新規化合物及び破骨細胞分化・増殖阻害剤
【課題】破骨細胞の分化・増殖を阻害し、骨吸収を抑制することにより、十分な骨粗鬆症の予防・治療改善効果が期待でき、飲食品、医薬品、化粧品の原料として用いることができる新規化合物、及び破骨細胞分化・増殖阻害組成剤を提供する。
【解決手段】下式(1)で示される新規化合物。この新規化合物は、破骨細胞分化・増殖阻害剤として有効であり、更には、飲食品、医薬品、化粧品の原料として用いることができる。
【解決手段】下式(1)で示される新規化合物。この新規化合物は、破骨細胞分化・増殖阻害剤として有効であり、更には、飲食品、医薬品、化粧品の原料として用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、飲食品、医薬品、化粧品の原料として用いることができる新規化合物、及び破骨細胞分化・増殖阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化が年々進んでいる日本の現代社会においては、老化に伴う様々な疾患に悩む人々が増加している。例えば、老化に伴う疾患の一つである骨粗鬆症は、骨量が減少して骨が非常に脆くなる症状をいう。
【0003】
正常な骨では、古くなった骨の部分を破骨細胞が分解する骨吸収と、骨吸収されたところに骨芽細胞が新しい骨を作り出す骨形成がバランスよく行われて、一定の骨量に保たれている。しかし、カルシウムの摂取不足、カルシウム吸収能力の低下、ホルモンバランスの乱れ等により、骨の代謝回転のバランスが崩れて骨吸収が骨形成を上回ることによって骨粗鬆症を招きやすくなる。特に、閉経後の女性は、ホルモンバランスの乱れにより、骨粗鬆症になりやすい。
【0004】
したがって、骨粗鬆症に対しては、骨吸収を抑制するか、又は骨形成を促進することが必要であると考えられている。
【0005】
そのため、従来の骨粗鬆症の治療薬としては、活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、エストロゲン製剤、カルシトシン製剤、カルシウム製剤、ビスホスホネート製剤等が用いられているが、これらの治療薬には以下のような副作用の問題があった。
【0006】
1)活性型ビタミンD3製剤:血中カルシウム量の増え過ぎによる食欲不振、倦怠感、腎不全等。
2)ビタミンK2製剤:心筋梗塞の場合などに服用するワーファリンという薬の効果低下。
3)エストロゲン製剤:心筋梗塞や脳卒中の危険性拡大、乳癌及び子宮体癌の発症率拡大等。
4)カルシトシン製剤:吐き気、顔面紅潮等。
5)カルシウム製剤:胃腸障害。
6)ビスホスホネート製剤:消化器症状、特に食道潰瘍。
7)活性型ビタミンD3製剤とカルシウム製剤の併用による副作用の相乗効果。
【0007】
そのため、長期間摂取しても副作用の問題がなく、より安全性の高い骨粗鬆症治療剤の開発も進められており、例えば、下記特許文献1には、乳由来の塩基性タンパク質画分を有効成分とする骨強化剤が開示されている。
【0008】
下記特許文献2には、乳由来の塩基性タンパク質画分、特にラクトフェリンを有効成分とする破骨細胞分化抑制因子産生促進剤が開示されている。
【0009】
下記特許文献3には、カゼインホスホペプチド及びゲニステインを有効成分とする骨強化剤が開示されている。
【0010】
下記特許文献4には、コラーゲン又はコラーゲンの酵素分解物を有効成分とする骨粗鬆症予防・治療剤が開示されている。
【0011】
下記特許文献5には、イソフラボンを主たる有効成分とする骨形成促進及び骨塩量減少防止用組成物が開示されている。
【特許文献1】特許第3112637号公報
【特許文献2】特開2004−115509号公報
【特許文献3】特開2001−302539号公報
【特許文献4】特開平11−12192号公報
【特許文献5】特開平10−114653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献に記載されている食品由来の成分を有効成分とする様々な骨粗鬆症治療剤は、健康食品等として手軽に摂取でき、副作用の問題も少ないものの、いずれも十分満足できる効果が期待できるとは言えなかった。
【0013】
したがって、本発明は、例えば、破骨細胞の分化・増殖を阻害し、骨吸収を抑制することにより、十分な骨粗鬆症の予防・治療改善効果が期待でき、飲食品、医薬品、化粧品の原料として用いることができる新規化合物、及び破骨細胞分化・増殖阻害剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
マコモタケは、漢方薬の原料として利用されており、口渇の抑制、解熱、整腸、消化、解毒など様々な生理活性効果が知られている。本発明者らは、豊富な食経験により安全性が確認されているマコモタケのさらなる生理活性を追及したところ、マコモタケの新たな生理活性効果として骨粗鬆症予防・治療効果を見出した。そこで、その生理活性成分について更なる研究を行った結果、本発明を達成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の新規化合物は、下記化学式(1)で示される。
【0016】
【化1】
【0017】
本発明の新規化合物は、飲食品、医薬品又は化粧品の原料として用いられることが好ましい。
【0018】
一方、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、下記化学式(1)で示される化合物及び/又は下記化学式(2)で示される化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0019】
【化2】
【0020】
【化3】
【0021】
また、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、更に、下記化学式(3)で示される化合物を有効成分として含有することが好ましい。
【0022】
【化4】
【0023】
また、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、マコモタケの有機溶媒抽出物から調製された組成物を含有することが好ましい。
【0024】
また、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、マコモタケの菌えい部の有機溶媒抽出物から調製された組成物を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の新規化合物は、例えば、飲食品、医薬品、化粧品などの原料として用いることができ、骨粗鬆症の予防・治療改善効果が期待できる。
【0026】
また、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、豊富な食経験により安全性が確認されているマコモタケ由来の成分を有効成分として含有するものであり、安全性が高く、更には十分な骨粗鬆症の予防・治療改善効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の新規化合物は、下記化学式(1)で表される。
【0028】
【化5】
【0029】
上記化学式(1)で表す化合物(以下、「化合物(1)」と記す)は、有機溶媒に可溶な化合物であり、例えば、マコモタケの溶媒抽出物を精製することで得られる。
【0030】
すなわち、まず、抽出原料となるマコモタケを、必要に応じて乾燥あるいは粉砕処理する。なかでも、マコモタケの菌えい部は、上記化合物(1)の含有量が高いことから、マコモタケの菌えい部を抽出原料としてもちいることで、上記化合物(1)の回収率を向上できる。ここで、マコモタケとは、イネ科マコモ属・多年草の水生植物であるマコモの若茎が黒穂菌によって肥大生育したものであり、中国、台湾を中心とした東アジアから東南アジアにかけて栽培されている中国野菜である。近年では日本でも栽培が行われており、これらの市販品を簡単に入手することができる。
【0031】
次いで、この抽出原料のマコモタケを、抽出溶媒中に室温〜加温下で浸漬して、溶媒抽出物を得る。抽出溶媒としては、特に限定はなく、低級アルコール類(メタノール、エタノールなど)、アセトン、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチルなどが挙げられ、これらを、単独、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。特に好ましい抽出溶媒としては、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0032】
