説明

放電灯点灯装置、及び、プロジェクター

【課題】シンプルな回路構成によって、確実に放電灯を点灯させることができ、かつ、不要な高電圧パルスの出力を抑制できる放電灯点灯装置、及び、プロジェクターを提供する。
【解決手段】放電灯点灯装置1は、直流電源80からの電流により充電されるキャパシターC1と、キャパシターC1に接続された巻線L1と、放電灯90の電極に接続された巻線L3とを有し、キャパシターC1から巻線L1に放電電流が流れることにより放電灯90の電極間に始動パルスを出力するトランス10と、キャパシターC1からトランス10への放電電流をオン/オフする放電制御回路30と、キャパシターC1の両端電圧が基準電圧に達した後に放電制御回路30をオンに切り換えるタイミング発生部40と、を備え、タイミング発生部40は複数の基準電圧に従って動作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯を点灯させる放電灯点灯装置、及び、この放電灯点灯装置を備えたプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プロジェクターの光源等に利用されるメタルハライドランプ等の放電灯を点灯させる放電灯点灯装置は、始動用の高電圧パルスを放電灯に印加して点灯させていた。放電灯の点灯に必要な電圧は放電灯の状態により異なることが知られているが、従来は、確実に放電灯を点灯させることが可能な高電圧のパルスを常に出力する構成となっていた。パルスの電圧が高いほど周辺部品の劣化を早め、また、ノイズ源ともなるので、高電圧のパルスの出力は必要最小限に抑えることが望ましい。そこで、トランスを用いた始動パルス発生回路を複数備えることで、異なる電圧の始動パルスを出力する放電灯点灯装置が提案された(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−111965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の放電灯点灯装置は、トランスを備えた始動パルス発生回路を複数備えることによって、回路構成の複雑化を招いてしまい、小型化が困難になるという問題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、シンプルな回路構成によって、確実に放電灯を点灯させることができ、かつ、不要な高電圧パルスの出力を抑制できる放電灯点灯装置、及び、プロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、直流電源からの電流により充電される容量と、前記容量に接続された1次側の巻線と、放電灯の電極に接続された2次側の巻線とを有し、前記容量から前記1次側の巻線に放電電流が流れることにより前記放電灯の電極間に始動電圧を出力するトランスと、前記容量から前記トランスへの放電電流をオン/オフする切換回路と、前記容量の両端電圧が基準電圧に達した後に前記切換回路をオンに切り換える放電制御部と、を備え、前記放電制御部は複数の前記基準電圧に従って動作可能であることを特徴とする。
本発明によれば、複数の基準電圧を使い分けることにより、放電灯の電極間に印加される始動電圧を変化させることが可能であるため、例えば、ホットリスタート等の放電灯が点灯しにくい状態では高電圧の始動電圧を出力し、放電灯が点灯しやすい状態では比較的低電圧の始動電圧を出力するといった制御が可能となる。従って、回路構成の複雑化を招くことなく、不要な高電圧パルスの出力を抑え、確実に放電灯を点灯させることができる。
【0006】
また、本発明は、上記放電灯点灯装置において、前記放電制御部は、より低い側の前記基準電圧に従って前記容量から放電した回数が所定回数に達した後、或いは、より低い側の前記基準電圧に従って所定時間動作した後に、より高い側の前記基準電圧に従って前記容量から放電させることを特徴とする。
本発明によれば、容量の両端電圧が低い状態でトランスへの放電をオンにして高電圧を発生して、放電灯に所定回数の始動電圧を印加し、その後に、容量の両端電圧が高い状態でトランスへの放電をオンにすることで、より高い始動電圧を印加するので、不要な高電圧パルスの発生を抑えるとともに、初期の始動電圧では点灯しない放電灯を確実に点灯させることができる。
【0007】
また、本発明は、上記放電灯点灯装置において、前記放電制御部は、前記放電灯の温度に基づいて前記基準電圧を選択して使用することを特徴とする。
本発明によれば、放電灯の温度に基づいて、放電灯に印加する始動電圧を切り替えるので、より低い電圧で放電灯を点灯可能な場合に不要な高電圧パルスの発生を抑え、かつ、より高い電圧が必要な場合は放電灯を確実に点灯させることができる。
【0008】
また、本発明は、上記放電灯点灯装置において、前記直流電圧を交流電圧に変換して前記放電灯の電極間に出力する交流変換回路を備え、前記切換回路は、前記放電灯の点灯後は前記容量から前記トランスへの放電電流をオフに保つことを特徴とする。
本発明によれば、放電灯の点灯後は始動電圧を印加しないので、不要な高電圧パルスの発生を抑えることができる。
【0009】
また、本発明は、上記放電灯点灯装置において、前記切換回路は、前記直流電源からの電流により充電される出力制御容量と、前記容量及び前記トランスの前記1次側の巻線とに直列接続され、前記出力制御容量の両端電圧が所定の電圧に達した場合に、前記容量の両端と前記1次側の巻線とを導通させるサイリスターとを備え、前記放電制御部は、前記容量の両端電圧が前記基準電圧に達したタイミングで、前記出力制御容量への充電を開始させることを特徴とする。
