放電灯点灯装置および照明器具
【課題】周囲温度に応じて調光カーブを補正することで放電灯の立ち消え、ちらつきを防止する。
【解決手段】調光信号に応じてインバータ3の出力を変化させる調光制御部を有する放電灯点灯装置において、放電灯Laの最冷点温度の影響により変化する放電灯Laの動作を規定する特性(例えば放電灯電圧)を検出回路8により検出し、その検出信号が調光信号に応じて設定された所定の基準値を超えた場合に、調光信号に応じた放電灯電力の変化である調光カーブを補正する調光カーブ補正手段62を有する。調光カーブ補正手段62は、放電灯Laの最冷点温度が常温時の最冷点温度よりも低いときは調光カーブの傾きを小さくすることによってランプ電力を上げる方向に補正し、放電灯Laの最冷点温度が常温時の最冷点温度よりも高いときは調光カーブの傾きを大きくすることによってランプ電力を下げる方向に補正する。
【解決手段】調光信号に応じてインバータ3の出力を変化させる調光制御部を有する放電灯点灯装置において、放電灯Laの最冷点温度の影響により変化する放電灯Laの動作を規定する特性(例えば放電灯電圧)を検出回路8により検出し、その検出信号が調光信号に応じて設定された所定の基準値を超えた場合に、調光信号に応じた放電灯電力の変化である調光カーブを補正する調光カーブ補正手段62を有する。調光カーブ補正手段62は、放電灯Laの最冷点温度が常温時の最冷点温度よりも低いときは調光カーブの傾きを小さくすることによってランプ電力を上げる方向に補正し、放電灯Laの最冷点温度が常温時の最冷点温度よりも高いときは調光カーブの傾きを大きくすることによってランプ電力を下げる方向に補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯を高周波電力により点灯・調光させる放電灯点灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放電灯を点灯・調光させ、十分な調光幅に設定した場合でも低温時における立ち消え・ちらつきを防止する手段として以下のようなものがある。
【0003】
特許文献1(特開平5−89992号公報)では、インバータ出力を変化させる手段に温度補償手段(ダイオード)を設け、この温度補償手段の温度特性により調光レべルが変化することにより、低温時は常温よりもランプ出力が増加し、立ち消えを防止するものである。
【0004】
特許文献2(特開平5−283189号公報)では、ランプ電圧を検出して基準電圧と比較し、ランプ電圧が基準電圧よりも高い場合には、それ以上ランプ電圧が高くならないようにランプ出力を増加させることで、低温時の立ち消えを防止しているものである。
【特許文献1】特開平5−89992号公報
【特許文献2】特開平5−283189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1(特開平5−89992号公報)では、ダイオードやサーミスタ等の温度補償手段により低温時にインバータ周波数を決定する信号を変化させてランプ出力を増加し、立ち消えを防止しているが、ランプ最冷点と温度補償手段の温度は必ずしも一定の相関関係があるとは言えない。例えば、安定器内部の温度補償手段の温度が充分高い状態で、冷えたランプを点灯・調光させる場合(ランプ交換時など)は、有効に温度補償手段が動作しないことになる。また、点灯直後と点灯後充分時間が経過している場合では、安定器内部の温度補償手段の温度は異なるため、ランプ周囲温度が低くなくても点灯直後は温度補償手段が誤動作し、ランプ周囲温度が低いのに点灯後充分時間が経過している場合では温度補償手段が動作しないことになる。以上のようにダイオードやサーミスタのような温度補償手段を用いても、ランプ最冷点と温度補償手段の温度の相関関係が必ずしも一定ではないので、有効に動作せず立ち消えが発生する場合がある。
【0006】
特許文献2(特開平5−283189)では、ランプ電圧を検出し、調光時にランプ電圧が基準電圧よりも高くなった場合にランプ出力を増加させるため、使用者が調光器を用いて調光する場合には、調光器の操作範囲が狭くなる。つまり、ランプの周囲温度によって、調光器の操作範囲が変化してしまう問題がある。
【0007】
図14の実線に常温時の調光信号とランプ電力の関係を示す。調光信号はPWM信号であり、そのDutyを変化させることで調光レベルを変化させている。調光信号のDuty:0%がFull出力、調光信号のDuty:85%が調光下限で、それ以上に調光信号のDutyが増加すると消灯される。図14の点線に低温時の調光信号とランプ電力の関係を示す。ここでは説明を分かりやすくする為にランプ電力フィードバックを行っているものとする。低温時には調光途中でランプ電圧が増加するため、ランプ電圧が基準電圧以上にならないように動作し、図14の点線のように本来の調光信号よりも狭い範囲でしかランプ電力が変化しないのである。
【0008】
以上のように、特許文献2の従来例ではランプ周囲温度によって、調光器の操作範囲が変化するので、例えば図14に示すように、常温時では調光信号のDutyが0%〜85%の範囲でランプ電力が変化するが、低温時には調光信号のDutyが0%〜70%の範囲でしかランプ電力が変化しないため、使用者に違和感を与えることになる。
【0009】
また、特許文献2の従来例では、立ち消え前にランプ電圧が上昇するのを検出してからランプ出力を増加させるため、ランプ電圧が上昇する前はランプ周囲温度が低い場合であっても、ランプ出力を増加させることはない。一般的に定格出力付近から調光途中までは低温時の方が常温時に比べランプ電圧が低下する。従って、低温時の方が常温時よりも照度が低下するが、特許文献2の従来例では立ち消え直前にランプ出力を増加させるため、定格出力付近から調光途中までの照度は低いままである。
【0010】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、ダイオードやサーミスタのような温度補償手段を用いることなく、ランプの最冷点温度の影響により変化するランプの動作を規定する特性を検出することで、ランプの立ち消え・ちらつきを防止し、調光カーブを補正することでランプ周囲温度(ランプ最冷点温度)が変化しても調光器の操作範囲が狭くなることのない放電灯点灯装置を提供することを課題とする。また、立ち消え前にランプ出力を増加させるのではなく、定格出力付近から調光途中においても出力を増加させることで、低温時の照度低下を抑制することができる放電灯点灯装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、上記の課題を解決するために、図1に示すように、直流電源Eの出力端に接続された少なくとも1つ以上のスイッチング素子Q1,Q2を備えるインバータ3と、前記インバータ3の出力端に共振回路4を介して放電灯Laを接続可能とした負荷回路5と、前記放電灯Laの最冷点温度の影響により変化する放電灯Laの動作を規定する特性(例えば、放電灯電圧)を検出して検出信号を出力する検出回路8と、調光信号が入力され、調光信号に応じて前記インバータ3の出力を変化させる調光制御部(マイコン6)とを有する放電灯点灯装置において、前記調光制御部(マイコン6)は、前記検出信号が調光信号に応じて設定された所定の基準値を超えた場合に、調光信号に応じた放電灯電力の変化である調光カーブを補正する調光カーブ補正手段62を備え、該調光カーブ補正手段62は、放電灯Laの最冷点温度が常温時の最冷点温度よりも低いときは調光カーブの傾きを小さくすることによってランプ電力を上げる方向に補正し、放電灯Laの最冷点温度が常温時の最冷点温度よりも高いときは調光カーブの傾きを大きくすることによってランプ電力を下げる方向に補正することを特徴とするものである。