説明

新規なサイトカイン様タンパク質

【課題】新規なサイトカイン様タンパク質および該タンパク質をコードするDNAを提供する。また、該タンパク質の生産方法、該タンパク質に結合する化合物のスクリーニング方法、該化合物の医薬品用途を提供する。
【解決手段】他のタンパク質とのホモロジーが何ら示されていないEST(AA418955)の配列がG-CSFと弱いホモロジーを示すことを見出し、その配列に基づいてプライマーを合成し、ヒト胎児脾臓ライブラリーからPCRクローニングを行った結果、このESTに対応する全長cDNAを単離することに成功した。また、その構造の解析を行った結果、単離したcDNAが、IL-6/G-CSF/MGFファミリーに属する因子としての典型的な特徴を有することを見出した。また、単離した本遺伝子が導入されたCHO細胞の培養上清がkitリガンドの共存下で骨髄細胞の増殖を支持する活性を有することを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なサイトカイン様タンパク質およびその遺伝子に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトカインは、免疫反応や造血反応を制御する多機能性の細胞増殖・分化誘導因子である。サイトカインを構成する一連の因子群は、主として活性化T細胞、マクロファージ、あるいはストローマ細胞から産生され、リンパ系や造血系の細胞間をネットワーク的に連絡し、これら細胞の増殖、分化、および機能を調節している。サイトカインとしてはこれまでに多くの因子が単離され、因子そのものの他、因子に対する抗体やレセプター分子、あるいはそのレセプターに対する抗体等が医薬品として開発され、実用化されている。
【0003】
例えば、G-CSFは好中球増殖機能を有することから種々の疾患およびその治療に起因する白血球減少症の治療薬などとして既に実用化されている(K Welte,等:the first 10 years Blood Sep 15 1996; 88: 1907-1929(非特許文献1) および現代科学増刊18「サイトカイン」大沢利昭編集、1990年、東京化学同人発行(非特許文献2)を参照)。また、免疫機能や炎症等に作用するIL-6は、そのレセプターに対する抗体がリュウマチや白血病の治療薬として開発中である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】K Welte,等:the first 10 years Blood Sep 15 1996; 88: 1907-1929
【非特許文献2】現代科学増刊18「サイトカイン」大沢利昭編集、1990年、東京化学同人発行
【発明の概要】
【0005】
本発明は、新規なサイトカイン様タンパク質および該タンパク質をコードするDNAを提供する。また、本発明は、該DNAが挿入されたベクター、該DNAを保持する形質転換体、該形質転換体を利用した組み換えタンパク質の生産方法を提供する。さらに、本発明は、該タンパク質に結合する化合物およびその活性を制御する化合物スクリーニング方法を提供する。さらに、本発明は、該タンパク質やその活性を制御する化合物の医薬品用途を提供する。
【0006】
現在までに知られているサイトカインの多くはレセプターにWSモチーフ(Idzerda, RL et al., J Exp Med 1990 Mar 1;171(3):861-873)のような保存された特徴があり、サイトカインレセプターのスーパーファミリーを形成している。そのリガンドであるサイトカイン自身にはレセプターほど保存された特徴やホモロジーはないものの、立体構造が近いと考えられる非常に弱いホモロジーを持ったグループがいくつか存在する。EPO/TPOファミリーやIL-6/G-CSF/MGFファミリーなどがその例として挙げられる。本発明者らは、これらのファミリーの中にはいまだ単離されていない未知の遺伝子が存在すると考え、これらファミリーに属する未知のサイトカインの単離を試みた。
【0007】
具体的には、データーベース上で他のタンパク質とのホモロジーが何ら示されていないEST(AA418955)の配列がG-CSFと弱いホモロジーを示すことを見出し、その配列に基づいてプライマーを合成し、ヒト胎児脾臓ライブラリーからPCRクローニングを行った。その結果、本発明者らは、このESTに対応する全長cDNAを単離することに成功した(このクローンをSGRFと命名した)。また、本発明者らは、単離したSGRF cDNAの塩基配列を決定し、その構造の解析を行った。その結果、単離したcDNAが、IL-6/G-CSF/MGFファミリーに属する因子としての典型的な特徴を有することを見出した。さらに、本発明者らは、SGRFタンパク質の活性について検討を行った。その結果、SGRF遺伝子が導入されたCHO細胞の培養上清がマウスkitリガンドとの共存により特定の骨髄細胞の増殖支持活性を有することを見出した。単離したSGRFタンパク質は、それ自体リンパ系や造血系、さらには細胞増殖異常に関連する疾患の予防や治療への応用が考えられる他、リンパ系や造血系に関連する他の因子やこれら疾患の医薬品候補化合物のスクリーニングへの利用が可能である。
【0008】
即ち、本発明は、新規なサイトカイン様タンパク質SGRFおよびその遺伝子、それらの製造、並びに該タンパク質の医薬品や医薬品候補化合物のスクリーニングのための用途に関し、より具体的には、
1. 配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、または該タンパク質中のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質、
2. 配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNAがコードするタンパク質であって、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質、
3. (1)または(2)に記載のタンパク質をコードするDNA、
4. 配列番号:2に記載の塩基配列のコード領域を含む、(3)に記載のDNA、
5. (3)または(4)に記載のDNAが挿入されたベクター、
6. (3)または(4)に記載のDNAを発現可能に保持する形質転換体、
7. (6)に記載の形質転換体を培養する工程を含む、(1)または(2)に記載のタンパク質の製造方法、
8. (1)または(2)に記載のタンパク質に結合する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)(1)または(2)に記載のタンパク質またはその部分ペプチドに被検試料を接触させる工程、
(b)該タンパク質またはその部分ペプチドと被検試料との結合活性を検出する工程、
(c)該タンパク質に結合する活性を有する化合物を選択する工程、を含む方法、
9. (1)または(2)に記載のタンパク質に結合する化合物、
10. (8)に記載の方法により単離しうる、(9)に記載の化合物、
11. (1)または(2)に記載のタンパク質の活性を阻害または促進する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)被検試料の存在下で、哺乳動物由来の骨髄細胞に対し、(1)または(2)に記載のタンパク質およびキットリガンドを接触させる工程、
(b)該骨髄細胞の増殖を検出する工程、および
(c)被検試料の存在下で検出した場合(対照)と比較して、骨髄細胞の増殖を抑制または促進する化合物を選択する工程、を含む方法、
12.骨髄細胞がLin陰性、Sca-1陽性、c-kit陽性、CD34陽性を示す細胞である、(11)に記載の方法、
13.(1)または(2)に記載のタンパク質の活性を阻害または促進する化合物、
14.(11)または(12)に記載の方法により単離しうる、(13)に記載の化合物、
15.(1)または(2)に記載のタンパク質を有効成分とする医薬組成物、
16.(13)または(14)に記載の化合物を有効成分とする、(1)または(2)に記載のタンパク質の阻害剤または促進剤、
17. (1)または(2)に記載のタンパク質に結合する抗体、
18. 配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAと特異的にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するDNA、に関する。
【0009】
本発明は、新規なサイトカイン様タンパク質に関する。本発明のタンパク質に含まれる「SGRF」と命名されたタンパク質をコードするcDNAの塩基配列を配列番号:2に、該タンパク質のアミノ酸配列を配列番号:1に示す。
【0010】
現在までにIL-6/G-CSF/MGFファミリーに属すると考えられる因子としては、哺乳類においてはIL-6とG-CSFが報告されている。本発明者らが単離した「SGRF」cDNAは、その3'非コード領域にサイトカインのmRNAに多く見られるARE(AT Rich element)と呼ばれるmRNA不安定化配列(Lagnado CA, Brown CY, Goodall GJ (1994) Mol. Cell Biol. 14, 7984-7995)を4箇所保持していた。また、IL-6/G-CSF/MGFファミリーにおいて保存されているコンセンサス配列をほぼ保持していた(図3)。これら事実から「SGRF」は、IL-6/G-CSF/MGFファミリーに属する新規因子であると考えられる。
