方向制御弁
【課題】連通するポートを切り替える際に生じる作動流体のエネルギー損失を低減する。
【解決手段】連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが連通し且つ連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通が遮断された状態では、可動部材12の内挿穴12bの底面12cは可動部材14に対し中心軸方向の一方側へ所定量L0離れている。連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aから連通切替ポート10bへ切り替えるよう可動部材12,14が中心軸方向の他方側へ移動する行程では、可動部材12は、中心軸方向の他方側へ所定量L0移動してから、内挿穴12bの底面12cにて可動部材14に当接して可動部材14を中心軸方向の他方側へ押圧する。
【解決手段】連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが連通し且つ連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通が遮断された状態では、可動部材12の内挿穴12bの底面12cは可動部材14に対し中心軸方向の一方側へ所定量L0離れている。連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aから連通切替ポート10bへ切り替えるよう可動部材12,14が中心軸方向の他方側へ移動する行程では、可動部材12は、中心軸方向の他方側へ所定量L0移動してから、内挿穴12bの底面12cにて可動部材14に当接して可動部材14を中心軸方向の他方側へ押圧する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向制御弁に関し、特に、第1及び第2連通切替ポートと連通対象ポートが形成された弁ボディと、弁ボディの内部で中心軸方向に移動して連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替える可動部材と、を備える方向制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の方向制御弁の構成例を図13を用いて説明する。図13に示す方向制御弁は、連通切替ポート110a,110bと連通対象ポート110cとが形成された弁ボディ110と、弁ボディ110の内部でその中心軸116に平行な方向(以下、中心軸方向とする)に移動することで、連通対象ポート110cに連通するポートを連通切替ポート110aと連通切替ポート110bの間で切り替える可動部材112と、を備える三方弁である。連通切替ポート110aには作動油の圧力PLが供給され、連通切替ポート110bには作動油の圧力Pcが供給される。そして、連通対象ポート110cは、切替室(図示せず)に接続されている。ここで、連通切替ポート110bへの供給圧力Pcは、連通切替ポート110aへの供給圧力PLより高く設定されている。弁ボディ110の内部における可動部材112よりも中心軸方向の一方側(図13の上側)には制御室118が形成されており、制御室118内に供給される作動油の圧力によって可動部材112に中心軸方向の他方側(図13の下側)への推力を作用させることができる。制御室118内の圧力は、パイロット弁120の開閉動作により制御される。また、可動部材112には、ばね126により中心軸方向の一方側への付勢力が作用している。
【0003】
パイロット弁120が閉じている場合は、可動部材112は、制御室118内の圧力によって中心軸方向の他方側へ押圧されており、弁ボディ110に形成されたシート部110dに密着している。そのため、連通切替ポート110bと連通対象ポート110cが連通し且つ連通切替ポート110aと連通対象ポート110cの連通が遮断され、切替室内の圧力はPcとなる。次に、パイロット弁120を開けると、制御室118内の圧力が低下するため、可動部材112は、ばね126の付勢力によりシート部110dから離れて中心軸方向の一方側へ移動する。これによって、連通切替ポート110aと連通対象ポート110cが連通する。そして、可動部材112が弁ボディ110に形成されたシート部110eに密着することで、連通切替ポート110bと連通対象ポート110cの連通が遮断される。このように、パイロット弁120を閉状態から開状態に切り替えることで、連通対象ポート110cに連通するポートが連通切替ポート110bから連通切替ポート110aへ切り替えられる。その結果、切替室内の圧力がPcからPLへ低下する。
【0004】
次に、パイロット弁120を閉じると、制御室118内の圧力が増大するため、可動部材112は、制御室118内の圧力によりシート部110eから離れて中心軸方向の他方側へ移動する。これによって、連通切替ポート110bと連通対象ポート110cが連通する。そして、可動部材112が弁ボディ110に形成されたシート部110dに密着することで、連通切替ポート110aと連通対象ポート110cの連通が遮断される。このように、パイロット弁120を開状態から閉状態に切り替えることで、連通対象ポート110cに連通するポートが連通切替ポート110aから連通切替ポート110bへ切り替えられる。その結果、切替室内の圧力がPLからPcへ増大する。なお、この種の方向制御弁は、下記特許文献1にも開示されている。
【0005】
また、その他の背景技術として、下記特許文献2〜5による燃料噴射装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−227747号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第10229419号明細書
【特許文献3】特表2002−539372号公報
【特許文献4】特開2001−90634号公報
【特許文献5】特表2005−500472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図13に示す方向制御弁においては、連通対象ポート110cに連通するポートを切り替える際に、連通切替ポート110a,110bの両方が連通対象ポート110cに連通する期間が存在する。例えば連通対象ポート110cに連通するポートを連通切替ポート110aから連通切替ポート110bへ切り替えるよう可動部材112が中心軸方向の他方側へ移動する行程では、可動部材112は、シート部110eに対し離れた後にシート部110dに密着する。そのため、図14に示すように、可動部材112がシート部110eに対し離れてからシート部110dに密着するまでの期間は、連通切替ポート110a,110bの両方が連通対象ポート110cに連通することになる。これによって、高圧側の連通切替ポート110bへ供給された作動油が低圧側の連通切替ポート110aへ流出し、作動油のエネルギー損失が増大してしまう。同様に、連通対象ポート110cに連通するポートを連通切替ポート110bから連通切替ポート110aへ切り替えるよう可動部材112が中心軸方向の一方側へ移動する行程でも、可動部材112がシート部110dに対し離れてからシート部110eに密着するまでの期間は、連通切替ポート110a,110bの両方が連通対象ポート110cに連通することになる。以上のように、図13に示す方向制御弁においては、連通対象ポート110cに連通するポートを切り替える際に、高圧側の連通切替ポート110bへ供給された作動油が低圧側の連通切替ポート110aへ流出し、作動油のエネルギー損失が増大してしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は、連通するポートを切り替える際に生じる作動流体のエネルギー損失を低減することができる方向制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る方向制御弁は、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
【0010】
本発明に係る方向制御弁は、第1及び第2連通切替ポートと連通対象ポートが形成された弁ボディと、弁ボディの内部で中心軸方向に移動して連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替える可動部材と、を備える方向制御弁であって、可動部材は、中心軸方向の一方側へ移動して第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、中心軸方向の他方側へ移動して第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断する第1可動部材と、中心軸方向の他方側へ移動して第2連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、中心軸方向の一方側へ移動して第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断する第2可動部材と、を含み、第1可動部材には、第2可動部材に対し中心軸方向の一方側から当接して中心軸方向の他方側への押圧力を作用させることが可能な押圧部が設けられており、押圧部は、第1連通切替ポートと連通対象ポートが連通し且つ第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通が遮断された状態では、第2可動部材に対し中心軸方向の一方側へ第1所定量離れており、第1可動部材に作用する中心軸方向の他方側への推力により第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第2連通切替ポートと連通対象ポートを連通させるよう第1及び第2可動部材が中心軸方向の他方側へ移動する行程では、第1可動部材は、中心軸方向の他方側へ第1所定量移動してから、押圧部にて第2可動部材を中心軸方向の他方側へ押圧することを要旨とする。
【0011】
本発明の一態様では、弁ボディには、第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために第1可動部材が中心軸方向の一方側から当接する第1シート部と、第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために第2可動部材が中心軸方向の他方側から当接する第2シート部と、が設けられていることが好適である。
【0012】
また、本発明の一態様では、第1可動部材には、第1シート部に対し中心軸方向の一方側から当接可能な第1当接部が設けられ、第1可動部材または第2可動部材には、第1シート部と第1当接部の距離が第2所定量以下のときに第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を塞ぐ遮断部が設けられており、第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させるよう第1及び第2可動部材が中心軸方向の一方側へ移動する行程では、遮断部は、第1当接部が第1シート部に対し中心軸方向の一方側へ第2所定量を超えて離れてから、第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させることが好適である。
【0013】
また、本発明の一態様では、弁ボディには、第1シート部と第1当接部の距離が第2所定量以下のときに遮断部が嵌め合わされる嵌合部が設けられており、遮断部が嵌合部に嵌め合わされることで第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路が塞がれることが好適である。
【0014】
また、本発明の一態様では、第1可動部材または第2可動部材には、第1シート部と第1当接部の距離が第2所定量より長いときに嵌合部に対し接触しながら第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させる摺動案内部が設けられていることが好適である。
【0015】
また、本発明の一態様では、第1シート部は、中心軸方向において第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間に設けられており、遮断部は、第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を、中心軸方向において第1シート部と連通対象ポートとの間で塞ぐことが好適である。
【0016】
また、本発明の一態様では、第1シート部は、中心軸方向において第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間に設けられており、遮断部は、第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を、中心軸方向において第1連通切替ポートと第1シート部との間で塞ぐことが好適である。
【0017】
また、本発明の一態様では、遮断部の径が、第1可動部材の弁ボディに対する摺動径に等しく設定されていることが好適である。
【0018】
また、本発明の一態様では、遮断部は、第1可動部材に設けられており、第2所定量は、第2可動部材が中心軸方向に移動するときの行程長より長く設定されていることが好適である。
【0019】
また、本発明の一態様では、第2可動部材には、第2シート部に対し中心軸方向の他方側から当接可能な第2当接部が設けられており、弁ボディには、第2シート部として中心軸方向に垂直な平面が形成されており、第2可動部材には、第2当接部として中心軸方向に垂直な平面が形成されていることが好適である。
【0020】
また、本発明の一態様では、第1可動部材には、中心軸方向の他方側から第2可動部材が内挿される内挿穴が形成されており、押圧部が、この内挿穴の底面により構成されることが好適である。この態様では、第2可動部材には、第2連通切替ポートと内挿穴を連通させるための貫通穴が形成されていることが好適である。
【0021】
また、本発明の一態様では、第2可動部材に中心軸方向の一方側への付勢力を作用させる付勢手段が設けられており、第1可動部材に作用させる中心軸方向の他方側への推力を調整することで、連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替えることが好適である。
【0022】