本発明によれば、直流電源からの電流により充電されるキャパシターと、このキャパシターの両端電圧により駆動されるサイリスターとを用いたシンプルな構成により、トランスへの放電電流を制御できる。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本発明は、一対の電極を有する放電灯と、前記放電灯が発した光を変調する変調手段と、前記変調手段により変調された光を投射面に投射する投射光学系と、前記放電灯に接続された上記放電灯点灯装置とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、放電灯の電極間に印加される始動電圧を変化させることが可能な放電灯制御装置を備えることにより、確実に放電灯を点灯させることができ、かつ、放電灯点灯装置における不要な高電圧パルスの発生を抑えることができる。これにより、プロジェクター内部の放電灯点灯装置が発するノイズの影響を抑えることができ、ノイズ対策用の構成を簡素化が可能なため、より一層の小型化及び軽量化を実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回路構成の複雑化を招くことなく、複数の基準電圧を使い分けることによって、不要な高電圧パルスの出力を抑え、確実に放電灯を点灯させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る放電灯点灯装置の回路図である。
【図2】放電灯点灯装置の動作例を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】放電灯点灯装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る放電灯点灯装置の回路図である。
【図5】第3の実施形態に係るプロジェクターの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
(1)放電灯点灯装置の回路構成
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係る放電灯点灯装置1の回路図である。
この図1に示す放電灯点灯装置1は、直流電源80に接続され、トランス10の2次側の巻線から放電灯90の電極間に電圧パルスを出力して放電灯90の点灯を開始し、直流電源80からの電流を交流変換する交流変換回路20により放電灯90の電極間に交流駆動電流を出力して放電灯90を駆動する放電灯点灯装置である。
【0014】
直流電源80は、ダウンチョッパー回路等により構成され、例えば300V〜400V程度の電源電圧が供給される。トランス10は、1次側の巻線L1と2次側の巻線L2及びL3を備え、例えば各巻線の巻数の比をL1:L2:L3=1:10:10とした場合には、巻線L1を流れる電流により発生する電圧の10倍の電圧が巻線L2及びL3でそれぞれ発生し、巻線L1に発生する電圧の20倍に相当する電圧の電圧パルスが放電灯90の電極間に出力される。
【0015】
交流変換回路20は、直流電源80から出力される直流電流を入力し、所与のタイミングで極性反転することにより、任意のデューティー比や周波数をもつ放電灯駆動用の交流駆動電流Iを生成出力する。本実施形態においては、交流変換回路20はインバーターブリッジ回路(フルブリッジ回路)で構成されている。
本実施形態の交流変換回路20は、トランジスター等で構成されるスイッチ素子S1〜S4を備え、直列接続されたスイッチ素子S1及びS2と、直列接続されたスイッチ素子S3及びS4を、互いに並列接続して構成される。スイッチ素子S1〜S4の制御端子には、それぞれインバーター制御回路60から制御信号が入力され、インバーター制御回路60によってスイッチ素子S1〜S4のON/OFFが制御される。インバーター制御回路60は、スイッチ素子S1〜S4を袈裟懸けにON/OFFさせ、放電灯90が点灯するまでの間は高周波数(例えば、数10kHz)でスイッチングを行い、放電灯90の点灯後はスイッチングを低周波数(例えば、1kHz以下)で行う。具体的には、スイッチ素子S1及びS4がONの時にはスイッチ素子S2及びS3をOFFにし、スイッチ素子S1及びS4がOFFの時にはスイッチ素子S2及びS3をONにするように制御する。スイッチ素子S1及びS4がONの時には、直流電源80の正側からスイッチ素子S1、巻線L3、放電灯90、巻線L2、スイッチ素子S4の順に流れる駆動電流が発生する。また、スイッチ素子S2及びS3をONの時には、直流電源80の正側からスイッチ素子S3、巻線L2、放電灯90、巻線L3、スイッチ素子S2の順に流れる駆動電流が発生する。これにより、直流電源80から出力される直流電流の極性が交互に反転されて、スイッチ素子S1及びS2の共通接続点N1と、スイッチ素子S3及びS4の共通接続点N2とを2つの出力端として、制御された周波数やデューティー比等をもった交流駆動電流Iを生成出力し、放電灯90に供給される。
【0016】
インバーター制御回路60は、専用のハードウェアにより上記のスイッチング制御を行う構成としてもよいし、CPU(Central Processing Unit)がメモリー等に記憶された制御プログラムを実行することにより、上記のスイッチング制御を含む各種制御を行う構成としてもよい。
【0017】
また、トランス10の巻線L2及びL3と、交流変換回路20の出力端N1、N2との間には、フィルター70が設けられている。フィルター70は、後述する動作によりトランス10で生成出力される電圧パルスが交流変換回路20に与える影響を減衰するために設けられている。図1の例では、フィルター70は、トランスT1とキャパシターC3、C4を備えて構成され、交流変換回路20の出力端N1、N2間の電圧変動を減衰する。
【0018】
直流電源80の両端には、直流電源80からの電流を基に充電されるキャパシターC1(容量)が、電流制限回路50と直列に接続されている。電流制限回路50は、必要に応じて、直流電源80からキャパシターC1への充電電流I1の電流値を所望の値に制限するための回路であり、キャパシターC1は電流制限回路50を介して供給される直流電流によって充電される。図1の例では、電流制限回路50は、電流制限用の抵抗R10、R11、及びダイオードD1を直列に接続して構成され、ダイオードD1のカソード側にキャパシターC1が接続されている。キャパシターC1の両端にはトランス10の巻線L1が接続され、キャパシターC1に充電された電荷が放電されることにより、後述するようにトランス10が始動パルスを発生する。