【0011】
ノーザンブロット解析によるヒト正常組織における「SGRF」の発現は非常に局所的であり、精巣、リンパ節、胸腺に発現し、それ以外の組織においては検出レベルになかった(図4)。発現が認められた組織においてもその発現量は微量であることが推定された。「SGRF」の部分断片であるESTの一つ(U38443)に関しては、通常はほとんど発現していないが活性化することによりT細胞系(Jurkat)で発現が誘導されることが報告されている(Yatindra Prashar, Sherman M. Weissman (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 659-663)。この事実およびノーザンブロット解析の結果から、「SGRF」は、生体内で、主として活性化されたT細胞において発現していると考えられる。
【0012】
さらに、「SGRF」遺伝子が導入されたCHO細胞の培養上清は、kitリガンドとの共存下で、骨髄細胞の増殖を支持する活性を示した(図12)。
【0013】
以上のような「SGRF」の特徴は、「SGRF」が典型的なインターロイキンの一種であることを示唆する。「SGRF」は、これまでに単離されてきた多くのサイトカインと同様に免疫系や造血系に関与すると考えられ、従って「SGRF」は、免疫系や造血系、さらには細胞増殖異常に関連した疾患の治療薬や予防薬としての応用が可能である。
【0014】
本発明のタンパク質は、当業者に公知の方法により、遺伝子組み換え技術を用いて調製される組み換えタンパク質として、また天然のタンパク質として調製することが可能である。組み換えタンパク質であれば、例えば、本発明のタンパク質をコードするDNA(例えば、配列番号:2に記載の塩基配列を有するDNA)を適当な発現ベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入して得た形質転換体またはその培養上清から精製するなどの方法により調製することが可能である。また、天然のタンパク質であれば、例えば、調製した組み換えタンパク質を小動物に免疫することにより得た抗体を固定したカラムを調製し、本発明のタンパク質の発現する組織もしくは細胞(例えば、精巣、リンパ節、胸腺など)の抽出物に対し該カラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーを行うなどの方法により調製することが可能である。
【0015】
また、本発明は、「SGRF」タンパク質(配列番号:1)と機能的に同等なタンパク質に関する。このようなタンパク質を単離するための方法としては、タンパク質中のアミノ酸に変異を導入する方法が当業者によく知られている。即ち、当業者にとっては、例えば、PCRによる部位特異的変異誘発システム(GIBCO-BRL社、Gaithersburg,Maryland)、オリゴヌクレオチドによる部位特異的変異誘発法(Kramer,W.and Fritz,HJ (1987) Methods in Enzymol.,154:350-367)など種々の方法を利用して、配列番号:1に示された「SGRF」タンパク質において、その機能に影響を与えないアミノ酸を適宜置換などして、「SGRF」タンパク質と機能的に同等なタンパク質を調製することは通常行いうることである。また、アミノ酸の変異は自然界においても生じることがある。このように「SGRF」タンパク質(配列番号:1)中のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、「SGRF」タンパク質と機能的に同等なタンパク質も本発明のタンパク質に含まれる。ここで「機能的に同等」とは、タンパク質が「SGRF」タンパク質と同等のサイトカイン活性を有していることを指す。「SGRF」タンパク質のサイトカイン活性には、例えば、Lin陰性、Sca-1陽性、c-kit陽性を示す細胞に対する増殖支持活性(実施例11)が含まれる。
【0016】
変異するアミノ酸の数は、「SGRF」タンパク質と同等のサイトカイン活性を保持する限り特に制限はない。通常、50アミノ酸以内であり、好ましくは30アミノ酸以内であり、さらに好ましくは10アミノ酸以内であり、さらに好ましくは5アミノ酸以内である。変異部位は、「SGRF」タンパク質と同等のサイトカイン活性を保持する限り、いかなる部位であってもよい。
【0017】
本発明において「SGRF」タンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1)の複数のアミノ酸が欠失したタンパク質には、該タンパク質の部分ペプチドが含まれる。部分ペプチドには、例えば、配列番号:1に記載の「SGRF」タンパク質からシグナルペプチドが除去されたタンパク質が含まれる。
【0018】
また、「SGRF」タンパク質のアミノ酸配列に複数個のアミノ酸残基が付加されたタンパク質としては、例えば、これらタンパク質を含む融合タンパク質が挙げられる。融合タンパク質は、これらタンパク質と他のペプチド又はタンパク質とが融合したものであり、本発明に含まれる。融合タンパク質を作製する方法は、本発明のタンパク質をコードするDNAと他のペプチド又はタンパク質をコードするDNAをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよく、当業者に公知の手法を用いることができる。本発明のタンパク質との融合に付される他のペプチド又はタンパク質としては、特に限定されない。
【0019】
本発明のタンパク質との融合に付される他のペプチドとしては、例えば、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204-1210 )、6 個のHis (ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc-myc の断片、VSV-GPの断片、p18HIVの断片、T7-tag、HSV-tag 、E-tag 、SV40T 抗原の断片、lck tag 、α-tubulinの断片、B-tag 、Protein C の断片等の公知のペプチドを使用することができる。また、本発明のタンパク質との融合に付される他のタンパク質としては、例えば、GST (グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP (マルトース結合タンパク質)等が挙げられる。市販されているこれらペプチドまたはタンパク質をコードするDNAを本発明のタンパク質をコードするDNAと融合させ、これれにより調製された融合DNAを発現させることにより、融合タンパク質を調製することができる。
【0020】
また、「SGRF」タンパク質(配列番号:1)と機能的に同等なタンパク質を単離するための他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Sambrook,J et al.,Molecular Cloning 2nd ed.9.47-9.58,Cold Spring Harbor Lab.press,1989)を利用する方法が当業者によく知られている。即ち、当業者であれば、「SGRF」タンパク質をコードするDNA(配列番号:2)若しくはその一部を基に、これと相同性の高いDNAを単離して、該DNAから「SGRF」タンパク質と機能的に同等なタンパク質を調製することも通常行いうることである。このように「SGRF」タンパク質をコードするDNAとハイブリダイズするDNAがコードするタンパク質であって、「SGRF」タンパク質と機能的に同等なタンパク質もまた本発明のタンパク質に含まれる。ここで「機能的に同等」とは、上記と同様に、タンパク質が「SGRF」タンパク質と同等のサイトカイン活性を有していることを指す。機能的に同等なタンパク質を単離するための生物としては、ヒト以外に、例えば、マウス、ラット、ウシ、サル、ブタなどが挙げられる。機能的に同等なタンパク質をコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、当業者であれば適宜選択することができるが、通常、「42℃、2xSSC、0.1% SDS」程度であり、好ましくは「50℃、2xSSC、0.1% SDS」程度、さらに好ましくは「65℃、2xSSC、0.1% SDS」程度であり、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAを得ることができる。高い相同性とは、「SGRF」タンパク質のアミノ酸配列との比較において、通常、40%以上の相同性、好ましくは60%以上の相同性、さらに好ましくは80%以上の相同性、さらに好ましくは95%以上の相同性を指す。タンパク質の相同性を決定するには、文献(Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983) 80, 726-730)に記載のアルゴリズムにしたがえばよい。
