放電灯点灯装置、照明器具、および照明システム
【課題】 簡易な構造で始動時のグロー放電からアーク放電へのスムーズな移行を可能にする放電灯点灯装置、照明器具、および照明システムを提供する。
【解決手段】 インバータ回路2が動作を開始して矩形波電圧を出力した後、インバータ制御回路2aはスイッチング素子Q4をオンすることで、イグナイタ回路4の動作を開始させ、直流電源回路1の出力から抵抗R1,コンデンサC4,スイッチング素子Q4を介して電流が流れ、コンデンサC4は充電される。コンデンサC4の両端電圧Vc4が上昇し電圧応答素子S1の閾値電圧に達すると、電圧応答素子S1がオンしてコンデンサC4の充電電荷は放電し、パルストランスPTの2次巻線N2で昇圧された高圧パルスが矩形波電圧に重畳される。そして、高圧放電灯DLは絶縁破壊し、グロー放電を経てアーク放電へ移行し、安定点灯する。
【解決手段】 インバータ回路2が動作を開始して矩形波電圧を出力した後、インバータ制御回路2aはスイッチング素子Q4をオンすることで、イグナイタ回路4の動作を開始させ、直流電源回路1の出力から抵抗R1,コンデンサC4,スイッチング素子Q4を介して電流が流れ、コンデンサC4は充電される。コンデンサC4の両端電圧Vc4が上昇し電圧応答素子S1の閾値電圧に達すると、電圧応答素子S1がオンしてコンデンサC4の充電電荷は放電し、パルストランスPTの2次巻線N2で昇圧された高圧パルスが矩形波電圧に重畳される。そして、高圧放電灯DLは絶縁破壊し、グロー放電を経てアーク放電へ移行し、安定点灯する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水銀灯やメタルハライドランプのように始動時に高電圧を印加する必要のある高圧放電灯を点灯させる放電灯点灯装置、照明器具、および照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、フルブリッジ構成のインバータ回路を用いた従来の放電灯点灯装置を示し、交流電源Vsの交流出力を整流、平滑して所望の直流出力に変換する直流電源回路1と、直流電源回路1の直流電圧出力を所望の矩形波電圧に変換するインバータ回路2と、インバータ回路2の矩形波電圧を供給される高圧放電灯DLと、始動時に高圧放電灯DLに高圧パルスを印加するイグナイタ回路10とを備える。
【0003】
直流電源回路1は、交流電源Vsの交流出力を全波整流する整流器1aと、整流出力を所望の直流電圧に昇圧する昇圧チョッパ回路1bと、昇圧チョッパ回路1bの昇圧動作を制御するチョッパ制御回路1cとから構成される。
【0004】
昇圧チョッパ回路1bは、整流出力の正側に挿入されたインダクタL1とダイオードD1との直列回路と、インダクタL1を介して整流出力間に接続したMOS型FETからなるスイッチング素子Q1と、出力端間に接続された電解コンデンサC5とで構成され、スイッチング素子Q1をオン・オフすることで、整流出力が所望の直流出力に昇圧される。チョッパ制御回路1cは、昇圧チョッパ回路1bの出力電圧を検出し、検出した出力電圧が所定の電圧となるようにスイッチング素子Q1のオン・オフ制御を行う。
【0005】
インバータ回路2は、直流電源回路1の出力を所望の電圧に降圧する降圧チョッパ回路2bと、降圧チョッパ回路2bの出力を矩形波電圧に変換する極性反転回路2cと、インバータ制御回路2eとから構成される。
【0006】
降圧チョッパ回路2bは、直流電源回路1の正側出力に挿入されたMOS型FETからなるスイッチング素子Q10とインダクタL3との直列回路と、スイッチング素子Q10を介して入力端間に接続したダイオードD2と、出力端間に接続されたコンデンサC6とで構成される。
【0007】
極性反転回路2cは、降圧チョッパ回路2bの出力端間に接続したMOS型FETからなるスイッチング素子Q11,Q12の直列回路,スイッチング素子Q13,Q14の直列回路で構成され、スイッチング素子Q11,Q12の接続中点とスイッチング素子Q13,Q14の接続中点との間に高圧放電灯DLとイグナイタ回路10とが接続されている。
【0008】
インバータ制御回路2eは、降圧チョッパ回路2bの出力電圧を検出し、検出した出力電圧が所定の電圧となるようにスイッチング素子Q10のオン・オフ制御を行うとともに、スイッチング素子Q11,Q14とスイッチング素子Q12,Q13とを交互にオン・オフすることで(図10(a)〜(d))、極性反転回路2cが矩形波電圧Voを出力して高圧放電灯DLに印加する(図10(e))。このとき、ランプ電圧VDL(またはランプ電流、またはランプ電力)を検出して、ランプ電圧VDLに応じてスイッチング素子Q11〜Q14のスイッチング制御を行うことで、高圧放電灯DLに供給する電力を調整する。
【0009】
イグナイタ回路10は、スイッチング素子Q11,Q12の接続中点とスイッチング素子Q13,Q14の接続中点との間に接続された抵抗R10とコンデンサC10との直列回路と、コンデンサC10に並列接続したサイダックのような電圧応答素子S10とパルストランスPT10の1次巻線N11との直列回路と、高圧放電灯DLに直列接続されたパルストランスPT10の2次巻線N12とで構成され、2次巻線N12を介して高圧放電灯DLに高圧パルスを印加する。なお、高圧放電灯DLと2次巻線N12との直列回路は、スイッチング素子Q11,Q12の接続中点とスイッチング素子Q13,Q14の接続中点との間に接続している。
【0010】
以下、イグナイタ回路10の動作について図11(a)〜(c)の波形図を用いて説明する。まず、インバータ回路2が動作すると、極性反転回路2cが出力する矩形波電圧Voによって(図11(a))、抵抗R10を介してコンデンサC10が所定の時定数で徐々に充電される。コンデンサC10の両端電圧Vc10が上昇し電圧応答素子S10の閾値電圧Vboに達すると、電圧応答素子S10がオンして、コンデンサC10の充電電荷は電圧応答素子S10,1次巻線N11を介して放電する(図11(b))。このとき、1次巻線N1に発生した電圧は、1次巻線N11よりターン数が多い2次巻線N12で昇圧されて高圧パルスVpが矩形波電圧Voに重畳される(図11(c))。そして、高圧パルスVpをインバータ回路2が出力する矩形波電圧Voに重畳させたランプ電圧VDLを高圧放電灯DLの電極間に印加することで高圧放電灯DLは絶縁破壊し、点灯状態に移行する。
【0011】
また、図12は、図9の放電灯点灯装置においてイグナイタ回路20を用いたもので、イグナイタ回路20は、高圧放電灯DLに並列接続したコンデンサC20と、高圧放電灯DLに直列接続したインダクタL20とからなり、コンデンサC20とインダクタL20とで直列共振回路を構成している。
【0012】
そして、始動時に、スイッチング素子Q11,Q14とスイッチング素子Q12,Q13とを交互にオン・オフするのであるが(図13(a)〜(d))、このときのスイッチング周波数は、極性反転回路2cの出力を電源としてコンデンサC20とインダクタL20とを共振させて、コンデンサC20の両端に所望の共振パルスを発生させることのできる周波数であり、コンデンサC20およびインダクタL20を小型化するために、スイッチング素子Q11〜Q14の性能等も考慮しつつ5kHz〜200kHzに設定される。また、コンデンサC20およびインダクタL20は、5kHz〜200kHzのスイッチング周波数で所望の共振パルスを得ることができるように設計されている。そして、この共振パルスによって高圧放電灯DLが絶縁破壊し、点灯状態に移行する。
【0013】
次に、図14は、ハーフブリッジ構成のインバータ回路を用いた従来の放電灯点灯装置を示し、直流電源E1の出力端間に接続したバイポーラトランジスタからなるスイッチング素子Q21,Q22の直列回路、電解コンデンサC21,C22の直列回路と、スイッチング素子Q21,Q22に各々逆並列接続したダイオードD21,D22と、スイッチング素子Q21,Q22の接続中点と電解コンデンサC21,C22の接続中点との間に接続したインダクタL30と高圧放電灯DLとの直列回路と、高圧放電灯DLに並列接続したコンデンサC30とから構成されるハーフブリッジインバータであり、スイッチング素子Q21,Q22をオン・オフすることで、高圧放電灯DLに矩形波電圧を供給する。
【0014】