【0019】
放電灯点灯装置1は、交流変換回路20の一方の出力端であるスイッチ素子S1及びS2の共通接続点N1と、直流電源80の負側との間に接続され、交流変換回路20の出力電流により充電されるキャパシターC2(出力制御容量)を備えている。図1の例では、接続点N1と直流電源80の負側との間には分圧抵抗R1、R2、R3が直列に接続され、キャパシターC2は抵抗R3に並列に接続されていて、分圧された交流変換回路20の出力電圧により充電される。キャパシターC2の両端電圧は抵抗R1〜R3の抵抗値により任意の値に制限される。
【0020】
キャパシターC2の両端には、放電制御回路30(切換回路)が接続されている。放電制御回路30は、キャパシターC2の両端電圧Vc2が基準電圧Vth1を超えた後に、キャパシターC1に充電された電荷をトランス10の1次側の巻線L1を介して放電電流として放電する。具体的には、放電制御回路30は、キャパシターC2の一端と巻線L1との間に接続されたサイリスターX1と、キャパシターC2の他端とサイリスターX1のゲートに接続されたダイアックX2とを備えている。ダイアックX2とサイリスターX1との間には抵抗R4が直列に配置され、この抵抗R4の一端は抵抗R5を介してキャパシターC2の一端に接続されている。サイリスターX1は、キャパシターC1の放電電流が巻線L1に流れる放電経路の一部となっている。
【0021】
トリガーダイオードであるダイアックX2は、キャパシターC2の両端電圧Vc2が、ダイアックX2の仕様により定まる基準電圧Vth1を超えると、OFFからONに切り換わる。これにより、キャパシターC2に充電された電荷が電流として放電され、その一部がダイアックX2と抵抗R4を介してサイリスターX1のゲートに供給され、その残りは抵抗R5を介して接地電位に放電される。
サイリスターX1は、ゲートに供給された電流をトリガーとしてOFFからONに切り換わり、キャパシターC1に充電された電荷をトランス10の1次側の巻線L1を介して放電電流として接地電位に放電する。また、キャパシターC1からサイリスターX1に流れる電流が、サイリスターX1の仕様により定まる保持電流以下となると、サイリスターX1はONからOFFに切り換わり、キャパシターC1からの放電が終了し、充電が再開される。
そして、トランス10の1次側の巻線L1に放電電流が流れると、この電流によりトランス10の2次側の巻線L2及びL3に巻数比に応じた電圧が発生し、電圧パルスとして放電灯90の電極間に出力される。
【0022】
このように、本実施形態に係る放電灯点灯装置1は、キャパシターC2の両端電圧Vc2が基準電圧Vth1を超えるタイミングをトリガーとして、放電灯90の電極間に電圧パルスを出力することができる。
【0023】
また、キャパシターC2は、交流変換回路20の一方の出力端からの電流を基に充電されるので、交流駆動電流Iの一方の極性期間(図1の例では、スイッチ素子S1及びS4がONになる期間)にしか充電されない。したがって、キャパシターC2の両端電圧が基準電圧Vth1を超えるタイミングは、交流駆動電流Iの極性反転タイミングの影響を受ける。言い換えれば、キャパシターC2の値を適切に設定することにより、交流駆動電流Iの極性反転タイミングを基準として、所望のタイミングで放電灯90の電極間に電圧パルスを出力することができる。
【0024】
さらに、キャパシターC2は、キャパシターC1とは充電経路が異なるため、キャパシターC2の値を適切に設定することにより、キャパシターC1の値に制約されることなく、所望のタイミングで、放電灯90の電極間に電圧パルスを出力することができる。
【0025】
そして、本実施形態の放電灯点灯装置1は、キャパシターC2への充電開始のタイミングを制御するタイミング発生部40(放電制御部)を備えている。タイミング発生部40は、キャパシターC1の両端電圧に応じて、キャパシターC2への充電開始及び停止を制御する。
図1の例では、タイミング発生部40は、トランジスターQ1、抵抗R7、R8、及び、タイミング制御回路41を備えて構成されている。タイミング制御回路41の入力端には、キャパシターC1の両端電圧が抵抗R7及び抵抗R8により分圧されて入力され、タイミング制御回路41の出力端はトランジスターQ1のベースに接続されている。タイミング制御回路41は、抵抗R7、R8により分圧された電圧値が基準電圧を超えたか否かにより、トランジスターQ1への出力のLowとHighを切り換える。タイミング制御回路41の出力がHighである間、トランジスターQ1がONとなってキャパシターC2の両端が短絡されるため、キャパシターC2は充電されない。タイミング制御回路41の出力がLowの間は、トランジスターQ1がOFFとなって、キャパシターC2が充電される。
【0026】
タイミング制御回路41は、複数種類の基準電圧を設定可能に構成され、本実施形態では、第1の基準電圧V1と、第1の基準電圧V1より高電圧の第2の基準電圧V2の2段階に設定される。基準電圧の値はキャパシターC1の両端電圧と抵抗R7、R8の分圧比に基づいて決定される。第1の基準電圧V1を用いる場合よりも、より高い電圧の第2の基準電圧V2を用いる場合に、より高電圧の電流が巻線L1に流れる。キャパシターC1の両端電圧が基準電圧に対応する電圧まで充電された時点で、キャパシターC1は放電されるので、基準電圧が低すぎるとキャパシターC1の両端電圧がそれほど上昇しないうちに放電してしまい、放電灯90を始動できない電圧のパルスが出力されてしまう。従って、第1の基準電圧V1は、放電灯90の始動に必要な最低限の電圧よりも高電圧の始動パルスを生成できる程度に定められている。
