説明

新規な3−アミド−ピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H,4H,6H)カルバルデヒド誘導体

本発明は、X、R、R、R、R、R、R、RおよびRが上で規定したとおりである式(I)の化合物および薬学的に許容できる塩に関する。本発明はさらに、化合物および薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物、ならびに真性糖尿病および(特に糖尿病性網膜症、腎症、またはニューロパチーを含めた)その合併症、癌、虚血、炎症、中枢神経系障害、心血管疾患、アルツハイマー病、皮膚科疾患pression、ウイルス性疾患、炎症性障害、または肝臓が標的器官である疾患の治療方法に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年4月12日出願の米国仮特許出願第60/911,462号、2008年3月11日出願の米国仮特許出願第61/035,519号、および2008年3月27日出願の米国仮特許出願第61/040,115号の利益を主張するものであり、これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、新規な化合物、その化合物を含む医薬組成物、ならびにその化合物の医学での使用、およびヒトプロテインキナーゼC酵素、特にβIIアイソフォーム(pkcβII)に作用する医薬を調製するための使用に関する。
【背景技術】
【0003】
プロテインキナーゼC(PKC)は、脂質によって活性化されるSer/Thrキナーゼの一スーパーファミリーであり、複数のシグナル伝達経路に関与する。13種のPKCアイソフォームが同定されており、ジアシルグリセロール、リン脂質、カルシウムなどの細胞シグナル伝達分子によるその調節に従って分類される。プロテインキナーゼCアイソザイムのα、β(2種のスプライスバリアントPKCβIおよびPKCβII)、およびγが完全に活性化されるには、膜リン脂質、カルシウム、およびジアシルグリセロールホルボールエステルが必要である。δ、ε、ηおよびθ型のPKCは、その活性化の方式がカルシウムと無関係である。ζおよびλ型のPKCは、カルシウムとジアシルグリセロールのどちらともにも依存せず、その活性化には膜リン脂質のみが必要であると考えられている。
【0004】
PKCアイソフォームが組織特異的に発現および活性化されることは、個々のPKCアイソフォームが潜在的な治療ターゲットとなる可能性を示唆している。糖尿病については、糖尿病動物の組織においてPKC−βが活性化されることが実証されており、高血糖状態に関連する微小血管の異常の出現と関係付けられている。日本人のII型糖尿病患者において、PKCβ遺伝子の上流の5’フランキング領域で遺伝的多型が確認されている。このPKCβの遺伝的変異は、糖尿病性血管合併症、および冠動脈心疾患などの大血管疾患を発症する感受性の有意な増大と関連付けられている。
【0005】
Joslin Diabetes Centerでの大規模な症例対照研究では、PKCβプロモーター領域で、I型糖尿病(期間<24年)と関連しており、糖尿病性腎症発症のリスクがより高い追加の多型が確認された。糖尿病動物モデルにおけるメシル酸ルボキシスタウリン(LY333531、Lilly)などのPKCβ阻害剤の投与は、糖尿病性腎症、糖尿病性末梢神経障害、および糖尿病性網膜症に関連する血行力学的変化および血管の損傷を予防または緩和させることがわかっている。Way,K.J.ら、Diabet.Med.第18巻:945〜959ページ(2001年);Vinik,A.、Expert Opin.Investig.Drugs第14巻:1547〜1559ページ(2005年)。糖尿病および糖尿病性微小血管合併症の治療に向けたメシル酸ルボキシスタウリンの第II相および第III相臨床試験からの追加のデータと合わせて、PKCβが、糖尿病合併症のため、また潜在的治療薬としての選択的PKCβ阻害剤の開発のための分子標的として機能し得るという理論的根拠を裏付ける証拠は揃っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の化合物は、プロテインキナーゼCβII阻害剤であり、したがって真性糖尿病およびその合併症、癌、虚血、炎症、中枢神経系障害、心血管疾患、ならびに皮膚科疾患に関連する状態の治療において有用であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、式(I)の化合物または薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物を対象とする。
【0008】
【化1】

式中、
Xは、CまたはNであり、
は、アリールまたは
【0009】
【化2】

から選択され、環Aは、Zを含んでいる5〜6員ヘテロシクリルであり、Zは、結合点に隣接するO、SまたはNヘテロ原子であり、Rは、0〜3個のR基でさらに置換されていてもよく、R基の2つが、環化して、これが結合しているアリールまたはヘテロシクリルに縮合した、アリールまたはNもしくはSを含んでいる5〜6員ヘテロシクリル環を形成していてもよく、
は、0〜3個のR基でさらに置換されていてもよいHまたはC〜Cアルキルであり、
は、環上の任意の不飽和の炭素に結合していてよく、H、C〜Cアルキルもしくはハロゲン化物、またはペルフルオロアルキルから選択され、
およびRは、H、R−O−R、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、−(R−(C〜C12シクロアルキル)、−(R−アリール、−(R−(3〜15員ヘテロシクリル)、−(R−(C〜Cペルフルオロアルキル)、−(R−ハロゲン化物、−(R−CN、−(R−C(O)R、−(R−C(O)OR、−(R−C(O)NR、−(R−OR、−(R−OC(O)R、−(R−OC(O)NR、−(R−O−S(O)R、−(R−OS(O)、−(R−OS(O)NR、−(R−OS(O)NR、−(R−NO、−(R−NR、−(R−N(R)C(O)R、−(R−N(R)C(O)OR、−(R−N(R)C(O)NR、−(R−N(R)S(O)、−(R−N(R)S(O)R、−(R−SR、−(R−S(O)R、−(R−S(O)、−(R−S(O)NR、−(R−S(O)NR、−(R−O−(R−NR、または−(R−NR−(R)−ORからそれぞれ独立に選択され、またはRおよびRは、一緒に環化して、3〜5員スピロシクロアルキルを形成していてもよく、前記C〜C12シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールのいずれかは、0〜3個のR基によってそれぞれ独立にさらに置換されていてもよく、
は、H、R−O−R、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、−(R−(C〜C12シクロアルキル)、−(R−アリール、−(R−(3〜15員ヘテロシクリル)、−(R−(C〜Cペルフルオロアルキル)、−(R−ハロゲン化物、−(R−CN、−(R−C(O)R、−(R−C(O)OR、−(R−C(O)NR、−(R−OR、−(R−OC(O)R、−(R−OC(O)NR、−(R−O−S(O)R、−(R−OS(O)、−(R−OS(O)NR、−(R−OS(O)NR、−(R−NO、−(R−NR、−(R−N(R)C(O)R、−(R−N(R)C(O)OR、−(R−N(R)C(O)NR、−(R−N(R)S(O)、−(R−N(R)S(O)R、−(R−SR、−(R−S(O)R、−(R−S(O)、−(R−S(O)NR、−(R−S(O)NR、−(R−O−(R−NR、または−(R−NR−(R)−ORから選択され、またはRは、Rと一緒になって環化して、これらが結合しているピペラジンまたはピペラジンに縮合した4〜7員ヘテロシクリル環を形成していてもよく、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、およびヘテロアリールのいずれかは、0〜3個のR基でそれぞれ独立にさらに置換されていてもよく、
各RおよびRは、それぞれ独立にC〜Cアルキルであり、または一緒に環化して、シクロプロピルまたはシクロブチルを形成することもでき、
各Rは、H、R−O−R、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、−(R−(C〜C12シクロアルキル)、−(R−アリール、−(R−(3〜15員ヘテロシクリル)、−(R−(C〜Cペルフルオロアルキル)、−(R−ハロゲン化物、−(R−CN、−(R−C(O)R、−(R−C(O)OR、−(R−C(O)NR、−(R−OR、−(R−OC(O)R、−(R−OC(O)NR、−(R−O−S(O)R、−(R−OS(O)、−(R−OS(O)NR、−(R−OS(O)NR、−(R−NO、−(R−NR、−(R−N(R)C(O)R、−(R−N(R)C(O)OR、−(R−N(R)C(O)NR、−(R−N(R)S(O)、−(R−N(R)S(O)R、−(R−SR、−(R−S(O)R、−(R−S(O)、−(R−S(O)NR、−(R−S(O)NR、−(R−O−(R−NR、または−(R−NR−(R)−ORからそれぞれ独立に選択され、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、R、R、C〜C12シクロアルキル、アリール、または3〜15員ヘテロシクリルのいずれかは、−ハロゲン化物、C〜Cアルキル、C〜Cペルフルオロアルキル、C〜Cアルコキシル、C〜Cアルキルアミノ、CN、またはオキソから選択される1〜3個の基によってそれぞれ独立にさらに置換されていてもよく、
各R、RおよびRは、H、C〜Cペルフルオロアルキル、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、−(C〜Cアルキレン)−(C〜Cシクロアルキル)、−(C〜Cアルキレン)−(C〜Cシクロアルケニル)、C〜Cアルキニル、−(C〜Cアルキレン)−アリール、または−(C〜Cアルキレン)−(3〜8員ヘテロシクリル)からそれぞれ独立に選択され、また各R、RおよびRは、ハロゲン化物、ヒドロキシル、−CN、C〜Cアルキル、C〜Cペルフルオロアルキル、C〜Cアルコキシル、およびC〜Cアルキルアミノから選択される0〜3個の基によってそれぞれ独立にさらに置換されていてもよく、またはRおよびRは、同じ窒素に連結しているとき、−(3〜8員ヘテロシクリル)を形成していてもよく、前記環は、ハロゲン化物、ヒドロキシル、−CN、C〜Cアルキル、C〜Cペルフルオロアルキル、C〜Cアルコキシル、またはC〜Cアルキルアミノから選択される0〜3個の基によってさらに置換されていてもよく、
各RおよびRは、それぞれ独立に、−(C〜Cアルキレン)−、−(C〜Cアルケニレン)−、または−(C〜Cアルキニレン)−であり、
各mは、それぞれ独立に0または1であり、
ただし、R、R、RおよびRは、すべてがHにはならない。
【0010】
本発明の一実施形態では、RおよびRは両方ともメチルである。
【0011】
本発明の別の実施形態では、XはNである。本発明の代替実施形態では、XはCであり、Rに結合している
【0012】
本発明の一実施形態では、ZはNである。
【0013】
本発明のさらにまた別の実施形態では、Rはフルオロである。本発明の代替実施形態では、RはHであり、R、RまたはRの少なくとも1つはC〜Cアルキルである。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態では、Rはアリールである。本発明の代替実施形態では、Rはピリジンである。
【0015】
本発明の一実施形態では、RまたはRはメチルである。
【0016】
本発明の別の実施形態では、Rは、Rと一緒になって環化して、これらが結合しているピペラジンに縮合した4〜7員ヘテロシクリル環を形成しており、前記ヘテロシクリルは、それぞれ独立にさらに置換されていてもよい。
【0017】
Xxx
別の実施形態では、Rは6員ヘテロシクリルである。この実施形態の別の態様では、Rはピリジンまたはピペラジンである。
【0018】
別の実施形態では、Rは5員ヘテロシクリルである。この実施形態の別の態様では、Rは、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、またはイミダゾールからなる群から選択される。
【0019】
別の実施形態では、RまたはRはメチルである。
【0020】
別の実施形態では、Rは−(R−(3〜15員ヘテロシクリル)である。この実施形態の別の態様では、Rは−(Rテトラヒドロピランである。この実施形態のさらに別の態様では、Rはテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチルである。
【0021】
代替実施形態では、Rは−(R−ORである。
【0022】
別の実施形態では、Rは、(S)立体配置の−CHである。この実施形態の別の態様では、Rは−(C〜Cアルキレン)−であり、RはHまたはメチルである。
【0023】
本発明は、以下の化合物または薬学的に許容できるその塩を包含する。
N−(5−((2R,5S)−2,5−ジメチル−1−((テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル)ピペラジン−4−カルボニル)−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)ピコリンアミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−5−フルオロピリジン−2−カルボキサミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−5−エチルイソキサゾール−3−カルボキサミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−2,4−ジメチル−1,3−オキサゾール−5−カルボキサミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−2−メチル−1,3−チアゾール−4−カルボキサミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−2−エチル−4−メチル−1,3−オキサゾール−5−カルボキサミド、
1−シクロブチル−N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−1−イソプロピル−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−2−エチル−1,3−オキサゾール−4−カルボキサミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−5−モルホリン−4−イルピリジン−2−カルボキサミド、および
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボキサミド。
【0024】
本発明はさらに、有効量の前記請求項のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物を対象とする。
【0025】
本発明はさらに、真性糖尿病およびその合併症、癌、虚血、炎症、中枢神経系障害、心血管疾患、アルツハイマー病、皮膚科疾患pression、ウイルス性疾患、炎症性障害、または肝臓が標的臓器である疾患の治療方法であって、哺乳動物に有効量の上記式Iの化合物または薬学的に許容できるその塩を投与することを含む方法を包含する。本発明の別の態様では、治療方法は、眼科合併症を対象とする。本発明のさらに別の態様では、糖尿病合併症は、(糖尿病性黄斑浮腫を含めた)糖尿病性網膜症、腎症、およびニューロパチーを含む。
【0026】
定義
本明細書では、「含む」および「含める」という用語は、そのオープンな、非限定的な意味で使用する。
【0027】
「アルキル」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、直鎖状または分枝状の部分を有する飽和した一価の炭化水素基を包含する。
【0028】
「アルケニル」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有するアルキル部分を包含し、アルキルは上で定義したとおりであり、前記アルケニル部分のEおよびZ異性体を含める。
【0029】
「アルキニル」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有するアルキル部分を包含し、アルキルは上で定義したとおりである。
【0030】
「アルコキシ」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、O−アルキル基を包含し、アルキルは上で定義したとおりである。
【0031】
「アミノ」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、−NH基、およびN原子の任意の置換を包含するものとする。
【0032】
「ハロゲン」および「ハロ」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、塩素、フッ素、臭素、またはヨウ素を表す。
【0033】
「トリフルオロメチル」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、−CF基を表すものである。
【0034】
「ペルフルオロアルキル」という用語は、本明細書では、炭素に結合しているすべての水素がフッ素によって置換されているアルキル基、例えば、CF、CF−CF、C(CF)(CF)等々を表すものである。
【0035】
「トリフルオロメトキシ」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、−OCF基を表すものである。
【0036】
「シアノ」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、−CN基を表すものである。
【0037】
「CHCl」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、ジクロロメタンを表すものである。
【0038】
「C〜C12シクロアルキル」または「C〜Cシクロアルキル」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、それぞれ合計3〜12個の炭素原子または5〜8個の環炭素原子を含んでいる、非芳香族の、飽和または部分的に飽和した、単環式、または縮合、スピロ、もしくは非縮合の二環式もしくは三環式の、本明細書で言及する炭化水素を指す。好例となるシクロアルキルとして、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチルなどの、3〜10個の炭素原子を有する環が挙げられる。シクロアルキルの実例は、その限りでないが、以下のものから誘導される。
【0039】
【化3】

