説明

新規なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物及びそれらを用いたα−オレフィン系重合触媒並びにα−オレフィン系共重合体の製造方法。

【課題】分子量が高く、コモノマー含量も共に高く、工業的に有用なα−オレフィン・(メタ)アクリル酸系オレフィン共重合体、並びに、二種類の異なるα−オレフィンと(メタ)アクリル酸系オレフィンとの共重合体の製造を実現し得る触媒成分、及び、それを使用した製造方法を提供する。
【解決手段】スルホン酸基を有するトリフェニルホスフィン誘導体、等で錯化された特定の金属錯体を触媒組成物に用いて、α−オレフィン・(メタ)アクリル酸系オレフィン共重合体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物、及びそれらを用いたα−オレフィン系重合触媒並びにα−オレフィン系共重合体の製造方法に関し、特に、これらの新規な化合物を用いたα−オレフィン系重合触媒により、分子量とコモノマー含量が共に高い、α−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エチレンと極性基含有ビニルモノマーである酢酸ビニルや(メタ)アクリル酸またはエステルとの共重合体は、高圧ラジカル法を用いて製造されてきたが、高圧法以外で共重合体を得ることは困難であり、チーグラー触媒やメタロセン触媒を用いた場合には触媒失活を避けられなかった。
【0003】
1990年代以降に、後周期遷移金属錯体触媒による、極性基含有コモノマー共重合が精力的に研究されており、例えば、Brookhartらにより報告された(α−ジイミン)パラジウム錯体や、Grubbsらにより報告された(サリチルアミジナート)ニッケル触媒、いわゆるSHOP系触媒と呼ばれる(フォスファニルフェノラート)ニッケル触媒が知られている。これらの触媒では、連鎖移動の頻発を抑制するために重合温度は低めに設定されており、コポリマーの生産性は低く、分子量も低いのが一般的であった(例えば、非特許文献1を参照)。
2002年に、Pughらは、ホスフィンスルホナート配位子をパラジウム化合物と組み合わせて触媒成分として用いると、高温(80℃)でも共重合可能なことを報告し(特許文献1及び非特許文献2を参照)、この技術は、生産性が高い上、コモノマーである(メタ)アクリル酸エステルの含量も比較的高かった。
しかしながら、その共重合体の分子量(Mw)は数万程度が上限であったため、工業的な用途も限定されていた。
このホスフィンスルホナート配位子はキレート性または潜在的キレート性であると予想され、例えば、パラジウムと錯形成してキレート状の金属錯体となることが報告されている(非特許文献3を参照)。また、−COH基を有するホスフィンカルボキシラート配位子の場合には、ニッケルと錯形成してキレート状金属錯体となることが報告されている(非特許文献4を参照)。
【0004】
野崎らは、触媒活性成分として(ホスフィンスルホナート)パラジウム(メチル)ルチジン錯体を単離し、触媒としての有用性を報告している(特許文献2及び非特許文献3を参照)。この場合、触媒活性は大きく向上したものの、分子量は依然として低いままであった。
Jordanらは、単離した(ホスフィンスルホナート)パラジウム(メチル)ルチジン錯体を用いて、エチレン重合並びにエチレン/1−ヘキセン共重合の製造を報告している(非特許文献6)。この触媒は、エチレン圧力(3MPa)で重合した場合には1−ヘキセンの取り込みが無いものの、低いエチレン圧(0.5MPa)の場合には、少量のヘキセンと共重合することが報告されている(非特許文献6を参照)。
また、Goodallらは、ホスフィンスルホナート配位子を改良して、ビフェニル構造を有するホスフィンスルホナート配位子を開発した(例えば、特許文献3〜8及び非特許文献5を参照)。これをエチレンとアクリル酸エステルの共重合触媒として用いることで、分子量(Mw)が十万以上のコポリマーを製造可能になったことが開示されている。しかしながら、本願発明者が評価したところによると、そのコモノマー含量が低下してしまう欠点のあることが分かった。
【0005】
したがって、エチレンと極性基含有ビニルモノマーである酢酸ビニルや(メタ)アクリル酸またはエステルとの共重合の分野においては、高い共重合性と高分子量(Mw)の双方を両立できる重合触媒の開発が求められていた。
【0006】
【特許文献1】特表2002−521534号公報
【特許文献2】特開2007−46032号公報
【特許文献3】特開2007−63280号公報
【特許文献4】特開2007−77395号公報
【特許文献5】特開2007−117991号公報
【特許文献6】特開2008−214628号公報
【特許文献7】特開2007−214629号公報
【特許文献8】特開2007−214630号公報
【0007】
【非特許文献1】S.Mecking etal.,J.Am.Chem.Soc.,1998,120,888.
【非特許文献2】E.Drent etal.,Chem.Commun.,2002,744.
【非特許文献3】K.Nozaki etal.,Dalton TRANSACTIONS,2006,25.
【非特許文献4】W.Keim,Stud.Surf.Sci.Catal.,1986,25,201.
【非特許文献5】J.P. Claverie etal.,Macromolecular Rapid Communications 2007,28,2033−2038.
【非特許文献6】R.F.Jordan etal.,Organometallics 2007,26,6624−35.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した背景技術のかかる状況を踏まえて、本発明は、分子量が高く、コモノマー含量も共に高く、工業的に有用なα−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体、並びに、二種類の異なるα−オレフィンと(メタ)アクリル酸またはエステルとの共重合体の製造を実現しうる触媒成分、及び、それを使用した製造方法を開発する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記した本発明の課題を解決することを目指して、分子量とコモノマー含量が共に高いα−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体の製造を実現し得る、重合触媒を開発することを図り、後周期遷移金属錯体触媒における配位子化合物を種々探索し、特定の構造を有する新規なトリアリールホスフィン及びトリアリールアルシン化合物が、上記の目的の重合触媒の成分として格別に機能することを見い出すことができ、本発明を実現するに至った。
【0010】
その特定の構造を有すトリアリールホスフィン及びトリアリールアルシン化合物は、本発明の第一の発明を構成する新規な化合物であり、即ち、下記一般式(1)で表される新規なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物である。(なお、「本発明」とは、以下の第一発明から第十五発明の各発明単位により成る発明群を意味する。)
【化1】

・・・(1)

(一般式(1)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−SOH又はCOHである。R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R〜Rの少なくとも一つは、二級もしくは三級のアルキル基である。R〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基を示す。)
【0011】
本発明の第二の発明として、一般式(1)において、R、Rの少なくとも
一つ、及び、R、Rの少なくとも一つは二級もしくは三級のアルキル基であることを特徴とする、新規なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が提供される。
【0012】
本発明の第三の発明としては、特定の構造を有すトリアリールホスフィン及びトリアリールアルシン化合物であり、即ち、下記一般式(2)で表される新規なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物である。
【化2】

・・・(2)
(一般式(2)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−SOH又はCOHである。R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R〜Rの少なくとも一つは、芳香環に直接結合している炭素と、O又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基である。R〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基を示す。)
【0013】
本発明の第四の発明として、第一から第三の発明の化合物のいずれかと、8〜10族の遷移金属とを反応させて得られるα−オレフィン重合触媒が提供される。
【0014】
本発明の第五の発明として、第一から第三の発明の化合物のいずれかと、8〜10族の遷移金属及び微粒子担体からなるα−オレフィン重合触媒が提供される。
【0015】
本発明の第六の発明として、第一から第三の発明の化合物のいずれかと8〜10族の遷移金属との反応物及び微粒子担体からなるα−オレフィン重合触媒が提供される。
【0016】
本発明の第七の発明として、下記一般式(3)で表されることを特徴とする金属錯体が提供される。
【化3】

・・・(3)
(一般式(3)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−SO−又はCO−である。R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R〜Rの少なくとも一つは、二級もしくは三級のアルキル基である。R〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基を示す。Mは、8〜10族の遷移金属からなる群より選択された金属原子を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基を示す。Bは、Mに配位した任意のリガンドを示す。また、AとBは互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0017】
本発明の第八の発明として、一般式(3)において、R、Rの少なくとも一つ、及び、R、Rの少なくとも一つは二級もしくは三級のアルキル基であることを特徴とする金属錯体が提供される。
【0018】
本発明の第九の発明として、下記一般式(4)で表されることを特徴とする金属錯体が提供される。
【化4】

・・・(4)
(一般式(4)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−SO−又はCO−である。R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R〜Rの少なくとも一つは、芳香環に直接結合している炭素と、O又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基である。R〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基を示す。Mは、8〜10族の遷移金属からなる群より選択された金属原子を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基を示す。Bは、Mに配位した任意のリガンドを示す。また、AとBは互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0019】
本発明の第十の発明として、第七から第九のいずれかの発明の金属錯体を含むα−オレフィン重合触媒が提供される。
【0020】
本発明の第十一の発明として、第七から第九のいずれかの発明の金属錯体と微粒子担体からなるα−オレフィン重合触媒が提供される。
【0021】
本発明の第十二の発明として、微粒子担体がイオン交換性層状珪酸塩であることを特徴とする、第五又は第六或は第十一のいずれかの発明におけるα−オレフィン重合触媒が提供される。
【0022】
本発明の第十三の発明として、第12の発明のイオン交換性層状珪酸塩が、スメクタイト族であることを特徴とする、α−オレフィン重合触媒が提供される。
【0023】
本発明の第十四の発明として、第四〜第六、第十〜第十三のいずれかの発明のα−オレフィン重合触媒の存在下に、α−オレフィンと、(メタ)アクリル酸またはエステルとを共重合することを特徴とする、α−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法が提供される。
【0024】
本発明の第十五の発明として、第四〜第六、第十〜第十三の発明のα−オレフィン重合触媒の存在下に、二種類の異なるα−オレフィン、(メタ)アクリル酸またはエステルの三成分を共重合することを特徴とする、α−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る重合触媒の存在下に、α−オレフィンと(メタ)アクリル酸またはエステルの共重合を行うことにより、分子量が高く、コモノマー含量も共に高くて、工業的に有用な、α−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体が製造可能になった。なお、かかる顕著な効果は、後述する本発明の各実施例のデータ及び各実施例と各比較例との対照により、実証されている。
【0026】
また、上記の共重合において、微粒子担体に触媒成分を担持することにより、生成するポリマーの性状が改善できる。これにより、特に、スラリー重合や気相重合のような、ポリマーの粒子化が必要なポリマー製造プロセスに対する適応性が改善できる。 このオレフィン共重合体は、機械的かつ熱的な物性に優れ、有用な成形体として応用可能であり、具体的には、本発明の共重合体は、塗装性、印刷性、帯電防止性、無機フィラー分散性、他樹脂との接着性、他樹脂との相溶化能などにおける良好な性質を利用して、さまざまな用途、例えば、フィルム、シート、接着性樹脂、バインダー、相溶化剤などとして応用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、特定の構造を有する新規なトリアリールホスフィン及びトリアリールアルシン化合物、それらの新規な化合物が特定の金属元素に配位した触媒、それらを使用したα−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体、並びに、二種類の異なるα−オレフィンと(メタ)アクリル酸系共重合体との製造に係るものである。
以下において、それらの新規化合物、重合触媒、重合体の構成成分(モノマー成分)、及び重合方法などについて詳細に説明する。
【0028】
1−1.トリアリールホスフィン及びトリアリールアルシン化合物
本発明の重合触媒において、特定の金属元素に対する配位子となる新規なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物は、下記の一般式(1)で示される。

