説明

新規な蛍光色素およびその使用

本発明は、ホタルルシフェリン構造に基づく蛍光色素を提供する。これらの色素は、より短い波長で最適に励起され、ストークスシフトが少なくとも50nmである。本発明の蛍光色素は、サンプル中の分析物の検出に使用できる色素−結合体の調製に有用である。一態様では、本発明の蛍光色素は、明細書に記載の一般式(I)を有し、式中の各官能基は、明細書に記載の通りである。さらに、一局面において、本発明の蛍光色素を合成するための合成中間体も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光色素に関し、さらに詳しくは、紫外線励起性蛍光色素組成物、紫外線励起性化合物および紫外線励起性結合体、ならびにその使用方法および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光色素は、サンプル中の成分の標識化、検出および/または定量に広く使用されている。そうした検出および/または定量のために使用される様々なアプローチには、蛍光顕微鏡検査、蛍光イムノアッセイ、細胞のフローサイトメトリー解析、および様々な他の適用がある。一般に、蛍光色素を検出ツールとして利用する多くの適用では、タンパク質、抗体、酵素、ヌクレオチド、核酸、ならびに他の生体分子および非生体分子などのリガンドと蛍光色素を結合体化して色素標識リガンドを製造する必要がある。色素標識リガンドは、その後の生化学的相互作用に特異性を付与する重要な試薬であり、蛍光色素により、相互作用を検出および/または定量する方法が提供される。
【0003】
蛍光色素の選択は、蛍光顕微鏡検査、蛍光イムノアッセイ、フローサイトメトリー、および様々な他の適用などマルチプレックス、マルチカラー解析を利用する分野で特に重要である。とりわけ、特定の検出適用では、特異的な励起範囲を有する紫外線励起性フルオロフォアが不可欠である。
【0004】
特に、マルチカラーフローサイトメトリー機器での405nm紫色レーザーで効率的に励起され得る蛍光色素が求められている。こうした適用の標的色素は本質的に、以下の:1)405nm近傍の、その励起スペクトルの最大値、2)強力かつスペクトル分解可能な最大発光、3)ストークスシフトが大きく、好ましくは少なくとも50nm、および4)反応性基を介して蛍光色素を生体分子(biomolecule)とカップリングする能力という特徴を持つべきである。これまで、様々なリガンドに結合体化して、光学的かつ電気的に分離可能な蛍光スペクトル特性を持つ色素標識試薬を提供し得る紫外線励起性フルオロフォアが不足している。
【0005】
本発明の蛍光色素は、構造的にホタルルシフェリン化合物に類似している。こうした化合物は従来、ルシフェリンの酸化触媒作用により発光する化学発光試薬として使用されてきた。酵素ルシフェラーゼの基質であるルシフェリンは、ルシフェラーゼの存在下で酸化されてオキシルシフェリンおよびエネルギーを生成し、エネルギーが光の形で放出される。こうした種類のアッセイでは、ルシフェラーゼ−ルシフェリン反応が、様々な物質に対する簡便かつ迅速で感度の高いアッセイの基礎となる(非特許文献1)。
【0006】
ホタルルシフェリンの構造に基づくこうした化学発光色素は広く普及してはいるものの、そうした使用は、ホタルルシフェリンの構造に類似した構造を持つ化合物が、紫外スペクトルの特定の部分の範囲内で励起可能な蛍光色素として機能し得ることを証明するものではない。こうした紫外線励起性蛍光色素は、以下に限定されるものではないが、マルチプレックス、マルチカラー蛍光解析を利用する適用など広範な適用で特に有利である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Karicka,LJ.,Analytical Biochemistry,(1988)175,14〜21
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一般にホタルルシフェリン構造に基づく新規な紫外線励起性蛍光色素、それを含む組成物、その中間体、およびその使用方法に関する。
【0009】
一態様では、一般式(I):
【0010】
【化1】

を有する蛍光色素の組成物を提供され、式中、
およびXは独立にSまたはOであり;
およびYは独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルであるか、あるいは、YまたはYの一方はHであり、他方はハロアルキル基であり;
各々のWは独立にHまたはアルキルであり;
はHまたはアルキルであり;
、およびW基の1つは存在していなくてもよく、存在しない場合、環CのCとCとの間の、点線で示す別の結合で置換されており;
は、式−L−RGの標識置換基を含み、式中、Lは結合または連結基であり;
RGは、蛍光色素を別の分子に結合させることができる反応性基である。
【0011】
別の態様では、本発明の蛍光色素を合成するための合成中間体を提供する。一実施形態では、合成中間体は、一般式:
【0012】
【化2】

により表され、式中、
およびYは独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルであり、
またはYまたはYの一方はHであり、他方はハロアルキル基である。
【0013】
別の態様では、生体分子(biomolecule)に結合体化した蛍光色素を含む色素−結合体を提供する。
【0014】
別の態様では、蛍光色素および色素−結合体を用いて、サンプル中の分析物またはリガンドが存在する、または相互作用する位置を特定したり、あるいは、その存在または相互作用を検出したりする方法を提供する。特定の実施形態では、色素−結合体に結合する相補的な生体分子(biomolecule)の存在を検出するための色素−結合体の使用方法を提供する。
【0015】
他の実施形態では、本発明の色素−結合体に結合する相補的な生体分子(biomolecule)の存在の検出に使用する、蛍光色素、色素中間体、または色素−結合体を含む試薬およびキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の紫外線励起性蛍光色素の一般構造を図示する。
【図2】図2A〜図2Dは、ルシフェリン誘導体の合成スキームを図示する。
【図3】図3Aおよび図3Bは、デヒドロルシフェリン酸の誘導体の合成スキームを図示する。
【図4】図4は、2カラーフローサイトメトリーを用いて、CD4−色素2結合体とCD4−Pacific Orange結合体との性能を比較したヒストグラムを図示する。
【図5】図5は、10カラーフローサイトメトリーを用いて、CD4−色素3とCD4−Pacific Orange結合体との性能を比較したヒストグラムを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本出願に使用する科学技術用語はすべて、他に記載がない限り、当該技術分野において一般的に使用される意味を有する。本出願に使用する場合、以下の語または表現は、以下に示した意味を有する。
【0018】
本明細書で使用する場合、「活性化エステル」という用語は、アミノ基と自発的に反応するエステルを意味する。活性化エステルは一般に式−CORを持ち、式中、Rは優れた脱離基である。活性化エステルとして、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステルとも呼ばれるスクシンイミジルオキシ(−OC)、スルホスクシニムジルオキシ(−OC−SOH)、−1−オキシベンゾトリアゾリル(−OC)があるが、これに限定されるものではない。
【0019】
本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、1〜20個の炭素を含む分岐、直鎖、または環状炭化水素基を意味する。「アルキル」という用語は、典型的には最大8個の炭素を含む「低級アルキル」基を含む。
【0020】
本明細書で使用する場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つのC−−C二重結合を含み、かつ2〜20個の炭素を含む、分岐、直鎖、または環状炭化水素基を意味する。「アルケニル」という用語は、典型的には最大8個の炭素を含む「低級アルケニル」基を含む。
【0021】
本明細書で使用する場合、「アルキニル」という用語は、少なくとも1つのC−−C三重結合を含み、かつ2〜20個の炭素を含む、分岐または直鎖の炭化水素基を意味する。「アルキニル」という用語は、典型的には最大8個の炭素を含む「低級アルキニル」基を含む。
【0022】
本明細書で使用する場合、「アリール」という用語は、1〜5の炭素環式芳香族環を含む芳香環含有基を意味し、この基は、H以外の1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0023】
本明細書で使用する場合、「分析物」という用語は、アッセイによりサンプルにおいて、その存在または量が測定される物質を意味する。分析物は、反応性基、たとえば、それを介して本発明の色素を分析物に結合体化できる基を含んでもよい。分析物として、特異的な結合親和性を持つ特異的結合パートナーが存在する有機分子および生体分子が挙げられる。例示的な分析物として、以下に限定されるものではないが、一本鎖または二本鎖のDNA、RNA、DNA−RNA複合体、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体フラグメント、抗体−DNAキメラ、抗原、ハプテン、タンパク質、レクチン、アビジン、ストレプトアビジンおよびビオチンが挙げられる。他の例示的な分析物として、薬物およびホルモンも挙げられる。
【0024】
本明細書で使用する場合、「結合体化分子」または「CM」という用語は、少なくとも1種の本発明の色素と会合している生物学的または非生物学的成分を意味する。こうした成分として、以下に限定されるものではないが、抗原、抗体、炭水化物(たとえば、単糖、オリゴ糖、および多糖)、タンパク質、ペプチド、ハプテン、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ポリマー、ウイルス、微生物、または細胞もしくは細胞成分が挙げられる。「結合体化分子」は、固体支持体(たとえば、合成支持体、クロマトグラフィー支持体、膜、またはビーズ)も含む。
【0025】
本明細書で使用する場合、「蛍光色素」という用語は、電磁スペクトルの紫外領域および紫領域の光を吸収し、青領域の光を再放射して検出可能なシグナルを生成する化合物を意味する。「蛍光色素」はまた、色素を結合体化分子(conjugate molecule)に結合しやすくする化学反応性基を持つ蛍光化合物を含む。
【0026】
本明細書で使用する場合、「色素−結合体」という用語は、蛍光色素が生物学的または非生物学的成分と会合している分子を意味する。こうした生物学的または非生物学的成分は、「結合体化分子」とも呼ばれる。一実施形態では、蛍光色素の結合体化分子への会合は、共有結合による会合である。色素−結合体の例として、抗原、抗体、炭水化物、タンパク質、ペプチド、ハプテン、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ポリマー、固体支持体(たとえば、合成支持体、クロマトグラフィー支持体、膜またはビーズ)、ウイルス、微生物、または細胞もしくは細胞成分の結合体があるが、これに限定されるものではない。
【0027】
本明細書で使用する場合、「フルオロフォア」という用語は、ある波長域でエネルギーを吸収し、吸光度領域以外の波長域でエネルギーを放出することができる分子を意味する。「励起波長」という用語は、フルオロフォアがエネルギーを吸収する波長の範囲を意味する。「発光波長」という用語は、フルオロフォアがエネルギーを放出する、または蛍光を発する波長の範囲を意味する。
【0028】
本明細書で使用する場合、「ハロゲン」という用語は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。同様に、「ハロ」という用語は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基またはヨード基を意味する。
【0029】
本明細書で使用する場合、「ハロアルキル」という用語は、1個または複数個の水素原子が1個または複数個のハロゲン原子で置換されているアルキル基を意味する。一実施形態では、ハロアルキルは、1つ、2つ、または3つのハロ基で置換されていてもよい。ハロアルキルという用語はまた、ペルフルオロ−アルキル基も含む。ハロアルキルの例として、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、および同種のものが挙げられる。
【0030】
本明細書で使用する場合、「連結基」または「L」という用語は、色素を反応性基すなわちRGに結合する基を意味する。連結基は、結合でも、原子でも、または別の二価もしくは多価の基でもよい。連結基は原子の直鎖でも、または分岐鎖でもよく、そのいくつかは、環構造の一部であってもよい。連結基は通常、1〜約50個の非水素原子、より一般的には1〜約30個の非水素原子を含む。この鎖を構成する原子は、C原子、O原子、N原子、S原子、P原子、Si原子、B原子およびSe原子、好ましくは蛍光色素を化学反応性基などの別の部分と共有結合させるC原子、O原子、N原子、P原子およびS原子から選択される。ハロゲン原子は、鎖または環に置換基として存在していてもよい。結合置換基を構成する典型的な官能基として、アルケン基、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、エーテル基、ペルオキシド基、ケトンとしてのカルボニル基、エステル基、炭酸エステル基、チオエステル基、またはアミド基、アミン基、アミジン基、カルバマート基、尿素基、イミン基、イミド基、イミデート基、カルボジイミド基、ヒドラジン基、ジアゾ基、ホスホジエステル基、ホスホトリエステル基、ホスホネートエステル基、チオエーテル基、ジスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、スルホネートエステル基、スルフェートエステル基、およびチオ尿素基が挙げられる。連結基の例として、置換もしくは非置換のポリメチレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アリーレンアルキル、またはアリールチオが挙げられる。
【0031】
色素を反応性基に結合するための本発明による1つの連結基は、一般構造RC(O)Rを持ち、式中、Rは結合、または色素に結合したC1〜10メチレン(CH)nであり、C(O)はカルボニル基であり、RはOH、またはカルボニル基を反応性基RGに結合する結合である。この連結基の例として、下記がある:
【0032】
【化3】

