説明

放電灯点灯装置及びプロジェクタ

【課題】小型化及び高効率化を図ることが可能な放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】昇降圧回路10は、直流電源2からの電圧をスイッチング制御部13の制御により昇降圧し、電圧検出回路30は、昇降圧回路10の出力電圧を検出する。バラスト20は、昇降圧回路10に接続されており、ランプ4を定電力制御する。ランプ電圧検出回路240は、ランプ4に印加される電圧を検出する。出力回路21は、ランプ電圧検出回路240により検出された電圧及び電圧検出回路30により検出された電圧に基づく信号をスイッチング制御部13へ出力する。スイッチング制御部13は、この信号を受け、当該信号が略0となるよう、電圧を昇降圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルハライドランプまたは高圧水銀ランプ等の放電灯を点灯させる放電灯点灯装置及び該放電灯点灯装置を備えるプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を投影してスクリーンに映像を表示する投影型表示装置(プロジェクタ)が存在する。このプロジェクタの光源にはメタルハライドランプ等の放電灯が使用され、この放電灯の始動と点灯維持とを行う為の放電灯点灯装置が用いられる。従来の放電灯点灯装置は、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されている。図6は従来の放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。図6において100は従来の放電灯点灯装置であり、交流電源101に接続されたラインフィルタ102,整流ブリッジ103,昇圧コンバータ104,降圧コンバータ105,及びランプ107の起動時に動作するイグナイタ106により構成される。
【0003】
交流電源101から出力された100V〜240Vの交流は、ラインフィルタ102を経て整流ブリッジ103にて整流され、整流ブリッジ103の出力には略√2倍のピーク電圧(144V〜340V)が発生する。そして昇圧コンバータ104によりピーク電圧は、直流380Vまで昇圧される。バラストである降圧コンバータ105は、ランプ107のグロー放電時に100V〜200V、初期アーク放電時に15V、定常アーク放電時に60Vとなるよう電圧を降圧させる。またイグナイタ106はランプ107の絶縁破壊の際に用いられる回路であり、降圧コンバータ105の出力であるところの開放電圧が200V〜300Vの状態にあるときイグナイタ106は動作する。イグナイタ106はおよそ数キロV〜数十キロVの電圧を発生して、放電灯内部ガスに絶縁破壊を発生せしめ、これを始動させる。
【特許文献1】特開平9−320772号公報
【特許文献2】特開2001−307896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載した従来の放電灯点灯装置は昇圧コンバータの出力電圧が例えば380Vと一定であり、バラストの効率が良くないという問題があった。すなわち、従来の放電灯点灯装置は、ランプ電圧が、例えば55V〜120Vと徐々に変化しているにもかかわらず、昇圧コンバータとバラストとが別々に動作し、昇圧コンバータから一定の電圧が継続して供給されるため、バラストの効率が低下するという問題があった。このように効率が大幅に変動する結果、放電灯点灯装置の小型化も困難になるという問題があった。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、昇圧回路に替えて昇降圧回路を用い、昇降圧回路の出力電圧を検出し、この検出した電圧及び放電灯に印加される電圧に基づく信号を昇降圧回路のスイッチング制御部へ出力してフィードバック制御を行うことにより、効率を向上させることができ、また装置の小型化を実現することが可能な放電灯点灯装置及び該放電灯点灯装置を備えるプロジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る放電灯点灯装置は、放電灯を点灯させる放電灯点灯装置において、電源からの電圧をスイッチング制御部の制御により昇降圧する昇降圧回路と、該昇降圧回路の出力電圧を検出する電圧検出回路と、前記昇降圧回路に接続され、前記放電灯の