説明

新規鳥類サイトカインおよびそれをコードする遺伝子配列

本発明は、概して、鳥類サイトカイン特性を持つ新規組換えポリペプチドおよびそれをコードする遺伝子配列に関する。より具体的には、本発明は、組換え鳥類III型インターフェロンポリペプチド、およびそれをコードする遺伝子配列、ならびにそのための細胞発現系およびその用途を対象とする。さらに具体的には、本発明は、鳥類インターフェロン-λ(IFN-λ)ならびにその機能的誘導体、ホモログおよびフラグメント、ならびにその使用方法を対象とする。本発明の分子および細胞は、例えば限定するわけではないが、疾患状態(特に鳥類の疾患状態)を処置および予防するための手段の提供、または免疫応答調整物質としての使用を含む、広範な応用例に有用である。免疫応答に関するスクリーニングのための診断手段、およびIFN-λタンパク質または核酸機能の調整物質を同定するためのスクリーニング手段も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、概して、鳥類サイトカイン特性を持つ新規組換えポリペプチドおよびそれをコードする遺伝子配列に関する。より具体的には、本発明は、組換え鳥類III型インターフェロンポリペプチド、およびそれをコードする遺伝子配列、ならびにそのための細胞発現系およびその用途を対象とする。さらに具体的には、本発明は、鳥類インターフェロン-λ(IFN-λ)ならびにその機能的誘導体、ホモログおよびフラグメント、ならびにその使用方法を対象とする。本発明の分子および細胞は、例えば限定するわけではないが、疾患状態(特に鳥類の疾患状態)を処置および予防するための手段の提供、または免疫応答調整物質としての使用を含む、広範な応用例に有用である。免疫応答に関するスクリーニングのための診断手段、およびIFN-λタンパク質または核酸機能の調整物質を同定するためのスクリーニング手段も提供する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
本明細書において著者名で言及される刊行物の書誌詳細は、明細書の最後に、アルファベット順にまとめられている。
【0003】
先行刊行物(もしくはそこから得られる情報)または公知である任意の事項への本明細書における言及は、その先行刊行物(もしくはそこから得られる情報)または公知事項が、本明細書が関係する事業分野に共通する一般知識の一部を形成することを自認し、または自白し、またはいかなる形態でも示唆するものではなく、また、そのように解釈すべきでもない。
【0004】
組換えDNA技術の急速に進む高度化は、医学分野および獣医学分野の研究を著しく容易にしている。サイトカイン研究は、とりわけこれらの分子が極めて多様な細胞の、例えば免疫応答の媒介に関与する細胞の、増殖、分化および機能を調節することから、特に重要である。組換えサイトカインの投与、またはサイトカインの機能および/または合成を調節することは、ヒトおよび動物におけるさまざまな疾患状態の処置に関する医学的研究の中心に、ますますなりつつある。
【0005】
インターフェロン(IFN)は、IFN誘導遺伝子(IFN stimulated gene:ISG)と呼ばれる何百もの遺伝子を調節することにより、脊椎動物において多様な細胞効果を引き起こす一群のサイトカインである。IFNは、細胞増殖周期の調整、ならびに免疫応答全体を大きく方向付ける炎症応答の誘導および調節を含む、多機能的役割を示す。最もよく認識されているIFNの属性の一つは、それらがウイルスに対する細胞抵抗性を誘導できることである(Hwangら 1995, PNAS)。
【0006】
脊椎動物IFNは、その分子構造、受容体特異性およびそれらが誘導する経路に基づいて分類される3つのタイプからなる(Smithら, 2005;Theofilopoulosら, 2005)。
【0007】
I型IFNには、IFNα(脊椎動物ゲノムにはその典型が複数存在する(Meager, 2002))およびIFNβ(通常は単一の遺伝子によって代表される(Schultzら, 2004))が含まれる。I型IFNは多くのウイルスの検出時に活性化され(JacobsおよびLangland 1996;Majde 2000)、いったん活性化されると、それらの受容体IFNα/β受容体(IFNα/βR)と相互作用してISGのサブセットを誘導し、それらがIFN特異的な抗ウイルス防御をもたらす(de Veerら, 2001;TakaokaおよびYanai 2006)。I型IFNの治療的応用は、例えばインフルエンザ(Beilharzら, 2007;Koernerら, 2007)、C型肝炎(Marcelloら, 2006)およびいくつかの他のウイルス(Kotenkoら, 2003;Sheppardら, 2003;Meagerら, 2005)を含む、ウイルスからの哺乳動物の防御に成功している。
【0008】
II型IFN群は単一の構成要素IFNγからなる(Schroderら, 2004)。IFNγはIFNγ受容体(IFNγR)を介して抗ウイルス活性および細胞性免疫を活性化する(Kamijoら, 1994;Schroder,ら, 2004)。このIFNも、口蹄疫(FMD)ウイルス(Moraesら, 2007)、ポリオーマウイルス(Abendら, 2007)、その他(Cheslerら, 2003)からの防御を含む抗ウイルス活性を示し、同様に、さまざまな病原体に対する治療薬として使用されてきた(Schroderら, 2004)。
【0009】
最近、第3のIFNファミリーであるIII型IFNが哺乳動物で報告された。これには現在、3つのサブタイプが知られており、それらは、IFNλ1(IL29とも呼ばれる)、IFNλ2(IL28Aとも呼ばれる)およびIFNλ3(IL28Bとも呼ばれる)である(Sheppard,ら, 2003)。哺乳動物IFNλの構成要素は、IFNλ受容体1(IFNλR1)およびIL10受容体β(IL10Rβ)からなる独特な受容体複合体と相互作用する(Donnellyら, 2004)。これらのサブユニット受容体は、リガンドが結合すると二量体化して、シグナル伝達性転写因子(STAT)をリン酸化し(Kotenkoら, 2003;Donnellyら, 2004)、それが結果として、IFNλ特異的な遺伝子セットの活性化をもたらす(Ankら, 2006;Marcelloら, 2006)。哺乳動物IFNλは、そのIL10様のシグナリング複合体にもかかわらず(Sheppardら, 2003;Donnellyら, 2004)、I型IFNに似た抗ウイルス特性を示す(Meagerら, 2005)。したがってIFNλは、代替的受容体複合体を介して、I型IFN様遺伝子のサブセットを誘導しうるようである(Marcelloら, 2006)。
【0010】
いくつかのヒトIFNλ(HuIFNλ)研究により、ウイルスを阻害するIFNλの潜在能力が明らかになっている。例えばHuIFNλIIは哺乳動物細胞培養においてC型肝炎ウイルスを阻害することが証明されている(Robekら, 2005;Marcelloら, 2006)。この防御はI型IFNに匹敵するが、各IFNによって開始される遺伝子サブセットは異なる(Marcelloら, 2006)。したがってウイルス防御は異なる誘導遺伝子群から開始されうる(Rioら, 1998;StohrおよびEsveld, 2004;Meagerら, 2005;Annibaliら, 2007)。また、IFNλとI型IFNの抗ウイルス特性を比較すると、どちらのタイプのIFNもEMCVを阻害できることが示される。しかしそれらの効果は規模が大きく異なっていた(Meagerら, 2005)。VSVが関わる研究でも同様の知見が得られた(Kotenkoら, 2003)。これは、IFNλ応答経路が、一定のウイルス感染において、特定の機能的役割に必要でありうることを示唆している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
最近、急速に伝播して家禽集団とヒト集団の両方で高い罹病率の原因となりうる鳥インフルエンザの突発が観察されたことから、家禽ウイルスに関して非常に多くの懸念が寄せられるようになった(StohrおよびEsveld 2004)。家禽における問題ウイルスの管理という困難な課題は、I型およびII型IFN治療薬の使用には免疫毒性効果が付随して観察されうるという事実(Kotenkoら, 2003;StohrおよびEsveld 2004;Meagerら, 2005)と相まって、新しい代替的抗ウイルス戦略に関する進行中の研究を避けがたいものにしている。したがって、家禽産業に利すると共に、これらのウイルスがヒトに伝染するリスクを低下させるのにも役立つ、家禽ウイルスの改良された防除が必要とされている(Chenら, 2007)。さらにまた、世界中の地域社会の経済および食糧供給にとっての家禽産業の重要性を考えると、免疫調整を調節し改良するための新しい手段の開発は、極めて重要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に至る研究では、ニワトリIFN-λ(以下「ChIFN-λ」という)をコードする核酸分子を単離し、配列決定した。本発明の単離核酸分子を含む組換え遺伝子コンストラクトを作製し、それらを形質転換細胞中で発現させることによって、ChIFN-λの単離および配列決定を可能にした。これらの発見により、ここに、代替的IFN治療薬の可能性が開かれる。
【0013】
[発明の概要]
本明細書および後述する特許請求の範囲の全体を通して、文脈上別段の必要がある場合を除き、「含む(comprise)」という単語とその活用形(例えば「comprises」「comprising」)は、明記した要素もしくは完全体(integer)または要素もしくは完全体群の包含を含意するが、他のどの要素もしくは完全体または要素もしくは完全体群についても、その除外を含意するわけではないと理解されるだろう。
【0014】
本明細書および後述する特許請求の範囲の全体を通して、文脈上別段の必要がある場合を除き、「含む(comprise)」という単語とその活用形(例えば「comprises」「comprising」)は、明記した完全体もしくはステップまたは完全体もしくはステップ群の包含を含意するが、他のどの完全体もしくはステップまたは完全体もしくはステップ群についても、その除外を含意するわけではないと理解されるだろう。
【0015】
本明細書で使用する用語「に由来する(derived from)」は、ある特定の完全体または完全体群が、指定した種に起源を持つものの、指定した供給源から直接得られたとは限らないことを示すと解釈されるべきである。さらに、本明細書で使用する単数形「a」「an」および「the」は、文脈上、明確に別段の必要がある場合を除き、複数の指示対象を包含する。
【0016】
別段の定義がある場合を除き、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者に共通して理解されているものと同じ意味を持つ。
【0017】
本明細書には、文献目録の後に記載する、プログラムPatentIn Version 3.1を使って作成された、アミノ酸配列情報およびヌクレオチド配列情報が含まれる。各アミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、配列表において、数字見出し<210>とそれに続く配列識別子(例えば<210>1、<210>2、など)によって特定される。各配列について、配列の長さ、配列の型(アミノ酸、DNAなど)および起源生物名は、それぞれ数字見出し欄<211>、<212>および<213>に記載の情報によって示される。本明細書で言及するアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、「配列番号」という表示とそれに続く配列識別子(例えば配列番号1、配列番号2など)によって特定される。本明細書で言及される配列識別子は、その配列識別子が後続している配列表の数字見出し欄<400>(例えば<400>1、<400>2など)に記載の情報と関係づけられる。すなわち、本明細書において詳述される配列番号1は、配列表に<400>1として示される配列と関係づけられる。
【0018】
本明細書の全体を通して使用される一文字略号および三文字略号を表1に定義する。
【0019】
本発明の一態様は、鳥類サイトカインポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体をコードする核酸分子、または、鳥類サイトカインポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体をコードする核酸分子に相補的な核酸分子であって、前記ポリペプチドがIII型インターフェロンであるものを対象とする。
【0020】
本発明のもう一つの態様は、鳥類サイトカインポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体をコードする核酸分子またはその機能的フラグメントもしくは誘導体、または、鳥類サイトカインポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体をコードする核酸分子に相補的な核酸分子またはその機能的フラグメントもしくは誘導体であって、前記ポリペプチドがIII型インターフェロンであり、前記鳥類種が、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、バンタム(bantam)、ウズラまたはホロホロチョウ(guinea fowl)を含むリストから選択される家禽であるものを提供する。
【0021】
もう一つの態様では、前記III型インターフェロンポリペプチドが、ニワトリIFN-λ(ChIFNλ)ポリペプチドもしくはそれを含む融合分子、またはその機能的フラグメント、誘導体もしくは鳥類ホモログである。
【0022】
さらにもう一つの態様では、ニワトリIFN-λポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体をコードする核酸分子またはその機能的フラグメントもしくは誘導体、または、ニワトリIFN-λポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体をコードする核酸分子に相補的な核酸分子またはその機能的フラグメントもしくは誘導体が提供される。
【0023】
本発明のさらにもう一つの態様は、次に挙げるものからなるリストより選択される単離核酸を対象とする:
(i)実質的に配列番号2もしくは4に記載されているアミノ酸配列またはその機能的誘導体、フラグメントもしくは鳥類ホモログ、または配列番号2もしくは4に対し、その配列の全長にわたって、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を持つアミノ酸配列、をコードする、または、をコードする配列に相補的な、ヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子またはその機能的フラグメント、誘導体もしくは鳥類ホモログ、または低ストリンジェンシー条件下で前記核酸分子にハイブリダイズする能力を持つ核酸配列を含む、単離核酸分子またはその機能的フラグメント、誘導体もしくは鳥類ホモログ;
(ii)あるヌクレオチド配列またはその配列に相補的なヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子またはその機能的フラグメント、誘導体もしくは鳥類ホモログであって、前記ヌクレオチド配列が、実質的に配列番号1もしくは3に記載されているとおりであるか、その配列の全長にわたって少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を持つヌクレオチド配列であるか、低ストリンジェンシー条件下で配列番号1もしくは3またはその相補型にハイブリダイズする能力を持つヌクレオチド配列であるもの;
(iii)配列番号1または3に記載のヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子またはその機能的誘導体、フラグメントもしくは鳥類ホモログ。
【0024】
本発明のさらにもう一つの態様は、鳥類インターフェロンIII型ポリペプチド、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体を提供する。
【0025】
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号2もしくは4に記載の単離タンパク質、または配列番号2もしくは4に対し、その配列の全長にわたって、少なくとも約60%、65%、75%、80%もしくはそれ以上の同一性を持つ単離タンパク質、またはその機能的誘導体、フラグメントもしくは鳥類ホモログを対象とする。
【0026】
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号1もしくは3に記載のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質、または、低ストリンジェンシー条件下で配列番号1もしくは3にハイブリダイズする能力を持つ配列に相補的な配列であって、かつ配列番号2もしくは4に記載のアミノ酸配列、または配列番号2もしくは4に対し、その配列の全長にわたって、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%またはそれ以上の同一性を持つアミノ酸配列、をコードする配列によってコードされるタンパク質、を対象とする。
【0027】
本発明のさらにもう一つの態様は、細胞中で組換え鳥類III型インターフェロン分子を生産する方法であって、前記鳥類III型インターフェロンをコードする核酸分子、または前記鳥類III型インターフェロンをコードする核酸分子に相補的な核酸分子を、前記細胞中で発現させることを含む方法を提供する。
【0028】
本発明のさらにもう一つの態様は、内在性もしくは組換え鳥類III型インターフェロンまたはその機能的フラグメント、誘導体もしくはホモログを発現させる単離細胞を提供する。
【0029】
ある関連態様において、本発明は、細胞中で組換え鳥類III型インターフェロンを生産する方法であって、次のステップを含む方法を提供する:
(i)適切なプロモーター配列の制御下に置かれた前記鳥類III型インターフェロンをコードする核酸分子、または、前記鳥類III型インターフェロンをコードする核酸分子に相補的な核酸分子を含む遺伝子コンストラクトを前記細胞中に導入するステップ;
(ii)前記核酸分子が発現されるのに十分な時間、十分な条件下で、前記細胞を培養するステップ;および
(iii)前記発現産物を単離するステップ。
【0030】
さらにもう一つの態様において、本発明は、細胞中で鳥類III型インターフェロン融合分子を生産する方法であって、鳥類III型インターフェロンポリペプチドまたはその機能的フラグメント、誘導体もしくは鳥類ホモログをコードする核酸分子、または、鳥類III型インターフェロンポリペプチドまたはその機能的フラグメント、誘導体もしくは鳥類ホモログをコードする核酸分子に相補的な核酸分子を含む遺伝子コンストラクトを、前記細胞中に導入することを含み、前記ポリペプチドが、第1のIII型インターフェロンと第2のIII型インターフェロンとの融合タンパク質、または第1のIII型インターフェロンと、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、Ch IFN-α、Ch IFN-β、もしくはCh IFN-γなどを含むリストから選択される第2のI型もしくはII型インターフェロンとの融合タンパク質である方法に及ぶ。
【0031】
さらにもう一つの関連態様において、本発明は、第1のIII型インターフェロンと第2のIII型インターフェロンとの組換え融合ポリペプチド、または第1のIII型インターフェロンと、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、ChIFN-α、ChIFN-βもしくはChIFN-γなどを含むリストから選択される第2のI型もしくはII型インターフェロンとの組換え融合ペプチドに及ぶ。
【0032】
本発明のさらにもう一つの態様は、鳥類III型インターフェロン融合ポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体をコードする核酸分子、または、鳥類III型インターフェロン融合ポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体をコードする核酸分子に相補的な核酸分子を含む遺伝子コンストラクトであって、前記ポリペプチドがIII型インターフェロンと第2のIII型インターフェロンとの融合ポリペプチドであるか、第1のIII型インターフェロンと、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、Ch IFN-α、Ch IFN-β、もしくはCh IFN-γなどを含むリストから選択される第2のI型またはII型インターフェロンとの融合ポリペプチドであるものに及ぶ。
【0033】
本発明のさらにもう一つの態様は、鳥類III型インターフェロン遺伝子配列、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体を同定するための方法を提供する。
【0034】
本発明のさらにもう一つの態様は、鳥類III型インターフェロンポリペプチドまたはその機能的フラグメント、誘導体もしくはホモログの存在を検出するための方法を提供する。
【0035】
本発明のさらにもう一つの態様は、鳥類の処置または予防方法であって、前記鳥類に、鳥類III型インターフェロンポリペプチドまたはその機能的フラグメント、誘導体もしくはホモログの有効量を、前記鳥類の免疫応答性を維持し、刺激し、または強化するのに十分な時間、十分な条件下で投与することを含む方法を提供する。
【0036】
本発明のさらにもう一つの態様では、病原性生物に曝露されたまたは感染した鳥類の処置または予防方法であって、前記鳥類に、鳥類III型インターフェロンポリペプチドまたはその機能的フラグメント、誘導体、もしくはホモログの有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0037】
本発明のさらにもう一つの態様は、鳥類の治療または予防に使用するための鳥類インターフェロンIIIポリペプチドに関する。
【0038】
本発明のさらにもう一つの態様は、鳥類における免疫応答の調整および/または鳥類の処置もしくは予防のための医薬の製造における鳥類III型インターフェロンポリペプチドの使用に関する。
【0039】
本発明のもう一つの態様は、III型インターフェロンであるか前記III型インターフェロン分子と第2のサイトカイン分子との融合分子である鳥類サイトカイン分子と、場合によっては、薬学的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤とを含むアジュバントを提供する。
【0040】
さらにもう一つの態様は、免疫調整有効量の、鳥類III型インターフェロンもしくは鳥類III型インターフェロンと第2のサイトカインとの融合分子、またはそれを発現させる能力を持つ遺伝子配列と、獣医学的使用に許容できる1つ以上の担体および/または希釈剤とを含む、獣医学的医薬組成物に及ぶ。
