説明

新規なジベンゾイルメタン系化合物、光活性化性太陽光線遮断剤としての使用及びこの化合物を含有する化粧料組成物

本発明は、式 I:


のジベンゾイルメタン系化合物及びその塩及びその溶媒和物及びこれを製造する方法に関する。本発明は、更に、式Iの化合物の、皮膚及び髪をUV線から保護するための薬剤としての使用及び式Iの化合物を活性成分として含有することを特徴とする化粧料及び/又は皮膚科用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線を吸収する良好な能力を有する化合物であって、光線の励起下でこの能力の幾らかを獲得する、また、その吸収性が光安定性である化合物に関する。本発明は、更に、これらの化合物の、化粧料製剤におけるUVA遮断剤としての使用及びかかる化合物を含有する化粧料用及び/又は皮膚科用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽は地球表面に到達する光線の組合せ:紫外線、可視光線及び赤外線を放出する。一般的には、輻射線(radiation)はその波長とそのエネルギーによって特徴ずけられ、これらの2つの大きさは反比例する。例えば、短波長は高いエネルギーを伴なっている。本発明との関係において、紫外線は、関係する太陽スペクトルの一部である。この輻射線は、全体として、地球表面で受け取られる全エネルギーの5%を越えないが、生物に与える衝撃(impact)は非常に大きい。この衝撃の中で最も一般的に知られているものは日光皮膚炎(sunburn)であり、最も望ましい衝撃は日焼け(suntan)である。
【0003】
紫外線は3種の主要な分野:UVA、UVB及びUVCに分割される。
【0004】
UVC光線は190〜290nmの波長を有する輻射線である。この光線は高いエネルギーを有しており、従って、生物分子を損傷する高い力を有している。更に、UVC光線は病院では殺菌剤として使用されている。UVCは、原則的に、大気によって停止される。
【0005】
290〜320nmの波長を有するUVB光線は地球表面に到達するUV光線の2%を占める。この光線は部分的に皮膚に進入し、10〜20%だけが真皮に到達する。UVB光線は、従来、太陽紅班(solar erythema)の原因とされているが、特に、遺伝子レベルでより重大な損傷も誘発する。UVB光線は、この点において発癌性の原因となっている。
【0006】
UVA光線は地球の表面上で受け取られるUV光線の98%を占める。UVA光線はUVB光線よりエネルギーが低く、320〜400nmの波長を有する。400nm以上は可視光線が開始する領域である。UVA光線はUVB光線より深く皮膚中に進入する。例えば、20〜30%が中間真皮に到達する。
【0007】
UVA光線は色素(pigment)の形成を誘発し、日焼け(tanning)の原因となっている。長い期間、UVA光線は皮膚の加速老化(accelerated aging)の原因とされていたが、その発癌性が認識されたのは、過去10年来に過ぎない。最初の太陽光線遮断剤(sunscreen)の発生においては、UVA遮断剤は含まれておらず、UVB遮断剤しか含まれていなかったことに注目すべきである。
【0008】
UVA遮断剤の導入は、動物(魚及びマウス)の皮膚癌を誘発するUVA光線の能力を示す科学文献の刊行後に重要なものとなった。特に、無毛マウスにおける鱗ガン(squamous carcinoma)(SCC)及び基細胞癌(basocellular carcinoma)(BCC)の誘発についての作用の範囲(Gruiji F.R.,Sterenborg H.,Forbes P.D.et al.Cancer Res.1993:53-60)は、UVB範囲での310nmの領域及びUVA範囲での360nmの領域における波長について最大の効力を示す。この第2の最大値は、その効力が第1のものの10000倍低い。上記文献に記載の値はSCC又はBCC型の病変を誘発する所与の波長の光子の可能性を示している。従って、太陽輻射線中の光子の各々の割合(UVA光線は輻射線の98%を占め、UVB光線は輻射線の2%を占める)を考慮に入れた補正を行わなければならない。かくして、補正後、マウスにおけるBCC癌及びSCC癌の誘発おいては、UVA光線はUVB光線より100倍しか効力が低くないことが認められた。かかる値は、実際に、UVA光線に対する保護を小さい水準で導入するのに値する。
【0009】
かくして、過去の10年来、UVA光線からの保護に特別な注意が払われている。
【0010】