【化5】


・・・(1)
(一般式(1)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−SOH又はCOHである。R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R〜Rの少なくとも一つは、二級もしくは三級のアルキル基である。R〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基を示す。)
【0029】
Yは、リン又は砒素であり、好ましくはリンである。また、Zは、−SOH又はCOHであり、好ましくは−SOHである。
〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R〜Rの少なくとも一つは、二級もしくは三級のアルキル基である。R〜Rは、中心の15族原子(リン又は砒素)からみてオルト位であり、即ち、本発明のトリアリールホスフィン化合物は分子中(オルト位に)少なくとも1つの立体的に嵩高い置換基を有していることが特徴の一つであり、この立体効果が触媒性能の向上に影響しているものと考えられる。
【0030】
〜Rとして好ましい二級もしくは三級のアルキル基は、それぞれ独立に、炭素数3から30の炭化水素基であり、さらに好ましくは二級アルキル基である炭素数3から18の炭化水素基であり、更に好ましくは二級アルキル基である炭素数3から12の炭化水素基である。好ましい具体例は、トリシクロヘキシルメチル基、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基、イソプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、ターシャリーブチル基、イソブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2−イソペンチル基、3−イソペンチル基、2−イソヘキシル基、3−イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−イソヘプチル基、3−イソヘプチル基、4−イソヘプチル基、2−プロピルヘプチル基、2−イソオクチル基、3−イソノニル基、1−アダマンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、エキソ−ノルボルニル基、エンド−ノルボニル基、2−ビシクロ[2.2.2]オクチル基、2−アダマンチル基、ノピニル基、メンチル基、ネオメンチル基、及びネオペンチル基であり、特に好ましくは、イソプロピル基、シクロヘキシル基である。
【0031】
また、二級もしくは三級のアルキル基であるR〜Rは、その部分構造にヘテロ原子を含有していてもよい。ここで、ヘテロ原子に起因する電子供与基の導入は、空間的に接近した中心金属の電子密度を高めることができ、触媒活性向上に有効である。ヘテロ原子とは、広義には炭素原子、水素原子、17,18族原子以外の非金属原子を指すが、好ましくは第二周期又は第三周期の非金属原子であり、更に好ましくは酸素原子又は窒素原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
【0032】
このヘテロ原子含有の二級又は三級アルキル基は、それぞれ独立に酸素原子を含有する炭素数4から30の二級アルキル基であり、更に好ましくは酸素原子を含有する炭素数4〜15の二級アルキル基であり、特に好ましくは酸素原子を含有する炭素数4〜7の二級アルキル基である。好ましい具体例は、1−(メトキシメチル)エチル基、1−(エトキシメチル)エチル基、1−(フェノキシメチル)エチル基、1−(メトキシエチル)エチル基、1−(エトキシエチル)エチル基、1−(ジメチルアミノメチル)エチル基、1−(ジエチルアミノメチル)エチル基、ジ(メトキシメチル)メチル基、ジ(エトキシメチル)メチル基、ジ(フェノキシメチル)メチル基が挙げられる。特に好ましくは、1−(メトキシメチル)エチル基、1−(フェノキシメチル)エチル基である。
【0033】
〜Rが、二級もしくは三級のアルキル基で無い場合、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基である。
〜Rとして好ましい炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましい具体例は、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、ノルマルブチル基、ノルマルヘキシル基であり、特に好ましくはメチル基である。
〜Rとして好ましいハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基は、一つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜6のアルキル基である。置換するハロゲンとしては、好ましくはフッ素であり、好ましい具体例は、フルオロメチル基、1−フルオロエチル基、2−フルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、4−フルオロブチル基、6−フルオロヘキシル基である。
〜Rとして好ましいヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基は、酸素原子を有する炭素数1〜4の炭化水素基であり、好ましい具体例は、メトキシメチル基、エトキシメチル基である。
〜Rとして好ましい炭素数1〜30のアルコキシ基は、炭素数1〜6のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基である。
〜Rとして好ましい炭素数6〜30のアリールオキシ基は、炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、好ましい具体例は、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基である。
これらのR〜Rが二級もしくは三級のアルキル基で無い置換基群の具体例のうち、更に好ましくは水素原子又はメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0034】
〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基である。これらの置換基は、錯体形成時に中心金属から比較的離れた部位の置換基であるため、リンスルホン酸配位子の錯形成に悪影響を与えない置換基であればよい。これらの置換基の立体的な影響に比べ、電子的効果は触媒性能に影響すると考えられ、電子供与性置換基が好ましい。これらの置換基は同一でも異なってもよい。
【0035】
〜R14として好ましいハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素などが挙げられる。
〜R14として好ましい炭素数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基などが挙げられる。
ここで、アルキル基、シクロアルキル基の例は、メチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、1−ノニル基、1−デシル基、t−ブチル基、トリシクロヘキシルメチル基、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基、イソプロピル基、1−ジメチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、イソブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、4−ヘプチル基、2−プロピルヘプチル基、2−オクチル基、3−ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、エキソ−ノルボルニル基、エンド−ノルボニル基、2−ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ノピニル基、デカヒドロナフチル基、メンチル基、ネオメンチル基、ネオペンチル基、及び5−デシル基などである。これらの中で、好ましい置換基としては、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基である。
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シンナミル基、スチリル基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基が挙げられ、これらのアリール基の芳香環に存在させうる置換基の例としては、アルキル基、アリール基、融合アリール基、フェニルシクロヘキシル基、フェニルブテニル基、トリル基、キシリル基、p−エチルフェニル基などである。これらの中で、好ましい置換基としては、フェニル基である。
【0036】
〜R14として好ましいハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基は、前述の炭素数1〜30の炭化水素基にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子で置換された置換基である。
〜R14として好ましいヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基に含まれていてもよいヘテロ原子としては、更に好ましくは、酸素原子、窒素原子が挙げられる。ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基としては具体的には、OR15、CO15、COM´、C(O)N(R15、C(O)R15、SO15、SOR15、OSO15、P(O)(OR152−y(R16、CN、NHR15、N(R15、NO、SOM’、POM´、P(O)(OR15M´又はエポキシ基などのヘテロ原子を含有する置換基を有する炭化水素基が挙げられる。ここで、M´は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、xは、0から3までの整数、yは、0から2までの整数を表す。R15は、水素又は炭素数1ないし20の炭化水素基を、R16は炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。前記のヘテロ原子含有置換基のうち好ましくは、OR15、N(R15、であり、特に好ましくはOR15である。
【0037】
〜R14として好ましい炭素数1〜30のアルコキシ基は、炭素数1〜6のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基である。
〜R14として好ましい炭素数6〜30のアリールオキシ基は、炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、好ましい具体例は、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基である。
〜R14として好ましい炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基は、炭素数3〜18のシリル基であり、好ましい具体例は、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基である。
【0038】
1−2.トリアリールホスフィン及びトリアリールアルシン化合物
本発明の重合触媒において、特定の金属元素に対する配位子となる、他の新規なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物は、下記の一般式(2)で示される。
【化6】


・・・(2)(一般式(2)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−SOH又はCOHである。R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R〜Rの少なくとも一つは、芳香環に直接結合している炭素と、O又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基である。R〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基を示す。)
【0039】
Yは、リン又は砒素であり、好ましくはリンである。また、Zは、−SOH又はCOHであり、好ましくは−SOHである。
〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R〜Rの少なくとも一つは、芳香環に直接結合している炭素と、O又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基である。R〜Rは、中心の15族原子(リン又は砒素)からみてオルト位であり、即ち、本発明のトリアリールホスフィン化合物は分子中(オルト位に)少なくとも1つの立体的に嵩高い置換基を有していることが特徴の一つであり、この立体効果が触媒性能の向上に影響しているものと考えられる。したがって、R、Rの少なくとも一つ、及び、R、Rの少なくとも一つは、芳香環に直接結合している炭素と、O又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基であるものが好ましい。
【0040】
芳香環に直接結合している炭素と、O又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基としては、2個以上の炭素Cよりなる二級もしくは三級のアルキル基、1個の炭素Cと1個の酸素Oよりなるアルコキシアルキル基もしくは環状エーテル類、1個の炭素Cと1個の窒素Nよりなるピロリジン類もしくはピロール類、2個の酸素Oよりなるアセタール類、1個の酸素Oと1個の窒素Nよりなるモルホリン類もしくはオキサゾール類、2個の窒素Nよりなるイミダゾリジン類もしくはイミダゾール類が挙げられる。これら2個以上のC、O、Nを含む置換基は連結して環を形成しても良い。これらの中で、二級もしくは三級のアルキル基、アルコキシアルキル基、環状エーテル類が好ましく、特に好ましいのは後述の二級もしくは三級のアルキル基、またはテトラヒドロフリル基である。
【0041】
〜Rが、芳香環に直接結合している炭素とO又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基で無い場合、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基である。
【0042】
〜Rとして好ましい炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましい具体例は、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、ノルマルブチル基、ノルマルヘキシル基であり、好ましくはメチル基である。
〜Rとして好ましいハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基は、一つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜6のアルキル基である。置換するハロゲンとしては、好ましくはフッ素であり、好ましい具体例は、フルオロメチル基、1−フルオロエチル基、2−フルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、4−フルオロブチル基、6−フルオロヘキシル基である。
〜Rとして好ましいヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基は、酸素原子を有する炭素数1〜4の炭化水素基であり、好ましい具体例は、メトキシメチル基、エトキシメチル基である。
〜Rとして好ましい炭素数1〜30のアルコキシ基は、炭素数1〜6のアルコキシ基であり、好ましい具体例は、メトキシ基、エトキシ基である。
〜Rとして好ましい炭素数6〜30のアリールオキシ基は、炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、好ましい具体例は、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基である。
これらのR〜Rが、芳香環に直接結合している炭素と、O又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基で無い場合の具体例のうち、更に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0043】
〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基である。
その具体的な内容は、前述の一般式(1)で表されるトリアリールホスフィンまたはトリアリールアルシン化合物における置換基と同様である。
【0044】
2.トリアリールホスフィン及びトリアリールアルシン化合物の合成
第一の発明としての、トリアリールホスフィン化合物の合成は以下の経路により行われる。即ち、化合物の合成経路は、いくつか知られているが、そのうちの具体例として、原料である三塩化リンに導入すべきアリール基のリチオ体(アリールリチウム塩)を適切なモル比で反応させる経路が挙げられる。反応後は、酸性条件で抽出した後、洗浄して目的物を得ることができる。トリアリールアルシン化合物の合成も同様になされる。
【0045】
3.錯形成
本発明の配位子はキレート性又は潜在的キレート性であると予想される。例えば、−SOH基を有する配位子はパラジウムと錯形成してキレート状の金属錯体となることが報告され(非特許文献3)、−COH基を有する配位子はニッケルと錯形成してキレート状金属錯体となることが報告されている(非特許文献4)。
【0046】

4.重合触媒の合成

本発明の重合触媒は、一般式(1)で表される新規なトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物と、8〜10族の遷移金属化合物とを反応させて得られるα−オレフィン重合触媒である。