【0040】
「アリール」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、フェニルやナフチルなどの、芳香族炭化水素から1個の水素が除去されて誘導される有機の基を包含する。
【0041】
「(3〜15)員ヘテロシクリル」、「(3〜8)員ヘテロシクリル」、「(6〜10)員ヘテロシクリル」、または「(4〜10)員ヘテロシクリル」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、それぞれがO、SおよびNから選択される1個〜4個のヘテロ原子を含んでいる芳香族および非芳香族の複素環基を包含し、各複素環基は、その環系中にそれぞれ3〜15個、3〜8個、6〜10個、または4〜10個の原子を有し、ただし、前記基の環は、2個の隣接するOまたはS原子を含んではいない。非芳香族の複素環基には、その環系中に原子を3個しかもっていない基を含めるが、芳香族の複素環基は、その環系中に少なくとも5個の原子をもっていなければならない。複素環基には、ベンゾ縮合した環系を含める。3員複素環基の例はアジリジンであり、4員複素環基の例は(アゼチジンから誘導される)アゼチジニルである。5員複素環基の例はチアゾリルであり、7員環の例はアゼピニルであり、10員複素環基の例はキノリニルである。非芳香族複素環基の例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H−インドリル、およびキノリジニルである。複素環には、単環式および多環式の芳香環構造が含まれ、「(5〜12)員ヘテロアリール」とは、その環系中に5〜12個の原子を有する複素環である構造を指す。「(5〜12)員ヘテロアリール」の例は、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、およびフロピリジニルである。前述の基は、上で挙げた基から誘導されるとき、それが可能な場合、C結合型でもN結合型でもよい。例えば、ピロールから誘導される基は、ピロール−1−イル(N結合型)でも、ピロール−3−イル(C結合型)でもよい。さらに、イミダゾールから誘導される基は、イミダゾール−1−イル(N結合型)でも、イミダゾール−3−イル(C結合型)でもよい。上述の複素環基では、任意の環炭素原子、硫黄原子、または窒素原子が環1つあたり1〜2個のオキソによって置換されていてもよい。2個の環炭素原子がオキソ部分で置換されている複素環基の例は、1,1−ジオキソ−チオモルホリニルである。4〜10員複素環の他の実例は、その限りでないが、以下のものから誘導される。
【0042】
【化4】

【0043】
「(12〜15)員ヘテロシクリル」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、部分的に縮合したまたはスピロ環式の立体配置であり、少なくとも1個のNと、場合により、それぞれがO、SおよびNから選択される追加の1〜5個のヘテロ原子とを含んでいる、芳香族および非芳香族の複素環基を包含し、この複素環基は、その環系中にそれぞれ12〜15個の原子を有し、ただし、前記基のどの環も、2個の隣接するO原子またはS原子を含んではいない。複素環基には、三環式縮合環系およびスピロ環系を含める。13員三環式複素環基の例は3,4−ジヒドロピラジノ[1,2−a]ベンゾイミダゾールであり、15員スピロ環式複素環基の例は3,4−ジヒドロ−1’H−スピロクロメンである。
【0044】
別段の指摘がない限り、「オキソ」という用語は=Oを指す。
【0045】
「溶媒和物」とは、その化合物の生物学的な有効性を保持している、指定の化合物の薬学的に許容できる溶媒和物形態を意味するものとする。溶媒和物の例として、本発明の化合物を水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO(ジメチルスルホキシド)、酢酸エチル、酢酸、またはエタノールアミンと組み合わせたものが挙げられる。
【0046】
「薬学的に許容できる塩」という表現は、本明細書では、別段の指摘がない限り、式Iの化合物中に存在し得る酸性または塩基性の基の塩を包含する。性質が塩基性である式Iの化合物は、様々な無機酸および有機酸と多種多様な塩を形成することができる。そのような塩基性の式Iの化合物の薬学的に許容できる酸付加塩を調製するのに使用することのできる酸は、非毒性の酸付加塩、すなわち、薬理学的に許容できるアニオンを含有する塩、例えば、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、エチルコハク酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド、および吉草酸塩を形成するものである。
【0047】
「治療する」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、この用語が適用される障害もしくは状態またはその障害もしくは状態の1つまたは複数の症状を逆転させ、緩和し、その進行を阻止し、または予防することを意味する。「治療」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、治療する行為を指し、「治療する」は直前で定義したとおりである。
【0048】
「治療有効量」という表現は、本明細書では、研究者、獣医師、医師、または他の者が求める、組織、系、動物、またはヒトの生物学的または医学的な応答を誘発する、薬物または医薬の量を指す。
【0049】
「置換されている」という用語は、指定の基または部分が1個または複数の置換基を有することを意味する。「無置換である」という用語は、指定の基が置換基を有していないことを意味する。「置換されていてもよい」という用語は、指定の基が、無置換であるか、または1個または複数の置換基によって置換されていることを意味する。
【0050】
慣例に従って、本明細書中の一部の構造式では、炭素原子およびその結合した水素原子を明確に示さず、例えば、
【0051】
【化5】

がメチル基を表し、
【0052】
【化6】

がエチル基を表し、
【0053】
【化7】

がシクロペンチル基を表すなどとする。慣例記号
【0054】
【化8】

は、化合物の残部への結合点を示し、慣例記号
【0055】
【化9】

は、別段の指摘がない限り、R置換基が、ここではシクロヘキシルとして示した所与の構造上の利用可能な原子のいずれかの箇所で結合し得ることを示す。特定の実施形態、すなわち
【0056】
【化10】

では、Rは、XがCであるならばXを含めて、複素環のヘテロ原子のいずれかの箇所で結合し得る。特定のピラゾロ中間体実施形態、すなわち
【0057】
【化11】

では、アシル基は、縮合ピラゾール環の2個の窒素のいずれかに結合し得る。
【0058】
特定の式Iの化合物は、不斉中心を有し、したがって異なる鏡像異性体の形で存在する場合もある。式Iの化合物のすべての光学異性体および立体異性体ならびにその混合物を、本発明の範囲内にあるとみなす。式Iの化合物に関して、本発明は、ラセミ化合物、1種または複数の鏡像異性体形態、1種または複数のジアステレオ異性体形態、またはその混合物の使用を包含する。式Iの化合物は、互変異性体として存在する場合もある。本発明は、そのようなすべての互変異性体およびその混合物の使用に関する。
【0059】
本発明の化合物内に含まれている特定の官能基は、生物学的に等価な基、すなわち、親基と同様の空間的または電気的な要件を有するが、物理化学的性質または他の性質が異なるまたは改善されている基の代わりに用いることができる。適切な例として、当業者によく知られており、Patiniら、Chem.Rev、1996年、第96巻、3147〜3176ページおよびその中に引用されている参考文献に記載されている部分が挙げられるがこの限りでない。
【0060】
本発明はまた、原子質量または質量数が自然界で通常認められる原子質量または質量数とは異なる原子によって1個または複数の原子が置換されていること以外は式Iで列挙したものと同一である、同位体標識された化合物も包含する。本発明の化合物に組み込むことのできる同位体の例には、それぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Clなどの、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、および塩素の同位体が含まれる。上述の同位体および/または他の原子の他の同位体を含んでいる本発明の化合物ならびに前記化合物の薬学的に許容できる塩または溶媒和物は、本発明の範囲内である。特定の同位体標識された本発明の化合物、例えば、Hや14Cなどの放射性同位体が組み込まれている本発明の化合物は、薬物および/または基質の組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化、すなわちH同位体、およびカーボン14、すなわち14C同位体は、調製しやすく、検出性が高いので特に好ましい。さらに、ジュウテリウム、すなわちHなどのより重い同位体で置換すると、代謝安定性がより高くなるために生じる一定の治療上の利点、例えば、in vivo半減期の延長または投与必要量の減少がもたらされる場合があり、したがってある状況において好ましい場合もある。その本発明の同位体標識された式Iの化合物は、一般に、同位体標識されていない試薬の代わりに容易に利用可能な同位体標識された試薬を用いることにより、スキームおよび/または以下の実施例で開示する手順を踏んで調製することができる。
【0061】
「mmol」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、ミリモルを意味するものとする。「当量」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、当量を意味するものとする。「mL」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、ミリリットルを意味するものとする。「U」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、単位を意味するものとする。「mm」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、ミリメートルを意味するものとする。「g」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、グラムを意味するものとする。「kg」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、キログラムを意味するものとする。「h」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、時間を意味するものとする。「min」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、分を意味するものとする。「μL」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、マイクロリットルを意味するものとする。「μM」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、マイクロモルを意味するものとする。「μm」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、マイクロメートルを意味するものとする。「M」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、モル濃度を意味するものとする。「N」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、規定を意味するものとする。「nm」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、ナノメートルを意味するものとする。「nM」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、ナノモルを意味するものとする。「amu」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、原子質量単位を意味するものとする。「℃」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、摂氏度を意味するものとする。「m/z」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、質量/電荷比を意味するものとする。「wt/wt」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、重量/重量を意味するものとする。「v/v」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、体積/体積を意味するものとする。「mL/min」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、ミリリットル/分を意味するものとする。「UV」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、紫外線を意味するものとする。「APCI−MS」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、大気圧化学イオン化質量分析を意味するものとする。「HPLC」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、高速液体クロマトグラフを意味するものとする。クロマトグラフィーは、別段の指摘がない限り、温度約20℃で実施した。「LC」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、液体クロマトグラフを意味するものとする。「LCMS」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、液体クロマトグラフィー質量分析を意味するものとする。「TLC」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、薄層クロマトグラフィーを意味するものとする。「SFC」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、超臨界流体クロマトグラフィーを意味するものとする。「sat」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、飽和を意味するものとする。「aq」という用語は、本明細書では、水性を意味するものとする。「ELSD」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、蒸発光散乱検出を意味するものとする。「MS」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、質量分析を意味するものとする。「HRMS(ESI)」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、高分解能質量分析(エレクトロスプレーイオン化)を意味するものとする。「Anal.」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、分析を意味するものとする。「Calcd」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、計算値を意味するものとする。「N/A」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、未試験を意味するものとする。「RT」または「rt」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、室温を意味するものとする。「Mth.」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、方法を意味するものとする。「Celite(登録商標)」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、米国カリフォルニア州ロサンゼルスに所在するWorld Mineralsから市販されている白色の固体珪藻土濾過剤を意味するものとする。「Eg.」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、実施例を意味するものとする。
【0062】
「K」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、酵素阻害定数の値を意味するものとする。「K app」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、見かけ上のKを意味するものとする。「IC50」という用語は、本明細書では、別段の指摘がない限り、少なくとも50%の酵素阻害に必要となる濃度を意味するものとする。
【0063】
本発明の他の態様、利点、および特徴は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下の反応スキームは、本発明の化合物の調製を例示するものである。別段の指摘がない限り、反応スキームおよびその後の論述におけるRからR12およびRからRは、上で規定したとおりである。
【0065】
詳細な説明
式Iの化合物は、スキーム1からスキーム5の合成経路に従って生成することができる。以下のスキームおよび実施例において、用語「BOC」、「Boc」、または「boc」はN−t−ブトキシカルボニルを意味し、「BOP」はベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩を意味し、「DCM」はCHClを意味し、DIPEA(Hunig塩基としても知られている)はジイソプロピルエチルアミンを意味し、「DMA」はジメチルアミンを意味し、「DMF」はジメチルホルムアミドを意味し、「DMSO」はジメチルスルホキシドを意味し、「Me」はメチル−CHを意味し、「Et」は−CHCHを意味し、「MTBE」はメチルt−ブチルエーテルを意味し、TEAはトリエチルアミンを意味し、TFAはトリフルオロ酢酸を意味し、THFはテトラヒドロフランを意味し、「SEM」は2−(トリメチルシリル)エトキシメチルを意味し、「HATU」は2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩を意味する。
【0066】
【化12】

スキーム1は、式Iの化合物の調製において有用な中間体I(A)からI(G)の合成を例示するものである。置換アミノ酸I(A)のアミノ基をアルキル化して、化合物I(B)を得る。これは通常、塩基の存在下、化合物I(A)をアルキル化剤で処理して行うことができる。活性化型求電子二重結合部分は、一般に使用されるアルキル化試薬である。I(A)を活性化型求電子二重結合部分でアルキル化する典型的な反応条件は、強塩基の存在下、I(A)を活性化型二重結合部分で処理することである。その後水で後処理すると化合物I(B)が得られる。次いで、化合物I(B)のアミノ基をboc基で保護して、化合物I(C)を得る。これは通常、塩基の存在下、化合物I(B)をBoc剤で処理して行うことができる。典型的な条件は、MeNOHの存在下、溶媒としてのMeCN中にて化合物I(B)を(Boc)Oで処理することである。次いで、化合物I(C)のカルボン酸基を化合物I(D)のメチルエステルに変換する。カルボン酸基をメチルエステル基に変換する典型的な条件は、塩基の存在下、I(C)をDMF中にてヨウ化メチルで処理することである。次いで、化合物I(D)は、分子内アルドール縮合を経て化合物I(E)を与える。これは通常、化合物I(D)を非プロトン性溶媒中にて強塩基で処理して行うことができる。典型的な条件は、化合物I(D)をトルエン中にてt−BuOKで処理することである。その後水で後処理すると、化合物I(E)が得られる。次いで、化合物I(E)は、ヒドラジン部分による2+3閉環を経て、化合物I(F)を生成する。閉環の典型的な条件は、EtOH中にて化合物I(E)をヒドラジンおよび酢酸と共に還流下に置くことである。次いで、化合物I(F)の遊離塩基ピラゾール窒素をアシル化して、化合物I(G)を得る。アシル化の典型的な条件は、化合物I(F)をTHF中にてクロロエチルカルボナートで処理することである。上記のI(G)の構造中に示すように、アシル基は、ピラゾールのどちらの窒素に結合していてもよい。
【0067】
スキーム1の中間体I(G)のより詳細な合成条件は、米国特許出願公開第2003/0171357号およびPCT公開WO02/12242で見ることができ、これらの開示を参照により本明細書に援用する。
【0068】
【化13】

スキーム2は、中間体I(G)から式Iの化合物を生成することのできるいくつかの経路を例示するものである。置換基R、RおよびRは、上記式Iで規定したとおりである。「Het」という用語は、
【0069】
【化14】