【0027】
メタルハライドランプ等の放電灯90は、冷温状態から点灯させる場合(いわゆるコールドスタート)には、比較的低電圧の始動パルスを印加することで点灯するが、消灯後間もない場合など高温の状態で点灯させる場合(いわゆるホットリスタート)には、高電圧の始動パルスを必要とする。そこで、タイミング制御回路41は、複数の基準電圧、例えばコールドスタート用の第1の基準電圧V1とホットリスタート用の第2の基準電圧V2とを用い、トランス10から放電灯90に出力する始動パルスの電圧を変化させることで、不要な高電圧パルスの出力を抑えることに成功している。
【0028】
また、放電灯点灯装置1において、電流制限回路50は、キャパシターC1に流れる充電電流I1をサイリスターX1の保持電流よりも小さな電流値に制限する構成としてもよい。この場合、サイリスターX1を確実にOFFに切り換えることができる。この充電電流I1は、キャパシターC2を充電するためには用いられないため、充電電流I1の電流値を変更してもキャパシターC2の充電に必要となる時間には影響がない。したがって、充電電流I1の値をキャパシターC2の値とは独立に設計することが可能である。
【0029】
(2)点灯動作
図2は、本実施形態に係る放電灯点灯装置1の動作例を説明するためのタイミングチャートである。図中、(A)は放電灯90の電極間に印加されるパルス(始動パルス)の電圧を示し、(B)はキャパシターC1の両端電圧を示し、(C)はキャパシターC2の両端電圧を示し、(D)はタイミング制御回路41の出力電圧を示す。
【0030】
動作開始後の初期状態において、タイミング制御回路41の基準電圧は第1の基準電圧V1となっている。図2(D)に示すタイミング制御回路41の出力は、初期状態ではHighとなっており、この間はキャパシターC2には充電されないので、図2(C)に示すキャパシターC2の両端電圧は上昇せず一定である。一方、キャパシターC1は充電が継続されるので、図2(B)に示すキャパシターC1の両端電圧は徐々に上昇する。
【0031】
キャパシターC1の両端電圧が第1の基準電圧V1を超えると(時刻t1)、タイミング制御回路41は出力をLowに転じ、キャパシターC2への充電が開始される。そして、キャパシターC2の両端電圧がダイアックX2をONに切り換えさせる電圧値に達すると(時刻t2)、ダイアックX2がONになることによりサイリスターX1がONに切り換わり、キャパシターCに充電された電荷がトランス10の1次側の巻線L1に流れて、放電灯90に始動パルスが出力される。
【0032】
キャパシターC1の放電によりキャパシターC1の両端電圧が第1の基準電圧V1より低くなると、タイミング制御回路41は出力をHighに切り換える。キャパシターC2の両端電圧は放電により低下し、その後、タイミング制御回路41の出力がHighである間は充電されないためにほぼ一定となる。キャパシターC1には充電が開始されるため、キャパシターC1の両端電圧は徐々に上昇する。キャパシターC1の両端電圧が第1の基準電圧V1を超えると、上記の時刻t1〜t2の動作が再び実行され、放電灯90に始動パルスが出力される。
【0033】
また、タイミング制御回路41は、放電灯90への始動パルスの出力回数をカウントするカウンターを内蔵しており、具体的には時刻t1で出力をLowに切り換える際に、その切換回数をカウントする。そして、HighからLowへの切換回数が、予め設定された値に達すると、基準電圧を第1の基準電圧V1から、より高電圧の第2の基準電圧V2へ切り換えて設定する。本実施形態では、カウント値が4に達すると、基準電圧を第2の基準電圧V2に設定する構成となっている。従って、タイミング制御回路41は、4回目の始動パルスが出力されるまでの期間T1は第1の基準電圧V1に基づいて動作し、その次の始動パルスが出力されるまでの期間T2は第2の基準電圧V2に基づいて動作する。
5回目の始動パルスは、キャパシターC1の両端電圧が第2の基準電圧V2を超えたとき(時刻t3)に出力される。この場合にはより高電圧の放電電流がトランス10の巻線L1に流れるので、より高電圧の始動パルスが放電灯90に印加される。
【0034】
上述のようにコールドスタート時は比較的低い始動電圧で放電灯90が点灯するので、1回目〜4回目のいずれかの始動パルスで放電灯90が点灯する。これに対し、ホットリスタート時には高い始動電圧が必要なため、1回目〜4回目の始動パルスでは放電灯90が点灯しない可能性があるが、この場合は5回目の始動パルスで点灯する。このように、初期に出力される始動パルスの電圧を低く抑えることで、不要な高圧パルスの出力を抑制できる。また、所定の回数の始動パルスを出力した後で放電灯90が点灯しない場合には、より高電圧の始動パルスが出力されるので、確実に放電灯90を点灯させることができる。
【0035】
タイミング制御回路41が基準電圧を第1の基準電圧V1から第2の基準電圧V2に切り換えるまでのカウント値は、任意に設定可能であり、本実施形態で例示した4に限らず、より少ない数であってもよいし、多く設定することもできる。キャパシターC1の両端電圧と、トランス10が出力する始動パルスの電圧と、放電灯90のコールドスタート時及びホットリスタート時の始動電圧の特性とに基づいて、適宜設定すればよい。
また、上記の例ではタイミング制御回路41が出力値をHighからLowに切り換えた回数をカウントする場合について説明したが、タイミング制御回路41が、動作開始すなわちHighの出力開始からの時間を計時し、この時間が設定された時間に達したときに基準電圧をより高い電圧に設定する構成としてもよい。この場合、期間T1が経過したときに第2の基準電圧V2を設定するようにすれば、上記と同様の効果が得られる。
【0036】