【0041】
表1:一文字および三文字アミノ酸略号
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ポリ(I:C)(50μg/ml)で2時間処理したニワトリ脾細胞から得たChIFN転写物のRT-PCR発現解析の画像である。IFN特異的シークエンスプライマーを使ってChIFNα、βまたはλを増幅し、1%アガロースゲルで泳動した。陰性対照として水を含めた。内部対照としてGAPDHの発現を含めた。
【図2】ClustalW(BioManager)を使って作成された、ChIFNλおよびさまざまな脊椎動物種のIFNλIIの推定アミノ酸配列のアラインメントの概略図である。ChIFNλの予測タンパク質配列を、HuIFNλII(アクセッション番号NM_172138)、mIFNλII(アクセッション番号AY869695)および魚IFNλ(アクセッション番号AB093588)と整列させた。一致するアミノ酸残基に「*」で印を付け、保存残基および部分保存(semi-conserved)残基をそれぞれ「:」および「.」で示す。ダッシュ記号は、アラインメントを最適化するために配列に導入されたギャップを示す。シグナルペプチドを同定した。それを枠内に示すが、魚IFNλについてはシグナルペプチドを予測することができなかった。
【図3】ChIFNλヌクレオチド配列および予測アミノ酸翻訳物の概略図である。ChIFNλのORFを配列解析した。予測アミノ酸翻訳物を示す。予測シグナルペプチドに下線を付し、イントロンスプライス部位を矢印で特定する。
【図4】完全コード配列を使ったChIFNλ、他のいくつかの脊椎動物IFNλおよび選ばれた他のニワトリサイトカインのアミノ酸配列の関係を示す無根系統樹の概略図である。各遺伝子のGenebankアクセッション番号は表4に見いだすことができる。
【図5】大腸菌(E. coli)発現組換えニワトリIFNのSDS-PAGE解析の画像である。大腸菌発現組換えChIFNα、ChIFNβおよびChIFNλタンパク質を、IPTG誘導後に、Ni-NTA金属アフィニティークロマトグラフィーで精製した。次に、これらの組換えタンパク質を12%SDS-PAGEで泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色で解析した。参照用に広範囲分子量マーカー(「マーカー」)を含めた。
【図6】ニワトリIFNによって刺激された亜硝酸産生のグラフ表示である。HD11ニワトリマクロファージ様細胞をChIFNλおよびChIFNβと共に24時間培養してから、上清を、誘導された亜硝酸産生の存在について調べた。表示する値は3重に行なった各実験の平均である。結果は2回の独立した実験を代表するものである。
【図7】IFNによる処理後のCEF細胞におけるSFVからの防御を示すグラフ表示である。CEF細胞をさまざまなChIFNと共に18時間培養してから、SFVに感染させた。次に、感染の24時間後にニュートラルレッドで染色し、吸光度(OD540)を測定することにより、細胞溶解を測定した。表示する値は3重に行なった実験の平均である。結果は2回の独立した実験を代表するものである。
【図8】IFN前処理後のHD11ニワトリマクロファージにおけるインフルエンザの減少を示すグラフ表示である。HD11細胞をChIFNα、ChIFNβ、ChIFNλまたは培地のみで6時間処理してから、インフルエンザ(PR8)に感染させた。感染後のさまざまな時点で、HAアッセイにより、ウイルス価を測定した。表示する値は4重に行なった各実験の平均である。結果は2回の独立した実験を代表するものである。
【図9】IFN mRNA発現のポリ(I:C)誘導を示すグラフ表示である。ニワトリ脾臓単核球を30μg/mlポリ(I:C)と共に2時間および4時間培養した。次に細胞を収集し、qRT-PCRを使って、ChIFNα、ChIFNβおよびChIFNλ mRNAレベルを測定した。データは、さまざまなIFNの発現を、無刺激対照との比較で表す。結果を標準化するためにGAPDHをハウスキーピング遺伝子として使用した。値は平均であり、エラーバーはSEを表す。実験は3重に行い、結果は2回の独立した実験を代表するものである。
【図10】TLR3 mRNA発現のIFN誘導を表すグラフ表示である。ニワトリ脾臓単核球をさまざまな濃度のChIFNα、ChIFNβおよびChIFNλと共に3時間培養してから、qRT-PCRを使って、TLR3 mRNAレベルを測定した。結果を標準化するためにGAPDHをハウスキーピング遺伝子として使用した。発現を無刺激対照との比較で表す。値は平均であり、エラーバーはSEを表す。実験は3重に行い、結果は2回の独立した実験を代表するものである。
【図11】IFNλがH5N1(鳥インフルエンザ)感染時に誘導されることを表すグラフ表示である。H5N1(V/1203)感染後に、ニワトリの肺、脾臓および脳で、サイトカインIFNλをqRT-PCRによって測定した。データは未感染対照鳥と比較した変化倍率を表す。データは平均(n=7)を表し、エラーバーはSEを表す。
【図12】IFNλが、感染前でも、感染後でも、インフルエンザ感染から防御することを表すグラフ表示である。HD11細胞を、3つの濃度のchIFN-α、βおよびλで前処置(B)するか、後処置(A)し、インフルエンザ(PR8)で攻撃した。バーは、24、40、48、60および72時間の時点で、HAによって測定されるウイルスの相対レベルを表す。ウイルスは24時間および40時間で検出可能だった。各時点で複数の試料を得た。
【図13】IFNλに対する抗体によるIFNλ活性の阻害を表すグラフ表示である。卵内(in ovo)でインフルエンザワクチンウイルスと同時接種された抗chIFN-λ抗体は、HA価によって決定されるインフルエンザウイルス価を増加させた。データは最大7回の実験の平均±SEを表す。統計的有意性は、アステリスク1つ(*)p<0.05、アステリスク2つ(**)p<0.005として表され、アステリスク3つ(***)はp=0.0001を表す。
【図14】IFNλが免疫処置後の抗体応答を上昇させることを表すグラフ表示である。特定病原体フリーニワトリ(SPF)(n=7)に、サイトカインの存在下または非存在下で、0.2mlの濃厚ヒツジ赤血球(SRBC)を、腹腔内にワクチン接種した。免疫処置後15日目に、鳥をSRBCのみで再び免疫処置した。すべての鳥から毎週1回採血し、HA価を測定した。完全凝集によって決定される血清抗体価を、各群について、平均として表す。
【図15】rchIFN-λが脾細胞におけるConA誘発性増殖を阻害することを表すグラフ表示である。脾細胞を、大腸菌発現rchIFN-α、βおよびλの段階希釈液ならびに最適量未満のConA(5μg/mL)と共に、48時間培養した。次にチミジンH3Tを加え、細胞をさらに24時間培養した。放射能を測定して細胞増殖を決定し、それを4重試料の平均±SEとして表示する。ConAのみで処理した細胞を4重試料の平均として表示する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[発明の詳細な説明]
本発明は、一つには、新規鳥類III型インターフェロン遺伝子、より具体的にはニワトリIFN-λ遺伝子に相当する核酸分子の単離および配列決定に基づいている。この知見は、とりわけ免疫調整に使用するための、新規タンパク質および核酸分子を提供する。ウイルスで攻撃された細胞では、細胞をニワトリIFN-λ遺伝子の発現産物の存在下で培養すると、ウイルス誘発性細胞溶解からの防御が観察される。したがって、この新規鳥類サイトカイン遺伝子の同定により、とりわけ病原性生物への曝露または病原性生物による感染に関連する鳥類疾患状態の、処置、予防および診断/モニタリングに使用するための物品および方法の開発が、特に容易になった。
【0044】
したがって本発明の一態様は、鳥類サイトカインポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体をコードする核酸分子、または、鳥類サイトカインポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体をコードする核酸分子に相補的な核酸分子であって、前記ポリペプチドがIII型インターフェロンであるものを対象とする。
【0045】
「鳥類(avian)」という用語は、一般に鳥(bird)と呼ばれている脊椎動物のクラスの構成要素を包含すると理解されるべきである。本明細書で使用される用語「鳥類」には、例えばニワトリ、シチメンチョウ、バンタム、ウズラ、ホロホロチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、ハト、カナリア、セキセイインコ、オウムおよびフィンチなどを含むリストから選択される家禽種、飼育鳥(domestic bird)および狩猟鳥の両方の性およびあらゆる発生段階が含まれると、理解するべきである。
【0046】
本明細書における用語「サイトカインポリペプチド」への言及は、III型インターフェロンに特有の生物学的特徴の1つ以上、特に、リンパ球(BまたはT細胞)、顆粒球(好酸球、好塩基球または好中球)または他の非特異的免疫細胞(例えばマクロファージ、単球、NK細胞など)などといった鳥類免疫細胞の機能を調整する能力を有する生物学的に活性なタンパク質の少なくとも1つのサブユニットを含むポリペプチド分子を指すと理解されるべきである。
【0047】
本発明を何か一つの理論または作用様式に限定するわけではないが、III型インターフェロンは、I型インターフェロンの生物学的特性に似た生物学的特性を示すことが確認されている。したがってIII型インターフェロンの生物学的活性への言及には、例えば限定するわけではないが、抗ウイルス活性および免疫賦活活性、例えばヤヌスキナーゼ(Jak)-STATシグナル伝達系路によるシグナリングおよびIFN誘導調節遺伝子発現(IFN-stimualted regulated gene expression:ISRE)の活性化につながるウイルス誘導性発現、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI抗原発現のアップレギュレーション、ならびにウイルス感染によって誘発される細胞変性効果からの防御が含まれると理解すべきである。
【0048】
したがって本発明のもう一つの態様は、鳥類サイトカインポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体をコードする核酸分子またはその機能的フラグメントもしくは誘導体、または、鳥類サイトカインポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体をコードする核酸分子に相補的な核酸分子またはその機能的フラグメントもしくは誘導体であって、前記ポリペプチドがIII型インターフェロンであり、前記鳥類種が、ニワトリ、シチメンチョウ、バンタム、ウズラ、ホロホロチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、ハト、カナリア、セキセイインコ、オウムまたはフィンチであるものを提供する。
【0049】
最も好ましくは、本発明の核酸分子はニワトリに由来する。
【0050】
本発明を何か一つの理論または作用様式に限定するわけではないが、上に詳述したとおり、IFNは、分子構造、受容体タイプおよびそれらが誘導する機能的経路に基づいて、3つのファミリーに分類される。これらのファミリーはIFN-I、IFN-IIおよびIFN-IIIである。III型IFNはIFNラムダ(λ)群を包含し、哺乳動物の場合、これには、3つのサブタイプ、IFNλ1(IL29)、IFNλ2(IL28A)、およびIFNλ3(IL28B)がある。ニワトリではIFN-λ群が1構成要素しか含まないようであるが、鳥類IFN-λへの言及は、あらゆる形態のこれらの分子ならびにその機能的フラグメント、誘導体および鳥類ホモログ(IFN-λ mRNAの選択的スプライシングによって生じうる異性体型、多型、対立遺伝子型を含む)への言及、ならびに二量体、多量体および融合タンパク質として存在する型への言及を包含すると理解すべきである。
【0051】
本発明を何か一つの理論または作用様式に限定するわけではないが、IFN-λ遺伝子は、好ましくは、7番染色体上の5つのエキソン領域を含み、これは、21kDaの分子量を持つ186アミノ酸ポリペプチドをコードし、HuIFNλIIに対してヌクレオチドレベルで36%の同一性しか示さない。IFN-λ遺伝子の発現産物は、好ましくは、上に述べたとおり、抗ウイルス活性および免疫賦活活性を示す。
【0052】
好ましい実施形態では、前記III型インターフェロンポリペプチドがニワトリIFN-λ(ChIFNλ)ポリペプチドもしくはそれを含む融合分子またはその機能的フラグメント、誘導体もしくは鳥類ホモログである。
【0053】
この好ましい実施形態によれば、ニワトリIFN-λポリペプチドまたはその機能的フラグメント、鳥類ホモログもしくは誘導体をコードする核酸分子またはその機能的フラグメントもしくは誘導体、または、ニワトリIFN-λポリペプチドまたはその機能的フラグメント、鳥類ホモログもしくは誘導体をコードする核酸分子に相補的な核酸分子またはその機能的フラグメントもしくは誘導体が提供される。
【0054】
本発明のさらにもう一つの態様は、次に挙げるものからなるリストより選択される単離核酸を対象とする:
(i)実質的に配列番号2もしくは4に記載されているアミノ酸配列またはその機能的誘導体、フラグメントもしくは鳥類ホモログ、または配列番号2もしくは4に対し、その配列の全長にわたって、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を持つアミノ酸配列、をコードする、または、をコードする配列に相補的な、ヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子またはその機能的フラグメント、誘導体もしくは鳥類ホモログ、または低ストリンジェンシー条件下で前記核酸分子にハイブリダイズする能力を持つ核酸配列を含む、単離核酸分子またはその機能的フラグメント、誘導体もしくは鳥類ホモログ;
(ii)あるヌクレオチド配列またはその配列に相補的なヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子であって、前記ヌクレオチド配列が、実質的に配列番号1もしくは3に記載されているとおりであるか、その配列の全長にわたって少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を持つヌクレオチド配列であるか、低ストリンジェンシー条件下で配列番号1もしくは3またはその相補型にハイブリダイズする能力を持つヌクレオチド配列であるもの;
(iii)配列番号1または3に記載のヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子またはその機能的誘導体、フラグメントもしくは鳥類ホモログ、または前記分子の機能的フラグメント。
【0055】
本発明は、上に詳述したcDNAヌクレオチド配列のゲノムDNA型に及ぶと理解すべきである。この目的のために、配列番号1はシグナルペプチドをコードする配列を含むChIFNλ cDNAに相当する。配列番号3は成熟タンパク質(すなわちシグナル配列を持たないタンパク質)のChIFNλ cDNAオープンリーディングフレームをコードする配列に相当する。配列番号2はシグナル配列を含むChIFNλタンパク質に相当し、配列番号4はシグナル配列を含まないChIFNλタンパク質に相当する。
【0056】
本明細書におけるChIFNλのゲノム型およびcDNA型への言及は、その最も広い文脈において理解されるべきであり、以下に挙げるものを包含する:
(i)転写および/または翻訳調節配列および/またはコード領域および/または非翻訳配列(すなわち5'-および3'-非翻訳配列)からなる古典的ゲノム遺伝子;
(ii)場合によっては遺伝子の5'-または3'-非翻訳配列を含む、コード領域(すなわちエキソン)に相当するmRNAまたはcDNA;および/または
(iii)前駆体型のタンパク質に付随する配列、例えばシグナル配列と、場合によっては、5'-または3'-非翻訳配列とを、伴うかまたは伴わない、コード領域に相当するmRNAまたはcDNA。
【0057】
上述のようにChIFNλは今まで同定されていなかった鳥類インターフェロン分子に相当する。本発明は、上に記載した核酸分子の発現産物にも及ぶと理解されるべきである。
【0058】
したがって、本発明のもう一つの態様は、鳥類サイトカインポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体であって、前記ポリペプチドがIII型インターフェロンであるものを対象とする。
【0059】
好ましくは、前記鳥類インターフェロンIII型ポリペプチドが鳥類IFN-λポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体である。
【0060】
より好ましくは、前記IFN-λポリペプチドがChIFN-λである。
【0061】
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号2もしくは4に記載の単離タンパク質、または配列番号2もしくは4に対し、その配列の全長にわたって、少なくとも約60%、65%、75%、80%もしくはそれ以上の同一性を持つ単離タンパク質、またはその機能的誘導体、フラグメントもしくは鳥類ホモログを対象とする。
【0062】
「タンパク質」という用語は、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質を包含すると理解されるべきである。これらの用語が本明細書では可換的に使用されることも理解されるべきである。タンパク質は、糖鎖付加型であっても非糖鎖付加型であってもよく、かつ/またはそのタンパク質に融合、連結、結合もしくは他の形で付随した他のさまざまな分子、例えばアミノ酸、脂質、糖質または他のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質を含有してもよい。以下における「タンパク質」への言及は、アミノ酸の配列を含むタンパク質、ならびに他の分子、例えばアミノ酸、脂質、糖質または他のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質が付随しているタンパク質を包含する。
【0063】
好ましくは、前記60%またはそれ以上の類似性は、65%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の類似性を指す。
【0064】
本発明のタンパク質は、好ましくは、単離された形態にある。「単離(された)」とは、少なくとも1つの精製ステップを経たタンパク質を意味し、これは、例えば、分子量、アミノ酸配列または他の好都合な手段で決定した場合に、他の構成成分に対して少なくとも約10%の対象タンパク質、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約30%、さらに好ましくは少なくとも約40〜50%、さらに好ましくは少なくとも約60〜70%、さらに好ましくは80〜90%またはそれ以上の対象タンパク質を含む組成によって、都合よく定義される。本発明のタンパク質は、好ましい一実施形態では、生物学的に純粋であるとみなすこともできる。
【0065】
本明細書で使用する場合、本願のタンパク質および核酸分子の両方に関して、「単離(された)」という用語は、その物質が、その元の環境(例えばそれが天然物であるなら自然環境)から取り出されることを意味する。例えば、生きている動物中に存在する天然のポリヌクレオチドまたはタンパク質は単離されていないが、同じポリヌクレオチドまたはタンパク質でも、自然系において共存する物質の一部または全部から分離されているものは、単離されている。そのようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部であるかもしれないし、かつ/またはそのようなポリヌクレオチドもしくはタンパク質は組成物の一部であるかもしれないが、それでもなお、それらは、そのようなベクターまたは組成物がその自然環境の一部ではないという理由で、単離されている。本明細書にいう単離された物質または組成物は「精製された」組成物であることもできる。すなわち、それは絶対的な純粋性を要求するものではなく、相対的な定義であるものとする。ライブラリーから得られる個々の核酸は電気泳動的均一になるまで都合よく精製することができる。他の諸態様において、本発明は、ゲノムDNAから、またはライブラリーもしくは他の環境中の他の配列から、少なくとも1、2、3、4、5桁またはそれ以上、精製された核酸を提供する。
【0066】
本発明のタンパク質は、自然供給源から単離されるか、合成物であるか、または組換え生産されたポリペプチドであることができる。ペプチドおよびタンパク質は、インビトロまたはインビボで組換え発現させることができる。本発明のタンパク質は、当技術分野で知られる任意の方法を使って、製造および単離することができる。本発明のタンパク質は、当技術分野において周知の化学的方法を使って、全部または一部を合成することもできる。例えば、Caruthersら (1980) Nucleic Acids Res. Symp. Ser. 215-223;Hornら (1980) Nucleic Acids Res. Symp. Ser. 225-232;Banga, A.K.「Therapeutic Peptides and Proteins, Formulation, Processing and Delivery Systems」(1995) Technomic Publishing Co.(ペンシルベニア州ランカスター)を参照されたい。例えばペプチド合成はさまざまな固相技法を使って行なうことができ(例えばRobergeら (1995) Science 269:202;Merrifield (1997) Methods Enzymol. 289:3-13を参照されたい)、例えばABI 431Aペプチド合成装置(Perkin Elmer)を製造者によって提供される指示に従って使用することにより、自動合成を達成することもできる。
【0067】
本発明のタンパク質は、例えば組換え合成されたペプチドをより容易に単離するため、抗体および抗体発現B細胞を同定し単離するためなどの目的で、1つ以上の追加ドメインをそこに連結させた融合タンパク質として、合成し、発現させることもできる。検出および精製を容易にするドメインには、例えば、固定化金属での精製を可能にするポリヒスチジントラックおよびヒスチジン-トリプトファンモジュールなどの金属キレートペプチド、固定化免疫グロブリンでの精製を可能にするプロテインAドメイン、およびFLAGSエクテンション/アフィニティー精製システム(Immunex Corp、ワシントン州シアトル)で利用されるドメインなどがある。精製が容易になるように、例えば第Xa因子またはエンテロキナーゼなどの切断可能なリンカー配列(Invitrogen、カリフォルニア州サンディエゴ)を、精製ドメインとモチーフ含有タンパク質の間に含めること。例えば発現ベクターは、6個のヒスチジン残基とそれに続くチオレドキシンおよびエンテロキナーゼ切断部位に連結されたエピトープコード核酸配列を含むことができる(例えばWilliamsら (1995) Biochemistry 34:1787-1797;Dobeliら (1998) Protein Expr. Purif. 12:404-14を参照されたい)。ヒスチジン残基は検出および精製を容易にし、一方、エンテロキナーゼ切断部位は、ある領域を融合タンパク質の残りの部分から精製するための手段になる。融合タンパク質をコードするベクターに関係する技術および融合タンパク質の応用は、科学文献および特許文献に詳しく記載されている。例えばKrollら (1993) DNA Cell. Biol., 12:441-53を参照されたい。