触媒組成物の合成は、一般に、8〜10族の遷移金属化合物と配位子とを溶液又はスラリー中で接触して行う。
遷移金属化合物として好ましくは、10族の遷移金属化合物であり、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、ビス(アリルパラジウムクロライド)、塩化パラジウム、臭化パラジウム、(シクロオクタジエン)パラジウム(メチル)クロライド、ジメチル(テトラメチルエチレンジアミン)パラジウム、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、(テトラメチルエチレンジアミン)ニッケル(メチル)クロライド、ジメチル(テトラメチルエチレンジアミン)ニッケル、(シクロオクタジエン)ニッケル(メチル)クロライドなどを使用して合成する。
【0047】

錯形成反応は、α−オレフィンとの共重合に使用する反応器中で行ってもよいし、該反応器とは別の容器中で行ってもよい。錯形成後に、金属錯体を単離抽出して触媒に用いてもよいし、単離せずに触媒に用いてもよい。更に、後述する多孔質担体の存在下実施することも可能である。
本発明の触媒組成物は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種の触媒組成物を併用してもよい。特に、分子量分布やコモノマー含量分布を広げる目的には、こうした複数種の触媒組成物の併用が有用である。
【0048】

4−1.トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン金属錯体
一般式(1)で表されるトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物と、第8〜10族の遷移金属化合物を反応させてなる金属錯体は、下記一般式(3)で表されるものであってよい。

【化7】


・・・(3)
(一般式(3)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−SO−又はCO−である。R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R〜Rの少なくとも一つは、二級もしくは三級のアルキル基である。R〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基を示す。Mは、8〜10族の遷移金属からなる群より選択された金属原子を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基を示す。Bは、Mに配位した任意のリガンドを示す。また、AとBは互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0049】
ここで、Y、Z、R〜R14は、前述の一般式(1)で表されるトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物における置換基と同様である。
Mは、第8〜10族の遷移金属を示すが、Fe,Co,Ni,Pd,Pt及びランタニドが好ましく、より好ましくは、Ni,Pdである。
Aは、水素原子、ハロゲン原子、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基またはヘテロ原子を含有していてもよい炭素数6〜30のアリール基を示す。ここで、ヘテロ原子としては好ましくは、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、ハロゲン原子が好ましく、更に好ましくは酸素原子である。
【0050】
Aとして好ましいヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基は、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましい具体例として、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、アシル基、アセトキシ基が挙げられる。また、Aとして好ましいヘテロ原子を含有していてもよい炭素数6〜30のアリール基は、さらに好ましくは炭素数6〜13のアリール基であり、好ましい具体例として、フェニル基、トリル基、キシリル基、フェナシル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。これらの置換基の具体例のうち、特に好ましい置換基は、水素原子、メチル基とフェニル基である。
【0051】
Bは、Mに配位した任意のリガンドである。そのようなリガンドとは、配位結合可能な原子として酸素、窒素、リン、硫黄を有する炭素数1〜20の炭化水素化合物である。更に好ましくは、ホスフィン類、ピリジン誘導体、ピペリジン誘導体、アルキルエーテル誘導体、アリールエーテル誘導体、アルキルアリールエーテル誘導体、ケトン類、環状エーテル類、アルキルニトリル誘導体、アリールニトリル誘導体、アルコール類、アミド類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類、アミン類などを挙げられる。さらに好ましくは、ケトン類、環状エーテル類、ホスフィン類、ピリジン誘導体であり、好ましい具体例として、アセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、ルチジン、およびトリフェニルホスフィンを挙げることができる。特に好ましくは、ピリジンまたはルチジンである。
【0052】

4−2.トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン金属錯体一般式(2)で表されるトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物と、第8〜10族の遷移金属化合物を反応させてなる金属錯体は、下記一般式(4)で表されるものであってよい。
【化8】

・・・(4)
(一般式(4)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−SO−又はCO−である。R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R〜Rの少なくとも一つは、芳香環に直接結合している炭素と、O又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基である。R〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基を示す。Mは、8〜10族の遷移金属からなる群より選択された金属原子を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基を示す。Bは、Mに配位した任意のリガンドを示す。また、AとBは互いに結合して環を形成していてもよい。)
ここで、Y、Z、R〜R14は、前述の一般式(2)で表されるトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物における置換基と同様である。
また、M、A、Bの具体的内容は、前述の一般式(3)において前述した記載と同様である。
【0053】
5.微粒子担体
本発明で使用する微粒子担体は、本発明の主旨をそこなわない限りにおいて、任意の微粒子担体を用いることができる。
一般に、無機酸化物やポリマー担体が好適に使用できる。具体的には、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThOなど又はこれらの混合物が挙げられ、SiO−Al、SiO−V、SiO−TiO、SiO−MgO、SiO−Crなどの混合酸化物も使用することができ、無機ケイ酸塩、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドなどの担体も使用可能である。
これらの担体の中で、好ましくは、無機酸化物からなる担体が用いられ、更に好ましくは、イオン交換性層状珪酸塩が用いられる。なお更に好ましくは、スメクタイト族が用いられる。
【0054】
上記のイオン交換性層状珪酸塩としては、粘土、粘土鉱物、ゼオライト、珪藻土などが使用可能である。これらは、合成品を用いてもよいし、天然に産出する鉱物を用いてもよい。
粘土、粘土鉱物の具体例としては、アロフェン等のアロフェン族、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイトなどのカオリン族、メタハロイサイト、ハロイサイトなどのハロイサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライトなどの蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト族、バーミキュライトなどのバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母鉱物、アタパルジャイト、セピオライト、パイゴルスカイト、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、ヒシンゲル石、パイロフィライト、リョクデイ石群などが挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
人工合成物としては、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトなどが挙げられる。
【0055】
これら具体例のうち好ましくは、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイトなどのカオリン族、メタハロサイト、ハロサイトなどのハロサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライトなどの蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト族、バーミキュライトなどのバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられ、特に好ましくはモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト、バーミキュライトなどのバーミキュライト鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられる。
【0056】
これらの微粒子担体は、そのまま用いてもよいが、塩酸、硝酸、硫酸などによる酸処理及び/又は、LiCl、NaCl、KCl、CaCl、MgCl、LiSO、MgSO、ZnSO、Ti(SO、Zr(SO、Al(SOなどの塩類処理を行ってもよい。該処理において、対応する酸と塩基を混合して反応系内で塩を生成させて処理を行ってもよく、また粉砕や造粒などの形状制御や乾燥処理を行ってもよい。
これらの微粒子担体については、粒径などに特に制限はなく、任意のものが使用可能であるが、好ましい粒径は平均粒径5μm〜200μm、更に好ましくは10μm〜100μmである。
【0057】
微粒子担体は、有機アルミニウム化合物で処理して用いることができる。ここで用いられる有機アルミニウム化合物は、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン、水素、アルコキシ基又はアミノ基から選ばれる置換基を有する。これらの置換基の中で、炭素数1〜20アルキル基、水素、炭素数1〜20アルコキシ基が好ましく、更に好ましくは炭素数1〜20アルキル基である。複数ある置換基は同一であっても異なっていてもよく、また、有機アルミニウム化合物は、単独で或は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0058】
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどが挙げられる。
これらのうち、好ましくは、トリアルキルアルミニウム及びアルキルアルミニウムヒドリドである。更に好ましくは、炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0059】
6.重合触媒の使用態様
トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物、第8〜10族の遷移金属化合物、及び微粒子担体は、任意の順番で接触することができる。接触させるとき、各成分を固体で接触させてもよいし、溶媒スラリー化又は均一溶液にして接触させても良い。各成分の接触順番は、例えば、以下のとおりである。
(1)トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物と第8〜10族の遷移金属化合物を接触させた後、微粒子担体を接触させる方法。
(2)トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物と微粒子担体を接触させた後、第8〜10族の遷移金属化合物を接触させる方法。
(3)第8〜10族の遷移金属化合物と微粒子担体を接触させた後、トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物を接触させる方法。
これらの接触方法の中で、(1)が好ましい。また、微粒子担体と他の触媒成分を接触させた後、触媒成分に対して反応性が無い溶媒で洗浄することもできる。溶媒としては、炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素が好ましい。
【0060】
微粒子担体1gに対し、トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物は、通常、0.001〜10ミリモル、好ましくは0.001〜1ミリモルの範囲で用いられる。
各成分を接触させる温度は、溶媒の沸点以下であれば任意の温度で実施することが可能だが、室温から溶媒の沸点以下が好ましい。
接触させた触媒成分は、そのまま重合評価に用いることもできるが、乾燥して固体状態にして、保存しておくこともできる。また、更に以下で説明する予備重合を行うこともできる。
【0061】
接触させた触媒成分は、重合槽内で、或は重合槽外でオレフィンの存在下で予備重合を行ってもよい。オレフィンとは炭素間二重結合を少なくとも1個含む炭化水素をいい、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチルブテン−1、スチレン、ジビニルベンゼンなどが例示されるが、特に種類に制限はなく、これらと他のオレフィンとの混合物を用いてもよい。好ましくは炭素数2又は3のオレフィンである。
オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
【0062】
7.使用モノマー
共重合体の製造に用いられるモノマーとしては、以下に説明するα−オレフィン、(メタ)アクリル酸またはエステル、その他オレフィンが挙げられる。
(a)α−オレフィン
本発明に用いられるモノマーの一つは、一般式CH=CHR17で表されるα−オレフィン(以下、「(a)成分」と称することがある)である。ここで、R17は、水素又は炭素数1〜20のアルキル基である。
なかでも、好ましい(a)成分として、炭素数1〜10のR17を有するα−オレフィンが挙げられる。更に好ましい(a)成分としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。なお、単独の(a)成分を使用してもよいし、複数の(a)成分を併用してもよい。
【0063】
(b)(メタ)アクリル酸またはエステル
本発明に用いられるモノマーの別の一つは、(メタ)アクリル酸、又は、一般式CH=C(R18)CO(R19)で表される(メタ)アクリル酸エステルである(以下、「(b)成分」と称することがある)。ここで、R18は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、分岐、環、及び/又は不飽和結合を有していてもよい。R19は、水素又は炭素数1〜30のアルキル基である。更に、R19内の任意の位置にヘテロ原子を含有していてもよい。
【0064】
好ましい(b)成分として、炭素数1〜5のR18を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸が挙げられる。より好ましい(b)成分としては、R18がメチル基であるメタクリル酸エステル又はR18が水素であるアクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸が挙げられる。更に好ましい(b)成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸などが挙げられる。なお、単独の(b)成分を使用してもよいし、複数の(b)成分を併用してもよい。
【0065】
(c)その他オレフィン
本発明に用いられるモノマーの別の一つは、その他オレフィンである(以下、「(c)成分」と称することがある)。
好ましい(c)成分として、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどの環状オレフィンモノマー、p−メチルスチレンなどのスチレン系モノマーなどを挙げることができ、これらの骨格に、水酸基、アルコキサイド基、カルボン酸基、エステル基、アルデヒド基を含有してもよい。
【0066】
ノルボルネン系オレフィンは、シクロペンタジエンを使用するディールスアルダー反応([4+2]シクロ付加)で作ることができる。使用するジエノフィルは例えば、ジエチルアゾジカルボキシレート、アルデヒド、マレイン酸無水物、ジヒドロフラン、ビニルピリジン、アルキルアクリレート又は上記の置換オレフィンである(T.L.Gilchrist,”Heterocyclic Chemistry”,1985,4.3.3章参照)。これらのモノマーは、式(9a)〜(9f)で表すことができる。ここで、R20は、炭素数1〜30の炭化水素基であり、分岐、環、又は不飽和結合を有していてもよい。
また、(a)成分で規定されたモノマーとしては、(3−ブテン)−1−オールなどの水酸基を含有するモノマー、メチルビニルエーテルなどのエーテル基を含有するモノマー、アクリル酸などのカルボン酸基を含有するモノマー、アクリル酸メチルなどのエステル基を含有するモノマー、アクロレインなどのアルデヒド基などを含有するモノマーでもよく、その他、ジエン誘導体、無水マレイン酸、酢酸ビニルなども使用可能である。
【化9】