によって規定されるピペラジンまたはピペリジン複素環基である。スキーム2の一経路では、化合物I(G)は、R求電子部分との求核反応を経る。この求核反応は、アミン官能基によって実施される任意のアシル化でよい。典型的なアシル化反応条件は、2当量のDIPEAなどの塩基の存在下、化合物I(G)を、ジクロロメタンなどの溶媒中にてR−COClなどのアシル化剤で処理することである。反応混合物を0℃と室温の間の温度で約12時間攪拌する。その後水で後処理すると、化合物II(A)が得られる。次いで、化合物II(A)のピロール窒素上のBoc基を除去して、化合物II(B)を得る。これは通常、II(A)を強酸で処理して行うことができる。典型的な反応条件は、化合物II(A)を、ジオキサンおよびDCM中の4N HClで処理することである。その後水で後処理すると、化合物II(B)が得られる。次いで、化合物II(B)のピロールNHを変換して、クロロホルマートII(C)とする。これは通常、ホスゲン、トリホスゲン、または他のいくつかの同等物を使用して行うことができる。典型的な反応条件は、II(B)をDCM中にて0℃で4時間かけて2当量のトリホスゲンで処理することである。その後、飽和NaHCOを用いた塩基による穏やかな後処理、および精製にかけると、化合物II(C)が得られる。次いで、化合物II(C)を求核部分で処理する。求核剤は、求電子剤II(C)と反応し得るどんなアミンでもよい。典型的な反応は、DIPEAなどの1当量の塩基の存在下、II(C)を、THFなどの溶媒中にて1.5当量のアミンなどの求核剤で処理するものである。引き続いて、TEAなどの塩基の存在下、メタノールなどのプロトン性溶媒中にてエトキシカルボニル基を脱保護した後、精製すると、式Iの化合物が得られる。
【0070】
別法として、化合物II(B)が次いでHet求電子剤との求核反応を経ると、化合物II(D)を得ることができる。この変換のために実施される求核反応は、アシル化でよい。II(D)を得るためのII(B)のアシル化反応は、塩基の存在下、化合物II(B)をアシル化試薬で処理して実施する。典型的な反応条件は、DCM中にて化合物II(B)をDIPEAなどの過剰の塩基と混合した後、得られる溶液を0℃でアシル塩化物に加えることである。反応液を室温で約2時間攪拌し、その後水で後処理すると、化合物II(D)が得られる。化合物II(D)のピラゾール窒素上のエトキシカルボニル保護基を除去して、式Iの化合物を得る。これは通常、化合物II(D)を塩基で処理して行うことができる。典型的な反応条件は、TEAなどの塩基の存在下、化合物III(B)をメタノールなどのプロトン性溶媒中で処理すること、または2〜3当量のNaOHの存在下、化合物II(D)をMeOH中にて室温で処理することである。その後水で後処理すると、式Iの化合物が得られる。
【0071】
スキーム2の代替経路では、ピロール窒素上のBoc基を除去して、化合物III(A)を得る。反応は通常、化合物I(G)を強酸で処理して実施する。典型的な反応条件は、化合物I(G)を、ジオキサンおよびDCM中の4N HClで処理することである。その後水で後処理すると、化合物III(A)が得られる。次いで、化合物III(A)がHet求電子剤との求核反応を経ると、化合物III(B)が得られる。化合物III(A)のピラゾールに結合している−NH基は、III(A)のピロール窒素より反応性が弱いので、III(A)のIII(B)への変換は、化合物III(A)のピラゾール−NH基を保護せずに実施することができる。この変換のために実施される求核反応は、アシル化でよく、反応選択性を実現するために比較的穏和な反応条件が好ましい。III(B)を得るためのIII(A)のアシル化反応は、塩基の存在下、化合物III(A)をアシル化試薬で処理して実施する。典型的な反応条件は、化合物III(A)をDCM中にてDIPEAなどの過剰の塩基と混合し、得られる溶液を0℃で塩化アシルに加えることである。反応混合物を約2時間0℃に保ち、その後水で後処理すると、化合物III(B)が得られる。
【0072】
次いで、化合物III(B)は、R求電子部分との求核反応を経る。この求核反応は、アミン官能基によって実施されるアシル化でよい。典型的なアシル化反応条件は、2当量のDIPEAなどの塩基の存在下、1,2−ジクロロエタンなどの溶媒中にて化合物III(B)をRCOClなどのアシル化剤で処理することである。その後水で後処理すると、化合物III(C)が得られる。化合物III(C)のピラゾール窒素上のエトキシカルボニル保護基を、通常は塩基を用いて除去して、遊離塩基の式Iの化合物を得る。典型的な反応条件は、化合物III(C)をメタノールなどのプロトン性溶媒中でTEAと混合した後、精製して式Iの化合物を得ることである。
【0073】
別法として、化合物III(B)のピラゾール窒素上のエトキシカルボニル保護基を除去して、遊離塩基化合物III(D)を得る。これは通常、化合物III(B)を塩基で処理して行うことができる。典型的な反応条件は、2〜3当量のLiOHの存在下、化合物III(B)をジオキサンおよびDCM中で還流下に置くことである。その後水で後処理すると、化合物III(D)が得られる。次いで、化合物III(D)は、R求電子部分との求核反応を経る。この求核反応は、アミン官能基によって実施されるアシル化でよい。典型的なアシル化反応条件は、2当量のDIPEAなどの塩基の存在下、化合物III(D)をジクロロメタンなどの溶媒中にてR−COClなどのアシル化剤で処理することである。反応混合物を4時間攪拌し、その後水で後処理し、精製すると、式Iの化合物が得られる。
【0074】
上述の経路Bと同様の方法において、式Iの化合物は、以下のスキーム3の方法によって合成することもできる。
【0075】
【化15】

中間体V(B)は、V(A)(267g、3mol)をジオキサン(6L)、HO(3L)、および1M NaOH(3L)に溶かした溶液を混合し、氷水浴で冷却して調製した。BocO(720g、3mol)は0〜10℃で加え、室温で終夜攪拌を続けた。溶媒を真空中で除去した。3LのHOを加えて残渣を溶解させた。得られる溶液を0〜5℃に冷却し、1N HClでpH=3に酸性化した。得られる溶液を酢酸エチル(1.5L×3)で抽出した。有機相を合わせ、NaSOで乾燥させ、濃縮して、化合物V(B)(465g、82%)を白色固体として得た。(R=CHH NMR(400MHz,CDCl)δ11.30(br,1H)、6.90(br,0.5H)、5.10(br,0.5H)、4.50〜4.00(m,1H)、1.40(m,12H))
【0076】
次のステップでは、NaH(200g、5mol)を2.5Lの無水THFに懸濁させ、混合物を−10〜0℃に冷却することにより、引き続いて中間体V(C)を調製した。V(B)(94.5g、0.5mol)を800mLの無水THFに溶かした溶液を−10〜0℃で滴下した。滴下した後、混合物を−10〜0℃で30分間攪拌した。次いでBnBr(478mL、4mol)を−10〜0℃で滴下した。反応混合物を室温で60時間攪拌した。混合物を3Lの氷水中に慎重に注いだ。得られる溶液を1.5Lのジエチルエーテルで洗浄した。水相を2N HCl水溶液によって0〜5℃でpH=3〜4に酸性化し、ジエチルエーテル(1.5L×2)で抽出した。有機層を合わせてNaSOで乾燥させ、真空中で蒸発させて、化合物V(C)(115g、84%)を黄色の固体として得た。(R=CHH NMR(400MHz,CDCl3)δ9.50(br,1H)、7.38(m,5H)、4.63〜3.95(m,3H)、1.51(m,12H))。
【0077】
別の反応において、V(D)(100g、1.12mol)を1LのMeOHに懸濁させて、中間体試薬V(E)を調製した。混合物を0〜5℃に冷却した。50mLのSOClを0〜5℃で滴下した。次いで、反応混合物を室温で24時間攪拌した。混合物を真空中で蒸発させて、化合物V(E)(141g、90%)を白色固体として得た。
【0078】
中間体V(F)は、V(C)とV(E)から調製した。化合物V(C)(100g、0.358mol)およびDIPEA(138g、1.07mol)を900mLのDMFに溶解させた。混合物を0〜10℃に冷却した。次いで、混合物に0〜10℃でHATU(150g、0.394mol)を少量ずつ加えた。得られる混合物を0〜10℃で10分間攪拌した。化合物V(E)(55g、0.394mol)を0〜10℃で少量ずつ加えた。反応混合物を室温で終夜攪拌した。溶媒を真空中で除去し、残渣を500mLの水に溶解させた。得られる混合物を酢酸エチル(300mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣を、石油エーテル/酢酸エチル(50:1〜10:1)を溶離液とするシリカゲルでのクロマトグラフィーによって精製して、化合物V(F)(100g、76%)を黄色の油状物として得た。
【0079】
化合物V(F)(100g、0.274mol)を0〜5℃で2Lの4N HCl(g)/ジオキサンに溶解させた。混合物を室温で終夜攪拌し、真空中で濃縮して、化合物V(G)(85g、100%)を無色のシロップとして得た。(R=CHH NMR(400MHz,D2O)δ7.41(m,5H)、4.38(m,1H)、4.14(m,2H)、3.93(m,1H)、3.69(s,3H)、1.44(d,J=6.8Hz,3H)、1.35(d,J=7.2Hz,3H))。
【0080】
次のステップでは、V(G)(75g、0.25mol)およびEtN(41.7mL、0.3mol)を1500mLのキシレンに懸濁させた。混合物を室温で30分間攪拌した。次いでDMAP触媒として加え、混合物を48時間加熱還流した。溶媒を真空中で除去し、残渣を、石油エーテル/酢酸エチル(50:1〜10:1)を溶離液とするシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、化合物V(H)(47g、81%)を褐色の油状物として得た。(R=CHH NMR(400MHz,CDCl3)δ7.71(br,1H)、7.33(m,5H)、5.16(d,J=14.8Hz,1H)、4.13(m,2H)、3.86(m,1H)、1.59(d,J=12.8Hz,3H)、1.38(d,J=8.8Hz,3H))。
【0081】
LiAlH(31g、0.82mol)を200mLの無水THFに懸濁させた。化合物V(H)(47g、0.203mol)を600mLの無水THFに溶かした溶液を滴下した。滴下した後、混合物を終夜加熱還流した。反応混合物を0〜5℃に冷却し、300mLのTHFで希釈した。190mLの20%NaOH水溶液を反応混合物に滴下した。滴下した後、混合物を室温で30分間攪拌した。混合物に(Boc)O(66.5g、0.31mol)を加えた。混合物を室温で終夜攪拌した。溶媒を真空中で除去し、残渣を、石油エーテル/酢酸エチル(100:1)を溶離液とするシリカゲルでのクロマトグラフィーによって精製して、化合物V(J)(48g、77%)を淡黄色の液体として得た。(R=CHH NMR(400MHz,CDCl3)δ7.36(m,5H)、4.19(m,1H)、3.67(m,2H)、3.47(m,1H)、3.33(m,1H)、2.97(m,1H)、2.72(m,1H)、2.27(d,J=25.6Hz,1H)、1.48(s,9H)、1.36(d,J=6.4Hz,3H)、0.99(d,J=7.2Hz,3H))。
【0082】
最終ステップでは、V(I)(48g、0.158mol)を1500mLの4N HCl(g)/ジオキサンに溶解させ、得られる溶液を室温で終夜攪拌した。溶媒を真空中で除去し、残渣を500mLのジエチルエーテルで摩砕した。生成した固体を濾過し、濾過ケーキを50mLのジエチルエーテルで洗浄し、次いで真空中で乾燥させて、V(J)(37g、100%)を白色固体として得た。(R=CHH NMR(400MHz,CDCl3)δ7.42(s,5H)、4.82(d,J=17.6Hz,1H)、4.10(d,J=17.6Hz,1H)、3.71〜2.98(m,6H)、1.56(d,J=8.0Hz,3H)、1.20(d,J=8.8Hz,3H))。
【0083】
がC〜Cアルキルである、実施例A2のようなスピロ環式ピペラジン誘導体は、上記スキームと類似の方法を使用して調製することができる。
【0084】
【化16】

中間体VI(C)は、N−(t−ブトキシカルボニル)−D−アラニンVI(B)(114.23g、0.0.603mol)、メチルL−プロリナートVI(A)(100g、0.603mol)、BOP(291.72g、0.66mol)、およびジクロロメタン(1.5L)を2L容フラスコ中で混合して調製した。水浴上で攪拌および冷却しながらDIPEA(193g、1.5mol)を滴下した。反応混合物を室温で終夜攪拌し、蒸発させた。水(1L)、酢酸エチル(400mL)、およびエーテル(400mL)を加えた。抽出後、有機層を分離した。水層をエーテル(300mL)で洗浄した。抽出物を合わせて1M HCl(1L)、水(1L)、10%KCO(2×1L)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、蒸発させた。粘稠性の油状物VI(C)(110g、61%)が得られた。
【0085】
中間体VI(C)(110g、0.366mol)をジオキサン中4M HCl(約400mL)で処理した。溶液を室温で16時間保持し、蒸発させた。油性の残渣をエーテル(2×500mL)で洗浄した。エーテルをデカントし、油状物VI(D)を真空中で乾燥させた。
【0086】
中間体VI(D)を無水メタノール(700mL)に溶解させた。トリエチルアミン(105mL、0.75mol)を加えてpH約8〜9とした。反応混合物を室温で終夜攪拌した。溶液を蒸発にかけた。固体残渣をジクロロメタン/酢酸エチル混合物(1:1、600mL)中で攪拌し、得られる混合物を40%炭酸カリウム水溶液(500mL)で洗浄した。水層をジクロロメタン/酢酸エチル混合物(1:1、2×300mL)での抽出にかけた。抽出物を合わせて炭酸カリウムで乾燥させ、蒸発にかけた。固体残渣をエーテル(400mL)で処理した。得られる混合物を室温で2時間、次いで4℃で終夜保持した。生成した結晶を冷エーテル(100mL)で洗浄し、真空乾燥して、VI(E)(48.1g、78.08%)を得た。H NMRスペクトルを添付する(LJMT0165−07_Additional_QC_Dataフォルダを参照されたい)。
【0087】
中間体VI(E)(48.1g、0.286mol)をTHF(600mL)に懸濁させた。この懸濁液を、LiAlH(27.2g、0.715mol)のTHF(300mL)溶液に、アルゴン流中にて溶媒が沸騰直前の状態になる速度で攪拌および加熱しながら加えた。その後、反応混合物を15時間還流させ、室温に冷却し、5MのNaOH(200mL)で処理した。有機層を分離し、凝乳様の残渣をエーテル(3×100mL)で洗浄した。抽出物を合わせて無水KCOで乾燥させ、蒸発にかけた。液体残渣を真空中(72〜75℃/10mmHg)で留去した。収率:75.2%(30.1g)。良好なC、H、N分析が得られた。
【実施例】
【0088】
ここで本発明を以下の実施例に即して記載する。そうした実施例は、本発明の範囲を限定するとはみなされず、例示的な方法として役立つはずである。以下に設ける実施例および調製例では、本発明の化合物およびその化合物の調製方法をさらに説明および例示する。本発明の範囲は、いかなる点でも以下の実施例および調製例の範囲によって限定されないことを理解されたい。以下の実施例では、単一のキラル中心を有する分子は、別段の注釈がない限り、ラセミ混合物として存在する。2種以上のキラル中心を有する分子は、別段の注釈がない限り、ジアステレオ異性体のラセミ混合物として存在する。単一の鏡像異性体/ジアステレオ異性体は、当業者に知られている方法によって得ることができる。
【0089】
化合物の構造は、成分分析またはNMRによって確認しているが、適宜、表題化合物の特徴的なプロトンに割り当てられるピークを示す。H NMRシフト(δ)は、基準の内標準物質から低磁場方向への百万分率(ppm)で示す。別段の表示がない限り、NMRデータは以下の表1に提供する。
【0090】
(実施例A1)
N−(6,6−ジメチル−5−((3S,8aS)−3−メチル−オクタヒドロピロロ[1,2−a]ピラジン−2−カルボニル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)ピコリンアミド
【0091】
【化17】

