説明

新規のRAAG10細胞表面標的および当該標的を認識する抗体ファミリー

【課題】種々のヒトがんで発現されるRAAG10に結合するモノクローナル抗体を提供すること。
【解決手段】本発明は、疾病およびがんに関連する抗原、RAAG10の同定およびキャラクタリゼーションを提供する。さらに本発明は、抗原RAAG10を結合するモノクローナル抗体のファミリを提供し、RAAG10を発現する種々のヒトのがんおよび疾病を診断し処置する方法も提供する。別の態様では、本発明は、年4月9日および年4月23日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションにて保管された特許管理番号ATCC番号PTA−4217、ATCC番号PTA−4218、ATCC番号PTA−4244、およびATCC番号PTA−4245の宿主細胞株の任意の一つによって産生されるモノクローナル抗体抗RAAG10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本明細書は、2002年6月19日出願の米国仮出願第60/390,203号の利益を主張する。この出願は、その全体が参考として援用されている。
【0002】
(技術分野)
本発明は、生物学および免疫療法の分野にある。より具体的には、疾病およびがんに関連する新規の抗原、RAAG10、およびRAAG10に結合するモノクローナル抗体のファミリに関する。本発明はさらに、RAAG10に関連する多様なヒトの疾病およびがんを、抗RAAG10ファミリ抗体を用いて診断および/または処置することを提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
抗体は、診断学の公知の方法で使用されるほか、治療薬剤として有用であることがわかっている。たとえば、ここ数年、がんを処置するために、免疫療法を用いたり、または治療目的による抗体利用を用いたりしている。受動免疫療法には、モノクローナル抗体を使用しがんを処置することが含まれる。たとえば、非特許文献1を参照すること。これらの抗体には、腫瘍細胞の成長または生存の直接阻害、および体の免疫系による本来の細胞死滅活性を強化する能力の両方があるため、抗体固有の治療的生物活性を有することができる。これらの薬剤は、単独または放射線または化学療法薬と併用して投与することができる。このような治療例としてリツキシマブおよびトラスツズマブの二つがあげられ、それぞれ、非ホジキンリンパ腫および乳がんの処置用として承認されている。あるいは、抗体を使用して抗体コンジュゲートを作ることができる。抗体コンジュゲートでは、抗体が毒性物質に連結しており、その物質を腫瘍を標的とするように、具体的には腫瘍と結合させるようになっている。ゲムツズマブオゾガマイシンは、白血病の処置に使用される承認された抗体コンジュゲートの一例である。がん細胞に結合し、診断および治療への利用が可能とされるモノクローナル抗体は、刊行物に開示されている。たとえば以下の特許明細書、特に標的タンパク質の分子量をいくつか開示しているものを参照すること:特許文献1(200kDのc−erbB−2(Her2)のほか、サイズが40〜200KDの未知の抗原)および特許文献2(50kDおよび55kDの腫瘍胎児タンパク質)。臨床試験中の抗体の例および/または固形腫瘍を処置するものとして承認された例として、トラスツズマブ(抗原:180kD、HER2/neu)、エドレコロマブ(抗原:40〜50kD、Ep−CAM)、抗人乳脂肪球(HMFG1)(抗原>200kD、HMWムチン)、セツキシマブ(抗原:150kDおよび170kD、EGF受容体)、アレムツズマブ(抗原:21〜28kD、CD52)、およびリツキシマブ(抗原:35kD、CD20)が挙げられる。
【0004】
乳がんの処置に使用されるトラスツズマブ(Her−2受容体)および何種類かのがんの処置の臨床試験中であるセツキシマブ(EGF受容体)の抗原標的は、皮膚、大腸、肺、卵巣、肝臓、および膵臓を含む広範な成人正常組織上に、ある程度検出可能なレベルで存在する。このような治療法を用いる際の安全性の限界は、発現レベル、または上記部位への抗体のアクセス、または上記部位での抗体活性の違いによって異なると思われる。
【0005】
別のタイプの免疫療法として、特定のがん(単数または複数)に存在する抗原、または抗原の発現を目的とするDNAコンストラクトを使用する能動免疫療法またはワクチン接種があり、これによって、個体に免疫応答を誘発させる、すなわち個体自身のがんに対する抗体の活発な産生を個体に誘発させる。能動免疫化は、受動免疫療法または免疫毒素ほど使用されていない。
【0006】
疾病(がんを含む)進行のモデルがいくつか示唆されている。理論は単なる感染/形質転換の発生による原因から、「疾病様」または「がん様」タイプの組織が増殖して最終的には完全な病原性または悪性の組織になる進行まで及ぶ。がんに関する議論がいくつかある。たとえば、悪性になるには変異が発生するだけで十分であるとする議論がある一方で、引き続き変質が生じることも必要であるとする別の議論もある。さらに別の議論もいくつか示唆されている。異常増殖の開始だけでなくその進行には、突然変異荷重および腫瘍の異型度の増加が細胞レベルでの突然変異−選択の連続発生を介して必要である。がん標的は腫瘍組織にのみいくつか発見されていたが、別の標的が正常組織にもあり、腫瘍組織で上方制御されるか、および/または過剰発現する。これを背景とし、悪性の獲得には過剰発現が関連していることを示唆する研究者がいる一方、過剰発現は病状の悪化過程に沿った傾向を示すマーカーであるに過ぎないと示唆する研究者もいる。
細胞表面の標的を特異的に認識する抗体および他の薬剤によって疾病および/またはがんを処置するのに利用することができるような疾病細胞および/またはがん細胞の表面上にある新規の標的が必要とされている。さらに、本明細書に開示されている発見に基づき、RAAG10の疾病促進活性を低減または増加することによって調節することができる細胞表面上の標的を特異的に認識する新規の抗体および他の薬剤が求められている。
以下に詳細に記載するように、本発明者らは、本明細書にRAAG10と示す新規の抗原を発見した。これは、B7−H3Lと示すこともあり、本明細書に提示される新規の抗体の抗原標的として同定されるものである。同様のポリペプチドが公知である。たとえば、マウスB7−H3ホモログの同定を記載し、T細胞増殖およびIFN−γ産生を媒介することが示されているヒトB7−H3遺伝子を特徴付ける非特許文献2を参照すること。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,054,561号明細書
【特許文献2】米国特許第5,656,444号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Cancer: Principles and Practice of Oncology,6th Edition(2001)Chapt.20 pp.495−508
【非特許文献2】SunらJ.Immunol.2002、168:6294−6297
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要約)
本発明は、種々のヒトがんで発現されるRAAG10に結合するモノクローナル抗体を提供する。一態様によれば、本発明は、RAAG10に結合するモノクローナル抗体のファミリである。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
RAAG10に特異的に結合し、以下の特徴を少なくとも一つ以上有する実質的に精製された免疫グロブリンポリペプチドまたはその抗原結合断片:
a.がん細胞上のRAAG10に結合する能力、
b.インビトロまたはインビボの生細胞の表面上に露出しているRAAG10の一部に結合する能力、
c.RAAG10を発現するがん細胞に治療薬剤または検出可能マーカーを送達する能力、および
d.RAAG10を発現するがん細胞の中へ治療薬剤または検出可能マーカーを送達する能力。
(項目2)
前記がん細胞は、副腎腫瘍、エイズに関連するがん、胞状軟部肉腫、星細胞系腫瘍、膀胱がん(有棘細胞がん腫および移行上皮がん腫)、骨がん(アダマンチノーマ、動脈瘤様骨嚢腫、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄がん、転移性脳腫瘍、乳がん、頚動脈小体腫瘍、子宮頚癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎細胞がん腫、明細胞がん腫、大腸がん、結腸直腸がん、皮膚の良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング肉腫、骨外性粘液性軟骨肉腫、線維形成不全骨、骨の線維異形成、胆嚢および胆管がん、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、頭部および頸部がん、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎がん(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞がん腫)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性の脂肪性腫瘍、肝がん(肝芽腫、肝細胞がん)、リンパ腫、肺がん、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌異常増殖、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、乳頭甲状腺がん、上皮小体腫瘍、小児がん、末梢神経鞘腫、褐色細胞腫、下垂体部腫瘍、前立腺がん、後方ブドウ膜黒色腫、まれな血液疾患、転移性腎がん、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚がん、軟部組織の肉腫、扁平細胞がん、胃がん、滑膜肉腫、睾丸がん、胸腺がん腫、胸腺腫、転移性甲状腺がん、および子宮がん(頚部のがん腫、子宮内膜がん腫、および平滑筋腫)からのがん細胞からなる群から選択される、項目1に記載の精製された免疫グロブリンポリペプチドまたは抗原結合断片。
(項目3)
項目1に記載の前記免疫グロブリンポリペプチドまたはその抗原結合断片をコードする単離された核酸配列。
(項目4)
前記核酸はプロモータに作動可能に連結される、項目3に記載の核酸。
(項目5)
前記プロモータおよび前記核酸は発現ベクターに含まれている、項目4に記載の核酸。
(項目6)
前記ポリペプチドはモノクローナル抗体である、項目3に記載の核酸。
(項目7)
項目3に記載の核酸を含むベクターによって形質移入されるか、形質転換されるか、または感染された細胞株。
(項目8)
実質的に精製された免疫グロブリンポリペプチドまたはその抗原結合断片を産生する方法であって、
a.前記免疫グロブリンポリペプチドまたは抗原結合断片が発現するような条件下で、項目3に記載の前記核酸によって形質転換させた細胞株を成長させる工程、および
b.前記発現した免疫グロブリンポリペプチドまたは断片を収集する工程
を含む方法。
(項目9)
前記細胞株はハイブリドーマである、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記ハイブリドーマは、ATCC番号PTA−4217、ATCC番号PTA−4218、ATCC番号PTA−4244、およびATCC番号PTA−4245からなる群から選択される、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記免疫グロブリンポリペプチドはモノクローナル抗体である、項目8に記載の方法。
(項目12)
治療上有効な量の項目1に記載の前記精製された免疫グロブリンまたは抗原結合断片を薬学的に受容可能な担体とともに含む薬学的組成物。
(項目13)
RAAG10に特異的に結合し、以下の特徴を少なくとも一つ以上有する治療上有効な量のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を薬学的に受容可能な担体とともに含む薬学的組成物:
a.がん細胞上のRAAG10に結合する能力、
b.インビトロまたはインビボの生細胞の表面上に露出しているRAAG10の一部に結合する能力、
c.RAAG10を発現するがん細胞に治療薬剤または検出可能マーカーを送達する能力、および
d.RAAG10を発現するがん細胞の中へ治療薬剤または検出可能マーカーを送達する能力。
(項目14)
前記組成物は追加の治療的成分を含む、項目13記載の薬学的組成物。
(項目15)
ATCC番号PTA−4217、ATCC番号PTA−4218、ATCC番号PTA−4244、およびATCC番号PTA−4245、またはその子孫からなる群から選択される単離された細胞株。
(項目16)
化学療法薬と結合された抗RAAG10抗体を含む組成物を投与することを含む前記化学療法薬をがん細胞に送達する方法であって、前記がん細胞は、副腎腫瘍、エイズに関連するがん、胞状軟部肉腫、星細胞系腫瘍、膀胱がん(有棘細胞がん腫および移行上皮がん腫)、骨がん(アダマンチノーマ、動脈瘤様骨嚢腫、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄がん、転移性脳腫瘍、乳がん、頚動脈小体腫瘍、子宮頚癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎細胞がん腫、明細胞がん腫、大腸がん、結腸直腸がん、皮膚の良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング肉腫、骨外性粘液性軟骨肉腫、線維形成不全骨、骨の線維異形成、胆嚢および胆管がん、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、頭部および頸部がん、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎がん(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞がん腫)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性の脂肪性腫瘍、肝がん(肝芽腫、肝細胞がん)、リンパ腫、肺がん、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌異常増殖、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、乳頭甲状腺がん、上皮小体腫瘍、小児がん、末梢神経鞘腫、褐色細胞腫、下垂体部腫瘍、前立腺がん、後方ブドウ膜)黒色腫、まれな血液疾患、転移性腎がん、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚がん、軟部組織の肉腫、扁平細胞がん、胃がん、滑膜肉腫、睾丸がん、胸腺がん腫、胸腺腫、転移性甲状腺がん、および子宮がん(頚部のがん腫、子宮内膜がん腫、および平滑筋腫)からのがん細胞からなる群から選択される、方法。
(項目17)
前記化学療法薬は個体に投与される、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記ハイブリドーマは、ATCC番号PTA−4217、ATCC番号PTA−4218、ATCC番号PTA−4244、およびATCC番号PTA−4245またはその子孫からなる群から選択される、項目16に記載の方法。
(項目19)
化学療法薬と結合された抗RAAG10抗体を含む有効量の組成物を個体に投与することを含む前記個体内でがん細胞の成長を阻害する方法であって、前記がん細胞は、副腎腫瘍、エイズに関連するがん、胞状軟部肉腫、星細胞系腫瘍、膀胱がん(有棘細胞がん腫および移行上皮がん腫)、骨がん(アダマンチノーマ、動脈瘤様骨嚢腫、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄がん、転移性脳腫瘍、乳がん、頚動脈小体腫瘍、子宮頚癌、軟骨肉腫、脊
索腫、嫌色素性腎細胞がん腫、明細胞がん腫、大腸がん、結腸直腸がん、皮膚の良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング肉腫、骨外性粘液性軟骨肉腫、線維形成不全骨、骨の線維異形成、胆嚢および胆管がん、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、頭部および頸部がん、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎がん(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞がん腫)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性の脂肪性腫瘍、肝がん(肝芽腫、肝細胞がん)、リンパ腫、肺がん、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌異常増殖、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、乳頭甲状腺がん、上皮小体腫瘍、小児がん、末梢神経鞘腫、褐色細胞腫、下垂体部腫瘍、前立腺がん、後方ブドウ膜)黒色腫、まれな血液疾患、転移性腎がん、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚がん、軟部組織の肉腫、扁平細胞がん、胃がん、滑膜肉腫、睾丸がん、胸腺がん腫、胸腺腫、転移性甲状腺がん、および子宮がん(頚部のがん腫、子宮内膜がん腫、および平滑筋腫)からのがん細胞からなる群から選択される、方法。
(項目20)
前記化学療法薬は、前記がん細胞の中に送達される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記抗RAAG10抗体は、細胞株によって発現されるモノクローナル抗体であり、前記ハイブリドーマは、ATCC番号PTA−4217、ATCC番号PTA−4218、ATCC番号PTA−4244、およびATCC番号PTA−4245、またはその子孫からなる群から選択される、項目19に記載の方法。
(項目22)
個体からの細胞を抗RAAG10抗体に接触させ、存在する場合、前記細胞からのRAAG10と前記抗体との複合体を検出することを含む前記個体内のがん細胞の有無を検出する方法であって、前記がん細胞は、副腎腫瘍、エイズに関連するがん、胞状軟部肉腫、星細胞系腫瘍、膀胱がん(有棘細胞がん腫および移行上皮がん腫)、骨がん(アダマンチノーマ、動脈瘤様骨嚢腫、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄がん、転移性脳腫瘍、乳がん、頚動脈小体腫瘍、子宮頚癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎細胞がん腫、明細胞がん腫、大腸がん、結腸直腸がん、皮膚の良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング肉腫、骨外性粘液性軟骨肉腫、線維形成不全骨、骨の線維異形成、胆嚢および胆管がん、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、頭部および頸部がん、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎がん(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞がん腫)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性の脂肪性腫瘍、肝がん(肝芽腫、肝細胞がん)、リンパ腫、肺がん、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌異常増殖、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、乳頭甲状腺がん、上皮小体腫瘍、小児がん、末梢神経鞘腫、褐色細胞腫、下垂体部腫瘍、前立腺がん、後方ブドウ膜)黒色腫、まれな血液疾患、転移性腎がん、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚がん、軟部組織の肉腫、扁平細胞がん、胃がん、滑膜肉腫、睾丸がん、胸腺がん腫、胸腺腫、転移性甲状腺がん、および子宮がん(頚部のがん腫、子宮内膜がん腫、および平滑筋腫)からのがん細胞からなる群から選択される、方法。
(項目23)
RAAG10とRAAG10結合パートナーとの間の以下に示す相互作用の少なくとも一つを阻止する薬剤:
a.がん細胞上のRAAG10に結合する能力、
b.インビトロまたはインビボの生細胞の表面上に露出しているRAAG10の一部に結合する能力、
c.RAAG10を発現するがん細胞に治療薬剤または検出可能マーカーを送達する能力、および
d.RAAG10を発現するがん細胞の中へ治療薬剤または検出可能マーカーを送達する能力。
(項目24)
治療上有効な量の項目23に記載の薬剤を薬学的に受容可能な担体とともに含む薬学的組成物。
【0010】
別の態様では、本発明は、2002年4月9日および2002年4月23日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションにて保管された特許管理番号PTA−4217、PTA−4218、PTA−4244、および PTA−4245の宿主細胞株の任意の一つによって産生されるモノクローナル抗体抗RAAG10である。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、疾病細胞および/またはがん細胞に反応するモノクローナル抗体抗RAAG10を作製する方法であって、(a)免疫原を用いて哺乳類宿主に免疫性を与える工程と、(b)哺乳類からリンパ球を得る工程と、(c)リンパ球(b)を骨髄腫細胞株と融合し、ハイブリドーマを生成する工程と、(d)(c)のハイブリドーマを培養し、モノクローナル抗体を生成する工程と、(e)抗体をスクリーニングし、疾病細胞および/またはがん細胞または細胞株に結合するが非がん性または正常な細胞または細胞株に結合しないか、またはより低いレベルまたは異なる形態で正常細胞に結合するような抗体のみを選択する工程を含む。
【0012】
別の態様では、本発明は、上記のような抗体またはその子孫をコードする宿主細胞を抗体産生が可能な条件下で培養し、抗RAAG10抗体を精製することを含む抗RAAG10ファミリ抗体を作製する方法である。
【0013】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の任意の抗体(またはポリペプチド)を生成する方法を提供する。この方法は、前記抗体をコードする一つ以上のポリヌクレオチド(単一の軽鎖または重鎖として個別に発現することができるか、または軽鎖および重鎖の両方が一つのベクターから発現される)を適切な細胞に発現させ、次に、通常は対象の抗体またはポリペプチドを回収するかおよび/または単離することによるものである。
【0014】
別の態様では、本発明は、抗RAAG10抗体のRAAG10への優先的結合を競合的に阻害する抗RAAG10抗体またはポリペプチド(抗体となり得るか、なり得ないのかは問わない)である。いくつかの実施形態では、本発明は、他の抗RAAG10抗体としてRAAG10上の同じまたは異なるエピトープに優先的に結合する抗体またはポリペプチド(抗体となり得るか、なり得ないのかは問わない)である。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は、RAAG10のエピトープに対し特異的な抗体によって結合されるRAAG10を含む組成物である。一実施形態では、抗体は抗RAAG10である。別の実施形態では、二つ以上の抗RAAG10抗体を、RAAG10の二つ以上の異なるエピトープにマッピングするような抗体とともに投与する。いくつかの実施形態では、抗RAAG10抗体は治療薬剤または検出可能標識に連結されている。