【0067】
8.共重合反応
本発明における共重合反応は、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素溶媒や液化α−オレフィンなどの液体、また、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、安息香酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、ホルミアミド、アセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなどのような極性溶媒の存在下或は非存在下に行われる。また、ここで記載した液体化合物の混合物を溶媒として使用してもよい。なお、高い重合活性や高い分子量を得るうえでは、上述の炭化水素溶媒がより好ましい。
【0068】
本発明における共重合に際して、公知の添加剤の存在下又は非存在下で共重合を行うことができる。添加剤としては、ラジカル重合禁止剤や、生成共重合体を安定化する作用を有する添加剤が好ましい。例えば、キノン誘導体やヒンダードフェノール誘導体などが好ましい添加剤の例として挙げられる。具体的には、モノメチルエーテルハイドロキノンや、2,6−ジ−t−ブチル4−メチルフェノール(BHT)、トリメチルアルミニウムとBHTとの反応生成物、4価チタンのアルコキサイドとBHTとの反応生成物などが使用可能である。また、添加剤として、無機及び又は有機フィラーを使用し、これらのフィラーの存在下で重合を行ってもよい。
【0069】
本発明において、重合形式に特に制限はない。媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが好ましく用いられる。
また、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。また、リビング重合であってもよいし、連鎖移動を併発しながら重合を行ってもよい。更に、いわゆるchain shuttling agent(CSA)を併用し、chain shuttling反応や、coordinative chain transfer polymerization(CCTP)を行ってもよい。
【0070】
未反応モノマーや媒体は、生成共重合体から分離し、リサイクルして使用してもよい。リサイクルの際、これらのモノマーや媒体は、精製して再使用してもよいし、精製せずに再使用してもよい。生成共重合体と未反応モノマー及び媒体との分離には、従来の公知の方法が使用できる。例えば、濾過、遠心分離、溶媒抽出、貧溶媒を使用した再沈などの方法が使用できる。
【0071】
共重合温度、共重合圧力及び共重合時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。
即ち、共重合温度は、通常−20℃から290℃、好ましくは0℃から250℃、共重合圧力は、0.1MPaから100MPa、好ましくは、0.3MPaから90MPa、共重合時間は、0.1分から10時間、好ましくは、0.5分から7時間、更に好ましくは1分から6時間の範囲から選ぶことができる。
本発明において、共重合は、一般に不活性ガス雰囲気下で行われる。例えば、窒素、アルゴンが使用でき、窒素雰囲気が好ましく使用される。なお、少量の酸素や空気の混入があってもよい。
【0072】
共重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても特に制限はなく、目的に応じてさまざまな供給法をとることができる。例えばバッチ重合の場合、予め所定量のモノマーを共重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を共重合反応器に供給してもよい。また、連続重合の場合、所定量のモノマーと触媒を共重合反応器に連続的に、又は間歇的に供給し、共重合反応を連続的に行う手法をとることができる。
【0073】
共重合体の組成の制御に関しては、複数のモノマーを反応器に供給し、その供給比率を変えることによって制御する方法を一般に用いることができる。その他、触媒の構造の違いによるモノマー反応性比の違いを利用して共重合組成を制御する方法や、モノマー反応性比の重合温度依存性を利用して共重合組成を制御する方法が挙げられる。
【0074】
共重合体の分子量制御には、従来公知の方法を使用することができる。即ち、重合温度を制御して分子量を制御する方法、モノマー濃度を制御して分子量を制御する方法、連鎖移動剤を使用して分子量を制御する方法、遷移金属錯体中の配位子構造の制御により分子量を制御するなどが挙げられる。
連鎖移動剤を使用する場合には、従来公知の連鎖移動剤を用いることができる。例えば、水素、メタルアルキルなどを使用することができる。また、(b)又は(c)成分自身が一種の連鎖移動剤となる場合には、(b)又は(c)成分の濃度や、(a)成分に対する比率を制御することによっても分子量調節が可能である。遷移金属錯体中の配位子構造を制御して分子量調節を行う場合には、金属Mのまわりに嵩高い置換基を配置したり、金属Mにアリール基やヘテロ原子含有置換基などの電子供与性基が相互作用可能となるように配置したり、前記したR18〜R20中にヘテロ原子を導入することにより、一般に分子量が向上する傾向を利用することができる。
【実施例】
【0075】
以下に本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明し、好適な各実施例のデータ及び各実施例と各比較例の対照により、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。なお、実施例、比較例で用いた配位子構造を表1に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
また、実施例では、以下の略号を使用した。
Pd(dba)2:ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム
Ni(cod)2:ビス(シクロオクタジエン)ニッケル
MA:メチルアクリレート
EA:エチルアクリレート
tBA:ターシャリーブチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
AA:アクリリックアシッド
VA:ビニルアセテート
LUA:ラウリルアクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
EUA:エチルウンデシレネート
NBMOH:(5−ノルボルネン)−2−メタノール
NBYA:(5−ノルボルネン)−2−イル アセテート
ATMS:アリルトリエトキシシラン
BTOH:(3−ブテン)−1−オール
TPB:トリフェニルボラン
clay:硫酸/硫酸リチウム処理モンモリロナイト
【0078】
1.評価方法
(1)分子量及び分子量分布(Mw,Mn,Q値)
(測定条件)使用機種:ウォーターズ社製150C 検出器:FOXBORO社
製MIRAN1A・IR検出器(測定波長:3.42μm) 測定温度:140℃ 溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB) カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本) 流速:1.0mL/分 注入量:0.2mL
(試料の調製)試料はODCB(0.5mg/mLのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させた。
(分子量の算出)標準ポリスチレン法により行い、保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の、(F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000)の銘柄である。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成した。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
【0079】
(2)融点(Tm)
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200示差走査熱量測定装置を使用して、シート状にしたサンプル片を5mgアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で20℃まで降温して結晶化させた後に、10℃/分で200℃まで昇温することにより融解曲線を得た。
融解曲線を得るために行った最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点Tmとし、該ピークのピーク面積をΔHmとした。
【0080】
(3)コモノマー(α−オレフィン及び極性基含有ビニルモノマー)含量
以下の二つの方法で測定を実施した。
a)13C−NMRによるα−オレフィン及び極性基含有ビニルモノマー含有量測定
(試料調製)
厚さ100μm程度のフィルム状に成形した試料約250mgを外径10mmの試料管に量り取り、オルト−ジクロロベンゼン1.84mlと重水素化ブロモベンゼン0.46MLを添加した。試料管上部を窒素置換した後、試料管の蓋をし130℃の高温槽で試料が均一になるまで加熱・溶解した。
13C−NMR測定)
クライオプローブを装備したブルカー・バイオスピン社製(AVANCEIII・400)NMR測定装置を用いてゲート付きプロトンデカップリングによるNOE無しの条件で測定を行った。なお、励起パルスのフリップ角は90°とし、パルス間隔16.33秒、測定温度120℃、積算回数500回以上、スペクトル観測幅は24,038.5Hzとした。13C−NMRスペクトルの帰属は種々の文献を参考に行った。
【0081】
(α−オレフィン含有量及び極性基含有ビニルモノマー量の決定)
得られた13C−NMRスペクトルからエチレン単位のモル数に比例する量TE、α−オレフィン単位のモル数に比例する量Tα-O 、極性基含有ビニルモノマー単位のモル数TFを求め、Tα-O/(TE+Tα-O+TF)×100より、α−オレフィン含有量(単位:モル%)を、TF/(TE+Tα-O+TF)×100より極性基含有ビニルモノマー含有量(単位:モル%)を求めた。
α−オレフィンがプロピレン及び1−ヘキセンの場合、極性基含有ビニルモノマー単位がアクリル酸メチル及びアクリル酸エチルの場合、Tα-O及びTFは以下のようにして求めた。
【0082】
(α−オレフィンがプロピレンの場合)
α−オレフィンがプロピレンの場合にはプロピレンが共重合して鎖中に挿入することにより生じる核磁気共鳴ピークのうち、37.6 ppm付近のαメチレン炭素に由来するピークの積分強度の1/2と33.2 ppm付近のメチン炭素由来のピークの積分強度との平均値をプロピレン単位のモル数に比例する量Tα-Oとして求めた。Tα-O = (I37.6/2 + I33.2)/2。ここで、例えばI37.6は37.6ppm付近に生じるαメチレン炭素に由来するピークの積分強度である。
【0083】
(α−オレフィンが1−ヘキセンの場合)
プロピレンの場合同様、1−ヘキセンにより生じる特性ピークを用いて、以下の式を用いてヘキセン単位のモル数に比例する量Tα-Oを求めた。Tα-O = (I27.3/2 + I34.2 + I34.6/2 ) / 3。ここで、I27.3は1−ヘキセンの共重合により27.3ppm付近に生じるβメチレンの共鳴によるピークの積分強度、I34.2は1−ヘキセンの共重合により生じるブチル分岐の分岐末端から数えて4番目の炭素による共鳴ピークの積分強度、I34.6はαメチレンの共鳴によるピークの積分強度である。
【0084】
(極性基含有ビニルモノマーがアクリル酸メチルの場合)
アクリル酸メチルが共重合したことにより生じる核磁気共鳴信号のうち、27.8 ppm 付近のβメチレン炭素積分強度の半分、32.8 ppm付近のαメチレン炭素の積分強度の半分、及び46.0 ppm付近のメチン炭素積分強度の平均値をとってアクリル酸メチル単位のモル数に比例する量(TF)とした。TF = (I27.8/2+I32.8/2+I46.0)/3。
【0085】
(極性基含有ビニルモノマーがアクリル酸エチルの場合)
アクリル酸メチルの場合と同様、アクリル酸エチルが共重合したことにより生じる核磁気共鳴信号のうち、27.8 ppm 付近のβメチレン炭素積分強度の半分、32.8 ppm付近のαメチレン炭素の積分強度の半分、及び46.0 ppm付近のメチン炭素積分強度の平均値をとってアクリル酸エチル単位のモル数に比例する量(TF)とした。TF = (I27.8/2+I32.8/2+I46.0)/3。
なお、エチレン単位のモル数に比例する量TEは、30 ppm付近のγメチレンを含む主ピークの積分強度に上記各コモノマーにより生じる全てのαメチレン炭素ピークの積分強度の半分と全てのβメチレン炭素ピークの積分強度を加え合わせたものを1/2倍した値により求めた。TE = (I30+Iα/2+Iβ)/2。ここでI30は30ppm付近のγメチレンを含む主ピークの積分強度、Iαはコモノマーがプロピレンとアクリル酸メチルの場合にはI37.6+I32.8とし、1−ヘキセンとアクリル酸エチルの場合にはI34.6+I32.8とした。
【0086】
(共重合したα−オレフィン及び極性基含有ビニルモノマーに由来して生じる分岐構造以外の分岐量の総和)
Macromolecules 32(5) 1620 (1999)を参考に13C-NMRスペクトル解析を行い、共重合したα-オレフィン及び極性基含有ビニルモノマーに由来して生じる分岐構造以外の分岐構造の特定を行うとともに、公知の方法により1,000炭素当たりのそれらの分岐の量とその総和を求めた。
【0087】
b)IRによる極性基含有ビニルモノマー含有量測定
分析用サンプルは約0.5mmのプレス板を作製し、島津製作所FTIR−8300型を用いて、赤外吸収スペクトルを得た。コモノマー含量は、3450cm−1付近のカルボニル基の倍音吸収と、4250cm−1付近のオレフィン吸収の赤外吸収強度比をもとに算出した。なお、算出に当たっては、上記13C−NMR測定により作成した検量線を使用した。
【0088】
本発明においては、上記2種類の方法を採用している。IRによる分析法は簡便な手法であるが、相対的に分析精度は、13C−NMRによるものと比べ低い。本発明の実施例において、両方の分析値がある場合には、13C−NMRによる分析値を採用している。
【0089】
2.配位子合成
下記合成例で得られた配位子を用いた。なお、以下の合成例で特に断りのない限り、操作は精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は脱水・脱酸素したものを用いた。
【0090】
(合成例1)配位子(I)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(400mg,2.5mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,2mL,5mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−70℃まで冷却し、三塩化リン(340mg,2.5mmol)を加え、室温まで温度を上昇させながら2時間撹拌した(反応液A)。
1−ブロモ−2−イソプロピルベンゼン(1g,5mmol)のジエチルエーテル(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,2mL,5mmol)を−30℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら3時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Aに室温で滴下し、一晩撹拌した。反応後、水(20mL)を加え、エーテル抽出し(20mL×2)、1N塩酸(20mL×2)で洗浄した後、溶媒を留去した。メタノール(5mL)で洗浄し、白色の目的物を100mg得た。
1H NMR (CDCl3, ppm/d): 8.35 (ddd, J = 0.8, 4.8, 7.6 Hz, 1 H), 7.74 (tt, J = 1.4,7.6 Hz, 1 H), 7.65 (t, J = 7.6 Hz, 2 H), 7.53 (t, J = 6.4 Hz, 2 H), 7.42 (ddt, J = 1.2, 2.8, 7.6 Hz, 1 H), 7.26 (ddt, J = 0.8, 4.8, 8.0 Hz, 2 H), 7.05 (dd, J = 0.8, 7.6 Hz, 1 H), 6.98 (dd, J = 0.8, 5.2 Hz, 2 H), 3.00 (m, 2 H), 1.15 (d, J = 6.8 Hz, 6 H), 1.09 (d, J = 6.0 Hz, 6 H). 31P NMR (CDCl3, ppm/d): 9.5.
【0091】
(合成例2)配位子(II)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(400mg,2.5mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,1.9mL,4.8mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(0.2mL,2.4mmol)を加え、2時間撹拌した(反応液B)。
1−ブロモ−2−(1´−メチル−2´−メトキシ)エチルベンゼン(1g,4.8mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,1.9mL,4.8mmol)を0℃で滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Bに0℃で滴下し、室温で3時間撹拌した。溶媒を留去した後、水(100mL)を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)。塩化メチレン抽出し(100mL×3)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。酢酸エチル/ジエチルエーテル(1/10)混合溶媒より再結晶化し、白色の目的物を得た。
1H NMR (CDCl3, ppm/d): 8.30 (br, 1 H), 7.60 (br, 3 H), 7.50 (br, 2 H), 7.40 (br, 1 H), 7.27 (br, 2 H), 7.04 (br, 3 H), 3.0 (br, 12 H), 1.1 (br, 6 H).31P NMR (CDCl3, ppm/d): -8.5.
【0092】
(合成例3)配位子(III)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(3.4g,21.8mmol)のテトラヒドロフラン(200mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,17.4mL,43.6mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(1.9mL,21.8mmol)を加え、2時間撹拌した(反応液C)。
1−ブロモ−2−イソプロピル−4−メトキシベンゼン(10g,43.6mmol)のテトラヒドロフラン(200mL)溶液に、tブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M,54.5mL,87.2mmol)を−78℃でゆっくりと滴下し、1時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Cに−78℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、水(200mL)を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)。塩化メチレン抽出し(100mL×3)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。メタノールで再結晶化することより、白色の目的物を0.3g得た。
1H NMR (CDCl3, ppm/d): 8.34 (dd, J = 5.2, 7.6 Hz, 1 H), 7.71 (t, J = 7.6 Hz, 1 H), 7.40 (m, 1 H), 7.1-7.0 (m, 3 H), 6.91 (dd, J = 8.8, 14.4 Hz, 2 H), 6.75 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 3.80 (s, 6 H), 2.97 (m, 2 H), 1.15 (d, J = 6.8 Hz, 6 H), 1.08 (br, 6 H). 31P NMR (CDCl3, ppm/d): -10.7.
【0093】
(合成例4)配位子(IV)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(2g,12.6mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,10mL,25.3mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(1.0mL,12.6mmol)を加え、2時間撹拌した(反応液D)。
1−ブロモ−2−シクロヘキシルベンゼン(6g,25.3mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、tブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M,31.6mL,50.6mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、1時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Dに−78℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。LC−MS純度50%・水(200mL)を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)。塩化メチレン抽出し(100mL×3)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=50/1)により精製し、白色の目的物を1.0g得た。
1H NMR (CDCl3, ppm/d): 7.86 (m, 1 H), 7.30 (dt, J = 1.2, 7.6 Hz, 1 H), 7.24-7.15 (m, 5 H), 6.96 (m, 2 H), 6.83 (m, 1 H), 6.57 (m, 2 H), 3.21 (br, 2 H), 1.55 (br, 8 H), 1.31 (br, 4 H), 1.14 (br, 8 H). 31P NMR (CDCl3, ppm/d): -28.7.
【0094】
(合成例5)配位子(V)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(0.9g,5.8mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,4.6mL,11.5mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(0.5mL,5.8mmol)を加え、0℃で2時間撹拌した(反応液E)。
