説明

断熱材支持具

【課題】 本発明は、断熱材を柱状物間に強く押し込み過ぎたり、断熱材上に重量のある建築資材を載せたりしても、断熱材が目的とする位置より下方に配置されることがない断熱材支持具を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の断熱材支持具3は、上部片4と側部片5と、特定の支持片7とを有し、上部片4が柱状物1の上面に係止され、及び/又は側部片5が柱状物1の側面に係止され、支持片7から延設され、柱状物1と接することにより支持片7の下方への変形を防止するストッパー片8を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材支持具に関し、詳しくは、木造建築における根太或いは大引等の柱状物間に配置される断熱板を保持するのに適した断熱材支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造建築において、根太或いは大引等の柱状物間に断熱板を配置することが広く行われている。この場合、通常では、大引などの柱状物に断熱材支持具を係止し、該断熱材支持具に断熱板を保持させることにより、断熱板が柱状物間に配置される。
【0003】
このように用いられる断熱材支持具としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この断熱材支持具は、図8に示すように、上部片24および側部片25,25と、側部片25から断熱材配置空間に延設される支持片27とからなり、上部片24と側部片25,25とがコの字型部分を形成するものである。
【0004】
特許文献1の断熱材支持具は、上部片24と側部片25,25とからなるコの字型部分に柱状物を挿入し、コの字型部分で柱状物を挟みつけることにより、柱状物に係止される。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された断熱材支持具は、断熱材の施工中に断熱材を強く押し込み過ぎると、支持片27が下方に大きく曲がってしまい、断熱材が目的とする位置よりも下方に配置されてしまうという問題を有していた。また、断熱材の配置施工が完了してから、床板又は床下地材の配置を完了するまでの間、断熱材上に重量のある建築資材を載せたりすることがしばしば行われる。その場合にも、断熱材が強く押し込まれて支持片が下方に変形し、断熱材が目的とする位置よりも下方に配置されてしまうという問題が発生していた。
【0006】
【特許文献1】実公昭57−33123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題点に鑑み、断熱材を柱状物間に強く押し込み過ぎたり、断熱材上に重量のある建築資材を載せたりしても、断熱材が目的とする位置より下方に配置されることがない断熱材支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記従来課題に鑑みて鋭意研究を重ね、支持片にストッパー片を設けることにより支持片の下方変形を防止できることを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、下記(1)から(4)の断熱材支持具を提供するものである。
(1) 柱状物間に配置される断熱材を受け止める断熱材支持具において、
該断熱材支持具は、上部片と側部片と、該側部片から延設されると共に断熱材配置空間に延びる支持片とを有し、
該上部片が前記柱状物の上面に係止され、及び/又は該側部片が柱状物の側面に係止され、
更に、該支持片から延設され、柱状物と接することにより支持片の下方への変形を防止するストッパー片を有することを特徴とする断熱材支持具。
(2) 該ストッパー片が、該支持片の両側端から延設されていることを特徴とする前記(1)に記載の断熱材支持具。
(3) 該支持片の両側端から延設されたストッパー片と、該支持片とで構成される断面形状が、開口部を下方に有するコの字型であることを特徴とする前記(2)に記載の断熱材支持具。
