説明

新規アミノ基含有複素環誘導体および該複素環誘導体を含有する光電変換用増感色素

【課題】本発明は、可視領域に広い吸収帯を持ち、光電変換効率の高い光電変換用増感色素として好適な新規アミノ基含有複素環誘導体、およびこれを用いた光電変換材料、光電変換電極、ならびに光電変換電池の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される、末端アミノ基含有複素環誘導体。
【化1】


(上記一般式(1)において、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい1価の有機残基である。R3は、半導体特性を示す無機多孔質物質と連結し得るアンカー基である。Xは、硫黄原子、酸素原子またはセレン原子を少なくとも1つ含有する2価の芳香族複素環基である。Yは、置換基を有していてもよい2価の連結基である。mは、1〜5の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアミノ基含有複素環誘導体、これを用いた光電変換用増感色素、これを用いた光電変換材料、光電変換電極、およびこれを用いた光電変換用太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、石油、石炭、天然ガスに代表される化石燃料にエネルギーは大きく依存しており、今後化石燃料の枯渇が大きく叫ばれている。また化石燃料からエネルギーを得る際にはどうしても二酸化炭素の排出が問題として残り、環境への大きな負荷も問題視されている。
【0003】
最近これらの懸念から太陽光発電は一層注目を浴びており、現在単結晶もしくは多結晶の結晶シリコンまたはアモルファスシリコンを用いたシリコン太陽電池、あるいはガリウム、ヒ素を用いた化合物半導体太陽電池等について盛んに開発検討がなされてはいるものの、製造上のコスト等の諸問題を克服する必要が依然として残るために汎用性に乏しいのが現状である。一方で光増感性を有する色素を利用した太陽電池についても多く提案はされているが変換効率が低く、耐久性が悪いといった点に問題があった。
【0004】
このような経緯の中で1991年Gratzelらによる報告があり(非特許文献1)、色素によって光増感された無機半導体多孔質体を用いた光電変換電極および光電変換電池が注目を浴びることとなった。この報告にある光電変換素子は酸化チタン等の比較的安価な無機酸化物半導体を用いて製造されており、汎用品であるシリコン太陽電池よりも低コストで光電変換素子を得ることができる可能性をもっている。しかし、現状ではルテニウム系の増感色素でないと高い光電変換効率が得られないため、色素のコスト高、そしてクラーク数が低いことからそれらの安定供給にも問題が残る。一方で有機系色素の開発検討も活発に行われてはいるものの変換効率の低さ等から実用化までに至っていない。また、特定のアクリル酸部位を有する色素やアミド誘導体を有する増感色素も開示されているが(特許文献1、特許文献2参照)、充分な性能を有すると言えないものであった。
【0005】
【非特許文献1】ブライアン オレガン(Brian O’Regan),ミカエル グラツェル(Michael Gratzel)、「色素増感コロイダルTiO2膜ベースの低コスト、高効率太陽電池(A low−cost,high−efficiency solar cell based on dye−sensitized colloidal TiO2 films)」、ネイチャー(Nature)、英国、1991年10月、第353巻、p.737〜740
【特許文献1】特表2002−011213号公報
【特許文献2】特開2004−143355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、可視領域に広い吸収帯を持ち、光電変換効率の高い色素増感型の光電変換電池に使用される光電変換用増感色素として有用な、新規アミノ基含有複素環誘導体の提供を目的とする。また、半導体特性を示す無機多孔質物質とこの光電変換用増感色素とを連結させた光電変換材料、この光電変換材料を透明電極に積層してなる光電変換電極、およびこの光電変換電極、電解質層および導電性対極を含んでなる光電変換電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意努力研究を重ねた結果、特定の部分構造を有する化合物が、光電変換用増感色素として有用であることを見出した。すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される末端アミノ基含有複素環誘導体を提供する。
【化1】


上記一般式(1)において、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい1価の有機残基である。ここで、R1およびR2は共同して環を形成してもよい。また、R1またはR2のいずれか一方は、Xと共同して環を形成してもよい。R3は、半導体特性を示す無機多孔質物質と連結し得るアンカー基である。Xは、硫黄原子、酸素原子またはセレン原子を少なくとも1つ含有する2価の芳香族複素環基である。該2価の芳香族複素環基は、置換基を有していても良く、2個以上の環が縮合した構造を有するものであってもよい。Yは、置換基を有していてもよい2価の連結基であり、鎖状構造、環状構造またはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。ただし、Yは、式(1)中のXとπ電子が共役し、かつ式(1)中のR3と結合する炭素原子およびR5と結合する炭素原子間で形成される二重結合とπ電子が共役する構造である。mは、1〜5の整数である。式(1)中の二重結合は、シス−トランス異性体のいずれを生じさせるものであってもよい。
【0008】
上記一般式(1)中のXが、下記一般式(2)で表される環構造の基、または下記一般式(2)で表される環構造同士が縮合した構造の基であることが好ましい。
【化2】


上記一般式(2)において、X1は、硫黄原子、酸素原子またはセレン原子である。X2はC−R6またはNであり、X3はC−R7またはNである。ここで、R6およびR7は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい1価の有機残基である。R6およびR7は、共同して環を形成してもよい。ただし、X2およびX3は、少なくとも一方はN以外である。
【0009】
また、上記式(1)において、R3としては、カルボキシル基、リン酸基またはスルホン酸基が好ましい。
【0010】
また、上記式(1)において、R1、R2、R4、R5およびR6の1価の有機残基は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、もしくは芳香族複素環基、またはハロゲン原子、シアノ基、イソシアノ基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、あるいは下記一般式(3)で表される基であることが好ましい。
【化3】


上記一般式(3)において、A1およびA2は、それぞれ独立して、O、NHまたはSである。Bはカルボニル基、チオカルボニル基、スルフィニル基またはスルホニル基である。oおよびpは、それぞれ独立して0または1である。R8は、水素原子、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、もしくは芳香族複素環基、またはハロゲン原子、シアノ基、イソシアノ基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基もしくはアミド基である。
【0011】
上記一般式(1)において、R4は電子求引性の基であることが好ましく、特にシアノ基、エステル基、アミド基またはペルフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0012】
上記一般式(1)において、R3はカルボキシル基であることが好ましい。
【0013】
上記一般式(1)において、Yは芳香族複素環基を含有する構造であることが好ましい。
【0014】
上記一般式(1)において、XおよびYは、いずれも2,5−チエニレン基または2,5−チエノチエニレン基を有する構造であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、上記一般式(1)で表される末端アミノ基含有複素環誘導体を含む光電変換用増感色素を提供する。
さらにまた、本発明は、該光電変換用増感色素を含む光電変換材料を提供する。
さらにまた、本発明は、該光電変換材料を用いた光電変換電極を提供する。
さらにまた、本発明は、該光電変換電極を用いた光電変換電池を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアミノ基含有複素環誘導体は、特定の部分構造を有することにより、可視領域に広い吸収帯を持ち、光機能材料、特に光電変換用増感色素として用いることができる。特に、色素増感型光電変換電池に用いることにより、変換効率が高く安定性の高い光電変換電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「置換基を有していても良い」と記載する場合、置換基とは、具体的には、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基もしくは芳香族複素環基、またはハロゲン原子、シアノ基、イソシアノ基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、あるいは下記一般式(3)で表される1価の基である。
【化4】