1−ブロモ−2−ハイドロフリルベンゼン(2.6g,11.5mmol)のテトラハイドロフラン(50mL)溶液に、t−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.5M,15.4mL,23mmol)を0℃で滴下し、1時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Eに−50℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、水(100mL)を加え、MTBEにて洗浄した後(100mL×3)、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)。塩化メチレン抽出し(100mL×3)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。メタノールで洗浄し、白色の目的物を1.0g得た。
1H NMR (DMSO, ppm/d): 7.88 (m, 3 H), 7.42 (m, 2 H), 7.37-7.29 (m, 3 H), 7.22 (t, J = 7.4 Hz, 1 H), 7.11 (t, J = 7.4 Hz, 2 H), 6.72 (m, 1 H), 6.63 (m, 2 H), 5.27 (br, 2 H), 3.94 (m, 2 H), 3.67 (m, 2 H), 2.0-1.1 (br, 8 H). 31P NMR (CDCl3, ppm/d): -30.4.
【0095】
(合成例6)配位子(VI)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(2.3g,14.5mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,11.6mL,29mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(1.26mL,14.5mmol)を加え、2時間撹拌した(反応液F)。
1−ブロモ−2−t−ブチルベンゼン(6.2g,29mmol)のジエチルエーテル(100mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M,11.6mL,29mmol)を0℃で滴下し、1時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Fに−78℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、水(100mL)を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)。塩化メチレン抽出し(100mL×3)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。メタノールより再結晶化し、白色の目的物を3.5g得た。
1H NMR (CDCl3, ppm/d): 8.33 (dd, J = 5.2, 7.6 Hz, 1 H), 7.7 (m, 3 H), 7.62 (t, J= 7.6 Hz, 1 H), 7.55 (t, J = 7.6 Hz, 1 H), 7.38 (m, 1 H), 7.25 (t, J = 7.6 Hz, 1 H), 7.2-7.1 (m, 3 H), 6.90 (dd, J = 8.0, 14.0 Hz, 1 H), 1.37
(s, 9 H), 1.34 (s, 9 H). 31P NMR (CDCl3, ppm/d): 4.5.
【0096】
(合成例7)配位子(VII)の合成
1−ブロモ−2−イソプロピルベンゼン(2.34g,11.8mmol)のジエチルエーテル(10mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,4.7mL,11.8mmol)を−30℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら2時間撹拌した。反応液を、三塩化リン(0.81g,5.88mmol)のテトラヒドロフラン溶液に−78℃で滴下し、そのままの温度で2時間撹拌した(反応液G)。
1−ブロモ−2−スルホン酸イソプロピルエステル−4−メトキシベンゼン(1.5g,4.7mmol)のテトラヒドロフラン(12mL)溶液に、t−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M,5.9mL,9.4mmol)を−78℃でゆっくりと滴下し、4時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Gに−78℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。水(20mL)を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<2)。塩化メチレン抽出し(50mL×3)、塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した(収量1.2g)。この生成物をメタノール(8mL)に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(1M,4mL,4mmol)とテトラヒドロフラン(8mL)を加え、50℃で4時間撹拌した。2規定の塩酸(20mL)を加えた後、塩化メチレン抽出し(50mL×3)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。少量のジエチルエーテルにて洗浄することにより、白色の目的物を得た(収量0.3g)。
1H NMR (CDCl3, ppm/d): 7.94 (br, 1 H), 7.68 (m, 2 H), 7.59 (m, 2 H), 7.31 (m, 2 H), 7.04 (m, 2 H), 6.94 (d, J = 2.8 Hz, 2 H), 3.95 (s, 3 H), 3.06 (m, 2 H), 1.19 (m, 12 H). 31P NMR (CDCl3, ppm/d): -10.4.
【0097】
(合成例8)配位子(VIII)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(1g,6.3mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,5mL,12.6mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(0.54mL,6.3mmol)を加え、2時間撹拌した(反応液H)。
1−ブロモ−2−(1´−メチル−2´−フェノキシ)エチルベンゼン(3.8g,12.6mmol)のジエチルエーテル(20mL)溶液に、ノルマルリチウムヘキサン溶液(2.5M,5.0mL,12.6mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温で2時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Hに室温で滴下し、室温で一晩撹拌した。LC−MS純度22%・水を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)。塩化メチレン抽出し(100mL×3)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=70/1)により精製し、白色の目的物を2.0g得た。
1H NMR (DMSO, ppm/d): 8.34 (t, J = 6.0 Hz, 1 H), 7.70 (t, J = 7.6 Hz, 1 H), 7.40 (m, 1 H), 7.4-7.0 (m, 10 H), 6.9-6.5 (m, 9 H), 4.0 (m, 2 H), 3.7 (m, 4 H), 1.1 (m, 3 H), 0.8 (m, 3 H). 31P NMR (CDCl3, ppm/d): -29.9.
【0098】
(合成例9)配位子(IX)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(0.6g,3.8mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,3mL,7.6mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(0.33mL,3.8mmol)を加え、2時間撹拌した(反応液I)。
1−ブロモ−2−イソプロピル−3−ヘキシルベンゼン(2.2g,7.6mmol)のジエチルエーテル(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,3.0mL,7.6mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温で3時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Iに−78℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。LC−MS純度51%。水を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)。塩化メチレン抽出し(50mL×3)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=70/1)により精製し、白色の目的物を0.8g得た。
1H NMR (CDCl3, ppm/d): 8.34 (d, J = 6.0 Hz, 1 H), 7.70 (d, J = 7.6 Hz, 1 H), 7.40 (m, 1 H), 7.29 (d, J = 4.4 Hz, 2 H), 7.04 (m, 3 H), 6.85 (dd, J = 7.6, 14.8 Hz, 2 H), 2.97 (m, 2 H), 2.60 (t, J = 7.6 Hz, 4 H), 1.54 (m, 4 H), 1.25 (s, 12 H), 1.2-1.0 (m, 12 H), 0.82 (br, 6 H). 31P NMR (CDCl3, ppm/d): -9.9.
【0099】
(合成例10)配位子(X)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(2g,12.6mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,10mL,25.3mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(1.0mL,12.6mmol)を加え、2時間撹拌した(反応液J1)。
マグネシウムをテトラヒドロフラン(20mL)に分散させ、1−ブロモ−2−メトキシベンゼン(2.3g,12.6mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液J1に−78℃で滴下し、1時間撹拌した(反応液J2)。
1−ブロモ−2−イソプロピルベンゼン(2.5g,12.6mmol)のジエチルエーテル(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,5.0mL,12.6mmol)を−30℃でゆっくりと滴下し、室温で2時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液J2に−78℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。LC−MS純度60%・水(50mL)を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)。塩化メチレン抽出し(100mL)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。メタノールで再結晶化することにより、白色の目的物を1.1g得た。
1H NMR (CDCl3, ppm/d): 8.34 (t, J = 6.0 Hz, 1 H), 7.7-7.6 (m, 3 H), 7.50 (t, J = 6.4 Hz, 1 H), 7.39 (m, 1 H), 7.23 (m, 1 H), 7.1-6.9 (m, 5 H), 3.75 (s, 3 H), 3.05 (m, 1 H), 1.15 (d, J = 6.8 Hz, 3 H), 1.04 (d, J = 6.4 Hz, 3 H). 31P NMR (CDCl3, ppm/d): -10.5.
【0100】
(合成例11)配位子(XI)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(3.0g,19mmol)のテトラヒドロフラン(40mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,15.2mL,38mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(1.7mL,19mmol)を加え、2時間撹拌した(反応液K1)。
1−ヨード−2,6−ジメトキシベンゼン(5.0g,19mmol)のテトラヒドロフラン(40mL)溶液に、イソプロピルマグネシウムクロライド(2.0M,9.5mL,19mmol)を−40℃でゆっくりと滴下し、室温で2時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液K1に−78℃で滴下し、室温で1時間撹拌した(反応液K2)。
1−ブロモ−2−イソプロピルベンゼン(3.8g,19.0mmol)のジエチルエーテル(30mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,7.6mL,19.0mmol)を−30℃でゆっくりと滴下し、室温で2時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液K2に−78℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。LC−MS純度39%・水(60mL)を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<1)。塩化メチレン抽出し(100mL×3)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。メタノールで再結晶化することにより、白色の目的物を4.4g得た。
1H NMR (CDCl3, ppm/d): 9.67 (d, J = 290.2 Hz, 1 H), 8.34 (m, 1 H), 7.7-7.5 (m, 3 H), 7.50 (m, 1 H), 7.41 (m, 1 H), 7.33-7.26 (m, 3 H), 6.67 (dd, J = 5.2, 8.8 Hz, 2 H), 3.65 (s, 6 H), 2.97 (m, 1 H), 1.14 (d, J = 6.8 Hz, 3 H), 1.05 (d, J = 6.4 Hz, 3 H). 31P NMR (CDCl3, ppm/d): -19.1.
【0101】
(合成例12)錯体(XII)の合成
配位子(I)(0.62g,1.45mmol)の塩化メチレン(40mL)溶液に、炭酸ナトリウム(0.19g,1.75mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。反応液を−20℃まで冷却し、Ni(PPh(Ph)Cl錯体(1.0g,1.46mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、ジエチルエーテルで抽出(10mL×3)した後、再結晶により、目的錯体を0.9g得た。
1H NMR (CDCl3, ppm/d): 8.45-7.07 (m, 32 H), 2.29 (m, 2 H), 1.24 (m, 12 H). 31P NMR (CDCl3, ppm/d): -9.5.
【0102】
(合成例13)配位子(XIII)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(5.2g,32.9mmol)のテトラヒドロフラン(60mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,25mL,62mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら20時間撹拌した。この反応液に、ビス(2−メトキシフェニル)メトキシホスフィン(9.1g,32.9mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液を滴下し、16時間撹拌した。塩化アンモニウム(3.4g,62mmol)を加えた後、溶媒を留去し、水(100mL)を加えた。MTBE(40mL×2)で洗浄した後、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)。塩化メチレン抽出し(60mL×2)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、−35℃で再結晶化し、白色の目的物を3.7g得た。
1H NMR (C2D2Cl4, ppm/d): 6.7-8.2 (m, 12H), 3.79 (s, 6H). 31P NMR (C2D2Cl4, ppm/d): -9.8.
【0103】
(合成例14)配位子(XIV)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(0.74g,4.7mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,3.8mL,9.4mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら2時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(0.41mL,4.7mmol)を加え、室温で2時間撹拌した(反応液L)。
1−ブロモ−2−(2´,6´−ジメトキシフェニル)ベンゼン(2.8g,9.4mmol)のテトラヒドロフラン(25mL)溶液に、t−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.5M,12.5mL,18.8mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、30分間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Lに−50℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。溶媒を留去した後、水(200mL)を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)。MTBE抽出し(100mL×3)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。THF(5mL)で洗浄し、白色の目的物を得た。0.5g。
1H NMR (CDCl3, ppm/d): 8.08 (m, 1 H), 7.61 (m, 3 H), 7.42-7.12 (m, 10 H), 6.68-6.22 (br, 4 H), 3.84-3.31 (br, 9 H), 2.96 (br, 3 H). 31P NMR (CDCl3, ppm/d): -2.4.
【0104】
3.化学処理モンモリロナイトの調製
(処理例1)硫酸/硫酸リチウム処理モンモリロナイトの調製
撹拌翼と還流装置を取り付けた500mLの丸形三口フラスコに、蒸留水170gを投入し、98%硫酸50gを滴下し、内部温度を90℃にした。そこへ、ベンクレイSL(水澤化学社製)を30g添加後撹拌した。その後90℃で3.5時間反応させた。このスラリーを150mLの蒸留水に注いで反応を停止しヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し75mLの蒸留水で洗浄した。得られたケーキを300mLの蒸留水に分散させ撹拌後濾過した。この操作を3回繰り返した。
回収したケーキを1Lビーカーにて硫酸亜鉛7水和物17gを純水135mLに溶解した水溶液に加えて室温で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し75mLの蒸留水で洗浄した。得られたケーキを300mLの蒸留水に分散させ撹拌後濾過した。この操作を3回繰りかえした。
回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。その結果、22gの化学処理体を得た。この化学処理モンモリロナイトを容積200mLのフラスコに入れ、200℃で減圧乾燥させガスの発生が収まってから、更に2時間減圧乾燥した。乾燥後は、窒素雰囲気下で保存し、重合評価の用いる場合は、塩化メチレン又はトルエンでスラリー化(40mg−モンモリロナイト/ml−溶媒)して添加した。
【0105】
(処理例2)化学処理モンモリロナイトの有機アルミニウム処理
内容積200mLのフラスコに上記(処理例1)で得た乾燥した化学処理モンモリロナイト1gを秤量し、ヘプタン3.6mL、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液6.4mL(2.5mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、塩化メチレンまたはトルエンで残液率1/100まで洗浄し、最後に洗浄に用いたものと同一の溶媒を使用し、スラリー量を25mLにした。
【0106】
4.重合
4−1.(実施例1−1)
充分に窒素置換した30mLフラスコに、パラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子をそれぞれ100μmol秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。次に、内容積1Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン(617mL)、メチルアクリレート(72mL,重合時の濃度が1mol/Lになるように調整)を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。先に調製した触媒溶液を添加し、室温下、エチレン圧を3MPaとして重合を開始した。反応中は温度を80℃に保ち、エチレンの分圧が3MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。
重合終了後、エチレンをパージし、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーがトルエン不溶の固体である場合には、濾過によりポリマーと溶媒を分離した。濾過では分離が不充分な場合には、エタノール(1L)を用いてポリマーを再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。更に、得られた固形ポリマーをエタノール(1L)に分散させ、ここに1N−塩酸(20ml)を加えて60分撹拌し、ポリマーを濾過した。得られた固形ポリマーをエタノールで洗浄し、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的にポリマーを回収した。それぞれの重合結果を表2に示す。
【0107】
【表2】