【0021】
また、本発明は、上記本発明のタンパク質をコードするDNAに関する。本発明のDNAとしては、本発明のタンパク質をコードしうるものであれば特に制限はなく、cDNA、ゲノムDNA、化学合成DNAなどが含まれる。cDNAは、例えば、配列番号:2に開示された「SGRF」cDNAの塩基配列を基にプライマーを調製し、「SGRF」タンパク質を発現している細胞から調製したmRNAを鋳型としたRT-PCRを行うことにより調製することが可能である。また、ゲノムDNAであれば、得られたcDNAをプローブとして、ゲノムDNAが挿入されたλファージライブラリーを用いたプラークハイブリダイゼーション法を実施することにより調製することが可能である。得られたDNAの塩基配列は、市販の「dye terminator sequencing kit」(Applied Biosystems社製)などを用いて常法により決定することが可能である。本発明のDNAは、後述するように、組み換えタンパク質の生産や遺伝子治療などに利用することが可能である。
【0022】
また、本発明は、本発明のDNAが挿入されたベクターに関する。本発明のDNAが挿入されるベクターとしては特に制限はなく、本発明のタンパク質を生体内で発現させるためのベクター、組み換えタンパク質を調製するためのベクターなど目的に応じて種々のベクターが用いられる。本発明のタンパク質を生体内で発現させるため(特に、遺伝子治療のため)に、種々のウイルスベクターや非ウイルスベクターを用いることが可能である。ウイルスベクターとしては、例えば、アデノウイルスベクター(pAdexLcwなど)やレトロウイルスベクター(pZIPneoなど)が挙げられる。本発明のタンパク質を生産する目的においてベクターを使用する場合には、特に、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、例えば、大腸菌(E.coli)を用いる場合には「pQEベクター」(Qiagen社製,Hilden,Germany)などが、酵母を用いる場合には「SP-Q01」(Stratagene社製,La Jolla,California)などが、昆虫細胞を用いる場合には「BAC-to-BAC baculovirus expression system」(GIBCO-BRL社製,Gaithersburg,Maryland)などが好適であるが、これらに制限されない。また、哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞などを用いる場合には、例えば、「LacSwitch II expression system」(Stratagene社製,La Jolla,California)などが好適であるが、これらに制限されない。ベクターへの本発明のDNAの挿入は、常法により行うことができる。
【0023】
また、本発明は、本発明のDNAを発現可能に保持する形質転換体に関する。本発明の形質転換体には、本発明のDNAが挿入された上記ベクターを保持するもの、本発明のDNAが宿主ゲノム内に組み込まれているものなどが含まれるが、本発明のDNAを発現可能に保持している限り、その存在形態は問わない。本発明のベクターが導入される細胞としては特に制限はない。ex vivo法による遺伝子治療目的で本発明のタンパク質を発現させるために用いる場合には、疾患の種類に応じて種々の細胞(例えば、種々の免疫系の細胞)を標的細胞とすることが可能である。また、本発明のタンパク質を製造する目的の場合には、用いるベクターとの組み合わせにおいて、例えば、大腸菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞などを用いることが可能である。細胞へのベクターの導入は、例えば、電気的穿孔法、リン酸カルシウム法など公知の方法で行うことが可能である。、
【0024】
組み換えタンパク質を製造するために作製した形質転換体からの組み換えタンパク質の分離、精製は、常法により行うことが可能である。例えば、イオン交換、逆相、ゲル濾過などのクロマトグラフィー、あるいは本発明のタンパク質に対する抗体をカラムに固定したアフィニティークロマトグラフィーにより、または、これらのカラムを複数組み合わせることにより、組み換えタンパク質を精製し、調製することが可能である。また、本発明のタンパク質をグルタチオンSトランスフェラーゼタンパク質との融合タンパク質として、あるいはヒスチジンを複数付加させた組み換えタンパク質として宿主細胞(例えば、動物細胞や大腸菌など)内で発現させた場合には、発現させた組み換えタンパク質はグルタチオンカラムあるいはニッケルカラムを用いて精製することができる。融合タンパク質の精製後、必要に応じて融合タンパク質のうち目的のタンパク質以外の領域を、トロンビンまたはファクターXaなどにより切断し、除去することも可能である。
【0025】
また、本発明は、本発明のタンパク質に結合する抗体に関する。本発明の抗体の形態には、特に制限はなく、ポリクローナル抗体の他、モノクローナル抗体も含まれる。また、ウサギなどの免疫動物に本発明のタンパク質を免疫して得た抗血清、すべてのクラスのポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、さらに遺伝子組み換えによるヒト型化抗体、ヒト抗体も含まれる。本発明の抗体は、以下の方法により調製することが可能である。ポリクローナル抗体であれば、例えば、本発明のタンパク質をウサギなどの小動物に免疫し血清を得て、これを本発明のタンパク質をカップリングさせたアフィニティーカラムにより、本発明のタンパク質のみを認識する画分を得て、さらにこの画分から免疫グロブリンGあるいはMを、プロテインA、あるいはプロテインGカラムにより精製することにより調製することができる。また、モノクローナル抗体であれば、本発明のタンパク質をマウスなどの小動物に免疫を行い、同マウスより脾臓を摘出し、これをすりつぶして細胞にし、マウスミエローマ細胞とポリエチレングリコールなどの試薬により融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、本発明のタンパク質に対する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウスより腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、本発明のタンパク質をカップリングしたアフィニティーカラムなどにより精製することで調製することが可能である。本発明の抗体は、本発明のタンパク質の精製や検出に用いられる他、本発明のタンパク質の機能を制御するための薬剤として用いることも可能である。抗体をヒトのための薬剤として用いる場合には、免疫原性の点で、ヒト抗体またはヒト化抗体が有効である。ヒト抗体またはヒト化抗体は当業者に公知の方法により調製することができる。例えば、ヒト抗体は、例えば、免疫系をヒトと入れ換えたマウスに本発明のタンパク質を免疫することにより調製することが可能である。また、ヒト化抗体は、例えば、モノクローナル抗体産生細胞から抗体遺伝子をクローニングし、その抗原決定部位を既存のヒト抗体に移植するCDRグラフト法により調製することが可能である。
【0026】
また、本発明は、本発明のタンパク質に結合する化合物のスクリーニング方法に関する。本発明のスクリーニング法は、(a)本発明のタンパク質と被験試料とを接触させる工程、および(b)本発明のタンパク質と被検試料との結合活性を検出する工程、(c)本発明のタンパク質に結合する活性を有する化合物を選択する工程を含む。スクリーニングに用いる被検試料としては特に制限はなく、例えば、合成低分子化合物のライブラリー、精製タンパク質、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成ペプチドのライブラリー、細胞抽出液、細胞培養上清などが挙げられる。本発明のタンパク質に結合する活性を有する化合物を選択する方法としては、当業者に公知の多くの方法を用いることができる。
【0027】
本発明のタンパク質と結合するタンパク質のスクリーニングは、例えば、本発明のタンパク質と結合するタンパク質を発現してることが予想される組織若しくは細胞(例えば、精巣、リンパ節、胸腺など)よりファージベクター(λgt11, ZAPIIなど)を用いたcDNAライブラリーを作製し、これをLB-アガロース上で発現させフィルターに発現させたタンパク質を固定し、本発明のタンパク質をビオチンラベル、あるいはGSTタンパク質との融合タンパク質として精製し、これを上記フィルターと反応させ、結合するタンパク質を発現しているプラークを、ストレプトアビジンや抗GST抗体などにより検出する「ウエストウエスタンブロッテイング法」(Skolnik EY, Margolis B, Mohammadi M, Lowenstein E, Fischer R, Drepps A, Ullrich A, and Schlessinger J (1991)Cloning of PI3 kinase-associated p85 utilizing a novel method for expression/cloning of target proteins for receptor tyrosine kinases. Cell 65, 83-90)により実施することが可能である。