下記に示す別の実施形態では、連結基は、一般構造RC(O)AC(O)Rを持ち、式中、Rは上記のように結合、またはC1〜10メチレンであり、AはNH、SまたはOのいずれかであり、Rはアルケニル(CH)n、少なくとも1つの不飽和結合を持つ5もしくは6員環、またはC1〜10メチレン(CH)nと5もしくは6員環との組み合わせであり、RはOH、または末端カルボニル基を反応性基RGに結合する結合である。この連結基の例として、下記がある:
【0033】
【化4】

本明細書で使用する場合、「反応性基」または「RG」という用語は、その存在により、共有結合または物理的力により別の分子への結合が促進される原子または基である。反応性基の選択される例を表1に示す。いくつかの実施形態では、本発明の蛍光化合物が別の化合物に結合すると、たとえば、反応性基がハロゲン原子またはトシレート基などの脱離基で、求核置換反応により蛍光標識化合物が別の化合物に共有結合すると、反応性基から1個または複数個の原子が失われる。他の実施形態では、蛍光標識化合物が共有結合形成により別の化合物に結合すると、マイケル付加などの付加反応またはディールス・アルダー反応などの付加環化反応において起こるように、あるいは、反応性基がイソシアネート基またはイソチオシアネート基である場合に起こるように、反応性基内の結合が再編成される。なお他の実施形態では、結合は、共有結合形成を必要とするものではなく、むしろ物理的力を必要とするものであり、この場合、反応性基は変化しない。物理的力とは、水素結合、静電引力またはイオンの引力、塩基スタッキングなどの疎水性引力、ならびにビオチン−ストレプトアビジン相互作用、抗原−抗体相互作用およびヌクレオチド−ヌクレオチド相互作用などの特異的親和性相互作用などの引力をいう。
【0034】
【表1】

反応性基がカルボン酸またはカルボン酸の活性化エステルなどの部分である場合、反応性色素は、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはハプテンなどの1つまたは複数のアミノ基を含む分子との色素結合体を調製するのに特に有用である。反応性基がマレイミドまたはハロアセトアミドである場合、反応性色素は、チオールを含む分子との結合体化に特に有用である。反応性基がヒドラジドである場合、反応性色素は、過ヨウ素酸酸化した炭水化物および糖タンパク質への結合体化に特に有用である。
【0035】
一実施形態では、反応性基は、カルボン酸基、カルボン酸のスクシンイミジルエステル基、イソチオシアネート基、ハロアセトアミド基、ヒドラジン基、脂肪族アミン基、およびマレイミド基を含む。これらの各反応性基の調製方法は、当該技術分野において周知であり、特定の目的のための適用については、当業者の能力の範囲内である。
【0036】
また、2官能性カップリング試薬を用いて、穏やかに反応性の基を持つ有機分子および生体分子に標識をカップリングしてもよい(L.J.Kricka,Ligand−Binder Assays,Marcel Dekker,Inc.,New York,1985,pp.18−20,Table 2.2、およびT.H Ji,「Bifunctional Reagents」,Methods in Enzymology,91,580−609(1983)を参照されたい)。2官能性試薬には、最終的な構造に組み込まれるものと、組み込まれずに2つの反応物をカップリングする働きしかしないものとの2つの種類がある。
【0037】
本明細書で使用する場合、「サンプル」という用語は、アッセイされるべき1つまたは複数の分析物を含む、または含むと考えられる流体を意味する。蛍光色素を利用して解析される典型的なサンプルは、たとえば血液、血漿、血清、尿、精液、唾液、細胞溶解物、組織抽出物および同種のものといった体液などの生物学的サンプルである。サンプルはまた、希釈剤、緩衝剤、界面活性剤、夾雑物、および通常体液中に存在する他のそのような成分をさらに含んでもよい。
【0038】
本明細書で使用する場合、「特異的結合対」という用語は、相互に結合親和性を示す2つの物質を意味する。例として、抗原−抗体、ハプテン−抗体、抗体−抗体対、相補的なオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、アビジン−ビオチン、ストレプトアビジン−ビオチン、酵素−基質、ホルモン−ホルモン受容体、レクチン−炭水化物、IgG−プロテインA、IgG−プロテインG、核酸−核酸結合タンパク質、および核酸−抗核酸抗体が挙げられる(表2)。
【0039】
【表2】

本明細書で使用する場合、「置換された」という用語は、ある基の少なくとも1個の水素原子が別の原子、またはC、O、N、S、P、Si、F、Cl、Br、Iから選択される1〜50個の原子を持つ基で置き換えられていることを意味する。置換された基という場合、複数の置換部位が存在してもよいことを意図している。
【0040】
本発明の組成物
本発明は、ホタルルシフェリンの構造をベースとし、いくつかの機能上の利点を有する蛍光色素のクラスを提供する。たとえば、本発明の蛍光色素は、より短い波長(340〜450nm)での励起に適合され、通常500nmと550nmとの間の最大発光、より狭い発光バンド幅、少なくとも約50nmの大きなストークスシフト、および他の好ましい蛍光特性も有する。
【0041】
本発明の蛍光色素は、405nmの紫色レーザーに特に有用である。本発明の蛍光色素は、既存の紫色レーザー励起色素(たとえば、Pacific Orange)と比べて、吸光性(absorbtivity)は同程度であるものの、驚くべきかつ予想外により明るい蛍光を示す。本発明の蛍光色素は、反応性基を介した結合体化分子とのカップリングに非常に適合している。さらに、本発明の色素−結合体、特にタンパク質結合体は、色素置換の程度が比較的高くても、明るい蛍光を示す。これらの特性により、本発明の色素は、マルチカラー、マルチプレックスの適用に特によく適したものになっている。
【0042】
下記一般式の蛍光色素を提供する:
【0043】
【化5】

式中、
およびXは独立にSまたはOであり;
およびYは独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルであるか、
または
またはYの一方はHであり、他方はハロアルキル基であり;
各々のWは独立にHまたはアルキルであり;
はHまたはアルキルであり;
、およびW基の1つは存在していなくてもよく、存在しない場合、環CのCとCとの間の、点線で示す別の結合で置換されており;
は、式−L−RGの標識置換基を含み、式中、Lは、色素を反応性基RGに接続する結合または連結基であり、連結基は、C原子、N原子、O原子、S原子、P原子およびハロゲン原子から選択される1〜50個の非水素原子を含む共有結合を含んでもよく、一重、二重、三重もしくは芳香族の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、炭素−窒素結合、および窒素−窒素結合の任意の組み合わせからなり;RGは、カルボン酸基、カルボン酸の活性化エステル基、酸無水物基、酸クロリド基、アシルアジド基、アシルハライド基、アルデヒド基、クロロホルマート基、アミン基、ヒドロキシ基、ヒドラジン基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、スルホニルハライド基、トシル基、マレイミド基、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル基、アジリジン基、イミン基、およびジスルフィド基を含む。
【0044】
式(I)の蛍光色素の一実施形態では、XおよびXは、下記式を持つSである:
【0045】
【化6】

式中、
およびYは独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルであるか、
または
またはYの一方はHであり、他方はハロアルキル基であり;
はHまたはアルキルであり;
各々のWは独立にHまたはアルキルであり;
L−RGでは、Lは、色素を反応性基RGに接続する結合または連結基であり、連結基は、C原子、N原子、O原子、S原子、P原子およびハロゲン原子から選択される1〜50個の非水素原子を含む共有結合を含んでもよく、一重、二重、三重もしくは芳香族の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、炭素−窒素結合、および窒素−窒素結合の任意の組み合わせからなり;
RGは、カルボン酸基、カルボン酸の活性化エステル基、酸無水物基、酸クロリド基、アシルアジド基、アシルハライド基、アルデヒド基、クロロホルマート基、アミン基、ヒドロキシ基、ヒドラジン基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、スルホニルハライド基、トシル基、マレイミド基、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル基、アジリジン基、イミン基、およびジスルフィド基を含んでもよい。
【0046】
表3に、式(I−A)の色素の選択される実施形態を示す
【0047】
【表3】

他の実施形態では、蛍光色素は、下記式を持つ:
【0048】
【化7】

式中、
およびXは独立にSまたはOであり;
およびYは独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルであるか;
または
またはYの一方はHであり、他方はハロアルキル基であり;
WはHまたはアルキルであり;
Lは、色素を反応性基RGに接続する結合または連結基であり、連結基は、C原子、N原子、O原子、S原子、P原子およびハロゲン原子から選択される1〜50個の非水素原子を含む共有結合を含んでもよく、一重、二重、三重もしくは芳香族の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、炭素−窒素結合、および窒素−窒素結合の任意の組み合わせからなり;
式中、RGは、カルボン酸基、カルボン酸の活性化エステル基、酸無水物基、酸クロリド基、アシルアジド基、アシルハライド基、アルデヒド基、クロロホルマート基、アミン基、ヒドロキシ基、ヒドラジン基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、スルホニルハライド基、トシル基、マレイミド基、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル基、アジリジン基、イミン基、およびジスルフィド基を含んでもよい。
【0049】
式(I−B)の蛍光色素の一実施形態では、X1およびX2は、下記式で示されるようにSである:
【0050】
【化8】