放電灯点灯装置1は、放電灯90の点灯開始後においては、電圧パルスの出力が自動的に停止する構成となっている。ここでは、放電灯90の点灯開始前における直流電源80の出力電圧が380V、放電灯90の点灯開始後における放電灯90の電極間電圧(ランプ電圧)が70Vである場合を例にとり説明する。なお、スイッチ素子S1〜S4による電圧降下は、直流電源80の出力電圧や放電灯90の電極間電圧よりも十分に小さいものとして説明する。
【0037】
放電灯90の点灯開始前において、抵抗R1〜R3の抵抗値の比を(R1+R2):R3=7.5:1程度に設定すると、キャパシターC2の両端に印加される電圧は最大で約45Vとなる。この場合、基準電圧(ダイアックX2のトリガー電圧)Vth1を、例えば32V程度に設定しておけば、キャパシターC2が充電されることによってダイアックX2及びサイリスターX1がON状態に切り換わり、放電灯点灯装置1は電圧パルスを発生する。
【0038】
放電灯90の点灯開始後は、直流電源80の出力電圧≒放電灯90の電極間電圧となる。この場合、キャパシターC2の両端に印加される電圧は最大で約8Vとなるので、キャパシターC2が充電されても両端電圧が基準電圧Vth1を超えられない。このため、ダイアックX2がON状態に切り換わることはなく、放電灯点灯装置1は電圧パルスを出力しなくなる。
【0039】
さらに、放電灯90の点灯開始後においては、直流電源80の出力電圧の低下によりキャパシターC1の両端電圧の上昇も抑制される。このため、例えば、タイミング制御回路41の第1の基準電圧V1、第2の基準電圧V2が、点灯後の直流電源80に基づき充電されたキャパシターC1の両端電圧、または、この両端電圧を抵抗R7、R8で分圧した値よりも十分に高い電圧であれば、キャパシターC2への充電が停止された状態が保たれる。
【0040】
図3は、放電灯点灯装置1の動作をフローチャートに示したものである。
タイミング制御回路41は、内蔵するカウンターのカウント値を取得し(ステップS11)、カウント値が予め設定された制限値に達しているか否かを判別する(ステップS12)。カウント値が制限値(上記の例では4)に達していない場合(ステップS12;No)、タイミング制御回路41は、基準電圧として第1の基準電圧V1を設定し(ステップS13)、キャパシターC1の両端電圧を監視して、キャパシターC1の両端電圧が第1の基準電圧V1を超えるまで待機する(ステップS14)。
【0041】
キャパシターC1の両端電圧が第1の基準電圧V1を超えると(ステップS14;Yes)、タイミング制御回路41は、出力値をHighからLowに切り換え(ステップS15)、内蔵するカウンターのカウント値をカウントアップ(+1)する(ステップS16)。ここで、上述した動作によりサイリスターX1がONになってトランス10から始動パルスが出力される(ステップS17)。タイミング制御回路41はキャパシターC1の両端電圧の監視を継続しており(ステップS18)、両端電圧が第1の基準電圧V1以下となった場合に(ステップS18;Yes)、出力値をHighに切り換えて(ステップS19)、点灯したか否かを判別する(ステップS20)。放電灯90が点灯した場合には(ステップS20;Yes)、タイミング制御回路41は動作を停止し、点灯していない場合はステップS11に戻る。
なお、上述したように、放電灯点灯装置1の回路は放電灯90の点灯後に始動パルスの出力を停止する構成となっているので、ステップS20の判別を行わなくても動作可能であるが、ここではタイミング制御回路41が放電灯90の点灯を検出して自律的に動作を停止する場合を例示する。
【0042】
一方、タイミング制御回路41が内蔵するカウンターのカウント値が制限値に達している場合(ステップS12;Yes)、タイミング制御回路41は、基準電圧として第2の基準電圧V2を設定し(ステップS21)、キャパシターC1の両端電圧が第1の基準電圧V1を超えるまで待機する(ステップS22)。
キャパシターC1の両端電圧が第2の基準電圧V2を超えると(ステップS22;Yes)、タイミング制御回路41は、出力値をHighからLowに切り換える(ステップS23)。ここで、上述した動作によりサイリスターX1がONになってトランス10から始動パルスが出力される(ステップS24)。タイミング制御回路41はキャパシターC1の両端電圧の監視を継続しており(ステップS25)、両端電圧が第2の基準電圧V2以下となった場合に(ステップS25;Yes)、出力値をHighに切り換えて(ステップS26)、カウンターのカウント値をクリアして(ステップS27)、ステップS20に移行する。
【0043】
以上説明したように、本発明を適用した第1の実施形態に係る放電灯点灯装置1は、直流電源80からの電流により充電されるキャパシターC1と、キャパシターC1に接続された巻線L1と、放電灯90の電極に接続された巻線L3とを有し、キャパシターC1から巻線L1に放電電流が流れることにより放電灯90の電極間に始動パルスを出力するトランス10と、キャパシターC1からトランス10への放電電流をオン/オフする放電制御回路30と、キャパシターC1の両端電圧を分圧した電圧値が基準電圧に達した後に放電制御回路30をオンに切り換えるタイミング発生部40と、を備え、タイミング発生部40は、複数の基準電圧に従って動作可能である。これにより、タイミング発生部40は、複数の基準電圧を使い分けることにより、トランス10により放電灯90の電極間に印加される始動電圧を変化させることが可能である。
すなわち、基準電圧が高い場合には、キャパシターC1の電圧が高い状態で放電制御回路30がオンになり、トランス10の1次側の巻線L1を流れる電流の傾き(di/dt)が急峻になるため、トランス10の2次側の巻線L3に高電圧が発生し、放電灯90により高電圧の始動パルスが印加される。これに対し、基準電圧が低い場合には、キャパシターC1の電圧が低い状態で放電制御回路30がオンになり、トランス10の1次側の巻線L1を流れる電流の傾きが緩やかであるため、トランス10の2次側の巻線L3に発生する電圧が比較的低く、放電灯90には、比較的低電圧の始動パルスが印加される。