中間体A1(III):5−t−ブチル1−エチル6,6−ジメチル−3−(ピコリンアミド)ピロロ[3,4−c]ピラゾール−1,5(4H,6H)−ジカルボキシラート
5−t−ブチル1−エチル3−アミノ−6,6−ジメチル−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1,5−ジカルボキシラートA1(I)(7.32g、22.56mmol)およびDIPEA(12mL)のCHCl(60mL)溶液に、塩化ピコリノイル塩酸塩A1(II)(4.82g、27.07mmol)をゆっくりと加えた。反応液を室温で2時間攪拌した。反応混合物をCHCl(50mL)で希釈し、水(2×30mL)、飽和NaCl(ブライン)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、A1(III)(9.12g、収率94%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl−d)δppm 1.39〜1.50(m,2H)1.49〜1.58(m,10H)1.72(s,3H)1.78(s,3H)4.63(q,J=7.07Hz,2H)4.81(d,J=19.45Hz,2H)7.46〜7.58(m,1H)7.82〜7.97(m,1H)8.25(dd,J=7.71,3.41Hz,1H)8.73(dd,J=9.60,4.55Hz,1H)。
【0092】
中間体A1(IV):6,6−ジメチル−3−(ピコリンアミド)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1(4H)−カルボン酸エチル二塩酸塩
中間体A1(III)を1,4,ジオキサン中4N HCl(80mL)に溶解させた。反応液を室温で16時間攪拌した。溶媒を濃縮して、A1(IV)(8.97g、収率99%)を得た。H NMR(400MHz,CDOD)ppm 1.52(t,J=7.20Hz,3H)1.78(s,6H)4.60(q,J=7.24Hz,2H)4.85(s,2H)7.60〜7.74(m,1H)8.00〜8.12(m,1H)8.23(d,J=7.83Hz,1H)8.69〜8.84(m,1H)。
【0093】
中間体A1(V):5−(クロロカルボニル)−6,6−ジメチル−3−(ピコリンアミド)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1(4H)−カルボン酸エチル
A1(IV)(5.0g、12.43mmol)およびDIPEA(11mL)のCHCl(50mL)冷却浴(0℃)に、CHCl(20mL)中トリホスゲン(9.22g、31.08mmol)をゆっくりと加えた。反応液を室温で2時間攪拌した。反応混合物をCHCl(50mL)で希釈し、水(2×50mL)、飽和NaCl(ブライン)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。残渣を最小の量のアセトンに溶解させ、水を加えて沈殿させた。化合物を濾過し、水で洗浄して、A1(V)(4.48g、収率92%)を得た。H NMR(400MHz,DMSO−d)δppm 1.40(t,J=7.07Hz,3H)1.69(s,6H)4.51(q,J=7.07Hz,2H)5.03(s,2H)7.76(dd,J=7.45,4.93Hz,1H)8.04〜8.17(m,1H)8.18〜8.32(m,1H)8.78(d,J=4.80Hz,1H)12.15(s,1H)。
【0094】
化合物A1:N−(6,6−ジメチル−5−((3S,8aS)−3−メチル−オクタヒドロピロロ[1,2−a]ピラジン−2−カルボニル)−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)ピコリンアミド
A1(IV)(4.48g、11.4mmol)、(3S,8aS)−3−メチル−オクタヒドロピロロ[1,2−a]ピラジン(2.40g、17.1mmol)、およびDIPEA(7mL)のTHF(50mL)溶液を2時間かけて80℃に加熱した。THFを濃縮した。反応混合物をCHOH(30mL)およびEtN(30mL)に溶解させ、次いで室温で16時間攪拌した。残渣をHPLC(10%ACN(.1%AcOH)〜30%ACN(0.1%AcOH))によって精製して、表題化合物A1(3.01g、収率62%)を得た。
【0095】
(実施例A2)
N−(5−{[(8S)−6,8−ジメチル−6,9−ジアザスピロ[4.5]デカ−9−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)ピリジン−2−カルボキサミド
【0096】
【化18】

中間体A2(I)は、A1(V)から、A1(VI)の代わりに(8S)−6,8−ジメチル−6,9−ジアザスピロ[4,5]デカンを用いたことを除き、上記A1の調製と同様にして調製した。得られる、A2(I)(668mg、1.28mmol)を30mLのメタノールに懸濁させた懸濁液に、水酸化ナトリウム(10%のメタノール溶液3mL)を加えた。室温で30分間攪拌した後、真空中で溶媒を除去した。実施例A1でのように精製すると、表題化合物A2が白色固体(254mg、29%)として得られた。
【0097】
(実施例A3〜A141)
実施例A3からA141は、上記実施例A1およびA2と類似の方法を使用して調製した。
【0098】
(実施例A142)
N−(5−((2R,5S)−1−(3−フルオロプロピル)−2,5−ジメチルピペラジン−4−カルボニル)−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)ピコリンアミド
【0099】
【化19】

中間体A142(II):5−((2S,5R)−2,5−ジメチルピペラジン−1−カルボニル)−6,6−ジメチル−3−(ピコリンアミド)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1(4H)−カルボン酸エチル
封管に、ピペラジンA142(I)(1.0g、2.4mmol、1.0当量)、テトラヒドロフラン(50.0mL)、A1(V)(0.627g、2.93mmol、1.2当量)、およびDIPEA(1.27mL、7.32mmol、3.0当量)を加えた。管を一晩かけて85℃に加熱した。反応液を室温に冷まし、次いで濃縮した。次いで、得られる残渣をジクロロメタン(50mL)に溶解し直し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2×20mL)で洗浄した。収集した有機物質を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、薄橙色の固体を得た。次いで、この材料(1.1g、1.9mmol、1当量)をジオキサン(5mL)に溶かし、ジオキサン中4M HCl(4.83mL、19.3mmol、10当量)を加えた。得られる溶液を室温で15分間攪拌した。ジオキサンを真空中で除去し、残渣をジクロロメタン(20mL)に溶解し直し、飽和炭酸水素ナトリウム(10mL)で洗浄した。収集した有機物質を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、所望の生成物A142(II)を得た。粗生成物をそれ以上精製せずに次のステップに当てた(全体的な反応収率については次のステップを参照されたい)。MS(ESI+)m/z 465.4 H NMR(300MHz,DMSO−d)δppm 0.97(dd,J=11.68,6.03Hz,6H)1.40(t,J=7.06Hz,3H)1.61(s,3H)1.69(s,3H)2.25(d,J=10.93Hz,1H)2.85(m,3H)3.01〜3.14(m,1H)3.56(s,2H)4.49(q,J=7.03Hz,2H)4.82(d,J=4.33Hz,2H)7.71〜7.79(m,1H)8.05〜8.16(m,1H)8.18〜8.26(m,1H)8.77(d,J=3.96Hz,1H)12.15(s,1H)
【0100】
化合物A142:N−(5−((2R,5S)−1−(3−フルオロプロピル)−2,5−ジメチルピペラジン−4−カルボニル)−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)ピコリンアミド
マイクロ波用バイアルに、A142(II)(0.200g、0.426mmol、1.0当量)、トリエチルアミン(0.148mL、1.06mmol、2.5当量)、1−ブロモ−3−フルオロプロパン(0.090g、0.639mmol、1.5当量)、およびテトラヒドロフラン(1.5mL)を加えた。得られる反応混合物をMWにて150℃で1時間加熱した。未精製の反応液を真空中で濃縮し、メタノールおよびトリメチルアミン(6mL−6mL)に溶かし、室温で16時間攪拌した。次いで、反応混合物を再度濃縮し、得られる残渣をジクロロメタン(50mL)に溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。収集した有機物質を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。ジクロロメタン中メタノール(0→1%メタノール)で溶出して、所望の生成物A142を2ステップにわたり収率23%でオフホワイトの固体として得た。
【0101】
(実施例A143〜A144)
実施例A143およびA144は、上記実施例A142と類似の方法を使用して調製した。
【0102】
(実施例A145)
N−(5−((2R,5S)−2,5−ジメチル−1−(2(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)エチル)ピペラジン−4−カルボニル)−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)ピコリンアミド
【0103】
【化20】

100mL容丸底フラスコに、A142(II)(0.100g、0.213mmol、1.0当量)、メタノール(3.0mL)、テトラヒドロピラニル−4−アセトアルデヒド(0.041g、0.319mmol、1.5当量)、および酢酸(0.013mL、0.213mmol、1.0当量)を加えた。1時間後、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(0.022g、0.341mmol、1.6当量)を加え、反応液を室温で16時間攪拌した。反応液にトリエチルアミン(3mL)を加え、これを室温でもう16時間攪拌した。反応液を濃縮し、ジクロロメタン(5mL)で希釈し、飽和硫酸ナトリウム(2mL)およびブライン(2mL)で洗浄した。収集した有機物質を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を分取HPLC(0.1%HOAc)で精製して、60mgの所望の生成物A145を収率53%で白色固体として得た。
【0104】
(実施例A146〜A164)
実施例A146からA164は、上記実施例A1、A142およびA145に類似の方法を使用して調製した。
【0105】
(実施例B1)
ピリジン−2−カルボン酸[5−(1−シクロブチル−4−フルオロ−ピペリジン−4−カルボニル)−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−ピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル]−アミド
【0106】
【化21】

中間体B1(III):1−シクロブチル−4−フルオロ−ピペリジン−4−カルボン酸エチルエステル
250mL容円形ボトルに、4−フルオロピペリジン−4−カルボン酸エチル塩酸塩である化合物B1(I)(1.25g、5.91mmol、1.0当量)、CHCl(40mL)、シクロブタノンB1(II)(1.30g、7.68mmol、1.30当量)、および氷HOAc(0.338mL、5.91mmol、1.0当量)を加えた。室温で5〜10分間攪拌した後、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(2.00g、9.45mmol、1.60当量)を一度に加えた。濁った溶液が得られた。反応混合物を室温で2時間攪拌した。反応混合物に、100mLのNaOH水溶液(1M)を加え、得られる懸濁液を室温で10分間攪拌した。反応液を酢酸エチル(150mL)で抽出した。有機層を収集し、ブライン(200mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、所望の生成物B1(III)を無色の油状物として得た。粗生成物を清掃し、精製せずに次のステップに当てた(全体的な反応収率については次のステップを参照されたい)。H NNR(400MHz,CDCl,ppm)δ1.28(t,J=7.20Hz,3H)、1.64〜1.73(m,2H)、1.82〜1.99(m,4H)、2.01〜2.21(m,6H)、2.72〜2.80(m,3H)、4.22(q,J=7.2Hz,2H);19F NMR(376Hz,CDCl,ppm)δ−166.83。
【0107】
中間体B1(IV):1−シクロブチル−4−フルオロ−ピペリジン−4−カルボン酸ヒドロクロライト
中間体B1(III)(未精製、5.91mmol)を10mLの6M HCl水溶液に溶解させた。無色の溶液を100℃に温め、N中で還流させた。2時間後、反応混合物を室温に冷却した。溶媒を除去し、黄色の固体を得た。固体を10mLの酢酸エチルで洗浄し、真空中で乾燥させて、1.20gの所望の生成物B1(IV)を2ステップにわたり収率85%で白色固体として得た。生成物をそれ以上精製せずに次のステップに当てた。H NNR(400MHz,DMSO−d,ppm)δ1.63〜1.78(m,2H)、2.10〜2.16(m,4H)、2.35〜2.45(m,4H)、2.82〜2.88(m,2H)、3.29〜3.32(m,2H)、3.66〜3.70(m,1H)、11.63(br s,1H)、13.68(br s,1H);19F NMR(376Hz,DMSO−d,ppm)δ−166.31。
【0108】
化合物B1:ピリジン−2−カルボン酸[5−(1−シクロブチル−4−フルオロ−ピペリジン−4−カルボニル)−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−ピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル]−アミド
未精製の出発材料B1(IV)(0.673mmol)を10mLのSOClに溶解させた。得られた淡黄色の懸濁液を80℃に温め、N中で1時間還流させた。この時点で、反応液が透明な淡黄色の溶液になった。反応混合物を室温に冷却した。減圧下で溶媒を除去して、塩化アシルB1(V)を定量的収率で黄色の固体として得た。
【0109】
100mL容RBに、塩化アシルB1(V)(未精製、0.673mmol、1.3当量)、化合物6,6−ジメチル−3−[(ピリジン−2−イルカルボニル)アミノ]−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−2(4H)−カルボン酸エチルであるB1(VI)(189mg、0.518mmol、1.0当量)、および13mLのCHClを加えた。得られる懸濁液をN中にて室温で5分間攪拌した。DIPEA(0.354ml、2.07mmol、4.0当量)をゆっくりと加えたが、たくさんの煙が生じるのを見ることができる。室温で1時間攪拌した後、反応液をブライン(50mL)で失活させ、酢酸エチル(50mL)で抽出し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。未精製の結合生成物を次の脱保護ステップに当てた。
【0110】
未精製の結合生成物を10mLのMeOHに溶かした溶液に、1.5mLの1.0M NaOH水溶液を室温で滴下した。黄色の透明な溶液が得られた。LC−MSによって反応が30分で完了したことが示された。反応液を50mLの酢酸エチルで希釈し、ブライン(50mL)で洗浄した。有機層を収集し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を分取HPLC(0.1% HOAc)で精製して、80mgの所望の生成物B1を2ステップにわたり収率28%で白色固体として得た。
【0111】
(実施例B2)
ピリジン−2−カルボン酸{5−[4−フルオロ−1−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ピペリジン−4−カルボニル]−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−ピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル}−アミド
【0112】
【化22】

中間体B2(III):4−フルオロ−1−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸エチルエステル
250mL容RBに、化合物B2(I)である4−フルオロピペリジン−4−カルボン酸エチル塩酸塩(1.25g、5.91mmol、1.0当量)、CHCl(20mL)、4−オキソテトラヒドロピラノンB2(II)(0.61mL、6.50mmol、1.10当量)、および氷HOAc(0.340mL、5.91mmol、1.0当量)を加えた。室温で5〜10分間攪拌した後、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(2.02g、9.45mmol、1.60当量)を一度に加えた。濁った溶液が得られた。室温で12時間攪拌した後、反応混合物を150mLのEtOおよび200mLのNaOH(1M水溶液)で希釈した。得られる懸濁液を室温で1時間攪拌した。有機層を収集し、200mLのブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、320mgの所望の生成物4−フルオロ−1−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸エチルエステルB2(III)を収率21%で無色の油状物として得た。H NNR(400MHz,CDCl,ppm)δ1.30(t,J=7.08,3H)、1.56〜1.66(m,2H)、1.74〜1.78(m,2H)、1.94〜2.21(m,4H)、2.46〜2.55(m,3H)、2.82〜2.85(m,2H)、3.38(ddd,J=1.52,11.84,11.84,2H)、4.03(dd,J=4.28,11.08,2H)、4.24(q,J=7.05Hz,2H);19F NMR(376Hz,CDCl,ppm)δ−166.94。
【0113】
中間体B2(IV):4−フルオロ−1−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸ヒドロクロライト
バイアルに、B2(III)(260mg、1.0mmol)および8mLのHCl水溶液(6.0M)を加えた。無色の溶液が得られた。溶液を室温で5分間攪拌し、100℃に温めた。混合物を100℃で2時間還流させ、淡橙色の溶液が得られた。次いで反応液を室温に冷却し、減圧下で溶媒を除去して、黄色の固体を得た。固体を2×3mLの酢酸エチルで洗浄して、260mgの所望の生成物4−フルオロ−1−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ピペリジン−4−カルボン酸ヒドロクロライトB2(IV)を収率97%で黄色の固体として得た。H NNR(400MHz,DMSO−d,ppm)δ1.70〜1.80(m,2H)、2.02〜2.05(m,2H)、2.14〜2.20(m,2H)、2.41〜2.59(m,2H)、2.97〜3.09(m,2H)、3.29(dd,J=11.33,11.33Hz,2H)、3.39〜3.53(m,3H)、3.96(dd,J=3.78,11.08Hz,2H)、11.19(s,1H)、13.76(s,1H);19F NMR(376Hz,DMSO−d,ppm)δ−166.57。
【0114】
化合物B2:ピリジン−2−カルボン酸{5−[4−フルオロ−1−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−ピペリジン−4−カルボニル]−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−ピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル}−アミド
中間体B2(IV)(240mg、0.896mmol)を10mLのSOClに溶解させた。懸濁液を80℃に温めた。混合物を80℃で1時間攪拌すると、懸濁液が淡黄色の透明な溶液になり、反応したことが示された。混合物を室温に冷却し、減圧下で溶媒を除去して、257mg(100%)の所望の生成物、塩化アシルB2(V)を白色固体として得た。
【0115】
100mL容RBに、塩化アシルB2(V)(257mg、0.896mmol、1.5当量)、化合物B2(VI)である6,6−ジメチル−3−[(ピリジン−2−イルカルボニル)アミノ]−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−2(4H)−カルボン酸エチル(219mg、0.598mmol、1.0当量)、および13mLのCHClを加えた。得られる懸濁液をN中にて室温で5分間攪拌した。DIPEA(0.408ml、2.39mmol、4.0当量)をゆっくりと加えて、煙を生成させた。反応液を室温で1時間攪拌した後、反応をブライン(20mL)で失活させ、CHCl(50mL)で抽出し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。粗生成物を10mLのMeOHに溶解させた。室温で、1.5mLの1M NaOH水溶液を滴下した。LC−MSによって反応が5〜10分で完了したことが示された。反応液を100mLの酢酸エチルで希釈し、100mLのブラインで洗浄した。有機溶媒を収集し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、未精製の最終生成物を得た。粗生成物を分取HPLCによって精製して、200mgの所望の生成物B2を2ステップにわたり収率47%で部分的なHOAc塩として得た。
【0116】
(実施例B3)
3,4−ジクロロ−N−[5−(4−フルオロ−1−メチル−ピペリジン−4−カルボニル)−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロ−ピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル]−ベンズアミド
【0117】
【化23】