この抽出溶媒には、夾雑物が多量に含まれている場合が多いことから、例えば、マコモタケを低級アルコール類あるいはアセトンなどの水溶性有機溶媒に、室温〜加温下で浸漬して、水溶性溶媒抽出画分を得た後、クロロホルム、ジクロロメタンなどの非水溶性有機溶媒を用いて脂溶性成分と水溶性成分に分離して、非水溶性有機溶媒抽出画分を回収することが好ましい。こうすることで、夾雑物の極めて少ないマコモタケの溶媒抽出物(非水溶性有機溶媒抽出画分)を得ることができる。また、この溶媒抽出物は必要に応じて濃縮してもよく、更に乾燥してもよい。
【0033】
次いで、この溶媒抽出物を、カラム分離精製、再結晶等により精製することで、上記化合物(1)を得ることができる。
【0034】
溶媒抽出物の精製処理は、まずクロマトグラフィーを用いて一次精製して得られる粗精製物を、再結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層カラムクロマトグラフィーから選ばれた少なくとも1種以上の方法により二次精製することが好ましい。こうすることで、上記化合物(1)の回収率を向上できる。
【0035】
上記一次精製に用いるクロマトグラフィーとしては、特に限定はなく、順相カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、サイズ排除カラムクロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー等の従来一般的なクロマトグラフィーを用いることができる。また、一次精製方法としては、特に限定はなく、例えば、シリカゲルを担体としたクロマトグラフィーを用いた場合、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゼン、酢酸エチル、ヘキサンなどの非水溶性有機溶媒と、その混合溶媒、更にこれらにメタノール、エタノール、アセトンなどの水溶性有機溶媒を適当量加え、その比率を変え順次極性を上げながら溶出する方法が好ましく、ヘキサン/酢酸エチル、クロロホルム/アセトン、クロロホルム/メタノールの混合溶媒を用いる方法が特に好ましい。
【0036】
上記二次精製に用いるカラムクロマトグラフィーとしては、順相カラムクロマトグラフィー、ジオールカラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、サイズ排除カラムクロマトグラフィーなどがあり、担体、溶出溶媒等の精製条件は各種クロマトグラフィーに対応して適宜選択することができる。これらカラムクロマトグラフィーを単独または組み合わせて採用することができ、オープンカラム、HPLCカラムなどで適宜適用できる。
【0037】
上記二次精製に用いる薄層クロマトグラフィーとしては、逆相担体または順相担体またはアミンや光学活性体で修飾した化学修飾担体を用いたものが挙げられ、担体、展開溶媒等の精製条件は各種クロマトグラフィーに対応して適宜選択することができる。
【0038】
本発明の新規化合物(化合物(1))は、豊富な食経験により安全性が確認されているマコモタケ由来の成分であり、安全性は既に立証されており、各種飲食品、医薬品、化粧品の原料として用いることができる。
【0039】
上記飲食品としては、例えば、(a)清涼飲料、炭酸飲料、果実飲料、野菜ジュース、乳酸菌飲料、乳飲料、豆乳、ミネラルウォーター、茶系飲料、コーヒー飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、ゼリー飲料等の飲料類、(b)トマトピューレ、キノコ缶詰、乾燥野菜、漬物等の野菜加工品、(c)乾燥果実、ジャム、フルーツピューレ、果実缶詰等の果実加工品、(d)カレー粉、わさび、ショウガ、スパイスブレンド、シーズニング粉等の香辛料、(e)パスタ、うどん、そば、ラーメン、マカロニ等の麺類(生麺、乾燥麺含む)、(f)食パン、菓子パン、調理パン、ドーナツ等のパン類、(g)アルファー化米、オートミール、麩、バッター粉等、(h)焼菓子、ビスケット、米菓子、キャンデー、チョコレート、チューイングガム、スナック菓子、冷菓、砂糖漬け菓子、和生菓子、洋生菓子、半生菓子、プリン、アイスクリーム等の菓子類、(i)小豆、豆腐、納豆、きな粉、湯葉、煮豆、ピーナッツ等の豆類製品、(j)蜂蜜、ローヤルゼリー加工食品、(k)ハム、ソーセージ、ベーコン等の肉製品、(l)ヨーグルト、プリン、練乳、チーズ、発酵乳、バター、アイスクリーム等の酪農製品、(m)加工卵製品、(n)干物、蒲鉾、ちくわ、魚肉ソーセージ等の加工魚や、乾燥わかめ、昆布、佃煮等の加工海藻や、タラコ、数の子、イクラ、からすみ等の加工魚卵、(o)だしの素、醤油、酢、みりん、コンソメベース、中華ベース、濃縮出汁、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、味噌等の調味料や、サラダ油、ゴマ油、リノール油、ジアシルグリセロール、べにばな油等の食用油脂、(p)スープ(粉末、液体含む)等の調理、半調理食品や、惣菜、レトルト食品、チルド食品、半調理食品(例えば、炊き込みご飯の素、カニ玉の素)等が挙げられる。そして、飲食品への添加量としては、有効量が摂取できれば、特に限定されるものではなく、飲食品の味や品質安定性へ損なわないように適宜配合すればよく、例えば5〜500ppm質量、好ましくは10〜100ppm質量となるように配合すればよい。
【0040】
上記化粧品としては、化粧水、乳液、ローション、ジェル、ファンデーション、クリーム、洗顔料、身体洗浄料等などが挙げられる。そして、化粧品への添加量としては、5〜500ppm質量が好ましく、10〜100ppm質量がより好ましい。添加量が、上記範囲より少ないと、十分な生理活性効果が期待できず、上記範囲よりも多いと品質安定性に不具合が生じる場合がある。
【0041】
上記医薬品としては、例えば、破骨細胞分化・増殖阻害剤、免疫賦活剤、メラニン生成抑制剤等が挙げられる。また、その形態としては、液剤、散剤、錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、ゼリー、チュアブル、ペースト等の剤型が例示できる。
【0042】
次に、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤について説明する。
【0043】
本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、下記化学式(1)で示される化合物及び/又は下記化学式(2)で示される化合物を有効成分として含有するものである。
【0044】
【化6】
【0045】
【化7】
【0046】
また、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、更に、下記化学式(3)で示される化合物(以下、「化合物(3)」と記す)を有効成分として含有することが好ましい。
【0047】
【化8】
【0048】
上記化合物(3)は、骨粗鬆症予防・治療効果を有することが報告されており、上記化合物(1)、(2)と併用することで、より優れた骨粗鬆症予防・治療効果が得られる。
【0049】
そして、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、マコモタケの有機溶媒抽出物から調製された組成物を含有することが好ましく、マコモタケの菌えい部の有機溶媒抽出物から調製された組成物を含有することがより好ましい。
【0050】
上記化合物(1)〜(3)は、マコモタケに含まれている成分であり、また、有機溶媒に可溶な化合物である。このため、マコモタケの有機溶媒抽出液には、上記化合物(1)〜(3)が含まれており、それぞれの化合物の相乗作用によって、高い骨粗鬆症予防・治療効果が得られる。なかでも、マコモタケの菌えい部の有機溶媒抽出物には、特に上記化合物(1)、(2)が多く含まれていることから、マコモタケの菌えい部の有機溶媒抽出物から調製された組成物を用いることで、有効成分の含有量を向上させることができ、より優れた骨粗鬆症予防・治療効果が得られる。
【0051】
また、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、更にイソフラボン、コラーゲンペプチド、ラクトフェリン、カゼインホスホペプチド、魚骨カルシウム、貝カルシウムから選ばれた1種以上を含むことが好ましい。これらの成分は、骨粗鬆症予防・治療効果を有することが知られており、相乗効果が期待できる。また、必要に応じて、無機塩類、有機酸類、糖質類、タンパク類、ペプチド類、アミノ酸類、脂質類を適宜配合することができる。
【0052】