上記一般式(3)において、A1およびA2は、それぞれ独立して、O、NHまたはSである。Bはカルボニル基、チオカルボニル基、スルフィニル基またはスルホニル基である。oおよびpは、それぞれ独立して0または1である。R8は、水素原子、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、もしくは芳香族複素環基、またはハロゲン原子、シアノ基、イソシアノ基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基もしくはアミド基である。
【0018】
本発明の新規アミノ基含有複素環誘導体は、特定の部分構造を有するアミノ基含有化合物であり、具体的には、下記一般式(1)で表される末端アミノ基含有化合物である。
【化5】


上記一般式(1)において、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい1価の有機残基である。R3は、半導体特性を示す無機多孔質物質と連結し得るアンカー基である。Xは、硫黄原子、酸素原子またはセレン原子を少なくとも1つ含有する2価の芳香族複素環基である。Yは、置換基を有していてもよい2価の連結基である。mは、1〜5の整数である。式(1)中の二重結合は、シス−トランス異性体のいずれを生じさせるものであってもよい。
【0019】
まず一般式(1)中のXについて説明する。Xは、硫黄原子、酸素原子またはセレン原子を少なくとも1つ含有する2価の芳香族複素環基を表す。該2価の芳香族複素環基は、置換基を有していてもよく、2個以上の環が縮合していてもよい。また、置換基を有する場合、2つ以上の置換基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。また、R1またはR2のいずれか一方が、Xと共同して環を形成してもよい。
【0020】
ここでいう2価の芳香族複素環は、下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
【化6】


上記一般式(2)において、X1は硫黄原子、酸素原子またはセレン原子である。X2はC−R6またはNであり、X3はC−R7またはNである。ここで、R6およびR7は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい1価の有機残基である。ここで、1価の有機残基としては、具体的には、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、もしくは芳香族複素環基、またはハロゲン原子、シアノ基、イソシアノ基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、あるいは下記一般式(3)で表される基を選択しうる。
【化7】


上記一般式(3)において、A1およびA2は、それぞれ独立して、O、NHまたはSである。Bはカルボニル基、チオカルボニル基、スルフィニル基またはスルホニル基である。oおよびpは、それぞれ独立して0または1である。R8は、水素原子、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、もしくは芳香族複素環基、またはハロゲン原子、シアノ基、イソシアノ基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基もしくはアミド基である。
【0021】
上記一般式(2)において、X2は、C−R6、またはC−R7で表される構造が好ましく、中でもR6またはR7が、水素原子、または置換基を含有してもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基もしくは芳香族複素環基である構造が好ましい。特にR6またはR7が水素原子である構造が好ましい。
【0022】
一般式(2)で表される2価の複素環基は、たとえば、2,5−チエニレン基、2,5−チアゾイレン基、2,5−フリレン基または2,5−セレニレン基のような単環構造の基であってもよく、また、それらの複素環から形成される縮合環のような多環式芳香族複素環基であってもよい。さらにまた、R6同士が共同して環を形成していてもよい。一般式(2)で表される2価の複素環基の具体例を以下に示す。
【化8】

【0023】
また、一般式(1)において、R1またはR2と、Xとの間で環を形成した構造の具体例を以下に示す。
【化9】

【0024】
次に一般式(1)中のYについて説明する。Yは、置換基を有していてもよい2価の連結基であり、鎖状構造、環状構造またはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。ただし、一般式(1)のアミノ基と、R3で表されるアンカー基との間で、π電子が共役する構造であることが必要である。このため、Yは、一般式(1)中のXとπ電子が共役し、かつ一般式(1)中の炭素原子間で形成される二重結合、より具体的には、R3と結合する炭素原子と、R5と結合する炭素原子との間に形成される二重結合と、π電子が共役する構造であることが必要である。このような構造を有することにより、光電変換用増感色素として用いたときに、該色素から無機多孔質物質へ電子の注入を効率良く行うことができる。
【0025】
Yは、2価の不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、またはこれらの組み合わせから選択することができる。ここで、不飽和炭化水素基は、鎖状構造または環状構造のいずれであってもよく、2つ以上の環が縮合した構造でもあってもよい。また、2価の不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。
Yの炭素数は、一般式(1)のアミノ基と、R3で表されるアンカー基との間で共役系が維持できるのならば特に制限は無いが、合成の容易さや経済性の点から、骨格部分の炭素数が2〜60であることが好ましい。したがって、Yが置換基を有する場合、置換基を除いた骨格部分の炭素数が上記の範囲であればよく、置換基を含めた炭素数は上記範囲を上回っていてもよい。Yの骨格部分の炭素数は、好ましくは2〜40である。
【0026】
2価の不飽和炭化水素基としては、「−CH=CH−」「−CH=CH−CH=CH−」、「−CH=CH−CH=CH−CH=CH−」、「−CH=CH−C≡C−」など共役鎖状連結基、または1−シクロヘキセン−1,2−イレン、1−シクロペンテン−1,2−イレン、など不飽和結合を有する環状連結基であってよく、さらに前記鎖状連結基と環状連結基とが組み合わさった構造であってもよい。
【0027】
2価の芳香族炭化水素基としては、単環構造のもの、もしくは縮合環構造のもの、または環集合芳香族炭化水素基であってよく、たとえば、フェニレン基、ナフチレン基、アンスリレン基、フェナンスリレン基、トリフェニレン基、ピレリレン基等が挙げられる。
【0028】
また2価の芳香族複素環基としては、単環構造のもの、もしくは縮合環構造のもの、または環集合芳香族複素環基であってよく、たとえば、2,5−フリレン基、2,5−チアゾイレン基、2,5−ピラゾイレン基、2,5−ピラゾイレン基、2,5−ピロリレン基、2,5−ピリミジニレン基、2,5−チエニレン基、2,5−セレニレン基、2,6−キノリレン基、2,5−チエノチエニレン基、2,5−セレノセレニレン基、等が挙げられる。
【0029】
また、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、の組み合わせとしては、2個以上の環が直結した構造、または不飽和炭化水素基を介して連結された構造などが挙げられる。これらの組み合わせは、一般式(1)において、Xからアンカー基R3までπ共役系を形成することができる限り特に限定されない。このような組み合わせ構造の具体例としては、たとえば、ビフェニレン基、ビチエニレン基、ビピリジレン基、または下記一般式(4)で表される繰り返し構造を含んだ基などが挙げられる。
【化10】