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記調光カーブ補正手段62は、図3に示すように、補正後においても放電灯電力が変化する調光信号の変化幅が補正前と同じであるように調光カーブの傾きを補正することを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、図5、図8に示すように、調光状態で検出される前記放電灯Laの動作を規定する特性は放電灯電圧の直流成分であり、前記検出信号は放電灯電圧の直流成分に応じた値を検出することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、図7に示すように、前記放電灯Laの動作を規定する特性は放電灯Laが点灯する始動電圧であり、フィラメント先行予熱から放電灯始動時まで放電灯電圧を徐々に増加させ、放電灯Laが始動する電圧に応じた値を検出することを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、図8〜図12に示すように、前記調光制御部(マイコン6)は、定格出力から調光下限まで人の目に認識できない程度の短い期間で間欠的に調光を行い、前記検出回路は該期間での放電灯Laの動作を規定する特性を検出して検出信号を出力することを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の放電灯点灯装置と、この放電灯点灯装置により点灯動作が制御される放電灯とを含むことを特徴とする照明器具である(図15)。
【0017】
特許請求の範囲に記載の「放電灯の最冷点温度の影響により変化する放電灯の動作を規定する特性」とは、一般的には放電灯電圧Vla、放電灯電流Ila、放電灯電力Wla等を指し、放電灯電流Ilaの変化により影響を受ける共振電流も含む。また、それらの電気特性を検出し、所望の値となるようにフィードバック動作を行う場合には、ランプ出力を制御するインバータの動作周波数やインバータの電源電圧なども「放電灯最冷点温度の影響により変化する放電灯の動作を規定する特性」に含まれる。例えば、ランプ電流フィードバックを行っている場合には、ランプ最冷点温度が変化してもランプ電流は一定であるが、インバータの動作周波数は変化するためである。
【0018】
以上のランプ最冷点温度の影響により変化する要因を検出することにより、ランプ周囲温度を正確に検知することができる。なお、ランプ最冷点とはランプ点灯中に放電管が最も冷えている箇所であり、一般的にランプ最冷点の温度は放電管内部の水銀蒸気圧に大きな影響を与える。即ち、ランプ最冷点の温度は立ち消え、ちらつき発生を支配する要因となるのである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、ダイオードやサーミスタのような温度補償手段を用いるよりも正確にランプ周囲温度が常温よりも低温であることを検出し、立ち消え・ちらつきを回避することができる。また、ランプ周囲温度が常温よりも高温である場合は更に深くまで調光することが出来る。また、立ち消え前にランプ出力を増加させるのではなく、定格出力付近から調光途中においても出力を増加させるため、低温時の照度低下を抑制することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、低温時に調光下限を補正する場合においても調光器の操作範囲は狭くなることなく、ランプ周囲温度が変化しても調光器の操作範囲は同じであるため、使用者は違和感なく使用することができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、調光時はランプ電圧の直流成分を検出することで、より正確に広い調光範囲でランプ周囲温度が低温であること検出することができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、点灯直後から調光下限を補正することができるため、点灯直後のちらつき、立ち消えを回避することができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、定格出力時も含めて全調光範囲において、ランプ電圧等を検出することが出来るので、確実に立ち消えを回避でき、調光器の操作範囲を狭めることなく調光制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施形態1)
図1は本発明における第1の実施形態の回路図である。本実施形態の放電灯点灯装置は、出力電圧一定の直流電源Eと、直流電源Eの出力端に接続されたインバータ3と、インバータ3の出力端に接続された共振回路4と放電灯Laからなる負荷回路5と、マイコン6からの制御信号を受けてインバータ3のスイッチング動作を決定する制御回路1と、Duty可変のPWM信号よりなる調光信号を出力する調光器7と、ランプ電圧Vlaを検出し、検出信号を出力するランプ電圧検出回路8と、調光信号と検出信号を受けて、制御回路1に制御信号を出力するマイコン6とから構成されている。放電灯Laは周囲温度により光出力が変化するランプ、例えば熱陰極型の蛍光ランプである。
【0025】
直流電源Eは昇圧チョッパを用いており、昇圧チョッパの回路は、図示するように、交流電源Vsと、ダイオードブリッジDB1と、インダクタL2と、ダイオードD1と、平滑コンデンサC3と、スイッチング素子Q3と、制御回路2とから構成されている。本回路を用いると、直流電圧VDCの範囲はVs(peak)≦VDCのある値で一定となる。ここでVs(peak)は交流電源Vsのピーク値を示している。100Vの交流電源であれば約141V、200Vの交流電源であれぱ約282Vがその値となる。チョッパ回路の動作により、直流電圧VDCを一定にしたり、可変させたりすることができるが、本実施形態では直流電圧VDCはランプ負荷によらず、一定で動作する。
【0026】
インバータ3は直流電源Eの出力に並列に、スイッチング素子Q1、Q2の直列回路が接続され、スイッチング素子Q1とQ2の中点とインダクタL1の間には直流カットコンデンサCD が接続されている。スイッチング素子Q1,Q2は制御回路1により高周波で交互にオン・オフするように駆動される。制御回路1は周波数可変発振器と駆動回路を集積したICであり、マイコン6からの制御信号に応じてスイッチング素子Q1、Q2のスイッチング周波数やオン−Dutyを可変し、ランプを点灯・調光制御することができる。
【0027】