現在では、UVA光線からの保護を提供するための化粧料においては、少数の分子しか入手できずかつ許可されていない。最も一般的に使用されている化合物は、勿論、パルソル(Parsol)1789、即ち、4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン[CAS:70356-09-1]である。この分子はUVAの範囲で高い分子吸光係数(molar extinction coefficient)を有しており、約340nmで最大吸収効率を有する。しかしながら、その光安定性が論議の的となっている。特に、この分子は照射下で分解し、安息香酸誘導体を生じる。この分解は太陽光線防止化粧料(antisun cosmetic preparation)においても生起し、これによって、時間と共に、即ち、個体が露光されている間に、その活性が失われる。この分解は投与量依存性(dose-dependent)であることに留意すべきである。即ち、光線保護についての負の衝撃は曝露期間に依存する。それは2時間の曝露より、4時間の曝露の方が大きいであろう。しかしながら、長期間については、無意識の払拭(wiping-off)、砂上での摩擦(rubbing-off)及び連続的入浴(bathing)も、恐らく大きな程度で、保護の保全性(integrity)を阻害する。かくして、パルソル1789の光分解を防止しかつこれを含有する製剤を光安定化する手段を発見するために研究が行われている。
【0011】
2つのアプローチが考えられえる:
第1のアプローチ−これは既に広く開発されている−は、種々の、未だ解明されていないメカニズムによってパルソル1789を安定化し得る分子を製剤に添加することからなる
(例えば、種々の特許が挙げられる;FR 2 768 730 A1、FR 2 747 038 A1、FR 2 750 335 A1、WO 02/49598 A2、US 6 444 195 B1等)。
【0012】
第2のアプローチ−これはまだ余り研究されていない−は、分子それ自体の化学的変性である。この変性では、分子がそのUV-吸収特性を保持しているが、その光分解に対する傾向を制限するものであることが要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明は、UV線を吸収する良好な能力を有する新規なジベンゾイルメタン誘導体−これらの能力は光安定性であり、一部、光活性化性である−即ち、その吸収力が、上記ジベンゾイルメタン誘導体をUVに曝露したときにのみ、全体として出現する誘導体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、式 I:

[式中、R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4及びR'4は、同一であるか又は異なるものであることができ、かつ、各々、
−水素原子、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルケニル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキニル基、
−C1〜C4アルコキシ基、
−ハロゲン原子、
−ヒドロキシル基、
−アミノ基、
−ニトロ基、
−アミド基、又は
式-CO-Yのカルボニル基を表し、Yは基 -OH、-OR又は-SR(RはC1〜C4アルキル基を表す)又はハロゲン原子を表す;
R5及びR'5は、異なるものであり、かつ、各々、
−水素原子、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルケニル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキニル基、
−5〜20個の炭素原子を含有する、線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖、
−端部が官能化された、5〜20個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖、又は、
−アミン又はアミド官能性基の窒素原子及び/又はエーテル又はカルボキシル官能性基の酸素原子を含有する、5〜20個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖を表す]で表されるジベンゾイルメタン系化合物及びその塩及び溶媒和物に関する。
【0015】
特に、本発明は、R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4及びR'4が、各々、水素原子を表す、前記で定義したごときジベンゾイルメタン誘導体に関する。
【0016】
本発明は、また、R5及びR'5は、異なるものであり、かつ、各々、
−水素原子、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキル基、又は
−5〜20個の炭素原子を含有する、線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖
を表す、前記で定義したジベンゾイルメタン誘導体に関する。
【0017】
本発明は、また、R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4及びR'4は、各々、水素原子を表し、
R5及びR'5は、異なるものであり、かつ、各々、
−水素原子、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキル基、又は