【0068】
本発明は組換えタンパク質を包含するが、本タンパク質の合成においては、化学合成技法も考えられる。
【0069】
本発明の化学合成ポリペプチドは、鳥類供給源から単離された分子に基づいて、都合よく合成される。鳥類分子の単離は、クロマトグラフィー分離、例えばCM-セルロースイオン交換クロマトグラフィーと、それに続くセファデックス(例えばG-50カラム)濾過を利用するものなど、任意の適切な手段によって達成することができる。他にも、とりわけHPLC、PAGEなど、多くの技法を利用することができる。
【0070】
好ましくは、本発明の化学合成ポリペプチドは、ニワトリから単離された分子に基づいて、都合よく合成される。
【0071】
本ポリペプチドは、Carpinoら(1991)によって記載されたF-mocケミストリーを使って、固相合成法で合成することができる。ポリペプチドおよびそのフラグメントは、例えば限定するわけではないが、Stewartら(1985)に記載されているt-Bocケミストリーを含む代替ケミストリーによって、または古典的な液相ペプチド合成の方法によって、合成することもできる。
【0072】
本発明のさらにもう一つの態様は、配列番号1または3に記載のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質、または低ストリンジェンシー条件下で配列番号1もしくは3にハイブリダイズする能力を持つ配列に相補的な配列であって、かつ配列番号2もしくは4に記載のアミノ酸配列、または配列番号2もしくは4に対し、その配列の全長にわたって、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%またはそれ以上の同一性を持つアミノ酸配列、をコードする配列、によってコードされるタンパク質を対象とする。
【0073】
本発明では、ニワトリ以外の鳥類供給源、例えば限定するわけではないが、シチメンチョウ、バンタム、ウズラ、ホロホロチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、ハト、カナリア、セキセイインコ、オウムおよびフィンチなどを含むリストから選択される任意の家禽種、飼育鳥または狩猟鳥などに由来する、類縁または相同III型インターフェロン遺伝子またはタンパク質が、明確に考えられる。本発明はさらに胚組織または培養細胞に由来する前記鳥類III型インターフェロン遺伝子にも及ぶ。
【0074】
本明細書における「III型インターフェロン」への言及は、上述の核酸およびタンパク質分子への言及であると理解されるべきである。
【0075】
本明細書にいう「核酸」または「核酸配列」は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、もしくはこれらのいずれかのフラグメント、ゲノム起源もしくは合成起源のDNAもしくはRNA(例えばmRNA、rRNA、tRNA)(これは、一本鎖でも二本鎖でもよく、センス鎖またはアンチセンス鎖を表しうる)、ペプチド核酸(PNA)、または天然起源または合成起源の任意のDNA様もしくはRNA様物質(例えばiRNA、リボ核タンパク質(例えばiRNP)を含む)を指す。この用語は、天然ヌクレオチドの既知類似体を含有する核酸、すなわちオリゴヌクレオチドを包含する。この用語は、合成主鎖を持つ核酸様構造も包含する。例えばMata (1997) Toxicol. Appl. Pharmacol. 144:189-197;Strauss-Soukupら (1997) Biochemistry 36:8692-8698;Samstagら (1996) Antisense Nucleic Acid Drug Dev 6:153-156を参照されたい。
【0076】
この目的のために、本発明は、本明細書に記載する鳥類サイトカイン核酸分子に対するアンチセンス核酸分子に及ぶと理解されるべきである。
【0077】
「発現産物」には、RNA分子、例えばmRNA転写物、ならびにタンパク質が含まれる。いくつかの遺伝子は非タンパク質コード遺伝子であり、mRNAまたは他のRNA分子を産生し、RNA:DNA、RNA:RNAまたはRNA:タンパク質相互作用による調節に関与する。RNA(例えばmRNA)は、直接的に、またはRNAiなどの他の分子の誘導を介して、またはスプライシング事象による生成物(例えばエキソンまたはイントロン)を介して作用しうる。短鎖干渉RNA(si-RNA)も本発明に包含される。他の遺伝子はmRNA転写物をコードし、それが次にタンパク質に翻訳される。タンパク質にはポリペプチドが含まれる。したがって、差次的に発現される核酸分子は、mRNAだけをコードする場合もあるし、それに加えてタンパク質をコードする場合もある。mRNAとタンパク質はどちらも「発現産物」の一形態である。
【0078】
本発明のさらにもう一つの態様は、細胞中で組換え鳥類III型インターフェロン分子を生産する方法であって、前記鳥類III型インターフェロンをコードする核酸分子、または、前記鳥類III型インターフェロンをコードする核酸分子に相補的な核酸分子を、前記細胞中で発現させることを含む方法を提供する。
【0079】
本発明の核酸分子は、好ましくは、単離された形態にあるか、または発現ベクターなどのベクターにライゲートされる。「単離(された)」とは、少なくとも1つの精製ステップを経た核酸分子を意味し、これは例えば、分子量、アミノ酸配列または他の好都合な手段で決定した場合に、他の構成成分に対して少なくとも約10%の対象核酸分子、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約30%、さらに好ましくは少なくとも約40〜50%、さらに好ましくは少なくとも約60〜70%、さらに好ましくは80〜90%またはそれ以上の対象核酸分子を含む組成によって、都合よく定義される。本発明の核酸分子は、好ましい一実施形態では、生物学的に純粋であるとみなすこともできる。
【0080】
本発明の核酸は、例えばcDNAライブラリーのクローニングおよび発現、PCRによるゲノムDNAまたはメッセージの増幅などによって、作製し、単離し、かつ/または操作することができる。本発明の方法を実施する際には、本明細書で述べるように、テンプレート核酸を操作することによって、相同遺伝子を改変することができる。本発明は、科学文献および特許文献に詳しく記載されている当技術分野で知られる任意の方法またはプロトコールまたは装置と組み合わせて、実施することができる。
【0081】
本発明を実施するために使用される核酸は、RNA、iRNA、アンチセンス核酸、cDNA、ゲノムDNA、ベクター、ウイルスまたはそのハイブリッドのいずれであっても、さまざまな供給源から単離し、遺伝子操作し、増幅し、かつ/または組換え的に発現/生成させることができる。これらの核酸から生成される組換えポリペプチドは、個別に単離またはクローニングして、所望の活性について試験することができる。細菌、哺乳動物、酵母、昆虫または植物細胞発現系を含む、任意の組換え発現系を使用することができる。
【0082】
あるいは、これらの核酸を、例えばAdams (1983) J. Am. Chem. Soc. 105:661;Belousovら (1997) 前掲;Frenkelら (1995) 前掲;Blommersら (1994) 前掲;Narangら (1979) Meth. Enzymol. 68:90;Brownら (1979) Meth. Enzymol. 68:109;Beaucage (1981) Tetra. Lett. 22:1859;米国特許第4,458,066号で述べられているように、周知の化学合成技法によって、インビトロで合成することもできる。
【0083】
本発明は、本発明の配列を含む、例えば本発明の例示的配列の部分配列(subsequence)を含む、オリゴヌクレオチドを提供する。オリゴヌクレオチドには、例えば、一本鎖ポリデオキシヌクレオチドまたは2本の相補的ポリデオキシヌクレオチド鎖を含めることができ、これらは化学的に合成されうる。
【0084】
例えばサブクローニング、プローブの標識(例えばKlenowポリメラーゼ、ニックトランスレーション、増幅を用いるランダムプライマー標識)、配列決定、ハイブリダイゼーションなど、核酸を操作するための技法は、科学文献および特許文献に詳しく記載されている。例えば、Sambrook編「Molecular Cloning: a Laboratory Manual」(第2版)第1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory, (1989);「Current Protocols in Molecular Biology」Ausubel編、John Wiley & Sons, Inc.、ニューヨーク(1997);「Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology: Hybridization With Nucleic Acid Probes, Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation」Tijssen編、Elsevier、ニューヨーク(1993)を参照されたい。
【0085】
核酸、ベクター、キャプシド、ポリペプチドなどは、当業者によく知られているいくつかの一般的手段のいずれによっても、解析し、定量することができる。これらの手段には、例えば分析生化学的方法、例えばNMR、分光測光法、ラジオグラフィー、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、およびハイパーディフュージョン(hyperdiffusion)クロマトグラフィー、さまざまな免疫学的方法、例えば液体またはゲル沈降反応、免疫拡散、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、サザン解析、ノーザン解析、ドットブロット解析、ゲル電気泳動(例えばSDS-PAGE)、核酸またはターゲットまたはシグナル増幅法、放射標識法、シンチレーション計数、およびアフィニティクロマトグラフィーが含まれる。
【0086】
本発明を実施するために使用される核酸の取得および操作は、ゲノム試料からクローニングし、所望であれば、例えばゲノムクローンまたはcDNAクローンから単離されまたは増幅されたインサートをスクリーニングし、再クローニングすることによって、行なうことができる。本発明の方法で使用される核酸の供給源には、例えば哺乳動物人工染色体(MAC)(例えば米国特許第5,721,118号;同第6,025,155号を参照されたい);酵母人工染色体(YAC);細菌人工染色体(BAC);P1人工染色体(例えばWoonら (1998) Genomics 50:306-316を参照されたい);P1由来ベクター(PAC)(例えばKern (1997) Biotechniques 23:120-124を参照されたい);コスミド、組換えウイルス、ファージまたはプラスミドに含有されるゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーが含まれる。
【0087】
本発明の核酸はプロモーターに作動的に連結することができる。プロモーターは、核酸の転写を指令する核酸制御配列のモチーフまたはアレイであることができる。プロモーターは、転写の開始部位近くの必要な核酸配列、例えばポリメラーゼII型プロモーターの場合であれば、TATAエレメントを含むことができる。プロモーターは、場合によっては、転写開始部位から数千塩基対も離れて位置する場合がある遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントも含む。「構成的」プロモーターは、大半の環境および発生段階条件下で活性なプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、環境または発生段階による調節を受けるプロモーターである。「組織特異的」プロモーターは、ある生物の一定の組織タイプでは活性であるが、同じ生物由来の他の組織タイプでは活性でない。「作動可能に連結」という用語は、核酸発現制御配列(例えばプロモーター、転写因子結合部位のアレイ)と第2の核酸配列との間の機能的な連結であって、発現制御配列が第2配列に相当する核酸の転写を指令するような連結を指す。
【0088】
本発明は、本発明の核酸、例えば本発明のタンパク質をコードする配列を含む、発現ベクターおよびクローニングビークルを提供する。本発明の発現ベクターおよびクローニングビークルは、ウイルス粒子、バキュロウイルス、ファージ、プラスミド、ファージミド、コスミド、フォスミド、細菌人工染色体、ウイルスDNA(例えばワクシニア、アデノウイルス、家禽ポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、およびSV40の誘導体)、P1系人工染色体、酵母プラスミド、酵母人工染色体、および関心対象である具体的宿主(例えばバチルス、アスペルギルス(Aspergillus)および酵母)に特異的な他の任意のベクターを含むことができる。本発明のベクターは、染色体DNA配列、非染色体DNA配列および合成DNA配列を含むことができる。多数の適切なベクターが当業者には知られており、市販されている。
【0089】
本発明の核酸は、所望であれば、さまざまなベクターのどれにでも、定型的な分子学的方法を使って、クローニングすることができる。インビトロ増幅した核酸をクローニングするための方法は、例えば米国特許第5,426,039号に記載されている。増幅された配列のクローニングを容易にするために、制限酵素部位をPCRプライマー対に「内蔵(built into)」させることができる。
【0090】
本発明は、本発明のポリペプチドおよびペプチドをコードする発現ベクターのライブラリーを提供する。これらの核酸は、科学文献および特許文献に詳しく記載されているさまざまな従来の技法によって、ゲノム内に導入するか、細胞の細胞質内または核内に導入して、発現させることができる。例えばRobertsら (1987) Nature 328:731;Schneider (1995) Protein Expr. Purif. 6435:10;Sambrook、TijssenまたはAusubelを参照されたい。ベクターは、自然供給源から単離するか、ATCCまたはGenBankライブラリーなどの供給源から入手するか、合成法または組換え法によって製造することができる。例えば本発明の核酸は、細胞中に安定にまたは一過性(例えばエピソーム発現系)に発現される発現カセット、ベクターまたはウイルスに入れて、発現させることができる。形質転換された細胞および配列に選択可能な表現型を付与するために、発現カセットおよびベクターには、選択マーカーを組み入れることができる。例えば選択マーカーは、宿主ゲノムへの組み込みが要求されないように、エピソームとしての維持および複製をコードすることができる。
【0091】
ある態様では、本発明のペプチドまたはポリペプチドのインサイチュー(in situ)発現のために、本発明の核酸がインビボ投与される。核酸は「ネイキッド(naked)DNA」として投与するか(例えば米国特許第5,580,859号参照)、または発現ベクター、例えば組換えウイルスの形態で投与することができる。核酸は、後述のとおり、腫瘍周囲または腫瘍内を含む任意の経路で投与することができる。インビボ投与されるベクターは、組換え改変エンベロープまたは非エンベロープDNAおよびRNAウイルス、好ましくはバキュロウイルス科、パルボウイルス科、ピコルノウイルス科(picornoviridiae)、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、アデノウイルス科、またはピコルナウイルス科(picornnaviridiae)から選択されるものを含む、ウイルスゲノムに由来することができる。親ベクター特性のそれぞれの有利な長所を活用するキメラベクターも使用することができる(例えばFengら (1997) Nature Biotechnology 15:866-870参照)。そのようなウイルスゲノムは、組換えDNA技法により、本発明の核酸を含むように改変することができ、さらに、複製欠損性であるか、条件付きで複製するか、または複製能を持つように操作することもできる。もう一つの態様では、ベクターがアデノウイルス(例えばヒトアデノウイルスゲノム由来の複製不能ベクター、例えば米国特許第6,096,718号;同第6,110,458号;同第6,113,913号;同第5,631,236号参照);アデノ随伴ウイルスゲノムおよびレトロウイルスゲノムに由来する。レトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびそれらの組合せに基づくものを含めることができる。例えば米国特許第6,117,681号;同第6,107,478号;同第5,658,775号;同第5,449,614号;BuchscherおよびPanganiban (1992) J. Virol. 66:2731-2739;Johannら (1992) J. Virol. 66:1635-1640を参照されたい。例えば核酸およびペプチドのインビトロ生産や、インビボおよびエクスビボ遺伝子治療法では、アデノ随伴ウイルス(AAV)系ベクターを使って、ターゲット核酸を細胞に形質導入することができる。例えば米国特許第6,110,456号;同第5,474,935号;Okadaら (1996) Gene Ther. 3:957-964を参照されたい。
【0092】
本明細書で使用する「発現カセット」という用語は、そのような配列と適合する宿主において構造遺伝子の発現に影響を及ぼす能力を持つヌクレオチド配列(すなわち本発明のポリペプチドなどのタンパク質コード配列)を指す。発現カセットは、少なくとも、ポリペプチドコード配列に作動可能に連結されたプロモータを、場合によっては、他の配列、例えば転写終結シグナルと共に含む。発現を達成するのに必要なまたは役立つ追加因子、例えばエンハンサーなども使用することができる。本明細書にいう「作動可能に連結」とは、あるプロモーターがあるDNA配列の転写を媒介するように、そのプロモーターがそのDNA配列の上流に連結されることを指す。したがって発現カセットには、プラスミド、発現ベクター、組換えウイルス、任意の形態の組換え「ネイキッドDNA」ベクターなども含まれる。
【0093】
「ベクター」は、細胞を感染、トランスフェクト、または一過性もしくは永続的に形質導入することができる核酸を含む。ベクターがネイキッド核酸、またはタンパク質もしくは脂質との複合体を形成した核酸でありうることは、理解されるだろう。ベクターは、場合によっては、ウイルスまたは細菌の核酸および/またはタンパク質、および/または膜(例えば細胞膜、ウイルス脂質エンベロープなど)を含む。ベクターには、例えばそこにDNAのフラグメントを取付けて複製されるようにすることができるレプリコン(例えばRNAレプリコン、バクテリオファージ)が含まれるが、これらに限るわけではない。したがってベクターには、例えばRNA、自律的自己複製環状または直線状DNAまたはRNA(例えばプラスミド、ウイルスなど、例えば米国特許第5,217,879号参照)などが含まれ、発現プラスミドと非発現プラスミドの両方が含まれる。組換え微生物または細胞培養物が「発現ベクター」を保因する(hosting)すると記載した場合、これには、染色体外環状および線状DNAと、宿主染色体中に組み込まれたDNAの両方が含まれる。ベクターが宿主細胞によって維持されている場合、そのベクターは、自律構造として有糸分裂時に細胞によって安定に複製されるか、または宿主のゲノム内に組み込まれる。
【0094】
特定の組織または指定の条件下で最適な発現が起こるように、核酸分子は、上で議論したようなプロモーター配列の制御下に作動可能に置くことができる。この目的に適した細胞およびウイルス粒子も上で議論した。高レベルな発現をもたらす、細胞またはウイルス粒子のためのプロモーター配列および培養条件は、当業者には周知であるだろう。
【0095】
本発明は、本発明の核酸配列(例えば本発明のポリペプチドをコードする配列、または本発明のベクター)を含む形質転換細胞も提供する。宿主細胞は、当業者によく知られている宿主細胞、例えば原核細胞、真核細胞、例えば細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、または植物細胞などのいずれであってもよい。例示的細菌細胞には、大腸菌、ストレプトミセス(Streptomyces)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ならびにシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属(Streptomyces)およびブドウ球菌属(Staphylococcus)に属するさまざまな種が含まれる。例示的昆虫細胞には、ショウジョウバエ(Drosophila)S2およびスポドプテラ(Spodoptera)Sf9が含まれる。例示的動物細胞には、CHO、COSもしくはボーズ(Bowes)黒色腫、または任意のマウスもしくはヒト細胞株が含まれる。適当な宿主の選択は当業者であれば可能である。
【0096】
ベクターは、形質転換、トランスフェクション、形質導入、ウイルス感染、遺伝子銃、またはTi媒介遺伝子導入を含むさまざまな技法のいずれかを使って、宿主細胞中に導入することができる。具体的方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションなどがある。
【0097】
工学的に操作された宿主細胞は、プロモーターを活性化し、形質転換体を選択し、または本発明の遺伝子を増幅するのに適した改変を加えた通常の栄養培地で培養することができる。適切な宿主株を形質転換し、その宿主株を適当な細胞密度まで成長させた後、選択したプロモーターを、適当な手段(例えば温度シフトまたは化学的誘導)によって誘導することができ、細胞に所望のポリペプチドまたはそのフラグメントを産生させるために、細胞をさらにある期間にわたって培養することができる。
【0098】