以下、ランプ始動方法について説明する。スイッチング素子Q21,Q22は、図15(a)(b)に示すような制御信号が各々入力され、電解コンデンサC21,C22には直流電源E1の約半分の電圧が各々充電される。そして、期間T1→T2→T3→T4の順に動作するのであるが、まず、期間T1,T3では、スイッチング素子Q21,Q22は交互にオン・オフされ、図15(c)に示すような高周波のランプ電圧VDLが高圧放電灯DLに印加される。そして、期間T2では、スイッチング素子Q22がオフでスイッチング素子Q21が高周波でオン・オフすることにより、正極性の直流電圧Vaが高圧放電灯DLに印加される。期間T4では、スイッチング素子Q21がオフでスイッチング素子Q22が高周波でオン・オフすることにより、負極性の直流電圧−Vaが高圧放電灯DLに印加される。そして、期間T1,T3の高周波動作期間におけるスイッチング素子Q21,Q22のスイッチング周波数をインダクタL30とコンデンサC30とで構成される直列共振回路(無負荷状態)の共振周波数の近傍に設定することで、インダクタL30とコンデンサC30の共振動作によって始動用の高圧共振パルスを発生させることができる。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特許第2948600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記図12,図14に示すイグナイタ回路は、インダクタとコンデンサとの共振回路を用いた共振昇圧式であるので、LC共振を制御するために制御回路の複雑化を招く。また、管灯回路長の延長を要求される場合を考慮すると共振回路の設計が難しくなる。
【0016】
また、上記図9に示すイグナイタ回路は、インバータ回路の出力を電源としており、高圧パルス出力がインバータ回路の動作に連動するため、ランプ電圧VDLの正・負の各極性毎に1本づつしか高圧パルスを出力できず、始動時のグロー放電からアーク放電へのスムーズな移行が困難なものであった。
【0017】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構造で始動時のグロー放電からアーク放電へのスムーズな移行を可能にする放電灯点灯装置、照明器具、および照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明は、直流電源が出力する直流電圧を交流電圧に変換して放電灯に供給するインバータ回路と、前記直流電圧によって充電される充電手段を具備し、該充電手段を放電させることで、前記交流電圧に重畳させる高圧パルスを生成するイグナイタ回路とを備え、イグナイタ回路は、インバータ回路の動作開始後に動作を開始して、前記高圧パルスを前記交流電圧に重畳させることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、直流電圧を電源として始動時の高圧パルスを生成するので、複数の高圧パルスを連続して重畳させることができ、簡易な構造で始動時のグロー放電からアーク放電への移行をスムーズに行うことができる。また、必ずインバータ回路が動作を開始した後で、イグナイタ回路の動作を開始させるので、イグナイタ回路の動作時にはインバータ回路の中点が安定しており、回路の誤動作、誤検出を防止することができる。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1において、前記イグナイタ回路は、前記直流電源から前記充電手段への充電経路に、少なくとも1つのスイッチング素子を備えることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、直流電圧を電源として動作するイグナイタ回路の動作タイミングをスイッチング素子によって容易に制御することができる。
【0022】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記イグナイタ回路は、前記インバータ回路が出力する交流電圧が所定の極性であるときに、前記高圧パルスを交流電圧に重畳させる動作を開始することを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、パルス高さが十分に高くなり、グロー放電からアーク放電への移行がスムーズに行われる。
【0024】
請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかにおいて、前記イグナイタ回路は、前記インバータ回路が出力する交流電圧が所定の極性であるときにのみ、前記高圧パルスを交流電圧に重畳させることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、パルス高さが十分に高くなり、グロー放電からアーク放電への移行がスムーズに行われる。
【0026】
請求項5の発明は、請求項3または4において、前記インバータ回路は、ハーフブリッジ構成であり、少なくとも2つの容量の異なるコンデンサを直列に接続して直流電源が出力する直流電圧を異なる電圧に分圧し、分圧した各電圧を交互に電源に用いて交流電圧を生成しており、前記インバータ回路が出力する交流電圧が所定の極性であるときとは、インバータ回路が容量の小さいコンデンサを電源として動作しているときであることを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、直流電源の出力電圧を低くすることができ、部品ストレスが抑制されるので、部品の小型化、低コスト化が可能となる。
【0028】
請求項6の発明は、請求項2乃至5いずれかにおいて、前記スイッチング素子は、前記イグナイタ回路の動作時にオンし、放電灯の点灯後にオフすることを特徴とする。
【0029】
この発明によれば、直流電圧を電源として動作するイグナイタ回路の動作タイミングをスイッチング素子によって容易に制御することができる。
【0030】
請求項7の発明は、照明器具は、請求項1乃至6いずれかの放電灯点灯装置と、該放電灯点灯装置によって電力を供給される放電灯を具備した灯具とを備えることを特徴とする。
【0031】
この発明によれば、請求項1乃至6いずれかと同様の効果を奏し得る照明器具を提供することができる。
【0032】
請求項8の発明は、照明システムは、請求項7の照明器具を備えて点灯制御を行うことを特徴とする。
【0033】
この発明によれば、請求項7と同様の効果を奏し得る照明システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明では、直流電圧を電源として始動時の高圧パルスを生成するので、複数の高圧パルスを連続して重畳させることができ、簡易な構造で始動時のグロー放電からアーク放電への移行をスムーズに行うことができ、また、必ずインバータ回路が動作を開始した後で、イグナイタ回路の動作を開始させるので、イグナイタ回路の動作時にはインバータ回路の中点が安定しており、回路の誤動作、誤検出を防止することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
(実施形態1)
本実施形態の放電灯点灯装置は、図1に示すように、交流電源Vsの交流出力を整流、平滑して所望の直流出力に変換する直流電源回路1と、直流電源回路1の直流電圧出力を所望の矩形波電圧に変換するインバータ回路2と、インバータ回路2の矩形波電圧を供給される高圧放電灯DLを含む負荷回路3と、始動時に高圧放電灯DLに高圧パルスを印加するイグナイタ回路4とを備える。
【0037】
直流電源回路1は、交流電源Vsの交流出力を全波整流する整流器1aと、整流出力を所望の直流電圧に昇圧する昇圧チョッパ回路1bと、昇圧チョッパ回路1bの昇圧動作を制御するチョッパ制御回路1cとから構成される。
【0038】
昇圧チョッパ回路1bは、整流出力の正側に挿入されたインダクタL1とダイオードD1との直列回路と、インダクタL1を介して整流出力間に接続したMOS型FETからなるスイッチング素子Q1とで構成され、スイッチング素子Q1をオン・オフすることで、整流出力が所望の直流出力に昇圧される。チョッパ制御回路1cは、昇圧チョッパ回路1bの出力電圧を検出し、検出した出力電圧が所定の電圧となるようにスイッチング素子Q1のオン・オフ制御を行う。
【0039】
インバータ回路2は、直流電源回路1の出力端間に接続した高圧側の電解コンデンサC1と低圧側の電解コンデンサC2との直列回路、MOS型FETからなる高圧側のスイッチング素子Q2と低圧側のスイッチング素子Q3との直列回路と、スイッチング素子Q2,Q3のオン・オフを制御するインバータ制御回路2aと、スイッチング素子Q2,Q3の接続中点に一端を接続した限流用のインダクタL2とから構成されるハーフブリッジインバータであり、電解コンデンサC1,C2の接続中点とインダクタL2の他端との間に負荷回路3を接続して、インバータ制御回路2aがスイッチング素子Q2,Q3をオン・オフすることで、直流電源回路1からの直流電圧を交番させて負荷回路3に矩形波電圧を供給する。ここで、電解コンデンサC1,C2の容量は同じであり、直流電源回路1の出力電圧が600Vであれば、各コンデンサ電圧Vc1,Vc2は300Vになる。なお、上記スイッチング素子Q1〜Q3はFETで図示しているが、バイポーラトランジスタであってもよい。