【0016】
別の態様では、本発明は、抗RAAG10抗体の断片または領域を含む抗体である。一実施形態では、断片は抗体の軽鎖である。別の実施形態では、断片は抗体の重鎖である。さらに別の実施形態では、断片は、抗体の軽鎖および/または重鎖からの一つ以上の可変領域を含む。さらに別の実施形態では、断片は、抗体の軽鎖および/または重鎖からの一つ以上の相補性決定領域(CDR)を含む。
【0017】
別の態様では、本発明は、以下の任意のものを含むポリペプチド(抗体となり得るか、なり得ないのかは問わない)を提供する:a)軽鎖または重鎖からの一つ以上のCDR(またはその断片)、b)軽鎖からの三つのCDR、c)重鎖からの三つのCDR、d)軽鎖由来の三つのCDRおよび重鎖からの三つのCDR、e)軽鎖可変領域、f)抗RAAG10抗体の重鎖可変領域。
【0018】
別の態様では、本発明は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、非ヒト抗RAAG10抗体の一つ以上のCDRを含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、他の抗RAAG10抗体として同じまたは異なるエピトープ(単数または複数)に結合する。通常、本発明のヒト化抗体は、元になっている非ヒト抗RAAG10抗体のCDR(単数または複数)と同じであるかおよび/または由来する一つ以上(1、2、3、4、5、6、またはその断片)のCDRを含む。いくつかの実施形態では、ヒト抗体は、別の抗RAAG10抗体として同じまたは異なるエピトープ(単数または複数)に結合する。別の態様によれば、本発明は、非ヒト抗RAAG10抗体の重鎖および軽鎖の可変領域由来の可変領域とヒト抗体の重鎖および軽鎖の定常領域由来の定常領域とを含むキメラ抗体である。
【0019】
別の態様では、本発明は、ATCC番号PTA−4217、PTA−4218、PTA−4244、またはPTA−4245の管理番号をもつ宿主細胞またはその子孫によってそれぞれ産生される抗体LUCA1、BLA8、PA20、またはSKIN2の任意の一つをコードする単離ポリヌクレオチドである。本発明は、上記に特定されている任意の抗体の特有な結合または生物学的活性を有する抗体ポリペプチドを包含する。別の態様では、本発明は、任意の抗体(抗体断片を含む)をコードするポリヌクレオチドのほか、本明細書に記載の他の任意のポリペプチドを提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、任意のポリペプチド(本明細書に記載の任意の抗体を含む)または本明細書に記載のポリヌクレオチドを含む薬学的組成物であり、このような薬学的組成物は、化学療法薬に連結されている抗RAAG10抗体、抗RAAG10抗体の断片を含む抗体、非ヒト抗RAAG10抗体のヒト化抗体、非ヒト抗RAAG10抗体の可変領域由来の可変領域とヒト抗体の定常領域由来の定常領域とを含むキメラ抗体、または非ヒト抗RAAG10抗体の特性を一つ以上備えるヒト抗体、または化学療法薬(放射性成分など)に連結されている本明細書に記載の任意の抗RAAG10抗体、および薬学的に受容可能な賦形剤を含む。
【0021】
一態様によれば、本発明は、疾病細胞またはがん細胞上にあるRAAG10に結合されている抗RAAG10抗体を含む組成物である。好ましい実施形態では、がん細胞は、卵巣、肺、前立腺、膵臓、大腸、および乳房のがん細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、がん細胞は単離されている。いくつかの実施形態では、がん細胞は生物試料中にある。通常、生物試料は、ヒトなどの個体からのものである。
【0022】
別の態様では、本発明は、個体から得られる細胞上のRAAG10を検出することによって個体の疾病、炎症反応または自己免疫応答に関連する疾病または疾患を診断する方法である。本発明の別の態様では、個体の炎症反応または自己免疫応答を調節する方法が提供される。本発明の組成物および方法を使用する処置を施してもよい炎症および自己免疫性疾患に起因する疾病および状態を例示すると、多発性硬化症、髄膜炎、脳炎、脳卒中、他の大脳外傷、潰瘍性結腸炎およびクローン病を含む炎症性腸疾患、重症筋無力症、ループス、リウマチ様関節炎、喘息、急性若年型糖尿病、エイズ痴呆、アテローム動脈硬化、腎炎、網膜炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、心筋虚血および白血球媒介性急性肺傷害が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
このほか、本発明の抗体および他の治療薬剤の治療用途にはさらに、器官または移植片の拒絶の危険性のある個体への投与が含まれる。近年、皮膚、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓および骨髄などの組織および器官を移植する外科技術の効率性に著しい改善が見られる。際立って重要な問題は、移植された同種移植片または器官に対する免疫トレランスを被移植者に誘導する薬剤として満足のいく薬剤が得られていないことであると考えられる。同種異系細胞または器官が宿主(すなわち、提供者および被提供者が同種であるが異なる個体である)に移植される場合、宿主の免疫系は、移植物の外部抗原に対し免疫応答(宿主対移植片の疾病)を開始し、移植された組織の破壊につながると考えられる。
【0024】
別の態様では、本発明は、個体ががんを有しているのかを診断する方法であり、個体から選択して得た細胞上にRAAG10の発現があるのか判断することを含む。なお、前記細胞上のRAAG10の発現は、前記がんの存在を示すものである。いくつかの実施形態では、RAAG10の発現は、抗RAAG10抗体を用いて判断される。いくつかの実施形態では、この方法は、細胞からRAAG10発現レベルを検出することを含む。本明細書で使用する用語「検出」には、対照との対比の有無とは関係なく質的および/または定量的検出(測定レベル)が含まれる。
【0025】
さらに別の態様では、本発明は、個体の細胞上または細胞から放出されるRAAG10を検出することによって個体のがんを診断する方法である。なお、がんは、副腎腫瘍、エイズに関連するがん、胞状軟部肉腫、星細胞系腫瘍、膀胱がん(有棘細胞がん腫および移行上皮がん腫)、骨がん(アダマンチノーマ、動脈瘤様(aneurismal)骨嚢腫、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄がん、転移性脳腫瘍、乳がん、頚動脈小体腫瘍、子宮頚癌、軟骨肉腫、脊索腫(dhordoma)、嫌色素性腎細胞がん腫、明細胞がん腫、大腸がん、結腸直腸がん、皮膚の良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング肉腫、骨外性粘液性軟骨肉腫、線維形成不全骨、骨の線維異形成、胆嚢および胆管がん、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、頭部および頸部がん、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎がん(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞がん腫)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性の脂肪性腫瘍、肝がん(肝芽腫、肝細胞がん)、リンパ腫、肺がん、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌異常増殖、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、乳頭甲状腺がん、上皮小体腫瘍、小児がん、末梢神経鞘腫、褐色細胞腫、下垂体部腫瘍、前立腺がん、後方ブドウ膜(posterious unveal))黒色腫、まれな血液疾患、転移性腎がん、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫(rhabdomysarcoma)、肉腫、皮膚がん、軟部組織の肉腫、扁平細胞がん、胃がん、滑膜肉腫、睾丸がん、胸腺がん腫、胸腺腫、転移性甲状腺がん、および子宮がん(頚部のがん腫、子宮内膜がん腫、および平滑筋腫)を含む群から選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
別の態様では、本発明は、個体からの生物試料中のRAAG10の発現を判断することを含む個体のがん(たとえば卵巣、肺、前立腺、膵臓、大腸、または乳がんなどがあるが、これらに限定されるものではない)を診断を補助する方法である。いくつかの実施形態では、抗RAAG10抗体を使用してRAAG10の発現を判断する。いくつかの実施形態では、抗RAAG10抗体は、本明細書で特定して名付けたファミリメンバーである。いくつかの実施形態では、本方法は、RAAG10発現のレベルを細胞から検出することである。
【0027】
さらに別の態様では、本発明は、がん細胞の成長を縮小するのに十分なように、RAAG10に結合する抗体を有効量投与することによってがんを処置する方法である。ある実施形態では、抗体は、抗RAAG10抗体である。いくつかの実施形態では、がん細胞は、副腎腫瘍、エイズに関連するがん、胞状軟部肉腫、星細胞系腫瘍、膀胱がん(有棘細胞がん腫および移行上皮がん腫)、骨がん(アダマンチノーマ、動脈瘤様(aneurismal)骨嚢腫、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳および脊髄がん、転移性脳腫瘍、乳がん、頚動脈小体腫瘍、子宮頚癌、軟骨肉腫、脊索腫(dhordoma)、嫌色素性腎細胞がん腫、明細胞がん腫、大腸がん、結腸直腸がん、皮膚の良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣細胞腫、ユーイング肉腫、骨外性粘液性軟骨肉腫、線維形成不全骨、骨の線維異形成、胆嚢および胆管がん、妊娠性絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、頭部および頸部がん、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎がん(腎芽細胞腫、乳頭状腎細胞がん腫)、白血病、脂肪腫/良性脂肪性腫瘍、脂肪肉腫/悪性の脂肪性腫瘍、肝がん(肝芽腫、肝細胞がん)、リンパ腫、肺がん、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、多発性内分泌異常増殖、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣がん、膵臓がん、乳頭甲状腺がん、上皮小体腫瘍、小児がん、末梢神経鞘腫、褐色細胞腫、下垂体部腫瘍、前立腺がん、後方ブドウ膜(posterious unveal)黒色腫、まれな血液疾患、転移性腎がん、横紋筋様腫瘍、横紋筋肉腫(rhabdomysarcoma)、肉腫、皮膚がん、軟部組織の肉腫、扁平細胞がん、胃がん、滑膜肉腫、睾丸がん、胸腺がん腫、胸腺腫、転移性甲状腺がん、および子宮がん(頚部のがん腫、子宮内膜がん腫、および平滑筋腫)を含む群から選択されるが、これらに限定されるものではない。ある好ましい実施形態では、がん細胞は、乳がん、大腸がん、前立腺がん、肺がん、肉腫、転移性腎がん、転移性甲状腺がん、および明細胞がん腫を含む固形腫瘍の群から選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
さらに別の態様では、本発明は、RAAG10に特異的に結合する抗体の少なくとも一つのファミリを有効量投与することを含むがんを有する個体内での転移の進行を遅延する方法である。一実施形態では、抗体は抗RAAG10抗体である。別の態様では、本発明は、化学療法薬と連繋する(そこに連結していることを含む)抗RAAG10抗体を含む組成物を有効量、細胞培養物または試料、または個体に投与することを含むインビトロまたは個体内でがん細胞の成長および/または増殖を阻害する方法である。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、RAAG10に特異的に結合する抗体ファミリの少なくとも一つのメンバーを有効量、個体に投与することによって個体内のがん細胞に治療薬剤を送達する方法である。別の実施形態では、別の治療薬剤と組み合わせて(そこに連結していることを含む)抗RAAG10抗体を個体に送達する。
【0030】
いくつかの実施形態では、抗RAAG10抗体は、本明細書で名付けた抗体ファミリメンバー(通常、抗体の部分的または無傷のCDRを一つ以上含むが、必ずしもそうであるとは限らない)由来のヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗RAAG10抗体は、名付けた抗体ファミリメンバーの一つ以上の特性を備えるヒト抗体である。いくつかの実施形態では、化学療法薬(毒素または放射性分子など)をがん細胞に送達する(内部移行させる)。いくつかの実施形態では、薬剤はサポリンである。
【0031】
別の態様では、本発明は、化学療法薬と連繋する(そこに連結されることを含む)抗RAAG10抗体を含む組成物を個体に有効量投与することを含む個体内のがんを処置する方法である。
【0032】
本発明はさらに、細胞質シグナル伝達パートナーとRAAG10との連繋を強化するかまたは低減するかのどちらかによって調節する方法を提供する。細胞表面上に存在するRAAG10分子を、RAAG10とシグナル伝達パートナーとの結合を調節する薬剤に接触させることによって、細胞質シグナル伝達パートナーとRAAG10との連繋に影響を及ぼすことができる。RAAG10と結合および/またはシグナル伝達パートナーとのRAAG10の連繋性を阻止または低減する薬剤を使用し、RAAG10媒介性炎症または免疫応答に含まれる生物学的および病理学的プロセスを調節することができる。この作用を含む病理学的プロセスには、腫瘍に関連する細胞成長が含まれる。
【0033】
薬剤は、RAAG10と抗RAAG10抗体などの結合パートナーとの連繋を阻止する能力、低減する能力、強化する能力、そうでなければ調節する能力についてテストをすることができる。具体的には、RAAG10相互作用部位(典型的には、無傷の生細胞上に存在するときの自然なコンホメーションにある)を含むペプチドを結合パートナーおよびテスト薬剤とインキュベートし、結合パートナーとRAAG10ペプチドとの結合をテスト薬剤が低減しているのか、または強化しているのかを判断することによって、上記のような相互作用の調節能力について薬剤をテストすることができる。特にアゴニスト、アンタゴニスト、およびその他のモジュレータが対象となる。
【0034】
本発明の別の態様は、本明細書ではRAAG10として示されている同定された新規の抗原に関する。この抗原は、免疫原として使用するのに適しており、種々の研究、診断上および治療上の目的に適うものである。
ある態様では、本発明は、(i)個体から得られる血液または組織の試料中のRAAG10の存在を分析する工程と、(ii)前記試料中のRAAG10マーカーの量が、正常(非疾病)血液または組織の試料と比べて増加しているのかを検出する工程と、(iii)前記マーカーの量の増加を疾病陽性診断と関連付けるか、前記マーカーの量の増加無しを疾病陰性診断と関連付ける工程を含む個体の疾病の診断を補助する方法である。ある実施形態では、抗RAAG10抗体を使用してマーカーを検出する。ある実施形態では、本方法は、放射性核種イメージング、流動細胞計測法、および免疫組織化学からなる群から選択される技術によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、LUCA1抗体を用い、抗体の内部移行について実験した結果を示す。MabZAPが高濃度になると線が分かれる。これはLUCA1が内部移行されていることを示している。
【図2】図2は、B7H3およびその突然変異体の図示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(発明の詳細な説明)
本発明は、乳がん、大腸がん、肺がん、および前立腺がんを含むがこれらに限定されるものではない種々のタイプの組織のがん細胞上に発現される新規の抗原、RAAG10を提供する。さらに、本発明は、RAAG10に結合するモノクローナル抗体およびポリペプチドを提供し、これらの抗体およびポリペプチドを作製し使用して、RAAG10の発現および/または過剰発現に関連する種々の疾病ヒトがんを診断し処置する方法を提供する。
【0037】
(I.技術全般)
本発明の実施は、特に断り書きのない限り、当該技術の範囲内にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技術を利用する。このような技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second edition(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,およびD.G.Newell編、1993−8)J.WileyおよびSons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987);PCR:The Polyrnerase Chain Reaction,(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、199 1);Short Protocols in Molecular Biology(WileyおよびSons,1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies: a practical approach(D.Catty.編、IRL Press,1988−1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press,2000);Using antibodies: a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers,1995);およびCancer: Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら編、J.B.Lippincott Company,1993)のような文献に十分説明されている。
【0038】
(II.定義)
「RAAG10」および「B7−H3L」は、本発明の抗体をいい、グリコシル化分子の分子量が約100kDである上記の新規のポリペプチド抗原のことをいう。本明細書により詳細に記載しているように、この抗原は、異なるエピトープを一つより多く有する。本発明の好ましい抗体の実施形態のいくつかは、RAAG10抗原の三つの特異的エピトープうち一つを標的とする。RAAG10は、正常組織を相手にする場合と比較すると、特定のがん細胞上で過剰発現すると現在考えている。
【0039】
「抗体」は、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどのような標的に、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも一つの抗原認識部位を介して特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用するように、この用語は、無傷のポリクローナルまたはモノクローナル抗体を包含するだけでなく、その断片(Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなど)、単鎖(ScFv)、その突然変異体、自然に発生する変異体、所要の特異性がある抗原認識部位をもつ抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、および所要の特異性がある抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の別の修飾構造体も包含する。
【0040】
「モノクローナル抗体」は、均質な抗体群のことをいう。モノクローナル抗体は、抗原の選択的結合に含まれるアミノ酸(天然に存在するものおよび非天然に存在するもの)から構成される。モノクローナル抗体は、極めて特異的であり、単一抗原部位を標的とする。用語「モノクローナル抗体」は、インタクトなモノクローナル抗体およびモノクローナル抗体の全長を包含するだけでなく、その断片(Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなど)、単鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、および所要の特異性と抗原への結合能力とがある抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の別の修飾構造も包含する。抗体源またはその作製手法(たとえばハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、遺伝子組換え動物などによる手法)に関し限定はない。この用語は、免疫グロブリン全体のほか、「抗体」の定義の中で既に記載したような断片なども含む。
【0041】
「ヒト化」抗体は、非ヒト種からの免疫グロブリンに由来する抗原結合部位を有し、それ以外の免疫グロブリンの分子構造はヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づくものであり、組換え技術を用いて通常調製されるキメラ分子のことをいう。抗原結合部位は、定常領域上に融合されている可変領域を完全に含んでもよいし、または可変領域中の適切なフレームワーク領域上にグラフト化されている相補性決定領域(CDR)のみを含んでもよい。抗原結合部位は、野生型であってもよいし、一つ以上のアミノ酸置換によって修飾されていてもよい。これによって、ヒト個体の免疫原としての定常領域が排除されることになるが、外来性の可変領域に対する免疫応答の可能性は残っている(LoBuglio,A.F.ら(1989)Proc Natl Acad Sci USA 86:4220−4224)。別のアプローチでは、ヒト由来の定常領域を提供することに着目するだけでなく、可変領域も修飾し、それらをヒトでの形態にできるだけ近くなるよう形を整える。重鎖および軽鎖両方の可変領域は、問題の抗原に応答して変化し且つ結合能力を決定付ける三つの相補性決定領域(CDR)を含み、所定の種に比較的維持され且つCDRに足場材料を提供していると推測されている四つのフレームワーク領域(FR)によって枠組みが作られていることは公知である。特定の抗原に対して非ヒト抗体を調製する場合、非ヒト抗体由来のCDRを被修飾ヒト抗体に存在するFR上にグラフト化することによって、可変領域の「再形成する(reshaped)」または可変領域を「ヒト化する」。このアプローチを種々の抗体に適用することは、Sato,K.ら(1993)Cancer Res 53:851−856.Riechmami,L.ら(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyen,M.ら(1988)Science 239:1534−1536;Kettleborough,C.A.ら(1991)Protein Engineering 4:773−3783;Maeda,H.ら(1991)Human Antibodies Hybridoma 2:124−134;Gorman,S.D.ら(1991)Proc Natl Acad Sci USA 88:4181−4185;Tempest,P.R.ら(1991)Bio/Technology 9:266−271;Co,M.S.ら(1991)Proc Natl Acad Sci USA 88:2869−2873;Carter,P.ら(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89:4285−4289;およびCo,M.S.ら(1992)J Immunol 148:1149−1154によって以前から報告されている。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、CDR配列をすべて保つ(たとえば、マウス抗体由来の六つのCDRすべてを含むヒト化マウス抗体)。別の実施形態では、ヒト化抗体は、元の抗体に対して作り変えられたCDRを一つ以上(1、2、3、4、5、6)有しており、これを、元の抗体の一つ以上のCDR「に由来する」一つ以上のCDRと呼ぶこともある。