式中、
およびYは独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルであるか
または
またはYの一方はHであり、他方はハロアルキルであり;
WはHまたはアルキルであり;
Lは結合または連結基であり、連結基は、C原子、N原子、O原子、S原子、P原子およびハロゲン原子から選択される1〜50個の非水素原子を含む共有結合を含み、一重、二重、三重もしくは芳香族の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、炭素−窒素結合、および窒素−窒素結合の任意の組み合わせからなり;
RGは反応性基であり、RGは、カルボン酸基、カルボン酸の活性化エステル基、酸無水物基、酸クロリド基、アシルアジド基、アシルハライド基、アルデヒド基、クロロホルマート基、アミン基、ヒドロキシ基、ヒドラジン基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、スルホニルハライド基、トシル基、マレイミド基、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル基、アジリジン基、イミン基、およびジスルフィド基を含んでもよい。
【0051】
表4に、式(I−B)の色素の選択される実施形態を示す。
【0052】
【表4】

本発明はさらに、本発明の蛍光色素を合成するために使用してもよい合成中間体化合物も提供する。一実施形態では、中間体化合物は、下記一般式(II)により表される:
【0053】
【化9】

式中、
およびYは独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルであるか
または
Y1またはYの一方はHであり、他方はハロアルキル基である。
【0054】
別の実施形態では、中間体化合物は、下記一般式(III)により表される:
【0055】
【化10】

式中
はSまたはOであり;
各々のWは独立にHまたはアルキルであり;
はHまたはアルキルであり;
LHはOHまたはNH(CH)nCOOH(nは1〜10である)である。
【0056】
本発明の蛍光色素は、1つまたは複数の結合体化分子「CM」と共有結合的に会合していても、または非共有結合的に会合していてもよい。共有結合的会合は、上記のように結合体化分子CMの蛍光色素への連結基Lを介した結合など様々な機構により生じてもよく、共有結合を伴ってもよい。
【0057】
色素が1つまたは複数の分子と非共有結合的に会合している場合、その会合は、色素または合成中間体化合物をビーズまたは表面などの固体もしくは半固体マトリックス中に、または固体もしくは半固体マトリックス上に組み込むか、あるいは、水素結合、イオン結合、もしくは疎水性相互作用(ファンデルワールス力など)といった非特異的相互作用によるなど、様々な機構により生じてもよい。会合分子は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖類、ビーズ、マイクロプレートのウェル表面、金属表面、半導体および不導体表面(non−conducting surface)、ナノ粒子、ならびに他の固体表面からなる群から選択され得る。会合もしくは結合体化分子は、同一でも異なっていてもよい2つ以上の蛍光色素と会合または結合体化してもよい。一般に、生物学的物質の色素−結合体の調製方法は、当該技術分野において公知である。たとえば、(Greg T.Hermanson,Bioconjugate Techniques,1996 Edition Academic Press,Chapter 8,pages 298−362;Nataliya Panchuk,etal.J.Histochemistry & Cytochemistry,1179−1188(1999);S Bhatacharya,etal Bioconjugate Chemistry,Volume 19,1186−1193(2008);B.Dworecki,etal http://www.piercenet.com/files/DyLight%20Poster%206−7−04.pdf)を参照されたい。典型的には、フルオロフォアを色素−結合体に会合または結合体化すると、その分子にフルオロフォアのスペクトル特性が付与される。
【0058】
一実施形態では、本発明の蛍光色素は、共有結合を介して結合体化分子CMに結合し、この色素−結合体は、式:
【0059】
【化11】

を有し、式中、
およびXは独立にSまたはOであり;
およびYは個別にH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルを表し、各々のWは独立にHまたはアルキルであり;
はHまたはアルキルであり;
、およびW基の1つは存在していなくてもよく、存在しない場合、環CのCとCとの間の、点線で示す別の結合で置換されており;
Lは独立に結合または連結基であり、連結基は、C原子、N原子、O原子、S原子、P原子およびハロゲン原子から選択される1〜50個の非水素原子を含む共有結合を含み、一重、二重、三重もしくは芳香族の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、炭素−窒素結合、および窒素−窒素結合の任意の組み合わせからなり;
CMは結合体化分子である。
【0060】
本発明による色素−結合体の調製に使用してもよい結合体化分子CMとして、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、炭水化物、酵素、脂質、非生物学的ポリマー、細胞、および細胞成分があるが、これに限定されるものではない。これら結合体化される分子については、結合体化を容易にするため、あるいは、その後の反応性を保証するため、1つまたは複数の官能基で保護してもよい。
【0061】
分子がペプチドである場合、ペプチドは、ジペプチドでも、またはより大きなペプチドでもよく、典型的には5〜50個のアミノ酸を含む。結合体化分子がタンパク質である場合、結合体化分子は、酵素でも、抗体でも、触媒抗体でも、キナーゼでも、レクチンでも、糖タンパク質でも、ヒストンでも、アルブミンでも、リポタンパク質でも、アビジンでも、ストレプトアビジンでも、プロテインAでも、プロテインGでも、ホルモンでも、トキシンでも、増殖因子でもよい。典型的には、結合体化タンパク質は、抗体、抗体フラグメント、アビジン、ストレプトアビジン、レクチン、または増殖因子である。
【0062】
結合体化分子は、たとえば、DNAオリゴヌクレオチド、RNAオリゴヌクレオチド(またはそのハイブリッド)、または一本鎖、二本鎖、三本鎖、もしくは四本鎖DNA、または一本鎖もしくは二本鎖RNAなどの核酸ポリマーであってもよい。結合体化分子は、デキストランなどの多糖類である炭水化物をさらに含んでもよい。
【0063】
会合または結合体化分子は、特異的結合対の構成要素であってもよく、したがってその特異的結合対の相補的な構成要素の検出試薬として有用である。特異的結合対の構成要素の色素−結合体は、当該技術分野において周知の方法により、サンプル中の相補的な特異的結合対の構成要素の存在を検出し、さらに任意に定量するのに有用であり得る。
【0064】
代表的な特異的結合対として、以下に限定されるものではないが、リガンドおよび受容体を挙げることができ、さらに、以下の対に限定されるものではないが、抗原−抗体、ビオチン−アビジン、ビオチン−ストレプトアビジン、IgG−プロテインA、IgG−プロテインG、炭水化物−レクチン、酵素−酵素基質;DNA−相補鎖DNA、およびRNA−相補鎖RNA、ホルモン−ホルモン受容体も挙げることができる(表2)。
【0065】
蛍光色素化合物の調製方法
本発明の一態様では、下記式(I)の蛍光色素を調製する方法を提供する。
【0066】
【化12】

式中、
およびXは独立にSまたはOであり;
およびYは個別にH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルを表し、各々のWは独立にHまたはアルキルであり;
はHまたはアルキルであり;
、およびW基の1つは存在していなくてもよく、存在しない場合、環CのCとCとの間の、点線で示す別の結合で置換されており;
は式−L−RGの標識置換基を含み、式中、Lは独立に結合または連結基であり、連結基は、C原子、N原子、O原子、S原子、P原子およびハロゲン原子から選択される1〜50個の非水素原子を含む共有結合を含み、一重、二重、三重もしくは芳香族の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、炭素−窒素結合、および窒素−窒素結合の任意の組み合わせからなり;
RGは、カルボン酸基、カルボン酸の活性化エステル基、酸無水物基、酸クロリド基、アシルアジド基、アシルハライド基、アルデヒド基、クロロホルマート基、アミン基、ヒドロキシル基、ヒドラジン基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、スルホニルハライド基、トシル基、マレイミド基、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル基、アジリジン基、イミン基、およびジスルフィド基からなる基から選択される反応性基である。
【0067】
一実施形態では、下記式:
【0068】
【化13】

式中、YおよびYは個別にH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルを表し、;
はSまたはOであり;
各々のWは独立にHまたはアルキルであり;
はHまたはアルキルであり;
Lは、OまたはNH(CH)nCOO(nは1〜10である)である
を持つ本発明の蛍光色素を、図2A〜2Dに図示する合成スキームを用いて合成してもよい。この方法は、下記ステップを含む:
(a)図2Bに示す方法を用いて、下記式を持つ色素のシアノベンゾチアゾール中間体を形成するステップ;
【0069】
【化14】

式中、
およびYは個別にH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルを表す。
(b)下記式:
【0070】
【化15】

式中、
はSまたはOであり;
各々のWは独立にHまたはアルキルであり;
はHまたはアルキルであり;
LHはOHまたはNH(CH)nCOOH(nは1〜10である)である、
の修飾アミノ酸とシアノベンゾチアゾール中間体を反応させることにより、色素のカルボキシル誘導体を形成して、
下記式のルシフェリン誘導体を生成するステップ:
【0071】
【化16】

式中、
はSまたはOであり;
およびYは個別にH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルを表し;
各々のWは独立にHまたはアルキルであり;
はHまたはアルキルであり;
LHはOHまたはNH(CH)nCOOH(nは1〜10である)である。
(c)LHのカルボキシル基のヒドロキシル官能基を反応性基で置換するステップ。
【0072】
別の実施形態では、図3Aに図示する合成スキームを用いて、下記式を持つ本発明の蛍光色素を合成する:
【0073】
【化17】

式中、
およびYは個別にH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルを表し;
RはHまたはアルキルである。
【0074】
別の実施形態では、図3Bに図示する合成スキームを用いて、下記式を持つ本発明の蛍光色素を合成してもよい(Bagley,MC.et al.,J.Am.Chem.Soc.,122,3301−3313(2000):
【0075】
【化18】

