説明

新規なリポオキシゲナーゼ阻害剤

本発明は、式Iの特定の新規な誘導体であて、リポオキシゲナーゼによって媒介される障害を治療するための医薬組成物の製造において有用な誘導体に関する:


式I
(式中、X及びR1〜R10に対するX及びが明細書に記載され、各々は、R5が、OH、−NRdORa、NRd−NRbcであり、R7が、−NRdORa、NRd−NRbcであり、C=R78が、C=NORa又はC=N−NRbcである)。
また、本発明は、リポオキシゲナーゼによって媒介される障害の治療用医薬組成物の製造において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この用途は米国仮出願出願番号2005年2月25日に出願の第60/656,644号の特許法第119条(e)の下で利益を請求する。これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0002】
本発明は、下記に示す式Iに係る新規クロマン及びチオクロマン誘導体、これらを含む医薬製剤及び治療薬としてのこれらの使用並びにそれらの合成に関する。リポオキシゲナーゼ阻害剤として作用できる治療薬の用途としては、限定されないが、アポトーシスを癌細胞に含む疾患、低酸素又は無酸素を含む疾患、炎症を含む疾患、気管の障害、神経変性及び神経炎症を含む疾患、及び自己免疫システムを含む疾患の予防又は治療が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
クロマン基を有する化合物のリポキシゲナーゼ阻害剤としての使用は、例えば米国特許第5,059,609号明細書、米国特許第4,950,684号明細書、米国特許第5,015,661号明細書、米国特許第4,780,469号明細書、米国特許第5,591,772号明細書、米国特許第5,925,673号明細書、米国特許第5,250,547号明細書、米国特許第5,393,775号明細書、米国特許第4,814,346号明細書、米国特許第5,939,452号明細書、米国特許第6,051,601号明細書、米国特許第6,117,874号明細書及び米国特許第6,133,286号明細書に開示されている。
【0004】
アラキドン酸は、細胞膜内に存在する必須脂肪酸であり、ホスホリパーゼの作用によってリン脂質から放出される。放出されたアラキドン酸は、主要な酵素系の3経路、すなわちリポキシゲナーゼ経路を介して代謝され、炎症反応と関連するプロスタグランジン、及び血栓の形成と関連するトロンボキサン、又はアレルギー反応を誘導するロイコトリエンなどの物質を形成する。
【0005】
リポキシゲナーゼは、多価不飽和脂肪酸及びこれらのエステルの酸化を触媒する非ヘム鉄含有酵素である。これらは、元々炭素の5位、12位及び15位におけるアラキドン酸内への分子状酸素の挿入に対する基質特異性に基づいて分類されていたが、最近では、系統発生学的分類法が用いられている。これによると、哺乳類酵素が4種類の主なサブタイプ、5−リポキシゲナーゼ、12/15−リポキシゲナーゼ、血小板12−リポキシゲナーゼ及び表皮型リポキシゲナーゼに分類される。リポキシゲナーゼの12/15ファミリーには、配列相同性が高い2種類のサブファミリーの網状赤血球15−リポキシゲナーゼ(ウサギ及びヒトに存在)及び白血球12−リポキシゲナーゼ(ラット、ブタ、ラット及びウサギに存在)が含まれる。この種類のリポキシゲナーゼは、網状赤血球15−リポキシゲナーゼ及び白血球12−リポキシゲナーゼに対して血小板12−リポキシゲナーゼよりも高い相同性を有する。
【0006】
12/15−リポキシゲナーゼ又は15−リポキシゲナーゼカスケードの酸化的代謝産物は、トロンビンで誘導される血小板活性化の増大(Settyら、Blood,(1992),2765−2773)、種々の癌の進行に(Kelavkarら、Curr.Urol.Rep.Vol.3 no.3(2002)pp.207−214)及び関連した病態(Tisdaleら、Science Vol.289 no.5488(2000)pp.2293−4)に関係すると考えられる。また、15−リポキシゲナーゼ阻害剤による治療によって、高脂肪食餌(Bocanら、Atherosclerosis,Vol.136(1998)pp.203−16)を摂食させたウサギにおいてアテローム発生を抑制することが示されている。特定のリポキシゲナーゼ酵素は、LDLからアテローム生成形態への酸化を誘発することによってアテローム性動脈硬化症の発症及び進行に関与する証拠がこれまで報告されている(Sparrow,C.P.,ら、J.Lipid Res.Vol.29(1988)pp.745−753、及びSteinberg,D.,New Eng.J.Med.Vol.320(1989)pp.915−924)。また、12−リポキシゲナーゼ酵素は、アンジオテンシンIIが誘発する血管及び副腎の作用を媒介する役割があることが報告されている(NataRajan,R.,ら、Endocrinology Vol.131(1992)pp.1174〜1180)。また、最近の研究では、骨密度の制御に対する15−リポキシゲナーゼ酵素の役割も示されている(Klein,R.ら、Science Vol.303 no.5655(2004)329−332)。
【0007】
酵素5−リポキシゲナーゼは、アラキドン酸を5−ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(5−HPETE)に変換する。これは、5−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(5−HETE)及び重要な種類のメディエーター(ロイコトリエン)を産生する代謝経路の最初のステップである。例えば、Cloudら、J.Allergy Clin.(1987)pp.256(喘息);Turnbullら、pp.526−9(慢性気管支炎);Cromwellら、pp.164−5(嚢胞性線維症);Davidsonら、Pharmacol.Vol.34 no.61(982)pp.410(リウマチ様関節炎);Raeら、Lancet.Vol.2 no.8308(1982)pp.1122−4;Cookら、J.Pharmacol.Exp.Ther.,235,(1985)pp.470−474(心血管状態);Tsujiら、Biochem.Pharmacol.Vol.55 no.3:(1998);pp.297−304(乾癬などの皮膚炎)には、特定の疾患の病態に対するロイコトリエンの役割が証明されている。
【0008】
また、2005年10月13日に出願された表題が糖尿病を治療する方法である共同出願の米国特許出願第11/251,423号(その全体が、参照により本明細書に援用される)には、5−リポキシゲナーゼ及び12/15−リポキシゲナーゼの二重阻害剤又は5−リポキシゲナーゼ及び15−リポキシゲナーゼの二重阻害剤が、被験者の糖尿病に対する感受性の治療の予防において優れており、糖尿病の動物モデルにおいてグルコース制御を改善でき、選択的5−リポキシゲナーゼ、15−リポキシゲナーゼ及び12/15−リポキシゲナーゼ阻害剤と比較してベースライン血清グルコースレベルの有意に低下したことが示されている。
【0009】
本発明の組成物、製剤及び方法は、特に、1種類以上のリポキシゲナーゼ酵素(例えば5−リポキシゲナーゼ酵素及び/又は12/15−リポキシゲナーゼ酵素)によって媒介される疾患もしくは障害を予防及び/又は治療するために少なくとも部分的に適用できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、式Iの特定の新規な誘導体に関し、この誘導体はリポキシゲナーゼによって媒介される障害を治療するための医薬組成物の製造に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、本発明は、式Iによって表される化合物、又はその単一の立体異性体、立体異性体の混合物又は薬理学的に許容できる塩に関する。
【化1】

式I
(式中、Xは、O、S(O)0-2又はNRであり、R1及びR4は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、アミノスルホニル、スルファニル、アリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、アルコキシルカルボニル及びアミドからなる群から選択され、但し、R1及びR4のいずれかが水素であり、R2は、ヒドロキシ、アルコキシ、−O−アルケニル、−O−アシル、−O−アルキレン−アミノ、−OC(O)−アルキレン−COORb、−OC(O)−アルキレン−アミノ、−OC(O)−アルキレン−ヘテロシクリル、−O−グルコシド、−O−ホスホリル、−O−アルキレン−ホスホリル又は−OC(O)−AAからなる群から選択され、AAがアミノ酸又はジペプチド、トリペプチド又はテトラペプチドであり、R3は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、アミノスルホニル、スルファニル、アリール、ヘテロシクリル、アルコキシ、カルボキシ、アルコキシルカルボニル及びアミドからなる群から選択され、或いは、R3及びR4は、それらが結合する原子と共に、シクロアルキル環、アリール環又は複素環を形成し、R5及びR6は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、−NRdORa、又は−NRd−NRbcからなる群から選択され、
7及びR8は、
【0012】
独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、NRdORa又はNRd−NRbcからなる群から選択され、或いは、
【0013】
7及びR8が、それらが結合する炭素原子と共に、C=NORa又はC=NNRbc群を形成し、R9は、水素、アルキル及びシクロアルキル基からなる群から選択され、R10は、アルキル又はシクロアルキルであり、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アミノカルボニル、ヘテロシクリル及びアリール基からなる群から選択され、Raは、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アシル、ヘテロシクリル及びアリール基からなる群から選択され、Rb及びRcは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アシル、アミノカルボニル、ヘテロシクリル及びアリールからなる群から選択され、或いはRb及びRcが、それらが結合する窒素原子と共に、任意に1〜3個のN、O又はS原子を含み、任意に置換される飽和又は不飽和の3〜8員環を形成し、Rdは、水素又はアルキルであり、但し、R5は、OH、−NRdORa、又は、−NRd−NRbcであるか、R7は、−NRdORa、又は、−NRd−NRbcであるか、R7及びR8が、それらが結合する炭素原子と共に、R7及びR8は、C=NORa又はC=N−NRbc基を形成する。)
【0014】
一実施形態では、R2はヒドロキシであり、別の実施形態では、R2はヒドロキシであり、R1、R3及びR4は、互いに独立に水素、ハロゲン又はアルキルである。さらに別の実施形態では、CR78はC=NORaであり、別の実施例では、CR78はC=N−NRbcである。別の実施形態では、R5は、NRdORaであり、別の実施形態では、R5は、−NRd−NRbcであり、さらに別の実施例では、R5はOHである。別の実施形態では、R7は−NRdORaであり、別の実施形態では、R7は、−NRd−NRbcである。幾つかの実施形態では、Xは、Oであり、他の実施形態で、Xは、Sであり、別の実施形態では、XはNRであり、Rが、アミド、スルホニルアミノ、アミノスルホニル又はアリールによって置換されるアリール、ヘテロシクリル又はアルキルであり、別の実施例では、Rは、−(CH22-6−NRdS(O)2−アリール、−(CH22-6−S(O)2NRd−アリール、−(CH226NRdC(O)−アリール、又は−(CH22-6C(O)NRd−アリールであり、アルキルベンゼンスルフォンアミノエチル又はアルキルベンゼンスルフォンアミノプロピルで例示される。
【0015】
別の態様では、本発明は治療上有効量の式Iの化合物を含む医薬組成物に関する。幾つかの実施例では、医薬組成物は、式Iの化合物及び薬理学的に許容できる賦形剤からなり、該化合物は、例示する化合物及びその立体異性体、立体異性体の混合物又は薬理学的に許容できる塩から選択される。
【0016】
別の態様においては、本発明は、本発明の化合物と、5−リポオキシゲナーゼ、15−リポオキシゲナーゼ、12/15−リポオキシゲナーゼ酵素との組み合わせから選択される単数または複数のリポオキシゲナーゼ酵素を阻害する方法に関する。幾つかの実施形態では、化合物は5−リポオキシゲナーゼ酵素を阻害し、他の実施形態で、化合物は5−リポオキシゲナーゼ酵素及び15−リポオキシゲナーゼ酵素の両方、又は5−リポオキシゲナーゼ酵素及び12/15−リポオキシゲナーゼ酵素の両方を阻害する。
【0017】
幾つかの実施形態において、本発明は、リポキシゲナーゼが媒介する疾病に罹患している被験者の治療方法に関する。該疾病として、限定されないが、例えば癌細胞のアポトーシス(前立腺癌、胃癌、乳癌、膵臓癌、結腸直腸、又は食道癌及び気道癌を含む)、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、心臓血管疾患、心不全(慢性及び鬱血性心不全を含む)、脳虚血、網膜虚血、心筋虚血症、手術後の認知機能障害及び他の虚血などの低酸素又は無酸素に関連する疾患、糖尿病、動脈の炎症、炎症性腸疾患、クローン病、腎疾患、月経前症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、痛風を含む炎症に関連する疾患、心肺の炎症、リウマチ様関節炎、骨関節炎、筋疲労、並びに座瘡、皮膚炎及び乾癬を含む皮膚の炎症性障害;喘息、慢性気管支炎、ヒト気道癌腫、鼻水分泌過多、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、化学療法又は他の薬剤に起因する肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症及び成人呼吸窮迫症候群などの気道の障害、不安症及びうつ病を含む精神障害を含む中枢神経系(CNS)障害に関連する疾患、アルツハイマー病、痴呆及びパーキンソン病を含む神経変性及び神経炎症、脊髄外傷、頭部外傷及び外科的外傷を含む末梢神経疾患並びに同種移植組織及び臓器移植拒絶、乾癬、湿疹、リウマチ様関節炎及び糖尿病などの自己免疫系に関連する疾患、骨減少又は骨生成に関連する疾患が挙げられる。代表的な例として、本発明は、リポキシゲナーゼが媒介する疾病(例えば糖尿病、関節炎、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アレルギー性鼻炎、クローン病及び/又はアテローム性動脈硬化症)に罹患する被験者を治療する方法に関する。
【0018】
別の側面として、本発明は、疾病(例えば糖尿病、関節炎、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アレルギー性鼻炎、皮膚炎、乾癬、湿疹及び/又はアテローム性動脈硬化症)に罹患する被験者を、治療上有効量の式Iの化合物又は薬理学的に許容できる組成物で治療する方法に関する。
【0019】
本発明の別の態様は、式IAの少なくとも1種類の化合物若しくはその単一の立体異性体、立体異性体の混合物又は薬理学的に許容できる塩と、薬理学的に許容できる賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【化2】