(4) 該断熱材支持具が、金属板の抜き加工及び折り曲げ加工にて形成されたものであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の断熱材支持具。
【発明の効果】
【0009】
本発明の断熱材支持具は、上部片と側部片と特定の支持片とを有し、さらに該支持片から延設され、柱状物に接することにより支持片の下方への傾きを防止するストッパー片を有している。従って、断熱材支持具を柱状物に取り付けた後、断熱材配置空間に延びる支持片の上面に断熱材を載置するだけで、目的の位置に断熱材を保持させることができる。即ち、予め設定した位置よりも下方に断熱材が押し込まれる力が働くと、ストッパー片が柱状物に接することで、支持片の下方への変形を抑えることにより、断熱材が目的の位置に保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の断熱材支持具(以下、単に支持具ともいう。)は、木造建築において、大引等の柱状物間に断熱板が配置される際に、断熱材を受け止めるために使用される。即ち、該支持具は大引などの柱状物に係止され、断熱材配置空間に延びる支持片が断熱材を保持することで、木造建築の断熱構造が形成される。
【0011】
以下、本発明に係わる断熱材支持具について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明に係る断熱材支持具を用いた断熱材と板材の取り付け態様の例を示す斜視図、図2は本発明に係る断熱材支持具を示す斜視図、図3(a)は本発明の断熱材支持具の正面図、同(b)は同(a)のD部の部分拡大図、図4は本発明の断熱材支持具の平面図、図5は本発明の断熱材支持具の底面図、図6は本発明の断熱材支持具の展開図、図7は本発明に係る断熱材支持具のストッパー片の変更例を示す斜視図である。
【0012】
本発明でいう柱状物は、木造建築に用いられる柱状物であって、その間に断熱材が配置される柱状物であれば全てのものが対象となる。具体的には、大引、根太、垂木、野縁、野縁受け、柱、間柱等の角材が挙げられる。
従って、本発明の支持具は床下のみに限らず、壁、屋根、天井などの断熱構造にも使用される。本発明における「柱状物の上面」、「柱状物の側面」及び、「支持片の下方」における「上面」、「側面」、「下方」といった方向については、断熱材の挿入面側が「柱状物の上面」を意味し、断熱材の挿入方向が「支持片の下方」を意味する。また、柱状物の断熱材配置空間に面した面側が「柱状物の側面」を意味する。
【0013】
別な見方をすれば、「柱状物の上面」とは支持具が柱状物に取り付けられる際に上部片が配置される側であり、同様に、「柱状物の側面」とは支持具が柱状物に取り付けられる際に側部片が配置される側である。また、「支持片の下方」とは支持片のうち、ストッパー片が位置する側である。
【0014】
次に、柱状物として代表的な大引を例として、本発明の断熱材支持具がどのように用いられるか説明するが、大引以外の柱状物については、大引を、例えば、垂木、野縁等と読みかえればよい。
【0015】
本発明の支持具3は、図3〜図5に示すように、上部片4と側部片5と支持片7とを有し、支持片7は側部片5の下端縁から延設されている。側部片5は2枚あることが好ましいが、1枚でも構わない。
【0016】
側部片5が2枚の断熱材支持具3は、図3(a)に示すように、上部片4が2枚の側部片5に挟まれてコの字を形成し、コの字の2つの自由端(側部片5の下端縁)の各々に支持片7が延設されたものとなる(以下、この態様の断熱材支持具を、コの字の断熱材支持具ともいう。)。また、側部片5が1枚の支持具3は、上部片4と1枚の側部片5がL字を形成し、L字の一の端部(側部片5の下端縁)に支持片7が延設されたものとなる(以下、この態様の断熱材支持具を、L字の断熱材支持具ともいう。)。
【0017】