細胞は、遠心分離によって収集し、物理的または化学的手段によって破壊することができ、その結果得られた粗抽出物は、さらなる精製のためにとっておく。タンパク質の発現に使用した微生物細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破砕、または細胞溶解剤の使用を含む任意の好都合な方法で破砕することができる。そのような方法は当業者には周知である。発現されたポリペプチドまたはフラグメントは、硫酸アンモニウム沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む方法によって、組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。ポリペプチドの立体配置を完成させる際に、必要に応じて、タンパク質リフォールディングステップを使用することができる。所望であれば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を最終精製ステップに使用することができる。
【0099】
したがって本発明のさらにもう一つの態様は、内在性もしくは組換え鳥類III型インターフェロンまたはその機能的フラグメント、誘導体もしくはホモログを発現させる単離された細胞を提供する。
【0100】
最も好ましい実施形態では、本発明のこの態様による鳥類III型インターフェロン分子が鳥類IFN-λ、特にChIFN-λである。
【0101】
あるいは、単離細胞は、遺伝子コンストラクト(例えば上述のもの)によってIII型インターフェロン分子を発現させる形質転換真核細胞であってもよい。細胞中に遺伝子コンストラクトを導入するための手段は本明細書に記載されており、当業者には周知であるだろう。
【0102】
内在性または組換え鳥類III型インターフェロンを発現させる細胞を単離するための手段も本明細書において議論したし、当業者には周知であるだろう。
【0103】
本明細書で使用する「類似性(similarity)」および「同一性(identity)」という用語には、ヌクレオチドレベルまたはアミノ酸レベルでの、比較される配列間の厳密な同一性が含まれる。ヌクレオチドレベルで非同一性が存在する場合、「類似性」には、異なるアミノ酸ではあるが、構造レベル、機能レベル、生化学レベルおよび/またはコンフォメーションレベルで互いに関係するアミノ酸をコードしうる配列間の相違が含まれる。特に好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列比較が、類似性のレベルではなく同一性のレベルでなされる。
【0104】
2つ以上のポリヌクレオチド間の配列関係を説明するときに使用する用語には、「基準配列(reference sequence)」「比較ウィンドウ(comparison window)」「配列類似性(sequence similarity)」「配列同一性(sequence identity)」「配列類似性の百分率」「配列同一性の百分率」「実質的に類似」および「実質的に同一」が含まれる。「基準配列」は、長さが、少なくとも12個、ただし多くの場合、15〜18個、そして多くの場合、少なくとも25個以上、例えば30個のモノマー単位である。2つのポリヌクレオチドは互いに(1)それら2つのポリヌクレオチド間で類似している配列(すなわち全ポリヌクレオチド配列の一部分だけ)と(2)それら2つのポリヌクレオチド間で相違する配列とを含みうるので、2つ(またはそれ以上の)ポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、配列類似性を持つ局所的領域を同定し比較するために、それら2つのポリヌクレオチドの配列を「比較ウィンドウ」の全体にわたって比較することによって行なわれる。「比較ウィンドウ」とは、基準配列と比較される、典型的には12個の連続残基からなる、概念的セグメントを指す。比較ウィンドウは、2つの配列の最適なアラインメントのために、基準配列と比較して約20%以下の付加または欠失(すなわちギャップ)を含みうる。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適なアラインメントは、アルゴリズムのコンピュータ実装(Genetics Computer Group(米国ウィスコンシン州マディソン、サイエンス・ドライブ575)のWisconsin Genetics Software Package Release 7.0のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または目視検査によって、行なうことができ、選択されたさまざまな方法のいずれかによって最適アラインメント(すなわち比較ウィンドウの全体にわたって最も高いホモロジー百分率をもたらすもの)が作成される。例えばAltschulら(Nucl. Acids Res. 25: 3389, 1997)に開示されているBLASTプログラムファミリーも、参照することができる。配列解析に関する詳細な議論は、Ausubelら(「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley & Sons Inc、Chapter 15、1994-1998)のUnit 19.3に見いだすことができる。例えば限定するわけではないが、PILEUP、CLUSTALW、SEQUENCHERまたはVectorNTIなどといった他のさまざまなアルゴリズムも、ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を比較するために使用することができる。
【0105】
本明細書で使用する「配列類似性」および「配列同一性」という用語は、比較のウィンドウ全体にわたってヌクレオチド単位で(on a nucleotide-by-nucleotide basis)配列が同一であるか、機能的もしくは構造的に類似している程度を指す。したがって、例えば「配列同一性の百分率」は、比較のウィンドウ全体にわたって最適に整列させた2つの配列を比較し、同一核酸塩基(例えばA、T、C、G、I)が両方の配列に存在する位置の数を決定して一致位置数とし、一致位置数を比較のウィンドウ内の総位置数(すなわちウィンドウサイズ)で割り、その結果に100を掛けて配列同一性の百分率を得ることによって、算出される。本発明に関して「配列同一性」は、DNASISコンピュータプログラム(ウィンドウズ用バージョン2.5;Hitachi Software engineering Co., Ltd.(米国カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)から入手可能)により、このソフトウェアに添付されているレファレンスマニュアルで使用されている標準的デフォルト値を使って算出される「一致百分率」を意味すると理解されるだろう。同様のコメントが配列類似性にも当てはまる。
【0106】
上に詳述したように、そしてまた、より具体的に述べると、タンパク質および/または核酸配列の同一性(ホモロジー)は、当技術分野で知られるさまざまな配列比較アルゴリズムおよびプログラムのいずれかを使って、評価することができる。配列同一性の程度(ホモロジー)は、任意のコンピュータプログラムおよび関連パラメータを使って、例えば本明細書に記載するもの(BLAST2.2.2.またはFASTAバージョン3.0t78など)をデフォルトパラメータで使って、決定することができる。例えば配列比較アルゴリズムはBLASTバージョンアルゴリズムである。ある態様では、核酸配列同一性解析に関して、BLASTヌクレオチドパラメータが、word size=11、expect=10、DUSTによる低複雑度配列のフィルタリング、cost to open gap=5、cost to extend gap=2、penalty for mismatch=-3、reward for match=1、Dropoff(X)for BLAST extensions in bits=20、final X dropoff value for gapped alignment=50を含み、他のすべてのオプションはデフォルト値に設定される。ある態様では、ポリペプチド配列同一性解析に関して、配列比較アルゴリズムがBLASTバージョンアルゴリズムであり、その場合、例えばBLASTヌクレオチドパラメータは、word size=3、expect=10、SEGによる低複雑度配列のフィルタリング、cost to open gap=11、cost to extend gap=1、類似性行列Blosum62、Dropoff (X) for blast extensions in bits=7、X dropoff value for gapped alignment (in bits)=15、final X dropoff value for gapped alignment=25を含む。
【0107】
例示的アルゴリズムおよびプログラムには、例えばTBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTA、およびCLUSTALWが含まれるが、これらに限るわけではない(PearsonおよびLipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85(8):2444-2448, 1988;Altschulら, J. Mol. Biol. 215(3):403-410, 1990;Thompsonら, Nucleic Acids Res. 22(2):4673-4680, 1994;Higginsら, Methods Enzymol. 266:383-402, 1996;Altschulら, Nature Genetics 3:266-272, 1993)。ホモロジーまたは同一性は、配列解析ソフトウェア(例えばウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター(53705ウィスコンシン州マディソン、ユニバーシティ・アべニュー1710)、Genetics Computer Groupの配列 Analysis Software Package)を使って測定することができる。そのようなソフトウェアは、さまざまな欠失、置換および他の改変に対してホモロジーの度合を割り当てることにより、類似する配列を対応させる。
【0108】
BLAST、BLAST2.0およびBLAST2.2.2アルゴリズムも、本発明を実施するために使用することができる。それらは、例えば前掲のAltschulら(1990)に記載されている。BLAST解析を行なうためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターを介して、公に利用することができる。このアルゴリズムでは、まず、クエリ配列中の長さWの短いワードであって、データベース配列中の同じ長さのワードと整列させた場合に、一致するか、または何らかの正の値の閾スコアTを満足するものを同定することによって、高スコア配列ペア(high scoring sequence pairs;HSP)を同定する。Tを隣接ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)という(Altschulら(1990)前掲)。これらの初期隣接ワードヒットは、それらを含有するさらに長いHSPを見いだすための検索を開始するためのシードになる。次に、それらのワードヒットを各配列に沿って、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、両方向に延長する。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合は、パラメータM(一致残基対に対する得点、常に>0)を使って計算される。アミノ酸配列の場合は、スコアリング行列を使って、累積スコアを算出する。各方向へのワードヒットの延長は、累積アラインメントスコアが、その最大達成値から量Xだけ低下した場合、または1つ以上の負スコア残基アラインメントの累積によって、累積スコアが0以下になった場合、またはどちらかの配列の末端に到達した場合に停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、アラインメントの感度および速さを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)では、デフォルト値として、wordlength(W)11、expectation(E)10、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合は、BLASTPプログラムが、デフォルト値として、wordlength 3、expectation(E)10、およびBLOSUM62スコア行列(HenikoffおよびHenikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915参照)、alignments(B)50、expectation(E)10、M=5、N=-4、および両鎖の比較を使用する。BLASTアルゴリズムは2つの配列間の類似性の統計解析も行なう(例えばKarlinおよびAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873参照)。BLASTアルゴリズムが与える類似性の尺度の一つは、最小和確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こる確率の指標を与える。例えば試験核酸と基準核酸との比較における最低和確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満であるなら、その核酸は基準配列に類似しているとみなされる。ある態様では、タンパク質および核酸配列ホモロジーが、Basic Local Alignment Search Tool(「BLAST」)を使って評価される。例えば、次の作業を行なうために、5つの特定BLASTプログラムを使用することができる:(1)BLASTPおよびBLAST3はアミノ酸クエリ配列をタンパク質配列データベースと比較する;(2)BLASTNはヌクレオチドクエリ配列をヌクレオチド配列データベースと比較する;
(3)BLASTXは、クエリヌクレオチド配列(両鎖)の6フレーム概念翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較する;(4)TBLASTNは、クエリタンパク質配列を、6つの読み枠すべてで翻訳されたヌクレオチド配列データベースと比較する;そして(5)TBLASTXはヌクレオチドクエリ配列の6つのフレームの翻訳物を、ヌクレオチド配列データベースの6フレーム翻訳物と比較する。BLASTプログラムは、クエリアミノ酸または核酸配列と試験配列(好ましくはタンパク質または核酸配列データベースから得られるもの)の間に類似するセグメント(これを本明細書では「高スコアセグメントペア(high-scoring segment pairs)」という)を同定することによって、相同配列を同定する。高スコアセグメントペアは、好ましくは、スコア行列を使って同定(すなわち整列)され、当技術分野では多くのスコア行列が知られている。好ましくは、使用されるスコア行列は、BLOSUM62行列である(Gonnetら, Science 256:1443-1445, 1992;HenikoffおよびHenikoff, Proteins 17:49-61, 1993)。好ましさでは劣るが、PAM行列またはPAM250行列も使用することができる(例えばSchwartzおよびDayhoff編、1978「Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure」Washington: National Biomedical Research Foundation参照)。
【0109】
本発明のある態様では、ある核酸が、本発明の範囲に包含されるために必要な配列同一性を持つかどうかを決定するために、NCBI BLAST 2.2.2プログラムをblastのデフォルトオプションで使用する。BLAST 2.2.2プログラムには、約38の設定オプションがある。本発明のこの例示的態様では、デフォルトフィルタリング設定を除いて(その代わりに、フィルタリングを無効にする「-F F」設定を使用する)、すべてのデフォルト値を使用する(すなわちフィルタリングがOFFに設定される以外はすべてのパラメータをデフォルトに設定する)。デフォルトフィルタリングの使用は、しばしば、配列の長さが短いために、Karlin-Altschul違反(violation)を引き起こす。
【0110】
本発明のこの例示的態様で使用されるデフォルト値には、
「Filter for low complexity:ON
Word Size:3
Matrix:Blosum62
Gap Costs:Existence:11
Extension:1」
が含まれる。
【0111】
他のデフォルト設定は、filter for low complexity OFF、タンパク質に関してword size=3、BLOSUM62行列、gap existence penalty=-11およびgap extension penalty=-1である。
【0112】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列に関して「ホモロジー」および「同一性」という用語は、同じであるか、いくつかの配列比較アルゴリズムを使って測定して、または手作業による整列および目視検査で測定して、比較ウィンドウまたは指定された領域の全体にわたって最大限の一致が得られるように比較し整列させた場合に、同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドが指定した百分率になる、2つ以上の配列または部分配列を指す。配列比較のために、ある配列を基準配列とし、試験配列をそれと比較することができる。配列比較アルゴリズムを使用する場合は、試験配列と基準配列をコンピュータに入力し、必要であれば、部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを使用するか、代替パラメータを指定することができる。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、基準配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを算出する。
【0113】
本明細書にいう「比較ウィンドウ」には、いずれか一つの連続残基数のセグメントへの言及が含まれる。例えば、本発明のもう一つの態様では、本発明の例示的ポリペプチドまたは核酸配列の20残基から完全長まで任意の長さの連続残基が、同じ連続位置数の基準配列と、それら2つの配列を最適に整列させてから比較される。もしも基準配列が本発明の例示的ポリペプチドまたは核酸配列に対して必要な配列同一性を持つならば、その配列は本発明の範囲に包含される。
【0114】
2つの核酸またはポリペプチドに関して「実質的に同一」という表現は、以下に詳述するような任意の既知配列比較アルゴリズムの一つを使って測定して、または目視検査で測定して、最大限一致するように比較し整列させた場合に、例えば少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性またはヌクレオチドもしくはアミノ酸残基(配列)同一性を持つ、2つ以上の配列を指すことができる。もう一つの態様において、本発明は、本発明の例示的配列に対して実質的同一性を持つ核酸およびポリペプチド配列を提供する。本発明の核酸配列は、ポリペプチドコード領域の全長にわたって実質的に同一であることができる。
【0115】
上記のプログラムを使って検出されうるモチーフには、ロイシンジッパー、ヘリックス-ターン-ヘリックスモチーフ、糖鎖付加部位、ユビキチン化部位、アルファヘリックス、およびベータシートをコードする配列、コードされたタンパク質の分泌を指令するシグナルペプチドをコードするシグナル配列、転写調節に関与する配列、例えばホメオボックス、酸性ストレッチ(acidic stretch)、酵素活性部位、基質結合部位、および酵素切断部位が含まれる。
【0116】
配列同一性、構造ホモロジー、モチーフなどをインシリコ(in silico)で決定し同定するために、コンピュータで読み取り、アクセスすることができる任意の媒体に、本発明の配列を格納し、記録し、操作することができる。したがって本発明は、本発明の核酸およびポリペプチド配列が記録または格納されている、コンピュータ、コンピュータシステム、コンピュータ可読媒体、コンピュータプログラム製品などを提供する。本明細書で使用する「記録される」および「格納される」という単語は、コンピュータ媒体に情報を格納するためのプロセスを指す。当業者は、本発明の核酸および/またはポリペプチド配列の1つ以上を含む製品を作製するために、コンピュータ可読媒体に情報を記録するための任意の既知の方法を、容易に採用することができる。
【0117】
本発明のもう一つの態様は、本発明の少なくとも1つの核酸および/またはポリペプチド配列が記録されているコンピュータ可読媒体である。コンピュータ可読媒体には、磁気可読媒体、光学的可読媒体、電子的可読媒体および磁気/光媒体が含まれる。例えばコンピュータ可読媒体は、ハードディスク、フロッピィディスク、磁気テープ、CD-ROM、デジタル汎用ディスク(Digital Versatile Disk;DVD)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、またはリードオンリーメモリ(ROM)ならびに当業者に知られる他のタイプの他の媒体でありうる。
【0118】
本明細書において「コンピュータ」「コンピュータプログラム」および「プロセッサ」という用語は、その最も広い一般的文脈において使用され、そのようなデバイスをすべて包含する。
【0119】
本発明は、ストリンジェントな条件下で本発明の例示的配列にハイブリダイズする単離核酸または組換え核酸を提供する。別の態様では、ストリンジェントな条件が、当技術分野において知られ、本明細書でも説明する、高ストリンジェント条件、中ストリンジェント条件または低ストリンジェント条件である。これらの方法は、本発明の核酸を単離するために使用することができる。
【0120】
別の態様において、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするというその能力によって定義される本発明の核酸は、本発明の核酸の約5残基〜完全長であることができる。例えばそれらは、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、55、60、65、70、75、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800残基またはそれ以上の長さであるか、遺伝子またはコード配列(例えばcDNA)の全長であることができる。完全長より短い核酸も含まれる。これらの核酸は、例えばハイブリダイゼーションプローブ、ラベリングプローブ、PCRオリゴヌクレオチドプローブ、iRNA、アンチセンスまたは抗体結合ペプチド(エピトープ)をコードする配列、モチーフ、活性部位などとして役立ちうる。
【0121】