式中、
およびYは個別にH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルを表し;
RはHまたはアルキルである。
【0076】
別の態様では、本発明は、発明の色素−結合体を製造する方法を提供する。この方法は、反応性基を含む本発明の蛍光色素を結合体化分子と混合することを含む。結合体化分子は、アミノ酸でも、タンパク質でも、ペプチドでも、抗体でも、抗体フラグメントでも、ヌクレオシドでも、ヌクレオチドでも、核酸ポリマーでもよい。結合体化分子は、デキストランなど多糖類である炭水化物を含んでもよい。典型的には、フルオロフォアを結合体化分子に結合体化すると、その分子にフルオロフォアのスペクトル特性が付与される。
【0077】
色素−結合体の調製方法は、当該技術分野において周知である。ペプチドまたはタンパク質結合体の調製の場合、この方法は典型的には最初に、結合体化されるタンパク質を水性緩衝液に室温以下(典型的には4〜25℃)、約1〜10mg/mlで溶解することを含む。スクシンイミジルエステルとの反応にはホウ酸塩または炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液(pH約8.0〜9)が、チオール反応性官能基との反応にはリン酸塩緩衝液(pH約4.0〜8)が、イソチオシアネートおよびジクロロトリアジンとの反応には炭酸塩またはホウ酸塩緩衝液(pH約9.0〜9.8)が、特に好適である。適切な反応性色素を好適な程度の結合体化に十分な量で非水性溶媒(通常DMSOまたはDMF)に溶解させ、結合体化されるタンパク質の溶液に加える。任意のタンパク質または他の成分に使用する反応性色素の適切な量は通常、可変量の反応性色素を、結合体化されるタンパク質に加える実験により事前に設定する。反応性色素は通常、結合体化されるタンパク質の量の5〜100倍過剰で用いられる。この成分溶液への反応性化合物の添加後、混合物を好適な期間(典型的には室温で約1時間から氷上で数時間)インキュベートし、ゲル濾過、透析、HPLCまたは他の好適な方法により、色素−結合体を結合体化していない色素から分離する。色素−結合体は、所望の適用で試験を行うまで溶液として保存しても、または凍結乾燥して保存してもよい。この方法は一般に、抗体、抗体フラグメント、アビジン、レクチン、酵素、プロテインAおよびプロテインG、細胞タンパク質、アルブミン、ヒストン、増殖因子、ホルモン、および他のタンパク質を用いた色素−結合体の調製に適用できる。
【0078】
使用方法
本発明は、サンプル中の特異的結合対の相補的な構成要素を検出する方法であって、相補的な構成要素に特異的に結合する本発明の色素−結合体と前記サンプルを混合すること;および、前記混合により形成された複合体を検出して、相補的な構成要素を検出することを含む、方法を提供する。本発明の方法は、サンプル中の分析物を検出および/または定量するために、本発明の反応性色素および色素−結合体などの蛍光色素の使用を含んでもよい。ある種の実施形態では、サンプルは、インタクトな細胞、細胞抽出物、細菌、ウイルス、オルガネラ、およびこれらの混合物など成分の不均質な混合物を含む。他の実施形態では、サンプルは、単一成分、または各成分の均質な群、たとえば、アミノ酸ポリマー、核酸ポリマー、炭水化物ポリマー、または脂質膜複合体などの生物学的ポリマーを含む。
【0079】
ある種の実施形態では、反応性色素および色素−結合体などの本発明の蛍光色素を使用してサンプル中の分析物を染色または標識し、その結果、分析物を同定または定量できる。たとえば、生物学的または非生物学的流体中の標的分析物のアッセイにおいて、本発明の色素−結合体などの蛍光色素を検出可能なトレーサー要素として使用してもよい。
【0080】
他の実施形態では、反応性色素および色素−結合体などの蛍光色素を使用して、結合体化分子が特異的結合対(たとえば、表2)の相補的な構成要素である、リガンドを含むサンプルを検出する。したがって、リガンドは特異的結合対の一方の構成要素であり、結合体化分子はもう一方の構成要素である。色素−結合体を含む蛍光色素はさらに、色素−結合体と、相補的な結合分子との間の相互作用を特定するために使用される。
【0081】
本方法の第1のステップでは、検出可能な光学的な応答が起こるように選択した条件下で、上記のような本発明の色素を目的のサンプルと組み合わせることにより、本発明の反応性色素および色素−結合体などの蛍光色素を利用するのが一般的である。色素−結合体は典型的には、サンプルの要素と、共有結合的もしくは非共有結合的会合を形成するか、または、それとの複合体を形成するか、あるいは、単純にサンプルの境界またはサンプルの一部の範囲内に存在する。次いで、光学的な応答を誘導するように選択された波長でサンプルを照射する。典型的には、サンプルの染色を用いて、光学的な応答を標準とさらに比較してサンプルの特定の特徴を決定する。
【0082】
本発明の一態様では、色素−結合体は、抗体、抗体フラグメント、アビジンまたはストレプトアビジン(strepavidin)および同種のものなど、標識タンパク質である。この実施形態では、色素−結合体を用いて、典型的には抗原、ハプテンまたはビオチンである相補的な特異的結合対を検出する。本発明のこうした色素−結合体は、様々な適用を用いて、サンプル中の分析物を検出するのに使用してもよい。主な適用として、免疫蛍光法、蛍光in−situハイブリダイゼーション(FISH)、フローサイトメトリー、受容体の標識、および標識細胞の追跡が挙げられる。ある種の検出方法、たとえば、結合した結合体と結合していない結合体との空間的分離/分解を本質的に含むサイトメトリーに基づく検出方法では、分析混合物から結合していない色素−結合体を除去する必要がない。しかしながら、他の検出方法、たとえば、結合した結合体と結合していない結合体との空間的分離/分解を含まないイムノアッセイでは、光学的な応答の検出の前に、結合していない色素−結合体を分析混合物から除去する必要があることがある。
【0083】
別の態様では、本発明の蛍光色素および色素−結合体は、レーザー色素として有用性がある。本発明の色素および色素−結合体は紫外または紫色レーザーで励起するため、これらの色素および色素−結合体は、より長波長で励起する他の色素を用いるマルチプレックスアッセイで特に有用である。一実施形態では、これらの色素および色素−結合体は、約350〜405nmで励起し、より長波長(たとえば、480nm以上)で励起する色素と併用する場合、それらの発光スペクトルを、より長波長で励起する色素と識別することができる。
【0084】
本発明の別の態様では、サンプル中の1つまたは複数の分析物を検出するマルチカラー法に、本発明の色素−結合体を使用してもよい。一実施形態では、複数の色素−結合体を用いて、マルチカラー解析により、サンプル中の複数の分析物を検出してもよい。この方法は、複数の色素−結合体、たとえば、第1の色素−結合体および第2の色素−結合体を含む本発明の組成物とサンプルをインキュベートすることを含む。この組成物の場合、第1の色素−結合体の成分が第1の分析物の結合パートナーであり、第2の色素−結合体の成分が第2の分析物の結合パートナーである。インキュベーションは、第1の分析物と第1の色素−結合体との間の相互作用を誘導するのに適切な条件下で続ける。このインキュベーション期間中、一般には、第2の分析物と第2の色素−結合体との間に同様の相互作用が起こることが好ましい。しかしながら、第2の色素−結合体と第2の分析物との間の色素−結合体−分析物複合体の形成を促すため、必要に応じてインキュベーション条件を変更することは、本発明の範囲内である。少なくとも第1の色素−結合体−分析物複合体が形成されてから、複合体が蛍光を発するのに適した波長の光をサンプルに照射し、それにより第1の分析物を検出する。第2の分析物については、同様の様式で検出し、第1の分析物と同時に検出しても、あるいは、各蛍光色素−結合体の蛍光の誘導に適切な波長をサンプルに連続的に照射することにより検出してもよい。特定の態様では、照射および/または検出ステップは、フローサイトメーターを含む。
【0085】
あるいは、好ましくは異なる波長で蛍光を発する複数の色素−結合体を使用して、ある分析物の異なる特徴を検出してもよい。たとえば、異なる色の色素−結合体で分析物の細胞またはエピトープを標識し、この標的を検出し、各標的のそれぞれの色の共局在により、その正体を確認してもよい。
【0086】
本発明の色素および色素−結合体は、診断適用に使用してもよい。たとえば、本発明の色素および色素−結合体は、被験体内の病原生物(たとえば、細菌、ウイルス、真菌)の存在の検出に有用である場合がある。あるいは、特定の分析物の存在、および/または特定の分析物の量、および/または特定の分析物の変異体が、被験体の病態と関連している場合がある。こうした分析物に結合する本発明の色素および色素−結合体は、特定の分析物および/もしくはその変異体の存在ならびに/または量を決定し、かくして病態の存在および/または程度を診断するのに有用性があり得る。
【0087】
本発明のキット
本発明の一態様は、上記のような本発明の色素のいずれかを用いた様々なアッセイを実施しやすくする、キットの処方物である。本発明のキットは典型的には、色素−結合体の調製に有用な化学反応性標識として、あるいは、結合体化分子が特異的結合対の構成要素である色素−結合体として存在する本発明の蛍光色素を含む。選択される結合体化分子として、以下に限定されるものではないが、生体分子のポリマー(たとえば、タンパク質、核酸または炭水化物)が挙げられる。特定の実施形態では、表3および4に列挙される本発明の色素は、こうしたキットの調製に特に適している。
【0088】
好ましくは、キットは、表5に列挙される蛍光色素の1つまたは複数を含む。
【0089】
【表5−1】

【0090】
【表5−2】

【0091】
キットは、色素1、色素2、色素3、色素4、色素5、色素6、または色素7の色素−結合体の1つまたは複数をさらに含んでもよい。
【0092】
例示的実施形態では、キットは、本発明の反応性色素と、適切な官能基を有する分子に色素を結合体化し、任意に色素−結合体を回収するための説明書とを含む。
【0093】
別の例示的な実施形態では、キットは、サンプル中の分析物またはリガンドを検出するアッセイを実施するための説明書を含む。たとえば、一実施形態では、抗体に結合できる細胞表面受容体、または酵素、または他のリガンドを検出するための説明書を提供する。
【0094】
キットは任意に、典型的には水溶液として存在する1種または複数種の緩衝剤をさらに含む。本発明のキットは任意に、他の検出試薬、得られた標識分子を精製するための精製媒体、蛍光標準物質、酵素、酵素阻害剤、有機溶媒、または本発明の方法を実施するための説明書をさらに含む。
【0095】
本発明の種々の実施形態は、以下の例示的な例によってさらに実証される。例については、例示として提供するものであり、いかなる形においても発明または特許請求の範囲の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0096】
実施例1
以下の例は、ホタルルシフェリンのジハロ誘導体、およびそのそれぞれのNHSエステルを合成する一般的な方法を説明するものである。
【0097】
1. アッペル塩の調製
【0098】
【化19】

500mLの丸底フラスコにアルゴン下で、クロロアセトニトリル(20mL)、一塩化硫黄(120mL)、およびCHCl(110mL)を仕込んだ。反応物をアルゴン下で3日間撹拌し、その間に褐色の沈殿物が形成された。沈殿物を吸引濾過により集め、CHCl(300mL)およびヘキサン(300mL)で洗浄した。洗浄した固体を真空乾燥させて、生成物を褐色の固体として得た(75%収率)。
【0099】
2. 2−シアノベンゾチアゾールの調製
以下は、5,7−ジクロロ−6−ヒドロキシ−2−シアノベンゾチアゾールの調製手順である。5,7−ジフルオロ−6−ヒドロキシ−2−シアノベンゾチアゾールの調製も、同じ手順に従って実施し、非常に類似した結果が得られた。
【0100】
【化20】