【0042】
抗体またはポリペプチドに「特異的に結合する」または「優先的に結合する」(本明細書では同義的に使用される)エピトープは、当該技術分野では汎用的な用語であり、このような特異的または優先的結合を測定する方法も当該技術分野では公知である。分子が特定の細胞または物質と反応または連繋し、それが別の細胞または物質に比べて頻繁か、迅速か、その持続時間が長いか、および/またはその親和性が強い場合、分子は「特異的結合」または「優先的結合」を示すと言う。抗体が標的に結合する場合、別の物質と結合する場合に比べ親和性が強いか、結合力が強いか、結合が容易か、および/または持続時間が長い場合、抗体は標的に「特異的に結合している」または「優先的に結合している」。たとえば、特異的または優先的にRAAG10エピトープに結合する抗体は、他のRAAG10エピトープまたは非RAAG10エピトープに結合する場合に比べ、より大きな親和力によってか、より大きな結合力によってか、容易にか、および/または持続時間が長くこのRAAG10エピトープに結合する抗体である。たとえば、特異的または優先的に第1の標的に結合する抗体(または部分またはエピトープ)は、特異的または優先的に第2の標的に結合してもよいし、しなくてもよいことも、この定義を読めば明らかである。このように、「特異的結合」または「優先的結合」は、独占的結合を必ず必要とするものではない(が、独占的結合を含んでもよい)。通常、結合と示されていれば、優先的結合を意味するが、いつもそうであるとは限らない。
【0043】
エピトープが「免疫学的活性を維持している」または活性がある場合、用語「免疫学的活性」は、種々の条件下での抗体、たとえばエピトープが低減条件および変性条件に曝された後の抗体(たとえば抗RAAG10抗体)のエピトープ結合能力のことをいう。
【0044】
種々の生物学的機能が、(以下に限定されるものではないが、卵巣、前立腺、膵臓、肺、大腸、または乳房のがん細胞を含むがん細胞上のRAAG10を含む)RAAG10に結合する能力、インビトロまたはインビボの生細胞の表面上に露出しているRAAG10の一部に結合する能力、RAAG10を発現するがん細胞(卵巣、前立腺、膵臓、肺、大腸、または乳房のがん細胞など)へ化学療法薬を送達する能力、RAAG10を発現するがん細胞の中へ治療薬剤または検出可能マーカーを送達する能力を備える抗RAAG10抗体と関連している。なお、能力はこれらに限定されるものではない。本明細書で議論しているように、本発明のポリペプチド(抗体を含む)は、これらの特徴を任意に一つ以上有するものであってもよい。
【0045】
「抗RAAG10等価抗体」または「抗RAAG10等価ポリペプチド」は、抗RAAG10抗体と関連し、たとえば結合特異性のような一つ以上の生物学的機能を有する抗体またはポリペプチドのことをいう。
【0046】
本明細書での使用からもわかるように、「薬剤」とは、生物学的、薬学的、または化学的化合物のことをいう。例として、単体または複合体の有機または無機分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体断片、ビタミン誘導体、炭水化物、毒素、または化学療法化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。種々の化合物を合成することができ、たとえば、低分子物およびオリゴマー(たとえば、オリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチド)、および種々のコア構造に基づく合成有機化合物がある。さらに、植物または動物からの抽出物など種々の天然源からスクリーニング用の化合物が提供される。本発明の薬剤の構造的特徴に制限がないことは、当業者であればすぐにわかることである。
【0047】
本発明の方法に利用される薬剤は、無作為に選択するか、または合理的に選択または設計することができる。本明細書での使用からもわかるように、本来の結合パートナーまたは公知の抗体とRAAG10との連繋に含まれる特異的配列を考慮することなく薬剤を無作為に選択する場合を、薬剤を無作為に選択するという。無作為に選択する薬剤の例は、化学的ライブラリまたはペプチド・コンビナトリアル・ライブラリを使用する場合である。
【0048】
本明細書での使用からもわかるように、薬剤の作用に関連する標的部位の配列および/またはそのコンホメーションを考慮し作為的な根拠に基づき薬剤を選択する場合を、薬剤を合理的に選択または設計するという。抗RAAG10剤については、抗体産生のきっかけを与えるエピトープがRAAG10上に少なくとも三つ存在し、したがって、RAAG10/抗RAAG10の相互作用を阻止する薬剤に対する作用部位が少なくとも三つ存在すると現在考えられている。本発明はさらに、RAAG10とその本来の結合パートナーとの相互作用の部位で作用する薬剤を包含するが、他のリガンドおよびその活性のあるRAAG10−相互作用部位も本発明の範囲内に包含し、これらは現在公知であるか、将来同定されるものかには関係ない。薬剤は、受容体/リガンドおよび/またはRAAG10/抗RAAG10抗体の複合体の接触部位を作り出すペプチド配列を利用することによって、合理的に選択するかまたは合理的に設計することができる。たとえば、合理的に選択されるペプチド薬剤は、本来の環境にある生細胞の表面上に露出しRAAG10上に現れるエピトープと同一であるアミノ酸配列のペプチドとすることができる。このような薬剤は、必要に応じて抗RAAG10抗体または本来のリガンドに結合させることによって、抗RAAG10抗体とRAAG10との連繋または本来のリガンドとRAAG10との連繋を低減または阻止すると考えられる。
【0049】
本明細書での使用からもわかるように、抗体に関する用語「標識される」は、放射性薬剤またはフルオロフォア(たとえばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)またはフィコエリトリン(PE))などの検出可能物質を抗体に接続(すなわち、物理的連結)することによって抗体を直接標識することのほか、検出可能物質との反応性によってプローブまたは抗体を間接的に標識することも包含しようとするものである。
【0050】
本明細書での使用からもわかるように、抗体に関する用語「連繋」は、薬剤(たとえば、化学療法薬)への共有および非共有的な付着または結合を含む。抗体によって薬剤が抗体の結合するがん細胞に局在化するように、共通する基盤への付着を介して直接結合または間接的に結合させることによって、抗体を薬剤(たとえば、化学療法薬)と連繋させることができる。このとき、抗体の結合する同じがん細胞を薬剤が標的としないように、または薬剤の有効性が低下しないように、抗体および薬剤は生理学的条件下で実質上解離しない。
【0051】
「生物試料」は、個体から得られる種々のタイプの試料を包含し、診断分析またはモニタリング分析に使用することができる。この定義は、血液および他の液体試料を包含する生物源、生検標本または組織培養物またはそこから得られる細胞、およびその子孫などの固形組織試料、たとえば、がんの疑いのある個体から収集される組織試料から得られる細胞、好ましい実施形態では、卵巣、肺、前立腺、膵臓、大腸、および乳房の組織から得られる細胞である。この定義はさらに、タンパク質またはポリヌクレオチドなど、ある組成物を試薬、可溶化、または濃縮によって処置するか、または切片化のために半固形または固形のマトリックスに包埋するなど任意の方法によって、調達後の試料に操作を加えた試料も含む。用語「生物試料」は、臨床試料を包含し、培養細胞、細胞上清、細胞可溶化物、血清、血漿、生物学的流体、および組織試料も含む。
【0052】
「宿主細胞」は、挿入ポリヌクレオチドの取り込みをさせるためのベクター(単数または複数)の受容体になることができるか、または既に受容体である個体の細胞または細胞培養物を含む。宿主細胞には単一の宿主細胞の子孫が含まれ、子孫は、自然発生的、偶発的または意図的な突然変異があるため、必ずしも本来の親細胞と(形態学的またはゲノムDNAの相補性上)全く同一であるとは限らない。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチド(単数または複数)によってインビボで形質移入された細胞が含まれる。
【0053】
本明細書での使用からもわかるように「転移の進行を遅延する」は、転移の進行を保留する、妨害する、減速する、抑制する、一定に保つ、および/または後延ばしにすることを意味する。このような遅延の時間の長さは、がんの進み具合および/または処置対象の個体に応じて異なる可能性がある。当業者であればわかることであるが、十分または有意の遅延には、実際には個体に転移を進行させない阻止を含めることができる。
【0054】
薬学的組成物の「有効量」とは、一実施形態では、以下に限定されるものではないが、腫瘍(がんの場合であれば、たとえば、乳がんまたは前立腺がん)のサイズを縮める、がん細胞の成長を遅延する、転移の進行を遅延する、疾病によって生じる症状を減らす、疾病を患う個体の生活の質を向上させる、疾病を処置するのに必要な他の薬剤の投薬量を減らす、ターゲッティングおよび/または内部移行などによって別の投薬の効果を強化する、疾病の進行を遅延する、および/または個体の生存を延ばすなどの臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を生じるのに十分な量のことである。有効量の投与回数は、一回以上とすることができる。本発明の目的によれば、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量とは、直接または間接的のどちからかによって、がん細胞の増殖を減らし(または破壊し)、がん細胞の転移の発生または成長を減らすかおよび/または遅延するのに十分な量のことである。いくつかの実施形態では、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量とは、別の薬物、化合物、または薬学的組成物と組み合わせて達成されるものであってもよいし、そうでなくてもよい。したがって、「有効量」は、一つ以上の化学療法薬を投与する場合として考えることもできるし、一つ以上の他の薬剤と組み合わせて所望の結果が達成されると思われるか、または達成される場合、一種類の薬剤が有効量投与されると考えることもできる。個々のニーズは異なり、各組成物の有効量の最善の範囲を決定することは、当該技術の範囲内である。典型的な投薬量には、0.1から100mg/kg/体重が含まれる。好ましい投薬量には、1から100mg/kg/体重が含まれる。最も好ましい投薬量には、10から100mg/kg/体重が含まれる。
【0055】
本明細書での使用からもわかるように、核酸分子、薬剤、抗体、組成物、または細胞などがその供給源に混入している核酸分子、抗体、薬剤、組成物、または細胞などから実質的に分離されている場合に、核酸分子または薬剤、抗体、組成物または細胞などは「単離されている」という。
【0056】
「個体」とは、脊椎動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。哺乳類には、家畜、競技用動物、ペット、霊長類、マウスおよびラットが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを示すために本明細書では同義的に使用される。ポリマーは直鎖であっても、分枝であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよい。また、非アミノ酸によって割り込みを受けていてもよい。この用語にはさらに、自然にまたは処理によって既に修飾されているアミノ酸ポリマーも包含され、処理には、たとえば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質付加反応、アセチル化、リン酸反応、または任意の他の操作または修飾、たとえば標識組成物とのコンジュゲートなどがある。さらに、この定義の範囲には、たとえば、アミノ酸(たとえば、非天然アミノ酸などを含む)の類似体を一つ以上含むポリペプチドのほか、当該技術分野では公知である他の修飾物も含まれる。当然のことながら、本発明のポリペプチドは抗体に基づいたものであるので、ポリペプチドは単鎖または連繋鎖として存在することができる。
【0058】
本明細書での使用からもわかるように、「実質的に純粋」とは、少なくとも50%純粋(すなわち混入物がない)、より好ましくは少なくとも90%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、より好ましくは少なくとも98%純粋、より好ましくは少なくとも99%純粋、またはそれ以上純粋である材料のことをいう。
【0059】
「毒素」とは、細胞内で有害な反応をもたらす任意の物質のことをいう。たとえば、がん細胞に対する毒素とは、がん細胞に対し有害な効果、時には悪影響を有するものであるということができる。毒素の例として、放射性同位体、カリチアマイシン、およびメイタンシノイドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
本明細書での使用からもわかるように、「処置」または「処置する」は、および好ましくは臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的によれば、有益なまたは所望の臨床結果には、以下のものが一つ以上含まれるが、これらに限定されるものではない:がん細胞または他の疾病細胞の増殖を減らす(または破壊する)、がんにみられるがん細胞の転移を減らす、腫瘍のサイズを縮める、疾病によって生じる症状を減らす、疾病を患う個体の生活の質を向上させる、疾病を処置するのに必要な他の薬剤の投薬量を減らす、疾病の進行を遅延する、および/または個体の生存を延ばす。
【0061】
(III.抗体の作製方法)
モノクローナル抗体の作製方法は当該技術分野において公知である。利用することができる一方法は、KohlerおよびMilstein、Nature 256:495−497(1975)の方法またはそれを改良した方法である。典型的には、モノクローナル抗体は、マウスなどの非ヒト種で発生させる。通常、免疫化にはマウスまたはラットを使用するが、他の動物を使用してもよい。ヒトRAAG10を含み免疫原性を示す量の細胞、細胞抽出物、またはタンパク質調製物を用いマウスに免疫性を与えることによって抗体が産生する。免疫原は、初代細胞、培養細胞株、がん細胞、核酸、または組織とすることができるが、これに限定されるものではない。一実施形態では、ヒト胎児性膀胱細胞を使用する。別の実施形態では、ヒト膵臓の前駆細胞を使用する。ヒト胎児性膀胱細胞およびヒト膵臓の前駆細胞を単離し培養する方法は、実施例1で詳しく説明する。免疫原、たとえば、ヒト胎児性膀胱細胞またはヒト膵臓の前駆細胞に使用される細胞は、免疫原としてそれらを使用する前に、ある期間(少なくとも24時間)培養してもよい。細胞(たとえば、ヒト胎児性膀胱細胞またはヒト膵臓の前駆細胞)自体を免疫源として、またはリビ(Ribi)などの非変性佐剤と組み合わせて免疫原として使用してもよい。通常、細胞は免疫原として使用するとき、無傷の状態、好ましくは生存可能な状態を維持していなければならない。免疫性付与を受けた動物では、無傷細胞の方が、裂けた細胞よりも良好に抗原を検出することができる。変性剤またはきつい佐剤、たとえばフロイント剤(Freud’s adjuvants)を使用すると、ヒト胎児性膀胱細胞またはヒト膵臓の前駆細胞を破裂させる虞があるため、これらの使用は避ける。免疫原は、複数回、定期的に、たとえば2週毎または毎週投与してもよいし、動物(たとえば組換え組織)内での生存度を維持できるような方法で投与してもよい。抗RAAG10抗体の産生に使用される方法、およびRAAG10に結合する他のモノクローナル抗体の産生に使用することのできる方法を実施例2に記載する。
【0062】
一実施形態では、RAAG10に結合するモノクローナル抗体は、免疫原としてRAAG10を過剰発現する宿主細胞を使用することによって得られる。
【0063】
抗体反応をモニターするために、小さい生物試料(たとえば血液)を動物から得て、免疫原に対する抗体価の検査をしてもよい。脾臓および/またはいくつかの大きいリンパ節は取り出して単細胞に解離させることができる。必要に応じて、脾臓細胞のスクリーニングを、抗原がコーティングされたプレートまたはウェルに細胞懸濁液を塗布することによって実施してもよい(非特異的に接着している細胞を除去後)。抗原に特異的な膜結合型の免疫グロブリンを発現するB−細胞がプレートに結合することになり、これは懸濁液の残りと一緒になって洗い流されることはない。次に、生じたB−細胞または解離した全脾臓細胞を骨髄腫細胞(たとえば、X63−Ag8.653およびソーク・インスティテュート(Salk Institute)、セル・ディストリビューション・センター(Cell Distribution Center)、サン・ディエゴ、カリフォルニアから得られる細胞)と融合することができる。ポリエチレングリコール(PEG)を使用し、脾臓またはリンパ球を骨髄腫細胞と融合し、ハイブリドーマを形成してもよい。次にハイブリドーマを選択培地(たとえば、「HAT培地」としても知られているヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンの培地)で培養する。次に、得られたハイブリドーマを限界希釈によってプレートに蒔き、FACSまたは免疫組織化学(IHCスクリーニング)を使用することによって、免疫原(たとえばHFB細胞の表面、がん細胞株の表面、胎児性膀胱切片など)に特異的に結合する抗体の産生を分析する。次に、選択されたモノクローナル抗体−分泌ハイブリドーマを、インビトロ(たとえば組織培養ビンまたはホローファイバー型反応器中)、またはインビボ(たとえばマウスの腹水中)のどちらかで培養する。抗RAAG10抗体の獲得およびスクリーニングに利用される方法のさらなる詳細は実施例3に示す。
【0064】
細胞融合技術の別の選択肢として、EBV不死化B細胞を使用し、本発明のモノクローナル抗体を産生してもよい。ハイブリドーマを増やし、サブクローン化し、必要に応じて、従来の検定法手順(たとえば、FACS、IHC、ラジオイムノアッセイ、酵素免疫学的検定、蛍光免疫学的検定など)によって、抗免疫原活性について上清を分析する。
【0065】
別の選択肢では、モノクローナル抗体抗RAAG10および任意の他の等価抗体の配列を決定し、当該技術分野では公知の任意の手段(たとえばヒト化、ヒト抗体を完全に産生する遺伝子組換えマウスの使用、ファージ提示法など)による組み換えによって産生することができる。一実施形態では、抗RAAG10モノクローナル抗体の配列を決定し、次に、発現または増殖のためにポリヌクレオチド配列をベクターへクローニングする。対象の抗体をコードする配列は、宿主細胞のベクター中に保持してもよい。このとき将来の使用に備えて宿主細胞を増殖させ、凍結しておくことができる。
【0066】
モノクローナル抗体抗RAAG10および任意の他の等価抗体のポリヌクレオチド配列を遺伝子操作に使用し、「ヒト化」抗体を産生したり、親和力または抗体の他の特徴を改善したりしてもよい。抗体のヒト化の一般的原理には、抗体の抗原結合性部分の基本配列を保有させつつ、抗体の非ヒト残部をヒト抗体配列と交換することが含まれる。モノクローナル抗体のヒト化には一般的な工程が四つあり、(1)開始抗体の軽鎖および重鎖の可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列予測の決定、(2)ヒト化抗体の設計、すなわち、ヒト化プロセスに使用する抗体のフレームワーク領域の決定、(3)ヒト化の実際的な方法論/技術および(4)ヒト化抗体の形質移入および発現である。たとえば、米国特許第4,816,567号;第5,807,715号;第5,866,692号;および第6,331,415号を参照すること。
【0067】
非ヒト免疫グロブリン由来の抗原−結合部位を含む複数の「ヒト化」抗体分子が既に報告されており、ヒト定常領域に融合されるげっ歯類または改良げっ歯類のV領域およびこれらに関連する相補性決定領域(CDR)を有するキメラ抗体が含まれる。たとえば、Winterら、Nature 349:293−299(1991)、Lobuglioら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:4220−4224(1989)、Shawら、J Immunol.138:4534−4538(1987)、およびBrownら、Cancer Res.47:3577−3583(1987)を参照すること。他の文献には、適切なヒト抗体の定常領域と融合する前にヒトの支持フレームワーク領域(FR)にグラフトされているげっ歯類のCDRが記載されている。たとえば、Riechmaneら、Nature 332:323−327(1988)、Verhoeyenら、Science 239:1534−1536(1988)、およびJonesら、Nature 321:522−525(1986)を参照すること。別の文献には、組み換えによって化粧張りされるげっ歯類のフレームワーク領域によって支持されるげっ歯類のCDRが記載されている。たとえば、欧州特許出願公開第519,596号を参照すること。このような「ヒト化」分子は、治療目的で受容者に適用する際に適用部分での持続時間および有効性を限定してしまうげっ歯類抗ヒト抗体分子に対する好ましくない免疫応答が最小限に抑えられるように設計される。抗体をヒト化する別の方法として利用することができるものは、DaugHertyら、Nucl Acids Res.、19:2471−2476(1991)および米国特許第6,180,377号;第6,054,297号;第5,997,867号;および第5,866,692号にも開示されている。
【0068】
本発明は、mKID2など、本発明の抗体の単鎖可変領域断片(「scFv」)も包含する。単鎖可変領域断片は、短い連結ペプチドを使用して軽鎖および/または重鎖の可変領域を連結することによって作製される。Birdら(1988)Science 242:423−426には、一可変領域のカルボキシ末端と他の可変領域のアミノ末端との間の約3.5nmを架橋結合する連結ペプチド類の例が記載されている。別の配列のリンカーが既に設計され使用されている、Birdら(1988)。リンカーも同じく、薬物の付着または固体支持物への付着などさらなる機能のために修飾することができる。この単鎖変異体は組み換えによってまたは合成的に産生することができる。scFvを合成的に産生するために自動化合成器を使用することができる。scFvを組換えによって産生するためには、scFvをコードするポリヌクレオチドを含む適切なプラスミドを、酵母、植物、昆虫または哺乳類などの真核生物の細胞、または大腸菌(E.coli)などの原核生物のいずれかの適切な宿主細胞に導入することができる。ポリヌクレオチドのライゲーションなど通常の操作によって、対象のscFvをコードするポリヌクレオチドを作製することができる。結果として得られたscFvは、当該技術分野では公知である標準的なタンパク質精製技術を使用して単離することができる。
【0069】