前記コの字の断熱材支持具は、例えば図1に示すように、大引1の両側に断熱材2が配置される場合に好適に用いられる。また、前記L字の断熱材支持具は、例えば、隅部の大引1の片側に断熱材が配置される場合に好適に用いられる。コの字の断熱材支持具とL字の断熱材支持具は別々に製造しても良いが、後述するように、コの字の断熱材支持具のみを製造し、その上部片4の途中で容易に切断できるようにしておくことが好ましい。そのようにすれば、コの字の断熱材支持具のみを製造するだけで、必要に応じて、施工現場において上部片4の途中で切断することで容易にL字の断熱材支持具を得ることができるので好ましい。また、一種類のコの字の断熱材支持具の製造のみで済むため、生産性にも優れる。
【0018】
以下、コの字の断熱材支持具を例にとって、本発明の支持具について具体的に説明する。
本発明の支持具3は、上部片4が大引1の上面に係止され、及び/又は側部片5が大引1の側面に係止される。ここでいう係止とは、支持具3を大引1等の柱状物に設置した際に支持具3が柱状物上にとどまり、断熱材2を支持具3の支持片上に配置した際に支持具3が柱状物から脱落しなければよい程度の意味で用いられるが、支持具3を大引1等の柱状物に設置した際に、支持具3が柱状物上に載っているだけの状態のみならず、支持具3が柱状物に嵌合して固定されている状態や、支持具3が柱状物に強固に固定された状態をも包含する。
【0019】
当然のことながら、支持具3は柱状物に強固に固定されることが好ましい。支持具3を柱状物に強固に固定するには、釘や、爪、接着剤等を用いて、支持具3を柱状物に取り付ければよい。また、支持具3は、上部片4と側部片5の双方により柱状物に係止させることが好ましいが、上部片4のみで又は側部片5のみで柱状物に係止してもよい。上部片4のみで柱状物に係止するとは、上部片4のみが柱状物に接触(固定や接着剤による接着も含む)しており、側部片5が柱状物に接触していない状態であることを意味し、側部片5のみで柱状物に係止するとは、側部片5のみが柱状物に接触(固定や接着剤による接着も含む)しており、上部片4が柱状物に接触していない状態であることを意味する。この場合、柱状物に接触していない上部片4又は側部片5は、支持具3を大引1に設置する際の位置決め程度の役割しか果たさない。
【0020】
本発明に係る支持片7は、側部片5,5から延設される支持片7を有する。該支持片7は、側部片5,5の途中から延設されていてもよいが、側部片5,5の下端縁から延設されていることが好ましい。
該支持片7は断熱材配置空間に延びるように形成されているので、この上に断熱板を載置することができる。即ち、図3(a)に示すように、大引1に係止された断熱材支持具3の側部片5の下端縁から、支持片7が断熱材配置空間に延設されているので、図1に示すように、向かい合う支持片7と支持片7の上に断熱板を押し込んで載置することができ、該断熱材の上に板材14を載置することにより、家屋の断熱構造を容易に施工できる。
【0021】
尚、本発明において、支持片7に関し、断熱材配置空間に延びるとは、支持片7が上部片4と側部片5で構成されるコの字の外側に向かって延びていることをいう。断熱材支持具3を大引1に係止した際(断熱材の配置前)の側部片5と支持片7とが正面視においてなす角度β(図3(a)参照)は70〜90°に形成されることが好ましい。
【0022】
大引1に係止される側の上部片4の長さは、大引1の幅に対して0〜+2mmの範囲内とすることが好ましく、0〜+1mmの範囲内とすることがより好ましい。また、断熱材が配置される側の側部片5の上端から、支持片7の断熱材が配置される面と側部片5が交わる位置までの長さは断熱材2の厚みに対して−2〜+30mmの範囲内とすることが好ましく、−1〜+25mmの範囲内とすることがより好ましい。ただし、断熱材が床に使用される場合には、断熱材が配置される側の側部片5の上端から、支持片7の断熱材が配置される面と側部片5が交わる位置までの長さは断熱材2の厚みに対して−2〜0mmの範囲内とすることが好ましく、−1〜0mmの範囲内とすることがより好ましい。
【0023】
また、断熱材支持具3の厚みは0.1〜2.0mmが好ましく、0.2〜0.8mmが更に好ましい。断熱材支持具3の厚みが、この範囲であることにより、断熱構造に占める断熱材支持具の体積の割合が小さいため、断熱欠損を発生させる虞を低減でき、より優れる断熱構造を形成することができる。
【0024】