5Lの丸底フラスコに1,3−ジクロロ−2−メトキシニトロベンゼン(0.33モル)、アンモニウムクロリド(3.3モル)、およびエタノール(1200mL)を仕込んだ。この撹拌混合物に亜鉛末(3.3モル)を速やかに加えた。数分後、反応混合物を還流に近い状態まで加温し、次いで室温まで冷却させた。一晩撹拌した後、懸濁液を濾過して残りの亜鉛およびアンモニウムクロリドを除去した。濾液を減圧下で濃縮し、得られた固体をCHCl(1500mL)で再懸濁した。懸濁液を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して置換アニリンを白色の固体(0.33モル)として得た。
1A Y=Cl H NMR(400MHz,CDCl):δ 6.601(s,2H),3.811(s,3H),3.6−3.7(ブロード(broad) s,2H)
1B Y=F H NMR(400MHz,CDCl):δ 6.22(m,2H),3.860(s,3H),3.6−3.7(ブロード s,2H) 。
【0101】
2Lの三口丸底フラスコをオーブンで乾燥させ、アルゴン流下で冷却した。フラスコに1,3−ジクロロ−2−メトキシアニリン(0.33モル)、ピリジン(75mL)、およびCHCl(550mL)を仕込んだ。アッペル塩(0.33モル)を5分にわたり分割して加え、溶液を還流させた。TLCにより、アニリンが15分後に完全に消失したことが示された。反応混合物をオレンジ色の固体に濃縮した。固体を2.5Lの酢酸エチルに溶解させた。この有機溶液をタイプ1水(type 1 water)(2×1000mL)、およびブライン(1000mL)で洗浄した。洗浄した有機層を無水NaSOで乾燥させ、濃縮してアッペル塩付加物を固体として得た。
2A Y=Cl H NMR(400MHz,CDCl):δ 7.203(s,2H),3.933(s,3H)
2B Y=F H NMR(400MHz,CDCl):δ 6.87(m,2H),4.030(s,3H) 。
【0102】
500mLの三口丸底フラスコにアルゴン入口管と、出口にバブラーを連結した水冷冷却器とを装着した。フラスコにアッペル塩付加物(0.134モル)を仕込み、表面温度140℃まで1時間加熱した。トルエン(50mL)を加え、反応物を90℃まで冷却した。CHCl(100mL)およびシリカ(50g)を加えた。得られたスラリーを濾過し、濾過ケークをCHCl(200mL)で洗浄した。濾液と洗液を合わせて濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(CHCl/ヘキサン)により、5,7−ジクロロ−6−メトキシ−2−シアノベンゾチアゾールを固体(0.031モル)として得た。
3A Y=Cl H NMR(400MHz,CDCl):δ 8.194(s,1H),4.027(s,3H)
3B Y=F H NMR(400MHz,CDCl):δ 7.981(dd,J=10Hz & 1.6Hz,1H),4.156(s,3H) 。
【0103】
250mLの丸底フラスコにピリジニウムヒドロクロリド(160ミリモル)および5,7−ジクロロ−6−メトキシ−2−シアノベンゾチアゾール(8.2ミリモル)を仕込んだ。反応物をアルゴン下で充填し、次いで195℃で3時間加熱した。室温まで冷却後、タイプ1水(150mL)を加え、混合物を超音波処理して固体を溶解した。この水溶液を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを無水NaSOで乾燥させ、濃縮して生成物を黄色の固体(2.8ミリモル)として得た。
4A Y=Cl H NMR(400MHz,アセトン−d):δ 8.313(s)
4B Y=F H NMR(400MHz,アセトン−d):δ 8.385(dd,J=10.4Hz & 1.6Hz) 。
【0104】
3. アミノ酸の調製
【0105】
【化21】

修飾ペニシラミンの合成
【0106】
【化22】

2000mLの丸底フラスコにDL−ペニシラミン(10g)およびアセトン(1000mL)を仕込んだ。固体がすべて溶解するまで、反応物を還流させた(約24時間)。熱いうちに反応混合物を濾過し、一晩室温まで冷却した。一晩で少量の結晶が形成された。この反応混合物を−20℃で一晩維持した。得られた固体を吸引濾過により集め、アセトン(300mL)で洗浄した。このチアゾール生成物をアルゴン下で乾燥させた(11.9g)。H NMR(400MHz,DMSO−d):δ 3.750(s,1H),1.556(s,6H),1.438(s,3H),1.185(s,3H) 。
【0107】
250mLの丸底フラスコにアルゴン下でチアゾール酸(11.9g)およびギ酸ナトリウム(4.3g)を仕込んだ。ギ酸(98%、100mL)を加え、反応混合物をアルゴン下で撹拌した。反応混合物を氷水浴で0℃まで冷却した。温度が5℃未満に維持されるように注意しながら、酢酸無水物(33.3mL)を45分にわたり滴下して加えた。氷水浴を除去し、反応物を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空下、35℃で除去し、白色の固体を得た。固体をタイプ1水(200mL)中で撹拌し、吸引濾過により集めた。固体をタイプ1水(100mL)で洗浄し、風乾した(7.4g)。濾液と洗液を合わせて酢酸エチルで抽出した(3×300mL)。抽出物を合わせて、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を濃縮して淡黄色の固体(6.8g)を得た。H NMRにより、2つの固体が標的化合物の異性体混合物(約85:15)であることが示された。H NMR(400MHz,DMSO−d 12.916(S,1H),8.446(s,0.86H),8.195(s,0.14H),4.641(s,0.15H),4.502(s,0.85H),1.828(s,6H),1.590(s,3H),1.362(s,3H)
【0108】
【化23】

丸底フラスコにホルミル化チアゾール酸(1当量)、トリエチルアミン(2当量)、およびCHClを仕込んだ。反応混合物をアルゴン下、氷水浴中、0℃で撹拌した。シリンジでイソブチルクロロホルメート(1当量)を加えた。反応混合物を1時間撹拌した後、アミノエステル(1当量)を加えた。氷水浴を除去し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を1.0MのHCl(75mL)、5%NaHCO(75mL)、およびタイプ1水(75mL)で洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(50:50酢酸エチル:ヘキサン)により、標的生成物を得た(60〜70%収率)。H NMRにより、生成物の異性体混合物であることが示された。
n=0 H NMR(400MHz,CDCl):8.389(s,0.88H),8.328(s,0.12H),6.932(m,0.15H),6.383(m,0.82),4.620(s,0.82H),4.367(s,0.15H),4.030(dd,J=18.4Hz & 5.2Hz,1H),3.91(m,1H),2.00−1.94(m,6H),1.70−1.59(m,3H),1.47(m,12H)
n=1 H NMR(400MHz,CDCl):8.358(s,0.79H),8.291(s,0.15H),6.973(m,0.15H),6.486(m,0.78),4.418(s,0.80H),4.313(s,0.13H),3.6−3.4(m,2H),2.43(m,2H),2.00−1.94(m,6H),1.68−1.60(m,3H),1.44(m,12H) 。
【0109】
丸底フラスコにホルミル化チアゾールエステル、およびジオキサン:2.0MのHCl(50:50)を仕込んだ。反応混合物をアルゴン下、85℃で一晩加熱した。室温まで冷却後、反応混合物を減圧下で濃縮して修飾ペニシラミンをゴム状固体として得た。
n=0 H NMRにより、生成物の異性体混合物が示された。H NMR(400MHz,DO):4.128 & 4.083(s,1H),4.043 & 4.000(s,2H),1.557(s,3H),1.481(s,3H)
n=1 H NMR(400MHz,DO):3.702(s,1H),3.45−3.38(m,1H),3.27−3.19(m,1H),2.441(m,2H),1.295(s,3H),1.233(s,3H) 。
【0110】
メチル化システインの合成
【0111】
【化24】

システインメチルエステル(8.6g)、ピバルアルデヒド(11mL)、およびトリエチルアミン(8mL)をペンタン中で撹拌した。ディーンスタークトラップで水を除去しながら、反応混合物を還流させた。36時間後、反応物を室温まで冷却すると、固体が形成された。固体を吸引濾過により集め、エーテルで洗浄した。
【0112】
100mLの丸底フラスコにチアゾールエステル(4.0g)、ギ酸(98%、30mL)およびギ酸ナトリウム(1.5g)を仕込んだ。反応混合物をアルゴン下で撹拌し、氷水浴で0℃まで冷却した。温度が5℃未満に維持されるように注意しながら、酢酸無水物(5.7mL)を30分にわたり滴下して加えた。氷水浴を除去し、反応物を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空下で除去し、得られた固体をタイプ1水(100mL)中で撹拌した。固体NaHCOを加えてpHを7〜8に調整した。この水溶液をエーテルで抽出した(3×100mL)。抽出物を合わせて、NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を濃縮して固体を得た。固体を酢酸エチル/ヘキサンから結晶化させた。H NMR(400MHz,CDCl):8.317(s,1H),4.858(t,J=8.8Hz,1H),4.708(s,1H),3.739(s,3H),3.258(m,2H),1.000(s,9H) 。
【0113】
無水THF(100mL)中のリチウムジイソプロピルアミン(12ミリモル)の溶液を−78℃、アルゴン下で撹拌した。1.3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU、10mL)を加え、反応混合物を90分間撹拌した。ホルミル化チアゾールエステルを加え(10ミリモル)、反応混合物を−78℃で1時間撹拌した。MeI(15ミリモル)を加え、反応混合物を−78℃で2時間撹拌した。ドライアイス/アセトン浴を除去し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をブラインに溶解した。この水溶液をエーテル(100mL)で抽出した。抽出物をNaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を濃縮して固体を得た。固体を、10%酢酸エチル/ヘキサンを用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。H NMRにより、生成物のジアステレオマー混合物であることが示された。H NMR(400MHz,CDCl)主生成物:8.252(s,1H),5.263(s,1H),3.738(s,3H),3.293(d,J=11.6Hz,1H),2.695(d,J=11.2Hz,1H),1.038(s,9H);副生成物:8.377(s,0.4H),5.274(s,0.4H),3.790(s,1.3H),3.612(d,J=12Hz,0.5H),2.831(d,J=12Hz,1H),0.929(s,4.6H) 。
【0114】
メチル化チアゾールエステル(1.8g)および5MのHCl(30mL)を105℃で3日間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチルで抽出した(2×100mL)。水相を減圧下で濃縮してゴム状固体を得た。
【0115】
4.6−ヒドロキシルシフェリン酸の調製
これは、基本的なルシフェリン構造を調製する典型的な手順である。
【0116】
【化25】

100mLの丸底フラスコにシアノベンゾチアゾール(0.5ミリモル)およびメタノール(25mL)を仕込んだ。撹拌した反応混合物にアルゴンを1時間スパージした。アルゴンスパージしたpH9(NaCOを加えてpHを調整した)のアミノ酸(1ミリモル)水溶液を調製して加えた。反応混合物をアルゴン下で2時間撹拌し、TLCで反応が終了していることを確認した。反応物を減圧下で約10mLに濃縮し、タイプ1水(40mL)で希釈した。この水溶液を酢酸エチルで抽出し(3×75mL)、抽出物を取っておいた。濃HClを滴下して加えて、この水溶液をpH2まで酸性化した。酸性化した水溶液を酢酸エチルで再び抽出した(3×75mL)。6つの抽出物を合わせて無水NaSOで乾燥させ、濃縮して生成物を固体として得た(40〜90%収率)。
6A H NMR(400MHz,CDOD):7.688(dd,J=11Hz & 1.4Hz,1H),5.017(dd,J=10.2Hz & 8.2Hz,1H),4.774(m,2H)