また、本発明に係る方向制御弁は、第1及び第2連通切替ポートと連通対象ポートが形成された弁ボディと、弁ボディの内部で中心軸方向に移動して連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替える可動部材と、を備える方向制御弁であって、弁ボディには、第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために可動部材が中心軸方向の一方側から当接する第1シート部と、第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために可動部材が中心軸方向の他方側から当接する第2シート部と、が設けられており、可動部材は、中心軸方向の一方側へ移動して第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、中心軸方向の他方側へ移動して第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第2連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、可動部材には、第1シート部に対し中心軸方向の一方側から当接可能な当接部と、第1シート部と当接部の距離が所定量以下のときに第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を塞ぐ遮断部と、が設けられており、第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させるよう可動部材が中心軸方向の一方側へ移動する行程では、可動部材は、当接部が第1シート部に対し中心軸方向の一方側へ所定量を超えて離れてから、第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替える際に、第1及び第2連通切替ポートの両方が連通対象ポートに連通する期間を短縮することができる。その結果、連通対象ポートに連通するポートを切り替える際に生じる作動流体のエネルギー損失を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
【0025】
図1,2は、本発明の実施形態に係る方向制御弁の内部構成の概略を示す図である。本実施形態に係る方向制御弁は、以下に説明する弁ボディ10と第1の可動部材12と第2の可動部材14とを備えている。
【0026】
弁ボディ10には、第1の連通切替ポート10aと第2の連通切替ポート10bと連通対象ポート10cとが形成されている。連通切替ポート10aには作動流体の圧力PLが供給され、連通切替ポート10bには作動流体の圧力Pcが供給される。そして、連通対象ポート10cは、切替室(図示せず)に接続されている。ここで、連通切替ポート10bへの供給圧力Pcは、連通切替ポート10aへの供給圧力PLより高く設定されている。また、ここでの作動流体は、非圧縮性流体であり、例えば作動油を用いることもできるし、内燃機関用の燃料を用いることもできる。
【0027】
可動部材12,14は、弁ボディ10の内部でその中心軸16に平行な方向(以下、中心軸方向とする)に移動することで、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aと連通切替ポート10bの間で切り替える。連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが連通し且つ連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通が遮断されている場合(図2に示す場合)は、連通切替ポート10aから連通対象ポート10c(切替室)に作動流体の圧力PLが供給される。一方、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cが連通し且つ連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通が遮断されている場合(図1に示す場合)は、連通切替ポート10bから連通対象ポート10c(切替室)に作動流体の圧力Pcが供給される。このように、本実施形態に係る方向制御弁は、連通対象ポート10c(切替室)に連通するポートを、連通切替ポート10aと連通切替ポート10bの間で切り替えることが可能な三方弁である。なお、連通切替ポート10a,10bと連通対象ポート10cの中心軸方向における位置関係は、中心軸方向の一方側(図1,2の上側)から他方側(図1,2の下側)にかけて、連通切替ポート10a、連通対象ポート10c、連通切替ポート10bの順に配置されている。
【0028】
可動部材12は、中心軸方向の一方側へ移動して連通切替ポート10aと連通対象ポート10cを連通させ、中心軸方向の他方側へ移動して連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通を遮断する。一方、可動部材14は、中心軸方向の他方側へ移動して連通切替ポート10bと連通対象ポート10cを連通させ、中心軸方向の一方側へ移動して連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通を遮断する。中心軸方向において連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの間に位置する弁ボディ10の内周面の径が中心軸方向の一方側から他方側にかけて減少することで第1のシート部10dが形成されており、中心軸方向において連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの間に位置する弁ボディ10の内周面の径が中心軸方向の他方側から一方側にかけて減少することで第2のシート部10eが形成されている。このように、シート部10dの中心軸方向における形成位置は、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの間であり、シート部10eの中心軸方向における形成位置は、連通対象ポート10cと連通切替ポート10bの間である。可動部材12には、外周面の径が中心軸方向の一方側から他方側にかけて減少する形状の第1の当接部12aが形成されており、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通を遮断するために可動部材12の当接部12aが中心軸方向の一方側からシート部10dに当接する。そして、可動部材12が当接部12aにてシート部10dに当接することで、可動部材12の中心軸方向の他方側への移動が拘束される。一方、可動部材14には、外周面の径が中心軸方向の他方側から一方側にかけて減少する形状の第2の当接部14aが形成されており、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通を遮断するために可動部材14の当接部14aが中心軸方向の他方側からシート部10eに当接する。そして、可動部材14が当接部14aにてシート部10eに当接することで、可動部材14の中心軸方向の一方側への移動が拘束される。
【0029】
弁ボディ10の内部における可動部材12よりも中心軸方向の一方側には制御室18が形成されており、供給側オリフィス22を介して制御室18内に供給される作動流体の圧力によって可動部材12に中心軸方向の他方側への推力を作用させることができる。ここで、作動流体の圧力Pcは、連通切替ポート10bの他に、供給側オリフィス22にも供給されている。そして、パイロット弁20の開閉制御によって制御室18内の作動流体の圧力を制御することで、可動部材12に作用させる中心軸方向の他方側への推力を制御することができる。より具体的には、パイロット弁20を閉じて制御室18から排出側オリフィス24を介しての作動流体の排出を遮断することで、制御室18内の圧力がPcに制御され、可動部材12に作用させる中心軸方向の他方側への推力がPc×A1に制御される。ここで、A1は、可動部材12における制御室18内の圧力を中心軸方向の他方側へ受ける面の面積を表す。一方、パイロット弁20を開けて制御室18から排出側オリフィス24を介しての作動流体の排出を許容することで、制御室18内の圧力がPm(Pm<Pc)に制御され、可動部材12に作用させる中心軸方向の他方側への推力がPm×A1に制御される。ここでのパイロット弁20の開閉動作については、例えば電磁力により行うことができ、その駆動力は小さくて済む。そして、圧力Pmの値については、供給側オリフィス22の径、排出側オリフィス24の径、及びパイロット弁20の開度の設定により調整が可能である。なお、排出側オリフィス24は、パイロット弁20が開くときの流路断面積をより正確に設定するために設けられており、排出側オリフィス24を省略することも可能である。
【0030】
本実施形態では、可動部材12には、中心軸方向の他方側に開口する内挿穴12bが形成されている。内挿穴12bには、可動部材14が中心軸方向の他方側から内挿されており、可動部材14は、内挿穴12bの内側面に対し中心軸方向に摺動可能である。そして、可動部材14には、中心軸方向の一方側及び他方側に開口する貫通穴14bが形成されている。この貫通穴14bにより、内挿穴12b(より具体的には可動部材14が内挿穴12bに内挿されることで形成される空間)と連通切替ポート10bが連通する。ここでの内挿穴12b及び貫通穴14bの中心軸は、可動部材12,14の中心軸16に一致している。可動部材12は、連通切替ポート10bから供給される作動流体の圧力Pcを内挿穴12bの底面12cにて中心軸方向の一方側へ受け、可動部材12には中心軸方向の一方側への力Pc×A3が作用する。ここで、A3は、内挿穴12bの底面12cの面積を表す。また、可動部材12の内挿穴12bの底面12cは、可動部材14に対し中心軸方向の一方側から当接して中心軸方向の他方側への押圧力を作用させることが可能である。さらに、図2に示すように、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが連通し且つ連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通が遮断された状態では、可動部材12の内挿穴12bの底面12cが可動部材14に対し中心軸方向の一方側へ所定量L0離れるように、可動部材12の内挿穴12bの深さ及び可動部材14の中心軸方向の長さが設定されている。ここでの所定量L0は、可動部材12が中心軸方向に移動するときの行程長(可動部材12のリフト量)L3よりも短く設定されている。そのため、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通を遮断し且つ連通切替ポート10bと連通対象ポート10cを連通させるよう可動部材12,14が中心軸方向の他方側へ移動する行程(図2に示す状態から図1に示す状態へ移行する行程)では、可動部材12は、中心軸方向の他方側へ所定量L0移動してから、内挿穴12bの底面12cにて可動部材14に当接して可動部材14を中心軸方向の他方側へ押圧する。そして、押圧された可動部材14は、可動部材12とともに中心軸方向の他方側へ移動する。可動部材14が中心軸方向に移動するときの行程長(可動部材14のリフト量)L1は、L1=L3−L0となり、可動部材12が中心軸方向に移動するときの行程長L3よりも短くなる。
【0031】
さらに、本実施形態では、可動部材12における当接部12aよりも中心軸方向の他方側には、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cとの間の通路を塞ぐための摺動遮断部12dが設けられている。弁ボディ10には、摺動遮断部12dが嵌合可能な嵌合部10fが中心軸方向においてシート部10dと連通対象ポート10cの間の位置に形成されている。摺動遮断部12dの中心軸方向の長さはL2であり、シート部10dと可動部材12の当接部12aとの距離が所定量L2以下のときに、摺動遮断部12dが中心軸方向の一方側から嵌合部10fに嵌め合わされることで、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cとの間の通路が、中心軸方向においてシート部10dと連通対象ポート10cとの間の位置で塞がれる。ここでの所定量(摺動遮断部12dの中心軸方向の長さ)L2は、可動部材14が中心軸方向に移動するときの行程長L1(=L3−L0)よりも長く、且つ可動部材12が中心軸方向に移動するときの行程長L3よりも短く設定されている。また、可動部材12は、連通対象ポート10cから供給される作動流体の圧力Pdを摺動遮断部12dにおける中心軸方向の他方側の端面にて中心軸方向の一方側へ受け、可動部材12には中心軸方向の一方側への力Pd×A2が作用する。ここで、A2は、摺動遮断部12dにおける中心軸方向の他方側の端面の面積を表す。また、可動部材14には、ばね26により中心軸方向の一方側への付勢力Fが作用している。
【0032】
また、本実施形態では、以下の(1)〜(3)式が成立するように、ばね26の付勢力F、圧力Pm、及び面積A1,A2,A3の値が設定されている。
【0033】
Pc×A1>Pc×(A2+A3)+F (1)
Pm×A1<Pc×(A2+A3)+F (2)
Pm×A1<PL×A2+Pc×A3 (3)
【0034】
次に、本実施形態に係る方向制御弁の動作、特に、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aと連通切替ポート10bの間で切り替える動作について説明する。本実施形態では、可動部材12に作用させる中心軸方向の他方側の推力を調整することで、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aと連通切替ポート10bの間で切り替えることができる。
【0035】
パイロット弁20が閉じている場合は、制御室18内の圧力がPcに制御されている。ここで、(1)式が成立するようばね26の付勢力F及び面積A1,A2,A3の値が設定されているため、図1に示すように、可動部材12は、推力Pc×A1によって中心軸方向の他方側へ押圧されており、摺動遮断部12dが嵌合部10fに嵌め合わされているとともに、当接部12aがシート部10dに密着している。したがって、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通は遮断されている。さらに、前述の所定量L0が、可動部材12が中心軸方向に移動するときの行程長L3よりも短く設定されているため、図1に示すように、可動部材12の当接部12aがシート部10dに密着している状態では、可動部材12の内挿穴12bの底面12cが可動部材14に当接して可動部材14を中心軸方向の他方側へ押圧している。したがって、可動部材14の当接部14aはシート部10eから離れており、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cが連通している。以上のように、パイロット弁20が閉じている場合は、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cが連通し且つ連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通が遮断される。その結果、切替室内の圧力はPcとなる。
