説明

施解錠システム

【課題】開扉後に施錠を忘れて外出した場合に、利用者に施錠忘れを知らせる。
【解決手段】リーダ4から離れた建物の共用部には、携帯機5が通信エリア内に進入したときに携帯機5に確認用電波を送信する室外センサ6が配設される。リーダ4は、錠前の解錠時に、開扉して閉扉した後の所定時間内にスイッチ操作による施錠指示入力が無いときに施錠忘れと判別して通知用電波を送信する機能を有する。携帯機5は、リーダ4からの通知用電波の受信時に施錠忘れを示す施錠忘れ情報を記憶部5dに記憶し、室外センサ6から確認用電波を受信して記憶部5dに施錠忘れ情報が記憶されているときに報知部5eから施錠忘れ警報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者を特定する認証用のID信号を送信する携帯機と、この携帯機から送信されるID信号を受信するリーダとを備え、携帯機がリーダの所定の通信エリア内に近接したことを検知した後、利用者の施解錠意志によるスイッチ操作で錠前を施解錠する施解錠システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
錠前を電気的に施解錠制御する施解錠システムとしては、その使用形態に応じて従来から様々なものが提案されている。ここでは、本発明に関連する施解錠システムとして、下記特許文献1に開示される施解錠装置を例にとって説明する。
【0003】
図3は従来の施解錠システムとして下記特許文献1に開示される施解錠装置の概略構成を示している。図3に示す施解錠装置は、送信アンテナと受信アンテナとを設けた送受信機と、この送受信機とシリンダ錠とを備えると共に施解錠する者の意志による操作で施解錠することができるタッチスイッチ101を設けた外側錠部102とがドア103の外面に配設されている。また、ドア103の内面には、送信アンテナと受信アンテナとを設けた送受信機と、施解錠機構の電動駆動部を設けたサムタ−ン装置とを備えると共にタッチスイッチ104を設けた内側錠部105とが配設されている。この施解錠装置では、携帯機106からのレスポンスコ−ド信号の受信にしたがってコントロ−ラ107が施解錠の準備モ−ドに移行し、この準備モ−ドにおいてタッチスイッチ101または104を操作することにより、施錠又は解錠が実行される構成となっている。
【特許文献1】特開2003−343129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3に示す従来の施解錠装置では、錠前の施解錠時に、携帯機106を所持した利用者が扉に近接したことを検知した後、扉に配設されたタッチスイッチ101または104が押下されると、利用者に施解錠意志があるものと認識して錠前の解錠や施錠を行っていた。
【0005】
しかしながら、上述した図3に示す従来の施解錠装置では、携帯機106の所持者が開扉を行った後、施錠をせぬまま外出した場合、何のアクションも起こらないため、鍵の掛け忘れが発生する恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、開扉後に施錠を忘れて外出した場合の施錠忘れを防止することができる施解錠システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載された施解錠システムは、利用者を特定する認証用のID信号を送信する携帯機と、この携帯機から送信されるID信号を受信するリーダとを備え、前記携帯機が前記リーダの通信エリア内に近接したことを検知した後、利用者の施解錠意志によるスイッチ操作で錠前を施解錠する施解錠システムにおいて、
前記リーダから離れた建物の共用部に配設され、前記携帯機が通信エリア内に進入したときに該携帯機に確認用電波を送信する室外センサを備え、
前記リーダは、前記錠前の解錠時に、開扉して閉扉した後の所定時間内に前記スイッチ操作による施錠指示入力が無いときに施錠忘れと判別して通知用電波を送信する機能を有し、
前記携帯機は、前記リーダからの前記通知用電波の受信時に施錠忘れを示す施錠忘れ情報を記憶する記憶部と、前記室外センサから前記確認用電波を受信して前記記憶部に施錠忘れ情報が記憶されているときに施錠忘れ警報を出力する報知部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る施解錠システムによれば、開扉後に施錠を忘れて外出した場合に、携帯機から施錠忘れ警報を出力するので、携帯機を所持する利用者に効率的に施錠忘れを知らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の最良の形態について、添付した図面を参照しながらそれぞれ詳細に説明する。図1は本発明に係る施解錠システムのブロック構成図、図2は本発明に係る施解錠システムの動作説明図である。