本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤の形態としては、液剤、散剤、錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、ゼリー、チュアブル、ペースト等の剤型が例示できる。そして、上記化合物(1)又は(2)をそれぞれ単独で摂取する場合、その有効摂取量は、それぞれ、体重1kg当り、0.01〜5mgが好ましく、0.05〜0.5mgがより好ましい。また、上記化合物(1)〜(3)を2種以上併用して摂取する場合、その有効摂取量は、体重1kg当り、合計量で0.01〜5mgが好ましく、0.05〜0.5mgがより好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の新規化合物及び破骨細胞分化・増殖阻害剤について具体的に説明する。
【0054】
なお、化合物の同定は、FAB−MSスペクトル解析、赤外吸収(IR)スペクトル解析、核磁気共鳴(NMR)スペクトル解析、DEPTスペクトル解析、1H−1H COSYスペクトル解析、HMQCスペクトル解析、HMBCスペクトル解析にて行った。
【0055】
FAB−MSスペクトル解析は、化合物(1)についてはポジティブ,マトリックスは3−ニトロベンジルアルコール、化合物(2)についてはポジティブ,マトリックスは3−ニトロベンジルアルコール又は2−ニトロフェニルオクチルエーテル、化合物(3)についてはポジティブ,マトリックスは3−ニトロベンジルアルコールの条件で行った。
【0056】
赤外吸収(IR)スペクトル解析は、KBr法で行った。
【0057】
核磁気共鳴(NMR)スペクトル解析は、H1−NMRは500MHz、C13−NMRは125MHz,溶媒は重クロロホルムの条件で行った。
【0058】
(製造例1) <新規化合物の製造>
台湾産マコモタケを葉部と菌えい部に切断した。マコモタケの菌えい部(16.7kg)を、エタノール22Lで3回、アセトン10Lで1回順次抽出を行った。得られた抽出物を減圧濃縮し、ジクロロメタンと、エチルアセテートとで溶媒分画を行い、ジクロロメタン可溶部と、エチルアセテート可溶部と、水可溶部とを得た。
【0059】
得られたジクロロメタン可溶部を、フラッシュクロマトグラフィー(充填剤;シリカゲル、60N(295g)、4×60cm)に供し、下記(I)〜(IV)の溶媒各1.2lを用いて溶出を行い、一画分を50mlとして分画し画分a−1〜a−17を得た。
【0060】
(I)ノルマルヘキサン:エチルアセテート=9:1
(II)メタノール
(III)ジクロロメタン:アセトン=8:2
(IV)ジクロロメタン:メタノール=5:5
【0061】
上記(III)溶出画分a−11(1.5502g)を、ジオールカラムクロマトグラフィー(製品名;Diol 40D、50×300mm)に供し、下記(V)〜(VIII)の溶媒各1.2lを用いて溶出を行い、一画分を50mlとして分画し画分b−1〜b−18を得た。
【0062】
(V)ノルマルヘキサン:エチルアセテート=9:1
(VI)ノルマルヘキサン:エチルアセテート=7:3
(VII)ノルマルヘキサン:エチルアセテート=5:5
(VIII)メタノール
【0063】
上記(V)溶出画分b−5を、ODSカラム(製品名;CAPCELLPAK C18 MG、20×250mm)に供し、メタノールで溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分c−1〜c−18を得た。
【0064】
上記画分c−14とc−16とをまとめ、シリカゲルカラム(製品名;Senshu Pak.AQUASIL、20×250mm)に供し、ノルマルヘキサン:エチルアセテート=9:1の混合溶媒で溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分d−1〜d−7を得た。
【0065】
また、上記画分b−4とc−8とc−13とをまとめ、シリカゲルカラム(製品名;Senshu Pak.AQUASIL、20×250mm)に供し、ノルマルヘキサン:エチルアセテート=9:1の混合溶媒で溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分e−1〜e−5を得た。
【0066】
上記画分d−2とe−2とをまとめ、ODSカラム(製品名;CAPCELLPAK C18 MG、20×250mm)に供し、メタノールで溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分f−1〜f−8を得た。
【0067】
上記画分f−7について、FAB−MSスペクトル解析、赤外吸収(IR)スペクトル解析、核磁気共鳴(NMR)スペクトル解析、DEPTスペクトル解析、COSYスペクトル解析、HMQCスペクトル解析を行ったところ、下記化学式(1)で表す目的の新規化合物であることが確認でき、新規化合物(化合物(1))を1.1mg単離できた。図1にこの化合物のFAB−MSスペクトル図、図2にIRスペクトル図、図3に1H−NMRスペクトル図、図4に13C−NMRスペクトル図、図5にDEPTスペクトル(上段)と13C−NMRスペクトル(下段)との対応図、図6に1H−1H COSYスペクトル図、図7にHMQCスペクトル図、図8にHMBCスペクトル図をそれぞれ示す。
【0068】
【化9】
【0069】
・FAB−MSスペクトル:m/z 474[M]+の分子イオンピークが観測された。
・1H−NMRスペクトル:3.10δppm,3.20δppmにメトキシ基由来のシングレット、0.79δppm,0.81δppm,0.90δppmにダブレットのメチル基、0.64δppm,0.72δppmにシングレットのメチル基、0.83δppmにトリプレットのメチル基が観測された。
・13C−NMRスペクトル:31個のシグナルが観測され、211.8δppmにカルボニル由来のピークが観測された。
【0070】
(製造例2) <化合物(2)の製造>
製造例1において、画分d−5とe−4とをまとめ、ODSカラム(製品名;CAPCELLPAK C18 MG、20×250mm)に供し、メタノールで溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分g−1〜g−4を得た。
【0071】
上記画分g−3を、シリカゲルカラム(製品名;Senshu Pak.AQUASIL、20×250mm)に供し、ノルマルヘキサン:エチルアセテート=9:1の混合溶媒で溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分h−1〜h−6を得た。
【0072】
上記画分h−4について、FAB−MSスペクトル解析、赤外吸収(IR)スペクトル解析、核磁気共鳴(NMR)スペクトル解析、DEPTスペクトル解析、COSYスペクトル解析、HMQCスペクトル解析を行ったところ、下記化学式(2)で表す化合物であることが確認でき、化合物(2)を2.7mg単離でできた。図9にこの化合物のFAB−MSスペクトル図(上段はポジティブ,マトリックスとして3−ニトロベンジルアルコール、下段はポジティブ,マトリックスとして2−ニトロフェニルオクチルエーテル)、図10にIRスペクトル図、図11に1H−NMRスペクトル図、図12に13C−NMRスペクトル図、図13にDEPTスペクトル(上段)と13C−NMRスペクトル(下段)との対応図、図14に1H−1H COSYスペクトル図、図15にHMQCスペクトル図、図16にHMBCスペクトル図をそれぞれ示す。
【0073】
【化10】
【0074】
・FAB−MSスペクトル:m/z 429[M+H]+の分子イオンピークが観測された。
・1H−NMRスペクトル:0.79δppm,0.82δppm,0.91δppmにダブレットのメチル基、0.67δppm,0.94δppmにシングレットのメチル基、0.83δppmにトリプレットのメチル基が観測された。
・13C−NMRスペクトル:29個のシグナルが観測され、209.1δppm及び211.3δppmにカルボニル由来のピークが観測された。
【0075】
(製造例3) <化合物(3)の製造>
台湾産マコモタケを葉部と菌えい部に切断した。マコモタケの葉部(7.9kg)を、エタノール24L、アセトン10Lで順次抽出を行った。得られた抽出物を減圧濃縮し、トリクロロメタンと、エチルアセテートとで溶媒分画を行い、ジクロロメタン可溶部と、エチルアセテート可溶部と、水可溶部とを得た。
【0076】
上記エチルアセテート可溶部408.6mgを、フラッシュクロマトグラフィー(充填剤;シリカゲル、60N(800g)、φ4×60cm)に供し、下記(IX)〜(XII)の溶媒各1.2Lを用いて溶出を行い、一画分を50mlとして分画し画分i−1〜i−12を得た。