【0028】
また、本発明のタンパク質に結合するタンパク質またはその遺伝子のスクリーニングは、「twoハイブリッドシステム」(「MATCHMARKER Two-Hybrid System」,「Mammalian MATCHMAKER Two-Hybrid Assay Kit」,「MATCHMAKER One-Hybrid System」(いずれもclontech社製)、「HybriZAP Two-Hybrid Vector System」(stratagene社製)、文献「Dalton S, and Treisman R (1992)Characterization of SAP-1, a protein recruited by serum response factor to the c-fos serum response element. Cell 68, 597-612」)に従い実施することも可能である。即ち、本発明のタンパク質をSRF結合領域またはGAL4結合領域と融合させて酵母細胞の中で発現させ、本発明のタンパク質と結合するタンパク質を発現していることが予想される細胞より、VP16またはGAL4転写活性化領域と融合する形で発現するようなcDNAライブラリーを作製する。これを上記酵母細胞に導入し、検出された陽性クローンからライブラリー由来cDNAを単離する(酵母細胞内で本発明のタンパク質と結合するタンパク質が発現すると、両者の結合によりレポーター遺伝子が活性化され、陽性のクローンが確認できる)。単離したcDNAを大腸菌に導入して発現させて、該cDNAによりコードされるタンパク質を得ることができる。
【0029】
さらに、本発明のタンパク質を固定したアフィニティーカラムに本発明のタンパク質と結合するタンパク質を発現していることが予想される細胞の培養上清もしくは細胞抽出物をのせ、カラムに特異的に結合するタンパク質を精製することにより、本発明のタンパク質に結合するタンパク質のスクリーニングを実施することも可能である。
【0030】
また、固定した本発明のタンパク質に、合成化合物、または天然物バンク、もしくはランダムファージペプチドディスプレイライブラリーを作用させ、結合する分子をスクリーニングする方法や、コンビナトリアルケミストリー技術によるハイスループットを用いたスクリーニング(Wrighton NC; Farrell FX; Chang R; Kashyap AK; Barbone FP; Mulcahy LS;Johnson DL; Barrett RW; Jolliffe LK; Dower WJ., Small peptides as potent mimetics of the protein hormone erythropoietin, Science (UNITED STATES) Jul 26 1996, 273 p458-64、Verdine GL., The combinatorial chemistry of nature. Nature (ENGLAND) Nov 7 1996, 384 p11-13、Hogan JC Jr.,Directed combinatorial chemistry. Nature (ENGLAND) Nov 7 1996, 384 p17-9)により本発明のタンパク質に結合する、低分子化合物、タンパク質(またはその遺伝子)、ペプチドなどを単離する方法も当業者に周知の技術である。
【0031】
本発明は、また、本発明のタンパク質の活性を阻害または促進する化合物のスクリーニング方法に関する。本発明において、本発明のタンパク質がキットリガンドとの共存下において骨髄細胞の増殖支持活性を有することが見出された。従って、該活性を指標に、本発明のタンパク質の活性を阻害または促進する化合物をスクリーニングすることができる。即ち、このスクリーニングは、(a)被検試料の存在下で、哺乳動物由来の骨髄細胞に対し、本発明のタンパク質およびキットリガンドを接触させる工程、(b)該骨髄細胞の増殖を検出する工程、および(c)被検試料の非存在下で検出した場合(対照)と比較して、骨髄細胞の増殖を抑制または促進する化合物を選択する工程、を含む方法により実施することが可能である。
【0032】
被検試料としては特に制限はなく、例えば、合成低分子化合物のライブラリー、精製タンパク質、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成ペプチドのライブラリー、細胞抽出液、細胞培養上清などが挙げられる。また、上記した本発明のタンパク質に結合する化合物のスクリーニングにより単離された化合物を被検試料として用いてもよい。
【0033】
また、本発明のタンパク質およびキットリガンドは、組換えタンパク質であっても、天然由来のタンパク質であってもよい。また、その活性を保持する限り、部分ペプチドであってもよい。キットリガンドは、市販品を用いてもよい。
【0034】
スクリーニングにおいて用いる骨髄細胞としては、Lin陰性、Sca-1陽性、c-kit陽性を示す細胞が好ましく、さらにCD34陽性を示す細胞がより好ましい。
【0035】
骨髄細胞の培養条件および増殖の検出は、例えば、実施例11に記載の方法により、またはこれに準じて行うことができる。
【0036】
検出の結果、被検試料の非存在下で骨髄細胞の増殖を検出した場合(対照)と比較して、被検試料の添加により、骨髄細胞の増殖が抑制されれば、該被検試料は、本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物である(または該化合物を含む)と判定され、一方、被検試料の添加により、骨髄細胞の増殖が促進されれば、該被検試料は、本発明のタンパク質の活性を促進する化合物である(または該化合物を含む)と判定される。
【0037】
本発明のタンパク質は、リンパ系や造血系の細胞の増殖を制御するための研究用試薬として用いることが可能である。また、上記スクリーニングにより単離された化合物は、本発明のタンパク質の阻害剤や促進剤として用いることが可能である。さらに、本発明のタンパク質やこれら化合物は、リンパ系や造血系および細胞増殖異常に関連する疾患の治療や予防のための医薬品としての応用が考えられる。
【0038】
本発明のタンパク質やその活性を制御する化合物を医薬品として用いる場合には、公知の製剤学的製造法により製剤化して用いることが可能である。例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤として経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的(例えば、経皮的、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、静脈内)に使用できる。例えば、本発明のタンパク質やその活性を調節する化合物を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤とともに一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0039】
錠剤、カプセル剤に混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0040】
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO-50と併用してもよい。
【0041】
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
【0042】
投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0043】
例えば、本発明のタンパク質の投与量は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なるが、例えば注射剤の形では通常成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約1μgから100mgであると考えられる。
【0044】
また、本発明のタンパク質の活性を調節する化合物の投与量は、症状により差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.1から100mg、好ましくは約1.0から50mg、より好ましくは約1.0から20mgである。
【0045】
非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なるが、例えば注射剤の形では通常成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.01から30mg、好ましくは約0.1から20mg、より好ましくは約0.1から10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0046】