−5〜20個の炭素原子を含有する、線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖
を表す、前記で定義したジベンゾイルメタン誘導体に関する。
【0018】
本発明は、また、式 I:

[式中、R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4及びR'4は、同一であるか又は異なるものであることができ、かつ、各々、
−水素原子、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルケニル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキニル基、
−C1〜C4アルコキシ基、
−ハロゲン原子、
−ヒドロキシル基、
−アミノ基、
−ニトロ基、
−アミド基、又は
式-CO-Yのカルボニル基を表し、Yは基 -OH、-OR又は-SR(RはC1〜C4アルキル基を表す)又はハロゲン原子を表す;
R5及びR'5は、同一であるか又は異なるものであり、かつ、各々、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルケニル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキニル基、
−5〜20個の炭素原子を含有する、線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖、
−端部が官能化された、5〜20個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖、又は、
−アミン又はアミド官能性基の窒素原子及び/又はエーテル又はカルボキシル官能性基の酸素原子を含有する5〜20個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖を表す]で表されるジベンゾイルメタン系化合物及びその塩及び溶媒和物に関する。
【0019】
本発明は、特に、R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4及びR'4が、各々、水素原子を表す、前記で定義したごときジベンゾイルメタン誘導体に関する。
【0020】
本発明は、また、R5及びR'5が、同一であるか又は異なるものであり、かつ、各々、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキル基、又は
−5〜20個の炭素原子を含有する、線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖
を表す、前記で定義したジベンゾイルメタン誘導体に関する。
【0021】
本発明は、また、R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4及びR'4は、各々、水素原子を表し、
R5及びR'5は、同一であるか、又は、異なるものであり、かつ、各々、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキル基、又は
−5〜20個の炭素原子を含有する、線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖
を表す、前記で定義したジベンゾイルメタン誘導体に関する。
【0022】
一般的には、これらのジベンゾイルメタン誘導体は、Marzinzik及びFelderによって記載されたプロトコール(Tetrahedron Letters,Vol.37,No.7,pp 1003-1006,1996)及びClark及びMillerによって記載されたプロトコール(J.C.S.Perkin 1,pp 1743-1745,1977)に類似するプロトコールに従って、場合により置換されたジベンゾイルメタンからアルキル化反応によって得ることができる。
【0023】
この方法は2つの連続的工程からなる;第1の工程ではジベンゾイルメタン/アルキルアンモニウム ハライド、例えばテトラブチルアンモニウム ハライド錯体を調製しついで実際のアルキル化を行う。
【0024】
使用されるアルキルアンモニウム ハライドはアルキルアンモニウム フルオライド、クロライド、ブロマイド又はヨーダイド、好ましくは、テトラブチルアンモニウム フルオライドである。このテトラブチルアンモニウム ハライドは水溶液であるか又はテトラヒドロフラン(THF)中の溶液である。その結果、ジベンゾイルメタン/テトラブチルアンモニウム ハライド錯体の調製は水性媒体又は有機媒体、好ましくはTHF中で行われる。
【0025】
実際のアルキル化はテトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル又はクロロホルム、好ましくはTHF中で行われる。反応媒体を室温〜還流温度で、好ましくは還流温度で2〜24時間、好ましくは8時間攪拌する。
【0026】
アルキル化剤は、1〜20個、好ましくは10個の炭素原子を含有するアルキル ハライド、例えばフルオロアルカン、クロロアルカン、ブロモアルカン又はヨードアルカン、好ましくはブロモアルカンであり得る。