以下、本実施形態の基本動作について説明する。図2に本実施形態での調光信号に対するインバータ3の動作周波数の変化を示す。実線はランプ周囲温度が常温(25℃)での制御特性であり、一点鎖線Aはランプ周囲温度が0℃での制御特性であり、点線Bはランプ周囲温度が50℃での制御特性である。
【0028】
図3は本実施形態での調光信号に対するランプ電力の変化(調光カーブ)を示す。実線はランプ周囲温度が常温(25℃)での調光カーブであり、一点鎖線Aはランプ周囲温度0℃でのインバータ動作周波数(図2A)で駆動したときの調光カーブであり、点線Bはランプ周囲温度が50℃でのインバータ動作周波数(図2B)で駆動したときの調光カーブである。
【0029】
図4にランプ周囲温度0℃、25℃、50℃での調光信号に対するランプ電圧検出信号の変化を示す。太線Cはマイコン6にプログラムされた基準電圧である。ここでは、調光信号のDutyが0%〜85%の範囲でランプ出力が変化する。本実施形態では、常にランプ電圧を検出し、マイコン6にて調光信号に対するランプ電圧検出信号の値を基準電圧と比較している。そのために、マイコン6は、調光信号/検出信号比較テーブル61を備えており、調光信号に応じた太線Cのレベルと検出信号のレベルを比較している。その比較結果に応じて、調光カーブ補正手段62により、図2に示すように、調光信号に応じてインバータ3の動作周波数を補正している。
【0030】
図4において調光信号のDutyが0%〜70%の範囲では検出信号が太線Cのレベルを下回るとランプ最冷点温度が常温時のそれに比べて低温であると判断し、図2の一点鎖線Aのように、調光信号に対するインバータ3の動作周波数を下げることによりランプ出力電力を増加させ、立ち消えを防止している。同時に、調光信号に対するインバータ3の動作周波数の変化幅(傾き)も変化させるため、図3のように調光の範囲が常温時に比べて変化することなく、調光することが出来る。
【0031】
図4において調光信号のDutyが70%〜85%の範囲では、調光信号が太線Cのレベルを下回るとランプ最冷点温度が常温時のそれに比べて高温であると判断し、図2の点線Bのように、調光信号に対するインバータ3の動作周波数を上げることによりランプ出力電力を低下させ、更に深くまで調光することができる。ランプ最冷点温度が高いため、ランプインピーダンスが低く、立ち消え・ちらつきが発生することなく、深くまで調光することができる。
【0032】
調光途中でランプ電圧検出信号が基準電圧である太線Cの値を超えた場合は、その超えた程度に応じて調光カーブを徐々に変化させることにより、使用者に急な光の変化を意識させること無く、違和感の無い調光カーブの補正を行うことができる。
【0033】
なお、図1の実施形態回路では、マイコン6の制御信号を制御回路1に与えているが、制御回路2に与えたり、制御回路1,2の両方に与えるように構成しても良い。その場合、図2のインバータ動作周波数に代えて、または、インバータ動作周波数と共に、インバータの電源電圧VDCを可変制御することにより、ランプ電力が調光信号に応じて図3(常温時には実線、低温時には一点鎖線A、高温時には点線B)のごとく変化するようにマイコン6の制御信号を変化させれば良い。以下の各実施形態においても同様である。
【0034】
(実施形態2)
図5は本発明における第2の実施形態の回路図である。本実施形態が先の実施形態と異なる点は、ランプ電圧の交流成分を検出するランプ電圧検出回路8のほかに、さらに、ランプ電圧の直流電圧成分を検出するランプDC電圧検出回路9を具備しており、それらの出力がマイコン6に入力されている点である。
【0035】
図6はランプ周囲温度0℃、25℃、50℃での調光信号に対するランプDC電圧の変化を示す。点線Dはマイコン6にプログラムされた基準電圧である。
【0036】
一般的に蛍光灯のランプDC電圧は定格出力付近ではランプインピーダンスが低いので、ランプ周囲温度が変化してもランプDC電圧の差は殆ど見られない。しかし、調光すると低温時では特にランプインピーダンスが増加するので、ランプ周囲温度によるランプDC電圧の差が顕著に発生する。したがって、調光出力時における低温時の検出に有効である。
【0037】
上述の実施形態1では、ランプ電圧の交流成分を検出しており、図4のように調光途中で低温時(0℃)でのランプ電圧と高温時(50℃)でのランプ電圧が交差するため、調光信号のDutyが70%以上の範囲ではランプ最冷点温度が低温であることを検出することが困難である。
【0038】
そこで、本実施形態では、調光信号のDutyが70%以上の範囲では、ランプDC電圧検出回路9からのランプDC電圧検出信号と基準電圧を比較し、ランプDC電圧検出信号が図6の点線D以上となった場合に調光カーブを出力増加方向に変化させ、立ち消えを防止する。また、調光信号のDutyが70%以下の範囲では実施形態1と同様にランプ電圧検出回路8からのランプ電圧検出信号と基準電圧を比較し、ランプ電圧検出信号が図4の太線C以下となった場合に調光カーブを出力増加方向に変化させ、立ち消えを防止する。
【0039】
本実施形態においても、実施形態1と同様に、調光カーブの傾きを緩やかに変化させるので、図3の一点鎖線Aのように、低温時のランプ電力が変化する調光信号の幅は常温時と同じであり、調光器7の操作範囲が周囲温度によって変化することはない。
【0040】
以上のように、本実施形態では調光信号のDutyに対するランプ電圧の交流成分と直流成分の両方を検出し、調光信号のDutyに応じてランプ最冷点温度による差が明確になる検出電圧(高出力時には交流成分、低出力時には直流成分)と基準電圧をマイコン6にて比較するので、より正確に広い調光範囲でランプ周囲温度が低温であること検出することができ、その検出結果に応じて調光カーブを出力増加方向に変化させ、立ち消えを防止することができる。
【0041】
なお、ランプ電圧検出回路8ならびにランプDC電圧検出回路9の具体的な回路構成については図示された実施形態に限定されるものではなく、要するに、ランプ電圧の交流成分の振幅、ランプ電圧の直流成分をそれぞれ検出できる構成であれば良い。
【0042】
(実施形態3)
図7は本発明の実施形態3の動作波形図であり、本実施形態の回路図は図1と同様である。図7は先行予熱期間から始動時のランプ2次電圧波形を示す。ここで、ランプ2次電圧とは放電灯Laの点灯前の状態においてランプ両端に印加されている無負荷出力電圧のことである。本実施形態の特徴的な点はフィラメント先行予熱時からランプ始動時にインバータ3の動作周波数をスイープし、ランプが始動した電圧をランプ電圧検出回路8で検出し、マイコン6の内部で基準電圧と比較する点である。
【0043】
放電灯Laのフィラメント予熱回路については特に図示しないが、周知のコンデンサ予熱方式や巻線予熱方式などが用いられる。
【0044】
先行予熱期間の終了後、インバータ3の動作周波数を共振回路4の無負荷共振周波数へと近づける。ランプ5の両端には周波数が低下するに従い、高電圧が印加され、始動電圧に達するとランプ5が点灯する。図7の実線と点線のようにランプ最冷点温度が常温と低温では始動電圧が異なる。このように始動電圧はランプ最冷点温度によって変化するので、始動電圧を検出することで、ランプ最冷点温度を検出することができる。
【0045】
