説明

新規な3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン誘導体及びモノアミン神経伝達物質再取り込み阻害剤としてのこれらの使用

本発明は、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害剤として有用な新規な3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン誘導体に関する。別の態様において、本発明は、治療のための方法におけるこれらの化合物の使用、及び、本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノアミン神経伝達物質再取り込み阻害剤として有用な新規な3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン誘導体に関する。
【0002】
別の態様において、本発明は、治療のための方法におけるこれらの化合物の使用、及び、本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)は、鬱病及びパニック障害を含めて、いくつかのCNS障害の治療に、現在、効能をもたらしている。SSRIは、精神科医及び初期治療医によって、効果的で、忍容性が高く、また投与しやすいと一般に認められている。しかし、それらは、かなりの数の望ましくない特徴を伴っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうして、モノアミン神経伝達物質のセロトニン、ドーパミン及びノルアドレナリンの再取り込みについての活性に関して最適化された薬理学的特徴(例えば、セロトニン再取り込みとノルアドレナリン及びドーパミン再取り込み活性との比)を有する化合物が依然として強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その第1の態様において、本発明は、式Iの化合物:
【化1】


その任意の異性体又はその異性体の任意の混合物、或いは薬学的に許容されるこれらの塩を提供し、
式中、R、R及びXは下で定義される通りである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
その第2の態様において、本発明は、本発明の化合物、その任意の異性体又はその異性体の任意の混合物、或いは薬学的に許容されるこれらの塩の治療有効量を、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0007】
さらなる態様において、本発明は、ヒトを含めての哺乳動物の疾患又は障害又は状態(この疾患、障害又は状態は、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に応答する)の治療、予防又は軽減のための医薬組成物の製造のための、本発明の化合物、その任意の異性体又はその異性体の任意の混合物、或いは薬学的に許容されるこれらの塩の使用を提供する。
【0008】
さらなる態様において、本発明は、ヒトを含めての動物の生体の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は軽減のための方法に関し、この疾患、障害又は状態は、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に応答し、この方法は、本発明の化合物、その任意の異性体又はその異性体の任意の混合物、或いは薬学的に許容されるこれらの塩の治療有効量を、それを必要としている、このような動物の生体に投与するステップを含む。
【0009】
本発明の他の目的は、以下の詳細な説明及び実施例から、当業者には明らかであろう。
【0010】
3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン誘導体
その第1の態様において、本発明は、式Iの化合物:
【化2】


その任意の異性体又はその異性体の任意の混合物、或いは薬学的に許容されるこれらの塩を提供し、
式中、
は、水素又はアルキルを表し;
このアルキルは、
ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニル
からなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基により任意選択で置換されており;
はアリール又はヘテロアリール基を表し;
このアリール又はヘテロアリール基は、
ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルコキシアルキル、シクロアルコキシアルキル、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、−NR’R”、−(C=O)NR’R”又は−NR’(C=O)R”;
からなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基により任意選択で置換されており、
R’及びR”は互いに独立に、水素又はアルキルであり;
Xは−O−又は−NR−を表し;
は水素又はアルキルを表す。
【0011】
一実施形態において、Rは水素又はアルキルを表す。特定の実施形態において、Rは水素を表す。さらなる実施形態において、Rはアルキル、例えばメチルを表す。
【0012】
さらなる実施形態において、Rはフェニル基を表し、このフェニル基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ及びアルコキシからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基により任意選択で置換されている。
【0013】
さらなる実施形態において、Rはフェニル基を表し、このフェニル基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ及びアルコキシからなる群から独立に選択される置換基により、1回又は2回置換されている。
【0014】
特定の実施形態において、Rはハロフェニル、例えばクロロフェニル(例えば、4−クロロフェニル)を表す。さらなる実施形態において、Rはジハロフェニル、例えば3,4−ジハロフェニルを表す。さらなる実施形態において、Rはジクロロフェニル、例えば、3,4−ジクロロフェニルを表す。さらなる実施形態において、Rはブロモ−クロロフェニル、例えば、3−ブロモ−4−クロロ−フェニルを表す。さらなる実施形態において、Rはクロロ−フルオロフェニル、例えば、3−クロロ−4−フルオロフェニル又は4−クロロ−3−フルオロ−フェニルを表す。さらなる実施形態において、Rはハロ−トリフルオロメチル−フェニル、例えば、クロロ−トリフルオロメチル−フェニル(例えば、4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)を表す。
【0015】
さらなる実施形態において、Rはナフチル基を表し、このナフチル基は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ及びアルコキシからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基により任意選択で置換されている。
【0016】
特定の実施形態において、Rはナフチルを表す。さらなる実施形態において、Rはアルコキシナフチル、例えばメトキシナフチル(例えば、6−メトキシ−ナフタレン−2−イル)を表す。
【0017】