点灯制御を行うバラストと、前記放電灯に印加される電圧を検出する放電灯電圧検出回路と、前記放電灯電圧検出回路により検出された電圧及び前記電圧検出回路により検出された電圧に基づく信号を前記スイッチング制御部へ出力する出力回路とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る放電灯点灯装置は、前記出力回路は、前記放電灯電圧検出回路により検出された電圧に所定の係数を乗じ、乗じた電圧と前記電圧検出回路により検出される電圧との差に係る信号を前記スイッチング制御部へ出力するよう構成してあることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る放電灯点灯装置は、前記出力回路は、前記放電灯電圧検出回路により検出された電圧を略2倍し、略2倍後の電圧と前記電圧検出回路により検出される電圧との差に係る信号を前記スイッチング制御部へ出力するよう構成してあることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る放電灯点灯装置は、前記スイッチング制御部は、前記出力回路から出力される信号に基づき、前記電源からの電圧を昇降圧するよう構成してあることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る放電灯点灯装置は、前記昇降圧回路と前記バラストとは絶縁されており、前記出力回路から前記スイッチング制御部へ出力される信号を伝送するフォトカプラをさらに備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るプロジェクタは、上述のいずれか一つに記載の放電灯点灯装置を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、昇降圧回路は、電源からの電圧をスイッチング制御部の制御により昇降圧し、電圧検出回路は、昇降圧回路の出力電圧を検出する。バラストは、昇降圧回路に接続されており、放電灯の点灯制御を行う。放電灯電圧検出回路は、放電灯に印加される電圧を検出する。出力回路は、放電灯電圧検出回路により検出された電圧及び電圧検出回路により検出された電圧に基づく信号をスイッチング制御部へ出力する。出力回路においては、例えば、放電灯電圧検出回路により検出された電圧に所定の係数を乗じ、該乗じた電圧と電圧検出回路により検出される電圧との差に係る信号をスイッチング制御部へ出力する。
【0013】
その他、スイッチング制御部におけるスイッチのオン・オフ制御は、デューティ比を略50%とすることが好ましい。そこで、出力回路は、放電灯電圧検出回路により検出された電圧を略2倍し、該略2倍後の電圧と電圧検出回路により検出される電圧との差に係る信号をスイッチング制御部へ出力する。スイッチング制御部は、この差に基づく信号を受け、当該信号に基づき、電源からの電圧を昇降圧する。
【0014】
本発明にあっては、トランスを介在させることにより昇降圧回路とバラストとを絶縁する。また、出力回路からスイッチング制御部へ出力される信号は、絶縁状態を確保すべくフォトカプラにより伝送される。
【発明の効果】
【0015】
本発明にあっては、昇降圧回路は、電源からの電圧をスイッチング制御部の制御により昇降圧し、電圧検出回路は、昇降圧回路の出力電圧を検出する。出力回路は、放電灯電圧検出回路により検出された電圧及び電圧検出回路により検出された電圧に基づく信号をスイッチング制御部へ出力する。スイッチング制御部は、この信号を受け、当該信号に基づき、電源からの電圧を昇降圧する。このように構成したので、ランプ電圧の変動に応じて最適な電圧が、昇降圧回路により昇降圧され、装置の効率向上及び小型化を実現することが可能となる。
【0016】
本発明にあっては、トランスを介在させることにより昇降圧回路とバラストとを絶縁する。また、出力回路からスイッチング制御部へ出力される信号は絶縁状態を確保すべくフォトカプラにより伝送する。これにより、効率の向上に加え、絶縁により電源に起因する感電を解消できる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1
