説明

新規なシクロデキストリン誘導体、それらの製造方法、および薬理学的に活性な物質を可溶化するためのそれらの使用

本発明は、nが、1〜6からの整数であり、mが、5、6または7に等しい整数であり、R1が、OH基であり、R1は、すべて同一であり、Zが、NHX基であり、Xが、水素原子であり、かつRが水素原子または生体識別要素である、一般式(I)に対応する化合物に関する。ただし、n=1、m=6、Z=NH2およびR1=OHである化合物を除く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシクロデキストリン誘導体およびそれらの製造方法に関する。本発明はまた、薬理学的に活性な物質を水性媒体に可溶化するための、これらの新規な誘導体の使用に関する。
【0002】
シクロデキストリン類またはシクロマルトオリゴ糖類は、サイズがホスト構造のサイズに適応する、種々の分子をそれらの穴に含有する能力が知られている、環状オリゴ糖である。これらの会合が一般的に非極性の性格であるため、好ましくは、疎水性タイプの分子構造の包接が生じ、特に、これらの媒体中にわずかに溶解するかまたは全く溶解しない化合物が、水および生物学的媒体に可溶化され、そして、場合によりそれらの安定化の改善がもたらされる。これらの特性は、現在、特に、医薬の送達に用いられている。
【0003】
しかしながら、シクロデキストリン類、特にコストの点でそれらのうちで最も入手しやすいβ−シクロデキストリン(25℃で、18g/l、すなわち15mmol/l)は、水への溶解性が比較的乏しいため、この目的でのそれらの使用は制限されている。さらに、シクロデキストリンは、有機体中で生物学的受容体を認識する能力を持たないため、これらのものは、活性成分のターゲット化およびベクトル化には使用することができない。
【0004】
この状況を修正するために、シクロデキストリン類は、一方で、それらの水中での溶解性を改善するために、また、他方で、それらの構造に細胞認識シグナルを組み込むために、化学的に修飾されている。そこで、国際出願WO95/19994号、WO95/21870号およびWO97/33919号ならびに欧州特許出願EP0403366号には、1以上の一級アルコール官能基が酸素もしくは硫黄原子を介してまたはチオ尿素基を介して単糖またはオリゴ糖で置換されたシクロデキストリン誘導体およびそれらの使用が記載されている。特に、これらの分岐したシクロデキストリン類は、Chem. Soc. Rev., 21, 1992, pp. 113-119中でP. Potierが記述している、抗腫瘍剤および駆虫剤である、タキソールおよびその誘導体、特にタキソテール(Taxotere、登録商標)に対するホストとして働くことができる。これらの抗腫瘍剤を水中に可溶化する包接複合体は、このようにして得られる。例として、0.004g/lであるタキソテール(登録商標)の水中での溶解度は、文献WO95/19994号に記載のように、その水性懸濁液に6I−S−α−マルトシル−6I−チオシクロマルトヘプタオースを加えることにより、6.5g/Lまで増大させることができる。
【0005】
文献EP−A−0605753号には、水中でのこの化合物の溶解度を増大させるために、マルトシル−シクロデキストリン類等の分岐したシクロデキストリン類を用いたタキソール包接複合体が記載されている。
【0006】
硫黄原子によりシクロデキストリンに結合した1以上のグリコシルまたはマルトシル置換基を含むシクロデキストリン誘導体も、J. Chem. Soc., Perkin Trans., 2, 1995, pp. 1479-1487でV. Laineらにより記述されている。これらの誘導体は、プレドニゾロン等の抗炎症薬を可溶化するために使用された。
【0007】
WO97/33919号には、6I−アミノ−6I−デオキシシクロデキストリンまたは対応する完全に完全にアミノ化された誘導体のアルキルイソチオシアナートまたは単糖もしくはオリゴ糖との結合による、チオウレイド−シクロデキストリン類の製造方法が記載されている。
【0008】
シクロデキストリン類上へ糖質(glucidic)置換基を組み込むと、出発物質のシクロデキストリンに比べてはるかに大きい水中溶解度が付与された誘導体をもたらす。同時に、糖質置換基は細胞認識マーカーとして周知であるため、このアプローチは、シクロデキストリンに、ある生物学的部位に対する特別な親和性を持たせることを可能にする。このようにして、この種のシクロデキストリンの修飾は、シクロデキストリンに包接される活性物質のターゲット化およびベクトル化を可能にする。
【0009】
特定の細胞膜受容体(レクチン)に対する糖質マーカーの親和性は、一般的には低い。ターゲット化およびベクトル化に有用な親和性を得るために、リガンドの多重かつ同時提示を考える必要がある。一級アルコール位で一置換されたシクロデキストリン(すなわち、一級アルコールのOH基の一つが置換されたシクロデキストリン)の場合、この課題は、Chem. Commun, 2000, pp. 1489-1490でI. Baussanneらが記述しているような、グリセロフタリック構造の組み込みにより、部分的に解消される。しかしながら、そのような化合物の製造は複雑である。
【0010】
さらに、ChemBioChem 2001, pp. 777-783でI. Baussanneらが記述した最近の結果は、対応するペル−(C−6)−アミンから得られる、グリコシルチオウレイド型の置換基を含むβ−シクロデキストリンの誘導体は、相補的なレクチンに対して十分な親和性を表さないことを示している。
【0011】
現在、簡単な方法で得られて、薬理学的に活性な物質の可溶性を増大させかつ相補的なレクチンに対して十分な親和性を有する、一または多置換シクロデキストリン誘導体は存在しない。
【0012】
本発明の一つの目的は、活性物質、特にタキソテール(登録商標)等のタキソール族の抗腫瘍薬を可溶化するという利点のみならず、意図的なこれらの誘導体により目標の臓器に活性物質を有効にかつ選択的に送達可能となる、特定の膜受容体に対する強い親和性をも有する、一級アルコール位で多置換されているかまた一置換されている、新規なシクロデキストリン誘導体を提供することである。
【0013】
本発明の目的の一つは、容易に実行可能で、長くて複雑な精製を行うことを必要とすることなく、新規なシクロデキストリン誘導体を少なくとも50%、好ましくは70%のオーダーの良好な収率で得ることを可能にする、製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明は、下記式(VII):
【0015】
【化57】

【0016】
(mは、5、6または7に等しい整数を表し、
Wは、OH基またはY基であり、W基はすべて同一であり、
かつYは、塩素、臭素、ヨウ素で構成される群から選択されるハロゲン原子を表し、好ましくは臭素またはヨウ素である)
の、一級アルコール位で選択的にまたは全体的にハロゲン化された化合物と、
下記式(VIII):
【0017】
【化58】

【0018】
のω−アミノアルカンチオール(そのω−アミノアルカンチオールは、場合によりN−アルキル化されている)、または、下記式(VIII−a):
【0019】
【化59】

【0020】
の対応する塩、または下記式(VIII−b):
【0021】
【化60】

【0022】
のテトラアルキルアンモニウム塩(その塩は、ハロゲン化物対イオン、好ましくは塩化物イオンを伴っている)
(nは、1〜6の整数を表し、
Xは、水素原子または1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を表し、特に、メチル、エチル、プロピルまたはブチル基であり、Xは好ましくは水素原子であり、
式(VIII)の化合物は、好ましくは式:H2N−CH2−CH2−SHのシステアミンである)
との反応工程を含む方法の使用であって、
下記式(A−a)または(A−b):
【0023】
【化61】

【0024】
(R1は、OH基または−S−CH2−(CH2n−Z基のいずれかを表し、R1基は、すべて同一であり、
Zは、NHX基または+NX3型の四級アンモニウム基を表し、
m、nおよびXは、上記のとおりである)
を有する化合物を得るためであって、
下記式(I):
【0025】
【化62】

【0026】
[式中、
−m、nおよびR1は、上記のとおりであり、かつ
−Zは、
*NHX基、
+NX3型の四級アンモニウム基
*基
【0027】
【化63】

【0028】
(Xは、上記のとおりであり、
Rは、水素原子、1〜12個の炭素原子を持つ直鎖状もしくは分枝状アルキル置換基、またはフェニル、ベンジルもしくはナフチル基等の芳香族基、あるいは芳香環上に置換基、例えばメチル、エチル、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、ヒドロキシル、メトキシルもしくはアセトアミド置換基を有するこれらの基の誘導体を表すか、
あるいはRは、生体認識要素、例えばアミノ酸誘導体、ペプチド、単糖、オリゴ糖、同一もしくは異なり得る、糖質基を含むいくつかの分岐を持つ多重化要素、あるいは可視化プローブまたは蛍光性もしくは放射性検出プローブを表す)のいずれかを表す]
の化合物を製造するための、方法の使用に関する。
本発明は、下記の一般式(I):
【0029】
【化64】

【0030】
[式中、
−nは、1〜6の整数を表し;
−mは、5、6または7に等しい整数を表し、
−R1は、OH基または−S−CH2−(CH2n−Z基のいずれかを表し、R1基は、すべて同一であり、
−Zは、
*NHX基、
+NX3型の四級アンモニウム基
*基
【0031】
【化65】