【0077】
(IX)ジクロロメタン:メタノール=9:1
(X)ジクロロメタン:メタノール=7:3
(XI)メタノール
(XII)メタノール:水=9:1
【0078】
上記画分(XI)溶出画分i−7を、ODS Sep-Pakに供し、水:メタノール=6:4の混合溶媒で溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分j−1〜j−3を得た。 上記画分j−3を、ODSカラム(製品名;CAPCELLPAK C18 MG、20×250mm)に供し、メタノールで溶出を行い、水:メタノール=6:4の混合溶媒で溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分k−1〜k−17を得た。
【0079】
上記画分k−12について、FAB−MSスペクトル解析、赤外吸収(IR)スペクトル解析、核磁気共鳴(NMR)スペクトル解析、DEPTスペクトル解析、COSYスペクトル解析、HMQCスペクトル解析を行ったところ、下記化学式(3)で表す化合物であることが確認でき、化合物(3)を1.9mg単離でできた。図17にこの化合物のFAB−MSスペクトル図、図18にIRスペクトル図、図19に1H−NMRスペクトル図、図20に13C−NMRスペクトル図、図21にDEPTスペクトル(上段)と13C−NMRスペクトル(下段)との対応図、図22に1H−1H COSYスペクトル図、図23にHMQCスペクトル図、図24にHMBCスペクトル図をそれぞれ示す。
【0080】
【化11】
【0081】
・FAB−MSスペクトル:m/z 543[M+Na]+の分子イオンピークが観測された。
・1H−NMRスペクトル:3.85δppm,3.86ppmにメトキシ基由来のシングレット、3.39〜3.50δppmの領域及び4.87δppmに糖由来のシグナルが観測された。
・13C−NMRスペクトル:26個のシグナルが観測された。また、111.0〜151.0δppmの領域に芳香族由来のシグナルが12個観測され、DEPTスペクトル解析により、このうち6個のシグナルが4級炭素であり、6個のシグナルがメチン炭素であった。
【0082】
(試験例1)
[破骨細胞の分化・増殖阻害活性評価]
上記化合物(1)及び(2)を試験標品として用い、破骨細胞の分化・増殖阻害活性を評価した。なお、試験標品は、それぞれ100mg/mlとなるようにメタノールに溶解した後、培養液(10%FBS含有α−MEM)で希釈して、0.2μg/ml、0.4μg/ml、0.8μg/ml、1.6μg/ml、3.2μg/ml、6.3μg/ml、12.5μg/ml、25μg/ml、50μg/mlに調製したものを用いた。
5〜7週齢の雌マウスの脛骨及び大腿骨から採取した骨髄細胞1.3×108cellと、頭蓋骨から採取し培養した骨芽細胞様間質細胞1×106cellとを、培養液(10%FBS含有α−MEM)7.2mlに懸濁し、48穴プレートに150μl/wellで分注した。そして、各濃度のサンプル溶液50μlを、1,25(OH)2VD3(20ng/ml)50μlと共に培養液に添加して、全量を250μl/wellとした。次いで、CO2インキュベータを用いて培養(37℃、CO2濃度5.0%)した。培養開始3日目に各wellの上澄み液100μlを除去し、初日の添加濃度の2倍の試験標品と、1,25(OH)2D3(40ng/ml)を各50μl添加し、更に1週間培養した。
共存培養後、培養液を除去し、PBS(リン酸緩衝液)で洗浄後、10%ホルマリン含有PBS溶液を0.5ml/well加え、10分間固定した。次に、エタノールを0.5ml/well添加し、1分間再固定した。その後乾燥させ、TRAP反応液を0.3ml/well加え、室温で30分間染色した。染色後は、蒸留水(0.5ml/well)で洗浄し、乾燥した。TRAP反応は陽性であり、核を2個以上有する細胞をTRAP陽性多核細胞として、1well当たりの個数をカウントした。なお、TRAP反応液は、1.5mgのNaphthol as−mx phosphateと、150mlのN,N−ジメチルホルムアルデヒドと、15mlのbuffer(50mMの酒石酸Naを含む0.1Mの酢酸Na緩衝液 pH=5.0)と、9mgのfast red violet lb saltの混合溶液を用いた。
【0083】
上記化合物(1)は、図25に示すように、25〜50μg/mlの範囲において、破骨細胞の形成を特異的に抑制することができた。
【0084】
また、上記化合物(2)は、図26に示すように、12.5〜50μg/mlの範囲において破骨細胞の形成を特異的に抑制することができた。
【0085】
(製造例4)
表1に示す配合で調合した組成物を常法にしたがってハードカプセルに230mg/カプセルで充填して、ハードカプセル剤を製造した。魚骨カルシウムは商品名「焼成ボニカル」(焼津水産化学工業株式会社製)を使用した。このカプセル剤を1日に10カプセルを摂取することにより、化合物(1)を10mg摂取することが可能である。
【0086】
【表1】
【0087】
(製造例5)
表2に示す配合で常法にしたがってゼリー飲料を製造した。このゼリー飲料は製造上の問題点は特になく、品質、風味に関しても問題なく、美味しく食することができた。このゼリー飲料を1日に1本を摂取することにより、化合物(1)、化合物(2)をそれぞれ5mgずつ摂取することが可能である。
【0088】
【表2】
【0089】
(製造例6)
表3に示す配合で常法にしたがって乳飲料を製造した。この乳飲料は製造上の問題点は特になく、沈殿等の品質、風味に関しても問題なく、美味しく食することができた。この乳飲料を1日に1本を摂取することにより、化合物(1)を4mg、化合物(2)、化合物(3)をそれぞれ3mgずつ摂取することが可能である。
【0090】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の新規化合物は、飲食品、医薬品、化粧品等の原料として用いることができる。
また、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、そのまま、或いは飲食品、医薬品、化粧品等に配合して摂取することにより、骨粗鬆症の予防・治療改善に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】化合物(1)のFAB−MSスペクトル図である。
【図2】同IRスペクトル図である。
【図3】同1H−NMRスペクトル図である。
【図4】同13C−NMRスペクトル図である。
【図5】同DEPTスペクトル(上段)と13C−NMRスペクトル(下段)との対応図である。
【図6】同1H−1H COSYスペクトル図である。
【図7】同HMQCスペクトル図である。
【図8】同HMBCスペクトル図である。
【図9】化合物(2)のFAB−MSスペクトル図である。
【図10】同IRスペクトル図である。
【図11】同1H−NMRスペクトル図である。
【図12】同13C−NMRスペクトル図である。
【図13】同DEPTスペクトル(上段)と13C−NMRスペクトル(下段)との対応図である。
【図14】同1H−1H COSYスペクトル図である。
【図15】同HMQCスペクトル図である。
【図16】同HMBCスペクトル図である。
【図17】化合物(3)のFAB−MSスペクトル図である。
【図18】同IRスペクトル図である。
【図19】同1H−NMRスペクトル図である。
【図20】同13C−NMRスペクトル図である。
【図21】同DEPTスペクトル(上段)と13C−NMRスペクトル(下段)との対応図である。
【図22】同1H−1H COSYスペクトル図である。
【図23】同HMQCスペクトル図である。
【図24】同HMBCスペクトル図である。
【図25】化合物(1)による破骨細胞の分化・増殖阻害活性を示す図表である。
【図26】化合物(2)による破骨細胞の分化・増殖阻害活性を示す図表である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、飲食品、医薬品、化粧品の原料として用いることができる新規化合物、及び破骨細胞分化・増殖阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化が年々進んでいる日本の現代社会においては、老化に伴う様々な疾患に悩む人々が増加している。例えば、老化に伴う疾患の一つである骨粗鬆症は、骨量が減少して骨が非常に脆くなる症状をいう。
【0003】
