説明

放電灯点灯装置

【課題】放電灯点灯装置の定電圧回路を構成するダイオードが短絡した場合に、同定電圧回路を構成する電解コンデンサの液漏れを防止する。
【解決手段】直流電源11の電圧を所望の直流および交流電圧に変換した出力をそれぞれ出力する第1のDC/DC変換回路13を構成するトランスTRの一次側コイルn1から交流電圧を生成し、この交流電圧を定電圧回路18の直流電圧に変換する。この直流電圧は、第1のDC/DC変換回路13の交流電圧を生成されるための制御回路20および直流電圧を交流電圧に変換し放電灯を点灯させるDC/AC変換回路17を駆動するDC/AC変換駆動回路19の電源としてこれらに供給する。定電圧回路18は、直流変換するダイオードD3,コンデンサC2と定電圧化するトランジスタQ1、抵抗R2、ツェナーダイオードZDからなり、ダイオードD3とトランジスタQ1との間にインダクタンスL1を接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直流電源を電圧変換して所望の電圧に変換し、放電灯を点灯させる放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放電灯点灯装置は、DC/DC変換回路のトランスとスイッチング素子の接続点からスイッチング素子駆動回路および制御回路に定電圧を供給するためダイオードを介して定電圧回路を構成している。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2000−48991公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、定電圧回路に電圧源であるDC/DC変換回路のトランスの一次側巻線から電圧を供給するものであることから、DC/DC変換回路は数十キロまたは百キロ以上の高周波で動作している。スイッチング周波数のリップル電流が定電圧回路の入力段のコンデンサに流れるため、高リップル電流を流せるコンデンサを選定する必要があった。また、ダイオードが短絡した場合、コンデンサに整流されないリップル電流が流れるためコンデンサの防爆弁が作動して電解液が一瞬にして外部に漏れることにより、電解液の蒸発による煙と異臭を発生する問題がある。
【0004】
この発明の目的は、定電圧回路を構成する整流用のダイオードが短絡した場合でも、同じ定電圧回路を構成する電解コンデンサの液漏れを防止した放電灯点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の放電灯点灯装置は、直流電源と、前記直流電源の電圧を所望の第1の直流電圧および交流電圧に変換する第1のDC/DC変換回路と、前記直流電源の電圧を所望の第2の直流電圧に変換する第2のDC/DC変換回路と、始動時に前記第1のDC/DC変換回路の第2の直流電圧に基づき所望の高電圧を生成するイグナイタと、前記イグナイタの出力に基づき点灯に必要な電力が供給される放電灯と、前記第1のDC/DC変換回路から出力される直流電圧を交流電圧に変換し、前記放電灯がグローからアーク点灯させるDC/AC変換回路と、前記第1のDC/DC変換回路で交流電圧を生成させるための駆動回路および前記DC/AC変換回路の駆動させる前記第1のDC/DC変換回路の交流電圧を直流電圧に変換するとともに定電圧を得る定電圧回路とからなり、前記定電圧回路を構成する直流に変換する手段と該手段により直流変換された電圧を定電圧化の手段との間にインピーダンス素子を直列接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、放電灯を点灯させるための定電圧回路を構成するダイオードが短絡状態になった場合でも同じく定電圧回路を構成する電解コンデンサに流れるリップル電流を小さくすることで、電解コンデンサの液漏れを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施形態ついて、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態について説明するための概念図である。11は例えば12Vの定電圧の直流電源であり、この直流電源11の電力を、電源スイッチ12を介して第1のDC/DC変換回路13に供給する。また、直流電源11は第2のDC/DC変換回路14にも供給し、ここで1kVに昇圧された直流電圧Vd1を生成し、イグナイタ15に供給する。イグナイタ15では供給された1kVの直流電圧に基づき、例えば25kV程度の高圧のパルス電圧を発生させて放電灯16に供給し、放電灯16をグロー放電させる。
【0008】