【0040】
負荷回路3は、電解コンデンサC1,C2の接続中点と限流用のインダクタL2の他端との間に接続された高圧放電灯DLおよびコンデンサC3とから構成され、インバータ回路2からの低周波の矩形波電圧によって高圧放電灯DLが点灯する。
【0041】
イグナイタ回路4は、電解コンデンサC1,C2の直列回路に並列接続した抵抗R1とコンデンサC4とFET等のスイッチング素子Q4との直列回路と、コンデンサC4に並列接続したサイダックのような電圧応答素子S1とパルストランスPT1の1次巻線N1との直列回路と、高圧放電灯DLに直列接続されたパルストランスPT1の2次巻線N2とで構成され、2次巻線N2を介して高圧放電灯DLに高圧パルスを印加する。なお、高圧放電灯DLと2次巻線N2との直列回路はコンデンサC3に並列接続している。
【0042】
以下、インバータ回路2の動作について図2(a)〜(e)の波形図を用いて説明する。まず、ランプ非点灯状態である無負荷時には、スイッチング素子Q2を高周波でオン・オフさせる(チョッピング)期間Tq2と、スイッチング素子Q3を高周波でオン・オフさせる(チョッピング)期間Tq3とを低周波で交互に繰り返すスイッチング動作によって(図2(a)(b))、矩形波電圧Voを高圧放電灯DLに供給する(図2(e))。
【0043】
そして、インバータ回路2が上記動作を開始した後、インバータ制御回路2aは、スイッチング素子Q2のチョッピング期間Tq2にイグナイタ回路4のスイッチング素子Q4をオンさせる(図2(c))。
【0044】
すると、直流電源回路1の出力から抵抗R1,コンデンサC4,スイッチング素子Q4を介して電流が流れ、コンデンサC4は充電される。コンデンサC4の両端電圧Vc4が上昇し電圧応答素子S1の閾値電圧Vboに達すると、電圧応答素子S1がオンしてコンデンサC4の充電電荷は放電し(図2(d))、コンデンサC4から電圧応答素子S1,1次巻線N1を介して振動電流が流れる。
【0045】
1次巻線N1に発生した電圧は、1次巻線N1よりターン数が多い2次巻線N2で昇圧されて3kV〜5kVの高圧パルスVpが矩形波電圧Voに重畳される(図2(e))。
【0046】
そして、高圧パルスVpをインバータ回路2が出力する矩形波電圧Voに重畳させたランプ電圧VDLを高圧放電灯DLの電極間に印加することで高圧放電灯DLは絶縁破壊し、グロー放電を経てアーク放電へ移行し、安定点灯する。安定点灯時にも、スイッチング素子Q2のチョッピング期間Tq2’と、スイッチング素子Q3のチョッピング期間Tq3’とを低周波で交互に繰り返す。但し、チョッピング期間Tq2’,Tq3’が切り替わる周波数は、チョッピング期間Tq2,Tq3が切り替わる周波数と異なる周波数であってもよい。そして、点灯状態に移行すると、スイッチング素子Q4をオフしてイグナイタ回路4の動作を停止させる。
【0047】
本実施形態のイグナイタ回路4は、直流電源回路1の出力を電源とするため、生成する高圧パルスVpは正極性であり、矩形波電圧Voが負極性となるチョッピング期間Tq3に重畳させても、パルス高さが低くなり、グロー放電からアーク放電へのスムーズな移行が困難になる。そこで、上記のように矩形波電圧Voの極性が正となるチョッピング期間Tq2にスイッチング素子Q4をオンして、イグナイタ回路4の動作を開始させ、イグナイタ回路4で生成した高圧パルスVpを正極性の矩形波電圧Voにまず重畳させることで、パルス高さが十分に高くなり、グロー放電からアーク放電への移行がスムーズに行われる。
【0048】
さらに、直流電源回路1の出力を電源として高圧パルスVpを生成するので、インバータ回路2の動作に関係なく、チョッピング期間Tq2,Tq3毎に複数の高圧パルスVpを連続して重畳させることができ、グロー放電からアーク放電への移行が一層スムーズに行われる。
【0049】
また、必ずインバータ回路2が動作を開始した後でスイッチング素子Q4をオンして、イグナイタ回路4の動作を開始させることで、イグナイタ回路4の動作時にはインバータ回路2の中点が安定しており、回路の誤動作、誤検出を防止することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、インバータ回路2をハーフブリッジ構成としているので、フルブリッジ構成に比べて部品数を減らすことができ、コストを抑えることができる。
【0051】
(実施形態2)
本実施形態の放電灯点灯装置は、図3に示すように、図9の従来のフルブリッジ構成の放電灯点灯装置に負荷回路3、イグナイタ回路4、インバータ制御回路2dを設けたものである。なお、直流電源回路1、降圧チョッパ回路2b、極性反転回路2cの構成は図9と同様であり、説明は省略する。
【0052】
イグナイタ回路4は、降圧チョッパ回路2bの出力端に並列接続した抵抗R1とコンデンサC4とFET等のスイッチング素子Q4との直列回路と、コンデンサC4に並列接続したサイダックのような電圧応答素子S1とパルストランスPT1の1次巻線N1との直列回路と、高圧放電灯DLに直列接続されたパルストランスPT1の2次巻線N2とで構成され、2次巻線N2を介して高圧放電灯DLに高圧パルスを印加する。
【0053】
また、高圧放電灯DLと2次巻線N2との直列回路はコンデンサC3に並列接続して、高圧放電灯DLとコンデンサC3とで負荷回路3を構成している。
【0054】
インバータ制御回路2dは、降圧チョッパ回路2bの出力電圧を検出し、検出した出力電圧が所定の電圧となるようにスイッチング素子Q10のオン・オフ制御を行うとともに、極性反転回路2cのスイッチング素子Q11〜Q14、イグナイタ回路4のスイッチング素子Q4のオン・オフ制御も行う。
【0055】
以下、インバータ回路2の動作について図4(a)〜(g)の波形図を用いて説明する。まず、ランプ非点灯状態である無負荷時には、スイッチング素子Q11,Q14をオンさせるオン期間Tq11と、スイッチング素子Q12,Q13をオフさせるオン期間Tq12とを低周波で交互に繰り返すスイッチング動作によって(図4(a)〜(d))、矩形波電圧Voを高圧放電灯DLに供給する(図4(g))。
【0056】
そして、インバータ回路2が上記動作を開始した後、インバータ制御回路2aは、スイッチング素子Q11,Q14のオン期間Tq11と同期間にイグナイタ回路4のスイッチング素子Q4をオンさせる(図4(e))。
【0057】
すると、直流電源回路1の出力から抵抗R1,コンデンサC4,スイッチング素子Q4を介して電流が流れ、コンデンサC4は充電される。コンデンサC4の両端電圧Vc4が上昇し電圧応答素子S1の閾値電圧Vboに達すると、電圧応答素子S1がオンしてコンデンサC4の充電電荷は放電し(図4(f))、コンデンサC4から電圧応答素子S1,1次巻線N1を介して振動電流が流れる。
【0058】
1次巻線N1に発生した電圧は、1次巻線N1よりターン数が多い2次巻線N2で昇圧されて3kV〜5kVの高圧パルスVpが矩形波電圧Voに重畳される(図4(g))。
【0059】
そして、高圧パルスVpをインバータ回路2が出力する矩形波電圧Voに重畳させたランプ電圧VDLを高圧放電灯DLの電極間に印加することで高圧放電灯DLは絶縁破壊し、グロー放電を経てアーク放電へ移行し、安定点灯する。安定点灯時にも、スイッチング素子Q11,Q14のオン期間Tq11’と、スイッチング素子Q12,Q13のオン期間Tq12’とを低周波で交互に繰り返す。但し、オン期間Tq11’,Tq12’が切り替わる周波数は、オン期間Tq11,Tq12が切り替わる周波数と異なる周波数であってもよい。そして、点灯状態に移行すると、スイッチング素子Q4をオフしてイグナイタ回路4の動作を停止させる。
【0060】
本実施形態のイグナイタ回路4は、直流電源回路1の出力を電源とするため、生成する高圧パルスVpは正極性であり、矩形波電圧Voが負極性となるオン期間Tq12に重畳させても、パルス高さが低くなり、グロー放電からアーク放電へのスムーズな移行が困難になる。そこで、上記のように矩形波電圧Voの極性が正となるオン期間Tq11のみにスイッチング素子Q4をオンして、イグナイタ回路4を動作させ、イグナイタ回路4で生成した高圧パルスVpを正極性の矩形波電圧Voにのみ重畳させることで、パルス高さが十分に高くなり、グロー放電からアーク放電への移行がスムーズに行われる。
【0061】
さらに、直流電源回路1の出力を電源として高圧パルスVpを生成するので、インバータ回路2の動作に関係なく、オン期間Tq11毎に複数の高圧パルスVpを連続して重畳させることができ、グロー放電からアーク放電への移行が一層スムーズに行われる。
【0062】