【0032】
(Xは、水素原子または1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を表し、特に、メチル、エチル、プロピルまたはブチル基であり、
Rは、水素原子、1〜12個の炭素原子を持つ直鎖状もしくは分枝状アルキル置換基、またはフェニル、ベンジルもしくはナフチル基等の芳香族基、あるいは芳香環上に置換基、例えばメチル、エチル、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、ヒドロキシル、メトキシルもしくはアセトアミド置換基を有するこれらの基の誘導体を表すか、
あるいはRは、生体認識要素、例えばアミノ酸誘導体、ペプチド、単糖、オリゴ糖、同一もしくは異なり得る糖質基を含むいくつかの分岐を持つ多重化要素、あるいは可視化プローブまたは蛍光性もしくは放射性検出プローブを表す)のいずれかを表す]
を有する化合物に関するが、但し、n=1、m=6、Z=NH2およびR1=OHである化合物は除外される。
【0033】
「生体認識要素」という表現は、生物学的受容体を相補する分子構造であって、後者により認識されることができ、そして特定の応答:酵素の生合成の誘導と制御、その活性部位上に結合することによる酵素の活性の阻害、細菌性疾患に付随する免疫応答の誘起、セレクチンの活性部位をブロックすることによる炎症プロセスの阻害等に導くことができるものを表す。
【0034】
「いくつかの分岐を持つ多重化要素(multiplication element)」という表現は、特に、トリス(2−アミノメチル)メチルアミン(TRIS)およびペンタエリスリトールの誘導体等の四置換四級炭素を含む分岐した炭素鎖を表す。
【0035】
「可視化プローブまたは蛍光性もしくは放射性検出プローブ」という表現は、物理化学的手法、例えば蛍光または放射能により系の検出を可能とする分子構造を表す。蛍光プローブのうち、特に、フルオレセイン、ダンシル(5−(ジメチルアミノ)−1−ナフタレンスルホニル)またはクマリンを挙げることができる。放射性プローブのうち、放射性同位体で標識された生成物を挙げることができる。
【0036】
上記の式(I)は、シクロデキストリン環上で多置換および一置換された化合物の双方に関する。一置換化合物は、R1がOHを表す式(I)に相当し、また、多置換化合物は、R1が−S−CH2−(CH2n−Zを表す式(I)に相当する。
【0037】
これらの新規な誘導体において、シクロデキストリンの一級アルコール位とZ基の間にシステアミニル型のスペーサー基または、より一般的には、ω−アミノアルカンチオール由来のスペーサー基が存在することは、特に、一方でZがNHXで表される式(I)に対応する化合物の場合にアミン基の反応性を増大するために、また、他方で、Zがチオウレア基を表す式(I)を有する誘導体の場合に細胞認識の現象の有効性を保証するために、有利であることが見出された。さらに、このスペーサー基は、市販のシステアミンまたは対応するω−アミノアルカンチオール同族体を試薬として使用して、容易に導入され、上記の文献WO97/33919号に記載の例における場合のように、アジド型の前駆体からアミン基を製造するときに必要とされる還元工程を特に回避することに注目すべきである。
【0038】
なお、mが6に等しく、R1がOHを表し、ZがNH2を表す、式(I)の生成物は、周囲温度で、N,N−ジメチルホルムアミド中、特記されていない収率で、6I−O−トシルシクロマルトヘプタオースをシステアミンと反応させることにより(Y. Nagataら、Bull Chem. Soc. Jpn. 1994, 67, 495-499)、あるいはまた、炭酸水素ナトリウムの存在下、60℃で水−ジメチルホルムアミド混合物中で、43%の収率で、このトシレートをシステアミン塩酸塩と反応させることにより(B. Ekbergら、Carbohydr. Res., 1992, 192, 111-117)、以前に製造されたことに注目すべきである。本発明の文脈において、この生成物を、対応するチオウレイドシステアミニルシクロデキストリン類を得るために、合成中間体として使用した。トリエチルアミンの存在下、N,N−ジメチルホルムアミド中、β−シクロデキストリンのC−6モノハロゲン化前駆体、好ましくは臭化物とシステアミン塩酸塩とを反応させることにより、それを製造することが有利であることが見出された(収率85%)。場合により、システアミンまたはω−アミノアルカンチオールのアミン基は、メチル、エチル、プロピルまたはブチル基等のアルキル置換基を有することができる。この予め官能基化されたスペーサー基は、シクロデキストリンを、非常に安定で、十分に明確化された構造を作り出す、チオウレア、アミドもしくはチオエーテルタイプの結合を介して、糖質誘導体等の親水性および細胞認識単位、あるいはまた、アミノ酸またはペプチドと結合させることが可能である。このチオウレア結合は、最後の工程で作出され、そして、シクロデキストリンを、多数の置換基、特にいくつかの分岐を持つ多重化要素を含む置換基に結合させることができ、その分岐は、種々の糖質単位または可視化プローブまたは蛍光もしくは放射性検出プローブさえも含有する。
【0039】
ZがNHX型(X=Hまたはアルキル置換基)のアミン基を表す、上記の式(I)のシステアミニル−シクロデキストリンは、アンモニウム塩(Zが、+NX3を表す場合)または遊離塩基(Zが、NHXを表す場合)の形態で単離することができる。塩の場合には、対イオンは、一価アニオン、特にハロゲン化物、例えば塩化物、臭化物またはヨウ化物である。これは、特に、Zが正電荷を有する四級アンモニウム基を表す式(I)に対応する、+NX3型(X=アルキル置換基)のシステアミニル−シクロデキストリンの場合である。Zが、NHXを表す式(I)の化合物を、チオウレイドシステアミニル−シクロデキストリン、特に高度に分岐した誘導体の製造において、前駆体として用いることができる。式(I)中のZがNH2基を表すときには、得られるチオウレアは、N,N’−二置換されており、一方、ZがNHX基を表すときは、Xは、メチル、エチル、プロピルまたはブチル等のアルキル置換基を表し、得られたチオウレアは、N,N,N’−三置換されている。
【0040】
Zがチオウレア基を表す、式(I)のチオウレイドシステアミニル−シクロデキストリンの場合には、R置換基は種々のタイプであることができる。したがって、Rは、水素原子、1〜12個の炭素原子を持つ直鎖状もしくは分枝状アルキル置換基、またはフェニル、ベンジルもしくはナフチル基等の芳香族基、あるいは芳香環上に置換基を有するこれらの基の誘導体を表し、この置換基は前記のとおりである。Rはまた、特に、場合により置換された、アミノ酸、ペプチド、単糖またはオリゴ糖由来の基を表すことができる。単糖由来の基の例として、αまたはβアノマー立体配置の、グルコース、マンノースおよびガラクトース由来のものを挙げることができる。単糖由来の基が置換されている場合、単糖の1以上のヒドロキシル基は、1〜16個の炭素原子を持つアルコキシ基、アシルオキシ基、例えばアセトキシ基、アミンまたはアミド基で置き換えられることができる。オリゴ糖由来の基は、マルトシル、マルトトリオシル、ラクトシル基、あるいはまた、ルイスXもしくはシアリルルイスX型の三糖もしくは四糖細胞親和性マーカー、あるいはまた、ヘパリン由来のオリゴ糖であることができる。それらは、また、アルコキシ、アシルオキシ基、アミン化、硫酸化またはリン酸化基で置換されていることができる。
【0041】
本発明によれば、Rはまた、分岐した多重化要素、例えば、トリス(2−ヒドロキシメチル)メチルアミン(TRIS)またはペンタエリスリトール由来の基を表し、分岐中に、同一または異なっていてもよい単糖またはオリゴ糖由来の基を含む。例として、酸素化されたまたはアミノ化された置換基をも含みうる、前節で既に挙げた単糖またはオリゴ糖由来の基を挙げることができる。これらの糖質基は、酸素化された、硫黄化されたまたはアミノ化された結合を介して、多重化要素に結合することができる。Rが分岐要素を含む場合、分岐の一つは、蛍光型プローブ、特にフルオレセインの誘導体あるいはまた、放射性プローブを有することができる。
【0042】
有利な実施態様によれば、本発明の化合物は、下記式:
【0043】
【化66】

【0044】
(式中、m、n、R1、XおよびRは、前記のとおりである)
の一つを有する。
【0045】
本発明の有利な化合物は、R1がOHを表すことを特徴とし、かつ下記一般式:
【0046】
【化67】

【0047】
(式中、
−m、nおよびZは、上記のとおりである)
を有する。
【0048】
上記の化合物は、シクロデキストリン環上で一置換された化合物である。
【0049】
このタイプの化合物において、シクロデキストリンの穴へのアクセスは、従来技術の化合物の場合よりも、より妨害を受けにくく、ある種のゲスト分子に対して、より良好な複合化特性をもたらすことができる。
【0050】
式(I−a)を有する、本発明の有利な化合物は、ZがNHX基を表し、Xが上記のとおりであって、特に水素原子であることを特徴とする。
【0051】
そのような化合物は、下記式:
【0052】
【化68】

【0053】
を有する。
【0054】
上記の化合物は、Zがチオウレア基である、式(I−a)の化合物を得るための、Xが水素原子を表すときの反応中間体となる。
【0055】
式(I−a)を有する、本発明の有利な化合物は、ZがNH2基またはNX3基を表すことを特徴とし、下記式(I−f−bis)または(I−g):
【0056】
【化69】

【0057】
(式中、m、nおよびXは、上記のとおりである)
を有する。
【0058】
本発明による有利な化合物は、式(I−a)に対応する上記の化合物であって、Zが基:
【0059】
【化70】

【0060】
を表し、Rが上記のとおりであり、Xが上記のとおりであって、特に水素原子であることを特徴とする。
【0061】
そのような化合物は、下記式:
【0062】
【化71】

【0063】
を有する。
【0064】
本発明による有利な化合物は、上記の式(I)の化合物であって、R1が−S−CH2−(CH2n−Z基を表すことを特徴とし、かつ、下記一般式(I−b):
【0065】
【化72】

【0066】
(式中、m、nおよびZは、上記のとおりである)
を有する。
【0067】
上記の化合物は、シクロデキストリン環上で多置換された化合物である。
【0068】
そのような構造において、組み込まれた生体認識要素は、一置換誘導体に比べて、多重化されており、それは、本発明の化合物の場合に、生物学的受容体に対してより良好な親和性をもたらすことができる。高度に分岐した誘導体について、C−6置換基によりシクロデキストリンの穴が拡張する可能性があるため、新たな超分子(したがって、送達)特性を予見することができる。
【0069】
本発明による有利な化合物は、上記の式(I―b)の化合物であって、下記式:
【0070】
【化73】

【0071】
(X、nおよびmは、上記のとおりである)
を有する。
【0072】
式(I−c)の化合物は、システアミニルシクロデキストリン化合物と呼ばれる、シクロデキストリン由来の化合物であり、Zがチオウレア基を表す、式(I−b)の化合物を得るための、Xが水素原子を表すときの、反応中間体となる。
【0073】
本発明による有利な化合物は、上記の式(I−b)の化合物であって、Xが水素原子を表しかつnが1に等しいことを特徴とし、また、下記式:
【0074】
【化74】

【0075】
(式中、mは、上記のとおりである)
を有する。
【0076】
本発明による有利な化合物は、上記の式(I−b)の化合物であって、下記式:
【0077】
【化75】

【0078】
(X、nおよびmは、上記のとおりである)
を有する。
【0079】
本発明による有利な化合物は、上記の化合物であって、下記式(II):
【0080】
【化76】

【0081】
(式中、X、n、mおよびRは、上記のとおりであり、Rは、上記のように各々基:
【0082】
【化77】

【0083】
について同一である)
に対応する。
【0084】
式(II)の化合物は、チオウレイドシステアミニルシクロデキストリン化合物と呼ばれる、シクロデキストリン由来の化合物である。
【0085】
本発明による有利な化合物は、上記の式(II)の化合物であって、Xが水素原子を表しかつnが1に等しいことを特徴とし、また、下記式:
【0086】
【化78】

【0087】
(Rおよびmは、上記のとおりである)
を有する。
【0088】
本発明による有利な化合物は、上記の化合物であって、上記のNHX基の少なくとも一つがプロトン化され、かつ、特に、塩素、臭素またはヨウ素イオンから選択された一価のアニオンを伴うものであることを特徴とする。
【0089】
本発明はまた、nが1に等しいこと、Z基が四級アンモニウム+NX3基を表すこと、および特に、塩素、臭素またはヨウ素イオンから選択された一価のアニオンを伴うものであることを特徴とし、下記式:
【0090】
【化79】

【0091】
に相当する、上記の化合物に関する。
【0092】
これらの正電荷を有する生成物は、ポリヌクレオチドのような負電荷を有する分子と好ましい静電相互作用を有することができる。この観点で、これらの誘導体の遺伝子導入に対するベクターとしての応用が期待される。また、J. Defayeら(J. Incl. Phen. Mol. Recogn. Chem. 29(1997) 57-63)により記述されたように、シクロデキストリンのC−6位に正電荷を有する基が存在すると、これらのものの溶血特性が減少し、従ってそれらの毒性が減少することが知られている。
【0093】
本発明はまた、R基が、以下の基:
−下記式(III):
【0094】
【化80】

【0095】
の、α−D−マンノピラノシル基、
−下記式(III−a):
【0096】
【化81】

【0097】
の、β−ラクトシル基、
−それぞれ、下記式(III−b)および(III−c):
【0098】
【化82】

【0099】
の、ルイスX三糖またはシアリルルイスX四糖由来の基、
−下記式(III−d):
【0100】
【化83】

【0101】
の、ヘパリン由来のオリゴ糖
から選択されることを特徴とする、上記の式(II−a)の化合物に関する。
【0102】
したがって、本発明は、下記式の一つを有する化合物:
−Rが、式(III)のα−D−マンノピラノシル基を表す場合の式(II−a)の化合物:
【0103】
【化84】