式IA
(式中、R21、R24及びR29は、独立して、水素、アルキル及びシクロアルキルからなる群から選択され、但し、R21及びR24のうちの1個以下が水素であり、R23及びR210は互いに独立して、アルキル又はシクロアルキルである。)幾つかの実施形態では、医薬組成物は、5,7−ジエチル−2,2−ジメチルクロマン−4,6−ジオール、5−エチル−7−イソプロピル−2,2−ジメチルクロマン−4,6−ジオール、7−イソプロピル−2,2,5−トリメチルクロマン−4,6−ジオール、2,2,7,8−テトラメチルクロマン−4,6−ジオール、及び、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−4,6−ジオールから選択される少なくとも1種類の化合物若しくはその立体異性体、立体異性体の混合物又は薬理学的に許容できる塩と薬理学的に許容できる賦形剤とを含む。
【0020】
本発明の別の態様は、式IBの少なくとも1種類の化合物若しくはその単一の立体異性体、立体異性体の混合物又は薬理学的に許容できる塩と、薬理学的に許容できる賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【化3】

式IB
(式中、R21、R24及び29は、互いに独立に水素、アルキルまたはシクロアルキルであり、R21及びR24の一つ以下が水素である条件で、R23及びR210は、互いに独立にアルキル又はシクロアルキルであり、R2aは、アルキル又はシクロアルキルである。)
【0021】
幾つかの実施形態では、医薬組成物は、4−メトキシアミノ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−6−オール、4−(メトキシアミノ)−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、5,7−ジエチル−4−(メトキシアミノ)−2,2,8−トリメチルクロマン−6−オール、7−イソプロピル−4−(メトキシアミノ)−2,2,5−トリメチルクロマン−6−オール、7−イソプロピル−4−(メトキシアミノ)−2,2,5−トリメチルクロマン−6−オールから選択される化合物若しくはその立体異性体、立体異性体の混合物又は薬理学的に許容できる塩と、薬理学的に許容できる賦形剤とを含む。
【0022】
他の実施形態では、治療上有効量の式IA及び/又は式IBの化合物を、薬理学的に許容できる賦形剤と混合してなる医薬組成物が、糖尿病、関節炎、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アレルギー性鼻炎、皮膚炎、乾癬、湿疹又はアテローム性動脈硬化症を罹患している被験者に投与される。別の実施形態では、治療上有効量の式IA及び/又は式IBの化合物を薬理学的に許容できる賦形剤と混合してなる医薬組成物が、リポオキシゲナーゼによって媒介される状態を罹患している被験者に投与される。
【0023】
別の態様では、本発明は、式IAまたは式IBによって表される新規の化合物に関する。幾つかの実施形態では、化合物は、R21及びR23がC2-4アルキルであり、R24は水素であり、R29及びR210はメチルである式IA又は式IBによって表される。
【0024】
本発明の別の態様では、以下から選択される化合物に関する:6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−4−オンO−メチル−オキシム、6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−チオクロマン−4−オンO−メチル−オキシム、4−メトキシアミノ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−6−オール、6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−4H−クロメン−4−1ジメチルヒドラゾン、6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−3−オン O−メチルオキシム、8−フルオロ−4−(メトキシアミノ)−2,2,5,7−テトラメチルクロマン−6−オール、4−(メトキシアミノ)−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、4−(エトキシアミノ)−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、5,7−ジエチル−4−(メトキシアミノ)−2,2,8−トリメチルクロマン−6−オール、7−イソプロピル−4−(メトキシアミノ)−2,2,5−トリメチルクロマン−6−オール、5−エチル−7−イソプロピル−4−(メトキシアミノ)−2,2−ジメチルクロマン−6−オール4−(メトキシアミノ)−2,2,5,7,8−ペンタメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−オール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(メトキシアミノ)−2,2,5,7,8−ペンタメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−オール、4−(2,2−ジメチルヒドラジニル)−2,2,5,7,8−ペンタメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−オール、4−(2,2−ジメチルヒドラジニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2,2,5,7,8−ペンタメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−オール2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−4,6−ジオール2,2,7,8−テトラメチルクロマン−4,6−ジオール、5,7−ジエチル−2,2−ジメチルクロマン−4,6−ジオール、5−エチル−7−イソプロピル−2,2−ジメチルクロマン−4,6−ジオール、及び、7−イソプロピル−2,2,5−トリメチルクロマン−4,6−ジオール及びその単一の立体異性体、立体異性体の混合物又は薬理学的に許容できる塩に関する。
【0025】
幾つかの実施形態では、化合物は、4−メトキシアミノ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−6−オール、4−(メトキシアミノ)−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、5,7−ジエチル−4−(メトキシアミノ)−2,2,8−トリメチルクロマン−6−オール、7−イソプロピル−4−(メトキシアミノ)−2,2,5−トリメチルクロマン−6−オール;及び、7−イソプロピル−4−(メトキシアミノ)−2,2,5−トリメチルクロマン−6−オール若しくはその単一の立体異性体、立体異性体の混合物又はその薬理学的に許容できる塩から選択される。別の実施形態では、化合物は、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−4,6−ジオール、2,2,7,8−テトラメチルクロマン−4,6−ジオール、5,7−ジエチル−2,2−ジメチルクロマン−4,6−ジオール、5−エチル−7−イソプロピル−2,2−ジメチルクロマン−4,6−ジオール、及び、7−イソプロピル−2,2,5−トリメチルクロマン−4,6−ジオール、若しくは、立体異性体、立体異性体の混合物又は薬理学的に許容できる塩から選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の別の態様は、式Iの化合物を調製する方法であって、以下に説明される。発明の詳細な説明
定義
【0027】
本明細書に使用される以下の語句は、特に明記されない限り、下記に記載したとおりの意味を有することが一般に意図される。
【0028】
「任意の」又は「任意に」という用語は、その後に記述された事象又は環境が、生じても生じなくてもよく、その事象又は環境が生じる場合及び生じない場合をいう。
【0029】
1個以上の置換基を含む任意の基に関して、かかる基が立体的に非現実的であって、及び/又は、物理的に不可能である任意の置換又は置換パターンを導入することを意図しないことは、当業者に十分に理解されるであろう。
【0030】
「アシル」という用語は、−C(O)−H、−C(O)−(アルキル)、−C(O)−(シクロアルキル)、−C(O)−(アルケニル)、−C(O)−(シクロアルケニル)、−C(O)−(アリール)、及びC(O)−(ヘテロシクリル)基をいう。
【0031】
「アシルオキシ」という用語は、−O−アシル部分をいい、例えばO−C−(O)−アルキルを含む。
【0032】
「アルケニル」という用語は、分鎖状又は非分鎖状、不飽和又は多価不飽和の、約2〜20個の炭素原子、例えば2〜10個の炭素原子を有する炭化水素鎖のモノラジカルをいう。この用語は、エテニル、ブト−2−エニル、3−メチル−ブト−2−エニル(「プレニル」とも称する)、オクタ−2,6−ジエニル、3,7−ジメチル−オクタ−2,6−ジエニル(「ゲラニルとも称する)などの基で例示される。また、用語は、置換されたアルケニル基を含み、1個以上、例えば1〜3個の水素原子が、=O、=S、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アミノ(アミノ基が環状アミンであってよい)、アリール、ヘテロシクリル、カルボキシル、カルボニル、アミド、シアノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、スルファモイル(SO2NH2)スルファニル、スルフィニル(−S(O)H)スルホニル(SO2H)及び、スルホン酸(SO2OH)の基から独立して選択される置換基によって置換されるアルケニル基に言及する。アルケニル基に対する任意の置換基のうちの1つは、ヘテロシクリルであってもよく、2−キノリル−2−ビニルによって例示される。
【0033】
「アルケニレン」という用語は、上記で定義されるモノラジカルアルケニルに由来するジラジカルをいう。
【0034】
「アルコキシ」という用語は、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−シクロアルキル、−O−シクロアルケニル及びO−アルキニル基をいう。−O−アルキルでありアルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソ−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシなどが含まれる。また、「アルコキシ」という用語は、置換されたアルコキシ基を含み、−O−(置換されたアルキル)、−O−(置換されたアルケニル)、−O−(置換されたシクロアルキル)、−O−(置換されたシクロアルケニル)、−O−(置換されたアルキニル)及びO−(任意に置換されてよいアルキレン)−アルコキシ基をいう。
【0035】
「アルキル」という用語は、分鎖状又は非分鎖状の飽和した約1〜20個の炭素原子を有する炭化水素鎖のモノラジカルをいう。また、「アルキル」という用語は、単に炭素及び水素原子のみからなる直鎖状又は分鎖状及び環状の飽和炭化水素基の組み合わせを意味する。本用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、n−ヘキシル、n−デシル、テトラデシルなどの基で例示される。また、「アルキル」という用語は、置換されたアルキルを含み、1個以上の、例えば1〜5個の水素原子が=O、=S、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルコキシアミノ、ヒドロキシアミノ、アミノ(式中、アミノ基は、環状アミンであってもよい)、アリール、ヘテロシクリル、アジド、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アミド、シアノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル及びスルホン酸基から独立に選択される置換基によって置換されているアルキル基をいう。アルキルの任意の置換基のうちの1つは、ヒドロキシ又はアミノであってよく、例えばヒドロキシアルキル基(2ヒドロキシエチル、3ヒドロキシプロピル、3ヒドロキシブチル、4ヒドロキシブチルなど)ジヒドロキシアルキル基(グリコール)(2,3ジヒドロキシプロピル、3,4ジヒドロキシブチルl、2,4ジヒドロキシブチル、並びに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリブチレングリコールとして知られているそれらの化合物んなど、又は、アミノアルキル基(アミノメチル、ジメチルアミノメチル、ジエチルアミノメチル、エチルアミノメチル、ピペリジニルメチル、モルホリニルメチル等)である。アルキル基における他の置換基は、トリフルオロメチルなどのハロゲンであってもよい。他の置換基は、ヒドロキシアミノ又はアルコキシアミノであってもよく、ヒドロキシアミノメチル、メトキシアミノメチル又はエトキシアミノメチルなどの基によって例示される。他の置換基は、スルファニルであってもよく、メチル(2−メチルチオアセテート)などの基によって例示される。他の置換基は、メチルベンゾアート、プロピルイソインドリン−1,3−ジオン、キノリン−メチル若しくは2−キノリル−2−エチルによって例示されるアリール又はヘテロシクリルであってもよい。他の置換基は、アミド、アミノスルホニルまたはスルホニルアミノでもよく、4−プロピルベンゼンスルフォンアミド−2−エチル、4−メチルベンゼン−スルホンアミド−2−エチル、4−プロピルベンゼンスルフォンアミド−3−プロピル、4−メチルベンゼンスルホンアミド−3−プロピルまたはメチル−N−メチルアセトアミドによって例示される。他の置換基は、−OC(O)NH2又はOC(O)−置換されたアミノなどのアミノカルボニルオキシ(−OC(O)アミノ)であってもよい。
【0036】
「アルキレン」という用語は、アルキルが上記記載のとおりであるジラジカルアルキル基をいう。
【0037】
「アルキニル」という用語は、分鎖又は非分鎖の、不飽和又は多価不飽和の約2〜20個の炭素原子、例えば2〜10個の炭素原子を有し、少なくとも1個及び好ましくは1〜3個の三重結合を含む炭化水素鎖のモノラジカルをいう。また、本用語は、置換されたアルキニル基を含み、1個以上の水素原子が、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アミノ(式中、アミノ基は、環状アミンであってもよい)、アリール、ヘテロシクリル、カルボキシル、カルボニル、アミド、シアノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、スルファモイル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル及びスルホン酸からなる群から独立して選択される置換基によって置換されているアルキニル基を意味する。
【0038】
用語「アミド」は、部分−C(O)−NR100101、及び、−NR100C(O)R101(式中、R100及びR101は、R100及びR101は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル及びヘテロシクリルからなる基から独立して選択され、但し、アリール又はヘテロアリールではない)に関連する。
【0039】
「アミノ」という用語は、基−NH2、並びに−NHRx又は−NRxxなどの置換されたアミンをいう。(式中、Rxの各々は、独立にアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、アシル、任意に置換されるアルコキシ、カルボキシ及びアルコキシカルボニルからなる群より選択され、−NRxxは、また、環状の飽和又は不飽和アミンであってもよく、任意にN、OもしくはSから選択される1個以上、例えば1〜3個の原子を更に含んでおり、任意に=O、=S、アルキル、ヒドロキシ、アシルオキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、スルファニル、アルコキシ及びフェニルからなる群より選択される置換基で置換されている)本用語は、アミノ、シクロプロピルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ヘキシルアミノなどの基によって例示される。「環状アミン」又は「環状アミノ」という用語は、モルホリニル基によって例示される。「アルコキシアミノ」という用語は、少なくとも1個のRxがアルコキシである実施形態をいう。「ヒドロキシアミノ」という用語は、少なくとも1個のRxがヒドロキシである実施形態をいう。
【0040】
「アミノ酸」は、任意の天然由来のアミノ酸、並びに合成類似体(例えば、D−スレオニンなどの天然由来のアミノ酸のD−ステレオアイソマー)及びこれらの誘導体をいう。α−アミノ酸は、アミノ基、カルボキシル基、水素原子、及び「側鎖」と称される特有の基に結合された炭素原子を含む。天然由来のアミノ酸の側鎖は、当技術分野において周知であり、例えば(例えば、グリシン内の)水素、(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン内の)アルキル、(例えば、スレオニン、セリン、メチオニン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン及びリジン内の)置換されたアルキル、(例えば、フェニルアラニン及びトリプトファン内の)アリールアルキル又はアラルキル、(例えば、チロシン内の)置換アリールアルキル及び(例えば、ヒスチジン内の)ヘテロアリールアルキルを含む。「天然由来のアミノ酸」という用語は、これらのアミノ酸をいう。
【0041】
また、例えば、Williams(ed.),Synthesis of Optically Active α−Amino Acids,Pergamon Press(1989);Evansら、J.Amer.Chem.Soc,112:4011−4030(1990);Puら、J.Org Chem.,56:1280−1283(1991);Williamsら、J.Amer.Chem.Soc,113:9276−9286(1991);及び引用された全ての参照文献に記載されるように、非天然アミノ酸も当技術分野において公知である。
【0042】
「ペプチド」という用語は、アミノ酸のカルボキシル基と別のアミノ基とが結合される2個以上のアミノ酸を含む任意の種々の天然化合物又は合成化合物をいう。「ジペプチド」は、2個のアミノ酸を含むペプチドをいう。「トリペプチド」は、3個のアミノ酸を含むペプチドをいう。「テトラペプチド」は、4個のアミノ酸を含むペプチドをいう。
【0043】
「芳香族」という用語は、共役不飽和(4n+2)π電子系(式中nが、正整数であり)(非局在化π電子系ととも称する)を有する環式又は多環式の部分をいう。
【0044】
「アリール」という用語は、単環(例えば、フェニル)又は複数の縮合した(融合した)環(例えば、ナフチル又はアントリル)を有する6〜20個の炭素原子の芳香族環状炭化水素基をいう。アリール基には、フェニル、ナフチル基などが含まれる。また、「アリール」という用語は、置換アリール環を含み、上記記載のとおりのアリール基をいい、アリール置換基に対して明記されない限り、ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルケニル、アルコキシ、アルキル、アルキニル、アミノ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アミド、シアノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ニトロ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル及びスルホン酸からなる群から独立して選択される1個(1〜5個)以上の置換基で置換される。
【0045】
「アリールオキシ」という用語は、−O−アリール基をいう。
【0046】
「アラルキル」という用語は、−アルキレン−アリール基をいい、アルキレン及びアリールは本明細書で定義されている。