第1のDC/DC変換回路13では、例えば400Vの高い直流電圧Vd2を生成し、DC/AC変換回路17に供給するとともに、交流電圧Va1を生成し、定電圧回路18に供給する。定電圧回路18では交流電圧Va1に基づき降圧させた定電圧の直流電圧Vd3を生成し、DC/AC変換駆動回路19と制御回路20の電源としてそれぞれ供給する。DC/AC変換駆動回路19では、駆動交流電圧Va2を生成してDC/AC変換回路17に供給し、第1のDC/DC変換回路13から供給される直流電圧Vd2を交流電圧Va3に変換して出力する。制御回路20は、第1のDC/DC変換回路13から交流電圧Va1と直流電圧Vd2をそれぞれ生成するための制御信号を生成する。
【0009】
イグナイタ15は、第2のDC/DC変換回路14から供給される直流電圧に基づき生成された高圧直流電圧でパルス電圧を生成してグロー放電された放電灯16に、DC/AC変換回路17から供給される例えば400Vの交流電圧Va3を供給する。これにより、放電灯16をグロー放電からアーク放電に切り替える。
【0010】
次に、図1の第1のDC/DC変換回路13、定電圧回路18、DC/AC変換回路17をより詳細に示した図2の回路構成図および図3の波形図を参照しながら、図1についてさらに詳細に説明する。図2において、図1と同一の部分には同一の符号を付している。
【0011】
図2において、まず、第1のDC/DC変換回路13の構成について説明する。直流電源11の正極は、トランスTRの一次側コイルn1の一端に接続する。一次側コイルn1の他端は、CMOS型トランジスタで構成されるスイッチ回路SWを介して接地する。スイッチ回路SWは制御回路20の出力により駆動される。一次側コイルn1の両端には、図示極性のダイオードD1とコンデンサC1の直列回路を並列接続し、さらにコンデンサC1には抵抗R1を並列接続する。ダイオードD1、コンデンサC1、抵抗R1はスナバ回路を構成し、トランスTRで発生するサージ電圧を吸収してスイッチ回路SWにサージ電圧がかからないようにする。
【0012】
二次側コイルn2の一端は、第2のDC/DC変換回路14に接続するとともに、ダイオードD2、コンデンサC2を介して接地する。ダイオードD2とコンデンサC2の接続点は、DC/AC変換回路17に接続する。ニ次側コイルn2の他端は一次側コイルn1の他端に接続する。
【0013】
次いで、定電圧回路18の構成について説明する。トランスTRの一次側コイルn1とスイッチ12の接続点にダイオードD3のアノードを接続する。ダイオードD3のカソードは、高周波成分を抑制するインピーダンス素子である、例えばビーズ型のインダクタL1、電解コンデンサC2を介して接地する。インダクタL1と電解コンデンサC2の接続点は、コレクタがコンデンサC3を介して接地されたPNP型トランジスタQ1のエミッタに接続する。トランジスタQ1のエミッタ・ベース間には抵抗R2を接続する。トランジスタQ1のベースは、ツェナーダイオードZDを介して接地する。
【0014】
また、DC/AC変換回路17は、例えばCMOS型のスイッチングトランジスタのスイッチSa,Sb,Sc,Sdからフルブリッジ回路を構成しており、スイッチSaとスイッチSd、スイッチSbとスイッチScは同時にオンオフ制御され、これらの2群のスイッチは交互にオンオフ制御される。
【0015】
次に、上記した図2構成の動作について図3の波形図とともに説明する。スイッチ回路SWをオンオフ制御させることでトランスTRの一次側コイルn1に発生する交流電圧Va1は、第2のDC/DC変換回路14を構成する一次側コイルn1より巻線数の多い図示しない三次側コイルに高い交流電圧を生成し、この交流電圧に基づいた例えば1kVの直流電圧Vd1に変換してイグナイタ15に供給する。イグナイタ15では供給された1kVに基づき図3(b)に示す例えば25kVを生成して放電灯16に供給し、放電灯16をグロー放電させる。
【0016】
また、トランスTRは二次側コイルn2を、一次側コイルn1より巻線比を多くし、それに応じた高い交流電圧を生成する。この交流電圧は、ダイオードD2、コンデンサC2を用いて図3(a)に示す例えば400Vの直流電圧Vd2に整流してDC/AC変換回路17に供給する。
【0017】
トランスTRの一次側に発生した交流電圧Va1は、ダイオードD3、インダクタL1、電解コンデンサC3により図3(c)に示すような直流電圧に変換する。交流電圧Va1は、リップル電流およびリップル電圧を含むため、高周波成分をインダクタL1で図3(d)に示すように除去する。変換された直流電圧は、ツェナーダイオードZDのツェナー電圧で決まる電圧で一定にされた直流電圧Vd3をトランジスタQ1のコレクタから生成し、この直流電圧Vd3を制御回路20およびDC/AC変換駆動回路19の電源としてこれらに供給する。
【0018】
制御回路20は、スイッチング信号を生成し、スイッチ回路SWをオンオフ制御して直流電源11の直流電圧を交流電圧に生成する。また、フルブリッジ構成のDC/AC変換回路17は、DC/AC変換駆動回路19から出力される駆動信号で、スイッチSaとスイッチSdをオン、スイッチSbとスイッチScをオフ、次にスイッチSaとスイッチSdをオフ、スイッチSbとスイッチScをオンする制御を交互に行い、出力から直流電圧Vd2に交流電圧Va2が重畳された交流電圧Va3を得る。放電灯16は、これまで直流電圧Vd1に基づきイグナイタ15で生成された高い直流電圧でグロー放電された状態から、今度は交流電圧Va3に基づきアーク放電に移行し、以降この状態を交流電圧Va3が供給され続けられるまで維持する。