4−フルオロ−1−メチル−ピペリジン−4−カルボニル塩化物(0.51mmol)のCHCl(10mL)溶液に、DIEA(0.220mL、1.66mmol)および3−(3,4−ジクロロ−ベンゾイルアミノ)−6,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−4H−ピロロ[3,4−c]ピラゾール−1−カルボン酸エチルエステル(221mg、0.51mmol)を加えた。反応液を室温で4時間攪拌した。混合物をHO(30mL)で失活させ、CHCl(2×30mL)で抽出した。有機層をMgSOで乾燥させ、濃縮して、表題化合物を褐色の油状物として得、これをそれ以上精製せずに使用した。ESI(MNa):564.10。
【0118】
上記油状物をMeOH(5mL)中に入れ、NaOH(1N、3mL)を加えた。混合物を室温で2時間攪拌し、濃縮し、逆相HPLCによって精製して、白色固体B3(15mg、6%)を得た。
【0119】
(実施例B4)
実施例B4は、上記実施例B1と類似の方法を使用して調製した。
【0120】
(実施例C1)
N−(5−{[(2S,5R)−4−エチル−2,5−ジメチルピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)ピラジン−2−カルボキサミド
【0121】
【化24】

中間体C1(II):5−t−ブチル1−エチル3−アミノ−6,6−ジメチル−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1,5−ジカルボキシラート
5−t−ブチル1−エチル3−アミノ−6,6−ジメチル−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1,5−ジカルボキシラートC1(I)(16.2g、49.9mmol)をTHF(100mL)に溶かした0℃の溶液に、NaH(2.4g、59.9mmol)を3回で加えた。反応液を氷浴中で15分間攪拌し、次いでクロロギ酸エチル(6.5g、59.9mmol)を10分間かけて加えた。反応液を室温に温め、16時間攪拌し、次いで(飽和)NHClで失活させ、酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。抽出物を合わせてブラインで洗浄し、次いで乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮して、所望の化合物C1(II)(19.8g、99%)を得た。質量スペクトル:C1829の計算値(M+H):397。実測値:397。
【0122】
中間体C1(III):5−(クロロカルボニル)−3−[(エトキシカルボニル)アミノ]−6,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1(4H)−カルボン酸エチル
C1(II)(19.8g、49.9mmol)のジオキサン(20mL)溶液に、HCl(60mL、ジオキサン中4M)を加えた。反応液を室温で3時間攪拌し、次いで濃縮し、真空中で乾燥させた。3−[(エトキシカルボニル)アミノ]−6,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1(4H)−カルボン酸エチルのHCl塩をCHCl(60mL)に溶かした。DIPEA(16.1g、125mmol)を加え、反応混合物を氷浴で冷却した。ホスゲン(30mL、トルエン中20%)をゆっくりと加え、次いで反応液を室温に温め、一晩置いた。反応液を濃縮し、次いで酢酸エチル(100mL)および水(100mL)に溶かした。水相を酢酸エチル(2×25mL)で抽出し、次いで有機抽出物を合わせてブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮した。粗製材料を、CHCl−CHCl中2%7N NH/MeOHを使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物C1(III)を白色固体(9.58g、54%)として得た。質量スペクトル:C1420ClNの計算値(M+H):359。実測値:359。
【0123】
中間体C1(V):3−[(エトキシカルボニル)アミノ]−6,6−ジメチル−5−{[4−エチル(2S、5R)−2,5−ジメチルピペラジン−1−イル]カルボニル}−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1(4H)−カルボン酸エチル
封管に、N−エチル(2S,5R)−2,5−ジメチルピペラジンC1(IV)、DIPEA、およびTHFを加えた後、C1(III)を加えた。管を密閉し、80℃の油浴中に置き、16時間加熱した。反応液を室温に冷却し、次いで濃縮した。この得られる材料C1(V)をそれ以上精製せずに先に進めた。
【0124】
中間体C1(VI):5−{[(2S,5R)−4−エチル−2,5−ジメチルピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−アミン
マイクロ波用バイアルに、C1(V)、MeOH、およびLiOHを加えた。反応液をマイクロ波装置にて110℃で20分間加熱した。未精製の反応混合物を濃縮し、THFに溶かした。不溶性の材料を濾別し、濾液を濃縮して表題化合物C1(VI)を得た。この材料を精製せずにさらに使用した。
【0125】
化合物C1:N−(5−{[(2S,5R)−4−エチル−2,5−ジメチルピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)ピラジン−2−カルボキサミド
塩化ピラジン−2−カルボニル(213mg、2当量)およびジイソプロピルエチルアミン(0.5mL、3当量)を3mLのTHFに溶かした溶液に、C1(VI)(240mg、0.7mmol)のTHF懸濁液2mLを加えた。室温で3時間攪拌した後、真空中で溶媒を除去した。実施例A1でのように精製すると、表題化合物C1が白色固体(16mg、5%)として得られた。
【0126】
(実施例C2〜C8)
実施例C2〜C8は、上記実施例C1と類似の方法を使用して調製した。
【0127】
(実施例D1)
これまで、上記スキーム2に示す経路Dを使用して調製した実施形態はないが、当業者ならば上述のような経路Dを使用して多くの本発明の化合物を調製することができると想定される。
【0128】
(実施例E1)
N−(6,6−ジメチル−5−{[(3S,8aS)−3−メチルヘキサヒドロピロロ[1,2−a]ピラジン−2(1H)−イル]カルボニル}−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−3−エチルイソキサゾール−5−カルボキサミド
【0129】
【化25】

中間体E1(II):3−アミノ−6,6−ジメチル−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−カルボン酸t−ブチル
試薬5−t−ブチル1−エチル3−アミノ−6,6−ジメチル−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1,5−ジカルボキシラートE1(I)(10.97g、33.9mmol)をMeOH(200mL)に溶解させ、その後NaOH(5当量、169mmol)を加えた。混合物を室温で3時間攪拌すると、出発材料が消失した。MeOHを除去した後、HOを加え、AcOEtを加え、生成物をAcOEtで抽出し、NaSOで乾燥させた後、濃縮してE1(II)を得た。
【0130】
中間体E1(III−2):3−アミノ−6,6−ジメチル−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−5(1H)−カルボン酸t−ブチル
【0131】
【化26】

中間体E1(II)(87g)、塩化メチレン(1.74L)、およびジイソプロピルエチルアミン(87g)の0℃の混合物に、塩化2−(トリメチルシリル)エトキシメチル(63g)を0℃で滴下した(1時間滴下)。反応混合物を室温で終夜攪拌した。反応液は淡褐色の溶液だった。次いで混合物を濃縮して淡黄色/褐色の油状物を得、残渣を酢酸エチルと混合し、塩を濾別した。混合物をシリカゲルで精製して(0.5%のTEAを含有する2:1〜1:1の酢酸エチル/ヘキサン)、位置異性体E1(III−2)(24g、HPLCによる純度>90%)およびE(III−1)(10g、HPLCによる純度>98%)を得た。H NMR(400MHz,CD3OD)ppm −0.03(s,9H)0.88(t,J=8.2Hz,2H)1.48および1.53(s,各4.5H、合計9H)、1.70(s,3H)、1.72(s,3H)、3.56〜3.62(m,2H)、4.24〜4.26(m,2H)、5.16(s,2H)。
【0132】
中間体E1(VII):N−(6,6−ジメチル−5−{[(3S,8aS)−3−メチルヘキサヒドロピロロ[1,2−a]ピラジン−2(1H)−イル]カルボニル}−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−3−エチルイソキサゾール−5−カルボキサミド
SEM−Boc保護されたアミノピロロピラゾールE1(III−2)の0.25M溶液を、無水DMFを溶媒として使用して調製した。3−エチルイソキサゾール−5−カルボン酸の0.25M溶液を、無水DMFを溶媒として使用して調製した。o−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)の新しい0.5M溶液を無水DMF中に調製した。反応管に、調製した3−エチルイソキサゾール−5−カルボン酸のDMF溶液320μL(0.08mmol、1当量、0.25M)、調製したSEM−Boc保護されたアミノピロロピラゾールのDMF溶液320μL(0.080mmol、1当量、0.25M)、および40μL(0.288mmol、3.6当量)の未希釈TEAを加えた後、160μL(0.080mmol、1当量)のHATU DMF溶液を加えた。反応混合物を60℃で16時間攪拌した。次いで管を室温に冷ました。管の溶媒および揮発性物質を真空中で除去した。残渣に、1mLの酢酸エチルおよび1mLの2M NaOH水溶液を加えた。管をParafilmで覆った後、覆った試験管を、すべての残渣が溶解し、または混合物が完全にホモジナイズされるまで激しく振盪した。攪拌を停止し、相を完全に分離させた。各試験管の上清有機層(酢酸エチル層)をその対応する受け入れ管に移した。管に酢酸エチル(0.5mL)を加え、混合物を攪拌した後有機層を抽出にかけ、こうした手順を2回繰り返した。受け入れ管の溶媒(酢酸エチル)および揮発性物質を乾燥するまで真空中で除去した。残渣に、0.6mL(2.4mmol、30当量)のジオキサン中4M HClを加え、混合物を室温で2時間攪拌した。次いで、管の溶媒、揮発性物質、およびHClを真空中で除去した。残渣に、500μLの無水DMA、70μLの未希釈DIPEA(0.400mmol、5当量)を加えた。(3S,8aS)−3−メチルヘキサヒドロピロロ[1,2−a]ピラジン−2(1H)−カルボニル塩化物E1(VI)の0.25Mの無水CHCl溶液を調製した。
【0133】
中間体E1(VI):(3S,8aS)−3−メチルヘキサヒドロピロロ[1,2−a]ピラジン−2(1H)−カルボニル塩化物
丸底フラスコにおいてトリホスゲン(1.1当量)をN中にて0℃でDCMに溶解させ、攪拌溶液にN中にて0℃でDIPEA(2当量)を滴下した。トリホスゲン反応混合物に、N中にて0℃で(3S,8aS)−3−メチルオクタヒドロピロロ[1,2−a]ピラジンのCHCl溶液を滴下した。N中にて0℃で1時間攪拌した後、反応混合物を室温に温め、N中で16時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、真空中にて室温で終夜乾燥させた。乾燥させた生成物E1(VI)を、精製せずに尿素生成反応に利用した。
【0134】
管に385μL(0.096mmol、1.2当量)のE1(VI)を加え、混合物を40℃で20時間攪拌した。溶媒および揮発性物質を真空中で除去した後、各管に1340μLのDMSO(0.01%のBHTを含有する)を加えて、最終濃度が0.0572Mに達するようにし、混合物を攪拌して生成物を溶解させた。分析用サンプルを調製するために、5μLの溶液を取り出し、この一定分量を95:5のMeOH/HOで1.0mLに希釈し、LC−MS分析に出した。
【0135】
プレート821−107−3930からの未精製の反応混合物をMeOH:DMSO:HO(95:5:5)溶液に溶解させ、分析スケールCO SFC(UV/MS{APCI+}/ELSD検出)を利用して分析した。分析SFC法パラメーターは、カラム:Zymor/Pegasus(150×4.6mm、5μm)、線形勾配:2.5分で5→50%の溶離液A(MeOH)、5.6ml/分(出口圧力140バール)を含むことになる。
【0136】
同じ未精製反応混合物を、分取スケールCO SFC(UV検出{260nm})を利用して精製した。分取SFC法パラメーターは、カラム:Zymor/Pegasus(150×21.2mm、5μm)、線形勾配:5分で5→50%の溶離液A(MeOH)、56ml/分(出口圧力140バール)を含むことになる。
【0137】
生成物を乾燥させ、秤量し、30mMとしてDMSOに溶解させた。次いで、RP−HPLC(UV{260nm}/MS{APCI+}/ELSD検出)を使用して生成物を分析した。HPLC法パラメーターは、カラム:Peeke Scientific/HI−Q(C18、50×4.6mm、3μm)、線形勾配:1.75分で100%の溶離液A(HO+0.05%TFA)→100%の溶離液B(アセトニトリル+0.05%TFA)、3ml/分を含むことになる。
【0138】
2種以上のHPLC検出法による純度が少なくとも85%であり、NMRスペクトルによって分子量と一致した構造が確認されているすべての生成物をスクリーニングに利用できるようにした。
【0139】
(実施例E1からE14)
実施例E2からE14ではすべて、上記実施例E1に記載のとおりに同じ分析条件および精製条件を利用した。
【0140】
(実施例F1)
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−2−エチル−4−メチル−1,3−オキサゾール−5−カルボキサミド
【0141】
【化27】