【0047】
「カルボニル」という用語は、ジ−ラジカル「C=O」をいい、また、これは、「−C(O)−」としても例示される。また、この部分は、「ケト」ともいわれる。
【0048】
「アルキルカルボニル」という用語は、−C(O)−(アルキル)、−C(O)−(シクロアルキル)、−C(O)−(アルケニル)及びC(O)−(アルキニル)基をいう。
【0049】
「アルコキシルカルボニル」という用語は、−C(O)O−(アルキル)−C(O)O−(シクロアルキル)、−C(O)O(アルケニル)、及び、−C(O)O−(アルキニル)基に関連する。また、これらの部分は、エステルと称してもよい。
【0050】
「アミノスルホニル」という用語は、基−S(O)2−(アミノ)に関連する。「スルホニルアミノ」という用語は、基−(アミノ)−S(O)2−Ry(式中、Ryはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール又はヘテロシクリルである)に関する。
【0051】
「アミノカルボニル」という用語は、−C(O)−(アミノ)基をいい、「カルボニルアミノ」という用語は、−アミノ−C(O)−Ry基であって、式中Ryは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール又はヘテロシクリルであり、アミノという用語は、本明細書に記載のとおりである。
【0052】
「カルボキシ」又は「カルボキシル」という用語は、「−C(O)OH」部分をいい、また、これは「−COOH」として例示される。-COOHの塩もまた含まれる
【0053】
「シクロアルキル」という用語は、単環もしくは複数の縮合又は架橋された環を有する約3〜12個の炭素原子を有する非芳香族環状炭化水素基をいう。かかるシクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの単一環構造又はアダマンチルなどの複数環構造を含む。更に、「シクロアルキル」という用語は、シクロアルキル環が別の環と共通の炭素環原子を有するスピロ系を包含する。また、「シクロアルキル」という用語は、置換されたシクロアルキル環を含み、=O、=S、アシル、アシルオキシ、アルケニル、アルコキシ、アルキル、アルキニル、アミノ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アミド、シアノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヒドロキシル、ニトロ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル及びスルホン酸からなる群から独立して選択される1個以上(1〜5個など)の置換基で置換されるシクロアルキル基をいう。また、アルキル基で置換されたシクロアルキル環は、「アルキルシクロアルキル」という。
【0054】
「シクロアルケニル」という用語は、単数の又は複数の環を有する3〜10個の炭素原子の環状アルケニル基をいう。また、シクロアルキルで列挙される置換基を含む置換されたシクロアルケニルが包含される。
【0055】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードをいう。
【0056】
「ヘテロアリール」という用語は、環内に1〜4個などの1個以上のヘテロ原子(窒素、酸素及び/又は硫黄から選択される)を含み、1〜3個などの1個以上の環を有する芳香族炭素環基をいう。本用語は、環内に1個以上のヘテロ原子(窒素、酸素及び/又は硫黄から選択される)を含む飽和炭素環基を有する1個以上の環を除外する。
【0057】
「複素環」、「複素環式」、「ヘテロシクロ」及び「ヘテロシクリル」という用語は、環内に1〜4個などの1個以上のヘテロ原子(窒素、酸素及び/又は硫黄から選択される)を含む1〜3個などの1個以上の環を有する、一価の、飽和(部分的又は完全に不飽和した(芳香族)炭素環基をいう。複素環としては、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、チアゾール、チアゾリジン、イソチアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、ピラゾール、ピラゾリジン、ピラゾリン、イミダゾール、イミダゾリジン、ベンゾチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロール、ピロリジン、キノリン、キナゾリン、プリン、カルバゾール、ベンズイミダゾール、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラン、テトラヒドロピラン、ベンゾピラン、フラン、テトラヒドロフラン、インドール、インドリン、インダゾール、キサンテン、チオキサンテン、アクリジン、キニクリジンなどが挙げられる。また、「複素環」、「複素環式」、「ヘテロシクロ」及び「ヘテロシクリル」という用語は、置換された環を含み、上記記載のとおりの複素環基をいい、他に複素環のための定義によって制限されなければ、ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルケニル、アルコキシ、アルキル、アルキニル、アミノ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アミド、シアノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、ハロゲン、ヘテロシクリル、ヘテロシクロ−オキシ、ニトロ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル及びスルホン酸からなる群から独立に選択される1個以上(1〜5個など)の置換基で置換されている。本用語は、4,5−ジヒドロイソキサゾール−5−メチルカルボキシラート、5−ブチルイソキサゾール、ピロリジニル、モルホリニル、イミダゾリル、5−ヒドロキシピリジン−2−イル、ジメチルアミノピリジン−3−イル、イソインドリンジオン、トリフルオロメチルオキサゾリル、2−ブロモフェニル−1H−テトラゾール−5−イル、メチルチアゾリル、フェニルチアゾリル及びベンゾチアゾリルによって例示される。
【0058】
「ヘテロシクリルオキシ」という用語は、−O−ヘテロシクリル基をいう。
【0059】
「炎症」、「炎症性状態」又は「炎症状態」という用語としては、限定されないが、筋疲労、骨関節炎、リウマチ様関節炎、炎症性腸症候群又は障害、クローン病、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、乾燥症、湿疹、酒さ、脂漏症、乾癬などの皮膚炎症、アテローム性動脈硬化症、火傷及び放射線熱傷、座瘡、脂性皮膚、しわ、過剰セルライト、過剰孔径、内因性皮膚老化、光老化、光損傷、有害なUV損傷、角化異常、レチノイドで誘導される刺激を含む刺激、多毛、脱毛症、色素沈着異常、創傷による炎症、瘢痕又は伸展線、弾性喪失、皮膚萎縮症、並びに歯肉炎が挙げられる。
【0060】
「虚血」という用語は、血管の機能的収縮又は事実上の閉塞により器官又は組織への血液が欠乏することをいう。
【0061】
「異性体」又は「立体異性体」という用語は、同一の分子式を有するが、空間で原子の配置が異なる化合物に関する。互いに鏡像でない立体異性体は、「ジアステレオ異性体」と呼ばれ、重ねることができない鏡像であり立体異性体は、「エナンチオマー」と称し、光学異性体とも呼ばれる。分子の立体異性体の等量の混合物は、「ラセミ化合物」又は「ラセミ混合物」と呼ばれる。4個の異なる置換基に結合した炭素原子は、「キラル中心」と呼ばれる。本発明の特定の化合物は、1個以上のキラル中心を有するため、個々の立体異性体又は立体異性体の混合物のいずれかで存在してもよい。それらの存在が二重結合の周りの回転障害となる立体異性体の配置は、これらの接頭辞シス及びトランス(又はZ及びE)によって区別され、これらは、Cahn−Ingold−Prelog規則に従って基が分子の二重結合の同じ側(シス又はZ)に、又は両側(トランス又はE)にあることを示す。本発明は、個々の立体異性体、ラセミ化合物又は立体異性体の混合物などの考えられる立体異性体を全て含む。
【0062】
「リポキシゲナーゼを媒介した状態」又は「リポキシゲナーゼによって媒介される障害」は、リポキシゲナーゼ酵素によって少なくとも部分的に媒介される任意の状態、障害又は疾患を意味する。これは、リポキシゲナーゼ酵素又はその阻害に関連する障害に関し、、限定されないが、例えば、前立腺癌、胃癌、乳癌、膵癌、結腸直腸又は食道癌及び気道癌腫などの癌細胞のアポトーシスに関連する疾患、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、心臓血管疾患、心不全(慢性及び鬱血性心不全を含む)、脳虚血、網膜虚血、心筋虚血症、手術後の認知機能障害及び他の虚血などの低酸素又は無酸素に関連する疾患、糖尿病、動脈の炎症、炎症性腸疾患、クローン病、腎疾患、月経前症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、痛風を含む炎症に関連する疾患、心肺の炎症、リウマチ様関節炎、骨関節炎、筋疲労、並びに座瘡、皮膚炎及び乾癬を含む皮膚の炎症性障害、喘息、慢性気管支炎、ヒト気道癌腫、鼻水分泌過多、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、化学療法又は他の薬剤に起因する肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症及び成人呼吸窮迫症候群などの気道の障害、不安症及びうつ病を含む精神障害を含む中枢神経系(CNS)障害に関連する疾患、アルツハイマー病、痴呆及びパーキンソン病を含む神経変性及び神経炎症、脊髄傷害、頭部外傷及び外科的外傷を含む末梢神経疾患、並びに同種移植組織及び臓器移植拒絶、乾癬、湿疹、リウマチ様関節炎及び糖尿病などの自己免疫系に関連する疾患、並びに骨減少又は骨生成に関連する疾患が挙げられる。
【0063】
「薬理学的に許容される担体」又は「薬理学的に許容される賦形剤」という用語は、任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌薬及び抗真菌薬、等張薬及び吸収遅延薬などを包含する。薬理学的に活性的な物質のためのかかる媒体及び薬剤の使用は、当技術分野において公知である。任意の従来の培地又は薬剤が、活性成分と不適合である場合以外は、治療用組成物におけるその使用が想定される。また、活性成分を組成物に更に添加することもできる。
【0064】
「薬理学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の生物学的な効果及び特性があり、生物学的又は他に有害でない塩をいう。場合によっては、本発明の化合物は、フェノール基、アミノ基及び/又はカルボキシル基又はこれらに類似する基の存在下によって酸性塩及び/又は塩基性塩を生成できる。薬理学的に許容される塩基付加塩は、無機塩基及び有機塩基から調製できる。無機塩基に由来する塩には、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム及びマグネシウムの塩が含まれる。有機塩基に由来する塩には、限定されないが、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、置換アルキルアミン、ジ(置換アルキル)アミン、トリ(置換アルキル)アミン、アルケニルアミン、ジアルケニルアミン、トリアルケニルアミン、置換アルケニルアミン、ジ(置換アルケニル)アミン、トリ(置換アルケニル)アミン、シクロアルキルアミン、ジ(シクロアルキル)アミン、トリ(シクロアルキル)アミン、置換されたシクロアルキルアミン、二置換されたシクロアルキルアミン、三置換されたシクロアルキルアミン、シクロアルケニルアミン、ジ(シクロアルケニル)アミン、トリ(シクロアルケニル)アミン、置換されたシクロアルケニルアミン、二置換されたシクロアルケニルアミン、三置換されたシクロアルケニルアミン、アリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、複素環式アミン、ジ複素環式アミン、トリ複素環式アミン、アミン上の置換基のうちの少なくとも2個が異なり、かつアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アリール、複素環式からなる群より選択される混合されたジアミン及びトリアミンなどの一級、二級及び三級アミンの塩が含まれる。また、2個又は3個の置換基が、アミノ窒素と共に複素環基を形成するアミンも含まれる。
【0065】
適切なアミンの具体例には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソ−プロピル)アミン、トリ(n−プロピル)アミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、N−エチルピペリジンなどが含まれる。
【0066】
薬理学的に許容される酸付加塩は、無機酸及び有機酸から調製してもよい。無機酸に由来する塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などを含まれる。有機酸に由来する塩には、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエン−スルホン酸、サリチル酸などが含まれる。
【0067】
本発明の目的に関して、許容できる塩全てには、溶媒付加形態(溶媒和化合物)又は多形(結晶形)が含まれることが理解されるべきである。「溶媒和化合物」とは、溶媒の化学量論量又は非化学量論量のいずれかを含む溶媒付加形態をいう。幾つかの化合物は、結晶固体状で固定モル比の溶媒分子を回収することによって、溶媒和化合物を形成しやすい。溶媒が水である場合、形成される溶媒和化合物は、「水和物」であり、溶媒がアルコールである場合は、形成される溶媒和化合物は「アルコラート」である。「多形」(又は「結晶形」)とは、同じ元素組成を有する化合物の全てが、異なる結晶パッキング構成で結晶化できる結晶構造を意味する。異なる結晶形には、通常、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形状、光学的及び電気的性質、安定性、並びに溶解性がある。再結晶溶媒、結晶速度、保存温度及び他の因子によっては、1個の結晶形が優位に生じうる。
【0068】
「プロドラッグ」という用語は、所望の薬理効果を得るために、投与後に被験者によって、例えば体液又は酵素で活性親化合物へインビボにおいて、代謝される不活性化合物をいう。プロドラッグは、吸収の前中後、又は特定の部位にて代謝できる。化合物のプロドラッグ形態は、例えば、生物学的利用能を改善するため、苦味、臭気もしくは胃腸被刺激性などの不快な特徴を隠蔽又は減少させるなど、被験者に対する許容性を改善するため、溶解性を変えるため、遷延性又は持続性の徐放又は送達を提供するため、製剤化を容易に改善するため、又は化合物の部位特異的送達を提供するために利用してもよい。
【0069】
本発明の化合物のプロドラッグは、官能基を修飾をインビボで切断して親化合物を徐放するように、化合物に存在する1種類以上の官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグは、本発明の化合物のヒドロキシル基が、インビボで切断してヒドロキシル遊離基、アミノ遊離基を再生成しうる任意の基に結合される化合物を含む。プロドラッグの例には、限定されないが、本発明の化合物におけるヒドロキシ官能基のエステル(例えば酢酸誘導体、ギ酸誘導体及び安息香酸誘導体)、カルバメート(例えばN,N−ジメチルアミノカルボニル)を含み、BundegaaRd,H.Design of Prodrugs.New York−OxfoRd:Elsevier,1985,pp.1−92などを参照されたい。本明細書において、化合物は、前記化合物のプロドラッグ形態が含まれることをいう。
【0070】
「被験者」という用語は、限定されないが、ヒト、並びに家畜(ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ及びブタ)及びドメスティックアニマル(ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、ラット及びモルモット)などの動物が含まれる。「被験者」という用語は、特定の年齢又は性別を意味しない。
【0071】
「スルファニル」又は「チオ」という用語は、−SH、−S−(アルキル)、−S−(アリール)又はS−(ヘテロシクリル)基をいう。本用語は、イソプロピルチオ及びメチルチオアセテートなどの基によって例示される。
【0072】
「治療上有効量」という用語は、以下に定義されるように、かかる治療を必要とする被験者に投与されたときに、治療を行なうのに十分な本発明の化合物の量をいう。治療上有効量は、治療される被験者及び疾患状態、被験者の重量及び年齢、疾患状態の重症度、選択される特定の化合物、従うべき投薬処方計画、投与のタイミング、投与の様式などに応じて変化し、その全てが、当技術分野の当業者により、容易に決定できる。
【0073】
「治療」または「治療」という用語は、被験者の疾患又は障害を意味し、・疾患又は障害の予防の保護、すなわち、臨床症状が発症しないようにし、・疾患又は障害を阻害する、すなわち、臨床症状の進行を止める、あるいは抑制し、及び/又は、・疾患又は障害を緩和する、すなわち、臨床症状の後退させることが含まれる。
【0074】
最終的に帰納する事象は、未知であり、潜在的であるか、或いは、事象発現後に十分期間が経たないと患者を確かめられないため、必ずしも「予防」と「抑制」との間を区別できないことが、ヒト医薬分野の当業者に十分理解されている。従って、本明細書に使用される「予防」という用語は、「治療」の要素として、本明細書で定義される「予防」及び「抑制」の両方を包含することが意図される。本明細書に使用される「保護」という用語には、「予防」を含むと意図される。
命名法
【0075】
一般に、本出願において使用する命名は、CambridgeSoft社(ケンブリッジ、MA)によって提供される、プログラムのChemDrawUltra(登録商標)版9.0.1スイート中の命名パッケージを用いて、又は、支援によって行なわれた。
命名法
【0076】
一般に、本出願において使用する命名は、CambridgeSoft社(ケンブリッジ、MA)によって提供される、プログラムのChemDrawUltra(登録商標)版9.0.1スイートの中の、命名パッケージを用いて、又は、支援によって行われた。
本発明の化合物の合成
合成反応パラメータ
【0077】
用語「溶媒」、「不活性有機溶媒」又は「不活性溶媒」は、それらに関連して記載されている反応条件下の不活性の溶媒を意味する。本発明の化合物の合成において使用される溶媒には、例えば、メタノール(「MeOH」)アセトン、水、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド(「DMF」)ベンゼン、トルエンテトラヒドロフラン(「THF」)クロロホルム、塩化メチレン(また、ジクロロメタン(「DCM」と称する)、ジエチルエーテル、酢酸エチル(「EtOAc」)ピリジンなど、並びにそれらの混合物が挙げられる。特に明記されない限り、本発明の反応で使用する溶媒は不活性有機溶媒である。
【0078】
「十分量」という用語は、特定の機能を達成する、例えば所望の体積(すなわち100%)となるのに十分な量の溶液を添加することを意味し、「MOM」は、メトキシメチルをいう。
【0079】
特に明記されない限り、本明細書において記載されている反応は、常圧で、−10℃から110℃の温度(「室温」又は「周囲温度」(例えば20℃)とも呼ばれる)で行なわる。更に、特に明記されない限り、反応時間及び条件は近似値を意味する。
【0080】
本明細書において記載されている化合物及び中間代謝の隔離及び精製は、必要に応じて、あらゆる適切な分離又は精製方法(例えば濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ又は厚層クロマトグラフィ又はこれらの方法の組合せ)によって実施できる。適切な分離及び隔離方法の具体例は、本明細書の以下の実施例を参照して実施できる。しかしながら、同様の他の分離方法又は隔離方法も使用できる。
反応式1
【化4】