また、本発明は、「SGRF」タンパク質をコードするDNAと特異的にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するDNAに関する。ここで「特異的にハイブリダイズする」とは、上記したハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションが有意に生じないことを指す。
【0047】
このようなDNAは、「SGRF」タンパク質をコードするDNAを検出、単離するためのプローブとして、また増幅するためのプライマーとして利用可能である。具体的なプライマーとしては、例えば、配列番号:3乃至20に記載のプライマーが挙げられる。また、このようなDNAは、アンチセンスオリゴヌクレオチドやリボザイムとして利用可能である。
【0048】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは配列番号:2に示される塩基配列中の連続する少なくとも15個以上のヌクレオチドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。さらに好ましくは、前記連続する少なくとも15個以上のヌクレオチドが翻訳開始コドンを含む、前記のアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0049】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、それらの誘導体や修飾体を使用することができる。このような修飾体として、例えば、メチルホスホネート型又はエチルホスホネート型のような低級アルキルホスホネート修飾体、ホスホロチオエート修飾体又はホスホロアミデート修飾体等が挙げられる。
【0050】
ここでいう「アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、DNA又はmRNAの所定の領域を構成するヌクレオチドに対応するヌクレオチドが全て相補的であるもののみならず、DNA またはmRNAとオリゴヌクレオチドとが配列番号:2に示される塩基配列に特異的にハイブリダイズできる限り、1 又は複数個のヌクレオチドのミスマッチが存在していてもよい。
【0051】
このようなDNAとしては、配列番号:2に示される塩基配列と、少なくとも15個の連続したヌクレオチド配列領域で、少なくとも70% 、好ましくは少なくとも80% 、より好ましくは90% 、さらに好ましくは95% 以上の塩基配列上の相同性を有するものを示す。なお、相同性を決定するためのアルゴリズムは本明細書に記載したものを使用すればよい。
【0052】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は、本発明のタンパク質の産生細胞に作用して、該タンパク質をコードするDNA 又はmRNAに結合することにより、その転写又は翻訳を阻害したり、mRNA の分解を促進したりして、本発明のタンパク質の発現を抑制することにより、結果的に本発明のタンパク質の作用を抑制する効果を有する。
【0053】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は、それらに対して不活性な適当な基剤と混和して塗布剤、パップ剤等の外用剤とすることができる。
【0054】
また、必要に応じて、賦形剤、等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、無痛化剤等を加えて錠剤、散財、顆粒剤、カプセル剤、リポソームカプセル剤、注射剤、液剤、点鼻剤など、さらに凍結乾燥剤とすることができる。これらは常法にしたがって調製することができる。
【0055】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は患者の患部に直接適用するか、又は血管内に投与するなどして結果的に患部に到達し得るように患者に適用する。さらには、持続性、膜透過性を高めるアンチセンス封入素材を用いることもできる。例えば、リポソーム、ポリ-L- リジン、リピッド、コレステロール、リポフェクチン又はこれらの誘導体が挙げられる。
【0056】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体の投与量は、患者の状態に応じて適宜調整し、好ましい量を用いることができる。例えば、0.1 〜100mg/kg、好ましくは0.1 〜50mg/kg の範囲で投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、推定アミノ酸配列を併記した「SGRF」cDNAの塩基配列を示す図である。mRNA不安定化配列をアンダーラインで示した。
【図2】図2は、「SGRF」とIL-6/G-CSF/MGFファミリーに属するタンパク質のコンセンサス配列の整列を示す図である。このファミリーのコンセンサス配列はC-x(9)-C-x(6)-G-L-x(2)-[FY]-x(3)-Lであるとされており、最初のxの数が9個ではなく11個である点を除いて「SGRF」でも保存されている。なお、図中の「スーティーマンガベー」はオナガザル科の生物であり、「リューサス マカク」はアカゲザル科の生物である。
【図3】図3は、「SGRF」の疎水性を示す図である。
【図4】図4は、ヒト正常組織における「SGRF」の発現をノーザンブロット解析により検出した電気泳動写真である。マーカーは左から、9.5kb, 7.5kb, 4.4kb, 2.4kb, 1.35kbである。
【図5】図5は、ヒト胎児組織および癌細胞系における「SGRF」の発現をノーザンブロット解析により検出した電気泳動写真である。マーカーは左から、9.5kb, 7.5kb, 4.4kb, 2.4kb, 1.35kbである。
【図6】図6は、SGRFのゲノムDNA塩基配列と推定されるタンパク質のアミノ酸配列を示す図である。イントロンは小文字で、エキソンは大文字で示した。TATA Box、およびpoly A付加シグナルと予想される配列をアンダーラインで示した。
【図7】図7は、NIGMS human/rodent somatic cell hybrid mapping panel#2を用いたPCR解析の結果を示す図である。番号は、ハイブリドーマDNA中に含まれるヒト染色体を示す。♀は、ヒト(女性)のゲノムDNA、MはマウスのゲノムDNAを表す。マーカーには、100bpラダーを用いた。200bp弱の位置に見られるバンドはマウス染色体に由来する非特異的バックグラウンドと考えられる。
【図8】図8は、pCHO-SGRFgのマップを示す図である。
【図9】図9は、pCHO-SGRFのマップを示す図である。
【図10】図10は、pLG-SGRFのマップを示す図である。
【図11】図11は、pLG-SGRFgのマップを示す図である。
【図12】図12は、SGRF遺伝子が導入されたCHO細胞の培養上清の骨髄細胞の増殖における作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0059】
[実施例1] 「SGRF」遺伝子の単離
TBLASTを用いてヒトG-CSFタンパク質配列でジェンバンク(Genbank)のESTを検索したところ、登録番号「AA418955」のESTがG-CSFと弱いホモロジーを示した。この配列を基に、同一の遺伝子を読んでいると考えられるEST配列の検索を行ったところ、その他に4個のESTが登録されていた(AA418747, U38443, AA729815, AA418955)。これらの配列をDNASISを用いて整列化し、コンセンサス配列を抽出して、プライマー「ILX-1」(GAGAAGAGGGAGATGAAGAGACTAC/配列番号:3)、「ILX-2」(CTGAGTCCTTGGGGGTCACAGCCAT/配列番号:4)、「ILX-3」(GTGGGACCTGCATATGTTGAAAATT/配列番号:5)、「ILX-4」(CCCCAAATTTCCCTTCCCATCTAATA /配列番号:6)、「ILX-5」(CCCTACTGGGCCTCAGCCAACTCCT/配列番号:7)、「ILX-6」(GGAGCAGAGAAGGCTCCCCTGTGAA/配列番号:8)を合成した。ライブラリーはヒト胎児脾臓(マラソン-レディーcDNA;Clontech社)を用い、以下のプライマーの組み合わせで順次PCRを行い、5'側、中心部、3'側の3個の断片に分け別々に増幅した。5'側の増幅に用いたプライマーは、一次PCRでは「AP1」(Clontech社)および「ILX-6」を、ネスティッドPCRでは「AP2」(Clontech社)および「ILX-2」を用いた。また、中心部は、一次PCRおよびネスティッドPCRにおいて「ILX-1」および「ILX-4」を用いた。また、「3'側」は、一次PCRでは「AP1」および「ILX-5」を、ネスティッドPCRでは「AP2」および「ILX-3」を用いた。