説明

放電灯点灯装置及び照明器具

【課題】定格電力が異なる複数種の放電灯を直列点灯するものにおいて、始動前における放電灯に印加する電圧を高くし点灯中のフィラメント電流が過剰になるのを抑え、しかも、始動前に放電灯に対して充分なフィラメント予熱電流を流す。
【解決手段】インバータ回路2のFET4に、直流カット用コンデンサ6及び共振用インダクタ7を直列に介して、定格電流が略等しい第1の放電灯11と第2の放電灯を直列に接続したランプ負荷を接続する。共振用インダクタ7に接続した第1の放電灯は第2の放電灯に比べて定格電力が大きくなっている。従って、始動時、予熱電流を増やすためにランプ負荷に印加する電圧を高め、第1の放電灯に大きな電圧が印加するようにしても第1の放電灯は直ぐに点灯することは無く充分な予熱が行われた後に点灯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定格電力が異なる複数の放電灯を直列点灯する放電灯点灯装置及び照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータ回路の出力端子に、共振回路を構成するチョークコイルを直列に介して定格電力が異なる複数種の放電灯を、定格電力の小さい放電灯をチョークコイル側にして直列に接続した直列回路を接続し、その直列回路にフィラメント電流を流す回路を構成するとともに共振回路を構成するコンデンサを並列に接続した放電灯点灯装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−330082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のような定格電力が異なる複数種の放電灯を直列に接続した直列回路では、チョークコイル側に接続されている放電灯には他の放電灯に比べて高い電圧が印加されるという現象がある。
このようなことから、従来のように、定格電力が異なる複数種の放電灯を直列に接続した直列回路において、定格電力が小さく始動電圧が低い放電灯をチョークコイル側にしたのでは、充分な予熱が行われる前に定格電力が低い放電灯が点灯してしまい、放電灯の短寿命化を招く虞がある。そして、始動電圧が異なる放電灯を直列に接続した場合、一方の放電灯が点灯すると他方の放電灯も点灯してしまうため、従来においては、定格電力の高い放電灯も充分に予熱が行われず、短寿命化を招く虞がある。
【0004】
本発明は、このような問題が解決するために為されたもので、定格電力が異なる複数種の放電灯を直列点灯するものにおいて、始動前に各放電灯に対して充分なフィラメント予熱電流を流すことができる放電灯点灯装置及び照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、高周波交流電圧を発生させるスイッチング手段と、このスイッチング手段の出力端に直列に接続された共振用インダクタと、スイッチング手段の出力端に共振用インダクタを直列に介して接続し、定格ランプ電流が略等しく定格電力が異なる複数の放電灯のうち、最も定格電力の大きい放電灯をインダクタ側にして直列接続したランプ負荷と、このランプ負荷に並列に接続した共振用コンデンサと、ランプ負荷に印加する電圧によって各放電灯に流れる予熱電流が変化するように構成されたフィラメント予熱手段を具備した放電灯点灯装置にある。
【0006】
始動時に高周波交流電圧がランプ負荷に印加するとき、この電圧を高くすると各放電灯に印加される電圧は高くなる。特に、共振用インダクタ側に接続されている放電灯には、他の放電灯に比べてより高い電圧が印加される。しかし、共振用インダクタ側に接続されている放電灯として最も定格電力の大きい放電灯を使用しているので、他の放電灯に比べて高い電圧が印加されても直ぐには始動から点灯状態に移行することは無い。これにより、当該放電灯は、予熱状態を維持し始動前に各放電灯に充分なフィラメント予熱電流を流すことができる。
【0007】
スイッチング手段には、直流電源を生成する直流電源部が接続されているものであってもよく、直流電源部は、例えば、交流電源を整流して平滑したもの、平滑したものをさらに昇圧したものなどが使用できる。そして、この場合、本発明における共振用インダクタは、直流電源部の出力端には直接接続されていないものである。また、同じく本発明によるランプ負荷は、直流電源部との間で絶縁されていないものである。
【0008】
また、スイッチング手段としては、ハーフブリッジ形やフルブリッジ形又は一石形などの各種のインバータ回路が使用できる。また、定格ランプ電流が略等しいとは、放電灯の通常点灯時に通流する電流値が略等しいものであって、ばらつきによる差異を含むものである。