上記式中、q、rおよびtは、それぞれ独立して1〜10の整数である。X2およびX3は、一般式(2)について示したものと同じものを表す。
【0030】
Yが、一般式(4)で表される繰り返し構造を2つ以上含んだ基である場合、Yに含まれる一般式(4)の繰り返し構造は、必ずしも全て同一でなくてもよい。すなわち、一般式(4)で表される繰り返し構造として、互いに異なる構造を含んでいてもよい。
なお、Yにおいて、一般式(4)で表される繰り返し構造の数は、1〜10の整数である。
【0031】
一般式(4)で表される繰り返し構造の具体例を以下に示す。
【化11】

【0032】
一般式(1)で表される本発明の末端アミノ酸含有複素環誘導体は、色素増感型光電変換電池に使用される光電変換用増感色素として好適である。
地上に到達する太陽放射スペクトルは、地球を取り巻く上層大気によって、散乱あるいは吸収され約300〜3000nmに分布が見られる。ここで色素増感型光電変換電池では半導体電極電位および電解質の酸化還元電位等の影響から、太陽光を電気エネルギーへ変換できる吸収波長領域は300〜1200nmの範囲が有効と考えられている。さらに太陽光の放射照度は主に可視領域で大きく、可視領域である400〜800nmのエネルギーは太陽光エネルギー全体の55%に相当する。
したがって、可視領域において広い吸収帯を持つ色素を色素増感型光電変換電池用の光電変換用増感色素として用いることで、太陽光エネルギーを効率よく利用することを可能となる。
【0033】
色素増感型光電変換電池用の光電変換用増感色素として使用される色素が、可視領域においてより広い吸収帯を持つためには吸収端がより長波長側にあることが好ましい。さらに、その目安としては、紫外可視吸収スペクトル測定により特定される吸収極大波長が、より長波長側にあることが好ましいこととなる。
これらを満足する色素の構造設計をする方法の一つとして、共役系が長いことと、一般式(1)で表される骨格の場合、Xとして芳香族炭化水素基を導入するよりも、芳香族複素環基を導入することが好ましい。この点から一般式(1)で表される本発明の末端アミノ基含有複素環誘導体は、色素増感型光電変換電池用の増感色素として好適である。
【0034】
同様の理由から、一般式(1)中のXおよびYは、いずれも芳香族複素環基であることが好ましく、さらに芳香族複素環基としては複素5員環構造が好ましい。ここで、複素5員環構造が縮環して形成された構造も好ましい。
【0035】
特に、一般式(1)中のXおよびYは、2,5−チエニレン基、2,5−フリレン基、2,5−セレニレン基または2,5−チアゾイレン基のいずれかを有する構造であることが好ましい。また、これらの基が縮環した構造である2,5−チエノチエニレン基または2,6−ジチエノチエニレン基を有する構造であることが好ましい。これらの中でも、2,5−チエニレン基または2,5−チエノチエニレン基を有する構造であることが好ましい。
【0036】
一般式(1)で表される骨格の場合に、Xが芳香族炭化水素基よりも芳香族複素環基であることが好ましく、さらにXおよびYが芳香族炭化水素基よりも芳香族複素環基であることが好ましく、さらに芳香族複素環基としては複素5員環構造が好ましい理由は、環内にあるヘテロ原子によりHOMO−LUMOの差が小さくなり、結果的に紫外可視吸収スペクトルで得られる最大吸収波長が、芳香族炭化水素基が導入された化合物よりも芳香族複素環基が導入された化合物のほうが長波長側へシフトすることとなり、複素5員環構造の場合に、この傾向がより顕著であるためだと思われる。
【0037】
次に一般式(1)中のR1、R2、R4およびR5について説明する。
1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい1価の有機残基である。ここで、R1およびR2は共同して環を形成してもよい。また、R1またはR2のいずれか一方は、Xと共同して環を形成してもよい。
【0038】
1、R2、R4およびR5の1価の有機残基としては、具体的には、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、もしくは芳香族複素環基、またはハロゲン原子、シアノ基、イソシアノ基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、あるいは下記一般式(3)で表される基で挙げられる。
【化12】