一次PCR、ネスティッドPCRともに、メーカー推奨の方法を一部変更した条件(タッチダウンPCR:96℃で1分、次いで96℃で30秒, 72℃で4分を5サイクル、次いで96℃で30秒,70℃で4分を5サイクル、次いで96℃で20秒, 68℃で4分を26サイクル。ただし、Advantage KlenTaq Polymerase Mixに代えて、TaKaRa Ex Taq (宝酒造社)及び添付のバッファーを用いた)で増幅した。得られたDNAをアガロースゲルで電気泳動しそれぞれのバンドを切り出しQIAEX II Gel Extraction Kit (QIAGEN社)を用いて精製した後、プラスミドpT7Blue(R) T-vector (Novagen社)にクローニングした。得られたプラスミドはそれぞれpT7Blue-ILX1-4(中心部をクローニングしたベクター)、pT7Blue-ILX5'(5'末端付近をクローニングしたベクター)およびpT7Blue-ILX3'(3'末端付近をクローニングしたベクター)と名づけた。クローニングした各塩基配列は、ABI PRISM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit with Amplitaq DNA Polymerase FS及び377 A DNAシーケンサー(Perkin-elmer社)を用い決定した。
その結果、単離したcDNAは全長約1Kbで、アミノ酸189個からなるタンパク質をコードしていた(図1)。このタンパク質は、IL-6/G-CSF/MGFファミリー特有のコンセンサス配列をほぼ保持しているだけでなく(図2)、N末端にはシグナルペプチドであると考えられる疎水性の領域が存在した(図3)。また、N型糖鎖の結合部位は見られなかった。3'-非コード領域には、サイトカイン類のmRNAに多く見られるARE(AT rich element)と呼ばれるmRNA不安定化配列も4個認められ(図1)、典型的なサイトカインの特徴を有していた。この分子を構造上のホモロジーから「SGRF」(Interleukin-Six, G-csf Related Factor)と名づけた。
【0060】
[実施例2] 「SGRF」の発現のノーザンブロット解析
「SGRF」のプローブには、pT7Blue-ILX1-4をBamHI処理して得られた約500bpの断片を用いた。このプローブをReady-to Go DNA labelling beads(Pharmacia社)を用いたランダムプライマー法により[α-32P]dCTPラベルし、Multiple Tissue Northern Blot(Human,Human III,Human IV,Human Fetal II,Human Cancer Cell Line)(Clontech社)のフィルターに対して、ExpressHyb Hybridization Solution (Clontech社)中でメーカー推奨の方法に従ってハイブリダイゼーションを行った。
その結果、「SGRF」は正常組織では主として精巣とリンパ節で発現し、約1kbのmRNAが検出された(図4)。また、非常に弱く胸腺でも発現が確認された。しかし、これらのバンドの検出には、長期間(1週間)のオートラジオグラフィーを要したことから、これらの組織での発現量は微量であると考えられた。その他の組織では「SGRF」mRNAは検出レベルになかった。
また、癌細胞のラインで解析を行ったところK562(Chronic Myelogenous Leukemia)、SW480 (Colorectal Adenocarcinoma)の2つで非常に強い発現が認められた(図5)。それ以外のラインでは「SGRF」mRNAは検出レベルになかった。
【0061】
[実施例3] 「SGRF」発現ベクターの構築
2つのプライマー「ILXATG」(TTGAATTCCACCATGCTGGGGAGCAGAGCTGT/配列番号:14)、「ILXTAA」(AAAGATCTTAGGGACTCAGGGTTGCTGC/配列番号:15)を合成し、pT7Blue-ILX1-4およびpT7Blue-ILX5'から、コーディング領域全てを含む遺伝子を再構成し、動物細胞用発現ベクターに導入した。すなわち、pT7Blue-ILX5'をテンプレートとしプライマー「ILX-2」および「ILXATG」を用いて増幅したバンドとpT7Blue-ILX1-4をテンプレートとしてプライマー「ILX-1」および「ILXTAA」を用いて増幅したバンドを等量混合し、それを新たなテンプレートとしてプライマー「ILXATG」および「ILXTAA」を用いて再度増幅した。得られたバンドを制限酵素EcoRIとBgl IIで処理し、動物細胞発現用プラスミドpCOS1のEcoRI, BamHIサイトにクローニングし、pCOS-SGRFを作成した。なお、DNAの増幅はTaKaRa Ex Taq(宝酒造)を用い、96℃で30秒、次いで60℃で40秒、次いで72℃で1分20秒を20サイクルで行った。
【0062】
[実施例4] SGRFに対するポリクローナル抗体
SGRFの部分ペプチド( G G S S P A W T Q C Q Q L S Q/配列番号:1に記載のアミノ酸配列の24-38位, G D G C D P Q G L R D N S Q F/配列番号:1に記載のアミノ酸配列の74-88位) を2種類化学合成しそれぞれを2羽ずつのウサギに免疫しポリクローナル抗体を得た(サワデー)。抗体は、それぞれのペプチドカラムでアフィニティー精製を行った。そのうち、SGRF(配列番号:1に記載のアミノ酸配列の24-38位)のペプチドに対する抗体の1つを用いて以後の解析に用いた。
検出には、アルカリフォスファターゼ結合マウス坑ウサギIgG抗体とアルカリフォスファターゼサブストレートを用いた。
【0063】
[実施例5] SGRFのゲノムDNA
以下の配列を合成しgenomic DNAライブラリーからのプロモーター領域-5’非翻訳領域、翻訳領域、3’非翻訳領域の解析に使用した。
ILX-1 5’-GAGAAGAGGGAGATGAAGAGACTAC-3’(配列番号:3)
ILX-2 5’-CTGAGTCCTTGGGGGTCACAGCCAT-3’(配列番号:4)
ILX-3 5’-GTGGGACCTGCATATGTTGAAAATT-3’(配列番号:5)
ILX-4 5’-CCCCAAATTTCCCTTCCCATCTAATA-3’(配列番号:6)
ILX-5 5’-CCCTACTGGGCCTCAGCCAACTCCT-3’(配列番号:7)
ILX-6 5’-GGAGCAGAGAAGGCTCCCCTGTGAA-3’(配列番号:8)
ILX-7 5’-GGGCAGAGATTCCACCAGGACTGGT-3’(配列番号:9)
ILX-8 5’-CCAGTCCTGGTGGAATCTCTGCCCA-3’(配列番号:10)
ILX-9 5’-GAAGCTCTGCACACTGGCCTGGAGT-3’(配列番号:11)
ILX-10 5’-CACTCCAGGCCAGTGTGCAGAGCTT-3’(配列番号:12)
ILX-11 5’-CTGAAGGGCTATGGTGGAGAA-3’(配列番号:13)
ILX-ATG 5’-TTGAATTCCACCATGCTGGGGAGCAGAGCTGT-3’(配列番号:14)
ILX-TAA 5’-AAAGATCTTAGGGACTCAGGGTTGCTGC-3’(配列番号:15)
ILX-TAAECO 5’-AAGAATTCTAGGGACTCAGGGTTGCTGC-3’(配列番号:16)
SGRFg5’ 5’-GGTTTAAATATTTGTTCTCCCTTACCCC-3’(配列番号:17)
SGRFg3’ 5’-TTCAGCTGCTTGGGAGGCTGAGGCAGG-3’(配列番号:18)
SGRFg5’_2 5’-AGGAATTCCACCAGGACTGGTGCAAGGCGCA-3’(配列番号:19)
SGRFg3’_2 5’-GTCTCGAGAAAATATCATTCTCCACCATAGCCCT-3’(配列番号:20)
【0064】
ゲノムDNAは、翻訳領域内は上記ILX-ATGプライマーとILX-TAAプライマーを用いてhuman genomic DNA ( Clontech ) をテンプレートとしてPCRで増幅した。その結果、約1.5kbのバンドが増幅された。この断片を制限酵素EcoRIとBglIIで処理した後、CHO発現用プラスミドpCHO1のEcoRI-BamHI部位に挿入しクローニングした。得られたベクター( pCHO-SGRFg )(図8)は上記プライマーを用いて塩基配列を解析した。その結果、3個のイントロンを含むSGRF遺伝子であることが判明した。
プロモーターを含む5’非翻訳領域、および3’非翻訳領域の増幅はGenome Walker Kit ( Clontech ) をテンプレートとして用いキット付属のAP1プライマー、AP2プライマーおよび上記に示した合成プライマーを用いてメーカー推奨の方法で行った。
まずプロモーター-5’非翻訳領域はDraIライブラリーをテンプレートとし、AP1プライマーとILX-10プライマーで1st PCRを行った。次に2nd PCRをAP2プライマーとILX-8プライマーで行い、約400bpのバンドを得た。