また、本発明は、上記放電灯点灯装置と、この放電灯点灯装置が配設された器具本体とを具備した照明器具にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、定格電力が異なる複数種の放電灯を直列点灯するものにおいて、点灯中のフィラメント電流が過剰になるのを抑えることができ、しかも、始動前に各放電灯に対して充分なフィラメント予熱電流を流すことができる放電灯点灯装置及び照明器具を提供できる。
また、本発明によれば、さらに、放電灯点灯中の動作周波数が無負荷共振点近傍になるようにスイッチング動作することで、簡単な構成でランプ電流を一定に制御できる放電灯点灯装置及び照明器具を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、直流電源1に、スイッチング手段として、ハーフブリッジ形のインバータ回路2を接続している。前記直流電源1としては、例えば、商用交流電源を全波整流回路で全波整流した後、昇圧回路で昇圧し、最終的に平滑コンデンサで平滑する直流電源を使用している。
【0011】
前記インバータ回路2は、前記直流電源1にスイッチング素子である2個のMOS型FET(電界効果形トランジスタ)3,4の直列回路を接続し、その各FET3,4を制御回路5によって、例えば数kHz乃至数十kHzの高い駆動周波数で交互にスイッチング駆動する構成になっている。
【0012】
前記各FET3,4の接続点を、直流カット用コンデンサ6及び共振用インダクタ7を直列に介して第1の放電灯11の一方のフィラメント電極11aの一端に接続している。前記FET4のソース端子と前記直流電源1の負極端子との接続点を、第2の放電灯12の一方のフィラメント電極12aの一端に接続している。
【0013】
前記第1の放電灯11の他方のフィラメント電極11bの一端と前記第2の放電灯12の他方のフィラメント電極12bの一端を互いに接続して、前記各放電灯11,12を直列接続したランプ負荷を構成している。前記第1の放電灯11の一方のフィラメント電極11aの他端と前記第2の放電灯12の一方のフィラメント電極12aの他端との間に共振用コンデンサ8を接続している。すなわち、ランプ負荷に対して共振用コンデンサ8を並列に接続している。
【0014】
前記共振用インダクタ7に予熱用巻線9を磁気結合して設け、この予熱用巻線9の一端を前記第1の放電灯11の他方のフィラメント電極11bの他端に接続し、前記予熱用巻線9の他端を、コンデンサ10を直列に介して前記第2の放電灯12の他方のフィラメント電極12bの他端に接続している。
【0015】
前記第1の放電灯11と第2の放電灯12は、定格電流が略等しく、定格電力が異なるもので、第1の放電灯11は第2の放電灯12に比べて定格電力が大きくなっている。すなわち、定格電力の大きい第1の放電灯11を共振用インダクタ7側にして接続している。
前記制御回路5は、前記各放電灯11,12の点灯中に流れるランプ電流が定格で略一定になるように、インバータ回路2の動作周波数を無負荷共振点近傍に制御している。
【0016】
このような構成においては、インバータ回路2が動作を開始すると、ランプ負荷、すなわち、第1の放電灯11と第2の放電灯12の直列回路の両端間に始動のための高電圧が印加する。このとき、共振用インダクタ7に接続している側の第1の放電灯11のフィラメント電極11a,11b間に印加する電圧が、第2の放電灯12のフィラメント電極12a,12b間に印加する電圧に比べて大きくなるという現象が発生する。
【0017】
また、第1の放電灯11の一方のフィラメント電極11aと第2の放電灯12の一方のフィラメント電極12aには共振用インダクタ7及び共振用コンデンサ8を介して予熱電流が流れ、第1の放電灯11の他方のフィラメント電極11bと第2の放電灯12の他方のフィラメント電極12bには予熱用巻線9から予熱電流が流れる。
【0018】
そして、やがて、第1の放電灯11及び第2の放電灯12はアーク放電して絶縁破壊を起こし、点灯を開始する。第1、第2の放電灯11,12が点灯を開始すると、インバータ回路2は動作周波数が無負荷共振点近傍となるようにコンデンサ6等の定数が設定されているため、第1、第2の放電灯11,12に略定格電流が流れるようになる。
【0019】