【0108】
4−2.(実施例2−1)
充分に窒素置換した30mLフラスコに、ニッケル錯体(VII)を100μmol加え、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理して、触媒スラリーを調製した。次に、内容積1Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン(617mL)、メチルアクリレート(72mL,重合時の濃度が1mol/Lになるように調整)を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。先に調製した触媒溶液を添加し、室温下、エチレン圧を3MPaとして重合を開始した。反応中は温度を室温に保ち、エチレンの分圧が3MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。15分後、エチレンをパージし、エバポレーターにて濃縮した。ここに1N−塩酸(20ml)を加えて60分撹拌し、ポリマーを濾過した。得られた固形ポリマーをエタノールで洗浄し、60℃で3時間減圧乾燥することで、生成物を回収した。0.3g、Mw:36,000、Mw/Mn:6.72、Tm:120.1℃。
【0109】
(比較例2−1)
充分に窒素置換した30mLフラスコに、(ビスシクロオクタジエン)ニッケルとリンスルホン酸配位子(VIII)を1,000μmol加え、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理して、触媒スラリーを調製した。次に、内容積1Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン(708mL)、メチルアクリレート(1mol/L)を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。触媒スラリーを添加し、室温下、エチレン圧を3MPaとして重合を開始した。反応中は温度を室温に保ち、エチレンの分圧が3MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。15分後、エチレンをパージし、エバポレーターにて濃縮した。ここに1N−塩酸(20mL)を加えて60分撹拌したところ、ポリマーは得られなかった。
【0110】
4−3.(実施例3,4)
(ビスジベンジリデンアセトン)パラジウムとリンスルホン酸配位子のスラリーを別々に用意し、超音波振動器にて処理した後、混合して室温で15分間撹拌することで、0.0025〜0.002mol/Lの触媒スラリーを調製した。内容積10mLの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン、所定量のコモノマーを導入した。昇温後、エチレンで加圧して2MPaとした後、先に調製した触媒スラリーを所定量添加して、重合を開始した。尚、重合時の液総量は5mLになるように調製した。反応中は温度を一定に保ち、エチレンの分圧が2MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。60分後に、未反応のエチレンをパージ後、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーを濾過により回収し、40℃で6時間減圧乾燥した。詳細な重合条件と重合結果を表3,4に示す。
【0111】
【表3】