【0081】
スキーム1では、式Iの化合物の合成を説明する。式中、XはOであり、R5及びR6は共にC=NORaを形成し、又は、C=N−NRbc又はR5は、−NRdORaであり、或いは、−NRd、−NRbc及びR6は、水素であり、R、R1、R3、R4、R7、R8、R9及びR10は上記で定義されている。式101のヒドロキノンの水酸基うち一個が、例えばベンジル基(例えば一当量の臭化ベンジル)との反応によって保護される。塩基(例えばカルボン酸セシウム)の存在下、ジメチルホルムアミドなどの溶媒中の被保護ヒドロキノンに対する1−メタンスルホニルオキシメチル−カルボン酸エステルを添加し、式102の化合物(式中、Rはアルキル基)を得て、加水分解及び環化して、式104の4−クロマノン誘導体を得る。ヒドロキシルアミン又はアルコキシアミンヒドロクロリドを添加して、式105(式中、Raの各々は水素又はアルキルである)のオキシムを得る。オキシムは、テトラヒドロフラン又はピリジンなどの溶媒中のボラン又はナトリウムシアノホウ化水素によって行なわれる水素の単純な添加によって、式107のヒドロキシルアミン又はアルコキシアミンに還元できる。同様に、ヒドラジンを式104の化合物のケト基に濃縮して、式106のヒドラゾンを得ることができ、式108のヒドラジンに還元できる。
【0082】
式107のヒドロキシルアミン又は式108のヒドラジンを、ハロアルカン又はアルデヒドで更にアルキル化し、次いで還元的アミノ化し、式109及び式110各々のアルキル化された化合物を得ることができる。式104の4−クロマノン誘導体を例えば水素化ホウ素ナトリウムで還元して、式111の4,6−ジヒドロキシ誘導体を得ることもできる。
【0083】
また、このスキームを用いて、対応する4−メルカプトフェノールで式101のヒドロキノンを置換することによって本発明のチオヒドロベンゾピラン誘導体を調製できる。
反応式2
【化5】