正常な骨では、古くなった骨の部分を破骨細胞が分解する骨吸収と、骨吸収されたところに骨芽細胞が新しい骨を作り出す骨形成がバランスよく行われて、一定の骨量に保たれている。しかし、カルシウムの摂取不足、カルシウム吸収能力の低下、ホルモンバランスの乱れ等により、骨の代謝回転のバランスが崩れて骨吸収が骨形成を上回ることによって骨粗鬆症を招きやすくなる。特に、閉経後の女性は、ホルモンバランスの乱れにより、骨粗鬆症になりやすい。
【0004】
したがって、骨粗鬆症に対しては、骨吸収を抑制するか、又は骨形成を促進することが必要であると考えられている。
【0005】
そのため、従来の骨粗鬆症の治療薬としては、活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、エストロゲン製剤、カルシトシン製剤、カルシウム製剤、ビスホスホネート製剤等が用いられているが、これらの治療薬には以下のような副作用の問題があった。
【0006】
1)活性型ビタミンD3製剤:血中カルシウム量の増え過ぎによる食欲不振、倦怠感、腎不全等。
2)ビタミンK2製剤:心筋梗塞の場合などに服用するワーファリンという薬の効果低下。
3)エストロゲン製剤:心筋梗塞や脳卒中の危険性拡大、乳癌及び子宮体癌の発症率拡大等。
4)カルシトシン製剤:吐き気、顔面紅潮等。
5)カルシウム製剤:胃腸障害。
6)ビスホスホネート製剤:消化器症状、特に食道潰瘍。
7)活性型ビタミンD3製剤とカルシウム製剤の併用による副作用の相乗効果。
【0007】
そのため、長期間摂取しても副作用の問題がなく、より安全性の高い骨粗鬆症治療剤の開発も進められており、例えば、下記特許文献1には、乳由来の塩基性タンパク質画分を有効成分とする骨強化剤が開示されている。
【0008】
下記特許文献2には、乳由来の塩基性タンパク質画分、特にラクトフェリンを有効成分とする破骨細胞分化抑制因子産生促進剤が開示されている。
【0009】
下記特許文献3には、カゼインホスホペプチド及びゲニステインを有効成分とする骨強化剤が開示されている。
【0010】
下記特許文献4には、コラーゲン又はコラーゲンの酵素分解物を有効成分とする骨粗鬆症予防・治療剤が開示されている。
【0011】
下記特許文献5には、イソフラボンを主たる有効成分とする骨形成促進及び骨塩量減少防止用組成物が開示されている。
【特許文献1】特許第3112637号公報
【特許文献2】特開2004−115509号公報
【特許文献3】特開2001−302539号公報
【特許文献4】特開平11−12192号公報
【特許文献5】特開平10−114653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献に記載されている食品由来の成分を有効成分とする様々な骨粗鬆症治療剤は、健康食品等として手軽に摂取でき、副作用の問題も少ないものの、いずれも十分満足できる効果が期待できるとは言えなかった。
【0013】
したがって、本発明は、例えば、破骨細胞の分化・増殖を阻害し、骨吸収を抑制することにより、十分な骨粗鬆症の予防・治療改善効果が期待でき、飲食品、医薬品、化粧品の原料として用いることができる新規化合物、及び破骨細胞分化・増殖阻害剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
マコモタケは、漢方薬の原料として利用されており、口渇の抑制、解熱、整腸、消化、解毒など様々な生理活性効果が知られている。本発明者らは、豊富な食経験により安全性が確認されているマコモタケのさらなる生理活性を追及したところ、マコモタケの新たな生理活性効果として骨粗鬆症予防・治療効果を見出した。そこで、その生理活性成分について更なる研究を行った結果、本発明を達成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の新規化合物は、下記化学式(1)で示される。
【0016】
【化1】
【0017】
本発明の新規化合物は、飲食品、医薬品又は化粧品の原料として用いられることが好ましい。
【0018】
一方、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、下記化学式(1)で示される化合物及び/又は下記化学式(2)で示される化合物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0019】
【化2】
【0020】
【化3】
【0021】
また、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、更に、下記化学式(3)で示される化合物を有効成分として含有することが好ましい。
【0022】
【化4】
【0023】
また、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、マコモタケの有機溶媒抽出物から調製された組成物を含有することが好ましい。
【0024】
また、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、マコモタケの菌えい部の有機溶媒抽出物から調製された組成物を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の新規化合物は、例えば、飲食品、医薬品、化粧品などの原料として用いることができ、骨粗鬆症の予防・治療改善効果が期待できる。
【0026】
また、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、豊富な食経験により安全性が確認されているマコモタケ由来の成分を有効成分として含有するものであり、安全性が高く、更には十分な骨粗鬆症の予防・治療改善効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の新規化合物は、下記化学式(1)で表される。
【0028】
【化5】
【0029】
上記化学式(1)で表す化合物(以下、「化合物(1)」と記す)は、有機溶媒に可溶な化合物であり、例えば、マコモタケの溶媒抽出物を精製することで得られる。
【0030】
すなわち、まず、抽出原料となるマコモタケを、必要に応じて乾燥あるいは粉砕処理する。なかでも、マコモタケの菌えい部は、上記化合物(1)の含有量が高いことから、マコモタケの菌えい部を抽出原料としてもちいることで、上記化合物(1)の回収率を向上できる。ここで、マコモタケとは、イネ科マコモ属・多年草の水生植物であるマコモの若茎が黒穂菌によって肥大生育したものであり、中国、台湾を中心とした東アジアから東南アジアにかけて栽培されている中国野菜である。近年では日本でも栽培が行われており、これらの市販品を簡単に入手することができる。
【0031】
次いで、この抽出原料のマコモタケを、抽出溶媒中に室温〜加温下で浸漬して、溶媒抽出物を得る。抽出溶媒としては、特に限定はなく、低級アルコール類(メタノール、エタノールなど)、アセトン、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチルなどが挙げられ、これらを、単独、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。特に好ましい抽出溶媒としては、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0032】
この抽出溶媒には、夾雑物が多量に含まれている場合が多いことから、例えば、マコモタケを低級アルコール類あるいはアセトンなどの水溶性有機溶媒に、室温〜加温下で浸漬して、水溶性溶媒抽出画分を得た後、クロロホルム、ジクロロメタンなどの非水溶性有機溶媒を用いて脂溶性成分と水溶性成分に分離して、非水溶性有機溶媒抽出画分を回収することが好ましい。こうすることで、夾雑物の極めて少ないマコモタケの溶媒抽出物(非水溶性有機溶媒抽出画分)を得ることができる。また、この溶媒抽出物は必要に応じて濃縮してもよく、更に乾燥してもよい。
【0033】
次いで、この溶媒抽出物を、カラム分離精製、再結晶等により精製することで、上記化合物(1)を得ることができる。
【0034】
溶媒抽出物の精製処理は、まずクロマトグラフィーを用いて一次精製して得られる粗精製物を、再結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層カラムクロマトグラフィーから選ばれた少なくとも1種以上の方法により二次精製することが好ましい。こうすることで、上記化合物(1)の回収率を向上できる。
【0035】