【0036】
次に、パイロット弁20を開けると、制御室18内の圧力がPcから低下してPmに制御される。ここで、(2)式が成立するようばね26の付勢力F、圧力Pm、及び面積A1,A2,A3の値が設定されているため、可動部材12,14が中心軸方向の一方側へ押圧されて移動し始める。図3に示すように、可動部材14は、ばね26の付勢力Fにより中心軸方向の一方側へ行程長L1移動して、当接部14aにてシート部10eに当接する。これによって、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通が遮断される。一方、可動部材12においては、当接部12aがシート部10dから離れても、摺動遮断部12dが嵌合部10fに嵌め合わされている状態では、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cとの間の通路が摺動遮断部12dによって塞がれているため、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cは連通しない。ここで、摺動遮断部12dの中心軸方向の長さL2が可動部材14の行程長L1よりも長く設定されているため、図3に示すように、可動部材14の当接部14aがシート部10eに当接して連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通が遮断されても、摺動遮断部12dの一部が嵌合部10fに嵌め合わされている。したがって、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cはまだ連通しない。
【0037】
可動部材14の当接部14aがシート部10eに当接して中心軸方向の一方側への移動が拘束された後においても、可動部材12は弁ボディ10の内周面に対し中心軸方向の一方側へ摺動し続ける。そのため、可動部材12の内挿穴12bの底面12cは、可動部材14に対し中心軸方向の一方側へ離れる。そして、可動部材12の当接部12aがシート部10dに対し中心軸方向の一方側へ所定量L2を超えて離れると、摺動遮断部12dが嵌合部10fから抜けるため、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが連通し始める。さらに、(3)式が成立するよう圧力Pm及び面積A1,A2,A3の値が設定されているため、図2に示すように、可動部材12は中心軸方向の一方側へさらに摺動し続け、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが完全に連通する。このとき、可動部材12の内挿穴12bの底面12cと可動部材14との距離はL0となる。以上のように、パイロット弁20を閉状態から開状態に切り替えることで、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10bから連通切替ポート10aへ切り替えることができる。その結果、切替室内の圧力をPcからPLへ低下させることができる。
【0038】
次に、パイロット弁20を閉じると、制御室18内の圧力がPmから増大してPcに制御されるため、可動部材12は、推力Pc×A1によって中心軸方向の他方側へ摺動し始める。一方、可動部材14は、ばね26の付勢力Fにより当接部14aにてシート部10eに密着したままであり、可動部材12の摺動に伴い内挿穴12bの作動流体が貫通穴14bを通って排出される。したがって、可動部材12が中心軸方向の他方側へ摺動し始めても、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cはまだ連通しない。ここで、摺動遮断部12dの中心軸方向の長さL2が可動部材14の行程長L1(=L3−L0)よりも長く設定されているため、シート部10dと可動部材12の当接部12aとの距離が所定量L2よりも短くなり摺動遮断部12dが嵌合部10fに嵌合し始めても、可動部材12の中心軸方向の他方側への移動量は所定量L0よりも短く、内挿穴12bの底面12cは可動部材14にまだ当接しない。したがって、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cが連通する前に、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通が摺動遮断部12dにより遮断される。
【0039】
摺動遮断部12dが嵌合部10fに嵌合し始めた後に、可動部材12の中心軸方向の他方側への移動量が所定量L0に達すると、図4に示すように、可動部材12の内挿穴12bの底面12cが可動部材14に当接する。そして、可動部材12は、内挿穴12bの底面12cにて可動部材14を中心軸方向の他方側へ押圧し、可動部材14は、可動部材12とともに中心軸方向の他方側へ移動する。これによって、図1に示すように、可動部材14の当接部14aがシート部10eから離れ、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cが連通する。可動部材12,14の中心軸方向の他方側への移動は、可動部材12の当接部12aがシート部10dに当接するまで続いて行われる。以上のように、パイロット弁20を開状態から閉状態に切り替えることで、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aから連通切替ポート10bへ切り替えることができる。その結果、切替室内の圧力をPLからPcへ増大させることができる。
【0040】
次に、本願発明者が行った解析の結果について説明する。
【0041】
解析対象とする方向制御弁の仕様については以下の通りである。図5,6に示すように、可動部材12の寸法については、制御室18内の圧力を受ける部分の直径D1はd(dは定数)、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの間の通路を形成する部分の直径D2は0.9×d、摺動遮断部12dの直径D3は0.8d、摺動遮断部12dの中心軸方向の長さL2は1.2×L(Lは定数)、内挿穴12bの直径D4は0.5×d、内挿穴12bの深さ(摺動長)H4は80×L、直径D1(=d)の部分における弁ボディ10の内周面に対する摺動長H1は46×Lである。また、可動部材14の寸法については、貫通穴14bの直径は0.2×dである。また、可動部材12が中心軸方向に移動するときの行程長(可動部材12のリフト量)L3は2.2×L、可動部材14が中心軸方向に移動するときの行程長(可動部材14のリフト量)L1はLである。また、可動部材12の当接部12aがシート部10dに当接している状態におけるばね26のプリロードは30[N]である。
【0042】
以上説明した仕様の方向制御弁の動作を市販の汎用計算ソフトを用いて計算した結果を図7に示す。ここで、図7の上段はパイロット弁20のリフト量の時系列波形を示し、図7の中段は可動部材12,14の中心軸方向に関する変位量(パイロット弁20が全開のときを変位量0とする)の時系列波形を示し、図7の下段は連通切替ポート10a〜連通対象ポート10c間及び連通切替ポート10b〜連通対象ポート10c間の開口面積の時系列波形を示す。図7に示すように、パイロット弁20を全閉から全開に切り替える場合、及びパイロット弁20を全開から全閉に切り替える場合の両方において、連通切替ポート10a,10bの両方が連通対象ポート10cに同時に連通するのを防止(開口面積のオーバーラップを防止)できていることがわかる。
【0043】
以上説明した本実施形態によれば、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通を遮断し且つ連通切替ポート10bと連通対象ポート10cを連通させるよう可動部材12,14が中心軸方向の他方側へ移動する行程では、可動部材12は、中心軸方向の他方側へ所定量L0移動してから、内挿穴12bの底面12cにて可動部材14に当接して可動部材14を中心軸方向の他方側へ押圧する。これによって、可動部材12の移動開始時期に対して、可動部材14の移動開始時期、すなわち連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通開始時期を遅らせることができるので、連通切替ポート10a,10bの両方が連通対象ポート10cに同時に連通するのを抑制することができる。その結果、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aから連通切替ポート10bへ切り替える際に、高圧側の連通切替ポート110bへ供給された作動流体が低圧側の連通切替ポート110aへ流出するのを抑制することができ、作動流体のエネルギー損失を低減することができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、可動部材12の内挿穴12bの底面12cが可動部材14に当接する前に、摺動遮断部12dが嵌合部10fに内挿されることで連通切替ポート10aと連通対象ポート10cとの間の通路が塞がれる。そのため、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通が遮断された後に、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cが連通する。すなわち、連通切替ポート10a,10bの両方が連通対象ポート10cに同時に連通するのが防止される。その結果、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aから連通切替ポート10bへ切り替える際に生じる作動流体のエネルギー損失を無くすことができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通を遮断し且つ連通切替ポート10aと連通対象ポート10cを連通させるよう可動部材12,14が中心軸方向の一方側へ移動する行程では、摺動遮断部12dは、当接部12aがシート部10dに対し中心軸方向の一方側へ所定量L2を超えて離れてから、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cを連通させる。これによって、可動部材14の移動開始時期に対して、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通開始時期を遅らせることができるので、連通切替ポート10a,10bの両方が連通対象ポート10cに同時に連通するのを抑制することができる。その結果、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10bから連通切替ポート10aへ切り替える際に生じる作動流体のエネルギー損失を低減することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、摺動遮断部12dの中心軸方向の長さL2が可動部材14の行程長L1よりも長く設定されていることで、可動部材14の当接部14aがシート部10eに当接した後に、摺動遮断部12dが嵌合部10fから抜ける。そのため、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通が遮断された後に、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが連通する。すなわち、連通切替ポート10a,10bの両方が連通対象ポート10cに同時に連通するのが防止される。その結果、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10bから連通切替ポート10aへ切り替える際に生じる作動流体のエネルギー損失を無くすことができる。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aから連通切替ポート10bへ切り替える場合と連通切替ポート10bから連通切替ポート10aへ切り替える場合の両方において、連通切替ポート10a,10bの両方が連通対象ポート10cに同時に連通するのを防止することができ、作動流体のエネルギー損失を無くすことができる。
【0048】
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。
【0049】
以上の説明では、摺動遮断部12dを可動部材12に設けるものとしたが、本実施形態では、摺動遮断部12dを可動部材14における当接部14aよりも中心軸方向の一方側に設けることもできる。その場合は、摺動遮断部12dの中心軸方向の長さL2を、可動部材14が中心軸方向に移動するときの行程長L1よりも短く設定する。これによって、連通切替ポート10a,10bの両方が同時に開く期間を短縮することができ、作動流体のエネルギー損失を大幅に減少することができる。
【0050】
また、図8に示す構成例では、図1,2に示す構成例と比較して、可動部材12における摺動遮断部12dよりも中心軸方向の他方側に摺動案内部12eが設けられている。ここで、図8(A)は可動部材12の側面図を示し、図8(B)は図8(A)のA−A断面図を示す。摺動案内部12eは、嵌合部10fに対し中心軸方向に摺動可能であり、さらに、嵌合部10fに嵌め合わされたときに嵌合部10fとの間に連通切替ポート10aと連通対象ポート10cを連通させるための通路が形成されるよう、その外周面に中心軸方向に延伸する溝が複数形成されている。そのため、図9に示すように、シート部10dと可動部材12の当接部12aとの距離が所定量L2よりも長くなり摺動遮断部12dが嵌合部10fから抜けたときには、摺動案内部12eは、嵌合部10fに対し接触しながら連通切替ポート10aと連通対象ポート10cを連通させる。
【0051】
図1,2に示す構成例では、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが連通しているときは、可動部材12(摺動遮断部12d)が嵌合部10fから完全に抜けている。そのため、可動部材12が中心軸方向の他方側へ移動する行程において摺動遮断部12dが嵌合部10fに内挿されるときに引っ掛かりが生じる可能性があり、可動部材12の滑らかな摺動が妨げられる可能性がある。これに対して図8に示す構成例では、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが連通しているときでも、図9に示すように、可動部材12(摺動案内部12e)が嵌合部10fに内挿されて接触している。そのため、可動部材12が中心軸方向の他方側へ移動する行程において摺動遮断部12dが嵌合部10fに内挿されるときに引っ掛かりが生じるのを抑止することができる。したがって、可動部材12の滑らかな摺動を実現することができる。