【0084】
スキーム2は、本発明の式Iの化合物のための合成を説明する。式中、R5及びR6は、互いに独立して、−NORa、−NH−NRbc、又はOHであり、或いは、R5及びR6が、それらが結合する炭素原子と共に、C=NORa又はC=NNRbc基を形成し、R8は水素であり、X、R1、R3、R4、R7、R9、R10、Ra、Rb及びRcは上記で定義されている。マイケル付加条件下で、式201のフェノールを、アルカノール(例えばメタノール又はエタノール)などの無水溶媒で、強塩基(例えば硫酸)の存在下で、式202(式中、Alkは、アルキル基である)のアクリレートで濃縮する。得られたエステルを、ナトリウム又は水酸化カリウムなどの塩基がある場合には、加水分解して、式203の酸を得て、酸性の状況下で環化し、式204の4−ケト化合物を得ることができる。ヒドロキシルアミン又はアルコキシアミンヒドロクロリドの添加によって、例えば、ナトリウムシアノホウ化水素又はボラン/ピリジンで還元できる式205のオキシムを得て、式206のアルコキシアミンを得ることができる。同様に、ヒドラジンの添加によって、同様に還元できる式207のヒドラゾン誘導体を得て、式208のヒドラジンを得ることができる。スキーム1にて説明したように、式204の化合物は、例えば、水素化ホウ素ナトリウムで更に還元して、式209の化合物を形成できる。
好ましい化合物
【0085】
式Iの化合物は、開示されるものとしての本発明の誘導体及び/又はこの種の化合物の薬理学的に許容できる塩を含む。更に、本発明の化合物は、置換基の選択に起因する個々の立体化学的異性体及びそれらの混合物を含む。当業者であれば、1種類以上の置換基を含むいかなる基に関して、立体配置的に非実用的及び/又は合成不可能となるいかなる置換又は置換パターンが導入されないことを意図しないことが理解される。
用途、試験及び投与
一般の用途
【0086】
特定の理論または作用機構はさておき、本発明の化合物は、様々な生理的代謝系全体において機能する「酸化還元酵素」として公知の特定の酵素を標的できる。例えば、本発明の特定の化合物は、リポキシゲナーゼ(例えば5−リポキシゲナーゼ、12−リポキシゲナーゼ、15−リポキシゲナーゼおよび/または12/15−リポキシゲナーゼ)を標的にすることができる。特に、酸化還元酵素は、2個の分子が相互作用し、片方の分子が酸化するとき、もう片方が還元する反応を触媒する。酸化還元酵素の改変は、全ヒトの周知の遺伝子病の全ての3%を占めると考えられる。酸化還元酵素活性の異常は、うっ血性心不全、呼吸鎖欠陥(例えば呼吸鎖の酵素と関連した異常、急性呼吸不全症候群(ARdS))糖原病、末期腎臟病及び関節リウマチなどの疾病の原因となりうる。リポキシゲナーゼの阻害剤は、例えば以下から選択される公知の疾病の予防又は処理に有用である:前立腺癌、胃癌、乳癌、膵癌、結腸直腸又は食道癌及び気道癌腫などの癌細胞のアポトーシスに関連する疾患から選択される、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、心臓血管疾患、心不全(慢性及び鬱血性心不全を含む)、脳虚血、網膜虚血、心筋虚血症、手術後の認知機能障害及び他の虚血などの低酸素又は無酸素に関連する疾患、糖尿病、動脈の炎症、炎症性腸疾患、クローン病、腎疾患、月経前症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、痛風を含む炎症に関連する疾患、心肺の炎症、リウマチ様関節炎、骨関節炎、筋疲労、並びに座瘡、皮膚炎及び乾癬を含む皮膚の炎症性障害;喘息、慢性気管支炎、ヒト気道癌腫、鼻水分泌過多、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、化学療法又は他の薬剤に起因する肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症及び成人呼吸窮迫症候群などの気道の障害、不安症及びうつ病を含む精神障害を含む中枢神経系(CNS)障害に関連する疾患、アルツハイマー病、痴呆およびパーキンソン病を含む神経変性および神経炎症、脊髄傷害、頭部外傷及び外科的外傷を含む末梢神経疾患、並びに同種移植組織及び臓器移植拒絶、乾癬、湿疹、リウマチ様関節炎及び糖尿病などの自己免疫系に関連する疾患、並びに骨減少又は骨生成に関連する疾患。
【0087】
本発明の特定の合成物はまた、例えば加齢または有害な紫外線(UV)放射、レチノイドの使用、おむつの着用、ストレスおよび疲労に伴う皮膚組織の障害などの皮膚病学的症状の治療、並びに接触性皮膚炎、皮膚刺激性、皮膚色素沈着、乾癬またはざ瘡の処置の傷害から生じる傷害の予防及び保護に有用である。
試験
【0088】
この節は、インビトロ及び/又はインビボでのモデルを使用して、本発明の組成物を含む組成物がどのように選択sあれ、本発明を支持する例示的な徴候に対する治療介入としてどのように用いられるかに関して記載するものである。
【0089】
5−リポキシゲナーゼ経路は、ヒト炎症性疾患に関連する主要な合成系である。酵素5−リポキシゲナーゼは、ロイコトリエンにアラキドン酸(高度不飽和20−炭素脂肪酸)の酸化の第一段階において2種類の触媒作用を及ぼす。ロイコトリエンは、炎症及びアレルギー反応の重要な調節物質であることが公知である。5−リポキシゲナーゼによって触媒されるロイコトリエンの合成の第一段階は、5−HPETEの形成である。不安定なLTA4を形成する5−HPETEの再構成(ロイコトリエンの合成の律速段階)も、5−リポキシゲナーゼによって触媒される。次いで、LTA4は、LTB4又はLTC4に変換される。LTC4は、LTD4に急速に新陳代謝し、次いでLTE4に急速に新陳代謝する。LTC4、LTD4及びLTE4、システイニル(Cys)ロイコトリエンと集合的に呼ばれる。
【0090】
様々な免疫学的刺激に応答して、LTB4、LTC4、LTD4及びLTE4の生合成は、主に白血球で起こる。LTB4の主要な標的は白血球であり、nM濃度の酵素放出、走化性、付着及び凝集を誘引する。LTB4は免疫反応を調整し、宿主の感染症からの予防に関与する。それゆえ、LTB4は炎症反応及び疾病状態の改善及び維持にとり重要な調節化学物質である。
【0091】
内因性のリポキシゲナーゼ代謝は、強化されたサイトカイン腫瘍壊死因子(TNF−α)産生に関係しうる特定の刺激(例えばシリカ、アスベスト及びリポ多糖体)に関与する(Rola−Pleszczynski, M et al. Mediators of Inflammation 1 : 5−8 (1992))。選択的なリポキシゲナーゼ阻害効果と整合させて、本発明の特定の化合物はまた、TNF−α合成及び/又は放出の阻害効果があることを示す。「TNF−α」は、広範囲にわたる生物的活性を有し、個体の感染に対する反応の調整において重要な役割を果たし、炎症反応の主要な調節物質として機能する。炎症性サイトカインが、幾つかの疾患において病原性を有することが知られている。例えば、喘息(N. M. Cembrzynska et al., Am. Rev. Respir. Dis., 147, 291 (1993)、成人呼吸窮迫症候群(ARdS)(Miller et al., Lancet 2 (8665); 712−714 (1989) and FerRai−BalivieRa et al., ARch. Surg. 124 (12): 1400−1405 (1989))、肺線維症(Piguet et al., Nature, 344:245−247 (1990) and Bissonnette et al., Inflammation 13 (3): 329−339 (1989))、骨吸収疾患(Bertolini et al., Nature 319: 516−518 (1986) and Johnsonet al., Endocrinology 124 (3): 1424−1427 (1989))、自己免疫疾患(W. Fiers, FEBS Lett., 1991 , 285, p. 199)。従って、5−リポキシゲナーゼ及びTNF−α上の阻害効果を示する本発明の化合物が例えば呼吸不調、反増殖の障害又は自己免疫不全等の疾患の治療又は改善において優れていなければならないと認められる。
【0092】
Walidge, N. B. et al. Anal. Biochem., Vol. 231 (1995), pp. 354−358記載などの高いスループット比色法を使用した、酵素5−リポキシゲナーゼ、15−リポキシゲナーゼ又は12/15−リポキシゲナーゼを阻害する組成物の能力のインビトロ評価は、LTB4阻害のインビトロ評価と同様に実施例に記載されている。
【0093】
インビトロでの炎症用細胞アッセイは、当業者に公知であり、例えばe−セレクチン(また内皮白血球接着分子又はElamと呼ばれる)又はC反応性タンパク質(CRP)が挙げられる。ELAMアッセイは、活性内皮細胞におけるELAMの発現を減少させる試験化合物のインビトロ活性を測定するものである。端的には、内皮細胞は、リポ多糖、TNF又はIL1βなどの周知の活性化物質を単独又は幾つかの組合せで添加して作製する。活性細胞はElamを産生し、例えば、Eセレクチンモノクローナル抗体系ELISAアッセイを使用して測定できる。
【0094】
抗炎症活性のインビボでの評価は、カラゲナンで誘発された足浮腫を測定する十分に特徴化された分析、すなわち、局所アラキドン酸(Gabor, M. Mouse Ear Inflammation Models and their Pharmacological Applications (2000))に対するラットの耳炎症反応、又はインビボでのラットのザイモサン腹膜炎の分析によって実施できる。カラゲナンで誘導された足浮腫は炎症モデルであり、ラット足の内部足底表面へのカラゲナン投与後の時間依存的な浮腫形成を引き起こす。ラットの耳に対するアラキドン酸(AA)の感作は、即時の血管拡張及び紅斑を生じさせ、その後浮腫が突然出現する(40〜60分にて最大)。浮腫の開始はタンパク質及び白血球の血管外遊出と同時に生じる。一時間後、浮腫が急速に縮小し、炎症細胞は組織から離れ、6時間後には耳がほぼ正常に戻る。
【0095】
ザイモサンA、酵母細胞壁の精製された多糖類フラクションの投与は、齧歯動物の急性の炎症反応を誘発するために1980年代から使用されている。炎症反応は、ザイモサン注入の5分後という早い時期における明瞭な炎症誘発性サイトカインの誘導、炎症細胞の流入及びアラキドン酸代謝物の生合成によって特徴づけられる。このモデルの目的は、ザイモサンAの投与によって誘発された炎症反応を緩和する化合物の能力評価であり、流体滲出液中の炎症性サイトカイン及びアラキドン酸代謝産物のレベルによって評価される。
【0096】
これらの分析は、実施例記載のように、全身及び局所の投与経路により炎症プロセスを治療する試験化合物の能力を測定する。
【0097】
酸化還元ストレスからの保護は、ラットのドーパミン作動性細胞における、高いグルタミン酸塩濃度で誘導された酸化性ストレス(HGOS)を使用した培養細胞系において評価できる。グルタミン酸塩の細胞傷害効果は、この細胞株が変力性のグルタミン酸塩受容体を欠損するため、興奮性毒性に起因しない。むしろ、グルタミン酸塩によって誘発されたドーパミン作動性細胞への毒性はシスチン輸送の阻害と関係し、その後、細胞内のグルタチオン(GSH)レベルの減少(Murphy T. H., et al. Neuron, Vol. 2 (1989), pp. 1547−1558)、12−リポキシゲナーゼの活性化(Li, Y. et al. Neuron, Vol. 19 (1997), pp. 453−463)、Ros産生の増加(Tan S. et al. J. Cell Biol., Vol. 141 (1998), pp. 1423−1432)、及び高い細胞内Ca2+濃度(Li, Y. et al. see supRa)に至る。幾つかの分子による、細胞をグルタミン酸塩誘発ストレスから保護する能力を測定し、その分析方法は実施例において詳述される。
【0098】
化合物の神経消炎性活性の更なる確証は、インビトロでミクログリア細胞株からのIL−1β放出の阻害によって評価できる。
【0099】
インターロイキン1(IL−1)は、30%の配列相同性(α及びβ)を共有する2種類の別々の形態として存在する炎症誘発性サイトカインである。IL−1の構成的発現は脳において低いが、この両形態のサイトカインレベルは損傷後劇的に増加する。IL−1が脳虚血によって誘発される神経変性の重要な調節物質である、という証拠が幾つか存在する(Touzani, O. et al. J. Neuroimmunol., Vol. 100 (1999), pp. 203−215)。IL−1の形態は両方とも、脳卒中のモデル実験において急速に誘導され、組換えIL1βの投与は、虚血傷害を助長する(Hill J.K., et al. BRain Res., Vol. 820 (1999), pp. 45−54); Hillhouse E.W. et al. Neurosci. Lett. Vol. 249 (1998), pp. 177−179; Loddick SA et al. J. Cereb. Blood Flow Metab. Vol. 16 (1996), pp. : 932−940; Stroemer R.P. et al. J. Cereb. Blood Flow Metab. Vol. 18 (1998), pp. 833−839を参照)。逆にいえば、受容体アンタゴニスト又は中和抗体によるIL−1活性の遮断は、顕著に虚血性傷害のモデルにおけるニューロン死及び炎症を減少させる(Betz, A.L., J. Cereb. Blood Flow Metab. Vol. 15 (1995), pp. 547−551 ; Relton, J.K., BRain Res. Bull. Vol. 29 (1992), pp. 243− 246; Yamasaki, Y. et al. Stroke, Vol. 26 (1995), pp. 676−680)。更にまた、IL−1β産生(カスパーゼ−1ノックアウト)減少したラットは虚血傷害から著しく保護され(Schielke, G.P. et al. J. Cereb. Blood Flow Metab. Vol. 18 (1998), pp. 180−185)、及びIL1α及びβのダブルノックアウトラットは、野生型ラット(皮質の87%の還元)と比較して虚血性の梗塞体積を劇的に激減させた(Boutin, H. et al. J. Neurosci. Vol. 21 (2001), pp. 5528−5534)。
【0100】
虚血性傷害での役割に加え、IL−1レベルの上昇は多くの神経変性疾患と関係する。アルツハイマー病(AD)(MRak, R.E. et al. Neurobiol. Aging, Vol. 22, no. 6 (2001), pp. 903−908)におけるIL−1の役割に関する証拠が幾つか報告されている。高いIL−1βレベルは疾患のアミロイド斑を囲むことが示されており、また最近の遺伝子的な研究により、IL−1αの多型がAD危険率の増加(3−6倍増加)と関連することが示されている(Griffin, W.S. et al. J. Leukoc. Biol. Vol. 72, no. 2 (2002), pp. 233−238)。この多型は、AD患者の認識率の低下とも相関している(Murphy, G. M. et al. Neurology, Vol. 56, no. 11 (2001), pp. 1595−1597)。ADの危険度は、IL−1αの多型がIL1βの他の多型と結合して検出されるときにも増加し(上記Griffin(W.S.)を参照)、これらのサイトカインが疾患の病理学において重要な役割を果たすという有力な証拠となる。
【0101】
この分析は、LPS及びインターフェロン−γによる炎症惹起に伴うラットマイクロ膠細胞株からのIL1βの放出を測定する。ミクログリア細胞の活性化及びIL1β放出を阻害する試験化合物の能力は、炎症性惹起と共に試験化合物の共培養で測定される。
【0102】
脳虚血性傷害は、動物における頭蓋への、又は頭蓋中での血管閉塞でモデル化される(Molinari, G. F. in: Barnett, H.J. M. et al. (Eds.), Stroke: Pathophysiology, Diagnosis and Management, Vol. 1 (New York, ChuRchill Livingstone, 1986)。ラット中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルは、最も広く使われる技術の一つであり、ヒト(例えば脳卒中に罹患している患者)の脳虚血性の傷害に近い、一時的な焦点脳虚血を誘発できる。このモデルの虚血性のトリガーとして使用する中大脳動脈は、ヒト脳卒中において最も影響を受ける血管である。このモデルはまた、典型的にはヒト脳卒中犠牲者に起こる再潅流の期間を伴う。2時間の閉塞を含むMCAOが、24時間における死亡率を上昇させることなく、皮質梗塞形成のサイズを最大にすることが知られている。
投与
【0103】
本発明の化合物は、治療的有効量で投与され、例えば上記の疾病状態を治療する十分な量で投与される。本発明の化合物又はその薬理学的に許容できる塩の投与は、類似の用途に用いられる物質の認可されたあらゆる投与様式によっても適用できる。
【0104】
本発明の化合物のヒトへの投与レベルは最適化されていないが、投与量は1投与につき約1mg〜1g、好ましくは10mg〜500mg、最も好ましくは10mg〜100mgであってよい。投与される活性化合物の量は、当然ながら、治療対象となる被験者及び疾病状態、苦痛の度合い、投与方法及び計画、及び担当医師の判断に依存する。
【0105】
上記の症状の治療に本発明の化合物を使用する際、あらゆる薬理学的に許容できる投与様式が使用できる。本発明の化合物は単独又は他の薬理学的に許容できる添加剤(固体、半固体、液体又はエアゾール剤形)と組み合わせて投与実施でき、例えば錠剤、カプセル、粉末、液体、懸濁液、坐薬、エアゾール等が挙げられる。本発明の化合物は、遅延型又は徐放性の剤形(デポ注入、浸透ポンプ、ピル、経真皮パッチ(エレクトロトランスポートを含む)などを含む)において投与でき、それにより化合物の一定速度かつ正確な量の連続投与が可能となり、例えば、単回投与に適する単位投与形態で投与されることもできる。組成物は、典型的には従来の製薬担体又は添加剤及び本発明の化合物又はその薬理学的に許容できる塩を含む。更に、これらの組成物は他の薬物、医薬品、担体、アジュバント等(抗凝血物質、血餅溶解器、透過促進剤及び放出遅延剤を含むがこれに限定されない)を含んでもよい。
【0106】
通常、意図する投与様式に応じて、組成物は本発明の化合物又は薬理学的に許容できる塩を約0.1重量%〜90重量%(例えば約0.5重量%〜50重量%)を含み、それ以外に適切な薬理学的な賦形剤、担体などを含む。
【0107】
上記で詳述した症状に対応する投与方法は経口投与であり、簡便な一日の薬剤投与計画を用いて苦痛の程度に従って調整できる。この種の経口投与において、薬理学的に許容できる非毒性組成物は、通常使用される添加剤(例えばマンニトール、乳糖、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、滑石、セルロース、ナトリウムクロスカルメロース、グルコース、ゼラチン、蔗糖、炭酸マグネシウム等)のいずれかを添加して形成される。この種の組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、分散可能な錠剤、ピル、カプセル、粉末、徐放性製剤等の形態をとる。
【0108】
特定の組成物は、ピルまたは錠剤の形態をとり、その際組成物は、有効成分と共に、希釈剤(例えば乳糖、蔗糖、二カルシウムリン酸塩等);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム等);結合剤(例えば澱粉、アラビアゴム、ポリビニルピロリジン、ゼラチン、セルロース及びその誘導体等)を含む。
【0109】
液状薬として投与可能な組成物は、上記で定義される活性化合物及び任意の製薬アジュバントを、担体(例えば水、生理食塩水、ブドウ糖溶液、グリセロール、グリコール、エタノール等)中に、例えば溶解、分散等をして調製でき、溶液又は懸濁液の状態で形成される。
必要に応じて、投与される医薬組成物は、非毒性補助剤(例えば湿潤剤、乳化剤、可溶化剤など)、pH緩衝剤(例えば酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンアセテート、トリエタノールアミンオレイン酸塩等)を少量含めてもよい。この種の剤形を調製する実際の方法は公知、又は当業者にとって明らかである(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 15th Editioneaston, PA, Mack Publishing Company, 1975を参照)。投与される組成物又は製剤はいずれにせよ、治療される被験者の症状を軽減するのに有効な量の活性化合物を含む。非毒性担体でバランスを取りつつ、有効成分を0.005%〜95%含む剤形又は組成物が調製できる。
【0110】
固形の剤形において、例えば、炭酸プロピレン、植物油又はトリグリセリドへの溶液又は懸濁液がゼラチンカプセル中に封入される。この種のジエステル溶液、並びに調製及び被包は、米国特許第4,328,245号、第4,409,239号及び第4,410,545号に記載されている。液状の剤形において、例えばポリエチレングリコール溶液を充分量の薬理学的に許容できる液体担体(例えば水)で希釈してもよく、投与の際容易に計量できる。
【0111】
あるいは、植物油、グリコール、トリグリセリド、プロピレングリコールエステル(例えば炭酸プロピレン)などに活性化合物または塩を溶解または分散させ、これらの溶液または懸濁液を硬いまたは軟らかいゼラチンカプセルに封入することにより、液体又は半固体経口製剤を調製できる。
【0112】
製剤は連続治療用の単回投与単位の形態で投与してもよく、又は症状の緩和が特に必要なときに自由投与できる、単回投与単位の形態で投与してもよい。例えば、製剤は脳卒中、心筋梗塞又は慢性心不全の発症後のボーラスとして、又は持続的な静脈内点滴で投与できる。
【0113】
他の投与方法は、局所投与である。「局所投与」とは、皮膚の表面上への本発明の組成物の塗布、スプレーなどの適用方法を指す。適用される典型的量は、皮膚1平方cmあたり約0.1mg組成物から皮膚1平方cmあたり約25mg組成物まで変化させることができる。本発明の特定の化合物は、表皮への局所投与の場合、軟膏、クリーム又はローション剤、又は経皮パッチとして処方できる。経口での局所投与に適する製剤としては、トローチ、錠剤及びうがい薬が挙げられる。
【0114】
非経口投与は、通常注入(皮下、筋肉内又は静脈内)によって実施される。注入物は、液状の溶液又は懸濁液、注射に先立ち溶液又は懸濁液の調製に適した固形、又はエマルジョンとして調製できる。適切な賦形剤は、例えば水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、及びそれらの組み合わせである。更に、投与される医薬組成物は必要に応じて、非毒性補助剤(例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、溶解度エンハンサ等(例えば酢酸ナトリウム、ソルビットのモノラウレート、トリエタノールアミンオレイン酸塩、シクロデキストリンなど))を少量含めてもよい。
【0115】
他の非経口投与方法としては、遅放性又は徐放性システムの移植が挙げられ、それにより一定レベル投与量が維持される。この種の腸管外投与用の組成物に含まれる活性化合物の割合は、化合物の活性及び被験者のニーズと同様にその特定の性質に大きく依存する。0.01%〜10%溶液の有効成分のパーセンテージが適用可能であるが、しかしながら、組成物が固体である場合はそれより高く、その後上記のパーセンテージに希釈される。
【0116】
活性化合物単独又は他の薬理学的に許容できる添加剤との組合せを含む鼻腔内投与用の溶液を投与してもよい。
【0117】
活性化合物または塩を含む製剤を、エアゾールまたはネブライザの溶液として、または単独又は不活性担体(例えば乳糖)と共に吸入用微細粉末として気道に投与することもできる。この場合、製剤の粒子径は50ミクロン未満(例えば10ミクロン未満)の直径である。
【実施例】
【0118】
以下の調製及び実施例は、当業者による理解を明らかにし、本発明を実施可能にするために提供される。それらは、単に例示のみを目的とし、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
一般分析法
【0119】
以下の実施態様において報告されるように、核磁気共鳴(NMR)スペクトルはほとんどの場合、内部標準としてテトラメチルのシラン(TM)を使用してBruker DTX 300スペクトロメータに記録した。質量スペクトルは、電子スプレーイオン化(陽又はネガティブモード)(ESI)か気圧化学イオン化(陽又は負のモード)(APCI)を使用して、Agilent 1100 LC/MSD計測器により得た。更に、明細書の全体にわたって使用される略語は以下の意味を有する。
【表1】