上記一般式(3)において、A1およびA2は、それぞれ独立して、O、NHまたはSである。Bはカルボニル基、チオカルボニル基、スルフィニル基またはスルホニル基である。oおよびpは、それぞれ独立して0または1である。R8は、水素原子、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、もしくは芳香族複素環基、またはハロゲン原子、シアノ基、イソシアノ基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基もしくはアミド基である。
【0039】
ここで、1価の脂肪族炭化水素基は、炭素数1〜40の1価の脂肪族炭化水素基を意味し、直鎖構造、分岐を有する構造または環状構造のいずれであってもよく、不飽和結合を有していてもよい。また、1価の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、一つ以上の炭素原子が酸素原子、硫黄原子または窒素原子に置換されていてもよい。1価の脂肪族炭化水素基の具体例としては、それぞれ炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
【0040】
1価の脂肪族炭化水素基として、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基、1−ヘプチル基、1−オクチル基、2−エチル−1−ヘキシル基といった炭素数1〜8のアルキル基;1−プロペニル基、イソプロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチルー1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基といった炭素数2〜4のアルケニル基;エチニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−3−プロペニル基といった炭素数2〜4のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデカニル基といった炭素数3〜10の飽和シクロアルキル基;2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基といった炭素数3〜7の不飽和シクロアルキル基が挙げられる。
【0041】
1価の芳香族炭化水素基としては、1価の単環構造もしくは縮合環構造の芳香族炭化水素基、または1価の環集合芳香族炭化水素基が挙げられる。具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基、トリフェニル基、ピレニル基等が挙げられる。また、1価の芳香族炭化水素は、酸素原子または硫黄原子を介して、一般式(1)の骨格部分と結合するものであっても良く、このようなものとしては、具体的には、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
【0042】
好ましい1価の芳香族炭化水素基は、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−アニソイル基、m−アニソイル基、p−アニソイル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナントリル基等の炭素数6〜14の1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0043】
1価の芳香族複素環基としては、1価の単環構造もしくは縮合環構造の芳香族複素環基、または1価の環集合芳香族複素環基が挙げられる。具体的には、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−セレニル基、3−セレニル基、1−ピローリル基、2−ピローリル基、3−ピローリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、2−キノキサリル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、2−チエノチエニル基、3−チエノチエニル基、2−セレノセレニル基、3−セレノセレニル基、2−チアゾイル基、2−チアゾチアゾイル基などが挙げられる。
【0044】
好ましい1価の芳香族複素環基としては、2−チエニル基、2―セレニル基、2−ベンゾチエニル基、2−ベンゾセレニル基、2−チエノチエニル基、2−セレノセレニル基、2−ジチエニル基といった炭素数4〜12の芳香族複素環基が挙げられる。
【0045】
1およびR2が共同して環状構造をなす脂肪族炭化水素基としては、2価の連結基が挙げられる。2価の連結基としては、好ましくはテトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基といった、炭素数4〜6の飽和アルキレン基などが挙げられる。
たとえば、ペンタメチレン基の場合、R1およびR2と、一般式(1)のアミン部分の窒素原子によって形成される環が、ピペリジン環を形成することになる。
【0046】
また、たとえばR1およびR2が共同して環状構造をなす脂肪族炭化水素基がペンタメチレン基であって、炭素原子が酸素原子に置換されている場合、R1およびR2と、一般式(1)のアミン部分の窒素原子によって形成される環が、一般式(1)のアミン部分の窒素原子によって形成される環がモルホリン環などを形成することになる。
【0047】
1およびR2が共同して環状構造をなす芳香族炭化水素基としては、単環構造もしくは縮合環構造の芳香族炭化水素基よりなる2価の連結基、または環集合芳香族炭化水素基よりなる2価の連結基が挙げられる。このような2価の連結基としては、具体的には2,2’−ビフェニレン基、−Ph−S−Ph−基、4,5−フェナンスリル基等が挙げられ、好ましくは2,2’−ビフェニレン基が挙げられる。
【0048】
1およびR2が共同して環状構造をなす芳香族複素環基としては、単環構造もしくは縮合環構造の芳香族複素環基よりなる2価の連結基、または環集合芳香族複素環基よりなる2価の連結基が挙げられる。このような2価の連結基としては、具体的には3,3’−ビチエニレン基等があげられる。
【0049】
1およびR2としては、合成の容易性などから、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
【0050】
4およびR5としては、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20の1価の有機残基であることが好ましい。ここで、1価の有機残基は置換されていることが好ましい。R4およびR5は、特に電子求引性基が好ましい。
【0051】
ここでいう電子求引性基とは、ハメットの置換基定数σが0より大きい値を示す基を意味する。R4およびR5の電子求引性基の具体例としては、シアノ基、カルボキシル基、アシル基、ホルミル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ニトロ基、ペルフルオロアルキル基等を挙げることができる。但し、電子求引性基はこれらに限定されない。
【0052】
アシル基としてはアセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、トルオイル基、シンナモイル基等が挙げられる。
【0053】
アリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、4−フルオロフェニルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0054】
アルキルスルホニル基としては、メシル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、トリフルオロスルホニル基、ノナフルオロ−t−ブチルスルホニル基等が挙げられる。
【0055】
アリールスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基等が挙げられる。
【0056】
アルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基等が挙げられる。
【0057】
アリールスルフィニル基としては、フェニルスルフィニル基、トルイルスルフィニル基等が挙げられる。
【0058】
ペルフルオロアルキル基とは、炭素が1〜20からなるすべてフッ素置換された基である。ペルフルオロアルキル基は、酸素や硫黄を含んでいてもよい。
【0059】
これらの中でも、R4としては、合成の容易さや電子求引性の強さからシアノ基が好ましい。また、R5としては、水素原子またはシアノ基が好ましい。
【0060】
3は、半導体特性を示す無機多孔質物質と連結し得るアンカー基である。このような半導体特性を示す無機多孔質物質としては、具体的には、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等の半導体特性を示す無機酸化物を多孔質化した粒子が使用される。したがって、アンカー基はこれら多孔質化した無機酸化物粒子と連結し得る基を広く含む。このようなアンカー基は、好ましくは、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等である。これらの中でも、多孔質化した無機酸化物粒子と連結しやすいため、カルボキシル基が特に好ましい。
なお、前記カルボキシル基、スルホン酸基およびリン酸基等は、溶解性を高めることなどの目的のため、陽イオンと結合して塩を形成していてもよい。塩を形成し得る陽イオンとしては、4級アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンが挙げられる。4級アンモニウムイオンとしては、テトラメチルアンモニウムイオン等に代表されるテトラアルキルアンモニウムイオンが挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、などが挙げられる。アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなどが挙げられる。
【0061】
一般式(1)で表される本発明の末端アミノ基含有複素環誘導体の具体例を以下に示す。但し、これらは、例示を目的とするものであり、本発明の末端アミノ基含有複素環誘導体はこれに限定されない。
なお、下記の例示において、「Ph」とはフェニル基を表す。また、「Et」「Pr」「Bu」とは、それぞれエチル基、n−プロピル基、n−ブチル基を表す。
【0062】
【化13】