【0104】
−Rが、式(III−a)の、β−ラクトシル基を表す場合の式(II−a)の化合物:
【0105】
【化85】

【0106】
−Rが、式(III−b)の、ルイスX三糖由来の基を表す場合の式(II−a)の化合物:
【0107】
【化86】

【0108】
−Rが、式(III−c)の、シアリルルイスX四糖由来の基を表す場合の式(II−a)の化合物:
【0109】
【化87】

【0110】
−Rが、式(III−d)の、ヘパリン由来のオリゴ糖を表す場合の式(II−a)の化合物:
【0111】
【化88】

【0112】
に関する。
【0113】
本発明は、また、
Rが、トリス(2−ヒドロキシメチル)メチルアミン由来の分岐要素を含むか、または
Rが以下の基:
−下記式(IV):
【0114】
【化89】

【0115】
の、トリス(α−D−マンノピラノシルオキシメチル)メチル基、
−下記式(IV−a):
【0116】
【化90】

【0117】
の、トリス(β−ラクトシルオキシメチル)メチル基、
の一つを表す、
ことを特徴とする、上記で定義された式(II−a)の化合物に関する。
【0118】
本発明はまた、下記式の一つを有する化合物:
−Rが、式(IV)の、トリス(α−D−マンノピラノシルオキシメチル)メチル基を表す場合の式(II−a)の化合物:
【0119】
【化91】

【0120】
−Rが、式(IV−a)の、トリス(β−ラクトシルオキシメチル)メチル基を表す場合の式(II−a)の化合物:
【0121】
【化92】

【0122】
に関する。
【0123】
本発明はまた、Rがペンタエリスリトール由来の分岐要素を含むことを特徴とし、その化合物が下記式:
【0124】
【化93】

【0125】
(式中、m、n、R1およびXは、上記のとおりであり、かつ
2およびR3は、同一もしくは異なり得る糖質誘導体、または蛍光性もしくは放射性プローブを表す)
を有する、上記の式(I−a)の化合物に関する。
【0126】
本発明による有利な化合物は、R1がOHを表すことを特徴とする、上記の式(V)の化合物である。
【0127】
そのような化合物は、下記式:
【0128】
【化94】

【0129】
を有する。
【0130】
上記の化合物は、シクロデキストリン環上で一置換された化合物を表す。
【0131】
本発明による有利な化合物は、R1が式:
【0132】
【化95】

【0133】
の基を表すことを特徴とする、上記の式(V)の化合物である。
【0134】
そのような化合物は、下記式:
【0135】
【化96】

【0136】
を有する。
【0137】
上記の化合物は、シクロデキストリン環上で多置換された化合物を表す。
【0138】
本発明はまた、nが1に等しいこと、Xが水素原子を表すこと、そしてR2およびR3が、以下の基:
−上記の、式(III)の、α−D−マンノピラノシル基、
−上記の、式(III−a)の、β−ラクトシル基、または
−下記式(VI):
【0139】
【化97】

【0140】
の、β−D−グルコピラノシル基、
の一つを表し、R2およびR3は同一または異なることを特徴とする、上記の、式(V)の化合物に関する。
【0141】
そのような化合物は、下記式の一つを有する:
a)一置換化合物(R1がOHを表す場合)
【0142】
【化98】










【0143】
b)多置換化合物
【0144】
【化99】









【0145】
本発明はまた、mが6に等しいことを特徴とする、上記の化合物に関する。
【0146】
Zが、NHX型(X=Hまたはアルキル置換基)のアミン基を表す式(I)に対応する、本発明のシステアミニル−シクロデキストリンの、糖質置換基による一級アルコール位が完全に置換された誘導体の製造用の前駆体としての使用は、前記の他の方法に比べて、有利である。特に、チオウレア結合の形成は、操作、最終生成物の収率および精製の観点から有利であり、その生成物は、ほとんどの場合クロマトグラフィーによる分離を必要としない。また、システアミニル型のスペーサーのアームの存在は、立体障害を減少させ、認識単位の多重化の結果としての特定の細胞受容体によるより良好な認識を可能とする高度に分岐した誘導体を得るための、多重化要素の組み込みを可能とし、これは、先行技術の方法、特に国際出願WO97/33919号の方法とは異なる。
【0147】
事実、先行技術においては、おそらくは立体障害の結果、一級アルコール位で完全に置換されたチオウレイドシクロデキストリンの製造において出発材料として使用されかつ文献WO97/33919号に記載のペル(6−アミノ−6−デオキシ)シクロデキストリン類は、相対的に求核反応性に乏しいため、チオウレア結合を作出するイソチオシアナートとの反応は、正確には、活性化されたイソチオシアナート、例えばグリコシル−イソチオシアナートとの間でのみ生じ、このことは、反応を複雑にし、かつ多重化要素の組み込みを阻害する。さらに、既に引用した文献ChemBioChem 2001には、得られるグリコシルチオウレイドシクロデキストリンが、相補的な特定のレクチンにより、不十分にしか認識されないことが示されている。
【0148】
本発明はまた、上記の、式(I)の化合物の製造方法であって、
この方法は、以下の工程:
−下記式(VII):
【0149】
【化100】

【0150】
(式中、mは、上記のとおりであり、
Wは、OH基またはY基であり、W基はすべて同一であり、
かつYは、塩素、臭素、ヨウ素で構成される群から選択されるハロゲン原子を表し、好ましくは臭素またはヨウ素である)
の、一級アルコール位で選択的にまたは全体的にハロゲン化された化合物と、
下記式(VIII):
【0151】
【化101】

【0152】
のω−アミノアルカンチオール(該ω−アミノアルカンチオールは、場合によりN−アルキル化されている)、または、下記式(VIII−a):
【0153】
【化102】

【0154】
の対応する塩、または下記式(VIII−b):
【0155】
【化103】

【0156】
のテトラアルキルアンモニウム塩(該塩は、ハロゲン化物対イオン、好ましくは塩化物イオンを伴っている)
(nおよびXは、上記のとおりであり、Xは、好ましくは水素原子であり、
式(VIII)の化合物は、好ましくは式:H2N−CH2−CH2−SHのシステアミンである)
との反応であって、
下記式(A−a)または(A−b):
【0157】
【化104】

【0158】
を有する上記の化合物を得るための反応、
および場合により、
−上記の工程で得られた式(A−a)の化合物と、下記式(IX):
【0159】
【化105】

【0160】
(式中、Rは、上記のとおりである)
のイソチオシアナートとの反応であって、
下記式:
【0161】
【化106】

【0162】
に対応する上記の化合物を得るための反応、
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0163】
この方法は、シクロデキストリン環上で一置換および多置換された化合物を得ることを可能にする。
【0164】
上記の方法の第一工程は、トリエチルアミンの存在下、ジメチルホルムアミド中で行われ(DMF/トリエチルアミンの比、4:1)、混合物を、周囲温度で48時間攪拌する。この工程の収率は、約80〜95%である。
【0165】
この方法の第二工程は、水−アセトン混合物(1:1〜1:2)中、pH8〜9(重炭酸ナトリウム)で、周囲温度、1〜6時間行われるカップリングである。この工程の収率は、約55〜95%である。
【0166】
本発明はまた、下記一般式(I−b):
【0167】
【化107】

【0168】
に対応する、上記の化合物の製造方法であって、
その方法は、以下の工程:
−下記式(VII−a):
【0169】
【化108】

【0170】
(mは、上記のとおりであり、Yは、塩素、臭素、ヨウ素で構成される群から選択されるハロゲン原子を表し、好ましくは臭素またはヨウ素である)
の、ペル(6−デオキシ−6−ハロ)シクロデキストリン化合物と、
下記式(VIII):
【0171】
【化109】

【0172】
のω−アミノアルカンチオール(該ω−アミノアルカンチオールは、場合によりN−アルキル化されている)、または、下記式(VIII−a):
【0173】
【化110】

【0174】
の対応する塩、または下記式(VIII−b):
【0175】
【化111】

【0176】
のテトラアルキルアンモニウム塩(該塩は、ハロゲン化物対イオン、好ましくは塩化物イオンを伴っている)
(nおよびXは、上記のとおりであり、Xは、好ましくは水素原子であり、
式(VIII)の化合物は、好ましくは式:H2N−CH2−CH2−SHのシステアミンである)
との反応であって、
下記式(I−c)、(I−d)または(I−e):
【0177】
【化112】

【0178】
の上記の化合物を得るための反応、
および場合により、
−上記の工程で得られた式(I−c)の化合物と、下記式(IX):
【0179】
【化113】

【0180】
(式中、Rは、上記のとおりである)
のイソチオシアナートとの反応であって、
下記式(II)または(II−a):
【0181】
【化114】

【0182】
の上記の化合物を得るための反応、
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0183】
この方法は、シクロデキストリン環上で多置換された化合物を得ることを可能にする。
【0184】
上記の方法の第一工程は、トリエチルアミンの存在下、ジメチルホルムアミド中で行われ(DMF/トリエチルアミンの比、4:1)、混合物を、周囲温度で48時間攪拌する。この工程の収率は、約80〜95%である。
【0185】
この方法の第二工程は、水−アセトン混合物(1:1〜1:2)中、pH8〜9(重炭酸ナトリウム)で、周囲温度で、1〜6時間行われるカップリングである。この工程の収率は、約55〜90%である。
【0186】
本発明はまた、下記一般式(I−f−bis):
【0187】
【化115】

【0188】
(式中、mおよびnは、上記のとおりであり、nは、好ましくは1に等しい)
の化合物の製造方法であって、
その方法は、下記式(VII):
【0189】
【化116】

【0190】
(式中、mは、上記のとおりであり、
Yは、塩素、臭素、ヨウ素で構成される群から選択されるハロゲン原子を表し、好ましくは臭素またはヨウ素である)
の、一級アルコール位で選択的にハロゲン化された化合物と、
下記式:
【0191】
【化117】

【0192】
(nは、上記のとおりである)
のω−アミノアルカンチオール、または好ましくは、式:H2N−CH2−CH2−SHのシステアミン、
との反応を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0193】
本発明はまた、下記式:
【0194】
【化118】

【0195】
に対応する、上記の化合物の製造方法であって、
その方法は、以下の工程:
−下記式(VII):
【0196】
【化119】

【0197】
(式中、mは、上記のとおりであり、
Yは、塩素、臭素、ヨウ素で構成される群から選択されるハロゲン原子を表し、好ましくは臭素またはヨウ素である)
の、一級アルコール位で選択的にハロゲン化された化合物と、
下記式(VIII):
【0198】
【化120】

【0199】
のω−アミノアルカンチオール(該ω−アミノアルカンチオールは、場合によりN−アルキル化されている)、または、下記式(VIII−a):
【0200】
【化121】

【0201】
の対応する塩、または下記式(VIII−b):
【0202】
【化122】

【0203】
のテトラアルキルアンモニウム塩(該塩は、対イオンとしてのハロゲン化物、好ましくは塩化物イオンを伴っている)
(nおよびXは、上記のとおりであり、Xは、好ましくは水素原子であり、
式(VIII)の化合物は、好ましくは式:H2N−CH2−CH2−SHのシステアミンである)
との反応であって、
下記式:
【0204】
【化123】