さらなる実施形態において、Rは、任意選択で置換されたクマリニル基を表す。特定の実施形態において、Rはクマリニル、例えば、クマリン−6−イル又はクマリン−7−イルを表す。
【0018】
さらなる実施形態において、Xは−O−を表す、さらなる実施形態において、Xは−NR−を表す。さらなる実施形態において、Rは水素を表す。特定の実施形態において、Xは−O−又は−NH−を表す。
【0019】
特定の実施形態において、本発明の化合物は、
9−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
9−(6−メトキシ−ナフタレン−2−イルオキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
7−(3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカ−9−イルオキシ)−クロメン−2−オン;
9−(3−ブロモ−4−クロロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
9−(4−クロロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
9−(4−クロロ−3−フルオロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
9−(3−クロロ−4−フルオロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
9−(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
9−(ナフタレン−2−イルオキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
6−(3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカ−9−イルオキシ)−クロメン−2−オン;
(3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカ−9−イル)−(3,4−ジクロロ−フェニル)−アミン;
9−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−3−メチル−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
又は薬学的に許容されるこれらの塩である。
【0020】
前記実施形態の2つ以上の任意の組合せは本発明の範囲内であると考えられている。
【0021】
置換基の定義
本発明との関連において、ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表す。
【0022】
本発明との関連において、アルキル基は、1価の線状又は分岐状の飽和炭化水素鎖を意味する。この炭化水素鎖は1から6個の炭素原子を好ましくは含み(C1〜6−アルキル)、これには、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル及びイソヘキシルが含まれる。好ましい実施形態において、アルキルはC1〜4−アルキル基を表し、これには、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチルが含まれる。本発明の別の好ましい実施形態において、アルキルはC1〜3−アルキル基を表し、これは、特に、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピルであり得る。
【0023】
本発明との関連において、アルケニル基は、ジ−エン、トリ−エン及びポリ−エンを含めて、1つ又は複数の2重結合を含む炭素鎖を意味する。好ましい実施形態において、本発明でのアルケニル基は、少なくとも1つの2重結合を含めて、2から6個の炭素原子を含む(C2〜6−アルケニル)。最も好ましい実施形態において、本発明でのアルケニル基は、エテニル;1−若しくは2−プロペニル;1−、2−若しくは3−ブテニル、又は1,3−ブタジエニル;1−、2−、3−、4−若しくは5−ヘキセニル、又は1,3−ヘキサジエニル、又は1,3,5−ヘキサトリエニル;である。
【0024】
本発明との関連において、アルキニル基は、ジ−イン、トリ−イン及びポリ−インを含めて、1つ又は複数の3重結合を含む炭素鎖を意味する。好ましい実施形態において、本発明でのアルキニル基は、少なくとも1つの3重結合を含めて、2から6個の炭素原子を含む(C2〜6−アルキニル)。最も好ましいその実施形態において、本発明でのアルキニル基は、エチニル;1−若しくは2−プロピニル;1−、2−若しくは3−ブチニル、又は1,3−ブタジイニル;1−、2−、3−、4−ペンチニル、又は1,3−ペンタジイニル;1−、2−、3−、4−若しくは5−ヘキシニル、又は1,3−ヘキサジイニル、又は1,3,5−ヘキサトリイニル;である。
【0025】
本発明との関連において、シクロアルキル基は、3から7個の炭素原子を好ましくは含む(C3〜7−シクロアルキル)環状アルキル基を意味し、これには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが含まれる。
【0026】
アルコキシは、O−アルキルであり、このアルキルは上で定義された通りである。
【0027】
シクロアルコキシは、O−シクロアルキルを意味し、このシクロアルキルは上で定義された通りである。
【0028】
シクロアルキルアルキルは、前記シクロアルキル及び前記アルキルを意味し、例えば、シクロプロピルメチルを意味する。
【0029】
本発明との関連において、アリール基は、フェニル、ナフチル又はフルオレニルのような、炭素環式芳香族環系を意味する。
【0030】
本発明との関連において、ヘテロアリール基は、単環又は2環の芳香族複素環式基を意味し、この基はその環構造に1個又は複数のヘテロ原子を有する。好ましいヘテロ原子には、窒素(N)、酸素(O)、及び硫黄(S)が含まれる。
【0031】
本発明での好ましい単環のヘテロアリール基には、5員及び6員の単環芳香族複素環式基が含まれ、これらに限らないが、例えば、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、テトラゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、イミダゾリル、ピロリル、ピラゾリル、フラニル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、又はピリダジニルが含まれる。
【0032】
本発明での好ましい2環のヘテロアリール基には、これらに限らないが、例えば、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾチアゾリル、ベンゾ[d]イソチアゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、1,8−ナフチリジニル、プテリジニル、及びインデニルが含まれる。クマリニルもまた2環のヘテロアリール基に含まれる。
【0033】
薬学的に許容される塩
本発明の化合物は、意図される投与に適するどのような形において提供されてもよい。適切な形には、本発明の化合物の薬学的に(すなわち、生理学的に)許容される塩、及びプレ−又はプロドラッグの形が含まれる。
【0034】