始動電圧がマイコン6の内部に設定された基準電圧よりも高い場合は、ランプ最冷点温度が低いと判断され、マイコン6は制御回路1に図2の一点鎖線Aのようなインバータ3の動作周波数となるように制御信号を出力する。これにより、図3の一点鎖線Aのような調光カーブとなるように制御される。
【0046】
以上のように、本実施形態では始動電圧を検出することで、点灯直後から調光下限を補正することができるため、点灯直後のちらつき、立ち消えを回避することができる。放電灯の始動後は、実施形態1、2または次の実施形態4を併用しても良い。
【0047】
(実施形態4)
図8は本発明における第4の実施形態の回路図である。本実施形態が実施形態1と異なる点は、ランプDC電圧検出回路9を具備し、マイコン6は定期的にランプ電力が調光下限となる制御信号をパルス的に制御回路1へ出力する点である。
【0048】
図9に本実施形態でのFull出力時のランプ電流波形を示す。また、図10に本実施形態でのFull出力時のランプ電圧波形を示す。
【0049】
周波数f1は定格出力付近のインバータ動作周波数である。周波数f2は調光下限付近の周波数である。f2の期間は数ミリ秒程度であり、f1とf2を切り替える交番周波数も数kHz以上であるため、光の変化は人の目には感知されることはない。すなわち、本実施形態の特徴的な点は人の目には感知できないほどの短い期間(数ミリ秒)に調光を行い、そのときのランプ電圧直流成分を検出することによりランプ最冷点の温度を検知する点である。
【0050】
図11と図12はそれぞれ常温時のランプDC電圧と低温時のランプDC電圧である。周波数f1のときは定格出力付近であるため、図6のように常温時も低温時も差はあまりない。周波数f2のときは調光下限付近での周波数であるため、常温時と低温時ではランプDC電圧に差が発生する。従って、周波数f2の期間でのランプDC電圧をランプDC電圧検出回路9により検出し、マイコン6にて基準電圧と比較することでランプ最冷点温度が低温であることを検知できる。
【0051】
ランプによっては定格出力付近のランプ電圧(交流成分)の温度特性が図13のようになる場合がある。低温時も高温時もランプ電圧(交流成分)が常温時に比べてほぼ同じ程度低下するのである。この場合、定格出力付近ではランプ電圧(交流成分)を検出してもランプ最冷点温度を検知することはできない。
【0052】
本実施形態では、調光下限付近でのランプDC電圧を検出するので、ランプ周囲温度が低温であるか否かを正確に検出することができ、また、ランプが調光される期間は数ミリ秒程度であるため実質的に人の目にランプが調光されていることは認識されない。よって、定格出力時も含めて全調光範囲において、ランプ周囲温度が低温であるか否かを検出し、その検出結果に応じて調光カーブを図2、図3のように補正することで、確実に立ち消えを回避でき、調光器の操作範囲を狭めることなく調光制御することができる。
【0053】
(実施形態5)
本発明の実施形態5に係る照明器具について説明する。本実施形態の照明器具の外観の一例を図15に示す。本実施形態における照明装置30は、蛍光ランプLaと、前記蛍光ランプを点灯回路に電気的に接続し、保持するソケット32と、点灯回路を収納する筐体31より構成される。点灯回路としては、第1ないし第4の実施形態で説明した点灯回路が筐体31に内蔵され、ひとつの照明器具を構成している。照明器具には、点灯回路に供給する商用電源が接続され、さらに有線、あるいは無線等の手段によって調光信号が外部より与えられる。このような照明器具を一台、あるいは複数台用いることにより、従来よりも立ち消えしにくい照明装置を提供することが可能となる。
【0054】
なお、蛍光ランプLaは図示された直管形に限定されるものではなく、環形、二重環形、屈曲形等でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態1の回路図である。
【図2】本発明の実施形態1の調光信号とインバータ動作周波数の関係を示す特性図である。
【図3】本発明の実施形態1の調光信号とランプ電力の関係を示す特性図である。
【図4】本発明の実施形態1の調光信号とランプ電圧検出信号の関係を示す特性図である。
【図5】本発明の実施形態2の回路図である。
【図6】本発明の実施形態2の調光信号とランプDC電圧検出信号の関係を示す特性図である。
【図7】本発明の実施形態3の始動時のランプ電圧を示す波形図である。
【図8】本発明の実施形態4の回路図である。
【図9】本発明の実施形態4のランプ電流を示す波形図である。
【図10】本発明の実施形態4のランプ電圧を示す波形図である。
【図11】本発明の実施形態4の常温時のランプDC電圧検出信号を示す波形図である。
【図12】本発明の実施形態4の低温時のランプDC電圧検出信号を示す波形図である。
【図13】ランプ電圧の交流成分と周囲温度の関係を示す特性図である。
【図14】従来例の調光特性を示す特性図である。
【図15】本発明の実施形態5の照明器具の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
La ランプ
1 制御回路
2 制御回路
3 インバータ
4 共振回路
5 負荷回路
6 マイコン
7 調光器
8 ランプ電圧検出回路
9 ランプDC電圧検出回路
62 調光カーブ補正手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯を高周波電力により点灯・調光させる放電灯点灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放電灯を点灯・調光させ、十分な調光幅に設定した場合でも低温時における立ち消え・ちらつきを防止する手段として以下のようなものがある。
【0003】
特許文献1(特開平5−89992号公報)では、インバータ出力を変化させる手段に温度補償手段(ダイオード)を設け、この温度補償手段の温度特性により調光レべルが変化することにより、低温時は常温よりもランプ出力が増加し、立ち消えを防止するものである。
【0004】
特許文献2(特開平5−283189号公報)では、ランプ電圧を検出して基準電圧と比較し、ランプ電圧が基準電圧よりも高い場合には、それ以上ランプ電圧が高くならないようにランプ出力を増加させることで、低温時の立ち消えを防止しているものである。
【特許文献1】特開平5−89992号公報
【特許文献2】特開平5−283189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1(特開平5−89992号公報)では、ダイオードやサーミスタ等の温度補償手段により低温時にインバータ周波数を決定する信号を変化させてランプ出力を増加し、立ち消えを防止しているが、ランプ最冷点と温度補償手段の温度は必ずしも一定の相関関係があるとは言えない。例えば、安定器内部の温度補償手段の温度が充分高い状態で、冷えたランプを点灯・調光させる場合(ランプ交換時など)は、有効に温度補償手段が動作しないことになる。また、点灯直後と点灯後充分時間が経過している場合では、安定器内部の温度補償手段の温度は異なるため、ランプ周囲温度が低くなくても点灯直後は温度補償手段が誤動作し、ランプ周囲温度が低いのに点灯後充分時間が経過している場合では温度補償手段が動作しないことになる。以上のようにダイオードやサーミスタのような温度補償手段を用いても、ランプ最冷点と温度補償手段の温度の相関関係が必ずしも一定ではないので、有効に動作せず立ち消えが発生する場合がある。