【0205】
(式中、m、nおよびXは、上記のとおりである)
の、式(I−f)または(I−g)の上記化合物を得るための反応、
および場合により、
−上記の工程で得られた式(I−f)の化合物と、下記式(IX):
【0206】
【化124】

【0207】
(式中、Rは、上記のとおりである)
のイソチオシアナートとの反応であって、
下記式(I−h):
【0208】
【化125】

【0209】
の、上記の化合物を得るための反応、
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0210】
この方法は、シクロデキストリン環上で一置換された化合物を得ることを可能にする。
【0211】
上記の方法の第一工程は、トリエチルアミンの存在下、ジメチルホルムアミド中で行われ(DMF/トリエチルアミンの比、4:1)、混合物を、周囲温度で48時間攪拌する。この工程の収率は、約85〜95%である。
【0212】
この方法の第二工程は、水−アセトン混合物(1:1)中、pH8〜9(重炭酸ナトリウム)で、周囲温度で、1〜3時間行われるカップリングである。この工程の収率は、約80〜95%である。
【0213】
1基がすべて同一でありかつS−CH2−(CH2n−Zを表す、式(I)のシステアミニル−シクロデキストリン型の本発明の誘導体は、ハロゲン化された基により一級アルコール位において完全に置換されたシクロデキストリンの誘導体、特にペル(6−ブロモもしくは6−ヨード−6−デオキシ)シクロデキストリンを、市販のシステアミン塩酸塩と、または、一般的に、2〜6個の炭素原子を持ち、場合によりN−アルキル化された、ω−アミノアルカンチオールハロハイドレートと、トリエチルアミンもしくはN,N−ジメチルアミノピリジン等のアミンまたは水素化ナトリウムもしくはリチウム等の金属水素化物のような塩基の存在下、N,N−ジメチルホルムアミド中で反応させることからなる方法により製造することができる。この方法で出発物として使用される、ハロゲン化された基により一級アルコール位において完全に置換されたシクロデキストリンの誘導体は、種々の選択的ハロゲン化試薬での反応により、市販のシクロデキストリンから一工程で、そして良好な収率で製造することができる。このために、文献Supramol. Chem, 2000, 12, pp. 221-224, Polish J. Chem. 1999, 73, pp. 967-971, Tetrahedron Lett. 1997, 38, pp. 7365-7368, Carbohydr. Res. 1992, 228, pp. 307-314, およびAngew. Chem., Int. Ed. Engl. 1991, 30, pp. 78-80中で J. Defayeらにより記述された方法を使用することができる。
【0214】
1基がすべて同一でありかつOHを表す、式(I)のシステアミニル−シクロデキストリン型の本発明の誘導体は、ハロゲン化された基により一級アルコール位において一置換されたシクロデキストリンの誘導体、特にモノ(6I−ブロモもしくは6I−ヨード−6I−デオキシ)シクロデキストリンを、市販のシステアミン塩酸塩と、または、一般的に、2〜6個の炭素原子を持ち、場合によりN−アルキル化された、ω−アミノアルカンチオールハロハイドレートと、一級アルコール位で完全に置換された誘導体の製造について上で記載された方法に従って反応させることからなる方法により製造することができる。この方法で出発物として使用される、ハロゲン化された基により一級アルコール位において一置換されたシクロデキストリンの誘導体は、6I−O−p−トルエンスルホニルシクロデキストリン誘導体から、N,N−ジメチルホルムアミド中でハロゲン化物アニオンによるトシル化基の求核置換により、一工程で、そして良好な収率で製造することができる。唯一つの一級アルコール位にp−トルエンスルホン酸基を含むシクロデキストリンの誘導体を製造するために、文献WO99/61483号中で J. Defayeらにより記述された方法またはComprehensive Supramolecular Chemistry, Vol. 3 (編集者J.SzejtiおよびT. Osa), Pergamon, Oxford, 1996, pp. 57-198中のL. Jicsinszkyらによるジャーナル論文に記載された方法を使用することができる。
【0215】
本発明はまた、R1が異なりかつOHまたはS−CH2−(CH2n−Zを表し、様々な置換パターンを有する、式(I)のシステアミニル−シクロデキストリン型の誘導体に関する。このタイプの誘導体は、一級アルコール位においてスルホネートタイプの基により選択的に置換されたシクロデキストリン誘導体を出発物質として、一級アルコール位で一置換されたシステアミニル−シクロデキストリン型の誘導体の製造について上で記載された反応の順序に従って得ることができる。スルホネートタイプの基により一級アルコール位において選択的に多置換されたシクロデキストリンの誘導体を製造するために、Comprehensive Supramolecular Chemistry, Vol. 3 (編集者J.SzejtiおよびT. Osa), Pergamon, Oxford, 1996, pp. 57-198中のL. Jicsinszkyらによるジャーナル論文に記載された方法を使用することができる。
【0216】
本発明の式(II)のチオウレイドシステアミニル−シクロデキストリンの製造方法は、ZがNHXタイプ(X=Hまたはアルキル置換基)のアミン基を表す式(I)のシステアミニル−シクロデキストリンを、Rが上記の意味を有する式:R−NCSのイソチオシアナートと反応させることからなる。この反応は、ピリジン等の有機溶媒中あるいはまた、水とアセトン等の混和性有機溶媒との混合物中で行うことができる。
【0217】
Rが、単糖またはオリゴ糖由来の基であるとき、式:R−NCSのイソチオシアナートは、アミノデオキシグリコースまたはグリコシルアミン上での塩化チオカルボニルの反応により製造することができる。この反応のために、Adv. Carbohydr. Chem. Biochem. 1999, 55, pp. 35-135中のJ. M. Garcia FernandezおよびC. Ortiz Melletにより記述された方法に従うことができる。
【0218】
Rが、トリス(2−ヒドロキシメチル)メチルアミン(TRIS)由来の分岐した多重化要素を含むときは、対応するイソチオシアナートは、文献Chem. Commun., 2000, pp. 1489-1490中に記載されたように、一級アルコール位上に糖質置換基を含有するアミン化された誘導体上の塩化チオカルボニルとの反応により製造することができる。アミン化された三価のグリコデンドロン前駆体は、J. Org. Chem. 1998, 63, pp. 3429-3437中のP. R. Ashtonらにより記述されたような、カルボベンゾキシ誘導体の形態で好適に保護されたアミン官能基でのTRIS誘導体のグリコシド化反応により得ることができる。
【0219】
Rが、ペンタエリスリトール由来の分岐した多重化要素を含むときは、イソチオシアナート基で好適に官能基化されたグリコデンドロンは、以下を含む一連の反応により市販のペンタエリスリトールから製造することができる:
(i)一つのヒドロキシル基を遊離型で残す、臭化アリルでの処理による選択的トリアリル化;
(ii)アリル基の二重結合への1−チオ糖のラジカル付加。紫外光での活性化により、またはアゾビス(イソブチロニトリル)もしくはp−ニトロ過安息香酸等のフリーラジカル開始剤の存在下のいずれかに、この反応を行うことができる。例として、Org. Lett. 2000, 2, pp. 1113-1116中でD. A. FultonおよびJ. F. Stoddartにより、またはCarbohydr. Res. 2002, 337, pp. 977-981中でX. -B. Mengらにより記述された反応条件を適合させることができる。特に、本発明者らは、この反応は、異なる糖質分岐を順次付加することを可能とすることを見出した。従って、糖質置換基が上記の構造に対応する均一なおよび不均一なグリコデンドロンを得ることが可能である。このアプローチはまた、糖質誘導体以外の置換基を、その構造、特にフルオレセイン誘導体等の蛍光タイプのプローブを組み込むことを可能にする。1−チオ糖前駆体は、チオ尿素との反応とその後の得られたイソチオウロニウム塩の加水分解によって対応するハロゲン化グリコシルから、あるいは二重結合へのチオ酢酸のラジカル付加によってグリカールからのいずれかで、製造することができる。これらの反応のために、Studies in Natural Products Chemistry, Vol. 8 (編集者 Atta.ur Rahman), Elsevier, Amsterdam, 1991, pp. 315-357中でJ. DefayeおよびJ. Gelasにより、およびTop. Curr. Chem., 1997, 187, pp. 85-116中でH. Driguezにより刊行されたジャーナル論文中に記載された方法に従うことができる。
(iii)残余の一級アルコール基のイソチオシアナート基への変換。この変換は、例えば、ヒドロキシル基をp−トルエンスルホネートまたはトリフルオロメタンスルホネート等の良好な脱離基に変換すること、次いでアジドアニオンによる求核置換およびトリフェニルホスフィンと二硫化炭素での反応による得られたアジドのイソチオシアノ化により行うことができる。この変換のために、文献Chem. Commun., 2000, pp. 1489-1490中に記載された方法に従うことができる。
【0220】
本発明のシステアミニル−およびチオウレイドシステアミニル−シクロデキストリンを得るための上記の方法は、所望の誘導体を少ない数の工程でかつ高収率で得ることを可能にするので、非常に有利である。また、これらの方法は、他の手段では容易には入手できない高度に分岐した均一な誘導体および不均一な誘導体を得ることを可能にする。これらの誘導体は、組み込まれた糖質置換基の機能として、特定の膜レクチンにより、非常に有効に認識される。
【0221】
本発明はまた、上記したような化合物と、薬理学的に活性な分子との包接複合体であって、その化合物と薬理学的に活性な分子とのモル比が、有利には、約50:1〜約1:1である包接複合体に関する。
【0222】
「包接複合体」という表現は、ゲスト分子が非共有結合相互作用によりホスト分子の疎水性の穴中に保持される、本発明に係る化合物(ホスト分子)および薬理学的活性分子(ゲスト分子)で構成された超分子物を示す。
【0223】
「薬理学的活性分子」という表現は、抗凝固剤、抗糖尿病剤、抗炎症剤、抗生物質、抗腫瘍剤等のような、治療活性を付与された活性成分を示す。
【0224】
本発明はまた、薬理学的に活性な分子が、抗腫瘍剤、特にタキソール族に属するものであることを特徴とする、上記の複合体に関する。
【0225】
抗腫瘍剤として、特に、
−アルキル化剤:ニトロソ尿素、例えば:ロムスチン、カルムスチンおよびストレプトゾシン;マスタードオイル、例えば:メクロレタミン、メルファラン、ウラシルナイトロジェンマスタード、クロランブシル、シクロホスファミドおよびイホスファミド;他のアルキル化剤、例えば:シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、チオテパ、デカルバジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、トリエチレンメラミン、ビスルファン、ピポブロマン、およびミトタン;
−代謝拮抗剤:メトトレキサート、トリメトレキサート、ペントスタチン、シタラビン、ara−CMP、フルダラビン・ホスフェート、ヒドロキシ尿素、フルオロウラシル、フロクスウリジン、クロロデオキシアデノシン、ゲムシタビン、チオグアニンおよび6−メルカプトプリン;
−DNA切断剤:ブレオマイシン、トポイソメラーゼI毒、例えば:トポテカン、イリノテカン;カンプトテシンナトリウム塩およびトポテカンとイリノテカンの類縁体;トポイソメラーゼII毒、例えば:ダウノルビシン、ドクソルビシン、イダルビシン、マイトキサントロン、テニポシドおよびエトポシド;
−DNA挿入剤:ダクチノマイシンおよびミトラマイシン;
−細胞分裂阻害剤:ビンブラスチン、ビンクリスチン、ナベルビン、パクリタクセルおよびドセタクセル;
のようなFDA(食品医薬品局)により認可された非生物学的抗腫瘍剤を挙げることができる。
【0226】
タキソール族に属する好ましい抗腫瘍剤は、ドセタクセル(タキソテール(Taxotere、登録商標))である。
【0227】
特定の膜レクチンに対する本発明のチオウレイドシステアミニル−シクロデキストリンの親和性を、ELLA(酵素−結合レクチンアッセイ)プロトコルに従って、in vitroで評価した。このプロトコルの多数の応用例は、Chem. Rev. 2002, 102, pp. 555-578中のJ. J. LundquistおよびE. J. Toonのジャーナル論文中に見出すことができる。この手法は、相補性レクチンとプラスチック担体ミクロプレートに固定された他の参照リガンドの間の会合を阻害する、可溶性の単糖またはオリゴ糖リガンドの能力を測定する。そこで、α−D−マンノピラノシル置換基を有するチオウレイドシステアミニル−シクロデキストリンは、コンカナバリンAによりあるいはマクロファージのマンノースに特異的なレクチンにより、認識され、β−ラクトシル置換基を持つ誘導体は、アラキス・ハイポガエ(Arachys hypogaea)ラクトース、または肝細胞に特異的なレクチンにより認識され、そして、シアリル−ルイスX四糖置換基を含む誘導体は、炎症プロセスに含まれる内皮細胞セレクチンにより認識される。
【0228】
一般に、文献ChemBioChem 2001に記載のチオウレイド−シクロデキストリンコンジュゲートに比べて、特異的なレクチンに対するチオウレイドシステアミニル−シクロデキストリン型誘導体の親和性の実質的な増加が観察される。
【0229】
細胞認識要素を含む本発明のチオウレイドシステアミニル−シクロデキストリンは、特に、相補性膜受容体をマスクするために使用することができる。そこで、ポリマンノシル化チオウレイドシステアミニル−シクロデキストリンによりマクロファージのマンノースに特異的な受容体を、ポリアクトシル化誘導体により肝細胞のラクトースに特異的な受容体を、およびシアリル−ルイスX四糖由来の置換基を組み込む誘導体により内皮細胞セレクチンをブロックすることができる。この文脈において、これらの誘導体は、接着現象を含む感染および癌化プロセスの予防および処置用ならびにまた、炎症プロセスの撹乱と結びついた疾患の予防および処置用の活性分子として使用することができる。
【0230】
これらの包接化合物は標準的な方法、例えば、文献WO97/33919号に記載のように、共溶媒の存在下または不存在下、溶液中のまたは純粋な状態の活性分子を、シクロデキストリン誘導体の溶液中に分散させることにより、製造することができる。
【0231】
これらの包接複合体は、例えば、式(I)の本発明の化合物の溶液または懸濁液に、溶液中のまたは純粋な状態の薬理学的に活性な分子を加えることにより、製造することができる。このように形成された包接複合体は、凍結乾燥により単離することができる。
【0232】
薬理学的に活性な分子、例えばタキソール族の抗腫瘍剤を溶液で加える場合、水と混和性の有機溶媒、例えばアセトン中のその分子の濃厚溶液を使用し、得られた混合物を、有機溶媒を除去するために、攪拌および窒素等の不活性気体でのバブリングに付する。
【0233】
タキソール族の化合物、例えばタキソテール(登録商標)の場合には、この製品を純粋な状態で、本発明による化合物の滅菌溶液に分散することも可能である。
【0234】
本発明はまた、上記の化合物または上記の包接複合体を薬理学的に許容しうるビヒクルと共に含む、医薬組成物に関する。
【0235】
本発明はまた、水溶液の形態である、上記の医薬組成物に関する。
【0236】
本発明はまた、単回投与量あたり、約50mg〜約500mgの上記の化合物の一つを含有すること、または、単回投与量あたり、約100mg〜約750mgの上記の複合体の一つを含有することを特徴とする、上記の医薬組成物に関する。
【0237】
経口または非経口経路により投与できる、これらの医薬組成物は、例えば、溶液剤、粉末剤、懸濁液剤等、特に注射可能な溶液剤である。
【0238】
図へのキー
図1は、μMでのリガンド濃度の関数としての、化合物No.2、No.3、No.4、No.6およびNo.7ならびにヘプタキス(6−デオキシ−6−α−D−マンノピラノシルチオウレイド)シクロマルト−ヘプタオース(ペル−(C−6)−アミン β−シクロデキストリン由来)の存在下に、ConAレクチンと酵母マンナンとの間の会合の阻害における変化を表す。
【0239】
●印のある実線は、ペル−(C−6)アミン β−シクロデキストリンの7価の誘導体に対応し;×印のある破線は、化合物No.2に対応し;×印のある実線は、化合物No.3に対応し;△印のある実線は、化合物No.4に対応し;◇印のある実線は、化合物No.6に対応し;また、■印のある破線は、化合物No.7に対応する。
【0240】
実験の部
実施例1:ヘプタキス[6−S−(2−アミノエチル−6−チオ)]シクロマルトヘプタオース・7塩酸塩(化合物No.1)の製造
この化合物は、すべてのR1が同一であって、S−CH2−(CH2n−Zを表し、ZがNH2基を表す、n=1でm=6の上記の式(I)に相当し、その7塩酸塩の形態で単離された。
【0241】
トリエチルアミン(2.5mL)を、シリンジを用いて、アルゴン下に、蒸留DMF(10mL)中の2−アミノエタンチオール塩酸塩(999mg、8.8mmol)の溶液に加えた。懸濁液が紫色になるのが認められた。DMF(5mL)中のヘプタキス[6−ブロモ−6−デオキシ)]シクロマルトヘプタオース(1g)をこの懸濁液に滴下した。反応混合物を48時間、周囲温度で攪拌した。次いで、白色析出物の出現が観察された。固体をろ過し、水(20mL)に溶解し、希塩酸を加えて溶液のpHを4に調節し、最後に、溶液を凍結乾燥した。固体の残渣を96%エタノール中で懸濁し、懸濁液を30分間攪拌し、次いで、ろ過し、乾燥した。このようにして、化合物No.1(976mg、86%)が、以下の物性で得られた。
【0242】
【表1】