「ハイブリダイゼーション」とは、核酸鎖が塩基対形成を介して相補鎖と結合するプロセスを指す。ハイブリダイゼーション反応は高感度かつ選択的であるので、興味ある特定の配列を、その濃度が低い試料であっても、同定することができる。ストリンジェントな条件は、例えばプレハイブリダイゼーション溶液およびハイブリダイゼーション溶液中の塩もしくはホルムアミドの濃度によって、またはハイブリダイゼーション温度によって定義することができ、当技術分野では周知である。例えばストリンジェンシーは、以下に詳述するように、塩の濃度を低下させるか、ホルムアミドの濃度を増加させるか、ハイブリダイゼーション温度を上げるか、ハイブリダイゼーションの時間を変更することによって、増加させることができる。別の態様では、本発明の核酸が、本明細書に記載するさまざまなストリンジェンシー条件下(例えば高、中および低)でハイブリダイズするというその能力によって定義される。
【0122】
本明細書における低ストリンジェンシーへの言及は、ハイブリダイゼーションに関して少なくとも約0%〜少なくとも約15%v/vのホルムアミドおよび少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩、ならびに洗浄条件に関して少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩を含み、包含する。一般に、低ストリンジェンシーは約25〜30℃ないし約42℃である。温度は変更することができ、ホルムアミドを置き換えるために、かつ/または別のストリンジェンシー条件が得られるように、より高い温度を使用することができる。必要に応じて、例えばハイブリダイゼーションに関して少なくとも約16%v/v〜少なくとも約30%v/vのホルムアミドおよび少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mの塩、ならびに洗浄条件に関して少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mの塩を含み、包含する中ストリンジェンシーや、ハイブリダイゼーションに関して少なくとも約31%v/v〜少なくとも約50%v/vのホルムアミドおよび少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15Mの塩、ならびに洗浄条件に関して少なくとも約0.01M〜少なくとも約0.15Mの塩を含み、包含する高ストリンジェンシーなどといった、別のストリンジェンシー条件を適用することができる。一般に洗浄は、Tm=69.3+0.41(G+C)%(MarmurおよびDoty, J. Mol. Biol. 5: 109, 1962)で行なわれる。ただし、二重鎖DNAのTmはミスマッチ塩基対の数が1%増加するごとに1℃ずつ低下する(BonnerおよびLaskey, Eur. J. Biochem. 46: 83、1974)。ホルムアミドは、これらのハイブリダイゼーション条件では随意である。したがって、特に好ましいストリンジェンシーのレベルは、次のように定義される:低ストリンジェンシーは、6×SSCバッファー、0.1%w/v SDS、25〜42℃である;中ストリンジェンシーは、2×SSCバッファー、0.1%w/v SDS、20℃〜65度の範囲内の温度である;高ストリンジェンシーは0.1×SSCバッファー、0.1%w/v SDS、少なくとも65℃の温度である。
【0123】
本発明の核酸が、高ストリンジェンシーでハイブリダイズするというその能力によって定義される場合、これらの条件は、約50%ホルムアミド、約37℃〜42℃を含む。ある態様では、約35%〜25%ホルムアミド中、約30℃〜35℃という条件を含む低いストリンジェンシー下でハイブリダイズするというその能力によって、本発明の核酸が定義される。あるいは、本発明の核酸は、50%ホルムアミド、5×SSPE、0.3%SDS、および繰り返し配列ブロッキング核酸、例えばcot-1またはサケ精子DNA(例えば200n/mlせん断変性サケ精子DNA)中、42℃の条件を含む高ストリンジェンシー下でハイブリダイズするというその能力によって定義される。ある態様では、本発明の核酸が、35℃という低い温度の35%ホルムアミドを含む低いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするというその能力によって定義される。
【0124】
ハイブリダイゼーションに続いて、フィルターを50℃の6×SSC、0.5%SDSで洗浄することができる。これらの条件は、25%ホルムアミドを上回れば「中」条件、25%ホルムアミド未満では「低」条件であるとみなされる。「中」ハイブリダイゼーション条件の具体例は、上記のハイブリダイゼーションが30%ホルムアミドで行なわれる場合である。「低ストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション条件の具体例は、上記のハイブリダイゼーションが10%ホルムアミドで行なわれる場合である。
【0125】
特定のストリンジェンシーレベルに対応する温度範囲は、関心対象である核酸のプリン対ピリミジン比を算出し、それに応じて温度を調節することによって、さらに狭くすることができる。本発明の核酸は、AusubelおよびSambrookに記載の高、中、および低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするというその能力によっても定義される。上述した範囲および条件のバリエーションは、当技術分野では周知である。ハイブリダイゼーション条件を、以下にさらに詳しく説明する。
【0126】
上記の手法は、プローブ配列に対して、低下する一連のホモロジーレベルを持つ、複数の核酸が同定されるように、改変することができる。例えば、検出可能なプローブに対して、低下する一連のホモロジーを持つ、複数の核酸を取得するために、ストリンジェンシーの低い条件を使用することができる。例えば、約1MのNa+濃度を持つハイブリダイゼーションバッファー中で、ハイブリダイゼーション温度を68℃から42℃まで5℃刻みで低下させることができる。ハイブリダイゼーションに続いて、フィルターを、2×SSC、0.5%SDSにより、ハイブリダイゼーションの温度で洗浄することができる。これらの条件は、50℃を上回れば「中」条件、50℃未満では「低」条件であるとみなされる。「中」ハイブリダイゼーション条件の具体例は、上記のハイブリダイゼーションが55℃で行なわれる場合である。「低ストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション条件の具体例は、上記のハイブリダイゼーションが45℃で行なわれる場合である。
【0127】
あるいは、ハイブリダイゼーションを、ホルムアミドを含有する6×SSCなどのバッファー中、42℃の温度で行なうこともできる。この場合は、プローブに対して、低下する一連のホモロジーレベルを持つ、複数のクローンを同定するために、ハイブリダイゼーションバッファー中のホルムアミドの濃度を50%から0%まで5%刻みで低下させることができる。ハイブリダイゼーションに続いて、フィルターを、6×SSC、0.5%SDSにより、50℃で洗浄することができる。これらの条件は、25%ホルムアミドを上回れば「中」条件、25%ホルムアミド未満では「低」条件とみなされる。「中」ハイブリダイゼーション条件の具体例は、上記ハイブリダイゼーションが30%ホルムアミドで行なわれる場合である。「低ストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション条件の具体例は、上記ハイブリダイゼーションが10%ホルムアミドで行なわれる場合である。
【0128】
しかし、ハイブリダイゼーションフォーマットの選択は決定的な問題ではなく、ある核酸が本発明の範囲に包含されるかどうかを決定する条件を規定するのは、洗浄条件のストリンジェンシーである。本発明の範囲に包含される核酸を同定するために使用される洗浄条件には、例えば、pH7で約0.02Mの塩濃度、少なくとも約50℃もしくは約55℃〜約60℃の温度;または約0.15M NaClの塩濃度、72℃で約15分間;または約0.2×SSCの塩濃度、少なくとも約50℃もしくは約50℃〜約60℃の温度で約15〜約20分間;またはハイブリダイゼーション複合体を、0.1%SDSを含有する約2×SSCの塩濃度を持つ溶液により、室温で15分間、2回洗浄してから、0.1%SDSを含有する0.1×SSCにより、68℃で15分間、2回洗浄すること;またはそれらと等価な条件が含まれる。SSCバッファーおよび等価な条件の説明については、Sambrook、TijssenおよびAusubelを参照されたい。
【0129】
ある関連実施形態において、本発明は、細胞中で組換え鳥類III型インターフェロンを生産する方法であって、次のステップを含む方法を提供する:
(i)適切なプロモーター配列の制御下に置かれた前記鳥類III型インターフェロンをコードする核酸分子、または、前記鳥類III型インターフェロンをコードする核酸分子に相補的な核酸分子を含む遺伝子コンストラクトを前記細胞中に導入するステップ;
(ii)前記核酸分子が発現されるのに十分な時間、十分な条件下で、前記細胞を培養するステップ;および
(iii)前記発現産物を単離するステップ。
【0130】
さらにもう一つの関連実施形態では、本発明は、細胞中で鳥類III型インターフェロン融合分子を生産する方法であって、鳥類III型インターフェロンポリペプチドまたはその機能的フラグメント、誘導体もしくは鳥類ホモログをコードする核酸分子、または、鳥類III型インターフェロンポリペプチドまたはその機能的フラグメント、誘導体もしくは鳥類ホモログをコードする核酸分子に相補的な核酸分子を含む遺伝子コンストラクトを、前記細胞中に導入することを含み、前記ポリペプチドが、第1のIII型インターフェロンと第2のIII型インターフェロンとの融合タンパク質、または第1のIII型インターフェロンと、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、Ch IFN-α、Ch IFN-β、もしくはCh IFN-γなどを含むリストから選択される第2のI型もしくはII型インターフェロンとの融合タンパク質である方法に及ぶ。
【0131】
したがって、さらにもう一つの関連態様において、本発明は、第1のIII型インターフェロンと第2のIII型インターフェロンとの組換え融合ポリペプチド、または第1のIII型インターフェロンと、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、ChIFN-α、ChIFN-βもしくはChIFN-γなどを含むリストから選択される第2のI型もしくはII型インターフェロンとの組換え融合ペプチドに及ぶ。
【0132】
本発明のこの態様で説明した上述の実施形態によれば、組換え鳥類III型インターフェロンは、好ましくは、鳥類IFN-λポリペプチド分子またはそれを含む融合分子である。特に好ましい実施形態では、III型インターフェロンがChIFN-λポリペプチドである。
【0133】
もう一つの実施形態において、本発明は、上述の核酸分子を含むか、鳥類III型インターフェロン融合ポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体をコードする核酸分子、または、鳥類III型インターフェロン融合ポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体をコードする核酸分子に相補的な核酸分子を含む、遺伝子コンストラクトであって、前記ポリペプチドがIII型インターフェロンと、第2のIII型インターフェロンとの融合ポリペプチドであるか、第1のIII型インターフェロンと、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、Ch IFN-α、Ch IFN-β、またはCh IFN-γなどを含むリストから選択される第2のI型またはII型インターフェロンとの融合ポリペプチドであるものに及ぶ。
【0134】
前記III型インターフェロンは、好ましくは、IFN-λ、特にChIFN-λである。
【0135】
融合ポリペプチドを生産するために、鳥類III型インターフェロンポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくは誘導体を含む第1コード領域をコードする核酸分子は、場合によってはスペーサー核酸分子によって隔てられた第2コード領域に隣接して、第1コード領域と第2コード領域とが、2つのコード領域間に停止コドンが介在することなく、同じオープンリーディングフレームに入るような形で、クローニングされる。翻訳された場合、そうして生産されるポリペプチドは、第1コード領域と第2コード領域のポリペプチド産物間の融合物を含む。融合ポリペプチドをコードする遺伝子コンストラクトは、それを発現させようとする細胞の翻訳機構によって認識されうる少なくとも1つの開始コドンおよび1つの停止コドンを、さらに含む。融合ポリペプチドを生産するための方法は、当業者には周知である。
【0136】
本発明のさらにもう一つの態様は、上述したタンパク質および核酸分子に対する抗体を対象とする。そのような抗体はモノクローナルでもポリクローナルでもよく、天然の抗体から選択するか、特異的に生じさせることができる。後者の場合は、免疫原性が得られるように、ChIFNλポリペプチドまたは核酸抗原を、まず、担体分子と結びつける必要がある。本発明の抗体は、治療剤または診断剤として有用である。ある分子に「対する」抗体には、その分子に特異的な抗体が含まれる。
【0137】
これらの抗体は、本発明のポリペプチドまたは関連ポリペプチドを単離し、同定しまたは定量するために使用することができる。
【0138】
用語「抗体」は、1つもしくは複数の免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメントに由来する、または、それをモデル化した、または、それによって実質的にコードされた、抗原またはエピトープを特異的に結合する能力を持つ、ペプチドまたはポリペプチドを包含する。例えば「Fundamental Immunology」第3版、W.E. Paul編、Raven Press、ニューヨーク (1993);Wilsonら (1994) J. Immunol. Methods 175:267-273;Yarmushら (1992) J. Biochem. Biophys. Methods 25(4):285-97を参照されたい。抗体という用語には、抗原を結合する能力を保っている抗原結合部分、すなわち「抗原結合部位」(例えばフラグメント、部分配列、相補性決定領域(CDR))、例えば(i)Fabフラグメント、これはVL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントである;(ii)F(ab')2フラグメント、これはヒンジ領域にあるジスルフィド橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである;(iii)VHドメインとCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLドメインとVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Wardら (1989) Nature 341:544-546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。単鎖抗体も、「抗体」という用語の意味に含まれる。
【0139】
本発明の分子に対する抗体はモノクローナルでもポリクローナルでもよく、天然の抗体から選択するか、これらのポリペプチドおよび遺伝子産物に対して特異的に産生させることができる。本発明は、組換えおよび合成抗体ならびに抗体ハイブリッドに及ぶ。「合成抗体」は、本明細書においては、抗体のフラグメントおよびハイブリッドを含むとみなされる。本発明のこの態様の抗体は、免疫療法には特に有用であり、診断ツールとして、または本発明のポリペプチドもしくは核酸分子を精製するための手段として使用することもできる。
【0140】
免疫化、抗体(ポリクローナルおよびモノクローナル)の生産および単離の方法は、当業者には知られており、科学文献および特許文献に記載されている。例えば、Coligan「CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY」Wiley/Greene、ニューヨーク(1991);Stites編「BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY」(第7版)Lange Medical Publications、カリフォルニア州ロスアルトス(「Stites」);Goding「MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND PRACTICE」(第2版)Academic Press、ニューヨーク州ニューヨーク(1986);Kohler (1975) Nature 256:495;Harlow (1988)「ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL」Cold Spring Harbor Publications、ニューヨークを参照されたい。抗体は、動物を使う伝統的インビボ法だけでなく、インビトロで、例えば組換え抗体結合部位発現ファージディスプレイライブラリーを使って生成させることもできる。例えばHoogenboom (1997) Trends Biotechnol. 15:62-70;Katz (1997) Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 26:27-45を参照されたい。
【0141】
本発明のポリペプチドに対して生成されるポリクローナル抗体は、動物へのポリペプチドの直接注射によって、または非ヒト動物へのポリペプチドの投与によって、得ることができる。その場合、そうして得られた抗体は、ポリペプチドそのものを結合するだろう。このようにして、ポリペプチドのフラグメントしかコードしていない配列でも、丸ごとのネイティブポリペプチドに結合しうる抗体を生成させるために使用することができる。そうすれば、そのような抗体を使って、そのポリペプチドを発現させる細胞から、そのポリペプチドを単離することができる。
【0142】
モノクローナル抗体を製造するには、連続継代細胞株培養物によって産生される抗体を与える任意の技法を使用することができる。その例には、ハイブリドーマ技法、トリオーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法、およびEBVハイブリドーマ技法が含まれる(例えばCole (1985)「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」Alan R. Liss, Inc.の77〜96頁を参照されたい)。
【0143】
単鎖抗体を生産するために記載された技法(例えば米国特許第4,946,778号参照)は、本発明のポリペプチドに対する単鎖抗体を生産するために適合させることができる。あるいは、トランスジェニックマウスを使って、これらのポリペプチドまたはそのフラグメントに対するヒト化抗体を発現させることもできる。
【0144】
本明細書で使用する「誘導体」という用語には、核酸分子またはその翻訳産物の一部分、フラグメントおよびパーツが含まれる。誘導体は、単一または複数のヌクレオチドまたはアミノ酸置換、欠失および/または付加であってもよい。本発明の核酸分子の誘導体には、配列番号1または3に記載のヌクレオチド配列に少なくとも低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする能力を持つ核酸分子も含まれる。本明細書に記載する本発明の核酸分子の誘導体には、オリゴヌクレオチド、PCRプライマー、アンチセンス分子、共抑制に使用するのに適した分子および融合核酸分子も含まれる。同様に考えられるいくつかの分子は、ChIFN-λ遺伝子の発現を調節する能力を持つ。
【0145】
本明細書に記載するポリペプチド分子の誘導体には、融合タンパク質を含む、天然、合成または組換え供給源に由来する、フラグメント、パーツ、部分、突然変異体、変異型が含まれる。誘導体には、ペプチド、ポリペプチドまたは他のタンパク質分子もしくは非タンパク質分子に融合されたタンパク質全体の特定のエピトープまたはパーツを持つフラグメントが含まれる。パーツまたはフラグメントには、例えば、ChIFN-λポリペプチドの活性領域が含まれる。誘導体は、アミノ酸の挿入、欠失または置換によって得ることができる。これらは、まず単一または複数のヌクレオチド置換、欠失および/または付加をコード核酸に加えることによって、都合よく製造される。あるいは、ひとたびアミノ酸配列がわかれば、確立された技法により、所望の突然変異体を得るのに必要な任意の配列で、アミノ酸を化学的に加えることもできる。そのような誘導体はいずれも本発明に包含される。
【0146】
本発明の鳥類III型インターフェロンのアミノ酸挿入誘導体には、アミノ末端および/またはカルボキシル末端融合物、ならびに単一または複数アミノ酸の配列内挿入が含まれる。挿入アミノ酸配列変異型は、1つ以上のアミノ酸残基が、タンパク質中の所定の部位に導入されるものであるが、結果として生じる産物の適切なスクリーニングが行なわれるのであれば、ランダム挿入も考えられる。欠失変異型は、配列からの1つ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。置換アミノ酸変異型は、配列中の少なくとも一つの残基が取り除かれ、その代わりに異なる残基が挿入されているものである。典型的置換は表2に従ってなされるものである。
表2:アミノ酸置換のための適切な残基
【表2】

【0147】
アミノ酸置換によって誘導体鳥類III型インターフェロンを作製する場合、アミノ酸は一般に類似する特性、例えば疎水性、親水性、電気陰性度、側鎖のかさ高さなどを持つ別のアミノ酸で置き換えられる。アミノ酸置換は、典型的には、単一残基の置換である。アミノ酸挿入は通常、約1〜10アミノ酸残基程度であり、欠失は約1〜20残基の範囲に及ぶだろう。好ましくは、欠失または挿入は、隣接する対に施される。すなわち、2残基の欠失および対応する2残基の挿入である。
【0148】
置換アミノ酸変異型は、配列中の少なくとも1つの残基が除去され、その代わりに異なる残基が挿入されているものである。置換アミノ酸変異型の一例は、保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換は、典型的には、以下の群内での置換を含む:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシンおよびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリンおよびスレオニン;リジンおよびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。アミノ酸配列への付加には、他のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質との融合が含まれる。
【0149】