本発明は抗体への修飾を含み、抗体は、抗体の特性および強化または低減された活性を有するその変異体に重大な影響を及ぼさない機能的に等価な抗体およびポリペプチドを含む。ポリペプチドの修飾は、当該技術分野では日常的に実施されるものであり、本明細書で詳細に記載する必要はない。修飾ポリペプチドの例には、アミノ酸残基の保存的置換、機能的活性が非常に悪化するほど変化させることはないアミノ酸の一つ以上の欠失または付加、または化学的類似体の使用を伴うポリペプチドが含まれる。相互に保存的に置換することができるアミノ酸残基には、グリシン/アラニン;バリン/イソロイシン/ロイシン;アスパラギン/グルタミン;アスパラギン酸/グルタミン酸;セリン/スレオニン;リジン/アルギニン;およびフェニルアラニン/チロシン(tryosine)が含まれるが、これらに限定されるものではない。上記のようなポリペプチドには、グリコシル化および非グリコシル化ポリペプチドのほか、たとえば種々の異なる糖とのグリコシル化、アセチル化、およびリン酸反応など他の翻訳後修飾を有するポリペプチドも含まれる。好ましくは、アミノ酸置換は保存的とし、すなわち、置換アミノ酸は、元のアミノ酸と同様の化学的特性を有するものとする。このような保存的置換は当該技術分野では公知であり、例は既に上記に示している。アミノ酸修飾は、一つ以上のアミノ酸の変化または修飾から、可変領域などの領域の完全な再設計まで多岐にわたる。可変領域の変化は、結合親和力および/または特異性を変えることができる。修飾の別の方法には、酵素学的手段、酸化的置換およびキレート化を含む当該技術分野では公知である接続技術の使用が含まれるが、これらに限定されるものではない。修飾は、たとえばラジオイムノアッセイ用の放射性成分の付着など免疫学的検定用の標識の付着のために使用することができる。修飾ポリペプチドは、当該技術分野では確立済みの手順を使用して作製され、当該技術分野では公知である標準的な分析を使用してスクリーニングすることができる。
【0070】
さらに本発明は、本発明の抗体からの一つ以上の断片または領域を含む融合タンパク質を包含する。一実施形態では、可変軽鎖領域の少なくとも10個連続するアミノ酸および可変重鎖領域の少なくとも10個のアミノ酸を含む融合ポリペプチドが提供される。別の実施形態では、融合ポリペプチドは、異種免疫グロブリンの定常領域を含む。別の実施形態では、融合ポリペプチドは、本明細書に記載のようなATCCに保管されたハイブリドーマから産生される抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。本発明の目的によれば、抗体融合タンパク質は一つ以上の抗RAAG10ポリペプチド、および元の分子には付着されていない別のアミノ酸配列、たとえば異種配列または別の領域からの相同的配列を含む。抗RAAG10ポリペプチドは、当該技術分野では公知である方法によって、たとえば合成的にまたは組み換えによって作り出すことができる。
【0071】
さらに別の選択肢では、特異的ヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作された市販のマウスを使用することによって完全なヒト抗体を得てもよい。また、ヒト化またはヒト抗体の産生のために、さらに望ましい(たとえば完全なヒト抗体)またはさらに強い免疫応答を生じるように設計されている遺伝子組換え動物を使用してもよい。このような技術の例として、アブジェニクス・インク(Abgenix,Inc.)(フレモント、カリフォルニア)のゼノマウス(Xenomouse(商標))およびメダレックス・インク(Medarex,Inc.)(プリンストン、ニュージャージー)のHuMAb−マウス(HuMAb−Mouse(登録商標))およびTCマウス(TC Mouse(商標))がある。
【0072】
ある選択肢では、抗体は、当該技術分野では公知である任意の方法を使用し、組み換えによって作製し発現させてもよい。抗体は、宿主動物から作られた抗体をまず単離し、遺伝子配列を得、この遺伝子配列を使用し、この抗体を組み換えによって宿主細胞(たとえばCHO細胞)中に発現させる組み換えによって作製してもよい。利用することのできる別の方法は、植物(たとえばタバコ)または遺伝子組換え乳に抗体配列を発現させることである。組み換えによって植物または乳中に抗体を発現させる方法は既に開示されている。たとえば、Peetersら(2001)Vaccine 19:2756;Lonberg,N.およびD.Huszar(1995)Int.Rev.Immunol 13:65;およびPollockら(1999)J Immunol Methods 231:147を参照すること。抗体の誘導体、たとえばヒト化したもの、単鎖などを作製する方法は、当該技術分野では公知である。別の選択肢では、抗体をファージ提示技術による組み換えによって作製してもよい。たとえば、米国特許第第5,565,332号;第5,580,717号;第5,733,743号;第6,265,150号;およびWinterら、Annu.Rev.Immunol.12:433−455(1994)を参照すること。
【0073】
当業者には公知であるエドマン分解によって対象の抗体またはタンパク質を配列決定してもよい。質量分析法またはエドマン分解から得られるペプチド情報は、対象のタンパク質のクローン化に使用されるプローブまたはプライマーの設計に用いることができる。
【0074】
対象のタンパク質をクローン化する別の方法は、対象の抗体またはタンパク質を発現する細胞にALCAMを使用する「パニング」によるものである。「パニング」手順は、対象の抗体またはタンパク質を発現する組織または細胞からcDNAライブラリを得、第2の細胞タイプにcDNAを過剰発現させ、ALCAMへの特異的結合について第2の細胞タイプの形質移入細胞をスクリーニングすることによって実施される。細胞表面のタンパク質をコードする哺乳類の遺伝子のクローン化に使用される「パニング」による方法の詳細な記載は、当該技術分野で見つけることができる。たとえば、Aruffo,A.およびSeed,B.Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84、8573−8577(1987)およびStephan,J.ら、Endocrinology 140: 5841−5854(1999)を参照すること。
【0075】
cDNAは、当該技術分野では標準的である方法に従い、特定の細胞型からのmRNAを逆転写することによって得ることができる。特に、mRNAは、Sambrookらの上記文献に説明されている手順に従い種々の溶解酵素または化学溶液を使用するか、または製造業者(たとえばキアゲン(Qiagen)、インビトロジェン、プロメガ)から市販されている核酸結合樹脂を用い添付の説明書に従って抽出することによって単離することができる。次に、合成されたcDNAを発現ベクターへ導入し、第2のタイプの細胞中で対象の抗体またはタンパク質を産生させる。発現ベクターは、エピソームまたは染色体DNAの不可欠な成分として宿主細胞中で複製することができなければならないことが示唆されている。適切な発現ベクターには、プラスミド、アデノウィルス、アデノ関連ウィルス、レトロウィルスおよびコスミドを含むウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
対象のポリヌクレオチドを含むベクターは、電気穿孔法、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、または他の物質を使用する形質移入;微粒子銃;リポフェクション;および感染(たとえばベクターがワクシニアウイルスのような感染性剤である場合)を含む複数の適切な手段のうち任意の手段によって、宿主細胞へ導入することができる。ベクターまたはポリヌクレオチドの導入について何を選択するのかは、宿主細胞の性質によって決まることが多い。
【0077】
対象の抗体、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子を単離する目的のために、異種DNAを過剰発現することができる任意の宿主細胞を使用することができる。哺乳類の宿主細胞の非限定的な例には、COS、HeLa、およびCHO細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、宿主細胞は、対象の抗体またはタンパク質に該当するものが宿主細胞中に存在するのであれば、その内在性の抗体またはタンパク質のcDNAよりも約5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらにより好ましくは20倍以上高いレベルでcDNAを発現する。RAAG10への特異的結合に対する宿主細胞のスクリーニングは、免疫学的検定またはFACSによって達成される。対象の抗体またはタンパク質を過剰発現する細胞は同定することができる。
【0078】
本発明は、本発明の抗体のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。本発明のポリペプチドは、当該技術分野では公知である手順によってによって作製することができる。ポリペプチドは、抗体のタンパク質分解またはその他の分解による分解物、上記記載のような組換え法(すなわち単一または融合ポリペプチド)、または化学合成によって産生することができる。抗体のポリペプチド、特に最大で約50アミノ酸の短いポリペプチドが化学合成によって好適に作製できる。化学合成の方法は当該技術分野では公知であり、市販品を利用することができる。たとえば、抗RAAG10ポリペプチドの場合、固相法を利用する自動ポリペプチド合成器によって生成することができる。
【0079】
(IV.モノクローナル抗体のスクリーニング方法)
RAAG10に結合するモノクローナル抗体をスクリーニングするためにいくつかの方法を使用することができる。当然のことながら、「結合」とは免疫学的に関連のある結合、すなわち免疫グロブリン分子がコードされている特定の抗原に特異的である結合のことであり、非特異的標的に対し非常に高い濃度で免疫グロブリンを使用するときに生じると考えられる非特異的結合のことではない。一実施形態では、標準的なスクリーニング技術を用い、RAAG10結合についてモノクローナル抗体をスクリーニングする。このようにして抗RAAG10モノクローナル抗体を得た。ブタペスト条約に従い、2002年4月9日、抗RAAG10モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、10801 ユニバーシティ通り(University Blvd.)、マナッサス、バージニア、20110−2209に保管した。特許管理表示はPTA−4217、PTA−4218、PTA−4244、およびPTA−4245である。
【0080】
RAAG10に結合するモノクローナル抗体を、がん組織および非がん細胞への結合性についてスクリーニングする。一実施形態では、RAAG10に結合し、ヒトがん細胞または組織に対し交差反応性もあるが、正常細胞または組織に対し同程度の反応性を示さないモノクローナル抗体を選択する。スクリーニングに利用することのできる一方法は、免疫組織化学(IHC)である。標準的な免疫組織化学技術は当該技術分野の平均的な当業者には公知である。たとえば、Animal Cell Culture Methods(J.P.MatherおよびD.Barnes編、Academic Press、第57巻、第18章および第19章、314−350ページ、1998年)を参照すること。生物学的試料(たとえば組織)は、生検、死体解剖、または検視から得てもよい。RAAG10ががん細胞上にのみ存在しているのかを確かめるために、抗RAAG10抗体を使用し、がんをもつ個体からの組織上にRAAG10が存在するのかを検出してもよく、そのとき、がんに罹患している個体の別の非がん組織またはがんのない個体からの組織を対照として使用する。組織は、凍結中の損傷を防ぐ固体または半固体物質(たとえばアガロースゲルまたはOCT)に包埋し、次に染色用に切片化することができる。異なる器官および異なる段階のがんを使用し、モノクローナル抗体をスクリーニングすることができる。スクリーニング目的に使用してもよい組織の例には、卵巣、乳房、肺、前立腺、大腸、腎臓、皮膚、甲状腺、脳、心臓、肝臓、胃、神経、血管、骨、上部消化管、および膵臓が含まれるが、これらに限定されるものではない。スクリーニング目的に使用してもよい異なるがんのタイプの例には、がん腫、腺がん、肉腫、腺肉腫、リンパ腫、および白血病が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
さらに別の選択肢では、SK−Ov−3(ATCC#HTB77)、LnCap(ATCC#CRL−1740)、A549(ATCC#CCL185)、PANC−1(ATCC#CRL1469)、SK−BR−3(ATCC#HTB30)、SK−MES−1(ATCC#HTB58)、HT−29(HTB−38)、SW 480(ATCC#CCL228)、AsPC−1(ATCC#CRL1682)、Capan−1(ATCC#HTB79)、CFPAC−1(ATCC#CRL1918)、HPAF−II(ATCC#CRL−1997)、Hs−700T(ATCC#HTB147)、ES−2(ATCC#CRL−1978)、PC−3(ATCC#CRL1435)、Du−145(ATCC#HTB−81)、Calu3(ATCC#HTB−55)、A498(ATCC#CRL−7908)、Caki−2(ATCC#HTB−47)、786−O(ATCC#CRL−1932)、Hs 766T(ATCC#HTB−134)、MCF7(ATCC#HTB−22)、BT−474(ATCC#HTB−20)、Rav CA130(レイブン・バイオテクノロジーズ・インク(Raven Biotechnologies,inc.)が独自開発した肺がん株)、Rav9926(レイブンが独自開発した膵臓がん細胞株)、および22Rv1(ATCC#CRL−2505)などのがん細胞株および各組織からの正常細胞を使用し、がん組織に特異的なモノクローナル抗体についてスクリーニングしてもよい。卵巣、乳房、肺、前立腺、大腸、腎臓、皮膚、甲状腺、大動脈平滑筋、および内皮細胞を含むがこれらに限定されるものではない異なる器官からの正常組織に由来する初代または低継代の細胞培養をネガティブコントロールとして使用することができる。がん細胞または非がん細胞をスライドガラスまたはカバーガラス上で、またはプラスチック表面上で成長させるか、または国際公開WO01/43869に記載のようなセルアレイ(CellArray(商標))中で調製し、組織に対し上記記載のようなIHCを使用することによって抗体の結合についてスクリーニングすることができる。あるいは、非タンパク質分解手段を使用して細胞を成長表面から除去し、これを回転させてペレット状にしてもよく、この後、上記記載のようなIHC分析用の組織として包埋し処置する。別の選択肢では、初代抗体、抗体蛍光性分子に連結されている二次の「レポータ」とともにインキュベートすることによって単細胞をスクリーニングし、次に蛍光標示式細胞分取器(FACS)を使用して分析してもよい。
【0082】
組織切片に対する抗体の結合を検出するために、いくつかの種々の検出システムを利用することができる。典型的には、免疫組織化学法には、組織へ初代抗体を結合させることが含まれ、次に、初代抗体からの種に対し反応性のある二次抗体を産生し、検出可能マーカー(たとえば西洋わさびペルオキシダーゼ、HRP、またはジアミノベンゼジン(diaminobenzedine)、DAB)にコンジュゲートさせた。使用してもよい別の方法の一つに、ポリクローナル鏡像相補抗体またはpolyMICAがある。D.C.ManghamおよびP.G.Isaacson(Histopathology(1999)35(2):129−33)によって記載されるPo1yMICA(ポリクローナル鏡像的相補抗体)技術は、初代抗体(たとえば抗RAAG10抗体)の正常組織およびがん組織への結合を検査するために使用することができる。いくつかの種類のpolyMICA(商標)検出キットがバインディング・サイト・リミテッド(Binding Site Limited)(私書箱4073、バーミンガムB29 6AT イングランド)から市販されている。製品番号HK004.DがDABクロマゲン(chromagen)を用いるpolyMICA(商標)検出キットである。製品番号HK004.AがAECクロマゲンを用いるpolyMICA(商標)検出キットである。あるいは、初代抗体を検出可能マーカーによって直接標識してもよい。
【0083】
適切な抗体を選択するためのIHCスクリーニングの第一段階は、マウス(たとえば抗RAAG10抗体)で産生される初代抗体を一つ以上の免疫原(たとえば細胞または組織試料)に結合させることである。一実施形態では、組織試料は、異なる器官から得た凍結組織の切片である。細胞または組織の試料は、がん性または非がん性の試料とすることができる。
【0084】
当業者には公知である任意の複数の方法のいずれかによって、凍結組織を調製し、固定の有無とは関係なく切片化し、IHCを実施することができる。たとえば、Stephanら、Dev.Biol.212:264−277(1999)、およびStephanらEndocrinology、140:5841−54(1999)を参照すること。
【0085】
(V.抗RAAG10抗体のキャラクタリゼーションの方法)
抗RAAG10抗体のキャラクタリゼーションのためにいくつかの方法を使用することができる。一つの方法は、抗体が結合するエピトープを同定することである。エピトープマッピングが種々の販売元、たとえばペプスキャン・システムズ(Pepscan Systems)(エデルヘルトウェグ(Edelhertweg)15、8219、PH レリースタッド(Lelystad)、オランダ)から市販されている。抗RAAG10抗体が結合している配列を決定するのにエピトープマッピングを使用することができる。エピトープは、直鎖エピトープ、すなわちアミノ酸の単一伸張部に含まれるエピトープ、または単一伸張部に必ずしも含まれなくてもよいアミノ酸の3次元的相互作用によって形成されるコンホメーションのエピトープとすることができる。長さの異なるペプチド類(たとえば少なくとも4〜6のアミノ酸長)を単離または合成し(たとえば組み換えによって)、抗RAAG10抗体の結合分析に使用することができる。抗RAAG10抗体が結合するエピトープは、細胞外配列に由来する重複ペプチド類を使用し、抗RAAG10抗体によって結合を決定する系統的なスクリーニングによって決定することができる。RAAG10のエピトープマッピングについては実施例で詳しく説明する。我々は、RAAG10エピトープが一つより多く存在することを突き止めたほか、一つのエピトープに結合する我々の抗体KID13、LUCA1およびGB8、第2のエピトープに結合する我々の抗体SKIN2、PA20、およびKID1、および第3のエピトープに結合する我々の抗体BLA8を決定した。これらの抗体は、同様の固有の結合性および生物学的特徴をもつ新規の抗体群からの例示に過ぎず、これらはすべて本発明の範囲内に特に包含されるものである。
【0086】
抗RAAG10抗体を特徴付けるのに使用することができるさらに別の方法は、同じ抗原、すなわちRAAG10に結合する公知の別の抗体を用い、抗RAAG10抗体が別の抗体と同じエピトープに結合するか判断する競合分析の利用である。RAAG10に対する市販の抗体は、そのまま利用してもよいし、本明細書に教示の結合分析を使用して同定してもよい。競合分析は、当業者に公知であり、このような手順および具体的なデータは、実施例でさらに詳しく説明する。抗RAAG10抗体は、さらに、これらが結合する組織、がんのタイプまたは腫瘍のタイプによって特徴付けることができる。
【0087】
抗RAAG10抗体を特徴付ける別の方法は、抗体が結合する抗原による方法である。抗RAAG10抗体は、種々のヒトがんからの細胞可溶化物とともにウエスタンブロットで使用した。当業者に知られているように、ウエスタンブロッティングには、細胞可溶化物および/または細胞画分を変性または非変性ゲル上に流し、タンパク質をニトロセルロース紙に転写し、次に抗体(たとえば抗RAAG10抗体)によってブロットをプローブし、この抗体がどのタンパク質に結合しているのかを見ることを含めることができる。この手順は、さらに実施例4で詳しく説明する。抗RAAG10抗体が結合しているバンドを単離し、さらに実施例5および6に記載のような質量分析を使用し分析した。抗RAAG10抗体が結合している抗原はRAAG10であることがわかった。RAAG10は、大腸、肺、乳房、前立腺、卵巣、膵臓、腎臓のほか、肉腫のような他のタイプのがんを含むがこれらに限定されるものではない異なる組織の種々のヒトがんと連繋している。RAAG10については、さらに実施例6および7に記載する。
【0088】
(VI.抗RAAG10抗体を使用してがんを診断する方法)
本明細書に開示の方法によって作製されるRAAG10に対するモノクローナル抗体を使用し、卵巣、乳房、肺、前立腺、大腸、腎臓、膵臓、皮膚、甲状腺、脳、心臓、肝臓、胃、神経、血管、骨、および上部消化管を含むがこれらに限定されるものではない種々の組織中のがん細胞の有無を診断目的で同定することができる。本明細書に開示の方法によって作製されるRAAG10に対するモノクローナル抗体を使用し、固形腫瘍から放出された後に血液中を循環するがん細胞の有無またはそのレベルを同定してもよい。このように循環している抗原は、本明細書に教示されている方法に従って検出することのできる状態を保つ無傷RAAG10抗原またはその断片であると考えられる。このような検出は、当該技術分野では一般に使用される標準的な方法を使用し、FACS分析によって実施してもよい。
【0089】
このような使用に伴い、特異的にRAAG10に結合する抗体とRAAG10との間に複合体を形成させることができる。このような抗体の例には、ATCCに保管されている記号表示PTA−4217、PTA−4218、PTA−4244、およびPTA−4245のハイブリドーマによって産生される上記の抗RAAG10モノクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されるものではない。このような複合体の形成は、インビトロまたはインビボで可能である。理論による裏づけがあるわけではないが、モノクローナル抗体抗RAAG10は、RAAG10の細胞外ドメインを介してRAAG10に結合することができ、その結果内部移行するものと思われる。
【0090】
本発明の診断法の好ましい一実施形態によれば、抗体は検出可能な標識を有している。使用してもよい標識の例には、フルオレセインイソチオシアネートまたはフィコエリトリンなど、放射性薬剤またはフルオロフォアが含まれる。
【0091】
診断および治療の目的で商業ベースで利用されている他の公知の抗体と同じく、本発明の標的抗原は正常組織中に広く発現し、また、いくつかの腫瘍中では上方制御される。それため、診断または治療薬剤のために使用するときの本発明の抗体の特定の投薬量および産生経路は、現在手がけている特定の腫瘍または病状のほか、処置する特定の個体に合わせることになる。
【0092】
診断に抗体を使用する一つの方法は、放射性または放射線不透過性薬剤に抗体を連結させ、この抗体を個体に投与し、X線または他の画像処理機械を使用して、がん細胞表面で抗原を発現する標識された抗体の局在化を可視化するインビボの腫瘍画像処理である。抗体は、生理学的条件下で結合を促進する濃度で投与される。
【0093】
RAG10を検出するインビトロ技術は、当該技術分野では通常の技術であり、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫沈降、免疫蛍光、酵素免疫学的検定(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、およびウエスタンブロット分析が含まれる。
【0094】