【0243】
実施例2:ヘプタキス[6−S−[2−[N’−(α−D−マンノピラノシル)チオウレイド]エチル−6−チオ]シクロマルトヘプタオース(化合物No.2)の製造
この化合物は、n=1、m=6、Xが水素原子を表し、Rが式:
【0244】
【化126】

【0245】
に対応する、上記の式(II)に相当する。
【0246】
この化合物を、化合物No.1(実施例1参照)と、2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−α−D−マンノピラノシルイソチオシアナートとの縮合、続いてアセチル保護基のアルカリ加水分解で得た。
【0247】
固体の炭酸水素ナトリウムを水(2mL)中の化合物No.1(25mL、14μmol)の溶液に、pHが8〜9の値となるまで加えた。20分後、アセトン(3mL)中の2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−α−D−マンノピラノシルイソチオシアナート溶液(42mg、0.11mmol、1.1当量)を加え、反応混合物を周囲温度で1時間攪拌した。アセトンをロータリーエバポレーター中で蒸発させ、得られた水溶液を凍結乾燥した。残渣をメタノールに取り、ろ過し、濃縮した。得られた固体をメタノール(6mL)中に溶解し、そこに、メタノール中のナトリウムメチラートの1N溶液(196μL、0.5当量)を加え、溶液を0℃で5分間攪拌した。白色固体の析出が観察され、それを水(8mL)中に再溶解した。水溶液を0℃で15分間攪拌し、中和し、Amberlite IR-120(H+)イオン交換樹脂とDuolite MB-6331(H+、OH-)混合樹脂で連続的に処理することにより脱塩し、ろ過し、次いで、凍結乾燥した。ゲルろ過クロマトグラフィー(Sephadex G-25)による精製後、化合物No.2が、以下の物性で得られた(30mg、71%)。
【0248】
【表2】

【0249】
実施例3:ヘプタキス[6−S−[2−[N’−トリス(α−D−マンノピラノシルオキシメチル)メチルチオウレイド]エチル−6−チオ]シクロマルトヘプタオース(化合物No.3)の製造
この化合物は、n=1、m=6、Xが水素原子を表し、Rが式:
【0250】
【化127】

【0251】
に対応する上記の式(II)に相当する。
【0252】
この化合物を、化合物No.1(実施例1参照)と、トリス(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−α−D−マンノピラノシルオキシメチル)メチルイソチオシアナートとの縮合、続いてアセチル保護基のアルカリ加水分解で得た。
【0253】
固体の炭酸水素ナトリウムを水(1mL)中の化合物No.1(10mg、5.5μmol)の溶液に、pHが8〜9の間の値となるまで加えた。20分後、アセトン(1mL)中のトリス(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−α−D−マンノピラノシルオキシメチル)メチルイソチオシアナート溶液(45mg、40μmol、1.04当量)を加え、反応混合物を周囲温度で4時間攪拌した。アセトンをロータリーエバポレーター中で蒸発させ、得られた水溶液をジクロロメタン(3x5mL)で抽出した。有機溶媒を蒸発させ、残渣をメタノール(3mL)に溶解し、メタノール中のナトリウムメチラートの1N溶液を、pH8〜9まで加え、溶液を周囲温度で5分間攪拌した。白色固体の析出が観察され、それを水(1mL)を加えて再溶解した。水溶液を周囲温度で15分間攪拌し、中和し、Amberlite IR-120(H+)イオン交換樹脂とDuolite MB-6331(H+、OH-)混合樹脂で連続的に処理することにより脱塩し、ろ過し、次いで、凍結乾燥した。ゲルろ過クロマトグラフィー(Sephadex G-25)による精製後、化合物No.3が、以下の物性で得られた(15mg、45%)。
【0254】
【表3】

【0255】
以下の実施例は、下記式:
【化128】

【0256】
に対応するペンタエリスリトール由来の多重化要素を含む、高度に分岐したチオウレイドシステアミニル−シクロデキストリンに関する。
【0257】
これらの誘導体の合成において用いられるグリコデンドロンの汎用前駆体は、市販のペンタエリスリトールから得られる、2,2,2−トリス(2−オキサペンター4−エニル)エタノール(トリ−O−アリルペンタエリスリトール)である。
【0258】
40%水酸化ナトリウム水溶液中のペンタエリスリトール(1.36g,10mmol)の懸濁液を、70〜75℃で15分間、激しく攪拌した。臭化アリル(3.2mL,40mmol、4当量)を滴下し、1時間攪拌を続けた。反応混合物をジクロロメタン(3x20mL)で抽出し、有機相を水で洗浄し、乾燥し(無水硫酸ナトリウム)、濃縮した。残渣を、酢酸エチル−石油エーテル(1:4)でのシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。このようにして、以下の物性を有する無色油状物1.28g(収率50%)が得られた。
【0259】
【表4】