【0006】
特許文献2(特開平5−283189)では、ランプ電圧を検出し、調光時にランプ電圧が基準電圧よりも高くなった場合にランプ出力を増加させるため、使用者が調光器を用いて調光する場合には、調光器の操作範囲が狭くなる。つまり、ランプの周囲温度によって、調光器の操作範囲が変化してしまう問題がある。
【0007】
図14の実線に常温時の調光信号とランプ電力の関係を示す。調光信号はPWM信号であり、そのDutyを変化させることで調光レベルを変化させている。調光信号のDuty:0%がFull出力、調光信号のDuty:85%が調光下限で、それ以上に調光信号のDutyが増加すると消灯される。図14の点線に低温時の調光信号とランプ電力の関係を示す。ここでは説明を分かりやすくする為にランプ電力フィードバックを行っているものとする。低温時には調光途中でランプ電圧が増加するため、ランプ電圧が基準電圧以上にならないように動作し、図14の点線のように本来の調光信号よりも狭い範囲でしかランプ電力が変化しないのである。
【0008】
以上のように、特許文献2の従来例ではランプ周囲温度によって、調光器の操作範囲が変化するので、例えば図14に示すように、常温時では調光信号のDutyが0%〜85%の範囲でランプ電力が変化するが、低温時には調光信号のDutyが0%〜70%の範囲でしかランプ電力が変化しないため、使用者に違和感を与えることになる。
【0009】
また、特許文献2の従来例では、立ち消え前にランプ電圧が上昇するのを検出してからランプ出力を増加させるため、ランプ電圧が上昇する前はランプ周囲温度が低い場合であっても、ランプ出力を増加させることはない。一般的に定格出力付近から調光途中までは低温時の方が常温時に比べランプ電圧が低下する。従って、低温時の方が常温時よりも照度が低下するが、特許文献2の従来例では立ち消え直前にランプ出力を増加させるため、定格出力付近から調光途中までの照度は低いままである。
【0010】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、ダイオードやサーミスタのような温度補償手段を用いることなく、ランプの最冷点温度の影響により変化するランプの動作を規定する特性を検出することで、ランプの立ち消え・ちらつきを防止し、調光カーブを補正することでランプ周囲温度(ランプ最冷点温度)が変化しても調光器の操作範囲が狭くなることのない放電灯点灯装置を提供することを課題とする。また、立ち消え前にランプ出力を増加させるのではなく、定格出力付近から調光途中においても出力を増加させることで、低温時の照度低下を抑制することができる放電灯点灯装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、上記の課題を解決するために、図1に示すように、直流電源Eの出力端に接続された少なくとも1つ以上のスイッチング素子Q1,Q2を備えるインバータ3と、前記インバータ3の出力端に共振回路4を介して放電灯Laを接続可能とした負荷回路5と、前記放電灯Laの最冷点温度の影響により変化する放電灯Laの動作を規定する特性(例えば、放電灯電圧)を検出して検出信号を出力する検出回路8と、調光信号が入力され、調光信号に応じて前記インバータ3の出力を変化させる調光制御部(マイコン6)とを有する放電灯点灯装置において、前記調光制御部(マイコン6)は、前記検出信号が調光信号に応じて設定された所定の基準値を超えた場合に、調光信号に応じた放電灯電力の変化である調光カーブを補正する調光カーブ補正手段62を備え、該調光カーブ補正手段62は、放電灯Laの最冷点温度が常温時の最冷点温度よりも低いときは調光カーブの傾きを小さくすることによってランプ電力を上げる方向に補正し、放電灯Laの最冷点温度が常温時の最冷点温度よりも高いときは調光カーブの傾きを大きくすることによってランプ電力を下げる方向に補正することを特徴とするものである。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記調光カーブ補正手段62は、図3に示すように、補正後においても放電灯電力が変化する調光信号の変化幅が補正前と同じであるように調光カーブの傾きを補正することを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、図5、図8に示すように、調光状態で検出される前記放電灯Laの動作を規定する特性は放電灯電圧の直流成分であり、前記検出信号は放電灯電圧の直流成分に応じた値を検出することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、図7に示すように、前記放電灯Laの動作を規定する特性は放電灯Laが点灯する始動電圧であり、フィラメント先行予熱から放電灯始動時まで放電灯電圧を徐々に増加させ、放電灯Laが始動する電圧に応じた値を検出することを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、図8〜図12に示すように、前記調光制御部(マイコン6)は、定格出力から調光下限まで人の目に認識できない程度の短い期間で間欠的に調光を行い、前記検出回路は該期間での放電灯Laの動作を規定する特性を検出して検出信号を出力することを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の放電灯点灯装置と、この放電灯点灯装置により点灯動作が制御される放電灯とを含むことを特徴とする照明器具である(図15)。
【0017】
特許請求の範囲に記載の「放電灯の最冷点温度の影響により変化する放電灯の動作を規定する特性」とは、一般的には放電灯電圧Vla、放電灯電流Ila、放電灯電力Wla等を指し、放電灯電流Ilaの変化により影響を受ける共振電流も含む。また、それらの電気特性を検出し、所望の値となるようにフィードバック動作を行う場合には、ランプ出力を制御するインバータの動作周波数やインバータの電源電圧なども「放電灯最冷点温度の影響により変化する放電灯の動作を規定する特性」に含まれる。例えば、ランプ電流フィードバックを行っている場合には、ランプ最冷点温度が変化してもランプ電流は一定であるが、インバータの動作周波数は変化するためである。
【0018】