【0120】
実施例1
6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−4−ヒドロキシ−クロマン
【化6】

工程1:2,3,5−トリメチル−1,4−フェニレンビス(3−メチルブタ−2−エノアート)
3−メチルブタ−2−エノイル塩化物(30mL)を、150mLのトルエン中の2,3,5−トリメチルベンゼン−1,4−ジオール(20g)の溶液に添加した。反応混合物を2時間還流した。混合物を、酢酸エチルで抽出し、NaHCO3で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。真空濃縮後、酢酸エチル及びヘキサンから得られた残渣の結晶化により、白色固体として32gの2,3,5−トリメチル−1,4−フェニレンビス(3−メチルブタ−2−エノアート)を得た。
工程2:6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−4−オン
【0121】
上記エステル(30g)及び無水AlCl3(13.9g)を混合し、140℃で2時間加熱した。この間に、混合物は、暗褐色に融解した。冷却後、融解物を、300mLのジクロロメタンに溶解した。100mLの1N HClを、溶液にゆっくり添加した。有機相を、分離して、NaHCO3で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。真空濃縮後、暗褐色の残渣(37g)を、MeOH/水の150mLの1N NaOHで懸濁し、2時間還流した。溶液を、冷却し、1N HClで酸性化し、酢酸エチルで抽出した。有機層を、NaHCO3で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、真空濃縮した。酢酸エチル及びヘキサンから得られた残渣の結晶化により、黄色の固体として6ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−4−オン17.9gを得た。
工程3:6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−4−ヒドロキシ−クロマン
【0122】
水素化ホウ素ナトリウム(51mg)を、5mLのMeOH中の6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−4−オン(156mg)の溶液に添加した。反応物を1時間撹拌した。反応物を1N HClで酸性化した後、混合物を、酢酸エチルで濃縮した。有機層を水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。真空濃縮後、得られた残渣を、ヘキサンの30%の酢酸エチルで溶離するフラッシュクロマトグラフィによって精製して、淡黄色の固体として125mgの6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−4−ヒドロキシ−クロマンを得た。1H NMR(300MHz、CD3OD)4.85(t、1H)4.64(s、1H)2.26(s、3H)2.15(s、3H)2.07(s、3H)2.01(d、2H)1.37(s、3H)1.33(s、3H)13C NMR(75MHz、CD3OD)145.4、145.3、125.8、122.4、118.6、72.6、62.0、42.7、28.5、26.0、12.2、11.6、11.5
MS:m/z = 219.1(M+H+−18)(259.1(M+Na+))
【0123】
2,2,7,8−テトラメチルクロマン−4,6−ジオール同様に、水素化ホウ素ナトリウム(40mg)を、MeOH(10mL)中の6−ヒドロキシ−2,2,7,8−tテトラメチルクロマン−4−オン(50mg)の溶液に添加した。溶液を室温で一晩撹拌し、次いで水に注入して、EtOAcで抽出した。EtOAcを、水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、蒸発させた。残渣を、ヘキサン中50%EtOAcをでるシリカゲルカラムを用いて溶離して精製し、25mgの2,2,7,8−テトラメチルクロマン−4,6−ジオールを得た:1H NMR(300MHz、CDCl3)δ= 6.76(s、1H)5.29(br s、1H)4.75(m.、1H)2.16、2.09(2s、6H)1.78(m、2H)1.41、1.25(2s、6H)ppm.147.50、144.38、125.54、124.39、121.15、109.85、74.43、63.68、49.34、48.74、42.52、29.06、25.47、11.94、11.90ppm13C NMR(CDCl3、75MHz)δ=MS(m/z)= 205(M+H+
【0124】
実施例2
4−メトキシアミノ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−6−オール
【化7】

工程1:6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−4−オンO−メチル−オキシム
6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−4−オン(234mg)の実施例3で記載のとおり、但し、4−メルカプト−2,3,6−トリメチル−フェノールの代わりに2,3,5−トリメチル−ベンゼン−1,4−ジオール及びMeONH2を使用して、混合物をチオクロマン類似体を得るために調整した。8mLのピリジン中のHCl(250mg)を、15時間激しく撹拌し、濃縮した。残渣を、水で洗浄し、クロマトグラフィーにかけ、茶色の油(250mg)として6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−4−オン O−メチル−オキシムを得た。1H−NMR (300 Hz, CDCl3) δ = 4.59 (s, 1 H), 4.02 (s, 3 H), 2.86 (s, 2 H), 2.54 (s, 3 H), 2.22 (s, 3 H), 2.15 (s, 3 H), 1.37 (s, 6 H) ppm.13C NMR (75 Hz, CDCl3) δ = 151.9, 147.6, 146.0, 125.9, 123.6, 118.6, 114.7, 74.0, 61.9, 35.8, 27.0, 14.8, 12.8, 12.0 ppm.(ESI)m/z:264(M+H+
工程2:4−メトキシアミノ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−6−オール
【0125】
5mLのEtOH中の6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−4−オン O−メチル−オキシム(131mg)の溶液にO℃でBH3・ピリジン複合体(139mg)を添加し、次いで濃HCl(0.16mL)を添加した。反応物を、室温で15時間撹拌し、氷上でクエンチした。NaHCO3(濃縮された)で中和して、EtOAc(3x30 mL)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮して、粗生成物をクロマトグラフィーにかけ、茶色のワックス(92mg)として4−メトキシアミノ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−6−オールを得た。1H−NMR (300 Hz, CDCl3) δ = 4.54 (s, 1 H), 4.32 (m, 1 H), 3.63 (s, 3 H), 2.35−2.30 (m, 4 H), 2.14 (s, 3 H), 2.09 (s, 3 H), 1.95 (dd, J = 14.2, 5.9 Hz, 1 H), 1.55 (s, 3 H), 1.34 (s, 3 H) ppm;13C NMR (75 Hz, CDCl3) δ = 146.5, 145.5, 123.67, 123.61, 119.4, 116.0, 73.6, 62.0, 52.9, 37.6, 29.2, 28.2, 12.4, 11.9, 11.7 ppm;(ESI)m/z:219(M−MeONH-)。
【0126】
実施例3
6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−チオクロマン−4−オン O−メチル−オキシム
【化8】

工程1:6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−チオクロマン−4−オン
4−メルカプト−2,3,6−トリメチル−フェノール(2.0g)を、オルソ蟻酸メチルエステル(2mL)を含む無水メタノール(100mL)に溶解し、溶液を窒素で脱泡して脱酸素化した。エチル3,3−ジメチルアクリレート(8mL)を、この溶液に添加し、次いで、濃硫酸を5滴添加した。溶液を、6日間還流させた。混合物を、濃縮し、NaHCO3で洗浄して、酢酸エチルで抽出した。真空濃縮後、残渣を、ヘキサン中の20%の酢酸エチルで溶離するフラッシュクロマトグラフィで精製され、白色固体として906mgの3−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチル−フェニルスルファニル)−3−メチル酪酸メチルエステルを得た。エステルを100mLのMeOH及び水(1:1、v/v)中の1N NaOHで懸濁し、混合物を1時間撹拌した。混合物を、1N HClで酸性化して、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させて、真空濃縮し、対応する酸(3−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチル−フェニルスルファニル)−3−メチル酪酸)を得て、20mLの濃硫酸に溶解して、均一な暗赤色の水溶液を形成した。室温で30分静置後に、溶液を、クラッシュアイス上に注入した。得られた緑色の混合物を、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させて、真空濃縮した。残渣を、フラッシュクロマトグラフィを用いて10%酢酸エチルのヘキサン溶液で溶離して精製し、黄色固体として394 mgの6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−チオクロマン−4−オンを得た。1H−NMR (300 Hz, CDCl3) δ = 4.84 (s, 1H), 2.86 (s, 2H), 2.50 (s, 3H), 2.27 (s, 3H), 2.26 (s, 3H), 1.46 (s, 6H) ppm.13CNMR (75 Hz , CDCl3) δ = 198.56, 149.73, 132.46, 131.75, 128.94, 128.11, 123.02, 55.48, 42.76, 29.12, 16.58, 13.83, 13.36 ppm.MS (m/z) = 251.1 (M+H+), 273.1 (M+Na+).
工程2:6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−チオクロマン−4−オン O−メチル−オキシム
【0127】
メトキシアミンヒドロクロリド(15mg、0.18mmol)を、上記で調製された0.5mLのピリジン中の6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−チオクロマン−4−オン(30mg、0.12mmol)の溶液に添加した。反応混合物を終夜撹拌した。混合物を水で洗浄し、アセテートで抽出した。真空濃縮後、残渣を、ヘキサン中の20%の酢酸エチルで溶離するフラッシュクロマトグラフィによって精製して、白色固体として11mgの6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−チオクロマン−4−オン O−メチル−オキシムを得た。1H−NMR (300 Hz, CDCl3) δ= 4.71 (s, 1H), 3.98 (s, 2H), 2.95 (s, 2H), 2.43 (s, 3H), 2.24 (s, 3H), 2.21 (s, 3H), 1.39 (s, 6H) ppm.13C−NMR (75 Hz CDCl3) δ = 154.86, 150.53, 133.02, 128.18, 127.36, 123.74, 119.67, 61.98, 42.76, 42.27, 29.87, 16.69, 14.46, 12.81 ppm.MS (m/z) = 280.1 (M+H+).
【0128】
実施例4
6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−3−オンO−メチルオキシム
【化9】