【0010】
本例の施解錠システム1は、例えば集合住宅やテナントビル等に採用され、図1に示すように、施解錠機構2、扉センサ3、リーダ4、携帯機5、室外センサ6を備えて概略構成される。
【0011】
施解錠機構2は、扉に設けられる、例えばモータやソレノイド等の駆動装置と錠前で構成され、リーダ4の後述する制御回路部4cの制御により駆動装置を介して錠前を施錠または解錠するべく駆動し、扉枠の係止穴に対してデッドボルトを突出(施錠時)又は引き込む(解錠時)ことにより錠前を施解錠している。
【0012】
扉センサ3は、例えばリードスイッチや無線式を含む各種開閉センサで構成され、利用者による扉の開閉操作に応じた扉の開閉状態を検知している。扉センサ3は、扉が開いているときに開扉信号を出力し、扉が閉まっているときに閉扉信号を出力している。そして、これら開扉信号や閉扉信号は、リーダ4の後述する制御回路部4cに入力される。
【0013】
リーダ4は、例えば扉近傍の壁面や扉等に設けられ、利用者が所持する携帯機5との間で信号を送受信する通信エリア(リーダ電波圏)が予め定められており、図1に示すように、電源回路部4a、操作部4b、制御回路部4c、送受信部4dを備えている。
【0014】
電源回路部4aは、例えば商用電源(AC100V)である外部電源から電源供給を受けてリーダ4の各部に必要な駆動電源を供給している。また、電源回路部4aは、例えば不図示の通電金具や配線を介して扉の施解錠機構2に必要な駆動電源を供給するとともに、不図示の配線を介して室外センサ6に必要な駆動電源を供給している。
【0015】
操作部4bは、利用者の施解錠意志によって直接押下操作される解錠スイッチや施錠スイッチで構成され、解錠スイッチの押下により解錠を指示する解錠指示信号を制御回路部4cに出力し、施錠スイッチの押下により施錠を指示する施錠指示信号を制御回路部4cに出力している。
【0016】
制御回路部4cは、携帯機5が通信エリア(リーダ電波圏)に進入することで起動する誘導磁界を利用して、携帯機5に確認用電波を送信するべく、送受信部4dを駆動制御している。前記確認用電波は、リーダ4の通信エリア(リーダ電波圏)内に携帯機5が存在するか否かを確認するための電波である。また、制御回路部4cは、送受信部4dから携帯機5への確認用電波の送信に伴う応答電波として送受信部4dが携帯機5からID信号(利用者を特定する認証用のID)を受信したときに、この受信したID信号を予め記憶された認証情報(施解錠機構2の施解錠を許可する利用者に関する情報)と比較し、その正当性を判別している。そして、制御回路部4cは、ID信号を正常認証した後、操作部4bから入力される指示信号に応じて施解錠機構2を駆動制御している。すなわち、制御回路部4cは、ID信号の正常認証後、操作部4bから解錠指示信号が入力されると施解錠機構2を解錠制御し、操作部4bから施錠指示信号が入力されると施解錠機構2を施錠制御している。さらに、制御回路部4cは、施解錠機構2の解錠制御時に、開扉して閉扉後に施錠していないと判別したとき、すなわち、扉センサ3から開扉信号が入力して閉扉信号が入力した後の所定時間内に操作部4bから施錠指示信号が入力されないときに施錠忘れと判別し、携帯機5に通知用電波を送信するべく、送受信部4dを駆動制御している。前記通知用電波は、開扉の後、閉扉があったが、施錠していないときに、施錠忘れを通知するための電波である。
【0017】
送受信部4dは、携帯機5が通信エリア(リーダ電波圏)に進入することで起動する誘導磁界を利用して、制御回路部4cの制御により確認用電波を送信している。また、送受信部4dは、確認用電波の送信に伴う携帯機5からのID信号(応答電波)を受信し、受信したID信号を制御回路部4cに出力している。さらに、送受信部4dは、制御回路部4cが施錠忘れと判別したときに、制御回路部4cの制御により通知用電波を送信している。
【0018】
携帯機5は、利用者が携帯した状態でリーダ4の通信エリア(リーダ電波圏)に進入することで起動する誘導磁界を利用してリーダ4との間で非接触通信し、また利用者が携帯した状態で室外センサ6の通信エリア(室外センサ電波圏)に進入することで起動する誘導磁界を利用して室外センサ6との間で非接触通信を行っており、図1に示すように、電源部5a、制御回路部5b、送受信部5c、記憶部5d、報知部5eを備えている。
【0019】