本発明の態様では、腫瘍または新生物のラジオイメージング方法、またはラジオ標識された抗体を用いて処置方法の有効性を測定する方法は、本発明の実施によってラジオ標識された腫瘍−特異的抗体を個体に投与する工程を含む。ラジオ標識された抗体は、ラジオ標識、好ましくはテクネチウム−99m、インジウム−111、ヨウ素−131、レニウム−186、レニウム−188、サマリウム−153、ルテチウム−177、銅−64、スカンジウム−47、イットリウム−90からなる群から選択されるラジオ標識を含むモノクローナルまたはポリクローナル抗体とすることができる。抗体の免疫活性を損なわず、インビボで壊れないヨウ素−131、レニウム−188、ホルミウム−166、サマリウム−153およびスカンジウム−47のような治療用放射性核種によって標識されたモノクローナル抗体が特に好ましい。当業者は、公知の放射性同位体がほかにもあり、これらが特定の用途に適切であると考えられることを十分承知している。ラジオイメージングは、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、ポジション(position)放出断層撮影(PET)、コンピュータ断層撮影(CT)または磁気共鳴画像処理(MRI)を使用して実施してもよい。さらに広い解剖学的定義による転移の場所をラジオイムノイメージングによって示すことのできる相関画像処理も考慮される。
【0095】
他の方法では、がん細胞を除去し、当該技術分野では公知である方法(たとえば、固定の有無に関係なく凍結化合物中へ包埋し、凍結し、切片化する;抗原の回収および対比染色法の種々の方法に関係なく固定しパラフィン包埋する)によって免疫組織化学用に組織を調製する。さらに、モノクローナル抗体を使用して異なる発生段階にあるがん細胞を同定してもよい。さらに、どの個体の腫瘍がそれらの表面上で所定のレベルの抗原を発現しているのか、この抗体を使用して決定することができる。このため、この抗体は、前記抗原を標的とする抗体を使用する免疫療法の候補物質である。この抗体は、RAAG10を発現する卵巣、前立腺および膵臓の原発性および転移性がんの両方、および肺の原発性がんを認識することができる。本明細書での使用からもわかるように、検出には、質的および/または定量的検出を含めてもよく、がん細胞中のRAAG10の発現の増加レベルを知るために正常細胞で測定されたレベルを比較することを含めてもよい。
【0096】
さらに本発明は、RAAG10に結合する任意の抗体を使用して個体内のがん(卵巣、肺、膵臓、前立腺、大腸、または乳房のがんなど)の診断を補助する方法、およびRAAG10発現のレベルを決定するのに使用することのできる任意の別の方法を提供する。本明細書での使用からもわかるように、「診断を補助する」方法とは、これらの方法が、がんの分類または特徴に関する臨床的な定量を実施するのに役に立ち、最も確実だと思われる診断に対して最終的な是非の判断を下してもよいことを意味する。したがって、がんの診断を補助する方法は、個体からの生物試料中のRAAG10のレベルを検出し、および/または試料中のRAAG10発現のレベルを決定する工程を含むことができる。さらに、抗原を認識する抗体を使用し、血液、唾液、尿、肺液、または腹水液を含むがこれらに限定されるものではない体液中の生きているまたは瀕死のがん細胞から放出されるまたは分泌される抗原を検出するための診断用イムノアッセイを開発してもよい。
【0097】
対象である特定の腫瘍中の細胞がすべてRAAG10を発現するわけではなく、他の組織のがん細胞がRAAG10を発現する場合もあるので、個体は、がん細胞上のRAAG10の有無についてスクリーニングし、個体中の免疫療法の有効性を決定する必要がある。がんであると診断された個体が、RAAG10を標的とする抗体を使用する免疫療法に対する候補になり得るのかを、本明細書に開示の方法によって作製される抗RAAG10抗体を使用して決定してもよい。一実施形態では、RAAG10を標的とする抗体を使用し、RAAG10の発現についてがん腫瘍または生検試料を検査してもよい。RAAG10を発現するがん細胞をもつ個体が、RAAG10を標的とする抗体を使用する免疫療法の適切な候補である。抗RAAG10抗体による染色を使用し、がん組織を正常組織と区別してもよい。
【0098】
診断目的で抗RAAG10抗体を使用する方法は、任意の形式の抗がん処置、たとえば化学療法または放射線治療の前後に、所定の処置、がん個体の予後、腫瘍のサブタイプまたは転移性疾病の起源、および疾病の進行または処置への反応に対し、どの腫瘍が最も反応しやすいのか決定するのに役立つ。
【0099】
さらに、本発明の組成物は、既に概ねを記載した方法を他の疾病(非がん性)細胞に対して使用し、がん以外の病状を診断するのにも適している。本発明の方法の使用に適切な病状には、個体の炎症反応または自己免疫応答に関連する疾病または疾患が含まれるが、これらに限定されるものではない。上記記載の方法は、個体の炎症反応または自己免疫応答を調節するのに使用してもよい。本発明の組成物および方法を使用する診断および/または処置を施してもよい疾病、ならびに炎症および自己免疫性疾患が原因の病状には、多発性硬化症、髄膜炎、脳炎、脳卒中、他の大脳外傷、潰瘍性結腸炎およびクローン病を含む炎症性腸疾患、重症筋無力症、ループス、リウマチ様関節炎、喘息、急性若年型糖尿病、エイズ痴呆、アテローム動脈硬化、腎炎、網膜炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、心筋虚血および白血球媒介性急性肺傷害が含まれるが、これらは例示であって、限定するものではない。
【0100】
このほか、本発明の抗体および他の治療薬剤の診断的および/または治療的な用途にはさらに、器官または移植片の拒絶の危険性のある個体への投与が含まれる。近年、皮膚、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓および骨髄などの組織および器官を移植する外科技術の効率性に著しい改善が見られる。際立って重要な問題は、移植された同種移植片または器官に対する免疫トレランスを被移植者に誘導する薬剤として満足のいく薬剤が得られていないことである考えられる。同種異系細胞または器官が宿主(すなわち、提供者および被提供者が同種であるが異なる個体である)に移植される場合、宿主の免疫系は、移植物の外部抗原に対し免疫応答(宿主対移植片の疾病)を開始し、移植された組織の破壊につながると考えられる。
【0101】
(VII.本発明の組成物)
さらに、本発明は、抗RAAG10抗体、抗RAAG10抗体由来のポリペプチド、抗RAAG10抗体をコードする配列を含むポリヌクレオチド、および本明細書に記載のような他の薬剤を含む薬学的組成物を含む組成物も包含する。本明細書での使用からもわかるように、組成物は、さらに、RAAG10に結合する一つ以上の抗体、ポリペプチドおよび/またはタンパク質、および/またはRAAG10に結合する一つ以上の抗体、ポリペプチドおよびタンパク質をコードする配列を含む一つ以上のポリヌクレオチドを含む。
【0102】
本発明の抗体、薬剤、ポリペプチドおよびタンパク質は、任意(一つ以上の)の以下の判定基準によってさらに同定され、特徴付けられる:(a)(以下に限定されるものではないが、卵巣、前立腺、膵臓、肺、大腸、または乳房のがん細胞を含むがん細胞上のRAAG10を含む)RAAG10に結合する能力、(b)公知の抗RAAG10抗体のRAAG10への優先的結合を競合的に阻害する能力であって、本来の抗体が優先的に結合するエピトープと同じRAAG10エピトープに優先的に結合する能力を含む能力、(c)インビトロまたはインビボの生細胞の表面上に露出しているRAAG10の一部に結合する能力、(d)以下に限定されるものではないが卵巣、前立腺、膵臓、肺、大腸、または乳房のがん細胞などのがん生細胞の表面上に露出されるRAAG10の一部に結合する能力、(e)RAAG10を発現するがん細胞(以下に限定されるものではないが卵巣、前立腺、膵臓、肺、大腸、または乳房のがん細胞など)へ化学療法薬または検出可能マーカーを送達する能力、(f)RAAG10を発現するがん細胞(以下に限定されるものではないが卵巣がん細胞)へ治療薬剤を送達する能力。
【0103】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、ATCC番号PTA−4217、4218、4244または4245の任意の一つの管理番号をもつ宿主細胞またはその子孫によって産生される抗体である。さらに本発明は、上記の保管されたハイブリドーマによって産生される抗体および等価抗体またはポリペプチド断片(たとえばFab、Fab’、F(ab’)、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、単鎖(ScFv)、その突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、および所要の特異性の抗原(RAAG10)、認識部位を含む任意の上記抗体または等価抗体の任意の他の修飾構造体の種々の構築も包含する。さらに本発明は、抗RAAG10ファミリメンバーの生物学的特徴を一つ以上示すヒト抗体も提供する。抗RAAG10ファミリ(ヒト化抗体およびヒト抗体を含む)の等価抗体、ポリペプチド断片、および任意のこれらの断片を含むポリペプチドが同定され、上記記載の五つの判定基準うち任意(一つ以上の)の基準によって特徴付けられる。
【0104】
いくつかの実施形態では、RAAG10に結合する本発明の抗体、ポリペプチドおよびタンパク質は、本明細書に特定されている抗RAAG10抗体のRAAG10への優先的結合を競合的に阻害する抗体、ポリペプチドおよびタンパク質である。いくつかの実施形態では、抗体、ポリペプチドおよびタンパク質は、抗体LUCA1、BLA8、PA20、およびSKIN2の一つが優先的に結合するエピトープと同じであるRAAG10上のエピトープに優先的に結合する。
【0105】
従って、本発明は、任意の以下のもの(または任意の以下のものを含む薬学的組成物を含む組成物)を提供する:(a)上記に示した管理番号の宿主細胞またはその子孫によって産生される抗体、(b)上記のような抗体のヒト化型、(c)上記のような抗体の軽鎖および/または重鎖の可変領域を一つ以上含む抗体、(d)上記のような抗体の重鎖および軽鎖の可変領域に相同的なまたはそれに由来する可変領域とヒト抗体の重鎖および軽鎖の定常領域に相同的なまたはそれに由来する定常領域とを含むキメラ抗体、(e)上記のような抗体の軽鎖および/または重鎖のCDR(少なくとも1、2、3、4、5、または6)を一つ以上含む抗体、(f)上記のような抗体の重鎖および/または軽鎖を含む抗体、(g)上記のような抗体と等価なヒト抗体。ヒト化型の抗体は、その元になっている抗体または上記に示した管理番号の宿主細胞によって産生された抗体と同一のCDRを有してもよいし、有していなくてもよい。CDR領域の決定は当該技術において公知である。いくつかの実施形態では、本発明は、上記で特定し保管されているハイブリドーマ(またはいくつかの実施形態では、上記抗体のうち一つの抗体の六つのCDRすべてに実質的に相同であるか、または上記抗体のうち一つに由来する)の一つによって産生される抗体の少なくとも一つのCDR、少なくとも二つの、少なくとも三つの、少なくとも四つの、少なくとも5つのCDRに実質的に相同であるCDRを少なくとも一つ含む抗体、または上記に示した管理番号の宿主細胞によって産生される抗体を提供する。他の実施形態は、本明細書に特定したような保管されているハイブリドーマから産生される抗体のCDRまたは上記のような抗体からのCDRの少なくとも二つ、三つ、四つ、五つまたは六つに実質的に相同である少なくとも二つ、三つ、四つ、五つ、または六つのCDR(単数または複数)を有する抗体を含む。当然のことながら、本発明の目的のために、結合特異性および/または全体的な活性(これは、化学療法薬をがん細胞へまたはがん細胞の中に送達し、がん細胞の成長および/または増殖を減らし、がん細胞にアポトーシスの細胞死を引き起こし、転移の進行を遅延させる、および/または対症的に処置することに関する活性としてもよい)はほぼ維持されるが、保管されているハイブリドーマによって産生される抗体に比べ、活性の範囲は(多かれ少なかれ)異なるものと考えられる。さらに本発明は、上記抗体の任意の抗体を作製する方法も提供する。抗体を作製する方法は、当該技術分野では公知であり、本明細書に記載されている。
【0106】
さらに本発明は、本発明の抗体のアミノ酸配列を含むポリペプチドも提供する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体の軽鎖および/または重鎖の可変領域を一つ以上含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体の軽鎖および/または重鎖のCDRを一つ以上含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体の軽鎖および/または重鎖の三つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、任意の以下のものを有する抗体のアミノ酸配列を含む:元の抗体の配列の少なくとも5個連続するアミノ酸、少なくとも8個連続するアミノ酸、少なくとも約10個連続するアミノ酸、少なくとも約15個連続するアミノ酸、少なくとも約20個連続するアミノ酸、少なくとも約25個連続するアミノ酸、少なくとも約30個連続するアミノ酸、なお少なくとも3個のアミノ酸は抗体の可変領域からのものとする。一実施形態では、可変領域は、元の抗体の軽鎖からのものである。別の実施形態では、可変領域は、抗体の重鎖からのものである。別の実施形態では、5(またはそれ以上)個連続するアミノ酸は、抗体の相補性決定領域(CDR)からのものである。
【0107】
(VIII.治療目的で抗RAAG10抗体を使用する方法)
RAAG10に対するモノクローナル抗体は、がんまたは他の疾病を患う個体に治療目的で使用してもよい。抗RAAG10抗体による治療には、上記記載のようなインビトロおよびインビボでの複合体の形成が伴うと考えられる。一実施形態では、モノクローナル抗体抗RAAG10は、がん細胞に結合し、がん細胞の増殖を減らすことができる。当然のことながら、抗体は、生理学的(たとえばインビボ)条件下での結合を促進する濃度で投与される。別の実施形態では、大腸、肺、乳房、前立腺、卵巣、膵臓、腎臓などの種々の組織のがん細胞および肉腫などその他のタイプのがんに対する免疫療法のために、RAAG10に対するモノクローナル抗体を使用することができる。別の実施形態では、モノクローナル抗体抗RAAG10が単独でがん細胞に結合し、がん細胞にアポトーシス細胞死を引き起こすことができる。別の実施形態では、モノクローナル抗体抗RAAG10は、がん細胞に結合し、転移の進行を遅延させることができる。さらに別の実施形態では、抗RAAG10抗体による対症療法をがん個体に処方する。がん個体に対する対症療法には、疾病の有害な症状、またはがんの進行には直接影響を及ぼさない疾病のために施された他の処置が原因の医原性症状の処置または低減が含まれる。これには、痛み、栄養的補給、性の問題、心理学的な悩み、抑圧、疲労、精神医学的疾患、吐き気、嘔吐などを緩和する処置が含まれる。
【0108】
このような状況のとき、ADCCを強める薬剤のように個体自身の免疫応答を強化するかまたは導く薬剤とともに、抗RAAG10抗体を投与してもよい。
【0109】
さらに別の実施形態では、抗RAAG10抗体は、放射性分子、毒素(たとえばカリケアマイシン)、化学療法分子、あるいは化学療法化合物を含むリポソームまたは他のベシクルにコンジュゲートまたは連繋させておき、上記のような処置を必要とする個体に投与し、抗体によって認識される抗原を含むがん細胞に上記の化合物を向かわせ、これによってがん性または疾病細胞を除去する。特定の何らかの理論に制限されるものではないが、抗RAAG10抗体は、RAAG10を表面上にもつ細胞によって内部移行され、これによってコンジュゲート成分を細胞へ送達し、治療的効果がもたらされる。さらに別の実施形態では、転移の進行を遅延させるために、抗原を発現するがんの外科切除時に補助治療として抗体を利用することができる。また抗体は、抗原を発現する腫瘍のある個体に手術をする前に(ネオアジュバント治療)、腫瘍のサイズを小さくし、これによって、手術を可能または容易にするために、手術中に組織を残しておくために、および/または外観の損傷を減らすために、投与することができる。
【0110】
化学療法薬には、放射性分子、がん細胞の生存度に有害な任意の薬剤を含み細胞毒または細胞毒性薬とも呼ばれる毒素、薬剤、および化学療法化合物を含むリポソームまたはその他のベシクルが含まれる。適切な化学療法薬の例には、1−デヒドロテストステロン、5−フルオロウラシルデカルバジン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アクチノマイシン D、アドリアマイシン、アルデスロイキン、アルキル化剤、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、アントラマイシン(anthramycin)(AMC))、抗分裂剤、cis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、ジアミノジクロロ白金、アントラサイクリン、抗生物質、代謝拮抗剤、アスパラギナーゼ、生BCG(小胞内)、リン酸ベタメタゾンナトリウムおよび酢酸ベタメタゾン、ビカルタミド、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、カルシウム ロイコボリン(leucouorin)、カリケアマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BSNU)、クロランブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルヒチン、共役エストロゲン、シクロホスファミド、シクロフォスファミド(Cyclothosphamide)、シタラビン、シタラビン、サイトカラシンB、サイトキサン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ダウノルビシン(daunirubicin)HCL、クエン酸ダウノルビシン、デニロイキンジフチトクス(denileukin diftitox)、デクスラゾキサン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン、ドセタキセル、メシル酸ドラセトロン、ドキソルビシンHCL、ドロナビノール、大腸菌(E.coli)L−アスパラギナーゼ、エメチン、エポエチンアルファ、エルビニアL−アスパラギナーゼ、エステル化エストロゲン、エストラジオール、リン酸エストラムスチンナトリウム、臭化エチジウム、エチニルエストラジオール、エチドロネート、エトポシド・シトロロラン(citrororum)因子、リン酸エトポシド、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルコナゾール、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、ゲムシタビンHCL、糖質コルチコイド、酢酸ゴセレリン、グラミシジンD、グラニセトロンHCL、ヒドロキシ尿素、イダルビシンHCL、イホスファミド、インターフェロンα−2b、イリノテカンHCL、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロリド、レバミゾールHCL、リドカイン、ロムスチン、メイタンシノイド、メクロレタミンHCL、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メルファランHCL、メルカプチプリン(mercaptipurine)、メスナ、メトトレキセート、メチルテストステロン、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、酢酸オクトレオチド、オンダンセトロンHCL、パクリタキセル、パミドロン酸二ナトリウム、ペントスタチン、ピロカルピンHCL、プリマイシン(plimycin)、カルムスチンインプラントを伴うポリフェプロサン(polifeprosan)20、ポルフィマーナトリウム、プロカイン、プロカルバジンHCL、プロプラノロール、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾトシン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、テノポシド(tenoposide)、テストラクトン、テトラカイン、チオエパ(thioepa)クロランブシル、チオグアニン、チオテパ、トポテカンHCL、クエン酸トレミフェン、トラスツズマブ、トレチノイン、バルルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、および酒石酸ビノレルビンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
好ましい一実施形態では、細胞毒素が細胞を分割、または迅速に分割するのに特に効果的であるが、これは非分割細胞が毒性効果から逃れやすいためである。
【0112】
たとえば、有害な活性を生じさせるために内部移行する必要のある毒素を細胞へ送達することによって、抗体の結合する疾病細胞またはがん腫細胞中へ本発明の抗体を内部移行させることができ、このため、抗体は治療用途に特に有益である。このような毒素の例には、サポリン、カリケアマイシン、オリスタチン(auristatin)、およびメイタンシノイドが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
本発明の抗体またはポリペプチドは、共有的または非共有的に、直接的または間接的に、放射性分子、毒素、または他の治療薬剤、または治療薬剤を含むリポソームまたは他のベシクルに連繋することができる(コンジュゲートまたは連結を含む)。抗体は、放射性分子、毒素、または化学療法分子と、抗体に沿った任意の位置で連結させてもよく、その位置は、抗体がその標的RAAG10に結合できるのであれば、どの位置でもよい。
【0114】
毒素または化学療法薬は、適切なモノクローナル抗体に直接的または間接的(たとえばリンカー基を介するか、または、代替として、米国特許第5,552,391号に記載されるような基盤分子など適切な付着部位をもつ連結分子を介する)接続していてもよい(たとえば共有結合してもよい)。本発明の毒素および化学療法薬は、当該技術分野では公知である方法を使用することによって、特定の標的タンパク質に直接接続することができる。たとえば、薬剤および抗体が互いに反応することのできる置換基を有する場合、両者の直接反応が可能である。たとえば、一方にあるアミノ基またはスルフヒドリル基などの求核基が、他方にある無水物または酸ハロゲン化物のようなカルボニル含有基、または良好な脱離基(たとえば、ハロゲン化物)を含むアルキル基と反応できるようにしてもよい。
【0115】
さらに抗体またはポリペプチドは、マイクロキャリアを介して化学療法薬に連結させることができる。マイクロキャリアとは、生物分解性または非生物分解性の粒子のことで、水に不溶で、大きさが約150、120または100μm未満のサイズを有し、より一般的なのは約50〜60μm未満、好ましくは約10、5、2.5、2または1.5μm未満である。マイクロキャリアには、約1μm未満、好ましくは約500nm未満のサイズを有するマイクロキャリアである「ナノキャリア」が含まれる。このような粒子は当該技術分野では公知である。固相マイクロキャリアは、アガロースまたは架橋結合アガロースのほか、当該技術分野では公知である他の生物分解性材料から形成されるマイクロキャリアを含んでも含まなくてもよい生体適合性のある天然性ポリマー、合成ポリマーまたは合成コポリマーから形成される粒子としてもよい。生物分解性固相マイクロキャリアは、哺乳類の生理学的条件下で分解可能な(たとえばポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)およびそのコポリマー)または浸食性のある(たとえば3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(DETOSU)のようなポリ(オルトエステル、またはセバシン酸のポリ(無水物)のようなポリ(無水物))ポリマーから形成してもよい。マイクロキャリアは(たとえば油または脂質ベースの)液相であってもよく、リポソーム、抗原のないiscoms(コレステロール、およびリン脂質、アジュバント作用のあるサポニンの安定な複合体である免疫刺激複合体(Immunostimulating complexes))、または水中油型または油中水型乳剤に見られる液滴またはミセルなどがあり、この液相マイクロキャリアは生物分解性とする。生物分解性液相マイクロキャリアは、典型的には、バイオデグレイデアブル(biodegradeable)な油を組み入れ、このような油として、スクアレンおよび植物性油脂を含む複数のものが当該技術分野では公知である。マイクロキャリアは、典型的には球状であるが、球状以外のマイクロキャリアも許容可能である(たとえば、エリプソイド(elipsoid)、桿状など)。マイクロキャリアは、(水に対して)不溶なため、水および水−ベースの(水性)溶液から濾過することができる。