【0112】
【表4】

【0113】
4−4.(実施例5,6,7)
内容積10mLの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン、所定量のコモノマーを導入した。昇温後、エチレンで加圧して2MPaとした。(ビスシクロオクタジエン)ニッケルとリンスルホン酸配位子のトルエン溶液を別々に用意し、(ビスシクロオクタジエン)ニッケル、リンスルホン酸配位子の順でそれぞれを所定量添加して、重合を開始した。また、アニリンなどの第3成分を使用する場合は、(ビスシクロオクタジエン)ニッケルの添加後、リンスルホン酸配位子を加える前に添加した。尚、重合時の液総量は5mLになるように調製した。反応中は温度を一定に保ち、エチレンの分圧が2MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。60分後に、未反応のエチレンをパージ後、オートクレーブを室温まで冷却し、溶媒を留去した。少量のアセトンを用いて洗浄し、濾過によりポリマーを回収し、40℃で6時間減圧乾燥した。重合条件と重合結果を表5,6,7に示す。
【0114】
【表5】


【0115】
【表6】


【0116】
【表7】

【0117】
4−5.(実施例8,9)

(ビスジベンジリデンアセトン)パラジウムとリンスルホン酸配位子の塩化メチレン溶液又はスラリーを別々に用意し、室温で混合した後、超音波振動器で30分間撹拌することで、0.0025〜0.002mol/Lの触媒スラリーを調製した。その後、処理例1又は処理例2で得られた化学処理モンモリロナイトの塩化メチレンスラリー(40mg−clay/ml−トルエン)を所定量添加し、更に室温で30分間、スターラーで撹拌し担持触媒スラリーを得た。重合評価は、ここで得られた担持触媒スラリーは、そのまま重合評価に用いた場合と、塩化メチレンで残液率1/100まで洗浄した場合で実施した。
内容積10mLの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン、所定量のコモノマーを導入した。昇温後、エチレンで加圧して2MPaとした後、先に調製した担持触媒スラリーを所定量添加して、重合を開始した。尚、重合時の液総量は5mLになるように調製した。反応中は温度を80℃に保ち、エチレンの分圧が2MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。60分後に、未反応のエチレンをパージ後、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーを濾過により回収し、40℃で6時間減圧乾燥した。重合条件と重合結果を表8に示す。
【0118】

【表8】

【0119】
4-6.(実施例10,11,比較例11)

(ビスシクロオクタジエン)ニッケルとリンスルホン酸配位子のトルエン溶液またはスラリーを別々に用意した。超音波振動器を用いて室温で30分間撹拌することで、0.0025〜0.002mol/Lの触媒スラリーを調製した。その後、化学処理モンモリロナイトの処理例1又は処理例2で得られた化学処理粘土のトルエンスラリー(40mg−clay/ml−トルエン)を所定量添加し、更に室温で30分間、スターラーで撹拌し、担持触媒スラリーを得た。重合評価は、ここで得られた担持触媒スラリーは、そのまま重合評価に用いた場合と、トルエンで残液率1/100まで洗浄した場合で実施した。
内容積10mLの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン、所定量のコモノマーを導入した。昇温後、エチレンで加圧して2MPaとした後、先に調製した担持触媒スラリーを所定量添加して、重合を開始した。尚、重合時の液総量は5mLになるように調製した。反応中は温度を80℃に保ち、エチレンの分圧が2MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。60分後に、未反応のエチレンをパージ後、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーを濾過により回収し、40℃で6時間減圧乾燥した。重合条件と重合結果を表9に示す。
【0120】

【表9】

【0121】
4−7.(実施例−12:エチレン/1−ヘキセン/エチルアクリレート共重合)充分に窒素置換した30mLフラスコに、パラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ200μmol秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。次に、内容積1Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン(170mL)、1−ヘキセン(279mL)、エチルアクリレート(245mL)を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。先に調製した触媒スラリーを全量添加し、エチレンを圧力3MPaで加圧して重合を開始した。反応中は温度を80℃に保ち、圧力が3MPaに保持されるように連続的にエチレンを供給した。180分後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、エタノール(1L)を用いてポリマーを再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。更に、得られた固形ポリマーをエタノール(1L)に分散させ、ここに1N−塩酸(20ml)を加えて60分撹拌し、ポリマーを濾過した。得られた固形ポリマーをエタノールで洗浄し、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的にポリマーを回収した。
エチレン/1−ヘキセン/エチルアクリレート共重合が74g得られた。触媒活性は、1.2E+05g/mol/h、GPCによるMwは92,000、Mw/Mn:2.1、融点は、102.9℃、13CNMRによるモノマー組成は、エチレン含量が、96.3mol%、1−ヘキセン含量が、1.1mol%、エチルアクリレート含量が、2.6mol%であった。重合条件及び重合結果を表10,11に示す。
【0122】
4−8.(実施例−13〜22:エチレン/1−ヘキセン/エチルアクリレート共重合)充分に窒素置換した30mLフラスコに、表10に示した所定量のパラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)を秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。
次に、内容積2.4Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、表10に示した所定量の精製トルエン(実施例22はトルエンの代わりにヘキサンを使用)、エチルアクリレート、1−ヘキセンをオートクレーブ内に導入した。
オートクレーブ内を所定温度に制御した後、窒素でオートクレーブ内の圧力を0.1MPaに昇圧し、更にエチレン分圧分を昇圧した(全圧=エチレン分圧+0.1)。オートクレーブ内の温度が安定した後、先に調製した触媒スラリーを少量の窒素によりオートクレーブに圧入して重合を開始した。反応中は所定温度に保ち、圧力が所定圧力に保持されるように連続的にエチレンを供給した。
所定時間重合した後、エチレンをパージして、オートクレーブを室温まで冷却することで重合を停止した。生成したポリマーは反応溶液を1Lのアセトンに加えて洗浄した後、濾過により分離した。分離したポリマーは更にアセトン洗浄と濾過を2回繰り返し、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的にポリマーを回収した。それぞれの重合結果を表11示す。
【0123】

【表10】

【0124】
【表11】

【0125】
4−9.(実施例−23:エチレン/プロピレン/メチルアクリレート共重合)充分に窒素置換した30mLフラスコに、パラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ100μmol秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。
次に、内容積1Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン(617mL)、メチルアクリレート(72mL,重合時の濃度が1mol/Lになるように調整)を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。先に調製した触媒スラリーを全量添加し、予め別のオートクレーブを使用して80℃で調整していたエチレン/プロピレン混合ガス(ガス組成比:7/3)を圧力1.0MPaで加圧して重合を開始した。反応中は温度を80℃に保ち、圧力が1.0MPaに保持されるように連続的に混合ガスを供給した。60分後、混合ガスをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、エタノール(1L)を用いてポリマーを再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。更に、得られた固形ポリマーをエタノール(1L)に分散させ、ここに1N−塩酸(20ml)を加えて60分撹拌し、ポリマーを濾過した。得られた固形ポリマーをエタノールで洗浄し、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的にエチレン/プロピレン/エチルアクリレート共重合体を7.0g回収した。触媒活性は6.6E+04g/mol/hであった。得られた共重合体の分子量Mwは、65,000、Mw/Mnは1.9、融点は92.1℃、メチルアクリレート含量は3.7mol%、プロピレン含量は2.4mol%であった。重合結果を表12に示す。
【0126】
4−10.(実施例−24:エチレン/プロピレン/メチルアクリレート共重合)充分に窒素置換した30mLフラスコに、パラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ264μmol秤量し、脱水トルエン(20mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。
次に、予め別の2Lの誘導撹拌式オートクレーブをエチレン/プロピレン混合ガス用バッファータンクとして準備した。このタンクに液化プロピレン(150mL)及びエチレン(2.5MPa)を20℃で装入した後、充分に混合されるまで撹拌し、50℃まで昇温した。

続いて、重合に使用する内容積2Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン(500mL)、メチルアクリレート(37.5mL)、先に調製した触媒スラリー全量を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。20℃でオートクレーブ内に、プロピレン (100mL)を導入し、上記調整した混合ガスを導入して1.2MPaまで昇圧した後、70℃まで昇温し、全圧が2.0MPaになるように混合ガスを追加した。重合中は全圧を保つように適宜混合ガスを導入した。10分後にエタノール(25ml)を装入し、未反応ガスをパージすることで重合を停止した。回収したトルエン懸濁液にエタノール(1,000mL)を加えて一晩静置した後、その混合物を濾過した。沈殿物にアセトン(500mL)を加え、20℃で20分間撹拌した後、濾過を行った。この洗浄をもう2回実施した。洗浄後、70℃で3時間減圧乾燥を行い、エチレン−プロピレン−メチルアクリレート共重合体を23.2g(触媒活性は、5.3E+05(g/mol/h))を得た。得られた共重合体のDSCによる融点は、107.2℃、GPCによるMwは80,000、Mw/Mnは1.7、メチルアクリレート含量は1.0mol%、プロピレン含量は3.0mol%であった。重合結果を表12に示す。
【0127】
4−11.(実施例−25:エチレン/プロピレン/メチルアクリレート共重合) 充分に窒素置換した100mLフラスコに、パラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ580μmol秤量し、脱水トルエン(50mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。
次に、予め別の2Lの誘導撹拌式オートクレーブをエチレン/プロピレン混合ガス用バッファータンクとして準備した。このタンクに液化プロピレン(150mL)及びエチレン(2.5MPa)を20℃で装入した後、充分に混合されるまで撹拌し、50℃まで昇温した。

続いて、重合に使用する内容積2Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ
内を精製窒素で置換し、精製トルエン(500mL)、メチルアクリレート(37.5mL)、先に調製した触媒スラリー全量を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。20℃でオートクレーブ内に、プロピレン (100mL)を導入し、上記調整した混合ガスを導入して1.2MPaまで昇圧した後、55℃まで昇温し、全圧が2.0MPaになるように混合ガスを追加した。重合中は全圧を保つように適宜混合ガスを導入した。25分後にエタノール(25ml)を装入し、未反応ガスをパージすることで重合を停止した。回収したトルエン懸濁液にエタノール(1,000mL)を加えて一晩静置した後、その混合物を濾過した。沈殿物にアセトン(500mL)を加え、20℃で20分間撹拌した後、濾過を行った。この洗浄をもう2回実施した。洗浄後、70℃で3時間減圧乾燥を行い、エチレン−プロピレン−メチルアクリレート共重合体を19.6g(触媒活性は、8.1E+04(g/mol/h))を得た。得られた共重合体のDSCによる融点は、113.6℃、GPCによるMwは58,000、Mw/Mnは1.6、メチルアクリレート含量は0.6mol%、プロピレン含量は2.4mol%であった。重合結果を表12に示す。
【0128】

4−12.(実施例−26:エチレン/プロピレン/メチルアクリレート共重合) 充分に窒素置換した50mLフラスコに、パラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ256μmol秤量し、脱水トルエン(20mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。
次に、予め別の2Lの誘導撹拌式オートクレーブをエチレン/プロピレン混合ガス用バッファータンクとして準備した。このタンクに液化プロピレン(150mL)及びエチレン(2.5MPa)を20℃で装入した後、充分に混合されるまで撹拌し、50℃まで昇温した。

続いて、重合に使用する内容積2Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン(500mL)、メチルアクリレート(46.9mL)、先に調製した触媒スラリー全量を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。20℃でオートクレーブ内に、プロピレン (100mL)を導入し、上記調整した混合ガスを導入して1.2MPaまで昇圧した後、55℃まで昇温し、全圧が2.0MPaになるように混合ガスを追加した。重合中は全圧を保つように適宜混合ガスを導入した。30分後にエタノール(25ml)を装入し、未反応ガスをパージすることで重合を停止した。回収したトルエン懸濁液にエタノール(1,000mL)を加えて一晩静置した後、その混合物を濾過した。得られた沈殿物にトルエン(100mL)と35%塩酸(0.5mL)を加え、70℃で30分間撹拌し、再び濾過を行った。沈殿物にアセトン(500mL)を加え、20℃で20分間撹拌した後、濾過を行った。この洗浄をもう2回実施した。洗浄後、70℃で3時間減圧乾燥を行い、エチレン−プロピレン−メチルアクリレート共重合体を1.87g(触媒活性は、1.5E+04(g/mol/h))を得た。得られた共重合体のDSCによる融点は、120.1℃、GPCによるMwは55,000、Mw/Mnは1.9、メチルアクリレート含量は0.6mol%、プロピレン含量は1.0mol%であった。重合結果を表12に示す。
【0129】
【表12】