6B H NMR(400MHz,CDCl):7.795(dd,J=10Hz & 1.6Hz,1H),3.932(d,J=11.8Hz,1H),3.434(d,J=11.8Hz,1H),1.688(s,3H)

6C H NMR(400MHz,CDOD):7.646(dd,J=10.4Hz & 1.2Hz,1H),4.935(s,1H),1.778(s,3H),1.488(s,3H)

6D H NMR(400MHz,CDOD):8.379(ブロード s,1H),7.658(d,J=10Hz,1H),4.758(s,1H),4.000(d,J=6Hz,2H),1.829(s,3H),1.448(s,3H)

6E H NMR(400MHz,CDOD):8.190(ブロード s,1H),7.647(d,J=10.4Hz,1H),4.705(s,1H),3.56−3.50(m,2H),2.558(t,J=6.6Hz,2H),1.814(s,3H),1.395(s,3H)

6F H NMR(400MHz,CDOD):8.271(ブロード s,1H),8.093(s,1H),4.794(s,1H),3.610(m,2H),2.640(t,J=6.6Hz,2H),1.898(s,3H),1.478(s,3H)

6G H NMR(400MHz,アセトン−d):9.838(s,1H),7.810(dd,J=10.8Hz,& 1.6Hz,1H),5.504(t,J=9.2Hz,1H),3.860(m,2H)

6H H NMR(400MHz,DMSO−d):8.266(s,1H),5.007(s,1H),1.725(s,1H),1.447(s,1H)

6I H NMR(400MHz,アセトン−d):8.149(s,1H),5.505(t,J=9.2Hz,1H),3.855(m,2H) 。
【0117】
化合物6Hから出発して3ステップで化合物6J(L=NH(CHCOOH)を調製した。カルボン酸6HをN−ヒドロキシスクシンイミドおよびDCCと反応させてNHSエステル7Hを生成し、これをメチル6−アミノヘキサノエートとカップリングした。得られたメチルエステルを塩基で加水分解して6Jを得た。
【0118】
5. ルシフェリンのNHSエステルの調製
【0119】
【化26】

これは、ルシフェリンのNHSエステルを調製する典型的な手順である。
【0120】
10mLの丸底フラスコにアルゴンで充填し、ルシフェリン(0.3ミリモル)、N−ヒドロキシスクシンイミド(0.3ミリモル)、およびDCC(0.305ミリモル)を仕込んだ。無水THF(4mL)を加え、反応混合物を3時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、少量のCHClを加えた。白色沈殿物が形成され、これを濾過により除去した。濾液を減圧下で濃縮してゴム状固体を形成させた。固体を最低量のTHFに溶解させ、ヘキサンを加えて固体を再形成させた。溶媒をデカントし、この手順をさらに2回繰り返して生成物を黄色の固体として得た(60%収率)。
7B H NMR(400MHz,CDCl):7.650(m,1H),4.093(d,J=11.4Hz,1H),3.481(d,J=11.4Hz,1H),1.814(s,3H)

7C H NMR(400MHz,CDCl):7.660(dd,J=10.2Hz & 1.4Hz,1H),5.153(s,1H),2.858(s,4H),1.874(s,3H),1.653(s,3H)

7D H NMR(400MHz,CDCl):7.678(d,J=10Hz,1H),7.608(ブロード s,1H),4.713(s,1H),4.614(dd,J=18Hz & 6.6Hz,1H),4.389(dd,J=18Hz & 5.4Hz,1H0,2.829(s,4H),1.907(s,3H),1.447(s,3H)

7E H NMR(400MHz,CDCl):,7.670(d,J=10Hz,1H),7.616(ブロード s,1H),4.660(s,1H),3.82−3.65(m,2H),2.899(t,J=6Hz,2H),2.789(s,4H),1.899(s,3H),1.412(s,H)

7F H NMR(400MHz,CDCl):8.073(s,1H),7.653(ブロード s,1H),4.699(s,1H),3.9−3.7(m,2H),2.932(t,J=6.0Hz,2H),2.820(s,4H),1.940(s,3H),1.451(s,3H)

7G H NMR(400MHz,アセトン−d):7.840(dd,J=10.0Hz & 1.6Hz,1H),5.962(dd,J=10.2Hz & 8.2Hz,1H),4.127(t,J=10.8Hz,1H),3.914(dd,J=11.6Hz & 8Hz,1H),2.935(s,4H)

7H H NMR(400MHz,アセトン−d):8.13(s,1H),5.59(s,1H),2.33(s,4H),1.89(s,3H),1.64(s,3H)

7J H NMR(400MHz,アセトン−d):9.53(ブロード s,1H),8.10(s,1H),7.78(m,1H),4.69(s,1H),3.22−3.42(m,2H),2.81(s,4H),2.62(t,2H),1.86(s,3H),1.76−1.69(m,2H),1.63−1.56(m,2H),1.50−1.44(m,2H),1.42(s,3H) 。
【0121】
6. ルシフェリンマレイミド誘導体の調製
【0122】
【化27】

ルシフェリンのNHSエステル(22mg)を無水THF中で撹拌した。N−(2−アミノエチル)マレイミド−トリフルオロ酢酸(13mg)、続いて水性NaHCOを加えた。混合物を4時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮した。混合物を5mLの水に溶解させ、酢酸エチルで抽出した。抽出物を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。この固体をアセトンに溶解させ、ヘキサンを加えて沈殿物を生成し、これを風乾した(13mg)。H NMR(400MHz,DMSO−d):8.118(m,1H),7.886(d,J=10.8Hz,1H),6.972(s,2H),4.670(s,1H),3.38(m,2H),3.33(m,2H),1.678(s,3H),1.264(s,3H) 。
【0123】
蛍光色素1(7H)の調製:
【0124】
【化28】

上述の合成スキームを用いて蛍光色素1(LD1;7H)を合成した。簡単に説明すると、上述の(describe)方法を用いて合成した2−シアノ−5,7−ジクロロ−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(4A)を、上記に詳述した条件下でD,L−ペニシラミン(5C)と反応させ、5,7−ジクロロ−6−ヒドロキシルシフェリン酸(6H)を得た。
【0125】
5,7−ジクロロ−6−ヒドロキシルシフェリンのNHSエステルの合成では、上記のようにDCCの存在下で、ジクロロ−6−ヒドロキシルシフェルン酸(6H)をN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させた。得られたNHSエステル(7H)を精製し、上記のようにNMRで特徴付けを行った。
【0126】
蛍光色素2(7J)の調製:
【0127】
【化29】

2−シアノ−5,7−ジクロロ−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(4A)を上記に詳述した条件下で化合物5Fと反応させたこと以外は、上述の合成スキームを用いて蛍光色素2(LD2;化合物7J)を合成し、5,7−ジクロロ(dicloro)−6−ヒドロキシルシフェリン酸(6J)を得た。
【0128】
次にジクロロ−6−ヒドロキシルシフェリン酸(6J)を上記のようにDCCの存在下でN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させてNHSエステル(7J)を得、これを精製し、上記のようにNMRにより解析した。
【0129】
蛍光色素3(7C)の調製:
【0130】
【化30】

2−シアノ−5,7−ジフロロ−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(4B)を上記に詳述した条件下でD,L−ペニシラミン(5C)と反応させたこと以外は、上記のような合成スキームを用いて蛍光色素3(LD3;7C)を合成し、5,7−ジフロロ−6−ヒドロキシルシフェリン酸(6C)を得た。
【0131】
次にジフロロ−6−ヒドロキシルシフェリン酸(6C)を上記のようにDCCの存在下でN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させ、5,7−ジフロロ−6−ヒドロキシルシフェリンのNHSエステル(7C)を得、これを精製し、上記のようにNMRにより解析した。
【0132】
蛍光色素4(7B)の調製:
【0133】
【化31】

2−シアノ−5,7−ジフロロ−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(4B)を上記に詳述した条件下で化合物5Bと反応させたこと以外は、上記のような合成スキームを用いて蛍光色素4(LD4;7B)を合成して、5,7−ジフロロ−6−ヒドロキシルシフェリン酸(6C)を得た。次に5,7−ジフロロ−6−ヒドロキシルシフェリン酸(6C)を上記のようにDCCの存在下でN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させて5,7−ジフロロ−6−ヒドロキシルシフェリンのNHSエステル(7C)を得、これを精製し、上記のようにNMRにより解析した。
【0134】
蛍光色素5(7E)の調製
【0135】
【化32】

2−シアノ−5,7−ジフルオロ−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(4B)を上記に詳述した条件下で化合物5Eと反応させたこと以外は、上記のような合成スキームを用いて蛍光色素5(LD5;7E)を合成して、5,7−ジフロロ−6−ヒドロキシルシフェリン酸(6E)を得た。次に5,7−ジフロロ−6−ヒドロキシルシフェリン酸(6E)を上記のようにDCCの存在下でN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させて5,7−ジフロロ−6−ヒドロキシルシフェリンのNHSエステル(7E)を得、これを精製し、上記のようにNMRにより解析した。
【0136】
蛍光色素6(9B)の調製
【0137】
【化33】

下記のスキームを用いて蛍光色素6(LD6)を合成した。
【0138】
【化34】

N−Boc−L−グルタミン酸γ−t−ブチルエステル(4.3g)をCHCl中、0℃で撹拌した。シリンジでトリエチルアミン(2mL)を加え、続いてエチルクロロホルマート(1.4mL)を加えた。反応混合物を60分間撹拌し、濾過し、固体を無水THFで洗浄した。濾液と洗液を合わせて、添加漏斗に移した。この溶液を、HO(20mL)中のNaBHの撹拌溶液に0℃で30分にわたり滴下して加えた。反応混合物を0℃で5時間撹拌してから、室温で一晩撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を酢酸エチルで希釈した。この溶液を水およびブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(20:80酢酸エチル:ヘキサン)により、生成物として油を得た。H NMR(400MHz,CDCl):4.814(ブロード s,1H),3.62−3.49(m,3H),2.496(ブロード s,1H),2.290(q,J=6.8Hz,2H),1.83−1.69(m,2H),1.406(s,18H) 。
【0139】
アミノアルコール(3.5g)をアルゴン充填下、ピリジン(25mL)中0℃で撹拌した。トシルクロリド(3.0g)を加え、反応混合物を0℃で6時間撹拌した。溶液を室温まで加温し、一晩撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、得られた固体を酢酸エチルに溶解させた。この溶液を飽和NaHCO、続いてブラインで洗浄した。洗浄した溶液を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーにより、生成物を油として得た。H NMR(400MHz,CDCl):7.744(d,J=8.8Hz,2H),7.311(d,J=8.8Hz,2H),4.623(d,J=8.4Hz,1H),4.00−3.91(m,2H),3.739(ブロード s,1H),2.411(s,3H),2.224(m,2H),1.719(m,2H),1.390(s,9H),1.350(s,9H) 。
【0140】
無水DMF中のトシル化エステル(3.9g)およびチオ酢酸カリウム(2.9g)の溶液を室温で3日間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(300mL)で希釈し、ブラインで洗浄した(3×100mL)。洗浄した溶液を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(15:85酢酸エチル:ヘキサン)により、生成物を油として得た。H NMR(400MHz,CDCl):4.522(d,J=8Hz,1H),3.704(ブロード s,1H),3.07−2.94(m,2H),2.311(s,3H),2.264(t,J=7.2Hz,2H),1.80−1.60(m,2H),1.404(s,9H),1.386(s,9H) 。
【0141】
このチオアセテート(2.5g)を6Nの脱気HCl中、105℃で一晩加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮して赤色の油を得た。H NMR(400MHz,DO):
【0142】
【化35】