中間体F1(ii):5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−3−[(エトキシカルボニル)アミノ]−6,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1(4H)−カルボン酸エチル
封管に、(2R,5S)−2,5−ジメチル−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペリジン(2.1g、9.89mmol)、DIPEA(3.8mL、21.8mmol)、およびTHF(50mL)を加えた後、F1(i)(3.6g、9.89mmol)を加えた。管を密閉し、90℃の油浴中に置き、16時間加熱した。反応液を室温に冷却し、濃縮し、次いで2処理単位にしてMeOHで摩砕して、表題化合物F1(ii)(4.89g、93%)を白色固体として得た。質量スペクトル:C2642の計算値(M+H):535。実測値:535。
【0142】
中間体F1(iii):5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−アミン
封管に、MeOH(75mL)中スラリーにしたF1(ii)(4.0g、7.54mmol)およびLiOH(1.0g、42mmol)を加えた。反応液を100℃で16時間加熱した。反応液を濃縮し、THF(100mL)に溶かした。混合物をセライトおよびMgSO4の床で濾過し、次いでTHF(100mL)ですすいだ。濾液を濃縮して、1.9g(65%)のF1(iii)を黄色の固体として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d)δppm 0.82〜0.92(m,1H)、0.92〜1.00(m,6H)、1.00〜1.14(m,2H)、1.48(s,3H)、1.57(s,3H)、1.69(d,J=14.32Hz,2H)、1.78〜1.95(m,2H)、2.27〜2.48(m,3H)、2.74〜2.88(m,1H)、2.94〜3.15(m,2H)、3.18〜3.31(m,2H)、3.70〜3.93(m,2H)、4.26(s,2H)、4.96(br.s.,2H)。質量スペクトル:C2034の計算値(M+H):391。実測値:391。
【0143】
中間体F1(iv):5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−アミン
F1(iii)(1.7g、4.35mmol)をTHF(30mL)に溶かした0℃の溶液に、DIPEA(0.95mL、5.44mmol)を加えた後、[2−(クロロメトキシ)エチル](トリメチル)シラン(0.81mL、4.57mmol)を加えた。反応液をゆっくりと室温に温め、16時間攪拌した。反応液を水(50mL)で失活させ、酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。抽出物を合わせてブライン(50mL)で洗浄し、次いで乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮して、表題化合物F1(iv)(1.7g、65%)を黄色の固体として得た。質量スペクトル:C2648Siの計算値(M+H):521。実測値:521。
【0144】
実施例F1:N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−2−エチル−4−メチル−1,3−オキサゾール−5−カルボキサミド
2−エチル−4−メチル−1,3−オキサゾール−5−カルボン酸(223mg、1.44mmol)およびF1(iv)(500mg、0.960mmol)をDMF(5mL)に溶かした溶液に、DIPEA(0.52mL、2.88mmol)を加えた後、HATU(548mg、1.44mmol)を加えた。反応液を65℃で16時間攪拌し、次いで(飽和)NaHCO(10mL)で希釈し、MTBE(2×20mL)で抽出した。抽出物を合わせてブライン(15mL)で洗浄し、次いで乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮した。未精製の固体をCHCl(5mL)に溶かし、ジオキサン中4N HCl(5mL)を加えた。反応液を室温で5時間攪拌した。反応液を濃縮し、次いで酢酸エチル(15mL)および(飽和)NaHCO(15mL)に溶かし、酢酸エチル(2×10mL)で抽出した。抽出物を合わせてブライン(15mL)で洗浄し、次いで乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮した。5〜50%のACN/HO(0.1%のAcOH)を使用して分取HPLCにかけると、表題化合物F1が白色固体(35mg、6%)として得られた。
【0145】
(実施例F2〜F60)
実施例F2〜F60は、上記実施例F1と類似の方法を使用して調製した。
【0146】
(実施例G1)
5−シアノ−N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)ピリジン−2−カルボキサミド
【0147】
【化28】

中間体G1(i):t−ブチル1−エチル3−{[(5−ブロモピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}−6,6−ジメチル−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1,5−ジカルボキシラート
5−ブロモピリジン−2−カルボン酸(3.11g、15.4mmol)および5−t−ブチル1−エチル3−アミノ−6,6−ジメチル−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1,5−ジカルボキシラート(5.00g、15.4mmol)をDCM(200mL)に溶かした溶液に、DIPEA(5.37mL、30.8mmol)を加えた後、HATU(7.03g、18.5mmol)を加えた。22℃で一晩反応させた。反応混合物をNaHCOで希釈し、層を分離し、有機部分を乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮した。未精製の固体をEt2Oで摩砕してG1(i)を淡黄色の固体(2.8g、15%)として得た。質量スペクトル:C21H27BrN5O5の計算値(M+H):509。実測値:509。
【0148】
中間体G1(ii):5−t−ブチル1−エチル3−{[(5−シアノピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}−6,6−ジメチル−4,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1,5−ジカルボキシラート
G1(ii)(2.80g、5.51mmol)のDMF(40mL)懸濁液に、Pd(PPh3)2(0.636g、0.551mmol)およびZn(CN)2(0.647g、5.51mmol)を加えた。溶液をアルゴン×3で排気/再給気し、次いで2時間かけて80℃に加熱した。反応混合物を水および酢酸エチルで希釈し、水層を酢酸エチル×2で抽出し、有機層を水およびブラインで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して、鮮黄色の固体を得た。未精製の固体をEt2Oで摩砕して、G1(ii)を淡黄色の固体(1.9g、76%)として得た。質量スペクトル:C22H27N6O5の計算値(M+H):455。実測値:455。
【0149】
中間体G1(iii):3−{[(5−シアノピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}−6,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1(4H)−カルボン酸エチル
G1(ii)(1.9g、4.18mmol)のDCM(20mL)溶液に、20mLのHCl/ジオキサン溶液を加えた。反応混合物を22℃で終夜攪拌した。懸濁液を濃縮して、G1(iii)の淡黄色の固体(1.9g、100%)を得た。質量スペクトル:C17H19N6O3の計算値(M+H):355。実測値:355。
【0150】
中間体G1(iv):5−(クロロカルボニル)−3−{[(5−シアノピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}−6,6−ジメチル−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−1(4H)−カルボン酸エチル
G1(iii)(1.90g、4.45mmol)のDCM(50mL)溶液にDIPEA(2.30mL、17.8mmol)を加えた。反応混合物を−78℃に冷却し、DCM(30mL)溶液にしたトリホスゲン(0.924g、3.11mmol)を滴下漏斗で滴下した。反応液を−70℃で15分間攪拌し、次いでNaHCO3(飽和水溶液)で失活させ、22℃に温めた。反応混合物を水で希釈し、水層をDCM×2で抽出した。有機層を水およびブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濃縮して、G1(iv)を鮮黄色の固体(1.9g、100%)として得た。
【0151】
実施例G1:5−シアノ−N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)ピリジン−2−カルボキサミド
G1(iv)(0.250g、0.600mmol)および(2R,5S)−2,5−ジメチル−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピペラジン(0.238g、1.20mmol)のTHF(4mL)溶液に、DIPEA(0.5mL、3.00mmol)を加えた。反応液を封管中で終夜90℃に加熱した。揮発性物質を真空中で除去し、残渣をMeOH(3mL)に溶解させた。TEA(3mL)を加え、溶液を45℃で3時間攪拌した。溶液を濃縮し、未精製の混合物を分取クロマトグラフィーによって精製して、G1を白色粉末(0.130g、収率38%)として得た。
【0152】
(実施例G2〜G3)
実施例G2〜G3は、上記実施例G1と類似の方法を使用して調製した。
【0153】
(実施例H1)
N−[5−({(2S,5R)−4−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]−2,5−ジメチルピペラジン−1−イル}カルボニル)−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル]ピリジン−2−カルボキサミド
【0154】
【化29】