このように、基準電圧を使い分けることで、例えば、ホットリスタート等の放電灯90が点灯しにくい状態では高電圧の始動パルスを出力し、放電灯90が点灯しやすい状態では比較的低電圧の始動パルスを出力するといった制御が可能となる。従って、回路構成の複雑化を招くことなく、不要な高電圧パルスの出力を抑え、確実に放電灯90を点灯させることができる。
【0044】
また、タイミング発生部40は、第1の基準電圧V1に従ってキャパシターC1から放電した回数が所定回数に達した後、或いは、第1の基準電圧V1に従って所定時間動作した後に、第2の基準電圧V2に従ってキャパシターC1から放電させる。これにより、キャパシターC1の両端電圧が低い状態でトランス10への放電をオンにして高電圧を発生し、放電灯90に所定回数の始動パルスを出力し、その後に、キャパシターC1の両端電圧が高い状態でトランス10への放電をオンにして、より高電圧の始動パルスを放電灯90に印加するので、不要な高電圧パルスを抑えるとともに、点灯しにくい状態にある放電灯90を確実に点灯させることができる。
【0045】
また、放電灯点灯装置1は、直流電源80からの直流電圧を交流電圧に変換して放電灯90の電極間に出力する交流変換回路20を備え、放電制御回路30は、放電灯90の点灯後はキャパシターC1からトランス10への放電電流をオフに保つので、放電灯90の点灯後は始動パルスを発生せず、不要な高電圧パルスの発生を抑えることができる。
【0046】
放電制御回路30は、直流電源80からの電流により充電されるキャパシターC2と、キャパシターC1及びトランス10の巻線L1とに直列接続され、キャパシターC2の両端電圧が所定の電圧に達した場合に、キャパシターC1の両端と巻線L1とを導通させるサイリスターX1とを備え、タイミング発生部40は、キャパシターC1の両端電圧が基準電圧に達したタイミングで、キャパシターC2への充電を開始させるので、シンプルな構成により、トランス10への放電電流を制御できる。
【0047】
また、上記第1の実施形態では、タイミング制御回路41が、出力値をLowに切り換えた回数が設定された値に達した場合、或いは、始動パルスの動作開始から所定時間が経過した場合に、第1の基準電圧V1から第2の基準電圧V2に切り換える場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、放電灯90の温度を検出し、ホットリスタートかコールドスタート時かを判別して、第1の基準電圧V1と第2の基準電圧V2とを切り換える構成としてもよい。
【0048】
[第2の実施形態]
図4は、本発明を適用した第2の実施形態に係る放電灯点灯装置100の構成を示す回路図である。
図4に示す放電灯点灯装置100は、上記第1の実施形態で説明した放電灯点灯装置1が備えるタイミング制御回路41に代えて、タイミング制御回路46を備えている。放電灯点灯装置100には、放電灯90の近傍に温度を検出する温度検出用プローブ48が配置され、温度検出用プローブ48の検出値を取得する温度検出器47が、タイミング制御回路46に接続されている。その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0049】
温度検出器47は、温度検出用プローブ48を介して放電灯90の温度を検出し、検出した温度に基づく信号をタイミング制御回路46に出力する。本第2の実施形態では、温度検出器47には、放電灯90の温度がコールドスタートに該当する温度であるか否かを判断する基準として、所定の温度が設定されている。温度検出器47は、温度検出用プローブ48を介して検出した放電灯90の温度が設定された所定を超えているか否かを示す信号をタイミング制御回路46に出力する。
【0050】
タイミング制御回路46には、上述したタイミング制御回路41と同様に、キャパシターC1の両端電圧を抵抗R7、R8で分圧した入力電圧が入力される。タイミング制御回路46には第1の基準電圧V1または第2の基準電圧V2の2通りの基準電圧を設定可能に構成され、入力電圧が設定された基準電圧を超えると、トランジスターQ1への出力をHighからLowに切り換える。また、入力電圧が基準電圧以下になると、トランジスターQ1への出力をLowからHighに切り換える。
タイミング制御回路46は、温度検出器47から入力される信号に基づき、放電灯90の温度が所定温度を超えている場合は第2の基準電圧V2を設定し、放電灯90の温度が所定温度以下の場合は第1の基準電圧V1を設定する。つまり、コールドスタート時には、放電灯点灯装置100は第1の基準電圧V1に基づいて始動パルスを出力し、コールドスタートでない場合、すなわちホットリスタート時には第2の基準電圧V2に基づいて始動パルスを出力する。
【0051】
このように構成される放電灯点灯装置100は、タイミング制御回路46が放電灯90の温度に基づいて基準電圧を選択して使用することにより、高電圧の始動パルスが必要ない場合には比較的低い始動パルスを放電灯90の電極間に印加し、高電圧の始動パルスを必要とするホットリスタート時には高電圧の始動パルスを放電灯90に印加する。従って、放電灯90が点灯しにくい状態では高電圧の始動パルスを出力し、放電灯90が点灯しやすい状態では比較的低電圧の始動パルスを出力するため、回路構成の複雑化を招くことなく、不要な高電圧パルスの出力を抑え、確実に放電灯90を点灯させることができる。
【0052】
[第3の実施形態]
図5は、本発明を適用した第3の実施形態に係るプロジェクターの構成を示す図である。
図5に示すプロジェクター500は、外部から入力される画像信号に基づいて、スクリーンSC(投射面)に画像を投射するものであり、一対の電極を有する光源としての放電灯90と、この放電灯90を点灯させる放電灯点灯装置1を備えている。
また、プロジェクター500は、画像信号変換部510、光変調装置540、投射光学系590、画像処理装置570、直流電源装置520、放電灯点灯装置1、放電灯90、制御部580を備えている。