以上のランプ最冷点温度の影響により変化する要因を検出することにより、ランプ周囲温度を正確に検知することができる。なお、ランプ最冷点とはランプ点灯中に放電管が最も冷えている箇所であり、一般的にランプ最冷点の温度は放電管内部の水銀蒸気圧に大きな影響を与える。即ち、ランプ最冷点の温度は立ち消え、ちらつき発生を支配する要因となるのである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、ダイオードやサーミスタのような温度補償手段を用いるよりも正確にランプ周囲温度が常温よりも低温であることを検出し、立ち消え・ちらつきを回避することができる。また、ランプ周囲温度が常温よりも高温である場合は更に深くまで調光することが出来る。また、立ち消え前にランプ出力を増加させるのではなく、定格出力付近から調光途中においても出力を増加させるため、低温時の照度低下を抑制することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、低温時に調光下限を補正する場合においても調光器の操作範囲は狭くなることなく、ランプ周囲温度が変化しても調光器の操作範囲は同じであるため、使用者は違和感なく使用することができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、調光時はランプ電圧の直流成分を検出することで、より正確に広い調光範囲でランプ周囲温度が低温であること検出することができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、点灯直後から調光下限を補正することができるため、点灯直後のちらつき、立ち消えを回避することができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、定格出力時も含めて全調光範囲において、ランプ電圧等を検出することが出来るので、確実に立ち消えを回避でき、調光器の操作範囲を狭めることなく調光制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施形態1)
図1は本発明における第1の実施形態の回路図である。本実施形態の放電灯点灯装置は、出力電圧一定の直流電源Eと、直流電源Eの出力端に接続されたインバータ3と、インバータ3の出力端に接続された共振回路4と放電灯Laからなる負荷回路5と、マイコン6からの制御信号を受けてインバータ3のスイッチング動作を決定する制御回路1と、Duty可変のPWM信号よりなる調光信号を出力する調光器7と、ランプ電圧Vlaを検出し、検出信号を出力するランプ電圧検出回路8と、調光信号と検出信号を受けて、制御回路1に制御信号を出力するマイコン6とから構成されている。放電灯Laは周囲温度により光出力が変化するランプ、例えば熱陰極型の蛍光ランプである。
【0025】
直流電源Eは昇圧チョッパを用いており、昇圧チョッパの回路は、図示するように、交流電源Vsと、ダイオードブリッジDB1と、インダクタL2と、ダイオードD1と、平滑コンデンサC3と、スイッチング素子Q3と、制御回路2とから構成されている。本回路を用いると、直流電圧VDCの範囲はVs(peak)≦VDCのある値で一定となる。ここでVs(peak)は交流電源Vsのピーク値を示している。100Vの交流電源であれば約141V、200Vの交流電源であれぱ約282Vがその値となる。チョッパ回路の動作により、直流電圧VDCを一定にしたり、可変させたりすることができるが、本実施形態では直流電圧VDCはランプ負荷によらず、一定で動作する。
【0026】
インバータ3は直流電源Eの出力に並列に、スイッチング素子Q1、Q2の直列回路が接続され、スイッチング素子Q1とQ2の中点とインダクタL1の間には直流カットコンデンサCD が接続されている。スイッチング素子Q1,Q2は制御回路1により高周波で交互にオン・オフするように駆動される。制御回路1は周波数可変発振器と駆動回路を集積したICであり、マイコン6からの制御信号に応じてスイッチング素子Q1、Q2のスイッチング周波数やオン−Dutyを可変し、ランプを点灯・調光制御することができる。
【0027】
以下、本実施形態の基本動作について説明する。図2に本実施形態での調光信号に対するインバータ3の動作周波数の変化を示す。実線はランプ周囲温度が常温(25℃)での制御特性であり、一点鎖線Aはランプ周囲温度が0℃での制御特性であり、点線Bはランプ周囲温度が50℃での制御特性である。
【0028】
図3は本実施形態での調光信号に対するランプ電力の変化(調光カーブ)を示す。実線はランプ周囲温度が常温(25℃)での調光カーブであり、一点鎖線Aはランプ周囲温度0℃でのインバータ動作周波数(図2A)で駆動したときの調光カーブであり、点線Bはランプ周囲温度が50℃でのインバータ動作周波数(図2B)で駆動したときの調光カーブである。
【0029】
図4にランプ周囲温度0℃、25℃、50℃での調光信号に対するランプ電圧検出信号の変化を示す。太線Cはマイコン6にプログラムされた基準電圧である。ここでは、調光信号のDutyが0%〜85%の範囲でランプ出力が変化する。本実施形態では、常にランプ電圧を検出し、マイコン6にて調光信号に対するランプ電圧検出信号の値を基準電圧と比較している。そのために、マイコン6は、調光信号/検出信号比較テーブル61を備えており、調光信号に応じた太線Cのレベルと検出信号のレベルを比較している。その比較結果に応じて、調光カーブ補正手段62により、図2に示すように、調光信号に応じてインバータ3の動作周波数を補正している。
【0030】
図4において調光信号のDutyが0%〜70%の範囲では検出信号が太線Cのレベルを下回るとランプ最冷点温度が常温時のそれに比べて低温であると判断し、図2の一点鎖線Aのように、調光信号に対するインバータ3の動作周波数を下げることによりランプ出力電力を増加させ、立ち消えを防止している。同時に、調光信号に対するインバータ3の動作周波数の変化幅(傾き)も変化させるため、図3のように調光の範囲が常温時に比べて変化することなく、調光することが出来る。
【0031】
図4において調光信号のDutyが70%〜85%の範囲では、調光信号が太線Cのレベルを下回るとランプ最冷点温度が常温時のそれに比べて高温であると判断し、図2の点線Bのように、調光信号に対するインバータ3の動作周波数を上げることによりランプ出力電力を低下させ、更に深くまで調光することができる。ランプ最冷点温度が高いため、ランプインピーダンスが低く、立ち消え・ちらつきが発生することなく、深くまで調光することができる。
【0032】
調光途中でランプ電圧検出信号が基準電圧である太線Cの値を超えた場合は、その超えた程度に応じて調光カーブを徐々に変化させることにより、使用者に急な光の変化を意識させること無く、違和感の無い調光カーブの補正を行うことができる。
【0033】
なお、図1の実施形態回路では、マイコン6の制御信号を制御回路1に与えているが、制御回路2に与えたり、制御回路1,2の両方に与えるように構成しても良い。その場合、図2のインバータ動作周波数に代えて、または、インバータ動作周波数と共に、インバータの電源電圧VDCを可変制御することにより、ランプ電力が調光信号に応じて図3(常温時には実線、低温時には一点鎖線A、高温時には点線B)のごとく変化するようにマイコン6の制御信号を変化させれば良い。以下の各実施形態においても同様である。
【0034】
(実施形態2)
図5は本発明における第2の実施形態の回路図である。本実施形態が先の実施形態と異なる点は、ランプ電圧の交流成分を検出するランプ電圧検出回路8のほかに、さらに、ランプ電圧の直流電圧成分を検出するランプDC電圧検出回路9を具備しており、それらの出力がマイコン6に入力されている点である。
【0035】