中間体H1(i):1,6−ジオキサスピロ[2.5]オクタン
4−メチレンテトラヒドロ−2H−ピラン(1.00g、10.2mmol)のCHCl(30mL)溶液を氷浴中に置き、次いでm−クロロペルオキシ安息香酸(2.46g、14.3mmol)を3回に分けて加えた。反応液をゆっくりと室温に温め、3時間攪拌し、次いで10% NaOH(水溶液)(10mL)で失活させ、CHCl(2×15mL)で抽出した。抽出物を合わせて乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮して、中間体H1(i)を透明な油状物(607mg、52%)として得た。H NMR(300MHz,クロロホルム−d)δppm 1.45〜1.63(m,2H)、1.76〜1.99(m,2H)、2.69(s,2H)、3.71〜3.95(m,4H)。
【0155】
中間体H1(ii):4−{[(2R,5S)−4−ベンジル−2,5−ジメチルピペラジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール
マイクロ波装置用バイアルに、1,6−ジオキサスピロ[2.5]オクタン(259mg、2.3mmol)、(2S,5R)−1−ベンジル−2,5−ジメチルピペラジン(464mg、2.3mmol)、および5mLのMeOHを加えた。バイアルをマイクロ波装置中で2時間150℃に加熱した。未精製の反応液を濃縮して中間体H1(ii)(723mg、100%)を得た。H NMR(300MHz,クロロホルム−d)δppm 0.92(d,J=6.22Hz,3H)、1.13(d,J=5.84Hz,3H)、1.35〜1.45(m,1H)、1.46〜1.68(m,4H)、1.83(dd,J=11.30,9.80Hz,1H)、2.12(d,J=13.94Hz,1H)、2.36〜2.53(m,3H)、2.60〜2.69(m,2H)、2.85(d,J=9.04Hz,1H)、3.08(d,J=13.38Hz,1H)、3.71〜3.82(m,4H)、4.04(d,J=13.38Hz,1H)、7.10〜7.47(m,5H)。質量スペクトル:C1930の計算値(M+H):318。実測値:318。
【0156】
中間体H1(iii):4−{[(2R,5S)−2,5−ジメチルピペラジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オール
H1(ii)(723mg、2.3mmol)をMeOH(15mL)に溶かした窒素パージした溶液に、Pd/C(72mg、0.07mmol)を加えた。反応液をHガスでの排気−再給気(3×)にかけ、次いで終夜H雰囲気中に置いた。完了した反応混合物をCelite床で濾過し、CHClおよびMeOHですすぎ、次いで濃縮して、表題化合物(500mg、97%)を黄色〜橙色の半固体として得た。質量スペクトル:C1224の計算値(M+H):229。実測値:229。
【0157】
化合物H1:N−[5−({(2S,5R)−4−[(4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル]−2,5−ジメチルピペラジン−1−イル}カルボニル)−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル]ピリジン−2−カルボキサミド
表題化合物は、(3S,8aS)−3−メチルオクタヒドロピロロ[1,2−a]ピラジンの代わりに4−{[(2R,5S)−2,5−ジメチルピペラジン−1−イル]メチル}テトラヒドロ−2H−ピラン−4−オールを用いた、上記実施例A1と類似の方法を使用して調製した。
【0158】
表1は、本発明の化合物の完全なリストとなるものであり、入手可能な場合は関連するH NMRデータおよびKi値を含む。
【0159】
上記式Iの化合物は、いずれかを標準の化学操作によって別の類似化合物に変換することができる。すべての出発材料、試薬、および溶媒は、別段の記述がない限り、市販されており、当業者に知られている。そうした化学操作は、当業者に知られており、(a)T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版、John Wiley and Sons、ニューヨーク、1991年に概略が述べられている方法による保護基の除去、(b)脱離基(ハロゲン化物、メシラート、トシラートなど)を第一級もしくは第二級アミン、チオール、またはアルコールで置換して、それぞれ第二級もしくは第三級アミン、チオエーテル、またはエーテルを生成する操作、(c)第一級および第二級アミンをイソシアナート、酸塩化物(または他の活性化したカルボン酸誘導体)、クロロギ酸アルキル/アリール、または塩化スルホニルで処理して、対応する尿素、アミド、カルバマート、またはスルホンアミドを得る操作、(d)アルデヒドを使用する第一級または第二級アミンの還元的アミノ化がこれに含まれる。
【0160】
本発明の化合物は、不斉炭素原子を有する場合もある。ジアステレオ異性体混合物は、当業者に知られている方法、例えばクロマトグラフィーまたは分別結晶化によって、その物理化学的な差異に基づいてその個々のジアステレオ異性体に分離することができる。鏡像異性体は、鏡像異性体混合物を、適切な光学活性のある化合物(例えばアルコール)との反応によってジアステレオ異性体混合物に変換し、ジアステレオ異性体を分離し、個々のジアステレオ異性体を対応する純粋な鏡像異性体に変換(例えば加水分解)することにより、分離することができる。ジアステレオ異性体混合物および純粋な鏡像異性体を含めたそのすべての異性体を本発明の一部であるとみなす。
【0161】
性質が塩基性である式Iの化合物は、様々な無機酸および有機酸と多種多様な異なる塩を形成することができる。そのような塩は、動物に投与するためには薬学的に許容できなければならないが、実際には、式Iの化合物を反応混合物から薬学的に許容されない塩として最初に単離し、次いで後者をアルカリ試薬での処理によって単純に変換して遊離塩基化合物に戻し、引き続いて後者の遊離塩基を薬学的に許容できる酸付加塩に変換することが望ましい場合が多い。本発明の塩基化合物の酸付加塩は、塩基化合物を、水性の溶媒媒質、またはメタノールやエタノールなどの適切な有機溶媒中で実質的に等価な量の選択した鉱酸または有機酸で処理することにより、容易に調製される。溶媒を慎重に蒸発させると、所望の固体塩が容易に得られる。溶液に適切な鉱酸または有機酸を加えることにより、遊離塩基の有機溶媒溶液から所望の酸の塩を沈殿させることもできる。
【0162】
性質が酸性である式Iの化合物は、薬理学的に許容できる様々なカチオンと塩基の塩を形成することができる。そのような塩の例として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、特にナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。こうした塩はすべて、従来の技術によって調製される。薬学的に許容できる本発明の塩基の塩の調製に試薬として使用される化学的な塩基は、酸性の式Iの化合物と非毒性の塩基の塩を形成する塩基である。そのような非毒性の塩基の塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの薬理学的に許容できるカチオンから誘導される塩が挙げられる。こうした塩は、対応する酸性化合物を、所望の薬理学的に許容できるカチオンを含有する水溶液で処理し、次いで得られる溶液を好ましくは減圧下で蒸発にかけて乾燥させることにより容易に調製できる。別法として、酸性化合物と所望のアルカリ金属アルコキシドの各低級アルカノール溶液を混ぜ合わせ、次いで、得られる溶液を前と同じようにして蒸発乾燥することにより調製してもよい。どちらの場合でも、反応の完全性および所望の最終生成物の最大収率を確保するために、化学量論量の試薬を用いることが好ましい。
【0163】
本発明の化合物は、プロテインキナーゼCの阻害剤であり、好ましくは、プロテインキナーゼCのβ−1、β−2、および場合によりαアイソザイムを選択的に阻害する。特に、β−2アイソザイムに関して、本発明の化合物はKi値が200nM未満である。
【0164】
プロテインキナーゼCの阻害剤としては、化合物は、プロテインキナーゼCのその病態における役割が実証されている状態の治療において有用である。当業界で認められている状態には、真性糖尿病およびその合併症、癌、虚血、炎症、中枢神経系障害、心血管疾患、アルツハイマー病、ならびに皮膚科疾患が含まれる。
【0165】
プロテインキナーゼCは、糖尿病のいくつかの異なる側面と関連付けられている。プロテインキナーゼCの過剰な活性は、インスリンシグナル伝達の欠陥、したがってII型糖尿病で見られるインスリン抵抗性と関連付けられている。Karasik,A.ら、J.Biol.Chem.第265巻:10226〜10231ページ(1990年);Chen,K.S.ら、Trans.Assoc.Am.Physicians第104巻:206〜212ページ(1991年);Chin,J.E.ら、J.Biol.Chem.第268巻:6338〜6347ページ(1993年)。さらに、高血糖状態にさらしたとき、糖尿病合併症に感受性があることがわかっている組織においてプロテインキナーゼC活性が著しく増大したことも、研究によって実証されている。Lee,T.S.ら、J.Clin.Invest.第83巻:90〜94ページ(1989年);Lee,T.S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci USA第86巻:5141〜5145ページ(1989年);Craven,P.A.およびDeRubertis,F.R.、J.Clin.Invest.第83巻:1667〜1675ページ(1989年);Wolf,B.A.、J.Clin.Invest.第87巻:1643〜1648ページ(1991年)。
【0166】
プロテインキナーゼC活性は久しく、細胞増殖、腫瘍プロモーション、および癌と関連付けられてきた。Rotenberg,S.A.およびWeinstein,I.B.、Biochem.Mol.Aspects Sel.Cancer第1巻:25〜73ページ(1991年)。Ahamdら、Molecular Pharmacology:第43巻、858〜862ページ(1993年)。プロテインキナーゼC阻害剤は、動物において腫瘍増殖を妨げるのに有効であることがわかっている。Meyer,T.ら、Int.J.Cancer第43巻:851〜856ページ(1989年);Akinagaka,S.ら、Cancer Res.第51巻:4888〜4892ページ(1991年)。より最近では、プロテインキナーゼCβ阻害剤であるエンザスタウリング(LY317615.HCl)が、アポトーシスの誘導および増殖中の培養腫瘍細胞の抑制によって、特にヒト膠芽細胞腫および結腸癌に対して直接の腫瘍効果を与えることがわかっている。Graffら、Cancer Res.第16巻:7462〜7469ページ(2005年)。本発明の化合物は、他の化学療法薬と共に投与されたときそれ自体が有効な化合物となる、多剤反転(MDR)剤としても働く。
【0167】
プロテインキナーゼC阻害剤は、好中球酸化バースト、Tリンパ球のCD3下方調節、およびフォルボールによって誘発される足浮腫などの炎症応答をブロックすることがわかっている。Towemy,B.ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.第171巻:1087〜1092ページ(199));Mulqueen,M.J.ら、Agents Actions第37巻:85〜89ページ(1992年)。したがって、PKCの阻害剤として、本発明の化合物は、炎症の治療において有用である。
【0168】
プロテインキナーゼC活性は、中枢神経系の機能性において中心的役割を果たす。Huang,K.P.、Trends Neurosci.第12巻:425〜432ページ(1989年)。さらに、プロテインキナーゼC阻害剤は、局所的および中心的な虚血性脳障害および脳水腫で見られる損傷を予防することもわかっている。Hara,H.ら、J.Cereb.Blood Flow Metab.第10巻:646〜653ページ(1990年);Shibata,S.ら、Brain Res.第594巻:290〜294ページ(1992年)。プロテインキナーゼCは、アルツハイマー病に関係していることも断定されている。Shimohama,S.ら、Neurology第43巻:1407〜1413ページ(1993年)。したがって、本発明の化合物は、アルツハイマー病および虚血性脳障害の治療において有用である。
【0169】
プロテインキナーゼC活性は、心血管疾患においても重要な役割を果たす。脈管構造におけるプロテインキナーゼC活性の増大は、血管収縮および高血圧の増進を引き起こすことがわかっている。既知のプロテインキナーゼC阻害剤は、この増進を阻止した。Bilder,G.E.ら、J.Pharmacol.Exp.Ter.第252巻:526〜430ページ(1990年)。プロテインキナーゼC阻害剤は好中球酸化バーストの阻害を示すので、プロテインキナーゼC阻害剤は、心血管虚血を治療し、虚血後の心機能を改善するのにも有用である。Muid,R.E.ら、FEBS Lett.第293巻:169〜172ページ(1990年);Sonoki,H.ら、Kokyu−To Junkan第37巻:669〜674ページ(1989年)。血小板機能におけるプロテインキナーゼCの役割も検討されており、プロテインキナーゼCレベルの上昇は作動薬に対する応答の増大と相関があることがわかっている。Bastyr III,E.J.およびLu,J.、Diabetes第42巻:(増刊1)97A(1993年)。PKCは、血小板活性因子による微小血管透過性のモジュレーションにおいて、生化学的な経路との関わり合いが示されている。Kobayashiら、Amer.Pjus.Soc.H1214−H1220(1994年)。強力なプロテインキナーゼC阻害剤は、作動薬によって誘発される血小板の凝集に影響を及ぼすことが実証されている。Toullec,D.ら、J.Biol.Chem.第266巻:15771〜15781ページ(1991年)。プロテインキナーゼC阻害剤は、作動薬によって誘発される平滑筋細胞増殖もブロックする。Matsumoto,H.およびSasaki,Y.、Biochem.Biophys,Res.Commun.第158巻:105〜109ページ(1989年)。したがって、本発明の化合物は、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、および再狭窄の治療において有用である。
【0170】
プロテインキナーゼCの異常活性は、乾癬などの皮膚科障害とも関連付けられている。Horn,F.ら、J.Invest.Dermatol.第88巻:220〜222ページ(1987年);Raynaud,F.およびEvain−Brion,D.、Br.J.Dermatol.第124巻:542〜546ページ(1991年)。乾癬は、ケラチノサイトの異常な増殖を特徴とする。既知のプロテインキナーゼC阻害剤は、そのPKC阻害剤としての効力に対応するようにして、ケラチノサイト増殖を阻害することがわかっている。Hegemann,L.ら、Aarch.Dermatol.Res.第283巻:456〜460ページ(1991年);Bollag,W.B.ら、J.Invest.Dermatol.第100巻:240〜246ページ(1993年)。したがって、PKC阻害剤は、乾癬の治療において有用である。
【0171】
本発明の化合物はまた、アイソザイム選択的である。本発明の化合物は、プロテインキナーゼCβ1およびβ2アイソザイム、さらに場合によりαアイソザイムを、残りのプロテインキナーゼCアイソザイム、すなわちγ、δ、ε、ζおよびηより優先的に阻害する。したがって、本発明の化合物は、プロテインキナーゼCのβ1およびβ2アイソザイム、さらに場合によりαアイソザイムを、他のPKCアイソザイムの阻害を最小限に抑えながら、はるかに低い濃度で阻害する。
【0172】
本発明の化合物は、プロテインキナーゼCアイソザイムのβ−1、β−2、および場合によりαが関連する疾患状態の治療に特に有用である。例えば、糖尿病で見られる血糖値の上昇は、血管組織におけるアイソザイム特異的なβ−2アイソザイムの上昇をもたらす。Proc.Natl Acad.Sci.USA第89巻:11059〜11065ページ(1992年)。ヒト血小板におけるβアイソザイムの糖尿病と関連のある上昇は、作動薬に対するその応答の変化との相互関係が証明されている。Bastyr III,E.J.およびLu,J.、Diabetes第42巻:(増刊1)97A(1993年)。ヒトビタミンD受容体は、プロテインキナーゼCβによって選択的にリン酸化されることがわかっている。このリン酸化は、受容体の機能性の変化と関連付けられている。Hsiehら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA第88巻:931509319(1991年);Hsiehら、J.Biol.Chem.第268巻:15118〜15126ページ(1993年)。さらに、最近の研究では、β2アイソザイムは、赤白血病の細胞増殖の原因であり、αアイソザイムは、そうした同じ細胞の巨核球分化に関与することもわかっている。Murrayら、J.Biol.Chem.第268巻:15847〜15853ページ(1993年)。
【0173】
上で論述したβ1およびβ2アイソザイムに加えて、プロテインキナーゼCαアイソザイムは、腎症の治療において潜在的可能性を秘めていることがわかっており、すなわち、STZによって糖尿病が誘発されたPKC−αノックアウトマウスが、腎症の改善を示している。Menneら、Diabetes第53巻:2101〜2109ページ(2005年)。PKCαは、心臓収縮力(Brazら、Nature Medicine第10巻:248〜254ページ(2004年))、また内皮細胞におけるAkt活性化およびeNOSリン酸化の調節(Partovian&Simons、Cellular Signalling第16巻:951〜957ページ(2004年))との関わり合いが示されている。
【0174】
アッセイ
プロテインキナーゼCβ2(PKCβII)は、PKC偽基質ペプチド(A→S、RFARKGSLRQKNV)へのホスホリル転移に付随する、ATPからのADPの生成を触媒する。この転移は、ピルビン酸キナーゼ(PK)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の活性を介したβ−NADHの酸化と対になっている。β−NADHのNAD+への変換を、Molecular Devices SPECTRA max PLUS分光光度計を使用して、340nm(e=6.22cm−1mM−1)での吸光度の減少によってモニターする。
【0175】
50mMのHEPES、pH7.4、5nMのPKC、23単位のピルビン酸キナーゼ、33単位の乳酸デヒドロゲナーゼ、0.15mMのペプチド、0.1mMのATP、1mMのDTT、4mMのPEP、8mMのMgCl、0.3mMのNADH、60mMのCaCl、10mg/mLのPS、50ng/mLのPMA、7.5%のDMSO、および約10000nM〜0.169nMの化合物阻害剤を含有する0.1mLのアッセイ緩衝液中で、Molecular Devices分光光度計において透明な96ウェルマイクロタイタープレートにて30℃で20分間、典型的なアッセイを実施した。3−sn−ホスファチジル−L−セリン(PS)およびフォルボール−12−ミリスチン酸−13−酢酸(PMA)の保存液を、アッセイ緩衝液に滴下する直前に30秒間超音波処理し、100μMのATPを加えてアッセイを開始した。
【0176】
bi−biキナーゼ反応についての定常状態の動力学的パラメーターは、飽和状態をもたらすリン酸アクセプターペプチド基質濃度(0.15mM)で、初速度データをミカエリスメンテン式
v=Vmax[S]/(K+[S])
[式中、vは測定された初速度、Vmaxは最大酵素速度、[S]はATP基質濃度、KはATPのミカエリス定数である]に当てはめることにより求めた。酵素ターンオーバー値(kcat)は、kcat=Vmax[E]([E]は総酵素濃度である)に従って算出した。酵素阻害定数(見かけ上のK値)は、可変の阻害剤濃度での初速度をMorrisonの式に基づくATP競合阻害のモデルに当てはめて求めた。Morrison,J.F.、Biochim.Biophys Acta第185巻:269〜286ページ(1969年)。
【0177】
医薬組成物/製剤、投与量、および投与方式
様々な医薬組成物の調製方法と活性化合物の詳細な量は、当業者に知られており、または明白となろう。さらに、当業者は製剤および投与技術に精通している。このような話題は、例えば、「Goodman and Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics」、現行版、Pergamon Press、および「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、現行版、Mack Publishing,Co.、ペンシルヴァニア州イーストンで論述されている。こうした技術は、本明細書に記載の方法および組成物の適切な態様および実施形態で用いることができる。以下の例は、例示目的で提供するにすぎず、本発明を限定するためのものではない。
【0178】
式Iの化合物は、PKCβIIの仲介による疾患の治療に使用するのに適する局所、経口、および非経口の医薬製剤にして提供することができる。本発明の化合物は、錠剤またはカプセル剤として、油性もしくは水性の懸濁液、ロゼンジ、トローチ剤、粉末、顆粒、乳濁液、シロップ、またはエリキシルとして経口的に投与することができる。経口的な使用のための組成物は、薬剤として洗練され、味のよい製剤を製造するために、1種または複数の着香剤、甘味剤、着色剤、および保存剤を含んでよい。このような錠剤の製造では、錠剤は、薬学的に許容できる賦形剤を助剤として含有してもよい。当業界で慣習的であるように、こうした錠剤をモノステアリン酸グリセリルやジステアリン酸グリセリルなどの薬学的に許容できる腸溶コーティングでコートして、消化管での崩壊および吸収を遅らせ、より長期間にわたる持続性作用を提供することもできる。
【0179】
経口的な使用のための製剤は、活性成分が、不活性な固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合される、硬ゼラチンカプセル剤の形でもよい。こうした製剤は、活性成分が、水、またはラッカセイ油、流動パラフィン、オリーブ油などの油媒質と混合される、軟ゼラチンカプセル剤の形でもよい。
【0180】
水性懸濁液は通常、水性懸濁液の製造に適する賦形剤と混和された活性成分を含有する。そのような賦形剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、アカシアゴムなどの懸濁化剤;レシチンなどの天然のホスファチド、エチレンオキシドと長鎖脂肪酸の縮合物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、エチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトールから誘導される部分エステルの縮合物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、または脂肪酸無水ヘキシトール、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンでよい分散剤もしくは湿潤剤でよい。
【0181】
医薬組成物は、水性または油性の無菌注射用懸濁液の形でもよい。その懸濁液は、上述の適切な分散剤または湿潤剤と懸濁化剤とを使用して、既知の方法に従って製剤することができる。無菌の注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の懸濁液として、例えば1,3−ブタンジオール溶液として製剤することもできる。許容できる媒体および溶媒の中でも、水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム溶液を使用することができる。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含めて、任意の無刺激性の固定油を使用してもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も注射剤の製剤に使用することができる。
【0182】
式Iの化合物は、薬物を直腸投与するための坐剤の形で投与することもできる。そうした組成物は、薬物を、摂氏約25度で固体であるが、直腸温では液体であり、したがって直腸で融解して薬物を放出する適切な非刺激性の賦形剤と混合することにより調製できる。そのような材料としては、カカオ脂および他のグリセリドが挙げられる。
【0183】
局所的な使用の製剤については、例えば、本発明の化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液、または懸濁液を用いる。
【0184】
式Iの化合物は、小型の単層ベシクル、大型の単層ベシクル、多層ベシクルなどのリポソーム送達系の形で投与することもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、ホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から生成することができる。
【0185】
本発明の化合物の投与量レベルは、約0.5mg/kg体重〜約100mg/kg体重程度である。好ましい投与量割合は、約30mg/kg体重〜約100mg/kg体重の間である。しかし、任意の特定の患者のための詳細な用量レベルは、投与する特定の化合物の活性、年齢、体重、健康全般、性別、食事、投与時期、投与経路、排出率、薬物の組合せ、および治療がなされる特定の疾患の重症度を含めた、いくつかの要素に応じて決まることは理解されよう。本発明の化合物は、治療活性を強化するために、スルホニル尿素などの経口的に活性のある他の抗糖尿病薬化合物、例えばトルブタミドと同時に投与してもよい。
【0186】
眼への投与について、本発明の化合物は、角膜および/または強膜、さらに、例えば前房、後房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜/網膜、および強膜を含めた眼の内部領域に化合物を浸透させるのに十分な期間、化合物が眼の表面と接触した状態で保たれるように、薬学的に許容できる眼科用媒体に含めて送達する。薬学的に許容できる眼科用媒体は、軟膏、植物油、またはプセル化材料(encapsulating material)である。本発明の化合物は、硝子体液または房水に直接注射することもできる。
【0187】
本発明の化合物および薬学的に許容できるその塩は、加齢黄斑変性症(滲出型および萎縮型両方の「AMD」)、緑内障、糖尿病性網膜症(糖尿病性黄斑浮腫を含める)、脈絡膜新生血管膜(CNV)、ぶどう膜炎、近視性変性、眼腫瘍、網膜中心静脈閉鎖症、ルベオーシス、眼の新血管新生、中心性漿液性網膜症、ドライアイなどの眼表面円板(ocular surface discus)、網膜中心動脈閉塞症、嚢胞状黄斑浮腫、および他の網膜変性疾患などの、眼疾患治療のために投与することもできる。
【0188】
本化合物は、デポー製剤として製剤することもできる。そうした長時間作用性の製剤は、(例えば皮下または筋肉内への)埋め込み、筋肉内注射、または上述のテノン下注射もしくは硝子体内注射によって投与することができる。別法として、活性成分は、使用前に適切な媒体、例えば発熱物質を含まない無菌水で構成するための粉末形態にしてもよい。
【0189】
本発明の特に好ましい実施形態では、本化合物は、(眼科製剤に一般に使用される保存剤および抗菌剤のいずれかと組み合わせた)食塩水に含めて局所投与向けに調製し、目薬の形で投与することもできる。溶液または懸濁液は、その純粋な形で調製し、毎日数回投与することができる。別法として、上述のように調製されたこの組成物を、角膜に直接投与することもできる。
【0190】
好ましい実施形態では、角膜に結合する粘膜付着性のポリマーを用いて組成物を調製する。したがって化合物は、例えば、(例えば、許容できる油中の乳濁液としての)適切な高分子材料もしくは疎水性材料、またはイオン交換樹脂を用い、またはあまり可溶性でない誘導体として、例えばあまり可溶性でない塩として製剤することができる。
【0191】
疎水性化合物用の医薬担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水に混和性の有機ポリマー、および水相を含む共溶媒系である。共溶媒系は、VPD共溶媒系でよい。VPDは、3%w/vのベンジルアルコール、8%w/vの非極性界面活性剤ポリソルベート80、および65%w/vのポリエチレングリコール300が無水エタノール中で体積を構成する溶液である。VPD共溶媒系(VPD:5W)は、5%デキストロース水溶液で1:1希釈したVPDを含有する。この共溶媒系は、疎水性化合物を十分に溶解し、全身投与するとそれ自体が生じる毒性は弱い。当然、共溶媒系の比率は、その溶解性および毒性特性を破壊することなしに、かなり様々でよい。さらに、共溶媒構成成分の本性も様々でよい。例えば、他の弱毒性非極性界面活性剤をポリソルベート80の代わりに使用することができ、ポリエチレングリコールの画分サイズは様々でよく、他の生体適合性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンをポリエチレングリコールと取り替えてもよく、デキストロースの代わりに他の糖または多糖を用いてもよい。
【0192】
別法として、疎水性医薬化合物用の他の送達系を用いてもよい。リポソームおよび乳濁液は、疎水性薬物用の送達媒体または担体の既知の例である。通常はより強い毒性という犠牲が払われるが、ジメチルスルホキシドなどのある種の有機溶媒を使用することもできる。さらに、化合物は、治療薬を含有する固体疎水性ポリマーの半透性基材などの、徐放性の系を使用して送達することもできる。様々な徐放性材料が確立されており、当業者に知られている。徐放性のカプセル剤は、その化学的性質に応じて、数週間から100日にわたり化合物を放出する。治療用試薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質安定化のためのさらなる戦略を用いることもできる。
【0193】
医薬組成物は、固相またはゲル相の適切な担体または賦形剤を含んでもよい。そのような担体または賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられる。
【0194】
本発明の化合物の一部は、薬学的に適合性のある対イオンとの塩として提供することもできる。薬学的に適合性のある塩は、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含めた多くの酸と生成し得る。塩は、対応する遊離塩基形態よりも、水性または他のプロトン性溶媒に可溶性になる傾向がある。
【0195】
本発明の好ましい化合物の製剤について、以下の実施例で詳述するが、当業者ならば、記載する化学反応は、他のいくつかの本発明の化合物が調製されるように容易に適合させられることがわかるであろう。例えば、本発明による例示していない化合物の合成は、当業者に明白な変更形態によって、例えば、障害となる基を適切に保護し、当業界で知られている他の適切な試薬に変更し、または反応条件のごく普通の修正を行うことによって、首尾よく実施することができる。別法として、本明細書で開示し、または当業界で知られている他の反応も、他の本発明の化合物の調製に適用できることがわかるであろう。
【0196】
表1
以下の表1は、本発明の実施形態のKi、構造、名称、およびNMRデータを示す。特に詳細に例示しない限り、表1にある化合物は、市販の材料から出発し、または既知の方法によって、上述の実施例のごく普通の変更形態を使用して合成した。本発明を具体的な実施形態に即して説明してきたが、当業者ならば、本発明の日常的な実験および実践の中でさらなる変更および修正を行ってよいことがわかるであろう。したがって、本発明は、先の説明によっては限定されず、添付の請求項およびその同等物によって規定されるものとする。先の詳細な説明および実施例は、理解を明確にするために示したにすぎない。
【0197】
【表1−1】