この一連の動作において、始動時には、共振用インダクタ7に接続する側の第1の放電灯11には第2の放電灯12よりも大きな電圧が印加する。しかし、第1の放電灯11の定格電力は大きいので、第1の放電灯11はすぐにはアーク放電に移行せず、この間各放電灯11,12のフィラメント電極には充分なフィラメント予熱電流が流れることになる。こうして各放電灯11,12はフィラメント電極11a,11b,12a,12bが充分に予熱されてからアーク放電へ移行するようになる。このように、フィラメント電極が充分に予熱されるので、各放電灯11,12が予熱不足によって寿命を低下することはない。
【0020】
また、共振用インダクタ7に接続する側の第1の放電灯11の定格電力が大きいので、共振用コンデンサ8の容量を大きくしなくとも充分な予熱電流を確保できるため、点灯中のフィラメント電流が過剰になるのを抑えることができる。
【0021】
すなわち、共振用コンデンサの容量を大きくするとフィラメント電流を増やすことはできる。しかし、このようにすると、点灯中にフィラメントに流れる電流も増えてしまい無駄な電流を流すことによる損失が大きくなる。このような問題を共振用インダクタ7に接続する側の第1の放電灯11の定格電力を大きくすることで解決できる。
【0022】
また、フィラメント予熱手段としては、共振用インダクタ7及び共振用コンデンサ8を介して予熱電流を流すとともに共振用インダクタ7に磁気結合した予熱用巻線9から予熱電流を流す通常の予熱手段であり、格別予熱電流を制御する回路を設けてはいない。そして、このような通常の予熱手段を使用しながら、共振用インダクタ7に接続する側の第1の放電灯11の定格電力を大きくすることで予熱が適切に制御されることになり、構成は極めて簡単である。
【0023】
また、インバータ回路2の動作周波数を無負荷共振点近傍に制御するのみで略一定の定格ランプ電流を流すことができる。このことによって、回路を簡単に、かつ安価に構成できる。
【0024】
(第2の実施の形態)
なお、前述した実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図2に示すように、第1の放電灯11と第2の放電灯12の直列回路からなるランプ負荷に流れるランプ電流を検出するランプ電流検出回路13を設け、このランプ電流検出回路13が検出したランプ電流値信号を制御回路51に供給している。
【0025】
前記制御回路51は、点灯時において、ランプ電流検出回路13からのランプ電流値信号を取込み、ランプ負荷に流れるランプ電流が定格電流に略一定になるようにインバータ回路2の動作周波数を制御するようになっている。
【0026】
このような構成においては、制御回路51がランプ電流検出回路13からのランプ電流値信号によってランプ負荷に流れるランプ電流が定格電流に略一定になるようにインバータ回路2の動作周波数を制御するので、前述した第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる他、第1の放電灯11と第2の放電灯12の定格電力の組み合わせがどのような組み合わせになっても対応することができる。すなわち、第1の放電灯11と第2の放電灯12の定格電力の組み合わせが、27Wと20Wであっても、34Wと27Wであっても、また、34Wと20Wであっても対応することができ、汎用性を向上できる。
【0027】
(第3の実施の形態)
なお、前述した実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
これは、図3に示すように、共振用インダクタ7に予熱用巻線9のほか、予熱用巻線14、15を磁気結合して設けている。そして、前記予熱用巻線14を、コンデンサ16を直列に介して前記第1の放電灯11の一方のフィラメント電極11aに接続し、前記予熱用巻線15を、コンデンサ17を直列に介して前記第2の放電灯12の一方のフィラメント電極12aに接続している。
【0028】
そして、共振用コンデンサ8を前記第1の放電灯11の一方のフィラメント電極11aの一端と、前記第2の放電灯12の一方のフィラメント電極12aの一端との間に接続している。その他については前述した第1の実施の形態と同様である。
【0029】
このように各放電灯11、12の各フィラメント電極に対する予熱電流を、それぞれ予熱用巻線9,14,15を使用して供給するものであっても前述した第1の実施の形態と同様の作用効果が得られるものである。
【0030】
なお、この実施の形態のように予熱用巻線9,14,15を使用したものにおいても前述した第2の実施の形態と同様にランプ電流検出回路13を使用してランプ電流を一定に制御することで、第1の放電灯11と第2の放電灯12の定格電力の組み合わせがどのような組み合わせになっても対応することができるようになる。
【0031】