上記一次精製に用いるクロマトグラフィーとしては、特に限定はなく、順相カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、サイズ排除カラムクロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー等の従来一般的なクロマトグラフィーを用いることができる。また、一次精製方法としては、特に限定はなく、例えば、シリカゲルを担体としたクロマトグラフィーを用いた場合、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゼン、酢酸エチル、ヘキサンなどの非水溶性有機溶媒と、その混合溶媒、更にこれらにメタノール、エタノール、アセトンなどの水溶性有機溶媒を適当量加え、その比率を変え順次極性を上げながら溶出する方法が好ましく、ヘキサン/酢酸エチル、クロロホルム/アセトン、クロロホルム/メタノールの混合溶媒を用いる方法が特に好ましい。
【0036】
上記二次精製に用いるカラムクロマトグラフィーとしては、順相カラムクロマトグラフィー、ジオールカラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、サイズ排除カラムクロマトグラフィーなどがあり、担体、溶出溶媒等の精製条件は各種クロマトグラフィーに対応して適宜選択することができる。これらカラムクロマトグラフィーを単独または組み合わせて採用することができ、オープンカラム、HPLCカラムなどで適宜適用できる。
【0037】
上記二次精製に用いる薄層クロマトグラフィーとしては、逆相担体または順相担体またはアミンや光学活性体で修飾した化学修飾担体を用いたものが挙げられ、担体、展開溶媒等の精製条件は各種クロマトグラフィーに対応して適宜選択することができる。
【0038】
本発明の新規化合物(化合物(1))は、豊富な食経験により安全性が確認されているマコモタケ由来の成分であり、安全性は既に立証されており、各種飲食品、医薬品、化粧品の原料として用いることができる。
【0039】
上記飲食品としては、例えば、(a)清涼飲料、炭酸飲料、果実飲料、野菜ジュース、乳酸菌飲料、乳飲料、豆乳、ミネラルウォーター、茶系飲料、コーヒー飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、ゼリー飲料等の飲料類、(b)トマトピューレ、キノコ缶詰、乾燥野菜、漬物等の野菜加工品、(c)乾燥果実、ジャム、フルーツピューレ、果実缶詰等の果実加工品、(d)カレー粉、わさび、ショウガ、スパイスブレンド、シーズニング粉等の香辛料、(e)パスタ、うどん、そば、ラーメン、マカロニ等の麺類(生麺、乾燥麺含む)、(f)食パン、菓子パン、調理パン、ドーナツ等のパン類、(g)アルファー化米、オートミール、麩、バッター粉等、(h)焼菓子、ビスケット、米菓子、キャンデー、チョコレート、チューイングガム、スナック菓子、冷菓、砂糖漬け菓子、和生菓子、洋生菓子、半生菓子、プリン、アイスクリーム等の菓子類、(i)小豆、豆腐、納豆、きな粉、湯葉、煮豆、ピーナッツ等の豆類製品、(j)蜂蜜、ローヤルゼリー加工食品、(k)ハム、ソーセージ、ベーコン等の肉製品、(l)ヨーグルト、プリン、練乳、チーズ、発酵乳、バター、アイスクリーム等の酪農製品、(m)加工卵製品、(n)干物、蒲鉾、ちくわ、魚肉ソーセージ等の加工魚や、乾燥わかめ、昆布、佃煮等の加工海藻や、タラコ、数の子、イクラ、からすみ等の加工魚卵、(o)だしの素、醤油、酢、みりん、コンソメベース、中華ベース、濃縮出汁、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、味噌等の調味料や、サラダ油、ゴマ油、リノール油、ジアシルグリセロール、べにばな油等の食用油脂、(p)スープ(粉末、液体含む)等の調理、半調理食品や、惣菜、レトルト食品、チルド食品、半調理食品(例えば、炊き込みご飯の素、カニ玉の素)等が挙げられる。そして、飲食品への添加量としては、有効量が摂取できれば、特に限定されるものではなく、飲食品の味や品質安定性へ損なわないように適宜配合すればよく、例えば5〜500ppm質量、好ましくは10〜100ppm質量となるように配合すればよい。
【0040】
上記化粧品としては、化粧水、乳液、ローション、ジェル、ファンデーション、クリーム、洗顔料、身体洗浄料等などが挙げられる。そして、化粧品への添加量としては、5〜500ppm質量が好ましく、10〜100ppm質量がより好ましい。添加量が、上記範囲より少ないと、十分な生理活性効果が期待できず、上記範囲よりも多いと品質安定性に不具合が生じる場合がある。
【0041】
上記医薬品としては、例えば、破骨細胞分化・増殖阻害剤、免疫賦活剤、メラニン生成抑制剤等が挙げられる。また、その形態としては、液剤、散剤、錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、ゼリー、チュアブル、ペースト等の剤型が例示できる。
【0042】
次に、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤について説明する。
【0043】
本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、下記化学式(1)で示される化合物及び/又は下記化学式(2)で示される化合物を有効成分として含有するものである。
【0044】
【化6】
【0045】
【化7】
【0046】
また、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、更に、下記化学式(3)で示される化合物(以下、「化合物(3)」と記す)を有効成分として含有することが好ましい。
【0047】
【化8】
【0048】
上記化合物(3)は、骨粗鬆症予防・治療効果を有することが報告されており、上記化合物(1)、(2)と併用することで、より優れた骨粗鬆症予防・治療効果が得られる。
【0049】
そして、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、マコモタケの有機溶媒抽出物から調製された組成物を含有することが好ましく、マコモタケの菌えい部の有機溶媒抽出物から調製された組成物を含有することがより好ましい。
【0050】
上記化合物(1)〜(3)は、マコモタケに含まれている成分であり、また、有機溶媒に可溶な化合物である。このため、マコモタケの有機溶媒抽出液には、上記化合物(1)〜(3)が含まれており、それぞれの化合物の相乗作用によって、高い骨粗鬆症予防・治療効果が得られる。なかでも、マコモタケの菌えい部の有機溶媒抽出物には、特に上記化合物(1)、(2)が多く含まれていることから、マコモタケの菌えい部の有機溶媒抽出物から調製された組成物を用いることで、有効成分の含有量を向上させることができ、より優れた骨粗鬆症予防・治療効果が得られる。
【0051】
また、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、更にイソフラボン、コラーゲンペプチド、ラクトフェリン、カゼインホスホペプチド、魚骨カルシウム、貝カルシウムから選ばれた1種以上を含むことが好ましい。これらの成分は、骨粗鬆症予防・治療効果を有することが知られており、相乗効果が期待できる。また、必要に応じて、無機塩類、有機酸類、糖質類、タンパク類、ペプチド類、アミノ酸類、脂質類を適宜配合することができる。
【0052】
本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤の形態としては、液剤、散剤、錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、ゼリー、チュアブル、ペースト等の剤型が例示できる。そして、上記化合物(1)又は(2)をそれぞれ単独で摂取する場合、その有効摂取量は、それぞれ、体重1kg当り、0.01〜5mgが好ましく、0.05〜0.5mgがより好ましい。また、上記化合物(1)〜(3)を2種以上併用して摂取する場合、その有効摂取量は、体重1kg当り、合計量で0.01〜5mgが好ましく、0.05〜0.5mgがより好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の新規化合物及び破骨細胞分化・増殖阻害剤について具体的に説明する。
【0054】
なお、化合物の同定は、FAB−MSスペクトル解析、赤外吸収(IR)スペクトル解析、核磁気共鳴(NMR)スペクトル解析、DEPTスペクトル解析、1H−1H COSYスペクトル解析、HMQCスペクトル解析、HMBCスペクトル解析にて行った。
【0055】
FAB−MSスペクトル解析は、化合物(1)についてはポジティブ,マトリックスは3−ニトロベンジルアルコール、化合物(2)についてはポジティブ,マトリックスは3−ニトロベンジルアルコール又は2−ニトロフェニルオクチルエーテル、化合物(3)についてはポジティブ,マトリックスは3−ニトロベンジルアルコールの条件で行った。