【0130】
4−13.(実施例−27〜29:エチレンホモ重合)充分に窒素置換した30mLフラスコに、表13に示すリンスルホン酸配位子を使用して、パラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)を、それぞれ25μmol秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。次に、内容積1Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン(790mL)を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。先に調製した触媒スラリーを全量添加し、80℃に昇温し、エチレン圧力3.0MPaで加圧して重合を開始した。反応中は温度を80℃に保ち、圧力が3.0MPaに保持されるように連続的に混合ガスを供給した。60分後、エチレンガスをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、沈殿したポリマーを濾過した。更に、得られたポリマーをエタノール(1L)に分散させ、ここに1N−塩酸(20ml)を加えて60分撹拌し、ポリマーを濾過した。得られた固形ポリマーをエタノールで洗浄し、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的にエチレンホモ重合体を回収した。重合結果を表13に示す。
実施例27のポリエチレンホモの13C−NMRを測定した結果、メチル、エチルなどの短鎖分岐は確認されず、検出限界以下であり、短鎖分岐の非常に少ないポリエチレンであることを確認した。
【0131】
【表13】

【0132】
4−14.(実施例−30、31:エチレン−エチルアクリレート共重合)充分に窒素置換した30mLフラスコに、表14に示す所定量のパラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。次に、内容積1Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、表14に示す所定量の精製トルエン、メチルアクリレートを精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。先に調製した触媒溶液を添加し、室温下、エチレン圧を3MPaとして重合を開始した。反応中は温度を80℃に保ち、エチレンの分圧が3MPaに保持されるように連続的に所定時間エチレンを供給した。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーがトルエン不溶の固体である場合には、濾過によりポリマーと溶媒を分離した。濾過では分離が不十分な場合には、エタノール(1L)を用いてポリマーを再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。更に、得られた固形ポリマーをエタノール(1L)に分散させ、ここに1N−塩酸(20ml)を加えて60分撹拌し、ポリマーを濾過した。得られた固形ポリマーをエタノールで洗浄し、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的にポリマーを回収した。それぞれの重合結果を表14に示す。
13C−NMRにより確認した結果、エチルアクリレートが主鎖中に挿入しており、メチル、エチル等の短鎖分岐は確認できなかった。
【0133】
【表14】

【0134】
4−15.(実施例−32、33:エチレン−1−ヘキセン共重合)
充分に窒素置換した30mLフラスコに、表15に示す所定量のパラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。次に、内容積1Lの誘導撹拌式ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、表14に示す所定量の精製トルエン、1−ヘキセンを精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。先に調製した触媒溶液を添加し、室温下、エチレン圧を3MPaとして重合を開始した。反応中は温度を80℃に保ち、エチレンの分圧が3MPaに保持されるように連続的に所定時間エチレンを供給した。

重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーがトルエン不溶の固体である場合には、濾過によりポリマーと溶媒を分離した。濾過では分離が不充分な場合には、エタノール(1L)を用いてポリマーを再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。更に、得られた固形ポリマーをエタノール(1L)に分散させ、ここに1N−塩酸(20ml)を加えて60分撹拌し、ポリマーを濾過した。得られた固形ポリマーをエタノールで洗浄し、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的にポリマーを回収した。それぞれの重合結果を表15に示す。
【0135】

【表15】

【0136】
4−16.(実施例−34:エチレン/プロピレン共重合)メチルアクリレートを使用せず、精製トルエンを700mL使用した以外は、実施例−23と同様に実施した。その結果、エチレン/プロピレン共重合体を36g回収した。触媒活性は4.3E+05g/mol/hであった。得られた共重合体の分子量Mwは、23,000、Mw/Mnは2.3、融点は90.2℃、プロピレン含量は16.9mol%であった。
【0137】

5.実施例と比較例の結果の考察

本願の各請求項の要件を満たす、各実施例は各比較例と対照すると、下記の良好な結果が得られている。
実施例1では、本発明による触媒組成物を用いることで、比較的高い活性で、公知技術である比較例よりもコモノマー含量と分子量の双方をバランス良く発現できることを明らかにした。

実施例2では、エチレン−アクリレート共重合体が得られなかった公知技術に対し、本発明によるニッケル錯体を触媒に用いることで、共重合体が製造できることを示した。

実施例3では、本発明による触媒組成物を用いることで、比較的高い活性で、公知技術である比較例よりもコモノマー含量と分子量の双方をバランス良く発現できることを明らかにした。

実施例4では、本発明による触媒組成物を用いることで、多様なコモノマーでも適用可能である点、を明らかにした。

実施例5では、本発明によるリンスルホン酸配位子をニッケルと組み合わせて触媒組成物に用いることで、エチレン/極性基含有オレフィン共重合体を製造可能であることを示した。

実施例6では、本発明によるリンスルホン酸配位子をニッケルと組み合わせて触媒組成物に用い、第三成分として、アニリン、MMA、クレイ、トリフェニルボランを添加しても、エチレン/極性基含有オレフィン共重合体を製造可能であることを示した。

実施例7では、本発明によるリンスルホン酸配位子をニッケルと組み合わせて触媒組成物に用いることで、エチレンホモ重合体を高活性に製造可能であることを示した。
【0138】
実施例8及び9では、本発明によるリンスルホン酸配位子とパラジウムを担持した触媒を用いても、エチレン重合体及びエチレンーアクリレート共重合体が得られることを示した。
実施例10及び11では、本発明によるリンスルホン酸配位子とニッケルを担持した触媒を用いても、公知技術である比較例よりも高活性でエチレン重合体を得ることができることを示した。また、エチレンーアクリレート共重合体が得られることも示した。
実施例12〜22では、本発明の触媒組成物であるリンスルホン酸配位子とパラジウム化合物による反応生成物により、分子量分布が狭く、比較的分子量が高いエチレン−1−ヘキセン−エチルアクリレート三元共重合体が製造可能であることを示した。
更に、実施例24〜26では、エチレン−プロピレン−メチルアクリレート三元共重合体も製造可能であることを示した。
実施例27〜29では、本発明の触媒組成物であるリンスルホン酸配位子とパラジウム化合物による反応生成物により、高活性でエチレンホモ重合体の製造が可能であり、得られる重合体は高分子量で、分子量分布が狭く、分岐差が少ないポリマーが製造可能であることを示した。
実施例30〜33では、本発明の触媒組成物であるリンスルホン酸配位子とパラジウム化合物による反応生成物により、実施例−1や実施例−4と同様に、エチレンとアクリレート、エチレンと1−ヘキセンの共重合が進行していることを確認した。
実施例34では、本発明の触媒組成物であるリンスルホン酸配位子とパラジウム化合物による反応生成物により、エチレンとプロピレンの共重合が進行していることを13C−NMRにより確認した。
【0139】
以上の各実施例の良好な結果、及び各比較例との対照により、本発明の構成(発明特定事項)の有意性と合理性及び従来技術に対する卓越性が明確にされている。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の触媒組成物の存在下にα−オレフィンとアクリル酸系モノマーとの共重合を行うことにより、コモノマー含量が高く、かつ、分子量が高い、という工業的に有用な共重合体を製造可能になった。この共重合体は機械的・熱的物性に優れ、有用な成形体として応用可能である。具体的には、塗装性、印刷性、帯電防止性、無機フィラー分散性、他樹脂との接着性、他樹脂との相溶化能などの良好な性質を利用して、本発明の共重合体は、さまざまな用途、例えば、フィルム、シート、接着性樹脂、バインダー、相溶化剤などとして応用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物。
【化1】


・・・(1)
(一般式(1)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−SOH又はCOHである。R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R〜Rの少なくとも一つは、二級もしくは三級のアルキル基である。R〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基を示す。)
【請求項2】
一般式(1)において、R、Rの少なくとも一つ、及び、R、Rの少なくとも一つは二級もしくは三級のアルキル基であることを特徴とする、請求項1に記載のトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物。
【請求項3】

下記一般式(2)で表されるトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物。

【化2】


・・・(2)(一般式(2)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−SOH又はCOHである。R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R〜Rの少なくとも一つは、芳香環に直接結合している炭素と、O又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基である。R〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基を示す。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物と、8〜10族の遷移金属化合物とを反応させて得られるα−オレフィン重合触媒。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物と、8〜10族の遷移金属化合物、及び微粒子担体を含むα−オレフィン重合触媒。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物と8〜10族の遷移金属化合物との反応物と、微粒子担体を含むα−オレフィン重合触媒。
【請求項7】
下記一般式(3)で表されることを特徴とする金属錯体。

【化3】

・・・(3)

(一般式(3)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−SO−又はCO−である。R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R〜Rの少なくとも一つは、二級もしくは三級のアルキル基である。R〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基を示す。Mは、8〜10族の遷移金属からなる群より選択された金属原子を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基を示す。Bは、Mに配位した任意のリガンドを示す。また、AとBは互いに結合して環を形成していてもよい。)
【請求項8】
一般式(3)において、R、Rの少なくとも一つ、及び、R、Rの少なくとも一つは二級もしくは三級のアルキル基であることを特徴とする、請求項7に記載の金属錯体。
【請求項9】
下記一般式(4)で表されることを特徴とする金属錯体。
【化4】

・・・(4)
(一般式(4)中、Yは、リン又は砒素であり、Zは、−SO−又はCO−である。R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、又は炭素数6〜30のアリールオキシ基を示し、R〜Rの少なくとも一つは、芳香環に直接結合している炭素と、O又はNより選ばれる元素との単結合を含む置換基である。R〜R14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜30の炭化水素基、ヘテロ原子を有する炭素数1〜30の炭化水素基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、又は炭素数1〜30の炭化水素基で置換されたシリル基を示す。Mは、8〜10族の遷移金属からなる群より選択された金属原子を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基を示す。Bは、Mに配位した任意のリガンドを示す。また、AとBは互いに結合して環を形成していてもよい。)
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の金属錯体を含むα−オレフィン重合触媒。
【請求項11】
請求項7〜9のいずれかに記載の金属錯体と、微粒子担体を含むα−オレフィン重合触媒。
【請求項12】
微粒子担体がイオン交換性層状珪酸塩であることを特徴とする、請求項5又は6或は11のいずれかに記載のα−オレフィン重合触媒。
【請求項13】
イオン交換性層状珪酸塩がスメクタイト族であることを特徴とする、請求項12に記載のα−オレフィン重合触媒。
【請求項14】
請求項4〜6,10〜13のいずれかに記載のα−オレフィン重合触媒の存在下に、α−オレフィンと、(メタ)アクリル酸またはエステルとを共重合することを特徴とする、α−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法。
【請求項15】
請求項4〜6,10〜13のいずれかに記載のα−オレフィン重合触媒の存在下に、二種類の異なるα−オレフィン、(メタ)アクリル酸またはエステルの三成分を共重合することを特徴とする、α−オレフィン・(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法。


【公開番号】特開2010−150246(P2010−150246A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265764(P2009−265764)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】