薬学的に許容される付加塩の例(限定ではない)には、無毒の無機及び有機の酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコニット酸塩(aconate)、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トルエン−p−スルホン酸塩などが含まれる。このような塩は、当技術分野においてよく知られており記述されている手順によって生成され得る。
【0035】
シュウ酸のような他の酸は、薬学的に許容されると考えられていないかもしれないが、本発明の化合物及びその薬学的に許容される酸付加塩を得る時に、中間体として有用な塩の調製に有用であり得る。
【0036】
本発明の化合物の薬学的に許容される陽イオンの塩の例(限定ではない)には、陰イオン基を含む本発明の化合物の、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウム、コリン、リシニウム、及びアンモニウムの塩などが含まれる。このような陽イオンの塩は、当技術分野においてよく知られており記述されている手順によって生成され得る。
【0037】
本発明との関連において、N−含有化合物の「オニウム塩」もまた薬学的に許容される塩と想定されている。好ましい「オニウム塩」には、アルキル−オニウム塩、シクロアルキル−オニウム塩、及びシクロアルキルアルキル−オニウム塩が含まれる。
【0038】
本発明の化合物のプレ−又はプロドラッグ形の例には、本発明による物質の適切なプロドラッグの例が含まれ、親化合物の反応性又は誘導体化できる基の1つ又は複数で修飾された(modified)化合物が含まれる。特に重要なのは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、又はアミノ基で修飾された化合物である。適切な誘導体の例は、エステル又はアミドである。
【0039】
本発明の化合物は、薬学的に許容される溶媒(例えば、水、エタノールなど)と一緒に、溶けるか、又は溶けない形において提供され得る。溶ける形には、また、一水和物、二水和物、0.5水和物、三水和物、四水和物などのような水和した形も含まれる。一般に、溶ける形は、本発明の目的にとっては、溶けない形と等価であると考えられる。
【0040】
立体異性体
本発明の化合物は様々な立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー及びシス−トランス−異性体が含まれる)として存在することが、当業者により理解されるであろう。
【0041】
本発明は、このような異性体及びそれらの任意の混合物(ラセミ混合物が含まれる)の全てを含む。
【0042】
ラセミ体は、知られている方法及び技術によって光学対掌体に分割できる。エナンチオマー化合物(エナンチオマー中間体を含めて)を分離する1つの方法は、キラル酸である化合物の場合、光学活性アミンを用い、分割されたジアステレオマー塩を酸による処理によって遊離させることによる。ラセミ体を光学対掌体に分割する別の方法は、光学活性マトリックスでのクロマトグラフィーに基づく。こうして、本発明のラセミ混合物は、例えばD−又はL−(酒石酸、マンデル酸、又はカンファースルホン酸)の塩の、例えば分別晶出によって、それらの光学対掌体へと分割できる。
【0043】
本発明の化合物はまた、本発明の化合物と活性化された光学活性カルボン酸(例えば、(+)又は(−)フェニルアラニン、(+)又は(−)フェニルグリシン、(+)又は(−)カンファン酸から誘導されたもの)との反応によるジアステレオマーアミドの生成によって、或いは、本発明の化合物と光学活性なクロロギ酸エステルなどとの反応によるジアステレオマーカルバメートの生成によっても分割できる。
【0044】
光学異性体を分割するさらなる方法は、当技術分野において知られている。このような方法には、J.Jaques、A.Collet、及びS.Wilenによって、「エナンチオマー、ラセミ体、及び分割(Enantiomers,Racemates,and Resolutions)」(John Wiley and Sons、ニューヨーク(1981))に記載されているものが含まれる。
【0045】
光学活性化合物はまた、光学活性な出発物質又は中間体からも調製できる。
【0046】
標識化合物
本発明の化合物は、標識された化合物の形で、又は標識されてない化合物の形で使用され得る。本発明との関連において、標識化合物は、自然に通常見出される原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられた1つ又は複数の原子を有する。標識化により、その化合物を定量的に容易に検出できる。
【0047】
本発明での標識化合物は、様々な診断法における診断ツール、放射性トレーサー、又はモニタリング剤として、またin vivoでの受容体イメージングにとって有用であり得る。
【0048】
本発明での標識異性体は、好ましくは、標識として少なくとも1種の放射性核種を含む。陽電子放出放射性核種は全て、使用される候補である。本発明との関連において、放射性核種は、H(重水素)、H(トリチウム)、13C、14C、131I、125I、123I、及び18Fから好ましくは選択される。
【0049】
本発明での標識異性体を検出するための物理的方法は、陽電子放射断層撮影法(PET)、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)、磁気共鳴画像(MRI)、及びコンピュータX線体軸断層撮影法(CAT)、又はこれらの組合せから選択され得る。
【0050】
調製方法
本発明の化合物は、化学合成の通常の方法(例えば、実施例に記載されているもの)によって調製され得る。本出願において記載されている方法での出発材料は知られているか、又は市販の化学品から通常の方法によって容易に調製できる。
【0051】
また、本発明の化合物の1つは、通常の方法を用いて、本発明の別の化合物に変換され得る。
【0052】
本明細書に記載されている反応の最終生成物は、通常の技術、例えば、抽出、晶析、蒸留、クロマトグラフィーなどによって単離できる。
【0053】
生物活性
本発明の化合物は、シナプトソームへの、モノアミンであるドーパミン、ノルアドレナリン及びセロトニンの再取り込みを阻害するそれらの能力について、例えば、WO 97/30997に記載されているようにして、試験され得る。これらの試験において認められる釣合の取れた活性に基づいて、本発明の化合物は、ヒトを含めての哺乳動物の疾患又は障害又は状態(この疾患、障害又は状態は、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に応答する)の治療、予防又は軽減のために有用であると考えられる。
【0054】