このような上部片、側部片、支持片を持つ断熱材支持具は従来公知であるが、本発明の特徴は、支持片7,7から延設され、大引1などの柱状物と接することにより支持片の下方への変形を防止するストッパー片8,8が設けられていることにある。かかるストッパー片8が設けられていると、断熱板の施工中に、断熱板を大引1,1間に強く押し込み過ぎたり、断熱板上に重量のある建築資材を載せたりしても、ストッパー片8が大引1に接触することで、又は接触していることで支持片7の下方への変形を抑えることができる。その結果、断熱板が目的とする位置よりも下方に配置されてしまうことが防止され、目的の位置に断熱材を保持させることが容易になる。
【0025】
本発明のストッパー片8は、支持片7の側端縁15から下方に延設されていることが好ましく、二枚のストッパー片8の各々が夫々支持片7の両側端縁15,15から下方に延設されていることがより好ましい。支持片7の側端縁15から延設されたストッパー片8は、後述するように、金属板の抜き加工及び折り曲げ加工により容易に作製することができる。このようなストッパー片8が支持片7の両側端縁15,15に延設されていると、支持片にかかる力を均等にストッパー片に伝えることができ、断熱材を支持する上で安定性が高くなり、結果として支持片7の変形を効果的に防止することができる。
【0026】
更に、支持片7の両側端から延設されるストッパー片8,8と、支持片7とで構成される断面形状は、開口部を下方に有するコの字型であることが好ましい。即ち、図2、図3(a)に示すように、下方に延びたストッパー片8が支持片7に直交すると共に側端縁15の最内方部Aに?がる辺16を有し、辺16が、支持片7の側端縁15に対して直角又は略直角に形成されていることが好ましい。
【0027】
ストッパー片8,8と、支持片7とで構成される断面形状がコの字型であれば、ストッパー片8と支持片7とが丈夫なリブ構造を呈することになり、ストッパー片の圧力に対する抵抗力がより強化されるので、断熱材をより安定して保持することができる。即ち、図2に示すように、前記ストッパー片8の辺16が大引1の側面に接することにより、上方からの圧力を受け止めるので、支持片7の動きが停止され、それ以上下方へ進むことを防ぐ働きをする。これにより、従来から問題であった、上方からの圧力に支持片7が耐えられずに、断熱材2が目的とする位置より下方に配置されてしまうという課題が解決される。
【0028】
また、丈夫なコの字型のリブ構造は、ストッパー片と支持片の厚みが薄くても断熱材を支持できるので、厚みの薄い材料を用いて断熱材支持具を製造することにより、材料費の節約が可能になる。また、支持具3の厚みが薄ければ断熱構造の中の支持具の体積の占める割合が小さくなるので、断熱欠損が少ない断熱構造を構築することができる。
【0029】
本発明のストッパー片8は、更に支持片7の側端縁15の最外方部Bと、辺16の下端部Cとを結ぶ辺17を有しており、最内方部Aと最外方部Bと下端部Cとが直角三角形をなしていることが、断熱材を安定して保持することができると共に、製造が容易で材料費の低減にもつながるので好ましい。
但し、本発明のストッパー片8はこの形状に限定されるものではなく、最外方部Bと下端部Cとは曲線で結ばれていてもよければ、直角をなす二本の直線で結ばれ、ストッパー片全体として矩形をなしていてもよい。
【0030】
更に、本発明においては、ストッパー片8が支持片7の側端縁15から延設されており、ストッパー片8と支持片7との構成が、開口部を下方に有するコの字型の断面形状であることが最も好ましいが、ストッパー片8が支持片7から延設されていると共に大引1の側面に接する部位を有してさえいれば、断熱材を目的の位置に配置させるという効果を達成できる。そのため、例えば、図7(a)に示されるように支持片の両側端から延設されたストッパー片同士が交叉し、側面から視た形状が×型になっている形状、図7(b)に示されるようにストッパー片が支持片の両側端より内側部から立設されている形状、若しくは図7(c)に示されるように支持片から一のみのストッパー片が立設されている等の形状であっても良い。
【0031】