【0198】
【表1−2】

【0199】
【表1−3】

【0200】
【表1−4】

【0201】
【表1−5】

【0202】
【表1−6】

【0203】
【表1−7】

【0204】
【表1−8】

【0205】
【表1−9】

【0206】
【表1−10】

【0207】
【表1−11】

【0208】
【表1−12】

【0209】
【表1−13】

【0210】
【表1−14】

【0211】
【表1−15】

【0212】
【表1−16】

【0213】
【表1−17】

【0214】
【表1−18】

【0215】
【表1−19】

【0216】
【表1−20】

【0217】
【表1−21】

【0218】
【表1−22】

【0219】
【表1−23】

【0220】
【表1−24】

【0221】
【表1−25】

【0222】
【表1−26】

【0223】
【表1−27】

【0224】
【表1−28】

【0225】
【表1−29】

【0226】
【表1−30】

【0227】
【表1−31】

【0228】
【表1−32】

【0229】
【表1−33】

【0230】
【表1−34】

【0231】
【表1−35】

【0232】
【表1−36】

【0233】
【表1−37】



【0234】
【表1−38】

【0235】
【表1−39】

【0236】
【表1−40】

【0237】
【表1−41】

【0238】
【表1−42】

【0239】
【表1−43】

【0240】
【表1−44】

【0241】
【表1−45】

【0242】
【表1−46】

【0243】
【表1−47】

【0244】
【表1−48】

【0245】
【表1−49】

【0246】
【表1−50】

【0247】
【表1−51】

【0248】
【表1−52】

【0249】
【表1−53】

【0250】
【表1−54】

【0251】
【表1−55】

【0252】
【表1−56】

【0253】
【表1−57】

【0254】
【表1−58】

【0255】
【表1−59】

【0256】
【表1−60】

【0257】
【表1−61】

【0258】
【表1−62】

【0259】
【表1−63】

【0260】
【表1−64】

【0261】
【表1−65】

【0262】
【表1−66】

【0263】
【表1−67】

【0264】
【表1−68】

【0265】
【表1−69】

【0266】
【表1−70】

【0267】
【表1−71】

【0268】
【表1−72】

【0269】
【表1−73】

【0270】
【表1−74】

【0271】
【表1−75】

【0272】
【表1−76】

【0273】
【表1−77】

【0274】
【表1−78】

【0275】
【表1−79】

【0276】
【表1−80】

【0277】
【表1−81】

【0278】
【表1−82】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物または薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物
【化1】

[式中、
Xは、CまたはNであり、
は、アリールまたは
【化2】

から選択され、環Aは、Zを含んでいる5〜6員ヘテロシクリルであり、Zは、結合点に隣接するO、SまたはNヘテロ原子であり、Rは、0〜3個のR基でさらに置換されていてもよく、R基の2つが、環化して、これが結合しているアリールまたはヘテロシクリルに縮合した、アリールまたはNもしくはSを含んでいる5〜6員ヘテロシクリル環を形成していてもよく、
は、H、または0〜3個のR基でさらに置換されていてもよいC〜Cアルキルであり、
は、環上の任意の不飽和炭素に結合していてよく、H、C〜Cアルキルもしくはハロゲン化物、またはペルフルオロアルキルから選択され、
およびRは、H、R−O−R、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、−(R−(C〜C12シクロアルキル)、−(R−アリール、−(R−(3〜15員ヘテロシクリル)、−(R−(C〜Cペルフルオロアルキル)、−(R−ハロゲン化物、−(R−CN、−(R−C(O)R、−(R−C(O)OR、−(R−C(O)NR、−(R−OR、−(R−OC(O)R、−(R−OC(O)NR、−(R−O−S(O)R、−(R−OS(O)、−(R−OS(O)NR、−(R−OS(O)NR、−(R−NO、−(R−NR、−(R−N(R)C(O)R、−(R−N(R)C(O)OR、−(R−N(R)C(O)NR、−(R−N(R)S(O)、−(R−N(R)S(O)R、−(R−SR、−(R−S(O)R、−(R−S(O)、−(R−S(O)NR、−(R−S(O)NR、−(R−O−(R−NR、または−(R−NR−(R)−ORからそれぞれ独立に選択され、またはRおよびRは、一緒に環化して、3〜5員スピロシクロアルキルを形成していてもよく、前記C〜C12シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールのいずれかは、0〜3個のR基によってそれぞれ独立にさらに置換されていてもよく、
は、H、R−O−R、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、−(R−(C〜C12シクロアルキル)、−(R−アリール、−(R−(3〜15員ヘテロシクリル)、−(R−(C〜Cペルフルオロアルキル)、−(R−ハロゲン化物、−(R−CN、−(R−C(O)R、−(R−C(O)OR、−(R−C(O)NR、−(R−OR、−(R−OC(O)R、−(R−OC(O)NR、−(R−O−S(O)R、−(R−OS(O)、−(R−OS(O)NR、−(R−OS(O)NR、−(R−NO、−(R−NR、−(R−N(R)C(O)R、−(R−N(R)C(O)OR、−(R−N(R)C(O)NR、−(R−N(R)S(O)、−(R−N(R)S(O)R、−(R−SR、−(R−S(O)R、−(R−S(O)、−(R−S(O)NR、−(R−S(O)NR、−(R−O−(R−NR、または−(R−NR−(R)−ORから選択され、またはRは、Rと一緒になって環化して、これらが結合しているピペラジンまたはピペラジンに縮合した4〜7員ヘテロシクリル環を形成していてもよく、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、およびヘテロアリールのいずれかは、0〜3個のR基でそれぞれ独立にさらに置換されていてもよく、
各RおよびRは、それぞれ独立にC〜Cアルキルであり、または一緒に環化して、シクロプロピルまたはシクロブチルを形成することもでき、
各Rは、H、R−O−R、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、−(R−(C〜C12シクロアルキル)、−(R−アリール、−(R−(3〜15員ヘテロシクリル)、−(R−(C〜Cペルフルオロアルキル)、−(R−ハロゲン化物、−(R−CN、−(R−C(O)R、−(R−C(O)OR、−(R−C(O)NR、−(R−OR、−(R−OC(O)R、−(R−OC(O)NR、−(R−O−S(O)R、−(R−OS(O)、−(R−OS(O)NR、−(R−OS(O)NR、−(R−NO、−(R−NR、−(R−N(R)C(O)R、−(R−N(R)C(O)OR、−(R−N(R)C(O)NR、−(R−N(R)S(O)、−(R−N(R)S(O)R、−(R−SR、−(R−S(O)R、−(R−S(O)、−(R−S(O)NR、−(R−S(O)NR、−(R−O−(R−NR、または−(R−NR−(R)−ORからそれぞれ独立に選択され、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、R、R、C〜C12シクロアルキル、アリール、または3〜15員ヘテロシクリルのいずれかは、−ハロゲン化物、C〜Cアルキル、C〜Cペルフルオロアルキル、C〜Cアルコキシル、C〜Cアルキルアミノ、CN、またはオキソから選択される1〜3個の基によってそれぞれ独立にさらに置換されていてもよく、
各R、RおよびRは、H、C〜Cペルフルオロアルキル、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、−(C〜Cアルキレン)−(C〜Cシクロアルキル)、−(C〜Cアルキレン)−(C〜Cシクロアルケニル)、C〜Cアルキニル、−(C〜Cアルキレン)−アリール、または−(C〜Cアルキレン)−(3〜8員ヘテロシクリル)からそれぞれ独立に選択され、各R、RおよびRは、ハロゲン化物、ヒドロキシル、−CN、C〜Cアルキル、C〜Cペルフルオロアルキル、C〜Cアルコキシル、およびC〜Cアルキルアミノから選択される0〜3個の基によってそれぞれ独立にさらに置換されていてもよく、またはRおよびRは、同じ窒素に連結しているとき、−(3〜8員ヘテロシクリル)を形成していてもよく、前記環は、ハロゲン化物、ヒドロキシル、−CN、C〜Cアルキル、C〜Cペルフルオロアルキル、C〜Cアルコキシル、またはC〜Cアルキルアミノから選択される0〜3個の基によってさらに置換されていてもよく、
各RおよびRは、それぞれ独立に、−(C〜Cアルキレン)−、−(C〜Cアルケニレン)−、または−(C〜Cアルキニレン)−であり、
各mは、それぞれ独立に0または1であり、
ただし、R、R、RおよびRは、すべてがHにはならない]。
【請求項2】
およびRが両方ともメチルである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できる塩。
【請求項3】
XがNである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できる塩。
【請求項4】
がピリジンまたはピペラジンである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できる塩。
【請求項5】
が5員ヘテロシクリルである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できる塩。
【請求項6】
が、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、またはイミダゾールからなる群から選択される、請求項5に記載の化合物または薬学的に許容できる塩。
【請求項7】
またはRがメチルである、前記請求項のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容できる塩。
【請求項8】
が−(R−(3〜15員ヘテロシクリル)である、前記請求項のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容できる塩。
【請求項9】
が−(Rテトラヒドロピランである、請求項8に記載の化合物または薬学的に許容できる塩。
【請求項10】
がテトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチルである、請求項9に記載の化合物または薬学的に許容できる塩。
【請求項11】
が(S)立体配置の−CHである、前記請求項のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容できる塩。
【請求項12】
が−(R−ORである、前記請求項のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容できる塩。
【請求項13】
N−(5−((2R,5S)−2,5−ジメチル−1−((テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)メチル)ピペラジン−4−カルボニル)−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)ピコリンアミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−5−フルオロピリジン−2−カルボキサミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−5−エチルイソキサゾール−3−カルボキサミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−2,4−ジメチル−1,3−オキサゾール−5−カルボキサミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−2−メチル−1,3−チアゾール−4−カルボキサミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−2−エチル−4−メチル−1,3−オキサゾール−5−カルボキサミド、
1−シクロブチル−N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−1−イソプロピル−1H−イミダゾール−4−カルボキサミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−2−エチル−1,3−オキサゾール−4−カルボキサミド、
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−5−モルホリン−4−イルピリジン−2−カルボキサミド、および
N−(5−{[(2S,5R)−2,5−ジメチル−4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)ピペラジン−1−イル]カルボニル}−6,6−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]ピラゾール−3−イル)−5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−カルボキサミド
からなる群から選択される化合物または薬学的に許容できる塩。
【請求項14】
有効量の前記請求項のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【請求項15】
真性糖尿病およびその合併症、癌、虚血、炎症、中枢神経系障害、心血管疾患、アルツハイマー病、皮膚科疾患pression、ウイルス性疾患、炎症性障害、または肝臓が標的器官である疾患の治療方法であって、哺乳動物に、有効量の前記請求項のいずれかに記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を投与することを含む方法。

【公表番号】特表2010−523643(P2010−523643A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502601(P2010−502601)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/IB2008/000862
【国際公開番号】WO2008/125945
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】