【0027】
原料の、場合により置換されているジベンゾイルメタン誘導体、即ち、R5及びR'5が、各々、水素原子を表す式(I)の化合物は、既知の合成方法、例えば、クライゼン縮合
(Organic Reactions,volume VIII,John Wiley and Sons,1954参照)、即ち、
一般式 AR-X及びAR'-Y(式中、AR及びAR'は、同一であるか又は異なるものであり、各々、場合によりモノ置換された又はポリ置換されたフェニル基を表し、X及びYは、異なるものであり、各々、メトキシカルボニル基又はアセチル基を表す)の化合物の縮合によって調製し得る。この縮合反応は強塩基の存在下、不活性溶剤中で行うことが有利である。
【0028】
本発明は、更に、
水性媒体又は有機媒体中で
a) R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4及びR'4が、各々、請求項1〜4のいずれか一つで定義した基を表し、R5及びR'5が同一であり、かつ、各々、水素原子を表す一般式(I)の分子と、
b) アルキルアンモニウム ハライド
との間で錯体を形成させる工程;及び
R5又はR'5によって表される水素の少なくとも一方を、有機媒体中で、一般式 R5X又は
R'5X (式中R5及びR'5は同一であるか又は異なるものであり、かつ、各々、前記で定義した基を表す)のハロゲン化物の少なくとも一つの作用により置換する工程;
からなることを特徴とする、前記で定義した式(I)の化合物の製造方法に関する。
【0029】
本発明は、特に、R5又はR'5によって表される水素の少なくとも一方の置換工程が、一般式 R5X又はR'5X (式中、R5及びR'5は、同一であるか又は異なるものであり、かつ、各々、1〜20個の炭素原子を含有する、線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖を表す)のアルキル化剤の少なくとも一つの作用によるアルキル化であることを特徴とする、前記で定義した方法に関する。
【0030】
かく得られるジベンゾイルメタン誘導体は前記した参照化合物、即ち、パルソル1789、即ち、4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタンと同様、共役系を有しており、従って、紫外線吸収能力を有する。
【0031】
これらの紫外線吸収能力を例示するために、2種の本発明のジベンゾイルメタン誘導体について測定を行った:
− R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4、R'4及びR'5が、各々、水素原子を表し、R5が10個の炭素原子を含有する飽和、線状非環式炭素鎖を表す式(I)の化合物については、最大吸収(アセトニトリル中の溶液)は263nmにおいて認められ、分子吸光係数は20000 I.cm-1.mol-1である。この化合物を以下においては化合物C10と称する;
【0032】
− R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4、R'4及びR5が、各々、水素原子を表し、R'5が10個の炭素原子を含有する飽和、線状非環式炭素鎖を表す式(I)の化合物については、最大吸収
(アセトニトリル中の溶液)は302nmにおいて認められ、分子吸光係数は17000 I.cm-1.mol-1である。この化合物を以下においては化合物O10と称する。
【0033】
化合物O10は強いソルバトクロミー(solvatochromy)を示し、それによって、組織化溶剤(organized solvent)(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムのミセル溶液)についてUVA領域における吸収最大を約360nmにせしめる。これは化合物C10の場合と同様である。更に、組織化媒体においては、これらの2つの化合物は、紫外線照射にかけた場合、その最大吸収波長がUVBからUVAにシフトし、この系の組織化と同一の効果を生じさせる。その結果、組織化媒体中のこれらの化合物を照射下に置くことにより、太陽光線遮断化粧料製剤をその通常の使用条件下に置いた場合のごとく、吸収バンドのUSAへの最大シフトが得られる。製剤の照射は、上記化合物が存在する媒体によって誘発される現象を増幅する。従って、その吸収力がこれらの分子を組織化溶媒中で紫外線に曝露したときのみ、全体的に出現する2種のスクリーニング分子が存在する。これらを含有する製剤の保護能力は、単一のUVスクリーニング剤としてパルソル1789を含有する製剤の場合のごとく、曝露中、減少するのではなしに、増大する。この曝露の出発時における吸収の増大は、最大水準の保護を長時間保持することを可能にする。更に、最大吸収に到達したとき、化合物C10及びO10は、太陽光線照射に関してパルソル1789より光安定性である:製剤の吸収はパルソル1789を含有する製剤について観察されるより非常にゆっくり減少する。
【0034】