本発明の鳥類III型インターフェロンポリペプチドの組換えまたは合成突然変異体および誘導体の他の例には、そのポリペプチドに関連する任意の分子、例えば糖質、脂質および/またはタンパク質もしくはポリペプチドなどの、単一または複数の置換、欠失および/または付加が含まれる。
【0150】
便宜上および簡便に表記するために、本明細書における鳥類III型インターフェロン、例えばIFN-λ、ChIFN-λまたは鳥類インターフェロン様ポリペプチドへの言及には、上で予想されたその任意の誘導体への言及が含まれる。
【0151】
「フラグメント」への言及には、融合タンパク質を含む、天然、合成または組換え供給源に由来する、パーツおよび部分への言及が含まれる。パーツまたはフラグメントには、例えばChIFNλの活性領域が含まれる。
【0152】
本明細書にいう、あるヌクレオチド配列の「鳥類ホモログ」とは、前記配列内に1つ以上のヌクレオチド置換、挿入、欠失、または再配列が存在するにもかかわらず、本発明の核酸分子またはその相補ヌクレオチド配列と実質的に同じである単離核酸分子を指すと解釈されるものとする。また、ホモログとは、ニワトリ以外の鳥類種から単離された、またはニワトリ以外の鳥類種に見いだされる分子に他の形で対応する、核酸またはタンパク質分子への言及であるとも理解すべきである。「ホモログ」とは、基準配列に対して少なくとも約60%、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を示す、他の原核生物中の配列(ヌクレオチドまたはタンパク質)を指す。
【0153】
「機能的」なそのフラグメント、誘導体または鳥類ホモログへの言及は、上に記載した鳥類IFN-λの活性の1つ以上を発揮する能力を持つ分子への言及であると理解されるべきである。より具体的には、その機能的フラグメント、誘導体もしくは鳥類ホモログへの言及は、抗原または感染性因子、例えば限定するわけではないが、伝染性気管支炎ウイルス、鳥類伝染性喉頭気管炎ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、ニューキャッスル病ウイルス、マレック病ウイルス、ニワトリ貧血ウイルス、鳥インフルエンザウイルス、大腸菌、サルモネラ(Salmonella)属、アイメリア(Eimeria)属、またはマイコプラズマ(Mycoplasma)属などに対する鳥類種における免疫応答を誘発または調整する能力を持つポリペプチド、タンパク質または他の物質への言及であると解釈されるものとする。
【0154】
本発明のさらにもう一つの態様は、鳥類III型インターフェロン遺伝子配列、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体を同定するための方法を提供する。
【0155】
ある実施形態では、前記方法が、核酸試料をハイブリダイゼーション有効量のIII型インターフェロンプローブと接触させ、次に前記ハイブリダイゼーションを検出することを含む。
【0156】
前記核酸試料は、例えばゲノムDNA、mRNAまたはcDNAを含みうる。
【0157】
関心対象の遺伝子配列は、組換え型であるか、ウイルス粒子、バクテリオファージ粒子、酵母細胞、動物細胞、または植物細胞中に存在しうる。好ましくは、遺伝子配列は鳥類種に由来する。より好ましくは、遺伝子配列は、ニワトリ、シチメンチョウ、バンタム、ウズラ、ホロホロチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、ハト、カナリア、セキセイインコ、オウムおよびフィンチなどを含むリストから選択される鳥類種に由来する。特に好ましい実施形態では、遺伝子配列がニワトリに由来する。
【0158】
好ましくは、鳥類III型インターフェロンプローブは、配列番号1もしくは3に記載のヌクレオチドもしくはその相補鎖、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体に由来する、またはそれらに対する、少なくとも10、20、30、40または50ヌクレオチドのヌクレオチド配列(ただし本発明ではさらに大きいプローブの使用も考えられる)を含む。好ましくは、この配列を、同定可能なシグナルを与える能力を持つレポーター分子(例えばPもしくはSなどの放射性同位体またはビオチン化分子)で標識する。
【0159】
本発明のもう一つの実施形態は、鳥類III型インターフェロン遺伝子配列またはその機能的フラグメントもしくは誘導体を同定するための方法であって、鳥類III型サイトカイン遺伝子のヌクレオチド配列に由来する少なくとも12ヌクレオチド長の2つの相補的核酸「プライマー分子」を、そのプライマー分子配列に関連するヌクレオチド配列を含む核酸テンプレート分子と接触させ、増幅反応においてそのテンプレート分子の特異的核酸分子コピーを増幅させることを含む方法を提供する。
【0160】
ある例では、第1のプライマー分子が、好ましくは、鳥類IFN-λ遺伝子、例えばChIFN-λ遺伝子のセンス鎖、特に配列番号1もしくは3に記載されているヌクレオチド配列またはそのホモログもしくは誘導体に由来するものに対するものであり、第2のプライマー分子が、好ましくは、鳥類IFN-λ遺伝子、例えばChIFN-λ遺伝子のアンチセンス鎖、特に配列番号1もしくは3に記載されているヌクレオチド配列の相補鎖またはそのホモログもしくは誘導体に対するものである。したがって、どちらのプライマーも、DNAポリメラーゼ酵素、補因子および適当な基質の存在下で、各プライマー分子から5'→3'方向に、他方のプライマー分子がハイブリダイズしているDNA上の位置に向かって、DNA合成が起こり、その結果、その間にあるDNAが増幅されるような形で、前記テンプレート分子にハイブリダイズする。
【0161】
核酸プライマー分子はさらに、少なくとも低ストリンジェンシー条件下で配列番号1または3に記載の核酸分子にハイブリダイズすることができるという条件の下で、ヌクレオチドであるアデニン、シトシン、グアニン、チミジン、もしくはイノシン、またはポリヌクレオチド分子中に組み込まれうるその機能的類似体もしくは誘導体の任意の組合せからなりうる。
【0162】
核酸プライマー分子はさらに、それぞれ、他の核酸プライマー分子を含む水性プールに含有されうる。より好ましくは、核酸プライマー分子は、実質的に純粋な形態にある。
【0163】
核酸テンプレート分子は、組換え型であるか、ウイルス粒子中、バクテリオファージ粒子中、酵母細胞、動物細胞、または植物細胞中に存在しうる。好ましくは、関連遺伝子配列は、鳥類の細胞、組織、または器官に由来する。より好ましくは、関連遺伝子配列は、ニワトリの細胞、組織または器官に由来する。
【0164】
当業者にはよく知られているであろうとおり、インビトロでの遺伝子の発現、ターゲット遺伝子の発現の調整は、前記遺伝子の発現産物のレベルの変化を測定することによって決定することができる。
【0165】
したがって、もう一つの実施形態において、本発明は、鳥類III型インターフェロンポリペプチドまたはその機能的フラグメント、誘導体もしくはホモログの存在を検出するための方法を提供する。
【0166】
当技術分野においてよく知られているさまざまな方法を使って、直接的または間接的にポリペプチドレベルを決定することができる。そのような方法には、免疫化学的方法、例えばウェスタンブロット法、ELISA、免疫沈降、およびRIA、ゲル電気泳動法(一次元ゲルおよび二次元ゲルを含む)、タンパク質またはペプチドクロマトグラフィー分離に基づく方法、タンパク質融合レポーターコンストラクトおよび比色法による読出しを使用する方法、翻訳されたポリソームmRNAの活性の特徴づけに基づく方法、ならびに質量分析法による検出が含まれる。
【0167】
本発明のスクリーニング方法を実施する際は、試験化合物を本発明のポリペプチドとインビトロで接触させるか、本発明の細胞に投与するか、鳥類種にインビボ投与することができる。本発明を何か一つの理論または作用様式に限定するわけではないが、試験化合物への言及には、免疫相互作用分子、例えば上に記載した「抗体」への言及が含まれる。
【0168】
イムノアッセイは、鳥類種におけるサイトカインの存在を検出するのに、特に、例えば病原体による感染後に前記鳥類サイトカインのレベルが変化する免疫応答を検出するのに、有用である。結果として、そのようなイムノアッセイは、ある鳥類がある病原体に曝露されたかどうか、またはある病原体に現在感染しているかどうか、または長期間にわたる軽度病原体感染を起こしているかどうかを決定するのに、とりわけ有用である。イムノアッセイは、サイトカインの定量に有用であり、特に、病原体に対する疾患抵抗性が改善された高サイトカイン発現株を求めるための遺伝資源(genetic stocks)のスクリーニングに有用である。本明細書に記載する発明は、その実施に前記イムノアッセイを必要とする免疫相互作用分子および診断アッセイのそのような使用のすべてに及ぶ。
【0169】
広範囲にわたる多様なイムノアッセイ技法として、例えば米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号および同第4,018,653号に記載されているものを挙げることができる。これらの方法は、III型インターフェロンを検出するために使用することができる。例えば、ChIFN-λに対して産生させた抗体を固形基板上に固定化して一次複合体を形成させ、サイトカインの存在について試験しようとする動物由来の生物学的試料を、結合した分子と接触させる。次に、抗体-サイトカイン二次複合体を形成させるのに十分な時間にわたる適切なインキュベーション期間後に、検出可能なシグナルを生成する能力を持つレポーター分子でラベルされた第2のChIFN-λ抗体を加え、インキュベートして、抗体-サイトカイン-標識抗体の三次複合体を形成させるのに十分な時間を置く。未反応の物質をすべて洗い流し、レポーター分子が生成するシグナルの観察によって三次複合体の存在を決定する。結果は、視覚的信号の単なる観察による定性的結果であるか、または既知量のハプテンを含有する対照試料との比較によって定量することができる。このアッセイの変形には、試料と標識抗体の両方が、結合した抗体に同時に加えられる同時アッセイ、または標識抗体と試験しようとする試料とをまず最初に混合し、インキュベートしてから、結合した抗体に同時に加えるリバースアッセイが含まれる。これらの技法は当業者にはよく知られており、軽微な変形が可能であることは明白であるだろう。上で使用される抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであることができる。
【0170】
固形基板は、典型的には、ガラスまたはポリマーであり、最もよく使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンである。固形支持体はチューブ、ビーズ、ディスクもしくはマイクロプレート、またはイムノアッセイを行なうのに適した他の任意の表面の形態をとりうる。結合プロセスは、当技術分野ではよく知られており、一般に、分子を、不溶性担体に架橋し、共有結合し、または物理的に吸着させることからなる。
【0171】
本明細書にいう「レポーター分子」は、その化学的性質として、抗原結合抗体の検出を可能にする分析的に同定可能なシグナルを生成する分子を意味する。検出は定性的または定量的であることができる。このタイプのアッセイにおいて最も良く使用されるレポーター分子は、酵素、フルオロフォアまたは放射性核種含有分子(すなわち放射性同位体)である。酵素イムノアッセイの場合、酵素は二次抗体に、一般的にはグルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸を使って、コンジュゲートされる。しかし、容易に理解されるだろうが、当業者が容易に利用することができる広範囲にわたる多種多様なコンジュゲーション技法が存在する。よく使用される酵素には、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼなどが含まれる。特異的酵素と共に使用される基質は、一般に、対応する酵素による加水分解時に、検出可能な色の変化を生じるように選択される。蛍光生成物を与える蛍光原基質を使用することもできる。
【0172】
あるいは、フルオレセインおよびローダミンなどの蛍光化合物を、抗体に、その結合能力を変化させることなく、化学的にカップリングすることもできる。特定波長の光の照射によって活性化されると、蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸収し、その分子における励起状態を誘導し、次に、光学顕微鏡で検出することができる特徴的な色の光を放出する。EIAの場合のように、蛍光標識抗体を一次抗体ハプテン複合体に結合させる。未結合の試薬を洗い流した後、残っている複合体を適当な波長の光に曝露すると、観察される蛍光は、関心対象であるハプテンの存在を示す。免疫蛍光およびEIA技法はどちらも当技術分野では確立されており、本発明にとって特に好ましい。しかし他のレポーター分子、例えば放射性同位体、化学発光または生物発光分子なども、使用することができる。要求される目的に適合するように手順を変更する方法は、当業者には明白であるだろう。
【0173】
上に記載した抗体は、本発明の組換え鳥類サイトカインの精製にも有用である。抗体を使ったタンパク質のアフィニティー精製法は、当業者にはよく知られている。
【0174】
ここに、本明細書に開示する鳥類III型IFNが同定され、配列決定されたことにより、鳥類の疾患状態に関連して使用される一連の診断および予防的/治療的処置プロトコールの開発が容易になる。また、そこで使用するための試薬類の開発も容易になる。したがって本発明は、鳥類の治療的および/または予防的処置における、本明細書に開示する鳥類III型インターフェロンポリペプチドまたはその機能的フラグメント、誘導体、もしくはホモログの使用に及ぶと理解すべきである。
【0175】
例えば本発明は、決して限定するわけではないが、病原性生物に感染した鳥類種の治療的または予防的処置における使用には、特に有用である。ただし、本明細書に記載する予防的処置への言及は、感染に対する防御または他の有益な成果が得られるように行なわれる健康な鳥類の予防または処置にも及ぶと理解すべきである。
【0176】
したがって、ある態様では、鳥類における免疫応答を誘発またはアップレギュレートするための方法であって、前記鳥類に、上に記載したポリペプチドまたは核酸分子の有効量を、免疫応答を誘発し、強化し、または他の形で維持するのに十分な時間、十分な条件下で、投与することを含む方法が提供される。
【0177】
本発明のもう一つの態様では、鳥類の処置または予防方法であって、前記鳥類に、上に記載した鳥類III型インターフェロンポリペプチドもしくは核酸分子またはその機能的フラグメント、誘導体もしくはホモログの有効量を、前記鳥類の免疫応答性を維持し、刺激し、または強化するのに十分な時間、十分な条件下で投与することを含む方法が提供される。
【0178】
本発明のさらにもう一つの態様では、病原性生物に曝露または感染した鳥類の処置または予防方法であって、前記鳥類に、上に記載した鳥類III型インターフェロンポリペプチドもしくは核酸分子またはその機能的フラグメント、誘導体、もしくはホモログの有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0179】
本発明の好ましい実施形態では、前記鳥類に、家禽、飼育鳥または狩猟鳥が含まれる。
【0180】
本明細書で使用する「鳥類」という用語は、ニワトリ、シチメンチョウ、バンタム、ウズラ、ホロホロチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、ハト、カナリア、セキセイインコ、オウムおよびフィンチなどに及ぶ。特に好ましい鳥類は家禽、飼育鳥または狩猟鳥、より好ましくはニワトリである。
【0181】
上述の実施形態によれば、前記鳥類サイトカインはIII型インターフェロン分子、特にIFN-λであることが、特に好ましい。
【0182】
最も好ましい実施形態では、前記鳥類サイトカインがChIFN-λである。
【0183】
本発明は、細菌、ウイルスまたは寄生虫などの病原体による感染に対する鳥類の処置または予防に、とりわけ有用である。そのような病原体の例には、鳥インフルエンザ、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(infectious bursal disease virus)、鳥類伝染性気管支炎ウイルス、鳥類伝染性喉頭気管炎ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、ニューキャッスル病ウイルス、マレック病ウイルス、ニワトリ貧血ウイルス、鳥インフルエンザウイルス、大腸菌(E.coli)、サルモネラ属種(Salmonella ssp.)、アイメリア属種(Eimeria ssp.)またはマイコプラズマ属種(Mycoplasma ssp.)などが含まれる。
【0184】
本明細書における「処置」および「予防」への言及は、その最も広い文脈で考慮されるべきである。「処置」という用語は、ある哺乳動物が完全に回復するまで処置されることを、必ずしも含意しない。同様に「予防」は、その対象が最終的に疾患状態に陥らないことを、必ずしも意味しない。したがって、処置および予防には、ある特定状態の症状を改善すること、またはある特定状態の発生を防止するか、または他の形でそのリスクを低減することが含まれる。「予防」という用語は、ある特定の状態の重症度または発症を低減することとみなすことができる。「処置」は既存の状態の重症度を低減することもできる。
【0185】
「有効量」とは、所望する応答を獲得するか、処置されるべき個体の、ある特定状態の発症を遅延させるか、その進行を抑制するか、またはその発症もしくは進行を完全に停止するために、少なくとも部分的に必要な量を意味する。処置されるべき個体の分類群、所望する防御の程度、ワクチンの製剤、医学的状況の評価、その他関連する因子。この量は、比較的広い範囲にわたり、その範囲は定型的な治験で決定することができると予想される。
【0186】
もう一つの実施形態では、本発明は、病原性生物に曝露または感染した鳥類の処置または予防方法であって、前記鳥類に、III型インターフェロンを含む第1の鳥類サイトカインの有効量を、第2の鳥類サイトカイン分子と組み合わせて、前記動物の免疫応答性を維持し、刺激し、または強化するのに、全体として十分な時間、十分な条件下で投与することを含む方法を提供する。
【0187】
前記第1および第2のサイトカインは、2つの分子として同時投与するか、または融合分子として投与することができる。好ましくは、前記第2の鳥類サイトカインは、I型またはII型インターフェロン、例えば限定するわけではないが、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、Ch IFN-α、Ch IFN-β、もしくはCh IFN-γなど、またはIII型インターフェロンもしくは他の任意の鳥類サイトカインから選択される。
【0188】
最も好ましい実施形態では、前記第1の鳥類サイトカインと前記第2の鳥類サイトカインが融合分子である。
【0189】
本発明のこの実施形態によれば、第1および第2の鳥類サイトカインは、動物の免疫系と相互作用して、病原体の攻撃に対する免疫系の免疫応答性を刺激し、強化し、または他の形で調整する。
【0190】
本発明のさらにもう一つの態様は、鳥類の治療または予防に使用するための鳥類インターフェロンIIIポリペプチドまたは鳥類インターフェロンIIIをコードする核酸分子に関する。
【0191】
本発明のさらにもう一つの態様は、鳥類における免疫応答を調整するためのおよび/または鳥類を処置または予防するための医薬の製造における、鳥類III型インターフェロンポリペプチドまたは核酸分子の使用に関する。
【0192】
好ましくは、前記鳥類III型インターフェロン分子はIFN-λ、特にChIFN-λである。
【0193】
本発明のIII型IFNは、処置または予防の適応となる鳥類のライフサイクル全体を通して投与することができる。処置または予防が最も有効である鳥の発生段階は、それに対する防御を得ようとする病原体の性質(その伝染様式および最も感染性の高い期間を含む)によってさまざまであるだろう。「最も感染性の高い期間」とは、ある特定病原体の攻撃を最も受けやすい、またはその病原体感染の結果として家畜損失または生産性の低下を招く可能性がより大きくなるような、宿主の発生段階を意味する。本サイトカインの投与にとって最適な発生段階に影響を及ぼすパラメータは、当業者にはよく知られているだろう。
【0194】
したがって、本発明の処置または予防方法は、処置または予防の適応となる家禽、飼育鳥または狩猟鳥のライフサイクルにおける任意の発生段階での本鳥類サイトカインの投与に及ぶ。
【0195】
本発明のサイトカインまたは核酸分子は、任意の手段によって、例えば限定するわけではないが、卵内注射によって、または孵化後に腹腔内、皮内、筋肉内、眼内、静脈内、皮下もしくは他の注射手段などの注射によって、薬用食糧もしくは治療用食糧としての摂取によって、または前記鳥類に、前記サイトカインをコードする、もしくは、前記サイトカインをコードする核酸分子に相補的な、単離核酸分子、あるいは前記サイトカインをインビボまたは卵内で発現させる能力を持つ遺伝子コンストラクトを含むベクター、例えば生組換えウイルスベクター、生組換え細菌ベクターなどを、導入することによって、投与することができる。
【0196】
本発明のサイトカインが、前記サイトカインをコードする単離核酸分子、例えばDNA分子もしくはRNA分子、または前記サイトカインを発現させる能力を持つ遺伝子コンストラクトを含むベクターの導入によって投与される場合、その核酸分子または遺伝子コンストラクトは、適当な鳥類対象へのその投与後に、転写され、翻訳されて、生物学的に活性なサイトカイン分子を産生しなければならない。
【0197】
本発明のサイトカインのもう一つの重要な応用例は、ワクチン用の、特に組換えDNA技術によって生産されるサブユニットワクチンまたは合成ペプチドワクチン用の、天然アジュバントとしての応用である。
【0198】
本明細書で使用する「アジュバント」という用語は、第2の物質または抗原と組み合わせて動物に投与された場合に、その第2の物質または抗原分子を認識する抗体などの免疫相互作用分子の産生を強化する物質を意味すると解釈されるものとする。アジュバントは、少量の抗原に対して抗体を産生させるために、または抗体産生の期間を延長させるために、または産生される抗体量のを増加させるために、治療的に使用することができる。どんな理論または作用様式にも束縛されることは望まないが、アジュバントは、投与部位への抗体形成細胞の局所的流入を誘発することによって作用する。
【0199】
したがって、本発明のさらにもう一つの態様は、鳥類サイトカイン分子(ここで、前記サイトカインは、III型インターフェロンであるか、前記III型インターフェロン分子と第2のサイトカイン分子との融合分子である)と、場合によっては薬学的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤とを含むアジュバントを提供する。
【0200】
好ましくは、前記鳥類III型インターフェロン分子はIFN-λ、特にChIFN-λである。
【0201】