【0019】
ところで、ダイオードD3が故障した場合、インダクタL1がオープンになるため定電圧回路18の出力がオフし、電解コンデンサC2が故障することなくバラスト動作が停止する。これにより、電解コンデンサC2の防爆弁が作動して電解液が外部に漏れ出し、電解液の蒸発による煙と異臭の発生を防止することが可能となる。また、定電圧回路18の電解コンデンサC2に流れるリップル電流を小さいことから、小さいリップル電流定格のコンデンサを使用でき形状を小さくできる。
【0020】
図4は、この発明の他の実施形態について説明するための図2に相当する回路構成図である。この実施形態は、スイッチ12とトランスTRの一端の接続点から定電圧回路18に交流電圧Va1を供給していた状態から、トランスTRの一次側コイルn1の中間タップから交流電圧Va11を取り出した部分が上記した実施形態と異なる。図2と同一の構成部分には同一符号付してここでは異なる構成について説明する。
【0021】
巻線の少ない中間タップから取り出していることから、発生する交流電圧Va11は、図2で発生する交流電圧Va1より低いものとなる。このため、発生するリップル電流成分もそのレベルが低い状態で定電圧回路18に流れ込むことになる。
【0022】
この実施形態では、トランスTRの一次コイルn1から定電圧回路18までの配線パターンに流れるリップル電流がより小さくなるため高周波リップル電圧が小さくなるためノイズを低減できる。また、上記した実施形態と同様に、ダイオードD3が故障した場合、インダクタL1がオープンになるため定電圧回路18の出力がオフし、電解コンデンサC2が故障することなくバラスト動作が停止する。これにより、電解コンデンサC2の防爆弁が作動して電解液が外部に漏れ出し、電解液の蒸発による煙と異臭の発生を防止することが可能となる。また、定電圧回路18の電解コンデンサC2に流れるリップル電流を小さいことから、小さいリップル電流定格のコンデンサを使用でき形状を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施形態について説明するための回路構成図。
【図2】図1の動作について説明するための説明図。
【図3】この発明の他の実施形態について説明するための回路構成図。
【図4】図3の動作について説明するための説明図。
【符号の説明】
【0024】
11 直流電源
12 電源スイッチ
13 第1のDC/DC変換回路
14 第2のDC/DC変換回路
15 イグナイタ
16 放電灯
17 DC/AC変換回路
18 定電圧回路
19 DC/AC変換駆動回路
20 制御回路
TR トランス
D3 ダイオード
L1 インダクタ
C2 電解コンデンサ
Q1 トランジスタ
ZD ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
前記直流電源の電圧を所望の第1の直流電圧および交流電圧に変換する第1のDC/DC変換回路と、
前記直流電源の電圧を所望の第2の直流電圧に変換する第2のDC/DC変換回路と、
始動時に前記第2のDC/DC変換回路の第2の直流電圧に基づき所望の高電圧を生成するイグナイタと、
前記イグナイタの出力に基づき点灯に必要な電力が供給される放電灯と、
前記第1のDC/DC変換回路から出力される直流電圧を交流電圧に変換し、前記放電灯がグローからアーク点灯に移行させるDC/AC変換回路と、
前記第1のDC/DC変換回路で交流電圧を生成させるための制御回路および前記DC/AC変換回路の駆動させる前記第1のDC/DC変換回路の交流電圧を直流電圧に変換するとともに定電圧を得る定電圧回路とからなり、
前記定電圧回路を構成する直流に変換する手段と該手段により直流変換された電圧を定電圧化の手段との間にインピーダンス素子を直列接続したことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記第1のDC/DC変換回路は、二次側が一次側よりも巻数の多いコイルを有するトランスと、該トランスの二次側に発生する交流電圧を直流電圧に変換する手段とを有し、
前記定電圧回路に供給される交流電圧は、前記第1のDC/DC変換回路の交流電圧を発生するトランスの一次側の一端あるいは中間であることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−222044(P2006−222044A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36637(P2005−36637)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】