【0052】
なお、摺動案内部12eの外周面に形成する溝の形状については、図8に示す形状に限るものではなく、例えば図10に示すように、周方向に延伸する溝をさらに形成することもできる。ここで、図10(A)は可動部材12の側面図を示し、図10(B)は可動部材12(摺動案内部12e)の下面図を示す。さらに、例えば図11に示すように、摺動案内部12eの外周面の一部が削り取られていることによっても、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cを連通させるための通路を形成することができる。ここで、図11(A)は可動部材12の側面図を示し、図11(B)は図11(A)のA−A断面図を示す。さらに、摺動遮断部12dを可動部材14の方に設ける場合は、摺動案内部12eを可動部材14における摺動遮断部12dよりも中心軸方向の他方側に設けることもできる。
【0053】
また、図12に示す構成例では、図1,2に示す構成例と比較して、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cとの間の通路を塞ぐための摺動遮断部12dが可動部材12における当接部12aよりも中心軸方向の一方側に配設されている。そして、シート部10dと当接部12aの距離が所定量L2以下のときに摺動遮断部12dが嵌め合わされる嵌合部10fが中心軸方向において連通切替ポート10aとシート部10dとの間に配設されている。ここでの摺動遮断部12dは、その直径が可動部材12の弁ボディ10に対する摺動径(可動部材12の最大直径)に等しく設定されており、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cとの間の通路を、中心軸方向において連通切替ポート10aとシート部10dとの間の位置で塞ぐ。さらに、弁ボディ10には、シート部10eとして中心軸方向(中心軸16)に垂直な平面が形成されており、可動部材14には、当接部14aとして中心軸方向に垂直な(シート部10eの平面に平行な)平面が形成されている。
【0054】
図1,2に示す構成例では、摺動遮断部12dの直径が可動部材12の弁ボディ10に対する摺動径(最大直径)よりも小さく、可動部材12は、弁ボディ10に対し最大直径部分と摺動遮断部12dの直径の異なる2つの部分にて摺動する。そのため、これら2つの摺動部分と当接部12aの3箇所に同芯であることが要求される。さらに、可動部材14の当接部14aとも同軸であることが要求される。したがって、可動部材12,14の加工に高い精度が要求される。これに対して図12に示す構成例では、摺動遮断部12dの直径が可動部材12の弁ボディ10に対する摺動径(最大直径)に等しいため、可動部材12の摺動部分の同芯加工を無くすことができる。さらに、弁ボディ10のシート部10eと可動部材14の当接部14aがともに中心軸方向に垂直な平面となるため、可動部材12に対する可動部材14の当接部14aの同軸が不要となる。したがって、可動部材12,14の寸法公差を大きくするのを許容することができる。
【0055】
以上の本実施形態の説明では、パイロット弁20の開閉制御により制御室18内の圧力を制御することで、可動部材12に作用させる推力を制御するものとした。ただし、本実施形態では、パイロット弁20の開閉制御以外の手段によっても可動部材12に作用させる推力を制御することができ、例えば可動部材12に作用させる推力を電磁力により直接制御することも可能である。
【0056】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る方向制御弁の内部構成の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る方向制御弁の内部構成の概略を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る方向制御弁の動作を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る方向制御弁の動作を説明する図である。
【図5】解析対象とする方向制御弁の仕様を説明する図である。
【図6】解析対象とする方向制御弁の仕様を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態に係る方向制御弁の動作を解析した結果を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る方向制御弁の他の構成例の概略を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る方向制御弁の他の構成例の動作を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態に係る方向制御弁の他の構成例の概略を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る方向制御弁の他の構成例の概略を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る方向制御弁の他の構成例の概略を示す図である。
【図13】関連技術の方向制御弁の内部構成の概略を示す図である。
【図14】関連技術の方向制御弁の動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0058】
10 弁ボディ、10a,10b 連通切替ポート、10c 連通対象ポート、10d,10e シート部、10f 嵌合部、12,14 可動部材、12a,14a 当接部、12b 内挿穴、12c 底面、12d 摺動遮断部、12e 摺動案内部、14b 貫通穴、18 制御室、20 パイロット弁、26 ばね。
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向制御弁に関し、特に、第1及び第2連通切替ポートと連通対象ポートが形成された弁ボディと、弁ボディの内部で中心軸方向に移動して連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替える可動部材と、を備える方向制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の方向制御弁の構成例を図13を用いて説明する。図13に示す方向制御弁は、連通切替ポート110a,110bと連通対象ポート110cとが形成された弁ボディ110と、弁ボディ110の内部でその中心軸116に平行な方向(以下、中心軸方向とする)に移動することで、連通対象ポート110cに連通するポートを連通切替ポート110aと連通切替ポート110bの間で切り替える可動部材112と、を備える三方弁である。連通切替ポート110aには作動油の圧力PLが供給され、連通切替ポート110bには作動油の圧力Pcが供給される。そして、連通対象ポート110cは、切替室(図示せず)に接続されている。ここで、連通切替ポート110bへの供給圧力Pcは、連通切替ポート110aへの供給圧力PLより高く設定されている。弁ボディ110の内部における可動部材112よりも中心軸方向の一方側(図13の上側)には制御室118が形成されており、制御室118内に供給される作動油の圧力によって可動部材112に中心軸方向の他方側(図13の下側)への推力を作用させることができる。制御室118内の圧力は、パイロット弁120の開閉動作により制御される。また、可動部材112には、ばね126により中心軸方向の一方側への付勢力が作用している。
【0003】
パイロット弁120が閉じている場合は、可動部材112は、制御室118内の圧力によって中心軸方向の他方側へ押圧されており、弁ボディ110に形成されたシート部110dに密着している。そのため、連通切替ポート110bと連通対象ポート110cが連通し且つ連通切替ポート110aと連通対象ポート110cの連通が遮断され、切替室内の圧力はPcとなる。次に、パイロット弁120を開けると、制御室118内の圧力が低下するため、可動部材112は、ばね126の付勢力によりシート部110dから離れて中心軸方向の一方側へ移動する。これによって、連通切替ポート110aと連通対象ポート110cが連通する。そして、可動部材112が弁ボディ110に形成されたシート部110eに密着することで、連通切替ポート110bと連通対象ポート110cの連通が遮断される。このように、パイロット弁120を閉状態から開状態に切り替えることで、連通対象ポート110cに連通するポートが連通切替ポート110bから連通切替ポート110aへ切り替えられる。その結果、切替室内の圧力がPcからPLへ低下する。
【0004】
次に、パイロット弁120を閉じると、制御室118内の圧力が増大するため、可動部材112は、制御室118内の圧力によりシート部110eから離れて中心軸方向の他方側へ移動する。これによって、連通切替ポート110bと連通対象ポート110cが連通する。そして、可動部材112が弁ボディ110に形成されたシート部110dに密着することで、連通切替ポート110aと連通対象ポート110cの連通が遮断される。このように、パイロット弁120を開状態から閉状態に切り替えることで、連通対象ポート110cに連通するポートが連通切替ポート110aから連通切替ポート110bへ切り替えられる。その結果、切替室内の圧力がPLからPcへ増大する。なお、この種の方向制御弁は、下記特許文献1にも開示されている。
【0005】
また、その他の背景技術として、下記特許文献2〜5による燃料噴射装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−227747号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第10229419号明細書
【特許文献3】特表2002−539372号公報
【特許文献4】特開2001−90634号公報
【特許文献5】特表2005−500472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図13に示す方向制御弁においては、連通対象ポート110cに連通するポートを切り替える際に、連通切替ポート110a,110bの両方が連通対象ポート110cに連通する期間が存在する。例えば連通対象ポート110cに連通するポートを連通切替ポート110aから連通切替ポート110bへ切り替えるよう可動部材112が中心軸方向の他方側へ移動する行程では、可動部材112は、シート部110eに対し離れた後にシート部110dに密着する。そのため、図14に示すように、可動部材112がシート部110eに対し離れてからシート部110dに密着するまでの期間は、連通切替ポート110a,110bの両方が連通対象ポート110cに連通することになる。これによって、高圧側の連通切替ポート110bへ供給された作動油が低圧側の連通切替ポート110aへ流出し、作動油のエネルギー損失が増大してしまう。同様に、連通対象ポート110cに連通するポートを連通切替ポート110bから連通切替ポート110aへ切り替えるよう可動部材112が中心軸方向の一方側へ移動する行程でも、可動部材112がシート部110dに対し離れてからシート部110eに密着するまでの期間は、連通切替ポート110a,110bの両方が連通対象ポート110cに連通することになる。以上のように、図13に示す方向制御弁においては、連通対象ポート110cに連通するポートを切り替える際に、高圧側の連通切替ポート110bへ供給された作動油が低圧側の連通切替ポート110aへ流出し、作動油のエネルギー損失が増大してしまうという問題点がある。
【0008】
本発明は、連通するポートを切り替える際に生じる作動流体のエネルギー損失を低減することができる方向制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る方向制御弁は、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
【0010】
本発明に係る方向制御弁は、第1及び第2連通切替ポートと連通対象ポートが形成された弁ボディと、弁ボディの内部で中心軸方向に移動して連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替える可動部材と、を備える方向制御弁であって、可動部材は、中心軸方向の一方側へ移動して第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、中心軸方向の他方側へ移動して第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断する第1可動部材と、中心軸方向の他方側へ移動して第2連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、中心軸方向の一方側へ移動して第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断する第2可動部材と、を含み、第1可動部材には、第2可動部材に対し中心軸方向の一方側から当接して中心軸方向の他方側への押圧力を作用させることが可能な押圧部が設けられており、押圧部は、第1連通切替ポートと連通対象ポートが連通し且つ第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通が遮断された状態では、第2可動部材に対し中心軸方向の一方側へ第1所定量離れており、第1可動部材に作用する中心軸方向の他方側への推力により第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第2連通切替ポートと連通対象ポートを連通させるよう第1及び第2可動部材が中心軸方向の他方側へ移動する行程では、第1可動部材は、中心軸方向の他方側へ第1所定量移動してから、押圧部にて第2可動部材を中心軸方向の他方側へ押圧することを要旨とする。
【0011】
本発明の一態様では、弁ボディには、第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために第1可動部材が中心軸方向の一方側から当接する第1シート部と、第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために第2可動部材が中心軸方向の他方側から当接する第2シート部と、が設けられていることが好適である。
【0012】