【0260】
実施例4:ヘプタキス[6−S−[2−N’−[2,2,2−トリス[5−(1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチル]チオウレイド]エチル−6−チオ]シクロマルトヘプタオース(化合物No.4)の製造
この化合物は、すべてのR1が同一であって、CH2−C[(CH2OCH2CH2CH222(CH2OCH2CH2CH23)]を表し、Xが水素原子を表し、R2およびR3が式(III)(実施例No.2参照)に対応する、n=1でm=6の上記の式(V)に相当する。
【0261】
この化合物は、化合物No.1(実施例1参照)と、2,2,2−トリス(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートとの縮合、続いてアセチル保護基のアルカリ加水分解で得られる。
【0262】
1.2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートの製造
この化合物は、以下の工程を行うことにより製造された。
【0263】
−a)2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エタノールの製造
アルゴン下、気体を含まない無水メタノール中のトリ−O−アリルペンタエリスリトール(0.32g;1.3mmol)と2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノース(2.12g;5.85mmol;1.5当量)の溶液に、周囲温度で6時間、紫外光を照射した。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチル−石油エーテル(1:2)でのシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。このようにして、以下の物性を有する白色固体0.81g(収率46%)が得られた。
【0264】
【表5】

【0265】
−b)2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルアジドの製造
ピリジン(402μL)と無水トリフルオロメタンスルホン酸(177μL)を、ジクロロメタン(5.5mL)中の2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エタノール(1.15g;0.85mmol)の溶液に加えた。反応混合物を−25℃で20分間攪拌し、炭酸水素ナトリウムの冷飽和溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣をN,N−ジメチルホルムアミドに取り、アジ化ナトリウム(166mg;2.55mmol;3当量)を加えた。懸濁液を周囲温度で3時間攪拌し、濃縮した。残渣をジクロロメタンで溶解し、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮し、酢酸エチル−石油エーテル(1:2)でのシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。このようにして、以下の物性を有する白色固体1.0g(収率86%)が得られた。
【0266】
【表6】

【0267】
−c)2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートの製造
トリフェニルホスフィン(32mg;0.12mmol;1.1当量)と二硫化炭素(0.1mL;1.1mmol;10当量)をジオキサン(10mL)中の2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルアジド(0.15g;0.11mmol)の溶液に加え、反応混合物を周囲温度で24時間攪拌した。次いで、溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチル−石油エーテル(1:1)でのシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。このようにして、以下の物性を有する白色固体0.13g(収率85%)が得られた。
【0268】
【表7】

【0269】
2.化合物No.4の製造
この化合物を、化合物No.3の製造について上記したように、化合物No.1(20mg、11.1μmol)を、pH8〜9(固体の炭酸水素ナトリウム)で、水−アセトン(1:2、3mL)中の2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナート(160mg、115μmol、1.5当量)と縮合することにより得られた。反応混合物を、周囲温度で48時間攪拌し、アセトンを蒸発させ、水相を酢酸エチル(3x5mL)で抽出した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣を、20:1から10:1へのアセトニトリル−水グラジエントでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られた生成物を脱アセチル化し、化合物No.3の製造について記載したように脱塩した。凍結乾燥後、以下の物性を有する化合物No.4が得られた(50mg、60%)。
【0270】
【表8】

【0271】
実施例5:ヘプタキス[6−S−[2−N’−[2,2,2−トリス[5−(1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチル]チオウレイド]エチル−6−チオ]シクロマルトヘプタオース(化合物No.5)の製造
この化合物は、すべてのR1が同一であって、CH2−C[(CH2OCH2CH2CH222(CH2OCH2CH2CH22)]を表し、Xが水素原子を表し、R2およびR3が式:
【0272】
【化129】

【0273】
に対応する、n=1でm=6の上記の式(V)に相当する。
【0274】
この化合物を、化合物No.1(実施例1参照)と、2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートとの縮合、続いてアセチル保護基のアルカリ加水分解で得た。
【0275】
1.2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートの製造
この化合物を、以下の工程を行うことにより製造した。
【0276】
−a)2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エタノールの製造
この化合物を、2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エタノールの製造について上記したように、トリ−O−アリルペンタエリスリトール(0.32g;1.3mmol)と2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノース(2.12g;5.85mmol;1.5当量)から、紫外光(250nm)を照射することにより得た。このようにして、以下の物性を有する白色固体1.23g(収率46%)が得られた。
【0277】
【表9】

【0278】
−b)2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルアジドの製造
この化合物を、2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルアジドの製造について上記したように、無水トリフルオロメタンスルホン酸との反応とそれに続くアジ化ナトリウムでの処理により、2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エタノール(1.15g;0.85mmol)より得た。このようにして、以下の物性を有する白色固体0.73g(収率60%)が得られた。
【0279】
【表10】

【0280】
−c)2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートの製造
この化合物を、2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートの製造について上記したように、ジオキサン(10mL)中で、トリフェニルホスフィン(67.1mg;0.26mmol;1.1当量)と二硫化炭素(0.15mL;2.33mmol;10当量)で処理することにより、2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルアジド(0.32g;0.23mmol)のイソチオシアノ化により得た。このようにして、以下の物性を有する白色固体0.26g(収率80%)が得られた。
【0281】
【表11】

【0282】
2.化合物No.5の製造
この化合物を、化合物No.4の製造について上記したように、pH8〜9(固体の炭酸水素ナトリウム)で、水−アセトン(1:2、3mL)中で、化合物No.1(20mg、11.1μmol)と、2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナート(160mg、115μmol、1.5当量)とを縮合し、続いて脱アセチル化することにより得た。凍結乾燥後、以下の物性を有する化合物No.5が得られた(56mg、68%)。
【0283】
【表12】

【0284】
実施例6:ヘプタキス[6−S−[2−N’−[2−[5−(1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2,2−ビス[5−(1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチル]チオウレイド]エチル−6−チオ]シクロマルトヘプタオース(化合物No.6)の製造
この化合物は、すべてのR1が同一であって、CH2−C[(CH2OCH2CH2CH222(CH2OCH2CH2CH23)]を表し、Xが水素原子を表し、R2およびR3がそれぞれ式(VI)および(III)に対応する、n=1でm=6の上記の式(V)に相当する。
【0285】
この化合物を、化合物No.1(実施例1参照)と、2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートとの縮合、続いてアセチル保護基のアルカリ加水分解で得た。
【0286】
1.2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートの製造
この化合物を、以下の工程を行うことにより製造した。
【0287】
−a)2−(2−オキサペンタ−4−エニル)−2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エタノールの製造
アルゴン下、気体を含まない無水メタノール(15mL)中のトリ−O−アリルペンタエリスリトール(0.20g;0.78mmol)と2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノース(0.85g;2.34mmol;1当量)の溶液に、周囲温度で6時間、紫外光(250nm)を照射した。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチル−石油エーテル(3:2)でのシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。このようにして、以下の物性を有する白色固体0.58g(収率76%)が得られた。
【0288】
【表13】

【0289】
−b)2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エタノールの製造
アルゴン下、気体を含まない無水メタノール(35mL)中の2−(2−オキサペンタ−4−エニル)−2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エタノール(0.53g;0.54mmol)と2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノース(0.29g;0.81mmol;1.5当量)の溶液に、周囲温度で6時間、紫外光(250nm)を照射した。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチル−石油エーテル(3:1)でのシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。このようにして、以下の物性を有する白色固体0.55g(収率76%)が得られた。
【0290】
【表14】

【0291】
−c)2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルアジドの製造
この化合物を、2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルアジドの製造について上記したように、無水トリフルオロメタンスルホン酸との反応とそれに続くアジ化ナトリウムでの処理により、2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エタノール(0.43g;0.32mmol)より得た。このようにして、以下の物性を有する白色固体0.33g(収率75%)が得られた。
【0292】
【表15】

【0293】
−d)2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートの製造
この化合物を、2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートの製造について上記したように、ジオキサン(8mL)中で、トリフェニルホスフィン(52mg;0.20mmol;1.1当量)と二硫化炭素(0.11mL;1.80mmol;10当量)で処理することにより、2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルアジド(0.25g;0.18mmol)のイソチオシアノ化により得た。このようにして、以下の物性を有する白色固体0.20g(収率80%)が得られた。
【0294】
【表16】

【0295】
2.化合物No.6の製造
この化合物を、化合物No.4の製造について上記したように、pH8〜9(固体の炭酸水素ナトリウム)で、水−アセトン(1:2、3mL)中で、化合物No.1(20mg、11.1μmol)と、2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナート(160mg、115μmol、1.5当量)とを縮合し、続いて脱アセチル化することにより得た。凍結乾燥後、以下の物性を有する化合物No.6が得られた(48mg、60%)。
【0296】
【表17】

【0297】
実施例7:ヘプタキス[6−S−[2−N’−[2,2−ビス[5−(1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2−[5−(1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチル]チオウレイド]エチルチオ]シクロマルトヘプタオース(化合物No.7)の製造
この化合物は、すべてのR1が同一であって、CH2−C[(CH2OCH2CH2CH222(CH2OCH2CH2CH23)]を表し、Xが水素原子を表し、R2およびR3がそれぞれ式(III)および(VI)に対応する、n=1でm=6の上記の式(V)に相当する。
【0298】
この化合物は、化合物No.1(実施例1参照)と、2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートとの縮合、続いてアセチル保護基のアルカリ加水分解で得られる。
【0299】
1.2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートの製造
この化合物を、以下の工程を行うことにより製造した。
【0300】
−a)2−(2−オキサペンタ−4−エニル)−2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エタノールの製造
アルゴン下、気体を含まない無水メタノール(15mL)中のトリ−O−アリルペンタエリスリトール(0.20g;0.78mmol)と2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノース(0.85g;2.34mmol;1当量)の溶液に、周囲温度で6時間、紫外光(250nm)を照射した。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチル−石油エーテル(1:1)でのシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。このようにして、以下の物性を有する白色固体0.55g(収率72%)が得られた。
【0301】
【表18】

【0302】
−b)2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エタノールの製造
アルゴン下、気体を含まない無水メタノール(25mL)中の2−(2−オキサペンタ−4−エニル)−2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エタノール(0.49g;0.49mmol)と2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノース(0.27g;0.66mmol;1.5当量)の溶液に、周囲温度で6時間、紫外光(250nm)を照射した。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチル−石油エーテル(3:1)でのシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。このようにして、以下の物性を有する白色固体0.42g(収率64%)が得られた。
【0303】
【表19】

【0304】
−c)2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルアジドの製造
この化合物を、2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルアジドの製造について上記したように、無水トリフルオロメタンスルホン酸との反応とそれに続くアジ化ナトリウムでの処理により、2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エタノール(0.688g;0.51mmol)より得た。このようにして、以下の物性を有する白色固体0.554g(収率79%)が得られた。
【0305】
【表20】

【0306】
−d)2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートの製造
この化合物を、2,2,2−トリス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナートの製造について上記したように、ジオキサン(5mL)中で、トリフェニルホスフィン(28mg;0.10mmol;1.1当量)と二硫化炭素(60μL;0.95mmol;10当量)で処理することにより、2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルアジド(131mg;0.095mmol)のイソチオシアノ化により得た。このようにして、以下の物性を有する白色固体95mg(収率72%)が得られた。
【0307】
【表21】

【0308】
2.化合物No.7の製造
この化合物を、化合物No.4の製造について上記したように、pH8〜9(固体の炭酸水素ナトリウム)で、水−アセトン(1:2、3mL)中の化合物No.1(20mg、11.1μmol)と、2,2−ビス[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]−2−[5−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシル)−2−オキサペンチル]エチルイソチオシアナート(160mg、115μmol、1.5当量)とを、水−アセトン(1:2、3mL)中で縮合し、続いて脱アセチル化することにより得た。凍結乾燥後、以下の物性を有する化合物No.7が得られた(40mg、52%)。
【0309】
【表22】