本発明のジベンゾイルメタン誘導体は化粧料用及び/又は皮膚科用製剤において太陽光線遮断剤(sunscreen)として有利に使用し得る。
【0035】
従って、本発明は、更に、前記で定義したごとき、請求項1〜4に記載の式(I)の化合物又はその塩又は溶媒和物の少なくとも1種を活性成分として含有する化粧料用及び/又は皮膚科用組成物に関する。
【0036】
本発明は、また、他の活性成分も更に含有する前記で定義したごとき組成物に関する。
【0037】
本発明は、特に、他の活性成分がはパルソル 1789、2,4,6-トリス[p-(2'-エチルヘキシル-1'-オキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、4-(t-ブチル)-4'-メトキシジベンゾイルメタン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン及び3-(4'-メチルベンジリデン)カンファーからなる群から選ばれた遮断剤(screening agent)である、前記で定義したごとき組成物に関する。
【0038】
本発明は、特に、組成物の合計重量に基づいて、0.5〜30重量%、好ましくは、1〜10重量%の活性成分を含有している、本発明の組成物に関する。
【0039】
本発明の組成物は、特に、脂肪物質、有機溶剤、イオン性又は非イオン性増粘剤、軟化剤、酸化防止剤、不透明化剤、安定化剤、緩和剤、、シリコーン、消泡剤、加湿剤、ビタミン、香料、防腐剤、表面活性剤、充填剤、無機又は有機顔料、金属イオン封鎖剤、重合体、噴射剤、酸性化又は塩基性化剤、染料又は化粧料、特に、エマルジョンの形の太陽光線防止組成物中で通常使用されている他の成分から選ばれた標準的化粧料補助剤も含有し得る。
【0040】
本発明の組成物は、1種又はそれ以上の、追加の親水性又は脂肪親和性UVA活性又はUVB活性太陽光線遮断剤も含有し得る。
【0041】
本発明は、また、皮膚又は髪を紫外線照射から保護するための薬剤としての、本発明の式(I)の化合物又はその塩又は溶媒和物の使用に関する
本発明は、また、皮膚又は髪を紫外線照射から保護するための化粧料用及び/又は皮膚科用組成物を調製するための、本発明の式(I)の化合物又はその塩又は溶媒和物の使用に関する。
【0042】
本発明は、特に、光活性化(photoactivatable)太陽光線遮断剤としての、本発明の式
(I)の化合物又はその塩又は溶媒和物の使用に関する。
【0043】
本発明は、更に、皮膚又は髪を紫外線照射から保護するための化粧料用又は皮膚科用組成物であって、その作用が光活性化性及び/又は長期間性である組成物を調製するための、本発明の式(I)の化合物又はその塩又は溶媒和物の使用に関する。
【0044】
本発明は、更に、活性成分として本発明の式(I)の化合物又はその塩又は溶媒和物を含有している化粧料用又は皮膚科用製品に関する。
【0045】
以下に示す実施例により本発明の種々の態様を例示する。
【0046】
実施例:
R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4、及びR'4が、各々、水素原子を表し、R5及びR'5が異なるものであり、各々、
−水素原子又は
−10個の炭素原子を含有する飽和、線状非環式炭素鎖を表す、式(I)のジベンゾイルアミン誘導体の調製
【0047】
3-(4-tert-ブチルフェニル)-3-デカノキシ-1-(4-メトキシフェニル)プロプ-2-エン-1-オン(化合物O10)及び
3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-デカニル-1-(4-メトキシフェニル)プロパン-1,3-ジオン
(化合物C10)の調製
【0048】
実施例1:
1-(4-メトキシフェニル)-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパン-1,3-ジオン(パルソル
1789)[CAS:70356-09-1](1.60 x 10-3モル;0.50g)を、テトラヒドロフラン(THF)中の1M溶液としてのテトラブチルアンモニウム フルオライド(TBAF)(3.20 x 10-3モル;3 ml;2等量)中に溶解した。混合物を室温で3時間、磁気撹拌した。ついで、混合物に、アルキル化剤である1-ブロモデカン(C10H21Br)(3.20 x 10-3モル;0.71g;0.7 ml;2等量)を2mlの無水THFに溶解して添加した。反応媒体を磁気撹拌しながら26時間、室温に保持した。ろ過及び蒸発させて粘稠なオレンジ色残渣を得た。
【0049】
連続した開放カラムを準備して、過剰の薬剤(アルキル化剤、C10H21Br及びTBAF)を除去しかつ反応媒体中に存在する3種の分子:未反応出発原料分子、R5が10個の炭素原子を含有する飽和、線状、非環式炭素鎖であり、R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4、R'4及びR'5がHである分子及びR'5が10個の炭素原子を含有する飽和、線状、非環式炭素鎖であり、R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4、R'4及びR5がHである分子を分離した。