以下本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は本発明に係る放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。図において、1は放電灯点灯装置であり、放電灯点灯装置1は、直流電源2、昇降圧回路10、バラスト20、イグナイタ3、及び放電灯(以下、ランプと称す)4を含んで構成される。昇降圧回路10としては、例えばSEPIC(Single Ended Primary Inductance Converter)コンバータ、CukコンバータまたはZetaコンバータの他、後述するような絶縁型の昇降圧回路10が用いられる。本実施の形態においては、昇降圧回路10としてSEPICコンバータを適用した例について説明する。
【0018】
直流電源2には並列に分圧抵抗17、18が接続されている。分圧抵抗17と分圧抵抗18との間の接続線はスイッチング制御部13へ接続されており、昇降圧回路10での昇降圧前の入力電圧が、スイッチング制御部13へ入力される。直流電源2に並列に接続される平滑コンデンサ14には、昇降圧回路10が接続されている。
【0019】
昇降圧回路10は、チョークコイル19、FET(Field Effect Transistor)またはバイポーラトランジスタを用いたパワースイッチ素子16、パワースイッチ素子16を制御するスイッチング制御部13、コンデンサ161、164、ダイオード163及びチョークコイル162を含んで構成される。なお、昇降圧回路10の構成は一般的なSEPICコンバータと同様であるため詳細な説明を省略する。
【0020】
スイッチング制御部13は、パワースイッチ素子16のゲートに接続されており、スイッチング制御部13のゲートをPWM(Pulse Width Modulation)制御によりオン・オフする。昇降圧回路10により昇圧または降圧された電圧はバラスト20へ供給される。昇降圧回路10とバラスト20との間にはランプ4と並列に接続される電圧検出回路30が設けられている。電圧検出回路30は直列に第1分圧抵抗31及び第2分圧抵抗32が接続されており、昇降圧回路10の出力電圧を検出する。第1分圧抵抗31と第2分圧抵抗32との間に接続される接続線は、出力回路21に接続されており、昇降圧回路10の出力電圧が、出力回路21へ入力される。
【0021】
バラスト20はFETまたはバイポーラトランジスタを用いたパワースイッチ素子27、パワースイッチ素子27を制御する第2スイッチング制御部271、パワーダイオード22、チョークコイル28、平滑用コンデンサ23、ランプ電圧検出回路240、電流検出抵抗26及び出力回路21を含む一般的な降圧型コンバータである。パワースイッチ素子27はランプ4に直列に接続されている。パワースイッチ素子27のゲートは第2スイッチング制御部271に接続されている。第2スイッチング制御部271は出力回路21からの定電力制御に従いゲートをPWM制御によりオン・オフすることにより、ランプ4に印加する電圧を降圧する。
【0022】
なお、本実施の形態におけるバラスト20は、ランプ4のグロー放電時に100V〜200V、初期アーク放電時に15V、定常アーク放電時に60Vとなるよう電圧を降圧させる例につき説明する。またイグナイタ3はランプ4の絶縁破壊の際に用いられる回路であり、バラスト20の出力であるところの開放電圧が200V〜300Vの状態にあるとき動作する。イグナイタ3はおよそ数キロV〜数十キロVの電圧を発生して、ランプ4の内部ガスに絶縁破壊を発生せしめ、これを始動させる。
【0023】
パワーダイオード22及びスイッチングに起因するリップルを低減する平滑用コンデンサ23と共に、ランプ4に対して並列に接続されるランプ電圧検出回路240は、ランプ4に印加されるランプ電圧を検出し、検出したランプ電圧を出力回路21へ出力する。ランプ電圧検出回路240は直列に接続される第1分圧抵抗24及び第2分圧抵抗25から構成され、第1分圧抵抗24と第2分圧抵抗25との間から引き出される接続線は、出力回路21に接続されている。またランプ4には直列に電流検出抵抗26が接続されており、ランプ4を流れる電流が出力回路21へ入力される。
【0024】
出力回路21は定電力制御に係る信号を第2スイッチング制御部271へ出力する。第2スイッチング制御部271は、ランプ4を定電力制御すべくパワースイッチ素子27をオン・オフする。また出力回路21は、ランプ電圧検出回路240により検出されたランプ電圧に所定の係数を乗じ、乗算後のランプ電圧と電圧検出回路30により検出される電圧との差に係る信号をスイッチング制御部13へ出力する。スイッチング制御部13は、係数乗算後のランプ電圧と電圧検出回路30により検出される電圧との差を0とするようにパワースイッチ素子16をオン・オフする。