トリエチルアミン(30mmol)を、50mLのジクロロメタン中の2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−オール(10mmol)2.2gに添加し、次いで、塩化アセチル(20mmol)を滴下した。反応物を、室温で1時間撹拌し、濃縮した。残渣を、EtOAc(80mL)で希釈し、水(3x50 mL)及びHCl(0.5M、3x50 mL)で洗浄し、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−イルアセテートを得た。MS (m/z) = 263 (100, M+H+).
【0129】
2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−イルアセテートのトルエン溶液を、30分間加熱還流し、トルエン中の2,3,ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(20mmol)の溶液をゆっくり添加した。反応液を15時間還流し、濃縮した。粗物質を、クロマトグラフィーにかけ、所望の2,2,5,7,8−ペンタメチル−2H−クロメン−6−イルアセテート(2.2g)を得た。MS (m/z) = 261 (100, M+H+).
【0130】
10%のNaOH溶液(4mL、10mmol)を、25mLのメタノール中の2,2,5,7,8−ペンタメチル−2H−クロメン−6−イルアセテート(1.3g、5mmol)の溶液に、添加した。混合物を、1時間激しく撹拌し、濃縮されたNaH2PO4溶液で中和した。EtOAc(3x30 mL)で抽出して、複合有機相を、Na2SO4で乾燥させ、濃縮して、2,2,5,7,8−ペンタメチル−2H−クロメン−6−オールを得た。MS (m/z) = 219 (100, M+H+).
【0131】
t−ブチルジメチルシリル塩化物(411mg、2.74mmol)を、5mLのジクロロメタン及び2mLのジメチルホルムアミド中の2,2,5,7,8−ペンタメチル−2H−クロメン−6−オール(300mg、1.37mmol)及びイミダゾール(186mg、2.74mmol)の溶液に添加した。得られた混合物を、15時間撹拌して、濃縮した。粗生成物を、クロマトグラフィーで精製した(415mg)。
【0132】
m−クロロペルオキシ安息香酸(CPBA)(89mg、0.36mmol)を、上記の被保護クロマン(100mg、0.3mmol)中の5mLのジクロロメタンに0℃で添加した。反応物を、室温で3時間撹拌そ、30mLの氷を加えるてクエンチした。酢酸エチル(3x20L)で抽出して、有機相をNa2SO4で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、クロマトグラフィーで精製して、6−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−3−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−4−イル3−クロロ安息香酸(102mg)を得た。
【0133】
AlCl3(840mg、0.6mmol)及びLiAlH4(0.8mL、0.4mmol)を、5mLの乾燥テトラヒドロフラン中のこのエステル(100mg、0.2mmol)に室温にて添加した。反応物を2時間撹拌し、氷(30g)を加えてクエンチした。EtOAc(3x20mL)で抽出して、有機相をNa2SO4で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を、クロマトグラフィーで精製して、6−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−3,4−ジオール(シス23のmg(トランス36mg))の2種類のジアステレオ異性体を得た。
【0134】
Pd/Cの存在下では、5mLMeOH中のシス異性体(23mg、0.06mmol)を、55psiで15時間水素化、濃縮して、6−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−3−オールを得た。2mLのジクロロメタン中のこの粗製物質にDess−マーティン試薬(0.12mmol)を0℃で添加し、その反応物を、室温まで放冷し、1時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、残渣を短いシリカゲルカラムで濾過して、6−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−3−オン(13mg)を得た。
【0135】
フッ化テトラブチルアンモニウム(1mmol)を、2mLのテトラヒドロフランの中6−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−3−オンに0℃で添加し、反応物を室温まで放冷し、2時間撹拌し、濃縮した。生成物は、短いシリカゲルカラムで濾過して精製し、所望の6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−3−オン(6mg)を得た。MS (m/z) = 235 (100, M+H+).
【0136】
2mLのEtOH及び1mLのピリジン中の6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−3−オン及びメトキシアミン(12mg)の混合物を、過熱還流し、濃縮して、高真空の下で乾燥させた。2mLのEtOHおよび1mLのピリジン中の6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−3−オン及びメトキシアミン(12mg)の混合物を、2時間加熱還流し、濃縮して、高真空下で乾燥させた。1H−NMR (300 MHz, CDCl3) δ = 4.33 (s, 1 H), 3.93 (s, 3 H), 3.57 (s, 2 H), 2.19 (s, 3 H), 2.17 (s, 3 H), 1.60 (s, 3 H), 1.46 (s, 6 H) ppm.13CNMR (75 MHz, CDCl3) δ = 158.5, 145.9, 144.4, 123.7, 121.1, 118.3, 117.5, 75.4, 61.7, 25.4, 23.0, 11.9, 11.4 ppm.MS (m/z) = 264 (M+H+).
【0137】
実施例5
5−リポオキシゲナーゼ酵素の分析
この手順が、キシレノールオレンジの第二鉄の酸化に基づく比色法を使用して、ヒト組換え5−リポオキシゲナーゼの酵素活性を測定するために用いられた。物質−96穴平底マイクロフィルタプレート(VWR、カタログ番号62402−933 9295)−リポオキシゲナーゼを映写している検定緩衝液(Cayman、カタログ番号760710)−ヒト組換え5−リポオキシゲナーゼ(Cayman、カタログ番号60402)−アラキドン酸(Sigma、カタログ番号A3555)物質−96穴平底マイクロフィルタプレート(VWR、カタログカタログ番号62402−933 9295)−リポオキシゲナーゼ識別検定緩衝液(Cayman、カタログ番号760710)−ヒト組換え5−リポオキシゲナーゼ(Cayman、カタログ番号60402)−アラキドン酸(Sigma、カタログ番号A3555)−キシレノールオレンジテトラナトリウム塩(Aldrich、カタログ番号227854)−硫酸鉄(II)七水和物(Sigma、カタログ番号F7002)−硫酸(95−98%)[18M]−メタノール
手順
【0138】
ヒト組換え5−リポオキシゲナーゼ(Cayman カタログ番号60402)を、この分析で使用した。試験化合物及び/又は賦形剤を、50mMのトリス−HClバッファ(pH 7.4)中の0.5μL 5−リポオキシゲナーゼに添加した。反応は、トリス−HClバッファ(pH 7.4)の70μMアラキドン酸の添加で開始し、FOX試薬(25mM硫酸、100μMキシレノールオレンジ、100μM鉄(II)硫酸エステル、メタノール:水:9:1)を添加して、室温で10分インキュベート後、終了した。黄色の酸性化されたキシレノールオレンジは、Fe2+イオンの脂質ヒドロペルオキシドで媒介される酸化及び得られたFe3+イオンと染料との相互作用によって青色に変わった。室温で撹拌させんがら、1時間インキュベーション中に複合体が形成された。Fe3+複合体の吸光度を、次いで、分光光度計を使用して、620nMで測定した。
【0139】
ネガティブ対照を含有する酵素に、インキュベーション中は、FOX試薬の後まで基質を添加しなかった。化合物を、10μMから開始して3乗ずつ5回濃縮して試験した。
【0140】
本発明の特定の化合物:6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−4−オン O−メチル−オキシム、6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−チオクロマン−4−オン O−メチル−オキシム、4−メトキシアミノ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−6−オール、及び、6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−4H−クロメン−4−オンジメチルヒドラゾン、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−4,6−ジオールは、約3μM未満のIC50によって、で5−リポオキシゲナーゼの阻害を示した場合、活性であると考えられた。
【0141】
実施例6
12/15−リポオキシゲナーゼ酵素の分析
この手順は、キシレノールオレンジの鉄酸化に基づく比色法を使用し、豚白血球12/15−リポオキシゲナーゼの酵素活性を測定するために用いられた。物質−96穴平底マイクロフィルタプレート(VWR、カタログ番号62402−933 9295)−リポオキシゲナーゼ識別検定緩衝液(Cayman、カタログ番号760710)−豚白血球12/15−リポオキシゲナーゼ(Cayman、カタログ番号60300)−アラキドン酸(Sigma、カタログ番号A3555)−キシレノールオレンジテトラナトリウム塩(Aldrich、カタログ番号227854)−硫酸鉄(II)七水和物(Sigma、カタログ番号F7002)−硫酸(95−98%)[18M]−メタノール
手順
【0142】
豚白血球12/15−リポオキシゲナーゼ(Cayman カタログ番号60300)を、この分析で使用した。試験化合物及び/又は賦形剤を、50mMのトリス−HClバッファ(pH 7.4)中の1.3μL 12/15−リポオキシゲナーゼに添加した。反応は、トリス−HClバッファ(pH 7.4)中の70μMアラキドン酸の添加で開始し、FOX試薬(25mM硫酸、100μMキシレノールオレンジ、100μM鉄(II)硫酸エステル、メタノール:水:9:1)を添加して、室温で10分インキュベート後、終了した。黄色の酸性化されたキシレノールオレンジは、Fe2+イオンの脂質ヒドロペルオキシドによって媒介される酸化及び得られたFe3+イオンと染料との相互作用によって青色に変わった。室温で撹拌させながら、1時間インキュベーション中に複合体が形成された。Fe3+複合体の吸光度を、次いで、分光光度計を使用して、620nMで測定した。
【0143】
ネガティブ対照を含有する酵素に、インキュベーション中は、FOX試薬の後まで基質を添加しなかった。化合物を、10μMから開始して3乗ずつ5回濃縮して試験した。
【0144】
本発明の特定の化合物:6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−4−オン O−メチル−オキシム、6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−チオクロマン−4−オン O−メチル−オキシム、4−メトキシアミノ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−6−オール、6−ヒドロキシ−2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−3−オン O−メチルオキシム2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−4,6−ジオールは、5μM未満のIC50によって、12/15−リポオキシゲナーゼの阻害を示した。
【0145】
実施例7
血液中のLTB4生産の阻害
以下の物質を、このプロトコルで使用した。物質−ヒト全血(Naクエン酸塩)(スタンフォード血液センター)−A23187(Sigma、Cat # C−7522)−ロイコトリエンB4 EIA試薬(Cayman Chemical、カタログ番号520111)−BWA4C(Sigma、カタログ番号B7559)
手順
A23187の調製:
【0146】
A23187を、DMSO(アリコートは、−20の℃で保管できる)中の10mMの原液として調製した。分析日に、原液を、以下の通りに希釈した:70μL10mMの原液を、1.6mLの血漿に添加して、0.42mMの濃縮作用を得た。
試験品目の調製:
【0147】
DMSOの30mMの原液から、試験物を、PBS(すなわち10μL原液+490μL PBS)中の600μMの試験用の濃度に希釈した。これは、最も高い濃度(最終試験濃度は30μMの)である。この600μM溶液から、試験物を、PBS中で1:3に連続して希釈して、用量反応曲線を得た。次いで、各濃度の10μLの試験物を、96ウェル(すなわち4通りの試験)の4個のウェルに添加した。ポジティブ対照化合物、BWA4Cを、全分析で使用した。
血液刺激手順
【0148】
ヒト全血を、化合物(ウェルにつき190μL)を含むプレートに添加して、十分に混合した。血液を、37℃で15分間、化合物と共にインキュベートした。このインキュベート後に、10μL、0.42mMのA23187のを、ネガティブ対照ウェル以外の各ウェルに添加して、20μMの最終的なカルシウムイオノフォア濃縮を得た。次いで、プレートを37℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを、密封したマイクロプレートバケツ中で、4℃、2000gで15分間遠心分離した。血漿を、次いでELISAによるLTB4レベルの定量化のために除去した。
ELISAによるLTB4レベルの測定
【0149】
血漿のLTB4レベルを、cayman chemicalsから市販のELISAキットを使用して測定した。ELISAは、製造業者による説明に従って使用した。媒体対照試料のLTB4レベルを、試験物が添加された試料と比較した。これにより、試験物の各濃縮によるLTB4生産の阻害率を算出して、IC50を判定した。
【0150】
記載されているように試験した場合、本発明の特定の化合物は、5μM未満のIC50によってLTB4に対して保護される。
【0151】
実施例8
LTB4細胞分析
この手順が、競争的ELISAテクニックを使用している好中性細胞系からロイコトリエンLTB4の解放を測定するために用いられた。
物質および器材
細胞調製及び実験のための物質−MPRO細胞系(ATCC、カタログ番号CRL−11422)−カルシウムイオノフォア(A23187)(Sigma、カタログ番号C7522)−ノルジヒドログアイアレチン酸(NDGA)(BioMol ,カタログ番号EI101−0001)−レチン酸(オールトランス)(ATRA)(Sigma、カタログ番号95152)−無菌で、組織培養はLTB4 ELISAのための96ウェル(Corning、カタログ番号3614)物質を処理した−プレコートされた(ラット抗ラビットIgG)EIA96穴ストリッププレート(Cayman、カタログ番号400004)−ロイコトリエンB4 AchEトレーサ(Caymanカタログ番号420110)−ロイコトリエンB4 EIA抗血清(Caymanカタログ番号420112)−エルマンズ試薬(Caymanカタログ番号400050)−EIA濃縮緩衝液(10X)(Caymanカタログ番号400060)−洗浄濃縮緩衝液(400X)(Caymanカタログ番号400062)−樹脂カバーは、(Caymanカタログ番号400012)
【0152】
ラット前骨髄性細胞系(MPRO)を、この分析で使用した。これらの細胞は、72時間の10μMオールトランスレチン酸を伴う処理で成熟した好中球に区別されることができることに関与する未発達の好中球である。
【0153】
72時間の分化後、細胞を、試験化合物又は媒体の存在又は非存在下で1μMのカルシウムイオノフォア(A23187)で37℃で1時間活性化した。この後、上清を細胞から除去し、LTB4レベルをCayman(カタログ番号520111)から、ロイコトリエンB4EIAキットを用いて製造業者の説明に従って測定した。ネガティブ対照は、分化したが、非活性の細胞からの培地サンプルだった。化合物を、10μMから開始して4乗ずつ5回濃縮して試験した。
【0154】
上記の手順に従って、本発明の特定の化合物は、記載されているように試験した場合、5μM未満のIC50で保護され、本発明のLTB4 特定の化合物の阻害を呈した。
【0155】
実施例9
炎症分析−細胞ELAM分析
内皮白血球接着分子(ELAM)(別名Eセレクチン)を、内皮細胞の表面に発言させた。
この分析で、リポポリサッカライド(LPS)及びIL−1βは、ELAMの発現を活性化するために用いる。内皮細胞表面に対する白血球付着の減少、減少した細胞欠損の減少に慣用することを示す研究にしたがって、試験試薬によって、この発現を減少させる能力が試験される(Takada, Mら Transplantation, Vol. 64 (1997), pp. 1520-25; Steinberg, J.B., et al. J. Heart Lung Trans., Vol. 13 (1994), pp. 306-313)。
【0156】
内皮細胞は、多くの種から選択でき、公知技術の方法(例えばHBMEC; Hess, D.C., et al. Neurosci. Lett., Vol. 213, no. 1 (1996), pp. 37-40)に従って培養できる。細胞は、96ウェルで他簡便に培養される。細胞を、試験試薬(特定の濃度および時間は、細胞種に応じて調整できる)の存在下では、各ウェルに0μg/mL LPS及び100pg/mLのIL−1βを含む溶液を6時間かけて添加することによって刺激した。処理緩衝液を、除去し、室温で、予め暖めたFixing Solution(登録商標)(100μL/ウェル)と25分間置換した。細胞を、3回洗浄し、ブロッキングバッファ(PBS及び2%のFBS)で室温で25分間温置した。Monoclonal E−Selectin抗体(1:750、Sigma カタログ番号S−9555)を含むブロッキングバッファーを、各ウェルに添加した。プレートを封止し、4℃で一晩保存する。プレートを、ウェル毎に160μLのブロッキングバッファで4回洗浄する。次いで、ブロッキングバッファ中で1:5000に希釈した第2の抗体−HRPを、添加し(100のμL/ウェル)、プレートを室温(光から保護される)で2時間インキュベートした。プレートを、ブロッキングバッファで4回洗浄し、、100μLのABTS基質水溶液(Zymed、カタログ番号00−2024)の室温で添加するした。ウェルは、35分間させ、10秒間の撹拌プログラムでFluoroskan(登録商標)Readerにおける402nmで測定する。対照ウェルと比較して、ポジティブ対照においては、試験ウェルのELAM濃度の減少を記録する。
【0157】
上記に説明したように試験した場合、本発明特定の化合物は、この分析で活性を示す。
【0158】
実施例10
ラット足水腫の分析
動物の調製:
この分析で、175〜200gの体重の雄のスSprague-Dawleyラットを使用する。動物は、標準的な実験室の条件下で、水及び市販の齧歯類用食餌の自由に摂取できる。室温を20℃から23の℃に維持し、部屋照明は12/12時間で明るい/暗い周期である。動物を、分析前の5〜7日前から実験室環境に慣れさせる。
実験手順:
【0159】
以下の通りに、各動物を、カラゲナン注入の1時間前に、賦形剤、対照物質又は試験物質を投与して処置した:大腿動脈からI.V.を注入:
【0160】
手術中は酸素中3.0%のイソフルラン(Aerane、Frontドッジ、IA)の吸入によってで麻酔を維持する。手術前に、右大腿静脈の外側の部位の毛を剃り、殺菌する。右の鼠径部に3cm切開し、入れ、大腿動脈を分離する。大腿動脈を一時的に微小血管クリップで結紮し、大腿動脈に小さく切開し、をポリエチレン(PE−50)カテーテル(Becton.Dickinson and Co., Sparks, MD)を挿入してし、進入させる。カテーテルを、縫合(絹5/0、Carlisle Laboratories, Farmers Branch, TX)によって、適所に固定する。カテーテルの他端を、ボーラス注射用に食塩水で満たしたシリンジに取り付ける。止血鉗子を使用して、ポケットを動物の背部皮下に作製し、PEカテーテルを、ボーラス注射又は持続注射用に浸透圧性ポンプを露出部と肩甲骨まで上げる。
I.P.注入:
【0161】
覚醒中のラットを、標準的な操作位置に静置する。23 3/4G針を、腹部右下4分の1、正中線から僅かに離れたところで腹膜にに注入する通す。シリンジのプランジャを、わずかに引いて、器官への注入を回避する。体液が回収されないなければ、シリンジの内容物は腹腔に送達されている。
強制摂食:
【0162】
標準のラット用胃チューブ(Popper & Sons、NY)を、3cc皮下注射器に取り付ける。動物を、垂直方向に静置する。栄養チューブを口に挿入し、次いで、胃(チューブのだいたいの挿入長さは、摂食前に測定すること)に達するまで、穏やかに進入させる。シリンジの内容物をゆっくり送達し、次いで、管を回収する。
【0163】
1時間のポスト処理後、各動物に、酸素中3.0%のイソフルラン(Aerane、Front Dodge、IA)で麻酔をかけ、右の後足の内部足底の表面に、食塩水中1%のカラゲニンラムダ型IV(Sigma Chemical Company, St. Louis, MO)懸濁液を投与した。足水腫を、カラゲナン注入の4時間後、プレチスモメーターを使用して足体積の増加、或いは、高精度スケールを使用して足重量の増加を測定する。水腫測定の直前に、動物をCO2仮死状態を経て犠牲にし、500μLの血液を、後の分析用に心臓の穴から吸引する。足体積体積を、足によって予め目盛付きのチャンバーから水排出された量によって測定する。左の後足(対照)の体積を、(カラゲナン処理された)右の後足の体積から減算して、カラゲナンで誘発させた水腫の体積を判定する。両後足を、摘出して、別々に足の重量を測定し、その差を求める。
【0164】
モデルでも変化を最小化するため、以下の処置が行なわれる。
・毎日、カラゲナンを、実験の前(注入の2−3時間前)に、新鮮なものにする。
・プレチスモメーターを、実験前に毎日調整した。
・カラゲナン注入によって、処置中の足に著しく出血又は血腫が引き起こされる場合、その動物は研究から除外される。
・各足を測定前に足関節から脛骨足根骨関節のところで印をつけ、確実に各足を同一レベルで水中に沈める。
・繰り返し体積の読み取りが必要な場合、足を、完全に乾燥させること。
統計分析
【0165】
重量の違い又は左右の足間の体積を、各動物ごとに算出して、分析する。集団データを、+/−SEMで示し、p<0.05であれば、有意であると考えられる。集団間の比較を、(2集団間の)対応のないt検定、又は一元配置の分散分析、事後Bonferroni’s多重比較の順で又はで行う。
結果
【0166】
この方法による試験では、本発明の特定の化合物によって水腫が減少する。
【0167】
実施例11
局所アラキドン酸に対するラットの耳炎症性反応
動物:
【0168】
Balb C Mice 23−28 g, Simonsen Labs, Gilroy, CAから
物質:
【0169】
アセトン2mg/20μL(200mg/mL)で再構成されたブタ肝臓からのアラキドン酸(純度99%)(Sigma Aldrich)吸入麻酔:イソフルラン3%(Baxter)血液試料管:ヘパリン(Becton Dickinson)を有するマイクロ試験管TNFαElisaアッセイ(R&D Science)。
実験手順
【0170】
アセトン、エタノール又はエタノール水溶液で調製される試験化合物、ポジティブ対照(アラキドン酸のみ)及び標準(0.1mg/kgのデキサメサゾン)を、エッペンドルフRピペットで右耳の両側にそれぞれ10μL(合計20μL)ずつ塗布する。30分後に、10μLのアラキドン酸を、右耳(合計20μL)の両側に塗布した。アラキドン酸を使用した1時間後に、ラットにイソフルランで麻酔を強力にかけ、血液サンプルを軌道洞を経て採取して、マイクロ試験管に入れた。次いで、動物は、CO2吸入で犠牲にし、右耳を根元から摘出した。耳組織の一定の血栓を、8mmの真皮パンチを使用して得た。血栓を、ほぼ0.1mgにすばやく量りとり、次いで、急速冷凍して、TNFα測定した。
統計分析:
【0171】
群データを+/−SEMで示し、p<0.05であれば、有意であると考えられる。集団間の比較を、(2集団間の)対応のないt検定、又は、分散分析(3群以上)、Dunnet’s検査の順に行なった。本発明が本発明の特定の実施形態に関して記載されると共に、様々に変更されることを、当業者が十分に理解するべきであり、その同等物は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、置き換えることができる。加えて、多くの修正が、本発明の目的、精神及び範囲に、特定の状況、物質、化合物、方法、プ処理工程又は工程を適応させるために行なうことができる。かかる修正の全ては、本明細書に請求項の範囲内であることが意図される。上記の特許および刊行物の全ては、援用によって本明細書の内容の一部をなす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