特定の実施形態において、本発明の化合物は、気分障害、鬱病、非定型鬱病、鬱病併発疼痛(depression secondary to pain)、大鬱病性障害、気分変調性障害、双極性障害、双極I型障害、双極II型障害、気分循環性障害、一般身体疾患による気分障害、物質誘発性気分障害、仮性認知症、ガンゼル症候群、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖症を伴わないパニック障害、広場恐怖症を伴うパニック障害、パニック障害の病歴のない広場恐怖症、パニック発作、記憶障害、記憶喪失、注意欠陥多動性障害、肥満、不安、全般性不安障害、摂食障害、パーキンソン病、パーキンソン症候群、認知症、老化による認知症、老年認知症、アルツハイマー病、後天性免疫不全症候群認知症複合、加齢による記憶障害、特定恐怖症、社会恐怖症、社会不安障害、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、薬物依存症、薬物乱用、コカインの乱用、ニコチンの乱用、タバコの乱用、アルコール依存症(alcohol addiction)、アルコール中毒(alcoholism)、窃盗症、疼痛、慢性疼痛、炎症性疼痛、神経因性疼痛、偏頭痛、緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛、鬱病に伴う疼痛(pain associated with depression)、線維筋痛症、関節炎、変形性関節炎、関節リウマチ、背部痛、癌性疼痛、過敏性腸疼痛、過敏性腸症候群、術後疼痛、乳房切除後疼痛症候群(PMPS)、卒中後痛、薬物誘発性神経障害、糖尿病性神経障害、交感神経依存性疼痛、三叉神経痛、歯痛、顔面筋疼痛、幻肢痛、大食症、月経前症候群、月経前不快気分障害、黄体期後期症候群(late luteal phase syndrome)、外傷後症候群、慢性疲労症候群、尿失禁、ストレス尿失禁、切迫性尿失禁、夜間失禁、性機能障害、早漏、勃起困難、勃起障害、早すぎる女性のオルガスム(premature female orgasm)、不穏下肢症候群、周期性四肢運動障害、摂食障害、神経性食欲不振症、睡眠障害、広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー障害、レット障害、小児期崩壊性障害、学習障害、運動能力障害、緘黙症、抜毛癖、ナルコレプシー、脳卒中後鬱病、卒中誘発脳損傷、卒中誘発ニューロン損傷、ジルドラトゥレット病、耳鳴り、チック障害、身体醜形障害、反抗挑戦性障害又は卒中後能力低下の治療、予防又は軽減に対して有用であると考えられる。好ましい実施形態において、本発明の化合物は鬱病の治療、予防又は軽減に対して有用であると考えられる。
【0055】
活性医薬成分(API)の適切な投薬量は、1日当たり約0.1から約1000mgのAPI、より好ましくは1日当たり約10から約500mgのAPI、最も好ましくは1日当たり約30から約100mgのAPIの範囲内にあると現時点では想定されているが、正確な投与方式、それが投与される形態、考慮されている徴候、被治療動物及び特に当の被治療動物の体重、さらに担当の医師又は獣医の選択及び経験に依存する。
【0056】
本発明の好ましい化合物は、サブマイクロモル及びマイクロモルの領域で、すなわち1μM未満から約100μMで生物活性を示す。
【0057】
医薬組成物
別の態様において、本発明は、治療有効量の本発明の化合物を含む新規な医薬組成物を提供する。
【0058】
治療に用いられる本発明の化合物は原体化合物の形で投与されてもよいが、(任意選択で、生理学的に許容される塩の形の)活性成分を、アジュバント、賦形剤、担体、緩衝剤、希釈剤、及び/又は他の常用される医薬補助剤の1つ又は複数と一緒に医薬組成物に導入することが好ましい。
【0059】
好ましい実施形態において、本発明は、本発明の化合物、或いはその薬学的に許容される塩又は誘導体を、1つ又は複数の薬学的に許容される担体と、任意選択で、当技術分野において知られており使用されている他の治療及び/又は予防成分と共に含む医薬組成物を提供する。(複数の)担体は、製剤(formulation)の他の成分に適合性があり、またその受容動物に有害でないという意味において「許容される」のでなければならない。
【0060】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、気管支、鼻腔内、経肺、局所(口腔及び舌下が含まれる)、経皮、経膣又は非経口(皮膚、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、動脈内、脳内、眼内注射又は注入が含まれる)投与に適するもの、或いは、吸入又は吹送(insufflation)(粉末及び液体エアロゾル投与が含まれる)によって、又は徐放性(sustained release)システムによって投与するのに適する形態のものであり得る。徐放性システムの適切な例には、本発明の化合物を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、このマトリックスは成形品(例えばフィルム又はマイクロカプセル)の形になっていてもよい。
【0061】
このように、本発明の化合物は、通常のアジュバント、担体、又は希釈剤と一緒に、医薬組成物の形態及びそれらの単位剤形にされ得る。このような形態には、固体(特に、錠剤、充填カプセル、粉末及びペレットの形態)及び液体(特に、水溶液又は非水溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル、及びこれらを充填したカプセル)、以上全て経口用途;直腸投与のための座薬;並びに、非経口用途の滅菌注射液;が含まれる。このような医薬組成物及びそれらの単位剤形は、さらなる活性化合物又は活性成分と共に、又はこれら無しで、通常の成分を通常の比率で含んでいてよく、このような単位剤形は、用いられる1日当たりの計画投薬量範囲に対応する適切な有効量の活性成分を含み得る。
【0062】
本発明の化合物は様々な経口及び非経口剤形として投与できる。以下の剤形が、活性成分として、本発明の化合物、又は本発明の化合物の薬学的に許容される塩のいずれかを含み得ることは当業者には明白であろう。
【0063】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するために、薬学的に許容される担体は固体であっても液体であってもよい。固体状の調合薬(preparation)には、粉末、錠剤、ピル、カプセル、カシェー、座薬、及び水和性顆粒(dispersible granules)が含まれる。固体担体は、希釈剤、風味剤、可溶化剤、滑剤、懸濁剤、バインダー、保存剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料としてもまた機能し得る物質の1つ又は複数であり得る。
【0064】
粉末では、担体は細かく砕かれた固体であり、この固体が、細かく砕かれた活性成分と混合されている。
【0065】
錠剤では、活性成分は、必要な結合能力を有する担体と適切な比率で混合され、所望の形状と大きさに固められている。
【0066】
粉末及び錠剤は、好ましくは、5乃至10から約70パーセントの活性化合物を含む。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどである。「調合薬」という用語には、活性化合物と、カプセル(この中に、活性成分が、複数の担体と共に、又はそれら無しで、ある担体によって囲まれており、こうしてその担体は活性成分と結び付いている)を提供する担体としてのカプセル化材料との製剤が含まれると想定されている。同様に、カシェー及びドロップ(lozenge)が含まれる。錠剤、粉末、カプセル、ピル、カシェー、及びドロップは、経口投与に適する固体の形態として用いることができる。
【0067】
座薬を調製するには、最初に、低融点ワックス(例えば、脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物)が融解され、例えば攪拌によって活性成分がそれに均一に分散される。次いで、均一な溶融混合物は、使いやすい大きさになったモールドに注がれ、放冷されて固化する。
【0068】
経膣投与に適する組成物は、活性成分に加えて、当技術分野において適切であることが知られている担体を含む、膣座薬(pessary)、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム(foam)又はスプレーとして提供され得る。