本発明の断熱材支持具3の上部片4には、図2、図4に示すように、線状の薄肉部13がプレス等により幅方向に形成されていることが好ましく、薄肉部13が二箇所形成されていることがより好ましく、三箇所以上形成されていてもよい。薄肉部13が形成されていると、必要に応じて上部片4を折り曲げることにより切り離すことができ、得られる支持具3は、上部片4と1枚の側部片5がL字を形成し、L字の一の端部(側部片5の下端縁)に1つの支持片7が延設された、全体としてZ字型ものとなる(L字の断熱材支持具)。このような支持具は、種々の太さの角材、或いは隅部に位置する角材に対応することが容易なものである。
【0032】
また、上部片4には、図2、図3、図4に示すように、切起し加工によって爪9が形成されていることが好ましい。爪9は、上部片4の内方、即ち大引1の上面に向けて垂直に折り曲げられており、その幅方向断面が湾曲を成すように形成されることが好ましい。
【0033】
支持具3を大引1に取り付ける際に、爪9を大引1の上面に打ち込んで、支持具3を大引1の上面に固定すれば、前記大引1の上面に強固に固定された断熱材支持具となる。このように用いられた支持具3は、施工中に外れにくくなり、作業効率が高められる。
なお、爪9の幅方向断面が湾曲に形成されていると、大引1に打ち込まれる際の強度が高く、強く打ち込まれたとしても耐えることができる。また、打ち込まれた後にも外れにくくなる。
【0034】
また、断熱材支持具3の側部片5には、図2、図3(a)(b)に示すように、切起し加工によって条片10が形成され、該条片10の先端に側部片5の内方、即ち大引1の側面を向いている尖鋭部11が形成されることが好ましい。該条片10は、図3(b)に示すように、切起し基端部12で側部片5の外方に折られ、更に条片10は切起し基端部12と尖鋭部11との間で側部片5の内方に向けて略直角に折り曲げられており、その幅方向断面が湾曲を成すよう形成されていることが好ましい。条片10は各々の側部片5に2つずつ平行に、一は尖鋭部11が上方を向くように、他の一は下方を向くように形成されていることが好ましい。
【0035】
断熱材支持具3を大引1に取り付ける際に、条片10の尖鋭部11を大引1の側面に打ち込んで、支持具3を大引1の側面に固定すれば、前記大引1の側面に強固に固定された断熱材支持具となる。このように用いられた支持具3も、施工中に外れにくくなり、作業効率が高められる。 なお、条片10の尖鋭部11の幅方向断面が湾曲に形成されていると、大引1に打ち込まれる際の強度が高く、強く打ち込まれたとしても耐えることができる。また、打ち込まれた後にも外れにくくなる。
【0036】
爪9や条片10はどちらかが、大引1に打ち込まれていれば良いが、両方とも打ち込まれていることが更に好ましく、支持具3は施工中により外れにくくなる。
尚、爪9は、薄肉部13の外側の上部片4に形成されることが好ましい。更に、薄肉部13が上部片4に二箇所設けられ、その外側に2個ずつ合計4個の爪9が形成されることが、より確実に支持具3を大引1に固定することができるため好ましい。
【0037】
断熱材支持具3は、隅部の大引1に取り付ける際には、薄肉部13で切り離して、上部片4と側部片5とからなる側部片の下端縁に支持片7が延設された全体としてZ字型の支持具(L字の断熱材支持具)にすることが好ましい。この場合、爪9が薄肉部13の外側に設けられていれば、上部片4の爪9及び/又は側部片5の条片10でZ字型の支持具3を大引1に固定することができ、薄肉部13の外側に2個の爪9が設けられていれば、より確実に固定することができる。
【0038】
但し、爪9のみを大引1の上面に打ち込んで上部片4のみを固定してもよく、条片10のみを大引1の側面に打ち込んで側部片5のみを固定してもよい。
【0039】
以上では、断熱材支持具3の係止の態様として、爪9や条片10による強固な固定について説明してきたが、前記で触れた通り、爪9や条片10を形成せずに、上部片4と、2枚の側部片5,5とからなるコの字型部分を大引1の上面から嵌め込んで、側部片5,5で大引1を挟み込むことにより、断熱材支持具3を大引1の形状に沿って取り付けることもできる。この場合、コの字型部分が大引1を確実に挟み込むことができるように、上部片4と側部片5とが正面視においてなす角度α(図3(a)参照)は85〜90°に形成されることが好ましい。