【0116】
本発明の抗体またはポリペプチドのコンジュゲートには、毒性物質または化学療法薬に接続することのできる基と抗体に接続することのできる基との両方を含む二官能性リンカーを含むものとしてよい。リンカーは、結合能力に干渉しないように抗体と薬剤とを離すためのスペーサーとして機能することができる。リンカーは、切断が可能であってもよいし不可能であってもよい。さらにリンカーは、薬剤または抗体上の置換基の化学反応性を高め、これによって接続効率を上げる働きをすることもできる。さらに化学反応性の増加により、不可能であると考えられていた薬剤または薬剤上の官能基の使用が容易になると考えられる。二官能性リンカーは、当該技術分野の公知の手段によって抗体に接続することができる。たとえば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルなど活性のあるエステル成分を含むリンカーを使用し、抗体中のリジン残基にアミド結合を介して接続することができる。別の例では、求核アミンまたはヒドラジン残基を含むリンカーは、抗体炭水化物残基の解糖酸化によって産生されるアルデヒド基に接続することができる。このような直接的な接続方法のほか、リンカーは、アミノデキストランなどの媒介担体によって抗体に間接的に接続することができる。このような実施形態では、修飾的連結はリジン、炭水化物、または媒介担体を介している。一実施形態では、リンカーは、タンパク質中の遊離のチオール残基に部位選択的に接続している。タンパク質上のチオール基への選択的接続に適している成分は、当該技術分野では公知である。例として、二硫化物化合物、α−ハロカルボニルおよびα−ハロカルボキシル化合物、およびマレイミドが含まれる。求核アミン官能基がα−ハロカルボニルまたはカルボキシル基と同じ分子にある場合、アミンの分子内アルキル化を介して環化を生じる可能性がある。この問題を避ける方法は、当該技術分野の当業者には公知であり、たとえば、望ましくない環化が立体化学的に好ましくないようにするアリール基またはtrans−アルケンなどの不動性の基によって、アミンおよびα−ハロ官能基が隔てられている分子を調製することによる方法がある。たとえば、二硫化物成分を介してメイタンシノイドと抗体とをコンジュゲートする調製に関する米国特許第6,441,163号を参照すること。
【0117】
抗体−薬物コンジュゲートの調製に使用することのできる切断可能なリンカーの一つに、受容体を介するエンドサイトシス中に見られるエンドソーム、およびリソソームなど種々の細胞内区画の酸性環境を活用するcis−アコニット酸に基づき酸に不安定であるリンカーがある。たとえば、ダウノルビシンと高分子担体とのコンジュゲートの調製に関してはShenら、Biochem.Biophys.Res.Commun.102:1048−1054(1981);ダウノルビシンと抗黒色腫抗体とのコンジュゲートの調製に関してはYangら、J Natl.Canc.Inst.80:1154−1159(1988);酸に不安定なリンカーを同じ方法で使用しダウノルビシンと抗T細胞抗体とのコンジュゲートを調製することに関してはDilimanら、Cancer Res.48:6097−6102(1988);ペプチド・スペーサー・アームを介する抗体へのダウノルビシンの連結に関してはTrouetら、Proc.Natl.Acad.Sci.79:626−629(1982)を参照すること。
【0118】
本発明の抗体(またはポリペプチド)は、当該技術分野では公知である任意の方法によって放射性分子にコンジュゲート(連結)してもよい。放射標識抗体の方法について議論は、「Cancer Therapy with Monoclonal AntibodiesT」、D.M.Goldenberg編(CRC Press、ボカ・ラトン、1995)を参照すること。
【0119】
あるいは、抗体は第二抗体とコンジュゲートし、米国特許第4,676,980号にSegalによって記載されるているような抗体ヘテロコンジュゲートを形成することができる。架橋結合抗体の形成は、たとえばRAAG10を発現するがん細胞または疾病細胞など細胞の特定のタイプに対する免疫系を標的とすることができる。
【0120】
さらに本発明は、抗RAAG10抗体を使用するか、または化学療法薬に連結されるRAAG10に結合する他の実施形態を使用し、がん(前立腺、肺、乳房、卵巣、膵臓、または大腸がんを含むがこれらに限定されるものではない)に罹患している個体内で転移の進行を遅延させる方法も提供する。いくつかの実施形態では、抗体は非ヒト抗RAAG10抗体のヒト化型またはキメラ型である。
【0121】
さらに別の実施形態では、転移の進行を遅延させるために、抗原を発現するがんの外科切除時に補助治療として抗体を利用することができる。また抗体または化学療法薬と連繋する抗体は、抗原を発現する腫瘍のある個体に手術をする前に(ネオアジュバント治療)、腫瘍のサイズを小さくし、これによって、手術を可能または容易にするために、手術中に組織を残しておくために、および/または外観の損傷を減らすために、投与することができる。
【0122】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載の任意のRAAG10結合実施形態は、RAAG10−発現がん細胞に結合し、RAAG10を発現するがん細胞に対し活性的な免疫応答を誘発することができる。場合によっては、活性的な免疫応答によって、がん細胞を死に至らせることができる(たとえば、がん細胞との抗体結合がアポトーシス細胞死を誘発する)か、またはがん細胞の成長を阻害する(たとえば、細胞周期の進行を阻止する)。ほかの場合では、本明細書に記載の新規の抗体のいずれかが、がん細胞に結合することができ、抗体依存性細胞傷害(ADCC)によって、抗RAAG10が結合しているがん細胞を排除することができる。従って、本発明は、本明細書に記載の任意の組成物を投与することを含む免疫応答の刺激方法を提供する。
【0123】
場合によっては、抗体結合は、細胞性および体液性免疫応答を両方とも活性化し、ナチュラルキラー細胞をさらに強化することができるか、またはがん細胞を破壊するためにさらに個体の免疫系を活性化するサイトカイン(たとえばIL−2、IFN−γ、IL−12、TNF−α、TNF−βなど)の産生を増加。さらに別の実施形態では、mKID2ががん細胞に結合することができ、マクロファージまたはその他の食作用性細胞によってがん細胞にオプソニンを作用させることができる。
【0124】
抗RAAG10抗体またはその断片の投与には、種々の剤形を使用してもよい。いくつかの実施形態では、抗RAAG10抗体またはその断片を手際よく投与することができる。本発明の組成物は、薬理学的に活性のある薬剤に加え、当該技術分野では公知であって、薬理学的に効果的な物質の投与を容易にするか、または作用部位への送達用として薬学的に使用することのできる調製物に活性化合物を加工するのを容易にする相対的に不活性な物質である賦形剤および助剤を含む適切な薬学的に受容可能な担体を含んでもよい。たとえば、賦形剤は剤形または一貫性を付与することができるか、希釈剤として作用する。適切な賦形剤には、分解防止剤、湿潤および乳化剤、モル浸透圧濃度を変化させる塩類、カプセル化剤、緩衝剤、および皮膚浸透賦活剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0125】
非経口投与用の適切な剤形は、水溶性型、たとえば水溶性塩類型の活性化合物の水溶液を含む。さらに、注入用油性懸濁液に適しているような活性化合物の懸濁液を投与してもよい。適切な親油性溶媒または媒体には、脂肪油、たとえば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、たとえば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドが含まれる。注入用水性懸濁液は、懸濁液の粘性を増やす物質を含み、たとえば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、および/またはデキストランを含んでもよい。任意ではあるが、懸濁液は安定剤をさらに含んでもよい。細胞へ送達するために、リポソームを使用して薬剤をカプセルに包むこともできる。
【0126】
本発明による全身投与用の医薬剤形は、経腸、非経口的または局所的投与として処方してもよい。実際には、活性成分の全身投与を達成するために、三つのタイプの処方をすべて同時に使用してもよい。賦形剤のほか、非経口的および非経口的でない薬物送達についての処方は、Remington、Science and Practice of Pharmacy 20th編、Mack Publishing(2000)に説明されている。
【0127】
経口投与用の適切な剤形には、硬質または軟質ゼラチンカプセル、ピル、被覆錠剤を含む錠剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、またはこれらの吸入式および徐放式のものが含まれる。
【0128】
通常、これらの薬剤は、注入(たとえば腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内など)によって投与用に処方されるが、他の投与方式(たとえば経口、粘膜など)も使用できる。したがって、抗RAAG10抗体は、好ましくは、食塩液、リンゲル液、ブドウ糖溶液などのような薬学的に受容可能な媒体と組み合わせる。
【0129】
特定の投与計画、すなわち、用量、タイミングおよび回数は、特定の個体およびその個体の病歴によって決まる。通常、用量は、少なくとも約100ug/kg体重、より好ましくは少なくとも約250ug/kg体重、さらにより好ましくは少なくとも約750ug/kg体重、さらにより好ましくは少なくとも約3mg/kg体重、さらにより好ましくは少なくとも約5mg/kg体重、さらにより好ましくは少なくとも約10mg/kg体重を投与する。
【0130】
投薬量を決定する際は、一般に半減期などの経験的な検討を加えるとよい。ヒト化抗体または完全なヒト抗体などヒト免疫系に適合する抗体を使用し、抗体の半減期を延長し、抗体が宿主の免疫系によって攻撃されないようにしてもよい。治療過程の間を通じて、投与回数を決定し、調節してもよく、回数は、がん細胞数の減少、がん細胞減少の維持、がん細胞増殖の減少、または転移進行の遅延に基づく。あるいは、抗RAAG10抗体を持続して連続的に放出させる処方が適切であると思われる。持続的な放出を実現するための種々の処方および装置は、当該技術分野では公知である。
【0131】
一実施形態では、抗RAAG10抗体の投薬量は、既に一回以上の投与(単数または複数)を受けた個体から経験的に決定してもよい。抗RAAG10抗体を増量投与にして個体に投与する。抗RAAG10抗体の有効性を判断するために、続いて特定のがんの病状の指標を出すことができる。これらには、触診または視覚的観察による腫瘍サイズの直接測定、X線または他の画像処理技術による腫瘍サイズの間接的測定;腫瘍の直接生検および腫瘍試料の鏡検によって判断される改善性;間接的腫瘍マーカー(たとえば前立腺がんにはPSA)、痛みまたは麻痺の減少の測定;腫瘍に関連する言語、視覚、呼吸または他の能力障害の改善;食欲の増進;または認可済みテストによって測られる生活の質の向上または生存の延長が含まれる。個体、がんのタイプ、がんの段階に応じて、どのがんが個体の別の場所に転移し始めたのかに応じて、および使用された過去の処置および同時に使用されている処置に応じて投薬量が変わるのは、当業者には自明のことである。
【0132】
他の剤形には、リポソームなどの担体を含むがこれに限定されるものではない当該技術分野では公知の適切な送達方式が含まれる。たとえば、Mahatoら(1997)Pharna.Res.14:853−859を参照すること。リポソームの調製物には、サイトフェクチン(cytofectins)、多重膜ベシクルおよび単層のベシクルが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
いくつかの実施形態では、二つ以上の抗体が存在してもよい。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルとすることができる。このような組成物には、がん腫、腺がん、肉腫、または腺肉腫に対して反応する少なくとも一つ、少なくとも二つ、少なくとも三つ、少なくとも四つ、少なくとも五つの異なる抗体を含むようにしてもよい。抗RAAG10抗体は、卵巣、乳房、肺、前立腺、大腸、腎臓、皮膚、甲状腺、骨、上部消化管、および膵臓を含むがこれらに限定されるものではない器官中のがん腫、腺がん、肉腫、または腺肉腫に対して反応する一つ以上の抗体と混合することができる。一実施形態では、異なる抗RAAG10抗体の混合物が使用される。当該技術分野ではよく示されるような抗体の混合物が、広範囲の個体群の処置に特に役立つと考えられる。
【0134】
以下の実施例は、例示のために示すものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0135】
(実施例1.免疫原としてのヒト胎児性膀胱細胞およびヒト膵臓細胞(hPED)の調製)
免疫原として使用するヒト胎児性膀胱細胞を調製するために、以下の方法を使用した。妊娠週令が14から21週のヒト胎児性膀胱をアラメダ・カウンティ、カリフォルニアのアドバンスド・バイオサイエンス・リサーチ(Advanced Bioscience Research)から得た。膀胱を調達し、組織培地として氷で冷やしながら実験所に輸送した。到着後すぐに、膀胱を20mlの冷却PBSで3回洗った。解剖顕微鏡下で、膀胱周辺の余分な組織を取って膀胱をきれいにし、冷却PBSで2回洗った。かみそりの刃を用い、乾いた100mm培養シャーレの中で膀胱を1mm角に細分化した。10mlのOpti−MEM培地(ギブコBRL、カタログ番号22600)を加えた。PBSに溶かした5%BSAによって予め覆っておいた15ml遠心管へ組織片を5mlピペットで移した。次に組織片を1000×gで5分間遠心分離した。ペレットを6mlのOpti−MEM培地に再懸濁した。以下の成長因子(それぞれ培地1ミリリットル中の最終濃度で示す)を含む3mlのOpti−MEM培地を6ウェルプレートの各ウェルに入れ、そこで組織を培養した:インスリン10μg/ml、トランスフェリン10μg/ml、ビタミンE 5μg/ml、アプロチニン25μg/ml、プロゲステロン3ng/ml、KGF10ng/ml、ヘレグリン5nM、ゲンタマイシン100μg/ml(最初の2日間細胞培養に加えた)。この条件下で、上皮細胞が遊出し、上皮細胞コロニーを形成した。初期の培養物には線維芽細胞の限定的な成長が観察されたが、これらの細胞を短時間トリプシン処理して除去した。注入の3日前に、最終濃度0.05%でトリプシン(ギブコBRL、カタログ番号25300−054)を加え、線維芽細胞を取り出した。
【0136】
別の実施形態では、組織源をヒト胎児性組織由来のヒト前駆細胞株とし、増殖させ、一つ以上の成熟したヒト細胞タイプへ前駆細胞が分化および成熟するのを促進するように選択されたラットまたはマウスの間葉と再結合させ、ヒト/げっ歯類組換え組織を形成する。このような組換え組織は、たとえば米国特許第6,436,704号に記載のように単離し成長させたヒト膵臓前駆細胞(hPED)、米国特許第6,416,999号に記載のように単離し成長させたヒトミューラー前駆細胞、国際公開WO01/77303に記載のように単離し成長させたヒト卵巣前駆細胞、または係属中の特許明細書PCT/US03/04547に記載のようなヒト膀胱前駆細胞(hBLA)とすることができ、特にこれらの教示は、全て本明細書に参照として組み込む。
【0137】
細胞を収集するために、細胞を無カルシウムおよび無マグネシウムのハンクス生理的食塩水で1回すすぎ、ハンクス生理的食塩水に溶かした0.02%EDTA中で37℃15分間インキュベートした。軽くたたいて培養表面から細胞を剥離した。1000rpm10分間遠心分離にかけて細胞懸濁液を沈殿させた。その上清を除き、適切な非変性佐剤を含む無血清培地(Opti−MEM)に細胞を再懸濁した。
【0138】
免疫原として使用するヒト膵臓前駆細胞を調製するために、以下の方法を使用した。これらの方法は上記に示した米国特許第6,436,704号に記載されている。酵素学的解離をする前に、立体顕微鏡下で胎児性膵臓(妊娠週令14〜22週)を顕微解剖によって機械的にばらした。酵素処置は、5mg/mlのコラゲナーゼ−ディスパーゼ、20μg/mlの大豆トリプシン阻害剤および50μg/mlのDNA分解酵素を含む1mlのF12/DMEM培地に、部分的に解離されている組織を摂氏37度で15分間置くことからなるものとした。
【0139】
細胞の集合体を5%(体積で)BSA勾配の上に層状に重ね、6分間、900rpmの遠心によって洗った。以下の要素を含むCMRL1066栄養培地からなる成長培地に、凝集体のままのペレット状細胞を再懸濁した:
インスリン 10μg/ml
トランスフェリン 10μg/ml
上皮成長因子 5ng/ml
エタノールアミン 10−6
ホスホエタノールアミン 10−6
セレン 2.5×10−8
トリヨードサイロニン 10−12
プロゲステロン 10−9
ヒドロコルチゾン 10−9
フォルスコリン 1μM
ヘレグリン 10nM
アプロチニン 25μg/ml
ウシの下垂体抽出物 75μg/ml
ゲンタマイシン 100μg/ml
再懸濁した細胞集合体を24ウェルシャーレのフィブロネクチン被覆のウェル(6〜12)に分注し、加湿器付の5%COインキュベータ中で72時間、摂氏37度でインキュベートした。72時間後、上皮細胞は、浮遊する球状構造体を形成し、間葉細胞または間質細胞がウェルの表面に付着していた。1.2gm/Lの重炭酸塩および10mMのHepesバッファを含むF12/DMEM(50:50)培地に上記のホルモンを追加し、これをフィブロネクチン被覆のプレート(個体群の成長に合わせ12ウェル、次に6ウェル、次に60mm、次に100mmのプレート)上に塗布したものを用い、細胞を1:2の分割比で4日毎に継代培養した。
【0140】
本発明を実施する中で、いくつかの他の細胞タイプを免疫原として使用し、上記記載の方法に従って、本発明の新規の抗RAAG10モノクローナル抗体を産生し発見した。
【0141】
(実施例2.モノクローナル抗体の産生)
11から16日培養したヒト胎児性膀胱(HFB)細胞を使用し、モノクローナル抗体を産生させた。免疫原としての注入、および主に継代数3から5の抗体のスクリーニングのためにヒト膵臓前駆(hPED)細胞を使用した。マウス1匹当り約106HFBまたはヒト膵臓前駆細胞を足蹠からBalb/cマウスに週に1度注入した。非変性佐剤(たとえばRibi)を使用した。毎週注入してから6週間後、免疫性を付与された各動物の尾から血液滴を得、FACS分析を使用し、HFBに対する抗体のタイターを検査した。タイターが少なくとも1:2000に達していたマウスをCOチャンバー内で頚椎脱臼により屠殺した。ハイブリドーマ調製のためにリンパ節を回収した。
【0142】
35%ポリエチレングリコール4000を使用して、高タイターのマウスリンパ球をマウスの骨髄腫株X63−Ag8.653と融合させた。融合してから10日目に、HFBまたはヒト膵臓前駆細胞特異的モノクローナル抗体の存在について、蛍光標示式細胞分取器(FACS)によってハイブリドーマの上清をスクリーニングした。各ハイブリドーマからの馴化培地を一定分量のHFB細胞またはヒト膵臓前駆細胞とともに30分間インキュベートした。温置した後、細胞試料を洗い、0.1ml希釈液に再懸濁し、ヤギ抗マウスIgGのFITCコンジュゲートF(ab’)2断片1μg/mlとともに4℃で30分間インキュベートした。細胞を洗い、0.5mlFACS希釈液に再懸濁し、FACScanセルソーター(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson);サンノゼ、カリフォルニア)を使用して分析した。ハイブリドーマクローンを選択し、さらなる増殖、クローン化、およびFACSによって判定できるようなHFB細胞表面またはヒト膵臓前駆細胞表面への結合に基づくキャラクタリゼーションに備えた。この最初のスクリーニングによって、100個のハイブリドーマクローンが陽性であることがわかった。
【0143】
陽性のハイブリドーマは、さらに、正常組織切片に対するそれらの反応についてのスクリーニングをした。腎臓、肺および皮膚組織切片で陰性のハイブリドーマクローンを集めた。抗RAAG10ファミリ抗体を指定するモノクローナル抗体を作製するハイブリドーマを選択した。
【0144】
(実施例3.抗RAAG10ファミリモノクローナル抗体の精製)
抗RAAG10ファミリ抗体、上清の体積を測定し、同量のバインディング・バッファを上清に加えた。この混合物を室温で平衡化させた。上清を0.22μmフィルタに通して濁りを取った。上清はGradiFracシステムを使用して、プロテイン−Gカラム上へ添加した。カラムは5〜10カラム体積のバインディング・バッファで洗浄した。モノクローナル抗体は溶出バッファで溶出し、2mlの画分を集めた。画分はOD280で読み取り、モノクローナル抗体を含んでいる画分をプールした。溶出されたモノクローナル抗体画分は、3Mトリスを1/20体積加えることによって中和した。試料は、4℃で1X PBSの中で透析した(1回当たり少なくとも3時間、3回バッファを交換)。精製したモノクローナル抗体を無菌ろ過し(0.2uM)、2〜8℃で貯蔵した。
【0145】
ハイブリドーマ上清からの抗RAAG10ファミリモノクローナル抗体を精製した後、HFB細胞またはhPEDへの結合について再検査した。細胞試料は、実施例4に既に記載したように調製し、種々の濃度の精製抗体をインキュベートした。インキュベーションの後に、細胞を洗浄し、0.1mlの希釈剤に再懸濁し、ヤギ抗マウス免疫IgGのFITCコンジュゲートF(ab’)2断片1μgとともに、4℃、30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、0.5mlのFACS希釈剤に再懸濁し、FACScanセルソーター(ベクトン・ディキンソン(Becton Dickinson);サンノゼ、カリフォルニア州)を使用し分析した。FACScanヒストグラム上に右側シフトが見られ、これによりHFB細胞またはhPEDに精製抗体が結合したままであることがわかった。
【0146】
四つのモノクローナル抗体が精製され、本明細書中では、それぞれBLA8、LUCA1、PA20およびSKIN2と呼ぶことにする。これら各抗体を産生するハイブリドーマはATCC管理番号が付いており、PTA−4218、PTA−4217、PTA−4244およびPTA−4245である。続いて、さらに別の五つのモノクローナル抗体が精製され、本明細書中ではLUCA1、GB8、KID1、KID13およびOVCA22と呼ぶ。
【0147】
(実施例4.抗RAAG10ファミリ抗体が結合する抗原の同定およびキャラクタリゼーション)