【0050】
分離すべき粗生成物 1.0−1.5gについて約40gのシリカ60ゲル(0.063-0.200mm)を使用して開放カラムを準備した;溶離液としてジクロロメタンを使用した。
【0051】
0.5gのパラソル1789から、0.15gの化合物C10及び0.10gの化合物O10が得られた(即ち、それぞれの収率21%及び14%)。
【0052】
実施例2:
1-(4-メトキシフェニル)-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパン-1,3-ジオン(パルソル
1789)[CAS:70356-09-1](16.11 x 10-3モル;5.00g)を、テトラブチルアンモニウム フルオライド(TBAF)の75重量%水溶液(24.60 x 10-3モル;9 ml;1.5等量)中に溶解した。ついで、混合物を回転蒸発器上で80℃で3時間、蒸発させて、粘稠な明黄色混合物を得た。反応媒体を40mlの無水THF中に溶解し、これにアルキル化剤である1-ブロモデカン
(C10H21Br)(33.0 x 10-3モル;7.46g;7ml;2等量)を添加した。反応媒体を8時間、磁気撹拌しながら還流させた。溶剤をろ過及び蒸発させて粘稠なオレンジ色残渣を得た。
【0053】
ついで、連続した開放カラムを準備して、過剰の薬剤(アルキル化剤、C10H21Br及びTBAF)を除去しかつ反応媒体中に存在する3種の分子:未反応出発原料分子、R5が10個の炭素原子を含有する飽和、線状、非環式炭素鎖であり、R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4、R'4及びR'5がHである分子及びR'5が10個の炭素原子を含有する飽和、線状、非環式炭素鎖であり、R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4、R'4及びR5がHである分子を分離した。
【0054】
前記と同様にして開放カラムを準備した。
HPLCによる分離;C18カラム;溶離剤:水5%/アセトニトリル95%;流率:6ml/分。
【0055】
5.00gのパラソル1789から、2.59gの化合物C10及び2.47gの化合物O10が得られた(即ち、それぞれの収率34%及び36%)。
【0056】
得られた生成物の特性
NMRスペクトルはBruker ARX 400MHz機を使用して得た。UV吸収スペクトルはHP 8452 A
Diode Arrayスペクトロメーターを使用して得た。赤外スペクトルはPerkin-Elmer 1760 X機を使用して得た。
【0057】

【0058】

【0059】
実施例3:
UV線に対する安定性の試験:
例えば、上記実施例で得られた化合物、即ち、化合物C10及び化合物O10を含有するベース製剤(油中水型エマルジョン)の照射下での変化と、パルソル1789を含有する同様の製剤(各々の遮断剤について当量の質量%)のそれとを比較した。
【0060】
例えば、選択された製剤は下記のごとき組成を有する:
グリカシル(Glycasil) L 0.19%、ブチルパラベン 0.3%、蜜蝋 4%、PEG-30 ジポリヒドロキシステアレート 3%、ジカプリルカーボネート 10%、ポリグリセリル-3-ジイソステアレート 1.5%、水 78.64%、キサンタンゴム 1%、Na2EDTA 0.2%、
NaCl 1%、メチルパラベン 0.17%。
【0061】
この共通のベースに、そのケースに応じて、化合物C10、化合物O10又はパルソル1789を均等な質量%で添加した。これらの製剤の15〜20mgを石英スライドに展延し、スライドのUVA吸光度を太陽光線の照射下、経時的に監視した(北緯43度での6月、13.00時〜16.00時、太陽UV照射の平均束(flux):4mW/cm2、Oriel 70380 UV Radiometer-280nm〜400nmの応答;最大値370nm)。パルソル1789を含有するプレートの356nmでの吸光度は1時間で51%だけ減少し、2時間で73%だけ減少した。同一の時間において、化合物O10を含有するプレートの吸光度は1時間で16%だけ増大し、2時間で19%だけ増大した。化合物C10の吸光度は太陽光線に暴露した1時間以内に著しく増大しついで2時間以内に(1時間の照射後の到達した最大値に対して)27%だけ減少した。しかしながら、太陽光線に2時間暴露した後には、化合物C10の吸光度は当初の(照射前の)吸光度より顕著に高いままであった。得られた結果を下記の表に示す。
【0062】

【0063】
従って、2つの供試化合物はパルソル1789より良好な光安定性を示す。
【0064】
しかしながら、その分子吸光係数はパルソル1789のそれより約30%小さい(照射により吸光最大値が達成されたとき)。従って、本発明のジベンゾイルメタン誘導体をパルソル1789のごとき他の遮断剤と併用することが可能である;本発明のジベンゾイルメタン誘導体は遮断効果によりパルソル1789を保護する。この併用により、最小の重量の遮断剤を使用して、最大の遮断効果を得ることができる。