また、本発明の一態様では、第1可動部材には、第1シート部に対し中心軸方向の一方側から当接可能な第1当接部が設けられ、第1可動部材または第2可動部材には、第1シート部と第1当接部の距離が第2所定量以下のときに第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を塞ぐ遮断部が設けられており、第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させるよう第1及び第2可動部材が中心軸方向の一方側へ移動する行程では、遮断部は、第1当接部が第1シート部に対し中心軸方向の一方側へ第2所定量を超えて離れてから、第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させることが好適である。
【0013】
また、本発明の一態様では、弁ボディには、第1シート部と第1当接部の距離が第2所定量以下のときに遮断部が嵌め合わされる嵌合部が設けられており、遮断部が嵌合部に嵌め合わされることで第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路が塞がれることが好適である。
【0014】
また、本発明の一態様では、第1可動部材または第2可動部材には、第1シート部と第1当接部の距離が第2所定量より長いときに嵌合部に対し接触しながら第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させる摺動案内部が設けられていることが好適である。
【0015】
また、本発明の一態様では、第1シート部は、中心軸方向において第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間に設けられており、遮断部は、第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を、中心軸方向において第1シート部と連通対象ポートとの間で塞ぐことが好適である。
【0016】
また、本発明の一態様では、第1シート部は、中心軸方向において第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間に設けられており、遮断部は、第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を、中心軸方向において第1連通切替ポートと第1シート部との間で塞ぐことが好適である。
【0017】
また、本発明の一態様では、遮断部の径が、第1可動部材の弁ボディに対する摺動径に等しく設定されていることが好適である。
【0018】
また、本発明の一態様では、遮断部は、第1可動部材に設けられており、第2所定量は、第2可動部材が中心軸方向に移動するときの行程長より長く設定されていることが好適である。
【0019】
また、本発明の一態様では、第2可動部材には、第2シート部に対し中心軸方向の他方側から当接可能な第2当接部が設けられており、弁ボディには、第2シート部として中心軸方向に垂直な平面が形成されており、第2可動部材には、第2当接部として中心軸方向に垂直な平面が形成されていることが好適である。
【0020】
また、本発明の一態様では、第1可動部材には、中心軸方向の他方側から第2可動部材が内挿される内挿穴が形成されており、押圧部が、この内挿穴の底面により構成されることが好適である。この態様では、第2可動部材には、第2連通切替ポートと内挿穴を連通させるための貫通穴が形成されていることが好適である。
【0021】
また、本発明の一態様では、第2可動部材に中心軸方向の一方側への付勢力を作用させる付勢手段が設けられており、第1可動部材に作用させる中心軸方向の他方側への推力を調整することで、連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替えることが好適である。
【0022】
また、本発明に係る方向制御弁は、第1及び第2連通切替ポートと連通対象ポートが形成された弁ボディと、弁ボディの内部で中心軸方向に移動して連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替える可動部材と、を備える方向制御弁であって、弁ボディには、第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために可動部材が中心軸方向の一方側から当接する第1シート部と、第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために可動部材が中心軸方向の他方側から当接する第2シート部と、が設けられており、可動部材は、中心軸方向の一方側へ移動して第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、中心軸方向の他方側へ移動して第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第2連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、可動部材には、第1シート部に対し中心軸方向の一方側から当接可能な当接部と、第1シート部と当接部の距離が所定量以下のときに第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を塞ぐ遮断部と、が設けられており、第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させるよう可動部材が中心軸方向の一方側へ移動する行程では、可動部材は、当接部が第1シート部に対し中心軸方向の一方側へ所定量を超えて離れてから、第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替える際に、第1及び第2連通切替ポートの両方が連通対象ポートに連通する期間を短縮することができる。その結果、連通対象ポートに連通するポートを切り替える際に生じる作動流体のエネルギー損失を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
【0025】
図1,2は、本発明の実施形態に係る方向制御弁の内部構成の概略を示す図である。本実施形態に係る方向制御弁は、以下に説明する弁ボディ10と第1の可動部材12と第2の可動部材14とを備えている。
【0026】
弁ボディ10には、第1の連通切替ポート10aと第2の連通切替ポート10bと連通対象ポート10cとが形成されている。連通切替ポート10aには作動流体の圧力PLが供給され、連通切替ポート10bには作動流体の圧力Pcが供給される。そして、連通対象ポート10cは、切替室(図示せず)に接続されている。ここで、連通切替ポート10bへの供給圧力Pcは、連通切替ポート10aへの供給圧力PLより高く設定されている。また、ここでの作動流体は、非圧縮性流体であり、例えば作動油を用いることもできるし、内燃機関用の燃料を用いることもできる。
【0027】
可動部材12,14は、弁ボディ10の内部でその中心軸16に平行な方向(以下、中心軸方向とする)に移動することで、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aと連通切替ポート10bの間で切り替える。連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが連通し且つ連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通が遮断されている場合(図2に示す場合)は、連通切替ポート10aから連通対象ポート10c(切替室)に作動流体の圧力PLが供給される。一方、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cが連通し且つ連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通が遮断されている場合(図1に示す場合)は、連通切替ポート10bから連通対象ポート10c(切替室)に作動流体の圧力Pcが供給される。このように、本実施形態に係る方向制御弁は、連通対象ポート10c(切替室)に連通するポートを、連通切替ポート10aと連通切替ポート10bの間で切り替えることが可能な三方弁である。なお、連通切替ポート10a,10bと連通対象ポート10cの中心軸方向における位置関係は、中心軸方向の一方側(図1,2の上側)から他方側(図1,2の下側)にかけて、連通切替ポート10a、連通対象ポート10c、連通切替ポート10bの順に配置されている。
【0028】
可動部材12は、中心軸方向の一方側へ移動して連通切替ポート10aと連通対象ポート10cを連通させ、中心軸方向の他方側へ移動して連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通を遮断する。一方、可動部材14は、中心軸方向の他方側へ移動して連通切替ポート10bと連通対象ポート10cを連通させ、中心軸方向の一方側へ移動して連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通を遮断する。中心軸方向において連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの間に位置する弁ボディ10の内周面の径が中心軸方向の一方側から他方側にかけて減少することで第1のシート部10dが形成されており、中心軸方向において連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの間に位置する弁ボディ10の内周面の径が中心軸方向の他方側から一方側にかけて減少することで第2のシート部10eが形成されている。このように、シート部10dの中心軸方向における形成位置は、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの間であり、シート部10eの中心軸方向における形成位置は、連通対象ポート10cと連通切替ポート10bの間である。可動部材12には、外周面の径が中心軸方向の一方側から他方側にかけて減少する形状の第1の当接部12aが形成されており、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通を遮断するために可動部材12の当接部12aが中心軸方向の一方側からシート部10dに当接する。そして、可動部材12が当接部12aにてシート部10dに当接することで、可動部材12の中心軸方向の他方側への移動が拘束される。一方、可動部材14には、外周面の径が中心軸方向の他方側から一方側にかけて減少する形状の第2の当接部14aが形成されており、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通を遮断するために可動部材14の当接部14aが中心軸方向の他方側からシート部10eに当接する。そして、可動部材14が当接部14aにてシート部10eに当接することで、可動部材14の中心軸方向の一方側への移動が拘束される。
【0029】
弁ボディ10の内部における可動部材12よりも中心軸方向の一方側には制御室18が形成されており、供給側オリフィス22を介して制御室18内に供給される作動流体の圧力によって可動部材12に中心軸方向の他方側への推力を作用させることができる。ここで、作動流体の圧力Pcは、連通切替ポート10bの他に、供給側オリフィス22にも供給されている。そして、パイロット弁20の開閉制御によって制御室18内の作動流体の圧力を制御することで、可動部材12に作用させる中心軸方向の他方側への推力を制御することができる。より具体的には、パイロット弁20を閉じて制御室18から排出側オリフィス24を介しての作動流体の排出を遮断することで、制御室18内の圧力がPcに制御され、可動部材12に作用させる中心軸方向の他方側への推力がPc×A1に制御される。ここで、A1は、可動部材12における制御室18内の圧力を中心軸方向の他方側へ受ける面の面積を表す。一方、パイロット弁20を開けて制御室18から排出側オリフィス24を介しての作動流体の排出を許容することで、制御室18内の圧力がPm(Pm<Pc)に制御され、可動部材12に作用させる中心軸方向の他方側への推力がPm×A1に制御される。ここでのパイロット弁20の開閉動作については、例えば電磁力により行うことができ、その駆動力は小さくて済む。そして、圧力Pmの値については、供給側オリフィス22の径、排出側オリフィス24の径、及びパイロット弁20の開度の設定により調整が可能である。なお、排出側オリフィス24は、パイロット弁20が開くときの流路断面積をより正確に設定するために設けられており、排出側オリフィス24を省略することも可能である。
【0030】
本実施形態では、可動部材12には、中心軸方向の他方側に開口する内挿穴12bが形成されている。内挿穴12bには、可動部材14が中心軸方向の他方側から内挿されており、可動部材14は、内挿穴12bの内側面に対し中心軸方向に摺動可能である。そして、可動部材14には、中心軸方向の一方側及び他方側に開口する貫通穴14bが形成されている。この貫通穴14bにより、内挿穴12b(より具体的には可動部材14が内挿穴12bに内挿されることで形成される空間)と連通切替ポート10bが連通する。ここでの内挿穴12b及び貫通穴14bの中心軸は、可動部材12,14の中心軸16に一致している。可動部材12は、連通切替ポート10bから供給される作動流体の圧力Pcを内挿穴12bの底面12cにて中心軸方向の一方側へ受け、可動部材12には中心軸方向の一方側への力Pc×A3が作用する。ここで、A3は、内挿穴12bの底面12cの面積を表す。また、可動部材12の内挿穴12bの底面12cは、可動部材14に対し中心軸方向の一方側から当接して中心軸方向の他方側への押圧力を作用させることが可能である。さらに、図2に示すように、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが連通し且つ連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通が遮断された状態では、可動部材12の内挿穴12bの底面12cが可動部材14に対し中心軸方向の一方側へ所定量L0離れるように、可動部材12の内挿穴12bの深さ及び可動部材14の中心軸方向の長さが設定されている。ここでの所定量L0は、可動部材12が中心軸方向に移動するときの行程長(可動部材12のリフト量)L3よりも短く設定されている。そのため、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通を遮断し且つ連通切替ポート10bと連通対象ポート10cを連通させるよう可動部材12,14が中心軸方向の他方側へ移動する行程(図2に示す状態から図1に示す状態へ移行する行程)では、可動部材12は、中心軸方向の他方側へ所定量L0移動してから、内挿穴12bの底面12cにて可動部材14に当接して可動部材14を中心軸方向の他方側へ押圧する。そして、押圧された可動部材14は、可動部材12とともに中心軸方向の他方側へ移動する。可動部材14が中心軸方向に移動するときの行程長(可動部材14のリフト量)L1は、L1=L3−L0となり、可動部材12が中心軸方向に移動するときの行程長L3よりも短くなる。