また、必ずインバータ回路2が動作を開始した後でスイッチング素子Q4をオンして、イグナイタ回路4の動作を開始させることで、イグナイタ回路4の動作時にはインバータ回路2の中点が安定しており、回路の誤動作、誤検出を防止することができる。
【0063】
(実施形態3)
本実施形態の放電灯点灯装置は、実施形態1の電解コンデンサC1,C2の容量を互いに異なる容量としたものであり、他の構成は実施形態1と同様であり説明は省略する。
【0064】
ここで、高圧放電灯DLを点灯させる上で必要な条件を下記に示す。高圧放電灯DLをグロー放電からアーク放電にスムーズに移行させるためには、イグナイタ回路4の高圧パルスによってランプ電極間の絶縁破壊が起こった後、250〜300V以上の無負荷電圧が必要とされており、実施形態1でこの電圧条件を達成するには、電解コンデンサC1,C2に250Vの電圧を印加しなければならず、直流電源回路1は500Vの直流電圧を供給しなければならなかった。
【0065】
また、直流電源回路1で交流入力を直流に変換する場合、入力電流歪を減らすためには、出力電圧を、入力電圧×√2×1.1の直流電圧にまで昇圧する必要がある。(ここで、1.1は10%の電源変動耐量を表す。)
さらに、高圧放電灯DLの点灯後は、インバータ回路2は、電解コンデンサC1,C2の各電圧Vc1,Vc2を交互に高圧放電灯DLに印加するため、コンデンサ電圧Vc1,Vc2はランプ安定点灯電圧(一般的に70〜120V)以上必要であった。
【0066】
本実施形態の高圧放電灯点灯回路では、上記条件を満たすために以下のように設計される。まず、高圧放電灯DLをグロー放電からアーク放電にスムーズに移行させるために必要な電圧は、スイッチング素子Q2,Q3のうちいずれか一方のスイッチング素子をチョッピングさせたときのみ供給できればよく、コンデンサ電圧Vc1,Vc2のうちいずれか一方の電圧を絶縁破壊に必要な電圧以上とすればよい。例えば、一方のコンデンサ電圧Vc1を絶縁破壊に必要な電圧以上とするようにVc1=300Vとすれば、他方のコンデンサ電圧Vc2をランプ安定点灯電圧以上となるようにVc2=150Vとする。
【0067】
以上より、直流電源回路1は450Vの直流電圧を出力すればよいことになる。直流電源回路1において入力電流歪を減らしながら450Vの直流電圧を出力するには、450V÷√2÷1.1=290Vより、交流電源Vsの電圧は290V以下であればよく、日本国内の商用電源100V,242V、米国の商用電源120V,277Vには対応可能である。
【0068】
そこで、上記のようにコンデンサ電圧Vc1=300V、コンデンサ電圧Vc2=150Vとするには、電解コンデンサC1の容量:電解コンデンサC2の容量=1:2となるように設定すれば、直流電源回路1の出力電圧を実施形態1に比べて低くすることができる。したがって、部品ストレスが抑制されて、インバータ回路2を耐圧450Vを満たす部品で設計することができ、部品の小型化、低コスト化が可能となる。
【0069】
そして、本実施形態においても、図5(a)〜(e)に示すように矩形波電圧Voの極性が正となるチョッピング期間Tq2にスイッチング素子Q4をオンして、イグナイタ回路4の動作を開始させ、イグナイタ回路4で生成した高圧パルスVpを300Vの正極性の矩形波電圧Voにまず重畳させることで、パルス高さが十分に高くなり、グロー放電からアーク放電への移行がスムーズに行われる。
【0070】
さらに、直流電源回路1の出力を電源として高圧パルスVpを生成するので、インバータ回路2の動作に関係なく、チョッピング期間Tq2,Tq3毎に複数の高圧パルスVpを連続して重畳させることができ、グロー放電からアーク放電への移行が一層スムーズに行われる。
【0071】
また、必ずインバータ回路2が動作を開始した後でスイッチング素子Q4をオンして、イグナイタ回路4の動作を開始させることで、イグナイタ回路4の動作時にはインバータ回路2の中点が安定しており、回路の誤動作、誤検出を防止することができる。
【0072】
また、実施形態2と同様に、矩形波電圧Voの極性が正となるオン期間Tq2のみにスイッチング素子Q4をオンして、イグナイタ回路4を動作させ、イグナイタ回路4で生成した高圧パルスVpを正極性の矩形波電圧Voにのみ重畳させるようにしてもよい。
【0073】
(実施形態4)
図6〜図8は、実施形態1乃至3いずれかの高圧放電灯点灯装置を、ハウジング10内に収納し、灯具11内のソケット(図示なし)に装着された高圧放電灯DLを点灯させる照明器具の外観を示す。これらの照明器具は、実施形態1乃至3いずれかの高圧放電灯点灯装置を用いるので、グロー放電からアーク放電への移行がスムーズに行われ、さらには回路の誤動作、誤検出を防止することができるものである。
【0074】
なお、図6,図8はスポットライトにHIDランプ等の高圧放電灯DLを用いたトラックライト対応器具であり、図7はダウンライトにHIDランプ等の高圧放電灯DLを用いた器具である。
【0075】
さらに、これらの照明器具を用いて、各照明器具の点灯制御を行う照明システムを構築すれば、システムとしても上記同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態1の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図2】(a)〜(e)同上の始動時の動作を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図4】(a)〜(g)同上の始動時の動作を示す図である。
【図5】(a)〜(e)本発明の実施形態3の始動時の動作を示す図である。
【図6】本発明の実施形態4の第1の照明装置の外観構成を示す図である。
【図7】同上の第2の照明装置の外観構成を示す図である。
【図8】同上の第3の照明装置の外観構成を示す図である。
【図9】従来の第1の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図10】(a)〜(e)同上のインバータ回路の動作を示す図である。
【図11】(a)〜(c)同上の始動時の動作を示す図である。
【図12】従来の第2の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図13】(a)〜(d)同上の始動時の動作を示す図である。
【図14】従来の第3の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図15】(a)〜(c)同上の始動時の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1 直流電源回路
2 インバータ回路
3 負荷回路
4 イグナイタ回路
R1 抵抗
C4 コンデンサ
Q4 スイッチング素子
S1 電圧応答素子
PT パルストランス
N1 1次巻線
N2 2次巻線
DL 高圧放電灯
【技術分野】
【0001】
本発明は、水銀灯やメタルハライドランプのように始動時に高電圧を印加する必要のある高圧放電灯を点灯させる放電灯点灯装置、照明器具、および照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、フルブリッジ構成のインバータ回路を用いた従来の放電灯点灯装置を示し、交流電源Vsの交流出力を整流、平滑して所望の直流出力に変換する直流電源回路1と、直流電源回路1の直流電圧出力を所望の矩形波電圧に変換するインバータ回路2と、インバータ回路2の矩形波電圧を供給される高圧放電灯DLと、始動時に高圧放電灯DLに高圧パルスを印加するイグナイタ回路10とを備える。
【0003】
直流電源回路1は、交流電源Vsの交流出力を全波整流する整流器1aと、整流出力を所望の直流電圧に昇圧する昇圧チョッパ回路1bと、昇圧チョッパ回路1bの昇圧動作を制御するチョッパ制御回路1cとから構成される。
【0004】
昇圧チョッパ回路1bは、整流出力の正側に挿入されたインダクタL1とダイオードD1との直列回路と、インダクタL1を介して整流出力間に接続したMOS型FETからなるスイッチング素子Q1と、出力端間に接続された電解コンデンサC5とで構成され、スイッチング素子Q1をオン・オフすることで、整流出力が所望の直流出力に昇圧される。チョッパ制御回路1cは、昇圧チョッパ回路1bの出力電圧を検出し、検出した出力電圧が所定の電圧となるようにスイッチング素子Q1のオン・オフ制御を行う。
【0005】
インバータ回路2は、直流電源回路1の出力を所望の電圧に降圧する降圧チョッパ回路2bと、降圧チョッパ回路2bの出力を矩形波電圧に変換する極性反転回路2cと、インバータ制御回路2eとから構成される。
【0006】