【0065】
例えば、32.5%(モル%)のパルソル1789、35%の化合物O10及び32.5%の化合物C10からなる遮断剤を全体で1重量%含有する前記製剤に類似する製剤に前記と同様の条件下で太陽光線を照射し、パルソル1789を1重量%含有する製剤と比較した。混合製剤はその当初のUVA吸光度(又は、より高い吸光度)を1時間保持し、この吸光度2時間後には33%まで減少する。パルソル1789だけを含有する製剤では、曝露の開始から吸光度が一定の減少を示す。減少度は1時間で51%に到達し、2時間で73%に到達する。
【0066】
例えば、10%(モル%)のパルソル1789、30%の化合物C10及び60%の化合物O10からなる遮断剤を全体で1重量%含有する前記製剤に類似する製剤に前記と同様の条件下で太陽光線を照射しその変化を、パルソル1789を1重量%含有する製剤と比較した。混合製剤はその当初のUVA吸光度(又は、より高い吸光度)を2時間30分保持していた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式 I:

[式中、R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4及びR'4は、同一であるか又は異なるものであり、かつ、各々、
−水素原子、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルケニル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキニル基、
−C1〜C4アルコキシ基、
−ハロゲン原子、
−ヒドロキシル基、
−アミノ基、
−ニトロ基、
−アミド基、又は
式-CO-Yのカルボニル基を表し、Yは基 -OH、-OR又は-SR(RはC1〜C4アルキル基を表す)又はハロゲン原子を表す;
R5及びR'5は、異なるものであり、かつ、各々、
−水素原子、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルケニル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキニル基、
−5〜20個の炭素原子を含有する、線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖、
−端部が官能化された、5〜20個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖、又は、
−アミン又はアミド官能性基の窒素原子及び/又はエーテル又はカルボキシル官能性基の酸素原子を含有する5〜20個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖を表す]で表されるジベンゾイルメタン系化合物及びその塩及び溶媒和物。
【請求項2】
R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4及びR'4は、各々、水素原子を表す、請求項1に記載のジベンゾイルメタン誘導体。
【請求項3】
R5及びR'5は、異なるものであり、かつ、各々、
−水素原子、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキル基、又は
−5〜20個の炭素原子を含有する、線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖
を表す、前記で定義したジベンゾイルメタン誘導体。
【請求項4】
R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4及びR'4は、各々、水素原子を表し、
R5及びR'5は、異なるものであり、かつ、各々、
−水素原子、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキル基、又は
−5〜20個の炭素原子を含有する、線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖
を表す、請求項1又は2のいずれか一つに記載のジベンゾイルメタン誘導体。
【請求項5】
式 I:

[式中、R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4及びR'4は、同一であるか又は異なるものであり、かつ、各々、
−水素原子、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルケニル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキニル基、
−C1〜C4アルコキシ基、
−ハロゲン原子、
−ヒドロキシル基、
−アミノ基、
−ニトロ基、
−アミド基、又は
式-CO-Yのカルボニル基を表し、Yは基 -OH、-OR又は-SR(RはC1〜C4アルキル基を表す)又はハロゲン原子を表す;
R5及びR'5は、同一であるか又は異なるものであり、かつ、各々、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルケニル基、