電源部5aは、携帯機5の本体に対して着脱交換可能な例えばボタン電池や乾電池などで構成され、携帯機5の各部に必要な駆動電源を供給している。尚、電源部5aは、リーダ4や室外センサ6との間で起動する誘導磁界により自励発電を行う自励発電装置として構成とすることも可能である。
【0020】
制御回路部5bは、携帯機5の本体がリーダ4の通信エリア(リーダ電波圏)に進入したときにリーダ4から送信される確認用電波や通知用電波を受信するべく、送受信部5cを駆動制御している。また、制御回路部5bは、リーダ4からの確認用電波の受信に伴う応答電波として送受信部5cからID信号(利用者を特定する認証用のID)を送信するべく、送受信部5cを駆動制御している。さらに、制御回路部5bは、携帯機5の本体が室外センサ6の通信エリア(室外センサ電波圏)に進入したときに室外センサ6から送信される確認用電波を受信するべく、送受信部5cを駆動制御している。また、制御回路部5bは、後述する記憶部5dに施錠忘れ情報を記憶した携帯機5が室外センサ6の通信エリア(室外センサ電波圏)に進入して室外センサ6から送受信部5cが確認用電波を受信したときに、施錠忘れ警報を出力するべく報知部5eを駆動制御している。
【0021】
送受信部5cは、利用者が携帯機5を携帯した状態でリーダ4の通信エリア(リーダ電波圏)に進入することで起動する誘導磁界を利用して、リーダ4からの確認用電波の受信、受信した確認用電波に対するID信号(利用者を特定する認証用のID)の送信、リーダ4からの通知用電波の受信を行っている。また、送受信部5cは、利用者が携帯機5を携帯した状態で室外センサ6の通信エリア(室外センサ電波圏)に進入することで起動する誘導磁界を利用して、室外センサ6からの確認用電波の受信を行っている。
【0022】
記憶部5dは、例えばRAM等の半導体メモリで構成される。この記憶部5dには、送受信部5cがリーダ4から送信される通知用電波を受信したときに、施錠忘れを示す施錠忘れ情報が制御回路部5bの制御によって書き込まれる。
【0023】
報知部5eは、記憶部5dに施錠忘れ情報を記憶した携帯機5が室外センサ6の通信エリア(室外センサ電波圏)に進入して室外センサ6から送受信部5cが確認用電波を受信したときに、制御回路部5bの制御により、施錠忘れ警報を出力している。具体的には、バイブレータやブザーで報知部5eが構成されており、送受信部5cが室外センサ6からの確認用電波を受信したときに、記憶部5dに施錠忘れ情報を記憶していれば、バイブレータが振動したり、ブザーが鳴動する。
【0024】
室外センサ6は、リーダ4の通信エリアから所定距離離れた位置、例えば共用出入口やエレベータ等の利用者が共用する共用部に配設され、利用者が所持する携帯機5との間で信号を送受信する通信エリア(室外センサ電波圏)を有しており、図1に示すように、制御回路部6a、送受信部6bを備えている。
【0025】
制御回路部6aは、リーダ4の電源回路部4aから駆動電源の供給を受け、携帯機5が通信エリア(室外センサ電波圏)に進入することで起動する誘導磁界を利用して、携帯機5に確認用電波を送信するべく、送受信部6bを駆動制御している。
【0026】
送受信部6bは、携帯機5が通信エリア(室外センサ電波圏)に進入することで起動する誘導磁界を利用して、制御回路部6aの制御により確認用電波を送信している。前記確認用電波は、室外センサ6の通信エリア(室外センサ電波圏)内に携帯機5が存在するか否かを確認するための電波である。
【0027】
次に、上記構成による施解錠システム1の動作について図2を参照しながら説明する。ここでは、室内側から施解錠機構2の錠前を解錠して室外側に出て外出する場合の動作を例にとって説明する。
【0028】
まず、リーダ4は、携帯機5を所持した利用者がリーダ4の通信エリア(リーダ電波圏)に進入すると、制御回路部4cの制御により、送受信部4dから携帯機5に向けて確認用電波を送信する(図2(a)の状態)。利用者が所持する携帯機5は、リーダ4からの確認用電波を送受信部5cが受信すると、この確認用電波に対する応答電波として、ID信号を送受信部5cから送信する。
【0029】
次に、リーダ4は、確認用電波に対する応答電波として、携帯機5からID信号を送受信部4dが受信すると、受信したID信号の正当性を制御回路部4cが判別する。そして、リーダ4は、ID信号を正常認証した後、操作部4bの解錠スイッチが利用者の解錠意志によって押下されると、制御回路部4cの制御により、施解錠機構2の錠前を解錠制御する。これにより、携帯機5を所持した利用者は、解錠状態の錠前の扉を開いて室内側から室外側に通過可能となる。
【0030】
その後、リーダ4は、解錠状態の錠前の扉を開いて室内側から室外側に通過した利用者の施錠意志によって操作部4bの施錠スイッチが所定時間内に押下されると、制御回路部4cの制御により、施解錠機構2の錠前を施錠制御する。