抗体BLA8: BLA8が反応した抗原を同定するために、免疫沈降実験を実施した。免疫沈降をするために、濃縮LnCap細胞10mlを、40mlの溶解バッファで溶解した。溶解バッファは、2%トリトンX−100、プロテアーゼ阻害剤カクテル(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(5mlの溶解バッファ当たり、Roche Molecular Biochemicals)のコンプリートminiEDTAフリー・プロテアーゼ・カクテルを1タブレット)、0.1%アジ化ナトリウムおよび2mMのPMSFによって補強されたハンクス平衡塩類溶液(HBSS+)からなるものとした。細胞溶解物を4℃で30分間24,000×gによって濁りを取ってから、2mg/mlのマウスIgGコンジュゲートCNBr 6MBセファロースビーズからなるカラムに通し、ここで溶解物は、事前に不要物が取り除かれるものとする。次に、事前に不要物を取り除いたLnCap溶解物を、BLA8コンジュゲートCNBrセファロース6MBのカラムに通した。BLA8カラムは、膨張したCNBr 6MBセファロースビーズ1ml当たり3mgのBLA8をコンジュゲートさせたものとした。次に、ビーズ(マウスIgGおよびBLA8の両方とも)を、0.1Mグリシン、pH2.5で溶出する前に溶解バッファで3回洗浄した。溶離液は1カラム体積の画分で集め、最終濃度0.1Mのトリス、pH8.0で中和し、最終pHを約7.2にした。次に、中和した画分を、マイクロ濃縮器(ミリポアのCentricon10)によって画分体積の10%にまで濃縮した。次に、濃縮溶離液の10%をSDS−PAGEおよびウェスタンブロット法によって分離した。同時に、溶離液の30%をさらにSDS−PAGEに適している体積に濃縮し、コマシー(Commassie)染色によって分離した。
【0148】
アルキル化BLA8、およびBLA8に対するものとしてマウスIgGの溶離液をウェスタンブロット法で検出すると、BLA8溶離液に固有のものとして、大量にグリコシル化されたのタンパク質(>223kDa、約200kDaおよび100kDa)が3組観察され、100kDaバンドが最も顕著であった。3本のバンド(つまり、200kDaは100kDaが2重になったもので、>223kDaバンドは100kDaバンドの3重になったものであると思われる)には線形性があるため、BLA8抗原のモノマー、二量体、三量体から3本のバンドがなっていると仮説をたてた。精製された抗原のスタッキング効果から、抗原が本来の状態で良好に二量化されているが、濃縮によってタンパク質の相互作用の頻度が人為的に高められているものと考えることができる。コマシー(commassie)染色すると、BLA8に固有の対の線が100kDaと約200kDaに観察された。かすかではあるが第3のバンドが>223kDaに観察された。我々の仮説を確かめるために、100kDaおよび約200kDaのバンドの両方を切断し、それぞれLO(100kDa)およびHI(200kDa)と標識した。これら2本のバンドは、引き続きマススペック分析に供する。
【0149】
同様の方法に従って、モノクローナル抗体LUCA1、PA20およびSKIN2が結合する抗原を同定し特徴付けると、同様の結果が得られた。
【0150】
ウェスタンブロッティング分析によってMAbのBLA8、LUCA1、PA20およびSKIN2の標的抗原の分子量を決定するために、Colo205、HPAF−II、LnCAP、Panc−1、SK−OV−3、SK−MES、SK−OV−3など、いくつかの市販のヒト癌細胞株を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから得た。これらの細胞株を、L−グルタミンおよび10%ウシ胎児血清を含むF12培地(ギブコBRL、カタログ番号21700−091)およびDMEM培地(ギブコBRL、カタログ番号12100−061)の1:1混合物中で成長させた。細胞は、37℃にした5%COのインキュベータでコンフルエントになるまで成長させた。各細胞株のおよそ30〜50個のコンフルエントなT175フラスコからリン酸緩衝生理食塩水に溶かした10mMのEDTAを使用して収集した。収集した細胞は、ベックマン(Beckman)GS−6KRの卓上用遠心分離機中で1200rpmで5分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞ペレットを、T175フラスコ(シグマ、カタログ番号P8340)1個につき、脱イオン水0.5mLおよび10μLプロテアーゼ阻害剤カクテルを入れた中で再懸濁した。細胞懸濁液は−80℃で冷凍したのち、解凍した。この凍結/解凍サイクルは細胞膜を分離させるために合計5回繰り返した。
【0151】
次に、分離させた細胞膜を、バイオフュージ・マイクロフュージ(Biofuge microfuge)(ハエロイス(Haereus))により、4℃で15分間、最高速度で遠心分離し集めた。その上清には細胞質と核タンパク質が含まれている。上清は詳しい分析のために取り出し保持した。細胞膜断片を含むペレットを、2%のエンピゲン(Empigen)BB(カルバイオケム(Calbiochem)、カタログ番号324690)を含むおよそ4mLのハンクス平衡塩類溶液(HBSS、GibcoBRL、カタログ番号14175−079)および100μLのプロテアーゼ阻害剤カクテル、pH7.0の中に再懸濁し可溶化した。可溶細胞膜タンパク質を回転板上で4℃にして一晩インキュベートした。
【0152】
不溶の組織細片をすべて除去するために、細胞膜タンパク質の抽出物をバイオフュージ(Biofuge)微量遠心管で4℃にして最大速度で15分間、遠心分離した。上清には抽出細胞膜タンパク質が含まれている。上清を集め、ウエスタンブロッティング分析に使用するまで−80℃で貯蔵した。
【0153】
あらかじめ成形しておいた4〜12%NuPAGEゲル(インビトロジェン、カタログ番号NP0322)を使用し、電気泳動によって細胞膜タンパク質抽出物を分離した。抽出物をLDSサンプルバッファ(インビトロジェン、カタログ番号NP007)で10倍に希釈し、70℃で10分間加熱し、次に微量遠心機で遠心分離し、ボルテックスで混合した。各レーンにつき全量3.0μLのタンパク質抽出物をゲル上にロードした。染色済み分子量スタンダード(バイオラド、カタログ番号161−0372)も加えた。次に電気泳動を製造業者の使用説明書に従って実施した。電気泳動後、同様に製造業者の使用説明書に従ってゲルをニトロセルロース膜(インビトロジェン、カタログ番号LC2000)上に転写した。転写されたタンパク質は、ニトロセルロースをPBS中で電子レンジの強によって3分間加熱することによって膜に結合させた。次に、非特異的結合を減らすために、膜をブロッキングバッファ中で30分間インキュベートした。次にプロテインG精製モノクローナル抗体を使用し、ニトロセルロース膜を検査した。MAbのBLA8(ロット080−06)、LUCA1(ロット102−06)、PA20(ロット102−10)およびSKIN2(ロット083−95)をブロッキングバッファで約4μg/mLに希釈した。8mLの希釈MAbを用い、ニトロセルロース膜を1時間室温にて振動機上でインキュベートした。ウエスタン・ブリーズ(Western Breeze)・ウエスタンブロッティングキット(インビトロジェン、カタログ番号WB7103)を使用し、製造業者の使用説明書に従ってウエスタンブロットを展開させた。上記の手法を用い、各モノクローナル抗体につき、グリコシル化タンパク質のバンドを分子量およそ85〜90kDのところで観察した。種々の細胞膜タンパク質抽出物に対する結合の強度およびパターンは、このファミリの抗体すべてで一致していた。
【0154】
さらに、細胞膜タンパク質抽出物および組織切片ホモジェネートを少なくしてウエスタンブロッティング分析を実施した。凍結した正常ヒト乳房、腎臓、肺および皮膚の切片をエッペンドルフチューブに集めた。切片をPBSで洗い、試料をエッペンドルフ微量遠心機で16,000rpm、4℃にして15分間遠心分離した。ブランソン・ソニファイアー(Sonifier)250を使用し、20μLプロテアーゼ阻害剤カクテルを含むHBSSに溶かした2%エンピゲンBB100μLに組織のペレットを30秒間氷上で可溶化させた。
【0155】
不溶の組織細片をすべて除去するために、組織抽出物をエッペンドルフ微量遠心機で4℃、最大速度で15分間遠心分離した。上清には抽出組織タンパク質が含まれている。上清を集め、ウエスタンブロッティング分析に使用するまで−80℃で貯蔵した。
【0156】
あらかじめ成形しておいた4〜12%NuPAGEゲルを使用し、電気泳動をすることによって、組織抽出物、選択された細胞膜タンパク質抽出物、およびアフィニティ精製したMAb BLA8の抗原を分離した。抽出物は、還元剤DTT(インビトロジェン、カタログ番号NP0004)を含むLDSサンプルバッファ(インビトロジェン、カタログ番号NP007)で希釈し、10分間70℃で加熱し、次に、微量遠心機で遠心分離し、ボルテックスで混合した。各レーンにつき全量6.0μLの組織タンパク質抽出物または精製抗原をゲル上にロードした。染色済み分子量スタンダード(バイオラド、カタログ番号161−0372)も加えた。次に、ランニングバッファに酸化防止剤(インビトロジェン、カタログ番号NP0005)を追加するほかは、製造業者の使用説明書に従い、電気泳動を実施した。電気泳動後、同様に製造業者の使用説明書に従ってゲルをニトロセルロース膜(インビトロジェン、カタログ番号LC2000)上に転写した。転写されたタンパク質は、ニトロセルロースをPBS中で電子レンジの強によって3分間加熱することによって膜に結合させた。次に、非特異的結合を減らすために、膜をブロッキングバッファ中で30分間インキュベートした。次にプロテインG精製モノクローナル抗体を使用し、ニトロセルロース膜を検査した。MAbのBLA8(ロット080−06)、LUCA1(ロット102−06)、PA20(ロット102−10)およびSKIN2(ロット083−95)をブロッキングバッファで約4μg/mLに希釈した。8mLの希釈MAbを用い、ニトロセルロース膜を1時間室温にて振動機上でインキュベートした。ウエスタン・ブリーズ(Western Breeze)・ウエスタンブロッティングキット(インビトロジェン、カタログ番号WB7103)を使用し、製造業者の使用説明書に従ってウエスタンブロットを展開させた。上記の手順を用い、各モノクローナル抗体について、グリコシル化タンパク質のバンドを分子量およそ85〜90kDのところで観察した。量を減らしたタンパク質バンドへの結合強度は、量を減らさない場合より小さいが、MAbのバンドが四つとも認められた。この結果は、各MAbについて結合が強いことを示しており、このことは精製BLA8抗原よりも細胞膜タンパク質抽出物においてはっきりと現れている。抗原は正常組織の試料中には観察されなかった。
【0157】
量を減らしたウェスタンブロットでも、量を減らしていないウェスタンブロットでも、マウスIgGを対照として使用した。マウスIgGをモノクローナル抗体プローブとして使用するときは、同じ濃度のマウスIgGを使用した。これらの対照によって、実際には、ウェスタンブロット中に人為的な免疫グロブリンが約25および50kDのバンドに存在していることがわかる。これらの人為産物は、組織断片中にある内因性のIgGに由来する軽鎖および重鎖の存在によるものであるか、またはBLA8抗原のアフィニティ精製の結果である。
【0158】
(実施例5.質量分析用の抗RAAG10抗体の抗原の単離)
精製抗体抗RAAG10は、膨張したセファロースビーズ体積1ml当たり2mgのBLA8 mAb濃度とし、製造業者の使用説明書に従って、臭化シアン活性化(CNBr)セファロース4B樹脂(アマーシャム・ファルマシア・バイオテック(Amersham Pharmacia Biotech)、カタログ番号17−0430−01)共有結合であった。新しく成長させたLNCap細胞を30個のコンフルエントなT−175培養フラスコから収集した。細胞は遠心してペレット状にし、溶解バッファの定量をT175フラスコ1個当たり500μlにして、(2%トリトンX−100、プロテアーゼ阻害剤および0.1%のアジ化ナトリウムを含むハンクス平衡塩類溶液(HBSS+))溶解バッファに再懸濁した。細胞はセルスクレーパーでこすって取った。細胞/溶解バッファの懸濁物をボルテックスで混合し、次に、4oCで45分間24,000×gで遠心分離によって濁りを取った。濁りを取った溶解物を取り出し、マウスIgGコンジュゲートCNBrセファロースに4oCで2時間かけ事前に不要物を取り除いた。次に、事前に不要物を取り除いた溶解物を、BLA8 CNBrセファロース・マトリックスに通した。次に、BLA8ビーズを、pH2.5の0.1Mグリシンで溶出する前に、溶解バッファ(少なくとも10カラム体積)で多数回洗浄した。マトリックスは合計で5カラム体積の溶出バッファで溶出した。溶離液は1カラム体積分の画分にして集めた。各ファクションはそれぞれ独立して、セントリコン(centricon)−10濃縮装置(ミリポア、#4206)により、体積が約60μlに達するまで濃縮した。溶離液の10%をSDS−PAGEによって分離し、ウェスタンブロット法によって分析した。残りの90%は、単一のレーン上にロードし、SDS−PAGEおよびコマシー(commassie)染色することによって分離した。コマシー(commassie)染色によって、糖タンパク質に典型的な3本のバンドが100、200、および250+kDa範囲とこれらの周辺とに観察され、最も強いバンドは100kDaバンドで、その次が200kDaバンドで、250kDa+バンドは着色が最も薄かった。これらのバンドは、ウェスタンブロット法によって観察されたバンドに相当し、単一のタンパク質のモノマー(100kDa)型、ホモ二量体(200kDa)型およびホモ三量体(250+kDa)型を示すと理論付けられた。100kDaおよび200kDaのバンドは切除し、質量分光分析に供した。
【0159】
(実施例6.MALDI質量分析法)
抗RAAG10抗体が結合する抗原を、実施例4および5に記載のように単離し、MALDI質量分析をした。免疫親和性カラムの溶離液をSDS−PAGEによって分離し、バンドを切除して抽出する。ゲル・スライスは、トリプシンによって「ゲル中」消化する(Gharahdaghi,F.,Weinberg,C.R.,Meagher,D.A.,Imai,B.S.およびMische,S.M.(1999)Electrophoresis20,601−605)。抽出したペプチドを、クラトス(Kratos)、AXIMA CFRのマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析法(MALDI−Tof)によって分析する。ペプチド質量は100ppm以内で決定し、カーブドフィールドリフレクトロンをもつ時間イオンゲートを利用し、ポストソース分解(PSD)によってペプチドの単離および切断をする。検索は、プロテイン・プロスペクター・プログラム(Protein Prospector Programs)(Clauser K.R.,Baker P.R.およびBurlinganie A.L.,Analytical Chemistry、第71巻、14,2871−(1999))MSFitおよびMSTagによって実施する。
【0160】
五つの主要ペプチド・ピークが、1173.6016(ペプチド1)、1601.7634(ペプチド2)、1686.9179(ペプチド3)および1991.0310(ペプチド4)、ならびに2620.3834(ペプチド5)の質量で同定された。ヒトタンパク質データ・ベースの検索によって、ペプチド2および3が「b7ホモログ3」という名前のタンパク質から生成されている可能性が示された(NCBIアクセッション番号13376852)。選択したペプチドのポストソース分解分析によって、これらのペプチドの同一性を正確な配列として確認した。仮説のタンパク質配列に関しEST(発現遺伝子配列断片)データ・ベースでさらに選別すると、5つのペプチド・ペプチドをすべて含む別のタンパク質を特定した(ポストソース分解によって同一性を確認するとともに)。このタンパク質は、ヒトESTに由来し、以下のように示される:602309922F1 NIH_MGC_88 Homo sapiens cDNA clone IMAGE:4401173 5’。
【0161】
五つの質量およびPSD分析はすべてこの仮説のタンパク質の配列と一致した。DNA、ESTからの誘導タンパク質、およびB7ホモログ3の配列からの誘導タンパク質の配列を比較すると、配列の大部分が重複することがわかった。異なった配列はシグナル配列の直後のB7ホモログ3のアミノ末端中の領域で始まっていた。これは、実際は、ESTが、5’方向に未知数延びているコード領域をもち、B7ホモログ3の別のスプライスバリアントのcDNAクローンからのものであることを示す。脱グリコシル化精製抗原は、およそ60,000のダルトンの分子量を有している(また、B7ホモログ3の抗原はおよそ30,000のダルトンの分子量を有している)ので、このタンパク質データは、B7ホモログ3として公知であった配列に加え追加のコード配列を含む実際のタンパク質と一致する。
【0162】
何らかの特別な理論または機序に結び付けようとするものではないが、ペプチドのうちの一つ(ペプチド4)が、疎水領域(推定上の膜貫通領域)の直前のB7ホモログ3内の配列と相同性が極めて高いので、B7ホモログ3の細胞外領域(二つのIgG様領域からなる)の複製からRAAG10抗原が発生し、四つのIgG様領域、膜貫通領域、および細胞質の「尾部」からなる推定上のタンパク質を生成すると思われる。
【0163】
RAAG10抗原の正確な構造体の決定については、ESTおよびB7ホモログ3に対する既存の配列情報を利用し、開始AUGコドンが同定されるまで5’方向にcDNA配列を延ばす標準的な技術を使用すれば決定される。本明細書に別記した細胞株は、いずれも本研究用のcDNAライブラリ源として使用することができる。
【0164】
(実施例7.BLA8抗原のキャラクタリゼーション)
BLA8が反応した抗原を同定するために、免疫沈降(Ippt)実験を実施した。Ipptをするために、濃縮LnCap細胞10mlを、40mlの溶解バッファで溶解した。溶解バッファは、2%トリトンX−100、プロテアーゼ阻害剤カクテル(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(5mlの溶解バッファ当たり、Roche Molecular Biochemicals)のコンプリートminiEDTAフリー・プロテアーゼ・カクテルを1タブレット)、0.1%アジ化ナトリウムおよび2mMのPMSFによって補強されたハンクス平衡塩類溶液(HBSS+)からなるものとした。細胞溶解物を4℃で30分間24,000×gによって濁りを取ってから、2mg/mlのマウスIgGコンジュゲートCNBr 6MBセファロースビーズからなるカラムに通し、ここで溶解物は、事前に不要物が取り除かれるものとする。次に、事前に不要物を取り除いたLnCap溶解物を、BLA8コンジュゲートCNBrセファロース6MBのカラムに通した。BLA8カラムは、膨張したCNBr 6MBセファロースビーズ1ml当たり3mgのBLA8をコンジュゲートさせたものとした。次に、ビーズ(マウスIgGおよびBLA8の両方で)を、0.1Mグリシン、pH2.5で溶出する前に溶解バッファで3回洗浄した。溶離液は1カラム体積の画分で集め、最終濃度0.1Mのトリス、pH8.0で中和し、最終pHを約7.2にした。次に、中和した画分を、マイクロ濃縮器(ミリポアのCentricon10)によって画分体積の10%にまで濃縮した。次に、濃縮溶離液の10%をSDS−PAGEおよびウェスタンブロット法によって分離した。同時に、溶離液の30%をさらにSDS−PAGEに適している体積に濃縮し、コマシー(Commassie)染色によって分離した。
【0165】
アルキル化BLA8、およびBLA8に対するものとしてマウスIgGの溶離液をウェスタンブロット法で検出すると、BLA8溶離液に固有のものとして、大量にグリコシル化されたのタンパク質(>223kDa、約200kDaおよび100kDa)が3組観察され、100kDaバンドが最も顕著であった。3本のバンド(つまり、200kDaは100kDaが2重になったもので、>223kDaバンドは100kDaバンドの3重になったものであると思われる)には線形性があるため、BLA8抗原のモノマー、二量体、三量体から3本のバンドがなっていると仮説をたてた。精製された抗原のスタッキング効果から、抗原が本来の状態で良好に二量化されているが、濃縮によってタンパク質の相互作用の頻度が人為的に高められているものと考えることができる。コマシー(commassie)染色すると、BLA8に固有の対の線が100kDaと約200kDaに観察された。かすかではあるが第3のバンドが>223kDaに観察された。我々の仮説を確かめるために、100kDaおよび約200kDaのバンドの両方を切断し、それぞれLO(100kDa)およびHI(200kDa)と標識した。これら2本のバンドは、引き続きマススペック分析に供する。
【0166】
マススペック分析によって、2本のバンド(HIおよびLO)が消化性ピークと同一のピークを示すことがわかり、これは2本のバンドが同一の抗原からなっていることを示している。これによって、ウェスタンブロットおよびSDS−PAGEによって観察されたバンドが、実際にはグリコシル化分子の分子量約100kDaを有する抗原のポリマーであると考えた我々の仮説が確認された。さらに、マススペックによって、BLA8抗原について同定をした。BLA8抗原のペプチド配列は、保存済みの二つの配列に匹敵し、一番目は最近同定されたタンパク質B7−H3、二番目は、B7−H3の細胞外領域配列と>90%の相同性を共有するが、非常に大きい配列をコードしているEST配列である。我々は、B7−H3に似ている新規の抗原にBLA8が結合していることを発見した。我々はこの抗原をB7−H3Lと名付ける。
【0167】
(実施例8.抗体LUCA1、SKIN2、PA20およびBLA8はすべて同じ抗原を標的とする)
ウェスタンブロットの結果、抗体LUCA1、SKIN2、PA20およびBLA8がすべて同じ抗原にブロットすると思われることが示されたが、この結果を確認するために、LnCap細胞からの精製BLA8抗原を使用して固相プレートELISAを実施した。精製抗原は、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS+)に1:25で希釈(ウェル一つにつき50μl)し、NUNCマキソーブ(maxisorb)プレート(VWR)に室温で2時間結合させた。次に、1%BSAを含むHBSS+をウェル一つ当たり200μl用い結合プレートを30分間ブロックした。ブロックした後、LUCA1、SKIN2、PA20、およびBLA8(すべて0.5μg/ウェル、ブロッキングバッファに希釈)を、マキソーブプレートに加え、室温で1時間相互作用させた。マウスIgG、およびLnCap細胞に対して反応性のある無関係な抗体を、負の対照としてウェル一つ当たり同じ濃度にして使用した。プレートをHBSS+で十分洗浄した。次に、0.04μg/ウェルで使用する第2の抗体、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートロバ抗マウスIgG(重鎖および軽鎖に特異的)をウェルに加え、室温で30分間インキュベートした。プレートをHBSS+で十分に洗浄し、次に、HRPに基づく色変化反応用のTMB基質に晒した。1Mリン酸を追加(基質に対して1:1)して、この反応を止めた。次に、この反応をO.D.450で読んだ。このELISAによって、LUCA1、SKIN2、PA20およびBLA8はすべて、BLA8抗原に強く反応する(O.D.450は負の対照よりも少なくとも2倍増加)一方、負の対照は、ほとんどまたは全く反応を示さなかった。
【0168】
同時に、四つの抗体を使用して生細胞ELISAを実施した。四つの抗体はすべて同じ細胞反応を示すことを発見した。さらに、LUCA1、PA20、SKIN2およびBLA8を、BLA8精製抗原に対するウェスタンブロットに使用した。四つの抗体はすべて、BLA8精製抗原に強く反応した。
【0169】