【0025】
図2は出力回路21の回路構成を示すブロック図である。出力回路21は、ランプ電圧及びランプ電流により求まるランプ電力を所定の目標電力(例えば165W)と比較し、その偏差を第2スイッチング制御部271へ出力する回路、並びに、ランプ電圧に所定係数を乗じた値と昇降圧回路10の出力電圧との偏差をスイッチング制御部13へ出力する回路であり、例えば図2に示すマイコン内蔵型の回路が用いられる。出力回路21は電圧検出用非反転アンプ221,電流検出用非反転アンプ222、A/D(アナログ−デジタル)変換器223,224,301、マイコン225、D/A(デジタル−アナログ)変換器226、305、乗算器303、係数記憶部304、及び第2マイコン302を含んで構成される。なお、図1における平滑用コンデンサ23等の図示は適宜省略している。
【0026】
電圧検出用非反転アンプ221はランプ電圧検出用の第1分圧抵抗24及び第2分圧抵抗25に接続されており、第1分圧抵抗24及び第2分圧抵抗25により分圧されたランプ電圧を所定の増幅率にて増幅する。増幅された後のランプ電圧は、電圧検出用非反転アンプ221の出力端子に接続されるA/D変換器223によりデジタル化され、マイコン225及び乗算器303へ入力される。
【0027】
電流検出用非反転アンプ222はランプ電流検出用の電流検出抵抗26(例えば高精度の50mΩ抵抗等)に接続されており、電流検出抵抗26にて変換された電圧を所定の増幅率にて増幅する。増幅されたランプ電流にかかる電圧は電流検出用非反転アンプ222の出力端子に接続されるA/D変換器224によりデジタル化され、マイコン225へ入力される。マイコン225は図示しないプロセッサ及びメモリを備え、目標とする所定の目標電力Pexpを記憶している。マイコン225のプロセッサは、A/D変換器223及び224から出力されたランプ電圧及びランプ電流に係る値を乗算しランプ電力Pdetを算出する。
【0028】
マイコン225のプロセッサはメモリから読み出した目標電力Pexpと、算出したランプ電力Pdetとの偏差を算出し、これに負の利得を乗じた操作信号をマイコン225の出力側に接続されるD/A変換器226へ出力する。D/A変換器226は操作信号をアナログ化し、第2スイッチング制御部271へ出力する。
【0029】
図1に示すように第2スイッチング制御部271はパワースイッチ素子27のゲートに接続されている。ランプ電力Pdetが目標電力Pexpよりも大きい場合、すなわち偏差が正の場合、負の操作信号が出力回路21から出力され、第2スイッチング制御部271はこれを受けてランプ4へ供給される電力が減少するようパワースイッチ素子27を制御する。具体的には、第2スイッチング制御部271からパワースイッチ素子27へ出力するパルスのデューティ比を小さくする。一方、ランプ電力Pdetが目標電力Pexpよりも小さい場合、すなわち偏差が負の場合、正の操作信号が出力回路21から出力され、第2スイッチング制御部271はこれを受けてランプ4へ供給される電力が増加するようパワースイッチ素子27を制御する。具体的には、第2スイッチング制御部271からパワースイッチ素子27へ出力するパルスのデューティ比を大きくする。このフィードバック制御により偏差が0となった場合に、マイコン225及び第2スイッチング制御部271の応答が停止し、再び定常状態へ移行することになる。
【0030】
一方、乗算器303はA/D変換器223から出力されるランプ電圧に係数記憶部304に記憶した係数を乗じる。なお、この係数は好ましくは2であり、回路設計に応じて適宜1.54〜2.86の値を採用すればよい。すなわち、PWM制御においてはデューティ比を約50%とすることが効率の面で良く、そのため、ランプ電圧検出回路240により検出されるランプ電圧を、昇降圧回路10の出力電圧の約50%とすることが好ましい。
【0031】
例えば定格安定動作時におけるランプ電圧が60Vの場合、昇降圧回路10における出力電圧は120Vであることが好ましい。また、ランプ4の寿命末期には、ランプ電圧が例えば90Vに上昇するが、この場合、昇降圧回路10における出力電圧は180Vであることが好ましい。ただし、50%に限るものではなく、共振等が存在することから、回路設計に応じて適宜35%〜65%(係数は約1.54〜2.86)の値とすればよい。以下では係数記憶部304に2が記憶されているものとして説明する。