【0031】
ここで、携帯機5を所持した利用者が解錠状態の錠前の扉を開いて通過し扉を閉めた際、所定時間内に操作部4bの施錠スイッチが押下されなければ、リーダ4の制御回路部4cは、扉センサ3から開扉信号が入力して閉扉信号が入力した後の所定時間内に操作部4bから施錠指示信号の入力が無く、施錠忘れと判別する。これにより、リーダ4は、送受信部4dから携帯機5に向けて通知用電波を送信する(図2(b)の状態)。そして、利用者が所持する携帯機5は、リーダ4からの通知用電波を送受信部5cが受信すると、施錠忘れを示す施錠忘れ情報を制御回路部5bが記憶部5dに書き込む(図2(c)の状態)。
【0032】
その後、携帯機5を所持した利用者が外出のため室外センサ6の通信エリア(室外センサ電波圏)に進入すると、室外センサ6は、制御回路部6aの制御により、送受信部6bから携帯機5に向けて確認用電波を送信する(図2(d)の状態)。そして、利用者が所持する携帯機5は、室外センサ6からの確認用電波を送受信部5cが受信すると、制御回路部5bが記憶部5dに施錠忘れ情報が記憶されているか否かを判別し、記憶部5dに施錠忘れ情報が記憶されていると判別すると、報知部5eを駆動制御して施錠忘れ警報を出力する(図2(e)の状態)。具体的には、バイブレータを振動したり、ブザーを鳴動して携帯機5から施錠忘れ警報を出力する。これにより、携帯機5を所持した利用者は、バイブレータの振動やブザーの鳴動から施錠忘れが有ることを知る。この場合、携帯機5を所持した利用者は、施錠し忘れた施解錠機構2が有る扉まで戻り、リーダ4の操作部4bの施錠スイッチを操作すれば、施解錠機構2の錠前を施錠制御することができる。
【0033】
このように、本例の施解錠システム1によれば、開扉後に施錠を忘れて外出した場合に、利用者が所持する携帯機5から施錠忘れ警報を出力するので、携帯機5を所持する利用者に施錠忘れがあることを効率的に知らせることができ、施錠忘れを防止することができる。そして、記憶部5dに施錠忘れ情報が記憶された携帯機5を所持した利用者が、室外センサ6が配設された占有部から少し離れた位置にいる場合には、携帯機5から不用意に施錠忘れ警報が出力されることがなく、明らかに外出するときに限って、すなわち共用部(共用部出入口やエレベータ)に進入したときに初めて施錠忘れ警報を出力するので、利用者に対してより効率的に施錠忘れを知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る施解錠システムのブロック構成図である。
【図2】本発明に係る施解錠システムの動作説明図である。
【図3】特許文献1に開示される従来の施解錠システムの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 施解錠システム
2 施解錠機構
3 扉センサ
4 リーダ
4a 電源回路部
4b 操作部
4c 制御回路部
4d 送受信部
5 携帯機
5a 電源部
5b 制御回路部
5c 送受信部
5d 記憶部
5e 報知部
6 室外センサ
6a 制御回路部
6b 送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者を特定する認証用のID信号を送信する携帯機と、この携帯機から送信されるID信号を受信するリーダとを備え、前記携帯機が前記リーダの通信エリア内に近接したことを検知した後、利用者の施解錠意志によるスイッチ操作で錠前を施解錠する施解錠システムにおいて、
前記リーダから離れた建物の共用部に配設され、前記携帯機が通信エリア内に進入したときに該携帯機に確認用電波を送信する室外センサを備え、
前記リーダは、前記錠前の解錠時に、開扉して閉扉した後の所定時間内に前記スイッチ操作による施錠指示入力が無いときに施錠忘れと判別して通知用電波を送信する機能を有し、
前記携帯機は、前記リーダからの前記通知用電波の受信時に施錠忘れを示す施錠忘れ情報を記憶する記憶部と、前記室外センサから前記確認用電波を受信して前記記憶部に施錠忘れ情報が記憶されているときに施錠忘れ警報を出力する報知部とを備えたことを特徴とする施解錠システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−223412(P2008−223412A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66815(P2007−66815)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】