3’非翻訳領域はPvuIIライブラリーをテンプレートとし、1st PCRをAP1プライマーとILX-5プライマー、2nd PCRをAP2プライマーとILX-3プライマーで行い約800bpのバンドを得た。
得られたバンドはアガロースゲルから切り出し、精製した後377 A DNA Sequencer ( Perkin-elmer )を用い塩基配列を解析した。SGRFのゲノムDNA配列(配列番号:21)を、推定されるアミノ酸と共に図6に示す。
また、NIGMS human/rodent somatic cell hybrid mapping panel #2とGeneBridge 4 Radiation Hybrid Panel ( Research Genetics )をILX-1プライマー、ILX-6プライマーを用いたPCRで解析し染色体上の位置を調べた。結果、NIGMS human/rodent somatic cell hybrid mapping panel #2の解析から、SGRF遺伝子は12番染色体上に存在することが判明した(図7)。
GeneBridge 4 Radiation Hybrid Panelで解析した結果、SGRFは12q13に存在しており、Chromosome Chr12, Places 8.77 cR from WI-7107 (lod >3.0)という結果が得られた。
【0065】
[実施例6] SGRFを発現するCHO細胞株の樹立
実施例3に記載のpCOS-SGRFと同様にSGRFコーディング領域のDNAフラグメントを調製し、動物細胞発現用プラスミドpCHO1のEcoRI, BamHIサイトにクローニングし、pCHO-SGRF(図9)を作成した。pCHO-SGRFをCHO細胞にリン酸カルシウム法によりトランスフェクトし、ヌクレオチドを含まないalpha-MEM培地で遺伝子の導入された細胞を選択した。その培養上清をSDS-PAGE、およびウサギポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットで解析した。その結果、このベクターを導入したCHO細胞の培養上清にのみ分子量約2万のバンドが検出された。
その後、20nM, 100nMと段階的にMTX濃度を上げ、発現を確認しながらMTXによる遺伝子増幅を行い構成的にSGRFを分泌するCHO細胞株(CHO-SGRF16-5株)を樹立した。この細胞株は、下記の寄託機関に寄託した。
(イ)寄託機関の名称・あて名
名称:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所
あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305)
(ロ)寄託日(原寄託日) 平成11年4月9日
(ハ)寄託番号 生命研条寄第6699号(FERM BP-6699)
【0066】
[実施例7] SGRFの精製
SGRF精製検討のためコンフレントに増殖した産生細胞( CHO-SGRF16-5株 )をPBSでリンスした後、無血清培地ASF104( 味の素 )に培地交換し3日から4日培養しその培養上清をフィルターろ過して収集した。
Phenyl-Sepharose HP (アマシャム ファルマシア バイオテク)を用いて30mlのカラムを作成し、10mM Tris pH7.5, 100mM NaClで平衡化し、ASF (味の素)で培養した上記CHO-SGRF16-5株の培養上清を10mM Tris pH7.5で1.5倍に希釈した後アプライした。平衡化バッファーで十分洗浄した後、0.1% Tween20を含む同バッファーで溶出した。溶出液は、10mM Tris pH7.5, 100mM NaClで平衡化した1mlのDEAE-Sepharose FFカラムにアプライし、平衡化バッファーで十分洗浄した後、10mM Tris pH7.5, 300mM NaClで溶出し、大部分のSGRFを回収した。ここで、溶出されたサンプルを粗精製品として通常の方法でSDS-PAGE解析、ウエスタンブロット解析等を行った。結果、分子量約2万の位置にポリクローナル抗体の結合するバンドが検出され、そのバンドは銀染色やクマーシー染色で確認できるまで濃縮されていることが判った。
また、この粗精製SGRFタンパク質をPVDF膜にブロットしたものをクマーシーブルーで染色し、SGRFと思われる分子量約2万のバンドを切り出しModel 492 protein sequencer ( Applied Biosystems )を用いてN末端のアミノ酸配列を決定した。その結果、 X-Ala-Val-Pro-Gly-Gly-Serと言う結果を得た。これはSGRFのN末端から20番目のArgから26番目のSerまでの配列と一致しており、シグナルペプチドは19番目のGlyと20番目のArgの間で切断されることが判明した。
以上の結果からSGRFの成熟タンパクはアミノ酸170個、推定分子量18,676、予想等電点5.84と計算された。
【0067】
[実施例8] トランスジェニックマウス作製用SGRFベクター
プライマーILX-ATGおよびILX-TAAECOを用いてpCHO-SGRFからSGRF cDNAを増幅し、制限酵素EcoRIで切断した後トランスジェニック用発現プラスミドpLG1のEcoRIサイトに挿入しpLG-SGRF(図10)を作成した。
また、プライマーSGRF-5’_2およびSGRF-3’_2を用いてhuman genomic DNA ( Clontech )からSGRF ゲノムDNAを含む領域を増幅し、制限酵素EcoRIとXhoIで処理した後プラスミドpLG1のEcoRI-XhoIサイトに挿入しpLG-SGRFg(図11)を作成した。
【0068】
[実施例9] モノクローナル抗体の作成
8週令のBalb/c雌マウス5匹にアジュバントとして水酸化アルミニウムゲル2mg/匹と、抗原として上記SGRFタンパク質またはその部分ペプチド20μg/匹を腹腔内投与して免疫する。以後1週おきに上記SGRFタンパク質またはその部分ペプチド20μg/匹を腹腔内投与し、計6回の免疫を行う。3回目以降の免疫では、免疫の5日後に眼底静脈叢より採血し、血清中の抗SGRF抗体価をELISA法にて調べる。
最終免疫の3日後、マウスから脾臓細胞を調製し細胞融合に用いる。MEM(日水製薬)で良く洗浄した免疫マウス脾臓細胞1x108個とマウス骨髄腫細胞P3-U 1x108個を混合し、1000rpmで5分間遠心分離にかける。攪拌しながら37℃、ポリエチレングリコール-1500(PEG-1500) 2g、MEM2mlを加え、1分後に600rpmで5分間遠心分離する。さらに、5mlのHBSS溶液及び5mlの20%FBS/MEM溶液を静かに加えて細胞をほぐした後、1分後、1000rpmで遠心分離し、上清を捨てる。5mlのHAT培地(ヒポキサンチン10-4M、アミノプテリン4x10-7M、チミジン1.5x10-5Mを加えた培地)を加えて再び細胞をほぐし懸濁させる。細胞懸濁液を24穴培地用プレート(Nunc)に1ml/穴ずつ分注し、5%CO2、95%空気を通したCO2インキュベーター中、37℃で24時間培養する。培養プレートに1ml/穴のHAT培地を加え、さらに24時間培養する。培養上清1mlを捨て、あらたにHAT培地1mlを加え、さらに12日間培養する。
コロニー状に育成してきた融合細胞の見られる穴について、上清1mlを捨て、HT培地(上記HAT培地から、アミノプテリンを除いた培地)を1ml加えて37℃で培養する。以後2日間同様にHT培地への交換を行い、培養4日後、培養上清の一部を採取し、抗SGRF抗体価をELISA法にて測定する。
抗体価の認められた穴については、限界希釈法によりクローニングを2回繰り返し、安定して抗体価の認められたクローンを抗SGRFモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
【0069】
[実施例10] ELISA法
96穴のELA用プレート(イムノプレート、ヌンク)に、SGRFタンパク質またはその部分ペプチド溶液(1μg/ml)を50μl/穴ずつ分注し、室温で2時間放置して抗原をプレート穴底面にコートする。その後、10%FCS/PBS混合溶液を200μl/穴分注し、室温で30分間放置する。上記プレートをPBSで3回洗浄し、第一抗体として、段階希釈した試料(マウス血清、ハイブリドーマ培養上清、モノクローナル抗体等)を50μl/穴分注し、室温で2時間放置する。PBSで3回洗浄し、第二抗体としてパーオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG抗体の100倍希釈液を50μl/穴分注し、室温で2時間放置する。PBSで洗浄後、パーオキシダーゼ基質液(1%過酸化水素水、0.1M酢酸-0.05Mリン酸緩衝液、2mM2,2’-アジノ−ジ−3‐エチル−ベンゾチアジン サルフェート)200μl/穴を分注し、室温で10〜30分間放置後、414nmで比色定量し、抗体価を算出する。
【0070】
[実施例11]