【0040】
尚、本発明の断熱材支持具3は、帯状の板が折り曲げられた形状のものであれば、突起物が帯状の板から外側に存在しないため、支持具を大きなコの字を形成するように横に並べることにより、多数の断熱材支持具を隙間なく並べて保管したり、運搬することができるので、効率的である。
【0041】
本発明の断熱材支持具は、金属板の抜き加工及び折り曲げ加工にて形成することが好ましい。かかる方法によれば、該断熱材支持具を材料の無駄なく効率よく製造することができる。
次に、該断熱材支持具の製造方法の好ましい例について、具体的に説明する。但し、本発明方法はこれに限定されるものではない。
先ず金属板から、図6の展開図に示されるように、帯状長縁の両端部の両外側にそれぞれ直角三角形の金属板の直角部が、帯状金属板の内側に向いて帯状長縁上に位置するように延設された形状の帯状金属板をプレス装置にて打ち抜き加工する。
【0042】
即ち、帯状の4隅B,B,B,B(総称をBという。)の其々が直角三角形の一の頂点となり、4隅Bの各々から内側に離れた、帯状金属板の長縁上の4点A,A,A,A(総称をAという。)の其々が直角三角形の直角部となり、A,A,A,A(A)の其々に対して直角方向に位置する点C,C,C,C(総称をCという。)の其々が直角三角形の他の頂点となるように、A、B、Cを定めれば、4つの直角三角形B,B,B,Bの其々が帯状金属板の長縁上のB,B,B,Bの其々から延設された形状の帯状金属板となり、この形状が打ち抜き加工される。
【0043】
このように形成された金属板において、帯状金属板の端部の矩形Aと矩形Aとが支持片7,7となり、4つの直角三角形が4つのストッパー片8となる。また、線分Aと線分Aとの間が上部片4と側部片5となる。即ち、線分Aと線分Aとの間に帯状金属板の長縁に対して直角に引かれた二本の線分aと線分bとを想定し、帯状金属板が二本の線分aと線分bに沿って山折りされることで、線分aと線分bとの間が上部片4となり、その両側が側部片5,5となる。更に、前記線分Aと線分Aに沿って直角に谷折りされることで、側部片5から延設された支持片7,7が形成され、次いで、4本の線分ABに沿って山折されることで、4個のストッパー片8が形成される。
【0044】
尚、帯状金属板の長縁上の4点A,A,A,Aの其々が、前記支持片7の側端縁15の最内方部Aに相当し、帯状の4隅B,B,B,Bの其々が、前記支持片7の側端縁15の最外方部Bに相当し、点C,C,C,Cの其々が、前記辺16の下端部Cに相当する。
【0045】
尚、前記山折り、谷折りをする前に、必要に応じて前記金属板上の線分aと線分bとの間に、帯状金属板の長縁に直角な薄肉部13が、好ましくは二箇所、プレス成形により形成されることが好ましい。この薄肉部13は、前述した通り、必要に応じて折り曲げて切り離すことができる。
【0046】
更に、前記山折り、谷折りをする前に、必要に応じて二箇所の薄肉部13の各々の外側と線分aと線分bとの間に、其々切起し加工によって前記爪9が形成されることが好ましい。爪9は、上部片4の内方、即ち大引1の上面に向けて垂直に折り曲げられ、その幅方向断面は湾曲を成すように形成されることが好ましい。また、線分aと線分Aの間、線分bと線分Aの間には、其々切起し加工によって2つの条片10が形成されることが好ましく、該条片10の先端に側部片5の内方、即ち大引1の側面に向いている尖鋭部11が形成されることが好ましい。
【0047】
このように形成された断熱材支持具3は、前述したように、互いに平行に設置された大引1,1に適宜な間隔をもって、上部片4、と2枚の側部片5,5とからなるコの字型部分を大引1の上面から挿入され、位置決めされ、次いで、両側部片の其々の条片10,10が打ち込まれ、その其々の尖鋭部11、11が柱状物1の側面に打ち込まれて、側部片5が大引1の側面に固定されることが好ましい。
【0048】
このようにして断熱材支持具3が大引1,1に適宜な間隔をもって設置されたならば、それらの支持片7上に断熱材2を配置し、その後に大引1,1上に床下地材やフローリング等の板材14が配置されることが好ましい。