前記鳥類サイトカインが融合分子である場合、前記第2のサイトカインは、鳥類種中で機能的である任意のサイトカイン分子、特にIFN-α、IFN-β、IFN-γ、Ch IFN-α、Ch IFN-β、もしくはCh IFN-γ、もしくはIII型インターフェロン分子、または他の任意のサイトカインであることができる。
【0202】
本発明によれば、鳥類サイトカイン、例えばIII型インターフェロン、特にChIFN-λが、抗原の免疫原性を強化するためにワクチンに、特にサブユニットワクチンに使用されて、個々の鳥における抗体価の増加、特異的抗原に対して免疫処置された鳥の防御の増進(すなわち集団免疫の強化)および/または免疫処置された鳥における防御抗体の持続性の増加をもたらす。本発明が提供するさらにもう一つの利点は、動物を効果的に免疫処置するのに必要な特異的抗原の量の減少であり、それは結果として、生産コストの低減につながる。
【0203】
これらの実施形態に従って記載される本発明のサイトカインまたはワクチンは、任意の手段によって、例えば卵内注射によって、または孵化後に腹腔内、皮内、筋肉内、眼内、静脈内、皮下もしくは他の注射手段などの注射によって、または薬用食糧もしくは治療用食糧としての摂取によって投与することができる。
【0204】
徐放技術の進歩、ならびにこれらの分子のための送達ベクターとしての生非病原性細菌およびウイルスの開発により、家禽、飼育鳥または狩猟鳥に投与される場合のそれらの費用効果が確保されるだろう。それらは核酸ワクチン接種にも使用することができる。したがって本発明の鳥類サイトカインまたはワクチンは、遺伝学的手段によって送達することもできる。例えば組換え鳥類ChIFN-λは、ウイルス、酵母、細菌、原生動物、昆虫、鳥類または哺乳動物細胞などの送達システム中に存在する遺伝子コンストラクトによってコードされうる。ターゲット動物におけるそのような送達システムの発現は、組換え鳥類サイトカインの送達を可能にするだろう。
【0205】
この実施形態によれば、(i)第1プロモーター配列の制御下に作動可能に置かれた、鳥類III型インターフェロンまたは前記III型インターフェロンと第2のサイトカインとの融合サイトカイン分子をコードする第1ヌクレオチド配列;(ii)第2プロモーター配列の制御下に作動可能に置かれた、それに対する免疫処置が必要とされる抗原を規定する第2ヌクレオチド配列;および(iii)細菌、酵母、昆虫、原生動物または哺乳動物細胞などの送達細胞における前記遺伝子コンストラクトの複製を容易にする遺伝子配列を含む送達ビークルを含む遺伝子コンストラクトが考えられる。
【0206】
好ましくは、前記III型インターフェロンはIFN-λ、特にChIFN-λである。前記第2のサイトカインが、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、Ch IFN-α、Ch IFN-β、もしくはCh IFN-γ、あるいはIII型インターフェロン、または他の任意のサイトカインを含むリストから選択されることも好ましい。
【0207】
この実施形態によれば、送達ビークルは、通常の使用では、ターゲット動物に対して有害または病原性ではないだろう。弱毒化送達ビークルを使用すると好都合である。特に有用な送達ビークルは、弱毒化ウイルスならびに組換えウイルスベクターおよび組換え細菌ベクターなどのベクターである。
【0208】
例えば弱毒化ウイルスベクターは生ワクチンとして使用される。ChIFN-λなどの鳥類サイトカインまたはその誘導体をコードする遺伝子配列を、ウイルス配列中にクローニングし、その組換えウイルスを使って、ターゲット動物を感染させる。組換えウイルスは動物細胞における感染よび複製を引き起こして、組換えサイトカインの産生をもたらす。感染性組換えウイルスは、その後、免疫調整有効量の組換えサイトカインの産生後に排除されうる。同様のプロトコールが生細菌担体でも採用される。あるいは、非複製非感染性ウイルスベクターも使用できる。非複製ウイルスベクターは、所望のサイトカインを発現させる能力を一過性に持つ遺伝子配列を導入する手段になる。なぜなら、非複製ウイルスベクターは細胞から細胞へと伝播することができないからである。
【0209】
本発明は、鳥類サイトカイン、特にIII型インターフェロン、例えばChIFN-λまたはその誘導体を、直接的に、または組換え遺伝子配列の発現を介して投与することによる、動物、特に家禽、飼育鳥または狩猟鳥(例えば上述したもの)における免疫応答を強化するための機会を提供する。これは特に重要である。というのも、大半のサブユニットワクチンおよび合成ペプチドワクチンは、弱い抗原性しかもたないからである。サイトカインの投与は、単独で行なうことも、抗原と組み合わせて行なうことも、融合分子として行なうこともできる。投与は、弱毒化ウイルス、組換えウイルスベクターまたは細菌ベクターを使って行なうか、例えば注射または経口摂取(例えば薬用食糧に入れて)によるサイトカインの投与によって行なうことができる。
【0210】
本発明は、鳥類種、例えば家禽、飼育鳥または狩猟鳥において、例えば免疫系を強化するために、またはその免疫能を改善するために、またはその鳥における免疫調整を容易にするために使用される獣医学的医薬組成物であって、抗原に融合された組換え鳥類III型インターフェロンもしくはIII型インターフェロンと第2のサイトカインとの融合分子、またはそれをコードする遺伝子配列と、獣医学的使用に許容できる1つ以上の担体および/または希釈剤とを含む獣医学的医薬組成物に及ぶ。
【0211】
好ましくは、組成物が上に記載した組換え鳥類サイトカインを含む場合、その組成物は、卵内注射されるか、孵化後に注射されるか、エアロゾルまたは摂取によって投与される。組成物が遺伝物質を含む場合、それはウイルスベクター、細菌ベクターの一部として、または核酸分子として投与される。
【0212】
処置が必要とされるかもしれない家禽、飼育鳥または狩猟鳥における状態には、何らかのウイルス、細菌または寄生虫病原体によって誘発される伝染性疾患、例えば上述したもの、がん、免疫抑制、アレルギー、および生殖器系を強化または抑制することが含まれる。状態には、動物が、例えば、過密および輸送過程、気候の変化によるストレス中またはストレス後など、免疫無防備状態にあるような状況も含まれるだろう。
【0213】
本発明の分子は、それらが同じ種に由来するという点において、相同センス(homologous sense)で使用するか、または、その鳥類III型インターフェロンがそれが由来する種とは異なる鳥類種において有効である場合には、異種センス(heterologous sense)で使用することができる。組成物は、他の活性分子、例えば抗生物質または抗原分子なども含有しうる。サイトカイン分子と抗原分子との組合せは、ワクチンの効力を増加させうる。
【0214】
したがって本発明は、免疫調整有効量の、鳥類III型インターフェロン、もしくは鳥類III型インターフェロンと第2のサイトカインとの融合分子、またはそれを発現させる能力を持つ遺伝子配列と、獣医学的使用に許容できる1つ以上の担体および/または希釈剤とを含む獣医学的医薬組成物に及ぶ。
【0215】
好ましい実施形態では、前記III型インターフェロンがIFN-λ、特にChIFN-λである。
【0216】
前記医薬組成物が融合分子を含む場合、前記融合物は、好ましくは、ChIFN-λまたはその機能的フラグメント、誘導体もしくはホモログと、I型インターフェロン、例えばIFN-α、IFN-β、ChIFN-α、ChIFN-β、II型インターフェロン、例えばIRN-α、もしくはIII型インターフェロン、または他の任意のサイトカインを含むリストから選択される第2のサイトカインとの融合物である。
【0217】
医薬組成物の活性成分は、個々の症例に応じた量で投与された場合に、ある動物種、特に家禽、飼育鳥または狩猟鳥における免疫応答を刺激し、強化し、または他の形で助長する活性を示すと考えられる。その量の変動は、例えば、そのサイトカイン、また場合によっては、免疫応答の刺激に関与する抗原に依存する。例えば、体重1キログラムあたり1日あたり約0.5μg〜約20mgの特定サイトカイン(他のサイトカインと併用してもよい)が要求されうる。用量・用法は最適な治療応答が得られるように調節することができる。例えば、数個に分割した用量を、1日間隔、1週間間隔もしくは1ヶ月間隔の一つ以上で、または他の適切な時間間隔で投与するか、用量を状況に応じて比例的に減少させることができる。活性化合物は、卵内注射もしくは孵化後の注射によって、または経口摂取により、任意の好都合な方法で投与するか、遺伝子配列によって、例えばウイルスベクターまたは細菌ベクターに入れて、投与することができる。
【0218】
活性化合物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、および/またはその混合物中ならびに油中に調製された分散系として投与することもできる。通常の貯蔵および使用条件下では、これらの調製物は微生物の成長を防止するために保存剤を含有する。
【0219】
非経口投与に適した医薬剤形には、滅菌された水溶液(水溶性である場合)または水性分散系、および滅菌された注射可能な溶液剤または分散系を即時調製するための滅菌粉末が含まれる。いずれの場合も、剤形は滅菌状態になければならず、注射器で容易に扱える程度に流動性でなければならない。医薬剤形は、製造条件下および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に抗して保存されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、および植物油などを含有する溶媒または分散媒であることができる。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングを使用することによって、または分散系の場合であれば要求される粒径を維持することによって、または界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、さまざまな抗細菌および抗真菌剤、例えば抗生物質、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張化剤、例えば糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましいだろう。注射可能な組成物の長期間吸収は、例えば吸収を遅延させる薬剤を組成物中に使用することによって達成することができる。
【0220】
滅菌された注射可能な溶液剤は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、上に列挙した他のさまざまな成分と一緒に、適当な溶媒に組み込み、次にそれを濾過滅菌することによって、製造される。一般に、分散系は、種々の滅菌された活性成分を、基礎分散媒と上に列挙したものから選択される必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって製造される。滅菌注射可能溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は、活性成分+所望する任意の追加成分の粉末を、予め滅菌濾過されたその溶液から生じさせる、真空乾燥および凍結乾燥技法である。
【0221】
獣医学的使用に適した担体および/または希釈剤には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、水性溶液、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張化および吸収遅延剤などが含まれる。医薬活性物質のためのそのような媒質および薬剤の使用は当技術分野ではよく知られている。従来の媒質または薬剤は、それらが活性成分と不適合でない限り、本組成物における使用が考えられる。補助活性成分も本組成物に組み込むことができる。これは、特に、本発明が多価ワクチンまたは多成分サイトカイン分子に及ぶ場合に考えられる。
【0222】
本発明の医薬獣医学的組成物は、鳥類III型インターフェロンまたはそれを含む融合分子の他に、1つ以上の他の活性化合物、例えば抗原および/または免疫刺激化合物を含みうる。
【0223】
サイトカインは、生送達システムによって、例えば細菌発現系を使ってサイトカインタンパク質を腸管内菌叢に組み込むことができる細菌中で発現させることなどによって、送達することもできる。あるいは、ウイルス発現系を利用するか、組換えワクチンに組み込むこともできる。これに関連して、ウイルス発現の一形態は、一般にスプレー、試料または水による、生ベクターの投与であり、ここでは、感染有効量の生ベクター(例えばウイルスまたは細菌)が動物に与えられる。ウイルス発現系のもう一つの形態は、細胞に感染する能力は持つが、その中で複製することはできない、非複製ウイルスベクターである。非複製ウイルスベクターは、サイトカインへと一過性に発現させるための遺伝物質を導入する手段となる。そのようなベクターの投与様式は、生ウイルスベクターと同じである。
【0224】
以下に限定でない図面と実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0225】
ニワトリIII型IFNのクローニング、発現および特徴づけ
材料および方法
リンパ球の単離および細胞培養
4週齢の特定病原体フリー(SPF)ニワトリから脾臓を収集し、個々の脾臓から、DMEMが入ったペトリ皿に70μm濾過器を通して分散させることにより、白血球の単細胞懸濁液を調製した。懸濁液をリンフォプレップ(lymphoprep)(Nicomed Pharma AS、オスロ)に重層し、1500gmaxで15分間遠心分離した。界面の単核球を集め、洗浄し、再懸濁し、10%FCSを補足したDMEM中で培養した。連続ニワトリマクロファージ様細胞株HD11を、6%FCS、2mMグルタミン、ペニシリン(100U/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を補足したRPMI中で維持した。HD11細胞を必要に応じて継代し、IFN処置に先だって、80%コンフルエンスになるまで終夜播種した。
【0226】
試薬類
合成dsRNAアナログ、ポリ(I:C)(Invivogen)、およびssRNAアナログポリC(Invivogen)は、製造者の指示に従って製造し、保存した。ニワトリIL6(chIL6)(Asifら、投稿準備中)およびChIFNγ(ChIFNγ)(DigbyおよびLowenthal 1995)はどちらも我々の研究室で作製された。核酸は-80℃で保存し、サイトカインは4℃で保存した。
【0227】
ウイルス培養
H1N1型の一つ、インフルエンザウイルスA/PR/8/34(PR8)(Talonら, 2000)を、10日齢の発育鶏卵の尿膜腔中で、48時間培養した。次に、ウイルスを含有する尿膜腔液を収集し、小分けして、-80℃で保存した。次に、ウイルスをHD11ニワトリマクロファージ中で5回継代し、組織培養感染量の50%エンドポイント(TCID50)を決定することによって、これらの細胞の単層で、感染性をタイトレートした。
【0228】
RNA単離逆転写
Tri試薬(Sigma-Aldrich)を製造者の指示に従って使用することにより、RNAを収集した。抽出したRNAを、DNase1(Sigma-Aldrich)を製造者の指示に従って使用することにより、DNase処理に付した。次に、DNase処理したRNAを、逆転写キット(Promega)を使って、相補DNA(cDNA)に逆転写した。
【0229】
クローニングおよび発現
完全長ChIFNλ、ChIFNα、およびChIFNβを増幅するためにIFN特異的プライマーを設計した。それらを表3に記載する。合成されたcDNAを、遺伝子特異的プライマーと一緒に、標準的PCR増幅(これは、94℃で1分間、55℃で1分間および72℃で1分間の35サイクルと、最後のサイクル後に72℃でさらに15分間の伸張とを使って行なわれる)に使用した。ゲル抽出キット(Qiagen)を使って関心対象のDNA産物をゲル精製し、配列解析のためにpGemT-Easy(Promega)中にライゲートした。これらのベクターをpGemIFNλ、pGemIFNαおよびpGemIFNβと名付けた。
【0230】
pQE50IFNλ、pQE50IFNαおよびpET32IFNβ発現ベクターの構築
プライマーλ3およびλ4(表3)はそれぞれBamHIおよびHindIII制限部位を含み、標準的PCRでpGemIFNλからChIFNλ成熟ORFを増幅するために使用した。PCRフラグメントを精製し、制限消化した後、BamHIおよびHindIIIで制限消化したpQE50(Qiagen)発現ベクターの6×Hisタグ配列の下流にライゲートすることで、pQE50IFNλを作製した。プライマーα3およびα4(表3)を使って、ChIFNαを、発現ベクターpQE30(Qiagen)中に、同様にサブクローニングすることにより、pQE30IFNαを作製した。プライマーβ3およびβ4(表3)を使って、ChIFNβを、発現ベクターpET32(Novagen)中に、同様にサブクローニングすることにより、pET32IFNβを作製した。BamHIおよびHindIIIを使った制限消化ならびにDNA配列決定を使って、3つの発現ベクターをすべて確認した。
【0231】
組換えChIFNλ、αおよびβの発現および精製
ニワトリIFNのそれぞれを標準的な発現手法を使って発現させた(Qiagen, 1997)。大腸菌TOP10F'(pQE30IFNα)、TOP10F'(pET32IFNβ)またはTOP10F'(pQE50IFNλ)の培養物を培養し、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)で誘導してから、遠心分離によって収集した。超音波処理した細胞溶解物をトリトンX-100で処理し、金属アフィニティクロマトグラフィーを使ってタンパク質を固定化してから、イミダゾールで溶出させた。分析用の試料を各精製ステップで集め、12%SDS-PAGEゲルに流した。Detoxiゲル(Pierce、米国)を使って精製試料からLPSをすべて除去することにより、試料の毒性を除去した。
【0232】
セムリキ森林ウイルス(SFV)バイオアッセイを使ったIFN活性
IFN活性は、既述のように(Lowenthalら, 1995)、SFV媒介細胞溶解の効果を阻害するその能力によって決定した。ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)を96ウェルプレートに5×104細胞/ウェルの割合で播種し、10%FCSを補足したDMEM中、37℃で終夜インキュベートした。次に培地を捨て、二つ一組にして試料を加えた。細胞を試料と共に18時間インキュベートしてから、SFV(103TCID50/ml)を含有する100μlのDMEMで培地を置き換え、37℃で終夜インキュベートした。ニュートラルレッド色素の取り込みおよび吸光度(OD540)の測定によって細胞生存度を決定した。
【0233】
硝酸産生アッセイ
ニワトリ細胞株(HD11)を使って、Greissアッセイ(Miglioriniら, 1991)によって決定される亜硝酸の蓄積を測定し(Greenら, 1982;Sungら, 1991)、次に吸光度(OD540)を測定することにより、一酸化炭素産生を決定した。
【0234】
PR8阻害によるIFN活性
HD11細胞を80%コンフルエンスまで成長させてからIFNを加えた。PR8を、トリプシン(5μg/ml)を含有するRPMIに加えてから、ウェルに加え(moi0.1)、1時間インキュベートした。次に、ウイルスを含有する培地を、1%FCSおよび5μg/mlトリプシンを補足したRPMIで置き換え、37℃で90時間までインキュベートした。次に、赤血球凝集活性により、上清をウイルスの存在について試験した。
【0235】
赤血球凝集アッセイ
赤血球凝集(HA)アッセイは、マイクロタイタープレート(Thermo)で行なった。PBS中のウイルス試料の2倍段階希釈液を、SPFニワトリから収集した等量の0.5%(vol/vol)懸濁新鮮ニワトリ赤血球と混合した。混合したウイルスと赤血球とを室温で30分間インキュベートした。付着した均一な赤血球層を含んでいるウェルを凝集したとみなし、陽性と評価した。陽性凝集を示す最も低いウイルス希釈液を1mlあたりのHA単位(HAU)として記録した(Liら, 2005)。
【0236】
半定量的RTPCR(qRT-PCR)
処置後の遺伝子発現量の相対的定量を、ABI Prism 7700配列決定システムで、比較閾値サイクル(comparative threshold cycle;Ct)法を使って行なうことにより、製造者の指示(Applied Biosystems)に従って、遺伝子発現量の変化倍率を導き出した。既述(Karpalaら、印刷中)のように算術式ΔΔCt(Applied Biosystems)で得られる平均値を使って、相対的遺伝子発現量を算出した。
【0237】
結果
ChIFNλの分子クローニングおよびバイオインフォマティック解析
ポリ(I:C)で2時間刺激したニワトリ脾臓白血球由来のcDNAを、ニワトリIFNλのPCR増幅のためのテンプレートとして使用した。561塩基対(bp)のバンドが同定された(データ未掲載)。ChIFNαおよびChIFNβのクローニングについても、それぞれ582bpおよび612bpのDNAバンドを、同様にして得た(データ未掲載)。3つのIFNすべての配列を得た。ChIFNαおよびβ配列は先に記載されている(Sekellickら, 1994)。したがって新たに同定されたニワトリ遺伝子をChIFNλと名付けた。ChIFNλのゲノム構造は、5つのエキソン領域に変性されているらしく、21kDaの分子量を持つ186aaの予測タンパク質を与えた(図3)。ChIFNλのシグナルペプチド解析(Bendtsenら, 2004)により、残基21と残基22の間の切断部位が明らかになった(図3)。ChIFNλはHuIFNλIIに対して比較的高いアミノ酸(aa)同一性を持つ(36%)が、他のニワトリサイトカインとの比較で見いだされるaa同一性は比較的低かった(表4)。翻訳されたChIFNλを先に定義された他のIFNλIIと比較し、保存された残基を同定した(図2)。
【0238】
さらに、系統発生解析により、ChIFNλはHuIFNλII(IL28A)近くにクラスター形成することが示され、ChIFNλは構造的にHuIFNλ2に最も類似することが裏付けられた(図4)。
【0239】
組換えChIFNα、βおよびλの発現
各ChIFNの成熟タンパク質をコードするORFをその発現ベクターにサブクローニングし、発現させ、精製した後、SDS-PAGEを使って解析した。発現されたChIFNαおよびChIFNλの予想分子量は約22kDaだった(図5AおよびC)。ChIFNβに使用したpET32a発現系は、約34kDaの予想分子量をもたらした(図5B)。
【0240】
ChIFNλはHD11ニワトリマクロファージ様細胞においてChIFNβと同様に一酸化窒素産生を刺激する
反応性酸素および窒素種(ROS)の産生は、ウイルスの重要な細胞性阻害機序である(Schroderら, 2004)。ChIFNγは、一酸化窒素レベルに影響を及ぼす代謝産物の産生を刺激することが示されている(Lowenthalら, 1995)。ChIFNλの一酸化窒素強化活性を調べるために、HD11細胞を組換え(r)ChIFNλの2倍希釈系列で処理し、rChIFNγおよびrChIFNβと比較した。rChIFNλはrChIFNβと同様に一酸化窒素の産生を強化した(図6)。rChIFNγは試験したIFNのなかで最も高い一酸化窒素活性を示した(図6)。