図6はランプ周囲温度0℃、25℃、50℃での調光信号に対するランプDC電圧の変化を示す。点線Dはマイコン6にプログラムされた基準電圧である。
【0036】
一般的に蛍光灯のランプDC電圧は定格出力付近ではランプインピーダンスが低いので、ランプ周囲温度が変化してもランプDC電圧の差は殆ど見られない。しかし、調光すると低温時では特にランプインピーダンスが増加するので、ランプ周囲温度によるランプDC電圧の差が顕著に発生する。したがって、調光出力時における低温時の検出に有効である。
【0037】
上述の実施形態1では、ランプ電圧の交流成分を検出しており、図4のように調光途中で低温時(0℃)でのランプ電圧と高温時(50℃)でのランプ電圧が交差するため、調光信号のDutyが70%以上の範囲ではランプ最冷点温度が低温であることを検出することが困難である。
【0038】
そこで、本実施形態では、調光信号のDutyが70%以上の範囲では、ランプDC電圧検出回路9からのランプDC電圧検出信号と基準電圧を比較し、ランプDC電圧検出信号が図6の点線D以上となった場合に調光カーブを出力増加方向に変化させ、立ち消えを防止する。また、調光信号のDutyが70%以下の範囲では実施形態1と同様にランプ電圧検出回路8からのランプ電圧検出信号と基準電圧を比較し、ランプ電圧検出信号が図4の太線C以下となった場合に調光カーブを出力増加方向に変化させ、立ち消えを防止する。
【0039】
本実施形態においても、実施形態1と同様に、調光カーブの傾きを緩やかに変化させるので、図3の一点鎖線Aのように、低温時のランプ電力が変化する調光信号の幅は常温時と同じであり、調光器7の操作範囲が周囲温度によって変化することはない。
【0040】
以上のように、本実施形態では調光信号のDutyに対するランプ電圧の交流成分と直流成分の両方を検出し、調光信号のDutyに応じてランプ最冷点温度による差が明確になる検出電圧(高出力時には交流成分、低出力時には直流成分)と基準電圧をマイコン6にて比較するので、より正確に広い調光範囲でランプ周囲温度が低温であること検出することができ、その検出結果に応じて調光カーブを出力増加方向に変化させ、立ち消えを防止することができる。
【0041】
なお、ランプ電圧検出回路8ならびにランプDC電圧検出回路9の具体的な回路構成については図示された実施形態に限定されるものではなく、要するに、ランプ電圧の交流成分の振幅、ランプ電圧の直流成分をそれぞれ検出できる構成であれば良い。
【0042】
(実施形態3)
図7は本発明の実施形態3の動作波形図であり、本実施形態の回路図は図1と同様である。図7は先行予熱期間から始動時のランプ2次電圧波形を示す。ここで、ランプ2次電圧とは放電灯Laの点灯前の状態においてランプ両端に印加されている無負荷出力電圧のことである。本実施形態の特徴的な点はフィラメント先行予熱時からランプ始動時にインバータ3の動作周波数をスイープし、ランプが始動した電圧をランプ電圧検出回路8で検出し、マイコン6の内部で基準電圧と比較する点である。
【0043】
放電灯Laのフィラメント予熱回路については特に図示しないが、周知のコンデンサ予熱方式や巻線予熱方式などが用いられる。
【0044】
先行予熱期間の終了後、インバータ3の動作周波数を共振回路4の無負荷共振周波数へと近づける。ランプ5の両端には周波数が低下するに従い、高電圧が印加され、始動電圧に達するとランプ5が点灯する。図7の実線と点線のようにランプ最冷点温度が常温と低温では始動電圧が異なる。このように始動電圧はランプ最冷点温度によって変化するので、始動電圧を検出することで、ランプ最冷点温度を検出することができる。
【0045】
始動電圧がマイコン6の内部に設定された基準電圧よりも高い場合は、ランプ最冷点温度が低いと判断され、マイコン6は制御回路1に図2の一点鎖線Aのようなインバータ3の動作周波数となるように制御信号を出力する。これにより、図3の一点鎖線Aのような調光カーブとなるように制御される。
【0046】
以上のように、本実施形態では始動電圧を検出することで、点灯直後から調光下限を補正することができるため、点灯直後のちらつき、立ち消えを回避することができる。放電灯の始動後は、実施形態1、2または次の実施形態4を併用しても良い。
【0047】
(実施形態4)
図8は本発明における第4の実施形態の回路図である。本実施形態が実施形態1と異なる点は、ランプDC電圧検出回路9を具備し、マイコン6は定期的にランプ電力が調光下限となる制御信号をパルス的に制御回路1へ出力する点である。
【0048】
図9に本実施形態でのFull出力時のランプ電流波形を示す。また、図10に本実施形態でのFull出力時のランプ電圧波形を示す。
【0049】
周波数f1は定格出力付近のインバータ動作周波数である。周波数f2は調光下限付近の周波数である。f2の期間は数ミリ秒程度であり、f1とf2を切り替える交番周波数も数kHz以上であるため、光の変化は人の目には感知されることはない。すなわち、本実施形態の特徴的な点は人の目には感知できないほどの短い期間(数ミリ秒)に調光を行い、そのときのランプ電圧直流成分を検出することによりランプ最冷点の温度を検知する点である。
【0050】
図11と図12はそれぞれ常温時のランプDC電圧と低温時のランプDC電圧である。周波数f1のときは定格出力付近であるため、図6のように常温時も低温時も差はあまりない。周波数f2のときは調光下限付近での周波数であるため、常温時と低温時ではランプDC電圧に差が発生する。従って、周波数f2の期間でのランプDC電圧をランプDC電圧検出回路9により検出し、マイコン6にて基準電圧と比較することでランプ最冷点温度が低温であることを検知できる。
【0051】
ランプによっては定格出力付近のランプ電圧(交流成分)の温度特性が図13のようになる場合がある。低温時も高温時もランプ電圧(交流成分)が常温時に比べてほぼ同じ程度低下するのである。この場合、定格出力付近ではランプ電圧(交流成分)を検出してもランプ最冷点温度を検知することはできない。
【0052】
本実施形態では、調光下限付近でのランプDC電圧を検出するので、ランプ周囲温度が低温であるか否かを正確に検出することができ、また、ランプが調光される期間は数ミリ秒程度であるため実質的に人の目にランプが調光されていることは認識されない。よって、定格出力時も含めて全調光範囲において、ランプ周囲温度が低温であるか否かを検出し、その検出結果に応じて調光カーブを図2、図3のように補正することで、確実に立ち消えを回避でき、調光器の操作範囲を狭めることなく調光制御することができる。
【0053】
(実施形態5)
本発明の実施形態5に係る照明器具について説明する。本実施形態の照明器具の外観の一例を図15に示す。本実施形態における照明装置30は、蛍光ランプLaと、前記蛍光ランプを点灯回路に電気的に接続し、保持するソケット32と、点灯回路を収納する筐体31より構成される。点灯回路としては、第1ないし第4の実施形態で説明した点灯回路が筐体31に内蔵され、ひとつの照明器具を構成している。照明器具には、点灯回路に供給する商用電源が接続され、さらに有線、あるいは無線等の手段によって調光信号が外部より与えられる。このような照明器具を一台、あるいは複数台用いることにより、従来よりも立ち消えしにくい照明装置を提供することが可能となる。