−1〜4個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖アルキニル基、
−5〜20個の炭素原子を含有する、線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖、
−端部が官能化された、5〜20個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖、又は、
−アミン又はアミド官能性基の窒素原子及び/又はエーテル又はカルボキシル官能性基の酸素原子を含有する5〜20個の炭素原子を含有する線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖を表す]で表されるジベンゾイルメタン系化合物及びその塩及び溶媒和物。
【請求項6】
前記請求項のいずれか一つで定義したごとき、請求項1〜5に記載された式(I)の化合物又はその塩又は溶媒和物の少なくとも1種を活性成分として含有することを特徴とする化粧料用及び/又は皮膚科用組成物。
【請求項7】
他の活性成分も含有しており、該活性成分はパルソル 1789、2,4,6-トリス[p-(2'-エチルヘキシル-1'-オキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、4-(t-ブチル)-4'-メトキシジベンゾイルメタン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン及び3-(4'-メチルベンジリデン)カンファーからなる群から選ばれた遮断剤である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
組成物は、該組成物の合計重量に基づいて、0.5〜30重量%、好ましくは、1〜10重量%の活性成分を含有している、請求項6又は7のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項9】
皮膚又は髪を紫外線から保護するための薬剤としての、請求項1〜5のいずれか一つに記載の式(I)の化合物又はその塩又は溶媒和物の使用。
【請求項10】
皮膚又は髪を紫外線から保護するための化粧料用及び/又は皮膚科用組成物を調製するための、請求項1〜5のいずれか一つに記載の式(I)の化合物又はその塩又は溶媒和物の使用。
【請求項11】
光活性化性太陽光線遮断剤としての、請求項1〜5のいずれか一つに記載の式(I)の化合物又はその塩又は溶媒和物の使用。
【請求項12】
皮膚又は髪を紫外線から保護するための化粧料用及び/又は皮膚科用組成物であって、その作用が光活性化性及び/又は長期的である組成物を調製するための、請求項1〜5のいずれか一つに記載の式(I)の化合物又はその塩又は溶媒和物の使用。
【請求項13】
請求項1〜5に記載の式(I)の化合物又はその塩又は溶媒和物を活性成分として含有している化粧料用及び/又は皮膚科用製品。
【請求項14】
水性媒体又は有機媒体中で
a) R1、R'1、R2、R'2、R3、R'3、R4及びR'4が、各々、請求項1〜6のいずれか一つで定義した基を表し、R5及びR'5が同一であり、かつ、各々、水素原子を表す一般式(I)の分子と、
b) アルキルアンモニウム ハライド
との間で錯体を形成させる工程;及び
R5又はR'5によって表される水素の少なくとも一方を、有機媒体中で、一般式 R5X又は
R'5X (式中、R5及びR'5は同一であるか又は異なるものであり、かつ、各々、請求項1〜5のいずれか一つで定義した基を表す)のハロゲン化物の少なくとも一つの作用により置換する工程;
からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の式(I)の化合物の製造方法。
【請求項15】
R5又はR'5によって表される水素の少なくとも一方の置換工程は、一般式 R5X又は
R'5X (式中、R5及びR'5は同一であるか又は異なるものであり、かつ、各々、1〜20個の炭素原子を含有する、線状又は分岐鎖、飽和又は不飽和非環式炭素鎖を表す)のアルキル化剤の少なくとも一つの作用によるアルキル化である、前請に記載の方法。


【公表番号】特表2007−516208(P2007−516208A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519962(P2006−519962)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001859
【国際公開番号】WO2005/009938
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(506018514)
【出願人】(501339241)サントル・ナシヨナル・ド・ラ・ルシエルシエ・シヤンテイフイツク・(セ・エーヌ・エール・エス) (4)
【出願人】(506018536)ユニヴェルシテ ポール サバティエ トゥールーズ 3 (1)
【Fターム(参考)】