式I
[式中、
Xは、O、S(O)0-2又はNRであり;
1及びR4は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、アミノスルホニル、スルファニル、アリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、アルコキシルカルボニル及びアミドからなる群から選択され、但し、R1及びR4のうち一つだけが水素であり;
2は、ヒドロキシ、アルコキシ、−O−アルケニル、−O−アシル、−O−アルキレン−アミノ、−O−C(O)−アルキレン−COORb、−O−C(O)−アルキレン−アミノ、−O−C(O)−アルキレン−ヘテロシクリル、−O−グルコシド、−O−ホスホリル、−O−アルキレン−ホスホリル又は−O−C(O)−AAからなる群から選択され、ここに、AAはアミノ酸又はジペプチド、トリペプチド又はテトラペプチドであり;
3は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミノ、アミノスルホニル、スルファニル、アリール、ヘテロシクリル、アルコキシ、カルボキシ、アルコキシルカルボニル及びアミドからなる群から選択され;或いは
3及びR4は、それらが結合する原子と共に、シクロアルキル環、アリール環又は複素環を形成し;
5及びR6は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、−NRdORa、又は、−NRd−NRbcからなる群から選択され;
7及びR8は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、−NRdORa又は−NRd−NRbcからなる群から選択され;或いはR7及びR8が、それらが結合する炭素原子と共に、C=NORa又はC=N−NRbc基を形成し;
9は、水素、アルキルおよびシクロアルキルからなる群から選択され;
10は、アルキル又はシクロアルキルであり;
Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アミノカルボニル、ヘテロシクリル及びアリールからなる群から選択され;
aは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アシル、ヘテロシクリル及びアリールからなる群から選択され;
b及びRcは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アシル、アミノカルボニル、ヘテロシクリル及びアリールからなる群から選択され;或いはRb及びRcが、それらが結合する窒素原子と共に、任意に1〜3個のN、O又はS原子を含み、任意に置換されていてもよい、飽和又は不飽和の3〜8員環を形成し;
dは、水素又はアルキルであり;但し、R5が、OH、−NRdORa又は−NRd−NRbcであるか、R7が、−NRdORa又は−NRd−NRbcであるか、或いはR7及びR8が、それらが結合する炭素原子と共に、C=NORa又はC=N−NRbc基を形成する]
によって表される化合物若しくはその単一の立体異性体、立体異性体の混合物又は薬理学的に許容できる塩。
【請求項2】
2がヒドロキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1、R3及びR4が、独立して、水素、ハロゲン及びアルキルからなる群から選択される、請求項2の記載の化合物。
【請求項4】
XがOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
XがSである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
XがNRである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
CR78がC=NORaである、請求項2に記載の化合物。
【請求項8】
CR78がC=N−NRbcである、請求項2に記載の化合物。
【請求項9】
5が−NRdORaである、請求項2に記載の化合物。
【請求項10】
5が−NRd−NRbcである、請求項2に記載の化合物。
【請求項11】
5がOHである、請求項2に記載の化合物。
【請求項12】
7が−NRdORaである、請求項2に記載の化合物。
【請求項13】
7が−NRd−NRbcである、請求項2に記載の化合物。
【請求項14】
1、R3及びR4が、独立して、水素、ハロゲン及びアルキルからなる群から選択され、XがOである、請求項7、8、9、10、11、12又は13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
1、R3及びR4が、独立して、水素、ハロゲン及びアルキルからなる群から選択され、XがSである、請求項7、8、9、10、11、12又は13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
1、R3及びR4が、水素、ハロゲン又はアルキルからなる群から選択され、XがNRである、請求項7、8、9、10、11、12又は13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
Rが、アミド、スルホニルアミノ又はアミノスルホニルによって任意に置換されていてもよい、アリール、ヘテロシクリル及びアルキルからなる群から選択される、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
薬理学的に許容できる賦形剤と混合される、請求項1、14、15又は16のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項19】
リポオキシゲナーゼによって媒介される状態である被験者を治療する方法であって、前記被験者に、治療上有効量の請求項1記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項20】
前記状態が、前立腺癌、胃癌、乳癌、膵臓癌、結腸直腸又は食道癌及び気道癌を含む癌細胞のアポトーシスに関連する疾患;アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、心臓血管疾患、心不全(慢性及び鬱血性心不全を含む)、脳虚血、網膜虚血、心筋虚血症、手術後の認知機能障害及び他の虚血などの低酸素又は無酸素に関連する疾患;糖尿病、動脈の炎症、炎症性腸疾患、クローン病、腎疾患、月経前症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、痛風を含む炎症に関連する疾患、心肺の炎症、リウマチ様関節炎、骨関節炎、筋疲労、並びに座瘡、皮膚炎及び乾癬を含む皮膚の炎症性障害;喘息、慢性気管支炎、ヒト気道癌腫、鼻水分泌過多、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、化学療法又は他の薬剤に起因する肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症及び成人呼吸窮迫症候群などの気道の障害;不安症及びうつ病を含む精神障害を含む中枢神経系(CNS)障害に関連する疾患;アルツハイマー病、痴呆およびパーキンソン病を含む神経変性及び神経炎症;脊髄傷害、頭部外傷及び外科的外傷を含む末梢神経疾患、並びに同種移植組織及び臓器移植拒絶、乾癬、湿疹、リウマチ様関節炎及び糖尿病などの自己免疫系に関連する疾患;及び骨減少又は骨生成に関連する疾患からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
糖尿病、関節炎、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アレルギー性鼻炎、皮膚炎、湿疹、乾癬またはアテローム性動脈硬化症に罹患する被験者を治療する方法であって、治療上有効量の請求項18に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項22】
2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−4,6−ジオール、2,2,7,8−テトラメチルクロマン−4,6−ジオール、5,7−ジエチル−2,2−ジメチルクロマン−4,6−ジオール、5−エチル−7−イソプロピル−2,2−ジメチルクロマン−4,6−ジオール、及び7−イソプロピル−2,2,5−トリメチルクロマン−4,6−ジオールから選択される化合物又はその立体異性体、立体異性体の混合物又は薬理学的に許容できる塩。
【請求項23】
4−メトキシアミノ−2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−6−オール、4−(メトキシアミノ)−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、5,7−ジエチル−4−(メトキシアミノ)−2,2,8−トリメチルクロマン−6−オール、7−イソプロピル−4−(メトキシアミノ)−2,2,5−トリメチルクロマン−6−オール、及び7−イソプロピル−4−(メトキシアミノ)−2,2,5−トリメチルクロマン−6−オールから選択される化合物又はその立体異性体、立体異性体の混合物又は薬理学的に許容できる塩。
【請求項24】
活性成分として式IA:
【化2】

式IA
[式中、R21、R24及びR29は、独立して、水素、アルキル及びシクロアルキルからなる群から選択され、但し、R1及びR4のうちの一つが水素であり、R23及びR210は、互いに独立にアルキル又はシクロアルキルである]
によって表される化合物又はその単一の立体異性体、立体異性体の混合物又は薬理学的に許容できる塩を、薬理学的に許容できる賦形剤とともに含む医薬組成物。
【請求項25】
21及びR23がC2-4アルキルであり、R24が水素であり、R29及びR210がメチルである、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
リポオキシゲナーゼによって媒介される状態の被験者を治療する方法であって、前記被験者に治療上有効量の請求項24又は請求項25記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項27】
糖尿病、関節炎、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アレルギー性鼻炎、皮膚炎、湿疹、乾癬又はアテローム性動脈硬化症に罹患する被験者を治療する方法であって、治療上有効量の請求項24又は請求項25に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項28】
活性成分として式IB:
【化3】

式IB
[式中、R21、R24及びR29は、互いに独立して、水素、アルキル又はシクロアルキルであり、但し、R21及びR24のうちの一つが水素であり、R23及びR210は、互いに独立して、アルキル又はシクロアルキルであり、R2aは、アルキル、シクロアルキルである]
によって表される化合物若しくはその単一の立体異性体、立体異性体の混合物又はその薬理学的に許容できる塩を、薬理学的に許容できる賦形剤とともに含む医薬組成物。
【請求項29】
21及びR23がC2-4アルキルであり、R24が水素であり、R29及びR210がメチルである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
リポオキシゲナーゼによって媒介される状態の被験者を治療する方法であって、前記被験者に、治療上有効量の請求項28又は請求項29記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項31】
糖尿病、関節炎、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アレルギー性鼻炎、皮膚炎、湿疹、乾癬又はアテローム性動脈硬化症に罹患する被験者を治療する方法であって、治療上有効量の請求項28又は請求項29に記載の組成物を投与することを含む方法。

【公表番号】特表2008−531558(P2008−531558A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557015(P2007−557015)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/044360
【国際公開番号】WO2006/093547
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】