【0032】
乗算器303は2倍後のランプ電圧を第2マイコン302へ出力する。一方、電圧検出回路30で検出された昇降圧回路10の出力電圧はA/D変換器301によりデジタル化され、デジタル化された電圧が第2マイコン302へ入力される。第2マイコン302は乗算器303から出力される2倍後のランプ電圧からA/D変換器301から入力される電圧を減じ、その偏差に基づく操作信号をD/A変換器305へ出力する。
【0033】
D/A変換器305から出力される偏差に基づく操作信号はスイッチング制御部13へ出力され、スイッチング制御部13は偏差に基づく操作信号に従い、パワースイッチ素子16を制御する。すなわち、2倍後のランプ電圧が昇降圧回路10の出力電圧よりも大きい場合、偏差は正であり、正の操作信号が出力回路21から出力される。スイッチング制御部13はこれを受けて昇降圧回路10の出力電圧が上昇するようパワースイッチ素子16を制御する。具体的には、スイッチング制御部13からパワースイッチ素子16へ出力するパルスのデューティ比を大きくする。
【0034】
一方、2倍後のランプ電圧が昇降圧回路10の出力電圧よりも小さい場合、偏差は負であり、負の操作信号が出力回路21から出力される。スイッチング制御部13はこれを受けて昇降圧回路10の出力電圧が降下するようパワースイッチ素子16を制御する。具体的には、スイッチング制御部13からパワースイッチ素子16へ出力するパルスのデューティ比を小さくする。このフィードバック制御により偏差が0となった場合に、第2マイコン302及びスイッチング制御部13の応答が停止し、再び定常状態へ移行することになる。なお、本実施の形態においてはデジタル演算回路を用いた例につき説明したが、アナログ乗算回路を用いて実現しても良いことはもちろんである。
【0035】
実施の形態2
実施の形態2は昇降圧回路10とバラスト20とを絶縁した形態に関する。図3は実施の形態2に係る放電灯点灯装置1の構成を示す回路図である。昇降圧回路10とバラスト20とは、変圧器であるトランス6及びフォトカプラ5により互いに絶縁されている。昇降圧回路10は、ラインフィルタ11を介して交流電源2に接続される。バラスト20は、トランス6及び信号伝送素子であるフォトカプラ5により、昇降圧回路10に対して絶縁されている。
【0036】
昇降圧回路10は、例えば自励型フライバック方式のコンバータ(RCC: Ringing Choke Converter)が用いられる。この昇降圧回路10は、ラインフィルタ11を介して交流電源2に接続されており、交流電源2からの交流を全波整流及び平滑するためのブリッジ回路12、平滑コンデンサ14、FETまたはバイポーラトランジスタを用いたパワースイッチ素子16,パワースイッチ素子16を制御するスイッチング制御部13及びこれに接続される起動抵抗15を含んで構成される。トランス6は、パワースイッチ素子16にその一端が接続された1次コイル61、2次コイル62及びスイッチング制御部13に接続された帰還コイル63を備え、スイッチング制御部13によるパワースイッチ素子16の制御により、昇圧及び降圧を行う。またスイッチング制御部13はバラスト20からの制御信号を伝送するフォトカプラ5にも接続されている。
【0037】
次に昇降圧回路10の動作について説明する。図示しないシステム全体のスイッチは、例えば交流電源2とラインフィルタ11の接続ラインに直列に挿入されている。このシステムスイッチがオフの状態においては、交流電源2からの電力は放電灯点灯装置1には供給されず、スイッチング制御部13は動作せず、パワースイッチ素子16のゲート電圧Vgsはゼロボルトであり、オフの状態である。システムスイッチがオンにされ、交流電源2から電力が供給された場合、ブリッジ回路12及び平滑コンデンサ14により交流電圧が整流及び平滑される。その後ライン151の電圧が上昇し、起動抵抗15経由でスイッチング制御部13に電力が供給されて動作を開始し、パワースイッチ素子16にもゲート電圧がかかることになる。パワースイッチ素子16のゲート電圧Vgsが所定電圧以上となった場合、パワースイッチ素子16はオンとなる。
【0038】