【0031】
さらに、本実施形態では、可動部材12における当接部12aよりも中心軸方向の他方側には、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cとの間の通路を塞ぐための摺動遮断部12dが設けられている。弁ボディ10には、摺動遮断部12dが嵌合可能な嵌合部10fが中心軸方向においてシート部10dと連通対象ポート10cの間の位置に形成されている。摺動遮断部12dの中心軸方向の長さはL2であり、シート部10dと可動部材12の当接部12aとの距離が所定量L2以下のときに、摺動遮断部12dが中心軸方向の一方側から嵌合部10fに嵌め合わされることで、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cとの間の通路が、中心軸方向においてシート部10dと連通対象ポート10cとの間の位置で塞がれる。ここでの所定量(摺動遮断部12dの中心軸方向の長さ)L2は、可動部材14が中心軸方向に移動するときの行程長L1(=L3−L0)よりも長く、且つ可動部材12が中心軸方向に移動するときの行程長L3よりも短く設定されている。また、可動部材12は、連通対象ポート10cから供給される作動流体の圧力Pdを摺動遮断部12dにおける中心軸方向の他方側の端面にて中心軸方向の一方側へ受け、可動部材12には中心軸方向の一方側への力Pd×A2が作用する。ここで、A2は、摺動遮断部12dにおける中心軸方向の他方側の端面の面積を表す。また、可動部材14には、ばね26により中心軸方向の一方側への付勢力Fが作用している。
【0032】
また、本実施形態では、以下の(1)〜(3)式が成立するように、ばね26の付勢力F、圧力Pm、及び面積A1,A2,A3の値が設定されている。
【0033】
Pc×A1>Pc×(A2+A3)+F (1)
Pm×A1<Pc×(A2+A3)+F (2)
Pm×A1<PL×A2+Pc×A3 (3)
【0034】
次に、本実施形態に係る方向制御弁の動作、特に、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aと連通切替ポート10bの間で切り替える動作について説明する。本実施形態では、可動部材12に作用させる中心軸方向の他方側の推力を調整することで、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aと連通切替ポート10bの間で切り替えることができる。
【0035】
パイロット弁20が閉じている場合は、制御室18内の圧力がPcに制御されている。ここで、(1)式が成立するようばね26の付勢力F及び面積A1,A2,A3の値が設定されているため、図1に示すように、可動部材12は、推力Pc×A1によって中心軸方向の他方側へ押圧されており、摺動遮断部12dが嵌合部10fに嵌め合わされているとともに、当接部12aがシート部10dに密着している。したがって、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通は遮断されている。さらに、前述の所定量L0が、可動部材12が中心軸方向に移動するときの行程長L3よりも短く設定されているため、図1に示すように、可動部材12の当接部12aがシート部10dに密着している状態では、可動部材12の内挿穴12bの底面12cが可動部材14に当接して可動部材14を中心軸方向の他方側へ押圧している。したがって、可動部材14の当接部14aはシート部10eから離れており、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cが連通している。以上のように、パイロット弁20が閉じている場合は、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cが連通し且つ連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通が遮断される。その結果、切替室内の圧力はPcとなる。
【0036】
次に、パイロット弁20を開けると、制御室18内の圧力がPcから低下してPmに制御される。ここで、(2)式が成立するようばね26の付勢力F、圧力Pm、及び面積A1,A2,A3の値が設定されているため、可動部材12,14が中心軸方向の一方側へ押圧されて移動し始める。図3に示すように、可動部材14は、ばね26の付勢力Fにより中心軸方向の一方側へ行程長L1移動して、当接部14aにてシート部10eに当接する。これによって、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通が遮断される。一方、可動部材12においては、当接部12aがシート部10dから離れても、摺動遮断部12dが嵌合部10fに嵌め合わされている状態では、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cとの間の通路が摺動遮断部12dによって塞がれているため、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cは連通しない。ここで、摺動遮断部12dの中心軸方向の長さL2が可動部材14の行程長L1よりも長く設定されているため、図3に示すように、可動部材14の当接部14aがシート部10eに当接して連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通が遮断されても、摺動遮断部12dの一部が嵌合部10fに嵌め合わされている。したがって、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cはまだ連通しない。
【0037】
可動部材14の当接部14aがシート部10eに当接して中心軸方向の一方側への移動が拘束された後においても、可動部材12は弁ボディ10の内周面に対し中心軸方向の一方側へ摺動し続ける。そのため、可動部材12の内挿穴12bの底面12cは、可動部材14に対し中心軸方向の一方側へ離れる。そして、可動部材12の当接部12aがシート部10dに対し中心軸方向の一方側へ所定量L2を超えて離れると、摺動遮断部12dが嵌合部10fから抜けるため、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが連通し始める。さらに、(3)式が成立するよう圧力Pm及び面積A1,A2,A3の値が設定されているため、図2に示すように、可動部材12は中心軸方向の一方側へさらに摺動し続け、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが完全に連通する。このとき、可動部材12の内挿穴12bの底面12cと可動部材14との距離はL0となる。以上のように、パイロット弁20を閉状態から開状態に切り替えることで、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10bから連通切替ポート10aへ切り替えることができる。その結果、切替室内の圧力をPcからPLへ低下させることができる。
【0038】
次に、パイロット弁20を閉じると、制御室18内の圧力がPmから増大してPcに制御されるため、可動部材12は、推力Pc×A1によって中心軸方向の他方側へ摺動し始める。一方、可動部材14は、ばね26の付勢力Fにより当接部14aにてシート部10eに密着したままであり、可動部材12の摺動に伴い内挿穴12bの作動流体が貫通穴14bを通って排出される。したがって、可動部材12が中心軸方向の他方側へ摺動し始めても、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cはまだ連通しない。ここで、摺動遮断部12dの中心軸方向の長さL2が可動部材14の行程長L1(=L3−L0)よりも長く設定されているため、シート部10dと可動部材12の当接部12aとの距離が所定量L2よりも短くなり摺動遮断部12dが嵌合部10fに嵌合し始めても、可動部材12の中心軸方向の他方側への移動量は所定量L0よりも短く、内挿穴12bの底面12cは可動部材14にまだ当接しない。したがって、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cが連通する前に、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通が摺動遮断部12dにより遮断される。
【0039】
摺動遮断部12dが嵌合部10fに嵌合し始めた後に、可動部材12の中心軸方向の他方側への移動量が所定量L0に達すると、図4に示すように、可動部材12の内挿穴12bの底面12cが可動部材14に当接する。そして、可動部材12は、内挿穴12bの底面12cにて可動部材14を中心軸方向の他方側へ押圧し、可動部材14は、可動部材12とともに中心軸方向の他方側へ移動する。これによって、図1に示すように、可動部材14の当接部14aがシート部10eから離れ、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cが連通する。可動部材12,14の中心軸方向の他方側への移動は、可動部材12の当接部12aがシート部10dに当接するまで続いて行われる。以上のように、パイロット弁20を開状態から閉状態に切り替えることで、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aから連通切替ポート10bへ切り替えることができる。その結果、切替室内の圧力をPLからPcへ増大させることができる。
【0040】
次に、本願発明者が行った解析の結果について説明する。
【0041】
解析対象とする方向制御弁の仕様については以下の通りである。図5,6に示すように、可動部材12の寸法については、制御室18内の圧力を受ける部分の直径D1はd(dは定数)、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの間の通路を形成する部分の直径D2は0.9×d、摺動遮断部12dの直径D3は0.8d、摺動遮断部12dの中心軸方向の長さL2は1.2×L(Lは定数)、内挿穴12bの直径D4は0.5×d、内挿穴12bの深さ(摺動長)H4は80×L、直径D1(=d)の部分における弁ボディ10の内周面に対する摺動長H1は46×Lである。また、可動部材14の寸法については、貫通穴14bの直径は0.2×dである。また、可動部材12が中心軸方向に移動するときの行程長(可動部材12のリフト量)L3は2.2×L、可動部材14が中心軸方向に移動するときの行程長(可動部材14のリフト量)L1はLである。また、可動部材12の当接部12aがシート部10dに当接している状態におけるばね26のプリロードは30[N]である。
【0042】
以上説明した仕様の方向制御弁の動作を市販の汎用計算ソフトを用いて計算した結果を図7に示す。ここで、図7の上段はパイロット弁20のリフト量の時系列波形を示し、図7の中段は可動部材12,14の中心軸方向に関する変位量(パイロット弁20が全開のときを変位量0とする)の時系列波形を示し、図7の下段は連通切替ポート10a〜連通対象ポート10c間及び連通切替ポート10b〜連通対象ポート10c間の開口面積の時系列波形を示す。図7に示すように、パイロット弁20を全閉から全開に切り替える場合、及びパイロット弁20を全開から全閉に切り替える場合の両方において、連通切替ポート10a,10bの両方が連通対象ポート10cに同時に連通するのを防止(開口面積のオーバーラップを防止)できていることがわかる。
【0043】
以上説明した本実施形態によれば、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通を遮断し且つ連通切替ポート10bと連通対象ポート10cを連通させるよう可動部材12,14が中心軸方向の他方側へ移動する行程では、可動部材12は、中心軸方向の他方側へ所定量L0移動してから、内挿穴12bの底面12cにて可動部材14に当接して可動部材14を中心軸方向の他方側へ押圧する。これによって、可動部材12の移動開始時期に対して、可動部材14の移動開始時期、すなわち連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通開始時期を遅らせることができるので、連通切替ポート10a,10bの両方が連通対象ポート10cに同時に連通するのを抑制することができる。その結果、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aから連通切替ポート10bへ切り替える際に、高圧側の連通切替ポート110bへ供給された作動流体が低圧側の連通切替ポート110aへ流出するのを抑制することができ、作動流体のエネルギー損失を低減することができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、可動部材12の内挿穴12bの底面12cが可動部材14に当接する前に、摺動遮断部12dが嵌合部10fに内挿されることで連通切替ポート10aと連通対象ポート10cとの間の通路が塞がれる。そのため、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通が遮断された後に、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cが連通する。すなわち、連通切替ポート10a,10bの両方が連通対象ポート10cに同時に連通するのが防止される。その結果、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aから連通切替ポート10bへ切り替える際に生じる作動流体のエネルギー損失を無くすことができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通を遮断し且つ連通切替ポート10aと連通対象ポート10cを連通させるよう可動部材12,14が中心軸方向の一方側へ移動する行程では、摺動遮断部12dは、当接部12aがシート部10dに対し中心軸方向の一方側へ所定量L2を超えて離れてから、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cを連通させる。これによって、可動部材14の移動開始時期に対して、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cの連通開始時期を遅らせることができるので、連通切替ポート10a,10bの両方が連通対象ポート10cに同時に連通するのを抑制することができる。その結果、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10bから連通切替ポート10aへ切り替える際に生じる作動流体のエネルギー損失を低減することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、摺動遮断部12dの中心軸方向の長さL2が可動部材14の行程長L1よりも長く設定されていることで、可動部材14の当接部14aがシート部10eに当接した後に、摺動遮断部12dが嵌合部10fから抜ける。そのため、連通切替ポート10bと連通対象ポート10cの連通が遮断された後に、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが連通する。すなわち、連通切替ポート10a,10bの両方が連通対象ポート10cに同時に連通するのが防止される。その結果、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10bから連通切替ポート10aへ切り替える際に生じる作動流体のエネルギー損失を無くすことができる。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、連通対象ポート10cに連通するポートを連通切替ポート10aから連通切替ポート10bへ切り替える場合と連通切替ポート10bから連通切替ポート10aへ切り替える場合の両方において、連通切替ポート10a,10bの両方が連通対象ポート10cに同時に連通するのを防止することができ、作動流体のエネルギー損失を無くすことができる。