【0063】
【化14】

【0064】
【化15】

【0065】
【化16】

【0066】
【化17】

【0067】
【化18】

【0068】
【化19】

【0069】
【化20】

【0070】
【化21】

【0071】
【化22】

【0072】
【化23】

【0073】
【化24】

【0074】
本発明の光電変換用増感色素は、上記した一般式(1)で表される末端アミノ基含有複素環誘導体を含むことを特徴とする。
本発明の光電変換用増感色素は、一般式(1)で表される末端アミノ基含有複素環誘導体ではカバーしきれない領域の太陽光吸収を補うために、他の光増感色素をさらに含んでもよい。このような目的で使用される他の増感色素としては、例えば特開2004−143355号[0062]に記載されている増感色素を使用することができる。
【0075】
本発明の光電変換材料は、上記した本発明の光電変換用増感色素と、半導体特性を示す無機多孔質物質とをアンカー基を介して連結することで形成される。光電変換材料を形成する際に用いる無機多孔質物質としては、例えば、特開2004−143355号[0064]、[0065]に記載されている無機酸化物および無機酸化物を多孔質化する方法により得られるものを使用することができる。
【0076】
本発明の光電変換電極は、上記の手順で得られた本発明の光電変換材料を透明電極に積層することで形成される。ここで、透明電極、および透明電極上に光電変換材料を積層する方法については、例えば、特開2004−143355号[0066]〜[0069]に記載されている材料および積層方法を用いることができる。
【0077】
本発明の光電変換電池は、上記した光電変換電極を電解質層を介して導電性対極を組み合わせることによって形成される。
光電変換電池に用いられる電解質層は、電解質、媒体、および添加物から構成されることが好ましい。これらの構成要素については、例えば、特開2004−143355号[0070]〜[0072]に記載されているものを用いることができる。また、光電変換電池の組み立ては、例えば、特開2004−143355号[0073]に記載されている方法で実施することができる。
【0078】
なお、本発明の光電変換用増感色素から、半導体特性を示す無機多孔質物質への電子注入を効率よく行うために、「共吸着剤」などと呼ばれる化合物を用いることもできる。共吸着剤は、増感色素と共に無機多孔質物質に吸着させることで、光電変換効率を高めるものである。
なお、本発明の光電変換用増感色素は、半導体特性を示す無機多孔質物質と、アンカー基を介して連結しているが、この「連結」は上記の「吸着」とほぼ同義である。
【0079】
共吸着剤の例としては、カルボキシル基やスルホン酸基を有するステロイド化合物、特にコール酸誘導体(コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸、リソコール酸、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸)、およびそのナトリウム塩や、アミン類(ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等)、4級アンモニウム塩(テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド等)などが挙げられる。
【0080】
上記の共吸着剤の用い方としては、無機多孔質物質へ色素を吸着(連結)させた後に添加することや、電解質層への添加すること、などが挙げられるが、増感色素と共に無機多孔質物質に吸着(連結)するのであれば、これに限られない。
【実施例】
【0081】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定されない。
本発明の末端アミノ基含有複素環誘導体(1)の合成
(1−1)5−(ジ−n−ブチルアミノ)−チオフェン−2−カルボキシアルデヒドの合成
冷却管、温度計、磁気回転子を付した500mLの四ツ口フラスコに、5−ブロモチオフェン−2−カルボキシアルデヒド(東京化成工業株式会社製)50g、ジ−n−ブチルアミン(和光純薬工業株式会社製)42g、トリエチルアミン(和光純薬工業株式会社製)54gおよびキシレン200mLを室温下で仕込み、フラスコ内を窒素気流下にしたあと、加熱還流するまで昇温して、そのまま15時間加熱還流させた。反応終了後、室温まで放冷し、乾燥後減圧下で溶媒を留去して濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィーにて、分離・精製し生成物42gを得た。FT−NMR装置(AL−300(日本電子株式会社製))にて該化合物を1H−NMR測定し、5−(ジ−n−ブチルアミノ)−チオフェン−2−カルボキシアルデヒド(下記式)であることを確認した。
【化25】


1H NMR(CDCl3;TMS) δ0.96(t,J=7.2Hz,−CH3,6H),1.25−1.40(m,−CH2−,4H),1.55−1.70(m,−CH2−,4H),3.33(m,−N−CH2−,4H),5.89(d,J=4.5Hz,チオフェン環,1H),7.44(d,J=4.5Hz,チオフェン,1H),9.46(s,−C(=O)−H,1H)
【0082】
(1−2)5,α−ジブロモ−2−メチルチオフェンの合成
冷却管、温度計、磁気回転子、滴下ロートを付した500mLの四ツ口フラスコに、ジブロモヒダントイン56gと塩化メチレン200mLを加えた。滴下ロートに2−メチルチオフェン(和光純薬工業株式会社製)20gと塩化メチレン20mLをゆっくり加えた。滴下が終了してからさらに1時間攪拌後、アゾ系重合開始剤V−65(和光純薬工業株式会社製)を1g加えて加熱還流を3時間行った。冷却後浮遊している白色物をろ別し、ろ液を水洗した。乾燥後、溶媒を留去し生成物21gを得た。1H−NMR測定により、該生成物が5,α−ジブロモ−2−メチルチオフェン(下記式)であることを確認した。
【化26】


1H NMR(CDCl3;TMS) δ4.63(s,−CH2−Br,2H),δ6.8−7.0(m,チオフェン,2H)
【0083】
(1−3)5−ブロモ−2−チエニルメタンフォスホン酸ジエチルの合成
冷却管、温度計、磁気回転子を付した500mLの四ツ口フラスコに、5,α−ジブロモ−2−メチルチオフェン25.5g、亜リン酸トリエチル(関東化学株式会社製)16.5g、アセトニトリル200mLを仕込み、窒素気流下で3時間加熱還流させた。冷却後、溶媒等を留去し生成物29gを得た。1H−NMR測定により、該生成物が5−ブロモ−2−チエニルメタンフォスホン酸ジエチル(下記式)であることを確認した。
【化27】


1H NMR(CDCl3;TMS) δ1.30(t,J=7.2Hz,−CH3,3H),δ3.31(d,J=16.2Hz,Ar−CH2−P(=O)<,2H),δ4.09(quintet,−O−CH2−Me,2H),δ6.65−6.80(m,チオフェン,1H),δ6.90(d,J=3.9Hz,チオフェン,1H)
【0084】
(1−4)N,N−ジブチル−5−(2−(2−ブロモ−5−チエニル)−エテン−1−イル)−2−チエニルアミンの合成
次に(1−1)で得られた5−(ジ−n−ブチルアミノ)−チオフェン−2−カルボキシアルデヒド9.5gと、(1−3)で得られた5−ブロモ−2−チエニルメタンフォスフォン酸ジエチル15gを脱水したテトラヒドロフラン50mLに入れ、次にリチウム ジイソプロピルアミド−テトラヒドロフラン溶液(ジイソプロピルアミン(和光純薬工業株式会社製)5.5gを含むテトラヒドロフラン溶液100mLに、n−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(関東化学株式会社製)(1.57mol/L)32mLを窒素気流下で加えて調製)を続いて加え、さらに、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを6g加えて、室温で1時間攪拌させた。
反応終了後、1規定塩酸を加えて反応を止めた後、有機相を水洗した。分離後乾燥し、減圧下で溶媒を留去し濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィーにて分離・精製を行い生成物12gを得た。1H−NMR測定により、該生成物がN,N−ジブチル−5−(2−(2−ブロモ−5−チエニル)−エテン−1−イル)−2−チエニルアミン(下記式)であることを確認した。
【化28】