パワースイッチ素子16がオンした場合、1次コイル61に電流が流れ、両端ab間に電圧が発生する。なお、1次コイル61のa側が正極である。同じく、2次コイル62及び帰還コイル63にも巻き数比に応じた電圧が発生する。なお、帰還コイル63及び1次コイル61は同極であり、帰還コイル63のe側が正極となり、2次コイル62のd側が正極となる。帰還コイル63の正極(e側)はスイッチング制御部13を介してパワースイッチ素子16のゲートに接続されている。つまり、パワースイッチ素子16がオンの場合、オン状態を維持する帰還コイル63の極性側に接続されている。
【0039】
続いて、スイッチがオフからオンへ移行するまでの動作を説明する。パワースイッチ素子16がオフとなった瞬間、2次コイル62のc側に正電圧が発生し、パワースイッチ素子16がオンの間にトランス6に蓄えられた電力がバラスト20へ出力される。トランス6の電力がゼロになった場合、残留した電力が帰還コイル63のe側に、正の電圧を発生させる結果、スイッチが再びオンとなる。スイッチング制御部13は以上のオン・オフ制御を繰り返し行う。
【0040】
トランス6の出力には電圧検出回路30が接続されており、昇降圧回路10の出力電圧を検出する。電圧検出回路30により検出された出力電圧は出力回路21へ出力される。出力回路21は、電圧検出回路30により検出された電圧とランプ電圧検出回路240により検出された電圧との差に係る信号を、フォトカプラ5を介してスイッチング制御部13へ出力する。なお、バラスト20の他の構成については実施の形態1と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0041】
図4は実施の形態2に係る出力回路21の回路構成を示すブロック図である。実施の形態1と異なり、D/A変換器305とスイッチング制御部13との間にフォトカプラ5が設けられている。第2マイコン302は乗算器303から出力される2倍後のランプ電圧から、A/D変換器301を介して電圧検出回路30から出力される電圧を減じ、その偏差に基づく操作信号をD/A変換器305へ出力する。
【0042】
D/A変換器305からフォトカプラ5を介して出力される偏差に基づく操作信号はスイッチング制御部13へ出力され、スイッチング制御部13は偏差に基づく操作信号に従い、パワースイッチ素子16を制御する。
【0043】
本実施の形態2は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0044】
実施の形態3
上述した放電灯点灯装置1は例えばプロジェクタに適用される。図5はプロジェクタのハードウェア構成を示すブロック図である。プロジェクタ300は、実施の形態1の放電灯点灯装置1、ランプ4、反射鏡321、カラーホイール320、映像形成素子(以下、DMD(Digital Micromirror Device(登録商標)と称す)360、映像形成素子制御回路370、投射レンズ380、ファン330、主制御部390及び映像信号処理部391を含んで構成される。
【0045】
主制御部390は、図示しないメモリに記憶したプログラムに従い、上述したハードウェア各部を制御する。映像信号は映像信号処理部391へ入力される。映像信号処理部391は、同期分離及びスケーリング等、映像信号の処理を行い、処理後の映像信号を映像形成素子制御回路370へ出力する。プロジェクタ300では、ランプ4から発せられた白色光が集光され、カラーホイール320に照射される。カラーホイール320は、赤、青及び緑色の光学フィルタが円周方向に沿って配列形成された円盤として構成されており、図示しない駆動モータによって高速回転されるようになっている。
【0046】
カラーホイール320の回転に伴って、ランプ4から出射された光の光路に各色フィルタが順次挿入され、カラーホイール320に照射された白色光が赤色光、緑色光、青色光の各単色光に時分割で色分離される。そして、分離された各単色光は、反射鏡321へと送られ、DMD360に照射される。なお、DMDに代えて液晶パネルを用いても良い。DMD360は映像形成素子制御回路370によって駆動制御されている。映像形成素子制御回路370は、入力された映像信号に従ってDMD360を駆動する。具体的には、入力された映像信号に従ってDMD360の各セルや微小ミラーをオンまたはオフさせることによって、照射された単色光を画素単位で反射して光変調を行い、画像光を形成する。形成された画像光は、投射レンズ380に入射され、投射レンズ380によって不図示のスクリーン等に拡大投射される。