8〜15週令のC57BL/6N雄性マウス(日本クレア株式会社)より大腿骨および脛骨を摘出し、骨髄細胞を調製した。比重1.063に調製したNycodenz (Nycomed Pharm AS)に懸濁後、NycoPrep 1.077 Animal (Nycomed Pharm AS) に重層し、20℃で2300rpmで30分間遠心した(日立、05PR22)。中間層を回収し、FACSバッファー(2% Fetal Bovine Serum (FBS, Moregate)を含むダルベッコ−リン酸緩衝液)に懸濁後、1500rpmで10分間遠心して回収後、1×10(6)個の細胞あたり1μgのビオチン標識抗Mac-1抗体、ビオチン標識抗Gr-1抗体、ビオチン標識抗TER119抗体、ビオチン標識CD3ε抗体、ビオチン標識抗B220抗体(すべてPharMingen)を添加した。氷上で30分間静置した後、FACSバッファーにて洗浄し、1×106個の細胞あたり1μlのアビジン標識マグネットビーズ (10 Beads Avidin, ImmunoTech) を添加して氷上で15分間静置した。マグネチックホルダーによりビーズを除去後、浮遊細胞を5000rpm、1分間の遠心により回収した(Tomy MRX-150)。上清を除去後、1×106個の細胞あたり1μgのFITC標識抗CD34抗体、PE標識抗Sca-1抗体、APC標識抗c-kit抗体(以上PharMingen)、RED613標識ストレプトアビジン(Lifetech Oriental)を添加し、氷上30分間反応させた。FACSバッファーにて洗浄後、1×10(6)個の細胞あたり1mlのFACS バッファーに懸濁し、EPICS ELITE(ベックマンコールター株式会社)にて分画した。各画分の定義は以下のとおりである。
RED613陰性PE陰性APC陽性=Lin(-) Sca-1(-) c-kit(+) 画分
RED613 陰性PE陽性APC陽性=Lin(-) Sca-1(+) c-kit(+) 画分
RED613陰性PE陽性APC陽性FITC陽性=Lin(-) Sca-1(+) c-kit(+) CD34(+) 画分
RED613陰性PE陽性APC陽性FITC陰性=Lin(-) Sca-1(+) c-kit(+) CD34(-) 画分
【0071】
得られた細胞画分をそれぞれ10%のFBSを含むイスコフ改変ダルベッコ培地(10%FBS/IMDM)により1mlあたり10000個、2000個、400個に希釈し、96穴組織培養プレートに50μlずつ分注した。
これに(1)培地のみ(10%FBS/IMDM)、 (2)培地にモックを20%に希釈したもの(mock)、(3)SGRF発現CHO培養上清(SGRF)、(4)培地にマウスkitリガンドを10ng/mlに添加したもの(KL)、(5)培地にモック(mock)を20%に、マウスkitリガンドを10ng/mlに添加したもの(mock+KL)、(6) SGRF発現CHO培養上清にマウスkitリガンドを10ng/mlに添加したもの(SGRF+KL)、 (7)培地にマウスkitリガンドを10ng/mlに、IL-11を5ng/mlに添加したもの(KL+IL11)を50μl添加し、37℃、5%CO2下で10日間培養した。
また、上記(1)から(3)においては、培養3日目にマウスkitリガンドおよびIL-3をそれぞれ10ng/ml、1ng/mlになるように添加して同様に培養を行う処理区も用意した(それぞれmedium/expand、mock/expand、SGRF/expand)。
培養終了後、Cell Proliferation Assay Kit (Promega)を用い、490nmの吸収をMicroplate Reader Model 3550 (Bio-Rad)により測定して細胞数を検定した(図12)。
その結果、SGRFは単独では、Lin(-) Sca-1(+) c-kit(+)の細胞に対して増殖作用はないが、マウスkitリガンドの共存により細胞の増殖支持活性を示した。その活性は、CD34(+)細胞でより強かった。また、培養初期の段階でマウスkitリガンドが存在しない場合には、後から添加しても細胞は増殖しなかった。このため、SGRFは幹細胞を維持する活性を有しないと考えられた。
【0072】
産業上の利用の可能性
本発明により、新規なサイトカイン様タンパク質および該タンパク質をコードするDNAが提供された。また、該DNAが挿入されたベクター、該DNAを保持する形質転換体、該形質転換体を利用した組み換えタンパク質の生産方法が提供された。さらに、該タンパク質に結合する化合物やその活性を調節する化合物のスクリーニング方法が提供された。
本発明のタンパク質およびその遺伝子は、他のサイトカインと同様に免疫系や造血系細胞の活動または細胞の増殖や分化に関連していると考えられるため、これらタンパク質や遺伝子、該タンパク質の機能を制御する化合物は、免疫系、造血系および細胞増殖異常に関連した疾患の治療への利用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、または該タンパク質中のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/若しくは挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
【請求項2】
配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNAがコードするタンパク質であって、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタンパク質をコードするDNA。
【請求項4】
配列番号:2に記載の塩基配列のコード領域を含む、請求項3に記載のDNA。
【請求項5】
請求項3または4に記載のDNAが挿入されたベクター。
【請求項6】
請求項3または4に記載のDNAを発現可能に保持する形質転換体。
【請求項7】
請求項6に記載の形質転換体を培養する工程を含む、請求項1または2に記載のタンパク質の製造方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載のタンパク質に結合する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1または2に記載のタンパク質またはその部分ペプチドに被検試料を接触させる工程、
(b)該タンパク質またはその部分ペプチドと被検試料との結合活性を検出する工程、
(c)該タンパク質に結合する活性を有する化合物を選択する工程、を含む方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載のタンパク質に結合する化合物。
【請求項10】
請求項8に記載の方法により単離しうる、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1または2に記載のタンパク質の活性を阻害または促進する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)被検試料の存在下で、哺乳動物由来の骨髄細胞に対し、請求項1または2に記載のタンパク質およびキットリガンドを接触させる工程、
(b)該骨髄細胞の増殖を検出する工程、および
(c)被検試料の存在下で検出した場合(対照)と比較して、骨髄細胞の増殖を抑制または促進する化合物を選択する工程、を含む方法。
【請求項12】
骨髄細胞がLin陰性、Sca-1陽性、c-kit陽性、CD34陽性を示す細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1または2に記載のタンパク質の活性を阻害または促進する化合物。
【請求項14】
請求項11または12に記載の方法により単離しうる、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1または2に記載のタンパク質を有効成分とする医薬組成物。
【請求項16】
請求項13または14に記載の化合物を有効成分とする、請求項1または2に記載のタンパク質の阻害剤または促進剤。
【請求項17】
請求項1または2に記載のタンパク質に結合する抗体。
【請求項18】
配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAと特異的にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するDNA。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−240314(P2009−240314A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138424(P2009−138424)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【分割の表示】特願2000−544695(P2000−544695)の分割
【原出願日】平成11年4月14日(1999.4.14)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【Fターム(参考)】