フラスコに2−シアノ−5,7−ジフロロ−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(110mg)およびメタノール(25mL)を仕込んだ。撹拌した反応混合物にアルゴンを1時間スパージした。アルゴンスパージしたpH9(NaCOを加えてpHを調整)のアミノ酸(300mg)水溶液を調製し、1時間間隔で3回に分けてこの反応混合物に加えた。反応混合物を一晩撹拌した。反応物を減圧下で約10mLまで濃縮し、タイプ1水(40mL)で希釈した。この水溶液を酢酸エチル(50mL)で抽出し、抽出物を取っておいた。濃HClを滴下して加えてこの水溶液をpH2まで酸性化した。酸性化した水溶液を酢酸エチルで再び抽出した(2×50mL)。2つの抽出物を合わせて、無水NaSOで乾燥させ、濃縮して生成物を固体(130mg)として得た。H NMR(400MHz,CDOD):7.641(d,J=10.4Hz,1H),4.694(m,1H),3.612(t,J=8.8Hz,1H),3.179(t,J=9.4Hz,1H),2.550(m,2H),2.037(m,2H) 。
【0143】
フラスコにアルゴンを満たし、デオキソルシフェリン酸(41mg)、N−ヒドロキシスクシンイミド(15mg)、およびDCC(26mg)を仕込んだ。無水THF(4mL)を加え、反応混合物を3時間撹拌した。反応溶液を濾過して固体を除去した。ヘキサンを加えて固体を沈殿させ、これを吸引濾過により集めた。固体をTHFに再溶解させ、ヘキサンを加えて固体を沈殿させた。固体を吸引濾過により集め、風乾した。H NMR(400MHz,CDCl):7.666(dd,J=10.4Hz & 1.6Hz,1H),4.772(m,1H),3.612(m,1H),3.158(dd,J=11Hz & 8.6Hz,1H),3.00−2.86(m,2H),2.821(s,4H),2.188(m,2H) 。
【0144】
デヒドロルシフェリン(10)の調製。
【0145】
【化36】

以下の反応の説明は、例10Aに関するものであるが、10Bの場合も同様の反応条件を用いた。どちらの場合もH NMRデータを示す。
【0146】
2−シアノ−5,7−ジクロロ−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(2.8ミリモル)を、ピリジン(20mL)およびトリエチルアミン(0.3mL)中で撹拌した。この溶液に硫化水素を4.5時間バブリングした。硫化水素の添加を止めて、反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を減圧下でストリップし、得られた固体をメタノールから再結晶化させた。H NMR(400MHz,CDOD):8.000(s,1H) 。
【0147】
上記で得られたベンゾチアゾール生成物(55mg)をメタノール(5mL)に懸濁した。エチルブロモピルベート(100mg)を加え、反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を80℃で7時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、固体を形成させた。固体を吸引濾過により集め、メタノールで洗浄し、風乾した(35mg)。
R=H H NMR(400MHz,CDCl):8.295(s,1H),7.992(s,1H),4.436(q,J=7Hz,2H),1.414(t,J=7Hz,3H)
R=Me メチルエステル H NMR(400MHz,CDCl):7.964(s,1H),3.951(s,3H),2.837(s,3H) 。
【0148】
デヒドロルシフェリンエチルエステル(30mg)をメタノールおよび1NのNaOHに懸濁した。反応物を室温で2日間撹拌した。反応混合物を1NのHClでpH2まで酸性化し、酢酸エチルで抽出した(2×50mL)。合わせた抽出物を無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して生成物を固体として得た。
10A H NMR(400MHz,CDOD):8.518(s,1H),8.001(s,1H)

10B H NMR(400MHz,CDOD):7.965(s,1H),2.810(s,3H) 。
【0149】
8. 5−クロロ−4−ヒドロキシルシフェリン酸(11A)およびNHSエステル(11B)の調製
【0150】
【化37】

4−ヒドロキシルシフェリン酸およびNHSエステルへの合成経路は、6−ヒドロキシルシフェリン酸およびNHSエステルの調製に使用した経路と同一である。上記の化合物のNMRデータを示す。
3−クロロ−2−メトキシアニリンアッペル塩:H NMR(400MHz,CDCl):7.224(m,1H),7.068(t,J=8.2Hz,1H),6.988(d,J=8Hz,1H),3.809(s,3H)

2−シアノ−5−クロロ−4−メトキシベンゾチアゾール:H NMR(400MHz,CDCl):7.591(d,J=8.4Hz,1H),7.521(d,J=8.8Hz,1H),4.349(s,3H)

2−シアノ−5−クロロ−4−ヒドロキシベンゾチアゾール:H NMR(400MHz,CDCl):7.576(d,J=8.4Hz,1H),7.416(d,J=8.4Hz,1H),6.702(s,1H)

5−クロロ−4−ヒドロキシジメチルルシフェリン酸(11A):H NMR(400MHz,CDCl):7.451(d,J=8.4Hz,1H),7.370(d,J=9.2Hz,1H),6.689(s,1H),4.903(s,1H),1.886(s,3H),1.528(s,3H)

5−クロロ−4−ヒドロキシジメチルルシフェリンのNHSエステル(11B):H NMR(400MHz,CDCl):7.425(d,J=8.8Hz,1H),7.354(d,J=8.4Hz,1H),6.707(s,1H),5.157(s,1H),2.855(s,4H),1.882(s,3H),1.659(s,3H) 。
【0151】
9. 6−クロロ−5−ヒドロキシルシフェリン酸(12D)の調製
【0152】
【化38】

5−ヒドロキシルシフェリン酸への合成経路は、6−ヒドロキシルシフェリン酸の調製に使用した経路と同一である。上記の化合物のNMRデータを示す。
4−クロロ−3−メトキシアニリンアッペル塩(12A):H NMR(400MHz,CDCl):7.396(d,J=8.8Hz,1H),6.78−6.76(m,2H),3.882(s,3H)

2−シアノ−6−クロロ−5−メトキシベンゾチアゾール(12B):H NMR(400MHz,CDCl):7.929(s,1H),7.636(s,1H),3.988(s,3H)

2−シアノ−6−クロロ−5−ヒドロキシベンゾチアゾール(12C):H NMR(400MHz,CDCl):7.927(s,1H),7.792(s,1H),5.852(s,1H)

6−クロロ−5−ヒドロキシジメチルルシフェリン酸(12D):H NMR(400MHz,CDOD):7.980(s,1H),7.511(s,1H),4.927(s,1H),1.778(s,3H),1.489(s,3H) 。
【0153】
10. 5,7−ジメチル−6−ヒドロキシジメチルルシフェリン酸(13E)の調製
【0154】
【化39】

5,7−ジメチル−6−ヒドロキシジメチルルシフェリン酸への合成経路は、6−ヒドロキシルシフェリン酸の調製に使用した経路と同一である。上記の化合物のNMRデータを示す。
3,5−ジメチル−4−メトキシアニリン(13A):H NMR(400MHz,CDCl):6.320(s,2H),3.615(s,3H),2.167(s,6H)

3,5−ジメチル−4−メトキシアニリンアッペル塩(13B):H NMR(400MHz,CDCl):6.905(s,2H),3.711(s,3H),2.278(s,6H)

2−シアノ−5,7−ジメチル−6−メトキシベンゾチアゾール(13C):H NMR(400MHz,CDCl):7.845(s,1H),3.782(s,3H),2.488(s,3H),2.429(s,3H)

2−シアノ−5,7−ジメチル−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(13D):H NMR(400MHz,CDCl):7.805(s,1H),5.2(ブロード s,1H),2.443(s,3H),2.401(s,3H)

5,7−ジメチル−6−ヒドロキシジメチルルシフェリン酸(13E):H NMR(400MHz,CDOD):7.641(s,1H),4.905(s,1H),2.401(s,3H),2.333(s,3H),1.777(s,3H),1.491(s,3H) 。
【0155】
11. トリフルオロメチル置換ルシフェリン酸(14E)およびNHSエステル(蛍光色素7;14F)の調製:
【0156】
【化40】

トリフルオロメチル置換ルシフェリン酸およびNHSエステルへの合成経路は、6−ヒドロキシルシフェリン酸およびNHSエステルの調製に使用した経路と同一である。上記の化合物のNMRデータを示す。
4−メトキシ−3−トリフルオロメチルアニリンアッペル塩(14A):H NMR(400MHz,CDCl):7.522(d,J=2.4Hz,1H),7.424(dd,J=8.6Hz & 2.6Hz,1H),7.064(d,J=9.2Hz,1H),3.916(s,3H)

2−シアノ−5−トリフルオロメチル−6−メトキシベンゾチアゾール(14B):H NMR(400MHz,CDCl):8.384(s,1H),7.451(s,1H),4.033(s,3H)

2−シアノ−7−トリフルオロメチル−6−メトキシベンゾチアゾール(14C):H NMR(400MHz,CDCl):8.313(d,J=8.8Hz,1H),7.374(d,J=9.2Hz,1H),3.997(s,3H)

2−シアノ−5−トリフルオロメチル−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(14D):H NMR(400MHz,CDCl):8.368(s,1H),7.492(s,1H)

5−トリフルオロメチル−6−ヒドロキシジメチルルシフェリン酸(14E):H NMR(400MHz,CDOD):8.168(s,1H),7.479(s,1H),4.927(s,1H),1.779(s,3H),1.492(s,3H)

5−トリフルオロメチル−6−ヒドロキシジメチルルシフェリンのNHSエステル(14F):H NMR(400MHz,CDCl):8.278(s,1H),7.445(s,1H),5.148(s,1H),2.861(s,4H),1.874(s,3H),1.653(s,3H) 。
【0157】
ルシフェリン化合物の蛍光測定
HORIBA Jobin Yvon Fluoromax(登録商標)−3スペクトロメーターで蛍光測定実験を行った。他に記載がない限り、通常励起波長を405nmに設定した。励起および発光スリットは1nmであった。25mM トリス、pH8.0緩衝液中の20μMの色素の溶液を用いて蛍光スペクトルを取得し、表6に示す最大発光の波長で強度を決定した。
【0158】
【表6】