【0047】
放電灯点灯装置1はランプ4の点灯及び消灯を制御する。ファン330はランプ4またはプロジェクタ300内を冷却するためのものであり、図示しないモータにより駆動される。なお、本実施の形態においては放電灯点灯装置1をプロジェクタ300へ適用する形態につき説明したが、これに限るものではなく、一般照明等に適用しても良い。
【0048】
本実施の形態3は以上の如き構成としてあり、その他の構成及び作用は実施の形態1及び2と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。
【図2】出力回路の回路構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態2に係る放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。
【図4】実施の形態2に係る出力回路の回路構成を示すブロック図である。
【図5】プロジェクタのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図6】従来の放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0050】
1 放電灯点灯装置
2 直流電源、交流電源
3 イグナイタ
4 ランプ(放電灯)
5 フォトカプラ
6 トランス
10 昇降圧回路
11 ラインフィルタ
13 スイッチング制御部
14 平滑コンデンサ
15 起動抵抗
16 パワースイッチ素子
20 バラスト
21 出力回路
22 パワーダイオード
23 平滑用コンデンサ
24 第1分圧抵抗
25 第2分圧抵抗
26 電流検出抵抗
27 パワースイッチ素子
28 チョークコイル
30 電圧検出回路
225 マイコン
240 ランプ電圧検出回路
271 第2スイッチング制御部
302 第2マイコン
303 乗算器
304 係数記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯を点灯させる放電灯点灯装置において、
電源からの電圧をスイッチング制御部の制御により昇降圧する昇降圧回路と、
該昇降圧回路の出力電圧を検出する電圧検出回路と、
前記昇降圧回路に接続され、前記放電灯の点灯制御を行うバラストと、
前記放電灯に印加される電圧を検出する放電灯電圧検出回路と、
前記放電灯電圧検出回路により検出された電圧及び前記電圧検出回路により検出された電圧に基づく信号を前記スイッチング制御部へ出力する出力回路と
を備えることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記出力回路は、
前記放電灯電圧検出回路により検出された電圧に所定の係数を乗じ、乗じた電圧と前記電圧検出回路により検出される電圧との差に係る信号を前記スイッチング制御部へ出力するよう構成してある
ことを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記出力回路は、
前記放電灯電圧検出回路により検出された電圧を略2倍し、略2倍後の電圧と前記電圧検出回路により検出される電圧との差に係る信号を前記スイッチング制御部へ出力するよう構成してある
ことを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記スイッチング制御部は、
前記出力回路から出力される信号に基づき、前記電源からの電圧を昇降圧するよう構成してある
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記昇降圧回路と前記バラストとは絶縁されており、
前記出力回路から前記スイッチング制御部へ出力される信号を伝送するフォトカプラをさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の放電灯点灯装置を備えることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−177050(P2008−177050A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9495(P2007−9495)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】