【0056】
赤外吸収(IR)スペクトル解析は、KBr法で行った。
【0057】
核磁気共鳴(NMR)スペクトル解析は、H1−NMRは500MHz、C13−NMRは125MHz,溶媒は重クロロホルムの条件で行った。
【0058】
(製造例1) <新規化合物の製造>
台湾産マコモタケを葉部と菌えい部に切断した。マコモタケの菌えい部(16.7kg)を、エタノール22Lで3回、アセトン10Lで1回順次抽出を行った。得られた抽出物を減圧濃縮し、ジクロロメタンと、エチルアセテートとで溶媒分画を行い、ジクロロメタン可溶部と、エチルアセテート可溶部と、水可溶部とを得た。
【0059】
得られたジクロロメタン可溶部を、フラッシュクロマトグラフィー(充填剤;シリカゲル、60N(295g)、4×60cm)に供し、下記(I)〜(IV)の溶媒各1.2lを用いて溶出を行い、一画分を50mlとして分画し画分a−1〜a−17を得た。
【0060】
(I)ノルマルヘキサン:エチルアセテート=9:1
(II)メタノール
(III)ジクロロメタン:アセトン=8:2
(IV)ジクロロメタン:メタノール=5:5
【0061】
上記(III)溶出画分a−11(1.5502g)を、ジオールカラムクロマトグラフィー(製品名;Diol 40D、50×300mm)に供し、下記(V)〜(VIII)の溶媒各1.2lを用いて溶出を行い、一画分を50mlとして分画し画分b−1〜b−18を得た。
【0062】
(V)ノルマルヘキサン:エチルアセテート=9:1
(VI)ノルマルヘキサン:エチルアセテート=7:3
(VII)ノルマルヘキサン:エチルアセテート=5:5
(VIII)メタノール
【0063】
上記(V)溶出画分b−5を、ODSカラム(製品名;CAPCELLPAK C18 MG、20×250mm)に供し、メタノールで溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分c−1〜c−18を得た。
【0064】
上記画分c−14とc−16とをまとめ、シリカゲルカラム(製品名;Senshu Pak.AQUASIL、20×250mm)に供し、ノルマルヘキサン:エチルアセテート=9:1の混合溶媒で溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分d−1〜d−7を得た。
【0065】
また、上記画分b−4とc−8とc−13とをまとめ、シリカゲルカラム(製品名;Senshu Pak.AQUASIL、20×250mm)に供し、ノルマルヘキサン:エチルアセテート=9:1の混合溶媒で溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分e−1〜e−5を得た。
【0066】
上記画分d−2とe−2とをまとめ、ODSカラム(製品名;CAPCELLPAK C18 MG、20×250mm)に供し、メタノールで溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分f−1〜f−8を得た。
【0067】
上記画分f−7について、FAB−MSスペクトル解析、赤外吸収(IR)スペクトル解析、核磁気共鳴(NMR)スペクトル解析、DEPTスペクトル解析、COSYスペクトル解析、HMQCスペクトル解析を行ったところ、下記化学式(1)で表す目的の新規化合物であることが確認でき、新規化合物(化合物(1))を1.1mg単離できた。図1にこの化合物のFAB−MSスペクトル図、図2にIRスペクトル図、図3に1H−NMRスペクトル図、図4に13C−NMRスペクトル図、図5にDEPTスペクトル(上段)と13C−NMRスペクトル(下段)との対応図、図6に1H−1H COSYスペクトル図、図7にHMQCスペクトル図、図8にHMBCスペクトル図をそれぞれ示す。
【0068】
【化9】
【0069】
・FAB−MSスペクトル:m/z 474[M]+の分子イオンピークが観測された。
・1H−NMRスペクトル:3.10δppm,3.20δppmにメトキシ基由来のシングレット、0.79δppm,0.81δppm,0.90δppmにダブレットのメチル基、0.64δppm,0.72δppmにシングレットのメチル基、0.83δppmにトリプレットのメチル基が観測された。
・13C−NMRスペクトル:31個のシグナルが観測され、211.8δppmにカルボニル由来のピークが観測された。
【0070】
(製造例2) <化合物(2)の製造>
製造例1において、画分d−5とe−4とをまとめ、ODSカラム(製品名;CAPCELLPAK C18 MG、20×250mm)に供し、メタノールで溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分g−1〜g−4を得た。
【0071】
上記画分g−3を、シリカゲルカラム(製品名;Senshu Pak.AQUASIL、20×250mm)に供し、ノルマルヘキサン:エチルアセテート=9:1の混合溶媒で溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分h−1〜h−6を得た。
【0072】
上記画分h−4について、FAB−MSスペクトル解析、赤外吸収(IR)スペクトル解析、核磁気共鳴(NMR)スペクトル解析、DEPTスペクトル解析、COSYスペクトル解析、HMQCスペクトル解析を行ったところ、下記化学式(2)で表す化合物であることが確認でき、化合物(2)を2.7mg単離でできた。図9にこの化合物のFAB−MSスペクトル図(上段はポジティブ,マトリックスとして3−ニトロベンジルアルコール、下段はポジティブ,マトリックスとして2−ニトロフェニルオクチルエーテル)、図10にIRスペクトル図、図11に1H−NMRスペクトル図、図12に13C−NMRスペクトル図、図13にDEPTスペクトル(上段)と13C−NMRスペクトル(下段)との対応図、図14に1H−1H COSYスペクトル図、図15にHMQCスペクトル図、図16にHMBCスペクトル図をそれぞれ示す。
【0073】
【化10】
【0074】
・FAB−MSスペクトル:m/z 429[M+H]+の分子イオンピークが観測された。
・1H−NMRスペクトル:0.79δppm,0.82δppm,0.91δppmにダブレットのメチル基、0.67δppm,0.94δppmにシングレットのメチル基、0.83δppmにトリプレットのメチル基が観測された。
・13C−NMRスペクトル:29個のシグナルが観測され、209.1δppm及び211.3δppmにカルボニル由来のピークが観測された。
【0075】
(製造例3) <化合物(3)の製造>
台湾産マコモタケを葉部と菌えい部に切断した。マコモタケの葉部(7.9kg)を、エタノール24L、アセトン10Lで順次抽出を行った。得られた抽出物を減圧濃縮し、トリクロロメタンと、エチルアセテートとで溶媒分画を行い、ジクロロメタン可溶部と、エチルアセテート可溶部と、水可溶部とを得た。
【0076】
上記エチルアセテート可溶部408.6mgを、フラッシュクロマトグラフィー(充填剤;シリカゲル、60N(800g)、φ4×60cm)に供し、下記(IX)〜(XII)の溶媒各1.2Lを用いて溶出を行い、一画分を50mlとして分画し画分i−1〜i−12を得た。
【0077】
(IX)ジクロロメタン:メタノール=9:1
(X)ジクロロメタン:メタノール=7:3
(XI)メタノール
(XII)メタノール:水=9:1
【0078】
上記画分(XI)溶出画分i−7を、ODS Sep-Pakに供し、水:メタノール=6:4の混合溶媒で溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分j−1〜j−3を得た。 上記画分j−3を、ODSカラム(製品名;CAPCELLPAK C18 MG、20×250mm)に供し、メタノールで溶出を行い、水:メタノール=6:4の混合溶媒で溶出を行い、一画分を20mlとして分画し画分k−1〜k−17を得た。
【0079】
上記画分k−12について、FAB−MSスペクトル解析、赤外吸収(IR)スペクトル解析、核磁気共鳴(NMR)スペクトル解析、DEPTスペクトル解析、COSYスペクトル解析、HMQCスペクトル解析を行ったところ、下記化学式(3)で表す化合物であることが確認でき、化合物(3)を1.9mg単離でできた。図17にこの化合物のFAB−MSスペクトル図、図18にIRスペクトル図、図19に1H−NMRスペクトル図、図20に13C−NMRスペクトル図、図21にDEPTスペクトル(上段)と13C−NMRスペクトル(下段)との対応図、図22に1H−1H COSYスペクトル図、図23にHMQCスペクトル図、図24にHMBCスペクトル図をそれぞれ示す。