【0310】
実施例8:コンカナバリンA(ConA)マンノースに特異的なレクチンに対するチオウレイドシステアミニル−シクロデキストリン化合物No.2〜7の親和性の評価
コンカナバリンA(ConA)マンノースに特異的なレクチンに対する化合物No.2〜7の親和性を、ELLAプロトコルに従って評価した。このようにして、マイクロタイタープレートの細胞に固定された参照リガンド(この場合は酵母マンナン)とのConAの会合を50%阻害するのに要する化合物No.2〜7の濃度(IC50)を得た。IC50値は、それぞれの親和性に逆比例した。
【0311】
マイクロタイタープレート(Nunc-Inmuno(登録商標)plates, MaxiSorp(登録商標))の細胞に、周囲温度で一晩、リン酸緩衝生理食塩溶液(Ca2+0.1mMおよびMn2+0.1mMを含有するPBS;pH7.3)中の酵母マンナン(Sigma、10μg・mL-1)の原液100μLを入れた。細胞を、0.05%(v/v)のTween20(PBST)を含有する緩衝液で洗浄した(3x300μL)。この洗浄プロトコルを、試験の間、各インキュベーションの後に繰り返した。次いで、PBS(150μL/細胞)中のウシ血清アルブミン溶液(BSA、1%)を細胞に加え、続いて、37℃で1時間インキュベーションし、次いで、洗浄した。
【0312】
阻害の研究に対する最適のレクチン濃度を決定するために、PBS中の10-1〜10-5mg・mL-1のワサビ過酸化酵素で標識した一連のコンカナバリンA溶液100μLを、マンナンを入れた細胞に加え、上記のように処理した。37℃で1時間インキュベーションしたのち、プレートを洗浄(PBST)し、クエン酸緩衝液(0.2M、0.015%過酸化水素でのpH4.0)中の2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン)酸(ABTS、4mL中1mg)のジアンモニウム塩の溶液(50μL)を加えた。反応を、50μL/細胞の1M硫酸を加えることにより20分後に停止し、ELISAリーダーを用いて、吸光度を測定した。対照細胞は、クエン酸−リン酸緩衝液を含んでいた。0.8〜1.0(典型的には10-2〜10-3mg/mL-1の間)の吸光度値を与える、過酸化酵素で標識したレクチンの濃度を、阻害試験に使用した。
【0313】
阻害試験に対して、化合物No.2〜7の原液を、PBS中5〜7mg/mL-1の濃度で使用した。一連の実験において、上記のように(60μL/細胞)適当な濃度のワサビ過酸化酵素で標識したConAを、Nunclon(商標)(Delta)マイクロタイタープレート中で、連続的に2倍に希釈したPBS中の各化合物(60μL/細胞)の溶液に加え、37℃で1時間インキュベートした。次いで、溶液(100μL/細胞)を、マンナンを入れたマイクロタイタープレート上に移し、上記のように処理し、その後、37℃で1時間インキュベートした。細胞を洗浄(PBST)し、ABTS溶液(50μL/細胞)を加えた。20分後、反応を停止(硫酸)し、吸光度を測定した。阻害パーセントを式:
【0314】
【数1】

【0315】
で算出した。
【0316】
下記の表1に、一価の参照リガンドとして使用した、メチル−α−D−グルコピラノシドの対応する値と比較して、化合物No.2〜7のIC50値を示す(3回の独立した実験の平均)。レクチンについて、親和性のかなりの増大が、マンノピラノシル置換基を含む高度に分岐した誘導体の場合に観察された。
【0317】
【表23】

【0318】
図1は、マンノシルリガンドの濃度を関数とする、チオウレイドシステアミニル−シクロデキストリン型の化合物No.2、No.3、No.4、No.6およびNo.7ならびに文献ChemBioChem 2001に記載の7価誘導体であるチオウレイド−シクロデキストリン型のヘプタキス(6−デオキシ−6−α−D−マンノピラノシルチオウレイド)シクロマルトヘプタオースによる、ConAレクチンと酵母マンナンとの間の会合の阻害における変化を表す。化合物No.2に対する曲線とペル−(C−6)アミンの誘導体に対するものとを比較すると、システアミニルスペーサーの導入の結果として、レシチンに対する親和性の顕著な増大が示された。親和性におけるより大きな増大は、さらに、マンノピラノシルリガンドが高度に分岐した型の構造に組み入れられた場合に、観察された(化合物No.3、No.4、No.6およびNo.7の曲線参照)。
【0319】
このように、カンカナバリンAとマイクロプレートに固定された酵母マンナンとの間の会合を50%阻害するのに必要な化合物No.2の濃度(IC50)は、175μMであり、一方、チオウレイド−シクロデキストリン型の7価誘導体であるヘプタキス(6−デオキシ−6−α−D−マンノピラノシルチオウレイド)シクロマルトヘプタオースに対しては、同じ濃度での阻害は、先の値の8%に過ぎなかった。認識現象の有効性はまた、高度に分岐したチオウレイドシステアミニル−シクロデキストリンについて非常に高かった。そこで、化合物No.3、No.4、No.6およびNo.7についてのIC50値は、5〜21μM、すなわち、化合物NO.2について見出された値よりも、1〜2オーダー低い値であった。同時に、シクロデキストリン上にある糖質標識と特定のレシチンとの間の認識における選択性は、損なわれずに残っていた。そこで、β−D−グルコピラノシル置換基のみを含む化合物No.6は、α−D−マンノピラノシルリガンドに特異的なレクチンである、ConAによっては認識されなかった。シクロデキストリンの存在によって引き起こされる非特異的認識現象は観察されなかった。
【0320】
実施例9:ヘプタキス[6−S−(2−アミノエチル−6−チオ)]シクロマルトヘプタオース・7塩酸塩(化合物No.1)中でのタキソテールの包接
純粋な状態のタキソテールを原料として、この製品2.1mg(2.47mmol)を、滅菌水中の50mmol・L-1の化合物No.1を含有する溶液1mL中に懸濁し、次いで、得られた懸濁液を、タキソテールの複合体化を示す透明な溶液が得られるまで、70℃で攪拌した。一旦形成されると、複合体は、周囲温度で溶液のままであった。このように、タキソテールの溶解性の増大(2.1g・L-1)が、シクロデキストリンの不存在下でのタキソテールの溶解性(0.004g・L-1)の525倍のオーダーで得られた。
【0321】
実施例10:ヘプタキス[6−S−[2−N’−[2,2,2−トリス[5−(1−チオ−α−D−マンノピラノシル)−2−オキサペンチル]エチル]チオウレイド]エチル−6−チオ]シクロマルトヘプタオース(化合物No.4)中でのタキソテールの包接
純粋な状態のタキソテールを原料として、この製品0.2mg(235μmol)を、滅菌水中の50mmol・L-1の化合物No.4を含有する溶液0.1mL中に懸濁し、次いで、得られた懸濁液を、タキソテールの封入を示す透明な溶液が得られるまで、70℃で攪拌した。一旦形成されると、複合体は、周囲温度で溶液のままであった。このように、タキソテールの溶解性の増大(2.0g・L-1)が、シクロデキストリンの不存在下でのタキソテールの溶解性の500倍のオーダーで得られた。
【図面の簡単な説明】
【0322】
【図1】図1は、マンノシルリガンドの濃度を関数とする、チオウレイドシステアミニル−シクロデキストリン型の化合物No.2、No.3、No.4、No.6およびNo.7ならびにヘプタキス(6−デオキシ−6−α−D−マンノピラノシルチオウレイド)シクロマルトヘプタオースによる、ConAレクチンと酵母マンナンとの間の会合の阻害における変化を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(VII):
【化1】


(mは、5、6または7に等しい整数を表し、
Wは、OH基またはY基であり、W基はすべて同一であり、
かつYは、塩素、臭素、ヨウ素で構成される群から選択されるハロゲン原子を表し、好ましくは臭素またはヨウ素である)
の、一級アルコール位で選択的にまたは全体的にハロゲン化された化合物と、
下記式(VIII):
【化2】


のω−アミノアルカンチオール(そのω−アミノアルカンチオールは、場合によりN−アルキル化されている)、または、下記式(VIII−a):
【化3】


の対応する塩、または下記式(VIII−b):
【化4】


のテトラアルキルアンモニウム塩(その塩は、ハロゲン化物対イオン、好ましくは塩化物イオンを伴っている)
(nは、1〜6の整数を表し、
Xは、水素原子または1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を表し、特に、メチル、エチル、プロピルまたはブチル基であり、Xは、好ましくは水素原子であり、
式(VIII)の化合物は、好ましくは式:H2N−CH2−CH2−SHのシステアミンである)
との反応工程を含む方法の使用であって、
下記式(A−a)または(A−b):
【化5】


(R1は、OH基または−S−CH2−(CH2n−Z基のいずれかを表し、R1基は、すべて同一であり、
Zは、NHX基または+NX3型の四級アンモニウム基を表し、
m、nおよびXは、上記のとおりである)
を有する化合物を得るためであって、
下記式(I):
【化6】


[式中、
−m、nおよびR1は、上記のとおりであり、かつ
−Zは、
*NHX基、
+NX3型の四級アンモニウム基
*基
【化7】


(Xは、上記のとおりであり、
Rは、水素原子、1〜12個の炭素原子を持つ直鎖状もしくは分枝状アルキル置換基、またはフェニル、ベンジルもしくはナフチル基等の芳香族基、あるいは芳香環上に置換基、例えばメチル、エチル、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、ヒドロキシル、メトキシルもしくはアセトアミド置換基を有するこれらの基の誘導体を表すか、
あるいはRは、生体認識要素、例えばアミノ酸誘導体、ペプチド、単糖、オリゴ糖、同一もしくは異なり得る、糖質基を含むいくつかの分岐を持つ多重化要素、あるいは可視化プローブまたは蛍光性もしくは放射性検出プローブを表す)のいずれかを表す]
の化合物を製造するための、方法の使用。
【請求項2】
式(I):
【化8】


[式中、
−nは、1〜6の整数を表し;
−mは、5、6または7に等しい整数を表し、
−R1は、OH基または−S−CH2−(CH2n−Z基のいずれかを表し、R1基は、すべて同一であり、
−Zは、
*NHX基、
+NX3型の四級アンモニウム基
*基
【化9】


(Xは、水素原子または1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を表し、特に、メチル、エチル、プロピルまたはブチル基であり、
Rは、水素原子、1〜12個の炭素原子を持つ直鎖状もしくは分枝状アルキル置換基、またはフェニル、ベンジルもしくはナフチル基等の芳香族基、あるいは芳香環上に置換基、例えばメチル、エチル、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、ヒドロキシル、メトキシルもしくはアセトアミド置換基を有するこれらの基の誘導体を表すか、
あるいはRは、生体認識要素、例えばアミノ酸誘導体、ペプチド、単糖、オリゴ糖、同一もしくは異なり得る糖質基を含むいくつかの分岐を持つ多重化要素、あるいは可視化プローブまたは蛍光性もしくは放射性検出プローブを表す)のいずれかを表す]
の化合物の製造方法であって、
その方法は、以下の工程:
−下記式(VII):
【化10】