【0241】
ChIFNλのインビトロ生物活性はChIFNαより低い
ChIFNλのウイルス阻害剤特性を評価するために、rChIFNαおよびrChIFNλをSFVバイオアッセイで比較した。CFE細胞における後続のウイルス誘発細胞溶解は各rChINFによって減少した(図7)。
【0242】
ChIFNλはインフルエンザ(PR8)に対して阻害的影響を持つ
ChIFNλはSFVに対してウイルス阻害効果を示したので、インフルエンザに関する阻害効果を決定した。rChIFNα、rChIFNβまたはrChIFNλで前処理してからPR8に感染させたHD11細胞は、HAアッセイで決定したところ、PR8に対して、さまざまな濃度依存的防御レベルを示した(図8)。高いrChIFNλ用量(100ng/ml)では、ウイルス価は、感染後(pi)40時間時点のウイルスなしから90時間piにおける320HAUまで、すべての時点にわたって、無処理細胞よりも低かった(図8)。最も低い用量(25ng/ml)は多少の防御をもたらし、中間用量(50ng/ml)からは中間的効果が得られた(図8)。これにより、IFNλはニワトリマクロファージにおいてインフルエンザを阻害することが明確に証明された。rChIFNαの適用は、90時間(pi)において、最高用量(100ng/ml)でのウイルスの検出なしから、最低用量(25ng/ml)での1280HAU/mlまでの範囲の、最も強い陽性効果を持っていた(図8)。ChIFNβも、90時間piにおいて、高用量(100ng/ml)でのウイルス検出なしから、低用量(25ng/ml)での5120HAU/mlまでの範囲の防御を与えた(図8)。総合すると、試験したすべてのIFNが、インフルエンザ価を用量依存的に抑制した。
【0243】
ニワトリ白血球は、1型IFNと同様に、IFNλをアップレギュレートする
IFNλは抗ウイルス応答に関して1型IFNと同様に機能するようだったので、ChIFNλが1型IFN、ChIFNαおよびChIFNβと同じような形で誘導されうるかどうかを決定した。したがって、ポリ(I:C)を使って脾臓白血球を刺激し、ChIFNα、ChIFNβ、およびChIFNλのmRNAレベルをqRT-PCRによって測定した。3つのChIFNはすべて、刺激の2時間後にアップレギュレートされることがわかった(図9)。ChIFNα mRNAは86倍、ChIFNβは52倍、そしてChIFNλは15倍増加した(図9)。IFNアップレギュレーションの程度は、刺激後4時間の時点で、どのIFNでも減少した(図9)。ChIFNλはChIFNαまたはChIFNβほどにはアップレギュレートされなかった。
【0244】
TLR3は1型IFNによって誘導されるがIFNλでは誘導されない
1型IFN誘導性遺伝子がChIFNλによって同様に誘導されうるかどうかを調べた。先の研究により、抗ウイルス関連受容体であるTLR3は1型ISGであることが示されている(Tissariら, 2005)。そこで、ニワトリ脾臓白血球をrChIFNα、rChIFNβまたはrChIFNλと共に培養したところ、1型IFN(rChIFNα、rChIFNβ)だけがTLR3を有意に誘導することが明らかになった(図10)。rChIFNαおよびrChIFNβはTLR3を、50ng/mlを2時間適用した後にそれぞれ6.6倍および7.5倍、より高用量の100ng/mlでは11.3倍および12.3倍、有意に誘導したが(図10)、rChIFNλはTLR3誘導に対してほとんど効果がなかった。
【実施例2】
【0245】
方法
H5N1ウイルスA/ベトナム/1203/04(V/1203)インフルエンザウイルスを10日齢発育特定病原体フリー(SPF)鶏卵の尿膜腔液中で継代した。尿膜腔液を収集し、接種のために小分けして、-80℃で保存した。SPF白色レグホンニワトリ(4週齢)の眼内に50%発育鶏卵感染量(50 egg infectious dose;EID50)のV/1203を接種した。感染後(p.i.)24時間でニワトリを安楽死させ、RNA抽出とその後のIFNλのqRT-PCR解析のために、組織試料を直ちに収集した。
【0246】
IFNλを使ったウイルス防御は、Karpala, A. J., K. R. Morris, M. M. Broadway, P. G. McWaters, T. E. O'Neil, K. E. Goossens, J. W. LowenthalおよびA. G. Bean. 2008「Molecular cloning, expression, and characterization of chicken IFN-lambda」J Interferon Cytokine Res 28:341-50に記載の方法に従って行なった。
【0247】
インフルエンザウイルスおよび抗血清の卵内接種は、精製抗chIFNλを卵1個あたり1000μg、または20μgに希釈することによって行なった。200μLの抗chIFN抗体を200μLのワクチンウイルスと共に各卵の尿膜腔液中に注射した。48時間後に、5mLの尿膜腔液を各卵から取り出し、赤血球凝集アッセイによってウイルス価を決定した(Karpalaら, 2008)。
【0248】
IFNλアジュバント活性は、ヒツジ赤血球(SRBC)をIFNλと共に、またはIFNλなしで、注入することによってアッセイした。4群のSPFニワトリに、0.01mlのSRBCを各アジュバントと共に0日目に注射し、次に15日目にSRBCのみを再び注射した。ニワトリからさまざまな時点で採血し、総抗体量を、Van der ZijppおよびLeenstra, Poultry Sci. 59:1363-1369の方法に従って、HAによって決定した。
【0249】
結果
ニワトリにおけるH5N1(鳥インフルエンザ)感染後にはIFNλ発現が誘導される(図11)。IFNλを適用すると、感染前でも感染後でも、インビトロでインフルエンザからの防御が起こるが、IFNλを感染前に適用した方が、防御は強化されることが、証明された(図12)。これらの知見は、chIFNλ活性の阻害(IFNλに対する抗体によるもの)が卵におけるインフルエンザワクチンの増殖を増強するという事実と合致した(図13)。
【0250】
IFNλは、抗原(ヒツジ赤血球)を接種した後の抗体の産生を刺激するので、アジュバント能を示すことが証明された(図14)。IFNλの適用は、ConA誘発性リンパ球増殖を阻害した(図15)。
【0251】
本明細書に記載した発明に、本明細書に具体的に記載したもの以外の異型および変更を加えうることは、当業者には理解されるだろう。本発明には、そのような異型および変更がすべて含まれると理解されるべきである。本発明には、本明細書において言及しまたは示したステップ、特徴、組成物および化合物のすべてが、個別にまたは集合的に含まれ、また、前記ステップまたは特徴の任意の二つ以上のありとあらゆる組合せも含まれる。
【0252】
文献目録
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【0253】
【表3】

【0254】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥類インターフェロン-ラムダ(IFN-λ)ポリペプチドもしくはその機能的フラグメントをコードする単離核酸分子、または、鳥類インターフェロン-ラムダ(IFN-λ)ポリペプチドもしくはその機能的フラグメントをコードする核酸分子に相補的な単離核酸分子。
【請求項2】
前記鳥類種がニワトリ、シチメンチョウ、バンタム、ウズラ、ホロホロチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、ハト、カナリア、セキセイインコ、オウムまたはフィンチである、請求項1に記載の単離核酸分子。
【請求項3】
前記鳥類種がニワトリである、請求項2に記載の単離核酸分子。
【請求項4】
配列番号2もしくは4に記載されているアミノ酸配列またはその機能的フラグメントもしくは鳥類ホモログ、または配列番号2もしくは4に対し、その配列の全長にわたって、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を持つアミノ酸配列、をコードするヌクレオチド配列、または、配列番号2もしくは4に記載されているアミノ酸配列またはその機能的フラグメントもしくは鳥類ホモログまたは配列番号2もしくは4に対し、その配列の全長にわたって、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を持つアミノ酸配列をコードする配列に相補的なヌクレオチド配列、または低ストリンジェンシー条件下で前記核酸分子にハイブリダイズする能力を持つ核酸配列、を含む、請求項3に記載の単離核酸分子、または該単離核酸分子の機能的フラグメントもしくは鳥類ホモログ。
【請求項5】
あるヌクレオチド配列またはその配列に相補的なヌクレオチド配列を含み、該ヌクレオチド配列が、配列番号1または3に記載されているとおりであるか、配列番号1または3に対し、その配列の全長にわたって、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を持つヌクレオチド配列であるか、低ストリンジェンシー条件下で配列番号1もしくは3またはその相補型にハイブリダイズする能力を持つヌクレオチド配列である、請求項3に記載の単離核酸分子、または該単離核酸分子の機能的フラグメントもしくは鳥類ホモログ。
【請求項6】
配列番号1もしくは3に記載のヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の単離核酸分子、または該分子の機能的フラグメント。
【請求項7】
前記ストリンジェンシー条件が中ストリンジェンシー条件である、請求項4または5に記載の単離核酸分子。
【請求項8】
前記ストリンジェンシー条件が高ストリンジェンシー条件である、請求項4または5に記載の単離核酸分子。
【請求項9】
前記配列がcDNA配列である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の単離核酸分子。
【請求項10】
前記配列がゲノム配列である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の単離核酸分子。
【請求項11】
鳥類インターフェロン-ラムダ(IFN-λ)ポリペプチドまたはその機能的フラグメントである、単離ポリペプチド。
【請求項12】
前記鳥類種がニワトリ、シチメンチョウ、バンタム、ウズラ、ホロホロチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、ハト、カナリア、セキセイインコ、オウムまたはフィンチである、請求項11に記載の単離ポリペプチド。
【請求項13】
前記鳥類種がニワトリである、請求項12に記載の単離ポリペプチド。
【請求項14】
配列番号2もしくは4に記載のアミノ酸配列、または配列番号2もしくは4に対し、その配列の全長にわたって、少なくとも約60%、65%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれ以上の同一性を持つアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の単離ポリペプチド、または該単離ポリペプチドの機能的フラグメントもしくは鳥類ホモログ。
【請求項15】
請求項4〜10のいずれか一項に記載の核酸配列によってコードされる、請求項14に記載の単離ポリペプチド。
【請求項16】
請求項11〜15のいずれか一項に記載の鳥類インターフェロン-λポリペプチドと、
i)III型インターフェロン、または
ii)I型もしくはII型インターフェロン、例えばIFN-α、IFN-β、IFN-γ、Ch IFN-α、Ch IFN-β、もしくはCh IFN-γを含むリストから選択されるものなど、
のどちらか一方との融合ポリペプチド。
【請求項17】
前記I型、II型またはIII型インターフェロンが鳥類I型、II型またはIII型インターフェロンである、請求項16に記載の融合ポリペプチド。
【請求項18】
前記鳥類種がニワトリ、シチメンチョウ、バンタム、ウズラ、ホロホロチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、ハト、カナリア、セキセイインコ、オウムまたはフィンチである、請求項17に記載の融合ポリペプチド。
【請求項19】
前記鳥類種がニワトリである、請求項18に記載の融合ポリペプチド。
【請求項20】
請求項16〜19のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項21】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の核酸分子である核酸分子を含む遺伝子コンストラクト。
【請求項22】
請求項21に記載されている核酸分子である核酸分子を含む遺伝子コンストラクト。
【請求項23】
細胞中で組換え鳥類インターフェロン-λ分子を生産する方法であって、
(i)請求項21または22に記載の遺伝子コンストラクトを前記細胞中に導入するステップ;
(ii)前記核酸分子が発現されるのに十分な時間、十分な条件下で、前記細胞を培養するステップ、
を含む方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法によって生産される組換え鳥類インターフェロン-λ分子。
【請求項25】
請求項24に記載の組換え鳥類インターフェロン-λを発現させる単離細胞。
【請求項26】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、単離細胞。
【請求項27】
請求項21〜22のいずれか一項に記載の遺伝子コンストラクトを含む、単離細胞。
【請求項28】
真核細胞である、請求項25〜27のいずれか一項に記載の単離細胞。
【請求項29】
前記真核細胞が鳥類細胞である、請求項28に記載の単離細胞。
【請求項30】
原核細胞である、請求項25〜27のいずれか一項に記載の単離細胞。
【請求項31】
細菌である、請求項30に記載の単離細胞。
【請求項32】
請求項11〜19または24のいずれか一項のポリペプチドに結合する能力を持つ抗体分子。
【請求項33】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの核酸および/またはポリペプチド配列が記録されている、コンピュータ可読媒体。
【請求項34】
鳥類インターフェロン-λ遺伝子配列を同定するための方法であって、核酸試料を、請求項1〜10のいずれか一項に記載のヌクレオチド配列に対する鳥類インターフェロン-λプローブのハイブリダイゼーション有効量と接触させ、次に該ハイブリダイゼーションを検出することを含む方法。
【請求項35】
前記プローブが、配列番号1もしくは3に記載されているヌクレオチド配列、またはその相補鎖、もしくはそれらの機能的フラグメントに対するか、または由来する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
第1プライマー分子が配列番号1もしくは3に記載のヌクレオチド配列のセンス鎖またはそのホモログに対するものであり、第2プライマー分子が配列番号1もしくは3に記載されているヌクレオチド配列の相補鎖またはそのホモログに対するものである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
鳥類における請求項11〜15の鳥類インターフェロン-λポリペプチドのレベルを測定するためのアッセイであって、前記鳥類から得た生物学的試料を、請求項32に記載の抗体と、抗体-インターフェロン-λ複合体を形成させるのに十分な時間、十分な条件下で、接触させるステップ、および次に該複合体形成を検出するステップを含む方法。
【請求項38】
鳥類における免疫応答を誘発またはアップレギュレートするための方法であって、前記鳥類に、請求項11〜15のいずれか一項に記載のポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくはホモログ、または請求項16〜19のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドの有効量を、免疫応答を誘発し、強化し、あるいは維持するのに十分な時間、十分な条件下で、投与することを含む方法。
【請求項39】
鳥類の処置または予防方法であって、前記鳥類に、請求項11〜15のいずれか一項に記載のポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくはホモログ、または請求項16〜19のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドの有効量を、免疫応答を誘発し、強化し、あるいは維持するのに十分な時間、十分な条件下で投与することを含む方法。
【請求項40】
病原性生物に曝露または感染した鳥類の処置方法であって、前記鳥類に、請求項11〜15のいずれか一項に記載のポリペプチドまたはその機能的フラグメントもしくはホモログ、または請求項16〜19のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドの有効量を、前記鳥類の免疫応答性を維持し、またはアップレギュレートするのに十分な時間、十分な条件下で投与することを含む方法。
【請求項41】
前記鳥類が病原体に対して感受性であるか、病原体に感染している、請求項38または39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記病原体がウイルス、細菌または寄生虫である、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記病原体が鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス、鳥類伝染性気管支炎ウイルス、鳥類伝染性喉頭気管炎ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、ニューキャッスル病ウイルス、マレック病ウイルス、ニワトリ貧血ウイルス、大腸菌、サルモネラ属種、アイメリア属種、またはマイコプラズマ属種である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記鳥類がニワトリ、シチメンチョウ、バンタム、ウズラ、ホロホロチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、ハト、カナリア、セキセイインコ、オウムまたはフィンチである、請求項38〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記鳥類がニワトリである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ポリペプチドが、III型インターフェロン、I型またはII型インターフェロンから選択される第2の鳥類サイトカイン分子と組み合わせて投与される、請求項38〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記第2の鳥類サイトカイン分子がIFN-α、IFN-β、IFN-γ、Ch IFN-α、Ch IFN-β、またはCh IFN-γである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
鳥類における、治療のための、請求項11〜19に記載の鳥類インターフェロン-λポリペプチドまたは請求項1〜10に記載の核酸分子の使用。
【請求項49】
鳥類における免疫応答の維持、刺激または強化に使用するための請求項11〜19に記載の鳥類インターフェロン-λポリペプチドまたは請求項1〜10のいずれか一項に記載の単離核酸分子の使用。
【請求項50】
鳥類における病原体感染の治療的または予防的処置のための医薬の製造における、請求項11〜19のいずれか一項の鳥類インターフェロン-λポリペプチドまたは請求項1〜10のいずれか一項の核酸分子の使用。
【請求項51】
前記病原体がウイルス、細菌または寄生虫である、請求項50に記載の使用。
【請求項52】
前記病原体が鳥インフルエンザウイルス、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス、鳥類伝染性気管支炎ウイルス、鳥類伝染性喉頭気管炎ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、ニューキャッスル病ウイルス、マレック病ウイルス、ニワトリ貧血ウイルス、大腸菌、サルモネラ属種、アイメリア属種、またはマイコプラズマ属種である、請求項51に記載の使用。
【請求項53】
前記鳥類がニワトリ、シチメンチョウ、バンタム、ウズラ、ホロホロチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、エミュー、ハト、カナリア、セキセイインコ、オウムまたはフィンチである、請求項48〜52のいずれか一項に記載の使用。
【請求項54】
前記鳥類がニワトリである、請求項53に記載の使用。
【請求項55】
前記ポリペプチド、核酸分子または医薬が、摂取による、または卵内注射、孵化後注射、腹腔内注射、皮内注射、筋肉内注射、眼内注射、静脈内注射もしくは皮下注射による鳥類動物への投与に適した形態にある、請求項38〜47のいずれか一項に記載の方法または請求項48〜52のいずれか一項に記載の使用。
【請求項56】
鳥類による摂取に適した形態にある請求項11〜19のいずれか一項に記載の組換え鳥類インターフェロン-λポリペプチドまたは請求項1〜10いずれか一項の核酸分子を含む、薬用または治療用食糧。
【請求項57】
請求項11〜19のいずれか一項のポリペプチドと、場合によっては、薬学的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤とを含む、アジュバント。
【請求項58】
請求項11〜19のいずれか一項のポリペプチドと、獣医学的使用に許容できる1つ以上の担体および/または希釈剤とを含む獣医学的医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−538662(P2010−538662A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525166(P2010−525166)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001390
【国際公開番号】WO2009/036510
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【出願人】(510079569)オーストラリアン・ポウルトリー・シーアールシー・プロプライエタリー・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】AUSTRALIAN POULTRY CRC PTY LTD
【Fターム(参考)】