降圧チョッパ回路2bは、直流電源回路1の正側出力に挿入されたMOS型FETからなるスイッチング素子Q10とインダクタL3との直列回路と、スイッチング素子Q10を介して入力端間に接続したダイオードD2と、出力端間に接続されたコンデンサC6とで構成される。
【0007】
極性反転回路2cは、降圧チョッパ回路2bの出力端間に接続したMOS型FETからなるスイッチング素子Q11,Q12の直列回路,スイッチング素子Q13,Q14の直列回路で構成され、スイッチング素子Q11,Q12の接続中点とスイッチング素子Q13,Q14の接続中点との間に高圧放電灯DLとイグナイタ回路10とが接続されている。
【0008】
インバータ制御回路2eは、降圧チョッパ回路2bの出力電圧を検出し、検出した出力電圧が所定の電圧となるようにスイッチング素子Q10のオン・オフ制御を行うとともに、スイッチング素子Q11,Q14とスイッチング素子Q12,Q13とを交互にオン・オフすることで(図10(a)〜(d))、極性反転回路2cが矩形波電圧Voを出力して高圧放電灯DLに印加する(図10(e))。このとき、ランプ電圧VDL(またはランプ電流、またはランプ電力)を検出して、ランプ電圧VDLに応じてスイッチング素子Q11〜Q14のスイッチング制御を行うことで、高圧放電灯DLに供給する電力を調整する。
【0009】
イグナイタ回路10は、スイッチング素子Q11,Q12の接続中点とスイッチング素子Q13,Q14の接続中点との間に接続された抵抗R10とコンデンサC10との直列回路と、コンデンサC10に並列接続したサイダックのような電圧応答素子S10とパルストランスPT10の1次巻線N11との直列回路と、高圧放電灯DLに直列接続されたパルストランスPT10の2次巻線N12とで構成され、2次巻線N12を介して高圧放電灯DLに高圧パルスを印加する。なお、高圧放電灯DLと2次巻線N12との直列回路は、スイッチング素子Q11,Q12の接続中点とスイッチング素子Q13,Q14の接続中点との間に接続している。
【0010】
以下、イグナイタ回路10の動作について図11(a)〜(c)の波形図を用いて説明する。まず、インバータ回路2が動作すると、極性反転回路2cが出力する矩形波電圧Voによって(図11(a))、抵抗R10を介してコンデンサC10が所定の時定数で徐々に充電される。コンデンサC10の両端電圧Vc10が上昇し電圧応答素子S10の閾値電圧Vboに達すると、電圧応答素子S10がオンして、コンデンサC10の充電電荷は電圧応答素子S10,1次巻線N11を介して放電する(図11(b))。このとき、1次巻線N1に発生した電圧は、1次巻線N11よりターン数が多い2次巻線N12で昇圧されて高圧パルスVpが矩形波電圧Voに重畳される(図11(c))。そして、高圧パルスVpをインバータ回路2が出力する矩形波電圧Voに重畳させたランプ電圧VDLを高圧放電灯DLの電極間に印加することで高圧放電灯DLは絶縁破壊し、点灯状態に移行する。
【0011】
また、図12は、図9の放電灯点灯装置においてイグナイタ回路20を用いたもので、イグナイタ回路20は、高圧放電灯DLに並列接続したコンデンサC20と、高圧放電灯DLに直列接続したインダクタL20とからなり、コンデンサC20とインダクタL20とで直列共振回路を構成している。
【0012】
そして、始動時に、スイッチング素子Q11,Q14とスイッチング素子Q12,Q13とを交互にオン・オフするのであるが(図13(a)〜(d))、このときのスイッチング周波数は、極性反転回路2cの出力を電源としてコンデンサC20とインダクタL20とを共振させて、コンデンサC20の両端に所望の共振パルスを発生させることのできる周波数であり、コンデンサC20およびインダクタL20を小型化するために、スイッチング素子Q11〜Q14の性能等も考慮しつつ5kHz〜200kHzに設定される。また、コンデンサC20およびインダクタL20は、5kHz〜200kHzのスイッチング周波数で所望の共振パルスを得ることができるように設計されている。そして、この共振パルスによって高圧放電灯DLが絶縁破壊し、点灯状態に移行する。
【0013】
次に、図14は、ハーフブリッジ構成のインバータ回路を用いた従来の放電灯点灯装置を示し、直流電源E1の出力端間に接続したバイポーラトランジスタからなるスイッチング素子Q21,Q22の直列回路、電解コンデンサC21,C22の直列回路と、スイッチング素子Q21,Q22に各々逆並列接続したダイオードD21,D22と、スイッチング素子Q21,Q22の接続中点と電解コンデンサC21,C22の接続中点との間に接続したインダクタL30と高圧放電灯DLとの直列回路と、高圧放電灯DLに並列接続したコンデンサC30とから構成されるハーフブリッジインバータであり、スイッチング素子Q21,Q22をオン・オフすることで、高圧放電灯DLに矩形波電圧を供給する。
【0014】
以下、ランプ始動方法について説明する。スイッチング素子Q21,Q22は、図15(a)(b)に示すような制御信号が各々入力され、電解コンデンサC21,C22には直流電源E1の約半分の電圧が各々充電される。そして、期間T1→T2→T3→T4の順に動作するのであるが、まず、期間T1,T3では、スイッチング素子Q21,Q22は交互にオン・オフされ、図15(c)に示すような高周波のランプ電圧VDLが高圧放電灯DLに印加される。そして、期間T2では、スイッチング素子Q22がオフでスイッチング素子Q21が高周波でオン・オフすることにより、正極性の直流電圧Vaが高圧放電灯DLに印加される。期間T4では、スイッチング素子Q21がオフでスイッチング素子Q22が高周波でオン・オフすることにより、負極性の直流電圧−Vaが高圧放電灯DLに印加される。そして、期間T1,T3の高周波動作期間におけるスイッチング素子Q21,Q22のスイッチング周波数をインダクタL30とコンデンサC30とで構成される直列共振回路(無負荷状態)の共振周波数の近傍に設定することで、インダクタL30とコンデンサC30の共振動作によって始動用の高圧共振パルスを発生させることができる。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特許第2948600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記図12,図14に示すイグナイタ回路は、インダクタとコンデンサとの共振回路を用いた共振昇圧式であるので、LC共振を制御するために制御回路の複雑化を招く。また、管灯回路長の延長を要求される場合を考慮すると共振回路の設計が難しくなる。
【0016】
また、上記図9に示すイグナイタ回路は、インバータ回路の出力を電源としており、高圧パルス出力がインバータ回路の動作に連動するため、ランプ電圧VDLの正・負の各極性毎に1本づつしか高圧パルスを出力できず、始動時のグロー放電からアーク放電へのスムーズな移行が困難なものであった。
【0017】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構造で始動時のグロー放電からアーク放電へのスムーズな移行を可能にする放電灯点灯装置、照明器具、および照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1の発明は、直流電源が出力する直流電圧を交流電圧に変換して放電灯に供給するインバータ回路と、前記直流電圧によって充電される充電手段を具備し、該充電手段を放電させることで、前記交流電圧に重畳させる高圧パルスを生成するイグナイタ回路とを備え、イグナイタ回路は、インバータ回路の動作開始後に動作を開始して、前記高圧パルスを前記交流電圧に重畳させることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、直流電圧を電源として始動時の高圧パルスを生成するので、複数の高圧パルスを連続して重畳させることができ、簡易な構造で始動時のグロー放電からアーク放電への移行をスムーズに行うことができる。また、必ずインバータ回路が動作を開始した後で、イグナイタ回路の動作を開始させるので、イグナイタ回路の動作時にはインバータ回路の中点が安定しており、回路の誤動作、誤検出を防止することができる。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1において、前記イグナイタ回路は、前記直流電源から前記充電手段への充電経路に、少なくとも1つのスイッチング素子を備えることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、直流電圧を電源として動作するイグナイタ回路の動作タイミングをスイッチング素子によって容易に制御することができる。