【0053】
画像信号変換部510は、パーソナルコンピューター、DVDプレーヤー等の外部の画像供給装置(図示略)に接続され、この画像供給装置から入力される画像信号502(輝度−色差信号やアナログRGB信号など)を所定のワード長のデジタルRGB信号に変換して画像信号512R、512G、512Bを生成し、画像処理装置570に出力する。
また、画像処理装置570は、画像信号変換部510から入力された3つの画像信号512R、512G、512Bに対してそれぞれ画像処理を実行し、光変調装置540が備える液晶パネル560R、560G、560Bをそれぞれ駆動するための駆動信号572R、572G、572Bを出力する。
【0054】
光変調装置540(変調手段)は、ミラー群550および液晶パネル560R、560G、560Bを備えている。ミラー群550は、複数(例えば2つ)のダイクロイックミラー(図示略)及び他のミラーを備え、放電灯90が発する光束をダイクロイックミラーによってR、G、Bの色光に分離し、これらの色光をミラーにより反射して、それぞれ液晶パネル560R、560G、560Bに導く。
液晶パネル560R、560G、560Bは、それぞれ、画像処理装置570から入力される駆動信号572R、572G、572Bによって駆動されて画像を形成する。この液晶パネル560R、560G、560Bには、ミラー群550によって各々R、G、Bの色光が入射し、液晶パネル560R、560G、560Bに形成された画像によって各液晶パネルを透過する色光の光量が変調される。
【0055】
投射光学系590は、光変調装置540が備える液晶パネル560R、560G、560Bを投下した光を合成するダイクロイックプリズム(図示略)、このダイクロイックプリズムにより合成された光をスクリーンSCに導くレンズ群(図示略)等を備えている。光変調装置540により変調されたRGB各色の光は、投射光学系590において合成されてスクリーンSCに投射され、スクリーンSC上に投射画像が結像する。
【0056】
このように構成されるプロジェクター500は、外部の交流電源600により駆動される。直流電源装置520は、交流電源600から供給される交流電圧を内蔵するトランス(図示略)によって直流電圧に変換し、放電灯点灯装置1に対して、図1に示した直流電源80に相当する所定電圧(例えば300V〜400V程度)の直流電圧を供給する。また、直流電源装置520は、画像信号変換部510、光変調装置540、画像処理装置570、及び制御部580に、制御用の低電圧の直流電圧を供給する。
【0057】
放電灯点灯装置1は、上記第1の実施形態で説明したように、プロジェクター500の投射開始時に放電灯90の電極間に高電圧の電圧パルスを印加して、放電灯90を点灯させ、点灯後は放電灯90の点灯を維持するための電圧を供給する。
【0058】
制御部580は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM、RAM等を備えて構成され、ROMに記憶したプログラムを実行することにより、プロジェクター500の各部を制御する。制御部580は、図示しない操作パネルにおける操作によって、投射開始が指示された場合に、点灯を指示する制御信号582を放電灯点灯装置1に出力する。この制御信号582は、放電灯点灯装置1が備えるインバーター制御回路60(図1)及びタイミング制御回路41(図1)に入力され、第1の実施形態で説明したように放電灯90が点灯される。また、制御部580は、放電灯90の点灯開始とともに、画像信号変換部510、画像処理装置570、及び光変調装置540を動作させ、外部の画像供給装置から入力される画像信号502に基づいて、画像をスクリーンSCに投射させる。
【0059】
また、制御部580は、操作パネルにおける操作によって投射終了が指示された場合、消灯を指示する制御信号582を放電灯点灯装置1に出力する。この制御信号582は、放電灯点灯装置1が備えるインバーター制御回路60(図1)及びタイミング制御回路41(図1)に入力され、放電灯点灯装置1による放電灯90への電圧供給が停止し、放電灯90が消灯する。また、制御部580は、画像信号変換部510、画像処理装置570、及び光変調装置540を制御して、投射を終了させる。
【0060】
上記第1の実施形態で説明したように、放電灯点灯装置1は、放電灯90を点灯させる際に印加する電圧を変化させることで、例えば、ホットリスタート等の放電灯90が点灯しにくい状態では高電圧の始動パルスを出力し、放電灯90が点灯しやすい状態では比較的低電圧の始動パルスを出力することが可能であり、不要な高電圧パルスの出力を抑え、確実に放電灯90を点灯させることができる。従って、この放電灯点灯装置1を備えたプロジェクター500は、投射開始時に確実に放電灯90を点灯させることができ、かつ、放電灯点灯装置1における不要な高電圧パルスの発生を抑えることができる。これにより、放電灯点灯装置1の周囲に配置される部品のノイズの影響を抑えることができる。従って、ノイズ対策用の構成の簡素化が可能なため、より一層の小型化及び軽量化を実現でき、プロジェクター500の各部の部品の耐久性及び信頼性をより一層高めることも可能であり、さらには、ノイズによる誤動作を防止するための制御あるいは防止機構を簡略化することも可能になる。
【0061】
なお、上記各実施形態は本発明の実施態様の一例を示したものであり、本発明の実施態様は上記の例に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、図1、図4に示した放電灯点灯装置1、100は、ダウンチョッパー回路等から構成される直流電源80から供給される電流を利用して交流駆動電流を生成出力しているが、放電灯点灯装置1が降圧回路や昇圧回路を備え、当該降圧回路や昇圧回路を直流電源として交流変換回路20が交流駆動電流Iを生成出力してもよい。また、タイミング制御回路41、46はキャパシターC1の両端電圧を分圧した電圧値が基準電圧を超えたか否かを判定する構成として説明したが、キャパシターC1の両端電圧そのものがタイミング制御回路41、46に入力される構成としてもよい。この場合、第1の基準電圧V1、第2の基準電圧V2は、キャパシターC1の両端電圧自体の基準となるような電圧値に設定すればよい。交流変換回路20を構成するスイッチング素子の種類、交流変換回路20の具体的構成、サイリスターX1及びダイアックX2を含む各デバイスの種類や仕様等は、本発明の要旨の範囲内で変更可能である。