【0054】
なお、蛍光ランプLaは図示された直管形に限定されるものではなく、環形、二重環形、屈曲形等でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態1の回路図である。
【図2】本発明の実施形態1の調光信号とインバータ動作周波数の関係を示す特性図である。
【図3】本発明の実施形態1の調光信号とランプ電力の関係を示す特性図である。
【図4】本発明の実施形態1の調光信号とランプ電圧検出信号の関係を示す特性図である。
【図5】本発明の実施形態2の回路図である。
【図6】本発明の実施形態2の調光信号とランプDC電圧検出信号の関係を示す特性図である。
【図7】本発明の実施形態3の始動時のランプ電圧を示す波形図である。
【図8】本発明の実施形態4の回路図である。
【図9】本発明の実施形態4のランプ電流を示す波形図である。
【図10】本発明の実施形態4のランプ電圧を示す波形図である。
【図11】本発明の実施形態4の常温時のランプDC電圧検出信号を示す波形図である。
【図12】本発明の実施形態4の低温時のランプDC電圧検出信号を示す波形図である。
【図13】ランプ電圧の交流成分と周囲温度の関係を示す特性図である。
【図14】従来例の調光特性を示す特性図である。
【図15】本発明の実施形態5の照明器具の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
La ランプ
1 制御回路
2 制御回路
3 インバータ
4 共振回路
5 負荷回路
6 マイコン
7 調光器
8 ランプ電圧検出回路
9 ランプDC電圧検出回路
62 調光カーブ補正手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の出力端に接続された少なくとも1つ以上のスイッチング素子を備えるインバータと、前記インバータの出力端に共振回路を介して放電灯を接続可能とした負荷回路と、前記放電灯の最冷点温度の影響により変化する放電灯の動作を規定する特性を検出して検出信号を出力する検出回路と、調光信号が入力され、調光信号に応じて前記インバータの出力を変化させる調光制御部とを有する放電灯点灯装置において、前記調光制御部は、前記検出信号が調光信号に応じて設定された所定の基準値を超えた場合に、調光信号に応じた放電灯電力の変化である調光カーブを補正する調光カーブ補正手段を備え、該調光カーブ補正手段は、放電灯の最冷点温度が常温時の最冷点温度よりも低いときは調光カーブの傾きを小さくすることによってランプ電力を上げる方向に補正し、放電灯の最冷点温度が常温時の最冷点温度よりも高いときは調光カーブの傾きを大きくすることによってランプ電力を下げる方向に補正することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記調光カーブ補正手段は、補正後においても放電灯電力が変化する調光信号の変化幅が補正前と同じであるように調光カーブの傾きを補正することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
調光状態で検出される前記放電灯の動作を規定する特性は放電灯電圧の直流成分であり、前記検出信号は放電灯電圧の直流成分に応じた値を検出することを特徴とする請求項1または2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記放電灯の動作を規定する特性は放電灯が点灯する始動電圧であり、フィラメント先行予熱から放電灯始動時まで放電灯電圧を徐々に増加させ、放電灯が始動する電圧に応じた値を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記調光制御部は、定格出力から調光下限まで人の目に認識できない程度の短い期間で間欠的に調光を行い、前記検出回路は該期間での放電灯の動作を規定する特性を検出して検出信号を出力することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の放電灯点灯装置と、この放電灯点灯装置により点灯動作が制御される放電灯とを含むことを特徴とする照明器具。
【請求項1】
直流電源の出力端に接続された少なくとも1つ以上のスイッチング素子を備えるインバータと、前記インバータの出力端に共振回路を介して放電灯を接続可能とした負荷回路と、前記放電灯の最冷点温度の影響により変化する放電灯の動作を規定する特性を検出して検出信号を出力する検出回路と、調光信号が入力され、調光信号に応じて前記インバータの出力を変化させる調光制御部とを有する放電灯点灯装置において、前記調光制御部は、前記検出信号が調光信号に応じて設定された所定の基準値を超えた場合に、調光信号に応じた放電灯電力の変化である調光カーブを補正する調光カーブ補正手段を備え、該調光カーブ補正手段は、放電灯の最冷点温度が常温時の最冷点温度よりも低いときは調光カーブの傾きを小さくすることによってランプ電力を上げる方向に補正し、放電灯の最冷点温度が常温時の最冷点温度よりも高いときは調光カーブの傾きを大きくすることによってランプ電力を下げる方向に補正することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記調光カーブ補正手段は、補正後においても放電灯電力が変化する調光信号の変化幅が補正前と同じであるように調光カーブの傾きを補正することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
調光状態で検出される前記放電灯の動作を規定する特性は放電灯電圧の直流成分であり、前記検出信号は放電灯電圧の直流成分に応じた値を検出することを特徴とする請求項1または2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記放電灯の動作を規定する特性は放電灯が点灯する始動電圧であり、フィラメント先行予熱から放電灯始動時まで放電灯電圧を徐々に増加させ、放電灯が始動する電圧に応じた値を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記調光制御部は、定格出力から調光下限まで人の目に認識できない程度の短い期間で間欠的に調光を行い、前記検出回路は該期間での放電灯の動作を規定する特性を検出して検出信号を出力することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の放電灯点灯装置と、この放電灯点灯装置により点灯動作が制御される放電灯とを含むことを特徴とする照明器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−70581(P2009−70581A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234565(P2007−234565)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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