【0022】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記イグナイタ回路は、前記インバータ回路が出力する交流電圧が所定の極性であるときに、前記高圧パルスを交流電圧に重畳させる動作を開始することを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、パルス高さが十分に高くなり、グロー放電からアーク放電への移行がスムーズに行われる。
【0024】
請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかにおいて、前記イグナイタ回路は、前記インバータ回路が出力する交流電圧が所定の極性であるときにのみ、前記高圧パルスを交流電圧に重畳させることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、パルス高さが十分に高くなり、グロー放電からアーク放電への移行がスムーズに行われる。
【0026】
請求項5の発明は、請求項3または4において、前記インバータ回路は、ハーフブリッジ構成であり、少なくとも2つの容量の異なるコンデンサを直列に接続して直流電源が出力する直流電圧を異なる電圧に分圧し、分圧した各電圧を交互に電源に用いて交流電圧を生成しており、前記インバータ回路が出力する交流電圧が所定の極性であるときとは、インバータ回路が容量の小さいコンデンサを電源として動作しているときであることを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、直流電源の出力電圧を低くすることができ、部品ストレスが抑制されるので、部品の小型化、低コスト化が可能となる。
【0028】
請求項6の発明は、請求項2乃至5いずれかにおいて、前記スイッチング素子は、前記イグナイタ回路の動作時にオンし、放電灯の点灯後にオフすることを特徴とする。
【0029】
この発明によれば、直流電圧を電源として動作するイグナイタ回路の動作タイミングをスイッチング素子によって容易に制御することができる。
【0030】
請求項7の発明は、照明器具は、請求項1乃至6いずれかの放電灯点灯装置と、該放電灯点灯装置によって電力を供給される放電灯を具備した灯具とを備えることを特徴とする。
【0031】
この発明によれば、請求項1乃至6いずれかと同様の効果を奏し得る照明器具を提供することができる。
【0032】
請求項8の発明は、照明システムは、請求項7の照明器具を備えて点灯制御を行うことを特徴とする。
【0033】
この発明によれば、請求項7と同様の効果を奏し得る照明システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明では、直流電圧を電源として始動時の高圧パルスを生成するので、複数の高圧パルスを連続して重畳させることができ、簡易な構造で始動時のグロー放電からアーク放電への移行をスムーズに行うことができ、また、必ずインバータ回路が動作を開始した後で、イグナイタ回路の動作を開始させるので、イグナイタ回路の動作時にはインバータ回路の中点が安定しており、回路の誤動作、誤検出を防止することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
(実施形態1)
本実施形態の放電灯点灯装置は、図1に示すように、交流電源Vsの交流出力を整流、平滑して所望の直流出力に変換する直流電源回路1と、直流電源回路1の直流電圧出力を所望の矩形波電圧に変換するインバータ回路2と、インバータ回路2の矩形波電圧を供給される高圧放電灯DLを含む負荷回路3と、始動時に高圧放電灯DLに高圧パルスを印加するイグナイタ回路4とを備える。
【0037】
直流電源回路1は、交流電源Vsの交流出力を全波整流する整流器1aと、整流出力を所望の直流電圧に昇圧する昇圧チョッパ回路1bと、昇圧チョッパ回路1bの昇圧動作を制御するチョッパ制御回路1cとから構成される。
【0038】
昇圧チョッパ回路1bは、整流出力の正側に挿入されたインダクタL1とダイオードD1との直列回路と、インダクタL1を介して整流出力間に接続したMOS型FETからなるスイッチング素子Q1とで構成され、スイッチング素子Q1をオン・オフすることで、整流出力が所望の直流出力に昇圧される。チョッパ制御回路1cは、昇圧チョッパ回路1bの出力電圧を検出し、検出した出力電圧が所定の電圧となるようにスイッチング素子Q1のオン・オフ制御を行う。
【0039】
インバータ回路2は、直流電源回路1の出力端間に接続した高圧側の電解コンデンサC1と低圧側の電解コンデンサC2との直列回路、MOS型FETからなる高圧側のスイッチング素子Q2と低圧側のスイッチング素子Q3との直列回路と、スイッチング素子Q2,Q3のオン・オフを制御するインバータ制御回路2aと、スイッチング素子Q2,Q3の接続中点に一端を接続した限流用のインダクタL2とから構成されるハーフブリッジインバータであり、電解コンデンサC1,C2の接続中点とインダクタL2の他端との間に負荷回路3を接続して、インバータ制御回路2aがスイッチング素子Q2,Q3をオン・オフすることで、直流電源回路1からの直流電圧を交番させて負荷回路3に矩形波電圧を供給する。ここで、電解コンデンサC1,C2の容量は同じであり、直流電源回路1の出力電圧が600Vであれば、各コンデンサ電圧Vc1,Vc2は300Vになる。なお、上記スイッチング素子Q1〜Q3はFETで図示しているが、バイポーラトランジスタであってもよい。
【0040】
負荷回路3は、電解コンデンサC1,C2の接続中点と限流用のインダクタL2の他端との間に接続された高圧放電灯DLおよびコンデンサC3とから構成され、インバータ回路2からの低周波の矩形波電圧によって高圧放電灯DLが点灯する。
【0041】
イグナイタ回路4は、電解コンデンサC1,C2の直列回路に並列接続した抵抗R1とコンデンサC4とFET等のスイッチング素子Q4との直列回路と、コンデンサC4に並列接続したサイダックのような電圧応答素子S1とパルストランスPT1の1次巻線N1との直列回路と、高圧放電灯DLに直列接続されたパルストランスPT1の2次巻線N2とで構成され、2次巻線N2を介して高圧放電灯DLに高圧パルスを印加する。なお、高圧放電灯DLと2次巻線N2との直列回路はコンデンサC3に並列接続している。
【0042】
以下、インバータ回路2の動作について図2(a)〜(e)の波形図を用いて説明する。まず、ランプ非点灯状態である無負荷時には、スイッチング素子Q2を高周波でオン・オフさせる(チョッピング)期間Tq2と、スイッチング素子Q3を高周波でオン・オフさせる(チョッピング)期間Tq3とを低周波で交互に繰り返すスイッチング動作によって(図2(a)(b))、矩形波電圧Voを高圧放電灯DLに供給する(図2(e))。
【0043】
そして、インバータ回路2が上記動作を開始した後、インバータ制御回路2aは、スイッチング素子Q2のチョッピング期間Tq2にイグナイタ回路4のスイッチング素子Q4をオンさせる(図2(c))。
【0044】
すると、直流電源回路1の出力から抵抗R1,コンデンサC4,スイッチング素子Q4を介して電流が流れ、コンデンサC4は充電される。コンデンサC4の両端電圧Vc4が上昇し電圧応答素子S1の閾値電圧Vboに達すると、電圧応答素子S1がオンしてコンデンサC4の充電電荷は放電し(図2(d))、コンデンサC4から電圧応答素子S1,1次巻線N1を介して振動電流が流れる。
【0045】
1次巻線N1に発生した電圧は、1次巻線N1よりターン数が多い2次巻線N2で昇圧されて3kV〜5kVの高圧パルスVpが矩形波電圧Voに重畳される(図2(e))。
【0046】
そして、高圧パルスVpをインバータ回路2が出力する矩形波電圧Voに重畳させたランプ電圧VDLを高圧放電灯DLの電極間に印加することで高圧放電灯DLは絶縁破壊し、グロー放電を経てアーク放電へ移行し、安定点灯する。安定点灯時にも、スイッチング素子Q2のチョッピング期間Tq2’と、スイッチング素子Q3のチョッピング期間Tq3’とを低周波で交互に繰り返す。但し、チョッピング期間Tq2’,Tq3’が切り替わる周波数は、チョッピング期間Tq2,Tq3が切り替わる周波数と異なる周波数であってもよい。そして、点灯状態に移行すると、スイッチング素子Q4をオフしてイグナイタ回路4の動作を停止させる。
【0047】
本実施形態のイグナイタ回路4は、直流電源回路1の出力を電源とするため、生成する高圧パルスVpは正極性であり、矩形波電圧Voが負極性となるチョッピング期間Tq3に重畳させても、パルス高さが低くなり、グロー放電からアーク放電へのスムーズな移行が困難になる。そこで、上記のように矩形波電圧Voの極性が正となるチョッピング期間Tq2にスイッチング素子Q4をオンして、イグナイタ回路4の動作を開始させ、イグナイタ回路4で生成した高圧パルスVpを正極性の矩形波電圧Voにまず重畳させることで、パルス高さが十分に高くなり、グロー放電からアーク放電への移行がスムーズに行われる。