【0062】
また、上記第3の実施形態においては、第1の実施形態で説明した放電灯点灯装置1を備えたプロジェクター500について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第2の実施形態で説明した放電灯点灯装置100を備えた構成とすることも勿論可能である。さらに、第3の実施形態においては、3つの透過型の液晶パネルを用いた光変調装置540を有するプロジェクター500を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば3枚の反射型の液晶パネルを用いることも可能であるし、1枚の液晶パネルとカラーホイールを組み合わせた方式、3枚のデジタルミラーデバイス(DMD)を用いた方式、1枚のデジタルミラーデバイスとカラーホイールを組み合わせた方式等により構成してもよい。ここで、光変調装置540として1枚のみの液晶パネルまたはDMDを用いる場合には、投射光学系590においてクロスダイクロイックプリズム等の合成光学系に相当する部材は不要である。また、液晶パネル及びDMD以外にも、光源が発した光を変調可能な構成であれば、光変調装置540として問題なく採用できる。また、プロジェクター500は、スクリーンSCの正面に設置された前面投射型のプロジェクターであってもよいし、例えば、リアプロジェクション方式の画像表示装置であってもよく、その他、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)、映写機など、光源に放電灯を採用する機器に本発明を適用した場合にも、上記効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0063】
1、100…放電灯点灯装置、10…トランス、20…交流変換回路、30…放電制御回路(切換回路)、40、45…タイミング発生部(放電制御部)、41、46…タイミング制御回路、47…温度検出器、48…温度検出用プローブ、50…電流制限回路、60…制御回路、70…フィルター、80…直流電源、90…放電灯、500…プロジェクター、540…光変調装置(変調手段)、590…投射光学系、C1…キャパシター(容量)、C2…キャパシター(出力制御容量)、C3〜C4…キャパシター、D1…ダイオード、L1〜L3…巻線、Q1…トランジスター、R1〜R8、R10〜R11…抵抗、S1〜S4…スイッチ素子、T1…トランス、X1…サイリスター、X2…ダイアック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの電流により充電される容量と、
前記容量に接続された1次側の巻線と、放電灯の電極に接続された2次側の巻線とを有し、前記容量から前記1次側の巻線に放電電流が流れることにより前記放電灯の電極間に始動電圧を出力するトランスと、
前記容量から前記トランスへの放電電流をオン/オフする切換回路と、
前記容量の両端電圧が基準電圧に達した後に前記切換回路をオンに切り換える放電制御部と、を備え、
前記放電制御部は複数の前記基準電圧に従って動作可能であること、
を特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記放電制御部は、より低い側の前記基準電圧に従って前記容量から放電した回数が所定回数に達した後、或いは、より低い側の前記基準電圧に従って所定時間動作した後に、より高い側の前記基準電圧に従って前記容量から放電させることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記放電制御部は、前記放電灯の温度に基づいて前記基準電圧を選択して使用することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記直流電圧を交流電圧に変換して前記放電灯の電極間に出力する交流変換回路を備え、
前記切換回路は、前記放電灯の点灯後は前記容量から前記トランスへの放電電流をオフに保つことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記切換回路は、前記直流電源からの電流により充電される出力制御容量と、前記容量及び前記トランスの前記1次側の巻線とに直列接続され、前記出力制御容量の両端電圧が所定の電圧に達した場合に、前記容量の両端と前記1次側の巻線とを導通させるサイリスターとを備え、
前記放電制御部は、前記容量の両端電圧が前記基準電圧に達したタイミングで、前記出力制御容量への充電を開始させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
一対の電極を有する放電灯と、
前記放電灯が発した光を変調する変調手段と、
前記変調手段により変調された光を投射面に投射する投射光学系と、
前記放電灯に接続された、請求項1から5のいずれかに記載の放電灯点灯装置と、
を備えたことを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−33600(P2013−33600A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168076(P2011−168076)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】