【0069】
液体調合薬には、溶液、懸濁液、及びエマルジョン、例えば、水溶液、又は水−プロピレングリコール溶液が含まれる。例えば、非経口注射液調合薬は、ポリエチレングリコール水溶液に溶液として製剤化され得る。
【0070】
このように、本発明による化合物は、非経口投与(例えば、注射(例えば、ボーラス注射)又は連続注入による)のために製剤化でき、アンプル、充填済み注射器、小容量注入液として単位用量の形態で、或いは、保存剤が添加された複数回使用(multi−dose)容器として、提供され得る。これらの組成物は、油性又は水性媒体中の懸濁液、溶液、又はエマルジョンのような形態を取ることができ、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤のような製剤機能剤を含み得る。別法として、活性成分は、適切な媒体(例えば、滅菌したパイロジェンフリー水)により使用前に溶解される粉末の形態(滅菌固体の無菌分離によって、又は溶液からの凍結乾燥によって得られる)になっていてもよい。
【0071】
経口使用に適する水溶液は、活性成分を水に溶かし、望まれる場合には、適切な着色剤、風味剤、安定剤及び増粘剤を加えることによって調製できる。
【0072】
経口使用に適する水性懸濁剤は、細かく砕かれた活性成分を、粘性のある材料(例えば、天然又は合成ゴム、レジン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、或いは他のよく知られた懸濁剤と共に水に分散させることによって製造できる。
【0073】
やはり含まれるのは、使用の直前に経口投与のための液体状調合薬に変換することを意図した、固体状の調合薬である。このような液体の形態には、溶液、懸濁液、及びエマルジョンが含まれる。活性成分以外に、このような調合薬は、着色剤、風味剤、安定剤、緩衝剤、人工及び天然の甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含み得る。
【0074】
表皮への局所投与では、本発明の化合物は、軟膏、クリーム又はローションとして、或いは経皮パッチとして製剤化できる。軟膏及びクリームは、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤を添加して水性又は油性ベースにより製剤化できる。ローションは水性又は油性ベースにより製剤化でき、一般に、乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は着色剤の1つ又は複数もまた含むであろう。
【0075】
口内への局所投与に適する組成物には、風味付けされたベース(通常、スクロース及びアカシア又はトラガカント)に活性剤を含むドロップ;不活性ベース(例えば、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア)に活性成分を含むトローチ(pastille);及び、適切な液体担体に活性成分を含むマウスウォッシュ;が含まれる。
【0076】
溶液又は懸濁液は、通常の手段(例えば、スポイト(dropper)、ピペット又はスプレー)によって鼻腔に直接付けられる。これらの組成物は1回使用分又は複数回使用の形で提供され得る。
【0077】
気道への投与もまた、エアロゾル製剤によって実現でき、この製剤では、活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロテトラフルオロエタン)、二酸化炭素、或いは他の適切なガスのような適切な圧縮不活性ガスにより加圧されたパックとして提供される。エアロゾルは、使用しやすいように、レシチンのような界面活性剤を含んでいてもよい。薬剤の用量は、計量バルブを備えることによって制御できる。
【0078】
別法として、活性成分は乾燥粉末の形態で、例えば、本発明の化合物と適切な粉末ベース(例えば、ラクトース、デンプン、ヒドロキシメチルセルロースのようなデンプン誘導体、及びポリビニルピロリドン(PVP))との粉末混合物として提供されてもよい。都合よくは、粉末担体は、鼻腔においてゲルを生成するであろう。例えば、この粉末組成物は、例えばゼラチンのカプセル又はカートリッジとして、或いは吸引器により粉末がそれから投与され得るブリスターパックとして単位用量の形態で提供され得る。
【0079】
鼻腔内組成物を含めて、気道への投与を意図する組成物では、本発明の化合物は一般に、例えば5ミクロン以下の程度の小さな粒径を有するであろう。このような粒径は、当技術分野において知られている手段、例えば、微粉化(micronization)によって得ることができる。
【0080】
望まれる場合、活性成分を徐放させるようにした組成物が用いられてもよい。
【0081】
本発明の医薬調合薬は、好ましくは、単位剤形になっている。このような形態においては、調合薬は、適量の活性成分を含む単位用量にさらに分割されている。単位剤形はパッケージ化調合薬であってよく、このパッケージが多数の個別の調合薬を含む(例えば、パッケージ化された、錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプル内粉末)。また、単位剤形が、カプセル、錠剤、カシェー、又はドロップ自体であってもよく、或いは、それは、パッケージ化された形での、適当な数のこれらのいずれかであってもよい。
【0082】
経口投与のための錠剤又はカプセルと、静脈内投与及び連続注入のための液体とが、好ましい組成物である。
【0083】
製剤及び投与の技術のさらなる詳細は、「レミントンの医薬科学」(Remington’s Pharmaceutical Sciences)(Maack Publishing Co.、Easton、ペンシルベニア州)の最新版に見出すことができる。
【0084】
治療に有効な用量は、症状又は状態を改善する、活性成分の量を表す。治療の有効性及び毒性(例えばED50及びLD50)は、細胞培養又は実験動物での標準的な薬理学的手順によって求めることができる。治療効果と毒性効果の間の用量比は治療係数であり、LD50/ED50によって表すことができる。大きな治療係数を示す医薬組成物が好ましい。
【0085】
言うまでもなく、投与される用量は、治療を受けている個体の年齢、体重及び状態、さらには、投与経路、剤形及びレジメン、並びに望まれる結果に合わせて、注意深く調節されなければならず、当然、正確な投薬量は専門医によって決められるべきである。
【0086】
実際の投薬量は、治療されている疾患の性質及び重篤度に応じて決まり、医師の裁量に委ねられ、所望の治療効果を得るように、本発明での特定の状況に対して、投薬量の漸増法(titration)によって変更され得る。しかし、個々の投薬当たり、約0.1から約500mg、好ましくは、約1から約100mg、最も好ましくは、約1から約10mgの活性成分を含む医薬組成物が治療処置にとって適切であると、現時点では想定される。
【0087】
活性成分は、1日当たり1回又は数回の投薬として投与され得る。特定の事例において、満足な結果は、0.1μg/kg i.v.及び1μg/kg p.o.のように少ない投薬量で得ることができる。投薬量範囲の上限は、約10mg/kg i.v.及び100mg/kg p.o.であると現時点では考えられている。好ましい範囲は約0.1μg/kgから約10mg/kg/日 i.v.、及び、約1μg/kgから約100mg/kg/日 p.o.である。
【0088】
治療方法