実施例2
以下の例は、本発明の蛍光色素を抗体分子に結合体化する方法を説明するものである。
【0159】
典型的な実験では、ルシフェリン誘導体の抗体結合体を以下のとおり調製する。50mMのボレート、pH9.0緩衝液を用いて4mg/mlで目的の抗体を調製する。この色素試薬を無水DMSOに溶解させ濃度を5mg/mlとする。この抗体溶液に、DMSO中に事前に設定した量の色素を混合しながらゆっくりと加える。反応物を室温で60分間インキュベートする。その後、PBS、2mM EDTA中の75mg/mlのグリシルグリシン(使用する色素に対して200モル過剰)溶液を添加して反応物をクエンチする。PBSで平衡化したSephadex G−50カラムにより脱塩して、この色素−抗体結合体を分離する。280nmの吸光度について溶出をモニターし、抗体を含むバンドをカラムから採取する。280nm、および色素ピークの最大吸収で色素−結合体の吸光度値を測定することにより、置換の程度(F/P値)を決定する。表7に示すような、結合体化に使用した色素の吸光係数を用いて、置換の程度を算出する。
【0160】
【表7】

以下の表(表8)は、代表的な抗体に対する本発明の6つの色素の様々な結合体に関するデータを示す。
【0161】
【表8】

実施例3
以下の例は、フローサイトメトリーにおける抗体−色素結合体の使用方法を提供するものである。
【0162】
フロー解析
本発明の抗体−色素結合体の様々な組成物の最適な量(滴定により個別に決定される)を、全血(0.1mL)を含む生物学的標本と独立に組み合わせて、10〜15分間インキュベートし、VersaLyse(商標)溶解試薬を用いて標準的な手順により処理し、フローサイトメーターにより解析した。簡単に説明すると、処理した生物学的標本をVersaLyse(商標)試薬/0.2%ホルムアルデヒド(1mL)と10分間化合し、処理した標本を遠心沈殿させ(spin down)、上清を吸引し、ペレットをPBS(2mL)に再懸濁し、細胞懸濁液を遠心沈殿させ、ペレットをPBS/0.1%ホルムアルデヒド(1mL)に再懸濁して解析を行った。フローサイトメトリーにより前方散乱特徴と側方散乱特徴とに基づき、リンパ球集団を選択した。亜集団は、特異的モノクローナル抗体を用いて特定した。蛍光シグナルは、結合体の蛍光発光スペクトルに基づき選択した適切なバンドパスフィルターを用いて集めた。
【0163】
同様に、抗体−Pacific Orange(商標)結合体も評価した。選択した事例で、様々なルシフェリン誘導体色素−抗体結合体のフローデータの結果を、対応する抗体−Pacific Orange色素−結合体と比較した。以下の表は、これらの結果をまとめたものである(表9)。本発明の抗体−蛍光色素の結合体は、抗体−Pacific Orange結合体に比べて優れたシグナル/ノイズ値を示した。
【0164】
【表9】

2カラーフロー解析:
選択した事例で、405nmレーザー線、CD8−Pacific Blue(商標)色素−結合体、および本発明のCD4−ルセフェリン誘導体色素を用いて、2カラーフロー解析を同様に行った。結果を、CD8−Pacific Blue色素結合体、およびCD4−Pacific Orange色素(Invitrogen Corporation)の対応する性能と比較した。図4に示すように、抗体−色素2結合体は、抗体−Pacific Orange(商標)結合体のシグナルと比較してより明るいシグナルを示した。
【0165】
マルチカラーフロー解析:
本発明の色素の1つ(色素3)について、405nmレーザー、488nmレーザーおよび635nmレーザーを備えた3レーザー10カラーPMT機器を用いて、10カラーへの適用も証明した。550/40nmバンドパスフィルターを用いて、光電子増倍管への蛍光出力を収集した。以下の抗体試薬を使用した:
1. CD45(RA)−FITC
2. CD56−PE
3. CD45(RO)−ECD
4. CD25−PC5
5. CD19−PC7
6. CD3−APC
7. CD27−APCA700
8. CD5−APCCy7
9. CD8−Pacific Blue
10. CD4−Pacific Orange/CD4−色素3。
【0166】
図5に示したヒストグラムは、10カラーフローアッセイにおいてCD4−色素3結合体が、CD4−Pacific Orange結合体のシグナルと比較してより明るいシグナルを与えることを図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化41】

を有する、蛍光色素であって、式中、
およびXは独立にSまたはOであり;
およびYは独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルであるか、あるいは、YまたはYの一方はHであり、他方はハロアルキル基であり;
各々のWは独立にHまたはアルキルであり;
はHまたはアルキルであり;
、およびW基の1つは存在していなくてもよく、存在しない場合、環CのCとCとの間の別の結合で置換されており;
Lは独立に結合または連結基であり;
RGは反応性基である、
蛍光色素。
【請求項2】
前記連結基は、C原子、N原子、O原子、S原子、P原子およびハロゲン原子から選択される1〜50個の非水素原子を含む共有結合を含み、一重、二重、三重もしくは芳香族の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、炭素−窒素結合、および窒素−窒素結合の任意の組み合わせからなり;
ここで、RGは、カルボン酸、カルボン酸の活性化エステル、酸無水物、酸クロリド、アシルアジド、アシルハライド、アルデヒド、クロロホルマート、アミン、ヒドロキシル、ヒドラジン、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホニルハライド、トシル、マレイミド、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル、アジリジン、イミン、およびジスルフィドからなる基から選択される反応性基を含む、
請求項1に記載の蛍光色素。
【請求項3】
前記連結基は、下記式:
C(O)Rであって、式中、Rは結合、または前記色素に結合したC1〜10メチレン(CH)nであり、C(O)はカルボニル基であり、RはOH、または前記カルボニル基を前記反応性基RGに結合する結合である、RC(O)R;あるいは
C(O)AC(O)Rであって、式中、Rは結合、またはC1〜10メチレンであり、C(O)はカルボニル基であり、AはNH、SまたはOのいずれかであり、Rはアルケニル(CH)n、少なくとも1つの不飽和結合を持つ5もしくは6員環、またはC1〜10メチレン(CH)nと5もしくは6員環との組み合わせであり、RはOH、または末端カルボニル基を前記反応性基RGに結合する結合である、RC(O)AC(O)R
を含む、請求項1または2に記載の蛍光色素。
【請求項4】
RGはカルボン酸、カルボン酸のスクシンイミジルエステル、ヒドラジド、アミン、イソチオシアネートまたはマレイミドを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光色素。
【請求項5】
式:
【化42】

を有し、式中、
RはOH、スクシンイミドオキシ、NH(CH)nCOOH、NH(CHCO−スクシンイミド、またはNH(CH)n−マレイミドを表し、式中、n=1〜10である、
請求項1に記載の蛍光色素。
【請求項6】
式:
【化43】

を有する、請求項1に記載の蛍光色素。
【請求項7】
式:
【化44】

を有し、式中、
RはOH、スクシンイミドオキシ、NH(CH)nCOOH、NH(CHCO−スクシンイミド、またはNH(CH)n−マレイミドを表し、式中、n=1〜10である、
請求項1に記載の蛍光色素。
【請求項8】
式:
【化45】

を有する、請求項1に記載の蛍光色素。
【請求項9】
式:
【化46】

を有する、請求項1に記載の蛍光色素。
【請求項10】
式:
【化47】

を有する、請求項1に記載の蛍光色素。
【請求項11】
式:
【化48】

を有し、式中、
RはOH、スクシンイミドオキシ、NH(CH)nCOOH、NH(CHCO−スクシンイミド、またはNH(CH)n−マレイミドを表し、式中、n=1〜10である、請求項1に記載の蛍光色素
【請求項12】
式:
【化49】

を有し、式中、
およびXは独立にSまたはOであり;
およびYは独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルであるか、あるいは、YまたはYの一方はHであり、他方はハロアルキル基であり;
WはHまたはアルキルであり;
Lは独立に結合または連結基であり、前記連結基は、C原子、N原子、O原子、S原子、P原子およびハロゲン原子から選択される1〜50個の非水素原子を含む共有結合を含み、一重、二重、三重もしくは芳香族の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、炭素−窒素結合、および窒素−窒素結合の任意の組み合わせからなり;
RGはカルボン酸、カルボン酸の活性化エステル、酸無水物、酸クロリド、アシルアジド、アシルハライド、アルデヒド、クロロホルマート、アミン、ヒドロキシル、ヒドラジン、イソシアネート、イソチオシアネート、スルホニルハライド、トシル、マレイミド、N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル、アジリジン、イミン、およびジスルフィドからなる基から選択される反応性基である、請求項1に記載の蛍光色素。
【請求項13】
約340nm〜約450nmの波長で励起され得る、請求項1に記載の蛍光色素。
【請求項14】
式:
【化50】

を有する、色素−結合体であって、式中、
およびXは独立にSまたはOであり;
およびYは個別にH、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルを表し、各々のWは独立にHまたはアルキルであり;
はHまたはアルキルであり;
、および前記W基の1つは存在していなくてもよく、存在しない場合、環CのCとCとの間の別の結合で置換されており;
Lは独立に結合または連結基であり、前記連結基は、C原子、N原子、O原子、S原子、P原子およびハロゲン原子から選択される1〜50個の非水素原子を含む共有結合を含み、一重、二重、三重もしくは芳香族の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、炭素−窒素結合、および窒素−窒素結合の任意の組み合わせからなり;
CMは、ペプチド、タンパク質、多糖、酵素、脂質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたは核酸ポリマーを含む結合体化分子である、色素−結合体。
【請求項15】
前記結合体化分子はペプチドまたはタンパク質である、請求項14に記載の色素−結合体。
【請求項16】
前記結合体化分子は抗体、または抗体のフラグメントである、請求項14または15に記載の色素−結合体。
【請求項17】
サンプル中の特異的結合対の相補的な構成要素を検出する方法であって:
a)前記相補的な構成要素に特異的に結合する請求項14〜16のいずれか1項に記載の色素−結合体と前記サンプルを混合する工程;および
b)前記混合により形成される複合体を検出して前記相補的な構成要素を検出する工程
を含む、方法。
【請求項18】
前記相補的な構成要素はタンパク質またはペプチドである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記相補的な構成要素は細菌、ウイルスまたは動物細胞に存在する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記複合体はその蛍光応答により検出される、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記蛍光応答はフローサイトメーター、蛍光計、蛍光顕微鏡、または蛍光プレートリーダーを用いて検出される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
検出できる程度に異なる光学的特性を有する第2のフルオロフォアの蛍光応答と前記蛍光応答を識別する工程をさらに含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記蛍光応答に基づき前記複合体を他のサンプル成分から分離する工程をさらに含む、請求項20〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
式:
【化51】

を有する化合物であって、式中、
およびYは独立にハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルケニルであるか
あるいは
Y1またはYの一方はHであり、他方はハロアルキル基である、化合物。

【図1】
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【図3A】
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【図3B】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−533654(P2012−533654A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520764(P2012−520764)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/042063
【国際公開番号】WO2011/008912
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】