【0049】
尚、本発明の断熱材支持具3は、金属板から形成されることが、生産性、剛性、更には厚みを薄くできるという面から最も好ましいが、金属板以外にも、合成樹脂等の他の材料で形成されていても良い。また、本発明の断熱材支持具は、金属の鋳造、溶接等により、或いは合成樹脂の射出成形、合成樹脂シートの熱成形加工等の方法で製造することもできる。
【0050】
本発明の断熱材支持具と共に使用される断熱材としては、独立気泡構造の合成樹脂発泡体からなる板状の断熱材や、連続気泡構造の合成樹脂発泡体やガラス繊維や合成繊維を板状に真空パックしたいわゆる真空断熱材が使用可能である。ここでいう板状とは、直方体形状のものをいうが、直方体形状のものに限らず、直方体形状をベースとしているが角に丸みがあるものや、表面に凹凸を有しているもの等であっても構わない。直方体形状の断熱材としては、厚みが15〜300mm、長さ600〜4000mm、幅200〜2000mmのものが一般的である。
【0051】
上記した断熱材の中でも、軽量で剛性が大きい上、断熱性能が高く、厚みが加工によって容易に変更可能な、合成樹脂発泡体からなる板状の断熱材が好ましく、その中でも、リサイクル性が高い独立気泡構造のポリスチレン樹脂、若しくはポリプロピレン樹脂から成る押出発泡体若しくは発泡粒子成形体が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は本発明に係る断熱材支持具を用いた断熱材と板材の取り付け態様の例を示す斜視図である。
【図2】図2は本発明に係る断熱材支持具を示す斜視図である。
【図3】図3は本発明の断熱材支持具の正面図である。
【図4】図4は本発明の断熱材支持具の平面図である。
【図5】図5は本発明の断熱材支持具の底面図である。
【図6】図6は本発明の断熱材支持具の展開図である。
【図7】図7は本発明に係る断熱材支持具のストッパー片の変更例を示す斜視図である。
【図8】図8は従来の断熱板保持具を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1 大引
2 断熱材
3 断熱材支持具
4 上部片
5 側部片
7 支持片
8 ストッパー片
9 爪
10 条片
11 尖鋭部
12 切起し基端部
13 薄肉部
14 板材
15 支持片の側端縁
16 辺
17 辺
24 上部片
25 側部片
27 支持片
A 側端縁15の最内方部
B 側端縁15の最外方部
C 辺16の下端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状物間に配置される断熱材を受け止める断熱材支持具において、
該断熱材支持具は、上部片と側部片と、該側部片から延設されると共に断熱材配置空間に延びる支持片とを有し、
該上部片が前記柱状物の上面に係止され、及び/又は該側部片が柱状物の側面に係止され、
更に、該支持片から延設され、柱状物と接することにより支持片の下方への変形を防止するストッパー片を有することを特徴とする断熱材支持具。
【請求項2】
該ストッパー片が、該支持片の両側端から延設されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱材支持具。
【請求項3】
該支持片の両側端から延設されたストッパー片と、該支持片とで構成される断面形状が、開口部を下方に有するコの字型であることを特徴とする請求項2に記載の断熱材支持具。
【請求項4】
該断熱材支持具が、金属板の抜き加工及び折り曲げ加工にて形成されたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の断熱材支持具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−97265(P2009−97265A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271049(P2007−271049)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】