なお、前述した第1乃至第3の実施の形態では、定格電流が略等しく、定格電力が異なる放電灯を2個直列に接続したランプ負荷を使用したものについて述べたが必ずしもこれに限定するものではなく、定格電流が略等しく、定格電力が異なる放電灯を3個以上直列に接続したランプ負荷を使用してもよい。
【0032】
(第4の実施の形態)
この実施の形態は照明器具について述べる。
図4及び図5は前述した各実施の形態の放電灯点灯装置を組み込んだ照明器具100を示している。図4は外観を側面から見た図で一部を断面して内部構造を示している。図5は外観を下面から見た図で一部を切欠して内部構造を示している。ここで使用する放電灯11,12は、例えば、放電灯11が形名FHC27EDの27Wサークライン放電灯でで、放電灯12が形名FHC20EDの20Wサークライン放電灯である。
【0033】
照明器具100は、本体シャーシ101の内側に前記放電灯11,12を挟持部材102,103によってそれぞれ挟持し取付けている。前記本体シャーシ101の外側には放電灯点灯装置の放電灯11,12を除く装置本体を収納した収納部104が設けられている。
【0034】
前記本体シャーシ101の内側の中央部近傍に、リモコン操作によるオン、オフ信号を、透光性のカバー105を介して受信するセンサ106が配置されている。
この照明器具は放電灯11,12が直列接続されているので、リモコン操作によるオン、オフ信号により、放電灯11,12が一緒に点灯、消灯を行うことになる。
【0035】
なお、この実施の形態では定格ランプ電流が略等しく定格電力が異なる2本の放電灯を点灯する放電灯点灯装置を組み込んだ照明器具について述べたが、本発明は2灯用に限らず定格ランプ電流が略等しく定格電力が異なる3本以上の放電灯を点灯する放電灯点灯装置を組み込んだ照明器具にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る、放電灯点灯装置の回路構成を示す図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る、放電灯点灯装置の回路構成を示す図。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る、放電灯点灯装置の回路構成を示す図。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る、放電灯点灯装置を組み込んだ照明器具の構成を示す一部断面した側面図。
【図5】同実施の形態の放電灯点灯装置を組み込んだ照明器具の構成を示すカバーの一部を切欠した下面図。
【符号の説明】
【0037】
2…インバータ回路、3,4…MOS型FET、5…制御回路、7…共振用インダクタ、8…共振用コンデンサ、9…予熱用巻線、11,12…放電灯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波交流電圧を発生させるスイッチング手段と、
このスイッチング手段の出力端に直列に接続された共振用インダクタと、
前記スイッチング手段の出力端に前記共振用インダクタを直列に介して接続し、定格ランプ電流が略等しく定格電力が異なる複数の放電灯のうち、最も定格電力の大きい放電灯を前記インダクタ側にして直列接続したランプ負荷と、
このランプ負荷に並列に接続した共振用コンデンサと、
前記ランプ負荷に印加する電圧によって前記各放電灯に流れる予熱電流が変化するように構成されたフィラメント予熱手段と、
を具備したことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
スイッチング手段は、放電灯点灯中の動作周波数が無負荷共振点近傍になるようにスイッチング動作することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
ランプ負荷に流れるランプ電流を検出する検出手段を有し、
スイッチング手段は、前記検出手段が検出するランプ電流が一定になるようにスイッチング動作することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
請求項1記載の放電灯点灯装置と、
前記放電灯点灯装置が配設された器具本体と、
を具備したことを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−207478(P2007−207478A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22407(P2006−22407)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】