【0048】
さらに、直流電源回路1の出力を電源として高圧パルスVpを生成するので、インバータ回路2の動作に関係なく、チョッピング期間Tq2,Tq3毎に複数の高圧パルスVpを連続して重畳させることができ、グロー放電からアーク放電への移行が一層スムーズに行われる。
【0049】
また、必ずインバータ回路2が動作を開始した後でスイッチング素子Q4をオンして、イグナイタ回路4の動作を開始させることで、イグナイタ回路4の動作時にはインバータ回路2の中点が安定しており、回路の誤動作、誤検出を防止することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、インバータ回路2をハーフブリッジ構成としているので、フルブリッジ構成に比べて部品数を減らすことができ、コストを抑えることができる。
【0051】
(実施形態2)
本実施形態の放電灯点灯装置は、図3に示すように、図9の従来のフルブリッジ構成の放電灯点灯装置に負荷回路3、イグナイタ回路4、インバータ制御回路2dを設けたものである。なお、直流電源回路1、降圧チョッパ回路2b、極性反転回路2cの構成は図9と同様であり、説明は省略する。
【0052】
イグナイタ回路4は、降圧チョッパ回路2bの出力端に並列接続した抵抗R1とコンデンサC4とFET等のスイッチング素子Q4との直列回路と、コンデンサC4に並列接続したサイダックのような電圧応答素子S1とパルストランスPT1の1次巻線N1との直列回路と、高圧放電灯DLに直列接続されたパルストランスPT1の2次巻線N2とで構成され、2次巻線N2を介して高圧放電灯DLに高圧パルスを印加する。
【0053】
また、高圧放電灯DLと2次巻線N2との直列回路はコンデンサC3に並列接続して、高圧放電灯DLとコンデンサC3とで負荷回路3を構成している。
【0054】
インバータ制御回路2dは、降圧チョッパ回路2bの出力電圧を検出し、検出した出力電圧が所定の電圧となるようにスイッチング素子Q10のオン・オフ制御を行うとともに、極性反転回路2cのスイッチング素子Q11〜Q14、イグナイタ回路4のスイッチング素子Q4のオン・オフ制御も行う。
【0055】
以下、インバータ回路2の動作について図4(a)〜(g)の波形図を用いて説明する。まず、ランプ非点灯状態である無負荷時には、スイッチング素子Q11,Q14をオンさせるオン期間Tq11と、スイッチング素子Q12,Q13をオフさせるオン期間Tq12とを低周波で交互に繰り返すスイッチング動作によって(図4(a)〜(d))、矩形波電圧Voを高圧放電灯DLに供給する(図4(g))。
【0056】
そして、インバータ回路2が上記動作を開始した後、インバータ制御回路2aは、スイッチング素子Q11,Q14のオン期間Tq11と同期間にイグナイタ回路4のスイッチング素子Q4をオンさせる(図4(e))。
【0057】
すると、直流電源回路1の出力から抵抗R1,コンデンサC4,スイッチング素子Q4を介して電流が流れ、コンデンサC4は充電される。コンデンサC4の両端電圧Vc4が上昇し電圧応答素子S1の閾値電圧Vboに達すると、電圧応答素子S1がオンしてコンデンサC4の充電電荷は放電し(図4(f))、コンデンサC4から電圧応答素子S1,1次巻線N1を介して振動電流が流れる。
【0058】
1次巻線N1に発生した電圧は、1次巻線N1よりターン数が多い2次巻線N2で昇圧されて3kV〜5kVの高圧パルスVpが矩形波電圧Voに重畳される(図4(g))。
【0059】
そして、高圧パルスVpをインバータ回路2が出力する矩形波電圧Voに重畳させたランプ電圧VDLを高圧放電灯DLの電極間に印加することで高圧放電灯DLは絶縁破壊し、グロー放電を経てアーク放電へ移行し、安定点灯する。安定点灯時にも、スイッチング素子Q11,Q14のオン期間Tq11’と、スイッチング素子Q12,Q13のオン期間Tq12’とを低周波で交互に繰り返す。但し、オン期間Tq11’,Tq12’が切り替わる周波数は、オン期間Tq11,Tq12が切り替わる周波数と異なる周波数であってもよい。そして、点灯状態に移行すると、スイッチング素子Q4をオフしてイグナイタ回路4の動作を停止させる。
【0060】
本実施形態のイグナイタ回路4は、直流電源回路1の出力を電源とするため、生成する高圧パルスVpは正極性であり、矩形波電圧Voが負極性となるオン期間Tq12に重畳させても、パルス高さが低くなり、グロー放電からアーク放電へのスムーズな移行が困難になる。そこで、上記のように矩形波電圧Voの極性が正となるオン期間Tq11のみにスイッチング素子Q4をオンして、イグナイタ回路4を動作させ、イグナイタ回路4で生成した高圧パルスVpを正極性の矩形波電圧Voにのみ重畳させることで、パルス高さが十分に高くなり、グロー放電からアーク放電への移行がスムーズに行われる。
【0061】
さらに、直流電源回路1の出力を電源として高圧パルスVpを生成するので、インバータ回路2の動作に関係なく、オン期間Tq11毎に複数の高圧パルスVpを連続して重畳させることができ、グロー放電からアーク放電への移行が一層スムーズに行われる。
【0062】
また、必ずインバータ回路2が動作を開始した後でスイッチング素子Q4をオンして、イグナイタ回路4の動作を開始させることで、イグナイタ回路4の動作時にはインバータ回路2の中点が安定しており、回路の誤動作、誤検出を防止することができる。
【0063】
(実施形態3)
本実施形態の放電灯点灯装置は、実施形態1の電解コンデンサC1,C2の容量を互いに異なる容量としたものであり、他の構成は実施形態1と同様であり説明は省略する。
【0064】
ここで、高圧放電灯DLを点灯させる上で必要な条件を下記に示す。高圧放電灯DLをグロー放電からアーク放電にスムーズに移行させるためには、イグナイタ回路4の高圧パルスによってランプ電極間の絶縁破壊が起こった後、250〜300V以上の無負荷電圧が必要とされており、実施形態1でこの電圧条件を達成するには、電解コンデンサC1,C2に250Vの電圧を印加しなければならず、直流電源回路1は500Vの直流電圧を供給しなければならなかった。
【0065】
また、直流電源回路1で交流入力を直流に変換する場合、入力電流歪を減らすためには、出力電圧を、入力電圧×√2×1.1の直流電圧にまで昇圧する必要がある。(ここで、1.1は10%の電源変動耐量を表す。)
さらに、高圧放電灯DLの点灯後は、インバータ回路2は、電解コンデンサC1,C2の各電圧Vc1,Vc2を交互に高圧放電灯DLに印加するため、コンデンサ電圧Vc1,Vc2はランプ安定点灯電圧(一般的に70〜120V)以上必要であった。
【0066】
本実施形態の高圧放電灯点灯回路では、上記条件を満たすために以下のように設計される。まず、高圧放電灯DLをグロー放電からアーク放電にスムーズに移行させるために必要な電圧は、スイッチング素子Q2,Q3のうちいずれか一方のスイッチング素子をチョッピングさせたときのみ供給できればよく、コンデンサ電圧Vc1,Vc2のうちいずれか一方の電圧を絶縁破壊に必要な電圧以上とすればよい。例えば、一方のコンデンサ電圧Vc1を絶縁破壊に必要な電圧以上とするようにVc1=300Vとすれば、他方のコンデンサ電圧Vc2をランプ安定点灯電圧以上となるようにVc2=150Vとする。
【0067】
以上より、直流電源回路1は450Vの直流電圧を出力すればよいことになる。直流電源回路1において入力電流歪を減らしながら450Vの直流電圧を出力するには、450V÷√2÷1.1=290Vより、交流電源Vsの電圧は290V以下であればよく、日本国内の商用電源100V,242V、米国の商用電源120V,277Vには対応可能である。
【0068】
そこで、上記のようにコンデンサ電圧Vc1=300V、コンデンサ電圧Vc2=150Vとするには、電解コンデンサC1の容量:電解コンデンサC2の容量=1:2となるように設定すれば、直流電源回路1の出力電圧を実施形態1に比べて低くすることができる。したがって、部品ストレスが抑制されて、インバータ回路2を耐圧450Vを満たす部品で設計することができ、部品の小型化、低コスト化が可能となる。
【0069】
そして、本実施形態においても、図5(a)〜(e)に示すように矩形波電圧Voの極性が正となるチョッピング期間Tq2にスイッチング素子Q4をオンして、イグナイタ回路4の動作を開始させ、イグナイタ回路4で生成した高圧パルスVpを300Vの正極性の矩形波電圧Voにまず重畳させることで、パルス高さが十分に高くなり、グロー放電からアーク放電への移行がスムーズに行われる。
【0070】