実施した二つの実験から、抗体LUCA1、PA20、SKIN2およびBLA8は、すべて同じ抗原に反応すると結論付けた。
【0170】
(実施例9.BLA8ファミリおよびエピトープの競合)
我々は、単一の抗原に対する抗体を多数生成してきたので、mAbsのBLA8ファミリの四つの抗体(LUCA1、PA20、SKIN2およびBLA8)間にエピトープの違いがあるのか判断するために実験を始めた。量的に制限があったため、LUCA1、PA20およびBLA8だけをビオチン化した。ビオチン化するために、200ugビオチン/抗体mgの比率のスルホ−NHS−LCビオチンを用い、濃度2mg/mlの各抗体250ugをPBS中で室温で2時間インキュベートした。pH8.0の1Mトリスを最終濃度が100mMになるよう追加することによってビオチン化の反応を停止させた。反応停止のために、室温でさらに20分インキュベートした。次に、ビオチン化済み抗体のバッファをPBSに交換した。
【0171】
BLA8精製抗原をハンクス平衡塩類溶液(HBSS+)に1:25で希釈し、ウェル一つ当たり2μlの濃度にして2時間インキュベートすることによってNUNCマキソーブプレート上に固定した。次に、被覆されたプレートを、1%BSAを含むHBSS+に室温で30分間ブロックした。次に、ブロッキングバッファをプレートから除き、競合抗体の非ビオチン化LUCA1、PA20、SKIN2またはBLA8をブロッキングバッファに希釈したものを滴定によって室温で30分間かけて加えた。なお、滴定は、2ug/ウェルから開始し、最後は3.8ng/ウェルとした(50ul/ウェル)。30分間インキュベートした後、競合抗体を含む50μl/ウェルのウェルにビオチン化済み抗体(LUCA1、PA20またはBLA8)を導入した。ビオチン化済み抗体は、500ナノグラム/mlの濃度で加えた。競合抗体およびビオチン化済み抗体のカクテルを室温でさらに1時間インキュベートした。次に、プレートをHBSS+で十分に洗浄した。次に、HBSS+に希釈した西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートストレプトアビジンを50ul/ウェルにして室温で30分間インキュベートさせた。プレートをHBSS+でさらに洗い、HRPに基づく着色をするために、TMB基質でインキュベートした。この反応は1Mリン酸を追加することによって止めた。次に、プレートをO.D.450で読んだ。
【0172】
競合分析から、PA20およびSKIN2が交差的に競合することがわかり、これらが同じエピトープを共有することが示された。一方、LUCA1およびBLA8は自身によってのみ競合し、どちらも異なるエピトープに結合されていることが示された。したがって、抗体のBLA8ファミリでは、PA20、KID1およびSKIN2は、我々がエピトープAと名付けたエピトープに結合し、LUCA1、KID13およびGB8は、我々がエピトープBと名付けたエピトープに結合し、BLA8は、我々がエピトープCと名付けたエピトープに結合している。
【0173】
(実施例10.RAAG10のクローニング)
B7H3全長に相補的なDNAのクローニング。 ゲートウェイ(Gateway(商標))pCMV−SPORT6ベクター(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)に構築されたヒト卵巣癌細胞SKOV3 cDNAライブラリを、標準的なプロトコルを使用してチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に形質移入した。細胞表面上にBLA8抗原を発現する形質移入体は、BLA8抗体上で2回「パニングする」ことによって濃縮した。濃縮後、DNAを放出させるために細胞を溶解した。粗溶解物をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるB7H3クローニング用の鋳型として使用した。つまり、遺伝子バンクで購入できるEST配列に基づいたB7H3のオープン・リーディング・フレーム(ORF)に隣接するように、1対のB7H3特異的プライマー(センス:5’―AGCCGCCTCACAGGAAGATGCT−3’、およびアンチセンス:5’―CCCTGGTCCTCATGGTCAGGCTAT−3’)を設計した。B7H3特異的プライマー各50pmol、無ヌクレアーゼHO、1X PCRバッファ、dNTP各200μM、および2.5Uプラチナ・ハイフィデリティ・TaqDNAポリメラーゼ(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)と1.5μl細胞溶解物とを組み合わせることによりPCRを実施した。反応液を2分間94℃でインキュベートし、続いて10秒間94℃での鋳型変性および3分間68℃でのプライマーのアニーリング/伸張を28サイクル、および10分間68℃で最終伸張を実施した。一定分量のPCR生成物を1.2%アガロースゲル上で分離し、臭化エチジウム染色によって可視化した。約1.6kbに優勢なバンドが同定され、これをゲル精製し、pTargeT(商標)哺乳類発現ベクター(プロメガ、マディソン、ウィスコンシン州)へクローン化した。HindIIIを使用し制限酵素断片分析をすることによって形質転換体を特徴づけ、cDNA挿入断片の配向をPCRによって決定した。ヌクレオチド配列を決定するために、同じ制限酵素パターンおよび正確な配向を備えるクローンを選択した。これらのクローンのうち7つから1605bpORFが発見され、これらはすべて、遺伝子バンクで購入できるB7H3 EST配列と重複していた。これらのcDNAクローンをCHO細胞中で発現させた後、BLA8抗体で染色した結果からも、これらcDNAクローンが確定的であることを確認した。
【0174】
B7H3突然変異体の構築およびキャラクタリゼーション。 B7H3のどの領域(単数または複数)が各BLA8抗体ファミリ結合の原因であったのか判断するために、一連のB7H3突然変異体を構築し、CHO細胞中に発現させ、種々の方法によって特徴づけた。つまり、BLA8抗体によって最も強く染色されるpTargeT/B7H3 cDNAクローンを選択し、隣接する制限酵素(BamBIおよびNotI)、またはB7H3 cDNAの範囲内にある制限酵素(Eco47III)を種々に組み合わせてクローンを消化した。ライゲーションの後、表1にまとめたように、一連の突然変異体を作製した。PCRおよびHindIII制限酵素による消化によって検査し、各突然変異体を確認した。標準的なプロトコルを使用して、各突然変異体のクローンを少なくとも三つ、CHO細胞へ形質移入した。次に、B7H3の突然変異体を形質移入したCHO細胞を2週間1mg/mlのG418存在下で選別した。種々の方法を使用し、細胞の種々の区画のB7H3含有量を分析した:1)表面上または形質移入体内部で免疫応答性B7H3の局在化について、免疫組織化学(IHC)を用いた;2)形質移入体中のmRNA発現を検出するために逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いた;3)培養上清中の分泌B7H3を検出するためにサンドイッチELISAを用いた。各方法につき独立した実験を少なくとも3回してから結果を得た。
【0175】
B7H3突然変異体を形質移入したCHO細胞の免疫組織化学染色。 形質移入体中に免疫応答性B7H3が存在することがIHCによって判明した。B7H3がCHO細胞の表面上で発現したのか判断するために、生細胞のIHCを実施した。つまり、細胞を、10μg/mlのBLA8抗体ファミリ(BLA8、LUCA1またはPA20)と37℃で1時間インキュベートした。無血清のハム(Ham’s)F12栄養混合物およびダルベッコ改変イーグル培地(F12/DMEM、1:1、v/v)中で細胞を3回洗浄し、氷冷の100%のエタノールに15分間固定してから完全に風乾した。氷冷の2%H/PBSで15分間細胞をインキュベートすることによって、内部のペルオキシダーゼ活性を停止した。PBSですすいだ後、細胞を5%正常ヤギ血清/PBSで1時間ブロックし、次に、ブロッキングバッファ中ペルオキシダーゼ−コンジュゲートAffiniPure F(ab’)断片ヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)(ジャクソン・イムノリサーチ・ラブズ(Jackson Immunoresearch Labs)、ウェスト・グルーブ、ペンシルベニア州)2μg/mlで1時間インキュベートした。洗浄した後、3,3’−ジアミノベンゼジン(DAB)およびHを含む酢酸ナトリウムバッファ(pH5.0)で細胞をインキュベートすることによって細胞表面上の免疫応答性B7H3を可視化した。CHO細胞内の免疫応答性B7H3の検出については、固定細胞のIHC法を上記と同様の手法によって実施した。氷冷の100%エタノール中で細胞をまず固定し、完全に風乾させた。内部のペルオキシダーゼ活性を停止させた後、細胞を洗浄し、ブロックし、次に10μg/mlのBLA8抗体ファミリと1時間37℃でインキュベートした。洗浄した後、同じペルオキシダーゼ−コンジュゲート抗体で細胞をインキュベートした。洗浄後染色シグナルを発生させた。負の対照は、トリスバッファ形質移入によるCHO細胞をBLA8抗体ファミリによって染色することにより得た。倒立顕微鏡によって染色を評価した。その結果を表3のIHCの列にまとめた。染色陽性の場合「+」、弱い染色陽性の場合「+/−」、または染色陰性の場合「−」として、結果を分類した。
【0176】
RT−PCRによるB7H3 mRNA発現の検出。 B7H3 mRNAが形質移入体中で本当に発現されたのか判断するためにRT−PCRを実施した。製造業者の使用説明書に従い、TRIzol試薬(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)によってB7H3突然変異体を形質移入したCHO細胞から全RNAを分離した。RNAの濃度を260nmの吸光度によって測定した。製造業者のプロトコルに従ってスーパースクリプト(Superscript)IIリボヌクレアーゼH逆転写システム(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)を使用し、およそ2〜3μgの全RNAを0.5μgオリゴ−dT15で逆転写した。B7H3プライマー各50pmol(詳細に関しては表2を参照)、無ヌクレアーゼHO、1X PCRバッファ、dNTP各200μM、および2.5UプラチナTaqDNAポリメラーゼ(インビトロジェン、カールズバッド、カリフォルニア州)と1μl逆転写生成物とを組み合わせることによりPCRを上記と同様のサイクル条件で実施した。得られたPCR生成物を1.2%アガロースゲル上で分離し、臭化エチジウム染色によって可視化した。結果を表3のRT−PCRの列にまとめ、正確なアンプリコンをもつ突然変異体が検出された場合を「+」、またはアンプリコンが検出されない場合は「−」として分類した。
【0177】
ELISAによる培養上清中の免疫応答性B7H3の検出。 B7H3の一部が細胞表面上に固着する代わりに分泌される可能性を探るために、サンドイッチELISAを発展させ、培養上清中の免疫応答性B7H3の含有量を分析した。つまり、炭酸塩バッファ(pH9.0)中BLA8抗体4μg/mlによって96−ウェルELISAプレートを4℃で一晩コーティングした。プレートを0.05%トゥイーン(Tween)−20/PBSで洗浄し、3%BSA/PBSで1時間ブロックした。培養上清(10倍希釈を4回、きれいな状態から開始して1/1000にする)、およびBLA8抗原標準(2倍希釈を8回、16μg/mlから開始して125ng/mlにする)の複製を、3%BSAおよび0.05%トゥイーン−20を含むPBS中に調製し、1時間インキュベートした。洗浄した後、3%BSA/PBS中のビオチン化LUCA1抗体4μg/mlとともにプレートを1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ヴェクタステイン・エリート(Vectastain Elite)ABC試薬(ベクター・ラブズ(Vector Labs)、バーリンゲーム、カリフォルニア州)とともにさらに1時間インキュベートした。洗浄した後、o−フェニレンジアミンおよびHを含むクエン酸リン酸バッファ中での着色によって結合B7H3を可視化した。2.5NのHSOを追加することによって所望の着色強度を得た。ソフトマックス・プロ・ソフトウェア(SOFTmax Pro software)(モレキュラー・デバイシズ(Molecular Devices)、サニーベール、カリフォルニア州)と接続されているモレキュラー・デバイシズ・Eマックス(Molecular Devices Emax)ELISAプレート読取装置(モレキュラー・デバイシズ、サニーベール、カリフォルニア州)によって490nmの吸光度を測った。トリスバッファ形質移入によるCHO細胞の上清を使用することによってブランクを得た。結果を表3のELISAの列にまとめ、吸光度の読み取り値がブランクより大きかった場合を「+」、または吸光度の読み取り値がブランク以下だった場合を「−」として分類した。
【0178】
【表1】

【0179】
【表2】

【0180】
【表3】

「突然変異体Δ3’s」の上清中の免疫応答性B7H3の濃度は、約2.148±0.48μg/mlであった。
【0181】
B7H3およびその突然変異体の図示を図2に示す。
【0182】
(実施例11.抗RAAG10ファミリ抗体の腫瘍組織への結合に関する免疫組織化学)
凍結した組織試料をOCT化合物に包埋し、ドライアイスで冷やしたイソペンタンで急速凍結した。ライカ(Leica)3050CMミクトロトーム(mictrotome)で厚さ5μmに凍結切片を切断し、スライドガラス上に解凍標本を作製した。切片を−20℃でエタノールで固定し、室温にて一晩風乾させた。固定した切片を使用するまで−80℃で貯蔵した。免疫組織化学を実施するために、組織切片を戻し、まず、ブロッキングバッファ(PBS、5%正常ヤギ血清)で30分間、室温でインキュベートし、次にブロッキングバッファ(5μg/ml)に希釈した抗RAAG10抗体および対照モノクローナル抗体とともに一晩インキュベートした。次に切片をブロッキングバッファで3回洗浄した。結合モノクローナル抗体を、pH5.05の0.1M酢酸ナトリウムバッファおよび0.003%の過酸化水素(シグマ、カタログ番号H1009)中ヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)F(ab’)2−ペルオキシダーゼコンジュゲートおよびペルオキシダーゼ基質ジアミノベンゼジン(1mg/ml、シグマ、カタログ番号D5637)によって検出した。染色するスライドは、ヘマトキシリンによって対比染色し、ニコンの顕微鏡によって観察した。
【0183】
いくつかの例では、適切な抗原回収法を実施した後、パラフィンに包埋したホルムアルデヒド固定組織を免疫組織化学に使用人であった。このような抗原回収法の一つがManghamおよびIsaacson、Histopathology35:129−33(1999)に記載されている。当業者は抗原回収および/または検出に別の方法を使用してもよい。回収した抗原とともに凍結組織または必要に応じて固定組織を使用した同様の実験およびpolyMICA検出からの結果を実施した。抗RAAG10抗体の種々の正常組織およびがん組織への結合を評価した。どの例でも、対照の固定組織中の抗体結合は、凍結組織の抗体結合と相関関係にあった。これら二つが対照に一致しない場合、凍結組織からの結果のみを使用した。便宜上、抗RAAG10抗体による主な5タイプの腫瘍の染色結果を組み合わせて表4に示した。染色には異なる五つの組織源からの凍結腫瘍組織を使用した。抗RAAG10抗体の抗原、すなわちRAAG10に対するテストが陽性であった腫瘍の数、および上記のテストをした腫瘍の全体数を、(+/全体)とし、各腫瘍タイプについて示した。抗RAAG10抗体を結合する腫瘍のパーセンテージも示した。
【0184】
【表4】

表5は、抗RAAG10抗体による五つの転移性腫瘍タイプの染色結果を組み合わせたものを示す。染色には固定または凍結腫瘍組織を使用した。抗RAAG10抗体の抗原に対するテストが陽性であった腫瘍の数、および上記のテストをした腫瘍の全体数を(+/全体)とし、各腫瘍タイプについて示した。抗RAAG10抗体を結合する腫瘍のパーセンテージも示した。表5に示すように、抗RAAG10抗体は、テストした転移性腫瘍タイプの約94%に結合していた。
【0185】
【表5】

(実施例12. セルアレイ(CellArray(商標))からの免疫細胞学的結果)
モノクローナル抗体抗RAAG10を使用し、異なるタイプの組織からの種々の細胞株について反応性をテストした。プロテアーゼを使用せずに異なる株化細胞系からの細胞を成長表面から除去し、OCT化合物に充填し包埋した。細胞を凍結し、切片化し、次に標準的IHCプロトコルを使用して染色した。セルアレイ(CellArray(商標))技術については、国際公開第WO01/43869号に記載されている。弱い染色陽性の場合「+」、中程度の染色陽性の場合「++」、強い染色陽性の場合「+++」、および染色陰性の場合「−」として、得られた結果を得点化した。種々の細胞株(がん細胞株を含む)への抗RAAG10抗体の結合を示すセルアレイ結合実験からの結果を表6にまとめた。
【0186】
【表6】

MAb濃度=5μg/ml、標準プロトコル
CC−−Biowhittaker
(実施例13. 抗RAAG10抗体の腫瘍および正常組織への結合)
外科的切除によって得られる正常組織および腫瘍組織を凍結し、標本にした。ライカ(Leica)3050CMミクトロトーム(mictrotome)で厚さ5μmに凍結切片を切断し、ベクタバウンド(vectabound)−コーティングスライド上に解凍標本を作製した。切片を−20℃でエタノールで固定し、室温にて一晩風乾させた。一次抗体抗RAAG10を1対100(最終濃度1ug/ml)に希釈して使用した。組織切片を回収し、まず、ブロッキングバッファ(PBS、5%正常ヤギ血清)で30分間、室温でインキュベートし、次にブロッキングバッファ(5μg/ml)に希釈した抗RAAG10抗体および対照モノクローナル抗体とともに一晩インキュベートした。次に切片をブロッキングバッファで3回洗浄した。結合したモノクローナル抗体を、pH5.05の0.1M酢酸ナトリウムバッファおよび0.003%の過酸化水素(シグマ、カタログ番号H1009)中でヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)F(ab’)−ペルオキシダーゼ複合体およびペルオキシダーゼ基質ジアミノベンゼジン(1mg/ml、シグマ、カタログ番号D5637)で検出した。染色するスライドは、ヘマトキシリンによって対比染色し、ニコンの顕微鏡によって観察したPolyMICA(商標)検出キットを使用し、抗RAAG10抗体の結合を判断した。
【0187】
弱い染色陽性の場合「+」、中程度の染色陽性の場合「++」、強い染色陽性の場合「+++」、および染色陰性の場合「−」として、得られた結果を得点化した。抗RAAG10抗体の腫瘍組織試料への結合を表7に示す。抗RAAG10抗体による正常組織の染色結果を表8に示す。
【0188】
比較的感度の高いプロトコル(ABCまたはダコ・エンヴィジョン(Dako Envision))を使用した結果、副腎、子宮、皮膚、肺、腎臓、膵臓、肝臓および前立腺の正常組織に染色が見られた。正常な乳房、大腸、十二指腸、心臓、肺、卵巣、前立腺、骨格筋、皮膚、胃および子宮の組織では、間質(結合組織)染色が見られた。正常脳組織は陰性であった。
【0189】
【表7】

=局所的染色
【0190】
【表8】

(実施例14. 抗RAAG10抗体および毒素−コンジュゲート抗マウスIgGの内部移行)
MAb−ZAP(アドバンスド・ターゲティング・システムズ(Advanced Targeting Systems)、サン・ディエゴ、カリフォルニア州)は、サポリンにコンジュゲートした抗マウスIgGであって、タンパク質合成を阻害する毒素である。この毒素は、細胞膜に不透過性である。モノクローナル抗体が内部移行可能な細胞表面抗原に結合されている場合、毒素−コンジュゲートは、結合されているモノクローナルに結合し内部移行することができ、その結果、細胞を死滅させる。毒性活性を示すには内部移行に依存するので、細胞毒性効果を発現させる内部移行に依存する任意の毒素に対する適切な標的として所定の表面抗原が有効であるのかを判断するにはMAb−ZAPが有用であると考えられる。このように、MAb−ZAPは、メイタンシノイドおよびカリケアマイシンなど上記のような内部移行依存性毒素のモデルとして有用である。
【0191】
抗RAAG10抗体およびサポリンコンジュゲート抗マウスIgGの内部移行、ならびにタンパク質合成阻害剤サポリンが内部移行した後の腫瘍細胞成長の阻害効果についてテストをするために、検定法にマウスモノクローナル抗RAAG10抗体LUCA1を使用した。ヒト肺扁平上皮がん細胞、SK−MES−1を10mMのEDTAのはいった貯蔵用フラスコから取り出し、遠心分離した。適切な培地中に細胞を50,000/mlにして再懸濁し、96ウェルプレートの各ウェルに100μl塗布した。抗体LUCA1を10×濃縮物として適切なウェルに直ちに加え、最終濃度を10μg/mlにした。室温で15分置いてから、MAb−ZAP(カタログ#IT−04、アドバンスド・ターゲティング・システムズ、サン・ディエゴ、カリフォルニア州)を10×濃縮物として適切なウェルに加え、最終濃度を0.001pMから104pMとした。4日間成長させた後、37℃で4時間、MTT(5mg/mlPBSで貯蔵しておき、ウェルに入れるときは1:10希釈する)を加えた。次に全ウェルから培地を取り出し、100μl/ウェルのDMSOを加えた。プレートを優しく回転させ、青色のMTT沈殿物を可溶化し、プレート読み取り機によってこのプレートを540nmで読み取った。テトラゾリウム色素MTTの減少のOD測定値は、細胞数の代用である。
【0192】
図1に示すように、MAb−ZAPを加えると、LUCA1モノクローナル抗体の存在下(実線)では、LUCA1の非存在下(点線)の染色に比べて、SK−MES−1細胞中でMTT染色の減少があった。このことは、ヒト肺扁平上皮がん細胞SK−MES−1の成長がLUCA1モノクローナル抗体およびMAb−ZAP(タンパク質合成阻害剤サポリンにコンジュゲートされた抗マウスIgG)の存在下で阻害されていることを示している。MabZAPが高濃度になると線が分かれる。これはLUCA1が内部移行されていることを示している。LUCA1と同様の実験を腫瘍細胞株SK−OV−3およびLNCaPについて実施した。さらにLUCA1の標的エピトープとは別のエピトープを標的とする二つの別の抗RAAG10抗体であるBLA8およびKID2モノクローナル抗体をもつこれら三つの細胞株に関し、同じように内部移行したとの結果が得られた。
【0193】
当然のことながら、本明細書に記載の実施例および実施形態は、例示のみを目的とするものであり、これらに関する種々の変更または変形は、当業者には示唆されており、本明細書の精神および範囲内に含まれるものである。本明細書に挙げた刊行物、特許および特許明細書はすべて、各出版物、特許または特許明細書それぞれを参照によって組み込んでいることを特定し個別に示す場合と同じく、あらゆる目的にかなうように、その全体を参照により本明細書に組み込むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−130770(P2011−130770A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12411(P2011−12411)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【分割の表示】特願2010−787(P2010−787)の分割
【原出願日】平成15年6月19日(2003.6.19)
【出願人】(504258240)レイベン バイオテクノロジーズ,インコーポレイティド (9)
【Fターム(参考)】