【0048】
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。
【0049】
以上の説明では、摺動遮断部12dを可動部材12に設けるものとしたが、本実施形態では、摺動遮断部12dを可動部材14における当接部14aよりも中心軸方向の一方側に設けることもできる。その場合は、摺動遮断部12dの中心軸方向の長さL2を、可動部材14が中心軸方向に移動するときの行程長L1よりも短く設定する。これによって、連通切替ポート10a,10bの両方が同時に開く期間を短縮することができ、作動流体のエネルギー損失を大幅に減少することができる。
【0050】
また、図8に示す構成例では、図1,2に示す構成例と比較して、可動部材12における摺動遮断部12dよりも中心軸方向の他方側に摺動案内部12eが設けられている。ここで、図8(A)は可動部材12の側面図を示し、図8(B)は図8(A)のA−A断面図を示す。摺動案内部12eは、嵌合部10fに対し中心軸方向に摺動可能であり、さらに、嵌合部10fに嵌め合わされたときに嵌合部10fとの間に連通切替ポート10aと連通対象ポート10cを連通させるための通路が形成されるよう、その外周面に中心軸方向に延伸する溝が複数形成されている。そのため、図9に示すように、シート部10dと可動部材12の当接部12aとの距離が所定量L2よりも長くなり摺動遮断部12dが嵌合部10fから抜けたときには、摺動案内部12eは、嵌合部10fに対し接触しながら連通切替ポート10aと連通対象ポート10cを連通させる。
【0051】
図1,2に示す構成例では、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが連通しているときは、可動部材12(摺動遮断部12d)が嵌合部10fから完全に抜けている。そのため、可動部材12が中心軸方向の他方側へ移動する行程において摺動遮断部12dが嵌合部10fに内挿されるときに引っ掛かりが生じる可能性があり、可動部材12の滑らかな摺動が妨げられる可能性がある。これに対して図8に示す構成例では、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cが連通しているときでも、図9に示すように、可動部材12(摺動案内部12e)が嵌合部10fに内挿されて接触している。そのため、可動部材12が中心軸方向の他方側へ移動する行程において摺動遮断部12dが嵌合部10fに内挿されるときに引っ掛かりが生じるのを抑止することができる。したがって、可動部材12の滑らかな摺動を実現することができる。
【0052】
なお、摺動案内部12eの外周面に形成する溝の形状については、図8に示す形状に限るものではなく、例えば図10に示すように、周方向に延伸する溝をさらに形成することもできる。ここで、図10(A)は可動部材12の側面図を示し、図10(B)は可動部材12(摺動案内部12e)の下面図を示す。さらに、例えば図11に示すように、摺動案内部12eの外周面の一部が削り取られていることによっても、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cを連通させるための通路を形成することができる。ここで、図11(A)は可動部材12の側面図を示し、図11(B)は図11(A)のA−A断面図を示す。さらに、摺動遮断部12dを可動部材14の方に設ける場合は、摺動案内部12eを可動部材14における摺動遮断部12dよりも中心軸方向の他方側に設けることもできる。
【0053】
また、図12に示す構成例では、図1,2に示す構成例と比較して、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cとの間の通路を塞ぐための摺動遮断部12dが可動部材12における当接部12aよりも中心軸方向の一方側に配設されている。そして、シート部10dと当接部12aの距離が所定量L2以下のときに摺動遮断部12dが嵌め合わされる嵌合部10fが中心軸方向において連通切替ポート10aとシート部10dとの間に配設されている。ここでの摺動遮断部12dは、その直径が可動部材12の弁ボディ10に対する摺動径(可動部材12の最大直径)に等しく設定されており、連通切替ポート10aと連通対象ポート10cとの間の通路を、中心軸方向において連通切替ポート10aとシート部10dとの間の位置で塞ぐ。さらに、弁ボディ10には、シート部10eとして中心軸方向(中心軸16)に垂直な平面が形成されており、可動部材14には、当接部14aとして中心軸方向に垂直な(シート部10eの平面に平行な)平面が形成されている。
【0054】
図1,2に示す構成例では、摺動遮断部12dの直径が可動部材12の弁ボディ10に対する摺動径(最大直径)よりも小さく、可動部材12は、弁ボディ10に対し最大直径部分と摺動遮断部12dの直径の異なる2つの部分にて摺動する。そのため、これら2つの摺動部分と当接部12aの3箇所に同芯であることが要求される。さらに、可動部材14の当接部14aとも同軸であることが要求される。したがって、可動部材12,14の加工に高い精度が要求される。これに対して図12に示す構成例では、摺動遮断部12dの直径が可動部材12の弁ボディ10に対する摺動径(最大直径)に等しいため、可動部材12の摺動部分の同芯加工を無くすことができる。さらに、弁ボディ10のシート部10eと可動部材14の当接部14aがともに中心軸方向に垂直な平面となるため、可動部材12に対する可動部材14の当接部14aの同軸が不要となる。したがって、可動部材12,14の寸法公差を大きくするのを許容することができる。
【0055】
以上の本実施形態の説明では、パイロット弁20の開閉制御により制御室18内の圧力を制御することで、可動部材12に作用させる推力を制御するものとした。ただし、本実施形態では、パイロット弁20の開閉制御以外の手段によっても可動部材12に作用させる推力を制御することができ、例えば可動部材12に作用させる推力を電磁力により直接制御することも可能である。
【0056】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る方向制御弁の内部構成の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る方向制御弁の内部構成の概略を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る方向制御弁の動作を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る方向制御弁の動作を説明する図である。
【図5】解析対象とする方向制御弁の仕様を説明する図である。
【図6】解析対象とする方向制御弁の仕様を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態に係る方向制御弁の動作を解析した結果を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る方向制御弁の他の構成例の概略を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る方向制御弁の他の構成例の動作を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態に係る方向制御弁の他の構成例の概略を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る方向制御弁の他の構成例の概略を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る方向制御弁の他の構成例の概略を示す図である。
【図13】関連技術の方向制御弁の内部構成の概略を示す図である。
【図14】関連技術の方向制御弁の動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0058】
10 弁ボディ、10a,10b 連通切替ポート、10c 連通対象ポート、10d,10e シート部、10f 嵌合部、12,14 可動部材、12a,14a 当接部、12b 内挿穴、12c 底面、12d 摺動遮断部、12e 摺動案内部、14b 貫通穴、18 制御室、20 パイロット弁、26 ばね。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2連通切替ポートと連通対象ポートが形成された弁ボディと、弁ボディの内部で中心軸方向に移動して連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替える可動部材と、を備える方向制御弁であって、
可動部材は、
中心軸方向の一方側へ移動して第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、中心軸方向の他方側へ移動して第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断する第1可動部材と、
中心軸方向の他方側へ移動して第2連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、中心軸方向の一方側へ移動して第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断する第2可動部材と、
を含み、
第1可動部材には、第2可動部材に対し中心軸方向の一方側から当接して中心軸方向の他方側への押圧力を作用させることが可能な押圧部が設けられており、
押圧部は、第1連通切替ポートと連通対象ポートが連通し且つ第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通が遮断された状態では、第2可動部材に対し中心軸方向の一方側へ第1所定量離れており、
第1可動部材に作用する中心軸方向の他方側への推力により第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第2連通切替ポートと連通対象ポートを連通させるよう第1及び第2可動部材が中心軸方向の他方側へ移動する行程では、第1可動部材は、中心軸方向の他方側へ第1所定量移動してから、押圧部にて第2可動部材を中心軸方向の他方側へ押圧することを特徴とする方向制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の方向制御弁であって、
弁ボディには、第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために第1可動部材が中心軸方向の一方側から当接する第1シート部と、第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために第2可動部材が中心軸方向の他方側から当接する第2シート部と、が設けられていることを特徴とする方向制御弁。
【請求項3】
請求項2に記載の方向制御弁であって、
第1可動部材には、第1シート部に対し中心軸方向の一方側から当接可能な第1当接部が設けられ、
第1可動部材または第2可動部材には、第1シート部と第1当接部の距離が第2所定量以下のときに第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を塞ぐ遮断部が設けられており、
第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させるよう第1及び第2可動部材が中心軸方向の一方側へ移動する行程では、遮断部は、第1当接部が第1シート部に対し中心軸方向の一方側へ第2所定量を超えて離れてから、第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させることを特徴とする方向制御弁。
【請求項4】
請求項3に記載の方向制御弁であって、
弁ボディには、第1シート部と第1当接部の距離が第2所定量以下のときに遮断部が嵌め合わされる嵌合部が設けられており、
遮断部が嵌合部に嵌め合わされることで第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路が塞がれることを特徴とする方向制御弁。
【請求項5】
請求項4に記載の方向制御弁であって、
第1可動部材または第2可動部材には、第1シート部と第1当接部の距離が第2所定量より長いときに嵌合部に対し接触しながら第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させる摺動案内部が設けられていることを特徴とする方向制御弁。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1に記載の方向制御弁であって、