さらに、直流電源回路1の出力を電源として高圧パルスVpを生成するので、インバータ回路2の動作に関係なく、チョッピング期間Tq2,Tq3毎に複数の高圧パルスVpを連続して重畳させることができ、グロー放電からアーク放電への移行が一層スムーズに行われる。
【0071】
また、必ずインバータ回路2が動作を開始した後でスイッチング素子Q4をオンして、イグナイタ回路4の動作を開始させることで、イグナイタ回路4の動作時にはインバータ回路2の中点が安定しており、回路の誤動作、誤検出を防止することができる。
【0072】
また、実施形態2と同様に、矩形波電圧Voの極性が正となるオン期間Tq2のみにスイッチング素子Q4をオンして、イグナイタ回路4を動作させ、イグナイタ回路4で生成した高圧パルスVpを正極性の矩形波電圧Voにのみ重畳させるようにしてもよい。
【0073】
(実施形態4)
図6〜図8は、実施形態1乃至3いずれかの高圧放電灯点灯装置を、ハウジング10内に収納し、灯具11内のソケット(図示なし)に装着された高圧放電灯DLを点灯させる照明器具の外観を示す。これらの照明器具は、実施形態1乃至3いずれかの高圧放電灯点灯装置を用いるので、グロー放電からアーク放電への移行がスムーズに行われ、さらには回路の誤動作、誤検出を防止することができるものである。
【0074】
なお、図6,図8はスポットライトにHIDランプ等の高圧放電灯DLを用いたトラックライト対応器具であり、図7はダウンライトにHIDランプ等の高圧放電灯DLを用いた器具である。
【0075】
さらに、これらの照明器具を用いて、各照明器具の点灯制御を行う照明システムを構築すれば、システムとしても上記同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態1の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図2】(a)〜(e)同上の始動時の動作を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図4】(a)〜(g)同上の始動時の動作を示す図である。
【図5】(a)〜(e)本発明の実施形態3の始動時の動作を示す図である。
【図6】本発明の実施形態4の第1の照明装置の外観構成を示す図である。
【図7】同上の第2の照明装置の外観構成を示す図である。
【図8】同上の第3の照明装置の外観構成を示す図である。
【図9】従来の第1の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図10】(a)〜(e)同上のインバータ回路の動作を示す図である。
【図11】(a)〜(c)同上の始動時の動作を示す図である。
【図12】従来の第2の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図13】(a)〜(d)同上の始動時の動作を示す図である。
【図14】従来の第3の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図15】(a)〜(c)同上の始動時の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1 直流電源回路
2 インバータ回路
3 負荷回路
4 イグナイタ回路
R1 抵抗
C4 コンデンサ
Q4 スイッチング素子
S1 電圧応答素子
PT パルストランス
N1 1次巻線
N2 2次巻線
DL 高圧放電灯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源が出力する直流電圧を交流電圧に変換して放電灯に供給するインバータ回路と、
前記直流電圧によって充電される充電手段を具備し、該充電手段を放電させることで、前記交流電圧に重畳させる高圧パルスを生成するイグナイタ回路とを備え、
イグナイタ回路は、インバータ回路の動作開始後に動作を開始して、前記高圧パルスを前記交流電圧に重畳させる
ことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記イグナイタ回路は、前記直流電源から前記充電手段への充電経路に、少なくとも1つのスイッチング素子を備えることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記イグナイタ回路は、前記インバータ回路が出力する交流電圧が所定の極性であるときに、前記高圧パルスを交流電圧に重畳させる動作を開始することを特徴とする請求項1または2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記イグナイタ回路は、前記インバータ回路が出力する交流電圧が所定の極性であるときにのみ、前記高圧パルスを交流電圧に重畳させることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記インバータ回路は、ハーフブリッジ構成であり、少なくとも2つの容量の異なるコンデンサを直列に接続して直流電源が出力する直流電圧を異なる電圧に分圧し、分圧した各電圧を交互に電源に用いて交流電圧を生成しており、前記インバータ回路が出力する交流電圧が所定の極性であるときとは、インバータ回路が容量の小さいコンデンサを電源として動作しているときであることを特徴とする請求項3または4記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、前記イグナイタ回路の動作時にオンし、放電灯の点灯後にオフすることを特徴とする請求項2乃至5いずれか記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかの放電灯点灯装置と、該放電灯点灯装置によって電力を供給される放電灯を具備した灯具とを備えることを特徴とする照明器具。
【請求項8】
請求項7の照明器具を備えて点灯制御を行うことを特徴とする照明システム。
【請求項1】
直流電源が出力する直流電圧を交流電圧に変換して放電灯に供給するインバータ回路と、
前記直流電圧によって充電される充電手段を具備し、該充電手段を放電させることで、前記交流電圧に重畳させる高圧パルスを生成するイグナイタ回路とを備え、
イグナイタ回路は、インバータ回路の動作開始後に動作を開始して、前記高圧パルスを前記交流電圧に重畳させる
ことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記イグナイタ回路は、前記直流電源から前記充電手段への充電経路に、少なくとも1つのスイッチング素子を備えることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記イグナイタ回路は、前記インバータ回路が出力する交流電圧が所定の極性であるときに、前記高圧パルスを交流電圧に重畳させる動作を開始することを特徴とする請求項1または2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記イグナイタ回路は、前記インバータ回路が出力する交流電圧が所定の極性であるときにのみ、前記高圧パルスを交流電圧に重畳させることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記インバータ回路は、ハーフブリッジ構成であり、少なくとも2つの容量の異なるコンデンサを直列に接続して直流電源が出力する直流電圧を異なる電圧に分圧し、分圧した各電圧を交互に電源に用いて交流電圧を生成しており、前記インバータ回路が出力する交流電圧が所定の極性であるときとは、インバータ回路が容量の小さいコンデンサを電源として動作しているときであることを特徴とする請求項3または4記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、前記イグナイタ回路の動作時にオンし、放電灯の点灯後にオフすることを特徴とする請求項2乃至5いずれか記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかの放電灯点灯装置と、該放電灯点灯装置によって電力を供給される放電灯を具備した灯具とを備えることを特徴とする照明器具。
【請求項8】
請求項7の照明器具を備えて点灯制御を行うことを特徴とする照明システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−26830(P2007−26830A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205865(P2005−205865)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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