導光ファイバ25によって、放電ランプ8の放射光を微小域に照射することができる。楕円反射鏡24と導光ファイバ25の間にはシャッター26が配置される。シャッター26はシャッター駆動機構27により開閉制御されるものであり、「閉じる」の信号が入力されたときは、シャッター26は図示の状態となり、放電ランプ8の放射光は導光ファイバ25には導かれない。一方、シャッター駆動機構27により「開く」の信号が入力されたときには、シャッター26は矢印aの方向に退避し、放電ランプ8の放射光が導光ファイバ25に導かれる。図1において説明したように、シャッター駆動機構27は放電ランプ用給電装置23と連携しており、放電ランプ8の点灯モードとの関係で開閉制御される。具体的には、放電ランプ8がフル点灯モードのときは、シャッター26は開いて放電ランプ8の放射光が導光ファイバ25に導かれ、放電ランプ8がエコ点灯モードのときは、シャッター26は閉じて放電ランプ8の放射光は導光ファイバ25には導かれない。導光ファイバ25の出射端から出射した放射光は、接着剤、塗料、インク、レジストなどに照射され、これらを硬化あるいは乾燥させることに利用される。
【符号の説明】
【0036】
1 商用電源
2 全波整流回路
3 整流平滑回路
4 スイッチング回路
5 PWM制御部
6 整流平滑回路
7 起動器
8 放電ランプ
81 発光部
82 封止部
83A 陰極
83B 陽極
84A、84B 電極軸
85 タンタルワイヤ
9 電圧検知部
10 電流検知部
11 電力測定部
12 比較器
13 フル点灯モード基準電力発生部
14 エコ点灯モード基準電力発生部
15 切換部
16 照射装置制御部
17 遮光手段
18 基準電力値変換部
19 ランプ累積点灯時間測定部
20 基準電力値変換部
21 ケーシング
22 光学系
23 放電ランプ用給電装置
24 楕円反射鏡
25 導光ファイバ
26 シャッター
27 シャッター駆動機構
C1 コンデンサ
Tr1〜Tr4 スイッチング素子
T トランス
D1、D2 ダイオード
L1 インダクタンス
C2 コンデンサ
R1、R2、R3 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定格電力値に維持されるように定電力制御によって放電ランプを点灯させるフル点灯モードと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるように定電力制御によって放電ランプを点灯させるエコ点灯モードを切替え可能に駆動できる放電ランプ用給電装置において、
前記エコ点灯モードは、放電ランプが点灯を維持できる最低電流値を基準としたエコ点灯用基準電力値が設定されるとともに、
前記放電ランプの物理的変化に伴って、前記エコ点灯用基準電力値を上昇させることを特徴とする放電ランプ用給電装置。
【請求項2】
前記放電ランプの物理的変化に伴う前記エコ点灯用基準電力値の上昇は、前記エコ点灯モードにおけるランプ電圧の変動に基づいて行うことを特徴とする請求項1の放電ランプ用給電装置。
【請求項3】
前記放電ランプの物理的変化に伴う前記エコ点灯用基準電力値の上昇は、前記エコ点灯モードにおけるランプ電流の変動に基づいて行うことを特徴とする請求項1の放電ランプ用給電装置。
【請求項4】
前記放電ランプの物理的変化に伴う前記エコ点灯用基準電力値の上昇は、前記放電ランプの累積点灯時間に基づいて行うことを特徴とする請求項1の放電ランプ用給電装置。
【請求項5】
前記放電ランプの物理的変化に伴う前記エコ点灯用基準電力値の上昇は、ランプ電圧またはランプ電流のアークの不安定に伴う変動を所定時間測定したことに基づいて行うことを特徴とする請求項1の放電ランプ用給電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−154856(P2011−154856A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15075(P2010−15075)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】