別の態様において、本発明は、ヒトを含めての動物の生体の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は軽減のための方法を提供し、この疾患、障害又は状態は、中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質の再取り込みの阻害に応答し、この方法は、本発明の化合物の有効量を、それを必要としている、このようなヒトを含めての動物の生体に投与することを含む。
【0089】
適切な投薬量範囲は、通常の通り、投与の正確な方式、投与される形態、投与が対象とする徴候、当の被治療動物、及び当の被治療動物の体重、さらに担当の医師又は獣医の選択と経験に応じて、1日当たり0.1から1000ミリグラム、1日当たり10〜500ミリグラム、特に、1日当たり30〜100ミリグラムであると現時点では想定されている。
【実施例】
【0090】
本発明がさらに、以下の実施例を参照して例示されるが、実施例は本発明の請求範囲をいかなる仕方においても限定しようとするものではない。
【0091】
一般的な事柄:空気に弱い試薬又は中間体が含まれる全ての反応は、窒素又はアルゴンの下で、無水溶媒中で実施した。
【0092】
9−オキソ−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカ−7−エン−3−カルボン酸ベンジルエステル
Pandey,A.et al.,Bioorg Med.Chem.Lett.11,2001,1293−1296、に従って調製した。
【0093】
9−オキソ−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステル
9−オキソ−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカ−7−エン−3−カルボン酸ベンジルエステル(6.22g、20.8mmol)、二炭酸ジ−tert−ブチル(6.81g、31.2mmol)及び炭酸カリウム(5.75g、41.6mmol)のエタノール/水(9:1、200mL)溶液に、パラジウム/カーボン(221mg、2.08mmol)を加え、混合物を水素雰囲気下に一夜攪拌した。混合物をセライトで濾過し、セライトパッドをエタノール及び酢酸エチルにより洗った。濾液を蒸発乾固し、酢酸エチル及び水に再溶解した。水性相を酢酸エチルにより2回抽出した。合わせた有機相を塩水により洗い、乾燥し(硫酸ナトリウム)、濾過し、蒸発させて無色のオイルを得た。フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル 3:1→1:1)により、2.83g(51%)の9−オキソ−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tertブチルエステルを得た。
【0094】
9−ヒドロキシ−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tertブチルエステル
メタノール(40mL)中、9−オキソ−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステル(1g、3.74mmol)及び塩化セリウム(III)七水和物(1.39g、3.74mmol)を−78℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(141mg、3.74mmol)を4回に分けて加えた。混合物を、−20℃まで昇温し、30分間攪拌した。水を加え、混合物を真空濃縮した。水性相を酢酸エチルにより3回抽出した。合わせた有機相を塩水により洗い、乾燥し(硫酸ナトリウム)、濾過し、蒸発させて、883mg(88%)の9−ヒドロキシ−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステルを無色のオイルとして得た。
【0095】
方法A
9−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカントリフルオロ酢酸塩
ジエチルエーテル(2mL)中のアゾジカルボン酸ジイソプロピル(315mg、1.56mmol)を、トリフェニルホスフィン(582mg、2.22mmol)の氷冷したジエチルエーテル(5mL)溶液にゆっくりと加えた。反応混合物を20分間攪拌した。ジエチルエーテル(2mL)中の3,4−ジクロロフェノール(290mg、1.78mmol)を加え、0℃で30分間攪拌し、ジエチルエーテル(5mL)中の9−ヒドロキシ−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステル(400mg、1.48mmol)を加え、混合物を室温で一夜攪拌した。蒸発の後、フラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル 9:1)により、340mg(56%)の9−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステルを得た。
【0096】
9−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステル(340mg、0.82mmol)をジクロロメタン(8mL)に溶かし、氷浴で冷却した。トリフルオロ酢酸(2mL)を加え、室温で2時間攪拌した。蒸発の後、トルエン及び酢酸エチルとの共蒸発(co−evaporation)により、固体化合物を得た。この化合物をジエチルエーテルにより洗って、222mg(63%)の9−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカントリフルオロ酢酸塩を白色結晶化合物として得た。Mp.139.6〜141.2℃。
【0097】
9−(6−メトキシ−ナフタレン−2−イルオキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン
方法Aに従って、6−メトキシ−2−ナフトール及び9−ヒドロキシ−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステルから調製した。Mp.111.8〜113.5℃。
【0098】
7−(3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカ−9−イルオキシ)−クロメン−2−オン
方法Aに従って、7−ヒドロキシクマリン及び9−ヒドロキシ−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステルから調製した。Mp.126〜128℃。
【0099】
9−(3−ブロモ−4−クロロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン
方法Aに従って調製される。
【0100】
9−(4−クロロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン
方法Aに従って、4−クロロフェノール及び9−ヒドロキシ−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステルから調製した。Mp.140〜142℃。
【0101】
9−(4−クロロ−3−フルオロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン
方法Aに従って調製される。
【0102】
9−(3−クロロ−4−フルオロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン
方法Aに従って調製される。
【0103】
9−(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン
方法Aに従って調製される。
【0104】
9−(ナフタレン−2−イルオキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン
方法Aに従って、2−ナフトール及び9−ヒドロキシ−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステルから調製した。Mp.132.2〜133.8℃。
【0105】
6−(3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−9−イルオキシ)−クロメン−2−オン
方法Aに従って、6−ヒドロキシクマリン及び9−ヒドロキシ−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステルから調製した。Mp.192.9〜193.6℃。
【0106】
(3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカ−9−イル)−(3,4−ジクロロ−フェニル)−アミン
3,4−ジクロロアニリン(364mg、2.2mmol)、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(889mg、4.20mmol)及び酢酸(0.24mL、4.20mmol)を、9−オキソ−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステル(561mg、2.10mmol)の1,2−ジクロロエタン(30mL)溶液に、砕いた4Aモレキュラーシーブ(10g)と共に加えた。混合物を室温で一夜攪拌した。さらなる4Aモレキュラーシーブ(12g)及びナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(445mg)を加え、混合物を一夜攪拌した。反応を水により停止し、5%のクエン酸を加えた。混合物を珪藻土により濾過し、濾液を、水性相だけが残るまで蒸発させた。水性相を酢酸エチル(3×50mL)により抽出し、合わせた有機相を塩水により洗い、硫酸ナトリウムにより乾燥し、濾過し、蒸発させて、粗生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)により、9−(3,4−ジクロロ−フェニルアミノ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステル(258mg、0.624mmol,30%)を得た。
【0107】
9−(3,4−ジクロロ−フェニルアミノ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステル(258mg、0.624mmol)の氷冷したジクロロメタン(10mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(4mL)のジクロロメタン(5mL)溶液を加えた。混合物を室温で一夜攪拌した。水を加え、その後、水酸化ナトリウム(3M)をpH9〜10になるまで加えた。水性相をジクロロメタン(4×40mL)により抽出した。合わせた有機相を塩水により洗い、硫酸ナトリウムにより乾燥し、蒸発させて、(3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカ−9−イル)−(3,4−ジクロロ−フェニル)−アミン(164mg、84%)を、茶色味を帯びた固体として得た。Mp.128〜132℃。
【0108】
9−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−3−メチル−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン
9−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン−3−カルボン酸tert−ブチルエステル(60mg、0.19mmol)の氷冷したジクロロエタン(10mL)溶液に、ホルムアルデヒド(37%水溶液、54μL、0.72mmol)を加え、0℃で1時間攪拌した。ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(102mg、0.48mmol)を加え、室温で一夜攪拌した。反応を炭酸水素ナトリウム水溶液により停止し、蒸発させた。残った水性相をジクロロメタンにより4回抽出し、合わせた有機相を乾燥し(硫酸ナトリウム)、濾過し、蒸発させて、75mg(95%)の9−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−3−メチル−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカンを、黄色のオイルとして得た。[M+H]+のLC−ESI−HRMSは328.1249Daを示す。Calc.328.123495Da、違いは4.3ppm。
【0109】
試験例
in vivoでの阻害活性
相当な数の化合物を、WO 97/16451に記載されているようにして、シナプトソームへの、モノアミン神経伝達物質のドーパミン(DA)、ノルアドレナリン(NA)及びセロトニン(5−HT)の再取り込みを阻害するそれらの能力について試験した。
【0110】
試験値は、IC50H−DA、H−NA、又はH−5−HTの特異的結合を50%だけ阻害する、試験物質の濃度(μM))として与えられる。
【0111】
選ばれた本発明の化合物を試験することによって得た試験結果は、下の表から明らかである。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】


[式中、
は、水素又はアルキルを表し;
このアルキルは、
ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル及びアルキニル
からなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基により任意選択で置換されており;
はアリール又はヘテロアリール基を表し、
このアリール又はヘテロアリール基は、
ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルコキシアルキル、シクロアルコキシアルキル、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルケニル、アルキニル、−NR’R”、−(C=O)NR’R”又は−NR’(C=O)R”
からなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基により任意選択で置換されており、
R’及びR”は互いに独立に、水素又はアルキルであり;
Xは−O−又は−NR−を表し;
は水素又はアルキルを表す]
、その任意の異性体又はその異性体の任意の混合物、或いは薬学的に許容されるこれらの塩。
【請求項2】
が水素又はアルキルを表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がフェニル基を表し、このフェニル基が、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ及びアルコキシからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基により任意選択で置換されている、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