(mは、上記のとおりであり、
Wは、OH基またはY基であり、W基は、すべて同一であり、
かつYは、塩素、臭素、ヨウ素で構成される群から選択されるハロゲン原子を表し、好ましくは臭素またはヨウ素である)
の、一級アルコール位で選択的にまたは全体的にハロゲン化された化合物と、
下記式(VIII):
【化11】


のω−アミノアルカンチオール(そのω−アミノアルカンチオールは、場合によりN−アルキル化されている)、または、下記式(VIII−a):
【化12】


の対応する塩、または下記式(VIII−b):
【化13】


のテトラアルキルアンモニウム塩(その塩は、ハロゲン化物対イオン、好ましくは塩化物イオンを伴っている)
(nおよびXは、上記のとおりであり、Xは、好ましくは水素原子であり、
式(VIII)の化合物は、好ましくは式:H2N−CH2−CH2−SHのシステアミンである)
との反応であって、
下記式(A−a)または(A−b):
【化14】


を有する上記の式(I)の化合物を得るための反応、
および場合により、
−上記の工程で得られた式(A−a)の化合物と、下記式(IX):
【化15】


(式中、Rは、上記のとおりである)
のイソチオシアナートとの反応であって、
下記式:
【化16】


に対応する上記の式(I)の化合物を得るための反応、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
下記一般式(I−b):
【化17】


を有する化合物の請求項2記載の製造方法であって、
その方法が、以下の工程:
−下記式(VII−a):
【化18】


(mおよびYは、請求項2に記載のとおりである)
の、ペル(6−デオキシ−6−ハロ)シクロデキストリン化合物と、
下記式(VIII):
【化19】


のω−アミノアルカンチオール(そのω−アミノアルカンチオールは、場合によりN−アルキル化されている)、または、下記式(VIII−a):
【化20】


の対応する塩、または下記式(VIII−b):
【化21】


のテトラアルキルアンモニウム塩(その塩は、ハロゲン化物対イオン、好ましくは塩化物イオンを伴っている)
(nおよびXは、請求項2に記載のとおりであり、Xは好ましくは水素原子であり、
式(VIII)の化合物は、好ましくは式:H2N−CH2−CH2−SHのシステアミンである)
との反応であって、
下記式(I−c)、(I−d)または(I−e):
【化22】


の化合物を得るための反応、
および場合により、
−上記の工程で得られた式(I−c)の化合物と、下記式(IX):
【化23】


(式中、Rは、請求項2のとおりである)
のイソチオシアナートとの反応であって、
下記式(II)または(II−a):
【化24】


の化合物を得るための反応、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項4】
下記式:
【化25】


を有する化合物の請求項2記載の製造方法であって、
その方法は、以下の工程:
−下記式(VII):
【化26】


(mおよびYは、請求項2に記載のとおりである)
の、一級アルコール位で選択的にハロゲン化された化合物と、
下記式(VIII):
【化27】


のω−アミノアルカンチオール(そのω−アミノアルカンチオールは、場合によりN−アルキル化されている)、または、下記式(VIII−a):
【化28】


の対応する塩、または下記式(VIII−b):
【化29】


のテトラアルキルアンモニウム塩(その塩は、対イオンとしてのハロゲン化物、好ましくは塩化物イオンを伴っている)
(nおよびXは、請求項2に記載のとおりであり、Xは、好ましくは水素原子であり、
式(VIII)の化合物は、好ましくは式:H2N−CH2−CH2−SHのシステアミンである)
との反応であって、
下記式:
【化30】


(式中、m、nおよびXは、請求項2に記載のとおりである)
の、式(I−f)または(I−g)の化合物を得るための反応、
および場合により、
−上記の工程で得られた式(I−f)の化合物と、下記式(IX):
【化31】


(式中、Rは、請求項2に記載のとおりである)
のイソチオシアナートとの反応であって、
下記式(I−h):
【化32】


の化合物を得るための反応、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項5】
下記式(I−f−bis):
【化33】


(式中、mおよびnは、請求項2に記載のとおりであり、nは、好ましくは1に等しい)
の化合物の製造方法であって、
その方法は、下記式(VII):
【化34】


(mは、上記のとおりであり、
Yは、塩素、臭素、ヨウ素で構成される群から選択されるハロゲン原子を表し、好ましくは臭素またはヨウ素である)
の、一級アルコール位で選択的にハロゲン化された化合物と、
下記式:
【化35】


(nは、上記のとおりである)
のω−アミノアルカンチオールまたは好ましくは式:H2N−CH2−CH2−SHのシステアミン
との反応を含むことを特徴とする、方法。
【請求項6】
下記一般式(I):
【化36】


[式中、
−nは、1〜6の整数を表し;
−mは、5、6または7に等しい整数を表し、
−R1は、OH基または−S−CH2−(CH2n−Z基のいずれかを表し、R1基は、すべて同一であり、
−Zは、
*NHX基、
+NX3型の四級アンモニウム基
*基
【化37】


(Xは、水素原子または1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を表し、特に、メチル、エチル、プロピルまたはブチル基であり、
Rは、水素原子、1〜12個の炭素原子を持つ直鎖状もしくは分枝状アルキル置換基、またはフェニル、ベンジルもしくはナフチル基等の芳香族基、あるいは芳香環上に置換基、例えばメチル、エチル、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、ヒドロキシル、メトキシルもしくはアセトアミド置換基を有するこれらの基の誘導体を表すか、
あるいはRは、生体認識要素、例えばアミノ酸誘導体、ペプチド、単糖、オリゴ糖、同一もしくは異なり得る糖質基を含むいくつかの分岐を持つ多重化要素、あるいは可視化プローブまたは蛍光性もしくは放射性検出プローブを表す)のいずれかを表す]
の化合物(ただし、n=1、m=6、Z=NH2およびR1=OHである化合物を除く)。
【請求項7】
1が、OHを表し、かつ下記一般式:
【化38】


(式中、
−m、nおよびZは、請求項6に記載のとおりである)
を有することを特徴とする、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
式(I−a)を有し、かつ、Zが、NHX基を表し、Xが、請求項6に記載のとおりであって、特に水素原子であることを特徴とする、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
式(I−a)を有し、かつ、Zが、基:
【化39】


を表し、Rが、請求項6に記載のとおりであり、Xが、請求項6に記載のとおりであって、特に水素原子であることを特徴とする、請求項7記載の化合物。
【請求項10】
1が、−S−CH2−(CH2n−Z基を表すことを特徴とし、かつ、下記一般式:
【化40】


(式中、m、nおよびZは、請求項6に記載のとおりである)
を有する、請求項6記載の化合物。
【請求項11】
下記式:
【化41】


(式中、X、nおよびmは、請求項6に記載のとおりである)
を有する、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
Xが、水素原子を表し、かつnが1に等しいことを特徴とし、また、下記式:
【化42】


(mは、請求項6に記載のとおりである)
を有する、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
下記式:
【化43】


(X、nおよびmは、請求項6に記載のとおりである)
に対応する、請求項11記載の化合物。
【請求項14】
下記式:
【化44】


(X、n、mおよびRは、請求項6に記載のとおりであり、Rは、請求項6に記載のとおりの各々基:
【化45】


と同一である)
に対応する、請求項11の化合物。
【請求項15】
Xが、水素原子を表しかつnが1に等しいことを特徴とし、また、下記式:
【化46】


(Rおよびmは、請求項6に記載のとおりである)
を有する、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
上記のNHX基の少なくとも一つがプロトン化され、かつ、特に、塩素、臭素またはヨウ素イオンから選択された一価のアニオンを伴うものであることを特徴とする、請求項6〜15のいずれか一項記載の化合物。
【請求項17】
nが、1に等しいこと、Z基が、四級アンモニウム+NX3基を表すこと、および特に、塩素、臭素またはヨウ素イオンから選択された一価のアニオンを伴うものであることを特徴とし、下記式:
【化47】


を有する、請求項11記載の化合物。
【請求項18】
R基が、以下の基:
−下記式(III):
【化48】


の、α−D−マンノピラノシル基、
−下記式(III−a):
【化49】


の、β−ラクトシル基、
−それぞれ、下記式(III−b)および(III−c):
【化50】


の、ルイスX三糖またはシアリルルイスX四糖由来の基、
−下記式(III−d):
【化51】


の、ヘパリン由来のオリゴ糖
から選択されることを特徴とする、請求項15記載の化合物。
【請求項19】
Rが、トリス(2−ヒドロキシメチル)メチルアミン由来の分岐要素を含むか、または
Rが、以下の基:
−下記式(IV):
【化52】


の、トリス(α−D−マンノピラノシルオキシメチル)メチル基、
−下記式(IV−a):
【化53】


の、トリス(β−ラクトシルオキシメチル)メチル基、
の一つを表す、
ことを特徴とする、請求項15記載の化合物。
【請求項20】
Rが、ペンタエリスリトール由来の分岐要素を含むことを特徴とし、その化合物が下記式:
【化54】


(式中、m、n、R1およびXは、請求項6に記載のとおりであり、かつ
2およびR3は、同一もしくは異なり得る糖質誘導体、または蛍光性もしくは放射性検出プローブを表す)
を有する、請求項9記載の化合物。
【請求項21】
1が、OHを表すことを特徴とする、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
1が、式:
【化55】


の基を表すことを特徴とする、請求項20記載の化合物。
【請求項23】
nが、1に等しいこと、Xが、水素原子を表すこと、およびR2およびR3が、以下の基:
−請求項17に記載の、式(III)の、α−D−マンノピラノシル基、
−請求項18に記載の、式(III−a)の、β−ラクトシル基、または
−下記式(VI):
【化56】


の、β−D−グルコピラノシル基、
の一つを表し、R2およびR3が、同一または異なることを特徴とする、請求項20〜22のいずれか一項記載の化合物。
【請求項24】
mが、6に等しいことを特徴とする、請求項6〜23のいずれか一項記載の化合物。
【請求項25】
請求項6〜24のいずれか一項記載の化合物と、薬理学的に活性な分子との包接複合体であって、請求項6〜24のいずれか一項記載の化合物と薬理学的に活性な分子とのモル比が、有利には、約50:1〜約1:1である包接複合体。
【請求項26】
薬理学的に活性な分子が、抗腫瘍剤、特にタキソール族に属するものであることを特徴とする、請求項25記載の複合体。
【請求項27】
請求項6〜24のいずれか一項記載の化合物または請求項25もしくは26に記載の包接複合体を、薬理学的に許容しうるビヒクルと共に含む、医薬組成物。
【請求項28】
水溶液の形態である、請求項27記載の医薬組成物。
【請求項29】
単回投与量あたり、約50mg〜約500mgの請求項6〜24のいずれか一項記載の化合物の一つを含むこと、または、単回投与量あたり、約100mg〜約750mgの請求項25もしくは26の一項記載の複合体の一つを含むことを特徴とする、請求項27または28のいずれか一項記載の医薬組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2006−521440(P2006−521440A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505741(P2006−505741)
【出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000691
【国際公開番号】WO2004/087768
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【出願人】(505364038)ユニヴェルシテ・ジョセフ・フーリエ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE JOSEPH FOURIER
【出願人】(505363606)コンセイロ・スペリオル・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス(セエセイセ) (1)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS(CSIC)
【出願人】(505363617)ウニベルシダ・デ・セビーリャ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDAD DE SEVILLA
【Fターム(参考)】