【0080】
【化11】
【0081】
・FAB−MSスペクトル:m/z 543[M+Na]+の分子イオンピークが観測された。
・1H−NMRスペクトル:3.85δppm,3.86ppmにメトキシ基由来のシングレット、3.39〜3.50δppmの領域及び4.87δppmに糖由来のシグナルが観測された。
・13C−NMRスペクトル:26個のシグナルが観測された。また、111.0〜151.0δppmの領域に芳香族由来のシグナルが12個観測され、DEPTスペクトル解析により、このうち6個のシグナルが4級炭素であり、6個のシグナルがメチン炭素であった。
【0082】
(試験例1)
[破骨細胞の分化・増殖阻害活性評価]
上記化合物(1)及び(2)を試験標品として用い、破骨細胞の分化・増殖阻害活性を評価した。なお、試験標品は、それぞれ100mg/mlとなるようにメタノールに溶解した後、培養液(10%FBS含有α−MEM)で希釈して、0.2μg/ml、0.4μg/ml、0.8μg/ml、1.6μg/ml、3.2μg/ml、6.3μg/ml、12.5μg/ml、25μg/ml、50μg/mlに調製したものを用いた。
5〜7週齢の雌マウスの脛骨及び大腿骨から採取した骨髄細胞1.3×108cellと、頭蓋骨から採取し培養した骨芽細胞様間質細胞1×106cellとを、培養液(10%FBS含有α−MEM)7.2mlに懸濁し、48穴プレートに150μl/wellで分注した。そして、各濃度のサンプル溶液50μlを、1,25(OH)2VD3(20ng/ml)50μlと共に培養液に添加して、全量を250μl/wellとした。次いで、CO2インキュベータを用いて培養(37℃、CO2濃度5.0%)した。培養開始3日目に各wellの上澄み液100μlを除去し、初日の添加濃度の2倍の試験標品と、1,25(OH)2D3(40ng/ml)を各50μl添加し、更に1週間培養した。
共存培養後、培養液を除去し、PBS(リン酸緩衝液)で洗浄後、10%ホルマリン含有PBS溶液を0.5ml/well加え、10分間固定した。次に、エタノールを0.5ml/well添加し、1分間再固定した。その後乾燥させ、TRAP反応液を0.3ml/well加え、室温で30分間染色した。染色後は、蒸留水(0.5ml/well)で洗浄し、乾燥した。TRAP反応は陽性であり、核を2個以上有する細胞をTRAP陽性多核細胞として、1well当たりの個数をカウントした。なお、TRAP反応液は、1.5mgのNaphthol as−mx phosphateと、150mlのN,N−ジメチルホルムアルデヒドと、15mlのbuffer(50mMの酒石酸Naを含む0.1Mの酢酸Na緩衝液 pH=5.0)と、9mgのfast red violet lb saltの混合溶液を用いた。
【0083】
上記化合物(1)は、図25に示すように、25〜50μg/mlの範囲において、破骨細胞の形成を特異的に抑制することができた。
【0084】
また、上記化合物(2)は、図26に示すように、12.5〜50μg/mlの範囲において破骨細胞の形成を特異的に抑制することができた。
【0085】
(製造例4)
表1に示す配合で調合した組成物を常法にしたがってハードカプセルに230mg/カプセルで充填して、ハードカプセル剤を製造した。魚骨カルシウムは商品名「焼成ボニカル」(焼津水産化学工業株式会社製)を使用した。このカプセル剤を1日に10カプセルを摂取することにより、化合物(1)を10mg摂取することが可能である。
【0086】
【表1】
【0087】
(製造例5)
表2に示す配合で常法にしたがってゼリー飲料を製造した。このゼリー飲料は製造上の問題点は特になく、品質、風味に関しても問題なく、美味しく食することができた。このゼリー飲料を1日に1本を摂取することにより、化合物(1)、化合物(2)をそれぞれ5mgずつ摂取することが可能である。
【0088】
【表2】
【0089】
(製造例6)
表3に示す配合で常法にしたがって乳飲料を製造した。この乳飲料は製造上の問題点は特になく、沈殿等の品質、風味に関しても問題なく、美味しく食することができた。この乳飲料を1日に1本を摂取することにより、化合物(1)を4mg、化合物(2)、化合物(3)をそれぞれ3mgずつ摂取することが可能である。
【0090】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の新規化合物は、飲食品、医薬品、化粧品等の原料として用いることができる。
また、本発明の破骨細胞分化・増殖阻害剤は、そのまま、或いは飲食品、医薬品、化粧品等に配合して摂取することにより、骨粗鬆症の予防・治療改善に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】化合物(1)のFAB−MSスペクトル図である。
【図2】同IRスペクトル図である。
【図3】同1H−NMRスペクトル図である。
【図4】同13C−NMRスペクトル図である。
【図5】同DEPTスペクトル(上段)と13C−NMRスペクトル(下段)との対応図である。
【図6】同1H−1H COSYスペクトル図である。
【図7】同HMQCスペクトル図である。
【図8】同HMBCスペクトル図である。
【図9】化合物(2)のFAB−MSスペクトル図である。
【図10】同IRスペクトル図である。
【図11】同1H−NMRスペクトル図である。
【図12】同13C−NMRスペクトル図である。
【図13】同DEPTスペクトル(上段)と13C−NMRスペクトル(下段)との対応図である。
【図14】同1H−1H COSYスペクトル図である。
【図15】同HMQCスペクトル図である。
【図16】同HMBCスペクトル図である。
【図17】化合物(3)のFAB−MSスペクトル図である。
【図18】同IRスペクトル図である。
【図19】同1H−NMRスペクトル図である。
【図20】同13C−NMRスペクトル図である。
【図21】同DEPTスペクトル(上段)と13C−NMRスペクトル(下段)との対応図である。
【図22】同1H−1H COSYスペクトル図である。
【図23】同HMQCスペクトル図である。
【図24】同HMBCスペクトル図である。
【図25】化合物(1)による破骨細胞の分化・増殖阻害活性を示す図表である。
【図26】化合物(2)による破骨細胞の分化・増殖阻害活性を示す図表である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で示される新規化合物。
【化1】
【請求項2】
飲食品、医薬品又は化粧品の原料として用いられる請求項1記載の新規化合物。
【請求項3】
下記化学式(1)で示される化合物及び/又は下記化学式(2)で示される化合物を有効成分として含有することを特徴とする破骨細胞分化・増殖阻害剤。
【化2】
【化3】
【請求項4】
更に、下記化学式(3)で示される化合物を有効成分として含有する請求項3記載の破骨細胞分化・増殖阻害剤。
【化4】
【請求項5】
マコモタケの有機溶媒抽出物から調製された組成物を含有する請求項3又は4記載の破骨細胞分化・増殖阻害剤。
【請求項6】
マコモタケの菌えい部の有機溶媒抽出物から調製された組成物を含有する請求項5記載の破骨細胞分化・増殖阻害剤。
【請求項1】
下記化学式(1)で示される新規化合物。
【化1】
【請求項2】
飲食品、医薬品又は化粧品の原料として用いられる請求項1記載の新規化合物。
【請求項3】
下記化学式(1)で示される化合物及び/又は下記化学式(2)で示される化合物を有効成分として含有することを特徴とする破骨細胞分化・増殖阻害剤。
【化2】
【化3】
【請求項4】
更に、下記化学式(3)で示される化合物を有効成分として含有する請求項3記載の破骨細胞分化・増殖阻害剤。
【化4】
【請求項5】
マコモタケの有機溶媒抽出物から調製された組成物を含有する請求項3又は4記載の破骨細胞分化・増殖阻害剤。
【請求項6】
マコモタケの菌えい部の有機溶媒抽出物から調製された組成物を含有する請求項5記載の破骨細胞分化・増殖阻害剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2008−7453(P2008−7453A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178591(P2006−178591)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【Fターム(参考)】
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