がフェニル基を表し、このフェニル基が、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ及びアルコキシからなる群から独立に選択される置換基により1回又は2回置換されている、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
がナフチル基を表し、このナフチル基が、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ及びアルコキシからなる群から独立に選択される1つ又は複数の置換基により任意選択で置換されている、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
が、任意選択で置換されているクマリニル基を表す、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】
Xが、−O−又は−NH−を表す、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
9−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
9−(6−メトキシ−ナフタレン−2−イルオキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
7−(3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカ−9−イルオキシ)−クロメン−2−オン;
9−(3−ブロモ−4−クロロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
9−(4−クロロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
9−(4−クロロ−3−フルオロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
9−(3−クロロ−4−フルオロ−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
9−(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェノキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
9−(ナフタレン−2−イルオキシ)−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
6−(3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカ−9−イルオキシ)−クロメン−2−オン;
(3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカ−9−イル)−(3,4−ジクロロ−フェニル)−アミン;
9−(3,4−ジクロロ−フェノキシ)−3−メチル−3−アザ−スピロ[5.5]ウンデカン;
又は薬学的に許容されるこれらの塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の化合物、その任意の異性体又はその異性体の任意の混合物、或いは薬学的に許容されるこれらの塩の治療有効量を、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と一緒に含む医薬組成物。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれかに記載の化合物、その任意の異性体又はその異性体の任意の混合物、或いは薬学的に許容されるこれらの塩の、医薬の製造のための使用。
【請求項11】
ヒトを含めての哺乳動物の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は軽減のための医薬組成物の製造のための請求項10に記載の使用であって、この疾患、障害又は状態が中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取り込みの阻害に応答する、上記使用。
【請求項12】
前記疾患、障害又は状態が気分障害、鬱病、非定型鬱病、鬱病併発疼痛、大鬱病性障害、気分変調性障害、双極性障害、双極I型障害、双極II型障害、気分循環性障害、一般身体疾患による気分障害、物質誘発性気分障害、仮性認知症、ガンゼル症候群、強迫性障害、パニック障害、広場恐怖症を伴わないパニック障害、広場恐怖症を伴うパニック障害、パニック障害の病歴のない広場恐怖症、パニック発作、記憶障害、記憶喪失、注意欠陥多動性障害、肥満、不安、全般性不安障害、摂食障害、パーキンソン病、パーキンソン症候群、認知症、老化による認知症、老年認知症、アルツハイマー病、後天性免疫不全症候群認知症複合、加齢による記憶障害、特定恐怖症、社会恐怖症、社会不安障害、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、薬物依存症、薬物乱用、コカインの乱用、ニコチンの乱用、タバコの乱用、アルコール依存症、アルコール中毒、窃盗症、疼痛、慢性疼痛、炎症性疼痛、神経因性疼痛、偏頭痛、緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛、鬱病に伴う疼痛、線維筋痛症、関節炎、変形性関節炎、関節リウマチ、背部痛、癌性疼痛、過敏性腸疼痛、過敏性腸症候群、術後疼痛、乳房切除後疼痛症候群(PMPS)、卒中後痛、薬物誘発性神経障害、糖尿病性神経障害、交感神経依存性疼痛、三叉神経痛、歯痛、顔面筋疼痛、幻肢痛、大食症、月経前症候群、月経前不快気分障害、黄体期後期症候群、外傷後症候群、慢性疲労症候群、尿失禁、ストレス尿失禁、切迫性尿失禁、夜間失禁、性機能障害、早漏、勃起困難、勃起障害、早すぎる女性のオルガスム、不穏下肢症候群、周期性四肢運動障害、摂食障害、神経性食欲不振症、睡眠障害、広汎性発達障害、自閉症、アスペルガー障害、レット障害、小児期崩壊性障害、学習障害、運動能力障害、緘黙症、抜毛癖、ナルコレプシー、脳卒中後鬱病、卒中誘発脳損傷、卒中誘発ニューロン損傷、ジルドラトゥレット病、耳鳴り、チック障害、身体醜形障害、反抗挑戦性障害又は卒中後能力低下である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
ヒトを含めての動物の生体の疾患又は障害又は状態の治療、予防又は軽減のための方法であって、この障害、疾患又は状態が中枢神経系におけるモノアミン神経伝達物質再取り込みの阻害に応答し、請求項1から8までのいずれか一項に記載の化合物、その任意の異性体又はその異性体の任意の混合物、或いは薬学的に許容されるこれらの塩の治療有効量を、それを必要としている、このような動物の生体に投与するステップを含む上記方法。

【公表番号】特表2008−546828(P2008−546828A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518826(P2008−518826)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063634
【国際公開番号】WO2007/000465
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】