1H NMR(CDCl3;TMS) δ0.95(t,J=7.2Hz,−CH3,6H),1.30−1.45(m,−CH2−,4H),1.55−1.70(m,−CH2−,4H),3.21(m,−N−CH2−,4H),5.64(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),6.46(d,J=15.6Hz,olefin,1H),6.60(d,J=3.9Hz,チオフェン環,1H),6.69(d,J=3.9Hz,チオフェン環,1H),6.78(d,J=15.6Hz,olefin,1H),6.86(d,J=3.9Hz,チオフェン,1H)
【0085】
(1−5)5−(2−(2−(N,N−ジブチルアミノ)−5−チエニル)−エテン−1−イル)−チオフェン−2−カルボキシアルデヒドの合成
四ツ口フラスコに(1−4)で得られたN,N−ジブチル−5−(2−(2−ブロモ−5−チエニル)−エテン−1−イル)−2−チエニルアミン8gと脱水テトラヒドロフラン80mLを加え、窒素気流下で−78℃まで冷却後、n−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(関東化学株式会社製)(1.57mol/L)を14mL加えた。−78℃で30分間攪拌後、1−ホルミルピペリジン2.5gを加えた。1時間攪拌後室温まで昇温し、1規定塩酸を加えて反応を止めた。有機相を分離して水洗した。乾燥後、減圧下で溶媒を留去濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィーにて分離・精製を行い生成物5.5gを得た。1H−NMR測定により、該生成物が5−(2−(2−(N,N−ジブチルアミノ)−5−チエニル)−エテン−1−イル)−チオフェン−2−カルボキシアルデヒドであることを確認した。
【化29】


1H NMR(CDCl3;TMS) δ0.95(t,J=7.2Hz,−CH3,6H),1.25−1.40(m,−CH2−,4H),1.55−1.70(m,−CH2−,4H),3.26(m,−N−CH2−,4H),5.69(d,J=3.9Hz,チオフェン環,1H),6.51(d,J=15.6Hz,olefin,1H),6.83(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),6.93(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),7.13(d,J=15.3Hz,olefin,1H),7.57(d,J=3.9Hz,チオフェン,1H),9.76(s,−C(=O)−H,1H)
【0086】
(1−6)3−(5−(2−(2−(N,N−ジブチルアミノ)−5−チエニル)−エテ
ン−1−イル)−2−チエニル)−2−シアノアクリル酸tert−ブチルの合成
冷却管をつけたディーン・シュタルク分留器、温度計、磁気回転子を付した300mLの四ツ口フラスコに(1−5)で得られた5−(2−(2−(N,N−ジブチルアミノ)−5−チエニル)−エテン−1−イル)−チオフェン−2−カルボキシアルデヒド3.5gとシアノ酢酸tert−ブチル3.5g、およびピペリジン4gをトルエン200mLに入れて反応が終了するまで加熱還流させた。反応終了後室温まで冷却し、減圧下で溶媒と低沸点の反応物を留去・濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィーにて分離・精製を行い、生成物3.7gを得た。1H−NMR測定により、該生成物が3−(5−(2−(2−(N,N−ジブチルアミノ)−5−チエニル)−エテン−1−イル)−2−チエニル)−2−シアノアクリル酸tert−ブチル(下記式)であることを確認した。
【化30】


1H NMR(CDCl3;TMS) δ0.97(t,J=7.2Hz,−CH3,6H),1.30−1.45(m,−CH2−,4H),1.50−1.70(m,−CH2−,4H),1.56(s,−CH3,9H),3.27(m,−N−CH2−,4H),5.72(d,J=3.9Hz,チオフェン環,1H),6.52(d,J=15.3Hz,olefin,1H),6.87(d,J=3.9Hz,チオフェン環,1H),6.90(d,J=3.9Hz,チオフェン環,1H),7.19(d,J=15.3Hz,olefin,1H),7.51(d,J=4.2Hz,チオフェン,1H),8.10(s,Ar−CH=(CN)COO−,1H)
【0087】
(1−7)3−(5−(2−(2−(N,N−ジブチルアミノ)−5−チエニル)−エテ
ン−1−イル)−2−チエニル)−2−シアノアクリル酸の合成
100mLのナス型フラスコに(1−6)で得られた3−(5−(2−(2−(N,N−ジブチルアミノ)−5−チエニル)−エテン−1−イル)−2−チエニル)−2−シアノアクリル酸tert−ブチル1.9gと酢酸50mLを加え、48%臭化水素酸を2g加えて室温で攪拌させた。反応終了後、イオン交換水1L中にあけ、メチルtert−ブチルエーテル500mLにて2回抽出した。アンモニア水にて1回、水で2回洗浄し、減圧下で溶媒を留去濃縮して、生成物1.3gを得た。1H−NMR測定により、該生成物が本発明の末端アミノ基含有複素環誘導体(1)3−(5−(2−(2−(N,N−ジブチルアミノ)−5−チエニル)−エテン−1−イル)−2−チエニル)−2−シアノアクリル酸(下記式))であることを確認した。
【化31】


1H NMR(DMSO−d6;TMS) δ0.92(t,J=7.2Hz,−CH3,6H),1.25−1.40(m,−CH2−,4H),1.50−1.65(m,−CH2−,4H),3.29(m,−N−CH2−,4H),5.86(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),6.63(d,J=15.3Hz,olefin,1H),7.08(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),7.19(d,J=3.9Hz,チオフェン環,1H),7.29(d,J=15.6Hz,olefin,1H),7.83(d,J=3.9Hz,チオフェン,1H),8.33(s,Ar−CH=(CN)COOH,1H)
【0088】
本発明の末端アミノ基含有複素環誘導体化合物(2)の合成
(2−1)5−ピペリジニルチオフェン−2−カルボキシアルデヒドの合成
冷却管、温度計、磁気回転子を付した500mLの四ツ口フラスコに、5−ブロモチオフェン−2−カルボキシアルデヒド(東京化成工業株式会社製)34g、ピペリジン(東京化成工業株式会社製)25g、およびイオン交換水250mLを室温下で仕込み、フラスコ内を窒素気流下にしたあと、加熱還流するまで昇温して、そのまま15時間加熱還流させた。反応終了後、室温まで放冷し有機溶剤で抽出した。有機相を1規定塩酸、続いて水で洗浄した。水洗後有機相を分離し、乾燥後減圧下で溶媒を留去して濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて分離・精製し生成物21gを得た。FT−NMR装置(AL−300(日本電子株式会社製))にて該化合物を1H−NMR測定し、5−ピペリジニルチオフェン−2−カルボキシアルデヒド(下記式)であることを確認した。
【化32】