第1シート部は、中心軸方向において第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間に設けられており、
遮断部は、第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を、中心軸方向において第1シート部と連通対象ポートとの間で塞ぐことを特徴とする方向制御弁。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1に記載の方向制御弁であって、
第1シート部は、中心軸方向において第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間に設けられており、
遮断部は、第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を、中心軸方向において第1連通切替ポートと第1シート部との間で塞ぐことを特徴とする方向制御弁。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか1に記載の方向制御弁であって、
遮断部の径が、第1可動部材の弁ボディに対する摺動径に等しく設定されていることを特徴とする方向制御弁。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか1に記載の方向制御弁であって、
遮断部は、第1可動部材に設けられており、
第2所定量は、第2可動部材が中心軸方向に移動するときの行程長より長く設定されていることを特徴とする方向制御弁。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか1に記載の方向制御弁であって、
第2可動部材には、第2シート部に対し中心軸方向の他方側から当接可能な第2当接部が設けられており、
弁ボディには、第2シート部として中心軸方向に垂直な平面が形成されており、
第2可動部材には、第2当接部として中心軸方向に垂直な平面が形成されていることを特徴とする方向制御弁。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1に記載の方向制御弁であって、
第1可動部材には、中心軸方向の他方側から第2可動部材が内挿される内挿穴が形成されており、
押圧部が、この内挿穴の底面により構成されることを特徴とする方向制御弁。
【請求項12】
請求項11に記載の方向制御弁であって、
第2可動部材には、第2連通切替ポートと内挿穴を連通させるための貫通穴が形成されていることを特徴とする方向制御弁。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1に記載の方向制御弁であって、
第2可動部材に中心軸方向の一方側への付勢力を作用させる付勢手段が設けられており、
第1可動部材に作用させる中心軸方向の他方側への推力を調整することで、連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替えることを特徴とする方向制御弁。
【請求項14】
第1及び第2連通切替ポートと連通対象ポートが形成された弁ボディと、弁ボディの内部で中心軸方向に移動して連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替える可動部材と、を備える方向制御弁であって、
弁ボディには、第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために可動部材が中心軸方向の一方側から当接する第1シート部と、第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために可動部材が中心軸方向の他方側から当接する第2シート部と、が設けられており、
可動部材は、
中心軸方向の一方側へ移動して第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、
中心軸方向の他方側へ移動して第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第2連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、
可動部材には、第1シート部に対し中心軸方向の一方側から当接可能な当接部と、第1シート部と当接部の距離が所定量以下のときに第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を塞ぐ遮断部と、が設けられており、
第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させるよう可動部材が中心軸方向の一方側へ移動する行程では、可動部材は、当接部が第1シート部に対し中心軸方向の一方側へ所定量を超えて離れてから、第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させることを特徴とする方向制御弁。
【請求項1】
第1及び第2連通切替ポートと連通対象ポートが形成された弁ボディと、弁ボディの内部で中心軸方向に移動して連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替える可動部材と、を備える方向制御弁であって、
可動部材は、
中心軸方向の一方側へ移動して第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、中心軸方向の他方側へ移動して第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断する第1可動部材と、
中心軸方向の他方側へ移動して第2連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、中心軸方向の一方側へ移動して第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断する第2可動部材と、
を含み、
第1可動部材には、第2可動部材に対し中心軸方向の一方側から当接して中心軸方向の他方側への押圧力を作用させることが可能な押圧部が設けられており、
押圧部は、第1連通切替ポートと連通対象ポートが連通し且つ第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通が遮断された状態では、第2可動部材に対し中心軸方向の一方側へ第1所定量離れており、
第1可動部材に作用する中心軸方向の他方側への推力により第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第2連通切替ポートと連通対象ポートを連通させるよう第1及び第2可動部材が中心軸方向の他方側へ移動する行程では、第1可動部材は、中心軸方向の他方側へ第1所定量移動してから、押圧部にて第2可動部材を中心軸方向の他方側へ押圧することを特徴とする方向制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の方向制御弁であって、
弁ボディには、第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために第1可動部材が中心軸方向の一方側から当接する第1シート部と、第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために第2可動部材が中心軸方向の他方側から当接する第2シート部と、が設けられていることを特徴とする方向制御弁。
【請求項3】
請求項2に記載の方向制御弁であって、
第1可動部材には、第1シート部に対し中心軸方向の一方側から当接可能な第1当接部が設けられ、
第1可動部材または第2可動部材には、第1シート部と第1当接部の距離が第2所定量以下のときに第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を塞ぐ遮断部が設けられており、
第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させるよう第1及び第2可動部材が中心軸方向の一方側へ移動する行程では、遮断部は、第1当接部が第1シート部に対し中心軸方向の一方側へ第2所定量を超えて離れてから、第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させることを特徴とする方向制御弁。
【請求項4】
請求項3に記載の方向制御弁であって、
弁ボディには、第1シート部と第1当接部の距離が第2所定量以下のときに遮断部が嵌め合わされる嵌合部が設けられており、
遮断部が嵌合部に嵌め合わされることで第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路が塞がれることを特徴とする方向制御弁。
【請求項5】
請求項4に記載の方向制御弁であって、
第1可動部材または第2可動部材には、第1シート部と第1当接部の距離が第2所定量より長いときに嵌合部に対し接触しながら第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させる摺動案内部が設けられていることを特徴とする方向制御弁。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1に記載の方向制御弁であって、
第1シート部は、中心軸方向において第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間に設けられており、
遮断部は、第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を、中心軸方向において第1シート部と連通対象ポートとの間で塞ぐことを特徴とする方向制御弁。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1に記載の方向制御弁であって、
第1シート部は、中心軸方向において第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間に設けられており、
遮断部は、第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を、中心軸方向において第1連通切替ポートと第1シート部との間で塞ぐことを特徴とする方向制御弁。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか1に記載の方向制御弁であって、
遮断部の径が、第1可動部材の弁ボディに対する摺動径に等しく設定されていることを特徴とする方向制御弁。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか1に記載の方向制御弁であって、
遮断部は、第1可動部材に設けられており、
第2所定量は、第2可動部材が中心軸方向に移動するときの行程長より長く設定されていることを特徴とする方向制御弁。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか1に記載の方向制御弁であって、
第2可動部材には、第2シート部に対し中心軸方向の他方側から当接可能な第2当接部が設けられており、
弁ボディには、第2シート部として中心軸方向に垂直な平面が形成されており、
第2可動部材には、第2当接部として中心軸方向に垂直な平面が形成されていることを特徴とする方向制御弁。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1に記載の方向制御弁であって、
第1可動部材には、中心軸方向の他方側から第2可動部材が内挿される内挿穴が形成されており、
押圧部が、この内挿穴の底面により構成されることを特徴とする方向制御弁。
【請求項12】
請求項11に記載の方向制御弁であって、
第2可動部材には、第2連通切替ポートと内挿穴を連通させるための貫通穴が形成されていることを特徴とする方向制御弁。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1に記載の方向制御弁であって、
第2可動部材に中心軸方向の一方側への付勢力を作用させる付勢手段が設けられており、
第1可動部材に作用させる中心軸方向の他方側への推力を調整することで、連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替えることを特徴とする方向制御弁。
【請求項14】
第1及び第2連通切替ポートと連通対象ポートが形成された弁ボディと、弁ボディの内部で中心軸方向に移動して連通対象ポートに連通するポートを第1連通切替ポートと第2連通切替ポートの間で切り替える可動部材と、を備える方向制御弁であって、
弁ボディには、第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために可動部材が中心軸方向の一方側から当接する第1シート部と、第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断するために可動部材が中心軸方向の他方側から当接する第2シート部と、が設けられており、
可動部材は、
中心軸方向の一方側へ移動して第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、
中心軸方向の他方側へ移動して第1連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第2連通切替ポートと連通対象ポートを連通させ、
可動部材には、第1シート部に対し中心軸方向の一方側から当接可能な当接部と、第1シート部と当接部の距離が所定量以下のときに第1連通切替ポートと連通対象ポートとの間の通路を塞ぐ遮断部と、が設けられており、
第2連通切替ポートと連通対象ポートの連通を遮断し且つ第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させるよう可動部材が中心軸方向の一方側へ移動する行程では、可動部材は、当接部が第1シート部に対し中心軸方向の一方側へ所定量を超えて離れてから、第1連通切替ポートと連通対象ポートを連通させることを特徴とする方向制御弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−40323(P2007−40323A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222162(P2005−222162)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】
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