H NMR(CDCl3;TMS) δ1.5〜1.8(m,−CH2−,6H),δ3.2−3.5(m,−CH2−N,4H),δ6.06(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),δ7.47(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),δ9.51(s,−CHO,1H)
【0089】
(2−2)1−(5−(2−(2−ブロモ−5−チエニル)−エテン−1−イル)−2−チエニル)ピペリジンの合成
次に(2−1)で得られた5−ピペリジニルチオフェン−2−カルボキシアルデヒド4gと、(1−3)で得られた5−ブロモ−2−チエニルメタンフォスホン酸ジエチル7.7gを脱水したテトラヒドロフラン100mLに入れ、次にリチウムジイソプロピルアミド−テトラヒドロフラン溶液(ジイソプロピルアミン(和光純薬工業株式会社製)2.5gを含むテトラヒドロフラン溶液20mLに、n−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(関東化学株式会社製)(1.57mol/L)15.3mLを窒素気流下で加えて調製)を続いて加え、さらにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを2.8g加えて、室温で1時間攪拌させた。
反応終了後、1規定塩酸を加えて反応を止めた後、有機相を水洗した。分離後乾燥し、減圧下で溶媒を留去し濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて分離・精製を行い生成物を6g得た。1H−NMR測定により、該生成物が1−(5−(2−(2−ブロモ−5−チエニル)−エテン−1−イル)−2−チエニル)ピペリジン(下記式)であることを確認した。
【化33】


H NMR(CDCl3;TMS) δ1.5−1.8(m,−CH2−,6H),δ3.0−3.3(m,−CH2−N,4H),5.89(d,J=3.9Hz,チオフェン環,1H),δ6.53(d,J=15.6Hz,olefin,1H),δ6.63(d,J=3.9Hz,チオフェン環,1H),δ6.70(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),δ6.78(d,15.9Hz,olefin,1H),6.87(d,J=3.9Hz,チオフェン環,1H)
【0090】
(2−3)5−(2−(2−ピペリジニル−5−チエニル)−エテン−1−イル)−チオフェン−2−カルボキシアルデヒドの合成
四ツ口フラスコに(2−2)で得られた1−(5−(2−(2−ブロモ−5−チエニル)−エテン−1−イル)−2−チエニル)ピペリジン5.8gと脱水テトラヒドロフラン80mLを加え、窒素気流下で−78℃まで冷却後、n−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(関東化学株式会社製)(1.57mol/L)を12.5mL加えた。−78℃で30分間攪拌後、1−ホルミルピペリジン2.3gを加えた。1時間攪拌後室温まで昇温し、1規定塩酸を加えて反応を止めた。有機相を水洗して有機相を分離した。乾燥後減圧下で溶媒を留去濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて分離・精製を行い生成物を4g得た。1H−NMR測定により、該生成物が5−(2−(2−ピペリジニル−5−チエニル)−エテン−1−イル)−チオフェン−2−カルボキシアルデヒド(下記式)であることを確認した。
【化34】


H NMR(CDCl3;TMS) δ1.5−1.8(m,−CH2−,6H),δ3.0−3.3(m,−CH2−N,4H),5.89(d,J=3.9Hz,チオフェン環,1H),δ6.53(d,J=15.6Hz,olefin,1H),δ6.63(d,J=3.9Hz,チオフェン環,1H),δ6.70(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),δ6.78(d,15.9Hz,olefin,1H),6.87(d,J=3.9Hz,チオフェン環,1H)
【0091】
(2−4)3−(5−(2−(2−ピペリジニル−5−チエニル)−エテン−1−イル)−2−チエニル)−2−シアノアクリル酸tert−ブチルの合成
冷却管をつけたディーン・シュタルク分留器、温度計、磁気回転子を付した300mLの四ツ口フラスコに(2−3)で得られた5−(2−(2−ピペリジニル−5−チエニル)−エテン−1−イル)−チオフェン−2−カルボキシアルデヒド3.6gと、シアノ酢酸tert−ブチル2.6gおよびピペリジン1gと、をトルエン200mLに入れて反応が終了するまで加熱還流させた。反応終了後室温まで冷却し、減圧下で溶媒と低沸点の反応物を留去し濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて分離・精製を行い、生成物を4.8g得た。1H−NMR測定により、該生成物が3−(5−(2−(2−ピペリジニル−5−チエニル)−エテン−1−イル)−2−チエニル)−2−シアノアクリル酸tert−ブチル(下記式)であることを確認した。
【化35】


H NMR(CDCl3;TMS) δ1.55(s,C−(Me)3,9H),δ1.5−1.8(m,−CH2−,6H),δ3.20−3.25(m,−CH2−N,4H),5.92(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),δ6.57(d,J=15.6Hz,olefin,1H),δ6.86(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),δ6.92(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),δ7.16(d,15.6Hz,olefin,1H),7.51(s,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),8.10(s,3−H,1H)
【0092】
(2−5)3−(5−(2−(2−ピペリジニル−5−チエニル)−エテン−1−イル)
−2−チエニル)−2−シアノアクリル酸の合成
100mLのナス型フラスコに(2−4)で得られた3−(5−(2−(2−ピペリジニル−5−チエニル)−エテン−1−イル)−2−チエニル)−2−シアノアクリル酸tert−ブチル3.6gと酢酸100mLを加え、48%臭化水素酸を1g加えて室温で攪拌させた。反応終了後、析出した固体を回収後、水洗し、減圧下で溶媒を留去し濃縮して、生成物を2.7g得た。1H−NMR測定により、該生成物が本発明の末端アミノ基含有複素環誘導体(2)3−(5−(2−(2−ピペリジニル−5−チエニル)−エテン−1−イル)−2−チエニル)−2−シアノアクリル酸(下記式))であることを確認した。
【化36】


H NMR(DMSO−d6;TMS) δ1.3−1.8(m,−CH2−,6H),δ2.8−4.0(m,−CH2−N,4H),6.09(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),δ6.70(d,J=15.3Hz,olefin,1H),δ7.08(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),δ7.22(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),δ7.29(d,15.6Hz,olefin,1H),7.84(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),8.34(s,3−H,1H)
【0093】
比較化合物(A)の合成
前記(1−4)において、5−(ジ−n−ブチルアミノ)−チオフェン−2−カルボキシアルデヒドの代わりに、4−ジ−n−ブチルアミノベンズアルデヒド(Aldrich社製)3.8gを使用する以外は、上記(1−4)〜(1−7)と同様の手順を実施して、上記一般式(1)において、Xが1,4−フェニレン基である比較化合物(A)を合成した。
【化37】


1H NMR(DMSO−d6;TMS) δ0.8−1.0(t,−CH3,6H),1.25−1.40(m,−CH2−,4H),1.45−1.60(m,−CH2−,4H),3.31(t,J=9Hz,−N−CH2−,4H),6.64(d,J=9Hz,ベンゼン環,2H),7.13(d,J=16.2Hz,olefin,1H),7.24(d,J=15.9Hz,olefin,1H),7.30(d,J=3.9Hz,チオフェン環,1H),7.46(d,J=8.7Hz,ベンゼン環,2H),7.89(d,J=4.2Hz,チオフェン環,1H),8.40(s,−HC=(CN)(COOH),1H)
【0094】
(紫外可視吸収スペクトル)
前記手順で合成した本発明の末端アミノ基含有複素環誘導体(1)をジメチルスルホキシドを溶媒として調製した溶液を、石英セル(行路長1cm)に入れ、分光光度計(日本分光株式会社UV−mini1240)にて紫外可視吸収スペクトルの測定を行った。この結果、580nmに吸収極大波長、765nmに吸収端波長を持つことが確認された。
同様の手順で、比較化合物(A)についても紫外可視吸収スペクトルを測定した。測定結果から523nmに吸収極大波長、700nmに吸収端波長を持つことが確認された。
これらの結果から、本発明の末端アミノ基含有複素環誘導体(1)は、比較化合物(A)に比べて、吸収極大波長および吸収端がより長波長側にあることが確認された。
【0095】
なお、上記したのと同様の手順で、一般式(1)で表される様々な末端アミノ基含有複素環誘導体を合成することができる。例えば、[0067][化18]、[0070][化21]に示す末端アミノ基含有複素環誘導体のように、一般式(1)のXが2,5−フリレン基、2,5−セレニレン基または2,5−チアゾイレン基である場合は、上記した手順(1−4)において、5−(ジ−n−ブチルアミノ)−チオフェン−2−カルボキシアルデヒドの代わりに、例えば、5−ジ−n−ブチルアミノフラン−2−カルボキシアルデヒドのような、対応するアルデヒド誘導体を用いればよい。なお、一般式(1)において、Xが2,5−チエノチエニレン基のように縮合した環の場合も同様の手順で合成することができる。また、アミノ基含有複素環誘導体(1)と同様に、一般式(1)のYが二重結合を介してXと連結する場合は、Wittig反応等に代表されるオレフィンを合成する公知の方法を用いることができる。一方、一般式(1)のYが環基を含み、その環基がXと単結合で直接連結する場合は、例えばSuzukiカップリングに代表されるクロスカップリング法等の公知の方法を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
上記一般式(1)で表される本発明の末端アミノ基含有複素環誘導体は、可視領域に広い吸収帯を有するため、特に色素増感型光電変換電池に使用される光電変換用増感色素として好適である。また、ここに挙げた用途だけでなく、非線形光学材料など、その作用を妨げない範囲で広い用途に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される、末端アミノ基含有複素環誘導体。
【化1】


(上記一般式(1)において、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい1価の有機残基である。ここで、R1およびR2は共同して環を形成してもよい。また、R1またはR2のいずれか一方は、Xと共同して環を形成してもよい。R3は、半導体特性を示す無機多孔質物質と連結し得るアンカー基である。Xは、硫黄原子、酸素原子またはセレン原子を少なくとも1つ含有する2価の芳香族複素環基である。該2価の芳香族複素環基は、置換基を有していても良く、2個以上の環が縮合していてもよい。Yは、置換基を有していてもよい2価の連結基であり、鎖状構造、環状構造またはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。ただし、Yは、式(1)のXとπ電子が共役し、かつ式(1)中のR3と結合する炭素原子およびR5と結合する炭素原子間で形成される二重結合とπ電子が共役する構造である。mは、1〜5の整数である。式(1)中の二重結合は、シス−トランス異性体のいずれを生じさせるものであってもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)中のXが、下記一般式(2)で表される環構造の基、または下記一般式(2)で表される環構造同士が縮合した構造の基であることを特徴とする請求項1に記載の末端アミノ基含有複素環誘導体。
【化2】


(上記一般式(2)において、X1は硫黄原子、酸素原子またはセレン原子である。X2はC−R6またはNであり、X3はC−R7またはNである。R6およびR7は、それぞれ独立して、水素原子、または置換基を有していてもよい1価の有機残基である。R6およびR7は、共同して環を形成してもよい。ただし、X2およびX3が同時にNであることはない。)
【請求項3】
前記一般式(1)中のR3が、カルボキシル基、リン酸基またはスルホン酸基のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の末端アミノ基含有複素環誘導体。
【請求項4】
前記一般式(1)において、R1、R2、R4、R5またはR6の1価の有機残基が、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基もしくは芳香族複素環基、またはハロゲン原子、シアノ基、イソシアノ基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、あるいは下記一般式(3)で表される基であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の末端アミノ基含有複素環誘導体。
【化3】


(上記一般式(3)において、A1およびA2は、それぞれ独立して、O、NHまたはSである。Bは、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィニル基またはスルホニル基である。oおよびpは、それぞれ独立して0または1である。R8は、水素原子、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、もしくは芳香族複素環基、またはハロゲン原子、シアノ基、イソシアノ基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、もしくはアミド基である。)
【請求項5】
前記一般式(1)のR4が、電子求引性の基であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載の末端アミノ基含有複素環誘導体。
【請求項6】
前記電子求引性の基が、シアノ基、エステル基、アミド基またはペルフルオロアルキル基である請求項5に記載の末端アミノ基含有複素環誘導体。
【請求項7】
前記一般式(1)中のR3が、カルボキシル基である請求項1ないし6のいずれかに記載の末端アミノ基含有複素環誘導体。
【請求項8】
前記一般式(1)中のYが、芳香族複素環基を含有する構造であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の末端アミノ基含有複素環誘導体。
【請求項9】
前記一般式(1)中のXおよびYが、いずれも2,5−チエニレン基または2,5−チエノチエニレン基を有する構造であることを特徴とする請求項8に記載の末端アミノ基含有複素環誘導体。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の末端アミノ基含有複素環誘導体を含むことを特徴とする光電変換用増感色素。
【請求項11】
さらに、一般式(1)で表される末端アミノ基含有複素環誘導体以外の光増感色素を含む請求項10に記載の光電変換用増感色素。
【請求項12】
請求項9または10に記載の光電変換用増感色素と、半導体特性を示す無機多孔質物質とを連結させてなる光電変換材料。
【請求項13】
半導体特性を示す無機多孔質物質は、無機酸化物で構成される請求項12に記載の光電変換材料。
【請求項14】
請求項12または13記載の光電変換材料を透明電極に積層してなる光電変換電極。
【請求項15】
請求項14に記載の光電変換電極、電解質層、および導電性対極を含んでなる光電変換電池。

【公開番号】特開2006−111783(P2006−111783A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302240(P2004−302240)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000108030)セイミケミカル株式会社 (130)
【Fターム(参考)】